(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】仕分けシステム、移動ロボット、仕分けシステムの運転方法、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20241101BHJP
B65G 1/137 20060101ALI20241101BHJP
B23Q 7/12 20060101ALN20241101BHJP
【FI】
B25J5/00 C
B65G1/137 A
B23Q7/12
(21)【出願番号】P 2021571005
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2020065599
(87)【国際公開番号】W WO2020245339
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-11-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/064977
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503168692
【氏名又は名称】バイストロニック レーザー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルガー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パラジネッツ アレクサンドル
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】刈間 宏信
【審判官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-39230(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0072931(US,A1)
【文献】特開2001-179373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00 B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース加工機(L)、特にレーザ切断機の形態であるシートワークピース加工機で加工されたワークピース(W)の加工済みパーツ(P)を仕分けするためのインタラクティブな自
律型脚式移動ロボット(MR)群を構成する脚式移動ロボット(MR)であって、
移動ロボット(MR)を制御するための制御命令を供給するように構成された制御ユニット(DCU,CCU)であって、作業台(WT)から加工済みパーツ(P)を把持し、把持した加工済みパーツ(P)を協力して目的地に輸送するために、前記自
律型脚式移動ロボット(MR)群を構成する各移動ロボット(MR)においてローカルに、当該移動ロボット(MR)のためのロボット固有の制御命令のセットが自律的に生成される、制御ユニット(DCU,CCU)と、
前記自
律型脚式移動ロボット(MR)群の他の移動ロボット(MR)との協調ナビゲーション用の第1のセンサ(S1)と、グリッピング用の第2センサ(S2)とを含むセンサシステム(S)と、
他の移動ロボット(MR)との通信のための、ネットワーク(NW)に対するネットワークインタフェース(NWI)と、
把持した加工済みパーツ(P)を
互いに異なる複数の目的地向けに仕分けするために移動ロボット(MR)を移動させる複数の歩行脚(L)と、
作業台(WT)から少なくとも1つの加工済みパーツ(P)を把持する把持ユニット(GU)と、
を備えることを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の脚式移動ロボット(MR)であって、
前記複数の歩行脚(L)は、少なくとも4本の脚(L)から構成され、
各脚(L)に一組の様々なツールが設けられることができる、
ことを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項3】
請求項2に記載の脚式移動ロボット(MR)であって、
前記複数の歩行脚(L)の少なくとも一部は、移動ロボット(MR)を移動させ、移動ロボット(MR)を安定した位置に固定するように構成される、
ことを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の脚式移動ロボット(MR)であって、
前記複数の歩行脚(L)のうちの少なくとも1つに設けられた、作業台(WT)上で移動ロボット(MR)を安定した位置に確実に位置決め及び/又は固定するために、作業台(WT)のグレーチング状支持要素(E)の歯部に係合するためのクランプ手段(Cl)を備える、
ことを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項5】
請求項1に記載の脚式移動ロボット(MR)であって、
前記把持ユニット(GU)は、サクションカップ(SC)、特に真空サクションカップを含む、
ことを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の脚式移動ロボット(MR)であって、
移動ロボット(MR)のセンサシステム(S)は、光学センサ式ビジョンシステム(OSV)を備える、
ことを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の脚式移動ロボット(MR)であって、
制御ユニット(DCU,CCU)は、加工済みパーツ(P)を把持している状態で移動ロボット(MR)の重心を計算し、移動ロボット(MR)の傾き/傾斜を回避するための傾き回避制御命令を供給するように構成される、
ことを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の脚式移動ロボット(MR)であって、
充電ポート(CP)、好ましくはワイヤレス充電ポートを備える、
ことを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項9】
ワークピース加工機(L)、特にレーザ切断機の形態であるシート加工機で加工されたワークピース(W)から加工済みパーツ(P)を仕分けする仕分けシステム(SortS)であって、
ワークピース加工機(L)で加工された加工済みパーツ(P)を含むワークピース(W)を支持する作業台(WT)と、
加工済みパーツ(P)を
互いに異なる複数の目的地向けに協働的に仕分けする、請求項1~8のいずれか1項に記載のインタラクティブな自律型脚式移動ロボット(MR)群と、
を備えることを特徴とする仕分けシステム。
【請求項10】
仕分けシステムを対象とする請求項9に記載の仕分けシステム(SortS)であって、
仕分けプロセスの制御を少なくとも部分的に調整する中央制御ユニット(CCU)を備え、
全ての移動ロボット(MR)又はそのうちの一部は、中央制御ユニット(CCU)に対する制御インタフェースを装備する、
ことを特徴とする仕分けシステム。
【請求項11】
請求項9に記載の仕分けシステム(SortS)であって、
自律的に動作する移動ロボット(MR)にローカルに設けられた分散制御ユニット(DCU)のシステムによって制御される、
ことを特徴とする仕分けシステム。
【請求項12】
システムに関する請求項10~11のいずれか1項に記載の仕分けシステム(SortS)であって、
少なくとも2台の移動ロボット(MR)は、協調行動のためのコンセンサスアルゴリズムを適用することによって、協力する移動ロボットのチームを構築するための協働メッセージを交換し、
前記協働メッセージは、協働リクエストメッセージセットと、参加可能性応答メッセージセットと、初期化メッセージセットと、同期メッセージセットとを含む、
ことを特徴とする仕分けシステム。
【請求項13】
システムに関する請求項10~12のいずれか1項に記載の仕分けシステム(SortS)であって、
移動ロボット(MR)による作業台(WT)への移動及び作業台(WT)からの移動を容易にするための少なくとも1本の傾斜路(R)を備える、
ことを特徴とする仕分けシステム。
【請求項14】
システムに関する請求項10~13のいずれか1項に記載の仕分けシステム(SortS)であって、
切断計画又は仕分け計画を受信するための計画インタフェース(I)を備え、
計画インタフェース(I)は、全ての移動ロボット(MR)又はそのうちの一部に実装される、
ことを特徴とする仕分けシステム。
【請求項15】
システムに関する請求項10~14のいずれか1項に記載の仕分けシステム(SortS)であって、
ナビゲーションシステム(NS)を備え、
ナビゲーションシステム(NS)の少なくとも一部分は、全ての移動ロボット(MR)又はそのうちの一部に実装される、
ことを特徴とする仕分けシステム。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか1項に記載の仕分けシステム(SortS)を運転する方法であって、
作業台(WT)から加工済みパーツ(P)を把持し、把持した加工済みパーツ(P)を協力して目的地に輸送するために、前記自
律型脚式移動ロボット(MR)群を構成する各移動ロボット(MR)においてローカルに、当該移動ロボット(MR)のためのロボット固有の制御命令のセットが自律的に生成される、
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
方法に関する請求項16に記載の方法であって、
各移動ロボット(MR)は、他の移動ロボット(MR)に対して自身の制御命令を通知するため、及び/又は、他の移動ロボット(MR)に関する外部の制御命令について通知を受けるために、互いにメッセージを交換している、
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
方法に関する請求項16又は17に記載の方法であって、
加工機(L)、特に切断機から切断計画及び/又は仕分け計画を受信し、受信した切断計画又は仕分け計画に応じて前記制御命令のセットを生成することを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
方法に関する請求項16~18のいずれか一項に記載の方法であって、
前記自
律型脚式移動ロボット(MR)群を構成する各移動ロボット(MR)は、仕分けプロセス中の協調作業を可能にするためにメッセージを交換する、
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
方法に関する請求項19に記載の方法であって、
移動ロボット(MR)は、受信した制御命令に従って自身のタスクを実行又は完了することができない場合、前記自
律型脚式移動ロボット(MR)群の全ての移動ロボットに配布されるジョブオーダーメッセージを生成する、
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
方法に関する請求項16~20のいずれか一項に記載の方法であって、
前記自
律型脚式移動ロボット(MR)群を構成する各移動ロボット(MR)は、他のロボット又は既に仕分け済みのパーツの動きによる変化を含む変化する環境において自身の移動経路を動的に計算するために、座標ナビゲーションアルゴリズム(NS)、特にスティグマジーアルゴリズムを使用し、
座標ナビゲーションプロセスは連続的に最適化され、その最適化は、現時点での最良解の反復的な改善から成る、
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
方法に関する請求項16~21のいずれか一項に記載の方法であって、
前記自
律型脚式移動ロボット(MR)群のナビゲーションを制御するために、ニューラルネットワークの使用及び/又は進化的計算技術の適用を行う、
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
プログラム要素を含むコンピュータプログラム製品であって、
前記プログラム要素は、移動ロボット(MR)に設けられたプロセッサのメモリに読み込まれた際に、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法である、加工済みパーツ(P)を仕分けする方法のステップを、前記プロセッサが実施するようにさせる、
ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項24】
プログラム要素が格納されたコンピュータ可読媒体であって、
前記プログラム要素は、プロセッサによって実行された際に、方法に関する請求項16~22のいずれか一項に記載の方法である、加工済みパーツ(P)を仕分けする方法のステップが実施されるように、前記プロセッサによって読み取られ実行されることが可能である、
ことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースから切り出されたパーツを複数の異なる目的地向けに仕分けすることに関し、切り出されたパーツは、加工機、特にレーザ式シート加工機によって加工されたものである。本発明は特に、仕分けシステム、移動ロボット、仕分けシステムの運転方法、並びに、コンピュータプログラム及びその製品に関する。
【背景技術】
【0002】
最新技術では、レーザ切断機などの作業台から加工済みパーツを仕分けするための一般的且つ主要なアプローチが知られている。このアプローチは、可動ガントリーを備えたシステムに基づくものであり、ロボットハンドがパーツをつかんで拾い上げ給送トレイ上に置くことができるように、可動ガントリーは、加工済みパーツを載せた作業台に対して移動される。例えば、特許文献1には、そのような仕分けシステムであって、ブリッジ又はガントリーと、それに取り付けられた仕分けアーム(シートのロード/アンロード用)とを備えるものが記載されている。この文献には、カッティングセンタの給送トレイの上方に予め設定された高さで支持された一対のレールを使用することが開示されている。当該レール上に、少なくとも1台のデカルトロボットハンドが移動可能に取り付けられ、互いに直交する水平軸X及びY並びに垂直軸Zに沿って移動できるようになっている。当該レールに沿ってスライドする少なくとも2台のブリッジクレーンが設けられ、その各々が、少なくとも一対のロボットハンドを支持する。ロボットハンドは、サクションカップ装置と組み合わされ得る電磁式ピックアップヘッドを有する。給送トレイは、セラミック材料から成る小さなテッセラが取り付けられた複数のバーで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術のシステムの不利な点は、仕分け/アンロード速度が遅いことである。具体的には、レーザ加工機の処理能力が後続の仕分けシステムの処理能力よりも高い場合、自動化工程においてアイドルタイムが生じてしまう。特に、ファイバレーザ技術で達成可能な非常に速い切断速度の場合、完成したパーツやスケルトンのアンロードが追い付かず、ボトルネックを引き起こして生産性を低下させるリスクがある。そのような場合、機械の能力を最大化するには、効果的なマテリアルハンドリング及び仕分けシステムが必要である。
【0005】
したがって、本発明の課題は、加工済みパーツを目的地向けに効率的に仕分け及び輸送するための解決手段を提供し、上記従来技術のシステムの欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、添付の独立請求項に係る仕分けシステム、移動ロボット、当該仕分けシステムの運転方法、コンピュータプログラム及びその製品、並びにコンピュータ可読媒体によって解決される。有利な態様、特徴、及び実施形態は、さらなる利点とともに、従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【0007】
本発明は、一態様では、パーツをそれ専用の目的地向けに仕分け又は輸送するための仕分けシステムに関し、パーツは具体的には、加工機、特にレーザ切断機などのシート加工機によって加工された加工済みパーツである。パーツは、加工機によってワークピースに形成され、ワークピースから、又はワークピースの外へ、相違する可能性があるいくつかの目的地に輸送される必要がある。仕分けシステムは以下を備える。
・加工機で加工された加工済みパーツを含むワークピースを支持する作業台と、
・加工済みパーツを、特に作業台から離れた目的地向けに協働的に仕分けする、好ましくは脚式移動ロボットであるインタラクティブな移動ロボットのフリート。移動ロボットのフリートは、同種(同じ構造及び/又は機能を有するもの)又は異種(相違するアーキテクチャ及び/又は機能を有するもの)の場合がある。この点に関し、本明細書における「ロボット」という用語は、常に移動ロボット、特に脚式移動ロボットを指すことに留意すべきである(「移動」という言葉が明示されていない場合も)。
【0008】
重要な態様の1つは、切断済みパーツを仕分けするために自律移動ロボットのフリートを使用する点である。移動ロボットのフリートは、以下でより詳細に説明する様々な方法で制御することができる。パーツを動かすための移動ロボットを含むものである本明細書に記載の仕分けシステムによって、システムはより柔軟になり、アンロード及び仕分けの速度も大幅に向上する。具体的には、パーツの拾い上げ又は把持は、上方からのグリッピングに限定されず、その代わりに、例えばワークピース又はパーツの側面又は下方から把持する他のグリッピング手段が提供されることが可能である。さらなる利点は、不具合(傾いたパーツ、完全に切断されていないパーツ)が発生した場合でも、そのパーツを処理できる点である。さらに、センサシステムにより、不具合を仕分けプロセス中に検出することがあり、仕分けプロセスは、切断プロセスの終了後のさらなる品質管理を含む。不具合は記憶されて、中央制御部又は切断機にフィードバックされ得る。さらに、追加の品質分析手段が設けられることがある。特に、仕分けプロセス中に切断エッジを分析するために、光学センサ信号に基づくエッジ検出分析が提供される。
【0009】
以下では、本課題の解決手段を、請求項に記載の仕分けシステムとの関連で説明する。本明細書に記載の特徴、利点、又は代替実施形態は、他の特許請求対象物(例えば方法、移動ロボット、コンピュータプログラム製品)に帰属することができ、その逆もまた同様である。言い換えれば、装置に関する請求項は、方法の文脈で説明又は特許請求された特徴で改良されることができ、その逆もまた同様である。この場合、方法の機能的特徴は、構造ユニット、特にデバイスにおける集積回路のマイクロプロセッサユニットとして具体化され、それぞれその逆もまた同様である。それが可能なのは、一般にコンピュータサイエンスでは、ソフトウェア実装とそれに対応するハードウェア実装とが同等であるためである。したがって、例えば、移動ロボットに対する制御指令を用いてデータを「記憶する」方法ステップは、記憶装置と、当該記憶装置にデータを書き込むための指令とによって実行され得る。方法に関連して説明される代替実施形態においてもデバイスが使用されることがあるが、冗長性を回避するために、それらの実施形態をデバイスについて再度明示的に説明することはしない。
【0010】
好適な実施形態によれば、移動ロボットにエッジ検出機構が設けられることがあり、エッジ検出機構は、仕分けプロセス中に把持又はピックアップされた後のエッジの状態を現状としてセンサシステムによって検出するものである。検出した信号、特に光学センサ信号及び/又は重量センサ信号は、移動ロボットにおいて受信される。別の好適な実施形態では、受信されたセンサ信号は、把持及び仕分けプロセスを制御するために、ロボット上でローカルに、又は別のインスタンスで処理される。特に、当該信号は、目標状態としての切断計画と比較される場合がある。現状が目標状態から逸脱している場合、不具合信号が、フィードバック制御ループを通じて制御ユニットに供給されることがあり、また切断システムにも転送されることがある。別の好適な実施形態では、検証のために、2つの異なる種類の(光及び重量)センサ信号が使用される。第1の信号が不整合又は異常を示した場合、不具合信号を発する前に、検出された不整合又は異常を検証するために第2の信号を分析する。その後、検証後にのみ、不具合信号が供給され得る。この特徴により、品質が向上し、誤検知される不具合や誤った警告信号が回避される。
【0011】
好ましい実施形態によれば、仕分けシステムは、仕分けプロセスの制御を少なくとも部分的に調整する中央制御ユニットを含む場合があり、その場合に、全ての移動ロボット又はそのうちの選択されたセットは、当該中央制御ユニットに対する制御インタフェースを装備する。中央制御ユニットは、自動化システムのコントローラや機械コントローラなどの他のコントローラとさらに相互作用することがあり、機械コントローラとは、例えばレーザ加工機、作業台用モータ、給送トレイ用モータなどのコントローラである。中央制御ユニットは、協働のための一般的な方法で移動ロボットのフリートの制御を担当する。
【0012】
別の好適な実施形態によれば、仕分けシステムは、自律的に動作する移動ロボットにローカルに設けられた複数の制御ユニットから成る分散システムによって制御される。これは、移動ロボットの非集中型且つ分散型の制御を指す。様々な同期メカニズムを用いる場合がある。具体的には、仕分けシステムは中央制御ユニットを備えず、もっぱら、移動ロボット上の非集中制御ユニットから成る分散システムによって制御される。
【0013】
また、上記の両方の実施形態(非集中制御及び集中制御)を組み合わせることができる。
【0014】
仕分けシステムの別の好適な実施形態によれば、少なくとも2台の移動ロボットが、協調行動(特に通信及び協調動作(すなわち共同でのグリッピング及び共同での輸送)に関するもの)のためのコンセンサスアルゴリズムを適用することによって、協力するロボットチームを構築するための協働メッセージを交換する。ここで、協働メッセージは以下を含む。
-協働リクエストメッセージセット、
-参加可能性応答メッセージセット(協働スポットへの到着までに要する時間に関する情報を含む)、
-初期化メッセージセット、及び/又は
-同期メッセージセット。
【0015】
具体的には、コンセンサスアルゴリズムを用いて、開始ロボットは協力するチームのマスターになり、他の全ての協力するロボットはマスターの一種の機械的拡張部になる(拡張されたメカニクスを備えた単一のロボットであるかのように)。
【0016】
集中制御ユニットの場合、他の移動ロボットとの協働を必要とするパーツに関連して、「チケット」と見なされ得る特別メッセージが生成及び配布されることがある(協働を必要とする理由は、例えば、そのパーツが重すぎたり大きすぎたりして、1台の移動ロボットで把持及び/又は輸送できないため)。そのチケットへの応答として、移動ロボットのフリートを構成する他の移動ロボットから、(特定のロボットの)参加可能性や協働スポットへの到着までに要する時間に関して、フィードバックが受信される。前述したこの種のフィードバック情報を含むデータセットは、集約されて制御ユニットに送信される。協働を組織するために、協調アルゴリズムに基づいて制御命令(セット)が生成される。この制御命令セットは、移動ロボットのフリート(そのうちの1台はマスター移動ロボットとして指定され、その他の1台以上はスレーブ移動ロボットとして指定される)に対する作業チケットに従って配布される。マスター移動ロボットは、以下の手順で協働スポットにおける協働を開始するように指示される。
-初期化
・協働チームを形成する可能性のあるロボットを特定する
・協働リクエストを送信し、その確認の回答を収集する
・適用可能な基準(例えば最短距離、十分な容量など)に従って適切なロボットを選択する
・マスターロボットは、選択したスレーブロボットを用いてチーム形成プロセスを開始する
-同期
・マスターロボットは、モーションセンサの位置(脚、クランプなど)を含む各スレーブロボットの正確な位置を取得する
・マスターロボットは、スレーブロボットを、機械的拡張部(例えば追加の脚、クランプなど)として自身の内部機械モデルに統合する
・協働システム全体が、マスターによって制御される単一の仮想マルチユニットロボットとして動作を開始する
-切り離し
・マスターロボットは、協働作業の完了時に切り離しを開始する
・各スレーブロボットは、自律動作を再開する
【0017】
仕分けシステムの別の好適な実施形態は、移動ロボットによる作業台への移動及び作業台からの移動を容易にするための少なくとも1本の傾斜路を含む。特に、複数のロボットを用いる仕分けシステムの制御を容易にし、且つ、移動ロボットが連続した列を成して作業台に出入りすることを可能にするために、より多くの傾斜路を設けて、移動ロボットによる進入方向の移動に1本の傾斜路を割り当て、退出方向の移動に1本の傾斜路を割り当てることがある。
【0018】
仕分けシステムの別の好適な実施形態は、切断計画及び/又は仕分け計画を受信するための計画インタフェースを含むことがあり、計画インタフェースは、好ましくは、全ての移動ロボット又はそのうちの選択されたセットに実装される。計画インタフェースは、切断計画を受信するように機能することが好ましく、受信した切断計画に基づいて、仕分け計画が自動的に生成される場合がある。それは、仕分け計画アルゴリズムを実行することによって実施でき、仕分け計画アルゴリズムは、全てのロボット又はそのうちの選択されたセットにローカルに展開されることがある。仕分け計画は、例えば(仕分けシステムの)制御ユニット又はレーザ加工機の制御ユニットなどの、外部のインスタンスから受け取ることもできる。
【0019】
別の好適な実施形態によれば、仕分けシステムはナビゲーションシステムを含む場合がある。ナビゲーションシステムは、全ての移動ロボット又はそのうちのセット(すなわち、それらの電子制御ユニット)に分散されてローカルに設置されることができ、したがって、ナビゲーションシステムの少なくとも一部分は、好ましくは、全ての移動ロボット又はそのうちの選択されたセットに実装される。ナビゲーションシステムは、リソースを大量消費する処理タスクをサーバインスタンスに転送できるように、クライアントサーバモードで操作され得る。
【0020】
別の態様では、本明細書に記載の解決手段は、上述した仕分けシステムのための移動ロボットに関する。移動ロボットは、シート加工機(例えば、レーザ切断機又は他のシート加工機)で加工(例えば切断)されたワークピースの加工済みパーツ(例えば、切断済みパーツ)を仕分けするためのインタラクティブな移動ロボットのフリートにおいて使用される。移動ロボットは以下を備える。
-電子制御ユニット(コンピュータプログラムを記憶するためのメモリを装備することがある)。制御ユニットは、マイクロコントローラ、ASIC、又はFPGAである場合があり、あるいは、機械加工コンポーネントの一部分として内蔵された形で設けられる場合もある。制御ユニットは、移動ロボットを制御するための制御命令を供給するように構成される。制御命令は、移動タスク、及び/又は、通信/メッセージ伝送タスク(すなわち、同期のためのタスク)に関連している。
-センサシステム(特に、光学センサ及び/又は位置センサ及び/又は圧力センサ、あるいは、物理パラメータを検出するための他の種類のセンサを備えるもの)であって、フリートの他の移動ロボットとの協調ナビゲーション用の第1のセンサと、グリッピング用の第2センサとを備える。光学センサ式ビジョンシステムにおける移動ロボットの主光学センサは、移動ロボットのコア本体に配置されることが好ましく、補助光学センサは、各脚に、好ましくはそのクランプ手段に配置され得る。
-他の移動ロボットとの通信(メッセージ伝送)のためのネットワークインタフェース(例えば、Wi-Fi/IEEE 802.11、ZigBee、赤外線/IR、無線周波数ベース、Bluetooth、又はLoRaWAN(長距離ワイドエリアネットワーク)などの他の無線通信プロトコル)。通信プロセスは、移動ロボットに設けられた通信システムによって実行され得る。
-把持移動ユニットであって、作業台から少なくとも1つの加工済みパーツを把持し(移動ロボットが作業台に係合している間に、切断済みパーツを動かし、ワークピースから切断済みパーツを分離させることにより、全ての切断済みパーツが取り除かれた後には、残余のグリッド部のみが残る)、把持した加工済みパーツを目的地向けに仕分け又は輸送するために移動ロボットを移動させる。
【0021】
移動ロボットの好適な実施形態では、移動ロボットは脚式移動ロボットである。把持移動ユニットは、少なくとも4本の脚、特に6本の脚を備えることがあり、各脚には、一組の様々なツールから成る(作業)ツールが設けられる場合がある。脚を備えた把持移動ユニットは、3つの異なる機能を果たす。
1.移動ロボットを移動させ、
2.移動ロボットを固定/クランプし、
3.加工済みパーツを把持する。
【0022】
このように、3つの機能が単一のユニットで提供される。したがって、把持移動ユニットは多機能であり、サブユニットを含み得る。全ての脚には、クランプ手段、把持手段、歩行手段、切断手段(例えば、パーツとワークピースとの間のミクロジョイントを切り離すための手段)などの同じツール又は異なるツールが装備されている場合がある。少なくとも1本の脚は、(多段又は一段)伸縮式である場合がある。脚は、電磁的に制御されることができ、そのように制御されることが好ましい。例えば既知の歩容アルゴリズムである歩行動作アルゴリズムが、平坦面及び非平坦面での歩行を含めた、移動ロボットの全ての動きを制御する。歩行動作の制御、特に歩容アルゴリズムとの関連で、「A free gait algorithm for quadrupedal walking machines, Shin-MinSong, Yaw-DongChen, Journal of Terramechanics, 第28巻、第1号、1991年、33~48ページ」が参照される。歩行動作アルゴリズムは、好ましくは、作業台の支持部材につかまりクランプすることを含む。支持部材は、ワークピースの平面に垂直な軸に沿って鉛直に突出する歯部を有するグレーチング状の支持部材であり得る。一般に、歩行動作アルゴリズムは、他のロボットとの協調行動を保証するための協調動作アルゴリズムである。
【0023】
移動ロボットの別の好適な実施形態によれば、把持移動ユニットの脚の少なくとも一部は、移動ロボットを移動させ、パーツを把持及び運搬し、移動ロボットを安定した位置に固定するように構成される。このように、3つの異なる機能(パーツの把持、パーツの運搬/輸送、及び、特定のグレーチング構造体を備えた作業台に対するロボット自体の固定)が単一の構成要素に統合されており、それによりロボットの重量及び体積が削減される。
【0024】
移動ロボットの別の好適な実施形態では、把持移動ユニット(及び特にその脚)は、移動ロボットを作業台上の安定した位置に支持(及び確実に位置決め)するために、作業台のグレーチング状支持要素に係合するクランプ手段を備える。クランプ手段は、クランプ力が印加されることができるピボット回転可能な脚として設けられる場合があり、滑りを回避するためのゴムパッドを装備することがある。
【0025】
別の好適な実施形態では、移動ロボットの把持移動ユニットは、3つの別個のユニット、すなわち、把持ユニットと、移動ユニットと、クランプ手段とを備える。それらのユニットは、別々に、特に互いから独立して制御及び操作されることができるので、把持タスクもクランピングタスクも実行していない間に、ロボットを移動させる制御をすることが可能である。若しくは、把持ユニット、移動ユニット、及びクランプ手段は全て、1つの共通の構造体に設けられることもできる。ただし、それでも、3つのユニット/手段は別々に制御され得る。
【0026】
把持ユニットは、好ましくは、パーツを把持するためのサクションカップ、特に真空サクションカップを含む。これにより、把持タスクが簡素化される。把持ユニットは、代替的又は追加的に、ミクロジョイントを切断するために金属カッター又は金属剪断機を備える場合がある。
【0027】
別の好適な実施形態では、制御ユニットは、加工済みパーツを把持している状態で移動ロボットの重心を計算し、且つ、切断済みパーツを輸送する際に移動ロボットの傾き/傾斜を回避するための傾き回避制御命令を供給するように構成される。傾き/傾斜制御命令は、例えばグリッドなどの作業台の固定部分に少なくとも1つのクランプ手段でクランプするための命令を含むことが好ましい。
【0028】
移動ロボットは、充電ポート、好ましくはワイヤレス充電ポートを備えることが好ましい。しかし一般的には、充電ポートは有線であることも可能である。充電ポートは、仕分けシステムの充電ステーションに係合するように構成される。ロボットには、充電式バッテリが設けられる。
【0029】
別の態様では、本明細書に記載の解決手段は、ワークピース加工機、特にシート加工機から加工済みパーツを仕分けするための上述した仕分けシステムを運転する方法に関する。その方法では、作業台から加工済みパーツを把持し、且つ、把持した加工済みパーツを協力して目的地に輸送するために、ロボットのフリートを構成する各移動ロボットにおいてローカルに、当該移動ロボットのためのロボット固有の制御命令のセットが自律的に生成される。
【0030】
各移動ロボットは、好ましくは、他の移動ロボットに対して自身の制御命令を(特に、移動経路、並びに、把持タスク及び固定タスクに関する制御命令を、全て時間領域において)通知するため、及び/又は、他の移動ロボットに関する外部の制御命令について通知を受けるために、互いにメッセージを交換している。制御命令は、分散制御ユニットによってローカルに生成されることがあり、切断計画及び/又は仕分け計画(例えばxmlファイル)を処理することによって生成されることが好ましい。
【0031】
別の好適な実施形態では、移動ロボットのフリートを構成する各移動ロボットは、仕分けプロセス中の協調作業を可能にするためにメッセージを交換する。
【0032】
別の好適な実施形態では、移動ロボットは、受信した制御命令に従って自身のタスクを実行又は完了することができない場合、フリートの全ての移動ロボットに対するジョブオーダーメッセージ(タスクチケット)の配布の要求を生成する。特に、そのようなジョブオーダーメッセージは、「残余グリッド部」においてパーツの紛失、つかえ、傾き、又は詰まりが生じた場合、あるいは、把持タスク及び/又は仕分けタスクに関連する問題やバッテリの故障などの他の支障又は問題が生じた場合に生成されることがある。例えば、パーツは、ワークピースの残余グリッド部又は例えば作業台のグレーチング状支持部材に詰まる場合がある。
【0033】
別の好適な実施形態では、移動ロボットのフリートを構成する各移動ロボットは、変化する環境において自身の移動経路を動的に計算するために、座標ナビゲーションアルゴリズム、特にスティグマジーアルゴリズムを使用する。ナビゲーションは、衝突の回避、タスクの割り当て、共同タスク(共同でのグリッピング)で協力するロボットのサブセットのクラスタリング/組織化、並びに、速度及び軌道の整合を伴う集団輸送を考慮に入れる必要がある。前述の全てのタスク及び態様は、スティグマジーアルゴリズム又はロボティクスフリートアルゴリズムで実装できる。そのようなアルゴリズムの例は、「Nicole El Zoghby, Valeria Loscri, Enrico Natalizio, Veronique Cherfaoui, Robot Cooperation and Swarm Intelligence, Wireless Sensor and Robot Networks: From Topology Control to Communication Aspects, World Scientific Publishing Company, 168~201ページ、2014年。hal-00917542」、又は「Analysis of Algorithms to implement Swarm Bots for Effective Swarm Robotics, Deepika Rani Kampally, Rashmi Annae, Santhosh Kumar, IJCSET, 2011年8月、第1巻、第7号、407~414ページ」に記載されている。
【0034】
別の好適な実施形態では、ナビゲーションプロセスは連続的に最適化され、その最適化は、現時点での最良解の反復的な改善から成る。座標ナビゲーションアルゴリズムは、環境における進行中の変化、すなわち他のロボットや既に仕分け済みのパーツの動きによる変化などを、考慮に入れる。
【0035】
ナビゲーションシステムは、協調輸送(仕分け)を制御及び実行するためにロボットのフリートに配備されている分散システムであり得る。ナビゲーションシステムは、加工済みパーツの集団輸送のためのアルゴリズムを実行することがある。集団輸送には、座標ナビゲーションアルゴリズムが使用される。協調ナビゲーションアルゴリズムについては、「Collective transport in large swarms of simple robots, Master Project, Micro-engineering Section, Adrian Cabrera de Luis: Michael Rubenstein and Steffen Wischmann, Harvard, Self-Organized Systems Research and Laboratory of Intelligent Systems Prof. Radhika Nagpal and Prof. Dario Floreano, ケンブリッジ、マサチューセッツ州、米国、2012年8月17日、第4.5章20ページ参照のこと」などの文献が参照される。集団輸送は、ロボットの一群が物体(切断済みパーツなど)を輸送するために協力しなければならない集団行動であると解釈される。一般的に、その物体は重く、1台のロボットで動かすことができないため、協力を要する。物体を目的地に向けて効果的に移動するために、ロボット同士が共通の方向に同意する必要がある。集団輸送行動は、確率付き有限状態マシン又は人工進化を用いて得ることができる。協調は、所望のモーション方向についての明示的なコミュニケーションを通じて、又は、間接的なコミュニケーションを通じて、すなわち、運搬中の物体に他のロボットが印加する力をセンサで測定することによって得られる。一般的に、共同タスク(例えば、重いパーツを一緒につかむこと)を実施するロボットのクラスタが形態形成又は自己組織化によって生成されることによって、ロボットは空間内に組織化されて分布する。
【0036】
一式のロボットの協調ナビゲーションを実施する目的で、ニューラルネットワーク、特に強化学習技術又は進化的計算技術を適用することがある。
【0037】
好適な実施形態では、ロボットの経路は事前に計算されない。複数ロボットの経路計画問題の解は、フリート内の全てのロボットのコンフィギュレーション空間の直積集合において衝突のない経路である。開始コンフィギュレーション及び目標コンフィギュレーションが、衝突のないグローバルなコンフィギュレーション空間の同じ連結コンポーネントに属している場合に、問題の解が存在する。そのような空間を検索することは、組み合わせに関する難しい問題であり、座標ナビゲーションアルゴリズムによって(例えば走光性アルゴリズムに基づいて)解決される。
【0038】
一般に、ナビゲーションシステムは、仕分けタスクを経時的に最適化するために、一式のロボットの移動/モーションを調整するアルゴリズムを用いる場合がある。座標ナビゲーションアルゴリズムでは、通常、個々のロボットは以下の3つの簡単なルールに従う。
1.衝突回避、
2.速度整合、及び
3.経路適応。
【0039】
衝突回避は、ロボットが互いに衝突することを防ぐ。この目的において、輸送ルートの利用可用性を向上させるために、複数の別個のスロープも設けられている。速度整合は、例えば輸送中の1つの(重い)パーツを共同でつかむ場合、及び、その共同タスクの間に経路適応により個々のロボットが隣接するロボットの近くにとどまらされる場合に、個々のロボットが隣接するロボットの速度と一致するようにさせるものである。
【0040】
一般に、協調行動を達成するために、コンセンサス取得のためのアプローチを用いることがある。第1の実施形態では、直接コミュニケーションを使用する―各ロボットは、好ましい選択肢又はいくつかの関連情報を伝達することが可能である。第2の実施形態では、その代わりに、間接コミュニケーションを使用する―それぞれのセンサ(例えば各ロボットの光学センサ)によって感知され得るロボット集団の密度などのいくつかの間接的な手がかりを用いて、判断を実施する。それに関連して、スティグマジーアルゴリズムを用いる場合がある。ロボットは、一般的なデータ交換インフラストラクチャ(例えば、リアルタイムの密度マップや、空間にローカライズされたメッセージメールボックス(アリのコロニーのフェロモン堆積物に相当するもの))を使用できる。この点に関して、論文「Collision Avoidance and Swarm Robotic Group Formation, Fan Liu & Ajit Narayanan, International Journal of Advanced Computer Science, 第4巻、第2号、64~70ページ、2014年2月」が参照される。2つの異なるコンセプトが適用され得る。
・反復的なピアツーピアネゴシエーション
・コーディネータによる一元化されたアプローチ
【0041】
さらに、タスク割り当て方法を適用する必要がある。タスクの割り当ては、複数のロボットが自身を、さまざまなタスク(パーツの拾い上げ/グリッピング、パーツの輸送、グリッピング地点への移動など)に割り振る集団行動である。目標は、いずれのタスクを実施するかをロボットに動的に選択させることで、システムのパフォーマンスを最大化することである。タスクの割り当ては、確率付き有限状態マシンを使用して達成される場合がある。専門化の促進のため、実施可能なタスクの1つを選択する確率は、ロボット間で異なるか、あるいは、タスクの実行又は他のロボットからのメッセージに応じて変化する可能性がある。
【0042】
別の好適な実施形態では、移動ロボットのフリートのナビゲーションを制御するために、ニューラルネットワークの使用及び/又は進化的計算技術の適用を実施することがある(例えば、H.Li, S.X. Yang, M.L. Seto, Neural-network-based path planning for a multirobot system with moving obstacles, IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics, Part C (Applications and Reviews), 第39巻(2009年)410~419ページを参照のこと)。
【0043】
本発明は、別の態様では、プログラム要素を含むコンピュータプログラム製品に関し、そのプログラム要素は、移動ロボットに設けられたプロセッサのメモリに読み込まれた際に、そのプロセッサが、上記の方法に従って、ワークピース加工機から加工済みパーツを仕分けする方法のステップを実施するようにさせる。
【0044】
本発明は、別の態様では、プログラム要素が格納されるコンピュータ可読媒体に関し、そのプログラム要素は、プロセッサによって実行された際にワークピース加工機から加工済みパーツを仕分けするための上述の方法のステップが実施されるように、プロセッサによって読み取られ実行されることが可能である。
【0045】
コンピュータプログラム製品及び/又はコンピュータ可読媒体による本発明の実施には、既存の機械及びハードウェアが本発明の提案どおりに機能するように、ソフトウェアによって容易に適応させることができるという利点がある。
【0046】
以下に、本出願で使用される用語の簡単な定義を示す。
【0047】
「シート加工機」という用語は、シート材料、特に例えば金属シート又はシート材料から作られたチューブなどを加工するための加工機を指す。当該加工機は、数値制御機械、より具体的にはCNC機械において、例えば切削工具及びレーザ加工装置を用いて、2次元及び/又は3次元のワークピースを加工するように構成されることがある。レーザ加工装置は、レーザ加工ヘッドとレーザ光源とを備える。レーザ光源は、付属のビーム形成手段とビームガイドとを含み、レーザビームを生成して、切断、曲げ、又は加工の目的でレーザ加工ヘッドにレーザビームを供給するものである。
【0048】
「作業台」という用語は、2次元的支持要素を意味し、加工済み(例えば切断済み)パーツと、(切断済みパーツを含まない)残余グリッド構造体を構成するワークピースの残り部分とを含むワークピースが供給されるためのものである。作業台は、加工(切断)機の内外で移動可能な切断台である場合がある。それはシャトルテーブル(Wechseltisch)である場合があり、すなわち、機械加工装置とは独立して移動可能及び/又は設置可能であるように、交換式テーブルとして構成され得る。作業台には、例えばレーザ切断機から、(切断済みパーツを含む)加工済みワークピースが供給される。残余グリッド部のみが残るようにワークピースから全ての切断済みパーツを移動させた後、残余グリッド部が作業台から取り除かれるとともに、別の(新しい)ワークピースが仕分けタスク用に供給される。1つの同じ作業台を、様々な機械において使用できる。作業台は、作業台の縦軸に直交して延びる水平の支持要素を備える。それらの支持要素は、ワークピースとの接触面積を最小化するために上面が歯付き又はギザギザになっている変形長方形の側面形状を有することがある。
【0049】
移動ロボットは、移動可能な電子制御ロボット式作業ツールであり、好ましくは自律制御される。移動ロボットは、脚式であることが好ましい。脚は、把持移動ユニットを構成し、パーツを把持し且つ移動ロボットを移動及びクランプするように機能する。移動ロボットは、自律的且つ能動的に移動するように構成されており、したがって、ロボットを移動させるための少なくとも1つの駆動モータを備える。駆動モータは、(内部又は外部の)処理ユニットから受信した制御命令によって制御される。移動ロボットは、能動的に移動するため、(制限された事前定義済みの移動のための)ガントリーのような支持部材を必要としない。
【0050】
移動ロボットは、把持移動ユニットを備えることがある。把持移動ユニットは多機能である。把持移動ユニットは、移動ロボットを移動させ、パーツを把持及び運搬又は輸送し、把持タスク中に移動ロボットを安定した位置に固定するように構成される。このように、3つの異なる機能(パーツの把持、パーツの運搬/輸送、及び、特定のグレーチング構造体を備えた作業台に対するロボット自体の固定)が単一の構成要素に統合されており、それによりロボットの重量と体積が削減される。
【0051】
移動ロボットは、制御又は処理ユニット(データ処理用の電子回路)を備える。そのユニットは、協力するロボットのフリート及びそれらの処理ユニットの一部として運転される。移動ロボットのフリートの全てのローカル制御ユニットは、分散(非集中)制御ユニットを構成しており、相互にデータ交換している。制御ユニットは、特に把持及び移動タスク並びにフリート内の通信タスクに関連して、移動ロボットを制御するための制御命令を供給するものである。各移動ロボットは、ソフトウェアシステムにおけるエージェントを表す。エージェントは、自律的であり、能動的且つ反応的であり、環境の変化(加工済みパーツ及び他のロボットに関するもの)に対してロバスト且つ適応的であり、そのように行動する。好適な実施形態では、移動ロボットのフリートのうちの各移動ロボット又は事前定義された移動ロボットのサブセットは、仕分けプロセス中の協調行動を可能にするために、互いにメッセージを交換する。好ましくは、移動ロボットの処理ユニットは、コンセンサスアルゴリズム又は協調アルゴリズムを実行するように構成され得る。
【0052】
各移動ロボットの移動タスクは、事前定義も事前プログラムもされず、移動タスクに関連して座標ナビゲーションアルゴリズム及び/又は割り当てアルゴリズムを実行することにより、オンザフライで制御される。
【0053】
好適な実施形態では、移動ロボットは、グレーチング構造体(平面でも通常の作業プラットフォームでもない、グリッド又はグレーチング構造体)上の安定した位置に、自身を固定するように構成される。グレーチング構造体は、切断済みパーツが載置されるレーザ加工機の作業台の一部であるか、又はそれをベースにしたものであり得る。したがって、この目的のために、移動ロボットはクランプ手段を備えることがある。クランプ手段は、把持及び/又は移動ユニットとは別に設けられる場合がある。別の実施形態では、クランプ手段は、把持及び/又は移動ユニットとしても機能するように構成され得る。
【0054】
さらに別の好適な実施形態では、移動ロボットは、ロボットの周囲を感知し且つ他のロボットと協調的にナビゲートするためのセンサ(好ましくは光学センサ)を備える。
【0055】
移動ロボットは、(ローカルの内部)制御ユニットを備えることがあり、その制御ユニットは、移動ロボットのフリートの一式の制御ユニットのうちの、分散型且つ非集中型の制御ユニットとして機能する。分散制御ユニットは、コンセンサスアルゴリズムを実行するように構成される。
【0056】
オプションとして、移動ロボットのローカル制御ユニットに加えて、ロボットのフリートを制御するための中央制御ユニットを設けることができる。中央制御ユニット(データ処理用の電子回路)は、(中央)サーバとして機能する場合があり、且つ、移動ロボットの(ローカル)処理ユニットと相互作用するように構成されることがあり、移動ロボットは、(ローカル)クライアントとして機能し得る。移動ロボットのフリートの各ローカル制御ユニットは、合同での協働タスク実行(移動、把持、クランピング)のために協調アルゴリズムを実行する場合がある。
【0057】
好適な実施形態では、共同での把持及び/又は移動タスクが実行されることがある。例えば、切断済みパーツが、1台のロボットだけで把持及び/又は運搬するには重すぎる場合、そのタスクを共同で実行するために一式のロボットを割り当てることができる。協調アルゴリズムを実行することにより、共同タスクに関して各ロボットに個々に指示することができる。
【0058】
本発明の重要な態様の1つは、本方法によって、切断済みパーツを作業台から柔軟に移動させる効率的な手順が提供される点である。移動ロボットを用いることで様々なグリッピング技術を適用でき、例えば吸着パッドで切断済みパーツを上方から拾い上げるだけでなく、切断済みパーツを側面からつかむこともできる。また、ワークピースの第1、第2、及びさらなるセクションが互いに隣接していない状況で、ワークピースの第1のセクションにおいて加工済みパーツを把持し、その間に、ワークピースの少なくとも第2又は第3のセクションにおいて他の加工済みパーツを把持することが可能である。それにより、移動及び仕分けプロセスの柔軟性が向上する。
【0059】
移動ロボットのフリートは、コンセンサスアルゴリズムを適用することによって、つまり中央制御なしで制御される場合があり、それにより、コレオグラフィなしで統一的な仕分け行動が得られる。したがって、各移動ロボットは、ローカライズされた知識しか持たない。移動ロボットのフリートは、ローカル及び/又はグローバルな環境に対して集団的且つ自己組織的に適応することによって機能又は課業(加工済みワークピースの仕分け)を最適化する電子機械加工エージェントのセットであると解釈される。ロボットのフリートの制御には、相互作用プロセスが含まれる。ロボットフリートの制御には、各ロボットの行動をシミュレートするシミュレーションモデルに基づく粒子群最適化アルゴリズムを適用することがある。例えば、そのようなアルゴリズムは、「Asynchronous Particle Swarm Optimization for Swarm Robotics, Nor Azlina AbAziza, Zuwairie Ibrahimb, Procedia Engineering, 第41巻、2012年、951~957ページ」、又は「Distributed efficient localization in swarm robotics using Min-Max and Particle Swarm Optimization, Alan Oliveirade Saa, NadiaNedjahbLuiza de MacedoMourelle, Expert Systems with Applications, 第50巻、2016年5月15日、55~65ページ」に開示されている。
【0060】
移動ロボットの仕分けシステムの特徴的な態様の1つは、コーディネータや外部コントローラがなくても協調して動作できる点であり、それにより、何者かが中心的な(コンピューティング)インスタンスを用いて一式の移動ロボットを制御することなく、集団的な仕分け及び輸送行動が実施される。「集団行動」という用語は、一式のロボットの行動を(個別的にではなく)全体として捉えたものを意味する。
【0061】
ロボットフリートのシステムの利用は魅力的であり、その理由は、同じタスク用に設計された集中システムと比較して、コンポーネントが非常に単純だからである。したがって、ロボットユニットは原則として、モジュール化、大量生産、及び交換が可能であり、使い捨てであってもよい。2つ目の主な利点は信頼性である。フリートは、一般に冗長性が高いため、その冗長性ゆえに、様々な種類の障害(例えば、切断済みワークピースの傾きや、他の移動ロボットとの衝突などであって、標準的な制御システムで想定されるものに比べてより深刻である可能性があるもの)に耐えるように設計され得る。フリートには、作業環境に動的に適応する能力がある。その作業環境とは、例えば、完全に切断されていないパーツであり、それに対して追加的なツール(例えば剪断機)を用いてパーツの残存接合部を切断することで処理することもあり、それにより、さもなければ仕分けできなかったパーツを把持及び仕分けすることができる。ロボットのフリートは信頼性の高い動作を示す。移動ロボットが大規模な並列計算システムのように機能することを構想でき、したがって、複雑な単体ロボット又は集中型のロボット群のいずれかである他のタイプのロボットシステムで対応可能なタスクを超えるタスクを実施できる。
【0062】
モーションのプランニング、調整、及び制御は、自律型ロボットのフリートの展開における重要な態様である。これらの3つの課題は本質的に相互依存する。ロボットの動きは、ロボットコントローラによって計算された制御によって物理的に実現可能である必要があり、衝突やデッドロックを回避するために調整される必要もある。これらの課題にまとめて対処する方法が科学分野で研究されてきたが、実社会のオートメーションの用途は、特に性能/時間及びコストに関連して、利用可能な方法の範囲を絞り込むさらなる要件を提起する。フリートには、様々なタイプのロボット、あるいは様々な(例えば把持用、クランプ用、又は加工用の)ツールを備えたロボットが含まれる場合があり、それらのロボットは基本的に異なる制御方式を有し、ロボットコントローラは、多くの場合、ロボットプラットフォームに付属するものであって変更できない公認のブラックボックスである。実際には、フリートの各ロボットで実行される様々なアルゴリズムを設けることによりモーションのプランニング、調整、及び制御を別々に検討する理由が、多く存在する。
【0063】
一般に、自律型ロボットのフリートを自動化するには、多数の問題を解決する必要がある。それらの問題には、ロボットへのタスクの割り当て、タスクの実施において適切なロボットモーションパスの計算、及び、それらのモーションの協調の確保が含まれ、その全ては、性能基準を最大化しつつ行われるものである。これらの問題は、フリート管理問題全体のサブ問題と見なすことができる。問題の一部は、どのロボットをどのタスクに割り当てるべきかを決定することである。ロボットの動きは、環境内の障害物(例えば傾いたパーツ、又は、完全に切断されておらず未だミクロジョイントがあるパーツなど)によって制約される。ロボットに課業を割り当てる方法によって、ロボットの動きを調整するか否か、及び、どのように調整するかが決まる。フリート管理問題の根底にあるサブ問題を解決するためのいくつかの方法が、人工知能、ロボット工学、及びオペレーションズリサーチの分野で研究されてきた。したがって、特定の産業オートメーションの状況で既存の方法を展開するには、個別の前提に対応する必要がある。その対応とは例えば、追加のインフラストラクチャを通じて、協調ナビゲーションアルゴリズム及び歩行アルゴリズムによって個々に作成されたパスを提供したり、ロボットの移動のための傾斜路及び特別なルールを考慮に入れてデッドロック及び衝突の回避のための交通ルールを指定したりすることである。例えば、衝突を回避するために、一実施形態では、少なくとも2本の傾斜路が設けられ、その1本はロボットの進入方向の移動用であり、もう1本はロボットの退出方向の移動用である。傾斜路の割り当てを考慮して、個々の制御命令を発するためのルールが設けられる。このことは、ロボット間の衝突リスクを減らすのに役立つ。
【0064】
好適な実施形態では、中央制御アプローチと分散制御アプローチとが組み合わされる。中央制御ユニットが設けられ、さらに、ロボットのフリートのうちの全て又は選択された移動ロボットに、非集中又は分散制御ユニットが装備される。したがって、各ロボットにローカル制御ユニットが設けられ、それに加えて、ロボットのフリートに中央制御ユニットも設けられる。ロボットに固定パスを命じることにより、解空間が縮小される。言い換えれば、中央制御ユニットにより、ロボットが固定パスに沿って移動しなければならないように構成される。ただし、それらの各パスにおけるナビゲーション及び交通は、ロボットの分散制御ユニットにおいて非集中的にローカルで管理される。
【0065】
好適な実施形態では、インタラクションプロトコルが、メッセージ伝送、シグナリング、及びロボット間の相互作用のために設けられる。ロボットの感知機能及び通信機能はローカルであることが好ましく、ロボットは通常、グローバル情報にアクセスできない。
【0066】
好ましくは、割り当てアルゴリズムが、把持及び輸送タスクに対して1台のロボット又は移動ロボットのサブセットを割り当てるために使用される。
【0067】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせであることも可能であると、理解すべきである。
【0068】
本発明の上記及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照することで明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】本発明の好適な実施形態による仕分けシステムの構造及びアーキテクチャを示す概観図である。
【
図2】本発明の好適な実施形態による移動ロボットを示す概略図である。
【
図3】作業台のグレーチング状構造体と係合する移動ロボットのクランプユニットを示す概略図である。
【
図4】切断済みパーツの共同輸送タスクを実施する2台のロボットを含む仕分けシステムを示す別の概略図である。
【
図5】作業台上のワークピースから切り出されたパーツを把持する1台のロボットを示すより詳細な図である。
【
図6】本発明の好適な実施形態による仕分けシステムの構成要素を示すブロック図である。
【
図8a】3爪クランプ手段を備えた把持ユニットを示す図である。
【
図8b】回転クランプ手段を備えた把持ユニットを示す図である。
【
図8c】2爪クランプ手段を備えた把持ユニットを示す図である。
【
図8d】パーツ把持クランプ手段を備えた把持ユニットを示す図である。
【
図9】本発明の好適な実施形態による移動ロボットの構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本明細書で提案する解決手段は、一般に、切断済みパーツPを作業台WTから、例えば様々な仕分けボックス又はコンベヤベルトなどの目的地へ、協調的に輸送するための移動ロボットMRの分散システムに関する。
【0071】
全体の構造を
図1に示す。加工機は、ワークピースWにおいて切断パーツPを形成するレーザ切断機Lであり得る。レーザ機は、電子的な(又はデジタル化された)切断計画によって制御される。切断工程の完了後、切断済みパーツPが形成されたワークピースWは、レーザ加工機Lから作業台WT上に送出される。この時点で、切断済みパーツPは、目的地向けに仕分け又は輸送される必要がある。
【0072】
図1に見られるように、レーザ切断機Lは、機械の外の排出エリアに配置された可動式切断テーブル又は作業台を備え、そこにワークピースWが載置される。ワークピースWは、切断されて、残余グリッド部といくつかの切断済みパーツPとを形成する。脚式移動ロボットMRは、パーツPのアンロードを行う。脚式移動ロボットMRは、昆虫のような形状であり、少なくとも3本の歩行脚Lを有し、好ましくは4本、より好ましくは6本の歩行脚Lを有する。脚Lの少なくとも1本は、把持手段G又はグリッパ端を備える。あるいは、2つ又は3つの把持手段が設けられることがある。傾斜路Rにより、移動ロボットMRは作業台WTにアクセス及びそこから退出することができ、作業台WTでは移動ロボットMRは、残余グリッド部に沿って作業台WTのピン部又はエッジ部E上を歩くか、あるいは、作業台WTのグレーチング構造体の間隙を通って落下する危険性のないより大きな切断済みパーツP上を歩くことが好ましい。移動ロボットMRは、切断済みパーツPを回収して、例えばパレット上や箱内などの回収エリアに保管する。ワイヤレス充電エリアCP(例えば誘導式、光学式、電磁式など)は、移動ロボットMRの再充電を容易にする。あるいは、有線充電機能を装備される場合がある。
【0073】
図2に、移動ロボットMRをより詳細に示す。ロボットMRは、数本であって少なくとも3本の歩行脚Lを有し、支持グレーチング上での歩行のためのクランプ手段Cl及びクランプ動力部Mを備える。
【0074】
支持グレーチング上でそれ用の手段を用いた歩行を、
図3にさらに詳細に示す。作業台WTは、(作業台WTの長手軸に対して)横断方向に延びてグレーチングを形成するいくつかの支持要素Eを備える。支持要素Eは、切断済みパーツPとの接触面積を最小化するために、
図3に見られるようにギザギザ又は歯付きの上面を有する。移動ロボットMRは、作業台WTの支持要素Eの歯部と係合するためのクランプ手段Clを備える。したがって、作業台WTは、移動ロボットの脚L、特にクランプ手段Clと係合するためのピン部又は歯部を備えた支持グレーチングレーンを有する。
図3に示すクランプ手段Clの代わりに、脚Lのカップ状(通常式又は真空式サクションカップSC)端部も使用することができる。さらなる代替例では、電磁的に作用する脚端部を使用する場合がある。クランプ手段Clに関する様々なオプションを備えた把持ユニットGとして利用可能な実施形態を、
図8に関連して以下でより詳細に説明する。
【0075】
図4は、数台の移動ロボットMRを示し、そのうちの2台は、単一のロボットMRには重すぎ又は大きすぎである1つの切断済みパーツPの共同輸送タスクで協働している。この共同での協働タスクのために、割り当てアルゴリズム及び/又はコンセンサスアルゴリズムをロボットMRで実行して使用することで、2台の移動ロボットMRが自己組織的に自律制御される。協働チームは、もちろん、それぞれのタスクに応じて2台又はそれ以上の移動ロボットMRで構成される場合がある。協働を組織するために、コンセンサスアルゴリズム又は協調アルゴリズムを適用して実行する。移動ロボットのフリートのうちの1台がマスター移動ロボットとして指定され、且つ、他の1台又はそれ以上がスレーブ移動ロボットとして指定されることがある。マスター移動ロボットは、協働スポットで協働を開始するように指示される。
【0076】
図5は、グレーチング状支持要素Eを備えた作業台WTを示す。支持要素Eには、目的地に輸送される切断済みパーツPを含むワークピースWが載置されている。移動ロボットMRは、アンロードする切断済みパーツPを拾い上げている。
【0077】
図6は、中央(集中)制御部CCUを備えた仕分けシステムとして利用可能な実施形態SorSを示す。仕分けシステムSorSは、移動ロボットMRのフリートを含み、それらの移動ロボットMRは、相互間及びナビゲーションシステムNSとの間でデータ交換を実施している。ナビゲーションシステムNSは、例えばビーコンなどで動作する屋内ナビゲーションシステムであり得る。中央制御ユニットCCUは、共同タスクのためにロボットの協働チームが得られるように移動ロボットMRのフリートを制御するように構成される。その目的において、中央制御ユニットCCUは、様々なメッセージを用いて以下の項目に関する情報を受信する。
-切断済みパーツに関するメッセージ、
-パーツ生産手順に関するメッセージ、
-自動化工場のトポロジに関するメッセージ、
-機械のトポロジに関するメッセージ、
-ローカルロボットの状態に関するメッセージであって、ロボットMRのID、ロボットMRの種類(例えば重量、寸法、出力など)、ロボットMRの現在のタスク、ロボットMRの位置、バッテリの充電状態などを含むもの。
【0078】
中央制御ユニットCCUは、製造現場管理システムSFCS(存在する場合)及び/又は機械制御部MC(例えば切断機の制御部であり得る)とデータ交換を実施していることがある。SFCSとの通信がない場合は、切断機の制御ユニットと通信する。さらに、中央制御ユニットCCUは、ロボットMRのフリートの動きに対して作業台WTの動きを同期させるために、作業台WTの制御システムとメッセージを交換することがある。移動ロボットMRのフリートを制御するための制御命令を供給するために、中央制御ユニットCCUは、切断計画及び/又は仕分け計画を受信するための計画インタフェースIを有する場合がある。
【0079】
中央制御ユニットCCUは、協調アルゴリズム又は少なくともそのうちのサーバ側の部分を実行するように構成されている(協調アルゴリズムのクライアント側の部分は、各移動ロボットMRの処理ユニットに存在し、そこで実行される場合がある)。中央制御ユニットCCUはさらに、仕分け計画アルゴリズム、座標ナビゲーションアルゴリズム、歩行動作アルゴリズム、及び/又は割り当てアルゴリズムを実行するように構成され得る。
【0080】
図7は、移動ロボットMRのフリートの制御方法を示すフローチャートである。製造現場管理システムSFCS又はレーザ機Lの制御ユニットが、レーザ機Lで切断プロセスを開始することにより、切断済みパーツPの生産を開始する。中央制御ユニットCCUは、生産ジョブに関する情報(例えば、切断及び/又は機械加工計画、並びに生産手順など)を収集する。次のステップでは、中央制御ユニットCCUは、個々のタスクチケットTTを移動ロボットMRに配布する。次のステップでは、それぞれの移動ロボットMRは、中央制御ユニットCCUに対してタスクチケットの受領を確認する。次のステップでは、移動ロボットMRがタスクチケット完了メッセージを中央制御ユニットCCUに報告するまで、移動ロボットMRのフリートが監視される。中央制御ユニットCCUは、タスクの完了ステータスをチェックする。そのステータスがジョブの正常な完了を表す場合、中央制御ユニットCCUは、ジョブ完了を製造現場管理システムSFCS又はレーザ機Lの制御ユニットに報告する。それ以外(ジョブ完了なし)の場合、ロボットのフリートに対する監視ループが実行され、それによりループが分岐されて監視ステップに戻る。タスクチケットの配布は、全てのタスクチケットが処理されるまで繰り返される。
【0081】
図8は、移動ロボットMRの把持移動ユニットGの様々な実施形態を示す。
図8aは、アクチュエータAと、クランプ手段Clを構成する3爪クランプとを備えた把持移動ユニットGを示す。把持移動ユニットGは、さらに把持ユニットGUを備える。把持ユニットGUは、移動ロボットMR自体を
図3に示すグレーチング状支持構造体にクランプするためのクランプ機能に加えて、加工済みパーツを把持する機能を有する。この実施形態又は他の実施形態の例では、脚Lに、把持移動ユニットGの滑りを回避するためのゴムパッドPが設けられることがある。
図8bは、把持移動ユニットGが移動ユニットMUを含む実施形態の一例を示す。移動ユニットMUは、移動ロボットMRを移動させる機能を提供する。把持移動ユニットGは、回転クランプ手段Clを装備する場合がある。把持移動ユニットGは、制御ユニットDCU,CCUによって供給される制御命令により把持プロセスを光学的に観察して制御するために、センサシステムSの光学センサ式ビジョンシステムOSVを備えることがある。
図8cは、2爪クランプ手段Clとそれのアクチュエータとを備えた把持ユニットGを示し、アクチュエータは、制御ユニットDCU,CCUによって制御されるものである(このことは、
図8中の他の図の他のアクチュエータにも当てはまる)。
図8dは、サクションカップSCが設けられた脚Lと係合するための引き込み式部分を有する把持ユニットGUを備えた把持手段Gを示し、サクションカップSCが設けられた脚Lは、脚Lの長手軸に対して上下に動かされることが可能である。
【0082】
図9は、分散制御ユニットDCUを備えた別の好適な実施形態を示し、それは、
図6に関連して説明した中央制御ユニットCCUを備えた実施形態と対照的なものである。ただし、組み合わせも可能であると理解される。したがって、各移動ロボットMR又は選択された移動ロボットMRに設けられた分散制御ユニットDCUに加えて、中央制御ユニットCCUを設けることが可能である。
【0083】
好適な実施形態では、移動ロボットMRは、移動ロボットMRにおいてローカルに生成される制御命令によって完全に自律的に運転及び制御される。各移動ロボットMR又は選択された移動ロボットMRは、センサシステムSとローカルに相互作用する非集中又は分散制御ユニットDCUを備える。センサシステムSは、協調ナビゲーション用の第1のセンサS1と、グリッピング用の第2のセンサS2とを含むことがある。第2のセンサは、光学センサ式ビジョンシステムOSVの一部であり得る。分散制御ユニットDCUは、把持及び/又はクランピングタスクを制御するために、把持移動ユニットGと相互作用する。分散制御ユニットDCUは、オプションとして、移動を同期させるために作業台WTの制御ユニットとさらに相互作用する場合がある(
図9には示さず)。センサシステムS及び/又は分散制御ユニットDCUは、ナビゲーションシステムと相互作用し、ナビゲーションシステムは、フリート内の他の移動ロボットとの関係において移動ロボットの輸送軌道を計算するために、少なくとも部分的に移動ロボットMR上にローカルに設けられることもある。分散制御ユニットDCUは、切断計画及び/又は仕分け計画を受信するための計画インタフェースIを有し得る。通常、分散制御ユニットDCUは、特に同期の目的でフリート内の他のロボットMRと通信するために、通信ネットワークへのネットワークインタフェースNWIをさらに備える。分散制御ユニットDCUは、共同タスクで協調行動を実施するためのコンセンサスアルゴリズムを実行するように構成される。
【0084】
分散制御ユニットDCUは、好ましくは、コンセンサスアルゴリズム、仕分け計画アルゴリズム、歩行動作アルゴリズム(又はスティグマジーアルゴリズム)及び/又は座標ナビゲーションアルゴリズム、並びに割り当てアルゴリズムを実行するように構成される。他の実施形態では、アルゴリズムの少なくともいくつかを、より多くの処理リソースを通常有する中央制御ユニットCCUに移すことができる。
【0085】
好適な実施形態では、少なくとも2台の移動ロボットMRが使用される。
【0086】
移動ロボットMRは、空間内でのロボットの位置を推定するために使用される光学センサシステムを備える。光学センサシステムはさらに、切断済みパーツPの検出に使用される。移動ロボットMRのセンサシステムSは、ナビゲーションジオメトリ(例えば切断用グレーチングピン、切断済みパーツ要素、コンベヤベルトなど)を自動的に検出するために使用されることが好ましい。
【0087】
移動ロボットMRのセンサシステムSは、ナビゲーションジオメトリの状態(例えば切断用グレーチングピンの摩耗や汚れなど)の検出にも使用されることが好ましい。それにより、不具合品(却下すべきパーツP)と良好なパーツ(不具合なし)とを区別するように処理を最適化できる。欠陥パーツ又は不良パーツPは、仕分けする必要がなく、自動的に仕分けから除外される。
【0088】
一般に、インタフェースは、ハードウェアインタフェース又はソフトウェアインタフェース(例えばPCIバス、USB、又はFirewire)として具体化されることができる。一般に、制御ユニットCCU,DCUは、ハードウェア要素及び/又はソフトウェア要素を含むことができ、それらは例えば、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(頭字語は「FPGA」)、又は特定用途向け集積回路(頭字語は「ASIC」)などである。制御ユニットCCU,DCU内のメモリは、非永続的なメインメモリ(例えばランダムアクセスメモリ―RAM)、又は永続的な大容量記憶装置(例えばハードディスク、USBスティック、SDカード、ソリッドステートディスク)として具体化され得る。
【0089】
ネットワークNW又は通信チャネルは、LAN(「ローカルエリアネットワーク」の頭字語)、特にWi-Fiネットワーク、あるいはその他の(例えばBluetooth、ZigBee、又はUSB(「ユニバーサルシリアルバス」の頭字語)を介した)ローカル接続として実現できる。ネットワークは、WAN(「ワイドエリアネットワーク」の頭字語)として実現することもでき、具体的には、インターネットと同一であることが可能であり、IPプロトコルに基づく場合がある。あるいは、ネットワークはVPN(「仮想プライベートネットワーク」の頭字語)又はLoRaWAN(長距離ワイドエリアネットワーク)として実現することもできる。
【0090】
制御ユニットDCU,CCUは、ソフトウェアとして設けられることがあり、データベースであり得るメモリ内に格納される場合があり、又は、サーバのメモリに含まれることができ、あるいは、別個の記憶ユニットに格納されることができる。
【0091】
開示した実施形態に関する他の変形例は、図面、説明、及び添付の請求項の精読を通じて、特許請求される発明を実施する当業者によって理解及び実施され得る。請求項において、「備える」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。
【0092】
1つのユニット又はデバイスが、請求項に記載されたいくつかの項目の機能を果たす場合がある。特定の複数の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという事実だけで、それらの手段の組み合わせが有利に使用可能でないことが示されるわけではない。
【0093】
上記の方法による制御装置の遠隔からの安全な更新のためのシステムは、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として、及び/又は専用ハードウェアとして実装できる。
【0094】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に、又はその一部として設けられた、光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上で保存/配布され得るが、インターネットあるいは他の有線又は無線通信システムなどを介して他の形式で配布されることもできる。
【0095】
図7に関連して説明したプロセス又はステップは、コンピュータによって実装され、ソフトウェア及び/又はハードウェアとして具体化され得る。本発明の少なくともいくつかのステップは、通信ネットワークNWを介してリンクされたリモート処理デバイスによってタスクが実行される分散コンピューティング環境でも実施できる。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、ローカル及び/又はリモートのメモリ記憶装置内に位置することがある。
【0096】
制御ユニットCCU,DCUは、本発明の1つ又は複数の態様を実施するために、マシンで実行可能な命令を実行する場合がある。マシンで実行可能な命令の少なくとも一部分は、記憶装置に(一時的又はより永続的に)記憶されること、及び/又は入力インタフェースを介して外部ソースから受信されることがある。
【0097】
請求項中の参照記号は、権利範囲を制限するものとして解釈すべきでない。
【0098】
上記に明示的な記載がない場合について、図面に関連して説明した個々の実施形態又はそれらの個々の態様及び特徴は、それらの組み合わせ又は交換が有意義であって本発明の趣旨に沿うものであれば、記載された発明の範囲を制限も拡大もすることなく互いに組み合わせ又は交換されることが可能である。本発明の特定の実施形態又は特定の図に関連して説明される利点は、該当する場合は、本発明の他の実施形態の利点でもある。