(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】低温るつぼ
(51)【国際特許分類】
F27B 14/10 20060101AFI20241101BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20241101BHJP
C30B 15/10 20060101ALI20241101BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20241101BHJP
C30B 35/00 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
F27B14/10
F27D9/00
C30B15/10
C30B29/06 Z
C30B35/00
(21)【出願番号】P 2021546347
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2020053046
(87)【国際公開番号】W WO2020161264
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-12-05
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509265302
【氏名又は名称】アンスティテュ・ポリテクニック・ドゥ・グルノーブル
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カデル・ザイダット
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ガルニエ
(72)【発明者】
【氏名】ガタファン・ハサン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-524798(JP,A)
【文献】特開2009-222364(JP,A)
【文献】特開平08-327244(JP,A)
【文献】特開平11-052095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 11/00-15/20
F27D 7/00-15/02
C01B 33/00-33/193
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温るつぼ(1)であって、
6×10
-8ohm・m未満の電気抵抗率を有する電気導体である材料で作られた少なくとも1つのセクター(100)を含み、溶解されるべきチャージ(20)がその中に導入されることを意図される、低温ケージ(10)と呼ばれるケージと、
熱伝達流
体を伴う冷却デバイス(11)と、
を含み、
前記冷却デバイス(11)が、前記低温ケージ(10)の各セクター(100)を冷却するように構成され、
前記低温るつぼ(1)が、それが、静磁場を生成するために少なくとも1つのデバイス(12)をさらに含み、各生成デバイス(12)が、前記低温るつぼ(1)の前記低温ケージ(10)の少なくとも1つのセクター(100)の内部に収容されることを特徴とする、低温るつぼ(1)。
【請求項2】
前記生成デバイス(12)が、前記低温ケージ(10)の中で、前記溶解されたチャージ(20)によって感知されるのに十分な密度の静磁場を生成するように構成される、請求項
1に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項3】
前記生成デバイス(12)が、前記低温ケージ(10)の中で、少なくとも前記低温ケージ内の前記溶解されたチャージの電磁表皮(21)の厚さの中で感知されるのに十分な密度の静磁場を生成するように構成される、請求項1または2に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項4】
前記生成デバイス(12)によって生成された前記静磁場は、それが、前記低温ケージ(10)の内部に向けられた前記生成デバイスの縁部のうちの1つから2mmより大きい距離において、0.02Tより大きい密度を有するようなものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項5】
前記生成デバイス(12)が、前記低温るつぼ(1)内の前記溶解されたチャージ(20)から12mm未満の距離において、前記低温ケージ(10)の前記内部に向けられた前記生成デバイスの縁部のうちの1つによって配置されるように、前記少なくとも1つのセクター内に収容される、請求項1から4のいずれか一項に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項6】
前記生成デバイス(12)が、前記低温るつぼ(1)の前記冷却デバイス(11)によって冷却されるように、前記生成デバイス(12)を収容する前記セクター内に構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項7】
前記生成デバイス(12)が、少なくとも1つの永久磁石(120)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項8】
各永久磁石(120)と前記冷却デバイス(11)との共同配置が、前記永久磁石が、前記永久磁石のキュリー温度より厳密に低い温度に維持されることを確保するように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項9】
前記永久磁石(120)が、前記低温ケージ(10)の前記セクター(100)を構成する前記材料の電気抵抗率より大きい電気抵抗率を有する材料で作られる、請求項7または8のいずれか一項に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの生成デバイス(12)が、複数の永久磁石(120)を含み、前記複数の永久磁石それぞれが、少なくとも前記低温ケージ(10)の前記内部に向けて、ばらばらにされた各永久磁石(120)によって生成される前記静磁場よりも強力な静磁場を生成するように一緒に配置される、請求項1から9のいずれか一項に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項11】
前
記複数の永久磁石(120)
それぞれが、ハルバッハ構成と呼ばれる構成で一緒に配置される、請求項10に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項12】
前記低温ケージ(10)がいくつかのセクター(100)を含み、前記セクター(100)が互いに着脱可能であり、適切な場合、前記低温るつぼ(1)が前記セクターを一緒に締結および保持するためのデバイス(13)をさらに含み、前記デバイスが、締結および保持された前記セクターが前記低温ケージ(10)の少なくとも一部を形成するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項13】
前記生成デバイス(12)が、前記静磁場を生成するように構成された第1の部分(12a)を含み、支持部(12b)と呼ばれる第2の部分が、前記生成デバイスの前記第1の部分(12a)を支持するようにかつ少なくとも1つの前記セクター(100)内で前記生成デバイスの筐体と緊密に協働するように構成され、前記生成デバイスの前記支持部(12b)が、複数の永久磁石(120)を支持するように、かつ前記セクター(100)内のその筐体(101)の内壁を用いておよび適切な場合に前記支持部が支持する前記生成デバイスの前記第1の部分(12a)を用いて、前記冷却デバイス(11)の前記熱伝達流体のための循環通路を形成するように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項14】
各セクター(100)が、フェライトベース材料、測定プローブ、または前記溶解されたチャージを修正もしくは分析するためのデバイスのうちの少なくとも1つを収容することができ
、前記各セクター(100)の筐体(101)が生成デバイス(12)を持たない、請求項13に記載の低温るつぼ(1)。
【請求項15】
前記低温ケージ(10)がいくつかのセクター(100)を含み、前記低温ケージ(10)の前記セクター(100)が、以下の方法、
互いに対向する2つのセクターだけが、生成デバイスを収容する、
3次の回転対称に配置された3つのセクターだけが、生成デバイスを収容する、
4次の回転対称に配置された4つのセクターだけが、生成デバイスを収容する、
2つの隣接するセクターのうちの1つのセクターが、生成デバイスを収容する、および
各セクターが、生成デバイスを収容する、
のうちの1つの方法で配置される、請求項1から14のいずれか一項に記載の低温るつぼ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温るつぼの分野に関する。低温るつぼは、高温における単結晶材料の生産の分野において、特に有利なアプリケーションを見出す。
【0002】
知られている方式では、低温るつぼは、
- 良好な電気導体、一般に銅である材料で作られる少なくとも1つのセクターを含み、溶解されるべきチャージをその中に導入することを意図される、低温ケージと呼ばれるケージと、
- 熱伝達流体、通常は水を伴う冷却デバイスと、を含み、
冷却デバイスは、低温ケージの各セクターを冷却するように構成される。
【0003】
各低温るつぼは、動作するために、チャージの溶解を引き起こす電磁誘導を低温ケージ内で誘導するように構成された交流電流を使用する。一般に、前記交流電流は、低温ケージを取り巻く電磁誘導コイルに注入される。
【0004】
各低温るつぼは、同じく、チャージを構成する材料を連続的に供給するためのデバイスとともに使用され得る。
【背景技術】
【0005】
いくつかのタイプの低温るつぼがあり、それらのうちの2つが、添付の
図1および
図2に示される。たとえば二重るつぼモデルと呼ばれるモデルを含む、ここに図示されない他のタイプの低温るつぼが存在する。考察するるつぼのタイプにかかわらず、その動作原理は、その他のものと実質的に共通しており、それは、
図1および
図2を参照しながら以下で紹介するようなものである。
【0006】
低温るつぼ1およびコイル2は、好ましくは酸素がなく、しばしば所定の圧力のもとでアルゴンなどの不活性ガスで充たされる、制御された雰囲気を有するシールされた囲い5の中に設置される。
【0007】
交流電流が、低温ケージ10を取り巻くコイル2に注入されるとき、誘導電流が、ケージの冷却されたセクター100の各々の中に現れ、これらの電流は、次に、ケージ内に位置するチャージ20の、電磁表皮と呼ばれる表皮の厚さの中に渦電流を生じる。これらの渦電流は、低温るつぼ1を加熱することなく、必要ならばチャージ20が溶解するまで、チャージ20を加熱することを可能にする。
【0008】
当然ながら、チャージの加熱は電磁誘導によって得られ、チャージ20は、導電性でなければならない。チャージ20の電磁表皮21の厚さは、このチャージの抵抗率とコイル2に注入される交流電流に対して使用される周波数とに依存する。この電磁表皮21は、低温ケージ10に最も近く位置するチャージ20の部分であることに留意されたい。
【0009】
低温るつぼ1は、さらに、半導体材料を溶解するために使用され得る。この目的で、低温るつぼ1は、知られている方式で、チャージ20を導電性にするためにチャージ20を予熱するためのデバイスとともに実装される。この予熱デバイス(図示せず)は、一般に、低温るつぼ1の上に配置され、随意にカバーの黒鉛によるチャージ20の汚染を防止するように構成されたガス流換気システムを設けられた黒鉛カバーを含む。
【0010】
知られているこの技術の利点は、特に低温るつぼ1の相対的耐摩耗性を説明する溶解されたチャージ20の浮遊と、生み出された材料22内に(特に酸素または黒鉛による)外部汚染が潜在的にないことと、非常に良好な均質性の、特に合金の材料22の製作を可能にする溶解されたチャージ20のかくはんとである。
【0011】
低温るつぼは、現在、たとえば、チタン、ニオブなどに基づく金属合金の製作に使用される。冶金における低温るつぼの使用は、実際、組成が非常に均質な合金を取得することを可能にするそのかくはん品質によって、非常に人気のあるツールになった。この均質性は、特に、溶解されたチャージの電磁表皮の厚さにおいて観測可能な、非常に高い電磁力の存在に起因する激しい(virulent)かくはんによって確保される。
【0012】
それは、溶解されたチャージ20の浮遊を止めるためにコイル2内を循環する交流電流を切る一方で、
図1に示すように、それまで低温るつぼ1の底をブロックしているプラグ3を除去することだけであり、それにより、溶解されたチャージは、低温るつぼの下に位置するモールドに流入する。
【0013】
図1を参照すると、低温るつぼ1の使用は、単結晶、特に半導体材料を成長させるためにも考察された。この技法は、完全な単結晶シードを使用して単結晶インゴット22の成長を開始する。シード23は、結晶化されるべき材料の溶解されたチャージ20の中に導入され、次いで、アセンブリが、シード23と、シード23上に成長して上方に(
図1参照)または下方に(
図2参照)移動する単結晶22と、特に3(冷却される指)および4(垂直並進プレート)で参照される要素とで構成され、単結晶22を長さ方向に、および理想的には直径方向に成長させる。
【0014】
しかしながら、以下で記述する研究によって示されるように、この使用は、単結晶22の直径における成長に関して即座に制限される。実際、その直径が、成長を開始することを可能にするシード23の直径より著しく大きい単結晶インゴット22の成長は、今まで得られていない。
【0015】
たとえば、低温るつぼの使用は、1970年代に非特許文献1によって、単結晶シリコンインゴットを製作するために、次いで非特許文献2によって酸化物に対して試験された。
【0016】
より具体的には、非特許文献1は、シリコン単結晶を製作するために低温るつぼを使用することは、外部汚染物質のないシリコン単結晶を有することが可能になるので、非常に意味があることを示した。より具体的には、非特許文献1は、従来通りホットシリカるつぼ(hot silica crucible)を用いて作られた単結晶よりずっと低い酸素含有量を有する単結晶の成長に成功した。しかしながら、このようにして製作される純粋な単結晶シリコンインゴットは、それらのインゴットの成長を開始するために使用されるシードの直径と比較して、比較的小さい直径(直径1.5cm)を有する。
【0017】
同時に、非特許文献2は、単結晶酸化物インゴットの成長のために低温るつぼを使用することが可能であることを示した。しかしながら、このようにして製作される酸化物インゴットは、依然として、それらのインゴットの成長を開始するために使用されるシードの直径と比較可能な直径である。非特許文献2は、この制約は、使用されるシードより著しく大きい直径の単結晶の成長に有害なかくはんの強度と方向とに起因するとの仮説を立てた。この問題を克服するために、非特許文献2は、二重るつぼモデルを使用することを提言している。このモデルでは、第2の冷却システムが、溶解されたチャージの流れの方向と強度とを制御するために、シードが挿入される領域に導入される。これは、製作される単結晶を汚染するという直接的影響を及ぼす。
【0018】
その上、1980年代に、非特許文献3は、太陽光発電のアプリケーションに対する低温るつぼ内のシリコン単結晶の成長を研究した。彼は、小さい直径の単結晶インゴットを(非特許文献1および非特許文献2と同様に)成長させることができたにすぎなかったが、非特許文献3は、それにもかかわらず、この方法によって取得された太陽電池は、従来方式で取得される変換効率より良好な効率を有することを実証した。
【0019】
最後に、2000年代において、非特許文献4は、低温るつぼの周りに配置された超電導コイルによって生成された強静磁場(8T)内でチタンのチャージを含有する低温るつぼを紹介した。彼らは、低温るつぼ内の溶解されたチャージのかくはんが、静磁場の存在によって減速することを実証した。実際、溶解されたチャージのかくはん速度と加えられた静磁場とのベクトル積に比例するブレーキ力は、渦電流によって溶解されたチャージ内に誘導される乱流を安定化することを可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【文献】Wenckusら、 (GROWTH OF HIGH PURITY OXYGEN-FREE SILICON BY COLD CRUCIBLE TECHNIQUES、最終技術報告書、1980年5月18日~1981年11月30日)
【文献】Osikoら、(CRUCIBLE-FREE METHODS OF GROWING OXIDE CRYSTALS FROM THE MELT、Ann. Rev. Mater. Sci. 1987年、 I7: 101-22)
【文献】Ciszek、(Growth and Properties of (100) and (111) dislocation free silicon crystals from a cold crucible、Journal of Crystal Growth 70、324~329ページ、1984年)
【文献】Gillonら、(Uses of intense d.c. magnetic fields in materials processing、Materials Science and Engineering A287 (2000年) 146~152ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
それゆえ、本発明の目的は、前述の不利点を少なくとも部分的に克服することを可能にする低温るつぼを提供することである。より具体的には、本発明の目的は、それらのインゴットの成長を開始することを可能にするシードの寸法、特に横断寸法に対して、著しく大きい寸法、特に横断寸法の単結晶インゴットを製作することを可能にする低温るつぼを提供することである。
【0022】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の説明および添付の図面を考察することで明らかになろう。他の利点が組み込まれ得ることは理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的を達成するために、一実施形態によれば、本発明は、さらに上記の前置きで与えられる包括的定義によれば、本質的に、低温るつぼが電磁場を生成するための少なくとも1つのデバイスを含み、各デバイスが低温るつぼの低温ケージの少なくとも1つのセクター内に収容されるような低温るつぼを提供する。
【0024】
各生成デバイスは、好ましくは、静的(準静的)磁場を生成するように構成される。
【0025】
より具体的には、各生成デバイスは、低温ケージの中で、より具体的には少なくとも低温ケージ内の溶解されたチャージの電磁表皮の厚さの中で、さらにはその厚さの中でのみ、溶解されたチャージによって感知されるのに十分な密度の電磁場、好ましくは静磁場を生成するように構成される。したがって、各電磁場は、溶解されたチャージの電磁かくはんを減速させる効果を有する。
【0026】
それゆえ、本発明による低温るつぼは、それらのインゴットの成長が開始されることを可能にするシードの直径に対して、著しく大きい直径の単結晶インゴットを連続的に製作することを可能にする。そのような単結晶インゴットは、様々な導電材料または半導体材料で作られ得る。このようにして製作された半導体材料の単結晶インゴットからカットされたウェハは、有利なことに、多くの分野で、特にパワーエレクトロニクスの分野で適用され得る。
【0027】
より具体的には、磁場を生成するための各デバイスは、低温ケージの内部に向けられたその縁部のうちの1つから実質的に2mmより大きい距離において、実質的に0.02Tより大きい、好ましくは実質的に0.05Tより大きい密度を有する電磁場、好ましくは静磁場を生成するように構成される。
【0028】
たとえば、磁場を生成するための各デバイスは、低温ケージの内部に向けられたその縁部のうちの1つから、生成デバイスから実質的に0.1mmと12mmとの間を含む(より好ましくは実質的に4mmと10mmとの間を含む)距離において、実質的に0.07Tと0.8Tとの間を含む(より好ましくは実質的に0.1Tと0.3Tとの間を含む)密度を有する電磁場、好ましくは静磁場を生成するように構成される。
【0029】
より具体的には、各生成デバイスは、低温るつぼ内の溶解されたチャージから実質的に12mm未満、好ましくは実質的に9mm未満、より一層好ましくは実質的に6mm未満の距離において、低温ケージの内部に向けられたその縁部のうちの1つによって配置されるように、前記少なくとも1つのセクター内に収容される。
【0030】
低抵抗材料、通常は銅に基づく各セクターは、セクターが収容している生成デバイスを保護するための(電磁)シールドとしての役割を果たす。実際、このようにしてセクター内に誘導された電流は、セクターの壁、たとえば銅の壁の厚さを必然的に通過する。
【0031】
さらに、各生成デバイスは、低温るつぼの冷却デバイスによって冷却されるために、生成デバイスを収容するセクター内に構成される。同じ冷却デバイスは、生成デバイスおよびセクターに対して制御された温度が維持されることを確実にすることができる。
【0032】
本発明の望ましい実施形態によれば、少なくとも1つの生成デバイスは、少なくとも1つの永久磁石を含む。各永久磁石と冷却デバイスとの共同配置は、それゆえ、より具体的には、永久磁石が、その温度を超えると磁石がその磁気(magnetisation)を失うキュリー温度より常に低い温度に維持されることを確保するように構成される。好ましくは、各永久磁石は、より具体的には、それが、その縁部から2mmの距離において、実質的に0.8Tに等しい密度を有する静磁場を生成するようなものである。各永久磁石は、好ましくは、低温ケージのセクターを構成する材料の電気抵抗率より大きい電気抵抗率を有する材料で作られる。各永久磁石は、たとえば、鉄および/またはネオジムに基づく材料で作られる。
【0033】
本発明の望ましい実施形態によれば、静磁場を生成するための少なくとも1つのデバイスは、複数の永久磁石を含む。それぞれの複数の永久磁石は、好ましくは、少なくとも低温ケージの内部に向けて、ばらばらにされた各永久磁石によって生成される静磁場でない、磁場の値の観点から、より強力な静磁場を生成するために一緒に配置される。それぞれの複数の永久磁石は、たとえば、ハルバッハ構成と呼ばれる構成で一緒に配置される。
【0034】
随意に、本発明は、さらに、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有し得る。
- 低温ケージは、いくつかのセクターを含み、セクターは、互いに着脱可能である。適切な場合、低温るつぼは、セクターを一緒に締結して保持するためのデバイスをさらに含み、このデバイスは、締結されて保持されたセクターが低温ケージの少なくとも一部を形成するように構成される。本発明の一実施形態によれば、締結して保持するデバイスは、セクターおよびベースが一緒に低温ケージを形成するように、低温るつぼの各セクターをベース内に着脱可能に締結するように構成された、一般にステンレス鋼で作られるベースを含む。好ましくは、ベース上の各セクターの締結は、熱伝達流体が冷却デバイスからベースを通ってセクター内で循環することを可能にするように構成される。たとえばシリンダヘッドガスケットまたはOリングの形のシールが、随意に、ベースとセクターとの間に、または特にベースがない場合にセクターと冷却デバイスとの間に直接、配置され得る。
- 好ましくは、少なくとも1つの生成デバイスは、電磁場を生成するように、好ましくは静磁場を生成するように構成された第1の部分と、生成デバイスの第1の部分を支持しかつセクター内の生成デバイスの筐体と緊密に協働するように構成された、支持部と呼ばれる第2の部分とを含む。好ましくは、生成デバイスの支持部は、たとえばハルバッハ構成と呼ばれる構成に従って一緒に配置された複数の永久磁石を支持するように構成される。代替または追加として、支持体(support)は、セクター内のその筐体の内壁を用いて、および適切な場合、支持体が支持する生成デバイスの第1の部分を用いて、冷却デバイスの熱伝達流体のための循環通路を形成するように構成される。
- 特定の実施形態によれば、互いに対向する2つのセクターだけが、上記で紹介した生成デバイスを収容する。
- 別の特定の実施形態によれば、実質的に3次の回転対称に配置された3つのセクターだけが、上記で紹介した生成デバイスを収容する。
- 別の特定の実施形態によれば、実質的に4次の回転対称に配置された4つのセクターだけが、上記で紹介した生成デバイスを収容する。
- 別の特定の実施形態によれば、2つの隣接するセクターのうちの1つのセクターが、上記で紹介した生成デバイスを収容する。
- 別の特定の実施形態によれば、各セクターが、上記で紹介した生成デバイスを収容する。
【0035】
その筐体が生成デバイスを持たない各セクターは、フェライトベース材料、測定プローブ、または溶解されたチャージを修正もしくは分析するためのデバイスのうちの少なくとも1つを収容することができる。
【0036】
本発明による低温るつぼは、生成デバイスを、円筒形の低温ケージを有する低温るつぼと、着脱可能セクターを有するかまた有しない、ポケット低温るつぼと呼ばれる低温るつぼと、直接コイルの低温るつぼとを含む任意の既存のタイプの低温るつぼの中に統合することによって設計され得る。
【0037】
本発明の目標、目的、ならびに特徴および利点は、以下に添付する図面によって示される本発明の実施形態の発明を実施するための形態からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】電磁誘導コイルとともに配置され、単結晶を成長させるためにシードがそこから徐々に引き出されるチャージを含む、半分に開かれた従来技術による低温るつぼの概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すものとは異なる従来技術による低温るつぼを含有する、透明なシールされた囲いの概略正面図である。
【
図3】冷却デバイスを装備された本発明による低温るつぼの望ましい実施形態の斜視図である。
【
図4】
図3に示す低温るつぼおよび冷却デバイスの展開斜視図である。
【
図5】本発明の望ましい実施形態による静磁場生成デバイスの斜視図である。
【
図6】本発明の望ましい実施形態による、セクターの下からの斜視図である。
【
図8】ハルバッハ構成での永久磁石の配置とこの配置によって生じる等磁線との概略表現を示す図である。
【
図9】従来技術による低温るつぼの効率を示す複数の物理モデルのシミュレーション結果の図である。
【
図10】本発明による低温るつぼの効率を示す複数の物理モデルのシミュレーション結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図は例として与えられ、本発明を限定するものではない。図は、本発明の理解を容易にすることを意図された概略的原理表現を構成し、必ずしも実際のアプリケーションの縮尺通りであるとは限らない。
【0040】
「より小さい」および「より大きい」は、それぞれ、「より小さいかまたは等しい」および「より大きいかまたは等しい」を意味する。同等は、「厳密により小さい」および「厳密により大きい」という用語の使用によって排除される。同じく、「等しい、より小さい、より大きい」のタイプの表現は、特に、比較される値の尺度および測定値の不確かさに従って、いくらかの許容差を受け入れることができる比較を意味する。実質的に等しい、より小さい、またはより大きい値は、本発明の解釈の範囲内にある。
【0041】
所与の値に「対して実質的に等しい/より大きい/より小さい」パラメータは、このパラメータが、所与の値にこの値の20%またはさらには10%をプラスまたはマイナスした値に対して等しい/より大きい/より小さいことを意味する。2つの所与の値「の間を実質的に含まれる」パラメータは、このパラメータが、少なくとも最小の所与の値にこの値の20%またはさらには10%をプラスまたはマイナスした値に等しく、かつ多くても最大の所与の値にこの値の20%またはさらには10%をプラスまたはマイナスした値に等しいことを意味する。
【0042】
本発明の文脈の中で、「上に」、「上にある」、「カバーする」、もしくは「下にある」、またはそれらの等価の用語は、必ずしも「と接触している」を意味するとは限らないことが決められている。
【0043】
「と併せて配置される」は、少なくとも一方が他方の要素に従って配置される場合に2つの構造要素の互いに対する機能的関係を意味する。特に、要素のうちの1つは、特定の機能を一緒に実行するために、他の要素の寸法および形状に従って、および/または他の要素の実装形態に関連して決められる特定の配置に従って配置され得る。それゆえ、これらの用語は、2つの構造要素の互いに対する多数の相対配置をカバーすることを狙いとしており、多数とは、徹底的に詳述することを欲することが必ずしも無駄であるとは限らないことを意味する。
【0044】
材料Aに基づく要素は、この材料Aと場合によっては他の材料とを含む要素を意味する。
「電磁場」は、セット
【0045】
【0046】
で表される場を意味し、ここで
【0047】
【0048】
は電場であり、
【0049】
【0050】
は磁場であり、それにより、電荷qおよび速度ベクトル
【0051】
【0052】
を有する粒子は、
【0053】
【0054】
によって表現される力を受ける。
【0055】
電磁場の定義は、ここでは、磁場の定義、さらには電磁場の特定の場合を構成する静磁場の定義を含む。
【0056】
ハルバッハ構成は、配置の片側の上の磁場を増加させる一方で、反対側の上の場をほとんど相殺する、永久磁石の特別な配置を意味する。
【0057】
良好な電気導体である材料は、その電気抵抗率が実質的に6×10-8ohm.m未満、好ましくは実質的に2×10-8ohm.m未満である材料を意味する。
【0058】
本発明の発明者らによって立証されたように、溶解されたチャージ20から材料を製作するために従来の低温るつぼを使用するとき、溶解されたチャージ20の中に不安定性が発生する。これらの不安定性は、製作される材料に劇的な影響を与え得るローレンツ力による強いかくはんの結果である。以下の発明を実施するための形態を読めば明らかになるように、本発明は、溶解されたチャージ内の前述の不安定性を緩和するように適応された、特に製作される材料に対するサイズの制約に関するそれらの影響を除去するための、低温るつぼを提供する。
【0059】
この目的で、本発明は、より具体的には、従来の低温るつぼとは異なり、低温るつぼ1の低温ケージ10の少なくとも1つのセクター100内に収容される、電磁場を生成するためのデバイス12、好ましくは静磁場を生成するためのデバイス12をさらに含む、たとえば
図3に示す低温るつぼ1を提供する。
【0060】
本発明の望ましい実施形態を、以下で
図3~
図7を参照しながら説明する。
【0061】
図3に示す低温るつぼ1は、溶解されるべきチャージを受け入れることを意図された内部空間を区切る実質的に円筒形の低温ケージ10を含む。より具体的には、低温ケージ10は、少なくとも複数のセクター100から成る。知られている方式で、セクター100は、それらの長手方向の縁部の少なくとも一部を通して互いに電気伝導する状態にはない。この部分において、2つの隣接するセクター間に空隙が形成され得る。代替的に、2つの隣接するセクター間の各スロットは、磁性挿入物で充填され得る。より具体的には、そのような挿入物は、柔らかい磁性複合材料で作られ得る。
【0062】
図3に示す低温るつぼ1の各セクター100は、セクター100の締結および保持デバイス13として働くベース130によって締結される。より具体的には、デバイス13は、冷却デバイス11上でセクター100を締結することを可能にし、かつ冷却デバイス11上で互いに対して特定の位置にセクター100を維持することを可能にする。このように締結され保持されて、セクター100は、低温ケージ11の主要部分を形成する。代替的に、セグメントは、それらがその上に締結されて保持される同じベース130を一緒に共有することができ、ベースは、同様に冷却デバイス11に締結される。
【0063】
それゆえ、
図3に示す低温るつぼ1は、たとえば水のようなタイプの熱伝達流体の冷却デバイス11を含む。そのような冷却デバイス11は、従来技術から知られている場合がある。それゆえ、本発明による低温るつぼ1は、知られている冷却デバイス11の開発、または適応さえも必要とせず、冷却デバイス11は、それゆえそのままで有利に使用され得る。
【0064】
図4に示すように、冷却デバイス11は、2つの部分を含むことができる。熱伝達流体が、そこを通して冷却デバイス11の第2の部分に導入され、次いで第2の部分から抽出される(
図4の底における)第1の部分は、セクター100を冷却するためにその内部を部分的に通る1つまたは複数の循環回路を画定する。
【0065】
ここではシリンダヘッドガスケットの形のシール14が、冷却デバイス11の第2の部分と各ベース130との間に、これらの部分の間のシールを確保するために配置され得る。代替として、セクターは、ベース130の平らな面から各々が突出する熱伝達流体の入口および出口を通ってベース130だけ延びてよく、各々は、冷却デバイスの、または冷却デバイスとすべてのセクター100との間の中間部(図示せず)の、対応するボアに挿入されることを意図される。次いで、各セクター100と冷却デバイス11との間のシールは、熱伝達流体の入口および出口の突出部に沿って分配された1つまたは複数のOリングによって達成され得る。
【0066】
図4では、低温ケージ10の部分分解図も示される。セクター100は、それらのベース130によって一緒に締結される。より具体的には、セクター100のうちの1つが、分解図の中に示される。したがって、各セクター100は、生成デバイス12がその中に収容される筐体101を含むことができるように見える。
【0067】
より具体的には、筐体101は、真ちゅうまたは銅で作られたプレート102が、筐体101を画定する他の壁と電気伝導するように、好ましくは溶着によって締結されることによって、好ましくは低温ケージ10の内部空間と反対のその側によって閉止され得る。そのような設計は、筐体101をその中に形成して生成デバイス12をその中に収容し得るための、従来の低温るつぼのセクターの凹部の結果であり得る。実際、従来の低温るつぼは、その冷却を可能にすることを意図された熱伝達流体循環チャネルの一部だけを含み、それゆえ従来の低温るつぼは、先験的に、少なくともセクターの冷却に影響を及ぼすことなく、その中にデバイス、ここでは生成デバイス12を収容することはできない。代替として、各セクター100は、生成デバイス12を受け入れることを意図された、それ自体の筐体101を有するように設計された。
【0068】
図4に示す生成デバイス12は、より具体的に
図5に示される。この図は、特に、本発明の望ましい実施形態によって、生成デバイス12が、本質的に2つの部分12aおよび12bを含むという事実を示す。第1の部分12aは、静磁場を生成するように構成される。支持部12bと呼ばれる第2の部分は、生成デバイス12の第1の部分12aを支持するように構成される。より具体的には、支持部12bは、2つの支持要素がそこから延びる実質的に縦長のプレートを含む。生成デバイスの第1の部分12aは、支持部12bの2つの保持要素の間に締結されて保持される。2つの保持要素は、セクター100内に、より具体的には、生成デバイス12の第1の部分12aの周りの、生成デバイス12によって占有されない筐体101の空間内に、熱伝達流体循環回路の一部を保有するようにさらに構成される。このようにして、2つの保持要素のうちの第1の要素(
図5の下方の要素)は、一種の中央分離体(central island)を構成し、中央分離体の両側を、熱伝達流体がそれぞれ反対方向に流れるように意図され、2つの保持要素のうちの第2の要素(
図5の上方の要素)は、循環回路内で蛇行する内部を形成する。
【0069】
図3に示すセクター100のうちの1つの底面斜視図が、
図6に示される。それは、筐体101がそのベース130によって開かれていることを示す。一連の貫通ボアおよび/または材料セットバックが、シリンダヘッドガスケット14を通して、隣接するセクターのベースに締結するため、および/または冷却デバイス11に締結するために、ベース130の延長部内に設けられ得る。より具体的には、互いに隣接する2つのセグメント100の材料セットバックは、これらのセグメントを一緒に締結する目的で一緒に協働するように意図されている。
図6に、生成デバイス12が筐体101内に緊密に収容されていることも示される。特に、第2の部分12bは、好ましくは、低温ケージ10の内部空間に向けられた筐体101の内面全体をカバーするように構成された縦長のプレートを含み、生成デバイス12の第1の部分12aの表面は、低温ケージ10の内部空間に向けられた筐体101の内面を支えているかまたは少なくとも内面と接触している。このようにして、その筐体101内の生成デバイス12の任意の動きが回避され、それゆえその中に安定して保持される。このようにして、セクター100と、セクター100内に適切に設置された生成デバイス12とから形成されたアセンブリが、セクター100のベース130を通って開く循環回路の前述のU字型の部分を画定するようにも見える。この構成では、静磁場を生成するように構成された生成デバイス12の第1の部分12aが、低温ケージ10の内部空間に可能な限り近く配置されていることに留意されたい。より具体的には、低温ケージ10の内部空間に向けられたセクター100の縦長の壁の厚さだけが、生成デバイス12の第1の部分12aと低温ケージ10の内部空間とを分離する。この壁の厚さは、たとえば、0.5mmと2mmとの間に含まれ、好ましくは0.7mmと1.5mmとの間に含まれる。
【0070】
したがって、生成デバイス12は、より具体的には、低温るつぼ1内の溶解されたチャージ20から実質的に12mm未満、好ましくは実質的に9mm未満、より一層好ましくは実質的に6mm未満の距離において、低温ケージ10の内部に向けられたその縁部によって配置されるように、そのセクター100内に収容されることが理解されよう。
【0071】
さらに、構成によって、生成デバイス12は、すでに生成デバイス12がその中に収容されるセクター100を冷却する働きをしている冷却デバイス11によって冷却されるように構成されるように見える。
【0072】
本発明の望ましい実施形態による生成デバイス12の第1の部分12aは、
図5および
図7を参照しながら以下で説明される。
【0073】
図示のように、生成デバイス12の第1の部分12aは、限定ではなく、複数の9個の永久磁石120を含む。それゆえ、冷却デバイス11は、好ましくは、各永久磁石を、厳密にこの磁石のキュリー温度より低い温度に維持することを保証するように構成され、かつ/またはパラメータ化され、そうでなければ、永久磁石の磁気が失われることが理解されよう。
【0074】
各永久磁石は、実質的に立方形状を有してよく、その稜線は、たとえば実質的に2cmに等しい。当然ながら、各永久磁石の形状および寸法は、筐体101の、より一般的にはセクター100の寸法に適応されなければならない。より具体的には、各永久磁石120は、ネオジム/鉄/ホウ素合金で作られ得る。そのような合金は、低温ケージ10のセクター100を構成する銅の電気抵抗率より大きい、より具体的には少なくとも2倍大きい電気抵抗率を有する。永久磁石120は、互いに整列され、生成デバイス12の支持部12bを保持するために2つの要素によってそれらの間に整列されて保持される。より具体的には、この整列は、永久磁石120が、ハルバッハ構成と呼ばれる構成で一緒に配置されるようなものである。そのような構成は、
図8に示すように、整列に対して直角方向において、整列に対して直角とは別の方向におけるよりも強力な静磁場を生成することが可能になることが知られている。
【0075】
支持部の上の整列の配置は、そのセクターの筐体101内の生成デバイス12の期待される配置と相関関係を有する。より具体的には、生成デバイス12は、永久磁石の整列がより強力な静磁場を生成する側が、低温ケージ10の内部空間に向けられたセクター100の縦長の壁に直接面して、好ましくはその壁と接触して配置されるように、その筐体101内に配置される。
【0076】
例として上記で紹介されたような永久磁石を用いて、ハルバッハ整列によって生成された磁場は、2mmにおいて実質的に0.6Tに等しい最大密度を有し、12mmにおいて依然として実質的に0.1Tに等しい最大密度を有する。
【0077】
それゆえ、特にこの特定の配置によれば、生成デバイス12は、低温ケージ10の中で、より具体的には少なくとも低温ケージ内の溶解されたチャージの電磁表皮21の厚さの中で、溶解されたチャージ20によって感知されるのに十分な密度の静磁場を生成するように構成されることが理解されよう。
【0078】
より具体的には、生成デバイス12によって生成された静磁場は、それが、低温ケージ10の内部に向けられたその縁部から実質的に2mmより大きい距離において、実質的に0.02Tより大きい、好ましくは実質的に0.05Tより大きい密度を有するようなものである。
【0079】
代替または追加として、生成デバイス12によって生成された静磁場は、それが、低温ケージ10の内部に向けられたその縁部から実質的に0.1mmと12mmとの間に含まれる距離において、実質的に0.07Tと0.8Tとの間に含まれる密度を有するようなものである。好ましくは、生成デバイス12によって生成された静磁場は、それが、低温ケージ10の内部に向けられた生成デバイスの縁部のうちの1つから実質的に4mmと10mmとの間に含まれる距離において、実質的に0.1Tと0.3Tとの間に含まれる密度を有するようなものである。
【0080】
本発明による低温るつぼの効率を示すことを可能にする、複数の物理デジタルモデルが開発された。
図10は、セクター100内の永久磁石120の使用によって、低温るつぼ1内の溶解されたチャージ20(シミュレーションでは、材料は実質的に1690℃に等しい温度に至る)の流れが著しく修正されることを示す。この修正は、低温るつぼ1に最も近い溶解されたチャージ20の領域内でかくはん速度に強いブレーキをかけるばかりでなく、かくはん渦の反転によって、かくはん渦は、従来の低温るつぼ(
図9)におけるよりも、シード23からの単結晶の成長に、より望ましい回転方向を採用するという結果をもたらす。
【0081】
それゆえ、本発明による低温るつぼは、一方では、従来の低温るつぼにおいて観察されるかくはんを減速すること、他方では、溶解されたチャージ20内に誘導される渦の再循環の方向を反転することを可能にする。
【0082】
本発明による「磁性の」低温るつぼの使用によって、特に上記に示す2つの技術的効果の相乗効果によって、従来の低温るつぼより大きいサイズの単結晶の成長を促進することが可能になる。より具体的には、本発明による「磁性の」低温るつぼの使用によって、成長を開始するシードの直径より大きい直径で、かつ高温るつぼを使用する技術によって得られる品質よりも良好な品質の単結晶の成長を促進することが可能になる。
【0083】
本発明による「磁性の」低温るつぼの使用に対する別の利点は、それらの間で磁化率の差を有する異なる材料で作られたチャージを考慮するときに現れる。たとえば、そのようなチャージは、強磁性、常磁性、または反磁性の材料を含むことができる。次いで、本発明による「磁性の」低温るつぼは、溶解されたチャージ20の中に延びる静磁場勾配の存在によって、これらの材料の選択的分類を可能にすることができる。
【0084】
他の利点は、本発明による低温るつぼの使用を介して、特に、その筐体が生成デバイス12によって占有されず、かつ/またはフェライトベース材料、測定プローブ、または溶解されたチャージを修正もしくは分析することを可能にするデバイスのうちの少なくとも1つを収容することを可能にするセクターを内部に統合することによって達成され得る。溶解されたチャージを修正または分析することを可能にするデバイスは、特に、チャージの流れなど、溶解されたチャージの少なくとも1つの特性を修正または分析することを可能にし得る。非限定的に、このデバイスは、電磁場を生成するためのデバイス、好ましくは永久磁石、フェライト、超音波変換器、および圧電デバイスのうちの少なくとも1つを含むことができる。チャージの流れは、特に、たとえば電磁場によって減速され得、および/またはそのかくはんは、たとえば超音波によって強化され得る。
【0085】
他の利点は、同じく、本発明による低温るつぼの使用を介して、特に生成デバイス12を収容するセクター100の間の配置によって達成され得る。セクター100は、実際、以下の方法のうちの1つにおいて配置されされ得る。
- 互いに対向する2つのセクターだけが、生成デバイスを収容する、
- 実質的に3次の回転対称に配置された3つのセクターだけが、生成デバイスを収容する、
- 実質的に4次の回転対称に配置された4つのセクターだけが、生成デバイスを収容する、
- 2つの隣接するセクターのうちの1つのセクターが、生成デバイスを収容する、および
- 各セクターが、生成デバイスを収容する。
【0086】
サファイアなど、酸化物単結晶の製作に加えて、本発明による低温るつぼは、特にパワーエレクトロニクスの分野におけるアプリケーションに対して意図された、大きい寸法の、特に大きい直径の単結晶シリコンインゴットを製作することを可能にする。
【0087】
本発明は、上記で説明した実施形態に限定されず、特許請求の範囲によってカバーされるすべての実施形態に広がる。
【0088】
特に、本発明による低温るつぼ1は、生成デバイス12を、円筒形の低温ケージを有する低温るつぼと、着脱可能セクターを有するかまた有しない、ポケット低温るつぼと呼ばれる低温るつぼと、直接コイルの低温るつぼと呼ばれる低温るつぼとを含む任意の既存のタイプの低温るつぼに統合することによって設計され得る。
【0089】
直接コイルの低温るつぼは、低温ケージ内に、チャージの溶解をもたらす電磁誘導を誘導するように構成された交流電流をその中に注入される円筒を実質的に形成する単一のセクターから成る。ここで、セクターは、それゆえそれ自体が、通常、低温ケージの周りに配置される電気コイルとして働き、したがって、その名前は「直接コイル」である。セクターは、銅または別の金属で作られ得る。このタイプのるつぼの冷却デバイスは、上記で説明したように、熱伝達流体のための循環チャネルを有するタイプであり得る。それは、通常、単一のセクターが形成する円筒の外面上に直接ろう付けされる。代替的に、円筒は、冷却デバイスを収容する二重壁で形成され得る。この円筒に注入される電流は、チャージ内に直接誘導される電流を生じ、チャージが液体であるとき、それは円筒内に含有される。この技法は、実際に、大きい低温るつぼサイズに対して関心があり、そのようなるつぼは、一般的に、約40cmの直径を有する。
【0090】
したがって、図を参照しながら上記で与えられた本発明の説明が、複数のセクターを含む低温るつぼに関する場合、本発明は、そのような低温るつぼに限定されず、単一のセクターを有する低温るつぼに広がることが理解されよう。その結果、少なくとも1つの生成デバイスが、円筒の突起部内に、またはたとえば、セクターの冷却を可能にするように意図された熱伝達流体循環チャネルの2つの蛇行路の間に延びることによって二重壁の真ん中に、収容され得る。
【0091】
その上、各生成デバイス12は、少なくとも1つの永久磁石を含むその実施形態に限定されない。実際、たとえば、特に電気接続が困難であるという理由で望ましくないが、場が電磁気であり、少なくとも1つの電磁石によって生成され得ることが想定される。そのような電磁石の供給電流は、経時的に変動して、この電磁石によって生成される磁場を変動させることがあるので、本発明による低温るつぼ内で生成デバイス12によって生成される電磁場は、必ずしも静磁場に限定されるとは限らず、特に、生成デバイス12によって生成される電磁場は、準静的磁場であり得ることが理解されよう。
【符号の説明】
【0092】
1 低温るつぼ
2 コイル
3 プラグ
4 垂直並進プレート
5 シールされた囲い
10 低温ケージ
11 冷却デバイス
12 生成デバイス
13 保持デバイス
14 シール、シリンダヘッドガスケット
20 チャージ
21 電磁表皮
22 材料
23 シード
100 セクター
101 筐体
102 プレート
120 永久磁石
130 ベース