(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】原子炉についての高速中性子フルエンスを測定するためのシステム、関連する設備、測定方法およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
G21C 17/108 20060101AFI20241101BHJP
G01T 3/00 20060101ALI20241101BHJP
G21C 17/00 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
G21C17/108 100
G01T3/00 D
G21C17/108 300
G21C17/00 500
(21)【出願番号】P 2022540738
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(86)【国際出願番号】 FR2020052636
(87)【国際公開番号】W WO2021136915
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-12-18
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・デュマザート
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン・マーニュ
(72)【発明者】
【氏名】ロメン・クロン
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ラフォン
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-122444(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146820(WO,A1)
【文献】特開2018-179815(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0001116(US,A1)
【文献】Pierre Ferdinand, et al.,Enhancing safety in nuclear power plants with optical fiber sensors,Conference: International Conference on Fast Reactors and related fuel cycles - safe technologies and sustainable scenarios (FR13),2013年03月,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
21/17-21/61
G01T 1/00- 1/16
1/167-7/12
G21C 17/00-17/14
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉のための、高速中性子フルエンスを測定するためのシステム(2)であって、少なくとも1つの検出器(8)および各検出器(8)に接続された分析装置(10)を含み、
各検出器(8)は、
中性子捕獲によって、二次ドーパントに変換することができる一次ドーパントを含む光導波路(16)であって、前記二次ドーパントは前記一次ドーパントとは異なる原子番号を有し、前記二次ドーパントは安定しており、前記一次ドーパントより中性子吸収性が少ない、光導波路と、
高速中性子を減速させるのに適しており、前記光導波路(16)と炉容器(6)の壁(4)の外面(14)との間に配置されるように意図された減速層(18)と、
を含み、
前記分析装置(10)は、各検出器(8)について、
前記二次ドーパントが吸収ピークを有する二次波長を有する二次質問波を、対応する光導波路(16)へ注入し、前記二次波長と前記一次ドーパントの吸収ピークに対応する波長との間の最小差は第1の所定の最小差以上であり、
前記二次質問波から対応する光導波路(16)によって放出される二次応答波を検出し、
対応する光導波路(16)内の二次ドーパントの濃度に関する情報を、前記検出された二次応答波から計算し、
前記二次ドーパントの計算された濃度に関する情報、および前記原子炉に関する変換データに基づいて、所定の二次期間に前記容器(6)の前記壁(4)が受ける高速中性子フルエンスを決定するように構成されていることを特徴とする、システム(2)。
【請求項2】
前記一次ドーパントはツリウムおよび/またはユーロピウムであり、前記二次ドーパントはそれぞれ、イッテルビウムまたはサマリウムである、請求項1に記載の測定システム(2)。
【請求項3】
前記減速層(18)と前記容器(6)の前記壁(4)の前記外面(14)との間に配置されるように意図された熱中性子バリア層(20)をさらに含み、前記熱中性子バリア層(20)は好ましくはカドミウム製である、請求項1または2に記載の測定システム(2)。
【請求項4】
前記分析装置は、各検出器について、時間領域反射計測または周波数領域反射計測によって、前記検出された二次応答波から、前記二次波長での、対応する光導波路(16)の減衰プロファイルを、前記光導波路(16)に沿った位置にしたがって決定するように構成され、
前記分析装置(10)は、前記決定された二次波長での前記減衰プロファイルから前記二次ドーパントの濃度に関する前記情報を計算するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項5】
前記分析装置(10)はまた、各検出器(8)について、
前記二次波長に関連する前記吸収ピークのそれぞれの足部に対応する相補的二次波長をそれぞれが有する1つまたは2つの光学的相補的二次質問波を、対応する光導波路(16)へ注入し、
各相補的二次質問波について、対応する光導波路(16)によって放出される対応する相補的二次応答波を検出し、
時間領域反射計測または周波数領域反射計測によって、検出された各相補的二次応答波から、前記相補的二次波長での、対応する光導波路(16)の減衰プロファイルを、前記光導波路(16)に沿った位置にしたがって決定するように構成され、
前記分析装置(10)は、各相補的二次波長に関連する前記減衰プロファイルによる前記二次波長での前記減衰プロファイルの補正の結果から前記二次ドーパントの濃度に関する前記情報を計算するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項6】
前記分析装置(10)は、各検出器(8)について、前記二次ドーパントに関連する二次蛍光スペクトルバンドにおいて、対応する光導波路(16)によってその全長にわたって放出される蛍光の二次総量を、前記検出された二次応答波から決定するように構成され、対応する光導波路(16)内の前記二次ドーパントの濃度に関する前記情報は前記総二次量から計算される、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項7】
各検出器について、前記一次ドーパントは、光子による照射によって三次ドーパントに変換することもでき、前記三次ドーパントは前記一次ドーパントと同じ原子番号を有するが、原子価が異なり、
前記分析装置(10)はまた、各検出器(8)について、
前記三次ドーパントが吸収ピークを有する三次波長を有する光学的三次質問波を、対応する光導波路(16)へ注入し、前記三次波長は、前記三次波長と前記一次ドーパントまたは前記二次ドーパントの吸収ピークに対応する波長との間の最小差が第3の所定の最小差以上であるようなものであり、
前記三次質問波から対応する光導波路(16)によって放出される三次応答波を検出し、
三次ドーパントの濃度に関する情報を、前記検出された三次応答波から計算し、
前記三次ドーパントの濃度に関する前記情報、および前記変換データに基づいて、所定の三次期間に前記容器(6)の前記壁(4)によって吸収される光子放射線の線量を決定するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項8】
前記三次ドーパントは二価ツリウムおよび/または二価ユーロピウムであり、前記一次ドーパントはそれぞれ、三価ツリウムまたは三価ユーロピウムである、請求項7に記載の測定システム(2)。
【請求項9】
前記分析装置(10)は、各検出器(8)について、時間領域反射計測または周波数領域反射計測によって、前記検出された三次応答波から、前記三次波長での対応する光導波路(16)の減衰プロファイルを、前記光導波路(16)に沿った位置にしたがって決定するように構成され、
前記分析装置(10)は、前記三次波長での前記減衰プロファイルから前記三次ドーパントの濃度に関する前記情報を計算するように構成されている、請求項7または8に記載の測定システム(2)。
【請求項10】
前記分析装置(10)はまた、各検出器(8)について、
前記三次波長に関連する前記吸収ピークのそれぞれの足部に対応する相補的三次波長をそれぞれが有する1つまたは2つの光学的相補的三次質問波を、対応する光導波路(16)へ注入し、
各相補的三次質問波について、前記光導波路(16)によって放出される対応する相補的三次応答波を検出し、
時間領域反射計測または周波数領域反射計測によって、検出された各相補的三次応答波から、前記相補的三次波長での、対応する光導波路(16)の減衰プロファイルを、前記光導波路(16)に沿った位置にしたがって決定するように構成され、
前記分析装置(10)は、各相補的三次波長に関連する前記減衰プロファイルによる前記三次波長での前記減衰プロファイルの補正の結果から前記三次ドーパントの濃度に関する前記情報を計算するように構成されている、請求項7から9のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項11】
前記分析装置(10)は、各検出器(8)について、前記三次ドーパントに関連する三次蛍光スペクトルバンドにおいて、対応する光導波路(16)によってその全長にわたって放出される蛍光の総三次量を、前記検出された三次応答波から決定するように構成され、対応する光導波路(16)内の前記三次ドーパントの濃度に関する前記情報は前記総三次量から計算される、請求項7から10のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項12】
原子炉および請求項1から11のいずれか一項に記載の測定システム(2)を含む設備であって、各検出器(8)は前記原子炉の容器(6)の壁(4)の外面(14)上に配置され、各検出器(8)について、前記減速層(18)は対応する光導波路(16)と前記外面(14)との間に配置されている、設備。
【請求項13】
原子炉のための、高速中性子フルエンスを測定するための方法であって、
中性子捕獲によって、二次ドーパントに変換することができる一次ドーパントを含む光導波路(16)であって、前記二次ドーパントは前記一次ドーパントとは異なる原子番号を有し、前記二次ドーパントは安定しており、前記一次ドーパントより中性子吸収性が少ない、光導波路と、
高速中性子を減速させるのに適しており、前記光導波路(16)と炉容器(6)の壁(4)の外面(14)との間に配置された減速層(18)と、
を含む少なくとも1つの検出器(8)を実装し、
前記測定方法は、各検出器(8)について、
前記二次ドーパントが吸収ピークを有する二次波長を有する二次質問波を、対応する光導波路(16)へ注入するステップであって、前記二次波長と前記一次ドーパントの吸収ピークに対応する波長との間の最小差は所定の最小差以上である、ステップと、
前記二次質問波から対応する光導波路(16)によって放出される二次応答波を検出するステップと、
対応する光導波路(16)内の二次ドーパントの濃度に関する情報を、前記検出された二次応答波から計算するステップと、
前記二次ドーパントの計算された濃度に関する前記情報、および前記原子炉に関する変換データに基づいて、所定の二次期間に前記容器(6)の前記壁(4)が受ける高速中性子フルエンスを決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
コンピュータによって実行されると、請求項13に記載の測定方法の計算および決定ステップを実行するプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速中性子フルエンスを測定するためのシステムに関する。本発明はまた、このような測定システムを含む設備、このような高速中性子フルエンスを測定するための方法、および関連するコンピュータプログラム製品に関する。
【0002】
本発明は、炉用の核計装の分野、より詳細には炉心外中性子測定(すなわち炉心を収容する容器の外側)に適用される。
【背景技術】
【0003】
加圧水型原子炉(Pressurised Water Reactor、PWR)は、約40年の最小稼働寿命(おそらく60年に達する)の間稼働するように設計されている。
【0004】
従来、このような原子炉は、鋼製の壁を含み原子炉の炉心を収容する容器を含む。しかしながら、この壁の鋼は、炉心によって生成される高速中性子とのその相互作用のため、炉の稼働中に劣化し、これはこの鋼に原子変位を引き起こす。たとえば、容器内の高速中性子フルエンスは約1013n・cm-2・s-1(中性子毎平方センチメートル毎秒)であり、線量率は約107Gy/h(グレイ毎時間)である。
【0005】
「高速中性子」とは、本発明の意味において、1MeV(メガ電子ボルト)以上のエネルギーを有する中性子であると理解される。
【0006】
安全局、たとえばフランスにおけるASN(「Nuclear Safety Authority(原子力安全局)」の頭字語)によって課せられた基準にしたがって容器の壁の経年劣化を満足に推定するには、したがって、容器の壁が受ける高速中性子フルエンスを確実に測定することが要求される。
【0007】
この目的のため、アルミニウムケースに封入されたニオブフィルム線量計を使用してこのような測定を実行することが知られている。
【0008】
このような線量計は容器の外面上に配置され、炉心からの中性子放射によって活性化する。ニオブの93Nb(n,n’)93mNb反応は、鋼の劣化閾値(約0.9MeV)に匹敵するエネルギー活性化閾値を有し、このような線量計から決定されたデータは、壁が受ける高速中性子フルエンスをよく表すものである。さらに、準安定ニオブの半減期は16.1年であり、これにより炉に対する10年ごとの検査中に測定が可能になる。
【0009】
それにもかかわらず、このようなニオブフィルム線量計は完全に満足のいくものではない。
【0010】
実際、このような線量計は準定時的であるため、壁での高速中性子フルエンスの満足のいくマッピングを確立するため、多数のこれらを容器の壁に分散させることが一般に必要である。
【0011】
さらに、このような線量計からフルエンス情報を得るため、これらを収集し、次いで薄膜上でのガンマ測定に特化したサービスによって処理するために準備することが必要であり、これには長く慎重な、したがって高価な準備が要求される。最後に、その情報は10年ごとの検査でのみ入手可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、その使用および保守が簡単で、堅牢であり、動作コストが低い、所定の期間にわたって統合された高速中性子フルエンスの空間分布の製図用モニタリングを可能にする測定システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目標のため、本発明の目的は、少なくとも1つの検出器および各検出器に接続された分析装置を含む、前述のタイプの測定システムであり、各検出器は、
中性子捕獲によって、二次ドーパントに変換することができる一次ドーパントを含む光導波路であって、二次ドーパントは一次ドーパントとは異なる原子番号を有し、二次ドーパントは安定しており、一次ドーパントより中性子吸収性が少ない、光導波路と、
高速中性子を減速させるのに適しており、光導波路と炉容器の壁の外面との間に配置されるように意図された減速層と、
を含み、
分析装置は、各検出器について、
二次ドーパントが吸収ピークを有する二次波長を有する二次質問波を、対応する光導波路へ注入し、二次波長と一次ドーパントの吸収ピークに対応する波長との間の最小差は第1の所定の最小差以上であり、
二次質問波から対応する光導波路によって放出された二次応答波を検出し、
対応する光導波路内の二次ドーパントの濃度に関する情報を、検出された二次応答波から計算し、
二次ドーパントの計算された濃度に関する情報、および原子炉に関する変換データに基づいて、所定の二次期間に容器の壁が受ける高速中性子フルエンスを決定する、
ように構成されている。
【0014】
実際、一次ドーパントの濃度(製造者によって知られている)に関連して、二次ドーパントの濃度を測定することにより、炉の稼働中の中性子フルエンスの発達を、選択的に得ることが可能になる。二次波長の選択により、二次ドーパントの濃度へのアクセスは二次応答波を介してアクセス可能である。さらに、このような選択のおかげで、二次応答波への一次ドーパントの寄与はおそらく容易に差し引かれる。
【0015】
さらに、中性子吸収性が高く、子孫が安定している一次ドーパント、好ましくはツリウムおよび/またはユーロピウムを使用することにより、飽和することなく、長期間、通常60年にわたる連続稼働が可能になり、したがって炉の寿命中の検出器の交換が要求されない。
【0016】
さらに、照射条件がその内面よりは厳しくない、容器の壁の外面に検出器が配置されるが、このような測定システムは中性子フルエンスの信頼できる炉心内(すなわち容器内)測定を提供することができる。したがって、本発明による測定システムの展開により、炉心内計装より困難が少なくなる。
【0017】
また、導波路を使用することにより、この導波路のそれぞれに沿ったフルエンスプロファイルの決定が可能になる。したがって、時間にわたって統合された高速中性子フルエンスの空間分布の製図用モニタリングにアクセス可能になり、これにより、容器全体の経年劣化の研究、および中性子束の非対称性の検出が可能になる。
【0018】
本発明の他の有利な態様によれば、測定システムは、別個に、またはすべての技術的に可能な組み合わせで採用される、次の特徴の1つまたは複数を含み、すなわち、
一次ドーパントはツリウムおよび/またはユーロピウムであり、二次ドーパントはそれぞれ、イッテルビウムまたはサマリウムであり、
測定システムは、減速層と容器の壁の外面との間に配置されるように意図された熱中性子バリア層をさらに含み、熱中性子バリア層は好ましくはカドミウム製であり、
分析装置は、各検出器について、時間領域反射計測または周波数領域反射計測によって、検出された二次応答波から、二次波長での、対応する光導波路の減衰プロファイルを、その光導波路に沿った位置にしたがって決定するように構成され、分析装置は、決定された二次波長での減衰プロファイルから二次ドーパントの濃度に関する情報を計算するように構成され、
分析装置はまた、各検出器について、
二次波長に関連する吸収ピークのそれぞれの足部に対応する相補的二次波長をそれぞれが有する1つまたは2つの光学的相補的二次質問波を、対応する光導波路へ注入し、
各相補的二次質問波について、対応する光導波路によって放出される対応する相補的二次応答波を検出し、
時間領域反射計測または周波数領域反射計測によって、検出された各相補的二次応答波から、相補的二次波長での、対応する光導波路の減衰プロファイルを、その光導波路に沿った位置にしたがって決定する
ように構成され、
分析装置は、各相補的二次波長に関連する減衰プロファイルによる二次波長での減衰プロファイルの補正の結果から二次ドーパントの濃度に関する情報を計算するように構成され、
分析装置は、各検出器について、二次ドーパントに関連する二次蛍光スペクトルバンドにおいて、対応する光導波路によってその全長にわたって放出された蛍光の二次総量を、検出された二次応答波から決定するように構成され、対応する光導波路内の二次ドーパントの濃度に関する情報は総二次量から計算され、
各検出器について、一次ドーパントは、光子による照射によって三次ドーパントに変換することもでき、三次ドーパントは一次ドーパントと同じ原子番号を有するが、原子価が異なり、分析装置はまた、各検出器について、
三次ドーパントが吸収ピークを有する三次波長を有する光学的三次質問波を、対応する光導波路へ注入し、三次波長は、三次波長と一次ドーパントまたは二次ドーパントの吸収ピークに対応する波長との間の最小差が第3の所定の最小差以上であり、
三次質問波から対応する光導波路によって放出された三次応答波を検出し、
三次ドーパントの濃度に関する情報を、検出された三次応答波から計算し、
三次ドーパントの濃度に関する情報、および変換データに基づいて、所定の三次期間に容器の壁によって吸収された光子放射線の線量を決定する
ように構成され、
三次ドーパントは二価ツリウムおよび/または二価ユーロピウムであり、一次ドーパントはそれぞれ、三価ツリウムまたは三価ユーロピウムであり、
分析装置は、各検出器について、時間領域反射計測または周波数領域反射計測によって、検出された三次応答波から、三次波長での、対応する光導波路の減衰プロファイルを、その光導波路に沿った位置にしたがって決定するように構成され、分析装置は、三次波長での減衰プロファイルから三次ドーパントの濃度に関する情報を計算するように構成され、
分析装置はまた、各検出器について、
三次波長に関連する吸収ピークのそれぞれの足部に対応する相補的三次波長をそれぞれが有する1つまたは2つの光学的相補的三次質問波を、対応する光導波路へ注入し、
各相補的三次質問波について、光導波路によって放出される対応する相補的三次応答波を検出し、
時間領域反射計測または周波数領域反射計測によって、検出された各相補的三次応答波から、相補的三次波長での、対応する光導波路の減衰プロファイルを、その光導波路に沿った位置にしたがって決定する
ように構成され、
分析装置は、各相補的三次波長に関連する減衰プロファイルによる三次波長での減衰プロファイルの補正の結果から三次ドーパントの濃度に関する情報を計算するように構成され、
分析装置は、各検出器について、三次ドーパントに関連する三次蛍光スペクトルバンドにおいて、対応する光導波路によってその全長にわたって放出された蛍光の総三次量を、検出された三次応答波から決定するように構成され、対応する光導波路内の三次ドーパントの濃度に関する情報は総三次量から計算される。
【0019】
さらに、本発明の目的は、原子炉および上で定義したような測定システムを含む設備であり、各検出器は原子炉の容器の壁の外面上に配置され、各検出器について、減速層は対応する光導波路と外面との間に配置される。
【0020】
さらに、本発明の目的は、原子炉についての高速中性子フルエンスを測定するための方法であり、
中性子捕獲によって、二次ドーパントに変換することができる一次ドーパントを含む光導波路であって、二次ドーパントは一次ドーパントとは異なる原子番号を有し、二次ドーパントは安定しており、一次ドーパントより中性子吸収性が少ない、光導波路と、
高速中性子を減速させるのに適しており、光導波路と炉容器の壁の外面との間に配置された減速層と、
を含む少なくとも1つの検出器を実装し、
この測定方法は、各検出器について、
二次ドーパントが吸収ピークを有する二次波長を有する二次質問波を、対応する光導波路へ注入するステップであって、二次波長と一次ドーパントの吸収ピークに対応する波長との間の最小差は所定の最小差以上である、ステップと、
二次質問波から対応する光導波路によって放出された二次応答波を検出するステップと、
対応する光導波路内の二次ドーパントの濃度に関する情報を、検出された二次応答波から計算するステップと、
二次ドーパントの計算された濃度に関する情報、および原子炉に関する変換データに基づいて、所定の二次期間に容器の壁が受ける高速中性子フルエンスを決定するステップと、
を含む。
【0021】
さらに、本発明の目的は、コンピュータによって実行されると、上で定義したような測定方法の計算および決定ステップを実行するプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品である。
【0022】
非限定的な例としてのみ与えられ、添付の図面を参照して行われる、次の説明を使用して本発明はよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による測定システムを装備した原子炉容器の概略図である。
【
図2】
図1の容器および測定システムをより詳細に示す。
【
図3】
図1および
図2の測定システムの検出器における元素ツリウムおよびイッテルビウムの質量含有量の、時間の関数としての変化を示すグラフである。
【
図4】
図1および
図2の測定システムの検出器における元素ユーロピウムおよびサマリウムの質量含有量の、時間の関数としての変化を示すグラフである。
【
図5】
図1および
図2の測定システムの検出器から受信された応答信号の力の、時間の関数としての変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による測定システム2が
図1および
図2によって示されている。
【0025】
測定システム2は、原子炉(図示せず)の容器6の壁4が受ける中性子フルエンス、より具体的には高速中性子フルエンスを測定するように意図されている。容器6は炉の炉心9を収容している。
【0026】
従来、容器6は原子炉建屋11に収容され、断熱材料で作製されたエンベロープ13が容器6の壁4と原子炉建屋11の仕切り15との間に配置されている。
【0027】
測定システム2は、少なくとも1つの検出器8および各検出器8に接続された分析装置10を含む。特に、分析装置10は対応するオフセットファイバ12によって各検出器8に接続されている。
【0028】
これらの図によって示すように、各検出器8は、壁4の外面14上に配置されるように意図され、検出器8の近くで壁4が受ける高速中性子フルエンスに依存する応答を有するように構成されている。
【0029】
さらに、分析装置10は、好ましくは原子炉建屋11の外側に配置され、所定の二次期間にわたる上記高速中性子フルエンスを、各検出器8の応答から決定するように構成されている。
【0030】
検出器
検出器8は、「導波路」とも呼ばれる光導波路16、減速層18、および好ましくは、熱中性子バリア層20を含む。
【0031】
導波路
導波路16は、所定の波長範囲に属する波長、好ましくは少なくとも部分的に可視範囲に属する、および/または近赤外範囲における波長範囲を有する光を輸送および誘導するのに適している。
【0032】
特に、導波路16は光誘導ファイバである。たとえば、導波路16はシリカ光ファイバまたは結晶ファイバ、好ましくは酸化アルミニウムAl2O3結晶ファイバ(「サファイア」とも呼ばれる)、イットリウムアルミニウムガーネット(通常「YAG」と呼ばれる)、またはフッ化カルシウムCaF2である。このようなファイバは放射線に対して優れた耐性を有し、これは意図された用途にとって有利である。
【0033】
好ましくは、そして
図1に示すように、導波路16は、容器6の空間的広がりと同じ桁である長さを有し、好ましくは0.5mと20mとの間、たとえば1mと10mとの間である。これにより、壁4の拡張された領域にわたる中性子フルエンスプロファイル(または総中性子フルエンス)の決定が可能になり、これにより測定の意義が高まる。
【0034】
対応するオフセットファイバ12に接続された端部とは異なる、導波路16の遠位端56での反射を低減するため、上記遠位端56での指数適合が有利に実行される。この目的のため、光学指数が導波路16と同一である指標液体を上記遠位端で付着させることができ、そうでない場合この遠位端を斜めに(典型的な角度は8°)劈開または研磨することができる。
【0035】
導波路16は、熱中性子捕獲によって、二次ドーパントに変換することができる一次ドーパントを含む。このような変換反応は従来「(n,γ)反応」と呼ばれている。
【0036】
二次ドーパントは安定しており、一次ドーパントとは異なる原子番号を有する。また、二次ドーパントは一次ドーパントより中性子吸収性が少ない。
【0037】
「一次ドーパントより中性子吸収性が少ない二次ドーパント」により、本発明の意味において、二次ドーパントは、所与のエネルギーの中性子について一次ドーパントより小さい、特に熱中性子について、有利には少なくとも5倍小さい、好ましくは少なくとも10倍小さい、たとえば少なくとも20倍小さい熱中性子捕獲断面積を有することが理解される。
【0038】
第一次で、導波路16内の二次ドーパントの量が中性子捕獲による一次ドーパントの変換のみに依存し、その信頼できる指標を構成する限り、このような特徴は特に有利である。
【0039】
実際、測定システム2の動作中、炉心9から来て容器6の壁4を通過する中性子の影響下で、一次ドーパントは徐々に二次ドーパントに変換される。こうして得られた二次ドーパントは、安定しているため、核反応によって、その同位体の1つまたは他の化学元素へ自発的に変化しない。さらに、二次ドーパントは一次ドーパントより中性子吸収性が少なく、中性子の捕獲による、二次ドーパント(これはこれ自体が一次ドーパントの以前の反応から生じる)の変換の確率は非常に低い。さらに、二次ドーパントの濃度は低く(百万分率、ppm程度)、炉心9から来る光子の影響下の、二次ドーパントの還元の生成物の濃度は無視される。
【0040】
後述するように、各検出器8に問い掛けることによって、二次ドーパントの濃度に関する情報が得られ、この値は、使用時に検出器8によって見られる熱中性子フルエンスを示すものである。したがって、炉に関する所定の変換データを実行することによって、容器6の壁4が受ける高速中性子フルエンスが得られる可能性が高い。
【0041】
有利には、一次ドーパントはツリウム(Tmと表記)および/またはユーロピウム(Euと表記)である。
【0042】
ツリウムに対応する二次ドーパントはイッテルビウム(Ybと表記)である。さらに、ユーロピウムに関連する二次ドーパントはサマリウム(Smと表記)である。
【0043】
ツリウムは単一の同位体169Tmを有し、その変換は安定したイッテルビウム170170Ybにつながる。
【0044】
ツリウムは、25meVで112バーン、そして1MeVで7.4バーンの中性子捕獲断面積を有する。イッテルビウムの熱中性子捕獲断面積はツリウムより1桁小さい。
【0045】
ユーロピウムは、2つの天然同位体、151Euおよび153Euを、等しい比率で有する。ユーロピウムの変換は同位体152Smおよび148Smの形成につながり、これらの熱中性子捕獲断面積はユーロピウムの2から3桁下方である。
【0046】
151Euおよび153Euの25meVでの中性子捕獲断面積はそれぞれ9189バーンおよび367バーンであるが、1MeVでは約7バーンにすぎない。
【0047】
通常の炉心外中性子束に関して、ツリウムおよびユーロピウムの変換により数十年の期間にわたってこれらの濃度が大幅に変更されない限り、このような化学種は有利である。
【0048】
例として、シリカ光ファイバまたはサファイアファイバにおいて、ツリウムは酸化物Tm2O3の形で存在する一方、ユーロピウムは酸化物Eu2O3の形で存在する。
【0049】
例として、
図3は、ツリウムでドープされ、3×10
6n・cm
-2・s
-1に等しい熱化高速中性子束に曝露された検出器8内の元素ツリウム(曲線30)およびイッテルビウム(曲線32)の質量含有量の、時間の関数としての変化を示す。このような中性子束は通常PWR 1300炉の容器の壁の外面に広くあるものであり、その減速層18は約10cmの厚さを有する。
【0050】
この図に示すように、イッテルビウムの質量含有量はツリウムの変換により時間の経過とともに徐々に増加し、8%の一次ドーパントの濃度について、含有量が3年(9.46×107秒)の耐用年数後に約3.6ppb(parts per billion)、60年(1.89×109秒)の耐用年数後に約72ppbと推定される。その結果、ツリウムの質量含有量は、第一次で、検出器8の全寿命にわたって一定である。
【0051】
このような含有量は、本発明による測定システムによる測定と互換性がある。
【0052】
他の一例によれば、
図4は、ユーロピウムでドープされ、
図3の例と同じ中性子束に曝露された検出器8内の元素ユーロピウム(曲線34)およびサマリウム(曲線36)の質量含有量の、時間の関数としての変化を示す。
【0053】
この図は、サマリウムの質量含有量がユーロピウムの変換により時間の経過とともに徐々に増加することを示し、推定含有量は、8%の一次ドーパントの濃度について、3年の使用の期間後に約40ppb、そして60年の耐用年数後に約800ppbである。この場合、ユーロピウムの質量含有量は、第一次で、検出器8の全寿命にわたって一定である。
【0054】
このような含有量は、本発明による測定システムによる測定と互換性がある。
【0055】
有利には、一次ドーパントは、光子、特に高エネルギー光子(通常1キロ電子ボルトより大きい)、たとえばγ光子を照射することによって、三次ドーパントに変換することもできる。三次ドーパントは一次ドーパントと同じ原子番号を有するが、原子価が異なる。
【0056】
第一次で、導波路16内の三次ドーパントの量は高エネルギー光子の吸収による一次ドーパントの還元にのみ依存するので、これは特に有利である。結果として、導波路16内の三次ドーパントの量は吸収された光子放射線量の指標である。
【0057】
実際、測定システム2の動作中、炉心9から来て容器6の壁4を通過する光子(特にγ光子)の影響下で、一次ドーパントは、その生成物が三次ドーパントである還元を徐々に受ける。三次ドーパントの後続の変換の生成物の濃度は、この生成物の出現により、それぞれが低い確率を有する、2つの連続する反応(変換、次いで還元)の、一次ドーパントからの実行が要求される限り、無視される。
【0058】
しかしながら、後述するように、各検出器8に問い掛けることによって、三次ドーパントの濃度に関する情報が得られ、この値は、所定の三次期間中の検出器8による吸収された光子放射線の線量(すなわち光子のために吸収された放射線の線量)を示すものである。したがって、所定の変換データを実行することによって、容器6の壁4によって吸収される線量が得られる可能性が高い。これは、一次ドーパントおよび三次ドーパントが異なる波長で局所化された光吸収ピークを有し、これらの原子価が異なることに起因する。
【0059】
三価状態のツリウムに対応する三次ドーパントは二価ツリウムである。また、その三価状態のユーロピウムに関連する三次ドーパントは二価ユーロピウムである。
【0060】
好ましくは、測定システム2の最初の実行前の導波路16の、一次ドーパントによるドーピングは、数パーセント程度であり、有利には1%と25%モーラーとの間に含まれ、たとえば約8%モーラーである。
【0061】
一般に、そして後述するように、所与の導波路16が、質問波を受信するときに応答波を生成する。
【0062】
いくつかの特徴の説明でより正確な表現の使用が求められない限り、一般的な表現「質問波」および「応答波」が測定システム2の説明において使用されることになる。
【0063】
より具体的には、二次質問波(後述)を受信すると、導波路16は二次応答波を生成する。
【0064】
三次質問波(後述)を受信すると、導波路16は三次応答波を生成する。
【0065】
第1の、それぞれ第2の、相補的二次質問波(後述)を受信するとき、導波路16は、第1の、それぞれ第2の、相補的二次応答波を生成する。
【0066】
第1の、それぞれ第2の、相補的三次質問波(後述)を受信するとき、導波路16は、第1の、それぞれ第2の、相補的三次応答波を生成する。
【0067】
減速層
図2に示す減速層18は、高速中性子を減速するように、特にこれらを熱化するように構成されている。換言すれば、減速層18は、入射する高速中性子の少なくともいくつかを熱中性子、すなわち1eV(電子ボルト)以下のエネルギーを有するものに変換するように構成されている。
【0068】
図2に示すように、減速層18は、導波路16と壁4の外面14との間に配置されるように意図されている。
【0069】
減速層18のおかげで、炉心9から来て壁4を横切る高速中性子が減速し、これにより一次ドーパントによるこれらの捕獲(その中性子捕獲断面積は一般に高速中性子についてより熱中性子についてはるかに大きい)、したがって二次ドーパントへのその変換が可能になる。
【0070】
減速層18は有利には、水素に富む材料、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレンで作製される。このようなポリマーは、140℃までの範囲の温度および約1MGy(メガグレイ)までの範囲の線量、すなわち通常、壁4の外面14で、60年にわたって統合された温度、それぞれ線量について良好な挙動を有する。
【0071】
減速層18は、好ましくは、50mm(ミリメートル)と150mmとの間に含まれる、たとえばPWR 1300炉では約100mmの厚さを有する。
【0072】
このような厚さは、熱化された高速中性子に対応する(最大化されるべき)熱中性子束と、炉心9から直接来る熱中性子束との間の良好な妥協点に対応し、後者はまた、一次ドーパントによっておそらく捕獲され、こうなれば高速中性子フルエンスを表さない二次ドーパントの形成につながり、したがって測定システム2の精度および信頼性を低下させるため、望ましくない。
【0073】
たとえば、PWR 1300炉では、厚さ100mmの減速層18が、この減速層18の出力で、高速中性子から生じる熱中性子束と炉心9から直接生じる熱中性子束との間の10に近い好ましい比率につながり、これは意図された用途の観点から満足のいくものである。
【0074】
減速層18の他の有利な効果は、このような減速層が欠如している状況と比較して、導波路16(およびオフセットファイバ12)に衝突する高速中性子束がかなり減少することにある。この結果、導波路16およびオフセットファイバ12の透過の観点から有害である、放射線誘発性減衰の現象が大幅に減少する。
【0075】
中性子バリア層
バリア層20は、所定のエネルギー閾値より低いエネルギーを有する炉心から来る中性子、特に熱中性子を、少なくとも部分的に阻止するように構成されている。
【0076】
バリア層20は、
図2に示すように、減速層18と容器6の壁4の外面14との間に配置されるように意図されている。
【0077】
このようなバリア層20のおかげで、減速層18、およびしたがって導波路16に達する熱中性子束が減少する。結果として、測定システム2によって実行される測定はより信頼できる。
【0078】
好ましくは、バリア層20はカドミウム製である。この場合、バリア層20は有利には、0.6mmと1.6mmとの間に含まれる、たとえば約1mmの厚さを有し、カドミウムによる熱中性子束の減衰はこの厚さ範囲にわたって有意に変化しない。
【0079】
オフセットファイバ
図1および
図2によって示すように、各オフセットファイバ12は、分析装置10に対応する検出器8を接続してこれらの間の光の循環を可能にしている。
【0080】
より具体的には、各オフセットファイバ12は、接続部40によってその導波路16に接続されている、対応する検出器8と、原子炉建屋11の仕切り15に配置された光貫通アセンブリ38との間に延在する。したがって、各オフセットファイバ12は、断熱材料で作製されたエンベロープ13を横切る。
【0081】
光貫通アセンブリ38は、原子炉建屋11の気密性を維持しながら仕切り15を通して光を透過するように構成されている。
【0082】
好ましくは、各オフセットファイバ12は、特に純シリカで作製されたコア(「純シリカコアファイバ」)、およびコアの周りに配置されたシースを含み、シースは、放射線に対するより大きな耐性をオフセットファイバ12に与えるようにフッ素でドープされている。
【0083】
あるいは、オフセットファイバ12のコアも、放射線に対する耐性をさらに高めるためにフッ素でドープされている。この場合、オフセットファイバ12の誘導特性を保証するためにオフセットファイバ12のコアにおけるフッ素濃度はシースより低い。実際、シリカ指数はフッ素ドーピングとともに減少する。
【0084】
分析装置
分析装置10は、各検出器8に質問波を放出して、その検出器8に対応する応答波を放出させるように構成されている。分析装置10はまた、各検出器8によって放出される応答波を検出し、炉に関する特徴、たとえば二次の所定の期間中に容器6の壁4が受ける高速中性子フルエンスを、受信された各二次応答波から決定するように構成されている。
【0085】
分析装置10は、制御部材42、少なくとも1つの光源44および検出ステージ46を含む。
【0086】
分析装置10はまた、光源44から光透過アセンブリ38へ、および光透過アセンブリ38から検出ステージ46へ光を送るように構成されたルーティング部材47を含む。ルーティング部材47は、たとえば、光カプラまたは光サーキュレータである。
【0087】
好ましくは、分析装置10が複数の光源44を含む場合、分析装置はまた、ルーティング部材47の入力と各光源44の出力との間に配置された内部スイッチ48を含む。内部スイッチ48は、制御部材42によって生成された対応する制御に応じて、光源44からルーティング部材47へ、好ましくは選択的に、光を送るように構成されている。これにより特定の光源44から検出器8へ質問波を送信することが可能になる。
【0088】
再び好ましくは、測定システム2が複数の検出器8を含む場合、分析装置はまた、ルーティング部材47の入力/出力と光貫通アセンブリ38との間に配置された外部スイッチ50を含む。外部スイッチ50は、制御部材42からの対応する制御にしたがって、ルーティング部材47と所与の検出器8との間の光の選択的循環を可能にするように構成されている。これにより特定の検出器8へ質問波を送信することが可能になる。
【0089】
光源
各光源44は、光波、好ましくはその波長が可視または近赤外範囲に属する光波を生成するように構成されている。
【0090】
より正確には、各検出器8について、分析装置10は、二次波長を有する二次質問波を生成するように構成された、「二次光源」と呼ばれる、関連する光源44を含む。二次波長は、検出器8に関連する二次ドーパントが吸収ピークを有する波長である。さらに、二次波長は、二次波長と一次ドーパントの吸収ピークに対応する波長との間の最小差が第1の所定の最小差以上であるようなものである。
【0091】
好ましくは、第1の所定の最小差は100nm以上であり、有利には150nm以上である。
【0092】
例として、一次ドーパントがツリウムであれば、これは、シリカにおいて、790nmでの吸収ピークおよび1180nm付近での吸収ピークを有し、二次波長(後述するように、920nmまたは982nmである)は、一次ドーパントに最も近い吸収ピークから少なくとも130nm離れている。
【0093】
一次ドーパントが三次ドーパントに変換することもできれば、二次波長は、二次波長と三次ドーパントの吸収ピークに対応する波長との間の最小差が第2の所定の最小差以上であるようなものである。
【0094】
例として、二次ドーパントがイッテルビウムである場合、
導波路16がシリカSiO2光ファイバまたはフッ化カルシウムCaF2結晶性ファイバであれば、二次波長は920nmまたは982nmであり、
導波路16がYAGファイバであれば、二次波長は941nmまたは970nmである。
【0095】
他の一例によれば、二次ドーパントがサマリウムである場合、
導波路16がSiO2シリカ光ファイバまたはYAG結晶性ファイバであれば、二次波長は1030nm、1180nm、1290nmまたは1390nmであり、
導波路16がフッ化カルシウムCaF2結晶性ファイバであれば、二次波長は1080nm、1230nm、1400nmまたは1500nmである。
【0096】
有利には、所与の検出器8について、分析装置10はまた、第1の相補的二次波長を有する第1の相補的二次質問波を生成するように構成された、「第1の相補的二次光源」と呼ばれる、関連する光源44を含む。第1の相補的二次波長は、二次波長に関連する吸収ピークの足部に対応する。特に、第1の相補的二次波長と二次波長との間の差は10ナノメートル程度であり、たとえば、二次波長に関連する吸収ピークの幅(たとえば中間高さでの幅)に応じて、約10nmと約50nmとの間に含まれる。
【0097】
有利には、所与の検出器8について、分析装置10はまた、第2の相補的二次波長を有する第2の相補的二次質問波を生成するように構成された、「第2の相補的二次光源」と呼ばれる、関連する光源44を含む。第2の相補的二次波長は、第1の相補的二次波長が関連する足部とは異なる二次波長に関連する吸収ピークの足部に対応する。特に、第2の相補的二次波長と二次波長との間の差は10ナノメートル程度であり、たとえば、二次波長に関連する吸収ピークの幅(たとえば中間高さでの幅)に応じて、約10nmと約50nmとの間に含まれる。たとえば、第1の相補的二次波長および第2の相補的二次波長は二次波長から等距離にある。
【0098】
したがって、フルエンス測定について、そして考慮される二次ドーパントに関係なく、測定システムは有利には3つの光源44、すなわち、二次光源(
図2においてλ
2で示す)、第1の相補的二次光源(λ
2,1で示す)および第2の相補的二次光源(λ
2,2で示す)を含む。
【0099】
好ましくは、各検出器8について、分析装置10はまた、三次波長を有する光学的三次質問波を生成するように構成された、「三次光源」と呼ばれる、関連する光源44を含む。三次波長は、検出器8に関連する三次ドーパントが吸収ピークを有する波長である。さらに、三次波長は、三次波長と一次ドーパントまたは二次ドーパントの吸収ピークに対応する波長との間の最小差が第3の所定の最小差以上であるようなものである。
【0100】
たとえば、三次ドーパントが二価ツリウムである場合、導波路16がシリカSiO2または結晶性ファイバ(たとえば、YAGファイバまたはフッ化カルシウムCaF2結晶性ファイバ)で作製された光ファイバであれば、三次波長は1066nmである。
【0101】
三次ドーパントが二価ユーロピウムである場合、二価ユーロピウムの350nmでの吸収ピークが考慮される可視および近赤外範囲の外側にある限り、分析装置10は好ましくは関連する光源44を含まない。
【0102】
有利には、所与の検出器8について、分析装置10はまた、第1の相補的三次波長を有する第1の相補的三次質問波を生成するように構成された、「第1の相補的三次光源」と呼ばれる、関連する光源44を含む。第1の相補的三次波長は、三次波長に関連する吸収ピークの足部に対応する。特に、第1の相補的三次波長と三次波長との間の差は10ナノメートル程度であり、たとえば、三次波長に関連する吸収ピークの幅(たとえば中間高さでの幅)に応じて、約10nmと約50nmとの間に含まれる。
【0103】
有利には、所与の検出器8について、分析装置10はまた、第2の相補的三次波長を有する第2の相補的三次質問波を生成するように構成された、「第2の相補的三次光源」と呼ばれる、関連する光源44を含む。第2の相補的三次波長は、第1の相補的三次波長が関連する足部とは異なる三次波長に関連する吸収ピークの足部に対応する。特に、第2の相補的三次波長と三次波長との間の差は10ナノメートル程度であり、たとえば、三次波長に関連する吸収ピークの幅(たとえば中間高さでの幅)に応じて、約10nmと約50nmとの間に含まれる。たとえば、第1の相補的三次波長および第2の相補的三次波長は三次波長から等距離にある。
【0104】
したがって、光子放射線量測定では、測定システム2は、
有利には、一次ドーパントがツリウムであれば、三次光源(
図2においてλ
3で示す)、第1の相補的三次光源(λ
3.1で示す)および第2の相補的三次光源(λ
3.2で示す)を含み、
好ましくは、一次ドーパントがユーロピウムであれば、三次光源、第1または第2の相補的三次光源を含まない。
【0105】
検出ステージ
検出ステージ46は、各検出器8からの応答波の検出を表す検出信号を生成するように構成されている。
【0106】
検出ステージ46は、光検出器52および光検出器52の出力に接続された取得装置54を含む。
【0107】
光検出器52は、ルーティング部材47の出力に接続されて各検出器8からの応答波を受信する。
【0108】
光検出器52は、応答波を検出し、この検出を表す電気信号を送達するように構成されている。
【0109】
たとえば、光検出器52は低ノイズのPINフォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、またはそうでない場合CCDカメラである。好ましくは、光検出器52は、そのノイズレベルを低減することを目的として、たとえば熱電効果(ペルチェ効果)によって冷却される。
【0110】
取得部材54は、光検出器52によって送達される電気信号から検出信号を生成するように構成されている。たとえば、取得部材54は、光検出器52によって送達される電気信号を増幅およびデジタル化して検出信号を生成するように構成されている。
【0111】
検出信号は応答波の特徴を表すものである。
【0112】
光検出器52および取得部材54は既知であり、さらには説明しない。
【0113】
制御部材
制御部材は、所定の変換データを格納するように構成されている。このような変換データは特に中性子変換係数(後述)を含む。好ましくは、変換データはまた、光子変換係数(後述)、ならびに一次ドーパント内の各導波路16の初期濃度プロファイル(またはそうでなければ初期平均一次ドーパント濃度)、または上記導波路16に沿った位置にしたがった一次ドーパント内の各導波路16の他の濃度プロファイルを含む。
【0114】
たとえば、一次ドーパント濃度プロファイルは、導波路16を長手方向に移動させてこれを横方向にプローブすることによって測定される。このような測定は望ましいものであり、その濃度は、その製造後、導波路16においてほぼ不均一である。
【0115】
制御部材42は、たとえば光源44の放出を誘発するための電子インターフェースによって、対応する質問波を生成するために各光源44の放出を制御するように構成されている。このような電子トリガーインターフェースは検出信号の取得用の時間基準を有利に提供する。
【0116】
さらに、制御部材42は、内部スイッチ48および外部スイッチ50を制御して所与の光源44から所与の検出器8へ質問波を選択的に送るように有利に構成されている。
【0117】
制御部材42はまた、上記光源44および上記検出器8のために検出ステージによって送達される検出信号を取得するように構成され、検出信号は、たとえば高速(100メガサンプル毎秒以上)および高ダイナミック(16ビット以上)取得カードによって、検出ステージ46によって送達される。
【0118】
制御部材42はまた、対応する光導波路16内の二次または三次ドーパントの濃度、たとえば濃度プロファイルに関する情報を、取得された検出信号から計算するように構成されている。
【0119】
特に、制御部材42は、各検出器8について、導波路16に沿った位置に応じて、受信された応答波に対応する検出信号から、質問波の波長に対応する導波路16の減衰プロファイルを決定し、光学的時間領域反射計測によって、決定された減衰プロファイルから二次または三次ドーパントの濃度に関する情報を計算するように構成されている。光学的時間領域反射計測による検出の場合、制御部材42は、パルス状に発光するように光源44を制御するように構成されている。次いで、各光パルスが質問波を形成し、その空間範囲が、達成されそうな分解能を決定する。
【0120】
ルーティング部材47から導波路16の遠位端56へのその伝播中、質問波の一部が、レイリー散乱によって散乱し、特に後方散乱する。さらに、質問波の一部が吸収され、特に導波路16内の二次または三次ドーパント(質問波の波長に応じて)によって、またはそうでない場合導波路16および/またはオフセットファイバ12内の放射線によって誘発される減衰のために吸収される。結果として、質問波はその伝搬中にその光学的力が減少する。
【0121】
オフセットファイバ12内の放射線によって誘発される減衰は一般に測定の信号対雑音比に影響を与えるが、導波路16内の放射線によって誘発される減衰は、後述する補正によっておそらく補正される。
【0122】
後方散乱した質問波の部分は応答波を構成する。特に、応答波は、質問波が占める光路の一部、たとえばオフセットファイバ12または導波路16の一部によって後方散乱する質問波の部分に対応し、上記一部は光パルスの始まりと終わりとの間に空間的に含まれる。時間領域光反射計測の場合、減衰プロファイルを決定するときに達成されそうな空間分解能は、パルスの長さ、すなわち上記一部の長さに依存する。たとえば、シリカ光ファイバからなる導波路16について、および時間幅が1ナノ秒の光パルスについて、達成される分解能は約10cmである。
【0123】
このようなパルスをルーティング部材47に注入した後、検出器8から光検出器52に達する応答波の力の、時間の関数としての変化の一例が
図5の曲線60によって示されている。このような曲線は、質問波が二次光源または三次光源によって放出される場合に対応している。
【0124】
従来、検出ステージ46によって送達される検出信号はこのような変化を表すものである。
【0125】
この図に示すように、応答波の力プロファイルは全体的に減少している。前に示したように、これは、質問波が、その伝播中、レイリー散乱だけでなく、連続する光学部品間の吸収および結合の欠陥のためにその光学的力が減少することに起因する。
【0126】
さらに、このような力プロファイルは、外部スイッチ50(ピーク62)での、光貫通アセンブリ38(ピーク64)の、接続部40(ピーク66)の、および導波路16の端部(ピーク68)の反射に対応する、ピークを含む。
【0127】
この曲線60上で、ピーク66と68との間に含まれる線分70は、導波路16に起因する応答波の部分に対応する。二次(それぞれ三次)ドーパントの吸収ピークでの対応する質問波の波長、線分70の傾きは、導波路16の各点での、二次(それぞれ三次)ドーパントの濃度に依存する。
【0128】
前述のように、応答波は、後方散乱する質問波の部分に対応する。したがって、所与の瞬間での、光検出器52での応答波の力は、この瞬間に関連する位置での質問波の力を表す。これは導波路16の減衰プロファイルの計算のために実施される。
【0129】
より具体的には、制御部材42は、所与の瞬間での、検出信号の値を、質問波の経路に沿った、zで示す、対応する位置に関連付けるように構成されている。検出信号は応答波の力を表し、このような動作は、位置zにしたがった応答波の、Pi(z)で示す、力プロファイルを決定することになる。
【0130】
次において、指数iは、二次ドーパントに関する量については2に等しく、三次ドーパントに関する量については3に等しい。
【0131】
好ましくは、位置zは、既知の位置の基準点に対して、以下の関係を実行することによって定義される。
【0132】
【0133】
ここでcは真空中の光の速度であり、
Δtは、基準点からの応答波の受信と位置点zからの応答波の受信との間に経過した時間であり、
nは、質問波が横切る媒体の光学指数、たとえば導波路16の光学指数である。
【0134】
たとえば、基準点の位置は接続部40の位置に対応する。
【0135】
有利には、制御部材42は、質問波の経路に沿った所定の点についてのその値に関して、好ましくはピーク66でのその値に関して、力プロファイルPi(z)を正規化するように構成されている。このような正規化は、数十年の動作寿命にわたって実際の状況では制御されない検出器8の上流での減衰変動(オフセットファイバ12上での放射線誘発性減衰、光貫通アセンブリ38上の結合の変化など)の影響を排除する。
【0136】
好ましくは、制御部材42は、所与の時間ウィンドウにおいて、たとえば1時間程度で、同じ光源44から放出された複数のパルスについて得られた複数の力プロファイルを蓄積するように構成され、力プロファイルPi(z)はこの蓄積の結果に等しい。
【0137】
好ましくは、制御部材42はまた、質問波の波長λiでの、減衰プロファイルαi(z,λi)(すなわち位置zによる減衰係数のプロファイル)を、力プロファイルPi(z)から計算するように構成されている。
【0138】
より具体的には、制御部材42は、次の関係(ランベルトベールの法則として知られている)から減衰プロファイルを計算するように構成されている。
【0139】
【0140】
ここで、αi(z,λi)は、導波路16に沿った位置zおよび波長λiでの減衰係数(たとえば、cm-1で表される)であり、
d/dzは「位置zに関する導関数」演算子である。
【0141】
減衰係数は、吸収および散乱現象の両方を考慮に入れる。しかしながら、本発明の文脈において、吸収部分が支配的であるため、減衰係数への散乱の寄与は無視される。したがって、導波路16において、減衰係数は吸収係数に匹敵する。
【0142】
さらに、制御部材42は、光導波路内の二次(それぞれ三次)ドーパントの濃度に関する情報を計算するように構成されている。より具体的には、制御部材42は、特に以下の関係を実行することによって、二次(それぞれ三次)ドーパントの濃度プロファイルを計算するように構成されている。
【0143】
【0144】
ここでNi(z)は二次(それぞれ三次)ドーパントの濃度プロファイル(たとえば、cm-3で表される)であり、
σi(λi)は二次(それぞれ三次)波長λiでの二次(それぞれ三次)ドーパントの相互作用セクション(たとえば、cm2で表される)である。
【0145】
さらに、制御部材42は、以下の関係を実行することによって、Φ(z)で示す、高速中性子フルエンスプロファイルを、二次ドーパントの濃度プロファイルから決定するように構成されている。
【0146】
【0147】
ここでKnは所定の中性子変換係数であり、
N1(z)は一次ドーパントの濃度プロファイルである。
【0148】
濃度プロファイルN1(z)は好ましくは事前決定され(特に、前述の技術による較正によって得られ)、制御部材42に格納される。
【0149】
このような高速中性子フルエンスプロファイルΦ(z)は、特に所定の二次期間中、容器6の壁4が受ける高速中性子フルエンスを表す。
【0150】
中性子変換係数Knは、導波路16内の二次ドーパント含有量(二次および一次ドーパントの濃度間の比率として定義される)の測定から容器6内の高速中性子フルエンスの推定(これは壁4の経年劣化の推定に関連する)を可能にする係数であり、この含有量は炉心外熱中性子フルエンスを反映している。
【0151】
中性子変換係数Knは、たとえば、シミュレーション、特にモンテカルロシミュレーション(たとえばMCNP、TRIPOLIまたはMERCUREコード)によって得られる係数であり、炉心9の形状および組成、ならびに検出器8の特徴、たとえば、減速層18の、バリア層20のまたはそうでない場合導波路16の特徴を考慮に入れる。
【0152】
有利には、制御部材42はまた、以下の関係を実行することによって、D(z)で示す線量プロファイルを、三次ドーパントの濃度プロファイルから決定するように構成されている。
【0153】
【0154】
ここでKpは所定の光子変換係数である。
【0155】
このような線量プロファイルD(z)は、所定の三次期間中、容器6の壁4によって吸収される線量を表す。
【0156】
光子変換係数Kpは、導波路16内の三次ドーパントの含有量の測定から壁4によって吸収される線量の推定を可能にする係数であり、この含有量は容器6の外側の検出器8によって吸収される線量を表す。
【0157】
光子変換係数Kpは、たとえば、シミュレーション、特にモンテカルロシミュレーション(たとえばMCNP、TRIPOLIまたはMERCUREコード)によって得られる係数であり、炉心9の形状および組成、ならびに検出器8の特徴、たとえば、減速層18の、バリア層20のまたはそうでない場合導波路16の特徴を考慮に入れる。
【0158】
有利には、各検出器8について、制御部材42はまた、上述したものと同様の方法で、および第1の関連する相補的二次光源によって、第1の相補的二次波長に対応する光導波路16の減衰プロファイルを決定するように構成されている。
【0159】
この場合、制御部材42はまた、第1の相補的二次波長を指すα2,1(z,λ2,1)、λ2,1で示す、第1の相補的二次波長での減衰プロファイルによる二次波長での減衰プロファイルの補正の結果から二次ドーパントの濃度に関する情報を計算するように構成されている。
【0160】
より具体的には、制御部材42は、関係(3)において、
A2(z,λ2)=α2(z,λ2)-α2,1(z,λ2,1) (6)
によって得られる量A2(z,λ2)で減衰係数α2(z,λ2)を置き換えるように構成されている。
【0161】
再び有利には、各検出器8について、制御部材42は、上述したものと同様に、
第1の相補的二次光源による、第1の相補的二次波長に対応する光導波路16の減衰プロファイル、および
第2の相補的二次光源による、第2の相補的二次波長に対応する光導波路16の減衰プロファイル、
を決定するように構成されている。
【0162】
この場合、制御部材42はまた、第1の相補的二次波長での減衰プロファイルα2,1(z,λ2,1)、および第2の相補的二次波長を指すα2,2(z,λ2,2)、λ2,2で示す、第2の相補的二次波長での減衰プロファイルのそれぞれによる二次波長での減衰プロファイルの補正の結果から二次ドーパントの濃度に関する情報を計算するように構成されている。
【0163】
より具体的には、制御部材42は、関係(3)において、以下によって得られる量A2(z,λ2)で減衰係数α2(z,λ2)を置き換えるように構成されている。
【0164】
【0165】
このような補正は、数十年の動作期間にわたって実際の状況では抑制されない検出器8の上流での減衰変動(オフセットファイバ12上で放射線によって誘発される減衰、光貫通アセンブリ38上の結合の変化など)の影響を低減することにつながる限り、有利である。このような補正はまた、二次波長での一次ドーパントの吸収の、減衰プロファイルに対する影響を低減することができる。
【0166】
第1および第2の相補的二次波長が二次波長に対して対称である場合、関係(7)は「アレンの補正」と呼ばれる関係に簡略化される。
【0167】
【0168】
第1の相補的三次波長での減衰プロファイルから、または第1の相補的三次波長での減衰プロファイルおよび第2の相補的三次波長での減衰プロファイルから三次波長での減衰プロファイルを補正する同様の操作が考えられる。
【0169】
測定システム2の動作を次に説明する。
【0170】
測定システム2の実行前に、変換データが制御部材42に記録される。
【0171】
各検出器8は、容器6の壁4の外面14上に配置され、減速層18は外面14と導波路16との間に配置されている。
【0172】
次いで、制御部材42は、対応する質問波を生成するために各光源44の送信を制御する。
【0173】
さらに、制御部材42は、所与の光源44から所与の検出器8へ選択的に質問波を送るように内部スイッチ48および外部スイッチ50を制御する。検出ステージ46が次いで、対応する応答波の検出から生じる検出信号を送達する。
【0174】
次いで、上記光源44および上記検出器8についての検出ステージ46によって送達される検出信号から、制御部材42は力プロファイルPi(z)を決定する。
【0175】
次いで、制御部材42は、力プロファイルPi(z)から、質問波の波長λiでの減衰プロファイルαi(z,λi)を計算する。
【0176】
次いで、制御部材42は、質問波の波長λiにしたがって、二次または三次ドーパントの濃度プロファイルを計算する。
【0177】
次いで、制御部材42は、
二次ドーパントの濃度プロファイルから、特に所定の二次期間(特に、動作期間に匹敵する曝露期間)中、容器6の壁4が受ける高速中性子フルエンスプロファイル、および/または
三次ドーパントの濃度プロファイルから、特に所定の三次期間(特に、動作期間に匹敵する曝露期間)中、容器6の壁4によって吸収される線量プロファイル、
を決定する。
【0178】
あるいは、測定システム2の動作はコヒーレントまたはインコヒーレント光周波数領域反射計測に基づく。この場合、各光源44は好ましくは連続源である。
【0179】
コヒーレント光周波数領域反射計測の場合、制御部材42は、各光源44が発する質問波の波長を調整するためにこれを制御するように構成されている。
【0180】
この場合、所与の検出器8から受信された応答波と、対応する(おそらく遅延した)質問波の一部との間の干渉が、光検出器52の入力で生成される。
【0181】
この場合、検出信号は、
図5によって示す力プロファイルのフーリエ変換に対応する。
【0182】
この場合、制御部材42は、検出信号の逆フーリエ変換の結果として力プロファイルを計算するように構成されている。
【0183】
高速中性子フルエンスおよび/または吸収線量の計算は、前述したものと同様の方法で行われる。
【0184】
コヒーレント光周波数領域反射計測の使用は、空間分解能が時間領域光学的反射計測(通常ミリメートル程度の)よりはるかに優れている限り、有利である。
【0185】
インコヒーレント光周波数領域反射計測の場合、制御部材は、質問波の振幅を変調するように各光源44を制御するように構成され、その波長は時間とともに修正される。
【0186】
この場合、制御部材42は、異なる変調周波数について検出信号を記録するように構成されている。
【0187】
さらに、制御部材42は、逆フーリエ変換を実行することによって、異なる変調周波数について記録された検出信号から力プロファイルを計算するように構成されている。このような計算は既知であり、さらには説明しない。
【0188】
インコヒーレント光周波数領域反射計測の使用は、この技術がコヒーレント光周波数領域反射計測より堅牢である限り、有利であり、実際、後者には一般に、インコヒーレント光周波数領域反射計測とは異なり、干渉信号を取得するために機械的安定化が要求される。さらに、所与の瞬間に決定された減衰プロファイルを、測定システムが同じ光電子パラメータで使われたときに決定される参照減衰プロファイルと相関させるために、読み取りパラメータを数十年にわたって維持することの難しさ(その情報および資料の持続性の問題)が発生することは、インコヒーレント光周波数領域反射計測の場合、少なくなる。
【0189】
高速中性子フルエンスおよび/または吸収線量の計算は、前述したものと同様の方法で行われる。
【0190】
他の一変形例によれば、分析装置10は、各検出器8について、対応する導波路16の全長にわたって統合された中性子フルエンスおよび/または吸収線量を決定するように構成されている。
【0191】
より具体的には、分析装置10は、各検出器8について、受信された応答波から、二次(それぞれ三次)ドーパントに関連する二次(それぞれ三次)蛍光スペクトルバンドにおいて、対応する光導波路16によってその全長に放出された蛍光の総量を決定するように構成されている。たとえば、このような分析装置10において、検出ステージ46は光学分光計である。
【0192】
この場合、分析装置10は、所与の検出器8から受信された応答波において、二次ドーパントの(それぞれ三次ドーパントの)蛍光に対応する部分、すなわち、二次ドーパントに(それぞれ三次ドーパントに)関連する二次(それぞれ三次)蛍光スペクトルバンドに属する波長を有する応答波の部分を識別するように構成されている。
【0193】
この場合、分析装置10は、対応する蛍光信号の力から二次および/または三次ドーパントの濃度を計算するように構成されている。さらに、分析装置10は、計算された濃度および対応する変換データから高速中性子フルエンスおよび/または壁4によって吸収される線量を決定するように構成されている。たとえば、このような変換データ(これは、特に、一次ドーパントの平均濃度に依存する)は実験的に確立され、導波路16によって放出される蛍光信号の力を、検出器8での平均フルエンスにリンクする。
【0194】
たとえば、二次ドーパントがイッテルビウムであり、三次ドーパントが二価ツリウムである場合、二次波長は1066nmに近く、三次波長は940nmと980nmとの間に含まれる。
【0195】
この場合、分析装置10は、[1020nm、1050nm]の範囲の光子をイッテルビウム蛍光へ、および[1120nm、1190nm]の範囲の光子を二価ツリウムの蛍光へ割り当てるように構成されている。
【0196】
このような変形は、他の実施形態より低い検出閾値を有する限り、有利である。
【符号の説明】
【0197】
2 測定システム
4 壁
6 容器
8 検出器
9 炉心
10 分析装置
11 原子炉建屋
12 オフセットファイバ
13 エンベロープ
14 外面
15 仕切り
16 導波路
18 減速層
20 バリア層
38 光貫通アセンブリ
40 接続部
42 制御部材
44 光源
46 検出ステージ
47 ルーティング部材
48 内部スイッチ
50 外部スイッチ
52 光検出器
54 取得装置
56 遠位端