(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】抗TALEN抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/40 20060101AFI20241101BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241101BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241101BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241101BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241101BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241101BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241101BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241101BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241101BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C07K16/40
A61K39/395 P
C12P21/08
G01N33/53 D
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2021573273
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 US2020037589
(87)【国際公開番号】W WO2020252381
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-12
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519089657
【氏名又は名称】アロジーン セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】パーテル トーマス チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】サス バーブラ ジョンソン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506898(JP,A)
【文献】J. Mol. Biol.,2011年,Vol. 405,p. 630-641
【文献】Cancer Res.,2016年,Vol. 76, No. 8,p. 2087-2093
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含むFokIヌクレアーゼ触媒ドメインに特異的な抗体であって、
配列番号3に対して少なくとも90%同一である可変重鎖(VH)アミノ酸配列および配列番号7に対して少なくとも90%同一である可変軽鎖(VL)アミノ酸配列を含み、
(a)配列番号12若しくは14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)配列番号15若しくは18のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(c)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および
(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含むか、
(g)配列番号13若しくは14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(h)配列番号16若しくは19のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(i)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(j)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(k)配列番号25のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および
(l)配列番号26のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含むか、
(m)配列番号12若しくは14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(n)配列番号15若しくは18のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(o)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(p)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(q)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および
(r)配列番号28のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含むか、
(s)配列番号12若しくは14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(t)配列番号17若しくは20のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(u)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(v)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(w)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および
(x)配列番号27のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含むか、または
(y)配列番号12若しくは14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(z)配列番号15若しくは18のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(aa)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(bb)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(cc)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および
(dd)配列番号27のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、前記抗体。
【請求項2】
配列番号3に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるVHアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号7に対して少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるVLアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
検出可能な標識をさらに含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記検出可能な標識が、蛍光標識、フォトクロミック化合物、タンパク質性蛍光標識、磁気標識、放射標識、およびハプテンからなる群から選択される、請求項
3に記載の抗体。
【請求項5】
前記蛍光標識が、R-フィコエリトリン(PE)またはアロフィコシアニン(APC)である、請求項
4に記載の抗体。
【請求項6】
請求項1に記載の抗体および薬学的に許容可能な担体またはビヒクルを含む、組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の抗体を製造する方法であって、前記抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドと、前記抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドとを含む1つ以上のベクターを含む細胞を、適当な条件下でインキュベートすることを含む、前記方法。
【請求項8】
試料における配列番号1のアミノ酸配列を含むFokIヌクレアーゼ触媒ドメインの存在を決定する方法であって、前記試料を検出可能な標識にコンジュゲートされた請求項1に記載の抗体と接触させること、および前記試料における前記FokIヌクレアーゼ触媒ドメインの存在を決定することを含む、前記方法。
【請求項9】
前記検出可能な標識が、蛍光標識、フォトクロミック化合物、タンパク質性蛍光標識、磁気標識、放射標識、およびハプテンからなる群から選択される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が、免疫細胞試料、組織試料、血液試料、ホルマリン固定した試料、ex vivoで成長させた組織または細胞培養培地である、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記試料が、免疫細胞試料、組織試料、血液試料、ホルマリン固定した試料、ex vivoで成長させた組織または細胞培養培地である、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
配列番号1のアミノ酸配列を含むFokIヌクレアーゼ触媒ドメインに特異的な抗体であって、
(a)配列番号12若しくは14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)配列番号15若しくは18のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(c)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および
(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むVL CDR3;ならびに
配列番号3のアミノ酸配列を含むVH;および配列番号7のアミノ酸配列を含むVLを含む、
前記抗体。
【請求項13】
配列番号1のアミノ酸配列を含むFokIヌクレアーゼ触媒ドメインに特異的な抗体であって、
(g)配列番号13若しくは14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(h)配列番号16若しくは19のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(i)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(j)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(k)配列番号25のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および
(l)配列番号26のアミノ酸配列を含むVL CDR3;ならびに
配列番号4のアミノ酸配列を含むVH;および配列番号9のアミノ酸配列を含むVLを含む、
前記抗体。
【請求項14】
配列番号1のアミノ酸配列を含むFokIヌクレアーゼ触媒ドメインに特異的な抗体であって、
(m)配列番号12若しくは14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(n)配列番号15若しくは18のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(o)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(p)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(q)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および
(r)配列番号28のアミノ酸配列を含むVL CDR3;ならびに
配列番号5のアミノ酸配列を含むVH;および配列番号10のアミノ酸配列を含むVLを含む、
前記抗体。
【請求項15】
配列番号1のアミノ酸配列を含むFokIヌクレアーゼ触媒ドメインに特異的な抗体であって、
(s)配列番号12若しくは14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(t)配列番号17若しくは20のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(u)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(v)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(w)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および
(x)配列番号27のアミノ酸配列を含むVL CDR3;ならびに
配列番号6のアミノ酸配列を含むVH;および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、
前記抗体。
【請求項16】
配列番号1のアミノ酸配列を含むFokIヌクレアーゼ触媒ドメインに特異的な抗体であって、
(y)配列番号12若しくは14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(z)配列番号15若しくは18のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(aa)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(bb)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(cc)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および
(dd)配列番号27のアミノ酸配列を含むVL CDR3;ならびに
配列番号3のアミノ酸配列を含むVH;および配列番号8のアミノ酸配列を含むVLを含む、
前記抗体。
【請求項17】
試料における配列番号1のアミノ酸配列を含むFokIヌクレアーゼ触媒ドメインの存在を決定する方法であって、前記試料を請求項
1に記載の抗体と接触させること、および前記試料における前記FokIヌクレアーゼ触媒ドメインの存在を決定することを含む、前記方法。
【請求項18】
前記試料が、免疫細胞試料、組織試料、血液試料、ホルマリン固定した試料、ex vivoで成長させた組織または細胞培養培地である、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1
又は2のいずれか1項に記載の抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項
19に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項21】
請求項
19に記載のポリヌクレオチドを含む細胞。
【請求項22】
請求項
20に記載のベクターを含む細胞。
【請求項23】
FokIヌクレアーゼ触媒ドメインに特異的な抗体を製造する方法であって、請求項
21に記載の細胞を、適当な条件下でインキュベートすることを含む、前記方法。
【請求項24】
FokIヌクレアーゼ触媒ドメインに特異的な抗体を製造する方法であって、請求項
22に記載の細胞を、適当な条件下でインキュベートすることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年6月13日に出願された米国仮特許出願第62/861,214号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年6月12日に作成されたこのASCIIコピーは、AT-021_02_SL_ST25.txtと名付けられ、サイズは26,590バイトである。
【0003】
本開示は、遺伝子編集タンパク質(例えば、触媒ドメインであるFok-1またはFok1とも呼称されるFokIを含むTALENタンパク質)に特異的に結合する抗体を非限定的に含む抗原結合分子、およびそれをコードするポリヌクレオチド、および使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、およびRNAガイドFokIヌクレアーゼ(RFN)などのゲノム編集ツールは、遺伝子の正確な修正、挿入、または欠失を可能にする強力なツールである。TALEN、ZFN、およびRFNは、ゲノム中の標的部位に結合し、切断することができる。得られた切断DNAは、非相同末端結合(NHEJ)の内因性細胞DNA修復機序を介して、または修復鋳型がもたらされるときは、相同性指向修復(HDR)を介して修復される。TALENは、DNA切断ドメイン(例えば、FokI)に融合したTALエフェクターDNA結合ドメインを使用する。ZFNは、DNA結合ポリペプチドである操作されたCys2His2ジンクフィンガーに連結された、FokIなどの制限酵素切断または触媒ドメインを含む。RFNは、触媒不活性形態のCas9に融合されたFokIヌクレアーゼを含む。哺乳類(例えば、ヒト、イヌ、ウシ、非ヒト霊長類など)における効率的なゲノム編集のため、TALEN、ZFN、およびRFNが高レベルで発現されると予想される。持続的なヌクレアーゼ活性およびオフターゲット効果、ならびに潜在的な免疫原性のリスクのため、様々な遺伝子編集療法の安全性および有効性を評価するために、ヌクレアーゼタンパク質に結合する能力があるゲノム編集ツール(例えば、抗タレンおよび/または抗FokI抗体)を認識する抗体が、当該技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、特に、試料中のFokI触媒ドメインおよび全長TALENタンパク質の検出のための抗体を提供する。以下の実施例を含め、本明細書に記載されるように、本開示は、TALENおよびFokIタンパク質に特異的に結合する抗TALEN抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示の抗TALEN抗体を使用して、遺伝子編集療法およびプロセスを評価することができる。
【0006】
一態様では、本開示は、配列番号3に対して少なくとも85%同一である可変重鎖アミノ酸配列および配列番号7に対して少なくとも85%同一である可変軽鎖アミノ酸配列を含む抗TALEN抗体を提供する。一実施形態では、抗TALEN抗体は、ヒト化される。様々な実施形態では、抗体は、抗体、scFv、Fab、Fab’、Fv、F(ab’)2、dAb、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、IgE抗体、IgD抗体、IgM抗体、IgG1抗体、ヒンジ領域に少なくとも一つの変異を有するIgG1抗体、IgG2抗体、ヒンジ領域に少なくとも一つの変異を有するIgG2抗体、IgG3抗体、ヒンジ領域に少なくとも一つの変異を有するIgG3抗体、IgG4抗体、ヒンジ領域に少なくとも一つの変異を有するIgG4抗体、少なくとも一つの天然に存在しないアミノ酸を含む抗体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0007】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号3~6からなる群から選択される可変重鎖(HC)を含み、さらなる実施形態では、抗TALEN抗体は、配列番号12~14からなる群から選択される重鎖CDR1、および/または配列番号15~20からなる群から選択される重鎖CDR2、および/または配列番号21を含む重鎖CDR3を含む。特定の実施形態では、抗TALEN抗体は、重鎖CDR1、重鎖CDR2、および重鎖CDR3を含み、それぞれのCDRは、表1cに示されるアミノ酸配列を含む。本明細書に提供される抗原結合分子のVHに対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるVHアミノ酸配列を含む抗TALEN抗体もまた、提供される。
【0008】
他の実施形態では、抗TALEN抗体は、配列番号7~11からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列を含む。特定の実施形態では、抗TALEN抗体は、配列番号22を含む軽鎖CDR1、および/または配列番号23~25からなる群から選択される軽鎖CDR2、および/または配列番号26~28からなる群から選択される軽鎖CDR3を含む。抗TALEN抗体がさらに提供され、軽鎖は、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3を含み、それぞれのCDRは、表1dに示されるアミノ酸配列を含む。本明細書に提供される抗原結合分子のVLに対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるVLアミノ酸配列を含む抗TALEN抗体もまた、提供される。
【0009】
別の実施形態では、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むVH CDR1;(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH CDR2;(c)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗TALEN抗体が本明細書に提供され、さらなる実施形態では、抗TALEN抗体は、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むVH;および(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0010】
別の実施形態では、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むVH CDR1;(b)配列番号16のアミノ酸配列を含むVH CDR2;(c)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;(e)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および(f)配列番号27のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む抗TALEN抗体が、本明細書に提供され、さらなる実施形態では、抗TALEN抗体は、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むVH;および(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0011】
さらなる実施形態では、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH CDR1;(b)配列番号16のアミノ酸配列を含むVH CDR2;(c)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;(e)配列番号25のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む抗TALEN抗体が、本明細書に提供され、さらなる実施形態では、抗TALEN抗体は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むVH;および(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0012】
なおさらなる実施形態では、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むVH CDR1;(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH CDR2;(c)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;(e)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む抗TALEN抗体が、本明細書に提供され、さらなる実施形態では、抗TALEN抗体は、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むVH;および(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0013】
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むVH CDR1;(b)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH CDR2;(c)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR3;(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むVL CDR1;(e)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;および(f)配列番号27のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む抗TALEN抗体も提供され、さらなる実施形態では、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むVH;および(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項23に記載の抗TALEN抗体も提供される。
【0014】
様々な実施形態では、抗TALEN抗体は、検出可能な標識をさらに含み、一部の実施形態では、検出可能な標識は、蛍光標識、フォトクロミック化合物、タンパク質性蛍光標識、磁気標識、放射標識、およびハプテンからなる群から選択される。検出可能な標識が蛍光標識であるとき、蛍光標識は、Atto色素、Alexafluor色素、量子ドット、ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン、Cascade Blue、Pacific Blue、Pacific Orange、ルシファーイエロー、NBD、R-フィコエリトリン(PE)、PE-Cy5結合体、PE-Cy7結合体、Red 613、PerCP、TruRed、FluorX、フルオレセイン、BODIPY-FL、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、TRITC、X-ローダミン、リサミンローカミンB、テキサスレッド、アロフィコシアニン(APC)、APC-Cy7結合体、Indo-1、Fluo-3、Fluo-4、DCFH、DHR、SNARF、GFP(Y66H変異)、GFP(Y66F変異)、EBFP、EBFP2、アズライト、GFPuv、T-サファイア、セルリアン、mCFP、mTurquoise2、ECFP、CyPet、GFP(Y66W変異)、mKeima-Red、TagCFP、AmCyan1、mTFP1、GFP(S65A変異)、ミドリシシアン、野生型GFP、GFP(S65C変異)、TurboGFP、TagGFP、GFP(S65L変異)、エメラルド、GFP(S65T変異)、EGFP、アザミグリーン、ZsGreen1、TagYFP、EYFP、トパーズ、ビーナス、mCitrine、YPet、TurboYFP、ZsYellow1、クサビラオレンジ、mOrange、アロフィコシアニン(APC)、mKO、TurboRFP、tdTomato、TagRFP、DsRedモノマー、DsRed2(「RFP」)、mStrawberry、TurboFP602、AsRed2、mRFP1、J-Red、R-フィコエリトリン(RPE)、B-フィコエリヒリング(phycoeryhring)(BPE)、mCherry、HcRed1、Katusha、P3、ペリジニンクロロフィル(PerCP)、mKate(TagFP635)、TurboFP635、mPlum、およびmRaspberryからなる群から選択され得る。特定の実施形態では、蛍光標識は、R-フィコエリトリン(PE)またはアロフィコシアニン(APC)である。
【0015】
本明細書に提供される抗TALEN抗体および許容可能な担体またはビヒクル、例えば、薬学的に許容可能な担体またはビヒクルを含む組成物も、提供される。
【0016】
本明細書に開示される抗TALEN抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドも提供される。本明細書に開示される抗TALEN抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドも提供される。ポリヌクレオチドをコードする重鎖および軽鎖の一方または両方を含むベクターも提供される。さらに、ベクターの一方または両方を含む細胞が提供され、細胞は、CHO細胞、Sp2/0細胞、ウサギ細胞および大腸菌細胞からなる群から選択される細胞を含み得る。本明細書に開示される抗TALEN抗体を製造する方法が提供され、上で記載されたベクターの一方または両方を含む細胞を適当な条件下でインキュベーションすることを含む。
【0017】
なおさらなる実施形態では、試料におけるTALENタンパク質の存在または不存在を決定する方法が提供され、一実施形態では、試料を検出可能な標識にコンジュゲートされた抗TALEN抗体と接触させること、および試料におけるTALENタンパク質の存在または不存在を決定することを含み、一部の実施形態では、抗TALEN抗体は、本明細書に提供される抗体、またはそのヒト化形態を含む。加えて、試料は、組織試料、血液試料、ホルマリン固定した試料、ex vivoで成長させた組織または細胞培養培地であり得る。
【0018】
本開示の様々な態様は、以下の節において詳細に記載される。節の使用は、本開示を制限することを意図していない。それぞれの節は、本開示の任意の態様に適用することができる。本出願では、別段の記載がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により取り込まれる。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0019】
本開示に提供される図面は、例示のみを目的とし、限定を目的としない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、融合物番号2299(図に示される番号13~16)および番号2296(図に示される番号3、6、7、8、および11)のハイブリドーマの上清のウェスタンブロット分析を示す。
【0021】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当該技術分野(例えば、遺伝子工学、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学および生化学の技術分野)の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0022】
本開示がより容易に理解されるために、特定の用語が以下にまず定義される。以下の用語および他の用語についてのさらなる定義は、本開示全体を通して記載される。
【0023】
親和性:当該技術分野で知られるように、「親和性」は、特定のリガンドがそのパートナーに結合する堅固さの尺度を指す。親和性は、異なる方法で測定することができる。一部の実施形態では、親和性は、定量アッセイによって測定される。一部の実施形態では、結合パートナー濃度および/またはリガンド濃度は、変動し得る。一部のこうした実施形態では、親和性は、比較可能な条件(例えば、濃度)下で参照と比較することができる。
【0024】
アミノ酸:その最も広い意味で、例えば、一つ以上のペプチド結合の形成を介して、ポリペプチド鎖に組み込まれ得る任意の化合物および/または物質を指す。一部の実施形態では、アミノ酸は、一般構造H2N-C(H)(R)-COOHを有する。一部の実施形態では、アミノ酸は、天然に生じるアミノ酸である。一部の実施形態では、アミノ酸は合成アミノ酸であり、一部の実施形態では、アミノ酸はD-アミノ酸であり、一部の実施形態では、アミノ酸はL-アミノ酸である。「標準アミノ酸」という用語は、天然に存在するペプチドに一般に見られる20個の標準L-アミノ酸のいずれかを指す。「非標準アミノ酸」という用語は、合成的に調製されるか、または天然の供給源から得られるかに関わらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。一部の実施形態では、ポリペプチド中のカルボキシ末端のアミノ酸および/またはアミノ末端のアミノ酸を含むアミノ酸は、上記の一般構造と比較して構造修飾を含有し得る。例えば、一部の実施形態では、アミノ酸は、一般構造と比較してメチル化、アミド化、アセチル化、および/または置換によって修飾され得る。文脈から明らかであるように、一部の実施形態では、「アミノ酸」という用語は、遊離アミノ酸を指すために使用され、一部の実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸残基を指すために使用される。
【0025】
抗体:本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、特定の標的抗原に特異的結合を付与するのに十分な古典的免疫グロブリン配列要素を含むポリペプチドを含む、抗原結合タンパク質の一種を指す。当技術分野で公知であるように、天然で産生インタクトな抗体は、二つの同一の重鎖ポリペプチド(それぞれ約50kD)、および一般に「Y字型」構造と一般に呼ばれるものに結合する二つの同一の軽鎖ポリペプチド(それぞれ約25kD)を含む、およそ150kDの四量体の作用物質である。それぞれの重鎖は、少なくとも四つのドメイン(それぞれ約110アミノ酸長)であるアミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)、続いて三つの定常ドメイン:CH1、CH2、およびカルボキシ末端CH3(Yの幹の基部に位置する)を含む。「スイッチ」と一般に呼ばれる短い領域は、重鎖可変領域および定常領域に結合する。「ヒンジ」は、CH2ドメインおよびCH3ドメインを抗体の残りの部分に結合させる。このヒンジ領域の二つのジスルフィド結合は、インタクトな抗体において二つの重鎖ポリペプチドを互いに結合させる。それぞれの軽鎖は、二つのドメインであるアミノ末端可変(VL)ドメイン、続くカルボキシ末端定常(CL)ドメインを含み、それらは互いに別の「スイッチ」によって分けられている。インタクトな抗体四量体は、二つの重鎖-軽鎖二量体を含み、ここで、重鎖および軽鎖は、一つのジスルフィド結合によって互いに連結され、二つの他のジスルフィド結合は、重鎖ヒンジ領域を互いに連結させ、故に、二量体は互いに連結され、四量体が形成される。天然で産生される抗体も、グリコシル化され、典型的には、CH2ドメイン上でグリコシル化される。天然の抗体におけるそれぞれのドメインは、圧縮された逆平行ベータバレルにおいて互いにパックされた二つのベータシート(例えば、3、4、または5つの鎖状のシート)から形成される「免疫グロブリンフォールド」によって特徴付けられる構造を有する。それぞれの可変ドメインは、「補体決定領域」(CDR1、CDR2、およびCDR3)として知られる三つの超可変ループ、および四つのやや不変の「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含む。天然抗体が折り畳まれると、FR領域は、ドメインに構造フレームワークをもたらすベータシートを形成し、重鎖と軽鎖の両方からのCDRループ領域は、Y構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位を生成するように、三次元空間に一体となってもたらされる。天然に生じる抗体のFc領域は、補体系の要素に結合し、例えば、細胞毒性を仲介するエフェクター細胞を含むエフェクター細胞上の受容体にも結合する。一部の実施形態では、抗体はポリクローナルであり、一部の実施形態では、抗体はモノクローナルである。
【0026】
結合:本明細書において使用される場合、「結合」という用語は、典型的には、二つ以上の実体間または中での非共有結合性会合を指すことが理解される。「直接」結合は、実体または部分間の物理的接触を伴い、「間接」結合は、一つ以上の中間実体との物理的接触による物理的相互作用を伴う。
【0027】
染色体:本明細書で使用される場合、「染色体」という用語は、遺伝情報の伝達において遺伝子および機能を運ぶ真核生物の細胞の核における関連タンパク質有するDNAの線形分子を指す。
【0028】
対応する:本明細書で使用される場合、対象のポリペプチドにおけるアミノ酸残基の位置/同一性を示す。当業者は、簡素化のため、ポリペプチド中の残基は、参照の関連ポリペプチドに基づいて、標準的な番号付けシステムを使用してしばしば指定され、それにより、190位の残基に「対応する」アミノ酸は、例えば、実際に特定のアミノ酸鎖中の190番目のアミノ酸である必要はないが、むしろ参照ポリペプチド中の190で見出される残基に対応することを理解し、当業者は、「対応する」アミノ酸をどのように特定するかを容易に理解する。
【0029】
検出部分:本明細書で使用される場合、「検出部分」という用語は、検出可能である任意の要素、分子、官能基、化合物、断片または部分を指す。一部の実施形態では、検出部分は、単独で提供されるか、または利用される。一部の実施形態では、検出部分は、別の作用物質と関連して(例えば、結合して)提供されるか、および/または利用される。検出部分の例としては、様々なリガンド、放射性核種(例えば、3H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu、89Zrなど)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン色素、アクリジン色素、SYBR色素、ローダミン色素、オキサジン色素など)、化学発光剤(例えば、アクリジナムエステル、安定化ジオキサタンなど)、電気化学発光剤(例えば、スルホタグなど)、生物発光剤(例えば、ルシフェリンなど)、スペクトル分解可能な無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち、量子ドット)、金属ナノ粒子(例えば、金、銀、銅、白金など)、ナノクラスター、常磁性金属イオン、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、比色分析ラベル(例えば、色素、コロイド状金など)、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、および抗血清またはモノクローナル抗体が利用可能であるタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
操作された:一般に、「操作された」という用語は、人の手によって操作された態様を指す。例えば、ポリヌクレオチドは、天然でその順序で一体となって連結されていない二つ以上の配列が、操作されたポリヌクレオチドにおいて互いに直接連結させるために人の手によって操作されるとき、「操作された」とみなされる。例えば、本開示の一部の実施形態では、操作されたポリヌクレオチドは、第一のコード配列と動作可能に結合しているが、第二のコード配列と動作可能に結合していない、天然で見出され、第二のコード配列と動作可能に結合するように、人の手によって連結された調節配列を含み得る。同等に、細胞または生物が、その遺伝情報が変えられるように操作されている(例えば、現在までにない新しい遺伝物質が、例えば、形質転換、交配、体細胞ハイブリダイゼーション、トランスフェクション、形質導入、もしくは他の機構によって、または例えば、置換もしくは欠失変異によって、もしくは交配プロトコルによって、導入される)場合、それは、「操作された」とみなされる。一般的な慣行であり、当業者が理解するように、操作されたポリヌクレオチドまたは細胞の子孫は、典型的には、実際の操作が以前の実体上で行われたとしても、依然として「操作された」と称される。
【0031】
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」は、以下の事象のうちの一つ以上を指す:(1)DNA配列からのRNA鋳型の産生(例えば、転写による)、(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、および/もしくは3’末端形成による)、(3)ポリペプチドもしくはタンパク質へのRNAの翻訳、ならびに/または(4)ポリペプチドもしくはタンパク質の翻訳後修飾。
【0032】
FokI:本明細書で使用される場合、「FokI」という用語(代替的に、Fok1またはFok-1と称される)は、フラボバクテリウム・オケアノコイテスにおいて天然で見られる細菌のIIS型制限エンドヌクレアーゼを指す。天然のFokIは、N末端のDNA結合ドメインおよびC末端の非特異的DNA切断ドメインを含む。FokI DNA切断ドメインは、DNA結合ドメインとは独立して機能し得る。本明細書で使用される場合、FokIは、FokIのDNA切断ドメイン(すなわち、ヌクレアーゼドメイン)を含むタンパク質またはタンパク質をコードする核酸を指す。FokIは、FokIタンパク質全体(配列番号2)、または触媒ヌクレアーゼドメイン(配列番号1)のみを指すことができる。「FokI」という用語は、FokIの変異体、誘導体、類似体、切断体、融合構築物、およびFokI二量体を含むFokIの多量体を含む、FokIの全ての断片およびバリアントを指す。一部の実施形態では、FokIは、組み換え的に産生される。一部の実施形態では、FokIポリペプチドは、結合部分および/または検出部分などの追加部分にコンジュゲートされるか、またはタグ付けされる。文脈から明らかであるように、一部の実施形態では、用語「FokI」は、FokIポリペプチドまたはその断片もしくはバリアントを指すために使用され、一部の実施形態では、FokIは、FokIポリペプチドならびにその断片およびバリアントをコードする核酸を指すために使用される。
【0033】
断片:本明細書に記載される生物学的分子の「断片」は、全体の別個の部分を含むが、全体に見られる一つ以上の部分(例えば、一つ以上のアミノ酸を欠くポリペプチド)を欠く構造を有する。一部の実施形態では、断片は、こうした別個の部分からなる。一部の実施形態では、断片は、全体(例えば、ポリペプチドドメイン)に見られる特徴的な構造要素または部分からなるか、またはこれを含む。一部の実施形態では、生体分子は、ポリマー(例えば、核酸ポリマーまたはポリペプチド)である。一部の実施形態では、ポリマー断片は、ポリマー全体に見られる、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500個またはそれ以上の単量体単位(例えば、残基)を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、ポリマー断片は、ポリマー全体に見られる単量体単位(例えば、残基)の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、25%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上を含むか、またはこれらからなる。一部の実施形態では、生物学的分子全体は、全体の「親」と言及することができる。
【0034】
融合:「融合分子」は、二つ以上のサブユニット分子が、好ましくは共有結合している分子である。サブユニット分子は、同じ化学型の分子であってもよいか、または異なる化学型の分子であってもよい。同一の化学型の分子の融合の例としては、融合タンパク質(例えば、FokI切断ドメインへのジンクフィンガータンパク質またはTALEN DNA結合ドメインの間の融合)および融合核酸(例えば、上記の融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。異なる化学型の分子の融合物の例としては、核酸とポリペプチドの融合物(例えば、RNA分子とFokI切断ドメインとの間の融合物)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
遺伝子:本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、産物(例えば、RNA産物および/またはポリペプチド産物)をコードするDNA配列を指す。一部の実施形態では、遺伝子は、コード配列(すなわち、特定の産物をコードする配列)を含み、一部の実施形態では、遺伝子は、非コード配列を含む。一部の特定の実施形態では、遺伝子は、コード(例えば、エクソン)配列および非コード(例えば、イントロン)配列の両方を含み得る。一部の実施形態では、遺伝子は、例えば、遺伝子発現の一つ以上の態様(例えば、細胞型特異的発現、誘導可能な発現など)を制御するか、またはそれに影響を与え得る、一つ以上の調節因子を含み得る。
【0036】
遺伝子または細胞療法:本明細書で使用される場合、「遺伝子または細胞療法」という用語は、このような療法が求められている障害または状態を治療または予防するための特定のゲノムDNA配列の挿入または欠失を指す。一部の実施形態では、ゲノムDNA配列の挿入または欠失は、特定の細胞(すなわち、標的細胞)で生じる。標的細胞は、哺乳類由来であってもよく、および/または哺乳類対象中の細胞であってもよい。哺乳類には、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ラマ、非ヒト霊長類などが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、異種DNAは、標的細胞に伝達される。異種DNAは、異種DNAが発現され、それによってコードされる治療産物が産生されるように、選択された標的細胞に導入され得る。加えて、または代わりに、異種DNAは、何らかの方法で、治療用産物をコードするDNAの発現を仲介することができるか、または何らかの方法で治療産物の発現を直接または間接的に仲介するペプチドまたはRNAなどの産物をコードすることができる。遺伝子療法または細胞療法を使用して、欠陥遺伝子を置換するか、またはそれが導入される哺乳類もしくは細胞により産生される遺伝子産物を追加する、遺伝子産物をコードする核酸を送達することができる。治療産物をコードする異種DNAは、産物またはその発現を増強するか、またはそうでなければ変化させるために、罹患した対象の細胞内への導入前に修飾することができる。遺伝子療法または細胞療法はまた、遺伝子発現の阻害剤、抑制剤、または他の調節因子の送達を伴い得る。遺伝子療法には、in vivoまたはex vivo技術が含まれ得る。一部の実施形態では、遺伝子療法または細胞療法は、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、またはRNAガイドFokIヌクレアーゼ(RFN)をコードする核酸を投与することを含む。一部の実施形態では、ウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入方法を使用して、TALEN、ZFN、またはRFNをコードする核酸を哺乳類細胞または標的組織に導入することができる。このような方法を使用して、TALEN、ZFNまたはRFNをコードする核酸をin vitroで細胞に投与することができる。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、およびポロクサマーまたはリポソームなどの送達ビヒクルと複合体化された核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソームまたは統合されたゲノムのいずれかを有するDNAおよびRNAウイルスを含む。遺伝子療法手法の概要については、例えば、Anderson,Science 256:808-813(1992);Miller,Nature 357:455-460(1992);Feuerbach et al.,Kidney International 49:1791-1794(1996);Urnov et al.,Nature Reviews Genetics 11, 636-646(2010);and Collins et al.,Proceedings Biologicial Sciences/The Royal Society,282(1821):pii 20143003(2015)を参照のこと。
【0037】
ゲノム:本明細書で使用される場合、「ゲノム」という用語は、その染色体の完全なDNA配列によって表される、個々の生物または細胞によって運ばれる総遺伝情報を指す。
【0038】
高親和性結合:本明細書において使用される場合、「高親和性結合」という用語は、特定のリガンドが、そのパートナーに結合する高い程度の堅固さを指す。親和性は、当該技術分野で公知のものを含む、任意の利用可能な方法によって測定することができる。一部の実施形態では、Kdが、結合アッセイにおいて約500pM以下(例えば、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約20pM、約10pM、約5pM、約4pM、約3pM、約2pM未満など)である場合、結合は、高い親和性であるとみなされる。一部の実施形態では、親和性が、選択された参照ポリペプチドよりも対象のポリペプチドに対してより強い(例えば、Kdがより低い)場合、結合は、高い親和性であるとみなされる。一部の実施形態では、選択された参照ポリペプチドについてのKdに対する対象のポリペプチドについてのKdの比が、1:1以下(例えば、0.9:1、0.8:1、0.7:1、0.6:1、0.5:1.0.4:1、0.3:1、0.2:1、0.1:1、0.05:1、0.01:1、またそれ未満)である場合、結合は、高い親和性であるとみなされる。一部の実施形態では、対象のポリペプチドについてのKdが、選択される参照ポリペプチドについてのKdの約100%以下(例えば、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%またはそれ未満)である場合、結合は、高い親和性であるとみなされる。
【0039】
相同性:本明細書で使用される場合、「相同性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/もしくはRNA分子)間、ならびに/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。一部の実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である場合、互いに「相同」であるとみなされる。一部の実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%類似する場合、互いに「相同」であるとみなされる。
【0040】
In vitro:本明細書で使用される場合、「in vitro」という用語は、多細胞生物内ではなく、人工環境、例えば、試験管または反応容器中、細胞培養中などで生じる事象を指す。
【0041】
In vivo:本明細書で使用される場合、ヒトおよび非ヒト動物などの多細胞生物内で生じる事象を指す。細胞ベースのシステムの文脈において、用語は、生きている細胞内で生じる事象(例えば、in vitroシステムと対称的)を指すために使用され得る。
【0042】
単離された:本明細書で使用される場合、(1)(天然において、および/または実験環境のいずれで)最初に生産されたとき、それが関連した構成要素の少なくとも一部から分離された物質および/または実体、ならびに/あるいは(2)人の手によって設計、産生、調製、および/もしくは製造された物質ならびに/または実体を指す。単離された物質および/または実体は、それらが最初に結合した他の成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%より高い他の成分から分離され得る。一部の実施形態では、単離された作用物質は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%より高い純度である。本明細書で使用される場合、物質は、他の成分を実質的に含まない場合、純粋である。一部の実施形態では、当業者によって理解されるように、物質は、例えば、一つ以上の担体または賦形剤(例えば、緩衝液、溶媒、水など)などの特定の他の構成要素と組み合わせた後、依然として「単離された」またはさらには「純粋」であるとみなすことができ、このような実施形態では、物質の単離の割合または純度は、このような担体または賦形剤を含まずに計算される。一例を挙げると、一部の実施形態では、天然で生じるポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生物学的ポリマーは、a)その起源または派生源により、天然でその天然の状態でそれに付随する構成成分の一部または全てと関連しないとき、b)天然でそれを生じる種と同じ種の他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まないとき、c)天然でそれを生じる種のものではない細胞または他の発現系によって発現されるか、またはそうでなければ、それ由来の構成成分と関連するとき、「単離された」とみなされる。したがって、例えば、一部の実施形態では、化学的に合成されるか、またはそれを天然で生じるものと異なる細胞システムで合成されたポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドであるとみなされる。あるいはまたは加えて、一部の実施形態では、一つ以上の精製技術に供されたポリペプチドは、a)それが天然で関連する、および/またはb)それが、最初に産生されたとき、関連した、他の構成成分から分けられている限りにおいて、「単離された」ポリペプチドであるとみなされる。
【0043】
リンカー:本明細書で使用される場合、異なる要素を互いに結合する多要素ポリペプチドのその部分を指すために使用される。例えば、当業者は、その構造が、二つ以上の機能的ドメインまたは組織的ドメインを含むポリペプチドは、多くの場合、それらを互いに連結するこのようなドメイン間のアミノ酸の区間を含むことを理解する。一部の実施形態では、リンカー要素を含むポリペプチドは、一般的な形態S1-L-S2(式中、S1およびS2は、同一であっても異なっていてもよく、リンカーによって互いに結合される二つのドメインを表す)の全体構造を有する。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100またはそれ以上のアミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、それが、剛直な三次元構造を採用しない傾向があるが、むしろポリペプチドに柔軟性をもたらすという点で特徴付けられる。当技術分野で公知(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1 121-1123を参照のこと)のポリペプチド(例えば融合ポリペプチド)を操作するときに適当に使用することができる様々な異なるリンカー要素がある。
【0044】
核酸:本明細書で使用される場合、その最も広い意味で、「核酸」という用語は、オリゴヌクレオチド鎖に組み込まれるか、または組み込まれ得る任意の化合物および/または物質を指す。一部の実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合を介してオリゴヌクレオチド鎖に組み込まれるか、または組み込まれ得る化合物および/または物質である。文脈から明らかであるように、一部の実施形態では、「核酸」は、個々の核酸残基(例えば、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)を指し、一部の実施形態では、「核酸」は、個々の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を指す。一部の実施形態では、「核酸」は、RNAであるか、またはRNAを含み、一部の実施形態では、「核酸」は、DNAであるか、またはDNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、一つ以上の天然の核酸残基であるか、またはこれを含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、核酸は、一つ以上の核酸類似体であるか、またはこれを含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、核酸は、RNAまたはタンパク質などの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸は、一つ以上のイントロンを含む。一部の実施形態では、核酸は、天然の供給源からの単離、相補的鋳型(in vivoまたはin vitro)に基づく重合による酵素合成、組み換え細胞またはシステムでの複製、および化学合成のうちの一つ以上によって調製される。一部の実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000またはそれ以上の残基長である。一部の実施形態では、核酸は、一本鎖であり、一部の実施形態では、核酸は、二本鎖である。一部の実施形態では、核酸は、ポリペプチドをコードするか、またはポリペプチドをコードする配列の相補鎖である少なくとも一つの要素を含むヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸は、酵素活性を有する。
【0045】
生理学的条件:本明細書で使用される場合、細胞または生物が生存および/または繁殖する条件を指す、当該技術分野で理解される意味を有する。一部の実施形態では、用語は、生物または細胞システムについて天然で生じ得る外部または内部環境の条件を指す。一部の実施形態では、生理学的条件は、ヒトまたは非ヒト動物の体内に存在するその条件、特に、外科手術部位および/または外科手術部位内に存在するその条件である。生理学的条件は、典型的には、例えば、約20~約40℃の温度範囲、約1の大気圧、約6~約8のpH、約1~約20mMのグルコース濃度、大気レベルでの酸素濃度、および地球上で遭遇する重力を含む。一部の実施形態では、実験室での条件は、生理学的条件において操作され、および/または維持される。一部の実施形態では、生理学的条件は、生物において遭遇する。
【0046】
ポリペプチド:本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、概して、少なくとも三つのアミノ酸のポリマーの当該技術分野で認識された意味を有する。当業者は、「ポリペプチド」という用語が、本明細書に列挙される完全配列を有するポリペプチドを包含するだけでなく、このような完全ポリペプチドの機能的断片(すなわち、少なくとも一つの活性を保持する断片)を表すポリペプチドを包含するのに十分に一般的であることが意図されていることを理解する。さらに、当業者は、タンパク質配列は、活性を破壊することなく、概して何らかの置換を許容することを理解する。したがって、活性を保持し、さらには、通常、一つ以上の高度に保存された領域におけるずっと高い、頻繁には、90%、または95%、96%、97%、98%、もしくは99%より高い同一性の少なくとも一つの領域を含み、通常、同じクラスの別のポリペプチドと、少なくとも3~4個、頻繁には、最大20個以上のアミノ酸を包含する、少なくとも約30~40%、頻繁には、約50%、60%、70%、または80%より高い全体的な配列同一性を共有する任意のポリペプチドは、本明細書で使用される関連する用語「ポリペプチド」内に包含される。ポリペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、またはその両方を含有してもよく、当該技術分野で公知の様々なアミノ酸修飾または類似体のいずれかを含有してもよい。有用な修飾としては、例えば、末端アセチル化、アミド化、メチル化などが挙げられる。一部の実施形態では、タンパク質は、天然のアミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、およびそれらの組み合わせを含み得る。用語「ペプチド」は、一般的に、約100アミノ酸未満、約50アミノ酸未満、20アミノ酸未満、または10アミノ酸未満の長さを有するポリペプチドを指すために使用される。一部の実施形態では、タンパク質は、抗体、抗体断片、その生物学的に活性な部分、および/またはその特徴的な部分である。
【0047】
タンパク質:本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、別個の単位として機能する一つ以上のポリペプチドを指す。単一のポリペプチドが、別個の機能単位であり、別個の機能単位を形成するために他のポリペプチドとの永久的または一時的な物理的結合を必要としない場合、用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、互換的に使用することができる。別個の機能単位が、互いに物理的に結合する一つより多くのポリペプチドを含む場合、用語「タンパク質」は、別個の単位として物理的に結合し、一体となって機能する複数のポリペプチドを指すために使用することができる。一部の実施形態では、タンパク質は、アミノ酸以外の部分(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカンなど)を含むことができ、および/またはそうでなければ、処理もしくは修飾することができる。当業者は、一部の実施形態では、用語「タンパク質」は、細胞(例えば、シグナル配列を有するか、または有さない)によって産生される完全なポリペプチド鎖、および/または細胞内で活性である形態(例えば、切断または複合体化された形態)を指し得ることを理解する。タンパク質が、複数のポリペプチド鎖からなる一部の実施形態では、このような鎖は、例えば、一つ以上のジスルフィド結合によって、互いに共有結合されてもよく、または他の手段によって結合されてもよい。
【0048】
参照:科学的文脈で本明細書で使用される場合、比較が行われる標準または対照を記載する。例えば、一部の実施形態では、対象の作用物質、動物、個体、集団、試料、配列または値が、参照または対照の作用物質、動物、個体、集団、試料、配列または値と比較される。一部の実施形態では、参照または対照は、対象の試験または決定と実質的に同時に試験され、および/または同定される。一部の実施形態では、参照または対照は、任意選択的に物的培地に具体化された、歴史的参照または対照である。典型的には、当業者によって理解されるように、参照または対照は、評価中のものと同等の条件または状況下で決定されるか、または特徴付けられる。当業者は、特定の可能性のある参照または対照に対する信頼および/または比較を正当化するのに十分な類似性が存在するときを理解する。
【0049】
試料:本明細書で使用される場合、用語「試料」は、典型的には、本明細書に記載されるように、対象の供給源から得られた、またはもたらされた生物学的試料を指す。一部の実施形態では、対象の供給源は、動物またはヒトなどの生物を含む。一部の実施形態では、生物学的試料は、生物学的組織もしくは液体であるか、またはこれを含む。一部の実施形態では、生物学的試料は、骨髄;血液;任意のタイプの血液細胞(例えば、T細胞);腹水;組織または微細針生検試料;細胞含有体液;遊離浮遊核酸;痰;唾液;尿;脳脊髄液、腹水;胸膜液;糞便;リンパ液;婦人科体液;皮膚スワブ;膣スワブ;口腔スワブ;鼻腔スワブ;乳管洗浄液もしくは気管支肺胞洗浄液などの洗い液または洗浄液;吸引液;擦過物;骨髄標本;組織生検標本;外科手術標本;糞便、他の体液、分泌物、および/あるいは排泄物;ならびに/あるいはそれ由来の細胞等であるか、またはこれを含み得る。一部の実施形態では、生物学的試料は、個体から得られた細胞であるか、またはこれを含む。一部の実施形態では、得られた細胞は、試料が得られた個体由来の細胞であるか、またはこれを含む。一部の実施形態では、試料は、任意の適切な手段によって、対象の供給源から直接得られた「一次試料」である。例えば、一部の実施形態では、一次生物学的試料は、生検(例えば、微細針吸引または組織生検)、外科手術、体液(例えば、血液、リンパ液、糞便など)の収集などからなる群から選択される方法によって得られる。一部の実施形態では、文脈から明らかであるように、用語「試料」は、一次試料を処理することによって(例えば、一つ以上の成分を除去することによって、および/または一つ以上の薬剤を加えることによって)得られる調製物を指す。例えば、半透過性膜を使用した濾過。このような「処理した試料」は、例えば、試料から抽出された、またはmRNAの増幅もしくは逆転写、特定の構成要素の単離および/もしくは精製などの技術に一次試料を供することによって得られた、核酸またはタンパク質を含み得る。
【0050】
特異的結合:本明細書で使用される場合、結合が生じる環境において、可能性のあるパートナーを区別する結合剤の能力を指す。他の潜在的な標的が存在するとき、一つの特定の標的と相互作用する結合剤は、それが相互作用する標的と「特異的に結合する」と言われる。一部の実施形態では、特異的結合は、結合剤とそのパートナーとの間の結合の程度を検出または決定することによって評価され、一部の実施形態では、特異的結合は、結合剤-パートナー複合体の解離の程度を検出または決定することによって評価され、一部の実施形態では、特異的結合は、そのパートナーと別の実体との間の代替相互作用を競合する結合剤の能力を検出または決定することによって評価される。一部の実施形態では、特異的結合は、濃度範囲にわたってこのような検出または決定を行うことによって評価される。
【0051】
対象:「対象」とは、哺乳類(例えば、ヒト、一部の実施形態では、出生前ヒト形態を含むヒト)を意味する。一部の実施形態では、対象は、関連する疾患、障害または状態に罹患している。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害または状態に罹患しやすい。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害または状態の一つ以上の症状または特徴を呈する。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害または状態の症状または特徴を呈さない。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害または状態に対する感受性またはリスクに特徴的な一つ以上の特性を有するものである。一部の実施形態では、対象は患者である。一部の実施形態では、対象は、診断および/または治療が投与されている、および/または将来的に投与される個人である。
【0052】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、対象の特徴または特性の合計またはほぼ合計の範囲または程度を示す定性的状態を指す。生物学的技術における当業者は、生物学的および化学的現象が、完了まで進むこと、および/または完全まで進むこと、または絶対的な結果を達成もしくは回避することは稀、極めて稀であると理解する。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的および化学的現象における固有の完全性の潜在的な欠如を捉えるために本明細書で使用される。
【0053】
バリアント:本明細書で使用される場合、用語「バリアント」は、参照実体との有意な構造同一性を示すが、参照実体と比較して、一つ以上の化学部分の存在またはレベルにおいて、参照実体と構造的に異なる実体を指す。多くの実施形態では、バリアントはまた、その参照実体と機能的に異なる。一般に、特定の実体が参照実体の「バリアント」であると適切にみなされるかどうかは、その参照実体との構造同一性の程度に基づく。当業者によって理解されるように、任意の生物学的または化学的参照実体は、特定の特徴的な構造要素を有する。バリアントは、定義により、一つ以上のこのような特徴的な構造要素を共有する別個の化学実体である。いくつか例を挙げると、小分子のバリアントが、コア構造要素および特徴的な垂れ下がり部分を共有するが、他の垂れ下がり部分および/またはコア内に存在する結合のタイプ(例えば、一重対二重、E対Zなど)が異なるものであり、ポリペプチドが、線形もしくは三次元空間において互いに関連する指定された位置を有し、および/または特定の生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸を含む特徴的配列要素を有することができ、核酸が、線形または三次元空間において互いに関連する指定された位置を有する複数のヌクレオチド残基を含む特徴的配列要素を有することができるように、小分子は、特徴的なコア構造要素(例えば、大環状分子コア)および/または一つ以上の特徴的垂れ下がり部分を有することができる。例えば、バリアントポリペプチドは、アミノ酸配列における一つ以上の差異および/またはポリペプチド骨格に共有結合された化学部分(例えば、炭水化物、脂質など)における一つ以上の差異の結果として、参照ポリペプチドとは異なり得る。一部の実施形態では、バリアントポリペプチドは、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である参照ポリペプチドとの全体的な配列同一性を示す。あるいは、または加えて、一部の実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドと少なくとも一つの特徴的な配列要素を共有しない。一部の実施形態では、参照ポリペプチドは、一つ以上の生物学的活性を有する。一部の実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドの生物学的活性のうちの一つ以上を共有する。一部の実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドの生物学的活性のうちの一つ以上を欠く。一部の実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドと比較して、低減したレベルの一つ以上の生物学的活性を示す。多くの実施形態では、対象のポリペプチドが、親のものと同一であるアミノ酸配列を有するが、特定の位置での少数の配列変化を有する場合、対象のポリペプチドは、親または参照ポリペプチドの「バリアント」であるとみなされる。典型的には、バリアントにおける残基の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満が、親と比較して置換されている。一部の実施形態では、バリアントは、親と比較して、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個の置換された残基を有する。頻繁には、バリアントは、非常に少数(例えば、5、4、3、2、または1未満)の置換された官能残基(すなわち、特定の生物学的活性に関与する残基)を有する。さらに、バリアントは、親と比較して、典型的には、5、4、3、2、もしくは1個以下の付加または欠失を有し、頻繁には、付加または欠失を有さない。さらに、任意の付加または欠失は、典型的には、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約10、約9、約8、約7、約6個未満であり、一般的には、約5、約4、約3、または約2個未満の残基である。一部の実施形態では、親または参照ポリペプチドは、天然で見出されるものである。一部の実施形態では、バリアントは操作されている。一部の実施形態では、バリアントは、天然に生じる。当業者であれば理解するように、対象の特定ポリペプチドの複数のバリアントは、天然で見出すことができる。
【0054】
ベクター:本明細書において使用される場合、連結された別の核酸を輸送する能力がある核酸分子を指す。ベクターの一つのタイプは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る円形の二本鎖DNAループを指す、「プラスミド」である。別のタイプのベクターは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクター)であり、追加のDNAセグメントを、ウイルスゲノムにライゲーションすることができる。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律的複製する能力がある(例えば、細菌の複製起源を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入される際に宿主細胞のゲノムに統合することができ、これによって、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが動作可能に連結された遺伝子の発現を指示する能力がある。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。
【0055】
標準的な技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のため使用することができる。酵素反応および精製技術は、製造元の仕様に従って、または当該技術分野で一般的に達成されるか、もしくは本明細書に記載されるように行うことができる。前述の技術および手法は、当該技術分野で周知の従来方法に従い、本明細書全体を通して引用および考察される様々な一般的かつより具体的な参考文献に記載されるように、概して行うことができる。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照のこと、これは参照により任意の目的で本明細書に組み込まれる。
【0056】
ジンクフィンガータンパク質:本明細書で使用される場合、「ジンクフィンガータンパク質」という用語は、核酸(例えば、DNA)に結合する能力があるものを通じて「ジンクフィンガードメイン」を含有するポリペプチドを指す。「ジンクフィンガードメイン」という用語は、亜鉛イオンによって安定化されたββα-折り畳みを含む、個々の「フィンガー」を指す。それぞれのジンクフィンガードメインは、典型的には、およそ30個のアミノ酸を含む。ジンクフィンガードメインは、主に構造的に独立しており、異なる環境においてそれらの構造および機能を保持することができる。
【0057】
本出願で使用される場合、「約」および「およそ」という用語は、均等物として使用される。約/およその有無に関わらず、本出願で使用される任意の数字は、当業者によって理解される任意の通常の変動をカバーすることを意味する。
【0058】
本開示の他の特性、目的、および利点は、以下の詳細な説明で明らかである。しかしながら、詳細な説明は、本開示の実施形態を示しながら、限定ではなく、例示の目的で提供されることは、理解されるべきである。本開示の範囲内の様々な変更および修正が、詳細な説明から当業者に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本開示は、TALENタンパク質および/またはFokI触媒DNA切断ドメインに結合する抗体、ならびにその使用を提供する。
【0060】
本明細書で使用される場合、抗体は、免疫学的に機能的な断片である抗体結合領域を含むが、これに限定されない。抗体の「免疫学的に機能的な断片」(または「断片」)という用語は、全長鎖に存在するアミノ酸の少なくとも一部を欠くが、標的抗原に特異的に結合する(例えば、FokIおよび/またはTALENタンパク質に結合する)能力が依然としてある抗体の部分(その部分がどのように得られるか、または合成されるかに関わらず)を含む抗体の一種である。こうした断片は、標的抗原に結合し、所与のエピトープに結合について、インタクトな抗体を含む他の抗原結合分子と競合しうるという点で、生物学的に活性である。一部の実施形態では、断片は中和断片である。一部の実施形態では、断片は、標的抗原の活性を遮断するか、または低減することができる(例えば、遮断効果)。一部の実施形態では、断片は、標的抗原の活性に拮抗し得る。
【0061】
特定の実施形態では、本開示の抗TALEN抗体は、クローン2299.2G3.C6、2299.5D4.C8、2299.6B3.B8.B6、2299.6G5.C7、または2299.7F11.B4として本明細書において同定される抗体であり、それぞれが、本明細書において提供され、標識される、重鎖および軽鎖アミノ酸、コード配列、可変配列、ならびにCDR配列を含む。一部の実施形態では、クローン2299.2G3.C6、2299.5D4.C8、2299.6B3.B8.B6、2299.6G5.C7、または2299.7F11.B4は、FokI触媒ドメインを含む分子に特異的に結合する。
【0062】
免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片は、scFv断片、Fab断片(Fab’、F(ab’)2など)、一つ以上の相補性決定領域(「CDR」)、二重特異性抗体(同じ鎖上の二つのドメイン間での対形成を可能にするにはあまりに短い、短いペプチドリンカーを介して結合された、軽鎖可変ドメインと同じポリペプチド上の重鎖可変ドメイン)、ドメイン抗体、二価抗原結合ドメイン(二つの抗原結合部位を含む)、多特異性抗原結合ドメイン、および1本鎖抗体を含むが、これらに限定されない。これらの断片は、ヒト、マウス、ラット、ラクダ類、またはウサギを含むがこれらに限定されない、任意の哺乳類に由来しうる。当業者によって理解されるように、抗原結合分子は、非タンパク質成分を含み得る。
【0063】
可変領域は、典型的に、3つの超可変領域(CDR)で結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を呈する。それぞれの対の二つの鎖のCDRは、典型的に、フレームワーク領域によって整列され、それにより特定のエピトープへの結合が可能となる。N末端からC末端まで、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方は、典型的に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。慣例により、重鎖中のCDR領域は、典型的にHC CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。軽鎖中のCDR領域は、典型的には、LC CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。
【0064】
一部の実施形態では、抗TALEN抗体は、抗体の全長の軽鎖または重鎖中に存在する一つ以上の相補性結合領域(CDR)を含み、一部の実施形態では、単一の重鎖および/または軽鎖またはその一部を含む。これらの断片は、組換えDNA技術によって産生されてもよく、またはインタクトな抗体を含む抗原結合ドメインの酵素的切断または化学的切断によって産生されてもよい。
【0065】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、その断片の抗体であり、その相補性決定領域(CDR)のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、軽鎖CDRであるCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに重鎖CDRであるCDR1、CDR2およびCDR3を含む、単鎖可変断片(scFv)である。
【0066】
フレームワーク、CDR、および可変ドメインのそれぞれへのアミノ酸の割り当ては、典型的には、Kabatナンバリング(例えば、Kabat et al.in Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,NIH Publication 91-3242,Bethesda Md.1991を参照)、Chothiaナンバリング(例えば、Chothia & Lesk,(1987),J Mol Biol 196:901-917;Al-Lazikani et al.,(1997)J Mol Biol 273:927-948;Chothia et al.,(1992)J Mol Biol 227:799-817;Tramontano et al.,(1990)J Mol Biol 215(1):175-82;および米国特許第7,709,226号を参照)、接触ナンバリング、またはAbMスキーム(Antibody Modeling program、Oxford Molecular)に従う。
【0067】
したがって、一部の実施形態では、本明細書に提示される抗TALEN抗体のCDRは、Kabatナンバリングスキームに従ってナンバリングされる。他の実施形態では、本明細書に提示される抗TALEN抗体のCDRは、Chothiaナンバリングスキームに従ってナンバリングされる。他の実施形態では、本明細書に提示される抗TALEN抗体のCDRは、接触ナンバリングスキームに従ってナンバリングされる。他の実施形態では、本明細書に提示される抗TALEN抗体のCDRは、AbMナンバリングスキームに従ってナンバリングされる。
【0068】
本明細書に記載される抗TALEN抗体のヒト化抗体は、公知の技術により調製することができる。一部の実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体は、抗TALEN抗体(またはその抗原結合部位のすべてまたは一部)の可変ドメインおよびヒト抗体に由来する定常ドメインを含む。代わりに、ヒト化抗体断片は、マウスまたはウサギモノクローナル抗体の抗原結合部位、およびヒト抗体に由来する可変ドメイン断片(抗原結合部位を欠く)を含み得る。操作されたモノクローナル抗体の産生のための手法には、Riechmann et al.,(1988) Nature 332:323,Liu et al.,(1987)Proc. Nat.Acad.Sci.USA 84:3439, Larrick et al.,(1989)Bio/Technology 7:934, and Winter et al.,(1993)TIPS 14:139に記載されるものが挙げられる。一部の実施形態では、キメラ抗体は、CDR移植抗体である。抗体をヒト化するための技術は、例えば、米国特許第5,869,619号、第5,225,539号、第5,821,337号、第5,859,205号、第6,881,557号、Padlan et al.,(1995)FASEB J.9:133-39、Tamura et al.,(2000)J.Immunol. 164:1432-41;Zhang et al.,(2005)Mol. Immunol.42(12):1445-1451;Hwang et al.,Methods.(2005)36(1):35-42、Dall’Acqua et al.,(2005)Methods 36(1):43-60、およびClark,(2000)Immunology Today 21(8):397-402において考察される。
【0069】
抗TALEN抗体のバリアントもまた、本開示の範囲内であり、例えば、それぞれが本明細書に記載される抗原結合ドメイン配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70~80%、80~85%、85~90%、90~95%、95~97%、97~99%、または99%を超える同一性を有する可変軽鎖および/または可変重鎖である。一部の実施形態では、抗イディオタイプ抗体は、表1aに提供される重鎖可変領域配列および/または表1bに提供される軽鎖可変配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一である。
【0070】
ある場合では、こうした分子は、少なくとも一つの重鎖および一つの軽鎖を含むが、他の場合では、バリアント形態は、二つの可変軽鎖および二つの可変重鎖(またはそれらの一部分)を含む。当業者は、周知の技術を使用して、本明細書に記載される抗TALEN抗体の適当なバリアントを決定することができる。特定の実施形態では、当業者は、活性に重要とは考えられない領域を標的化することによって、抗原結合活性を破壊することなく変化させることができる、分子の適切な領域を同定することができる。
【0071】
本開示の抗TALEN抗体はまた、完全ヒトモノクローナル抗体であってもよい。完全ヒトモノクローナル抗体は、当業者が精通する多数の任意の技術によって生成することができる。こうした方法には、ヒト末梢血細胞(例えば、Bリンパ球を含有する)のエプスタイン・バーウイルス(EBV)形質転換、ヒトB細胞のin vitro免疫化、挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を担持する免疫された遺伝子導入マウス由来の脾臓細胞の融合、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリーからの単離、または当該技術分野で公知であり、本明細書の開示に基づく他の手法が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
TALENタンパク質および/またはFokI触媒ドメインに特異的に結合する抗TALEN抗体は、第二の標的に結合するときよりも、より強く一つの標的に結合するとき、「選択的」であると言われる。TALENタンパク質および/またはFokI触媒ドメインに特異的に結合する抗TALEN抗体は、解離定数(Kd)がナノモル範囲(例えば、約1nM)にあるとき、その標的抗原(例えば、TALENタンパク質および/またはFokI触媒ドメイン)に「特異的に結合する」と言われる。抗原結合ドメインは、Kdが1~5nMであるとき、「高親和性」で抗原に特異的に結合し、Kdが0.1~0.5nMであるとき、「超高親和性」で抗原に特異的に結合する。一実施形態では、抗原結合ドメインは、約1nMのKdを有する。一実施形態では、オフレートは、<1×10-5である。他の実施形態では、抗原結合ドメインは、TALENタンパク質およびFokI触媒ドメインを含む分子に、約1×10-7M~1×10-12MのKdで結合し、なお別の実施形態では、抗原結合ドメインは、約1×10-5~1×10-12のKdで結合する。
【0073】
本明細書に提供されるように、本開示の抗TALEN抗体は、TALENタンパク質および/またはFokIヌクレアーゼドメイン(例えば、配列番号1)に特異的に結合する。特定の実施形態では、本開示の抗TALEN抗体は、TALENタンパク質および/またはFokI触媒ドメインに、1×10-6M未満、1×10-7M未満、1×10-8M未満、または1×10-9M未満のKDで結合する。ある特定の実施形態では、抗TALEN抗体は、TALENタンパク質および/またはFokI触媒ドメインに、1×10-7M未満のKDで結合する。別の実施形態では、抗TALEN抗体は、TALENタンパク質および/またはFokI触媒ドメインに、1×10-8M未満のKDで結合する。一部の実施形態では、抗TALEN抗体は、TALENタンパク質および/またはFokI触媒ドメインに、約1×10-7M、約2×10-7M、約3×10-7M、約4×10-7M、約5×10-7M、約6×10-7M、約7×10-7M、約8×10-7M、約9×10-7M、約1×10-8M、約2×10-8M、約3×10-8M、約4×10-8M、約5×10-8M、約6×10-8M、約7×10-8M、約8×10-8M、約9×10-8M、約1×10-9M、約2×10-9M、約3×10-9M、約4×10-9M、約5×10-9M、約6×10-9M、約7×10-9M、約8×10-9M、約9×10-9M、約1×10-10M、または約5×10-10MのKdで結合する。特定の実施形態では、Kdは、Koff/Konの商として計算され、KonおよびKoffは、例えば、BIAcore(登録商標)表面プラズモン共鳴技術によって測定される、Fab断片などの一価抗体を使用して決定される。他の実施形態では、Kdは、Koff/Konの商として計算され、KonおよびKoffは、例えば、BIAcore(登録商標)表面プラズモン共鳴技術によって測定される、Fab断片などの二価抗体を使用して決定される。
【0074】
一部の実施形態では、抗TALEN抗体は、TALENタンパク質および/またはFokI触媒ドメインに、1×10-4M-1s-1未満、2×10-4M-1s-1未満、3×10-4M-1s-1未満、4×10-4M-1s-1未満、5×10-4M-1s-1未満、7×10-4M-1s-1未満、8×10-4M-1s-1未満、9×10-4M-1s-1未満、1×10-5M-1s-1未満、2×10-5M-1s-1未満、3×10-5M-1s-1未満、4×10-5M-1s-1未満、5×10-5M-1s-1未満、6×10-5M-1s-1未満、7×10-5M-1s-1未満、8×10-5M-1s-1未満、9×10-5M-1s-1未満、1×10-6M-1s-1未満、2×10-6M-1s-1未満、3×10-6M-1s-1未満、4×10-6M-1s-1未満、5×10-6M-1s-1未満、6×10-6M-1s-1未満、7×10-6M-1s-1未満、8×10-6M-1s-1未満、9×10-6M-1s-1未満、または1×10-7M-1s-1未満の会合速度(kon)で結合する。特定の実施形態では、konは、例えば、BlAcore(登録商標)表面プラズモン共鳴技術によって測定されるFab断片などの一価抗体を使用して決定することができる。他の実施形態では、konは、例えば、BlAcore(登録商標)表面プラズモン共鳴技術によって測定される二価抗体を使用して決定される。
【0075】
一部の実施形態では、抗TALEN抗体は、TALENタンパク質および/またはFokI触媒ドメインに、1×10-2s-1未満、2×10-2s-1未満、3×10-2s-1未満、4×10-2s-1未満、5×10-2s-1未満、6×10-2s-1未満、7×10-2s-1未満、8×10-2s-1未満、9×10-2s-1未満、1×10-3s-1未満、2×10-3s-1未満、3×10-3s-1未満、4×10-3s-1未満、5×10-3s-1未満、6×10-3s-1未満、7×10-3s-1未満、8×10-3s-1未満、9×10-3s-1未満、1×10-4s-1未満、2×10-4s-1未満、3×10-4s-1未満、4×10-4s-1未満、5×10-4s-1未満、6×10-4s-1未満、7×10-4s-1未満、8×10-4s-1未満、9×10-4s-1未満、1×10-5s-1未満、または5×10-4s-1未満の解離定数(koff)で結合する。特定の実施形態では、koffは、例えば、BlAcore(登録商標)表面プラズモン共鳴技術によって測定されるFab断片などの一価抗体を使用して決定される。その他の実施形態では、koffは、例えば、BlAcore(登録商標)表面プラズモン共鳴技術によって測定される二価抗体を使用して決定される。
【0076】
本明細書で提供される抗TALEN抗体は、可変重鎖(VH)を含むTALENタンパク質および/またはFokI触媒ドメインに結合し、VHのアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、表1aに提示されるVH配列から選択される。抗TALEN抗体は、可変重鎖(VH)を含むFokI触媒ドメインに特異的に結合し、VHのアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、表1aに提示されるVH配列から選択される。一部の実施形態では、VHアミノ酸配列は、表1aに提示されるVH配列に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一である。Kabat CDR定義は、太字で示され、Chothia CDR定義は、下線を付される。
【0077】
【0078】
可変軽鎖(VL)を含むFok1触媒ドメインに特異的に結合する抗TALEN抗体が、本明細書で提供され、VLのアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、表1bに提示されるVL配列から選択される。一部の実施形態では、VLアミノ酸配列は、表1bに提示されるVL配列に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一である。Kabat CDR定義は、太字で示され、Chothia CDR定義は、下線を付される。
【0079】
【0080】
Fok1触媒ドメインに特異的に結合する抗TALEN抗体が、本明細書に提供され、抗TALEN抗体は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHのアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、表1aに提示されるVH配列から選択され、VLのアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、表1bに提示されるVL配列から選択される。
【0081】
一部の実施形態では、Fok1触媒ドメインに特異的に結合する抗TALEN抗体は、表1aに提示されるVH配列のVH CDR 1、CDR2、およびCDR3を含む。一部の実施形態では、VH CDR 1、CDR2、およびCDR3は、表1cに提示されるCDR配列から選択される。
【0082】
【0083】
一部の実施形態では、Fok1触媒ドメインに特異的に結合する抗TALEN抗体は、表1bに提示されるVL配列のVL CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。一部の実施形態では、VH CDR 1、CDR2、およびCDR3は、表1dに提示されるCDR配列から選択される。
【0084】
【0085】
本明細書に開示される方法の実施、ならびに組成物の調製および使用は、別段の示唆がない限り、分子生物学、生化学、計算化学、タンパク質工学、抗体構造および機能、細胞培養、組み換えDNAおよび当該技術分野の技術内である関連する分野を利用する。これらの技術は、文献で完全に説明されている。例えば、Sambrook et al.MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989 and Third edition,2001 and subsequent editions;Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987 and periodic updates;シリーズのMETHODS IN ENZYMOLOGY, Academic Press,San Diego;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998および続編を参照のこと。
【0086】
ゲノム編集技術
TALエフェクターヌクレアーゼ
TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、典型的には、DNAの特定の配列を切断するように操作され得る制限酵素を指す。これらは概して、TALエフェクターDNA結合ドメインおよびDNA切断ドメイン、すなわちDNA鎖を切断するヌクレアーゼを含む。TALエフェクター(TALE)は、任意の所望のDNA配列に実質的に結合するよう操作することができる。したがって、TALENは、in situで遺伝子編集またはゲノム編集に使用するために、細胞内に導入することができる。
【0087】
野生型FokI切断ドメイン、FokIエンドヌクレアーゼの一部、FokI切断ドメインバリアント、例えば、切断特異性および切断活性を改善するよう設計された変異を有するものを含むが、これらに限定されない、様々な非特異的DNA切断ドメインは、TALEN構築物において使用することができる。一部の実施形態では、FokIドメインは、適切な配向および間隔を有する標的ゲノムについてのDNA結合ドメインを有する二つの構築物を含む、二量体として機能する。一部の実施形態では、TALENは、エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)切断ドメインまたは切断半ドメインを含む。開示された抗体は、標的化組み込みを含む、任意のTALEN介在性遺伝子編集のため使用することができ、ヌクレアーゼ介在性標的化組み込みのための方法および組成物は、国際公開第2015127439A1号に記載されており、これは参照によりその全体が組み込まれる。
【0088】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインおよびDNA切断(すなわち、ヌクレアーゼ)ドメイン(例えば、FokI)を含むタンパク質キメラである。ZFNは、DNA分子内の特定の位置で二重鎖切断(DSB;二本鎖DNA分子の両方の鎖の同じまたは非常に近い点で切断)を導入することができ、その後、標的ゲノム領域を無効化、置換、挿入、または編集するために使用することができる。
【0089】
ジンクフィンガーは、真核生物に見られる最も一般的なDNA結合モチーフの一つである。これらのタンパク質は、亜鉛配位について利用可能なシステイン残基およびヒスチジン残基の数および位置に従って分類される。ジンクフィンガーは、二つの抗平行鎖、およびαヘリックスからなる。亜鉛イオンは、このドメインタイプの安定性に不可欠であり、金属イオンが存在しない場合、疎水性コアを有するには小さすぎるため、ドメインが展開される。ジンクフィンガーの一つの非常によく知られたサブセット(C2H2クラス)は、ベータ鎖中の一対のシステイン残基および亜鉛イオンの結合に関与するアルファヘリックス中の二つのヒスチジン残基を含む。ジンクフィンガータンパク質の他の二つのクラスは、C4およびC6クラスである。ジンクフィンガーは、DNAおよび亜鉛イオンと相互作用するとき、DNA結合タンパク質に特有の構造モチーフを提供するため、調節において重要である。それぞれの個々のフィンガーの構造は、高度に保存され、ββα折り畳みとして構築され、亜鉛イオンによって一緒になって保持される、約30個のアミノ酸残基からなる。α-ヘリックスは、フィンガーのC末端部分で生じ、一方、β-シートは、N末端部分で生じる。
【0090】
ZFNのDNA結合ドメインは、その仮定モジュール性により、2~8個のジンクフィンガーモチーフを含むことができる。一部の実施形態では、ZFNは、2、3、4、5、6、7、または8個のジンクフィンガーモチーフを含む。それぞれのジンクフィンガーモチーフは、典型的には、3塩基対配列を認識し、結合すると考えられ、したがって、より多くのジンクフィンガーを含むタンパク質は、より長い配列を標的とし、故に、標的部位に対するより高い特異性および親和性を有する。選択配列に結合するようジンクフィンガー結合ドメインを操作する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135-141;Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340;Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656-660;Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637;Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416を参照のこと。当技術分野で公知のジンクフィンガー操作方法には、合理的な設計および様々な種類の選択が含まれるが、これらに限定されない。合理的な設計は、例えば、三重(または四重)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用を含み、ここで、それぞれの三重または四重ヌクレオチド配列は、特定の三重または四重配列に結合するジンクフィンガーの一つ以上のアミノ酸配列と関連付けられる。例えば、米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照されたい。最終製品の必要な仕様に応じて、含まれるジンクフィンガーは、平行、連続または二重粒子技術を介して、またはin vitro細胞ベース技術を介して選択することができる。ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む、例示的な選択方法はまた、当該技術分野で公知であり、米国特許第5,789,538号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,410,248号;第6,140,466号;第6,200,759号;および第6,242,568号;ならびに国際特許公開第98/37186号;第98/53057号;第00/27878号;および第01/88197号を参照のこと。ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の強化は、例えば、国際公開第02/077227号に既に記載されている。
【0091】
FokIの非特異的ヌクレアーゼドメインは、その天然のDNA結合ドメインから機能的に独立しており、そのため、ZFNの構築において利用することができる。ドメインは、二量体化して二本鎖切断を達成しなければならないため、ヌクレアーゼは、図に示されるように、その標的配列に結合した別のZFN分子によっても対向鎖に結合される必要がある。両方の部位を標的とするZFNが存在する限り、二つの標的部位は同じである必要はない。二量体を形成するために、二つのZFN分子は、4~6塩基対以上離れているが、二量体化できないほど遠く離れていないそれぞれの認識部位と出会わなければならない。図に示すように、一つのZFN分子が一方の鎖のその標的配列に結合する一方、別のZFN分子が、反対の鎖のその標的配列に結合する。ヌクレアーゼドメインは二量体化し、それぞれが、それ自身の鎖を切断して、DSBを生じる。FokIは、ホモ二量体またはヘテロ二量体として使用することができる。一部の実施形態では、FokIは、ホモ二量体である。一部の実施形態では、FokIは、ヘテロ二量体である。
【0092】
RNAガイドFokIヌクレアーゼ
RNAガイドFokIヌクレアーゼ(RFN)は、Cas9ヌクレアーゼ(Cas9)DNA結合ドメインおよびDNA切断ドメイン(例えば、FokI切断ドメイン)を含むタンパク質キメラである。RFNは、5’末端での17~20ヌクレオチドの標的部位相補性を生じるガイドRNA(gRNA)の使用を通して、特定のDNA配列を特異的に標的にする。RFNは、DNA分子内の特定の位置で二重鎖切断(DSB;二本鎖DNA分子の両方の鎖の同じまたは非常に近い点で切断)を導入し、その後、標的ゲノム領域を無効化、置換、挿入、または編集するためのFokI DNA切断ドメインの二量体化を必要とする。
【0093】
CRISPR
CRISPR関連Casシステムは、短いRNAを使用してDNA切断複合体を特定のヌクレオチド配列にガイドするために、細菌および古細菌において進化してきた。CRISPR/Casシステムは、真核生物の細胞におけるゲノム編集に適合されている。Cas9はDNAを解放し、gRNAの20塩基対のスペーサー領域に対する相補性をチェックし、これにより、哺乳類細胞ゲノム中のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に先行するDNA配列を特異的に標的化する。DSBの導入は、二つの内因性DNA修復機序、すなわち、非相同末端結合(NHEJ)または相同性指向修復(HDR)のいずれか一つを通じた標的配列改変を可能にする。CRISPR/Casシステムは、標的配列を変化させない、転写抑制および活性化を含む遺伝子調節にも使用されてきた。CRISPR/Casシステムに基づく標的化遺伝子調節は、酵素的に不活性なCas9(dCas9)を使用する。プログラム可能なdCas9に関する追加のCas9の記載およびgRNA要件は、米国特許第14/536319号、第14/320498号、および第14/320467号に組み込まれているが、これらに限定されない。
【0094】
ゲノム編集システム
上述のように、TALEN、ZFN、およびRFNは、ゲノム中の標的部位に結合し、切断することができ、これにより、特に、修復鋳型がもたらされたとき、特定のDNA配列の挿入または欠失を可能にする。選択的切断は、DNA結合ドメイン(例えば、TALエフェクターDNA結合ドメイン)による配列特異的標的化、およびFokIヌクレアーゼによるDNA切断を通じて達成される。TALEN構築物が標的座位で二本鎖切断を生じた後、相同組み換え機構は、断片が元の配列を含有するかどうかに関わらず、損傷された染色体と染色体外断片との間の相同性を調べ、染色体の二つの切断された末端間の断片の配列をコピーし、ゲノム内への対象の遺伝子の挿入をもたらす。
【0095】
相同性介在性遺伝子編集に加えて、TALENアプローチはまた、非相同末端結合によって仲介される遺伝子編集(ノックアウトおよび挿入)にも適用することができる。
【0096】
一部の実施形態では、ゲノム編集システムは、標的化FokI仲介性ヌクレアーゼ活性を有する完全なTALENを形成するようにアセンブルする「半TALEN」をコードする、1、2、3、4、5、6、7、8個またはそれ以上の核酸構築物(複数可)を含む。一部の実施形態では、ゲノム編集システムは、標的化FokI仲介性ヌクレアーゼ活性を有する「半TALEN」をコードする二つまたは四つの核酸構築物を含む。一部の実施形態では、核酸は、二量体TALEN、または二つの「半TALEN」を含むTALENをコードする。
【0097】
一部の実施形態では、ゲノム編集システムは、ヌクレアーゼ切断後にゲノム挿入を受けるドナー配列を生じるポリヌクレオチド構築物を含む。一部の実施形態において、ドナー配列は、組み換えが望まれるゲノム配列に対して同一性を共有する一つ以上の相同領域(複数可)を有する。一部の実施形態において、ドナー配列は、組み換えが望まれるゲノム配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有する一つ以上の相同領域(複数可)を有する。一部の実施形態では、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、または99.9%の配列同一性が、相同領域にわたって存在する。ドナーポリヌクレオチドの長さに応じて、1%~100%の間の任意の値の配列同一性が存在し得る。
【0098】
一部の実施形態では、遺伝子療法の一部として、ドナーDNAが発現され、それによってコードされる治療産物が産生されるような様式で、DNAは、選択された標的細胞内に導入され得る。加えて、または代わりに、ドナーDNAは、何らかの方法で、治療用産物をコードするDNAの発現を仲介することができるか、または何らかの方法で治療産物の発現を直接または間接的に仲介するペプチドまたはRNAなどの産物をコードすることができる。一部の実施形態では、ドナーDNAは、遺伝子欠損または欠乏に起因する疾患または障害の治療または予防のための治療産物をコードする。一部の実施形態では、ドナーDNAは、遺伝子欠損または欠乏に起因する癌または任意の他の疾患もしくは障害の治療または予防のための治療産物をコードする。一部の実施形態では、ドナーDNAは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。
【0099】
ゲノム編集のための技術およびプロトコルは、当該技術分野で記載されている。例えば、米国特許第2005/0215502号;米国特許第2007/0134796号;国際公開第2005/084190号;国際公開第2014204578号、Urnov et al.,Nature Reviews Genetics 11,636-646(2010);Rahman et al.,Human Gene Therapy 22(8):925-933(2011);Tsai et al., Nature Biotechnology(2014)32: 569-576; and Collins et al., Proceedings Biological Sciences/The Royal Society,282(1821):pii 20143003(2015)を参照のこと。例えば、ゲノム編集は、in vivoまたはex vivo(例えば、in vitro)で行うことができる。一部の実施形態では、ウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入方法を使用して、TALEN、ZFN、またはRFNをコードする核酸を哺乳類細胞または標的組織に導入することができる。このような方法を使用して、TALEN、ZFNまたはRFNをコードする核酸をin vitroで細胞に投与することができる。一部の実施形態では、非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、およびポロクサマーまたはリポソームなどの送達ビヒクルと複合体化された核酸を含む。一部の実施形態では、TALEN、ZFNまたはRFNをコードする核酸は、エレクトロポレーションを介してトランスフェクトされる。一部の実施形態では、非ウイルス送達系は、マイクロインジェクションなどによる、TALEN、ZFNまたはRFNをコードするmRNAの直接導入を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソームまたは統合されたゲノムのいずれかを有するDNAおよびRNAウイルスを含む。ウイルスベクター送達系の例としては、インテグラーゼ欠損レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスに基づくベクターが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、ゲノム編集システムの構成要素は、対象に投与される前に混合される。一部の実施形態では、ゲノム編集システムの構成要素は、別々に投与される。ゲノム編集構成要素の別個の投与は、本質的に同時、連続、または決定された期間によって分けられ得る。
【0100】
試料におけるFokIを検出および/または測定するための高感度かつ信頼性の高い方法が、本明細書に記載される。本明細書に示されるように、これらの方法は、生理学的レベルでFokIを検出することができる。
【0101】
検出部分
本明細書で使用される検出部分は、当該技術分野で公知の任意の方法によって検出される能力がある任意の構造の部分を含む。検出部分は、検出可能である任意の要素、分子、官能基、化合物、断片または部分を指す。検出部分としては、放射性核種(例えば、3H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu、89Zrなど)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン色素、アクリジン色素、SYBR色素、ローダミン色素、オキサジン色素など)、化学発光剤(例えば、アクリジナムエステル、安定化ジオキサタンなど)、電気化学発光剤(例えば、スルホタグなど)、生物発光剤(例えば、ルシフェリンなど)、スペクトル分解可能な無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち、量子ドット)、金属ナノ粒子(例えば、金、銀、銅、白金など)、ナノクラスター、常磁性金属イオン、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、比色分析ラベル(例えば、色素、コロイド状金など)、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、および抗血清またはモノクローナル抗体が利用可能であるタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
一部の実施形態では、抗FokI抗体は、検出部分と結合する。抗FokI抗体は、検出部分と共有結合または非共有結合することができる。一部の実施形態では、検出部分は、スルホ-タグ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、FITC、ジゴキシゲニン、アクリダン、RPE、ルシフェリン、フルオロフォア、発色団、ラジオアイソトープ、またはビオチンから選択される。
【0103】
一部の実施形態では、検出部分は、電気化学発光(ECL)標識である。一般に、ECLベースのアッセイは、ラベル(ECLラベルと本明細書で称される)としての電気化学発光化合物の使用を伴う。電気化学発光する能力がある任意の化合物は、ECL標識として使用することができる。ECL標識の例には、金属が、例えば、Re、Ru、IrおよびOsを含む、VII属およびVIII属の金属に由来する、トリス-ビピリジル-ルテニウム(RuBpy)部分などの有機金属化合物が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、ECLラベルは、スルホ-タグ標識である。ECLプロセスにおいてECL標識と反応する種は、ECL共反応体と本明細書で呼ばれる。ECLのため一般的に使用される共反応体には、三級アミン(例えば、トリプロピルアミン(TPA))、シュウ酸塩、および過硫酸塩が含まれる。
【0104】
一部の実施形態では、抗TALEN抗体は、検出部分と結合する。検出部分は、共有結合を通じてまたは非共有結合結合を通じて抗TALEN抗体と結合することができる。抗TALEN抗体への検出部分の共有結合は、直接であってもよく、またはリンカーを通じてであってもよい。一部の実施形態では、検出部分は、ECLタグ(例えば、スルホ-タグ)、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、FITC、ジゴキシゲニン、アクリダン、RPE、ルシフェリン、フルオロフォア、発色団、ラジオアイソトープ、またはビオチンから選択される。
【0105】
本明細書に記載される抗TALEN抗体を、当該技術分野で公知の任意のアッセイにおいて使用して、イムノアッセイにおける検出部分の存在または強度を測定することができる。一部の実施形態では、分子(例えば、TALENタンパク質)を含むFokIの存在または不存在の検出は、当該技術分野において公知の任意の手段による電気化学発光、発光、蛍光、または吸光度の測定を含む。検出工程は、試料におけるFokIポリペプチドの量を決定するために使用され得る、定量的測定を伴うことができる。FokIの存在または強度を決定するための測定(複数可)は、手作業法によって行うことができるか、または分析器などの装置を使用して行うことができる。例えば、一部の実施形態では、検出部分は、カラー出力を生じることができる。方法は、着色された産物の視覚的外観を含むことができ、および/または分析器などの装置を使用して、カラー産物を検出または定量化することができる。一部の実施形態では、検出工程は、市販の装置を使用して行うことができる電気化学発光の測定を含む。
【0106】
一部の実施形態では、検出部分は、蛍光標識、フォトクロミック化合物、タンパク質性蛍光標識、磁気標識、放射標識、またはハプテンである。一部の実施形態では、検出可能な標識は、Atto色素、Alexa Fluor色素、量子ドット、ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン、Cascade Blue、Pacific Blue、Pacific Orange、ルシファーイエロー、NBD、R-フィコエリトリン(PE)、PE-Cy5結合体、PE-Cy7結合体、Red 613、PerCP、TruRed、FluorX、フルオレセイン、BODIPY-FL、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、TRITC、X-ローダミン、リサミンローカミンB、テキサスレッド、アロフィコシアニン(APC)、APC-Cy7結合体、Indo-1、Fluo-3、Fluo-4、DCFH、DHR、SNARF、GFP(Y66H変異)、GFP(Y66F変異)、EBFP、EBFP2、アズライト、GFPuv、T-サファイア、セルリアン、mCFP、mTurquoise2、ECFP、CyPet、GFP(Y66W変異)、mKeima-Red、TagCFP、AmCyan1、mTFP1、GFP(S65A変異)、ミドリシシアン、野生型GFP、GFP(S65C変異)、TurboGFP、TagGFP、GFP(S65L変異)、エメラルド、GFP(S65T変異)、EGFP、アザミグリーン、ZsGreen1、TagYFP、EYFP、トパーズ、ビーナス、mCitrine、YPet、TurboYFP、ZsYellow1、クサビラオレンジ、mOrange、アロフィコシアニン(APC)、mKO、TurboRFP、tdTomato、TagRFP、DsRedモノマー、DsRed2、mStrawberry、TurboFP602、AsRed2、mRFP1、J-Red、R-フィコエリトリン(RPE)、B-フィコエリヒリング(BPE)、mCherry、HcRed1、Katusha、P3、ペリジニンクロロフィル(PerCP)、mKate(TagFP635)、TurboFP635、mPlum、およびmRaspberryからなる群から選択される蛍光標識である。
【0107】
2型制限酵素FokI
FokIは、フラボバクテリウム・オケアノコイテス(Flavobacterium okeanokoites)において天然で見られる細菌のIIS型制限酵素である。天然のFokIは、N末端のDNA結合ドメインおよびC末端の非特異的DNA切断ドメインからなる。(UniProt登録番号P14870)全長野生型FokIアミノ酸配列は、MFLSMVSKIRTFGWVQNPGKFENLKRVVQVFDRNSKVHNEVKNIKIPTLVKESKIQKELVAIMNQHDLIYTYKELVGTGTSIRSEAPCDAIIQATIADQGNKKGYIDNWSSDGFLRWAHALGFIEYINKSDSFVITDVGLAYSKSADGSAIEKEILIEAISSYPPAIRILTLLEDGQHLTKFDLGKNLGFSGESGFTSLPEGILLDTLANAMPKDKGEIRNNWEGSSDKYARMIGGWLDKLGLVKQGKKEFIIPTLGKPDNKEFISHAFKITGEGLKVLRRAKGSTKFTRVPKRVYWEMLATNLTDKEYVRTRRALILEILIKAGSLKIEQIQDNLKKLGFDEVIETIENDIKGLINTGIFIEIKGRFYQLKDHILQFVIPNRGVTKQLVKSELEEKKSELRHKLKYVPHEYIELIEIARNSTQDRILEMKVMEFFMKVYGYRGKHLGGSRKPDGAIYTVGSPIDYGVIVDTKAYSGGYNLPIGQADEMQRYVEENQTRNKHINPNEWWKVYPSSVTEFKFLFVSGHFKGNYKAQLTRLNHITNCNGAVLSVEELLIGGEMIKAGTLTLEEVRRKFNNGEINF(配列番号2)である。
【0108】
FokI DNA切断ドメインは、DNA結合ドメインとは独立して機能し得る。一部の実施形態では、FokIポリペプチドは、FokIヌクレアーゼドメインからなるか、本質的にからなるか、または含む。一部の実施形態では、FokI触媒ドメインポリペプチドは、配列番号2の野生型アミノ酸439~583である。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗TALEN抗体は、配列番号1を含む分子に結合する。
MKVMEFFMKVYGYRGKHLGGSRKPDGAIYTVGSPIDYGVIVDTKAYSGGYNLPIGQADEMQRYVEENQTRNKHINPNEWWKVYPSSVTEFKFLFVSGHFKGNYKAQLTRLNHITNCNGAVLSVEELLIGGEMIKAGTLTLEEVRRKFNNGEINF(配列番号1)
【0109】
一部の実施形態では、FokIタンパク質は、修飾される。一部の実施形態では、修飾されたFokIタンパク質は、野生型FokI触媒ドメイン(配列番号1)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、FokIタンパク質は、FokIの生物学的に活性な断片を含む。一部の実施形態では、生物学的に活性な断片は、FokIの触媒ドメインを含む。一部の実施形態では、FokIタンパク質は、FokIのDNA切断ドメインを含む。一部の実施形態では、FokIタンパク質は、配列番号1と1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20個、またはそれ以上のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。
【0110】
試料タイプ
本開示の試料タイプには、TALENタンパク質またはFokI触媒ドメインを含む分子を有するか、有すると疑われるか、有する可能性が高いか、または有すると確認された任意の物質が含まれる。一部の実施形態では、試料は、in vitro試料である。一部の実施形態では、試料は、in vivo試料である。一部の実施形態では、試料は、生物学的起源のもの(例えば、生物学的試料)である。生物学的試料には、かつては生きていた生物の一部であった全ての物質が含まれる。一部の実施形態では、生物学的試料は、哺乳動物由来である。哺乳類には、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、非ヒト霊長類、およびラマが含まれるが、これらに限定されない。ヒトは、あらゆる年齢のものであり得る。生物学的試料は、任意の形態をとることができ、細胞、組織、全血、血漿、血清、尿、糞便、唾液、脊髄血液、精子、房水または硝子体液、絨毛膜絨毛試料、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、試料は、組織試料、血液試料、ホルマリン固定した試料、ex vivoで成長させた組織または細胞培養培地である。一部の実施形態では、試料、例えば、血清試料は、TALENタンパク質またはFokIタンパク質の存在(もしくは不存在)またはレベルについて分析される。
【0111】
キット
本明細書に記載される、試料(例えば、生物学的試料)におけるFokIの検出および/または測定に使用するためのキットもまた、本明細書に提供される。かかるキットは、典型的には、本明細書に提供される方法において使用するための一つ以上の物質、試薬および/または物質を含む。キットは、こうした方法を実施するための指示書を含み得る。FokIを検出および/または測定するためのキットには、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000またはそれ以上の試料を分析するのに必要な様々な試薬を含み得る。一部の実施形態では、キットは、マイクロプレートタイプのアッセイキットなどの複数の試料の同時またはほぼ同時の分析を可能にし得る。一部の実施形態では、キットは、試薬および物質が単回使用を意図され、および/またはアッセイの実施後に廃棄されることが意図されるように、使い捨てであってもよい。
【0112】
一部の実施形態では、試料におけるFokIを検出および/または測定するのに使用するためのキットは、本明細書に記載され、任意選択的に検出部分にコンジュゲートされた抗TALEN抗体を含むか、またはキットの使用がこのようなコンジュゲーションを行うことを可能にする物質を含み得る。本明細書に記載されるFokI検出キットの基質は、本明細書に記載される抗FokI抗体とFokI含有複合体の結合を可能にする任意の適当な形態を取ることができる。一部の実施形態では、物質は、マイクロプレートに含有されるか、またはその一部である。当該技術分野で公知の任意の適当な検出部分を使用することができる。例えば、検出部分には、ECLタグ(例えば、スルホ-タグ)、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、FITC、ジゴキシゲニン、アクリダン、RPE、ルシフェリン、フルオロフォア、発色団、ラジオアイソトープ、またはビオチンが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、任意の適当な検出方法を、本明細書に記載されるFokI検出キットと併せて使用することができる。キットは、シグナルの検出または測定を行うための試薬、物質および、または装置を含んでもよく、または含まなくてもよい。一部の実施形態では、キットの使用は、電気化学発光、発光、蛍光、または吸光度の測定を含む、シグナルの検出を含み得る。抗FokI検出アッセイに関連するシグナルの検出は、当該技術分野で公知の任意の手段によることができる。関連するキットは、特定の検出方法のための指示書を含んでもよいか、または含まなくてもよい。一部の実施形態では、キットは、検出の標準的な方法の使用者を言及することができる。一部の実施形態では、キットは、検出のために他の装置と関連する指示書に従うよう使用者に言及することができる。
【0113】
代表的な使用
一部の実施形態では、本開示の方法およびキットは、CAR T療法などの細胞療法または遺伝子療法の評価および/またはモニタリングのため使用することができる。一部の実施形態では、細胞療法または遺伝子療法は、ZFNベースの遺伝子療法である。一部の実施形態では、細胞療法または遺伝子療法は、RFNベースの遺伝子療法である。一部の実施形態では、細胞療法は、TALENベースの遺伝子療法である。一部の実施形態では、細胞療法または遺伝子療法は、DNA構築物の投与を含む。一部の実施形態では、細胞療法または遺伝子療法は、mRNA補充療法を含む。一部の実施形態では、細胞療法または遺伝子療法は、同種または自己細胞置換を含み得る、キメラ抗原受容体(CAR)ベースの療法などの細胞置換療法を含む。細胞置換療法は、FokIタンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードする核酸構築物で形質導入またはトランスフェクトされた細胞を投与することを含み得る。
【0114】
一部の実施形態では、細胞療法または遺伝子療法を評価および/またはモニタリンするための試料は、療法の開始前に得ることができる。一部の実施形態では、試料は、第一の細胞療法または遺伝子療法治療もしくは投薬の後に得られる。一部の実施形態では、試料は、遺伝子療法の完了後に得られる。一部の実施形態では、試料は、細胞療法または遺伝子療法が行われる前、間、または後に、特定の時点、間隔、または任意の他の時間測定で得られる。一部の実施形態では、FokI検出は、細胞療法または遺伝子療法の可能性を評価するために使用される。
【0115】
治療方法
一部の実施形態では、本開示の抗TALEN抗体は、CAR療法などの遺伝子療法または細胞療法置換療法の評価および/またはモニタリングのため使用することができる。一部の実施形態では、遺伝子療法は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するために、TALENタンパク質で操作された細胞集団を患者に投与することを含む。免疫細胞を含有するCARを使用して、癌を含む、バイオマーカーの異常発現に関与する悪性腫瘍を治療することができる。一部の実施形態では、本開示の免疫細胞を含有するCARを使用して、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などの非ホジキンリンパ腫、白血病(例えば、CLLまたはALL)、多発性骨髄腫(MM)、小細胞肺癌、メラノーマ、低悪性度神経膠腫、神経膠芽腫、甲状腺髄様癌、カルチノイド、膵臓、膀胱および前立腺における分散神経内分泌腫瘍、精巣癌、ならびに神経内分泌の特徴を有する肺腺癌を処置することができる。
【0116】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、固形腫瘍および血液由来の腫瘍を含むが、これらに限定されない。「癌」という用語は、膀胱、骨または血液、脳、乳房、子宮頸部、胸部、結腸、子宮内膜、食道、眼、頭部、腎臓、肝臓、リンパ節、肺、口、首、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、精巣、喉、および子宮の癌を含むが、これらに限定されない、皮膚組織、器官、血液、および血管の疾患を指す。具体的な癌としては、進行性悪性腫瘍、アミロイドーシス、ニューロブラストーマ、髄膜腫、血管外皮腫、多発性脳転移、多形神経膠芽腫、神経膠芽腫、脳幹神経膠腫、予後不良な悪性脳腫瘍、悪性神経膠腫、再発悪性神経膠腫、悪性星状細胞腫、退形成乏突起膠腫、神経内分泌腫瘍、直腸腺癌、デュークスCおよびD大腸癌、切除不能な結腸直腸癌、転移性肝細胞癌、カポジ肉腫、核型急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、悪性癌性胸水中皮腫症候群、腹膜癌、漿液性乳頭状癌、婦人科肉腫、軟部組織肉腫、強皮症、皮膚血管炎、ランゲルハンス細胞組織球症、平滑筋肉腫、進行性骨化性線維異形成症、ホルモン不応性前立腺癌、切除された高リスク軟部組織肉腫、切除不能な肝細胞癌、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、低悪性度骨髄腫、卵管癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、アンドロゲン依存性ステージIV非転移性前立腺癌、ホルモン非感受性前立腺癌、化学療法非感受性前立腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞性甲状腺癌、甲状腺髄様癌、および平滑筋腫が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、癌は転移性である。別の実施形態では、癌は、化学療法または放射線に対して難治性または抵抗性である。さらなる実施形態では、癌は、望ましものに満たないと決定される程度まで低減され、再治療が、適切であると決定される。
【実施例】
【0117】
実施例1:抗TALEN抗体の生成
ハイブリドーマ細胞を生成するために、野生型Balb/cマウスを、C末端6×HisタグおよびGSGSリンカーを含むFokI触媒ドメインタンパク質で免疫した。反復免疫複数部位(RIMMS)を使用して、免疫12日目のBalb/cマウス由来の細胞を融合し、ハイブリドーマ融合物番号2296を得た。得られた抗体を、FokI触媒ドメイン上でELISA陽性についてスクリーニングし、His-タグ抗原を使用してカウンタースクリーニングした。試料を、C末端6×HisタグおよびGSGSリンカーを含む全長TALENタンパク質上でスクリーニングした。抗体を、ウェスタンブロットにより分析し、結合の確認および動態についてBiacore(登録商標)を使用して評価した。
【0118】
融合物番号2296から得た抗体を、FokIおよび全長TALENタンパク質上でスクリーニングして、30を超えるELISA陽性を得た。これらの抗体は、His-タグ抗原に対して陰性であった。融合物番号2296抗体のBiacore(登録商標)分析は、5nM~100nMの範囲のkD値をもたらした。融合物番号2296 RIMMS 12日目のBiacore(登録商標)動態を、以下の表2に示す。
【0119】
【0120】
ハイブリドーマ融合物番号2299細胞を、94日目の長期免疫から得た。より高い抗体価を有するBalb/cマウス番号2299を、融合のため選択した。融合物番号2299から得た抗体を、FokIおよび全長TALENタンパク質上でスクリーニングして、68を超えるELISA陽性を得た。これらの抗体は、Hisタグ抗原に対して陰性であった。融合物番号2299抗体のBiacore(登録商標)分析は、半nM~100nMの範囲のkD値をもたらした。上位12種のうち5種のELISA結合体は、上清を用いたウェスタンブロット分析で陽性であった(
図1)。融合物番号2299由来の例示的な抗体のBiacore(登録商標)動態を、以下の表3に示す。
【表6】
【0121】
以下の表4に示す精製抗体を、さらなる分析およびアッセイ開発のため選択した。
【表7】
【0122】
均等物および範囲
当業者は、本明細書に記載される本開示の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または慣習的な実験のみを使用して確認することができる。本開示の範囲は、上記の説明に限定されることを意図しておらず、むしろ以下の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【配列表】