(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】衛星MIMOシステム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/185 20060101AFI20241101BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20241101BHJP
【FI】
H04B7/185
H04B7/0413
(21)【出願番号】P 2022506674
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 US2020043896
(87)【国際公開番号】W WO2021030046
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-19
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517362118
【氏名又は名称】エーエスティー アンド サイエンス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AST & Science, LLC
【住所又は居所原語表記】100 SE 2nd St,Suite 3500 Miami, Florida 33131, U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ フイウェン
(72)【発明者】
【氏名】アヴェラン アーベル
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤシムハ スリラム
(72)【発明者】
【氏名】ユー ジー ジョン
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-148482(JP,A)
【文献】特開2005-295096(JP,A)
【文献】特表2007-529964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/185
H04B 7/0413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末局アンテナを有する端末局と通信するための基地局であって、
第1の衛星と通信する
ように構成された第1の指向性アンテナと、
第2の衛星と通信する
ように構成された第2の指向性アンテナと、
前記第1の衛星との間で前記第1の指向性アンテナを介して第1のデータを含む第1の信号を送信および/または受信し、前記第2の衛星との間で前記第2の指向性アンテナを介して第2のデータを含む第2の信号を送信および/または受信するように構成された処理装置であって、前記第1および第2の衛星は、前記第1および第2の信号を同一の周波数を介して前記複数の端末局アンテナに中継する、処理装置とを有
し、
前記処理装置は、前記第1の衛星からの前記第1の信号と前記第2の衛星からの前記第2の信号とが前記端末局に同時に到着するように、前記端末局に割り当てられた複数の物理リソースブロック(PRB)について前記第1の衛星および前記第2の衛星のそれぞれのタイミングアドバンスを適用するように構成されている、基地局。
【請求項2】
請求項
1において、
前記処理装置は、前記第1の指向性アンテナを介して第1のデータを有する第1の信号を、ある衛星の第1のビームに対しおよび/または前記第1のビームから送信し、前記第1の指向性アンテナを介して第2のデータを有する第2の信号を、同じ衛星の第2のビームに対しおよび/または前記第2のビームから送信するように構成され、前記第1および第2の衛星ビームは、同じ周波数を介して前記第1および第2の信号を前記複数の端末局アンテナに対しおよび/またはそれらから中継する、基地局。
【請求項3】
請求項
1において、
前記処理装置と前記第1の指向性アンテナとの間に接続され、前記第1の指向性アンテナを介して送受信される
前記第1の信号にドップラー補償および/または遅延補償を行う第1のドップラーおよび/または遅延補償器と、前記処理装置と前記第2の指向性アンテナとの間に接続され、前記第2の指向性アンテナを介して送受信される
前記第2の信号にドップラー補償および/または遅延補償を行う第2のドップラーおよび/または遅延補償器とをさらに有する、基地局。
【請求項4】
請求項
1において、
前記端末局は第1のユーザ機器端末を含み、
前記処理装置は、
前記第1のユーザ機器端末に割り当てられた複数の物理リソースブロック(PRB)
について前記第1の衛星および前記第2の衛星のそれぞれのタイミングアドバンスを適用するように
さらに構成されている、基地局。
【請求項5】
請求項
1において、
前記処理装置は、異なるRFポートでの
マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)動作における
前記端末局のためのダウンリンクタイミングアドバンスにより前記複数のPRBをスケジューリングし、タイミング調整時の衝突を回避するように構成されている、基地局。
【請求項6】
請求項
1において、
前記処理装置は、リンク性能を向上させるダイバーシティモード、および/または
マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)機能を利用してスループットを向上させる空間多重化モードで動作する
ように構成されている、基地局。
【請求項7】
請求項
6において、
転送(ハンドオフ)用の指向性アンテナをさらに
含む、基地局。
【請求項8】
請求項
1において、
前記処理装置は、前記第1の指向性アンテナおよび前記第2の指向性アンテナのそれぞれを介して複数の基地局アンテナ信号を
前記第1の衛星および前記第2の衛星のそれぞれに送信して、
前記複数の端末局アンテナに再送信する
ようにさらに構成されている、基地局。
【請求項9】
複数の端末局アンテナを有する端末局と通信するための基地局であって、
第1の衛星と通信する第1の指向性アンテナと、
第2の衛星と通信する第2の指向性アンテナと、
前記第1の衛星との間で前記第1の指向性アンテナを介して第1のデータを含む第1の信号を送信および/または受信し、前記第2の衛星との間で前記第2の指向性アンテナを介して第2のデータを含む第2の信号を送信および/または受信するように構成された処理装置であって、前記第1および第2の衛星は、前記第1および第2の信号を同一の周波数を介して前記複数の端末局アンテナに中継する、処理装置とを有し、
前記処理装置は、前記第1の指向性アンテナを介して第1のデータを有する第1の信号を、ある衛星の第1のビームに対しおよび/または前記第1のビームから送信し、前記第1の指向性アンテナを介して第2のデータを有する第2の信号を、同じ衛星の第2のビームに対しおよび/または前記第2のビームから送信するように構成され、前記第1および第2の衛星ビームは、同じ周波数を介して前記第1および第2の信号を前記複数の端末局アンテナに対しおよび/またはそれらから中継する、基地局。
【請求項10】
複数の端末局アンテナを有する端末局と通信するための基地局であって、
第1の衛星と通信する第1の指向性アンテナと、
第2の衛星と通信する第2の指向性アンテナと、
前記第1の衛星との間で前記第1の指向性アンテナを介して第1のデータを含む第1の信号を送信および/または受信し、前記第2の衛星との間で前記第2の指向性アンテナを介して第2のデータを含む第2の信号を送信および/または受信するように構成された処理装置であって、前記第1および第2の衛星は、前記第1および第2の信号を同一の周波数を介して前記複数の端末局アンテナに中継する、処理装置とを有し、
前記処理装置は、MIMO動作における複数のユーザ機器端末のそれぞれに関連する複数のPRBにおけるダウンリンク(DL)信号の到着時間差を取得して処理するように構成され、さらに、
前記処理装置は、複数の衛星のすべてからのMIMO信号が前記複数のユーザ機器端末に同時に到着するように、MIMO動作における前記複数のユーザ機器端末のそれぞれに割り当てられた複数の物理リソースブロック(PRB)について前記複数の衛星のそれぞれにタイミングアドバンスを適用するように構成されている、基地局。
【請求項11】
請求項10において、
前記処理装置は、異なるRFポートでのMIMO動作における特定の前記複数のユーザ機器端末のためのDLタイミングアドバンスによりeNodeB-PRBをスケジューリングし、タイミング調整時の衝突を回避するように構成されている、基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年8月9日に出願された米国仮出願第62/884,951号、および2019年11月18日に出願された米国仮出願第62/936,955号の優先権の利益を主張するものであり、これらの内容はその全体が参照され、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、通信システムに関するものである。より詳細には、本発明は、衛星システムに関わるMIMO(Multiple Input Multiple Output、マイモ)の使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在の地上ベースの通信システムを
図1に示す。この通信システムは、基地局10とユーザー装置(User Equipment(UE))20とを有する。基地局10は、eNodeB12のような処理装置と、複数のアンテナ14a~14nとを含む。UE20は、1つまたは複数の処理装置またはUE端末22を含み、これらはユーザー端末、端末装置またはユーザーデバイスとも呼ばれ、例えばモバイルデバイス(携帯機器、例えば、スマートフォン)を含む。UE20はまた、1つ以上のアンテナ24a~24nを含み、図示の実施形態では、UEは、同じ周波数で動作する4つのアンテナ24を有する。これらのアンテナ24は、設計上、波長の約1/2またはそれ以上の間隔で配置される。
【0004】
さらに図示されているように、基地局10とUE端末20との間で通信が行われる。データは、基地局アンテナ14a~14nおよびUEアンテナ24a~24nのそれぞれを介して、eNodeBとUE端末20との間で(UE端末へ/UE端末20から)送受信(送信/受信)される。より具体的には、複数の基地局アンテナ14a~14nのそれぞれから、異なるそれぞれの周波数でデータが送信される。例えば、第1の基地局アンテナ14aからは第1の信号16aが送信され、第2の基地局アンテナ14bからは第2の信号16bが送信され、第n(第n番目)の基地局アンテナ14nからは第nの信号が送信され、全て同じ周波数で送信される。第1、第2および第nの信号16a~16nは、高レートの同一データストリーム、またはそれぞれが低データレートの4つの並列データストリームとみなすことができる。
【0005】
UEアンテナ24a~24nはそれぞれ、基地局アンテナ14からの第1~第nの信号16a~16nを受信する。そして、UE端末24は、それらの第1~第nの信号16a~16nのうち最も強い/最良のものを選択するか、信号16a~16nが同じデータストリームを含む場合には最大比合成(MRC)を使用して受信信号品質を向上させるか、信号16a~16nが異なるデータストリームを含む場合には空間多重化(SM)を使用して受信データレートを向上さてもよい。
【発明の概要】
【0006】
UE20から地上の範囲内に基地局10がない場合に、基地局のアンテナ信号を衛星コンステレーション(衛星群)上の複数のアンテナに拡張し、UEが、MIMOを活用して、通信できるようにする方法について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、先行技術による地上通信システムを示す。
【0008】
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る衛星中継システムを示す図であり
【0009】
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る衛星中継システムの他の実施形態を示す。
【0010】
【
図4】
図4は、UEがセルの端で見る最悪のケースの(セルの中心で遅延とドップラーが補償されると仮定した場合の)差分遅延を示す。
【0011】
【
図5】
図5(a)、
図5(b)は、各衛星の視点(
図3、
図4で説明した場合を想定)から見た、eNodeBの差動遅延帯域の取り扱いを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0012】
図示された本発明の例示的かつ非限定的な実施形態を説明する際には、明確にするために特定の用語に頼ることになる。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、各特定の用語には、同様の目的を達成するために同様の方法で動作するすべての技術的な同等物が含まれることが理解されるべきである。本発明のいくつかの実施形態は、説明のために記載されているが、本発明は、図面に特に示されていない他の形態で具現化されてもよいことが理解される。
【0013】
図面に目を向けると、
図2には、本発明の非限定的な一例に係る衛星中継通信システムが示されている。この通信システムは、基地局(地上局)100とユーザ機器(ユーザ装置、UE)200とを含む。また、このシステムは、それぞれが地上の小さな領域(セル)をカバーする複数のビームを生成する衛星50a~50nなどの1つまたは複数の中継装置を利用して、基地局100と、カバーされた領域(セル)の1つの中に位置するUE200との間で双方向の通信を行う。
【0014】
基地局100は、eNodeB(Evolved Node B、携帯基地局)102のような処理装置と、複数の指向性衛星アンテナ104a~104nとを含む。図示するように、標準的な基地局アンテナ101a~101nを基地局100に配置することができる。また、図示するように、eNodeB102と指向性アンテナ104a~104nのそれぞれとの間には、衛星の高度に関わらず、各ビームの中心でドップラー/ディレイを一定値に補正するドップラー/ディレイ補正器103a~103nを設けることができる。
【0015】
各UE200は、モバイルデバイス(例えば、スマートフォン)などの1つまたは複数の処理デバイスまたはUE端末(UEターミナル)202と、1つまたは複数のアンテナ204a~204nとを有する。図示の実施形態では、単一のUE端末202は、4つのアンテナ204を有するが、UEは、より多くのまたは少ないアンテナ204を有することができるが、好ましくは、少なくとも2つのアンテナ204を有する。
【0016】
図2にさらに示されているように、基地局100は、ここでは衛星(人工衛星)50a~50nとして示されている1つまたは複数の中継装置を介して複数のUE(UEs)200と通信する。これらの衛星50は、LEO(地球低軌道)、MEO(地球中軌道)、またはGEO(静止軌道)にあってもよい。各地上局/UEは、4つの衛星50a~50nのうちの1つからの4つのビームによってカバーされる(通信する)ことができるが、本発明は、より多くまたはより少ない衛星50で動作することができる。
【0017】
eNodeB102は、(ドップラー/遅延補償器103による遅延およびドップラー補償(地上局の位置、視野内の各衛星のエフェメリス(天体位置、天体暦)、およびUEが位置するセルの中心に依存する)の後に)各指向性アンテナ104a~104nに対する/からの1つまたは複数の信号をルーティングする。各指向性アンテナ104は、衛星50a~50nの対応する1つに向けられ、通信を行う。したがって、第1の指向性アンテナ104aは、第1の衛星50aとの間で第1の信号106aを送信し、第n(第n番目)の指向性アンテナ104nは、第nの衛星50nとの間で第nの信号106nを送信し、これらの信号106a~106nの各々は、同一の周波数または異なる周波数で、同一のデータストリームまたは異なるデータストリームを含むことができる。これらの衛星50a~50nは、順方向リンク経路(フォワードリンクパス)では、アップリンクでそれぞれの信号106a~106nを受信し、それらの信号をダウンリンク52aa~52nnとして、複数のUE200のそれぞれの複数のUEアンテナ204のそれぞれに再送またはブロードキャストする。リターンリンクの流れは逆である。
【0018】
すなわち、UEアンテナ204a~204nのそれぞれは、全ての衛星50a~50nからのダウンリンク信号52aa~52nnを全て受信する。したがって、第1のUEアンテナ204aは、第1~第nの衛星50a~50nからの第1~第nのダウンリンク信号52aa~52naを受信し、第2のUEアンテナ204bは、第1~第nの衛星50a~50nからの第1~第nのダウンリンク信号52abから52nbを受信し、第nのUEアンテナ204nは、第1~第nの衛星50a~50nからの第1~第nのダウンリンク信号52an~52nnを受信する。例えば、第1の衛星50aは、第1のUEアンテナ204aに第1のダウンリンク信号52aaを送信し、第nのUEアンテナ204nに第nのダウンリンク信号52anを送信し、第nの衛星50nは、第1のUEアンテナ204aに第nのダウンリンク信号52naを送信し、第nのUEアンテナ204nに第nのダウンリンク信号52nnを送信する。そして、UE端末202は、受信したダウンリンク信号52aa~52nnの中から最も強い/最良の信号を選択したり、信号52aa~52nnが同じデータストリームを含む場合には最大比合成(MRC)を使用して受信信号品質を向上させたり、信号52a~52nが異なるデータストリームを含む場合には空間多重化(SM)を使用して受信データレートを向上させたりすることができる。
【0019】
さらに、複数のUE200から基地局100への通信もリターンリンクで行われることに留意されたい。すなわち、複数のUE端末202は、複数のアンテナ204a~204nのそれぞれを介して、複数の衛星50a~50nのすべてに複数の信号を送信する。これらの衛星50a~50nは、それらの信号を指向性アンテナ104a~104nのそれぞれ1つに再送信する。第1の衛星50aは、アンテナ204a~204nのそれぞれからの信号を受信して、集約されたデータを第1の指向性アンテナ104aに再送信し、第2の衛星50bは、アンテナ204a~204nのそれぞれからの信号を受信して、集約されたデータを第2の指向性アンテナ104bに再送信し、第nの衛星50nは、アンテナ204a~204nのそれぞれからの信号を受信して、集約されたデータを第nの指向性アンテナ104nに再送信する。
【0020】
ドップラー/遅延補償器103は、指向性アンテナ104a~104nのそれぞれから集約されたデータを受信する。この補償器は、UEセルにサービスを提供するeNodeB102に送信する前に、(UEのセルセンター、衛星のエフェメリス、および地上局の位置に基づいて)各アンテナ信号を遅延およびドップラー補償し、例えば、米国特許第9、973,266および/または米国公開第2019/0238216号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。すなわち、eNodeB102は、次に、受信したダウンリンク信号104a~104nの中から最も強い/最良の信号を選択するか、信号204a~204nが同じデータストリームを含む場合には最大比合成(MRC)を使用して受信信号品質を向上させるか、信号204a~204nが異なるデータストリームを含む場合には空間多重化(SM)を使用して受信データレートを向上させることができる。
【0021】
次に、
図3を参照すると、本発明の別の例示的な実施形態が示されている。基地局100は、ここでは衛星50i(iはa~nのいずれか)として示される中継装置の1つを介して複数のUE200と通信する。各グランドセル(地上の区画、領域、範囲)は、異なる偏波、異なる位相中心、および/または任意の組み合わせのいずれかにより、同一の衛星50iからの複数のビーム60a~60mによってカバーされ得る。異なる位相中心を有するビームは、
図3に示されているように、異なる複数の物理的なアンテナによって生成されるか、または、同じフェーズドアレイアンテナの異なる部分によって形成されことができ、米国特許第9,973,266号および/または米国公開第2019/0238216号に開示されている。したがって、衛星50は大きな開口を有し、各アンテナ204は、図示のように、同じセルをカバーする、対応するサブ開口からのすべてのビームと通信する。
【0022】
同一の衛星50iからの複数のビーム60a~60nは複数のUEアンテナ204a~204nとともにMIMO機能のための別のアプローチを提供する。フォワードリンク(送信リンク)では、ドップラー/遅延が補償(補正)された信号の全てが、同じ指向性アンテナ104を介して衛星50に送信される。ドップラーは、地上局から衛星へのリンクで使用される異なる送信周波数に基づいて異なる(ただし、
図1とは異なり、衛星のエフェメリスはすべてのアンテナ信号で同じである)。また、衛星のエフェメリスがすべての信号で同じであっても、アップリンクされる周波数が異なるため、各信号にドップラー補償器が設けられる。遅延は同じである(
図1とは異なり)。
【0023】
リバースリンク(逆方向リンク)では、衛星50からの集約(アグリゲート)された信号は、指向性アンテナ104で受信され、それぞれのドップラー/遅延補償器に(偏波(ポーラライゼイション)や位相中心の異なる、異なるビームに対してはダウンリンク周波数で)分けられる(分離される)。
【0024】
衛星システムは、ダイバーシティとSM(Spatial Multiplexing、空間多重方式)の2つのMIMOモードで動作可能である。ダイバーシティモードは、単一のアンテナしか持たないUE端末や、スループットよりもリンクの接続性が重要なUE端末に特に適している。ダイバーシティモードでは、フォワードリンクにおいて、
図2に示すような複数の基地局アンテナおよび/または
図3に示すような単一の基地局アンテナ104が、同じ情報を衛星50に送信し、UE200は、複数の衛星/ビームから受信した最も強い/最良の信号を使用するか、またはMRC(Maximal Ratio Combining、最大比合成)を使用して受信信号品質を向上させる。また、リターンリンクでは、複数のUEアンテナ204が同じ情報を衛星50に送信し、eNodeB102は、基地局アンテナ104から受信した最も強い/最良の信号を使用するか、または最大比合成(MRC)を使用して受信信号品質を向上させる。ここで、リンクの信頼性だけでなく、リンクの有用性も向上する。
【0025】
SMモードは、
図2および/または
図3に示すように、複数のアンテナを有するUE端末に特に適しており、スループットを向上させることができる。フォワードリンクのSMモードでは、異なるデータストリームが、1または複数のUEが衛星ネットワークに接続されている同じセルに、同じ周波数帯でダウンリンクされる。その後、UE端末202は、受信した信号52および/または60に対して空間多重化を行い、データストリームをまとめて集約する。リターンリンクのSMモードでは、異なるデータストリームが、あるUEの複数のアンテナ204を介して、同じ周波数帯で、異なるビーム60を用いて、異なる衛星50および/または同じ衛星にアップリンクされる。そして、eNodeB102は、異なる複数の基地局アンテナ/ビーム104からの受信信号に対して空間多重化を行い、データストリームをまとめて集約する。このSMモードでは、帯域幅に関する要件を増やすことなく、最大で約n倍の容量となり、スループットが向上する。
【0026】
図2または
図3のコンスタレーション構成(衛星群の構成)を選択する際に考慮すべきもう1つの点は、MIMOシステムが許容できる最大の遅延差(差動遅延、ディファレンシャルディレイ)である。例えば、ビーム径48kmの場合の最悪の遅延差(すなわち、
図4に示すように、MIMO衛星の構成が140度に分かれている場合)は、最大140μsとなり、2LTEシンボル(2回のLET変調)よりも大きく、2つの衛星の経路から来るMIMO信号で問題となり得る。このため、MIMOシステムは、アンテナ間の大きな遅延差に対応するか(
図2の衛星コンステレーション構成を利用する場合)、または「塊状の(まとまった)」衛星構成のコンステレーション(
図3のような)を採用する必要がある。
【0027】
図2のケースでは、稼働中のeNodeB102は、衛星の1つ、例えば50aのダウンリンク(DL)到着時間を、他の衛星、例えば50b、50c、50d(4x4MIMOの場合)の基準として決定し、それに応じて特定のMIMO-UEの複数の物理リソースブロック(PRBs)の送信(Tx)時間を調整し、4つの衛星からの4つのMIMO信号すべてを、そのUEのために時間調整することができる。ダウンリンクの到着時間は、セルの中心においては、すべての衛星では同じであるが、セル内の他の場所(一般的な場合)では異なる。eNodeBは、MIMO動作においてユーザ機器端末のそれぞれに割り当てられた複数のPRBsについて各衛星のタイミングアドバンス(タイミングの繰り上げ、タイミングの前倒し、タイミングの調整)を適用し、MIMO動作において全ての衛星からのMIMO信号が同時にユーザ機器端末に到着するようにする。また、eNodeB処理装置は、異なるRFポートでMIMO動作を行う特定の複数のUEに対し、eNodeB-PRBsをDLタイミングアドバンス(ダウンリンクのタイミングを前倒し、調整すること)によりスケジューリングし、タイミング調整時の衝突を回避する。例えば、LTE用のMIMOでは、送信(Tx)信号の必要性はeNodeBで調整され、所望のタイミングの範囲(例えば60ns)内でUEのアンテナに到着するようにする。しかしながら、各UEは、(同じセル内の)他のUEとは異なる物理リソースブロック(PRBs)を使用する。そのため、使用するPRBsはUEの位置に応じて時間調整され、そのUEでMIMO処理が適用できるようになる。
【0028】
図5(a)、(b)は、2つの衛星のMIMO動作を示しており、複数のUE(UEs)に関するDL信号の到着時間の調整をそのeNodeBが行う必要がある。2x2MIMOの場合:2つの衛星がオーバーラップするセル内のUEはULアクティビティを備えており、2つのRFポートを有するeNodeBが、そのセルにサービスを提供する2つの衛星のビームを介して、2つのRFパスに、2つのタイミングアドバンス(TA)を処理(演算する、解決する、ワークアウト)する機会を提供する。2x2MIMO動作において、TAの差分(デルタTA)を見つけることが可能であり、
図5は、セルのセンター(中央)に対するTAバンドを示しており、TAバンド番号は、上が左の衛星、下が右の衛星を示す。TAバンドはTA値を意味しており、説明のためにTAバンドラベルを用いている。eNodeBは、関連するRFポートの複数のPRB(対象となるUEに割り当てられたもの)にTAの差分の半分を割り当て、2つの衛星からのすべてのシンボルがUEに同時に到着するようにする。同様に、4x4MIMOについても同じことが適用できる。
【0029】
別の例示的な実施形態では、指向性アンテナ(ゲートウェイアンテナ)104と衛星50との間の通信は、Kaバンド、Qバンド/Vバンド、および/または光であってもよく、衛星50とUE端末アンテナ204との間の通信は、任意の3GPPおよび5Gのバンドまたは帯域であってもよい。ゲートウェイでは、セルラートラフィック(携帯電話のトラフィック)がデジタル化され、カスタムeNodeB102へ/から(との間で)転送される。本発明は、UE端末202にいかなる変更も必要とせず、ローカルセルタワー(電話基地局)に接続するのと同様に複数の衛星ビームに接続する。このeNodeB102は、修正されていない(変更されていない)地上ベースのデバイスに標準に準拠したインターフェースを提供し、ローカルタワーに接続するのと同様に接続することを可能にする一方で非標準的な追加機能に適応させて、標準的なUEを、MIMO動作を含め;過剰な遅延やドップラーシフトなどの衛星通信システムの影響を補正(補償)するなどの期待に応えるようにしている。
【0030】
前述のとおり、(UEから)見える衛星の数はnより少なくてもよい。1つのUEから見える衛星が3つで、そのUEが4つのアンテナを持っていると仮定した場合、2x2MIMOまたは4x4MIMOに対応できるシステムでは、そのシステムが、衛星の1つから同じUE(セル)をカバーする2つのビームを生成し、そのシステムでは、UEからの4つのアンテナと衛星からの4つのビーム(2つの衛星からの各1つのビームと、3つ目の衛星からの2つのビーム)が見えることになる。そのeNodeBとUEとは、チャネル状態表示(CSI)行列を推定する。このマトリクスのランクが4であれば、システムは4x4MIMOのメリットを得ることができるが、ランクが低い場合は、メリットもそれに応じて減少する。同様の状況は、そのUEが見ることができる衛星が2つだけ、または1つだけの場合にも生じる。
【0031】
本発明のシステムおよび方法は、電子情報源からのデータにアクセスするコンピュータソフトウェアによって、標準的なUE(UEs)を用いて実施(実装)することができる。本発明によるソフトウェアおよび情報は、衛星またはeNodeBなどにおける単一の処理装置内にあってもよいし、他のコンピュータまたは他の電子装置のグループにネットワーク接続された中央処理にあってもよい。また、ソフトウェアや情報は、メモリやデータ記憶装置などの媒体に格納されていてもよい。全体の処理は、プロセッサによって自動的に行われ、手動での操作は必要とされない。媒体には、1つまたは複数の非一時的な物理的な媒体も含まれ、そこに格納されていると記述されている内容と共に格納されてもよい。さらに、他に示されていない限り、プロセスは、遅延や手動のアクションなしに実質的にリアルタイムで発生(実行)することができる。
【0032】
前述の説明および図面は、本開示の原理を例示するものに過ぎないと考えるべきであり、本開示は様々な方法で構成することができ、本明細書に記載された実施形態によって限定されることを意図するものではない。本開示の数多くの応用は、当業者にとって容易に生じるであろう。したがって、本開示を、開示された特定の例、または、示され、説明された正確な構造および動作に限定することは望まれない。むしろ、本開示の範囲内で、すべての適切な変更および同等物に頼ることができる。