(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】生体関連組成物
(51)【国際特許分類】
G01N 33/15 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
G01N33/15 A
(21)【出願番号】P 2021558961
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 GB2020050904
(87)【国際公開番号】W WO2020201779
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-24
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520483925
【氏名又は名称】バイオリレバント.コム エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】リー,マシュー ルイ スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ドス サントス,ヴァスコ ラファエル フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】リー,スティーブン
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0299113(US,A1)
【文献】特表2014-531460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0055831(US,A1)
【文献】Fotios Baxevanis,Fed-state gastic media and drug analysis techniques:current status and points to consider,Eur J Pharm Biopharm.,NH,ELSEVIER,2016年,107,pp.234-48,doi: 10.1016/j.ejpb.2016.07.013.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00~33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物種の摂食状態胃液を模擬するために、水性媒体に分散、希釈、または懸濁したときに好適である生体関連前駆体組成物であって、前記生体関連前駆体組成物は、実質的に固体
もしくは固体様濃縮物、粘性ゲル様濃縮物、または液体脂肪分散液
もしくは濃縮物を含み、
i)1~70重量%の量のトリグリセリド及び/またはジグリセリド及び/またはモノグリセリドまたはそれらの任意の組み合わせ;ii)1~45重量%の量のレシチン及び/またはリゾレシチン;iii)15~70重量%の量の炭水化物;
iv)1~70重量%の量の水または他の水性媒体;
を含む主成分の群のそれぞれから選択される少なくとも1つの主成分であって、
組み合わせた群i)及びii)のそれぞれからの1つ以上の主成分で構成される総脂肪:
組み合わせた群iii)からの1つ以上の主成分で構成される総炭水化物の重量比が、20:1~1:20であり、
グリセリド:レシチン及び/またはリゾレシチンの重量比が、45:1~1:45である主成分と、
さらに、
(i)
0.01~15重量%の脂肪酸;
(ii)
0.01~3重量%の胆汁酸
または塩;
(iii)
0.01~2重量%の酵素;
(iv)
0.01~5重量%のステロール;
(v)
0.01~4重量%の緩衝剤;
(vi)
0.01~10重量%の浸透圧剤;
(vii)
0.01~30重量%のタンパク質
またはタンパク質加水分解物;
(viii)
0.1~5重量%のムチン;
(ix)
0.1~5重量%の粘度調整剤及び
(x)
0.01~3重量%の防腐剤
または安定剤、
を含み、
すべてのパーセンテージは重量によるものである、組成物。
【請求項2】
前記ステロールがコレステロールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記タンパク質がコラーゲンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記タンパク質加水分解物がアミノ酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記防腐剤または安定剤が、
a)酸化防止剤、
b)キレート剤、
c)無機または有機の緩衝液、及び
d)抗菌剤;のうちの少なくとも1つから選択される少なくとも1つの追加の成分と、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前
記トリグリセリドは、アボカド油、キャノーラ油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、菜種油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前
記炭水化物が、多糖、オリゴ糖、二糖、単糖及び/または糖アルコールを含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項8】
糖質がグルコース、フルクトース及びスクロースから選択され、前記多糖がデンプン、デキストリン及びセルロースから選択される、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
a)1重量%~10重量%の水または水性媒体を含む固体または固体様濃縮物;又は
b)10重量%~25重量%の水または水性媒体を含む粘性ゲル様水性濃縮物;又は
c)25重量%~70重量%の水または水性媒体を含む液体エマルジョン濃縮物
の形態である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項10】
前記生体関連前駆体
組成物が、0.86未
満の水分活性を有する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項11】
前記生体関連前駆体組成物が、0.70未満の水分活性を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の生体関連前駆体組成物を製造する方法であって、前記方法は、
i)1~70重量%の少なくとも1つのトリグリセリド、及び/または少なくともジグリセリド及び/または少なくとも1つのモノグリセリドと;
ii)1~45重量%の少なくとも1つのレシチン及び/またはリゾレシチンと;
iii)15~70重量%の少なくとも1つの炭水化物と;
iv)1~70%の水または他の水性媒体と;
ここで、
組み合わせた成分i)及びii)から構成される総脂肪:総炭水化物の比が、20:1~1:20であり、グリセリド:レシチン及び/またはリゾレシチンの比が、45:1~1:45であり、
さらに、
(i)
0.01~15重量%の脂肪酸;
(ii)
0.01~3重量%の胆汁酸
または塩;
(iii)
0.01~2重量%の酵素;
(iv)
0.01~5重量%のステロール;
(v)
0.01~4重量%の緩衝剤;
(vi)
0.01~10重量%の浸透圧剤;
(vii)
0.01~30重量%のタンパク質
またはタンパク質加水分解物;
(viii)
0.1~5重量%のムチン;
(ix)
0.1~5重量%の粘度調整剤及び
(x)
0.01~3重量%の防腐剤
または安定剤、
を、分散ならびに/または均質化ならびに/または蒸発及び/もしくは添加もしくは滴定による含水量の制御によって処理して、実質的に固体
もしくは固体様濃縮物、粘性ゲル様濃縮物、または液体脂肪分散液/濃縮物を得ることを含む、方法。
【請求項13】
前記ステロールがコレステロールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質がコラーゲンである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質加水分解物がアミノ酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記防腐剤または安定剤が、
a)酸化防止剤、
b)キレート剤、
c)無機または有機の緩衝液、及び
d)抗菌剤;のうちの少なくとも1つから選択される少なくとも1つの追加の成分と、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの炭水化物を含む水を添加した後の制御された蒸発の使用、または少なくとも1つの炭水化物を含む水の添加を直接制御することを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物種の摂食状態の胃液を模擬するために好適である組成物を生成する方法であって、請求項1~
11のいずれか一項に記載の生体関連前駆体組成物を水性媒体に分散、希釈または懸濁することを含む、方法。
【請求項19】
前記生体関連前駆
体組成物を、in vitro溶出試験に必要なpHで
、in vitro摂食状態の胃溶出媒体を調製するために任意の順序で添加する/組み合わせることができる水性媒体または緩衝濃縮物に分散させるかまたは希釈することを含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
in vitro摂食状態溶出媒体を調製するための前記生体関連
前駆体組成物を分散するかまたは希釈するための前記水性媒体が、
(i)さらに希釈することなく
、生体関連溶出媒体の必要なpH、緩衝能力、及び浸透圧に到達するための緩衝液;または、
(ii)任意の組み込み及び/または希釈の順序で、前記必要なpH、緩衝能力、及び浸透圧に到達するために、十分な秤量
または測定量の前記生体関連
前駆体組成物、十分な秤量
または測定量の前記緩衝濃縮物、及び精製水、を含み得る、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
別のステップとして酵素、タンパク質加水分解物及び/または他の追加の成分を添加することをさらに含む、請求項
18に記載の摂食状態の胃媒体を調製する方法。
【請求項22】
前記得られた溶出媒体は、0.22~10μmの孔径フィルタを使用して容易に濾過することができ、光子相関分光法を使用す
るZ平均粒子径は、200nm未満であり、典型的には175nmであり、多分散性指数によって反映され
るサイズ分布は、一貫して0.2未満である、請求項
18に記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物種の摂食状態の胃液を模擬するため好適である組成物を製造する際に使用するためのキットであって、第1の容器に水性媒体または緩衝濃縮物を含むと共に、第2の容器に請求項1~
11のいずれか一項に記載の生体関連前駆
体組成物を含む、キット。
【請求項24】
高脂肪食から低脂肪食中の脂肪の量に基づいて、合成生体関連in vitro摂食状態溶出媒体を作製する方法であって、請求項1~
11のいずれか一項に記載の生体関連前駆
体組成物に、pH1.5~pH7.5に緩衝化された水性媒体を添加すること、または緩衝濃縮物を3倍~60倍添加することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の溶解性、溶出及び生体関連性試験の分野にある。本発明は、in vitro生体関連試験媒体を修復するための濃縮物及び溶出組成物について記載する。In vitro媒体は、生体関連食事成分を含み、食物消費後の胃液、特にヒト胃液の物理的パラメータ及び化学的パラメータを共有する。合成in vitro媒体は、摂食状態の胃液を模擬し、薬物及び剤形の生体関連溶解性、溶出及び安定性プロファイリング、in vitro比較溶出試験、in vitro-in vivo相関、及び薬物に対する食物の効果に関する模擬胃液のin vitro研究に使用できる。
【背景技術】
【0002】
脂肪(油、例えばグリセリド及び脂質、例えばリン脂質など)、炭水化物、及びタンパク質を含む食物の主要な食事成分は、栄養を提供し、生物学的機能を支持する。
【0003】
摂取した食物が保存され消化される胃では、粥状液が上部小腸に移される前に、食物成分、胃の酵素及び分泌物と共に、親油性成分、例えば薬物が(部分的に)消化された食事脂肪に可溶化され得る。上部小腸は、十二指腸、回腸、及び空腸で構成されており、ここでは、さらなる消化及び吸収が起こり、食物に反応する酵素によって触媒される。さらに、薬物などの親油性成分の湿潤及び可溶化は、胆汁酸塩及びレシチンなどの生物学的界面活性剤と関連する脂肪分解生成物によって支援される。部分的に消化された食物を含む粥状液が上部小腸に入る前の胃内での滞留は、食物成分及び薬物/剤形に応じて、約30分~6時間以上要し得る。
【0004】
本明細書での胃腸(GI)管への言及は、胃及び上部小腸領域を含む。本発明は、食物が薬物に及ぼす効果を評価するためにFDAによって推奨されている(業界向けガイダンス草案2019)とおり、例えば、高脂肪食(例えば、脂肪55g~65gを含む)または低脂肪食(例えば、脂肪11g~14gを含む)によって誘発される模擬摂食状態の胃液に関する。本発明は、in vitro溶解性及び溶出試験のための摂食状態の胃媒体を提供し、食事後に胃内の剤形から薬物がどのように放出されるかを理解する補助となり得る。In vitro溶出試験で使用するための本発明の生体関連の模擬摂食状態の胃液は、FEDGASと称する。
【0005】
これらの試験は、薬物吸収に対する食物の効果の予測を補助し得、これは、陽性、陰性、または同じままであり得る。溶解性及び溶出/溶出速度は、経口薬物吸収及びその後のバイオアベイラビリティの重要なパラメータである。絶食状態の模擬胃液と比較した、FEDGAS摂食状態の溶出媒体での溶解性及び溶出試験は、経口吸収が食物によって影響を受ける可能性があるかを予測する補助となり得る。
【0006】
これらの試験は、一般的な試験製品の溶出プロファイルが参照リストに記載されている(発明者の)薬物と一致することを確認することにより、生物学的等価性研究のリスクを軽減するためにも使用できる。
【0007】
胃の環境の物理化学的特性、例えばpH、緩衝能力、浸透圧、イオン強度及び運動性は、食物摂取に応じて有意に変化し得る。Cmax、Tmax、及びAUCなどの薬物動態パラメータは、摂食状態の模擬胃液(FEDGAS)の溶解性及び溶出プロファイルと相関され得る。模擬摂食状態及び絶食状態の腸液における生体関連のin vitro溶出試験と組み合わせて、生理学ベースの薬物動態モデリングと組み合わせて、薬物のバイオアベイラビリティを予測することができる。GI環境、例えばpH4.5~6.5でpH依存性コーティングを施している放出調節型及び徐放性剤形は、典型的には、広い生理学的pH範囲に及ぶ摂食状態の胃液のために、in vivoにおいて異なる崩壊時間及び薬物放出パターンを有し得る。この挙動は、摂取状態の模擬胃液(FEDGAS)を使用したin vitro溶出媒体(pH3、pH4.5、及びpH6.0)試験において反映される。本発明はまた、これらに限定されないが、例えば、拡散システム、溶出システム、浸透圧システム、イオン交換樹脂、浮遊システム、生体接着システム及びマトリックスシステムなど、他の放出調節型製剤のin vitro溶出試験にも好適である。
【0008】
FEDGASの物理化学的安定性は、37℃で24時間以上のin vitro溶出試験では変化しない。したがって、徐放性剤形は、25℃及び37℃で24時間以上FEDGAS溶出媒体中で試験することができ、これは、典型的には8時間に制限される従来技術の溶出試験と比較して、本発明の利点及び産業上の利用可能性をさらに裏付ける(
図11及び
図12を参照)。試験媒体は、平衡に24時間以上要し得る平衡可溶性試験に特に有用である。
【0009】
したがって、本発明は、食物摂取後のヒト胃液の物理化学的特性をより厳密に模倣し、模擬する再現可能な基準(例えば、粒子径及び濾過性)を備えた生体関連のin vitro胃媒体に焦点を当てている。
【0010】
摂食状態のGI液の組成及び物理的特性は、食物の種類(食品医薬品局(FDA)推奨のAssessing the Effects of Food on Drugs in INDs and NDAs(2019ガイダンス原案)に記載の標準的な高脂肪食と低脂肪食を参照)及び胃内での時間の長さによって異なる。食物のない絶食状態では、胃液は典型的には、pH1~3付近の低いpHで現れる。食事の後、pHは約pH6に上昇し、その後最大約6時間でpH1~3のベースレベルに戻る。胃のpHの変化は、主に弱酸及び弱塩基に影響を及ぼし、摂食状態で値が上昇することにより、pH6で酸の溶出が促進され、塩基の溶出が減少するが、pH3ではその逆となり得る。
【0011】
胃液を模擬する公定書媒体(USP及びEPなどにおいて)には、生理学的/生物学的成分(脂肪など)が含まれておらず、一般に、水不溶性薬物の生体関連溶解性及び溶出試験には好適ではない。
【0012】
一態様では、前駆体濃縮物に由来するin vitro摂食状態溶出媒体(FEDGAS)は、例えば、FDA高脂肪食を摂食後のin vivo胃液を模擬する。この高脂肪食は、薬物を用いた食物効果のin vivo試験を実施するために摂食される標準的な推奨高脂肪食であり、in vivo食物効果ヒト研究のための生物学的同等性である。
【0013】
別の態様では、in vitro溶出試験のための摂食状態胃媒体(FEDGAS)は、食事中に存在する特定の量の脂肪を含む。
【0014】
前駆体濃縮物から調製されたin vitro溶出媒体は、摂取された食事中の脂肪の量と同様の量(1g~200g)の脂肪を提供することができる。
【0015】
本発明に記載のin vitro摂食状態の胃試験媒体は、溶解性及び溶出試験に限定されない実用性及び産業上の利用可能性を有することが理解されるべきである。例えば、in vitro生体関連媒体は、胃のインプラント、デバイス、及びバンドの互換性をテストするために、及びプロバイオティクス及びビタミン製品の安定性を評価して、それらが不安定であり、食物と一緒に胃中で残ることができるか否かを確認するために使用できる。
【0016】
本発明は、例えば、FDAの高脂肪食及び低脂肪食及び他の食事の変形に基づく、in vitro摂食状態の模擬胃液(FEDGAS)の開発及び提供に関する(例えば、Klein et al.、「Media to simulate the postprandial stomach I.Matching the physicochemical characteristics of standard breakfasts」Journal of pharmacy and pharmacology56(5)(2004):605-610)。これらは、例えば、(i)高脂肪高カロリー、(ii)中脂肪中カロリー、(iii)低脂肪低カロリー、及び(iv)同様の脂肪量の低カロリーまたは高カロリーの食事など、食物が薬物に及ぼす影響を評価するためのin vivoヒト研究に推奨される。
【0017】
F.Baxevanis et al.,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,Vol.107,2016,234-248は、食物後の様々な模擬胃液への薬物の溶解性及び溶出に影響を与える物理化学的要因について記載している。溶出試験及び薬物分析技術のための模擬摂食状態の胃液が包括的に検討されている。摂食条件は、in vitroでの薬物溶出及びその後の吸収プロファイルに有意な効果を有し得る。従来技術における摂食状態の胃媒体での薬物分析は、使用しているほとんどの分析プロトコルが、時間を要し、労働集約的であるため、困難であり得ることが強調されていた。従来技術の溶出媒体の物理的性質及び化学組成のために、濾過性及び適切な緩衝液(沈殿を回避し、100%の薬物回収が可能になる)は、in vitro試験において実際的な考慮を必要とする差し迫った問題である。明らかに、食事後の胃液をより良好に模擬し、例えば、従来技術のin vitro溶出試験における、生理学的胃摂食状態のpH(例えば、pH1.5~7.5)での適合性、沈殿、濾過性及び薬物回収などの特定された問題を回避することができる、よりユーザーフレンドリな生体関連溶出媒体に対する満たされていない必要性がある。
【0018】
Jantratid et al.,Pharmaceutical Research,Vol.25,No.7,2008,1663-1676では、スナップショット摂食状態模擬媒体(FeSSGF)が溶出試験用に提唱されており、50%酢酸緩衝液及び50%UHTミルク(全脂肪UHTミルク中最大3.5%の脂肪)を含み、FeSSGF中でpH5.0で1.75%の脂肪量が得られる。Jantratid et al.のpH6.4、5、及び3に対応する摂食状態の模擬胃液を模擬するための3つの「スナップショット」媒体(初期、中期、後期)の組成を表2に示す。FeSSGFは、摂食後75分~165分の間にpH5で中期の中間摂食状態の模擬胃液を識別するために付与された頭字語である。しかし、前述の表2で中間(FeSSGF)と称されるこの組成物は、基本的にミルク/緩衝液を含み、FDA高脂肪食事の脂肪量を含まず、ミルク中の脂肪の量及び質の変動による影響を受ける。さらに、物理的安定性が不十分である(Jantratid et al.の写真4を参照のこと)。Jantratid et al.の表4には、摂食状態の上部小腸を模擬するための溶出媒体が示されているが、本発明では、摂食状態の胃を模擬する媒体について記載する。誤解を避けるために、本発明において摂食状態の胃液を模擬するFEDGAS、及び摂食状態の上部小腸液を模擬するためのFeSSIF(Jantratid et al.の表4)は、類似のin vitro溶出組成物ではない。
【0019】
米国特許出願公開第2016/0299113号明細書は、溶出試験のために絶食状態及び摂食状態の腸液を模擬する生体関連溶出媒体を調製するための固体組成物について記載している。本開示は、1:1~20:1の胆汁酸塩対リン脂質のモル比を教示しているので、生成物は、本発明の範囲外の胆汁酸塩量を含む。
【0020】
従来の模擬胃液におけるin vitro溶出試験には、脂肪(総脂肪4.6%w/v)を含むEnsurePlus(登録商標)(市販の「プロテインミルクシェイク」ドリンク)、摂食状態の胃液を模擬するタンパク質及び炭水化物を含む。この媒体は、全脂肪乳のように、摂食された胃の生理学的pH範囲で安定しておらず、例えばGD/Xガラスマイクロファイバー(GMF)シリンジフィルタを使用した0.45マイクロメートルのフィルタを使用した濾過は非常に困難であるため、in vitro溶出試験には好適ではない。
【0021】
同様に、摂食状態の胃液を模倣するFeSSGFも、濾過が困難であり、生理学的な胃のpH範囲で物理的に不安定であるため、in vitro溶出媒体(前述)としては好適でない。さらに、FeSSGFには、FDAの高脂肪食に見られる特定の量の脂肪は含まれていない。
【0022】
溶出研究用の従来技術のFeSSGF媒体のさらなる例は、82.5:17.5の比で構成された酢酸緩衝液とリポファンディンMCT(登録商標)の混合物である「摂食状態模擬胃エマルジョン」(FeSSGEm)である。媒体は、トリグリセリド(1.75%)、卵レシチン(約0.21%)及びグリセリン(0.44%)を含む。重要なことに、この組成物は、脂肪及び炭水化物の量、特に推奨されるFDAの高脂肪推奨の食事を含まず、摂食した胃のpH範囲で不安定になり得る(Klein,In vitro lipolysis assay as a prognostic tool for the development of lipid based drug delivery systems:Martin Luther Universitat Halle- Wittenberg;2013)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】米国特許出願公開第2016/0299113号明細書
【非特許文献】
【0024】
【文献】Klein et al.、「Media to simulate the postprandial stomach I.Matching the physicochemical characteristics of standard breakfasts」Journal of pharmacy and pharmacology56(5)(2004):605-610
【文献】F.Baxevanis et al.,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,Vol.107,2016,234-248
【文献】Jantratid et al.,Pharmaceutical Research,Vol.25,No.7,2008,1663-1676
【文献】Klein,In vitro lipolysis assay as a prognostic tool for the development of lipid based drug delivery systems:Martin Luther Universitat Halle- Wittenberg;2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
様々な摂食状態の胃溶出媒体の物理化学的特性及び性能を以下の表1にまとめて、比較する。表1は、本発明の摂食状態の胃媒体FEDGASを示し、FEDGASではすべてのボックス(+)にチェックが入り、したがって、既知の先行技術媒体には含まれていない(-)識別されたパラメータのすべてを満たしていることを明確に示すことが理解されよう。
【0026】
【0027】
表1に示すとおり、実際の均質化された標準FDA食と共に、液体経腸及び非経口製品を、胃の摂食状態条件を模擬するin vitro溶出媒体として調査した。それにもかかわらず、抽出の問題及び薬物の分析に要する時間には、標準のUSP溶出装置及び推奨される方法と互換性のある、よりユーザーフレンドリな模擬摂食状態の胃液を必要とする。従来技術の溶出媒体が、37℃で4時間以上継続する薬物溶出試験の目的に適合し、また、胃内の消化の「初期」から「中期」、「後期」の段階において、pH7.5~pH1.5の生理学的胃摂食状態のpH範囲で適合性があることを示唆する情報はほとんどない。薬物が摂食した胃の中で食物と接触している間に溶解性及び溶出プロファイルを監視できるように、pH範囲7.5~1.5の3つの典型的なpHでの試験を必要とする。
【0028】
本発明の目的は、主に脂肪及び炭水化物を含む食事成分を含むin vitro溶出媒体を提供することであり、これらは、食物後の胃液の物理化学的特性を捕捉し、複製する。さらに、溶出組成物は典型的には、in vivo BA/BE(生物学的利用能/生物学的同等性)研究及びヒトにおける薬物に対する食物効果が行われるときに、摂取されるFDA推奨の高脂肪、高カロリーの標準的な食事に存在する特定の量の脂肪及び炭水化物を含む。1g~200gの範囲の可変脂肪含有量を有する食事の摂取後、摂食状態のヒト胃液の物理的特性及び化学的特性を複製する、または複製することができる生体関連成分を含むin vitro溶出媒体に対して、満たされていない必要性が依然として存在する。
【0029】
本発明は、これらに限定されないが、新規化学物質ならびにジェネリック薬物の溶解性、安定性、溶出プロファイリング、BA/BE研究を裏付けるための剤形の溶出比較、プロバイオティクス、栄養補助食品、ビタミン、胃インプラント、デバイス性能及び安全性試験のための摂食胃内容物のpH範囲での適合性など、食後の胃内における食物効果の試験専用のin vitro生体関連溶出媒体について開示する。省力化の利点、一貫性、及び再現性に加えて、摂食状態胃媒体は、インキュベーション後の濾過に適合し、これにより、前述の先行技術(Baxevanis et al.)で強調されている、濾液中の薬物または分解生成物のHPLC分析が可能になる。
【0030】
従来技術に記載されている媒体(例えば、FeSSGF)と比較して、本明細書に記載されている生体関連の摂食状態の胃媒体(FEDGAS)は、in vitro溶出試験及びin vitro-in vivo相関により好適であり、得られたFEDGASにより、例えばFDA標準の高脂肪食消費後のin vivo胃液を模擬することが提示された。
【0031】
「生体関連濃縮物/組成物」という用語は、本明細書では「生体関連前駆体組成物」または「生体関連前駆体濃縮物」とも称される。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明者らは、炭水化物と共に分散脂肪を含むin vitro胃溶出媒体が、例えば高脂肪食消費後の胃液の特性を模擬することを見出した。脂肪としては、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、レシチン及び/またはリゾレシチンが挙げられる。
【0033】
本発明は、実質的に固体/固体様濃縮物、実質的に透明から不透明の粘性ゲル様組成物(濃縮物)、及び高レベルの脂肪及び炭水化物を含む脂肪分散液/液体濃縮物を提供し、高エネルギー入力及び、主にトリグリセリド、レシチン及び/またはリゾレシチン及び炭水化物を含む成分の組み合わせは、容易に水に分散する脂肪分散液(濃縮物)を生成する。これらの容易に水を分散する濃縮物を、例えば、緩衝液及び浸透圧成分を含む水性媒体で希釈することにより、摂食状態の溶出媒体及び500nm Z平均直径未満の脂肪凝集体が得られる(
図9)。予期せぬことに、媒体の調製後少なくとも24時間、in vitro溶出試験で例示的な物理化学的安定性が得られ、室温で少なくとも12ヶ月間濃縮物の長期安定性が得られる。
【0034】
適切な緩衝液は、これらに限定されないが、摂食状態の生理学的胃pH範囲が1.5~7.5に及ぶように、酢酸緩衝液、リン酸塩緩衝液、及びクエン酸緩衝液から選択される。特に有用なpHパラメータは、pH3.0、pH4.5、pH5.0及びpH6.0であり、これは、摂食した胃内での食物の異なる滞留時間で、高脂肪食または低脂肪食を摂取後のヒト胃液のpHを反映する。濃縮物組成物から調製されたin vitro溶出媒体はまた、従来技術で特定され、表1に示す、pH1.5~pH7.5の摂食状態の胃のpHでの濾過及びpH不適合性などの分析問題を回避する。
【0035】
このプロセスには、高エネルギー入力、制御された蒸発、及び/または目標量の水を注意深く添加することを含む。
【0036】
処理ステップには、以下を含む:
(i)平均直径1000nm未満、典型的には約500nm未満の細かく分割された実質的に均一な脂肪粒子/凝集体を生成するのに十分な高エネルギー入力、例えば高圧乳化など、
(ii)糖質などの少なくとも1つの炭水化物を含む水の添加後の制御蒸発、または糖質などの少なくとも1つの炭水化物を含む水の添加の直接制御のステップを含み、ここで、得られる標的組成物の含水量は、1.0重量%~70.0重量%、固体/固体様濃縮物については、典型的には、1.0%~10.0%、粘性ゲル様濃縮物については、典型的には、10%~25%、脂肪分散液/液体濃縮物については、典型的には、25%~70%で厳密に制御される。
【0037】
本明細書に詳述されるプロセス及びプロセスステップは、本発明の別の態様を構成する。
【0038】
得られる実質的に固体/固体様濃縮物、粘性ゲル様濃縮物組成物及び液体脂肪分散濃縮物は、記載のとおり、摂食状態の生体関連溶出媒体を調製するための濃縮物ならびに前駆体である。
【0039】
試験媒体は、容易に水に分散する前駆体濃縮物を、単純な混合(例えば、マグネチックスターラー)を使用して、いかなる高エネルギー入力もなく、水性媒体で分散、希釈、または懸濁することによって調製することができる。得られた試験媒体は、0.45マイクロメートルのフィルタで容易に濾過できる安定した均一に分散した脂肪分散液である。
【0040】
均一に細かく分散された脂肪粒子を含む媒体は、pH1.5~約pH7.5の溶出試験に好適であり、それにより、先行技術の摂食状態の胃溶出媒体のより広い使用を妨げてきたこの摂食状態の胃の生理学的pH範囲においてpH適合性を提供する。さらに、例えば、ミルク及び経腸サロゲートに関連するpH不適合性、濾過性及び再現性の制約により、in vitro溶出、及びこれらに限定されないが、例えば、USP溶出装置2など、従来の溶出装置を使用する食物効果の試験が成功しなかった。
【0041】
溶解試験では、容量0.5mL~20mL、より典型的には5mL~10mLを使用して、例えば、振とうフラスコ法によって求めた速度論的及び平衡溶解度を評価し得る。
【0042】
標準的なUSP溶出装置1及び2の場合、250mL~1L、好ましくは750mL~900mLの容器容量を使用し得る。In vitro溶出試験には、典型的には50~200mLの少量の小溶出容器を使用し得る。
【0043】
例えば、USP溶出装置4を使用したフロースルー研究を必要とする試験では、開ループ試験が必要な場合、溶出媒体の量を数リットルまで増加させることができる。
【0044】
濾過による未溶出薬物の分離を必要とする、HPLCなどの単純かつ堅牢な分析方法で使用できる好適な生体関連のin vitro摂食状態の胃溶出媒体の開発では、薬物及び医薬品に対する食物の効果の試験を行う有用な手段を導入する。ミルク、栄養ドリンク、またはpH5の摂食状態模擬胃液(FeSSGF)などのいくつかの摂食状態媒体は、ヒトの食後状態を模擬するために先行技術で試行されてきた(表1表2)。しかし、これまで、FDA食後に実際の摂食状態の胃液の満足のいく提示が得られたものはなく、日常的な実験室での使用には実用的ではない。本発明の提唱された生体関連溶出媒体(FEDGAS)は、高脂肪食後のヒト胃液をより正確に模倣し、約30分でpH6.0に対応し、摂食後約6時間で塩基レベルpH3.0に戻る。しかし、食事の組成の変化、及び摂食状態のヒトの胃の生理機能に応じた相互及び内部の変動性のために、pHは、より広い範囲、例えば、pH7.5~pH1.5に及び得る。一態様では、本発明は、哺乳動物種の摂食状態の胃液を模擬するために、水性媒体中での分散または希釈時に、in vitro摂食状態の溶出媒体を調製するのに好適である濃縮物中の生体関連組成物を提供する。
【0045】
本発明の一実施形態では、in vitro摂食状態溶出媒体を調製するための生体関連濃縮物組成物を分散するかまたは希釈するための水性媒体は、3倍~60倍の希釈可能な緩衝濃縮物を含み得る。
【0046】
一実施形態では、本発明の生体関連前駆体組成物は、実質的に固体/固体様濃縮物、粘性ゲル様濃縮物、または液体脂肪分散液/濃縮物であり、以下の群:
i)トリグリセリド及び/またはジグリセリド及び/またはモノグリセリドまたはそれらの任意の組み合わせ(1~70重量%の量);
ii)1~45重量%の量のレシチン及び/またはリゾレシチン;
iii)15~70重量%の量の炭水化物;
iv)1~70重量%の量の水または他の水性媒体
のそれぞれから選択される少なくとも1つの主成分であって、
総脂肪(組み合わせた群i)及びii)のそれぞれからの1つ以上の主成分):総炭水化物(組み合わせた群iii)からの1つ以上の主成分)の重量比は、20:1~1:20であり、
グリセリド:レシチン及び/またはリゾレシチンの重量比は、45:1~1:45である主成分と、
さらに、以下を含むまたは以下からなる群:
(i)脂肪酸(0.01~15重量%);
(ii)胆汁酸/塩(0.01~3重量%);
(iii)酵素(0.01~2重量%);
(iv)コレステロール、ステロール(0.01~5重量%);
(v)緩衝剤(0.01~4重量%);
(vi)浸透圧剤(0.01~8重量%);
(vii)タンパク質(コラーゲン、タンパク質加水分解物、アミノ酸)(0.01~30重量%);
(viii)ムチン(0.1~5重量%);
(ix)粘度調整剤(0.1~5重量%)及び
(x)防腐剤、安定剤(0.01~3重量%)、
例えば、a)酸化防止剤、
b)キレート剤、
c)緩衝液(無機または有機)、及び
d)抗菌剤
の少なくとも1つのメンバーから選択される少なくとも1つの追加の成分と、を含む。
【0047】
反対の指示がない限り、すべての重量パーセント(上記及び下記を参照)は、乾燥重量による。
【0048】
本発明の一実施形態では、in vitro摂食状態溶出媒体を調製するための生体関連濃縮物組成物を分散または希釈するための水性媒体は、
(i)さらに希釈することなく、生体関連溶出媒体の必要なpH、緩衝能力、及び浸透圧に到達するための緩衝液;または、
(ii)任意の組み込み及び/または希釈の順序で、必要なpH、緩衝能力、及び浸透圧に到達するために、十分な秤量/測定量の生体関連濃縮物、十分な秤量/測定量の緩衝濃縮物、及び精製水を含み得る。
【0049】
本発明の別の実施形態では、例えば、ムチン、酵素(例えば、ペプシン及び/またはパンクレアチン)及び/またはタンパク質及び/またはアミノ酸は、高脂肪食及び低脂肪食の含有量を反映して、摂食状態溶出媒体を調製中または調製後のいずれかでのin vitro生体関連摂食状態胃溶出媒体に別々に添加され得る。あるいは、成分はまた、緩衝濃縮物に添加され得るか、または希釈された緩衝液に添加され得る。
【0050】
サイズの縮小及び制御された蒸発または滴定
別の態様では、本発明は、食事成分を処理すること、蒸発、例えば、真空蒸発または薄膜蒸発、透析、マイクロ波、及び/または添加または滴定によって1.0重量%~70.0重量%の含水量を均一に分散及び/または均質化及び/または制御することを含む、前駆体濃縮物を作製するプロセスを提供し、これにより、実質的に固体/固体様組成物、粘性ゲル様組成物及び液体脂肪分散液/濃縮物が得られる。
【0051】
一実施形態では、実質的に固体/固体様濃縮物は、典型的には、1重量%~10重量%の水または水性媒体を含む。
【0052】
一実施形態では、粘性ゲル様濃縮物は、典型的には、10重量%~25重量%の水または水性媒体を含む。
【0053】
一実施形態では、液体脂肪分散液濃縮物は、典型的には、25重量%~70重量%の水または水性媒体を含む。
【0054】
濃縮物からの生体関連in vitro溶出媒体の作製方法
本明細書で説明するとおり、推奨されるFDA標準の高脂肪食または低脂肪食及び代替食の脂肪量をベースとした濃縮物または生体関連前駆体組成物は、適切な水性媒体または希釈剤を添加することによって、生体関連in vitro摂食状態胃溶出媒体に変換することができる。したがって、一態様では、本発明はさらに、高脂肪食から低脂肪食中の脂肪の量に基づいて、合成生体関連in vitro摂食状態溶出媒体を作製する方法を提供し、本方法は、本発明の生体関連前駆体濃縮物組成物に、pH1.5~pH7.5に緩衝化された水性媒体を添加すること、または緩衝濃縮物を3倍~60倍添加することを含む。本発明はまた、本発明の生体関連前駆体濃縮物組成物及び水性媒体を含む合成in vitro生体関連摂食状態溶出媒体を提供する。本発明はまた、本発明の生体関連前駆体濃縮物に水性媒体を添加することによって得ることができる合成in vitro生体関連摂食状態溶出媒体を提供する。
【0055】
水性媒体は、例えば、精製水を含み、また、3倍~60倍の緩衝濃縮物、浸透圧成分、エタノール、安定剤、酵素の緩衝液の水溶液を含み得る。緩衝液は、好ましくは、本明細書のリストから選択される1つ以上の無機または有機緩衝剤を含む。
【0056】
典型的には、生体関連濃縮物/組成物が、液体脂肪分散濃縮物であるか、または実質的に透明から不透明な粘性ゲル様組成物、または実質的に固体/固体様濃縮物である場合、水性媒体中での分散または希釈は、前駆体組成物を少なくとも同量の水性媒体と接触させることを伴う。好ましくは、前駆体組成物は、水性媒体の少なくとも2倍の体積~少なくとも10倍の体積の水性媒体で希釈される。低脂肪含有量の媒体の場合、さらに高い希釈率(最大100倍)が本発明の範囲内にある。
【0057】
本発明はまた、参照リストされた生成物に対する医薬品の溶解性及び溶出試験のための合成in vitro摂食状態の胃の生体関連溶出媒体の使用を提供し、in vivoのBA/BE研究を裏付ける。
【0058】
本発明は、薬物に対する食物の効果を調査するための、低脂肪の摂食状態の胃液を模擬する生体関連媒体における薬物(新化学物質及びジェネリック医薬品)及びその剤形のin vitroでの溶解性及び溶出の試験に加えて、エタノールによる重量管理及び減量ならびに過量放出研究のために、例えば、プロバイオティクス、栄養素、ビタミン、及びインプラント、ステント、バンドなどの胃デバイスとの適合性及び安定性試験のために、in vitro摂食状態胃媒体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】摂食状態の模擬胃媒体中のエキセメスタンの溶出試験の結果を示す。
【
図2】摂食状態の模擬胃媒体におけるシンナリジンの溶出試験の結果を示す。
【
図3】摂食状態の模擬胃媒体におけるシンナリジンの溶出試験の結果を示す。
【
図4】摂食状態の模擬胃媒体におけるメフェナム酸カプセルの溶出試験の結果を示す。
【
図5】摂食状態の模擬胃媒体へのメフェナム酸カプセルの溶出験の結果を示す。
【
図6】摂食状態の模擬胃媒体へのダナゾールカプセルの溶出験の結果を示す。
【
図7】摂食状態の模擬胃媒体へのダナゾールカプセルの溶出験の結果を示す。
【
図8】様々な調製時間後のFEDGASpH3における酢酸メゲステロールの溶解プロファイルを示す。
【
図9】精製水で調製したFEDGAS媒体の透過型電子顕微鏡の写真である。
【
図10】粘性ゲル様濃縮物中の生体関連前駆体組成物の凍結破壊透過型電子顕微鏡法の写真である。
【
図11】調製後(左)及び室温で24時間後(右)のFEDGAS pH4.5を示す。
【
図12】Jantratid et. al 2008に従って調製されたミルクを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明の組成物は、様々な量の脂肪を含む食事中の脂肪の量、及び食事の消費後に生じる胃液の物理化学的特性をモデルにした、合成in vitro生体関連濃縮物である。脂肪としては、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、レシチン及び/またはリゾレシチンが挙げられる。「生体関連濃縮物/組成物」(本明細書では「生体関連前駆体濃縮物組成物」とも称する)という用語は、生体関連濃縮物組成物自体が必ずしも胃の生理学的環境を模倣する必要はないことを指す。むしろ、容易に水に分散する生体関連濃縮物は、水性媒体中または水性媒体での希釈、分散または懸濁時に、単純な混合(例えば、マグネチックスターラー)及びいかなる高エネルギーの入力もなく、好都合に信頼できる摂食状態胃媒体を調製することができる。得られた媒体は、0.45マイクロメートルのフィルタで容易に濾過できる安定した均一な脂肪分散液を含む。主に、生体関連媒体は、試験食の消費によって誘発される胃液の生理学的及び物理化学的機能を模倣し、薬物の食物効果を確認するためのin vitro溶解性及び溶出試験のためのものである。
【0061】
実質的に固体/固体様濃縮物は、典型的には、1重量%~10重量%の水または水性媒体を含む。
【0062】
粘性ゲル様濃縮物は、典型的には、10重量%~25重量%の水または水性媒体を含む。
【0063】
脂肪分散液/液体濃縮物は、典型的には、25重量%~70重量%の水または水性媒体を含む。
【0064】
本発明の生体関連前駆体組成物は、典型的には容器内に提供される。典型的には、容器はラミネートされたポーチまたはサシェである。この容器は、ガラス、好適なプラスチックボトル(HDPE、PE、PPなど)(これらに限定されない)、好適な金属ボトル(アルミニウム、ステンレス鋼)であってもよい。典型的には、サシェまたはポーチは、約1g~約1500g、例えば、約5g~約500gの生体関連濃縮物を含む。例えば、最大10kgの容器も使用できる。
【0065】
本発明の生体関連前駆体組成物は、哺乳動物種(例えば、ヒト、イヌ、ウサギ、げっ歯類、マウス、サル、及びブタ)の摂食状態の胃液を所望の生理学的pHで模擬するために、とりわけ、組成物、例えば、水性媒体中での分散、希釈または懸濁時に好適な固体溶出組成物及び/または濃縮緩衝液と共にキット内で提供することができる。
【0066】
キットはまた、例えばガラスマイクロファイバー、PVDF、ナイロンまたはPESから選択される、例えば0.2~1ミクロンの細孔径を有する溶出薬物を含む濾液から未溶出薬物粒子を分離するためのフィルタ及び例えば1~10ミクロンの細孔径を有するプレフィルタを含み得る。
【0067】
本明細書でより詳細に記載されるとおり、本発明の生体関連濃縮物組成物は、トリグリセリド及び/またはジグリセリド及び/またはモノグリセリド、ならびにジアシル化からのレシチン(ジアシルリン脂質)及び/またはリゾレシチン(モノアシルリン脂質)の混合物を含み、水性媒体中に炭水化物及び/または糖アルコールをさらに含む均一に分散した脂肪を含み、濃縮物組成物中の含水量が、1.0重量%~70.0重量%である。
【0068】
本発明の組成物はまた、十二指腸逆流の結果を反映するために、より少量の胆汁酸塩成分(<3.0%)を含み得る。
【0069】
生体関連前駆体組成物は、驚くほど安定しており、生体関連の摂食状態のin vitro胃媒体(FEDGAS)を調製するために再現性がある。予想外で驚くほど堅牢な物理化学的特性の生体関連前駆体を、22℃で9ヶ月を超えて、及び40℃で少なくとも9ヶ月の継続的な安定性試験において濃縮させ、薬物及び(他の)工業用途の再現性のある溶出試験(症例研究2を参照)のために一貫したin vitro摂食状態の胃媒体を作製する方法を示している。
【0070】
媒体の予測的でユーザーフレンドリな特性は、主に一定の物理化学的パラメータ、例えば、粒子径、脂肪成分、緩衝能力、表面張力、浸透圧であり、媒体中の総脂肪対総炭水化物含有量の重量比は、20:1~1:20;あるいはまたは好ましくは15:1~1:15、または10:1~1:10、または5:1~1:5、または2:1~1:2である。
【0071】
In vitroで摂食状態の胃溶出媒体の表面張力は、典型的には30~50mN/mである。
【0072】
In vitro摂食状態の胃媒体は容易に濾過可能であり、実質的に均一なサブミクロン粒子は、一貫して1000nm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは250nm未満、さらにより好ましくは200nm未満、典型的には175nm未満、例えば150nmであり、サイズ分布が狭く、多分散性指数(pdi)が一貫して0.2未満である。一貫した物理化学的特性(例えば、粒子径、狭い分布、表面張力、pH1.5~pH7.5の摂食状態の胃液の生理学的pHでのpH適合性、及び少なくとも6時間の37℃付近の温度安定性)が重要である。
【0073】
特徴的に、溶出媒体は、0.22~10μmの孔径フィルタ、好ましくは0.45~1.0pmを使用して容易に濾過することができる。0.45μmの孔径のGE Healthcare Whatman(商標)GD/Xガラスマイクロファイバー(GMF)シリンジフィルタを使用して、少なくとも20mLの溶出媒体を手動で容易に濾過できる。典型的には、光子相関分光法を使用したZ平均粒子径は、200nm未満であり、典型的には、175nmである。多分散度指数によって反映されるサイズ分布は、一貫して0.2未満である。
【0074】
本発明の生体関連前駆体組成物は、実質的に固体/固体様濃縮物、粘性ゲル様濃縮物、または液体脂肪分散液/濃縮物であり、以下の主成分の群:
i)トリグリセリド及び/またはジグリセリド及び/またはモノグリセリドまたはそれらの任意の組み合わせ(1~70重量%、好ましくは3~70重量%、より好ましくは5~70重量%);
ii)レシチン及び/またはリゾレシチン(1~45重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは1~15重量%);
iii)炭水化物(15~70重量%、好ましくは20~60重量%);
iv)水または他の水性媒体(1~70重量%、好ましくは1~66重量%、好ましくは1~60重量%)のそれぞれから選択される少なくとも1つの主成分であって、
ここで、総脂肪(組み合わせた群i菜種油)及びii)のそれぞれからの1つ以上の主成分):総炭水化物(組み合わせた群iii)の1つ以上の主成分)の重量比は、20:1~1:20、あるいはまたは好ましくは15:1~1:15、または10:1~1:10、または5:1~1:5、または2:1~1:2であり、グリセリド:レシチン及び/またはリゾレシチンの重量比は、45:1~1:45、あるいはまたは好ましくは30:1~1:30、または15:1~1:15、または10:1~1:10、または8:1~1:8、または7:1~1:7、または7:1~1:3である主成分と、
さらに、以下を含むまたは以下からなる群:
(i)脂肪酸(0.01~15重量%、好ましくは0.1~10重量%);
(ii)胆汁酸/塩(0.01~3重量%、好ましくは0.1~1重量%);
(iii)酵素(0.01~2重量%、好ましくは0.1~1.5重量%);
(iv)コレステロール、ステロール(0.01~5重量%、好ましくは0.01~2.5重量%);
(v)緩衝剤(0.01~4重量%、好ましくは0.1~2重量%);
(vi)浸透圧剤(0.01~10重量%、好ましくは1~8重量%);
(vii)タンパク質(コラーゲン、タンパク質加水分解物、アミノ酸)(0.01~30重量%、好ましくは0.1~25重量%);
(viii)ムチン(0.1~5重量%、好ましくは~2.5重量%);
(ix)粘度調整剤(0.1~5重量%、好ましくは0.1~2.5重量%);
(x)防腐剤、安定剤(0.01~3重量%、好ましくは0.1~1.5重量%)、例えば、抗酸化剤、キレート剤、緩衝液(無機または有機)、及び抗菌剤などのうちの少なくとも1つのメンバーから選択される少なくとも1つの追加の成分と、を含む。
【0075】
反対の指示がない限り、すべての重量パーセント(上記及び下記を参照)は、乾燥重量による。
【0076】
グリセリド
本発明の生体関連前駆体組成物は、1重量%~70重量%、好ましくは3重量%~70重量%、好ましくは5重量%~70重量%の量の少なくとも1つのトリグリセリドを含み得る。あらゆる植物または動物の供給源/起源から、あらゆる合成、半合成、または天然のトリグリセリドを使用することができる。トリグリセリドは、関連する温度(15℃~30℃、例えば約20℃)で、液体または固体であり得る。トリグリセリドは、例えば、アボカド油、キャノーラ油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、菜種油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、及びそれらの組み合わせから選択され得る。好ましいトリグリセリドとしては、20℃で液体である油、例えば、ダイズ油(soya oil)(ダイズ油(soybean oil))、オリーブ油及び菜種油、ならびに20℃で固体である油、例えば、ココナッツ油及びパーム油などが挙げられる。最も好ましくは、トリグリセリドは、オリーブ油、アボカド油、パーム油を含む。トリグリセリドは、好ましくは、同じ供給源からの単一の油、または異なる供給源/起源からの組み合わせ油であり得る。6~12個の炭素を有する脂肪酸を含む天然または半合成または合成中鎖トリグリセリド(MCT)は、本発明におけるトリグリセリドの定義の範囲内である。
【0077】
好ましい実施形態では、生体関連溶出媒体の脂肪酸プロファイルは、少なくとも60%のCl8を含むが、異なるタイプの食事の脂肪酸プロファイルと一致させることができる。本発明の生体関連前駆体組成物は、本明細書において定義される少なくとも1つのトリグリセリド成分の部分脂肪分解の生成物を含み得る。
【0078】
生体関連前駆体組成物は、少なくとも1つのジグリセリドをさらに含み得る。任意の好適なジグリセリドは、1重量%~70重量%、好ましくは3重量%~70重量%、好ましくは5重量%~70重量%の量で使用され得る。本明細書において定義される任意のトリグリセリドの脂肪分解の生成物である任意のジグリセリドが使用され得る。典型的には、使用される場合のジグリセリドは、グリセリルジオレエートである。
【0079】
本発明の生体関連前駆体組成物はまた、総グリセリドの1重量%~70重量%、好ましくは3重量%~70重量%、好ましくは5重量%~70重量%の量の少なくとも1つのモノグリセリドを含み得る。さらに、含まれる場合のモノグリセリドの量は、典型的には、総グリセリドの50%を超えないであろう。任意の好適なモノグリセリド;特に、本明細書において定義される任意のトリグリセリドまたはジグリセリドの脂肪分解の産物である任意のモノグリセリドが使用され得る。典型的には、モノグリセリドは、モノオレイン酸グリセリルである。
【0080】
本発明の生体関連前駆体組成物はまた、15重量%以下で少なくとも1つの脂肪酸を含み得る。任意の好適な脂肪酸、特に、本明細書において定義される任意のトリグリセリド、ジグリセリドまたはモノグリセリドの脂肪分解の生成物である任意の脂肪酸が使用され得る。典型的には、脂肪酸はオレイン酸である。
【0081】
レシチン及びリゾレシチン
レシチンの説明は、とりわけ、例えば、糖脂質、脂肪酸、トリグリセリドなどの中性脂質とともに、レシチンの主要成分群であるリン脂質を包含することが理解されるべきである。リン脂質は主にホスファチジルコリン(PC)を含む。リン脂質/レシチンの純度は、従来、混合物中のPCの量に関連している。この混合物は、一例として、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンなどのホスファチドも含み得る。
【0082】
リン脂質(レシチン)は、ツインの炭化水素テールを有し、ジアシルリン脂質として識別される。この分子は、炭化水素鎖を1つのみ有することもでき、モノアシルリン脂質として識別され得る。モノアシルリン脂質は、一般にリゾレシチンとして公知である。レシチン及びリゾレシチンの炭化水素鎖は、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン及びジミリストイルホスファチジルグリセロールで飽和され得、及び/または不飽和であり、例えば、ジオレオイルホスファチジルコリンであり得る。レシチン及びリゾレシチンはさらに、水素化レシチン及びリゾレシチン、例えば水素化ダイズレシチンを含む。レシチン及びリゾレシチンは、合成的、半合成的であり得るか、またはこれらに限定されないが、大豆、卵、カノーラ、菜種、ヒマワリ、もしくは魚など、任意の野菜または動物源から得ることができる。
【0083】
本発明の生体関連前駆体濃縮物組成物は、記載されているとおり、1つ以上のリン脂質及び/または1つ以上のリゾリン脂質を含む。任意の好適なレシチン(リン脂質)及び/またはリゾリン脂質(リゾレシチン)は、天然、半合成、または合成の供給源から使用することができる。荷電リン脂質は、分散した脂肪凝集体の安定性を向上させ得る。リン脂質(レシチン)は、主にホスファチジルコリン(PC)、ならびに少量のホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)を含む。リゾリン脂質(リゾレシチン)は、主にリゾホスファチジルコリン、ならびに少量の他のホスファチドのモノアシル誘導体を含む。
【0084】
生体関連前駆体濃縮物組成物は、1~45重量%、好ましくは1~30重量%、好ましくは1~15重量%のレシチン及び/またはリゾレシチンを含むリン脂質含有量を有する。
【0085】
この混合物のうち、PCは、広く15重量%~99重量%であり得る。LPCは、0.5重量%~85.0重量%であり得る。30.0%~95.0%のPC及び2.0%~70.0%のLPCを含むリン脂質が好ましい。本発明において、レシチン及びリン脂質という用語は同義であり、以下を含む:
(i)混合物中のレシチンとリゾレシチンの両方またはリン脂質及びリゾリン脂質、
(ii)レシチン(リン脂質)またはリゾレシチン(リゾリン脂質)のいずれか単独。
レシチンとリゾレシチンとを合わせた量は、30重量%~98重量%である。
【0086】
炭水化物
本発明の生体関連前駆体濃縮物組成物は、少なくとも1つの炭水化物及び/または糖アルコールを含む。それ自体が糖類(一般に糖質として公知である)などの任意の好適な炭水化物、及び/または好適な糖アルコールも使用することができる。例えば、糖類/糖質は、単糖類のリスト、例えば、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、リボースなど、二糖類のリスト、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロースなど、または単糖類と二糖類との組み合わせから選択され得る。
【0087】
糖アルコールは、マンニトール、ラクチトール、ソルビトール、及びキシリトールなどから選択され得る。本明細書における糖アルコールという用語は、グリセロールなどのポリオールを含む。
【0088】
好ましい濃縮物は、それ自体が糖質、及び/またはグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、エリスリトール、マルチトール、イソマルトール、マンニトールまたはキシリトールから選択される糖アルコールを含む。糖質(複数可)及び/または糖アルコール(複数可)の組み合わせも使用できる。
【0089】
糖類(糖質)、糖アルコール、及びそれらの好適な比率の組み合わせを含む炭水化物成分の主成分群は、例えば、グルコース(単糖)、フルクトース(糖アルコール)、スクロース(二糖)、デキストリンまたはデンプン(多糖)の組み合わせであり得、本発明の生体関連前駆体濃縮物に、0.86未満、好ましくは0.70未満の水分活性を提供し、それにより微生物成長が阻害され、10未満のCFUで、前駆体濃縮物の優れた長期保存をもたらす(表2)。固体/固体様濃縮物の場合、水分活性も0.7未満である。水分活性は、生体関連のin vitro溶出試験及び摂食状態の胃液の模擬の分野において、本発明によって提供される産業上の利用可能性及び利益のためのパラメータである。
【0090】
【0091】
水分活性が0.86を超えるか、またはCFU数が、例えば10CFU/gを超える場合、前駆体濃縮物組成物の微生物負荷は、例えば、これらに限定されないが、低温殺菌、UHT、無菌濾過、蒸気殺菌によって低減され得る。
【0092】
本発明の生体関連前駆体濃縮物は、これらに限定されないが、消化可能であるかまたは非消化性であり得るオリゴ糖及び/または多糖などの粘度調整剤をさらに含み得る。例えば、多糖類は、でんぷん、加工でんぷん、デキストリン、セルロース、ポリデキストロース、ペクチン、ガラクトマンナン、アルギン酸塩など、及び/または半合成型、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサンなどであり得る。
【0093】
本発明の前駆体濃縮物は、20:1~1:20、好ましくは15:1~1:15、好ましくは10:1~1:10、好ましくは5:1~1:5、好ましくは2:1~1:2の範囲内の総脂肪:炭水化物比を含む。
【0094】
容易に水に分散する前駆体濃縮物が水性媒体で希釈または分散されるとき、得られるin vitro生体関連摂食状態の胃溶出媒体での比が維持される。
【0095】
脂肪酸
本発明の生体関連前駆体濃縮物は、遊離脂肪酸、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、リノール酸、ステアリン酸及びパルミチン酸ならびにそれらの塩をさらに含む追加の成分を含み得る。
【0096】
胆汁酸塩
本発明の生体関連前駆体濃縮物は、追加の成分、例えば、胆汁酸塩を含み得る。任意の好適な胆汁酸塩を使用できる。好適な胆汁酸塩としては、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ウルソデオキシコール酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸ナトリウム、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム、ナトリウムグリコケノデオキシコール酸、コリルサルコシン酸ナトリウム、N-メチルタウロコール酸ナトリウム及びそれらの遊離酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、胆汁酸塩は、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、及びグリココール酸ナトリウムから選択される。より好ましくは、胆汁酸塩は、タウロコール酸ナトリウムである。
【0097】
緩衝液
本発明の生体関連前駆体濃縮物は、緩衝剤及び浸透圧剤を含み得る。しかし、緩衝剤、好ましくは緩衝濃縮物または溶液は、生体関連濃縮物組成物またはin vitro生体関連摂食状態の模擬溶出媒体に組み込まれる/添加される。より好ましくは、緩衝剤は、3~60倍、好ましくは5~40倍、より好ましくはl5~30倍の希釈を必要とする希釈可能な濃縮物を使用して添加される。
【0098】
緩衝濃縮物は、生体関連濃縮物組成物に組み込まれ得る。あるいは、生体関連濃縮物組成物を逆の順序で緩衝濃縮物に組み込んで、必要なpH(pH1.5~pH7.5)、緩衝能力(5~100、好ましくは10~30、15~30mM/ΔpH)でin vitro摂食状態溶出媒体を提供することができる。
【0099】
さらに、精製水を、生体関連濃縮物及び希釈可能な緩衝濃縮物を含む混合物に添加して、溶出試験に必要なpH1.5~pH7.5の標的pHで本発明のin vitro摂食状態溶出媒体を調製し得る。生体関連前駆体濃縮物組成物、(ii)緩衝濃縮物、及び(iii)精製水は、in vitro溶出試験に必要なpHでin vitro摂食状態の胃溶出媒体を調製するために任意の順序で添加/組み合わせることができる。
【0100】
緩衝濃縮物
緩衝液及び浸透圧剤(塩化ナトリウム)を精製水に溶出することにより、適切な量の塩化ナトリウム、クエン酸及びクエン酸ナトリウム(表6からの量)を含む希釈可能な25倍緩衝濃縮物を調製した。
900mLのin vitro試験媒体は、
1)36.8gの25倍緩衝濃縮物(pH3)を好適な容器に量り入れることと、
2)732.6gの精製水を添加することと;
3)FEDGASゲル153.0gを添加すること;
4)分散液が完全に均一になるまで撹拌すること、によって調製され得る。
得られたin vitro試験媒体は、pH3.0を有し、緩衝能力は、典型的には22mM/ΔpHである。
【0101】
緩衝濃縮物及び生体関連前駆体濃縮物組成物は、別個の容器に入れ、in vitro摂食状態の胃媒体を調製するために記載された方法で組み合わせる。
【0102】
2つの別個の容器は、とりわけ、in vitro溶解性及び溶出試験を実施するためのフィルタと共にキット内に含まれ得る。
【0103】
任意の好適な緩衝剤を使用することができる。好適な緩衝剤としては、一塩基性リン酸ナトリウム;酢酸;塩酸;マレイン酸;クエン酸;乳酸;一塩基性リン酸カリウム;クエン酸三ナトリウム;酢酸ナトリウム三水和物;イミダゾール;炭酸ナトリウム;炭酸水素ナトリウム;カコジル酸ナトリウム;ナトリウムバルビタール;リン酸塩、例えば、Na2HPO4、NaH2PO4、K2HPO4及びKH2PO4など;及び水酸化ナトリウムから選択される、少なくとも1つの無機緩衝剤、ならびに/または2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、ビストリスメタン(ビストリス);2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)-(カルボキシメチル)アミノ]酢酸(ADA);N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES);ビス-トリスプロパン1,3-ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン;ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES);2-(カルバモイルメチルアミノ)エタンスルホン酸(ACES);2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO);塩化コラミン;塩化コラミン塩酸塩;3-モルホリノプロパン-1-スルホン酸(MOPS);N N-ビス2-ヒドロキシエチル-2-アミノエタンスルホン酸(BES);2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸(TES);2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES);[3-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸](DIPSO);[3-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸]MOBS;アセトアミドグリシン;3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸(TAPSO);2,2’,2’’-ニトリロトリス(エタン-1-オール)(TEA);ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO);4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO);4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸(HEPPS);N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン);トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス);グリシンアミド;グリシン;グリシルグリシン;ヒスチジン;N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(4-ブタンスルホン酸)(HEPBS);2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸(ビシン);[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパンスルホン酸(TAPS);2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMPB);2-(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES);β-アミノイソブチルアルコール(AMP);N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO);3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、CAPSO遊離酸(CAPSO);3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸(CAPS);及び4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸(CABS)から選択される少なくとも1つの有機緩衝剤が挙げられる。
【0104】
浸透圧剤
浸透圧剤は、溶出媒体の浸透圧を調整して、例えばFDA食などの食事後の摂食状態の胃液の浸透圧を模擬するために含まれている。浸透圧剤としては、これらに限定されないが、典型的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩酸、及び水酸化ナトリウム(それらを組み合わせたものなど)が挙げられる。炭水化物及び緩衝液も、in vitro溶出媒体の全体的な浸透圧に寄与し得る。浸透圧剤は、生体関連前駆体濃縮物組成物に、または好ましくは緩衝濃縮物に組み込まれ得る。摂食状態溶出媒体の浸透圧範囲は、200~800mOsm/L、典型的には300~600mOsm/Lである。食後、胃の中の高脂肪食の胃液の浸透圧は、通常、低脂肪食後よりも高くなる。さらに、浸透圧は、食物内容物及び摂食した胃中での滞留時間によって影響を受ける可能性がある。本発明のin vitro摂食状態の胃媒体中で模擬できるin vivo摂食状態の胃液の浸透圧は、典型的には400~550mOsm/Lである。
【0105】
酵素
所望の場合、追加の成分、例えば胃リパーゼ及び/またはペプシンなどの酵素を、濃縮物ではなく実際の溶出媒体に添加し得る。
【0106】
防腐剤及び安定剤
抗酸化剤の例としては、これらに限定されないが、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE及びエステル、カロテノイド、ビタミンAが挙げられる。キレート剤としては、これらに限定されないが、ジメルカプロール、EDTA二ナトリウム、デスフェリオキサミン、クエン酸塩が挙げられる。緩衝液(無機または有機)は、緩衝液のセクションに記載されているとおりである。抗菌剤としては、これらに限定されないが、チメロサール、アジ化ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ソルビン酸が挙げられる。
【0107】
1つの好ましい生体関連前駆体濃縮物組成物において:
i)少なくとも1つのトリグリセリドは、ダイズ油、オリーブ油、菜種油、ココナッツ油、アボカド油及びパーム油から選択され;
ii)少なくとも1つのジグリセリドは、グリセロールジオレエート、グリセロールジステアレート、グリセロールジラウレート及びリノール酸ジグリセリドから選択され;
iii)少なくとも1つのモノグリセリドは、モノオレイン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセロール、及びリノール酸モノグリセリドから選択され、
iv)レシチン及び/またはリゾレシチンから選択される少なくとも1つの成分は、少なくとも40%のリン脂質及び/または少なくとも40重量%のリゾリン脂質を含み;
vi)少なくとも1つの糖質及び/または糖アルコールは、グルコース及びフルクトース及び/またはソルビトールを含み;
vii)少なくとも1つの多糖類は、デンプン、加工デンプン及び/またはデキストリンを含み、
ここで、総脂肪:総炭水化物比は、20:1~1:20、好ましくは15:1~1:15、好ましくは10:1~1:10、好ましくは5:1~1:5、好ましくは2:1~1:2であり;さらに、グリセリド:レシチン及び/またはリゾレシチンの比は、45:1~1:45、好ましくは30:1~1:30、好ましくは15:1~1:15、好ましくは10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8、好ましくは7:1~1:7、好ましくは7:1~1:3である。
【0108】
特に好ましい生体関連前駆体組成物において:
i)少なくとも1つのトリグリセリドは、オリーブ油を含み;
ii)少なくとも1つのジグリセリドは、グリセロールジオレエートを含み;
iii)少なくとも1つのモノグリセリドは、グリセロールモノオレエートを含み;
iv)レシチン及び/またはリゾレシチンから選択される少なくとも1つの成分は、少なくとも15重量%のホスファチジルコリン(PC)及び/または少なくとも0.5%のリゾホスファチジルコリン(LPC)を含み;
vi)少なくとも1つの糖質は、グルコース、及びフルクトース、及びスクロースを含み;vii)少なくとも1つの多糖類がデキストリンを含み、
ここで、脂肪:炭水化物の総量は、20:1~1:20、好ましくは15:1~1:15、好ましくは10:1~1:10、好ましくは5:1~1:5、好ましくは2:1~1:2であり;さらに、グリセリド:レシチン及び/またはリゾレシチンの比は、45:1~1:45、好ましくは30:1~1:30、好ましくは15:1~1:15、好ましくは10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8、好ましくは7:1~1:7、好ましくは7:1~1:3である。
【0109】
本発明の生体関連前駆体組成物の変形は、所望の物理化学的に、特に、組成物の脂肪含有量を満たすために行われ得、例えば標準的なFDA高脂肪食の変形であり得る。
【0110】
標的脂肪値を有する食事後にモデル化された摂食状態の胃媒体を模擬する溶出媒体を調製するために、濃縮物中の総脂肪及び炭水化物含有量を調整し、選択することは、本発明の範囲内である。
【0111】
典型的には、組成物の含水量は、1.0%~25.0%で制御されて、実質的に固体/固体様及びゲル様液体濃縮物のいずれかを形成する。蒸発による水の除去は、例えば、真空支援、またはフリーズドライ、例えば、凍結乾燥によるものであり得る。
【0112】
本発明の組成物中の胆汁酸塩(複数可)の含有量は、十二指腸から逆流した腸液の量に基づく。存在する場合、本発明の組成物中の胆汁酸塩の量は、3.0重量%未満、典型的には1.0重量%未満である。
【0113】
限定するものではなく、一例として、以下は本発明を説明する典型的な例である。濃縮物組成物の典型的な例を、典型的な成分の範囲と共に表3に示す。組成物は、混合物中のPC含有量(純度)が異なるレシチン及び/またはリゾレシチンを含み得る。
【0114】
生体関連濃縮物の粘性ゲル様前駆体の凍結破壊を
図10に示す。
【0115】
実際の溶出媒体の例を表8に示す。
【0116】
【0117】
表3に示す生体関連濃縮物組成物から調製されたin vitro溶出媒体の調製及び組成。
【0118】
本発明の生体関連前駆体濃縮物中の総脂肪の量は、典型的には、前駆体を水性媒体に分散、希釈、または懸濁して生体関連媒体を得る場合に、0.5%~20%w/vの脂肪濃度が得られるようなものである。
【0119】
より典型的には、生体関連前駆体濃縮物中の脂肪の量は、高脂肪及び低脂肪量のFDA推奨標準食の変形をモデルにした生体関連媒体を得るために前駆体組成物を水性媒体に分散、希釈、または懸濁した場合、脂肪濃度が、4.0%w/v~20.0%w/v、好ましくは5%~15%w/v、好ましくは6%~10%w/vが得られるようなものである。さらに、脂肪の量及び使用量は、他の変形、すなわち中脂肪、低脂肪の変化形態を考慮に入れるために調整され、選択され得、最大15%の超高脂肪含有量及び0.1%までの超低脂肪含有量は、本発明の範囲外ではない。
【0120】
表3は、本発明による典型的な濃縮物組成物の主成分を示している。所望のin vitro試験媒体の可変脂肪含有量は、成分を選択し、表3の量を調整することによって得ることができ、これによって、薬物及び医薬品のin vitro溶出、溶解性及び安定性試験のための試験媒体の希釈及び調製のための濃縮組成物を提供する。In vitro溶出媒体での試験はまた、胃の生理学的pHでの脂肪含有量による、または脂肪を含む飲料/ドリンク、例えば全脂肪乳または還元脂肪乳を含む茶からの薬物及び医薬品に対する潜在的な食物効果を評価する。
【0121】
前駆体組成物の典型的な製造方法
ステップ1
【0122】
次の成分を計量して、好適な反応器または処理容器に入れる。
-精製水66kg
**安定剤0.8kg
**任意
【0123】
好適な反応器としては、これらに限定されないが、蒸発器、薄膜蒸発器、マイクロ波、任意により真空支援が挙げられる。溶液を50~10000RPM、好ましくは50~2000RPM、好ましくは50~500RPMで撹拌し、15~80℃、好ましくは30~80℃、より好ましくは40~70℃に維持する。
ステップ2
【0124】
ステップ1の溶液が均一になったときに、次の成分を添加する:
***レシチン4.50kg
-胆汁酸塩0.16kg
***レシチン及び/またはリゾレシチン。
【0125】
ステップ2の懸濁液は、15~80℃、好ましくは40~70℃の温度で、50~30000RPM、好ましくは100~10000RPM、好ましくは200~5000RPMで撹拌される。すべての成分が完全に水和するまで、軽い真空を維持する。
ステップ3
【0126】
ステップ2の懸濁液が均一な場合、次の成分を添加する:
****グリセリド28kg
****トリグリセリド
ステップ4
【0127】
ステップ3の懸濁液は、15~80℃、好ましくは30~80℃、好ましくは40~70℃の温度で、50~30000RPM、好ましくは100~10000RPM、好ましくは200~5000RPMで撹拌される。すべての成分が完全に混合するまで、軽い真空を維持する。約0.5~5ミクロンの粒子径を有する均一な脂肪分散液が得られる。
ステップ5
【0128】
ステップ4の脂肪分散液は、高剪断ミキサー、高圧、マイクロフルイダイザー、超音波または任意の他の適切な高エネルギーホモジナイザーから選択されるホモジナイザーを使用してさらに処理され得る。
【0129】
ステップ5の均質化された脂肪分散液及び表4に示す成分の99.5kg(収量)が、1000nmのZ平均直径、典型的には約500nm未満で得られる。
【0130】
均質化された脂肪分散液は、好適な貯蔵タンクまたは容器に移される。
【0131】
【0132】
以下の成分、ステップ1で反応器に添加する。
炭水化物***22.10kg
デキストリン1.16kg
***転化糖
【0133】
溶液を撹拌し、20~80℃、典型的には50~70℃で加熱する。蒸発を開始するために、典型的には10~1000、好ましくは50~200ミリバールの真空を加える。この段階での含水量は、1~70重量%、典型的には、15~30重量%である。
ステップ7
【0134】
以前に貯蔵タンクに保存された均質化された脂肪分散液は、反応器に連続して添加する。脂肪分散液は、真空蒸発速度が10~1000mbarであるように、0.1~10 l/分、例えば、0.1~5 l/分の制御された流速で添加する。均質化された脂肪分散液の連続添加中、好適な反応器内の混合物の含水量は、5%~70%であり、好ましくは10~40%に維持される。
【0135】
ステップ7の終了時に、濃縮物組成物は、目標とする含水量に応じて(一般に、1~70重量%、表5に示す粘性ゲル様濃縮物の場合は10%~25%である)、実質的に固体/固体様濃縮物、実質的にゲル様濃縮物、または液体脂肪分散液/濃縮物の形態である。固体/固体様濃縮物の場合、含水量は、典型的には、1.0%~10.0%であり、脂肪分散液/液体濃縮物の場合、含水量は25%~70%である。
【0136】
【0137】
前駆体組成物の包装
ステップ7で得たゲル様濃縮物/組成物は、好適な容器に充填する。この容器は、サシェ、ポーチ、好適なプラスチックボトル(HDPE、PE、PPなど)(これらに限定されない)、好適な金属ボトル(アルミニウム、ステンレス鋼など)であってもよい。
【0138】
組成物は、好ましくは、真空下でパックされるか、または不活性ガスブランケット、例えば窒素下で密封させる。
【0139】
ゲル様濃縮物は、単回投与用容器または複数回投与用容器、例えば、容量が最大10kgの好適な容器に充填及び/またはパックすることができる。
【0140】
生体関連媒体の調製
合成水性生体関連媒体は、製造方法に記載されているとおり、表5の生体関連ゲル様組成物/濃縮物に水性媒体を添加することによって得られる。水性媒体は、例えば、精製水、緩衝液を含む水性媒体、浸透圧成分を含むが、これらに限定されない。実施例に示すクエン酸塩緩衝液は、他の組み合わせ、例えば、pH5の酢酸緩衝液及びpH3のリン酸緩衝液で置き換えることができる。追加の成分、例えば胃リパーゼなどの酵素もまた、本発明の溶出組成物中の浸透圧剤及び緩衝液と共に存在し得る。
【0141】
典型的には、生体関連溶出媒体は、表5の濃縮物から次のように調製し、例えば、高脂肪FDA食用の900mlの媒体を作製する:
1-約600gの水及び所望のpHに好適である緩衝液成分を容器に添加する。
2-表5に示す152.3gの濃縮物を容器に添加する。
3-残りの精製水(水の総量763.62g)を添加して、容量を補う。
4-マグネチックスターラーを加えて、すべての成分が完全に混合されるまで撹拌したままにする。
5-pH4.5を確認する。
【0142】
表6、表7、及び表8の次の典型的な例は、上記の調製方法を使用して、得ることができる。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
表9Aに示すとおり、溶出媒体は、個々の成分を別々に緩衝液に量り取り、次に均質化することによって調製することもできる。
【0147】
【0148】
表9Bに示す生体関連溶出媒体は、例えば、900mlの低脂肪FDA食の媒体を作製するために以下のように調製される。
1-約600gの水及び所望のpHに好適である緩衝液成分を容器に添加する。
2-表5の76.15gの濃縮物を容器に添加する。
3-残りの精製水を添加して容量を補う(合計889gの水を添加する必要がある)。
4-マグネチックスターラーを加えて、すべての成分が完全に混合されるまで撹拌したままにする。
5-pH4.5を確認する。
【0149】
【0150】
表10に示す生体関連溶出媒体は、例えば、900mlの二重高脂肪FDA食の媒体を作製するために以下のように調製される。
1-約500gの水及び所望のpHに好適である緩衝液成分を容器に添加する。
2-表5の304.59gの濃縮物を容器に添加する。
3-残りの精製水を添加して容量を補う(合計610.33gの水を添加する必要がある)。
4-マグネチックスターラーを加えて、すべての成分が完全に混合されるまで撹拌したままにする。
5-pH4.5を確認する。
【0151】
表10の次の典型的な例は、上記の調製方法を使用して得たものである。
【0152】
【0153】
表11は、以前に調製した媒体の典型的な物理化学的特性を示す。
【0154】
【0155】
摂食状態の胃液を模擬するための生体関連溶出媒体
表5のすべての成分を所定量の水と組み合わせて、生体関連溶出媒体の目標含有量を得ることにより、生体関連溶出媒体を初めから作製することもできる。この媒体の脂肪含有量は、表5で使用される濃縮物の量と溶出試験での薬物の用量に応じて、500mlの媒体(USP溶出装置2)で20~100グラムの範囲で変動し得る。親油性成分が水性媒体に溶出するかまたは懸濁する前または後に、緩衝塩及び追加の成分を添加することができる。
【0156】
しかし、最初から作製された溶出媒体は、濃縮物の安定性及び保存特性を有していない。したがって、最初から調製した媒体は、微生物学的、物理的、及び化学的腐敗を起こしやすいため、24時間以内に使用する必要がある。これにより、信頼性、一貫性、及び再現性の観点から、溶出媒体としての目的に好適でなく、適合しなくなる。
【0157】
症例研究
以下に報告される症例研究は、医薬品に対する胃内の食物効果を評価する際の本発明の有用性を実証している。
【0158】
1から4の症例研究では、pH6、pH5、及びpH3のFEDGAS媒体は、好適な容器に適切な量の精製水を添加すること、対応する緩衝濃縮物を添加すること、適切な量の生体関連前駆体濃縮物を添加すること、及び均一になるまでマグネチックスターラーで混合することによって調製した。
【0159】
症例研究1-エキセメスタン(25mg)錠の溶出(商品名:アロマシン、難溶性中性化合物即時放出製剤)
表5の組成物を使用して、pH6、pH5及びpH3の3つの生体関連摂食状態胃媒体を生成した。
【0160】
これらの3つのpHでの媒体は、pH、緩衝能力、粒子径(Z平均及びNanosizerを使用した多分散性)及び表面張力(Kruss表面張力K6)を測定することによって特徴を明らかにした。
【0161】
媒体は、時間ゼロで安定し、24時間後に物理的に安定した。同様に、主要な物理化学的特性は、24時間後も変化しなかった。
【0162】
媒体でのエキセメスタン(4錠x25mg錠)の溶出は、USP2溶出装置を使用して75rpm(n=6容器)で実施した。3つの生体関連媒体のサンプルを溶出容器から採取し、プレフィルタ付きの0.45マイクロメートルナイロンフィルタで5分、10分、15分、20分、25分、30分、45分、60分、90分、及び120分で濾過し、HPLCによりエキセメスタン含有量を分析した。
【0163】
【0164】
エキセメスタンの中性化学構造と一致して、見られるように、エキセメスタンは異なるpHに対して感度は低く、3つの溶出プロファイルは非常に類似していた。30分以内に、薬物の80%以上が3つの媒体に溶出した。
【0165】
症例研究2-40℃で9ヶ月間保存された摂食状態の模擬胃濃縮物
生体関連濃縮物は22℃及び40℃で9ヶ月間保存し、症例研究1の研究を、保存された前駆体濃縮物から調製し媒体で繰り返した。新鮮な前駆体濃縮物及び保存された前駆体濃縮物の水性媒体への分散の容易性は、非常に類似していた。
【0166】
予期せぬことに、3つのpHでの試験媒体の溶出プロファイルは、媒体が新たに作製された前駆体濃縮物から調製された場合と同じであることがわかった。
【0167】
症例研究3-シンナリジン(塩基性薬物)の溶出
スチュゲロン(15mgのシンナリジン即時放出錠剤)の溶出を絶食胃媒体(対照実験)で試験し、前述と同じ溶出設定を使用して、pH6、pH5、及びpH3で摂食胃媒体と比較した。
【0168】
【0169】
絶食胃媒体中のこの医薬品の溶出プロファイルは、この塩基性薬物シンナリジンが絶食胃内で急速に溶出することを示している。この対照実験は、30分以内に薬物の90%近くが溶出することを示している。
【0170】
対照的に、
図3に示すとおり、この塩基性薬物は、すべての摂食状態胃媒体中でより遅い薬物溶出を呈する(pH6からpH3までのpH範囲で)。シンナリジンの溶出は、より低いpHでより速くなる傾向もある(すなわち、模擬摂食状態の媒体における薬物のより長い滞留時間で、溶出速度が上昇する)。胃が空になる終わりに向かって、胃液のpHを反映する。
【0171】
これらのin vitro溶出プロファイルは、モデリングソフトウェアと共にさらに使用して、胃内での薬物の挙動、及び胃が空になったときに薬物(溶出または懸濁)が小腸に提示される方法をより適切に模擬できる。小腸液(摂食及び絶食)での溶出プロファイリングと組み合わせて、これらの入力は、医薬品のより効率的な開発につながるin vitro in vivo相関のより正確な予測となり得る。
【0172】
症例研究4-メフェナム酸(酸性薬物)の溶出
メフェナム酸硬ゼラチンカプセルの溶出は、絶食状態胃媒体(対照)で実施し、症例研究1の設定及び方法を使用して記載したとおり、pH6、pH5、及びpH3で生体関連摂食状態胃媒体と比較した。
【0173】
図4を参照すると、絶食状態胃媒体での溶出は、2時間の溶出後でも無視できる。2時間の溶出後でも、薬物用量の0.1%未満が溶出する。
【0174】
絶食状態胃媒体とは明確に対照的に、生体関連摂食状態胃媒体では、メフェナム酸の溶出がかなり急速に進行する(
図5を参照)。溶出は、それぞれ、pH6(FDA高脂肪食摂取直後の摂食条件を模擬)、pH5(FDA高脂肪食摂取後約1~3時間の摂食条件を模擬)及びpH3(FDA高脂肪食摂取後約4~5時間の摂食条件を模擬)の摂食状態胃媒体で30分以内に剤形の約45%、25%、及び10%に達する。
【0175】
症例研究5-ダナゾールカプセル酸(中性薬物)の溶出
ダナゾール(100mg)硬ゼラチンカプセルの溶出は、絶食状態胃媒体(対照)で実施し、症例研究1の設定及び方法を使用して記載したとおり、pH6、pH4.5、及びpH3で生体関連摂食状態胃媒体と比較した。
【0176】
図6を参照すると、絶食胃媒体での溶出は、2時間の溶出後でも無視できる。2時間の溶出後でも、薬物用量の0.2%未満が溶出する。
【0177】
絶食状態胃媒体とは明確に対照的に、生体関連摂食状態胃媒体では、ダナゾールの溶出がかなり急速に進行する(
図7を参照)。溶出は、それぞれpH6、pH4.5、及びpH3の摂食状態胃媒体で、60分以内に剤形の約55%に達する。
【0178】
症例研究6-酢酸メゲステロールカプセルの溶出と共に室温で72時間保存されたFEDGAS溶出媒体の物理化学的特性の調査
pH6、pH4.5、及びpH3のFEDGAS媒体は、好適な容器に適切な量の水を添加すること、対応する緩衝濃縮物を添加すること、適切な量の容易に水に分散する生体関連前駆体濃縮物を添加すること、及び均一になるまでマグネチックスターラーで混合することによって調製した。3つの媒体を室温で最大72時間保存した。容器内の900mLの媒体中の酢酸メゲステロールカプセル(160mg)を使用して、媒体調製を行った後、t=0、t=24時間、t=48時間、及びt=72時間での各媒体への溶出。溶出試験の結果を
図8に示す。FEDGAS pH6及びFEDGAS pH3のpH、緩衝能力、表面張力、及び粒子径(Z平均)をt=0及びt=72時間で測定した。結果を表12に示す。
【0179】
結果は、4つの時点での3つの媒体すべての酢酸メゲステロール硬ゼラチンカプセルの溶出プロファイルが同一であることを示している。この試験では、3つの媒体が3日間の保存後にエージングしなかったことを示している。t=72時間でのpH、緩衝能力、表面張力、及び粒子径は、t=0時間での値に近かった。
【0180】
【0181】
本発明は、in vitro溶出及び溶解性試験のために、前駆体濃縮物から模擬媒体を得る生体関連溶出組成物及び方法を提供する。模擬胃媒体は、高脂肪食及び低脂肪食及び代替食の消費後の胃内容物をモデル化し、さらに高い脂肪(最大200gの脂肪)及びさらに低い脂肪量(1gの脂肪)を含んでいる。本発明は、絶食状態媒体と共に摂食状態生体関連試験の実際的な必要性を満たし、これにより、FDA標準食後の薬物に対する食物効果などの食事摂取後のより正確なin vitro評価が可能になる。食物への効果には、例えば、1gの脂肪を含む模擬胃液(FEDGAS)での医薬品のin vitro溶出試験も含み、この脂肪は、例えば、1杯のミルクティーに含まれており、in vitro-in vivo相関関係の改善が裏付けられる。特に、薬物化合物、経口剤形などの薬理学的に活性な/関連する物質の特徴を明らかにするために、従来技術の媒体ではなく、生体関連媒体を使用することは、説得力があり、有利である。さらに、胃の中の食物の効果を調べることは、例えば、鉛の最適化及び一般的な製剤の開発において、薬物の特徴を明らかにする実際の必要性を満たし、それによって費用及び時間の節約につながる。
【0182】
本発明は、予想外に安定で、容易に水に分散する生体関連濃縮物組成物を提供する。生体関連濃縮物及び緩衝濃縮物組成物を使用して、例えば高脂肪から低脂肪のFDA食の消費後の摂食状態胃液を模擬する、容易に濾過可能で驚くほど安定な生体関連試験媒体を製造することができる。これにより、本発明は明らかに有利であり、産業上の利用可能性を有する。提唱された摂食状態の模擬胃液は、薬物及び医薬品のプロファイリングのための生体関連の溶出及び溶解性の試験に使用することができる。