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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
A61B3/10 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022514435
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021013984
(87)【国際公開番号】W WO2021205965
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2020068050
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】山田 和広
(72)【発明者】
【氏名】清水 仁
(72)【発明者】
【氏名】中島 将
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-6172(JP,A)
【文献】特開昭59-77829(JP,A)
【文献】特開2012-34925(JP,A)
【文献】特許第3243272(JP,B2)
【文献】特開昭56-132936(JP,A)
【文献】特開2016-140402(JP,A)
【文献】国際公開第2021/149280(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット状の開口部が形成されたスリットと、光源と前記スリットとの間の被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に配置され光軸位置から離れた位置に2つの開口部が形成された虹彩絞りとを有し、前記光源からの光を用いてスリット状の照明光を生成し、前記照明光を前記被検眼の眼底に導く照明光学系と、
開口部が形成された撮影絞りを有し、瞳分割で前記眼底から導かれて前記撮影絞りの開口部を通過した前記照明光の戻り光をイメージセンサに導く撮影光学系と、
を含み、
前記被検眼の眼内において前記照明光の光束領域と前記戻り光の光束領域との重複領域が前記被検眼の水晶体後面より前記眼底の側に配置されるように、前記スリット状の開口部の幅、前記2つの開口部の間隔、及び前記撮影絞りの開口部のサイズが設定されている、眼科装置。
【請求項2】
前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表し、前記撮影光学系の光軸方向における前記被検眼の瞳孔中心と前記水晶体後面との距離をLlと表し、前記光軸方向における前記瞳孔中心と前記眼底との距離をLfと表すと、
(Id-Sd)>(2×Fd×Ll/(Lf-Ll))を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表すと、
(Id-Sd)>(Fd/2)を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
更に、前記眼内において前記重複領域が前記被検眼の角膜前面より前記被検眼の側に配置されるように、前記幅、前記間隔、及び前記サイズが設定されている
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表し、前記撮影光学系の光軸方向における前記被検眼の瞳孔中心と前記水晶体後面との距離をLlと表し、前記光軸方向における前記瞳孔中心と前記眼底との距離をLfと表し、前記光軸方向における前記被検眼の角膜前面と前記瞳孔中心との距離をLaと表し、前記瞳孔中心を原点位置と表すと、
(La-Ll)×Lf<(2×Ll-Lf)×Laのとき、(2×Fd×Ll/(Lf-Ll))<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たし、
(La-Ll)×Lf>(2×Ll-Lf)×Laのとき、(2×Fd×La/(Lf+La))<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表し、前記被検眼の瞳孔中心を原点位置と表すと、
(Fd/2)<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項7】
スリット状の開口部が形成されたスリットと、光源と前記スリットとの間の被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に配置され光軸位置から離れた位置に2つの開口部が形成された虹彩絞りとを有し、前記光源からの光を用いてスリット状の照明光を生成し、前記照明光を前記被検眼の眼底に導く照明光学系と、
開口部が形成された撮影絞りを有し、瞳分割で前記眼底から導かれて前記撮影絞りの開口部を通過した前記照明光の戻り光をイメージセンサに導く撮影光学系と、
を含み、
前記被検眼の眼内において前記照明光の光束領域と前記戻り光の光束領域との重複領域が前記被検眼の角膜前面より前記被検眼の側に配置されるように、前記スリット状の開口部の幅、前記2つの開口部の間隔、及び前記撮影絞りの開口部のサイズが設定されている、眼科装置。
【請求項8】
前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表し、前記撮影光学系の光軸方向における前記被検眼の瞳孔中心と前記眼底との距離をLfと表し、前記光軸方向における前記角膜前面と前記瞳孔中心との距離をLaと表し、前記瞳孔中心を原点位置と表すと、
(2×Fd×La/(Lf+La))<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす
ことを特徴とする請求項7に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、
前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表し、前記被検眼の瞳孔中心を原点位置と表すと、
(18×Fd/59)<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす
ことを特徴とする請求項7に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記スリット状の開口部のサイズは変更可能である
ことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項11】
前記2つの開口部の間隔は変更可能である
ことを特徴とする請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項12】
前記撮影絞りに形成された開口部のサイズは変更可能である
ことを特徴とする請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項13】
前記撮影絞りは、前記照明光学系の光路と前記撮影絞りの開口部を通過する光軸の方向に配置された前記撮影光学系の光路とを結合すると共に、前記撮影絞りの開口部の周辺領域において反射された前記照明光を前記眼底に導くように構成された穴鏡である
ことを特徴とする請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項14】
前記イメージセンサは、前記眼底における前記照明光の照射位置に対応した前記照明光の戻り光の受光結果をローリングシャッター方式で取り込むように構成される
ことを特徴とする請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項15】
前記イメージセンサは、CMOSイメージセンサである
ことを特徴とする請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼科装置を用いたスクリーニング検査が行われる。このような眼科装置は、自己検診への応用も期待されており、より一層の小型化、軽量化が望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、被検眼をパターン照明し、その戻り光をイメージセンサによりローリングシャッター方式で受光するように構成された眼科装置が開示されている。この眼科装置は、照明パターンと、イメージセンサによる受光タイミングとを調整することにより、簡素な構成で被検眼の画像を取得することが可能である。
【0004】
また、例えば、特許文献3には、眼底にスポット状の照明光を入射することで眼底からの反射光もスポット状に絞り、水晶体内での照明光の光束領域と反射光の光束領域とが交わる領域を小さくするように構成された眼底撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7831106号明細書
【文献】米国特許第8237835号明細書
【文献】特開2016-30181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された手法では、水晶体内で照明光の光束領域と反射光の光束領域とが交わることによりフレアが発生し、簡素な構成であっても、取得された被検眼の画像の画質が低下する場合があるという問題がある。
【0007】
これに対して、特許文献3に開示された手法によれば、フレアを低減することができる。ところが、スポット状の照明光を被検眼に照射する必要があるため、既存の構成を変更する必要がある上に、照明側と受光側とのタイミング調整が複雑になるという問題がある。また、撮影時間が長くなり、被検眼の眼球運動等に起因した画質の低下を招く可能性が高くなる。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、簡素な構成で、被検眼の高画質の画像を取得するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの実施形態の第1態様は、スリット状の開口部が形成されたスリットと、光源と前記スリットとの間の被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に配置され光軸位置から離れた位置に2つの開口部が形成された虹彩絞りとを有し、前記光源からの光を用いてスリット状の照明光を生成し、前記照明光を前記被検眼の眼底に導く照明光学系と、開口部が形成された撮影絞りを有し、瞳分割で前記眼底から導かれて前記撮影絞りの開口部を通過した前記照明光の戻り光をイメージセンサに導く撮影光学系と、を含み、前記被検眼の眼内において前記照明光の光束領域と前記戻り光の光束領域との重複領域が前記被検眼の水晶体後面より前記眼底の側に配置されるように、前記スリット状の開口部の幅、前記2つの開口部の間隔、及び前記撮影絞りの開口部のサイズが設定されている、眼科装置である。
【0010】
いくつかの実施形態の第2態様では、第1態様において、前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表し、前記撮影光学系の光軸方向における前記被検眼の瞳孔中心と前記水晶体後面との距離をLlと表し、前記光軸方向における前記瞳孔中心と前記眼底との距離をLfと表すと、(Id-Sd)>(2×Fd×Ll/(Lf-Ll)を満たす。
【0011】
いくつかの実施形態の第3態様では、第1態様において、前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表すと、(Id-Sd)>(Fd/2)を満たす。
【0012】
いくつかの実施形態の第4態様では、第1態様~第3態様のいずれかにおいて、更に、前記眼内において前記重複領域が前記被検眼の角膜前面より前記被検眼の側に配置されるように、前記幅、前記間隔、及び前記サイズが設定されている。
【0013】
いくつかの実施形態の第5態様では、第1態様において、前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表し、前記撮影光学系の光軸方向における前記被検眼の瞳孔中心と前記水晶体後面との距離をLlと表し、前記光軸方向における前記瞳孔中心と前記眼底との距離をLfと表し、前記光軸方向における前記被検眼の角膜前面と前記瞳孔中心との距離をLaと表し、前記瞳孔中心を原点位置と表すと、(La-Ll)×Lf<(2×Ll-Lf)×Laのとき、(2×Fd×Ll/(Lf-Ll))<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たし、(La-Ll)×Lf>(2×Ll-Lf)×Laのとき、(2×Fd×La/(Lf+La))<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす。
【0014】
いくつかの実施形態の第6態様では、第1態様において、前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表し、前記被検眼の瞳孔中心を原点位置と表すと、(Fd/2)<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす。
【0015】
いくつかの実施形態の第7態様は、スリット状の開口部が形成されたスリットと、光源と前記スリットとの間の被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に配置され光軸位置から離れた位置に2つの開口部が形成された虹彩絞りとを有し、前記光源からの光を用いてスリット状の照明光を生成し、前記照明光を前記被検眼の眼底に導く照明光学系と、開口部が形成された撮影絞りを有し、瞳分割で前記眼底から導かれて前記撮影絞りの開口部を通過した前記照明光の戻り光をイメージセンサに導く撮影光学系と、を含み、前記被検眼の眼内において前記照明光の光束領域と前記戻り光の光束領域との重複領域が前記被検眼の角膜前面より前記被検眼の側に配置されるように、前記スリット状の開口部の幅、前記2つの開口部の間隔、及び前記撮影絞りの開口部のサイズが設定されている、眼科装置である。
【0016】
いくつかの実施形態の第8態様では、第7態様において、前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表し、前記撮影光学系の光軸方向における前記被検眼の瞳孔中心と前記眼底との距離をLfと表し、前記光軸方向における前記角膜前面と前記瞳孔中心との距離をLaと表し、前記瞳孔中心を原点位置と表すと、(2×Fd×La/(Lf+La))<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす。
【0017】
いくつかの実施形態の第9態様では、第7態様において、前記スリット状の開口部は、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記撮影絞りの開口部は、前記虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記眼底における前記スリットの前記開口部の像の幅をFdと表し、前記虹彩における前記虹彩絞りの前記2つの開口部の像の間隔をIdと表し、前記虹彩における前記撮影絞りの前記開口部の像のサイズをSdと表し、前記被検眼の瞳孔中心を原点位置と表すと、(18×Fd/59)<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす。
【0018】
いくつかの実施形態の第10態様では、第1態様~第9態様のいずれかにおいて、前記スリット状の開口部のサイズは変更可能である。
【0019】
いくつかの実施形態の第11態様では、第1態様~第10態様のいずれかにおいて、前記2つの開口部の間隔は変更可能である。
【0020】
いくつかの実施形態の第12態様では、第1態様~第11態様のいずれかにおいて、前記撮影絞りに形成された開口部のサイズは変更可能である。
【0021】
いくつかの実施形態の第13態様では、第1態様~第12態様のいずれかにおいて、前記撮影絞りは、前記照明光学系の光路と前記撮影絞りの開口部を通過する光軸の方向に配置された前記撮影光学系の光路とを結合すると共に、前記撮影絞りの開口部の周辺領域において反射された前記照明光を前記眼底に導くように構成された穴鏡である。
【0022】
いくつかの実施形態の第14態様では、第1態様~第13態様のいずれかにおいて、前記イメージセンサは、前記眼底における前記照明光の照射位置に対応した前記照明光の戻り光の受光結果をローリングシャッター方式で取り込むように構成される。
【0023】
いくつかの実施形態の第15態様では、第1態様~第14態様のいずれかにおいて、前記イメージセンサは、CMOSイメージセンサである。
【0024】
なお、上記した複数の態様に係る構成を任意に組み合わせることが可能である。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、簡素な構成で、被検眼の高画質の画像を取得するための新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図2】実施形態に係る眼科装置の制御系の構成例を示す概略図である。
図3A】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図3B】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図4】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図5】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図6】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図7】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図8】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図9】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図10A】実施形態の第1変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図10B】実施形態の第2変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図11A】実施形態の第3変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図11B】実施形態の第4変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図12】実施形態の第1変形例~第4変形例に係る眼科装置の制御系の構成例を示す概略図である。
図13】実施形態の第5変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図14】実施形態の第5変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図15】実施形態の第6変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図16】実施形態の第6変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明に係る眼科装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0028】
実施形態に係る眼科装置は、スリット状の照明光の照射位置(照明領域、照射範囲)を移動させながら被検眼の所定部位を照明し、1次元的に又は2次元的に受光素子が配列されたイメージセンサを用いて所定部位からの戻り光を受光する。戻り光の受光結果は、照明光の照射位置の移動タイミングに同期して、照明光の照射位置に対応した戻り光の受光位置における受光素子から読み出される。いくつかの実施形態では、所定部位は、前眼部、又は後眼部である。前眼部には、角膜、虹彩、水晶体、毛様体、チン小帯などがある。後眼部には、硝子体、眼底又はその近傍(網膜、脈絡膜、強膜など)などがある。
【0029】
実施形態に係る眼科装置の制御方法は、実施形態に係る眼科装置においてプロセッサ(コンピュータ)により実行される処理を実現するための1以上のステップを含む。実施形態に係るプログラムは、プロセッサに実施形態に係る眼科装置の制御方法の各ステップを実行させる。
【0030】
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0031】
以下、実施形態に係る眼科装置が、主に、被検眼の眼底の画像を取得する場合について説明する。
【0032】
[光学系の構成]
図1図2図3A、及び図3Bに、実施形態に係る眼科装置の構成例の概略図を示す。図1は、実施形態に係る眼科装置1の光学系の構成例を表す。図2は、実施形態に係る眼科装置1の制御系(処理系)の構成例のブロック図を表す。図3Aは、光軸Oの方向からみたときの図1の虹彩絞り21の第1構成例を模式的に表す。図3Bは、光軸Oの方向からみたときの図1の虹彩絞り21の第2構成例を模式的に表す。図1図3Bにおいて、同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0033】
眼科装置1は、光源10と、照明光学系20と、光スキャナ30と、投影光学系35と、撮影光学系40と、撮像装置50とを含む。いくつかの実施形態では、照明光学系20は、光源10、光スキャナ30、及び投影光学系35の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、撮影光学系40は、撮像装置50を含む。いくつかの実施形態では、投影光学系35又は撮影光学系40は、光スキャナ30を含む。
【0034】
(光源10)
光源10は、可視領域の光を発生する可視光源を含む。例えば、光源10は、420nm~700nmの波長範囲の中心波長を有する光を発生する。このような光源10は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、ハロゲンランプ、又はキセノンランプを含む。いくつかの実施形態では、光源10は、白色光源又はRGBの各色成分の光を出力可能な光源を含む。いくつかの実施形態では、光源10は、赤外領域の光又は可視領域の光を切り換えて出力することが可能な光源を含む。光源10は、眼底Ef及び虹彩のそれぞれと光学的に非共役な位置に配置される。
【0035】
(照明光学系20)
照明光学系20は、光源10からの光を用いてスリット状の照明光を生成する。照明光学系20は、生成された照明光を光スキャナ30に導く。
【0036】
照明光学系20は、虹彩絞り21と、スリット22と、リレーレンズ23とを含む。光源10からの光は、虹彩絞り21に形成された開口部を通過し、スリット22に形成された開口部を通過し、リレーレンズ23を透過する。リレーレンズ23は、1以上のレンズを含む。リレーレンズ23を透過した光は、光スキャナ30に導かれる。
【0037】
(虹彩絞り21)
虹彩絞り21(具体的には、後述の開口部)は、被検眼Eの虹彩(瞳孔)と光学的に略共役な位置に配置可能である。虹彩絞り21には、光軸Oから離れた位置に1以上の開口部が形成されている。
【0038】
例えば、図3Aに示すように、虹彩絞り21には、光軸Oと中心とする円周方向に沿って所定の厚さを有する開口部21A、21Bが形成されている。開口部21A、21Bの間隔Idは、光軸位置を通る方向の間隔である。
【0039】
例えば、図3Bに示すように、虹彩絞り21には、光軸Oと中心とする円周方向に沿って弓形状の開口部21A、21Bが形成されている。開口部21A、21Bの間隔Idは、光軸位置を通る方向の間隔である。
【0040】
虹彩絞り21に形成された開口部は、被検眼Eの虹彩における照明光の入射位置(入射形状)を規定する。例えば、図3A又は図3Bに示すように開口部21A、21Bを形成することにより、光軸Oに被検眼Eの瞳孔中心が配置されたとき、瞳孔中心から偏心した位置(具体的には、瞳孔中心を中心とする点対称の位置)から照明光を眼内に入射させることが可能である。
【0041】
虹彩絞り21に形成される開口部の形状は、図3Aに示す円弧状、又は図3Bに示す弓形状に限定されない。いくつかの実施形態では、開口部21A、21Bのそれぞれの形状は、矩形状である。いくつかの実施形態では、開口部21A、21Bのそれぞれの形状は、楕円形状である。
【0042】
また、光源10と虹彩絞り21に形成された開口部との間の相対位置を変更することにより、虹彩絞り21に形成された開口部を通過する光の光量分布を変更することが可能である。
【0043】
(スリット22)
スリット22(具体的には、後述の開口部)は、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置に配置可能である。例えば、スリット22には、後述するイメージセンサ51からローリングシャッター方式で読み出されるライン方向(ロウ方向)に対応した方向に開口部が形成されている。スリット22に形成された開口部は、被検眼Eの眼底Efにおける照明光の照射パターンを規定する。
【0044】
スリット22は、駆動機構(後述の駆動機構22D)により照明光学系20の光軸方向に移動可能である。駆動機構は、後述の制御部100からの制御を受け、スリット22を光軸方向に移動する。例えば、制御部100は、被検眼Eの状態に応じて駆動機構を制御する。これにより、被検眼Eの状態(具体的には、屈折度数、眼底Efの形状)に応じてスリット22の位置を移動することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、スリット22は、被検眼Eの状態に応じて、光軸方向に移動されることなく開口部の位置及び形状の少なくとも1つを変更可能に構成される。このようなスリット22の機能は、例えば液晶シャッターにより実現される。
【0046】
虹彩絞り21に形成された開口部を通過した光源10からの光は、スリット22に形成された開口部を通過することによりスリット状の照明光として出力される。スリット状の照明光は、リレーレンズ23を透過して、光スキャナ30に導かれる。
【0047】
(光スキャナ30)
光スキャナ30は、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置される。光スキャナ30は、リレーレンズ23を透過するスリット状の照明光(スリット22に形成された開口部を通過したスリット状の光)を偏向する。具体的には、光スキャナ30は、被検眼Eの虹彩又はその近傍をスキャン中心位置として所定の偏向角度範囲内で偏向角度を変更しつつ、眼底Efの所定の照明範囲を順次に照明するためのスリット状の照明光を偏向し、投影光学系35に導く。光スキャナ30は、照明光を1次元的又は2次元的に偏向することが可能である。
【0048】
1次元的に偏向する場合、光スキャナ30は、所定の偏向方向を基準に所定の偏向角度範囲で照明光を偏向するガルバノスキャナを含む。2次元的に偏向する場合、光スキャナ30は、第1ガルバノスキャナと、第2ガルバノスキャナとを含む。第1ガルバノスキャナは、照明光学系20の光軸に直交する水平方向に照明光の照射位置を移動するように照明光を偏向する。第2ガルバノスキャナは、照明光学系20の光軸に直交する垂直方向に照明光の照射位置を移動するように、第1ガルバノスキャナにより偏向された照明光を偏向する。光スキャナ30による照明光の照射位置を移動するスキャン態様としては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャンなどがある。
【0049】
(投影光学系35)
投影光学系35は、光スキャナ30により偏向された照明光を被検眼Eの眼底Efに導く。実施形態では、投影光学系35は、後述の光路結合部材としての穴鏡45により撮影光学系40の光路と結合された光路を介して、光スキャナ30により偏向された照明光を眼底Efに導く。
【0050】
投影光学系35は、リレーレンズ41、黒点板42、反射ミラー43、リレーレンズ44を含む。リレーレンズ41、44のそれぞれは、1以上のレンズを含む。
【0051】
(黒点板42)
黒点板42は、対物レンズ46のレンズ表面又はその近傍と光学的に略共役な位置に配置される。これにより、対物レンズ46のレンズ表面からの反射光が撮像装置50に導光されることを防ぐことができる。
【0052】
このような投影光学系35では、光スキャナ30により偏向された照明光は、リレーレンズ41を透過し、黒点板42を通過し、反射ミラー43により穴鏡45に向けて反射される。
【0053】
(撮影光学系40)
撮影光学系40は、投影光学系35を導かれてきた照明光を被検眼Eの眼底Efに導くと共に、眼底Efからの照明光の戻り光を撮像装置50に導く。
【0054】
撮影光学系40では、投影光学系35からの照明光の光路と、眼底Efからの照明光の戻り光の光路とが結合される。これらの光路を結合する光路結合部材として穴鏡45を用いることで、照明光とその戻り光とを瞳分割することが可能である。
【0055】
撮影光学系40は、穴鏡45、対物レンズ46、合焦レンズ47、リレーレンズ48、及び結像レンズ49を含む。リレーレンズ48のそれぞれは、1以上のレンズを含む。
【0056】
(穴鏡45)
穴鏡45には、撮影光学系40の光軸に配置される孔部が形成される。穴鏡45の孔部は、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置される。穴鏡45は、孔部の周辺領域において、投影光学系35からの照明光を対物レンズ46に向けて反射する。このような穴鏡45は、撮影絞りとして機能する。
【0057】
すなわち、穴鏡45は、照明光学系20(投影光学系35)の光路と孔部を通過する光軸の方向に配置された撮影光学系40の光路とを結合すると共に、孔部の周辺領域において反射された照明光を眼底Efに導くように構成される。
【0058】
(合焦レンズ47)
合焦レンズ47は、図示しない移動機構により撮影光学系40の光軸方向に移動可能である。移動機構は、後述の制御部100からの制御を受け、合焦レンズ47を光軸方向に移動する。これにより、被検眼Eの状態に応じて、穴鏡45の孔部を通過した照明光の戻り光を撮像装置50のイメージセンサ51の受光面に結像させることができる。
【0059】
このような撮影光学系40では、投影光学系35からの照明光は、穴鏡45に形成された孔部の周辺領域において対物レンズ46に向けて反射される。穴鏡45の周辺領域において反射された照明光は、対物レンズ46により屈折されて、被検眼Eの瞳孔を通じて眼内に入射し、被検眼Eの眼底Efを照明する。
【0060】
眼底Efからの照明光の戻り光は、対物レンズ46により屈折され、穴鏡45の孔部を通過し、合焦レンズ47を透過し、リレーレンズ48を透過し、結像レンズ49により撮像装置50のイメージセンサ51の受光面に結像される。
【0061】
(撮像装置50)
撮像装置50は、撮影光学系40を通じて被検眼Eの眼底Efから導かれてきた照明光の戻り光を受光するイメージセンサ51を含む。撮像装置50は、後述の制御部100からの制御を受け、戻り光の受光結果を出力することが可能である。
【0062】
(イメージセンサ51)
イメージセンサ51は、ピクセル化された受光器としての機能を実現する。イメージセンサ51の受光面(検出面、撮像面)は、眼底Efと光学的に略共役な位置に配置可能である。
【0063】
イメージセンサ51による受光結果は、ローリングシャッター方式により取り込まれて読み出される。いくつかの実施形態では、後述の制御部100は、イメージセンサ51を制御することにより受光結果の読み出し制御を行う。いくつかの実施形態では、イメージセンサ51は、受光位置を示す情報と共に、あらかじめ決められたライン分の受光結果を自動的に出力することが可能である。
【0064】
このようなイメージセンサ51は、CMOSイメージセンサを含む。この場合、イメージセンサ51は、ロウ方向に配列された複数のピクセル(受光素子)群がカラム方向に配列された複数のピクセルを含む。具体的には、イメージセンサ51は、2次元的に配列された複数のピクセルと、複数の垂直信号線と、水平信号線とを含む。各ピクセルは、フォトダイオード(受光素子)と、キャパシタとを含む。複数の垂直信号線は、ロウ方向(水平方向)に直交するカラム方向(垂直方向)のピクセル群毎に設けられる。各垂直信号線は、受光結果に対応した電荷が蓄積されたピクセル群と選択的に電気的に接続される。水平信号線は、複数の垂直信号線と選択的に電気的に接続される。各ピクセルは、戻り光の受光結果に対応した電荷を蓄積し、蓄積された電荷は、例えばロウ方向のピクセル群毎に順次読み出される。例えば、ロウ方向のライン毎に、各ピクセルに蓄積された電荷に対応した電圧が垂直信号線に供給される。複数の垂直信号線は、選択的に水平信号線と電気的に接続される。垂直方向に順次に上記のロウ方向のライン毎の読み出し動作を行うことで、2次元的に配列された複数のピクセルの受光結果を読み出すことが可能である。
【0065】
このようなイメージセンサ51に対してローリングシャッター方式で戻り光の受光結果を取り込む(読み出す)ことにより、ロウ方向に延びる所望の仮想的な開口形状に対応した受光像が取得される。このような制御については、例えば、米国特許第8237835号明細書等に開示されている。
【0066】
図4に、実施形態に係る眼科装置1の動作説明図を示す。図4は、眼底Efに照射されるスリット状の照明光の照射範囲IPと、イメージセンサ51の受光面SRにおける仮想的な開口範囲OPとを模式的に表す。
【0067】
例えば、後述の制御部100は、照明光学系20により形成されたスリット状の照明光を光スキャナ30を用いて偏向する。それにより、眼底Efにおいて、スリット状の照明光の照射範囲IPがスリット方向(例えば、ロウ方向、水平方向)と直交する方向(例えば、垂直方向)に順次に移動(シフト)される。
【0068】
イメージセンサ51の受光面SRでは、例えば、後述の制御部100によって取り込み対象のピクセルをライン単位で変更することによって、仮想的な開口範囲(開口領域)OPが設定される。開口範囲OPは、受光面SRにおける照明光の戻り光の受光範囲IP´又は受光範囲IP´より広い範囲であることが望ましい。例えば、後述の制御部100は、照明光の照射範囲IPの移動制御に同期して、開口範囲OPの移動制御を実行する。それにより、不要な散乱光の影響を受けることなく、簡素な構成で、コントラストが強い眼底Efの高画質の画像を取得することが可能である。
【0069】
図5及び図6に、イメージセンサ51に対するローリングシャッター方式の制御タイミングの一例を模式的に示す。図5は、イメージセンサ51に対する読み出し制御のタイミングの一例を表す。図6は、照明光の照射範囲IP(受光範囲IP´)の移動制御タイミングを図5の読み出し制御タイミングに重畳させて表したものである。図5及び図6において、横軸はイメージセンサ51のロウ数、縦軸は時間を表す。
【0070】
なお、図5及び図6では、説明の便宜上、イメージセンサ51のロウ数が1920であるものとして説明するが、実施形態に係る構成はロウ数に限定されるものではない。また、図6において、説明の便宜上、スリット状の照明光のスリット幅(ロウ方向の幅)が40ロウ分であるものとする。
【0071】
ロウ方向の読み出し制御は、リセット制御と、露光制御と、電荷転送制御と、出力制御とを含む。リセット制御は、ロウ方向のピクセルに蓄積されている電荷の蓄積量を初期化する制御である。露光制御は、フォトダイオードに光を当てて、受光量に対応した電荷をキャパシタに蓄積させる制御である。電荷転送制御は、ピクセルに蓄積された電荷量を垂直信号線に転送する制御である。出力制御は、複数の垂直信号線に蓄積された電荷量を水平信号線を介して出力する制御である。すなわち、図5に示すように、ロウ方向のピクセルに蓄積された電荷量の読み出し時間Tは、リセット制御に要する時間Tr、露光制御に要する時間(露光時間)Te、電荷転送制御に要する時間Tc、出力制御に要する時間Toutの和である。
【0072】
図5では、ロウ単位で読み出し(取り込み)開始タイミング(時間Tcの開始タイミング)をシフトさせることで、イメージセンサ51における所望の範囲のピクセルに蓄積された受光結果(電荷量)が取得される。例えば、図5に示すピクセル範囲が1フレーム分の画像である場合、フレームレートFRが一意に決まる。
【0073】
この実施形態では、複数のロウ数分のスリット幅を有する照明光の眼底Efにおける照射位置を、眼底Efにおいてカラム方向に対応する方向に順次にシフトさせる。イメージセンサ51の受光面における照射範囲IP´(眼底Efにおける照明領域に対応した領域)のシフト方向の幅が2以上のロウ数分の幅を有する場合に、後述の制御部100は、所定のロウ数単位で開口範囲OP(開口領域)がシフト方向にシフトするように光スキャナ30を制御する。
【0074】
例えば、図6に示すように、所定のシフト時間Δt毎に、照明光の眼底Efにおける照射位置をカラム方向に対応する方向にロウ単位でシフトさせる。シフト時間Δtは、イメージセンサ51におけるピクセルの露光時間Teを照明光のスリット幅(例えば、スリット幅のロウ数=40)で分割することにより得られる(Δt=Te/40)。この照射位置の移動タイミングに同期させて、シフト時間Δt単位でロウ毎にピクセルの各ロウの読み出し開始タイミングを遅延させて開始させる。これにより、簡素な制御で、且つ、短時間に、コントラストが強い眼底Efの高画質の画像を取得することが可能になる。
【0075】
いくつかの実施形態では、イメージセンサ51は、1以上のラインセンサにより構成される。
【0076】
[制御系の構成]
図2に示すように、眼科装置1の制御系は、制御部100を中心に構成されている。なお、制御系の構成の少なくとも一部が眼科装置1に含まれていてもよい。
【0077】
(制御部100)
制御部100は、眼科装置1の各部を制御する。制御部100は、主制御部101と、記憶部102とを含む。主制御部101は、プロセッサを含み、記憶部102に記憶されたプログラムに従って処理を実行することで、眼科装置1の各部の制御処理を実行する。
【0078】
(主制御部101)
主制御部101は、光源10の制御、移動機構10Dの制御、照明光学系20の制御、光スキャナ30の制御、撮影光学系40の制御、撮像装置50の制御、及びデータ処理部200の制御の制御を行う。
【0079】
光源10の制御には、光源の点灯や消灯(又は光の波長領域)の切り替え、光源の光量の変更制御が含まれる。
【0080】
移動機構10Dは、公知の機構により、光源10の位置及び向きの少なくとも1つを変更する。主制御部101は、虹彩絞り21及びスリット22に対する光源10の相対位置及び相対向きの少なくとも1つを変更することが可能である。
【0081】
照明光学系20の制御には、駆動機構22Dの制御が含まれる。駆動機構22Dは、スリット22を照明光学系20の光軸方向に移動する。主制御部101は、被検眼Eの状態に応じて駆動機構22Dを制御することにより、被検眼Eの状態に対応した位置にスリット22を配置する。被検眼Eの状態として、眼底Efの形状、屈折度数、眼軸長などがある。屈折度数は、例えば、特開昭61-293430号公報又は特開2010-259495号公報に開示されているような公知の眼屈折力測定装置から取得可能である。眼軸長は、公知の眼軸長測定装置、又は光干渉断層計の測定値から取得可能である。
【0082】
例えば、屈折度数に対して照明光学系20の光軸におけるスリット22の位置があらかじめ関連付けられた第1制御情報が記憶部102に記憶されている。主制御部101は、第1制御情報を参照して屈折度数に対応したスリット22の位置を特定し、特定された位置にスリット22が配置されるように駆動機構22Dを制御する。
【0083】
ここで、スリット22の移動に伴い、スリット22に形成された開口部を通過する光の光量分布が変化する。このとき、上記のように、主制御部101は、移動機構10Dを制御することにより、光源10の位置及び向きを変更することが可能である。
【0084】
光スキャナ30の制御には、照明光を偏向する偏向面の角度の制御が含まれる。偏向面の角度範囲を制御することで、スキャン範囲(スキャン開始位置及びスキャン終了位置)を制御することが可能である。偏向面の角度の変更速度を制御することで、スキャン速度を制御することが可能である。
【0085】
撮影光学系40の制御には、移動機構47Dの制御が含まれる。移動機構47Dは、合焦レンズ47を撮影光学系40の光軸方向に移動する。主制御部101は、イメージセンサ51を用いて取得された画像の解析結果に基づいて移動機構47Dを制御することが可能である。また、主制御部101は、後述の操作部110を用いたユーザの操作内容に基づいて移動機構47Dを制御することが可能である。
【0086】
撮像装置50の制御には、イメージセンサ51の制御が含まれる。イメージセンサ51の制御には、ローリングシャッター方式で受光結果を読み出すための制御(例えば、照明パターンのサイズに対応した受光サイズの設定等)が含まれる。また、イメージセンサ51の制御には、リセット制御、露光制御、電荷転送制御、出力制御などが含まれる。リセット制御に要する時間Tr、露光制御に要する時間(露光時間)Te、電荷転送制御に要する時間Tc、出力制御に要する時間Tout等を変更することが可能である。
【0087】
データ処理部200の制御には、イメージセンサ51から取得された受光結果に対する各種の画像処理や解析処理が含まれる。画像処理には、受光結果に対するノイズ除去処理、受光結果に基づく受光像に描出された所定の部位を識別しやすくするための輝度補正処理がある。解析処理には、合焦状態の特定処理などがある。
【0088】
データ処理部200は、ローリングシャッター方式によりイメージセンサ51から読み出された受光結果に基づいて、任意の開口範囲に対応した受光像を形成することが可能である。データ処理部200は、画像形成部として、開口範囲に対応した受光像を順次に形成し、形成された複数の受光像から被検眼Eの画像を形成することが可能である。
【0089】
データ処理部200は、プロセッサを含み、記憶部等に記憶されたプログラムに従って処理を行うことで、上記の機能を実現する。
【0090】
いくつかの実施形態では、光源10は、2以上の光源を含む。この場合、2以上の光源のそれぞれは、虹彩絞り21に形成された2以上の開口部に対応して設けられる。主制御部201は、2以上の光源のそれぞれに対応して設けられた移動機構を制御することにより、各光源の位置及び向き(光量分布が最大になる方向の向き)の少なくとも1つを変更することが可能である。
【0091】
(記憶部102)
記憶部102は、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。コンピュータプログラムには、眼科装置1を制御するための演算プログラムや制御プログラムが含まれる。
【0092】
(操作部110)
操作部110は、操作デバイス又は入力デバイスを含む。操作部110には、眼科装置1に設けられたボタンやスイッチ(たとえば操作ハンドル、操作ノブ等)や、操作デバイス(マウス、キーボード等)が含まれる。また、操作部110は、トラックボール、操作パネル、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてよい。
【0093】
(表示部120)
表示部120は、データ処理部200により生成された被検眼Eの画像を表示させる。表示部120は、LCD(Liquid Crystal Display)等のフラットパネルディスプレイなどの表示デバイスを含んで構成される。また、表示部120は、眼科装置1の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0094】
なお、操作部110と表示部120は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。例えばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部110は、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部110に対する操作内容は、電気信号として制御部100に入力される。また、表示部120に表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部110とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。いくつかの実施形態では、表示部120及び操作部110の機能は、タッチスクリーンにより実現される。
【0095】
(その他の構成)
いくつかの実施形態では、眼科装置1は、更に、固視投影系を含む。例えば、固視投影系の光路は、図1に示す光学系の構成において、撮影光学系40の光路に結合される。固視投影系は、内部固視標又は外部固視標を被検眼Eに提示することが可能である。内部固視標を被検眼Eに提示する場合、固視投影系は、制御部100からの制御を受けて内部固視標を表示するLCDを含み、LCDから出力された固視光束を被検眼Eの眼底に投影する。LCDは、その画面上における固視標の表示位置を変更可能に構成されている。LCDにおける固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの眼底における固視標の投影位置を変更することが可能である。LCDにおける固視標の表示位置は、操作部110を用いることによりユーザが指定可能である。
【0096】
いくつかの実施形態では、眼科装置1は、アライメント系を含む。いくつかの実施形態では、アライメント系は、XYアライメント系と、Zアライメント系とを含む。XYアライメント系は、装置光学系(対物レンズ46)の光軸に交差する方向に装置光学系と被検眼Eとの位置合わせを行うために用いられる。Zアライメント系は、眼科装置1(対物レンズ46)の光軸の方向に装置光学系と被検眼Eとの位置合わせを行うために用いられる。
【0097】
例えば、XYアライメント系は、被検眼Eに輝点(赤外領域又は近赤外領域の輝点)を投影する。データ処理部200は、輝点が投影された被検眼Eの前眼部像を取得し、取得された前眼部像に描出された輝点像とアライメント基準位置との変位を求める。制御部100は、求められた変位がキャンセルされるように図示しない移動機構により装置光学系と被検眼Eとを光軸の方向と交差する方向に相対的に移動させる。
【0098】
例えば、Zアライメント系は、装置光学系の光軸から外れた位置から赤外領域又は近赤外領域のアライメント光を投影し、被検眼Eの前眼部で反射されたアライメント光を受光する。データ処理部200は、装置光学系に対する被検眼Eの距離に応じて変化するアライメント光の受光位置から、装置光学系に対する被検眼Eの距離を特定する。制御部100は、特定された距離が所望の作動距離になるように図示しない移動機構により装置光学系と被検眼Eとを光軸の方向に相対的に移動させる。
【0099】
いくつかの実施形態では、アライメント系の機能は、装置光学系の光軸から外れた位置に配置された2以上の前眼部カメラにより実現される。例えば、特開2013-248376号公報に開示されているように、データ処理部200は、2以上の前眼部カメラで実質的に同時に取得された被検眼Eの前眼部像を解析して、公知の三角法を用いて被検眼Eの3次元位置を特定する。制御部100は、装置光学系の光軸が被検眼Eの軸に略一致し、かつ、被検眼Eに対する装置光学系の距離が所定の作動距離になるように図示しない移動機構により装置光学系と被検眼Eとを3次元的に相対的に移動させる。
【0100】
以上のように、眼科装置1では、スリット22(開口部)と、撮影部位(眼底Ef)と、イメージセンサ51(受光面)とが光学的に略共役な位置に配置される。眼科装置1は、イメージセンサ51における受光開口と照明光による照射位置とを連動して移動させることにより、不要な散乱光の影響を抑えつつ、明瞭な撮影部位の画像を取得することが可能になる。
【0101】
実施形態では、被検眼Eの眼内において照明光の光束領域とその戻り光の光束領域との重複領域が被検眼Eの水晶体後面より眼底Efの側に配置されるように、眼底Efにおけるスリット22に形成されたスリットの像の幅(開口部の像の幅)Fd、虹彩における虹彩絞り21の開口部21A、21Bの像の間隔Id、及び虹彩における穴鏡45に形成された孔部(撮影絞りの開口部)の像のサイズ(径、直径)Sdが設定されている。それにより、水晶体内で照明光の光束領域と戻り光の光束領域との交わりに起因した水晶体後面でのフレアの発生を低減することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、被検眼Eの眼内において上記の重複領域が被検眼Eの角膜前面より被検眼Eの側に配置されるように、上記のスリットの像の幅Fd、上記の2つの開口部の像の間隔Id、及び孔部の像のサイズSdが設定されている。それにより、角膜前面から水晶体の間で照明光の光束領域と戻り光の光束領域との交わりに起因した角膜前面でのフレアの発生を低減することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、水晶体後面及び角膜前面のいずれか1つでのフレアの発生を低減するように、上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズSdが設定される。
【0104】
以下の実施形態では、水晶体後面及び角膜前面のそれぞれでのフレアの発生を抑制するように、上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び孔部のサイズSdが設定される場合について具体的に説明する。
【0105】
まず、照明光の光束領域とその戻り光の光束領域を規定するための座標系を定義する。以下では、照明光の戻り光を撮影光と表記する場合がある。
【0106】
なお、以下では、眼のレンズの屈折を考慮せず、各部位間の距離は経路長(空気換算の距離)であるものとする。すなわち、照明光と撮影光(戻り光)とは略同じ入射角及び略同じ高さで眼内に入射するため、照明光と撮影光とは同様の屈折効果を受けるものとする。屈折効果が同じ場合、照明光の光束領域と撮影光の光束領域(照明光線と撮影光線との交点位置)と角膜、水晶体、眼底等の眼内の部位の相対関係に影響はない。
【0107】
図7に、実施形態に係る眼内を通過する光束領域を規定するための座標系の一例を示す。図7において、横軸は、撮影光学系40(照明光学系20)の光軸方向の眼内の部位の位置を示すx軸を表し、縦軸は、撮影光学系40(照明光学系20)の光軸に直交する方向の眼内の位置を示すy軸を表す。なお、図7の座標系の原点位置は、被検眼Eの瞳孔中心に相当する瞳孔中心位置である。
【0108】
図7に示す座標系において、角膜前面に相当する角膜前面位置と瞳孔中心に相当する瞳孔中心位置(原点位置)とのx方向の距離をLa(La>0)と表し、瞳孔中心位置と水晶体後面に相当する水晶体後面位置とのx方向の距離をLl(Ll>0)と表し、瞳孔中心位置と眼底位置とのx方向の距離をLf(Lf>0)と表す。
【0109】
<水晶体後面でのフレアの発生の抑制>
次に、図7に示すように定義された座標系において、水晶体後面でのフレアの要因となる照明光の光束領域と撮影光の光束領域との重複領域の限界を特定するために、照明光線と撮影光線との交点位置のx座標位置を求める。
【0110】
図8に、水晶体後面でのフレアの要因となる照明光の光束領域と撮影光の光束領域との重複領域の説明図を示す。図8は、アライメントが完了した状態(撮影光学系40の光軸が角膜頂点に一致した状態)における照明光の光線と撮影光の光線とを模式的に表す。図8において、図7と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図8において、撮影画角をωと表している。
【0111】
上記のように、虹彩絞り21の開口部21A、21Bと穴鏡45に形成された孔部とは、被検眼Eの虹彩(すなわち、瞳孔中心)と光学的に略共役な位置に配置される。従って、図8において、瞳孔中心位置には、虹彩絞り21の開口部21A、21Bの間隔Idと、穴鏡45に形成された孔部のサイズ(径)Sdとが規定される。
【0112】
また、上記のように、スリット22は、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置に配置される。従って、図8において、眼底位置には、スリット22のスリット幅Fdが規定される。
【0113】
この場合、照明光は、虹彩絞り21の開口部21A、21Bを通過し、スリット22に形成された開口部を通過して、眼底Efに到達する。
【0114】
この照明光の光束領域は、図8に示す照明光線SL1、SL2により画定される。具体的には、図8において、虹彩絞り21の開口部21Aを通過する照明光の光束領域は、照明光線SL1よりy方向に上側の領域であり、虹彩絞り21の開口部21Bを通過する照明光の光束領域は、照明光線SL2よりy方向に下側の領域である。
【0115】
照明光線SL1は、図8に示すように、瞳孔中心位置における虹彩絞り21の開口部21Aの下縁(虹彩絞り21における光軸位置を含む遮光領域の上縁)と、眼底位置におけるスリット22の開口部の下縁とを結ぶ直線により表される。開口部21Aの下縁の座標位置は、(0,Id/2)である。スリット22の開口部の下縁の座標位置は、(Lf,Lf×tan(ω/2)-Fd/2)である。従って、照明光線SL1は、式(1)のように表される。
【0116】
【数1】
【0117】
照明光線SL2は、図8に示すように、瞳孔中心位置における虹彩絞り21の開口部21Bの上縁(虹彩絞り21における光軸位置を含む遮光領域の下縁)と、眼底位置におけるスリット22の開口部の上縁とを結ぶ直線により表される。開口部21Aの下縁の座標位置は、(0,-Id/2)である。スリット22の開口部の上縁の座標位置は、(Lf,Lf×tan(ω/2)+Fd/2)である。従って、照明光線SL2は、照明光線SL1と同様に導出することができる。
【0118】
一方、眼底Efからの照明光の戻り光(撮影光)は、眼底Efにおける照明光の照射位置から穴鏡45に形成された孔部を通過して、イメージセンサ51に導かれる。
【0119】
この照明光の戻り光の光束領域は、図8に示す撮影光線IL1、IL2により画定される。具体的には、図8において、照明光の戻り光の光束領域は、撮影光線IL1、IL2により囲まれる領域(図8では、撮影光線IL1よりy方向に下側の領域であり、且つ、撮影光線IL2よりy方向に上側の領域)である。
【0120】
撮影光線IL1は、図8に示すように、瞳孔中心位置における穴鏡45の孔部の上縁と、眼底位置におけるスリット22の開口部の上縁とを結ぶ直線により表される。穴鏡45の孔部の上縁の座標位置は、(0,Sd/2)である。スリット22の開口部の上縁の座標位置は、(Lf,Lf×tan(ω/2)+Fd/2)である。従って、撮影光線IL1は、式(2)のように表される。
【0121】
【数2】
【0122】
撮影光線IL2は、図8に示すように、瞳孔中心位置における穴鏡45の孔部の下縁と、眼底位置におけるスリット22の開口部の下縁とを結ぶ直線により表される。穴鏡45の孔部の下縁の座標位置は、(0,-Sd/2)である。スリット22の開口部の下縁の座標位置は、(Lf,Lf×tan(ω/2)-Fd/2)である。従って、撮影光線IL2は、撮影光線IL1と同様に導出することができる。
【0123】
上記のように、照明光の光束領域とその戻り光の光束領域の重複領域が水晶体後面より眼底Efの側に配置されている場合、水晶体後面でのフレアの発生を抑制することができる。図8に示すように、この重複領域で被検眼E(又は対物レンズ46)に最も近い位置は、照明光線SL1と撮影光線IL1との交点又は照明光線SL2と撮影光線IL2との交点である。図8では、照明光線SL1と撮影光線IL1との交点のx座標位置は、照明光線SL2と撮影光線IL2との交点のx座標位置と等しい。
【0124】
以上より、図8に示す座標系において、照明光線SL1と撮影光線IL1との交点のx座標位置が水晶体後面位置より眼底Efの側のとき、水晶体後面でのフレアの発生を完全に抑制することができる。上記の交点のx座標位置Xlensは、式(1)と式(2)とから撮影画角ωに依存しない形で式(3)のように表される。
【0125】
【数3】
【0126】
式(3)より、Xlens>Llのとき、水晶体後面でのフレアの発生を完全に抑制することができる。すなわち、上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び孔部のサイズSdが式(4)を満たすとき、水晶体後面でのフレアの発生を完全に抑制することができる。
【0127】
【数4】
【0128】
なお、式(4)において、眼科装置1の仕様で規定された撮影可能な瞳孔径Φを考慮すると、Id<Φを満たす必要がある。
【0129】
いくつかの実施形態では、式(4)において、眼球の構造を表すパラメータを用いて上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズSdの関係が決定される。眼球の構造を表すパラメータには、模型眼のパラメータなどがある。模型眼には、Gullstrand模型眼、Navarro模型眼(“Off-axis aberrations of a wide-angle schematic eye model”(I. Escudero-Sanz and R. Navarro, Optical Society of America, 1999年8月, Vol.16, No.8, pp.1881-1891))などがある。例えば、Navarro模型眼のパラメータを用いて瞳孔中心位置に対する角膜前面位置、水晶体後面位置、及び眼底位置のそれぞれを規定すると、La=3.6[mm]、Ll=4[mm]、Lf=20[mm]である。
【0130】
Navarro模型眼から導き出されたLl、Lfを用いると、式(4)は式(5)のように表すことができる。
【0131】
【数5】
【0132】
図1に示す光学系において、少なくとも式(4)又は式(5)を満たすように上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズSdが設定されている場合、水晶体後面でのフレアの発生を完全に抑制することが可能な眼科装置を提供することができる。
【0133】
<角膜前面でのフレアの発生の抑制>
次に、図7に示すように定義された座標系において、角膜前面でのフレアの要因となる照明光の光束領域と撮影光の光束領域との重複領域の限界を特定するために、照明光線と撮影光線との交点位置のx座標位置を求める。
【0134】
図9に、角膜前面でのフレアの要因となる照明光の光束領域と撮影光の光束領域との重複領域の説明図を示す。図9において、図8と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0135】
この場合、照明光の光束領域は、図9に示す照明光線SL3、SL4により画定される。具体的には、図9において、虹彩絞り21の開口部21Aを通過する照明光の光束領域は、照明光線SL3よりy方向に上側の領域であり、虹彩絞り21の開口部21Bを通過する照明光の光束領域は、照明光線SL4よりy方向に下側の領域である。
【0136】
照明光線SL3は、図9に示すように、瞳孔中心位置における虹彩絞り21の開口部21Aの下縁(虹彩絞り21における光軸位置を含む遮光領域の上縁)と、眼底位置におけるスリット22の開口部の上縁とを結ぶ直線により表される。開口部21Aの下縁の座標位置は、(0,Id/2)である。スリット22の開口部の上縁の座標位置は、(Lf,Lf×tan(ω/2)+Fd/2)である。従って、照明光線SL3は、式(6)のように表される。
【0137】
【数6】
【0138】
照明光線SL4は、図9に示すように、瞳孔中心位置における虹彩絞り21の開口部21Bの上縁(虹彩絞り21における光軸位置を含む遮光領域の下縁)と、眼底位置におけるスリット22の開口部の下縁とを結ぶ直線により表される。開口部21Aの下縁の座標位置は、(0,-Id/2)である。スリット22の開口部の下縁の座標位置は、(Lf,Lf×tan(ω/2)-Fd/2)である。従って、照明光線SL4は、照明光線SL3と同様に導出することができる。
【0139】
一方、照明光の戻り光の光束領域は、図9に示す撮影光線IL3、IL4により画定される。具体的には、図9において、照明光の戻り光の光束領域は、撮影光線IL3、IL4により囲まれる領域である。
【0140】
撮影光線IL3は、図9に示すように、瞳孔中心位置における穴鏡45の孔部の上縁と、眼底位置におけるスリット22の開口部の下縁とを結ぶ直線により表される。穴鏡45の孔部の上縁の座標位置は、(0,Sd/2)である。スリット22の開口部の上縁の座標位置は、(Lf,Lf×tan(ω/2)-Fd/2)である。従って、撮影光線IL3は、式(7)のように表される。
【0141】
【数7】
【0142】
撮影光線IL4は、図9に示すように、瞳孔中心位置における穴鏡45の孔部の下縁と、眼底位置におけるスリット22の開口部の上縁とを結ぶ直線により表される。穴鏡45の孔部の下縁の座標位置は、(0,-Sd/2)である。スリット22の開口部の上縁の座標位置は、(Lf,Lf×tan(ω/2)+Fd/2)である。従って、撮影光線IL4は、撮影光線IL3と同様に導出することができる。
【0143】
上記のように、照明光の光束領域とその戻り光の光束領域の重複領域が角膜前面より被検眼E(装置光学系)の側に配置されている場合、角膜前面でのフレアの発生を抑制することができる。図9に示すように、この重複領域で眼底Efに最も近い位置は、照明光線SL3と撮影光線IL3との交点又は照明光線SL4と撮影光線IL4との交点である。図9では、照明光線SL3と撮影光線IL3との交点のx座標位置は、照明光線SL4と撮影光線IL4との交点のx座標位置と等しい。
【0144】
以上より、図9に示す座標系において、照明光線SL3と撮影光線IL3との交点のx座標位置が角膜前面位置より被検眼Eの側のとき、角膜前面でのフレアの発生を完全に抑制することができる。上記の交点のx座標位置Xcorは、式(6)と式(7)とから撮影画角ωに依存しない形で式(8)のように表される。
【0145】
【数8】
【0146】
式(8)より、Xcor<-Laのとき、角膜前面でのフレアの発生を完全に抑制することができる。すなわち、上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び孔部のサイズSdが式(9)を満たすとき、角膜前面でのフレアの発生を完全に抑制することができる。
【0147】
【数9】
【0148】
なお、式(9)において、眼科装置1の仕様で規定された撮影可能な瞳孔径Φを考慮すると、Id<Φを満たす必要がある。
【0149】
ところで、式(9)の導出の過程において、(Id-Sd-2×Fd)<0であることを利用している。その理由は、次の通りである。
【0150】
例えば、(Id-Sd-2×Fd)>0であると仮定すると、水晶体後面側では、式(4)と同様に、Xlens>Llを満たすために、式(10)を満たす必要がある。
【0151】
【数10】
【0152】
また、角膜前面側では、式(9)と同様に、Xcor<-Laを満たすために、式(11)を満たす必要がある。
【0153】
【数11】
【0154】
式(10)の右辺及び式(11)の左辺を比較し、2×Ll<Lfのとき、式(12)が導出される。
【0155】
【数12】
【0156】
ここで、式(12)から1<La/(Lf+La)の不等式が得られるが、この不等式は存在し得ない。
【0157】
また、式(10)の右辺及び式(11)の左辺を比較し、2×Ll>Lfの不等式が得られるが、眼の構造上、この不等式も存在し得ない。
【0158】
以上より、式(9)の導出の過程において、(Id-Sd-2×Fd)<0である。
【0159】
いくつかの実施形態では、式(9)において、眼球の構造を表すパラメータを用いて上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び孔部のサイズSdの関係が決定される。眼球の構造を表すパラメータには、模型眼のパラメータなどがある。模型眼には、Gullstrand模型眼、Navarro模型眼などがある。
【0160】
上記のようにNavarro模型眼から導き出されたLl、Lfを用いると、式(9)は式(13)のように表すことができる。
【0161】
【数13】
【0162】
図1に示す光学系において、少なくとも式(9)又は式(13)を満たすように上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズSdが設定されている場合、角膜前面でのフレアの発生を完全に抑制することが可能な眼科装置を提供することができる。
【0163】
いくつかの実施形態では、水晶体後面でのフレアと角膜前面でのフレアの双方の発生を完全に抑制するように、上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズSdが設定されている。
【0164】
この場合、式(4)と式(9)の双方を満たすように、上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズSdが設定される。
【0165】
具体的には、(La-Ll)×Lf<(2×Ll-Lf)×Laのとき、式(14)を満たすように、上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズSdが設定される。
【0166】
【数14】
【0167】
なお、式(14)において、眼科装置1の仕様で規定された撮影可能な瞳孔径Φを考慮すると、Id<Φを満たす必要がある。
【0168】
例えば、Navarro模型眼のパラメータを用いる場合、式(14)は式(15)のように表すことができる。
【0169】
【数15】
【0170】
なお、式(15)において、眼科装置1の仕様で規定された撮影可能な瞳孔径Φを考慮すると、Id<Φを満たす必要がある。
【0171】
一方、(La-Ll)×Lf>(2×Ll-Lf)×Laのとき、式(16)を満たすように、上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズSdが設定される。
【0172】
【数16】
【0173】
例えば、Navarro模型眼のパラメータを用いる場合、式(16)は式(17)のように表すことができる。
【0174】
【数17】
【0175】
図1に示す光学系において、少なくとも式(16)又は式(17)を満たすように上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズSdが設定されている場合、水晶体後面でのフレア及び角膜前面でのフレアの発生を完全に抑制することが可能な眼科装置を提供することができる。
【0176】
穴鏡45は、実施形態に係る「撮影絞り」の一例である。
【0177】
<変形例>
(第1変形例~第4変形例)
上記の実施形態では、例えば、眼科装置1の検査工程又は出荷工程において、上記のスリット幅Fd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズSdが設定される。しかしながら、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。実施形態の第1変形例~第4変形例では、被検眼Eの眼球構造に応じて上記のスリット幅Sd、上記の間隔Id、及び上記の孔部のサイズFdが設定される。
【0178】
以下、実施形態の第1変形例~第4変形例について、実施形態との相違点を中心に説明する。
【0179】
[光学系の構成]
実施形態の第1変形例~第4変形例に係る眼科装置の光学系の構成が実施形態に係る眼科装置1の光学系の構成と異なる点は、虹彩絞り21と、スリット22と、穴鏡45である。
【0180】
実施形態の第1変形例及び第2変形例に係る虹彩絞り21は、開口部21A、21Bの開口形状のサイズを変更可能である。開口部21A、21Bの開口形状のサイズを変更することにより、開口部21A、21Bの間隔が変更される。
【0181】
図10A及び図10Bに、実施形態の第1変形例及び第2変形例に係る虹彩絞り21の構成例を示す。図10Aは、実施形態の第1変形例に係る虹彩絞り21の構成例を表す。図10Bは、実施形態の第2変形例に係る虹彩絞り21の構成例を表す。図10A、及び図10Bは、光軸Oの方向からみたときの図1の虹彩絞り21の構成例を模式的に表す。
【0182】
例えば、図10Aに示すように、第1変形例に係る虹彩絞り21は、光軸Oに略平行な回動軸O´に略直交するように設けられターレットを含む。ターレットは、回動軸O´を中心に回動可能に設けられる。ターレットには、回動軸O´を中心とする円周上に複数の虹彩絞りが設けられる。ターレットを回動軸O´を中心に回動することにより、複数の虹彩絞り(図10Aでは、虹彩絞り21~21)を選択的に光軸O上に配置することが可能である。ターレットは、自動又は手動で回動可能である。例えば、制御部100からの制御を受けた駆動機構(21D)は、ターレットを回動軸O´を中心に回動することが可能である。図10Aでは、開口部21A、21Bが形成された虹彩絞り21、開口部21A、21Bが形成された虹彩絞り21、開口部21A、21Bが形成された虹彩絞り21の順序で開口形状のサイズが大きくなる。
【0183】
また、例えば図10Bに示すように、第2変形例に係る虹彩絞り21は、光軸Oに略直交するように設けられ開口部21A、21Bが形成された光学部材21Cと、光軸Oに略直交するように設けられ半径の長さを変更可能な円盤状の遮蔽板21Cとを含む。遮蔽板21Cの円周の一部は、開口部21A、21Bの内径を構成する。図示しない機構は、遮蔽板21Cの半径の長さを変更可能である。遮蔽板21Cは、自動又は手動で半径の長さを変更可能である。例えば、制御部100からの制御を受けた機構は、遮蔽板21Cの半径の長さを変更することが可能である。このように開口部21A、21Bの内径のサイズを変更することにより、虹彩絞り21の開口部21A、21Bの開口形状のサイズを変更することが可能である。
【0184】
なお、図10Bでは、開口部21A、21Bの内径のサイズを変更するように構成される場合について説明したが、開口部21A、21Bの外径のサイズを変更するように構成されていてもよい。この場合、開口部21A、21Bの外径のサイズを変更することにより、虹彩絞り21の開口部21A、21Bの開口形状のサイズを変更することが可能である。
【0185】
このように、開口部21A、21Bの少なくとも一方の開口形状のサイズを小さくすることにより、虹彩絞り21を通過する照明光の光量を低下させることができる。開口部21A、21Bの少なくとも一方の開口形状のサイズを大きくすることにより、虹彩絞り21を通過する照明光の光量を増大させることができる。
【0186】
また、実施形態の第3変形例及び第4変形例に係るスリット22は、開口部の開口形状のサイズを変更可能である。
【0187】
図11A及び図11Bに、実施形態の第3変形例及び第4変形例に係るスリット22の構成例を示す。図11Aは、実施形態の第3変形例に係るスリット22の構成例を表す。図11Bは、実施形態の第4変形例に係るスリット22の構成例を表す。図11A、及び図11Bは、光軸Oの方向からみたときの図1のスリット22の構成例を模式的に表す。
【0188】
例えば、図11Aに示すように、第3変形例に係るスリット22は、光軸Oに略平行な回動軸O´´に略直交するように設けられターレットを含む。ターレットは、回動軸O´´を中心に回動可能に設けられる。ターレットには、回動軸O´´を中心とする円周上に複数のスリットが設けられる。ターレットを回動軸O´´を中心に回動することにより、複数のスリット(図11Aでは、スリット22~22)を選択的に光軸O上に配置することが可能である。ターレットは、自動又は手動で回動可能である。例えば、制御部100からの制御を受けた駆動機構(22D)は、ターレットを回動軸O´´を中心に回動することが可能である。図11Aでは、スリット22、スリット22、スリット22の順序で開口形状のサイズが大きくなる。
【0189】
また、例えば図11Bに示すように、第4変形例に係るスリット22は、光軸Oに略直交する方向にスライド可能に設けられた遮蔽板22A、22Bを含む。遮蔽板22A、22Bは、光軸Oを通るスリット中心線に対してスリット幅が線対称に変更されるように互いに反対方向にスライドされる。遮蔽板22A、22Bは、自動又は手動によりスライドされる。例えば、駆動機構(22D)は、遮蔽板22A、22Bをスライドする。例えば、後述の制御部100からの制御を受けた駆動機構(22D)は、遮蔽板22A、22Bをスライドする。
【0190】
このように、スリット22の幅(開口形状のサイズ)を小さくすることにより、スリット22を通過する照明光の光量を低下させることができる。スリット22の幅を大きくすることにより、スリット22を通過する照明光の光量を増大させることができる。
【0191】
更に、実施形態又は上記の第1変形例~第4変形例に係る穴鏡45は、公知の機構により、孔部(開口部)の開口形状のサイズを変更可能である。いくつかの実施形態では、制御部100からの制御を受けた機構は、穴鏡45の孔部の開口形状のサイズを変更する。いくつかの実施形態では、穴鏡45は、中心領域に孔部が形成された反射部材と、反射部材の孔部の内部又はその近傍に配置された絞り部材とを含み、制御部100からの制御を受けた機構が絞り部材を駆動することにより孔部の開口形状のサイズを変更する。
【0192】
このように、穴鏡45の孔部の開口形状のサイズを小さくすることにより、孔部を通過する照明光の戻り光の光量を低下させることができる。穴鏡45の孔部の開口形状のサイズを大きくすることにより、孔部を通過する照明光の戻り光の光量を増大させることができる。
【0193】
[制御系の構成]
図12に、実施形態の第1変形例~第4変形例に係る眼科装置の制御系(処理系)の構成例のブロック図を示す。図12において、図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0194】
実施形態の第1変形例~第4変形例に係る眼科装置の制御系の構成が実施形態に係る眼科装置1の制御系の構成と異なる点は、虹彩絞り21と、スリット22と、穴鏡45である。
【0195】
駆動機構21Dは、例えば、図10Aに示すターレットを回動したり、図10Bに示す遮蔽板21Cの半径を変更したりする。駆動機構21Dは、制御部100からの制御を受け、図10Aに示すターレットを回動したり、図10Bに示す遮蔽板21Cの半径を変更したりすることが可能である。
【0196】
駆動機構22Dは、実施形態における駆動機構22Dの機能に加えて、例えば、図11Aに示すターレットを回動したり、図11Bに示す遮蔽板22A、22Bをスライドしたりする。駆動機構22Dは、制御部100からの制御を受け、図11Aに示すターレットを回動したり、図11Bに示す遮蔽板22A、22Bをスライドしたりすることが可能である。
【0197】
駆動機構45Dは、穴鏡45を構成する反射部材の孔部の内部又はその近傍に配置された絞り部材を駆動することにより、孔部の開口形状のサイズを変更する。駆動機構45Dは、制御部100からの制御を受け、絞り部材を駆動することが可能である。
【0198】
主制御部101は、被検眼Eの眼球構造に応じて、駆動機構21D、22D、45Dの少なくとも1つを制御する。
【0199】
被検眼Eの眼球構造には、被検眼Eの角膜前面位置と瞳孔中心位置との間の光学系の光軸方向の距離La、瞳孔中心位置と水晶体後面位置との間の光学系の光軸方向の距離Ll、瞳孔中心位置と眼底位置と間の光学系の光軸方向の距離Lfがある。距離La、Ll、Lfの少なくとも1つは、公知の光干渉断層計の測定値から取得可能である。主制御部101は、眼科装置1の外部に設けられた光干渉断層装置から、距離La、Ll、Lfの少なくとも1つを取得することができる。いくつかの実施形態では、主制御部101は、距離La、Ll、Lfの一部を光干渉断層装置から取得し、残りを模型眼のパラメータから取得し、取得された眼球の構造を表すパラメータに基づいて駆動機構21D、22D、45Dの少なくとも1つを制御する。
【0200】
主制御部101は、上記のような被検眼Eの眼球構造に応じて、式(4)、式(5)、式(9)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、又は式(17)を満たすように、駆動機構21D、22D、45Dの少なくとも1つを制御する。
【0201】
例えば、記憶部102には、被検眼の眼球構造を示す1以上のパラメータのそれぞれに対応して、虹彩絞り21の開口部21A、21Bの間隔、スリット22のスリット幅、及び穴鏡45の孔部の開口形状のサイズの少なくとも1つを設定するための制御内容があらかじめ関連付けられた制御情報が記憶されている。主制御部101は、記憶部102に記憶された制御情報を参照することにより、被検眼Eの眼球構造に応じて、虹彩絞り21、スリット22、及び穴鏡45の少なくとも1つを制御することが可能である。
【0202】
実施形態の変形例によれば、被検眼Eの眼球構造に応じて、虹彩絞り21の開口部21A、21Bの間隔、スリット22のスリット幅、穴鏡45の孔部の開口形状のサイズを変更するようにしたので、被検眼の眼球構造にかかわらずフレアの発生を完全に抑制することができるようになる。
【0203】
(第5変形例)
実施形態又はその変形例に係る眼科装置の構成は、上記の実施形態又はその変形例で説明した構成に限定されない。実施形態の第5変形例では、バーダル(Badal)の原理に従って光学系が構成される。これにより、被検眼Eの屈折度数にかかわらず、眼底Efにおけるスリット像の大きさを一定にすることができる。
【0204】
以下、実施形態の第5変形例に係る眼科装置の構成について、実施形態との相違点を中心に説明する。
【0205】
図13に、実施形態の第5変形例に係る眼科装置の構成例を示す。図13において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0206】
実施形態の第5変形例に係る眼科装置1aの構成が図1に示す実施形態に係る眼科装置1の構成と異なる主な点は、照明光学系20に代えて照明光学系20aが設けられた点である。
【0207】
照明光学系20aの構成が照明光学系20の構成と異なる点は、リレーレンズ23に代えてリレーレンズ系RL1が設けられた点である。すなわち、リレーレンズ系RL1は、リレーレンズ23と同様に、光スキャナ30とスリット22との間に配置される。リレーレンズ系RL1、リレーレンズ41、44、及び対物レンズ46は、バーダル光学系を構成する。
【0208】
図14に、実施形態の第5変形例に係るリレーレンズ系RL1の構成例を示す。図14では、説明の便宜上、リレーレンズ系RL1と光スキャナ30とが図示されている。また、図14では、リレーレンズ系RL1が3つのレンズを含むものとする。
【0209】
リレーレンズ系RL1は、リレーレンズ23と同様に、1以上のレンズを含む。リレーレンズ系RL1の後側焦点位置F1が、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置される。
【0210】
すなわち、上記のように被検眼Eの虹彩と略共役な位置に配置された光スキャナ30が、リレーレンズ系RL1の後側焦点位置F1又はその近傍に配置される。従って、被検眼Eの屈折度数に応じてスリット22が光軸方向に移動された場合でも、被検眼Eの屈折度数にかかわらず、眼底Efに投影されるスリット像(スリット22に形成された開口部を通過した光により形成される像)の大きさは変化しない。これは、スリット22が光軸方向に移動しても、眼底Efへのスリット像の投影倍率が変化しないことを意味する。
【0211】
第5変形例に係る眼科装置1aの動作は、実施形態に係る眼科装置1の動作と同様であるため、詳細の説明を省略する。
【0212】
リレーレンズ系RL1は、実施形態に係る「第1リレーレンズ系」の一例である。
【0213】
第5変形例によれば、リレーレンズ系RL1の後側焦点位置F1(又はその近傍)に光スキャナ30を配置することにより、リレーレンズ系RL1、リレーレンズ41、42、及び対物レンズ46でバーダル光学系が構成される。
【0214】
それにより、被検眼Eの屈折度数にかかわらず、被検眼Eの視軸に対するスリット像の投影画角(投影倍率)(スリット22の長手方向及び短手方向)を一定にすることができる。その結果、被検眼Eの屈折度数にかかわらず、スリット像の大きさが変化しないため、光スキャナ30の偏向動作速度を一定にすることが可能になり、光スキャナ30の制御を簡素化することができる。
【0215】
また、被検眼Eの屈折度数にかかわらず、被検眼Eの視軸に対するスリット像の投影画角(投影倍率)が一定であるため、被検眼Eの屈折度数にかかわらず、眼底Efにおけるスリット像の照度を一定にすることができる。
【0216】
更に、眼科装置においてあらかじめ決められた撮影画角で画像を取得する場合に、上記のように投影倍率が一定であるため、所定の大きさのスリット像を取得するために設けられたスリット22の長手方向の長さにマージンを設ける必要がなくなる。
【0217】
(第6変形例)
実施形態に係る眼科装置の構成は、上記の眼科装置の構成に限定されない。実施形態の第6変形例に係る眼科装置では、光学設計の自由度を向上させるために、スリット22と虹彩絞り21との間にリレーレンズ系が配置される。
【0218】
以下、実施形態の第6変形例に係る眼科装置の構成について、実施形態の第5変形例との相違点を中心に説明する。
【0219】
図15に、実施形態の第6変形例に係る眼科装置の構成例を示す。図15において、図13と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0220】
実施形態の第6変形例に係る眼科装置1bの構成が実施形態の第4変形例に係る眼科装置1aの構成と異なる主な点は、照明光学系20aに代えて照明光学系20bが設けられた点である。
【0221】
照明光学系20bの構成が照明光学系20aの構成と異なる点は、リレーレンズ系RL2が設けられた点である。すなわち、リレーレンズ系RL2は、スリット22と虹彩絞り21との間に配置される。
【0222】
図16に、実施形態の第6変形例に係るリレーレンズ系RL2の構成例を示す。図16では、説明の便宜上、虹彩絞り21、リレーレンズ系RL2、スリット22、リレーレンズ系RL1、及び光スキャナ30が図示されている。また、図16では、リレーレンズ系RL2が2つのレンズを含むものとする。
【0223】
リレーレンズ系RL2は、リレーレンズ系RL1と同様に、1以上のレンズを含む。リレーレンズ系RL2の前側焦点位置F2又はその近傍に、虹彩絞り21が配置される。
【0224】
上記のように、リレーレンズ系RL2の前側焦点位置F2又はその近傍に、虹彩絞り21が配置される。すなわち、リレーレンズ系RL1の後側焦点位置F1は虹彩絞り21と光学的に略共役な位置であり、リレーレンズ系RL2の前側焦点位置F2には虹彩絞り21が配置される。従って、虹彩絞り21から(後側焦点位置F1に配置された)光スキャナ30までの投影倍率は、リレーレンズ系RL1の焦点距離f1とリレーレンズ系RL2の焦点距離f2で決定される。このとき、投影倍率は、(f1/f2)である。
【0225】
眼科装置は、被検眼Eの虹彩上に所定の大きさで虹彩絞り21の像を形成する必要がある。被検眼Eの虹彩から対物レンズ46を経由して光スキャナ30までの投影倍率が既知の投影倍率であるとき、光スキャナ30上に所定の大きさの虹彩絞り21の像を投影すればよい。このとき、虹彩絞り21から光スキャナ30までの投影倍率は、リレーレンズ系RL1の焦点距離f1とリレーレンズ系RL2の焦点距離f2で決定される。従って、焦点距離f1、f2の少なくとも一方を変更することで、被検眼Eの虹彩上に所定の大きさで虹彩絞り60の像を容易に形成することが可能になる。いくつかの実施形態では、焦点距離f1を固定したまま、焦点距離f2だけが変更される。
【0226】
焦点距離f1は、リレーレンズ系RL1の合成焦点距離である。いくつかの実施形態では、リレーレンズ系RL1は、屈折度が異なる複数のレンズを含み、リレーレンズ系RL1を構成するレンズの少なくとも1つを変更することにより焦点距離f1を変更する。いくつかの実施形態では、リレーレンズ系RL1を構成するレンズの少なくとも1つは、屈折度が変更可能なレンズである。焦点距離が変更可能なレンズには、液晶レンズ、液体レンズ、アルバレツレンズなどがある。焦点距離f1を変更する場合でも、リレーレンズ系RL1の後側焦点位置が被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置(瞳共役位置)に配置される。
【0227】
焦点距離f2は、リレーレンズ系RL2の合成焦点距離である。いくつかの実施形態では、リレーレンズ系RL2は、屈折度が異なる複数のレンズを含み、リレーレンズ系RL2を構成するレンズの少なくとも1つを変更することにより焦点距離f2を変更する。いくつかの実施形態では、リレーレンズ系RL2を構成するレンズの少なくとも1つは、屈折度が変更可能なレンズである。焦点距離f2を変更する場合でも、リレーレンズ系RL2の前側焦点位置が被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置(瞳共役位置)に配置される。
【0228】
また、眼底Efの撮影のために、高輝度な光を発する光源であることが望ましい。しかしながら、汎用的に入手可能な光源(量産されている光源)は、発光面のサイズ(発光面積、出力光束断面サイズ)が限られており、光源の発光面のサイズに対応した投影倍率で虹彩絞り21の像を光スキャナ30上に投影する必要がある。
【0229】
第6変形例によれば、焦点距離f1、f2の少なくとも一方を変更することで、虹彩絞り21から光スキャナ30までの投影倍率を変更することができるため、任意の大きさの虹彩絞り21の像を光スキャナ30上に所望の大きさで投影することができる。それにより、光源の発光面のサイズが異なる場合でも、焦点距離f1、f2の少なくとも一方を変更するだけで光スキャナ30上に所望の大きさの虹彩絞り21の像を投影することができ、光学系の設計自由度が向上する。特に、焦点距離f1を固定し、焦点距離f2だけを変更することで、被検眼Eの屈折度数の変化に対するスリット22の移動量(屈折度数の変化に対するスリット22の移動の感度)を固定することができ、光学系の設計自由度をより一層向上させることができる。
【0230】
第6変形例に係る眼科装置1bの動作は、第5変形例に係る眼科装置1aの動作と同様であるため、詳細の説明を省略する。
【0231】
リレーレンズ系RL2は、実施形態に係る「第2リレーレンズ系」の一例である。
【0232】
第6変形例によれば、リレーレンズ系RL1を構成する1以上のレンズの有効径を小さくすることができる。
【0233】
その理由は、光スキャナ30と虹彩絞り21との間には、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置に配置されるスリット22が配置されている。スリット22は、被検眼Eの屈折度数に応じて光軸方向に移動可能である。ここで、虹彩絞り21から光スキャナ30までの投影倍率は、光スキャナ30とリレーレンズ系RL1との第1距離と、虹彩絞り60とリレーレンズ系RL1との第2距離で決定されるため、第1距離を短くすると、第2距離も短くする必要がある。しかしながら、スリット22の光軸方向の移動スペースを確保しつつ、虹彩との共役関係及び眼底Efとの共役関係を維持する必要があるため、第1距離が長くなり、リレーレンズ系RL1の有効径が大きくなる。第6変形例によれば、リレーレンズ系RL2を設けることにより、第1距離を短くしても、リレーレンズ系RL2を用いて投影倍率を調整することが可能になる。それにより、スリット22の光軸方向の移動スペースを確保し、且つ、虹彩との共役関係及び眼底Efとの共役関係を維持しつつ、第1距離を短くすることが可能になり、リレーレンズ系RL1を構成する1以上のレンズの有効径を小さくすることができる。
【0234】
また、リレーレンズ系RL1を構成する1以上のレンズの有効径を小さくすることができるので、光スキャナ30から光源10までの光学系の長さを小さくすることができる。
【0235】
(第7変形例)
なお、第6変形例において、光源10の種別に応じて、焦点距離f1及び焦点距離f2の少なくとも一方を変更可能であってよい。実施形態に係る第7変形例における眼科装置は、光源10の発光面のサイズ(発光面積、出力光束断面サイズ)に応じて、焦点距離f1及び焦点距離f2の少なくとも一方を変更可能である。
【0236】
例えば、リレーレンズ系RL1は、光源10の発光面のサイズに応じて、第6変形例と同様に焦点距離f1を変更する。例えば、リレーレンズ系RL2は、光源10の発光面のサイズに応じて、第6変形例と同様に焦点距離f2を変更する。
【0237】
いくつかの実施形態では、主制御部101は、操作部110により指定された光源10の発光面のサイズに応じてリレーレンズ系RL1(又は屈折度が変更可能なレンズ)を制御することにより焦点距離f1を変更する。いくつかの実施形態では、主制御部101は、操作部110により指定された光源10の発光面のサイズに応じてリレーレンズ系RL2(又は屈折度が変更可能なレンズ)を制御することにより焦点距離f2を変更する。
【0238】
[作用・効果]
実施形態に係る眼科装置の作用および効果について説明する。
【0239】
いくつかの実施形態に係る眼科装置(1)は、照明光学系(20)と、撮影光学系(40)とを含む。照明光学系は、スリット状の開口部が形成されたスリット(22)と、光源(10)とスリットとの間の被検眼(E)の虹彩と光学的に略共役な位置に配置され光軸位置から離れた位置に2つの開口部(21A、21B)が形成された虹彩絞り(21)とを有し、光源からの光を用いてスリット状の照明光を生成し、照明光を被検眼の眼底(Ef)に導く。撮影光学系は、開口部(孔部)が形成された撮影絞り(穴鏡45)を有し、瞳分割で眼底から導かれて撮影絞りの開口部を通過した照明光の戻り光をイメージセンサ(51)に導く。被検眼の眼内において照明光の光束領域と戻り光の光束領域との重複領域が被検眼の水晶体後面より眼底の側に配置されるように、スリット状の開口部の幅(Fd)、2つの開口部の間隔(Id)、及び撮影絞りの開口部のサイズ(Sd)が設定されている。
【0240】
このような構成によれば、照明光の光束領域とその戻り光の光束領域との重複領域が被検眼の水晶体後面より眼底の側に配置されるように、スリットに形成されたスリット状の開口部の幅、虹彩絞りに形成された2つの開口部の間隔、及び撮影絞りの開口部のサイズを設定するようにしたので、水晶体後面でのフレアの発生を完全に抑制することが可能になる。それにより、簡素な構成で、被検眼の高画質の画像を取得することができるようになる。
【0241】
いくつかの実施形態では、スリット状の開口部は、眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、撮影絞りの開口部は、虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、眼底におけるスリットの開口部の像の幅をFdと表し、虹彩における虹彩絞りの2つの開口部の像の間隔をIdと表し、虹彩における撮影絞りの開口部の像のサイズをSdと表し、撮影光学系の光軸方向における被検眼の瞳孔中心と水晶体後面との距離をLlと表し、光軸方向における瞳孔中心と眼底との距離をLfと表すと、(Id-Sd)>(2×Fd×Ll/(Lf-Ll))を満たす。
【0242】
このような構成によれば、簡素な数式を満たすようにスリットに形成されたスリット状の開口部の幅、虹彩絞りに形成された2つの開口部の間隔、及び撮影絞りの開口部のサイズを設定することができるので、簡便に水晶体後面でのフレアの発生を完全に抑制することが可能になる。
【0243】
いくつかの実施形態では、スリット状の開口部は、眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、撮影絞りの開口部は、虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、眼底におけるスリットの開口部の像の幅をFdと表し、虹彩における虹彩絞りの2つの開口部の像の間隔をIdと表し、虹彩における撮影絞りの開口部の像のサイズをSdと表すと、(Id-Sd)>(Fd/2)を満たす。
【0244】
このような構成によれば、Navarro模型眼のパラメータを用いて、標準的な眼の構造の被検眼の撮影に際して、簡便に、水晶体後面でのフレアの発生を完全に抑制することが可能になる。
【0245】
いくつかの実施形態では、更に、眼内において重複領域が被検眼の角膜前面より被検眼の側に配置されるように、上記の幅、上記の間隔、及び上記のサイズが設定されている。
【0246】
このような構成によれば、照明光の光束領域とその戻り光の光束領域との重複領域が被検眼の角膜前面より被検眼の側に配置されるように、スリットに形成されたスリット状の開口部の幅、虹彩絞りに形成された2つの開口部の間隔、及び撮影絞りの開口部のサイズを設定するようにしたので、水晶体後面でのフレアの発生及び角膜前面でのフレアの発生の双方を完全に抑制することが可能になる。それにより、簡素な構成で、被検眼のより一層高画質の画像を取得することができるようになる。
【0247】
いくつかの実施形態では、スリット状の開口部は、眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、撮影絞りの開口部は、虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、眼底におけるスリットの開口部の像の幅をFdと表し、虹彩における虹彩絞りの2つの開口部の像の間隔をIdと表し、虹彩における撮影絞りの開口部の像のサイズをSdと表し、撮影光学系の光軸方向における被検眼の瞳孔中心と水晶体後面との距離をLlと表し、光軸方向における瞳孔中心と眼底との距離をLfと表し、光軸方向における被検眼の角膜前面と瞳孔中心との距離をLaと表し、瞳孔中心を原点位置と表すと、(La-Ll)×Lf<(2×Ll-Lf)×Laのとき、(2×Fd×Ll/(Lf-Ll))<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たし、(La-Ll)×Lf>(2×Ll-Lf)×Laのとき、(2×Fd×La/(Lf+La))<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす。
【0248】
このような構成によれば、簡素な数式を満たすようにスリットに形成されたスリット状の開口部の幅、虹彩絞りに形成された2つの開口部の間隔、及び撮影絞りの開口部のサイズを設定することができるので、簡便に、水晶体後面でのフレアの発生及び角膜前面でのフレアの発生の双方を完全に抑制することが可能になる。
【0249】
いくつかの実施形態では、スリット状の開口部は、眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、撮影絞りの開口部は、虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、眼底におけるスリットの開口部の像の幅をFdと表し、虹彩における虹彩絞りの2つの開口部の像の間隔をIdと表し、虹彩における撮影絞りの開口部の像のサイズをSdと表し、被検眼の瞳孔中心を原点位置と表すと、(Fd/2)<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす。
【0250】
このような構成によれば、Navarro模型眼のパラメータを用いて、標準的な眼の構造の被検眼の撮影に際して、簡便に、水晶体後面でのフレアの発生及び角膜前面でのフレアの発生の双方を完全に抑制することが可能になる。
【0251】
いくつかの実施形態に係る眼科装置(1)は、照明光学系(20)と、撮影光学系(40)とを含む。照明光学系は、スリット状の開口部が形成されたスリット(22)と、光源(10)とスリットとの間の被検眼(E)の虹彩と光学的に略共役な位置に配置され光軸位置から離れた位置に2つの開口部(21A、21B)が形成された虹彩絞り(21)とを有し、光源からの光を用いてスリット状の照明光を生成し、照明光を被検眼の眼底(Ef)に導く。撮影光学系は、開口部(孔部)が形成された撮影絞り(穴鏡45)を有し、瞳分割で眼底から導かれて撮影絞りの開口部を通過した照明光の戻り光をイメージセンサ(51)に導く。被検眼の眼内において照明光の光束領域と戻り光の光束領域との重複領域が被検眼の角膜前面より被検眼の側に配置されるように、スリット状の開口部の幅(Fd)、2つの開口部の間隔(Id)、及び撮影絞りの開口部のサイズ(Sd)が設定されている。
【0252】
このような構成によれば、照明光の光束領域とその戻り光の光束領域との重複領域が被検眼の角膜前面より被検眼の側に配置されるように、スリットに形成されたスリット状の開口部の幅、虹彩絞りに形成された2つの開口部の間隔、及び撮影絞りの開口部のサイズを設定するようにしたので、角膜前面でのフレアの発生を完全に抑制することが可能になる。それにより、簡素な構成で、被検眼の高画質の画像を取得することができるようになる。
【0253】
いくつかの実施形態では、スリット状の開口部は、眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、撮影絞りの開口部は、虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、眼底におけるスリットの開口部の像の幅をFdと表し、虹彩における虹彩絞りの2つの開口部の像の間隔をIdと表し、虹彩における撮影絞りの開口部の像のサイズをSdと表し、撮影光学系の光軸方向における被検眼の瞳孔中心と眼底との距離をLfと表し、光軸方向における角膜前面と瞳孔中心との距離をLaと表し、瞳孔中心を原点位置と表すと、(2×Fd×La/(Lf+La))<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす。
【0254】
このような構成によれば、簡素な数式を満たすようにスリットに形成されたスリット状の開口部の幅、虹彩絞りに形成された2つの開口部の間隔、及び撮影絞りの開口部のサイズを設定することができるので、簡便に角膜前面でのフレアの発生を完全に抑制することが可能になる。
【0255】
いくつかの実施形態では、スリット状の開口部は、眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、撮影絞りの開口部は、虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能であり、眼底におけるスリットの開口部の像の幅をFdと表し、虹彩における虹彩絞りの2つの開口部の像の間隔をIdと表し、虹彩における撮影絞りの開口部の像のサイズをSdと表し、被検眼の瞳孔中心を原点位置と表すと、(18×Fd/59)<(Id-Sd)<(2×Fd)を満たす。
【0256】
このような構成によれば、Navarro模型眼のパラメータを用いて、標準的な眼の構造の被検眼の撮影に際して、簡便に、角膜前面でのフレアの発生を完全に抑制することが可能になる。
【0257】
いくつかの実施形態では、スリット状の開口部のサイズは変更可能である。
【0258】
このような構成によれば、被検眼の眼球構造に応じて、スリットに形成されたスリット状の開口部のサイズを変更することで、水晶体後面又は角膜前面でのフレアの発生を抑止し、被検眼の高画質の画像を取得することが可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0259】
いくつかの実施形態では、上記の2つの開口部の間隔は変更可能である。
【0260】
このような構成によれば、被検眼の眼球構造に応じて、虹彩絞りに形成された2つの開口部の間隔を変更することで、水晶体後面又は角膜前面でのフレアの発生を抑止し、被検眼の高画質の画像を取得することが可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0261】
いくつかの実施形態では、撮影絞りに形成された開口部のサイズは変更可能である。
【0262】
このような構成によれば、被検眼の眼球構造に応じて、撮影絞りに形成された開口部のサイズを変更することで、水晶体後面又は角膜前面でのフレアの発生を抑止し、被検眼の高画質の画像を取得することが可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0263】
いくつかの実施形態では、撮影絞りは、照明光学系の光路と撮影絞りの開口部を通過する光軸の方向に配置された撮影光学系の光路とを結合すると共に、撮影絞りの開口部の周辺領域において反射された照明光を眼底に導くように構成された穴鏡(45)である。
【0264】
このような構成によれば、照明光学系の光路と撮影光学系の光路とを結合する穴鏡を用いて撮影絞りの機能を実現するようにしたので、瞳分割で照明光を眼底に照射しつつ、光学系の構成を簡素化し、被検眼の高画質の画像を取得することが可能になる。
【0265】
いくつかの実施形態では、イメージセンサは、眼底における照明光の照射位置に対応した照明光の戻り光の受光結果をローリングシャッター方式で取り込むように構成される。
【0266】
このような構成によれば、ローリングシャッター方式で照明光の戻り光の受光結果を取り込むことで、簡素な構成で、フレアの発生を抑制し、被検眼の高画質の画像の取得が可能な眼科装置を提供することができる。
【0267】
いくつかの実施形態では、イメージセンサは、CMOSイメージセンサである。
【0268】
このような構成によれば、簡素な構成、且つ、低コストで、フレアの発生を抑えつつ、被検眼の高画質の画像を取得することが可能になる。
【0269】
以上に示された実施形態又はその変形例は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【0270】
上記の実施形態において、眼科装置は、例えば、眼軸長測定機能、眼圧測定機能、光干渉断層撮影(OCT)機能、超音波検査機能など、眼科分野において使用可能な任意の機能を有していてもよい。なお、眼軸長測定機能は、光干渉断層計等により実現される。また、眼軸長測定機能は、被検眼に光を投影し、当該被検眼に対する光学系のZ方向(前後方向)の位置を調整しつつ眼底からの戻り光を検出することにより、当該被検眼の眼軸長を測定するようにしてもよい。眼圧測定機能は、眼圧計等により実現される。OCT機能は、光干渉断層計等により実現される。超音波検査機能は、超音波診断装置等により実現される。また、このような機能のうち2つ以上を具備した装置(複合機)に対してこの発明を適用することも可能である。
【0271】
いくつかの実施形態では、上記の眼科装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。このようなプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な非一時的な(non-transitory)任意の記録媒体に記憶させることができる。記録媒体は、磁気、光、光磁気、半導体などを利用した電子媒体であってよい。典型的には、記録媒体は、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブなどである。また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。
【符号の説明】
【0272】
1 眼科装置
10 光源
20 照明光学系
21 虹彩絞り
22 スリット
23、41、44、48 リレーレンズ
30 光スキャナ
35 投影光学系
40 撮影光学系
42 黒点板
43 反射ミラー
45 穴鏡
46 対物レンズ
47 合焦レンズ
49 結像レンズ
50 撮像装置
51 イメージセンサ
100 制御部
101 主制御部
102 記憶部
200 データ処理部
E 被検眼
Ef 眼底
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16