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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】バイオリアクターシステム及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241101BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20241101BHJP
   C12M 3/02 20060101ALI20241101BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20241101BHJP
   C12N 5/02 20060101ALI20241101BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12M1/04
C12M3/02
C12N1/00 B
C12N5/02
C12M1/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022515002
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 CN2020113460
(87)【国際公開番号】W WO2021043257
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】201910841620.0
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522086320
【氏名又は名称】浙江金儀盛世生物工程有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG JYSS BIOENGINEERING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1919 Cangshan Road, Huzhou Economic And Technological Development Zone Huzhou, Zhejiang 313000 China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】羅 順
(72)【発明者】
【氏名】胡 福林
(72)【発明者】
【氏名】原 世平
(72)【発明者】
【氏名】侯 爵
(72)【発明者】
【氏名】宋 金▲はい▼
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063816(JP,A)
【文献】特表2017-521080(JP,A)
【文献】J. Chem. Technol. Biotechnol.,2018年,Vol.93,pp.810-817
【文献】BMC Proceedings,2011年,Vol.5, Suppl.8,P39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞壁のない細胞を培養するためのバイオリアクターシステムであって、
直径D1、高さH1の中空円筒と、上直径D2、底直径D3、高さH2の中空円錐台とを備えた容器であって、該中空円筒は、中空円錐台の上面に接続され、D1=D2であり、前記D1と前記D2が400~4000mm、前記D3が40~400mm、前記H1が00~1500mm、前記H2が40~1200mmである容器と、
容器を所定の偏心距離と回転速度に応じて偏心運動させるように設定された発振器と、
容器の上部から酸素含有ガスを容器内に通すように配置された換気装置と、
容器に充填された培養液であって、その上面が酸素含有ガスに曝された培養液とを備え、
発振器は、容器を偏心運動させるように設定されるため、定常運動状態での培養液の液体の総表面積と体積との比(S/V)は5.65m-1以上であり、乱流運動エネルギーは2.73E-03m2/s2以上であり、且つ流れ場せん断速度は20.27/秒間以下であり、培養液の液体の総表面積は、培養液とリアクターの壁面との接触面積と、培養液とガスとの接触面積との合計であり、前記S/V値、前記乱流運動エネルギー及び前記流れ場せん断速度は、CFDシミュレーションによって得られる、バイオリアクターシステム。
【請求項2】
CFDシミュレーションは、FLUENT(登録商標)との流体解析ソフトウェアによって実現される、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項3】
培養液を収容するために容器内に設置され、展開時に容器に対応する形状を有する使い捨て培養バッグを更に備える、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項4】
前記使い捨て培養バッグは、多機能カバープレートを備え、前記多機能カバープレートには、使い捨て培養バッグの内部に通じる複数の接続孔が設置される、請求項3に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項5】
容器は、D1とD2が400~2997mm、D3が80~190mm、H1が149~867mm、H2が98~664mmであり、5~3000Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は55~24rpmであり、偏心距離は30~65mmである、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項6】
容器は、D1とD2が約400mm、D3が約80mm、H1が約149mm、H2が約98mmであり、約5Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約55rpmであり、偏心距離は約30mmであり、ここで「約」とは、前記値の±20%の範囲を意味する、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項7】
容器は、D1とD2が約840mm、D3が約114mm、H1が約280mm、H2が約170mmであり、約50Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約40rpmであり、偏心距離は約40mmであり、ここで「約」とは、前記値の±20%の範囲を意味する、請求項1に記載のバイオリアクターシステム
【請求項8】
容器は、D1とD2が約1690mm、D3が約190mm、H1が約452mm、H2が約347mmであり、約500Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約28rpmであり、偏心距離は約65mmであり、ここで「約」とは、前記値の±20%の範囲を意味する、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項9】
容器は、D1とD2が約1952mm、D3が約190mm、H1が約533mm、H2が約465mmであり、約1200Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約25rpm、偏心距離は約65mmであり、ここで「約」とは、前記値の±20%の範囲を意味する、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のバイオリアクターシステムを使用して細胞壁のない細胞を培養する方法であって、
バイオリアクターシステムの形状及び培養液の体積に応じて、CFDシミュレーションにより、偏心運動が定常状態に達時の液体総表面積と体積との比(S/V)が5.65m-1以上、乱流運動エネルギーが2.73E-03m2/s2以上、流れ場せん断速度が20.27/秒間以下になるのに必要な発振器の回転速度及び偏心距離を計算するステップであって、培養液の液体の総表面積は、培養液とリアクターの壁面との接触面積と、培養液とガスとの接触面積との合計である、ステップと、
培養液及び接種細胞をバイオリアクターシステムに加え、計算された発振器の回転速度及び偏心距離に応じて発振器を設定し、細胞培養を行うステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、細胞培養、特に動物細胞などの細胞壁のない細胞の培養に適用するバイオリアクターシステム及び該バイオリアクターシステムを使用して細胞培養を行う方法に関する。本出願によるバイオリアクターシステムは、細胞生存率が高い細胞培養と増殖を実現できる。
【背景技術】
【0002】
哺乳類細胞によって発現された製品は、バイオ製剤業界で絶対的な優位性を持ち、バイオ製剤の主流及びトレンドにとなる。バイオリアクターを主体とした生産ラインと細胞培養プロセスは、大スケールの動物細胞培養の技術革新とプロセス改良を促進するためのハードウェアの原動力であり、また、バイオ製品の生産効率、生産規模、製品品質を向上させるための基礎でもある。中国及び海外で商業化された動物細胞バイオリアクターは、撹拌型バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、エアリフトバイオリアクター、バッグ型バイオリアクターを含む。
【0003】
一方で、動物細胞は細胞壁を持たないため、せん断力と浸透圧などの培養環境に敏感であり、高い酸素移動効率、優れた混合性能、低いせん断効果を要求する。従って、動物細胞培養用の重要な機器としてのバイオリアクターについて、主に解決すべき共通問題は、細胞増殖の要件に応じて、リアクターに低いせん断効果、優れた物質移動及び混合効果を持たせることである。しかし、従来の多くのバイオリアクターは、底部換気と機械的撹拌の方式によって酸素供給及び培養液の混合を実現し、その結果、生じた強いせん断力、高濃度の酸素気泡、及びそれらの気泡の破裂は、動物細胞に大きな損傷を引き起こし、細胞培養密度を大幅に低下させる。
【0004】
もう一方で、バイオリアクター機器の開発及び生物学的反応過程のプロセス研究は、まずでは小型機器で研究及び試験し、次に大型機器に徐々にスケールアップしてプロセスのスケールアップ試験と商業生産を行う。しかし、実際には、小型リアクターでの科学実験から得られたデータ、プロセス及び法則は、大型リアクターで同じ又はより優れた結果を完全に達成することはできない。従って、バイオリアクターのスケール設計は、単にスケールアップするだけでは、動物細胞の工業規模の培養要件を満たすことができない。現在、従来のバイオリアクターの操作経験によって確立されたいくつかの法則に基づいたスケールアップ方法は、ほとんどが定性的であり、いくつかの容易で大まかな定量的概念のみがあり、スケールアップ率は通常小さく不正確である。従って、完全な理論システム解析を取得する前、バイオリアクターのスケールアップ設計を、経験と実際の原則に従って設計及びスケールアップする必要がある。
【発明の概要】
【0005】
上記問題に鑑み、本出願の発明者らは、計算流体力学(CFD)を使用し、作業条件下でバイオリアクターをシミュレートし、異なるスケールの培養要件を満たすことができるバイオリアクターの理論モデルを研究し、実際の細胞培養で検証する。該理論モデルを利用し、異なるスケールでの動物細胞の培養と増殖の要件を満たすバイオリアクターシステムを取得でき、動物細胞の生存率を85.0%以上に維持できる。CFDとは、数値法を使用してコンピュータに流体力学の制御方程式を解き、それによって流れ場の流動を予測できることを意味する。現在、FLUENT、CFD-ACE+(CFDRC)、Phoenics、CFX、Star-cdなど、様々な商用CFDソフトウェアが世に出る。CFDソフトウェアによる流れ場シミュレーションは、当業者によく知られている。
【0006】
一方で、細胞培養、特に動物細胞などの細胞壁のない細胞の培養に適用するバイオリアクターシステムに関し、それは、
-直径D1、高さH1の中空円筒と、上直径D2、底直径D3、高さH2の中空円錐台とを備えた容器であって、該中空円筒は、中空円錐台の上面に接続され、D1=D2である容器と、
-容器を所定の偏心距離と回転速度に応じて偏心運動させるように設定された発振器と、
-容器の上部から酸素含有ガスを容器内に通すように配置された換気装置と、
-容器に充填された培養液であって、その上面が酸素含有ガスに曝された培養液とを備え、
発振器は、容器を偏心運動させるように設定されるため、定常運動状態での培養液の液体の総表面積Sと培養液の体積Vとの比(S/V)は5.65以上であり、乱流運動エネルギーは2.73E-03m/s以上であり、且つ流れ場せん速度は20.27/秒間以下であり、液体の総表面積は、培養液と容器内の壁面との接触面積と、培養液と容器内のガスとの接触面積との合計である。いくつかの実施形態では、S/V値、乱流運動エネルギー及び流れ場せん断速度は、CFDシミュレーションによって得られる。
【0007】
CFDシミュレーションはFLUENTソフトウェアで実現できる。定常運動状態での培養液のS/V値は、容器の形状、培養液の体積V、容器の回転速度、偏心距離Rに関係し、CFDシミュレーションによって得られる。容器内に生じたせん断速度は、容器の形状、回転速度、偏心距離に関係し、CFDシミュレーションによって得られる。容器内の乱流運動エネルギーは、容器の回転速度及び偏心距離に関係し、CFDシミュレーションによって得られる。
【0008】
バイオリアクターシステムは更に、培養液を収容するために容器内に設置された使い捨て培養バッグを備え、該使い捨て培養バッグは、多機能カバープレートを有し、該多機能カバープレートが培養バッグの頂部に接続されて培養バッグを密封し、使い捨て培養バッグの内部に通じる複数の接続孔が設置される。該使い捨て培養バッグは、フレキシブル培養バッグであってもよく、又は硬質材料で製造され、展開される時に容器に対応する形状を有する。該使い捨て培養バッグには、それを容器に固定するための装置が設置され得る。上記多機能カバープレートの接続孔は、密封性に優れ、必要に応じて検出電極及び導管などに接続することができる。いくつかの実施形態では、各接続孔は、気密性に優れたねじ山によって密封される。いくつかの実施形態では、任意の接続孔を介して各検出電極を接続し、細胞培養過程の温度、酸素溶存、pHなどの環境パラメータをリアルタイムに監視する。いくつかの実施形態において、細胞培養接種及び培養液の添加、サンプリング、回収、収穫、換気などの様々な操作を行うことにより、培養条件を更に最適化し、細胞培養密度を向上させる。様々な使い捨て培養バッグに適用できる多機能カバープレートの各接続孔は、いずれも統一された標準のねじ式インターフェースを使用し、気密性に優れ、細胞培養の要件に応じて柔軟に選択できる。特定の培養過程に必要のない接続孔を容易に密封できる。
【0009】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステム内の容器は、D1とD2が400~4000mm、D3が40~400mm、H1が100~1500mm、H2が40~1200mmである。
【0010】
いくつかの実施形態において、D1:D3又はD2:D3の値は、約5~約16の範囲内の任意の値、又は5~16の範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、D1:D3又はD2:D3の値は、約5、約7.37、約7.89、約8.89、約10.27又は約15.77である。いくつかの実施形態において、D1:D3又はD2:D3の値は、5、7.37、7.89、8.89、10.27又は15.77である。本明細書で使用される「約」は、前記値の±20%、±18%、±15%、±12%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%又は±0.5%の範囲を意味し、前記範囲は、前記範囲の端点及び前記範囲内の任意の値を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、D1:H1又はD2:H1の値は、約2~約5の範囲内の任意の値、又は2~5の範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、D1:H1又はD2:H1の値は、約2.68、約3、約3.55、約3.74、約3.66又は約3.46である。いくつかの実施形態において、D1:H1又はD2:H1の値は、2.68、3、3.55、3.74、3.66又は3.46である。
【0012】
いくつかの実施形態において、D1:H2又はD2:H2の値は、約4~約5の範囲内の任意の値、又は4~5の範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、D1:H2又はD2:H2の値は、約4.08、約4.94、約4.95、約4.87、約4.20又は約4.51である。いくつかの実施形態において、D1:H2又はD2:H2の値は、4.08、4.94、4.95、4.87、4.20又は4.51である。
【0013】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約400~約2997mm、D3が約80~約190mm、H1が約149~約867mm、H2が約98~約664mmであり、約5~約3000Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約55~約24rpmであり、偏心距離は約30~約65mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が400~2997mm、D3が80~190mm、H1が149~867mm、H2が98~664mmであり、5~3000Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は55~24rpmであり、偏心距離は30~65mmである。
【0014】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約400mm、D3が約80mm、H1が約149mm、H2が約98mmであり、約5Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約55rpmであり、偏心距離は約30mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が400mm、D3が80mm、H1が149mm、H2が98mmであり、約5Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は55rpmであり、偏心距離は30mmである。
【0015】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約840mm、D3が約114mm、H1が約280mm、H2が約170mmであり、約50Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約40rpmであり、偏心距離は約40mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が840mm、D3が114mm、H1が280mm、H2が170mmであり、50Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は40rpmであり、偏心距離は40mmである。
【0016】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約840mm、D3が約114mm、H1が約280mm、H2が約170mmであり、約18Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約37~約39rpmであり、偏心距離は約40mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が840mm、D3が114mm、H1が280mm、H2が170mmであり、18Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は37~39rpmであり、偏心距離は40mmである。
【0017】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約840mm、D3が約114mm、H1が約280mm、H2が約170mmであり、約18Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約39rpmであり、偏心距離は約40mmである。一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が840mm、D3が114mm、H1が280mm、H2が170mmであり、18Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は39rpmであり、偏心距離は40mmである。
【0018】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約1500mm、D3が約190mm、H1が約422mm、H2が約303mmであり、約18Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約37~約39rpmであり、偏心距離は約40mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が303mmであり、18Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は37~39rpmであり、偏心距離は40mmである。
【0019】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約1500mm、D3が約190mm、H1が約422mm、H2が約203mmであり、約200Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約30rpmであり、偏心距離は約60mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が203mmであり、200Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は60mmである。
【0020】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約1500mm、D3が約190mm、H1が約422mm、H2が約203mmであり、約205Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約30rpmであり、偏心距離は約60mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が203mmであり、205Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は60mmである。
【0021】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約1500mm、D3が約190mm、H1が約422mm、H2が約203mmであり、約250Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約30rpmであり、偏心距離は約60mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が203mmであり、250Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は60mmである。
【0022】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約1690mm、D3が約190mm、H1が約452mm、H2が約347mmであり、約500Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約28rpmであり、偏心距離は約65mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1690mm、D3が190mm、H1が452mm、H2が347mmであり、500Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は28rpmであり、偏心距離は65mmである。
【0023】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約1952mm、D3が約190mm、H1が約533mm、H2が約465mmであり、約1200Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約25rpmであり、偏心距離は約65mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1952mm、D3が190mm、H1が533mm、H2が465mmであり、1200Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は25rpmであり、偏心距離は65mmである。
【0024】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約1952mm、D3が約190mm、H1が約533mm、H2が約465mmであり、約250Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約30rpmであり、偏心距離は約65mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1952mm、D3が190mm、H1が533mm、H2が465mmであり、250Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は65mmである。
【0025】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が約1952mm、D3が約190mm、H1が約533mm、H2が約465mmであり、約330Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は約30rpmであり、偏心距離は約65mmである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1952mm、D3が190mm、H1が533mm、H2が465mmであり、330Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は65mmである。
【0026】
いくつかの実施形態において、D1とD2が約2997mm、D3が約190mm、H1が約867mm、H2が約664mmであり、約3000Lの細胞培養液を含有するバイオリアクターシステムを使用して細胞培養を行い、発振器の回転速度は約24rpmに設定され、偏心距離は約65mmに設定される。いくつかの実施形態において、D1とD2が約2997mm、D3が約190mm、H1が約867mm、H2が約664mmであり、3000Lの細胞培養液を含有するバイオリアクターシステムを使用して細胞培養を行い、発振器の回転速度は約24rpmに設定され、偏心距離は約65mmに設定される。
【0027】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が400mm、D3が80mm、H1が149mm、H2が98mmであり、5Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は55rpmであり、偏心距離は30mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はXであり、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムは、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値が50.48であり、乱流運動エネルギーが2.73E-03m/sであり、流れ場せん断速度が10.18/秒間である。
【0028】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が840mm、D3が114mm、H1が280mm、H2が170mmであり、50Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は40rpmであり、偏心距離は40mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はXであり、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムは、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値が26.61であり、乱流運動エネルギーが5.29E-03m/sであり、流れ場せん断速度が7.02/秒間である。
【0029】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が840mm、D3が114mm、H1が280mm、H2が170mmであり、18Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は37~39rpmであり、偏心距離は40mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はXであり、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムにおいて、発振器の回転速度は37rpmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値は43.34であり、乱流運動エネルギーは4.71E-03m/sであり、流れ場せん断速度は6.8056/秒間である。一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が840mm、D3が114mm、H1が280mm、H2が170mmであり、18Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は39rpmであり、偏心距離は40mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はXであり、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムは、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値が47.89であり、乱流運動エネルギーが5.35E-03m/sであり、流れ場せん断速度が7.1149/秒間である。
【0030】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が303mmであり、200Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は60mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はXであり、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムは、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値が18.46であり、乱流運動エネルギーが9.91E-03m/sであり、流れ場せん断速度が5.9707/秒間である。一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が303mmであり、205Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は60mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はXであり、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムは、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値が18.24であり、乱流運動エネルギーが9.89E-03m/sであり、流れ場せん断速度が5.7476/秒間である。一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が303mmであり、250Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は60mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はXであり、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムは、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値が15.98であり、乱流運動エネルギーが9.30E-03m/sであり、流れ場せん断速度が5.4623/秒間である。
【0031】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1690mm、D3が190mm、H1が452mm、H2が347mmであり、500Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は28rpmであり、偏心距離は65mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はXであり、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムは、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値が10.61であり、乱流運動エネルギーが7.59E-03m/sであり、流れ場せん断速度が4.66/秒間である。
【0032】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1952mm、D3が190mm、H1が533mm、H2が465mmであり、1200Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は25rpmであり、偏心距離は65mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値は6.60であり、乱流運動エネルギーは9.30E-03m/sであり、流れ場せん断速度は4.42/秒間である。一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1952mm、D3が190mm、H1が533mm、H2が465mmであり、250Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は65mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はX、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムは、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値が20.96であり、乱流運動エネルギーが1.46E-02m/sであり、流れ場せん断速度が6.0922/秒間である。一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1952mm、D3が190mm、H1が533mm、H2が465mmであり、330Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は65mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はX、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムは、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値が18.09であり、乱流運動エネルギーが1.52E-02m/sであり、流れ場せん断速度が6.3173/秒間である。
【0033】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が2997mm、D3が190mm、H1が867mm、H2が664mmであり、3000Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は24rpmであり、偏心距離は65mmであり、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値はX、乱流運動エネルギーはXm/sであり、流れ場せん断速度はX/秒間である。一実施形態において、前記バイオリアクターシステムは、CFDシミュレーションによって得られた培養液の定常運動状態のS/V値が5.65であり、乱流運動エネルギーが2.48E-02m/sであり、流れ場せん断速度が3.98/秒間である。
【0034】
もう一方で、本出願は、バイオリアクターシステムを使用し、細胞、特に細胞壁のない細胞を培養する方法に関し、該バイオリアクターシステムは、
【0035】
-直径D1、高さH1の中空円筒と、上直径D2、底直径D3、高さH2の中空円錐台とを備えた容器であって、該中空円筒は、中空円錐台の上面に接続され、D1=D2である容器と、
-容器を所定の偏心距離と回転速度に応じて偏心運動させるように設定され得る発振器と、
-容器の上部から酸素含有ガスを容器内に通すように配置された換気装置と、
【0036】
-容器に充填された培養液であって、その上面が酸素含有ガスに曝された培養液とを備え、
細胞培養方法は、
-バイオリアクターシステムの形状と培養液の体積に応じて、CFDシミュレーションにより、偏心運動が定常状態に達する時の培養液の液体の総表面積と培養液の体積との比(S/V)が5.65以上、乱流運動エネルギーが2.73E-03m/s以上、流れ場せん断速度が20.27/秒間以下であることに必要な発振器の回転速度と偏心距離を計算するステップであって、培養液の液体の総表面積は、培養液とリアクターの壁面との接触面積と、培養液とガスとの接触面積との合計であるステップと、
-培養液及び接種細胞をバイオリアクターシステムに加え、計算された発振器の回転速度及び偏心距離に応じて発振器を設定し、細胞培養を行うステップとを含む。
【0037】
FLUENTソフトウェアによってCFDシミュレーションを行うことができる。
バイオリアクターシステムの総動作電力に応じて、容器の体積が増加するにつれて、発振器の回転速度は低下する。バイオリアクターシステムの作業効率に応じて、容器の体積が増加するにつれて、発振器の偏心距離は増加する。
【0038】
例えば、最大作業体積が5Lのバイオリアクターシステムでは、発振器の回転速度を45~70rpmの範囲に設定でき、偏心距離を約30mmに設定でき、最大作業体積が50Lのバイオリアクターシステムでは、発振器の回転速度を40~60rpmの範囲に設定でき、偏心距離を約40mmに設定でき、最大作業体積が500Lのバイオリアクターシステムでは、発振器の回転速度を25~30rpmの範囲に設定でき、偏心距離を約65mmに設定でき、最大作業体積が1200Lのバイオリアクターシステムでは、発振器の回転速度を20~30rpmの範囲に設定でき、偏心距離を約65mmに設定でき、最大作業体積が3000Lのバイオリアクターシステムでは、発振器の回転速度を24~26rpmの範囲に設定でき、偏心距離を約65mmに設定できる。
【0039】
バイオリアクターシステムは更に、培養液を収容するために容器内に設置された使い捨て培養バッグを備え、該使い捨て培養バッグは、多機能カバープレートを有し、該多機能カバープレートが培養バッグの頂部に接続されて培養バッグを密封し、使い捨て培養バッグの内部に通じる複数の接続孔が設置される。該使い捨て培養バッグは、フレキシブル培養バッグであってもよく、又は硬質材料で製造され、展開される時に容器に対応する形状を有する。該使い捨て培養バッグには、それを容器に固定するための装置が設置され得る。上記多機能カバープレートの接続孔は、密封性に優れ、必要に応じて検出電極及び導管などに接続することができる。いくつかの実施形態では、各接続孔は、気密性に優れたねじ山によって密封される。いくつかの実施形態では、任意の接続孔を介して各検出電極を接続し、細胞培養過程の温度、酸素溶存、pHなどの環境パラメータをリアルタイムに監視する。いくつかの実施形態において、細胞培養接種及び培養液の添加、サンプリング、回収、収穫、換気などの様々な操作を行うことにより、培養条件を更に最適化し、細胞培養密度を向上させる。様々な使い捨て培養バッグに適用できる多機能カバープレートの各接続孔は、いずれも統一された標準のねじ式インターフェースを使用し、気密性に優れ、細胞培養の要件に応じて柔軟に選択できる。特定の培養過程に必要のない接続孔を容易に密封できる。
【0040】
一実施形態において、D1とD2が400mm、D3が80mm、H1が149mm、H2が98mmであり、且つ5Lの細胞培養液を含有するバイオリアクターシステムを使用して細胞培養を行い、発振器の回転速度は55rpmに設定され、偏心距離は30mmに設定される。
【0041】
一実施形態において、D1とD2が840mm、D3が114mm、H1が280mm、H2が170mmであり、且つ50Lの細胞培養液を含有するバイオリアクターシステムを使用して細胞培養を行い、発振器の回転速度は40rpmに設定され、偏心距離は40mmに設定される。
【0042】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が303mmであり、18Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は37~39rpmであり、偏心距離は40mmである。
【0043】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が203mmであり、200Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は60mmである。一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が203mmであり、205Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は60mmである。一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1500mm、D3が190mm、H1が422mm、H2が203mmであり、250Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は60mmである。
【0044】
一実施形態において、D1とD2が1690mm、D3が190mm、H1が452mm、H2が347mmであり、且つ500Lの細胞培養液を含有するバイオリアクターシステムを使用して細胞培養を行い、発振器の回転速度は28rpmに設定され、偏心距離は65mmに設定される。
【0045】
一実施形態において、D1とD2が1952mm、D3が190mm、H1が533mm、H2が465mmであり、且つ1200Lの細胞培養液を含有するバイオリアクターシステムを使用して細胞培養を行い、発振器の回転速度は25rpmに設定され、偏心距離は65mmに設定される。
【0046】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1952mm、D3が190mm、H1が533mm、H2が465mmであり、250Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は65mmである。
【0047】
一実施形態において、バイオリアクターシステムにおいて、容器は、D1とD2が1952mm、D3が190mm、H1が533mm、H2が465mmであり、330Lの細胞培養液を含有し、発振器の回転速度は30rpmであり、偏心距離は65mmである。
【0048】
一実施形態において、D1とD2が2997mm、D3が190mm、H1が867mm、H2が664mmであり、且つ3000Lの細胞培養液を含有するバイオリアクターシステムを使用して細胞培養を行い、発振器の回転速度は24rpmに設定され、偏心距離は65mmに設定される。
【0049】
本出願のバイオリアクターシステムにおいて、培養液が偏心運動する時に低いせん断力を生成し、細胞への損傷が低ため、特に動物細胞などの細胞壁のない細胞の培養に適用し、且つ偏心運動時の培養液の定常状態S/V値と乱流運動エネルギーを一定範囲内に制御する場合、酸素溶存と酸素拡散効率が高いため、酸素分布が不均一で、酸素濃度が高すぎる場合で酸素中毒が発生するが、酸素濃度が低すぎる場合で細胞の成長と増殖が制限されることがなく、それによって細胞の高密度成長をよりよくサポートすることができる。本出願の方法で細胞を培養する時、小スケール培養でも大スケール培養でも、細胞の増殖効率が高く、且つ細胞の生存率は90.0%、95.0%、更に99.0%以上に維持される。特に、使い捨て培養バッグと協力する場合、交差汚染を回避し、バッチ間の処理周期を短縮し、複雑なパイプラインなどの補助設備、洗浄、消毒、検証を必要とせず、それによって作業効率を大幅に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本出願のバイオリアクターシステムの容器の構造概略図を示す。
図2】偏心運動時の容器上の任意の点の運動軌跡の概略図を示す。
図3】作業体積300L、回転速度28rpmで、CUR300Lが一周り回転する場合の自由液面変化のシミュレーション図を示す。
図4】作業体積300L、回転速度30rpmで、CUR300Lが一周り回転する場合の自由液面変化のシミュレーション図を示す。
図5】作業体積175L、回転速度28rpmで、CUR300Lが一周り回転する場合の自由液面変化のシミュレーション図を示す。
図6】作業体積175L且つ回転速度30rpmで、CUR300Lが一周り回転する場合の自由液面変化のシミュレーション図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
細胞、特に動物細胞などの細胞壁のない細胞を培養する場合、理想的な状況は、リアクターが細胞への物理的損傷が低く、リアクターが細胞の成長と増殖をサポートするのに十分な酸素をタイムリに提供できることである。それは、バイオリアクターシステムが低いせん断力を生成し、高い酸素溶存と酸素拡散効率を提供する必要がある。本出願の目的は、上記効果を有するバイオリアクターシステムを提供することである。
【0052】
バイオリアクター機器の開発及び生物学的反応過程のプロセス研究において、まずでは小型機器で研究及び試験し、次に大型機器に徐々にスケールアップしてプロセスのスケールアップ試験と商業生産を行うことが往々にする。しかし、実際には、小型リアクターでの科学実験から得られたデータ、プロセス及び法則は、大型リアクターで同じ又はより優れた結果を完全に達成することはできず、バイオリアクターのスケール設計は、単にスケールアップするだけでは、動物細胞の工業規模の培養要件を満たすことができない。
【0053】
従って、本出願の発明者らは、計算流体力学(CFD)により、様々なスケールの作業状態下でバイオリアクターをシミュレートし、発振器が垂直軸線に沿って偏心運動する作業状態下で、CUR2.5L、CUR50L、CUR300L、CUR1200L、CUR3000Lなどの異なる体積の5種類のリアクターの培養液の相対位置変化、気液界面面積、液体の総表面積、液体の乱流運動エネルギー、乱流運動エネルギー散逸率、乱流強度及びせん断力変化などを重点的に考察する。そのうちいくつかのパラメータの組み合わせを包括的に選択し且つそれらを実際の細胞培養に適用する場合、5Lのバイオリアクターシステムでも1200Lのバイオリアクターシステムでも使用すると、安定した細胞増殖を実現でき、且つ細胞生存率は90.0%、95.0%、更に99%である。
【0054】
本出願のバイオリアクターシステムは主に容器と発振器とを備える。容器は上部の中空円筒、下部の中空円錐台で構成され、容器は、半径が等しい偏心距離の周りに一定速度の円運動をする。偏心運動の定常運動状態での培養液の総表面積と体積との比S/V、乱流運動エネルギー及び流れ場せん断速度を一定の範囲に制御することにより、安定した細胞成長を実現でき、細胞の生存率を高レベルで維持する。
【0055】
発振器の「偏心運動」とは、発振器のモーターは、ベルトを介してプーリーが同時に回転するように動かし、プーリーが3つのクランクに接続されるため、可動プラットフォームが運動するように動かし、可動プラットフォーム上の各点が半径の等しい偏心距離の周りに一定速度の円運動をし、且つ可動プラットフォーム上の任意の点の軌跡が同じであり、各点の速度と加速度の両方も同じであることを意味する。図2に示すように、バイオリアクターシステムの容器は、発振器の可動プラットフォームに固定され、容器の運動は水平面での平行移動であるため、容器上の任意の点の運動軌跡を測定するだけで、他の部分の運動軌跡を決定できる。
【0056】
「酸素溶存」とは、培養液の上面を酸素含有ガスと接触させ、ガスを培養液に導入し、発振器はバイオリアクターシステムの容器が偏心運動するように動かす時、培養液をゆっくりと動かし、容器の表面を連続的に洗浄し、ナノスケールの可溶性微小気泡を生成し、ガスを培養液に引き込むことを意味する。「酸素拡散」とは、培養液の乱流拡散などによって液体に導入された酸素含有ガスを培養液の内部に伝達することを意味する。
【0057】
培養液の「液体総の表面積」とは、培養液とリアクターの壁面との接触面積と、培養液とガスとの接触面積との合計を意味し、Sと略称し、それと培養液の体積との比はS/V比と呼ばれる。本明細書では、培養液とガスとの接触面積をAと略称する。培養液の上面は酸素と直接接触し、酸素の一部を溶解する。同時に、リアクターの容器内壁に付着した液膜のガス更新速度は、液相本体と異なる可能性があり、ここまで回転した液体が液膜と接触すると、本体のガス成分に影響を与える可能性がある。バイオリアクターシステムが偏心運動する時、培養液は、リアクターの容器の中心軸から様々な程度に逸脱し、回転速度が速いほど、液体にかかった遠心力が大きくなり、逸脱程度が著しくなり、液体がより薄く絞られ、空気との接触界面がより凹状になる。従って、偏心運動する時、培養液とバイオリアクターの壁面との接触面積、及び培養液の上面とガスとの接触面積は様々な程度に増加するため、定常運動状態での液体の総表面積及びS/V比が増加する。
【0058】
動物細胞などの細胞壁のない細胞の培養では、細胞壁がないため、細胞は流れ場の機械的環境に敏感であり、外力が細胞への機械的損傷は、動物細胞バイオリアクターの設計と使用過程において無視できない要因である。バイオリアクター内の細胞にかかったせん断力は、3つの種類に分けられ、それらは、培養液内部の相対運動によって生じた、その大きさが培養液の速度勾配と動粘度に比例する流れ場せん断力、気泡が培養液中に上昇し及びその表面が破裂する時に生じたせん断力、細胞とリアクターの内壁との衝突及び細胞間の衝突によって生じたせん断力である。
【0059】
本出願のバイオリアクターシステムを選択する場合、表面酸素移動法により、気泡分配器なしで生じた気泡が非常に少ないため、気泡によるせん断力による損傷は無視できる。且つ本出願のバイオリアクターシステムは、中空円筒と中空円錐台構造であり、それは偏心運動する時、リアクター中の培養液及びその中の細胞が接触するバイオリアクターの壁は非常に滑らかになるため、生じた衝突せん断力も低い。
【0060】
従って、本出願のバイオリアクターにおけるせん断力は、主に流れ場せん断力である。流れ場せん断力による細胞の破壊は、流体の乱流によって生じた最小渦流寸法と密接に関係し、培養液はタンク内に壁面に近づいて回転し、乱流渦を生じ、大きな渦が徐々に小さな渦になり、小さな渦がより小さな渦になり、この過程で、エネルギーの移動とともに、培養液の機械的エネルギーが熱エネルギーになり、培養液の温度が上昇する。渦が徐々に変化する過程において、渦の寸法が細胞の寸法に近づく時、渦がエネルギーを細胞に伝達し、細胞を破裂させる。CFDシミュレーションでは、同じバイオリアクターで、回転速度の増加に伴って平均せん断力又は平均せん断速度が増加し、培養液の体積はほとんど影響を与えず、体積がより大きなバイオリアクターで生じたせん断力は、より小さくなる可能性があることが分かる。本出願のバイオリアクターシステムを選択する場合、容器の形状と仕様、培養液の体積、発振器の速度及び偏心距離を問わず、生じた平均せん断速度は全て非常に低く、チャイニーズハムスターがん細胞(CHO)を殺すための水中せん断速度の閾値(391.41s-1)より1桁低い。従って、バイオリアクターシステムを設定する場合、せん断力のパラメータは特に考慮されない。
【0061】
培養液の酸素溶存と酸素拡散効率は、培養液の表面積、乱流運動エネルギー、乱流強度などに関係する。酸素溶存と酸素拡散効率は細胞の成長と増殖をサポートするのに十分高い場合、特に高濃度の酸素を含むガスを使用する必要がない。過去の経験によると、特に高濃度の酸素を含むガス、特に純酸素は、酸素中毒を引き起こしやすい。
【0062】
培養液の酸素溶存効率は、主に酸素含有ガスと接触する培地の表面積に関係する。バイオリアクターシステムの容器が偏心運動する時、培養液の上面及び容器の壁との接触面は両方とも酸素含有ガスと接触する可能性がある。従って、静止状態時の総表面積又はS/V比と比較すると、定常運動状態での総表面積又はS/V比は参考になるほうがよい。CFDシミュレーションでは、異なる仕様の容器、培養液の体積、発振器の回転速度は全て定常運動状態のS/V比に影響を与えることが分かる。一般的に、S/V比が大きいほど、酸素溶存効率は高くなる。本出願によって構築された容器を使用する場合、S/V比が低い条件下で、細胞成長と増殖が安定し及び細胞生存率が高い効果を依然として実現することができる。
【0063】
培養液の酸素拡散効率は、主に培養液の乱流運動エネルギーと乱流強度に関係する。
【0064】
流体ミセルの運動は、本体につれて流れる平均速度とランダムな波動の脈動速度との重ね合わせとして表すことができる。ミセルのランダムな波動は、乱流の流れを引き起こす。回転速度の増加につれて入力電力が増加するため、より高いエネルギーを運ぶ流体ミセルの割合が増加し、効果的な衝突を生じてエネルギーを伝達できる微視的な渦の数も増加し、即ち乱流運動エネルギーの平均値が増加するように表す。CFDシミュレーションから見ると、作業体積が一定である場合、回転速度が高いほど、乱流運動エネルギーが高くなるため、容器内の物質移動と混合効果が高くなる。また、ミセルのランダムな波動は乱流拡散を引き起こす。ミセル間の速度は激しく波動するなど、相互作用が強くなり、エネルギーの移動と分散作用が著しくなる。従って、乱流強度が大きいほど、液相内の物質移動と混合効果が高くなる。回転速度の増加につれて、乱流強度が増加する傾向があり、回転速度の増加は、入力流体のエネルギーを増加させ、流体ミセルの運動エネルギーを増加させ、脈動速度がより速く、乱流強度も対応して増加する。乱流運動エネルギーと乱流強度は、主に流体の平均速度と乱流の脈動速度に関係し、発振器の回転速度と一定の正の相関を持つ。培養液の酸素拡散効率を考慮する場合、そのうちの1つしか考慮しない。
【0065】
CFDシミュレーションにより、所定のバイオリアクターに対して適切な培養液の体積、発振器の回転速度、偏心距離を選択でき、それによってせん断効果が低く、酸素溶存と酸素拡散効率が高い効果を達成する。
【0066】
体積の増加につれて、バイオリアクターの自重が増加するため、バイオリアクターシステムの総動作電力を考慮するという条件下で、大型リアクターに対してより低い回転速度を選択することができる。もう一方、バイオリアクターの作業効率を考慮する場合、バイオリアクターの体積に応じて偏心度を選択する必要がある。一般的に、発振器の偏心距離は容器の体積の増加につれて増加する。
【0067】
例えば、最大作業体積が5Lのバイオリアクターシステムでは、発振器の回転速度を45~70rpmの範囲に設定でき、偏心距離を約30mmに設定でき、最大作業体積が50Lのバイオリアクターシステムでは、発振器の回転速度を45~60rpmの範囲に設定でき、偏心距離を約40mmに設定でき、最大作業体積が500Lのバイオリアクターシステムでは、発振器の回転速度を25~30rpmの範囲に設定でき、偏心距離を約65mmに設定でき、最大作業体積が1200Lのバイオリアクターシステムでは、発振器の回転速度を20~30rpmの範囲に設定でき、偏心距離を約65mmに設定できる。
【0068】
以下、具体的な実施例によって本出願の内容を更に説明するが、本出願は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
<実施例1> バイオリアクターのコンピュータシミュレーション実験
【0070】
FLUENTソフトウェアなどのCFDソフトウェアにより、種々の異なる作業体積のリアクターが異なる回転速度での容器内の流れ場の特性をシミュレートする。発振器が垂直軸線に沿って偏心運動する作業状態下で、CUR2.5L、CUR50L、CUR300L、CUR1200L、CUR3000Lなどの異なる体積の5種類のリアクターの培養液の相対位置変化、気液界面面積、液体の総表面積、液体の乱流運動エネルギー、乱流運動エネルギー散逸率、乱流強度及びせん断力変化などを重点的に考察し、発明の具体的なステップ、方法及び結果は以下の通りである。
【0071】
1.仮説立て
実験を円滑に行い、変数をより適切に制御するために、モデルを確立する前、実験対象と初期条件を簡素化させ、以下の仮説を立てる。
【0072】
1.1 バイオリアクターシステムの容器は剛体であり、表面に凸凹がなく、且つ運動中に変形することがなく、
1.2 作業環境は標準大気圧と常温であり、
1.3 容器内の培養液の物理的特性は水と同じである。
【0073】
2.モデルの確立
2.1 幾何学的パラメータ
バイオリアクターシステムの容器の構造概略図は図1に示され、幾何学的パラメータは表1に示される。
【0074】
【表1】
【0075】
2.2 回転速度、作業体積及び対応する初期液面高さ
各仕様の最適回転速度範囲及び作業体積に応じて、各仕様のリアクターの3種の回転速度と3種の作業体積を確定し(CUR3000Lは全負荷作業状態での2種の回転速度を確定する)、合計38組のデータであり、具体的な値は表2に示される。
【0076】
【表2】
【0077】
2.3 グリッド作成
本実験では、非構造化四面体グリッドを使用し、グリッド情報は表3に示される。
【0078】
【表3】
【0079】
2.4 流れ場の初期条件の設定
VOFモデル2相流を使用してガスと液体の界面を追跡し、選択された乱流モデルはRNG k-εモデルである。バイオリアクターの運動軌跡は偏心運動であり、CUR2.5L、CUR50L、CUR300L、CUR1200L及びCUR3000Lのリアクターの運動の偏心距離はそれぞれ30mm、40mm、60mm、65mm及び65mmである。FLUENTソフトウェアにおいて、smoothing及びlayering動的グリッド技術を利用し、UDFをコンパイルしてリアクターの運動を定義し、タンクの運動に影響を与える要因は、角速度ω及び偏心距離Rである。タンク上のある点の運動方程式は以下の通りである。
【0080】
【数1】
【0081】
ここで、
Vx--該点がx方向での線速度、Vy--該点がy方向での線速度、
t--時間、φ--該点の初期位相角(計算を簡単にするために、該点は、リアクターがモデル化される時の原点座標[0,0,0]でる)。
【0082】
回転速度が25rpmの場合のCUR300Lを一例として、UDFファイルの具体的な内容は以下の通りである。
【0083】
【数2】
【0084】
二、実験結果
1.コンピュータシミュレーション作業状態での容器内の液体の相対位置と形状の変化
本シミュレーションは、初期段階での液体の変化情況を考慮せず、リアクター内の培養液の形状が比較的安定した状態に達する時の準定常状態過程のみを考察する。
【0085】
CUR300Lが準定常状態に達する時にリアクターが1周り回転する自由液面変化のシミュレーション図(図3図4図5図6)から見ると、液体はいずれもリアクターの容器の中心軸から様々な程度に逸脱する。体積が同じである場合、回転速度が速いほど、液体にかかった遠心力が大きくなり、逸脱程度が著しくなり、液体がより薄く絞られ、空気との接触界面がより凹状になる。300Lと175Lの作業体積は同じ変化傾向を有する。同時に、回転過程中のリアクター内の自由液面を観察することにより、準定常状態に達する時、リアクター内の自由液面の形態変化過程は大きく変化しなくなることも分かる。
【0086】
2.コンピュータシミュレーションの作業条件下での液体の総表面積、気液界面面積及びそれらと作業体積との比
二相物質移動の二重膜理論によって仮定すると、実際の過程において、リアクターの容器内壁に付着した液膜のガス更新速度は、液相本体と異なる可能性があり、ここまで回転した液体が液膜と接触すると、本体のガス成分に影響を与える可能性がある。従って、液体とリアクター容器の内壁面との接触面積(W)と気液界面面積(A)の合計は、液体の総表面積(S,S=W+A)として表される。
【0087】
【表4】
【0088】
表4から分かるように、回転速度の増加がSに与えた影響の程度は作業体積によって異なる。各タイプのリアクターの作業体積が異なるリアクターの液体の総表面積Sと気液界面面積Aの変化傾向を比較すると、両者の変化傾向はほぼ同じであることが分かる。回転速度が増加と、リアクター内の液体の回転頻度が高くなり、単位時間あたりの液体掃引面積が増加し、それによって気液の更新速度が速くなる。従って、気液の更新速度は、回転速度の大きさだけで大まかに測定できる。
【0089】
3.コンピュータシミュレーション作業状態でのリアクター内の流体の乱流運動エネルギー及び乱流運動エネルギー散逸率
(1)乱流運動エネルギーKは、流体ミセルの脈動過程に含まれるエネルギーを特徴付けるために使用され、式は以下の通りである。
【0090】
【数3】
【0091】
ここで、
ave--流体の平均速度、
I--乱流強度、その大きさは、乱流脈動速度の二乗平均V’と平均速度Vaveとの比に等しい。
【0092】
(2)乱流運動エネルギー散逸率εは、ミセルの衝突と粘性散逸によるエネルギー損失速度の大きさを測定するために使用され、式は以下の通りである。
【0093】
【数4】
【0094】
ここで、ρ、μ、μ--流体の密度、粘度及び乱流粘度。
【0095】
流体ミセルの運動は、本体につれて流れる平均速度とランダムな波動の脈動速度との重ね合わせとして表すことができる。ミセルのランダムな波動は、乱流の流れを引き起こす。表5から分かるように、作業体積が一定である場合、回転速度が高いほど、乱流運動エネルギーが高くなるため、リアクター内の物質移動と混合効果が高くなり、同時に、εも様々な程度に増加する。
【0096】
回転速度の増加につれて入力電力が増加するため、より高いエネルギーを運ぶ流体ミセルの割合が増加し、効果的な衝突を生じてエネルギーを伝達できる微視的な渦の数も増加し、即ちK平均値が増加するように表す。同時に、回転速度の増加につれて、単位時間あたり液体が容器の内壁を掃引した面積は大きくなり、気液接触交換の可能性が高まり、壁面付着作用と液体の内部粘性摩擦も増加する。高エネルギーミセルの割合が増えると、ミセルの衝突とエネルギー移動が増加し、Kの移動頻度がより速く減衰する。従って、回転速度の増加につれて、乱流運動エネルギー散逸率εが高まる。
【0097】
酸素液膜移動係数Kと乱流運動エネルギー散逸率εの関係式は以下の通りである。
【0098】
【数5】
【0099】
ここで、Doは酸素拡散係数を表し、ρとμはそれぞれ液相の密度と粘度を表す。上記パラメータはいずれも実験条件下で定数であり、乱流運動エネルギー散逸率εを使用して気液移動過程の強度を特徴付けることができる。εが大きいにつれて、気液移動は大きくなり、同様に気液物質移動係数Kaは大きい。
【0100】
【表5】
【0101】
4.コンピュータシミュレーション作業状態でのリアクター内の乱流強度
微環境の観点から見ると、乱流拡散が支配的な役割を果たす。流体ミセルの運動は、本体につれて流れる平均速度とランダムな波動の脈動速度との重ね合わせとして表すことができる。ミセルのランダムな波動は乱流拡散を引き起こす。ミセル間の速度は激しく波動するほど、相互作用が強くなる。エネルギーの移動と分散作用が著しくなる。従って、乱流強度が大きいほど、液相内の物質移動と混合効果が高くなる。
【0102】
Iは、流体ミセルの速度波動と相互作用の強度を特徴付けるために使用できる。ミセル間の速度は激しく波動するなど、相互作用が強くなり、エネルギーの移動と分散作用が著しくなる。従って、乱流強度が大きいほど、液相内の物質移動と混合効果が高くなる。乱流強度Iの式は以下の通りである。
【0103】
【数6】
【0104】
ここで、V’は乱流脈動速度の二乗平均であり、Vaveは流体の平均流速である。流体ミセルの運動は、本体につれて流れる平均速度とランダムな波動の脈動速度との重ね合わせとして表すことができる。ミセルのランダムな波動は、乱流の流れを引き起こす。
【0105】
表6から分かるように、作業体積が一定の場合、回転速度の増加につれて、Iが増加する傾向があり、回転速度の増加は、入力流体のエネルギーを増加させ、流体ミセルの運動エネルギーを増加させ、脈動速度がより速く、乱流強度も対応して増加する。
【0106】
【表6】
【0107】
5.平均せん断速度
動物細胞膜は細胞壁がないため、流れ場の機械的環境に敏感であり、外力が細胞への機械的損傷は、動物細胞バイオリアクターの設計と使用過程において無視できない要因である。
【0108】
バイオリアクター内の細胞にかかったせん断力は、3つの種類に分けられ、それらは、培養液内部の相対運動によって生じた、その大きさが培養液の速度勾配と動粘度に比例する流れ場せん断力、気泡が培養液中に上昇し及びその表面が破裂する時に生じたせん断力、細胞とリアクターの内壁との衝突及び細胞間の衝突によって生じたせん断力である。流れ場せん断力による細胞の破壊は、流体の乱流によって生じた最小渦流寸法と密接に関係し、培養液は容器内に壁面に近づいて回転し、乱流渦を生じ、大きな渦が徐々に小さな渦になり、小さな渦がより小さな渦になり、この過程で、エネルギーの移動とともに、培養液の機械的エネルギーが熱エネルギーになり、培養液の温度が上昇する。渦が徐々に変化する過程において、渦の寸法が細胞の寸法に近づく時、渦がエネルギーを細胞に伝達し、細胞を破裂させる。本出願のバイオリアクターシステムでは、表面酸素移動により、気泡分配器なしで生じた気泡が非常に少ないため、気泡によるせん断力による損傷は無視できる。バイオリアクター内のタンク内側の壁面は滑らかであるため、衝突によるせん断力は低い。上記分析により、本出願の激流型バイオリアクターにおけるせん断力は、主に流れ場せん断力である。従って、シミュレーションによってリアクターの内部のせん断速度の平均値を検出することは、バイオリアクターの設計にとって重要な参考になる。
【0109】
【表7】
【0110】
表7から分かるように、定常運動状態での培養液の液体流れ場の平均せん断速度は20.27/秒間以下である。
【0111】
平均せん断速度は、流れ場領域全体のせん断速度を体積積分し、次に平均値を求める。その計算式は以下の通りである。
【0112】
【数7】
【0113】
表7から分かるように、CUR2.5Lについて、作業体積が一定の場合、発振器の回転速度の増加につれて、平均せん断速度は増加し、且つ作業体積の変化は平均せん断速度にほとんど影響を与えない。CUR1200Lにかかった平均せん断速度は、CUR2.5Lよりもはるかに低い。平均せん断速度は低くなることは細胞への損傷が低く、しかし、せん断速度と混合効果は相互に制限され、せん断速度が小さいほど混合効果は悪くなる。
【0114】
チャイニーズハムスターがん細胞(CHO)を一例として、せん断力が0.392Paより大きい場合、即ち水中せん断速度が391.41sー1より大きい場合、細胞は破壊される。表7によるリアクターの平均せん断速度は、細胞に損傷をもたらすせん断速度よりもはるかに低い。
【0115】
三、まとめ
本実験は、CUR2.5L、CUR50L、CUR300L、CUR1200L及びCUR3000Lをシミュレーション対象として、動的グリッドモデル、RNG Kーε乱流モデル及びVOFモデルを使用し、14種の回転速度と13種の作業体積(合計38種の作業状態)下での容器内の液体の流れを数値的に分析する。結果は以下を示す。
1.準定常状態に達する時、液相形状は明らかに回転速度の影響を受け、回転速度の増加につれて、液面の曲がりは増加し、
2.回転速度の増加につれて、気液界面面積Aが直線的に増加することはなく、回転速度の増加が液体の総表面積Sへの影響は、作業体積によって異なり、
3.液相の定格乱流パラメータは、回転速度と作業体積の両方の影響を受け、Kとε関係式に従って、εで気液移動過程の強度を近似して特徴付けることができ、
4.回転速度の増加につれて、平均せん断速度も増加する。平均せん断速度は低くなることは細胞への損傷が低く、しかし、せん断速度と混合効果は相互に制限され、せん断速度が小さいほど混合効果は悪くなる。リアクターの平均せん断速度は、細胞に損傷をもたらすせん断速度よりもはるかに低い。
【0116】
<実施例2> バイオリアクターシステムの混合性能試験
【0117】
一、CUR5Lバイオリアクターの混合性能試験
1、実験計画
バイオリアクターの細胞培養環境をシミュレートし、様々な作業体積と様々な回転速度でのバイオリアクター内の材料の混合均一性を測定し、リアクターの混合性能を検証する。
装置タイプは、CUR5Lバイオリアクター(金儀盛世、D1=400mm、D3=80mm、H1=149mm、H2=98mm)、作業体積5Lであり、混合用溶液はPBS緩衝液であり、加えられた試薬は1mol/LNaOHである。検出器は、メトラーpH電極である。
【0118】
測定内容は、バイオリアクターにNaOH試薬を加えた後、pH電極を使用し、均一に混合する時間を測定することにより、リアクターの振とう過程において、容器に加えられた材料を均一に混合するのにかかる時間を測定することである。時間の長さにより、バイオリアクターの実際の適用過程において、加えられた材料は細胞を培養する能力に実質的に影響を与えることをシミュレートする。
【0119】
本実験では、リアクターが正常に培養を培養する条件をシミュレートし、50rpm、55rpm、60rpmの3つの回転速度値、及び最小作業体積2L、最適作業体積3.5L、最大作業体積5Lなどの3つの作業体積をそれぞれ設定する。
【0120】
2、実験準備
(1)GMP基準を満たす環境で、15LのPBS緩衝液を調製して使用に備える。
(2)GMP基準を満たす環境で、1mol/Lの濃度のNaOH溶液500mLを実験用標準液として調製し、調製した後、500mLの溶液貯蔵缶に密封し、それによって溶液が劣化して実験の精度に影響を与えることを防止する。
(3)pHセンサーはリアクターの頂部インターフェースに置かれ、液体のpHを測定することによって混合効率を表す。
【0121】
3、実験手順
3.1 2L作業体積のバイオリアクターCUR5Lが50、55及び60rpmの回転速度条件での混合実験
(1)まずではリアクターに2LのPBS緩衝液を加え、温度を25~27℃に制御し、リアクターの回転速度を50rpmに設定し、発振器の振とう運動によってリアクターの偏心距離を30mmにする。
(2)リアクターが定常動作状態に入った後、リアクターの真上の円心からリアクターに1mol/Lの濃度のNaOH溶液3mLを注入し始める。5分間ごとに1回注入し、合計3回注入する。
(3)リアクターの回転速度を55rpmに設定し、ステップ(2)を繰り返す。
(4)リアクターの回転速度を60rpmに設定し、ステップ(2)を繰り返す。
【0122】
3.2 3.5L作業体積のバイオリアクターCUR5Lが50、55及び60rpmの回転速度条件での混合実験
リアクターに加えられたPBS緩衝液が3.5Lであり、且つリアクターに毎回注入した1mol/Lの濃度のNaOH溶液が5mLであることを除き、ステップは3.1と同様である。
【0123】
3.3 5L作業体積のバイオリアクターCUR5Lが50、55及び60rpmの回転速度条件での混合実験
リアクターに加えられたPBS緩衝液が5Lであり、且つリアクターに毎回注入した1mol/Lの濃度のNaOH溶液が10mLであることを除き、ステップは3.1と同様である。
【0124】
pHセンサーを使用し、バイオリアクターのpH変化情況をリアルタイムに監視し、2つのセンサーが同じpH値に達するまでにかかった時間を観察し、センサー画像データと報告書データを出力し、2組のセンサーによって検出された均一な混合にかかった時間を分析することによってリアクターの混合率を取得する。
【0125】
4、実験結果
溶液のpH安定性基準は、10秒間連続し、pH値が特定の値で安定し、誤差範囲が±0.01以内であるため、pH値が安定すると見なされることである。各条件下でpH値が安定するまでにかかった時間は、以下の表8にまとめられる
【0126】
【表8】
【0127】
二、CUR50Lバイオリアクターの混合性能試験
CUR50Lバイオリアクター(金儀盛世、D1=840mm、D3=114mm、H1=280mm、H2=170mm)を使用し、回転速度をそれぞれ38rpm、39rpm、40rpmの3つの回転速度値に設定し、最小作業体積15L、最適作業体積30L、最大作業体積50Lなどの3つの異なる作業体積をそれぞれ設定し、偏心距離を40mmに設定し、温度を25~27℃に制御する。
【0128】
試験方法は上記と同様である。15L作業体積の場合、リアクターに15LのPBS緩衝液を加え、リアクターに1mol/Lの濃度のNaOH溶液10mLを毎回注入する。30L作業体積の場合、リアクターに30LのPBS緩衝液を加え、リアクターに1mol/Lの濃度のNaOH溶液30mLを毎回注入する。50L作業体積の場合、リアクターに50LのPBS緩衝液を加え、リアクターに1mol/Lの濃度のNaOH溶液50mLを毎回注入する。結果は表9にまとめられる。
【0129】
【表9】
【0130】
三、CUR500Lバイオリアクターの混合性能試験
CUR500Lバイオリアクター(金儀盛世、D1=1690mm、D3=190mm、H1=452mm、H2=347mm)を使用し、回転速度をそれぞれ25rpm、27rpm、29rpmの3つの回転速度値に設定し、最小作業体積100L、最適作業体積300L、最大作業体積500Lなどの3つの異なる作業体積をそれぞれ設定し、偏心距離を65mmに設定し、温度を25~27℃に制御する。
【0131】
試験方法は上記と同様である。100L作業体積の場合、リアクターに100LのPBS緩衝液を加え、リアクターに1mol/Lの濃度のNaOH溶液50mLを毎回注入する。300L作業体積の場合、リアクターに300LのPBS緩衝液を加え、リアクターに1mol/Lの濃度のNaOH溶液100mLを毎回注入する。500L作業体積の場合、リアクターに500LのPBS緩衝液を加え、リアクターに1mol/Lの濃度のNaOH溶液100mLを毎回注入する。結果は表10にまとめられる。
【0132】
【表10】
【0133】
四、CUR1200Lバイオリアクターの混合性能試験
CUR1200Lバイオリアクター(金儀盛世、D1=1952mm、D3=190mm、H1=533mm、H2=465mm)を使用し、回転速度をそれぞれ23rpm、25rpm、27rpmの3つの回転速度値に設定し、最小作業体積300L、最適作業体積800L、最大作業体積1200Lなどの3つの異なる作業体積をそれぞれ設定し、偏心距離を65mmに設定し、温度を25~27℃に制御する。
【0134】
試験方法は上記と同様である。300L作業体積の場合、リアクターに300LのPBS緩衝液を加え、リアクターに1mol/Lの濃度のNaOH溶液100mLを毎回注入する。800L作業体積の場合、リアクターに800LのPBS緩衝液を加え、リアクターに1mol/Lの濃度のNaOH溶液800mLを毎回注入する。1200L作業体積の場合、リアクターに1200LのPBS緩衝液を加え、リアクターに2mol/Lの濃度のNaOH溶液500mLを毎回注入する。結果は表11にまとめられる。
【0135】
【表11】
【0136】
表8~表11のデータに示すように、本装置の混合効率は、大スケールの細胞培養過程における混合及び物質移動の要件を十分に満たすことができる。
【0137】
<実施例3> MDCK細胞培養
実施例2で使用したCUR5L、CUR50L、CUR500L及びCUR1200Lバイオリアクターを使用し、MDCK細胞の培養を行う。細胞の接種密度は1.5×10細胞/ml、成長培地はCD MDCK SFM(DP304、健順生物)、培養温度は37℃、酸素溶存値DO%は35~65である。
【0138】
CUR5Lリアクターは、作業体積5L、回転速度55rpm、偏心距離30mmに設定され、酸素及び空気の導入速度は、それぞれ100mL/分間及び200mL/分間に設定される。CUR50Lリアクターは、作業体積50L、回転速度40rpm、偏心距離40mmに設定され、酸素及び空気の導入速度は、それぞれ500mL/分間及び500mL/分間に設定される。CUR500Lリアクターは、作業体積500L、回転速度28rpm、偏心距離65mmに設定され、酸素及び空気の導入速度は、それぞれ900mL/分間及び1000mL/分間に設定される。CUR1200Lリアクターは、作業体積1200L、回転速度25rpm、偏心距離65mmに設定され、酸素及び空気の導入速度は、それぞれ1500mL/分間及び1500mL/分間に設定される。
【0139】
細胞を48時間培養する時、2g/Lのグルコースをリアクターシステム1回限りに追加し、追加されたグルコース溶液の濃度は200g/Lである。また、バイオリアクターのpH値を7.0~7.4の範囲に設定し、システムはpH値が7.0未満であることを検出する場合、システムは7.5%の濃度のNaHCO3を自動的に追加する。
【0140】
細胞培養データは以下の表12にまとめられる。
【0141】
【表12】
【0142】
表12から分かるように、細胞培養過程において、細胞密度が絶えず増加しても、細胞生存率が終始99.0%以上に維持される。
【0143】
<実施例4> CHO細胞培養
1.CUR300LバイオリアクターでのCHO細胞の培養
本出願によって構築されたCUR300Lバイオリアクター(金儀盛世、D1=1500mm、D3=190mm、H1=422mm、H2=303mm)を使用し、流加(Fedーbatch)細胞培養プロセスにより、CHO細胞の培養を行う。ここで、リアクターの回転速度は30rpmであり、偏心距離は60mmであり、培地の初期体積はそれぞれ200L、205L、250Lであり、温度を37℃に制御し、酸素及び空気の導入速度はそれぞれ800mL/分間と800mL/分間に設定する。初期培地は甘粛健順生物有限公司からのCHO細胞用の特殊培地であり、培養4日目の追加培地は甘粛健順生物有限公司からのCD Feed002である。
【0144】
CHO細胞の接種密度は約1.0×10/mLであり、4、6、8及び10日目に現在の作業体積の5%、2%、5%及び2%のCD Feed002をそれぞれ加え、グルコースが2.0g/L未満の場合、グルコース溶液を8.0g/Lまで追加し、pH値を7.0~7.2の範囲に設定し、pH値が7.0より低い場合、システムは7.5%の濃度のNaHCO3まで自動的に追加する。培養は14日間続き、細胞成長密度、生存率、浸透圧、酸素分圧、二酸化炭素分圧及びタンパク質の発現量などの情況を毎日観察する。培養過程における細胞密度と生存率は具体的に表13に示される。
【0145】
【表13】
【0146】
14日目にタンクで収穫する時の培養体積はそれぞれ247L、256L及び312Lに達し、最終的なタンパク質の発現量は1.133g/L、1.594g/L及び1.311g/Lに達する。培養全過程において、最高の細胞密度は15.49×10細胞/mLに達し、細胞は終始高い生存率と高いタンパク質発現期間に維持され、理想的な結果が得られる。
【0147】
2.CUR1200LバイオリアクターでのCHO細胞の培養
CUR1200Lバイオリアクター(金儀盛世、D1=1952mm、D3=190mm、H1=533mm、H2=465mm)を使用し、流加方法によってCHO細胞の培養を行う。リアクターの回転速度を30rpmに設定し、作業体積を250L及び330Lに設定し、偏心距離を65mmに設定し、温度を37℃に制御する。酸素及び空気の導入速度は、それぞれ1500mL/分間及び1500mL/分間に設定される。初期培地は甘粛健順生物有限公司からのCHO細胞用の特殊培地であり、培養4日目の追加培地は甘粛健順生物有限公司からのCD Feed002である。
【0148】
接種密度は約1.0×10/mLであり、4、6、8及び10日目に現在の作業体積の5%、2%、5%及び2%のCD Feed002をそれぞれ加え、グルコースが2.0g/L未満の場合、グルコース溶液を8.0g/Lまで追加し、pH値を7.0~7.2の範囲に設定し、pH値が7.0より低い場合、システムは7.5%の濃度のNaHCO3まで自動的に追加する。細胞培養は14日間続き、細胞成長密度、生存率、浸透圧、酸素分圧、二酸化炭素分圧及びタンパク質の発現量などの情況を毎日観察する。培養過程における細胞密度と生存率は具体的に表14に示される。
【0149】
14日目にタンクで収穫する時の培養体積はそれぞれ314L、417Lに達し、最終的なタンパク質の発現量は1.481g/L、1.308g/Lに達する。培養全過程において、最高の細胞密度は18.51×10/mLに達し、細胞は終始高い生存率と高いタンパク質発現期間に維持され、理想的な結果が得られる。
【0150】
【表14】
【0151】
3.CUR50LバイオリアクターでのCHO細胞の培養
本出願によって構築されたCUR50Lバイオリアクター(金儀盛世、D1=1500mm、D3=190mm、H1=422mm、H2=303mm)を使用し、ATF灌流(Perfusion)細胞培養プロセスにより、CHO細胞の培養を行う。ここで、バイオリアクターの回転速度は37rpm(1~8日目)~39rpm(9~20日目)であり、作業体積は18Lであり、偏心距離は40mmであり、温度を37°Cに制御する。酸素及び空気の導入速度は、それぞれ500mL/分間及び500mL/分間に設定される。初期培地は甘粛健順生物有限公司からのCHO細胞用の特殊培地であり、培養11日目の追加培地は甘粛健順生物有限公司からのCD Feedである。
【0152】
【表15】
【0153】
接種密度は約1×10/mLであり、12~20日目に培地の一部をATFー4から取り出し、同じ体積の培地を加え、培養システム中のグルコース濃度を3.0g/L以上に維持し、pH値を7.0~7.2の範囲に設定し、pH値が7.0より低い場合、システムは7.5%の濃度のNaHCO3まで自動的に追加する。細胞培養は20日間続き、細胞成長密度、生存率、直径、浸透圧、乳酸残存量及びタンパク質の発現量などの情況を毎日観察する。培養過程における細胞密度と生存率は具体的に表15に示される。
【0154】
20日目にタンクで収穫する時の培養体積は14Lであり、最終的なタンパク質の発現量は27gに達し、この結果は予想以上である。培養全過程において、最高の細胞密度は90.1×10/mLに達し、細胞は終始高い生存率(97%以上)に維持される。
【0155】
以上の内容から分かるように、本出願によって構築されたバイオリアクターを使用し、適切な回転速度、偏心距離などを選択する場合、細胞培養がスムーズに進み、細胞密度が徐々に増加し、細胞生存率が90.0%以上などの高いレベルに維持される。本出願のバイオリアクターシステムは、高密度の動物細胞培養に適することが分かる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6