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特許7580454CO2およびエポキシドからの環状カーボネートの製造のための触媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】CO2およびエポキシドからの環状カーボネートの製造のための触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20241101BHJP
   C07D 317/36 20060101ALI20241101BHJP
   C07C 251/20 20060101ALN20241101BHJP
   C07F 11/00 20060101ALN20241101BHJP
   C07F 15/02 20060101ALN20241101BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241101BHJP
【FI】
B01J31/22 Z
C07D317/36
C07C251/20
C07F11/00 A
C07F15/02
C07B61/00 300
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2022520002
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 TH2020000067
(87)【国際公開番号】W WO2021066757
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】1901006269
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(73)【特許権者】
【識別番号】513160707
【氏名又は名称】ピーティーティー グローバル ケミカル パブリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】キリラトニコーン,ジラヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォングナム,クニガー
(72)【発明者】
【氏名】タヴォーンシン,ノパラット
(72)【発明者】
【氏名】セー-ウン,ポーンペン
(72)【発明者】
【氏名】ケーオティプ,ソフォン
(72)【発明者】
【氏名】エウアパームキアティ,アヌチャ
(72)【発明者】
【氏名】ポンプライ,カンピー
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-112812(JP,A)
【文献】特開2003-064075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0066533(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0013167(KR,A)
【文献】国際公開第2014/204279(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104496959(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0336354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07D 317/00-325/00
C07C 1/00-409/44
C07F 11/00,15/02
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
COおよびエポキシドからの環状カーボネートの製造のための触媒組成物であって、前記触媒組成物は、
a)構造(I)で示される金属錯体:
【化1】
[式中、
Mは、クロム、コバルト、または鉄から選択される遷移金属原子を表す;
、R、およびRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、ヘテロ原子を含む環状炭化水素基、パーフルオロアルキル基、またはニトロ基から選択される独立した基を表す;
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、またはフェニレン基から選択される基を表す;
Xは、ハロゲン原子、酢酸基、またはトリフラート基から選択される基を表す];および
b)共触媒として、有機化合物、
を含み、
前記共触媒としての前記有機化合物は、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、テトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)、イミダゾリウムブロミド、イミダゾリウムクロリド、イミダゾリウムヨージド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムブロミド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムヨージド、またはそれらの混合物から選択される、
触媒組成物。
【請求項2】
a)の前記金属錯体において、Mは、クロム金属原子である、請求項に記載の触媒組成物。
【請求項3】
a)の前記金属錯体において、R、R、およびRは、水素原子、ハロゲン原子、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、1~4個の炭素原子を有するアルケニル基、1~4個の炭素原子を有するアルキニル基、1~4個の炭素原子を有するアルコキシ基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、ヘテロ原子を含む環状炭化水素基、パーフルオロアルキル基、またはニトロ基から選択される独立した基を表す、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
a)の前記金属錯体において、R、R、およびRは、水素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、フェニル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、またはニトロ基から選択される独立した基を表す、請求項1またはに記載の触媒組成物。
【請求項5】
a)の前記金属錯体において、RおよびRはtert-ブチル基であり、Rは水素原子である、請求項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
a)の前記金属錯体において、Rは2~3個の炭素原子を有するアルキレン基、6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、またはフェニレン基から選択される基を表す、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
a)の前記金属錯体において、Rはエチレン基、1,3-プロピレン基、1,2-シクロヘキシレン基、または1,2-フェニレン基から選択される基を表す、請求項1またはに記載の触媒組成物。
【請求項8】
a)の前記金属錯体において、Rはエチレン基である、請求項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
a)の前記金属錯体において、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、酢酸基、またはトリフラート基から選択される基を表す、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項10】
a)の前記金属錯体が、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリドN-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、またはN-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、から選択される、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項11】
COおよびエポキシドからの環状カーボネートの製造方法であって、50~180℃の範囲の温度でのCOおよびエポキシドと触媒組成物との接触を含み、前記触媒組成物は、
a)構造(I)で示される金属錯体:
【化2】
[式中、
Mは、クロム、コバルト、または鉄から選択される遷移金属原子を表す;
、R、およびRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、ヘテロ原子を含む環状炭化水素基、パーフルオロアルキル基、またはニトロ基から選択される独立した基を表す;
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、またはフェニレン基から選択される基を表す;
Xは、ハロゲン原子、酢酸基、またはトリフラート基から選択される基を表す];および
b)共触媒として、有機化合物、
を含み、
前記共触媒としての前記有機化合物は、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、テトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)、イミダゾリウムブロミド、イミダゾリウムクロリド、イミダゾリウムヨージド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムブロミド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムヨージド、またはそれらの混合物から選択される、
方法。
【請求項12】
a)の前記金属錯体において、Mは、クロム金属原子である、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項13】
a)の前記金属錯体において、R、R、およびRは、水素原子、ハロゲン原子、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、1~4個の炭素原子を有するアルケニル基、1~4個の炭素原子を有するアルキニル基、1~4個の炭素原子を有するアルコキシ基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、ヘテロ原子を含む環状炭化水素基、パーフルオロアルキル基、またはニトロ基から選択される独立した基を示す、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項14】
a)の前記金属錯体において、R、R、およびRは、水素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、フェニル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、またはニトロ基から選択される独立した基を示す、請求項11または13に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項15】
a)の前記金属錯体において、RおよびRはtert-ブチル基であり、Rは水素原子である、請求項14に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項16】
a)の前記金属錯体において、Rは2~3個の炭素原子を有するアルキレン基、6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、またはフェニレン基から選択される基を表す、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項17】
a)の前記金属錯体において、Rはエチレン基、1,3-プロピレン基、1,2-シクロヘキシレン基、または1,2-フェニレン基から選択される基を表す、請求項11または16に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項18】
a)の前記金属錯体において、Rはエチレン基である、請求項17に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項19】
a)の前記金属錯体において、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、酢酸基、またはトリフラート基から選択される基を表す、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項20】
a)の前記金属錯体が、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、またはN-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、から選択される、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項21】
a)の前記金属錯体とb)の前記共触媒としての前記有機化合物とのモル比が、1:0.5~1:300の範囲である、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項22】
a)の前記金属錯体とb)の前記共触媒としての前記有機化合物とのモル比が、1:0.5~1:200の範囲である、請求項21に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項23】
a)の前記金属錯体とエポキシドとのモル比が、1:100~1:20000の範囲である、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項24】
a)の前記金属錯体とエポキシドとのモル比が、1:1000~1:20000の範囲である、請求項23に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項25】
COの圧力が15~600psiの範囲である、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項26】
COの圧力が15~300psiの範囲である、請求項25に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項27】
COおよびエポキシドと前記触媒組成物との前記接触が、有機溶媒を含まない条件で行われ、b)の前記共触媒としての前記有機化合物が、4-ジメチルアミノピリジン、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、イミダゾリウムブロミド、イミダゾリウムクロリド、イミダゾリウムヨージド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムブロミド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムヨージド、またはそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項28】
COおよびエポキシドと前記触媒組成物との前記接触が、有機溶媒を含まない条件で行われ、b)の前記共触媒としての前記有機化合物が、テトラブチルアンモニウムブロミドから選択される、請求項27に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項29】
COおよびエポキシドと前記触媒組成物との前記接触が、ジクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、またはそれらの混合物から選択される有機溶媒の存在下で行われる、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項30】
前記有機溶媒がジクロロメタンである、請求項29に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項31】
COおよびエポキシドと前記触媒組成物との前記接触が、有機溶媒の存在下で行われ、b)の前記共触媒としての前記有機化合物が、4-ジメチルアミノピリジン、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、イミダゾリウムブロミド、イミダゾリウムクロリド、イミダゾリウムヨージド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムブロミド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムヨージド、またはそれらの混合物から選択される、請求項29または30に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項32】
COおよびエポキシドと前記触媒組成物との前記接触が、有機溶媒の存在下で行われ、b)の前記共触媒としての前記有機化合物が、4-ジメチルアミノピリジンから選択される、請求項31に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項33】
エポキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、1-ブテンオキシド、1-ヘキセンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロペンテンオキシド、エピクロロヒドリン、3,4-エポキシ-1-ブテン、または1,2-エポキシ-3-フェノキサプロパンから選択される、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項34】
エポキシドがエピクロロヒドリンである、請求項33に記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項35】
反応温度が65~150℃の範囲である、請求項11に記載の環状カーボネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、科学分野に関し、特に、COおよびエポキシドから環状カーボネートを製造するための触媒組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環状カーボネートは、ポリカーボネートやポリウレタン製造の前駆体として使用されるため、化学および高分子産業において非常に重要であり、貴重な化学物質ある。また、エチレンカーボネートとメタノールのエステル化反応から合成されるジメチルカーボネート(DMC)を経由したポリカーボネートジオール(PCDL)製造の前駆体としても使用される。このポリカーボネートジオールは、より優れた弾性率や機械的特性、耐候性、耐カビ性、耐酸化性、紫外線防止性が要求されるポリウレタンの製造に適している。
【0003】
さらに、環状カーボネートは、ポリウレタン産業など、高分子産業の多くの物質の製造に重要な化学物質でもある。環状カーボネート、すなわちエチレンカーボネートは、ヒドロキノンとのアルキル化反応により1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(HQEE)を製造し、耐薬品性や熱に対する耐性、自動車タイヤ製造に用いる高強度のポリウレタン製造のスペーサーとして使用されている。ポリエステル産業では、エチレンカーボネートを使用して、シアヌル酸とのN-アルキル化反応により1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)を合成し、電線の被覆に適した耐腐食特性を持つポリエステル樹脂の生産に架橋剤としても使用される。
【0004】
一方、環状カーボネートは、ポリマーの特性を向上させるためにポリマーに直接使用される化学物質としてもよく知られている。例えば、エチレンカーボネートの添加は、コンベヤベルトの製造に使用される材料であるポリエチレンテレフタレートポリエステルの特性を向上させることを目的とする。得られた材料は、耐薬品性特性が向上し、劣化速度が低下していることがわかった。プロピレンカーボネートの添加は、ポリウレタンフォームの合成に適したポリ(エチレンテレフタレート)の表面特性を改善し、ラミネートフォームシートの製造にさらに使用するのに役立つ。さらに、環状カーボネートは、高吸水性ポリマー(SAP)の架橋剤として直接使用することができ、環状カーボネートは、液体吸着能力を向上させ、材料の形状や構成を保持するために外力を好適に支持できる外殻として覆うために架橋を構築して反応する。また、外力によって材料内部に吸着している液体が放出されるのを抑えることができる。このような特性を持つポリマーは、一般的におむつ製品の製造に使用されている。
【0005】
環状カーボネート、特にエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートは、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミドなどの極性非プロトン溶媒よりも毒性が低く、低蒸気圧、高引火点、環境に優しいため、ポリマー産業以外にも、極性非プロトン溶媒として広く使用される。環状カーボネートは、高い誘電率と良好なリチウム調整能力を有することから、携帯電化製品および電気自動車に広く使用されているリチウムイオン電池の電解質組成物として使用される。また、染料、医薬品、化粧品、特にパーソナルケア製品などの下流化学品の製造または合成の媒体としても使用される。さらに、環状カーボネートは、燃料添加剤としても使用することができる。
【0006】
従来、環状カーボネートは、ホスゲンとエチレングリコールからエチレンカーボネートを合成する等、ホスゲンから合成することが可能であった。このホスゲンを前駆体とする合成プロセスは、ホスゲンが毒性の高い物質であることから、危険なプロセスである。そこで、ホスゲンの代わりに他の前駆体から環状カーボネートを合成するプロセスを開発・発明した。
【0007】
しかしながら、二酸化炭素ガスは、低毒性、低コスト、および再生可能資源であることから、燃料および有価化学物質製造の前駆体として普及しているC1ビルディングブロックの重要な炭素源とみなされていることはよく知られていることである。したがって、二酸化炭素は、環状カーボネートの合成の前駆体として使用されており、特に、特許文献DE740,366に最初に開示された二酸化炭素およびエポキシドの反応から環状カーボネートを合成することが行われている。この合成プロセスの利点は、化学プロセス変換の原子効率が100%であることである。つまり、前駆体のすべての原子が生成物に変換される。このため、この反応による合成プロセスは、二酸化炭素を環状カーボネート生成物の形で捕捉し、貯蔵するのに有効である。二酸化炭素およびエポキシドからの環状カーボネートの合成プロセスは、1950年にHuntsman社によって初めて商業的に利用された(Catalysis ApplicationsスラッシュChimica Oggi-Chemistry Today,2012,30,3-5)。
【0008】
二酸化炭素およびエポキシドからの環状カーボネートを合成するプロセスを初めて開示した特許文献DE740,366では、当該プロセスで使用した触媒はアルカリ処理活性炭で、エチレンカーボネートの合成に効率的であった。エチレンカーボネート生成物の収率は最大で90%であった。しかしながら、特許文献US2,667,497Aには、特許文献DE740,366に開示された合成工程からのエチレンカーボネート生成物の収率について開示されている。それによると、得られた収率は約34%であることが判明している。さらに、当該特許文献には、環状カーボネートの合成に固体ハロゲン化マグネシウムまたはハロゲン化カルシウムを触媒として使用することも開示されている。しかしながら、その反応条件は、温度が150~250℃の範囲、圧力が500~2,000psiの範囲と、かなり極端なものであった。
【0009】
現在、産業界における二酸化炭素およびエポキシドからの環状カーボネートの合成プロセスは、100℃以上の温度と20bar以上の圧力で行われる(または運転される;operated)。当該プロセスで使用される市販の触媒は、4級アンモニウム塩および4級ホスホニウム塩であり(Catalysis ApplicationsスラッシュChimica Oggi-Chemistry Today,2012,30,3-5)、例えば、バイエル社のテトラエチルアンモニウムブロミド触媒および三菱社のテトラブチルホスホニウムヨージド触媒を用いて二酸化炭素およびエチレンオキシドからエチレンカーボネートを合成するプロセス(Catalysis Science&Technology,2012,2,1480-1484)が知られている。しかしながら、これらの触媒は環状カーボネートに対して良好な選択性を示すものの、非常に厳しい条件下で行う必要がある。そこで、二酸化炭素およびエポキシドから環状カーボネートを合成するプロセスにおいて、良好な触媒効率と環状カーボネートへの高い選択性を維持できるマイルドな条件下での触媒の研究・開発が行われている。
【0010】
以上の目的から、二酸化炭素およびエポキシドから環状カーボネートを製造するための触媒系として、ルイス酸触媒とルイス塩基性触媒の2組成からなる触媒系が開発された。そこで、カチオン性金属錯体をルイス酸触媒として、テトラブチルアンモニウムハライド(TBAX)、イミダゾリウムハライド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムハライド(PPNX)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等のルイス塩基性共触媒とともに採用した。
【0011】
特許文献US6,870,004B1には、N,N’-ビス(サリチリデン)ジアミン(またはサレン)配位子(またはリガンド;ligand)を含む金属錯体を触媒として用い、ジメチルアミノピリジン(DMAP)をルイス系共触媒とし、穏やかな条件で二酸化炭素およびエポキシドから環状炭カーボネートを合成することが開示されている。その結果、非常に高い収率で環状カーボネートが得られることがわかった。ロバート・L・パドック(Robert L.Paddock)ら(Journal of the American Chemical Society,2001,123,11498-11499)は、サレン配位子を有するクロム金属錯体とジメチルアミノピリジン(DMAP)を共触媒として用い、温和な条件で二酸化炭素およびエポキシドから環状カーボネートを合成することを開示している。
【0012】
特許文献1(CN101679343B)には、二量体アルミニウム(サレン)錯体を触媒として用い、テトラブチルアンモニウムブロミドを共触媒として、温和な条件で二酸化炭素およびエポキシドから環状カーボネートを合成することが開示されている。その結果、非常に高い収率で環状カーボネートが得られることがわかった。
【0013】
Punnamchandar Ramidiら(Industrial & Engineering Chemistry Research,2011,50,7800-7807)は、環状アミド配位子を有するクロム錯体を触媒として、ジメチルアミノピリジン(DMAP)などのルイス系共触媒とともに、二酸化炭素およびエポキシドから環状カーボネートを合成することを開示している。この触媒を用いた環状カーボネートの合成に適した操作条件は、温度180℃、二酸化炭素の圧力450psigであることを見出した。これにより、プロピレンオキシドを最大100%の収率で合成することができた。
【0014】
Maximilian Tiffnerらは、金属コロール錯体を触媒として用い、テトラブチルアンモニウムブロミドを共触媒として併用し、温和な条件で二酸化炭素およびエポキシドから環状カーボネートを合成することを開示している。この触媒は、二酸化炭素の大気圧条件下で環状カーボネートの合成に良好な効率を有することが見出された。
【0015】
Mariachiara Cozzolinoら(Dalton Transactions,2018,47,13229-13238)は、二酸化炭素大気圧条件20bar、温度100℃、操作時間16時間において、テトラブチルアンモニウムブロミドとともに、サレン、サラン、およびサラレン配位子を含む鉄金属錯体を触媒として用いて、二酸化炭素およびエポキシドから環状カーボネートを合成することを開示した。その結果、サラン配位子を含む鉄金属錯体が最も触媒能が高く、次いでサレン配位子、サラレン配位子であることが判明した。
【0016】
Xiang Zhangら(Tetrahedron Letters,2008,49,6589-6592)は、温和な条件下で親電子中心と求核中心が結合した複合触媒系を用いて、二酸化炭素とエポキシドから環状カーボネートを合成することを開示している。これには、無溶媒条件下での環状カーボネートの合成も含まれる。この触媒系は、温度80℃、二酸化炭素圧力300psiで良好に運転できることが判明した。
【0017】
そこで、本発明は、COおよびエポキシドから温和な条件で環状カーボネートを合成するための触媒組成物を調製し、環状カーボネートへの選択性が良好で効率的に触媒を使用できるようにすることを目的とするものである。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、温和な条件下でCOおよびエポキシドからの環状カーボネートを製造するための触媒組成物であって、環状カーボネート合成を効果的に触媒し、環状カーボネートに良好な選択性を供することができる触媒組成物に関するものであり、触媒組成物は、以下のものを含むことを特徴としている。
a)構造(I)で示されるような金属錯体:
【化1】
[式中、
Mは、遷移金属原子を表す;
、R、およびRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、ヘテロ原子を含む環状炭化水素基、パーフルオロアルキル基、またはニトロ基から選択される独立した基を表す;
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、またはフェニレン基から選択される基を表す;
Xは、ハロゲン原子、酢酸基、またはトリフラート基から選択される基を表す];および
b)共触媒(または助触媒;co-catalyst)として、窒素を含む化合物、4級アンモニウム塩の化合物、またはイミニウム塩の化合物から選択される有機化合物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、温和な条件下でCOおよびエポキシドから環状カーボネートを製造するための触媒組成物に関し、本発明による触媒は、環状カーボネートに対する選択性が良く、環状カーボネートの合成を効率的に触媒することができ、以下の実施形態に従って本発明による触媒を説明することができる。
【0020】
なお、本明細書において説明される任意の態様は、特に断らない限り、この発明の他の態様への適用を含むことを意味する。
【0021】
本書で使用される専門用語や科学用語は、特に断らない限り、当業者に理解されるような定義がなされています。
【0022】
本明細書に記載されている道具、装置、方法、または化学物質は、本発明のみに特有の道具、装置、方法、または化学物質であることを特に明記しない限り、当業者が普通に操作または使用する道具、装置、方法、または化学物質を意味する。
【0023】
特許請求の範囲または明細書において、単数形名詞または単数形代名詞を"comprising"とともに使用することは、「1つ」を意味し、「1つ以上」「少なくとも1つ」「1つ以上」をも含むことを意味する。
【0024】
本出願に開示されたすべての組成物および/または方法、ならびに特許請求の範囲は、本発明と著しく異なる実験を行うことなく、いかなる操作、性能、変更、または調整要因からも実施形態をカバーし、特許請求の範囲に特に記載がないものの当業者にとって本実施形態と同様の実用性と結果を有する物体を得ることを意図している。したがって、当業者にとって明らかな微修正や調整を含む、本実施形態と代替可能または類似の対象は、添付の請求項に現れるように、本発明の精神、範囲、および概念に留まると解釈されるべきである。
【0025】
本出願を通じて、用語「約」は、装置、方法、または装置または方法を使用する個人の任意の誤差から変化または逸脱し得る、本明細書に現れたまたは表現された任意の数を意味する。
【0026】
以下、本発明の実施形態は、本発明の任意の範囲を制限する目的で示されるものではない。
【0027】
本発明は、COおよびエポキシドからの環状カーボネートの製造のための触媒組成物に関し、環状カーボネートに対し良好な選択性で、環状カーボネートの合成を効率的に触媒することができ、上記触媒組成物は、
a)構造(I)で示される金属錯体:
【化2】
[式中、
Mは、遷移金属原子を表す;
、R、およびRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、ヘテロ原子を含む環状炭化水素基、パーフルオロアルキル基、またはニトロ基から選択される独立した基を表す;
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、またはフェニレン基から選択される基を表す;
Xは、ハロゲン原子、酢酸基、またはトリフラート基から選択される基を表す];および
b)共触媒として、窒素を含む化合物、4級アンモニウム塩の化合物、またはイミニウム塩の化合物から選択される有機化合物、を含む触媒組成物。
【0028】
好ましくは、a)の金属錯体において、Mは、クロム、コバルト、または鉄から選択される遷移金属原子を表す。より好ましくは、Mは、クロム金属原子である。
【0029】
本発明の一態様では、a)の金属錯体において、R、R、およびRは、水素原子、ハロゲン原子、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、1~4個の炭素原子を有するアルケニル基、1~4個の炭素原子を有するアルキニル基、1~4個の炭素原子を有するアルコキシ基、アミン基、フェニル基、ベンジル基、ヘテロ原子を含む環状炭化水素基、パーフルオロアルキル基、またはニトロ基から選択される独立した基を表す。
【0030】
本発明の一態様では、a)の金属錯体において、R、R、およびRは、水素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、フェニル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、またはニトロ基から選択される独立した基を表す。好ましくは、RおよびRはtert-ブチル基であり、Rは水素原子である。
【0031】
本発明の一態様では、a)の金属錯体において、Rは2~3個の炭素原子を有するアルキレン基、6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、またはフェニレン基から選択される基を表す。
【0032】
本発明の一態様では、a)の金属錯体において、Rはエチレン基、1,3-プロピレン基、1,2-シクロヘキシレン基、または1,2-フェニレン基から選択される基を表す。好ましくは、a)の金属錯体において、Rはエチレン基から選択される基である。
【0033】
本発明の一態様では、a)の金属錯体において、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、酢酸基、またはトリフラート基から選択される基を表すが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の一態様では、a)の前記金属錯体が、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、またはN-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミノ金属(III)クロリド、から選択される。
【0035】
本発明の一態様において、a)の金属錯体は、金属塩前駆体とN-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ジアミン配位子およびその誘導体との反応から合成することができ、金属塩と配位子との反応のモル比は、1:1~1:2の範囲にあることが望ましい。
【0036】
本発明の一態様において、a)の金属錯体の発明のためのクロム金属塩前駆体は、限定されないが、塩化クロム(III)(CrCl)、塩化クロム(III)テトラヒドロフラン(CrCl(THF))、塩化クロム(II)(CrCl)、塩化クロム(III)六水和物(CrCl6HO)、臭化クロム(CrBr)、ヨウ化クロム(CrI)、酢酸クロム(Cr(C)、またはトリフラート(Cr(CFSO)から選択することができる。好ましくは、a)の金属錯体の本発明のためのクロム金属塩前駆体は、塩化クロム(III)テトラヒドロフラン(CrCl(THF))または塩化クロム(II)(CrCl)から選択される。
【0037】
本発明の一態様において、a)の金属錯体の発明のためのコバルト金属塩前駆体は、塩化コバルト(II)(CoCl)、塩化コバルト(II)六水和物(CoCl 6HO)、臭化コバルト(II)(CoBr)、ヨウ化コバルト(II)(CoI)、酢酸コバルト(Co(CHCO)、またはトリフラートコバルト(Co(CFSO)から選択することができるが、これらに限定されない。好ましくは、a)の金属錯体の本発明のためのコバルト金属塩前駆体は、塩化コバルト(II)(CoCl)より選択される。
【0038】
本発明の一態様において、a)の金属錯体の発明のための鉄金属塩前駆体は、塩化鉄(III)(FeCl)、塩化鉄(III)六水和物(FeCl6HO)、臭化鉄(FeBr)、ヨウ化鉄(FeI)、酢酸鉄(Fe(C)、またはトリフラート鉄(Fe(CFSO)から選択され得るが、これらに限定されるものではない。好ましくは、a)の金属錯体の本発明のための鉄金属塩前駆体は、塩化鉄(III)(FeCl)から選択される。
【0039】
本発明の一態様において、
N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ジアミン配位子およびその誘導体は、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-プロパン-1,3-ジアミン、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル、5-メトキシエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル、5-ニトロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル、5-クロロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル、5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル、5-メトキシエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル、5-ニトロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル、5-クロロエチレンサリチリデン)-ベンゼン-1,2-ジアミン、
N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3,5-ジ-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(5-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル,5-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-メトキシエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-ニトロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-tert-ブチル,5-クロロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル、5-トリフルオロメチルエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル、5-メトキシエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-N’-ビス(3-メチル、5-ニトロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、またはN-N’-ビス(3-メチル、5-クロロエチレンサリチリデン)-シクロヘキサン-1,2-ジアミンから選ばれるが、それらに限定されるものではない。
【0040】
本発明の一態様において、b)における共触媒としての有機化合物は、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、テトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)、イミダゾリウムブロミド、イミダゾリウムクロリド、イミダゾリウムヨージド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムブロミド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムヨージド、またはそれらの混合物から選択される。
【0041】
本発明の別の態様では、本発明は、COとエポキシドから環状カーボネートを製造するプロセスであって、50~180℃の範囲の温度でのCOおよびエポキシドを触媒組成物に接触させることを含み、触媒組成物は、上述の組成物から選択されることを特徴とするプロセスに関する。
【0042】
本発明の一態様では、a)の金属錯体とb)の共触媒としての有機化合物のモル比は1:0.5~1:300の範囲であり、a)の金属錯体とエポキシド類のモル比は1:100~1:20000の範囲であり、二酸化炭素圧力は15~600psiの範囲にある。
【0043】
好ましくは、環状カーボネート製造プロセスは、65~150℃の範囲の温度で行われ、a)の金属錯体とb)の共触媒としての有機化合物のモル比は1:0.5~1:200の範囲であり、a)の金属錯体とエポキシド類のモル比は1:1000~1:20000の範囲であり、二酸化炭素圧力は、15~300psiの範囲にある。
【0044】
本発明の一態様では、触媒組成物へのCOおよびエポキシドとの接触が、有機溶媒を含まない(または無溶媒、または有機溶媒フリー、または有機溶媒を有さない;organic solvent-free)条件で操作され、b)における共触媒としての有機化合物は、
4-ジメチルアミノピリジン、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、イミダゾリウムブロミド、イミダゾリウムクロリド、イミダゾリウムヨージド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムブロミド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムヨージド、またはそれらの混合物から選択される。好ましくは、b)の共触媒としての有機化合物は、テトラブチルアンモニウムブロミドである。
【0045】
本発明の一態様では、COおよびエポキシドと触媒組成物との接触が、ジクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、またはそれらの混合物から選択される有機溶媒の存在下で行われる。好ましくは、有機溶媒はジクロロメタンである。
【0046】
本発明の一態様において、COおよびエポキシドと触媒組成物との接触は、有機溶媒の存在下で行われ、b)の共触媒としての有機化合物は、4-ジメチルアミノピリジン、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、イミダゾリウムブロミド、イミダゾリウムクロリド、イミダゾリウムヨージド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムブロミド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムヨージド、またはそれらの混合物から選択される。好ましくは、b)の共触媒としての有機化合物は、4-ジメチルアミノピリジンである。
【0047】
本発明の一態様において、エポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、1-ブテンオキシド、1-ヘキセンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロペンテンオキシド、エピクロロヒドリン、3,4-エポキシ-1-ブテン、または1,2-エポキシ-3-フェノキサプロペンから選択される。好ましくは、エポキシドはエピクロロヒドリンである。
【0048】
本発明によるCOとエポキシドからの環状カーボネート製造は、必要に応じて乾燥工程をさらに含んでもよく、工程は、攪拌乾燥または真空乾燥などから選択されてもよいが、これらに限定されない。
【0049】
一態様において、本発明によるCOとエポキシドからの環状カーボネート製造は、反応器で操作してもよいが、固定床反応器に限定されるものではない。操作は、バッチ式または連続式で行われてもよい。
【0050】
以下の実施例は、本発明の一態様を示すためのものであり、何ら本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0051】
実施例1:N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ジアミン配位子及び当該配位子を含む金属錯体触媒の合成に用いるその誘導体の合成
【0052】
触媒Aの合成に使用する配位子の合成
7-ヒドロキシ-1-インダノン0.30g(2mmol)をエタノール3mLに溶かし、0.67M濃度のエタノール中7-ヒドロキシ-1-インダノン溶液を調製した。次に、当該溶液に1,2-エチレンジアミンを添加した。このとき、7-ヒドロキシ-1-インダノンと1,2-エチレンジアミンのモル比は、2:1であった。その後、酢酸を1~2滴程度添加した。得られた混合物を48時間還流するまで加熱しながら攪拌した。その後、得られた混合物を濾過し、固体を分離した。得られた固体を10mLのジエチルエーテルで3回洗浄した。N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン配位子を黄色い固体として得た。
【0053】
触媒Bの合成に使用する配位子の合成
触媒Bの合成に用いる配位子の合成は、触媒Aの合成に用いる配位子の合成と同様の方法で調製した。
【0054】
触媒Cの合成に使用する配位子の合成
4,6-ジ-tert-ブチル-7-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-1-インダノン0.52g(2mmol)をエタノール3mLに溶かし、0.67M濃度のエタノール中4,6-ジ-tert-ブチル-7-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-1-インダノン溶液を調製した。次いで、当該溶液に1,2-エチレンジアミンを添加した。このとき、4,6-ジ-tert-ブチル-7-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-1-インダノンと1,2-エチレンジアミンのモル比は2:1であった。その後、酢酸を1~2滴程度添加した。得られた混合物を48時間還流するまで加熱しながら攪拌した。その後、得られた混合物を濾過し、固体を分離した。得られた固体を10mLのジエチルエーテルで3回洗浄した。N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ配位子を黄色固体として得た。
【0055】
実施例2:N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ジアミン配位子及びその誘導体を含む金属錯体触媒の合成
【0056】
触媒Aの合成
0.20g(0.62mmol)のN-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ配位子を10mLのトルエンに溶かし、濃度0.062M のトルエンの溶液を調製した。次に、塩化鉄(III)(FeCl3)およびトリエチルアミンをそれぞれ0.10g(0.62mmol)混合した。N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン配位子と塩化鉄(III)とトリエチルアミンのモル比は、1:1:2であった。その後、得られた混合物を攪拌しながら、窒素雰囲気下、温度100℃で還流まで12時間加熱した。得られた混合物をセライトで濾過した。その後、得られた溶液を真空下で蒸発させた。触媒Aは、赤褐色の固体として得られた。
【0057】
触媒Bの合成
0.10g(0.31mmol)のN-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ配位子をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、0.031M濃度のテトラヒドロフラン中のN-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ配位子溶液を調製した。次いで、当該溶液に水素化ナトリウム0.015g(0.62mmol)を混合し、室温で1時間攪拌した。次に、得られた混合物に0.12g(0.31mmol)の塩化クロム(III)テトラヒドロフラン(CrCl(THF))を混合した。N-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミン配位子と塩化クロム(III)テトラヒドロフランと水素化ナトリウムのモル比は、1:1:2であった。その後、得られた混合物を窒素雰囲気下、室温で12時間攪拌した。得られた混合物を濾過した。得られた固体を飽和塩化ナトリウム水溶液および水でそれぞれ洗浄した。その後、得られた固体を真空条件下で蒸発させた。触媒Bは、薄茶色の固体として得られた。
【0058】
触媒Cの合成
0.10g(0.18mmol)のN-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ配位子 をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、濃度0.018Mのテトラヒドロフラン中のN-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ配位子溶液を調製した。次いで、当該溶液に水素化ナトリウム0.0088g(0.37mmol)を混合し、室温で1時間攪拌した。次に、得られた混合物に塩化クロム(III)テトラヒドロフラン(CrCl(THF))0.068g(0.18mmol)を混合させた。N-N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルエチレンサリチリデン)-エタン-1,2-ジアミノ配位子 と塩化クロム(III)テトラヒドロフラン と水素化ナトリウムのモル比は1:1:2であった。その後、得られた混合物を窒素雰囲気下、室温で12時間攪拌した。得られた混合物を濾過した。得られた固体を飽和塩化ナトリウム水溶液および水でそれぞれ洗浄した。その後、得られた固体を真空条件下で蒸発させた。触媒Cは、薄茶色の固体として得られた。
【0059】
実施例3:CO とエポキシドとの反応による環状カーボネートの調製
触媒A、B、Cである本発明によるN-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ジアミン配位子およびその誘導体を含む金属錯体触媒は、金属錯体REFCAT1である比較触媒と比較するために、COとエポキシドの間の反応から環状カーボネート生成の能力をテストされる。REFCAT2、REFCAT3は、それぞれ
N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミノ鉄(III)クロリド、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-ジフェニルエチレンジアミノクロニウム(III)クロリド、およびN,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)ピロリジンジアミノクロニウム(III)クロリドである。
【0060】
有機溶媒の存在下での本発明による触媒の環状カーボネート生産における能力に関する試験
本発明によるN-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ジアミン配位子およびその誘導体を含む金属錯体触媒の有機溶媒存在下での環状カーボネート製造における能力試験は、以下の工程に従って実施することができる。
【0061】
金属錯体触媒0.02mmol、共触媒としての有機化合物0.02mmol、エポキシド26.66mmol、および有機溶媒0.25~1mLを反応器に添加した。次に、COを100psiの圧力で反応器に添加した。反応器を65~110℃の温度で1~24時間加熱した。設定時間に達した後、反応器の温度を室温まで下げた。得られた生成物は環状カーボネートであり、これはNMR分光分析技術によって同定されるであろう。
【0062】
有機溶媒を含まない条件下での本発明による触媒の環状カーボネート製造における能力試験
本発明によるN-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ジアミン配位子およびその誘導体を含む金属錯体触媒の有機溶媒を含まない条件下での環状カーボネート製造における能力テストは、以下の工程に従って行うことができる。
【0063】
金属錯体触媒0.02mmol、共触媒として有機化合物0.06~4mmol、およびエポキシド100~400mmolを反応器に添加した。次に、COを300psiの圧力で反応器内に添加した。反応器を80~120℃の温度で0.25~6時間加熱した。設定時間に達した後、反応器の温度を室温まで下げた。得られた生成物は環状カーボネートであり、NMR分光分析技術によって同定されるであろう。
【0064】
金属錯体触媒を含まないおよび有機溶媒を含まない条件下での環状カーボネート製造における能力試験
金属錯体触媒を含まないおよび有機溶媒を含まない条件での環状カーボネート生産能力試験は、金属錯体触媒を添加する以外は、有機溶媒を含まない条件での環状カーボネート生産能力試験と同じ工程で行うことができる。
【0065】
本発明による触媒の構造
合成したN-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ジアミン配位子およびその誘導体を含む金属錯体触媒の構造を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
比較触媒の構造
比較触媒REFCAT1、REFCAT2、REFCAT3は、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミノ鉄(III)クロリド、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1, 2-ジフェニルエチレンジアミノクロム(III)クロリド、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-ピロリジンジアミノクロム(III)クロリドをそれぞれ調製した。比較触媒REFCAT1は、合成においてメタノールの代わりにトルエンを使用した以外は、Dalton Transactions,2018,47,13229-13238に開示されている手順に従って合成した。この合成された触媒REFCAT1は、本発明による触媒と同じプロセスによって環状カーボネート製造における能力を試験された。一方、比較触媒REFCAT2およびREFCAT3は、それぞれJournal of the American Chemical Society,2001,123,11498-11499およびTetrahedron Letters,2008,49,6589-6592で先に開示された触媒である。3つの比較用触媒の構造を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
環状カーボネートの生成
本発明によるN-N’-ビス(エチレンサリチリデン)-ジアミン配位子を含む金属錯体触媒及びその誘導体である触媒A、B、CのCOとエポキシドの反応から環状カーボネート生成に対する触媒能力を比較触媒REFCAT1、REFCAT2、REFCAT3に対する触媒能力と比較して表3に示した。本発明による触媒は、比較触媒であるREFCAT1、REFCAT2、及びREFCAT3よりも環状カーボネート生成に対する触媒能力が高く、環状カーボネートの収率が短時間で高くなることが分かった。このことから、本発明による触媒は、これら3つの比較用触媒よりも環状カーボネート生成に対する触媒能が優れていることがわかる。さらに、本発明による触媒の合成工程は、比較触媒であるREFCAT3と比較して容易かつ安価である。
【0070】
【表3-1】
【0071】
【表3-2】
【0072】
【表4】
【0073】
本発明のベストモードまたは好ましい実施形態
本発明のベストモードまたは好ましい実施形態は、本発明の説明に提供される通りである。