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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】電気的特性試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20241101BHJP
【FI】
G01R31/26 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022011958
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2023110479
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠嗣
(72)【発明者】
【氏名】大寺 伸吾
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-291912(JP,A)
【文献】特開平05-322929(JP,A)
【文献】特開2012-078174(JP,A)
【文献】特開2009-123797(JP,A)
【文献】特開平07-063788(JP,A)
【文献】特開昭62-284389(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021749(WO,A1)
【文献】特開平10-199943(JP,A)
【文献】特開2010-076567(JP,A)
【文献】特開2005-019861(JP,A)
【文献】特開2014-169475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
G01R 31/28
G01R 1/06-1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する治具本体を含む試験治具と、
パワー半導体モジュール及び入力ブロックを試験ステージ上に搭載するモジュール搭載部材と、
押圧部材を有し、前記治具本体を変形させる押圧動作を実行する押圧機構とを備え、
前記治具本体は第1及び第2の主面を有し、前記試験ステージは第1及び第2の主面を有し、前記治具本体の第2の主面と前記試験ステージの第1の主面とが対向し、前記治具本体の第2の主面が本体主面として規定され、前記試験ステージの第1の主面がステージ主面として規定され、
前記治具本体は内部に試験領域、出力領域及び配線領域を有し、前記試験領域に試験電極が設けられ、前記出力領域に出力電極が設けられ、前記配線領域に内部配線が設けられ、前記内部配線は前記試験電極と前記出力電極とを電気的に接続し、
前記試験電極、前記出力電極及び前記内部配線は同一形成層に形成され、
前記試験電極は前記本体主面に対し前記ステージ主面から離れた位置に設けられ、かつ前記本体主面側に露出しており、前記出力電極は前記本体主面に対し前記ステージ主面から離れた位置に配置され、かつ前記本体主面側に露出しており、
前記パワー半導体モジュールは前記ステージ主面上に設けられ、前記試験電極に対向する素子電極を有し、
前記入力ブロックは前記ステージ主面上に設けられ、前記出力電極に対向する入力電極を有し、
前記試験治具と前記モジュール搭載部材との組合せが試験構造体として規定され、前記試験構造体は初期状態時において、前記試験電極と前記素子電極とは非接触状態であり、かつ、前記出力電極と前記入力電極とは非接触状態であり、
前記押圧動作は、前記試験構造体が初期状態から電極接触状態に変化するように、前記押圧部材によって前記試験治具を押圧する動作であり、
前記電極接触状態は、前記試験電極と前記素子電極とが接触し、かつ、前記出力電極と前記入力電極とが接触する状態である、
電気的特性試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の電気的特性試験装置であって、
前記パワー半導体モジュールは複数のパワー半導体モジュールを含み、
前記試験領域は複数の試験領域を含み、前記複数のパワー半導体モジュールと前記複数の試験領域とは1対1に対応し、
前記複数のパワー半導体モジュールはそれぞれ前記素子電極を有し、前記素子電極は第1~第N(N≧2)の素子電極を含み、
前記複数の試験領域はそれぞれ前記試験電極を有し、前記試験電極は第1~第Nの試験電極を含み、
前記出力電極は第1~第Nの出力電極を含み、前記入力電極は第1~第Nの入力電極を含み、前記内部配線は第1~第Nの内部配線を含み、
前記第1~第Nの試験電極、前記第1~第Nの素子電極、前記第1~第Nの出力電極、前記第1~第Nの入力電極及び前記第1~第Nの内部配線は互いに1対1に対応し、
第i(i=1~Nのいずれか)の内部配線は前記複数の試験領域それぞれの第iの試験電極と前記出力領域の第iの出力電極とを電気的に接続し、
前記試験構造体の前記電極接触状態は、
前記複数の試験領域及び前記複数のパワー半導体モジュールのうち、対応関係にある試験領域とパワー半導体モジュールとの間において、第i(i=1~Nのいずれか)の試験電極と第iの素子電極とが接触し、かつ、
前記出力領域の第iの出力電極と前記入力ブロックの第iの入力電極とが接触する状態である、
電気的特性試験装置。
【請求項3】
請求項1記載の電気的特性試験装置であって、
前記パワー半導体モジュールは複数のパワー半導体モジュールを含み、
前記試験領域は複数の試験領域を含み、
前記出力領域は複数の出力領域を含み、前記入力ブロックは複数の入力ブロックを含み、前記配線領域は複数の配線領域を含み、
前記複数のパワー半導体モジュール、前記複数の試験領域、前記複数の出力領域、前記複数の入力ブロック及び前記複数の配線領域は互いに1対1に対応し、
前記複数のパワー半導体モジュールはそれぞれ前記素子電極を有し、前記素子電極は第1~第N(N≧2)の素子電極を含み、
前記複数の試験領域はそれぞれ前記試験電極を有し、前記試験電極は第1~第Nの試験電極を含み、
前記複数の出力領域はそれぞれ前記出力電極を有し、前記出力電極は第1~第Nの出力電極を含み、
前記複数の入力ブロックはそれぞれ前記入力電極を有し、前記入力電極は第1~第Nの入力電極を含み、
前記複数の配線領域それぞれに前記内部配線が設けられ、前記内部配線は第1~第Nの内部配線を含み、
前記第1~第Nの試験電極、前記第1~第Nの素子電極、前記第1~第Nの出力電極、前記第1~第Nの入力電極及び前記第1~第Nの内部配線は互いに1対1に対応し、
前記複数の試験領域、前記複数の出力領域及び前記複数の配線領域のうち、対応関係にある試験領域、出力領域及び配線領域間において、第i(i=1~Nのいずれか)の内部配線によって第iの試験電極と第iの出力電極とが電気的に接続され、
前記試験構造体の前記電極接触状態は、
前記複数の試験領域及び前記複数のパワー半導体モジュールのうち、対応関係にある試験領域とパワー半導体モジュールとの間において、第i(i=1~Nのいずれか)の試験電極と第iの素子電極とが接触し、かつ、
前記複数の出力領域及び前記複数の入力ブロックのうち、対応関係にある出力領域と入力ブロックとの間において、第iの出力電極と第iの入力電極とが接触する状態である、
電気的特性試験装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち、いずれか1項に記載の電気的特性試験装置であって、
前記試験治具は、前記治具本体の第1及び第2の主面間を貫通する治具側位置決め穴をさらに含み、
前記モジュール搭載部材は、
前記治具側位置決め穴に対応するモジュール側位置決め穴をさらに含み、
前記試験構造体において、平面視して前記治具側位置決め穴と前記モジュール側位置決め穴とが一致した位置決め設定状態時に、前記素子電極と前記試験電極とが平面視して重複し、前記出力電極と前記入力電極とが平面視して重複する、
電気的特性試験装置。
【請求項5】
請求項4記載の電気的特性試験装置であって、
前記試験治具は
前記治具本体の第1の主面上及び第2の主面上において前記治具側位置決め穴の周辺領域に設けられる補強部材をさらに含み、
前記補強部材は導電性を有し、前記補強部材を貫通して前記治具側位置決め穴の一部が設けられる、
電気的特性試験装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電気的特性試験装置であって、
前記試験治具は、
前記治具本体の端面から前記治具側位置決め穴にかけて、前記治具本体の第1及び第2の主面間を貫通して設けられる収納補助経路をさらに含む、
電気的特性試験装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のうち、いずれか1項に記載の電気的特性試験装置であって、
前記試験治具は、
前記内部配線と同一形成層に設けられる基準電位設定配線をさらに有し、
前記治具側位置決め穴は導電性を有する内面領域を介して前記基準電位設定配線と電気的に接続される、
電気的特性試験装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうち、いずれか1項に記載の電気的特性試験装置であって、
前記試験ステージ上に設けられる治具格納機構をさらに備え、
前記治具格納機構は、
角柱構造の格納躯体と、
前記格納躯体の一対の底面間を貫通して設けられる回転軸と、
前記回転軸を支持する回転軸支持部とを備え、
前記格納躯体における複数の側面が複数の装着面となり、前記複数の装着面それぞれに固定ブロックが設けられ、
前記治具格納機構は、
前記複数の装着面それぞれに設けられた前記固定ブロックによって前記試験治具を装着する装着機能と、
前記回転軸を回転中心として、前記複数の装着面が回転方向に沿って移動するように前記格納躯体を回転させる回転機能とを有する、
電気的特性試験装置。
【請求項9】
請求項4から請求項7のうち、いずれか1項に記載の電気的特性試験装置であって、
前記試験構造体は第1~第M(M≧2)の試験構造体を含み、第j(j=1~Mのいずれか)の試験構造体の前記試験治具及び前記モジュール搭載部材は、第jの試験治具及び第jのモジュール搭載部材として規定され、
前記第1~第Mの試験構造体は第1~第Mの順に積層され、
前記押圧機構は各々が前記押圧部材を有する第1~第Mの押圧機構を含み、
前記電気的特性試験装置は、
第1~第Mの試験構造体を載置する底板と、
第1~第Mの弾性部材とをさらに備え、
前記第1~第Mの押圧機構はそれぞれ
第1及び第2の主面を有する押圧ステージと、
前記押圧ステージの第2の主面から下方に向けて設けられる前記押圧部材と、
前記押圧ステージの第2の主面から下方に向けて設けられる位置決めピンとを含み、第j(j=1~Mのいずれか)の押圧機構において、前記位置決めピンが第jの位置決めピンとして規定され、前記押圧ステージが第jの押圧ステージとして規定され、
前記第1~第Mの試験構造体、前記第1~第Mの押圧機構、及び前記第1~第Mの弾性部材は互いに1対1に対応し、
前記底板と第1の押圧ステージとの間が前記第1の弾性部材により支持され、第k(k=1~(M-1)のいずれか)の押圧ステージと第(k+1)の押圧ステージとの間が第(k+1)の弾性部材により支持され、
前記押圧動作は第1~第Mの押圧ステージを下方に移動させる動作であり、前記押圧動作によって、第jの位置決めピンが第jの試験治具の前記治具側位置決め穴を貫通し、第jのモジュール搭載部材の前記モジュール側位置決め穴に達するように位置決めされ、
前記押圧動作の実行によって、前記第1~第Mの試験構造体それぞれが前記初期状態から前記電極接触状態に変化し、
第1のモジュール搭載部材の前記試験ステージは前記底板として機能し、第(k+1)のモジュール搭載部材の前記試験ステージは第kの押圧ステージとして機能し、
前記第1~第Mの弾性部材それぞれの荷重は、前記押圧動作によって前記第1~第Mの試験構造体それぞれが前記電極接触状態になるように設定される、
電気的特性試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワー半導体モジュールを製造する製造装置等に用いられる、パワー半導体モジュール用の電気的特性試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置として用いられるパワー半導体モジュールは高信頼性が要求されている。このため、パワー半導体モジュールの製造工程内において室温や高温環境下で初期故障をリジェクトするため、電気的特性試験等のスクリーニング試験の試験時間が長くなることが多く、製造能力を改善するために複数のパワー半導体モジュールに対し同時に試験されることが多い。
【0003】
パワー半導体モジュールに対し試験を行う電気的特性試験装置として例えば特許文献1で開示された回路試験装置がある。
【0004】
従来の電気的特性試験装置はパワー半導体モジュールの電極と試験装置とを電気的に接続するために、ポゴピンプローブ等のコンタクトプローブをアクリル樹脂等の絶縁樹脂板に嵌合した専用の試験治具を用いて、高電圧を印加するエージング試験などの試験を実施していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-63788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試験治具数は試験対象となるパワー半導体モジュールの台数分が必要となり、さらにパワー半導体モジュールの外形や電極のレイアウト、最大定格等に応じて治工具種類の用意が必要であり、試験装置のコスト高を招いていた。また。複数種の試験治具の保管や、その試験治具のサイズによる制約で試験装置が大型化したり、さらに長い試験時間で試験を実行したりする場合には、試験バッチ内へのパワー半導体モジュールの投入可能数を増やす必要がある。一方、試験装置は装置サイズの制約を受けるため、パワー半導体モジュールの投入可能数が減少してしまい、パワー半導体モジュールの生産性が悪化するという問題点があった。
【0007】
従来の試験装置において長時間の試験を行う場合、複数のパワー半導体モジュールに対し、同時に電気的特性試験を行うことで検査時間の短縮を図る必要がある。しかしながら、上述したように、試験治具はパワー半導体モジュールの外形や電極のレイアウト、最大定格等に応じて準備する必要がある。
【0008】
このため、1台の電気的特性試験装置で複数種のパワー半導体モジュールの試験を行う場合は、[同時試験の台数]×[品種数]の試験治具を準備しなければならない。その結果、試験治具のサイズによる制約で電気的特性試験装置が大型化し、複数種のパワー半導体モジュールの試験を行うためには、パワー半導体モジュールの投入可能数が電気的特性試験装置の装置サイズの制約を受け減少する分、パワー半導体モジュールの生産性が悪化するという問題点があった。
【0009】
また、パワー半導体モジュールの品種切替え時には、並列台数分の試験治具を交換する必要がある。さらに、これらの試験治具の保管は、安定した測定精度を維持するためにクリーンルーム等の温湿度やパーティクルレベルの安定した環境が保障される空間にする必要があり、大きな保管スペースが必要となりコスト上昇要因となっていた。
【0010】
本開示のパワー半導体モジュール用の電気的特性試験装置は上記問題点を解決するためになされたもので、装置の低コスト化及び小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る請求項1記載の電気的特性試験装置は、可撓性を有する治具本体を含む試験治具と、パワー半導体モジュール及び入力ブロックを試験ステージ上に搭載するモジュール搭載部材と、押圧部材を有し、前記治具本体を変形させる押圧動作を実行する押圧機構とを備え、前記治具本体は第1及び第2の主面を有し、前記試験ステージは第1及び第2の主面を有し、前記治具本体の第2の主面と前記試験ステージの第1の主面とが対向し、前記治具本体の第2の主面が本体主面として規定され、前記試験ステージの第1の主面がステージ主面として規定され、前記治具本体は内部に試験領域、出力領域及び配線領域を有し、前記試験領域に試験電極が設けられ、前記出力領域に出力電極が設けられ、前記配線領域に内部配線が設けられ、前記内部配線は前記試験電極と前記出力電極とを電気的に接続し、前記試験電極、前記出力電極及び前記内部配線は同一形成層に形成され、前記試験電極は前記本体主面に対し前記ステージ主面から離れた位置に設けられ、かつ前記本体主面側に露出しており、前記出力電極は前記本体主面に対し前記ステージ主面から離れた位置に配置され、かつ前記本体主面側に露出しており、前記パワー半導体モジュールは前記ステージ主面上に設けられ、前記試験電極に対向する素子電極を有し、前記入力ブロックは前記ステージ主面上に設けられ、前記出力電極に対向する入力電極を有し、前記試験治具と前記モジュール搭載部材との組合せが試験構造体として規定され、前記試験構造体は初期状態時において、前記試験電極と前記素子電極とは非接触状態であり、かつ、前記出力電極と前記入力電極とは非接触状態であり、前記押圧動作は、前記試験構造体が初期状態から電極接触状態に変化するように、前記押圧部材によって前記試験治具を押圧する動作であり、前記電極接触状態は、前記試験電極と前記素子電極とが接触し、かつ、前記出力電極と前記入力電極とが接触する状態である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の電気的特性試験装置は、押圧部材によって治具本体を押圧する押圧動作を実行することにより、試験治具とモジュール搭載部材との組合せである試験構造体を初期状態から電極接触状態に変化させることができる。
【0013】
したがって、本開示の電気的特性試験装置は、上記電極接触状態時に入力ブロックの入力電極から得られる入力信号に基づき、パワー半導体モジュールの素子電極から得られる素子信号の状態を検査する電気的特性試験を実行することができる。
【0014】
さらに、本開示の電気的特性試験装置は、試験治具、モジュール搭載部材及び押圧部材を主要構成要素としているため、ポゴピンプローブ等の専用の電気的接続部材を不要とする分、装置コストの低減化を図ることができる。
【0015】
加えて、試験治具において、試験電極、出力電極及び内部配線は同一形成層に形成されるため、試験治具のサイズダウンを図ることができる。その結果、本開示の電気的特性試験装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1である電気的特性試験装置の構成を示す説明図(その1)である。
図2】実施の形態1である電気的特性試験装置の構成を示す説明図(その2)である。
図3】実施の形態1の変形例である電気的特性試験装置における試験構造体の上面構成を示す説明図である。
図4】実施の形態2の基本構成である治具収納庫の構成を示す説明図である。
図5】実施の形態2の基本構成である試験治具の構造を示す説明図(その1)である。
図6】実施の形態2の基本構成である試験治具の構造を示す説明図(その2)である。
図7】実施の形態2の第1の変形例である試験治具の構造を示す説明図(その1)である。
図8】実施の形態2の第1の変形例である試験治具の構造を示す説明図(その2)である。
図9】実施の形態2の変形例である治具収納庫の構成を示す説明図(その1)である。
図10】実施の形態2の変形例である治具収納庫の構成を示す説明図(その2)である。
図11】実施の形態2の第2の変形例である試験治具の構造を示す説明図である。
図12】実施の形態2の第3の変形例である試験治具の構造を示す説明図である。
図13】実施の形態2の第4の変形例である試験治具の構造を示す説明図である。
図14】実施の形態3である電気的特性試験装置の構成を示す説明図である。
図15図14で示した試験治具格納躯体の詳細構成を示す説明図である。
図16】実施の形態4の電気的特性試験装置の構成を示す説明図(その1)である。
図17】実施の形態4の電気的特性試験装置の構成を示す説明図(その2)である。
図18】実施の形態4の電気的特性試験装置の利用例を示す説明図である。
図19】実施の形態4において、1単位の試験治具、1単位のモジュール搭載部材及び1単位の押圧機構の構造を示す説明図(その1)である。
図20】実施の形態4において、1単位の試験治具、1単位のモジュール搭載部材及び1単位の押圧機構の構造を示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施の形態1>
(基本構成)
図1及び図2はそれぞれ本開示の実施の形態1である電気的特性試験装置S1の構成を示す説明図である。図1は側面から視た断面構造を示し、図2は上面から視た上面構造を示している。図1及び図2それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0018】
図1及び図2に示すように、基本構成の電気的特性試験装置S1は、試験治具3、モジュール搭載部材4、押圧機構を主要構成要素として含んでいる。押圧機構は押圧部材44及び位置決めピン48を含んでいる。なお、図2では、押圧機構の上方に存在する押圧部材44等の図示を省略している。
【0019】
試験治具3は可撓性を有する治具本体30を含んでいる。試験治具3として例えばFPC(Flexible printed circuits)が用いられる。FPCは回路の電気的絶縁を確保するためポリイミドなど耐熱性や可撓性のある材料で構成されており、高温環境下でも使用することができる。治具本体30は上面及び下面を有している。試験治具3の上面が第1の主面となり、下面が第2の主面となる。
【0020】
モジュール搭載部材4は試験ステージ41を有し、試験ステージ41の上面及び下面を有している。試験ステージ41の上面が第1の主面となり、下面が第2の主面となる。試験ステージ41の構成材料として例えば鉄やアルミ合金が考えられる。
【0021】
治具本体30の下面と試験ステージ41の上面とが対向する。ここで、試験治具3の下面が本体主面として規定され、試験ステージ41の上面がステージ主面として規定される。試験治具3とモジュール搭載部材4との組合せによって試験構造体10が構成される。
【0022】
試験ステージ41上に複数のパワー半導体モジュール1と、入力ブロック100と、一対の位置決めブロック42が設けられる。図1では複数のパワー半導体モジュール1として、6つのパワー半導体モジュール1が図示されている。
【0023】
一対の位置決めブロック42は複数のパワー半導体モジュール1及び入力ブロック100を挟むように、試験ステージ41におけるY方向の端部領域に設けられる。位置決めブロック42の構成材料として、例えばステンレス鋼やアルミ合金が考えられ、入力ブロック100の構成材料としてフッ素樹脂、エンジニアリングプラスティック等が考えられる。
【0024】
通常、電気的特性試験装置S1はパワー半導体モジュール1の製造ラインに設けられ、製造された複数のパワー半導体モジュール1を試験ステージ41上に固定することにより、パワー半導体モジュール1に対する電気的特性試験を実行することができる。パワー半導体モジュール1の試験ステージ41上への固定は、例えば、製品ガイドやワンタッチクランプ等の既存のロック機構を用いて固定される。
【0025】
したがって、電気的特性試験装置S1を利用するオペレータは、試験ステージ41の上面上において所望の位置に複数のパワー半導体モジュール1を固定することができる。
【0026】
モジュール搭載部材4において、複数のパワー半導体モジュール1はそれぞれ表面上に素子電極21~23を有している。これら素子電極21~23は後述する試験治具3の試験電極31~33に対向する位置に配置される。なお、素子電極21~23は銅等を構成材料としている。
【0027】
モジュール搭載部材4において、入力ブロック100はそれぞれ表面上に入力電極91~93を有している。これら入力電極91~93は、後述する試験治具3の出力電極81~83に対向する位置に配置される。なお、入力電極91~93は銅等を構成材料としている。
【0028】
入力電極91~93は試験用配線L1~L3を介して試験用端子P1~P3に電気的に接続されている。したがって、試験用端子P1~P3から、入力電極91~93より得られる第1~第3の入力信号を外部に取り出すことができる。なお、試験用配線L1~L3の電線材料として銅等が考えられる。
【0029】
一方、治具本体3は内部に複数の試験領域35、出力領域85及び配線領域を有している。図1では複数の試験領域35として6つの試験領域35が図示されている。
【0030】
複数の試験領域35それぞれに試験電極31~33が設けられ、出力領域85に出力電極81~83が設けられ、配線領域に3本の内部配線11が設けられる。試験電極31~33、出力電極81~83及び3本の内部配線11は、同一形成層に設けられる。
【0031】
図2に示すように、3本の内部配線11は電気的に独立している。3本の内部配線11によって、素子電極21~23と出力電極81~83とを電気的に接続する。試験電極31~33、出力電極81~83及び3本の内部配線11それぞれは銅等を構成材料としている。
【0032】
モジュール搭載部材4に搭載される複数のパワーモジュール1と試験治具3に設けられる複数の試験領域35とは1対1に対応する。
【0033】
前述したように、複数のパワー半導体モジュール1はそれぞれ素子電極21~23を有している。素子電極21~23は第1~第3の素子電極となる。すなわち、複数のパワー半導体モジュール1はそれぞれ、N=3とした第1~第Nの素子電極を有している。
【0034】
そして、試験治具3において、複数の出力領域85それぞれに試験電極31~33が設けられる。試験電極31~33は第1~第3の試験電極となる。すなわち、試験治具3における複数の試験領域35はそれぞれ、N=3とした第1~第Nの試験電極を有している。
【0035】
複数の試験領域35それぞれの試験電極31~33は治具本体30の下面よりもZ方向において高い形成位置に設けられる。すなわち、試験電極31~33は、本体主面となる治具本体30の下面に対し、ステージ主面となる試験ステージ41の上面から離れた位置に設けられる。
【0036】
試験電極31~33それぞれの下方に開口部13が設けられる。したがって、試験電極31~33はそれぞれ開口部13を介して、本体主面側に露出している。一方、3本の内部配線11の下方には治具本体30が残存しており、3本の内部配線11の絶縁距離を確保している。
【0037】
出力電極81~83は第1~第3の出力電極となる。すなわち、試験治具3の出力領域85は、N=3とした第1~第Nの出力電極を有している。
【0038】
出力電極81~83は治具本体30の下面よりも高い形成位置に設けられる。すなわち、出力電極81~83は本体主面となる治具本体30の下面に対し、ステージ主面となる試験ステージ41の上面から離れた位置に設けられる。
【0039】
出力電極81~83それぞれの下方に開口部43が設けられる。したがって、出力電極81~83はそれぞれ開口部43を介して、本体主面側に露出している。
【0040】
図2に示すように、複数の試験領域35それぞれの素子電極21は内部配線11を介して出力電極81に電気的に接続される。複数の試験領域35それぞれの素子電極22は内部配線11を介して出力電極82に電気的に接続される。複数の試験領域35それぞれの素子電極23は内部配線11を介して出力電極83に電気的に接続される。
【0041】
ここで、3本の内部配線11のうち、素子電極21,試験電極31間を電気的に接続する内部配線11を第1の内部配線、素子電極22,試験電極32間を電気的に接続する内部配線11を第2の内部配線、素子電極23,試験電極33間を電気的に接続する内部配線11を第3の内部配線とする。したがって、試験治具3は配線領域にN=3とした第1~第Nの内部配線を有している。
【0042】
素子電極21~23、試験電極31~33、出力電極81~83、入力電極91~93及び上述した第1~第3の内部配線は互いに1対1に対応している。
【0043】
治具本体30のY方向における2つの端部領域それぞれにおいて上面及び下面間を貫通する治具側位置決め穴として、2つの位置決め穴14が設けられる。したがって、試験治具3は総計4つの位置決め穴14を有している。
【0044】
モジュール搭載部材4の一対の位置決めブロック42はそれぞれ上面から内部にかけて設けられるモジュール側位置決め穴として、2つの位置決め穴42hが設けられる。したがって、モジュール搭載部材4は一対の位置決めブロック42に総計4つの位置決め穴42hを有している。
【0045】
4つの位置決め穴42hは上述した4つの位置決め穴14に対応している。したがって、試験構造体10の両端領域それぞれにおいて、平面視して2つの位置決め穴14と2つの位置決め穴42hとを一致させることにより、試験構造体10を位置決め設定状態にすることができる。
【0046】
試験構造体10の位置決め設定状態において、複数のパワー半導体モジュール1及び複数の試験領域35のうち、対応関係にあるパワー半導体モジュール1及び試験領域35間において、試験電極31~33と素子電極21~23とが平面視して重複する。例えば、図1及び図2で示す最左の試験領域35における試験電極31~33と、最左のパワー半導体モジュール1の素子電極21~23とが平面視して重複する。
【0047】
試験構造体10の位置決め設定状態において、出力領域85と入力ブロック100との間において、出力電極81~83と入力電極91~93とが平面視して重複する。
【0048】
押圧機構は、複数の試験領域35及び1単位の出力領域85それぞれを押圧する複数の押圧部材44を有している。押圧部材44の構成材料としてはステンレス鋼またはアルミ合金が考えられる。図1では複数の押圧部材44として7つの押圧部材44が図示されている。したがって、図1及び図2で示す電気的特性試験装置S1の押圧機構は総計7つの押圧部材44を有している。
【0049】
押圧機構はさらに複数の位置決めピン48を有している。複数の位置決めピン48は試験治具3の両端領域それぞれに設けられる2つの位置決め穴14と、一対の位置決めブロック42それぞれに設けられる2つの位置決め穴42hとに対応して設けられる。したがって、電気的特性試験装置S1の押圧機構は総計4つの位置決めピン48を有している。
【0050】
複数の押圧部材44はそれぞれ下面に緩衝板46を有しており、この緩衝板46が試験治具3と接触する。緩衝板46の構成材料としてシリコン樹脂、エンジニアリングプラスティック等が考えられる。
【0051】
押圧機構は、複数の押圧部材44によって試験治具3を押圧する押圧動作に加え、位置決めピン48を下降させる位置決め動作を実行する。
【0052】
複数の位置決めピン48を下降方向D1に向けて下降させる位置決め動作を実行することにより、対応する位置決め穴14を貫通して、位置決めブロック42の位置決め穴42hに達することにより、試験構造体10を位置決め設定状態にすることができる。
【0053】
複数の押圧部材44を下降させる押圧動作を実行することにより、複数の押圧部材44は下降方向D1に向けて、試験治具3における複数の試験領域35と出力領域85とを押圧して、治具本体30を変形させることができる。
【0054】
なお、複数の押圧部材44による押圧動作及び複数の位置決めピン48による位置決め動作は図示しない駆動機構を動力源として実行される。駆動機構として例えば、シリンダ式等の空圧式、サーボ式または機械式の駆動機構が考えられる。
【0055】
(動作)
このような構成において、押圧機構による押圧動作が実行される前の初期状態において、モジュール搭載部材4上に試験治具3が載置されていても、複数の試験領域35それぞれの素子電極21~23と複数のパワー半導体モジュール1それぞれの試験電極31~33とは接触せず、出力電極81~83と入力電極91~93とは接触しない。
【0056】
なぜなら、治具本体30は変形されておらず、試験電極31~33及び出力電極81~83は、治具本体30の下面よりも高い形成位置に設けられているからである。すなわち、試験構造体10は初期状態時において、複数の試験領域35,複数のパワー半導体モジュール1間において、素子電極21~23と試験電極31~33とは非接触状態であり、かつ、出力電極81~83と入力電極91~93とは非接触状態となる。
【0057】
次に、上述した押圧機構による位置決め動作及び押圧動作について説明する。まず、複数の位置決めピン48を下降方向D1に沿って下降させる位置決め動作が実行される。
【0058】
位置決め動作を実行して、複数の位置決めピン48それぞれを下降方向D1に沿って下降させ、対応する位置決め穴14を貫通し、対応する位置決め穴42hに到達させることにより、試験構造体10を位置決め設定状態にする。
【0059】
試験構造体10が位置決め設定状態にされた後、複数の押圧部材44それぞれを下降方向D1に沿って下降させる押圧動作を実行して、複数の試験領域35及び出力領域85を複数の押圧部材44によって押圧することにより治具本体30を変形させる。
【0060】
すると、試験構造体10が初期状態から電極接触状態に変化する。電極接触状態は、複数の試験領域35それぞれの試験電極31~33と複数のパワー半導体モジュール1それぞれの素子電極21~23とが接触し、かつ、出力電極81~83と入力電極91~93とが接触する状態である。
【0061】
治具本体30は可撓性を有するため、仮に試験電極31~33間で高さ方向の精度バラツキが生じても、押圧動作によって試験電極31~33間の精度バラツキを吸収して上述した電極接触状態を実現することができる。
【0062】
このように、試験構造体10の電極接触状態時に、複数の試験領域35及び複数のパワー半導体モジュール1のうち、対応関係にある試験領域35とパワー半導体モジュール1との間において、試験電極3i(i=1~N(=3)のいずれか)と素子電極2iとが開口部13を介して接触する。例えば、図1及び図2で示す最左の試験領域35と最左のパワー半導体モジュール1とが対応関係にあり、最左の試験領域35の試験電極31、試験電極32及び試験電極33と最左のパワー半導体モジュール1の素子電極21、素子電極22及び素子電極23とが接触する。
【0063】
さらに、試験構造体10の電極接触状態時に出力領域85の出力電極8iと入力ブロック100の入力電極9iとが開口部43を介して接触する。すなわち、出力電極81と入力電極91とが接触し、出力電極82と入力電極92とが接触し、出力電極83と入力電極93とが接触する。
【0064】
なお、押圧部材44の下面に緩衝板46が設けられているため、押圧動作の部材下降動作時における押圧部材44との接触面となる治具本体30の上面を保護することができる。
【0065】
電極接触状態の試験構造体10において、複数のパワー半導体モジュール1に対する電気的試験を行い、試験用端子P1~P3から得られる一組の入力信号群を得ることができる。すなわち、入力電極91~93から得られる第1~第3の入力信号を試験用端子P1~P3から取り出すことができる。例えば、複数のパワー半導体モジュール1それぞれの素子電極21から得られる第1の素子信号は、複数の試験領域35それぞれの試験電極31、第1の内部配線、出力電極81、入力電極91、及び試験用配線L1を介して、試験用端子P1から第1の入力信号として取り出すことができる。
【0066】
試験用端子P1から得られる第1の入力信号は、複数のパワー半導体モジュール1それぞれの素子電極21から得られる信号に対応し、試験用端子P2から得られる第2の入力信号は、複数のパワー半導体モジュール1それぞれの素子電極22から得られる信号に対応し、試験用端子P3から得られる第3の入力信号は、複数のパワー半導体モジュール1それぞれの素子電極23から得られる信号に対応する。
【0067】
なお、複数の押圧部材44及び複数の位置決めピン48を上昇方向D2に上昇させることにより、試験構造体10を電極接触状態から初期状態に戻すことができる。
【0068】
(効果)
実施の形態1の基本構成である電気的特性試験装置S1は、押圧部材44によって治具本体30を変形させる押圧動作を実行することにより、試験治具3とモジュール搭載部材4との組合せである試験構造体10を初期状態から電極接触状態に変化させることができる。
【0069】
したがって、実施の形態1の電気的特性試験装置S1は、電極接触状態時に入力ブロック100の入力電極91~93から得られる第1~第3の入力信号に基づき、パワー半導体モジュール1の素子電極21~23から得られる第1~第3の素子信号の状態を検査する電気的特性試験を実行することができる。
【0070】
さらに、電気的特性試験装置S1は、試験治具3、モジュール搭載部材4及び押圧部材44を主要構成要素としているため、ポゴピンプローブ等の専用の電気的接続部材を不要とする分、装置コストの低減化を図ることができる。
【0071】
加えて、試験治具3において、試験電極31~33、出力電極81~83及び内部配線11は同一形成層に形成されるため、試験治具3のサイズダウンを図ることができる。その結果、実施の形態1の電気的特性試験装置S1の小型化を図ることができる。
【0072】
さらに、実施の形態1の電気的特性試験装置S1は、電極接触状態時に入力ブロック100の入力電極91~93から得られる一組の第1~第3の入力信号に基づき、複数のパワー半導体モジュール1それぞれの素子電極21~23から得られる第1~第3の素子信号の状態を総合的に検査する電気的特性試験を実行することができる。
【0073】
例えば、複数のパワー半導体モジュール1に対し高電圧印加による試験を行い、一のパワー半導体モジュール1に異常が発生した場合、異常状態のパワー半導体モジュール1の素子電極21~23の少なくとも一つから過大な短絡電流が流れる。このため、上述した第1~第3の入力信号から複数のパワー半導体モジュール1のいずれかに異常が発生してことを認識することができる。
【0074】
以下、実施の形態1の電気的特性試験装置S1の上述した効果について詳述する。実施の形態1の基本構成の電気的特性試験装置S1を導入することにより、パワー半導体モジュール1の形状や最大定格などの違いを持つ品種毎に必要な試験治具3を少ない部材で構成できる分、低コスト化を図っている。
【0075】
また、試験構造体10は、ポゴピン構造のプローブピンや樹脂板、配線材料などの、電極接触状態に設定するための専用の電気的接続部材を使用しないため、電気的特性試験装置S1にて高温環境下の試験が行える。高温環境として200℃程度の高温環境が考えられる。また、高温環境試験などにおいて、晒される温度変化により、試験治具3に発生する材質の劣化や消耗を防ぐことができる。
【0076】
加えて、試験治具3を薄型、軽量化することで電気的特性試験装置S1全体の小型化を図ることができる。また、特に高温試験環境を実現する高温炉でも、実施の形態1の電気的特性試験装置S1を使用することにより、電気的特性試験装置S1に同時に投入可能なパワー半導体モジュール1の試験数を従来よりも増やし、生産効率を改善できる分、低コスト化を図ることができる。
【0077】
また、従来の電気的特性試験装置は、ポゴピンプローブなどはパワー半導体モジュールの電極と電気的コンタクトをするために数mm~10mm前後のストロークを必要とする。一方、実施の形態1の電気的特性試験装置S1は、パワー半導体モジュール1の外形出来栄え精度を考慮して、FPC等を構成材料とする治具本体30の可撓性を用いた数um~数mm程度の比較的短い上下ストロークで安定した電極接触状態を図ることができる。
【0078】
(変形例)
図3は実施の形態1の変形例である電気的特性試験装置S1Bにおける試験構造体10Bの上面構成を示す説明図である。図3にXYZ直交座標系を記している。
【0079】
以下、図1及び図2で示した基本構成と同様な箇所は説明を省略し、電気的特性試験装置S1B内の試験構造体10Bの特徴部分について説明する。
【0080】
電気的特性試験装置S1と電気的特性試験装置S1Bとの主な相違点は以下の通りである。モジュール搭載部材4Bにおいて、モジュール搭載部材4の1単位の入力ブロック100に替えて複数の入力ブロック105が設けられる。試験治具3Bにおいて、試験治具3の1単位の出力領域85に替えて複数の出力領域88が設けられる。1組の3本の内部配線11に替えて複数組の3本の内部配線11Bが設けられる。複数組の3本の内部配線11Bは複数の配線領域に設けられる。図3では複数の出力領域88として6つの出力領域88が図示され、複数の入力ブロック105として6つの入力ブロック105が図示されている。
【0081】
複数のパワー半導体モジュール1、複数の試験領域35、複数の出力領域88、複数の入力ブロック105及び複数の配線領域は互いに1対1に対応している。
【0082】
複数の出力領域88はそれぞれ出力電極81~83を第1~第3の出力電極として有している。複数の入力ブロック105はそれぞれ入力電極91~93を第1~第3の入力電極として有している。複数の入力ブロック105それぞれの入力電極91~93は試験用配線L1~L3を介して試験用端子P1~P3に電気的に接続される。なお、図3では、最左のパワー半導体モジュールに対応する入力ブロック105にのみ、試験用配線L1~L3及び試験用端子P1~P3を図示している。
【0083】
複数の配線領域それぞれに設けられる3本の内部配線11Bもおいて、素子電極21,試験電極31間を電気的に接続する内部配線11Bを第1の内部配線、素子電極22,試験電極32間を電気的に接続する内部配線11Bを第2の内部配線、素子電極23,試験電極33間を電気的に接続する内部配線11Bを第3の内部配線とする。したがって、試験治具3Bは複数の配線領域それぞれにN=3とした第1~第Nの内部配線を有している。
【0084】
試験構造体10Bにおいて、素子電極21~23、試験電極31~33、出力電極81~83、入力電極91~93、及び第1~第3の内部配線は互いに1対1に対応している。
【0085】
複数の試験領域35、複数の出力領域88及び複数の配線領域のうち、対応関係にある試験領域、出力領域及び配線配線間において、第i(i=1~3のいずれか)の内部配線によって第iの試験電極となる試験電極3iと第iの出力電極となる出力電極8iとが電気的に接続される。例えば、図3において、最左の試験領域35と最左の出力領域88とが対応し、最左の試験領域35の素子電極21~23と最左の出力領域88の出力電極81~83とが第1~第3の内部配線を介して電気的に接続される。
【0086】
押圧機構は、複数の試験領域35及び複数の出力領域88それぞれを押圧する複数の押圧部材44を有している。複数の押圧部材44は複数の試験領域35と複数の出力領域88とを押圧するために設けられる。図3では総計12個の押圧部材44が図示されている。
【0087】
(動作)
このような構成の電気的特性試験装置S1Bにおいて、基本構成と同様に位置決め動作を実行した後、複数の押圧部材44それぞれを下降方向D1に沿って下降させ、試験治具3Bにおける複数の試験領域35及び複数の出力領域88を押圧する押圧動作を実行することより、治具本体30を変形させる。すると、試験構造体10Bが初期状態から電極接触状態に変化する。
【0088】
試験構造体10Bの電極接触状態は、複数の試験領域35及び複数のパワー半導体モジュール1のうち、対応関係にある試験領域35とパワー半導体モジュール1との間において、試験電極3iと素子電極2iとが接触する状態となる。例えば、図3で示す最右のパワー半導体モジュール1の素子電極21~23と、最右の試験領域35における試験電極31~33とが接触する。
【0089】
試験構造体10Bの電極接触状態時において、複数の出力領域88及び複数の入力ブロック105のうち、対応関係にある出力領域88と入力ブロック105との間において、出力電極8iと入力電極9iとが接触する。例えば、図3で示す最右の出力領域88の出力電極81~83と、最右の入力ブロック105における入力電極91~93とが接触する。
【0090】
電極接触状態の試験構造体10Bに対し、複数のパワー半導体モジュール1に対する電気的試験を行い、複数組の試験用端子P1~P3から得られる複数組の第1~第3の入力信号を得ることができる。すなわち、複数組の試験用端子P1~P3から、複数組の第1~第3の入力信号を個別に取り出すことができる。
【0091】
試験用端子P1より得られる第1の入力信号は、複数のパワー半導体モジュール1うち対応するパワー半導体モジュール1の素子電極21から得られる第1の素子信号に対応する。試験用端子P2より得られる第2の入力信号は、複数のパワー半導体モジュール1のうち対応するパワー半導体モジュール1の素子電極22から得られる第2の素子信号に対応する。試験用端子P3より得られる第3の入力信号は、複数のパワー半導体モジュール1のうち対応するパワー半導体モジュール1の素子電極23から得られる第3素子信号に対応する。
【0092】
(効果)
変形例の電気的特性試験装置S1Bは、電極接触状態時において、複数の入力ブロック105それぞれの入力電極91~93から得られる複数組の第1~第3の入力信号に基づき、複数のパワー半導体モジュール1それぞれの素子電極21~23から得られる複数組の第1~第3の素子信号の状態を個別に検査する電気的特性試験を実行することができる。
【0093】
複数のパワー半導体モジュール1に対し高電圧印加による試験を行い、一のパワー半導体モジュール1に異常が発生した場合、異常状態のパワー半導体モジュール1の素子電極21~23の少なくとも一つから過大な短絡電流が流れる。このため、上述した複数組の第1~第3の入力信号から異常状態のパワー半導体モジュール1を特定することができる。
【0094】
図1及び図2で示した基本構成の電気的特性試験装置S1では、試験中に1台のパワー半導体モジュール1が故障し、その原因が短絡モードの場合、保護のため試験自体を中断する必要がある。
【0095】
前述したように、図3で示した変形例の電気的特性試験装置S1Bは異常状態のパワー半導体モジュール1を特定することができる。このため、図示しない外部回路により異常状態のパワー半導体モジュール1を試験対象から個別に切り離し、残りの複数のパワー半導体モジュール1については試験を継続することができる。
【0096】
したがって、電気的特性試験装置S1Bを製造装置に用いた場合、電気的特性試験装置S1と比較して生産能力の低下が抑制できコストダウンにつながる。
【0097】
(その他)
電気的特性試験装置S1,S1Bそれぞれにおいて、位置決めピン48は、上方から下降時に試験治具3の位置決め穴14を貫通し、モジュール搭載部材4の位置決め穴42hに到達させることにより、試験構造体10及び10Bの位置決め動作を実行している。
【0098】
上述した位置決めピン48に替えて、試験ステージ41の下方から上向きに突出する上向き位置決めピンを設置し、上向き位置決めピンを、位置決め穴14に到達させるようにしても、位置決め動作を実行することができる。
【0099】
<実施の形態2>
(はじめに)
実施の形態2では、収納対象試験治具を収納する治具収納庫と、当該治具収納庫への収納容易化機能を有する試験治具とを開示対象としている。
【0100】
(基本構成の治具収納庫及び試験治具)
図4は本開示の実施の形態2の基本構成である治具収納庫5の構成を示す説明図である。図5及び図6それぞれは実施の形態2の基本構成である試験治具3Cの構造を示す説明図である。図4及び図5は側面から視た断面構造を示し、図6は上面から視た上面構造を示している。図4図6それぞれにXYZ直交座標系を記している。なお、XYZ直交座標系は試験治具3Cを基準としている。
【0101】
実施の形態2の電気的特性試験装置S2は、実施の形態1の電気的特性試験装置S1において、試験治具3を試験治具3Cに置き換えた装置となる。
【0102】
以下、試験治具3Cについて説明する。なお、試験治具3Cに関し、図1図3で示した試験治具3,3Bと同様な構成は同一符号を付して説明を適宜省略し、試験治具3Cの特徴を中心に説明する。
【0103】
図5及び図6に示すように、試験治具3CはY方向の両端領域それぞれにおいて、治具本体30の上面上及び下面上に補強板16を設けている。補強部材となる補強板16は補強板装着部材16pを用いて治具本体30に固定される。補強板16の構成材料としてエンジニアリングプラスティックやアルミ合金等が考えられる。なお、補強板16は導電性を有することが望ましい。
【0104】
試験治具3Cの両端領域それぞれにおいて、補強板16及び治具本体30を貫通して2つの位置決め穴14が設けられる。したがって、補強部材となる補強板16は、試験治具3Cの上面上及び下面上において位置決め穴14の周辺領域に設けられており、補強板16を貫通して位置決め穴14の一部が設けられる。
【0105】
なお、試験治具3Cに設けられる4つの位置決め穴14の平面形成位置は、図1及び図2で示した試験治具3における4つの位置決め穴14と同一となる。
【0106】
このように、試験治具3Cは、治具本体30の上面及び下面間を貫通する治具側位置決め穴として4つの位置決め穴14と、試験治具3Cの上面上及び下面上において4つの位置決め穴14の周辺領域に設けられる一対の補強板16を有している。
【0107】
一方、モジュール搭載部材4は、実施の形態1と同様に、4つの位置決め穴14に対応するモジュール側位置決め穴として4つの位置決め穴42hを有している。
【0108】
したがって、試験治具3Cとモジュール搭載部材4との組合せによる試験構造体において、平面視して4つの位置決め穴14と4つの位置決め穴42hとが一致した位置決め設定状態時に、実施の形態1と同様、試験電極31~33と素子電極21~23とが平面視して重複し、出力電極81~83と入力電極91~93とが平面視して重複する。
【0109】
図4に示す治具収納庫5は収納対象試験治具を収納する。実施の形態1の試験治具3,3Bや実施の形態2の試験治具3Cが収納対象試験治具となり得る。すなわち、可撓性を有する治具本体を有し、上記治具本体の端部領域において第1及び第2の主面間を貫通する治具側位置決め穴が設けられる試験治具が収納対象試験治具となる。
【0110】
治具収納庫5は、筐体50と、4本の吊り下げ用ピン51とを主要構成要素として含んでいる。図4では収納対象試験治具として試験治具3Cを示している。4本の吊り下げ用ピン51はそれぞれ導電性を有している。
【0111】
4本の吊り下げ用ピン51はそれぞれ筐体50内でZ方向に沿った延在方向に延びて設けられる。4本の吊り下げ用ピン51のうち、+Y方向側の上方に2本の吊り下げ用ピン51が設けられ、-Y方向側の下方に2本の吊り下げ用ピン51が設けられる。4本の吊り下げ用ピン51はXY平面で平面視して、試験治具3Cの4つの位置決め穴14に一致するように設けられる。
【0112】
したがって、4本の吊り下げ用ピン51に対し、図4の+Z方向側の左方から、試験治具3Cの4つの位置決め穴14と、4本の吊り下げ用ピン51とがXY平面で平面視して一致した状態で、試験治具3Cを-Z方向側の右方に移動せることにより、試験治具3Cの4つの位置決め穴14に4本の吊り下げ用ピン51を貫通させた状態で、筐体50内に試験治具3Cを収納することができる。
【0113】
(効果)
実施の形態2の電気的特性試験装置S2において、電気的特性試験装置S1と同様、試験治具3Cとモジュール搭載部材4との組合せである試験構造体を位置決め設定状態にして、押圧部材44による押圧動作を実行することにより、試験治具3Cとモジュール搭載部材4との間で電極接触状態を精度良く設定することができる。すなわち、試験治具3Cの4つの位置決め穴14は位置決め機能を有している。
【0114】
例えば、実施の形態1と同様な位置決め動作を実行して、試験治具3Cとモジュール搭載部材4とによる試験構造体に対し、4つの位置決め穴14を貫通して4つの位置決め穴42hに到達するように位置決めピン48を装着することにより、比較的簡単に試験構造体を位置決め設定状態にすることができる。
【0115】
さらに、試験治具3Cの4つの位置決め穴14は、治具本体30の上面及び下面間を貫通しているため、図4で示す治具収納庫5のように、4つの位置決め穴14に4本の吊り下げ用ピン51を貫通させる態様で、試験治具3Cを筐体50内に収納することができる。すなわち、試験治具3Cの4つの位置決め穴14は収納容易化機能を有している。
【0116】
このように、実施の形態2の電気的特性試験装置S2は、試験治具3Cの位置決め穴14に位置決め機能と収納容易化機能とを持たせることにより、試験治具3Cに専用の収納容易化構造を設ける必要がない分、試験治具3Cをサイズダウンして、試験治具3Cの加工費削減及び品質向上を図ることができる。
【0117】
さらに、試験治具3Cは4つの位置決め穴14の周辺に補強部材となる補強板16を設けている。この補強板16によって、4つの位置決め穴14に位置決め機能及び収納容易化機能を発揮させる際、位置決め穴14を保護することができる。
【0118】
加えて、補強部材である補強板16は導電性を有する場合、位置決め穴14に吊り下げ用ピン51を貫通させる態様で試験治具3Cを収納する際、導電性を有する吊り下げ用ピン51を接地電位等の基準電位に設定して、試験治具3Cに帯電した静電気を除去することができる。
【0119】
図4で示した実施の形態2の基本構成である治具収納庫5は、収納対象試験治具となる試験治具3Cの4つの位置決め穴14を活用して、モジュール搭載部材4Cを収納することにより、比較的簡単に試験治具3Cを筐体50内に収納することができる。
【0120】
さらに、導電性を有する4本の吊り下げ用ピン51のうち少なくとも一つを基準電位となる接地電位に設定することにより、試験治具3Cにおける上面または下面に帯電した静電気を除去することができる。特に、試験治具3Cの補強板16が導電性を有している場合、上述した静電気除去効果が顕著となる。
【0121】
また、試験治具3Cはモジュール搭載部材4と同じくクリーンルーム等の環境保障された空間に保管する必要があり、試験治具3Cの薄型化、サイズダウンによって、筐体50等の保管スペースを有効かつ効率的に活用することができる。
【0122】
(試験治具の第1の変形例)
図7及び図8それぞれは実施の形態2の第1の変形例である試験治具3Dの構造を示す説明図である。図7は側面から視た断面構造を示し、図8は上面から視た上面構造を示している。図7及び図8それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0123】
実施の形態2の第1の変形例となる電気的特性試験装置は、実施の形態1の電気的特性試験装置S1において、試験治具3を試験治具3Dに置き換えた装置となる。
【0124】
以下、試験治具3Dについて説明する。なお、試験治具3Dに関し、図5及び図6で示した基本構成の試験治具3Cと同様な構成は同一符号を付して説明を適宜省略し、試験治具3Dに固有の特徴を中心に説明する。
【0125】
試験治具3Dの両端領域それぞれにおいて、治具本体30を貫通して2つの位置決め穴14が設けられる。したがって、試験治具3Dは、試験治具3Cと同様に総計4つの位置決め穴14を有している。このように、試験治具3Dは、治具本体30の上面及び下面間を貫通する治具側位置決め穴として4つの位置決め穴14を有している。
【0126】
一方、試験治具3Dには補強板16が設けられていない。このように、試験治具3Dは基本構成の試験治具3Cと比較して補強板16が省略された点が異なる。
【0127】
(効果)
第1の変形例となる試験治具3Dを含む実施の形態2の電気的特性試験装置は、試験治具3Dの位置決め穴14に位置決め機能と収納容易化機能とを持たせることにより、試験治具3Dをサイズダウンして、試験治具3Dの加工費削減及び品質向上を図ることができる。
【0128】
さらに、試験治具3Dは、補強板16を省略することにより、試験治具3Dの厚みや重量の縮小化が行え、また製作費用も低減できる。
【0129】
実施の形態2の治具収納庫5は、収納対象試験治具となる試験治具3Dの4つの位置決め穴14による収納容易化機能を利用して、試験治具3Cと同様に比較的簡単に試験治具3Dを筐体50内に収納することができる。
【0130】
(治具収納庫の変形例)
図9及び図10は本開示における実施の形態2の変形例である治具収納庫5Bの構成を示す説明図である。図9は側面から視た断面構造を示し、図10は正面から視た断面構造を示している。図9及び図10それぞれにXYZ直交座標系を記している。なお、XYZ直交座標系は試験治具3Cを基準としている。
【0131】
図9及び図10に示す治具収納庫5Bは収納対象試験治具を収納する。実施の形態1の試験治具3,3Bや実施の形態2の試験治具3C,3Dが収納対象試験治具となり得る。すなわち、可撓性を有する治具本体を有し、上記治具本体の端部領域において第1及び第2の主面間を貫通する治具側位置決め穴が設けられる試験治具が収納対象試験治具となる。
【0132】
治具収納庫5Bは、筐体50と、1本の吊り下げ用レール54と、複数の吊り下げ用フック52と、複数の吊り下げ用フック52それぞれに設けられる第1及び第2の吊り下げ用ピン53とを主要構成要素として含んでいる。図9及び図10では収納対象試験治具として試験治具3Cを示している。
【0133】
筐体50内の+Y方向側の上方に吊り下げ用レール54が設けられ、吊り下げ用レール54はZ方向に延びている。この吊り下げ用レール54に複数の吊り下げ用フック52がY方向に沿って吊り下げられる態様で連結される。複数の吊り下げ用フック52はそれぞれ吊り下げ用レール54に連結された状態でZ方向である水平方向D3に沿って移動する移動機能を有している。
【0134】
複数の吊り下げ用フック52はそれぞれ第1及び第2の主面とした上面及び下面を有している。+Z方向側が上面、-Z方向側が下面となる。
【0135】
複数の吊り下げ用フック52それぞれにZ方向に延在する第1及び第2の吊り下げ用ピン53が設けられる。第1及び第2の吊り下げ用ピン53はそれぞれ、図10に示すように、一対のピン構成となっている。
【0136】
第1の吊り下げ用ピン53は、吊り下げ用フック52の上面から+Z方向に沿った第1の突出方向に延びて設けられ、第2の吊り下げ用フック52は吊り下げ用フック52の下面から-Z方向に沿った第2の突出方向に延びて設けられる。第2の突出方向は第1の突出方向と反対の方向となる。
【0137】
以下、第1及び第2の吊り下げ用ピン53のうち任意の1つを示す場合、単に「吊り下げ用ピン53」と称する場合がある。
【0138】
なお、吊り下げ用フック52は下方に一対のピン構成の吊り下げ用ピン53が設けられるようにXY平面において幅広領域52rを有している。
【0139】
上述した1単位の吊り下げ用フック52と第1及び第2の吊り下げ用ピン53との組合せによって1単位の収納部材群55が構成される。したがって、治具収納庫5Bは、複数の収納部材群55を有している。
【0140】
1単位の収納部材群55において、吊り下げ用ピン53における一対のピンに、試験治具3Cの+Y方向側の端部領域に設けられた2つの位置決め穴14を貫通させた状態で試験治具3Cを吊り下げることにより、筐体50内に試験治具3Cを収納する収納機能を有している。
【0141】
1つの収納部材群55は第1及び第2の吊り下げ用ピン53を有しているため、1つの収納部材群55当たり2つの試験治具3Cを筐体50に収納することができる。
【0142】
実施の形態2の変形例である治具収納庫5Bは、収納対象試験治具となる試験治具3Cの2つの位置決め穴14を利用することにより、試験治具3C側に専用の収納容易化部材を設けることなく、1つの収納部材群55当たり2つの試験治具3Cを筐体50に収納することができる。
【0143】
さらに、収納部材群55における吊り下げ用フック52は移動方向に沿って移動する移動機能を有しているため、筐体50内で複数の収納部材群55を収納容易な位置に配置変更することにより、複数の試験治具3Cを筐体50内に比較的簡単に収納することができる。
【0144】
また、変形例である治具収納庫5Bは、試験治具3Cを吊り下げ用ピン53に貫通させて保管するため、試験治具3Cの筐体50内への収納、試験治具3Cの筐体50からの取り出しに要する時間の短縮を図ることができる。
【0145】
(試験治具の第2の変形例)
図11は実施の形態2の第2の変形例である試験治具3Eの構造を示す説明図である。図11は上面から視た上面構造を示している。図11にXYZ直交座標系を記している。
【0146】
実施の形態2の第2の変形例となる電気的特性試験装置は、実施の形態1の電気的特性試験装置S1において、試験治具3を試験治具3Eに置き換えた装置となる。
【0147】
以下、試験治具3Eについて説明する。なお、試験治具3Eに関し、図5及び図6で示した試験治具3Cと同様な構成は同一符号を付して説明を適宜省略し、試験治具3Eに固有の特徴を中心に説明する。
【0148】
試験治具3Eの+方向側の端部領域において、+Y方向側の端面から+Y方向側の2つの位置決め穴14にかけて、各々が治具本体30の上面及び下面間を貫通した2つの収納補助経路14mが設けられる。
【0149】
このように、試験治具3Eは基本構成の試験治具3Cと比較して2つの収納補助経路14mが設けられた点が異なる。
【0150】
(効果)
第2の変形例である試験治具3Eは以下のように治具収納庫5Bに収納し、治具収納庫5Bに収納された試験治具3を治具収納庫5Bから取り外すことができる。
【0151】
第2の変形例である試験治具3Eは、端面から2つの収納補助経路14mを経由して、2つの位置決め穴14に、吊り下げ用ピン53の一対のピンを貫通させることにより、試験治具3Eの吊り下げ用ピン53への装着動作を比較的簡単に行うことができる。
【0152】
加えて、試験治具3Eは、2つの位置決め穴14に2つの吊り下げ用ピン53が貫通した装着状態から、2つの収納補助経路14mを経由して2つの吊り下げ用ピン53から、試験治具3Eを分離する取り外し動作を比較的簡単に行うことができる。
【0153】
また、試験治具3Eを基本構成の治具収納庫5に収納する際も、同様に装着動作及び取り外し動作の簡略化が期待できる。
【0154】
治具収納庫5に収納する場合、試験治具3E-Y方向側の端部領域においても、-Y方向側の端面から-Y方向側の2つの位置決め穴14にかけて、各々が治具本体30の上面及び下面間を貫通した2つの収納補助経路14mをさらに設けることが望ましい。
【0155】
(試験治具の第3の変形例)
図12は実施の形態2の第3の変形例である試験治具3Fの構造を示す説明図である。図12は側面から視た側面構造を示している。図12にXYZ直交座標系を記している。
【0156】
実施の形態2の第3の変形例となる電気的特性試験装置は、実施の形態1の電気的特性試験装置S1において、試験治具3を試験治具3Fに置き換えた装置となる。
【0157】
以下、試験治具3Fについて説明する。なお、試験治具3Fに関し、図5及び図6で示した試験治具3Cと同様な構成は同一符号を付して説明を適宜省略し、試験治具3Fに固有の特徴を中心に説明する。
【0158】
試験治具3Fでは、4つの位置決め穴14に替えて、4つのスルーホール15を設けている。すなわち、試験治具3Fにおいて、治具側位置決め穴は4つのスルーホール15となる。なお、図12では2つのスルーホール15のみ図示している。なお、4つのスルーホール15のXY平面における位置は、試験治具3Cの4つの位置決め穴14と同一である。
【0159】
試験治具3Fは内部に基準電位設定配線となるグランド配線19を有している。グランド配線19は試験電極31~33、出力電極81~83及び内部配線11と同一形成層に設けられる。一方、4つのスルーホール15はそれぞれ導電性を有する内面領域を介してグランド配線19と電気的に接続される。
【0160】
そして、押圧機構において、各々が導電性を有する4つの位置決めピン48にグランド配線LGを接続している。グランド配線LGは基準電位となる接地電位に設定される。
【0161】
したがって、位置決め動作時に4つのスルーホール15に4つの位置決めピン48を貫通させることにより、グランド配線LGとグランド配線19とを電気的に接続することができる。
【0162】
また、試験治具3Fの4つのスルーホール15は治具本体30の上面及び下面を貫通しているため、試験治具3Cの4つの位置決め穴14と同様、収納容易化機能を有している。したがって、試験治具3Fを収納対象試験治具として、治具収納庫5や治具収納庫5B内に収納することができる。
【0163】
(効果)
実施の形態2の第3の変形例となる試験治具3Fは、治具側位置決め穴となるスルーホール15を介して基準電位設定配線となるグランド配線19を基準電位となる接地電位に設定することできる。
【0164】
具体的には、スルーホール15を貫通して位置決め穴42hに到達するように位置決めピン48を装着して、試験治具3F及びモジュール搭載部材4を含む試験構造体を位置決め設定状態にする際、外部からグランド配線LGを介して位置決めピン48に接地電位を付与する。その結果、位置決めピン48を介して試験治具3Fのグランド配線19を安定性良く接地電位に設定することできる。
【0165】
このように、試験治具3Eは、位置決め設定状態時に位置決めピン48を介してグランド配線19を接地電位に設定することにより、試験治具3Eの治具本体30内に帯電した静電気を除去することができる。
【0166】
(試験治具の第4の変形例)
図13は実施の形態2の第4の変形例である試験治具3Fの構造を示す説明図である。図13は側面から視た側面構造を示している。図13にXYZ直交座標系を記している。
【0167】
実施の形態2の第4の変形例となる電気的特性試験装置は、実施の形態1の電気的特性試験装置S1において、試験治具3を試験治具3Fに置き換えた装置となる。
【0168】
以下、試験治具3Fについて説明する。なお、試験治具3Fに関し、図12で示した試験治具3Eと同様な構成は同一符号を付して説明を適宜省略し、試験治具3Fに固有の特徴を中心に説明する。
【0169】
試験治具3Fでは、4つのスルーホール15の上層部にスルーホール15の貫通状態を阻害することなくランドパターン12を設けている。ランドパターン12の表面は露出している。そして、押圧機構において、4つの位置決めピン48に替えて4つのつば付位置決めピン48Tを設けている。各々が導電性を有する4つのつば付位置決めピン48Tにグランド配線LGを接続している。
【0170】
したがって、位置決め動作時に4つのスルーホール15に4つのつば付位置決めピン48Tのつば部の下方の先端部分を貫通させることにより、グランド配線LGとグランド配線19とを電気的に接続することができる。
【0171】
なお、つば付位置決めピン48Tの先端部分がスルーホール15を貫通する際、中段に設けられたつば部と治具本体30の上層部に設けられたランドパターン12とが接触する。したがって、つば付位置決めピン48Tのつば部とランドパターン12との間で安定した電気的接続関係を確保することができる。
【0172】
なお、つば付位置決めピン48Tの先端部分を十分長くすることにより、位置決め動作に、スルーホール15下方の位置決めブロック42の位置決め穴42hに先端部分を到達させることができる。
【0173】
また、試験治具3Gの4つのスルーホール15は治具本体30の上面及び下面を貫通しているため、試験治具3Cの4つの位置決め穴14と同様、収納容易化機能を有している。したがって、試験治具3Gを収納対象試験治具として、治具収納庫5や治具収納庫5B内に収納することができる。
【0174】
(効果)
実施の形態2の第4の変形例となる試験治具3Fは、試験治具3Eと同様、治具側位置決め穴となるスルーホール15を介して基準電位設定配線となるグランド配線19を基準電位となる接地電位に設定することできる。
【0175】
その結果、試験治具3Fは、つば付位置決めピン48Tを介してグランド配線19を接地電位に設定して、試験治具3Eの治具本体30内に帯電した静電気を除去することができる。
【0176】
さらに、つば付位置決めピン48Tは、つば部とランドパターン12との間でも電気的接続がなされているため、試験治具3Eと比較してより強い静電気除去機能を発揮することができる。
【0177】
<実施の形態3>
(構成)
図14は本開示の実施の形態3である電気的特性試験装置S3の構成を示す説明図である。図15図14で示した試験治具格納躯体7の詳細構成を示す説明図である。図14は側面から視た断面構造を示し、図15は上面から視た治具格納機構70の上面構造を示している。図14及び図15それぞれにXYZ直交座標系を記している。なお、XYZ直交座標系は試験治具3を基準としている。
【0178】
図14に示すように、実施の形態3の電気的特性試験装置S3は、図1及び図2で示した電気的特性試験装置S1と同様に、主要構成要素となる試験治具3、モジュール搭載部材4及び位置決めピン48及び押圧部材44を含む押圧機構を有している。
【0179】
一方、実施の形態3の電気的特性試験装置S3は、実施の形態1の電気的特性試験装置S1と比較して、試験ステージ41の上面上に治具格納機構70をさらに有する点を特徴としている。
【0180】
また、電気的特性試験装置S3では、試験治具3の4隅に設けられる4つの位置決め穴14を試験治具格納躯体7への4つの取り付け穴としても利用している。
【0181】
以下、実施の形態3の電気的特性試験装置S3の特徴部分である治具格納機構70について説明する。治具格納機構70は、試験治具格納躯体7、回転軸78及び回転軸支持部79を主要構成要素として含んでいる。
【0182】
格納躯体である試験治具格納躯体7は四角柱構造を呈しており、試験治具格納躯体7の一対の底面間を貫通して回転軸78が設けられる。この回転軸78は回転軸支持部79によって回転機能が実現できるように支持される。
【0183】
格納躯体である試験治具格納躯体7における複数の側面として4つの側面を有している。4つの側面が装着面7A~7Dに分類される。すなわち、試験治具格納躯体7は複数の装着面として装着面7A~7Dを有している。そして、装着面7A~7Dはそれぞれに固定ブロック71が設けられる。
【0184】
以下、装着面7A~7Dのうち装着面7Aを代表して説明する。装着面7A上の4隅を含む周辺領域に固定ブロック71が設けられる。固定ブロック71が形成されていない装着面7A上の中央領域に平面ブロック73及び下緩衝板74が積層される。平面ブロック73及び下緩衝板74の積層構造の形成高さは固定ブロック71と同程度の高さに設定される。
【0185】
押え板75及び上緩衝板76はそれぞれ、4つの位置決め穴14と平面視して一致する領域に4つの貫通孔を有している。さらに、固定ブロック71は4つの位置決め穴14に平面視して一致する領域に上面から内部にかけて4つの固定用穴71hを有している。下緩衝板74及び上緩衝板76それぞれの構成材料としてシリコン樹脂、エンジニアリングプラスティック等が考えられる。
【0186】
装着面7Aに試験治具3を装着する際、下緩衝板74及び固定ブロック71上に試験治具3、上緩衝板76及び押え板75の順に積み重ねる。この際、4つの固定用穴71h、上緩衝板76及び押え板75それぞれの4つの貫通孔が、試験治具3の4つの位置決め穴14に平面視して一致するように積み重ねられる。
【0187】
そして、4つの固定ピン72それぞれを対応する押え板75の貫通孔、上緩衝板76の貫通孔、位置決め穴14を貫通させ、固定用穴71hに到達させて固定状態にすることにより、装着面7Aの固定ブロック71上に試験治具3を装着することができる。
【0188】
この際、内部に試験電極31~33を有する試験領域35や出力電極81~83を有する出力領域85が形成される試験治具3の中央領域は下緩衝板74と接触する。このため、装着面7Aへの装着時に試験治具3の素子電極21~23や出力電極81~83が悪影響を受けることはない。
【0189】
装着面7B~7Dそれぞれにおいても、装着面7Aと同様、固定ブロック71上に試験治具3を装着することができる。
【0190】
このように、治具格納機構70は、装着面7A~7Dそれぞれに設けられた固定ブロック71上に装着対象の試験治具3を装着する装着機能を有している。
【0191】
さらに、治具格納機構70は、回転軸78回転中心として、装着面7A~7Dを回転方向R4に沿って移動するように格納躯体である試験治具格納躯体7を回転させる回転機能を有している。
【0192】
以下、試験治具3のモジュール搭載部材4への導入処理及び試験治具格納躯体7への装着処理を説明する。導入処理に先がけて、パワー半導体モジュール1の品種切り替えの際、試験治具格納躯体7の装着された試験治具3のうち、パワー半導体モジュール1の品種に整合した試験治具3を装着した面が交換位置となるように、試験治具格納躯体7の回転動作を実行する。交換位置としては交換対象となる試験治具3の装着面が最上面となる位置等が考えられる。
【0193】
電気的特性試験装置S3は、装着面7A~7Dのうち交換位置にある装着面において、4つの固定ピン72を取り外し、固定ブロック71から試験治具3を取り出し、取り出された試験治具3を、モジュール搭載部材4上に配置することにより、試験治具3のモジュール搭載部材4への導入処理を実行することができる。
【0194】
一方、電気的特性試験試験が終わった試験治具3に対し、試験治具格納躯体7の装着面7A~7Dのいずれかの固定ブロック71に装着する試験治具3の装着処理を実行することができる。
【0195】
上述した試験治具3の導入処理及び装着処理を電気的特性試験装置S3内で行うことにより、パワー半導体モジュール1の品種切り替え時間の短縮と、試験治具3の保管スペースの縮小化が行える。なお、上述した試験治具3の導入処理及び装着処理は自動的にまたはオペレータによる手動で行われる。
【0196】
また、試験治具格納躯体7の四角柱形状は一例であり、さらに底面を5角形以上の多角形状とすることで装着面の数を増やし、試験治具格納躯体7に装着できる試験治具3の枚数を増やしても良い。
【0197】
なお、説明の都合上、「試験治具3」を用いて導入処理及び装着処理を説明したが、装着面7A~7Dに装着される試験治具3の種類は異なって良いことは勿論である。すなわち、装着面7A~7Dそれぞれの固定ブロック71の4つの固定用穴71hに対応する4つの取り付け穴を有する試験治具であれば、導入処理及び装着処理を行うことができる。
【0198】
(効果)
実施の形態3の電気的特性試験装置S3は、上述した装着機能及び回転機能を有する治具格納機構70をモジュール搭載部材4の試験ステージ41上に設けることにより、電気的特性試験装置S3内で比較的容易に試験治具3の導入処理及び装着処理を行うことができる。
【0199】
このように、薄型、軽量化された試験治具3を有効活用すべく、電気的特性試験装置S3内に設置される試験治具格納躯体7に複数個の試験治具3を装着できる治具格納機構70を設けることにより、パワー半導体モジュール1の品種切替作業の自動化が容易になり、試験治具3の加工費低減が期待できる。
【0200】
また、試験治具3はモジュール搭載部材4と同じくクリーンルーム等の環境保障された空間に保管する必要がある。したがって、試験治具3の薄型化、サイズダウンによって、保管スペースを有効、効率的に活用することができる。このため、同バッチ、すなわち、同一の電気的特性試験装置S2内で試験可能なパワー半導体モジュール1の数量を増やせるため、パワー半導体モジュール1の生産効率が向上しコストダウンにつながる。
【0201】
<実施の形態4>
図16及び図17はそれぞれ実施の形態4の電気的特性試験装置S4の構成を示す説明図である。図18は実施の形態4の電気的特性試験装置S4の利用例を示す説明図である。図16図18はそれぞれ側面から視た断面構造を示している。図16図18それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0202】
図16及び図17に示すように、実施の形態4の電気的特性試験装置S4は、複数の試験治具3X、複数のモジュール搭載部材4X、複数の押圧機構40を主要構成要素として含んでいる。
【0203】
図19及び図20は1単位の試験治具3X、1単位のモジュール搭載部材4X及び1単位の押圧機構40の構造を示す説明図である。図19は側面から視た断面構造を示し、図20は上面から視た上面構造を示している。図19及び図20それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0204】
図19及び図20に示すように、試験治具3X及びモジュール搭載部材4Xの組合せにより試験構造体10Xが構成され、試験構造体10Xの上方に押圧部材44及び位置決めピン48を含む押圧機構40が設けられる。
【0205】
試験治具3Xは、図1及び図2で示した実施の形態1の試験治具3と比較して、内部に有する複数の試験領域35が1つの試験領域35に変更された点が異なる。
【0206】
すなわち、試験治具3Xの治具本体30内に1つの試験領域35が設けられ、かつ、1つの出力領域85が設けられる。したがって、試験治具3Xでは、試験電極31~33は1組のみ存在し、一組の試験電極31~33と一組の出力電極81~83とが3本の内部配線11を介して電気的に接続されている。
【0207】
試験治具3Xの他の構成は、図1及び図2で示した実施の形態1の試験治具3と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。試験治具3Xは1単位のパワー半導体モジュール1のみに対応する内部配線11を形成することにより、治具本体30の面積を縮小化することができる。
【0208】
モジュール搭載部材4Xは、図1及び図2で示した実施の形態1のモジュール搭載部材4と比較して、試験ステージ41上に設けられる複数のパワー半導体モジュール1が1つのパワー半導体モジュール1に変更された点が異なる。したがって、モジュール搭載部材4Xにおいて、1つのパワー半導体モジュール1の表面上に素子電極21~23が1組のみ存在する。
【0209】
モジュール搭載部材4Xに搭載される1単位のパワー半導体モジュール1と試験治具3Xに設けられる1単位の試験領域35とが対応する。
【0210】
したがって、試験構造体10Xの位置決め設定状態において、パワー半導体モジュール1及び試験領域35間において、素子電極21~23と試験電極31~33とが平面視して重複する。
【0211】
押圧機構40は、1単位の試験領域35及び1単位の出力領域85それぞれを押圧する複数の押圧部材44を有している。したがって、押圧機構40は総計2つの押圧部材44を有している。
【0212】
押圧機構40はさらに複数の位置決めピン48を有している。複数の位置決めピン48は試験治具3Xの両端領域それぞれに設けられる2つの位置決め穴14と、一対の位置決めブロック42それぞれに設けられる2つの位置決め穴42hとに対応して設けられる。したがって、押圧機構40は総計4つの位置決めピン48を有している。
【0213】
複数の押圧部材44はそれぞれ下面に緩衝板46を有しており、押圧動作時に下降方向D1に向けて、試験治具3Xにおける試験領域35または出力領域85を押圧する押圧動作を行って治具本体30を変形させることができる。
【0214】
複数の位置決めピン48はそれぞれ押圧動作時に下降方向D1に向けて下降し、対応する位置決め穴14を貫通して、位置決めブロック42の位置決め穴42hに達することにより、試験構造体10を位置決め設定状態にすることができる。すなわち、電気的特性試験装置S4では、押圧動作時に位置決め動作が併せて実行される。
【0215】
なお、複数の押圧機構40における押圧動作は図示しない駆動機構を動力源として実行される。駆動機構として例えば、シリンダ式等の空圧式、サーボ式または機械式の駆動機構が考えられる。
【0216】
さらに、図20に示すように、モジュール搭載部材4Xの試験ステージ41の4隅に4つのリニアブッシュ49が設けられ、4つのリニアブッシュ49それぞれ中央に4つのシャフト穴68が設けられる。シャフト穴68は試験ステージ41の上面及び下面を貫通している。
【0217】
図19及び図20に示すように、モジュール搭載部材4Xの試験ステージ41は、電気的特性試験装置S4の底板62または押圧機構40の押圧ステージ63として用いられる。この点については後に詳述する。
【0218】
図16及び図17に示すように、複数の試験構造体10Xは高さ方向であるZ方向に沿って積み重ねられている。以下、積層された複数の試験構造体10Xに関し、最下位置から最上位置にかけて第1~第5の試験構造体10Xと称する。このように、電気的特性試験装置S4は、M=5として、第1~第Mの試験構造体を有している。
【0219】
さらに、説明の都合上、第j(j=1~5(=M)のいずれか)の試験構造体10Xの試験治具3X及びモジュール搭載部材4Xを、「第jの試験治具3X」及び「第jのモジュール搭載部材4X」と称する場合がある。
【0220】
図16及び図17に示すように、複数の押圧機構40はそれぞれ押圧ステージ63、押圧部材44及び位置決めピン48を含んでいる。
【0221】
図16及び図17に示すように、押圧部材44は押圧ステージ63の下面から下方に向けて設けられ、位置決めピン48は押圧ステージ63の下面から下方に向けて設けられる。
【0222】
複数の押圧機構40は複数の試験構造体10Xに対応して設けられ、複数の押圧機構40はそれぞれ対応する試験構造体10Xの上方に配置される。複数の押圧機構40に関し、最下位置から最上位置にかけて第1~第5の押圧機構40と称する。このように、電気的特性試験装置S4は、M=5として、第1~第Mの押圧機構を有している。
【0223】
さらに、説明の都合上、第j(j=1~5(=M)のいずれか)の押圧機構40における位置決めピン48を「第jの位置決めピン48」と称し、押圧ステージ63を「第jの押圧ステージ63」と称する場合がある。
【0224】
図20で示した試験ステージ41のように、第1~第5の押圧ステージ63はそれぞれ4隅にシャフト穴68を有している。底板62から最上の天板61にかけて4本のシャフト65が立設される。4本のシャフト65は第1~第5の押圧ステージ63それぞれの4つのシャフト穴68を貫通して立設される。
【0225】
電気的特性試験装置S4において、底板62は第1のモジュール搭載部材4Xの試験ステージ41を兼ねている。すなわち、第1のモジュール搭載部材4Xの試験ステージ41は底板62として機能している。
【0226】
さらに、第1~第4の押圧ステージ63は第2~第5のモジュール搭載部材4Xの試験ステージ41を兼ねている。すなわち、第(k+1)のモジュール搭載部材4Xの試験ステージ41は第kの押圧ステージ63として機能している。なお、「k=1~(M-1)のいずれか」である。
【0227】
底板62と第1の押圧ステージ63との間、第1及び第2の押圧ステージ63,63間、第2及び第3の押圧ステージ63,63間、第3及び第4の押圧ステージ63,63間、及び、第4及び第5の押圧ステージ63,63間それぞれにおいて、4本のシャフト65を巻回して4個のスプリング64が設けられる。以下、4個のスプリング64の集合体を「弾性部材」と称する。したがたって、4本のシャフト65に5つの弾性部材が設けられる。
【0228】
以下、5つの弾性部材に関し、最下位置から最上位置にかけて第1~第5の弾性部材と称する。このように、電気的特性試験装置S4は、M=5として、第1~第Mの弾性部材を有している。
【0229】
上述した第1~第5の試験構造体10Xと、第1~第5の押圧機構40と第1~第5の弾性部材とは1対1に対応している。
【0230】
そして、底板62と第1の押圧ステージ63との間が第1の弾性部材により支持され、第k(k=1~(M-1)のいずれか)の押圧ステージ63と第(k+1)の押圧ステージ63との間が第(k+1)の弾性部材により支持される。
【0231】
なお、図17に示す押圧動作の実行前において、各々が試験ステージ41として機能する底板62及び第1~第4の押圧ステージ63それぞれに試験対象のパワー半導体モジュール1を装着している。
【0232】
第1~第5の押圧機構40における押圧動作は、図示しない駆動機構による動力によって最上位置の第5の押圧ステージ63を下方に移動させる動作となる。第5の押圧ステージ63の下方への移動に連動して、第5の弾性部材を介して第4の押圧ステージ63が下方に移動する。以下、同様に、第3、第2、第1の順に第3~第1の押圧ステージ63が下方に移動する。
【0233】
第1~第5の押圧機構40における押圧動作の実行により、図17に示すように、第j(j=1~5のいずれか)の位置決めピン48が第jの試験治具3Xの位置決め穴14を貫通し、第jのモジュール搭載部材4Xの位置決め穴42hに達する位置決め動作が併せて行われる。
【0234】
さらに、押圧動作の実行により、第1~第5の試験治具3Xそれぞれの試験領域35と出力領域85とを2つの押圧部材44によって押圧して、第1~第5の試験治具3それぞれの治具本体30を変形させる。
【0235】
すると、第1~第5の試験構造体10Xが第5、第4、第3、第2及び第1の順に初期状態から電極接触状態に変化する。電極接触状態は、第1~第5の試験構造体10Xそれぞれにおいて、試験電極31~33と素子電極21~23とが接触し、かつ、出力電極81~83と入力電極91~93とが接触する状態である。
【0236】
なお、第1~第5の弾性部材それぞれの荷重は、押圧動作によって第1~第5の試験構造体10Xそれぞれが支障無く電極接触状態になるように適切に設定される、すなわち、押圧動作の実行により、第1~第5の押圧ステージ63が下方に移動し、第1~第5の試験構造体10Xが全て電極接触状態となる範囲に第1~第5の弾性部材それぞれの荷重が設定される。なお、第1~第5の弾性部材それぞれの荷重は4個のスプリング64のばね荷重の総計となる。
【0237】
前述したように、図18は電気的特性試験装置S4の使用例を示している。図18に示すように、試験槽6内に電極接触状態の電気的特性試験装置S4が収納されている。試験槽6は高温または恒湿に設定される。試験槽6内を高温設定する場合、例えば、75℃、125℃、150℃及び200℃等に設定される。試験槽6内を恒湿設定する場合、例えば、85%の湿度が考えられる。
【0238】
図18に示すように、試験槽6内に電極接触状態の電気的特性試験装置S4を収納することにより、積層された複数のパワー半導体モジュール1に対する高温または恒湿環境下における電気的特性試験を実行することができる。
【0239】
このように、実施の形態4の電気的特性試験装置S4は、第1~第5の試験構造体10Xを積層することより、装置面積を最小限に抑えて、電気的特性試験装置S4内におけるパワー半導体モジュール1の試験対象数の増加を図ることができる。
【0240】
さらに、第1のモジュール搭載部材4Xの試験ステージ41を底板62として機能させ、第2~第5のモジュール搭載部材4Xの試験ステージ41を第1~第4の押圧ステージ63として機能させている。
【0241】
その結果、実施の形態4の電気的特性試験装置S4は、高さ方向に存在する部品数を必要最小限に抑えて装置構成の簡略化及びサイズダウンを図ることができる。
【0242】
さらに、図17に示すように、試験槽6の外部で第1~第5の試験構造体10Xを電極接触状態にした後、図18に示すように、高温または恒湿に設定された試験槽6に電気的特性試験装置S4を収納することができる。
【0243】
このように、試験治具3Xの薄型構造を活かした省スペースな状態で電極接触状態の電気的特性試験装置S4を構成することができる。
【0244】
このため、電気的特性試験装置S4内における試験構造体10Xの設置数の増加が容易となり、限られた試験槽6内で多数のパワー半導体モジュール1に対する有効な電気的特性試験が実行できる。
【0245】
その結果、電気的特性試験装置S4をパワー半導体モジュール1の製造工程に用いることにより、パワー半導体モジュール1の生産効率の向上が図れる。したがって、製造されるパワー半導体モジュール1のコスト低減化が期待できる。
【0246】
<その他>
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0247】
例えば、実施の形態4の電気的特性試験装置S4で用いたモジュール搭載部材4Xを、実施の形態1のモジュール搭載部材4のように複数のパワー半導体モジュール1を有する構成に変更し、かつ、試験治具3Xを、実施の形態1の試験治具3のように複数の試験領域35を有する構成に変更することが考えられる。
【符号の説明】
【0248】
1 パワー半導体モジュール、3,3B~3G,3X 試験治具、4,4B,4C,4X モジュール搭載部材、5,5B 治具収納庫、6 試験槽、7 試験治具格納躯体、10,10B,10X 試験構造体、11,11B 内部配線、14,42h 位置決め穴、14m 収納補助経路、15 スルーホール、16 補強板、21~23 素子電極、31~33 試験電極、35 試験領域、40 押圧機構、41 試験ステージ、42 位置決めブロック、44 押圧部材、48 位置決めピン、50 筐体、52 吊り下げ用フック、51,53 吊り下げ用ピン、62 底板、63 押圧ステージ、64 スプリング、65 シャフト、70 治具格納機構、71 固定ブロック、78 回転軸、79 回転軸支持部、81~83 出力電極、85,88 出力領域、91~93 入力電極、100,105 入力ブロック、S1~S4,S1B 電気的特性試験装置。
図1
図2
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図5
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