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特許7580482エポキシアミン系と硬化触媒としての芳香族カルボン酸とを含有する水性コーティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】エポキシアミン系と硬化触媒としての芳香族カルボン酸とを含有する水性コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20241101BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241101BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/63
C09D5/00 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022559343
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2021056756
(87)【国際公開番号】W WO2021197842
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】20167217.7
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】コントラット,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ニーンハオス,エグベルト
(72)【発明者】
【氏名】レセル,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,カリン
(72)【発明者】
【氏名】プルツィビラ,ジルケ
(72)【発明者】
【氏名】フェーゲリンク,ティム
(72)【発明者】
【氏名】シェプス,ジビレ
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173008(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175740(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/225186(WO,A1)
【文献】特開2002-212495(JP,A)
【文献】特表2010-535259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 163/00
C09D 7/63
C09D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性コーティング組成物であって、
a)エポキシ樹脂(ER1)の少なくとも1種の水性分散体(A)であり、前記エポキシ樹脂(ER)が平均して分子1個当たり少なくとも1個のエポキシ基を有する、水性分散体(A)と、
b)0.5~5質量%の比率の、少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、ならびに150~400g/molのNH当量を有する樹脂成分(RC)を含む、少なくとも1種の水性樹脂分散体(B)と、
c)少なくとも1個のカルボン酸基を有する少なくとも1種の芳香族化合物(C)と
を含み、
前記樹脂成分(RC)が、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)を含み、前記少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)が、
(i)400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)、
(ii)少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、ならびに
(iii)少なくとも1種の化合物X-R(式中、Xは、エポキシ基に対して反応性である官能基であり、Rは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン単位を含有し、かつさらなるX基を含有しない有機基である)
の反応生成物を含有
前記少なくとも1個のカルボン酸基を有する少なくとも1種の芳香族化合物(C)が、レゾルシノール、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸、クレソチン酸、およびそれらの混合物から選択され、
前記少なくとも1種の化合物X-Rが第一級ポリオキシアルキレンモノアミンから選択される、
水性コーティング組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(ER1)が、それぞれの場合に水性コーティング組成物の総質量に対して、1~30質量%の総量において存在する、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)が、少なくとも65mol-%のアミノ基および炭化水素基からなるアミンからなる、請求項1または2に記載の水性コーティング組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)が、二官能性単量体第一級および/または第二級アミンら選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項5】
前記水性分散体中の少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)の比率が、水性分散体(B)の総質量に対して、1~4.5質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項6】
前記樹脂成分(RC)が、160~350g/molのNH当量を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)が、二価アルコールまたはフェノールのグリシジルエーテル、ノボラック、カルボン酸のジグリシジルエステル、またはそれらの混合物から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
前記樹脂成分(RC)が、それぞれの場合に水性コーティング組成物の固体含有量に対して、10~30質量%の総量において存在する、請求項1からのいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の芳香族化合物(C)がサリチル酸である、請求項1から8のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の芳香族化合物(C)が、それぞれの場合に水性コーティング組成物の総質量に対して、0.1~5質量%の総量において存在する、請求項1からのいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項11】
前記コーティング組成物が、サーフェサーまたはプライマーサーフェサーである、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項12】
2つの別々の成分A)とB)を含むキットオブパーツであって、前記成分A)とB)が、
A)エポキシ樹脂(ER1)の少なくとも1種の水性分散体(A)を含有する少なくとも1種の水性ベースワニスであり、前記エポキシ樹脂(ER)が平均して分子1個当たり少なくとも1個のエポキシ基を有する、水性ベースワニスと、
B)少なくとも1種の水性硬化剤成分であり、
- 0.5~5質量%の比率の、少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、ならびに150~400g/molのNH当量を有する樹脂成分(RC)を含む少なくとも1種の水性樹脂分散体(B)であり、前記樹脂成分(RC)が、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)を含み、前記少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)が、
(i)400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)、
(ii)少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A3)、および
(iii)少なくとも1種の化合物X-R(式中、Xは、エポキシ基に対して反応性である官能基であり、Rは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン単位を含有し、かつさらなるX基を含有しない有機基である)
の反応生成物を含有する、水性樹脂分散体(B)、ならびに
-少なくとも1のカルボン酸基を有する少なくとも1種の芳香族化合物(C)
を含有し、
前記少なくとも1個のカルボン酸基を有する少なくとも1種の芳香族化合物(C)が、レゾルシノール、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸、クレソチン酸、およびそれらの混合物から選択される、
前記少なくとも1種の化合物X-Rが第一級ポリオキシアルキレンモノアミンから選択される、
水性硬化剤成分と
を含む、キットオブパーツ。
【請求項13】
少なくとも1個のコーティング層を基材上に生成する方法であって、
i)請求項1から11のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物、または請求項12に記載のキットオブパーツから製造されたコーティング組成物を、基材に適用する工程と、
ii)工程(i)において適用されたコーティング組成物からコーティング膜を形成する工程と、
iii)工程(ii)において形成されたコーティング膜を硬化させる工程と、
iv)任意に、工程(iii)において得られた硬化コーティング層を研磨する工程と、
v)任意に、少なくとも1つのさらなるコーティング層を適用して、前記コーティング層を硬化させる工程と
を含む、方法。

【請求項14】
請求項13に記載の方法によって製造された、コーティング済み基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性エポキシ樹脂分散体(A)と、水性アミン官能性樹脂分散体(B)と、芳香族カルボン酸(C)とを含有する、水性コーティング組成物、好ましくは水性研磨性サーフェサーまたはプライマーサーフェサーに関する。水性分散体(B)は、少なくとも1種の特定の二官能性および/または多官能性単量体アミン(A1)、ならびに少なくとも1種の特定の多官能性有機アミン(A2)を含む、少なくとも1種の樹脂成分(RC)を含有する。さらに、本発明は、水性エポキシ樹脂分散体を含有するベースワニス(A)と、水性アミン官能性樹脂分散体(B)および芳香族カルボン酸(C)を含有する硬化性成分とを含む、キットオブパーツに関する。加えて、本発明は、コーティングを基材上に生成する方法、および前記方法から得られたコーティング済み基材に関する。前記組成物から形成された硬化コーティング層は、優れた研磨性および良好なストーンチップの性質に悪影響を及ぼすことなく、湿潤条件下、基材への良好な付着性、ならびに高いコート間の付着性および膨れ安定性を呈する。
【背景技術】
【0002】
自動車塗り替えの領域において、元のコーティングにおける欠陥の修復は、機械的手段によって欠陥を研磨することもしくは粉砕除去すること、またはその元のコーティング層を車両の全体部分から完全に剥ぎ取ることを包含することができる。この研磨または粉砕の方法は、典型的には、ベアメタルの暴露をもたらす。最後のトップコート材料の適用前に、別々の下塗り系の使用が一般に推奨される。暴露されたベアメタルの研磨領域は、最初に腐食抑制プライマー、すなわち腐食抑制顔料と配合されたプライマーで被覆され、これはまた、ベアメタルと有機コーティングとの両方に付着性を有する。次の工程は、当技術分野において研磨性プライマーサーフェサーと称されるものの適用を包含する。最後に、ベースコート/クリアコート系またはトップコートが適用されて、修復を完了する。
【0003】
コーティング対象物のための水性プライマーおよびプライマーサーフェサーは重要性を増しており、その理由は、環境保護条件がますます厳密になってきているためである。それらの性質は、従来の系、すなわち溶媒を含有する系と適合性がなければならない。冷却硬化コーティング組成物のうち、硬化剤を含有するアミンを使用して硬化される水希釈性エポキシ樹脂系が、ますます重要性を増している。これらの2成分(2K)系は、優れた性質、例えば良好な乾燥、およびほとんどの基材への良好な付着性、および金属の良好な耐食性を有する。
【0004】
これらの系の硬化時間およびそのため塗り替え方法の効率を促進させるために、硬化触媒、例えば第三級アミン、BF等のルイス型の酸、または、フェノールおよびカルボン酸等の弱プロトン供与体を、これらの系に添加することは公知である。エポキシ-アミン系のための、1種の通常使用される硬化触媒は、商品名Ancamine K54で供給されているツリー第三級アミン基を含むフェノール(すなわち、トリス-2,4,6-ジメチルアミノメチルフェノール)である。しかしながら、水性エポキシ-アミン系中でのこの触媒の使用は、湿潤条件下、前記系から製造されたコーティング層の、低下したコート間の付着性および増大した膨れをもたらすおそれがある。
【0005】
エポキシ樹脂とアミン官能性硬化剤との間の反応を促進させることが公知であるさらなる化合物は、安息香酸およびサリチル酸のような芳香族カルボン酸である。サリチル酸を含有する水性アミン-エポキシ樹脂系が、例えばWO2009/016162 A1に開示されている。前記系は、エポキシ樹脂A、ならびに少なくとも1個の第一級アミノ基および/または少なくとも1個の第二級アミノ基を有するアミンB1の反応生成物を含む、水溶性または水分散性アミン官能性硬化剤B、ポリアルキレンエーテルポリオールB21とエポキシド成分B22との付加物B2、および好ましくはサリチル酸である芳香族化合物B3を含有する。このエポキシ樹脂系の使用は、改善した耐食性をもたらす。しかしながら、この系から得たコーティング層はまた、湿潤条件下での低下したコート間の付着性および膨れ安定性、ならびに低下したストーンチップ抵抗も呈する。
【0006】
しかしながら、湿潤条件下での十分なコート間付着性および高い膨れ安定性、ならびに十分なストーンチップ抵抗は、再塗装された車両の通常の使用中に遭遇される条件下、塗装された表面の、恒常的に審美的に高品質の外観を保証するために、塗り替え手順において非常に重要である。
【0007】
したがって、低い硬化温度にて、好ましくは80℃以下の硬化温度にて速い硬化時間を呈する、水性コーティング組成物、特定すると車両塗り替えにおける水性コーティング組成物への必要性が存在する。前記組成物から製造された硬化コーティングは、特に湿潤条件下、基材への良好な付着性、良好なコート間の付着性ならびに高い膨れ安定性を呈するべきである。さらに、硬化コーティングは、優れた耐食性および研磨性ならびに十分なストーンチップ抵抗を呈するべきである。最後に、硬化コーティングは、さらなるコーティング層、例えば着色ベースコートおよび/またはクリアコート層と組み合わされたときに高品質の外観をもたらすべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2009/016162 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、前記コーティング層の、優れた研磨性、耐食性およびストーンチップ抵抗に悪影響を及ぼすことなく、特に湿潤条件下、低い硬化温度にて、好ましくは80℃以下の温度にて迅速に硬化させることができ、かつ基材への良好な付着性、良好なコート間の付着性および高い膨れ安定性を有する硬化コーティング層をもたらす、水性コーティング組成物を提供することである。さらに、さらなるコーティング層、例えば着色ベースコートおよび/またはクリアコート層の適用は、高品質な外観の多層コーティングをもたらすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、「特許請求項の範囲」において請求されている主題によって達成され、かつ、また、本明細書でこれ以降の記載において説明されるその主題の好ましい実施形態によっても達成される。
【0011】
したがって、本発明の第1の主題は、水性コーティング組成物であって、
a)エポキシ樹脂(ER1)の少なくとも1種の水性分散体(A)であり、前記エポキシ樹脂(ER)が平均して分子1個当たり少なくとも1個のエポキシ基を有する、水性分散体(A)と、
b)0.5~5質量%の比率の、少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、ならびに150~400g/molのNH当量を有する樹脂成分(RC)を含む、少なくとも1種の水性樹脂分散体(B)と、
c)少なくとも1個のカルボン酸基を有する少なくとも1種の芳香族化合物(C)と
を含み、
該樹脂成分(RC)が、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)を含み、前記少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)が、
(i)400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)、
(ii)少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、ならびに
(iii)少なくとも1種の化合物X-R(式中、Xは、エポキシ基に対して反応性である官能基であり、Rは、少なくとも1個のポリオキシアルキレン単位を含有し、かつさらなるX基を含有しない有機基である)
の反応生成物を含有する、
水性コーティング組成物である。
【0012】
上に特定したコーティング組成物はまた、本明細書でこれ以降、本発明のコーティング組成物とも称され、したがって、これが本発明の主題である。本発明のコーティング組成物の好ましい実施形態は、本明細書でのこれ以降の記載から、およびまた従属請求項から明らかになる。
【0013】
先行技術に照らして、そこに本発明が基づかれている目的が、水性エポキシ系コーティング系中の架橋剤としての特定の水性分散体(B)との組み合わせにおける硬化触媒としての芳香族カルボン酸を使用することによって達成され得たことは、当業者にとって驚くべきことであり予見できないことであった。これらの系は、低い温度にて、好ましくは80℃以下にて迅速な硬化時間を示し、したがって、自動車塗り替えに非常に好適である。前記系から得られた硬化コーティング層は、優れた研磨性および良好なストーンチップの性質に悪影響を及ぼすことなく、湿潤条件下、基材への優れた付着性ならびに優れたコート間の付着性および膨れ安定性を有する。さらに、硬化触媒と水性分散体(B)との前述した組み合わせは、異なるアミノ官能性硬化剤を含有する水性エポキシ系、または水性分散体(B)を含有する水性エポキシ系、および硬化触媒Ancamine K54と比較して、湿潤条件下、クロスカット付着性および膨れ安定性を著しく改善することを可能にする。
【0014】
本発明のさらなる主題は、2つの別々の成分A)とB)を含むキットオブパーツであって、前記成分A)とB)が、
A)エポキシ樹脂(ER1)の少なくとも1種の水性分散体(A)を含有する少なくとも1種の水性ベースワニスであり、前記エポキシ樹脂(ER)が平均して分子1個当たり少なくとも1個のエポキシ基を有する、水性ベースワニスと、
B)少なくとも1種の水性硬化剤成分であり、
- 0.5~5質量%の比率の、少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、ならびに150~400g/molのNH当量を有する樹脂成分(RC)を含む少なくとも1種の水性樹脂分散体(B)であり、該樹脂成分(RC)が、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)を含み、前記少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)が、
(i)400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)、
(ii)少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、および
(iii)少なくとも1種の化合物X-R(式中、Xは、エポキシ基に対して反応性である官能基であり、Rは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン単位を含有し、かつさらなるX基を含有しない有機基である)
の反応生成物を含有する、水性樹脂分散体(B)、ならびに
-少なくとも1個のカルボン酸基を有する少なくとも1種の芳香族化合物(C)
を含有する、
水性硬化剤成分と
である、キットオブパーツである。
【0015】
本発明の別の主題は、少なくとも1つのコーティング層を基材上に生成する方法であり、前記方法は、
(i)本発明の水性コーティング組成物、または本発明のキットオブパーツから製造されたコーティング組成物を、基材に適用する工程と、
(ii)工程(i)において適用されたコーティング組成物からコーティング膜を形成する工程と、
(iii)工程(ii)において形成されたコーティング膜を硬化させる工程と、
(iv)任意に、工程(iii)において得られた硬化コーティング層を研磨する工程と、
(v)任意に、少なくとも1つのさらなるコーティング層を適用して、前記コーティング層を硬化させる工程と
を含む。
【0016】
本発明の最後の主題は、本発明の方法によって製造されたコーティング済み基材である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一定の特性変数を決定するための、本発明の文脈において採られることになる測定方法は、実施例セクションにおいて見出すことができる。別段のことが明示されていない限り、これらの測定方法は、それぞれの特性変数を決定するために採られることになる。公式の有効期間の指示が一切なしに本発明の文脈において公式な標準への参照がなされているところでは、該参照は、出願日に有効であるその標準のバージョンへの黙示である、またはその時点における任意の有効なバージョンの不在においては、最後の有効バージョンへの黙示である。
【0018】
本発明の文脈において報告されているすべての膜厚は、乾燥膜厚であると理解されるべきである。したがって、それは、それぞれの場合、硬化膜の厚さである。ゆえに、コーティング材料が特定の膜厚において適用されると報告されているところでは、それは、コーティング材料が、硬化後に、記述された膜厚をもたらすように適用されることを意味する。
【0019】
本発明の文脈において明瞭にされるすべての温度は、そこで基材またはコーティング済み基材が置かれる部屋の温度であると理解されるべきである。したがって、それは、基材それ自体が、検討中の温度を有することが要請されることを意味しない。
【0020】
用語「樹脂または樹脂成分」は、有機構成要素、すなわち有機反応生成物、オリゴマーおよび/またはポリマー、かつ適当な場合、樹脂成分(RC)のようなモノマーもまた含有する生成物を意味すると理解される。樹脂は、多少なりとも広い分布のモル質量を有し、一般にコーティング組成物中の結合剤として使用可能である。そのため、それらは、硬化後に存在するコーティング層のポリマーネットワークの少なくとも一定の比率を形成する。
【0021】
用語「結合剤」または「結合剤構成成分」は、本明細書では、関連するDIN EN ISO4618:2007-03に準拠して、顔料および充填剤を除く、コーティング材料の不揮発性画分を指す。この文脈における特定の結合剤構成成分は、エポキシ樹脂(ER1)であり、あるいはコーティング添加剤である。しかしながら、明快さのために、用語「結合剤」は、主に、成膜を左右する成分との関連で用いられ、かつ硬化剤または架橋剤を包含しない。
【0022】
本発明の水性コーティング組成物:
本発明のコーティング組成物は、水性コーティング組成物である。コーティング組成物との関連での用語「水性」は、原則的に公知である。それが意味されるのは、溶媒として意味ある比率の水を含有するコーティング組成物である。水性系が、例えば、樹脂、顔料または添加剤等の特定の構成成分の安定化のための乳化剤機能を有する共溶媒として、少なくとも少量において有機溶媒を含有することが代替的に可能であることが認められることになる。本発明の文脈における「水性」は、好ましくは、検討中の組成物が、それぞれの場合に存在する溶媒(すなわち、水および有機溶媒)の総量に対して、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも50質量%、さらにより好ましくは少なくとも60質量%の水の比率を有することを意味すると理解されるべきである。好ましくは、今度は、水の比率は、それぞれの場合に存在する溶媒の総量に対して、50質量%~99質量%、特に60質量%~98質量%である。
【0023】
「水性」の前述した定義はまた、本明細書でこの後記載される水性分散体(A)および(B)と関連で当てはまり、すなわち、前記分散体は、それぞれの場合に存在する溶媒の総量に対して、50質量%~99質量%、特に60質量%~98質量%の比率の水を有する。
【0024】
エポキシ樹脂(ER1)の水性分散体(A):
本発明の水性コーティング組成物の第1の必須成分は、エポキシ樹脂(ER1)の水性分散体(A)である。用語「水性分散体」は、当業者には周知であり、かつ好ましくは、分散体中に存在する溶媒の総量に対して、少なくとも40質量%の水を含む分散体を意味すると理解される。
【0025】
エポキシ樹脂は、平均して1個超のエポキシ基を含有する重縮合樹脂であることは公知である。前記樹脂は、例えば、ビスフェノールAまたはビスフェノールFを、エピクロヒドリンと縮合することによって製造することができ、かつ平均して2個のエポキシ基を有することができる。これらの化合物は、鎖に沿ってヒドロキシル基を含有し、末端においてエポキシ基を含有する。エポキシ基を介した架橋能力は鎖長に依存し、その理由は、前記架橋能力が、鎖長/モル質量が上がるにつれて低下するためである。
【0026】
好適なエポキシ樹脂(ER1)は、二価アルコールまたはフェノールのグリシジルエーテル、ノボラクス、カルボン酸のグリシジルエステル、またはそれらの混合物、好ましくはフェノールのグリシジルエーテル、より好ましくはビスフェノールAのグリシジルエーテルから選択される。したがって、好ましいエポキシ樹脂(ER1)は、ビスフェノールFを一切含有せず、その理由は、前記エポキシ樹脂(ER1)中のビスフェノールFの存在が、本発明のコーティング組成物から生成された硬化コーティング層の研磨性に悪影響を及ぼすおそれがあるためである。
【0027】
好ましくは、少なくとも1種のエポキシ樹脂(ER1)は、特定のエポキシ当量質量(EEW)および粘度を有する。第1の実施形態によれば、エポキシ樹脂(ER1)は、ASTM D1652-11(2019)に準拠して決定して、好ましくは100~400g/eq、より好ましくは120~300g/eq、さらにより好ましくは150~250g/eq、きわめて好ましくは185~210g/eqのエポキシ当量質量(EEW)を有する。
【0028】
さらに、この第1の実施形態のエポキシ樹脂(ER1)は、ASTM D2196-18に準拠して決定して、好ましくは1,000~20,000mPas、より好ましくは1,500~15,000mPas、きわめて好ましくは2,500~9,500mPasの、25℃での粘度を有する。
【0029】
代替的な実施形態によれば、エポキシ樹脂(ER1)は、VLN305に準拠して決定して、好ましくは250~700g/eq、より好ましくは300~600g/eq、さらにより好ましくは350~550g/eq、きわめて好ましくは380~520g/eqのエポキシ当量質量(EEW)を有する。
【0030】
さらに、この代替的な実施形態のエポキシ樹脂(ER1)は、DIN EN ISO3219:1994-10に準拠して決定して、好ましくは100~3,000mPas、より好ましくは150~2,500mPas、さらにより好ましくは200~2,000mPas、きわめて好ましくは250~1,400mPasの、100s-1における23℃での動粘度を有する。
【0031】
前述したエポキシ樹脂(ER1)の使用は、良好な光学的および機械的性質、ならびに本発明のコーティング組成物から製造されたコーティング層の高い付着性をもたらす。さらに、前記エポキシ樹脂(ER1)は、分散中の不可逆性の増粘化または固化なしで、顔料および/または充填剤の安定な分散を可能にする。
【0032】
エポキシ樹脂(ER1)の少なくとも1種の分散体(A)は、それぞれの場合に水性コーティング組成物の総質量に対して、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、さらにより好ましくは15~30質量%、きわめて好ましくは18~25質量%の総量において存在する。
【0033】
水性コーティング組成物中のエポキシ樹脂(ER1)の好適な総量は、それぞれの場合に水性コーティング組成物の総質量に対して、1~30質量%、好ましくは5~25質量%、より好ましくは8~20%、きわめて好ましくは10~15質量%の範囲である。
【0034】
水性分散体(B):
本発明の水性コーティング組成物の第2の必須成分は、0.5~5%の質量比率の、少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、および150~400g/molのNH当量を有する樹脂成分(RC)を含有する水性分散体(B)である。
【0035】
二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1):
二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)は、低分子量の化合物、すなわち500g/mol未満、好ましくは250g/mol未満の分子量を有して、各分子にとって恒常的である、分子1個当たり離散数のアミノ基を有する低分子量の化合物を意味すると理解される。
【0036】
少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)は、少なくとも65mol-%、好ましくは少なくとも75mol-%、より好ましくは少なくとも90mol-%、きわめて好ましくは100mol-%の、アミノ基および炭化水素基からなるアミンからなることが好ましい。そのため、他の官能基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシルまたはニトリルの各基は、少量でのみ存在するか、または全く存在しない。他の官能基の少量、好ましくは他の官能基の不在は、本発明のコーティング組成物から得られた硬化コーティング層の改善した研磨性をもたらす。
【0037】
対応するアミン(A1)の比率は、水性分散体(B)の総量に基づき、その製造中に分散体(B)中に導入されるアミン(A1)の量によって決定される。市販製品が使用される場合、前記アミン(A1)の比率は、一般に公知の分析方法、例えばガスクロマトグラフィー(GC)または質量分析(MS)によって決定することができる。
【0038】
好適なアミン(A1)の例は、原則として当業者に公知である単量体脂肪族アミン、芳香族アミンおよび芳香脂肪族(脂肪族-芳香族の混合)アミンである。そのようなアミンの例としては、エチレンジアミン、プロピレン-1,2-ジアミン、プロピレン-1,3-ジアミン、ブタン-1,4-ジアミン、オクタン-1,8-ジアミン、1,3-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ネオペンタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、2,2,4-(2,4,4-)トリメチルヘキサメチレンジアミン、35イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ジプロピレントリアミン、ビス(ヘキサメチレンジアミン)、N,N-5ジメチルアミノジプロピレントリアミン、ラウリルプロピレンジアミン、1,2-および1,3-(m)-キシリレンジアミンならびに1,4-ビス(アミノメチル)ベンゼンが挙げられる。さらなるアミンとしては、アミノエチルエタノールアミンあるいは複素環式ポリアミン、例えばアミノエチルピペラジンおよびビス(アミノプロピル)ピペラジンが挙げられる。
【0039】
好ましいのは、二官能性単量体第一級および/または第二級アミンである。特に好ましいのは、二官能性単量体第一級アミン、きわめて好ましいのはイソホロンジアミンおよび/またはm-キシレンジアミンである。特に好ましくは、水性分散体(B)は、少なくとも2種の二官能性単量体第一級アミン、すなわちイソホロンジアミンおよびm-キシレンジアミンを含有する。
【0040】
水性分散体(B)中の少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、好ましくはイソホロンジアミンおよび/またはm-キシレンジアミンの比率は、水性分散体(B)の総質量に対して、1~4.5質量%、好ましくは1.5~4質量%である。
【0041】
樹脂成分(RC):
樹脂成分(RC)は、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)を含む。既に記載した単量体アミン(A1)からの分界によって、これらは、ポリマー特性、および平均によってのみ説明されうる分子1個当たりのアミノ基の数を有する付加物または反応生成物である。
【0042】
樹脂成分(RC)は、好ましくは、160~350g/mol、好ましくは170~250g/molのNH当量を有する(決定の方法については実施例セクションを参照されたい)。
【0043】
少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)は、
(i)400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)と、
(ii)少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A3)と、
(iii)少なくとも1種の化合物X-R(式中、Xは、エポキシ基に対して反応性である官能基であり、Rは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン単位を含有し、かつさらなるX基を含有しない有機基である)と
の反応生成物を含有する。
【0044】
樹脂成分(RC)が、多官能性有機アミン(A2)とは別に、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A3)をさらに含有している場合、前記多官能性有機アミン(A3)が、
(i)400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)と、
(ii)少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)と
の反応生成物であることが、本発明において好ましい。
【0045】
多官能性有機アミン(A3)は、このように多官能性アミン(A2)とは異なり、その理由は、異なる出発材料が、前記多官能性有機アミンを製造するのに使用されるためである。本発明の意味における用語「反応生成物」は、列挙された化合物を互いに反応させることによって得られた化合物を意味すると理解される。これは、前記反応生成物が、前記反応生成物に関連して明示的に列挙されていないさらなる構成成分を含むことができないことを既に示唆している。
【0046】
特に好ましくは、樹脂成分(RC)は、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)、ならびに第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A3)からなる。
【0047】
多官能性有機アミン(A2)および多官能性アミン(A3)を製造するのに使用される少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)は、400g/eq未満の平均エポキシ当量(EEW)を有する。この成分の、対応して低い平均エポキシ当量質量およびそのためにより高いエポキシ官能価が、ここでもサーフェサー層中のより良好な研磨性が最終的に生成されることへと至らせることが見出された。より好ましくは、平均エポキシ当量質量は、DIN EN ISO3001:2019-08に準拠して決定して、350g/mol未満、好ましくは300g/mol未満、より好ましくは250g/mol未満、きわめて好ましくは160~200g/molである。平均エポキシ当量は、使用されるすべてのエポキシ化合物のエポキシ当量を決定してエポキシ化合物の総質量におけるそれらの質量比率を秤量することによって得ることができる。(そこでエポキシ化合物が既に共有結合されていることがある)市販製品の場合、平均エポキシ当量質量は、生成物の分析によって、例えばガスクロマトグラフィー(GC)または質量分析(MS)によって決定することができる。
【0048】
少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)が、平均して1~5のエポキシ官能価、好ましくは1~4のエポキシ官能価、より好ましくは1~3のエポキシ官能価、きわめて好ましくは2のエポキシ官能価を有していることが好ましく、その理由は、前記エポキシ樹脂が、直ちに市販で入手可能であるためである。
【0049】
好適なエポキシ樹脂(ER2)は、任意にヒドロキシル基を含む、飽和または不飽和の、脂肪族および脂肪族-芳香族混合化合物とすることができ、例えば、二価アルコールまたはフェノールのグリシジルエーテル、ノボラクス、カルボン酸のジグリシジルエステル、またはそれらの混合物から選択される。フェノールの中では、レゾルシノール、ヒドロキノン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA);ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノールF)、テトラブロモビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-[4-(2’-ヒドロキシプロポキシ)-フェニル]-プロパン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-イソブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)-プロパン、ビス-(2-ヒドロキシナフチル)-メタン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)スルホンの、異性体の混合物、ならびに挙げられた化合物のハロゲン化および水和の生成物。ジオレフィンのエポキシド化によって作製されたジエポキシアルカンを使用することもまた可能である。
【0050】
特に好ましいエポキシ樹脂(ER2)は、フェノールのグリシジルエーテル、きわめて好ましくはビスフェノールAのグリシジルエーテルである。そのため、特に好ましいエポキシ樹脂(ER2)は、ビスフェノールFを一切含有しない。エポキシ樹脂(ER2)中でのビスフェノールFの不在が、本発明のコーティング組成物から生成された硬化コーティング層の増強した研磨性をもたらすことが見出された。
【0051】
多官能性有機アミン(A2)および多官能性アミン(A3)を製造するのに使用される少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)は、水性分散体(B)との関連で先に記載されたアミン(A1)に対応している。
【0052】
多官能性有機アミン(A2)の製造では、少なくとも1種の特定の化合物X-Rが使用される。好ましいのは、正確に1種の化合物X-Rを使用することである。
【0053】
X基は、当業者に公知の基であり、例えば第一級または第二級アミノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基またはチオール基である。化合物X-Rがまさに1個のX基を有することが重要である。そうでなければ、本発明のコーティング組成物から得られた硬化コーティング層の研磨性に、有害作用が見出される。好ましいX基はアミノ基であり、それらの中では、好ましくは第一級アミノ基である。アミノ基の、エポキシ基との良好な反応性とは別に、第一級アミンは2つのNH当量を有し、それゆえ、エポキシドへの結合部位を有する。このように、化合物X-Rの、多官能性有機アミン(A2)の側鎖位置中への組み込みが起こりうる。アミノ基、好ましくは第一級アミン基の存在は、本発明のコーティング組成物から得られた硬化コーティング層の、改善した研磨性をもたらす。
【0054】
R基は、ポリオキシアルキレン単位、特に好ましくはポリエチレンもしくはポリプロピレン単位、またはポリエチレン/ポリプロピレン混合単位を含有する有機基である。
【0055】
有機R基が、合成から得られた任意の分子単位とは別に、ポリオキシアルキレン単位からなることが好ましい。単純さのために、そのようなR基はまた、ポリオキシアルキレン基とも称される。合成から得られた分子単位は、例えば、ポリオキシアルキレン鎖の形成の出発において使用される分子の有機基、例えば、そのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの重合が開始される手段によるスターターアルコールである。
【0056】
特に好ましい化合物X-Rは、第一級ポリオキシアルキレンモノアミンから選択される。前記化合物は、合成することができる、または商業的に、例えばHuntsman Corporationから商品名「Jeffamine」で得ることができる。
【0057】
化合物X-Rの質量平均分子量は広く多様であり得、(光散乱でのサイズ排除クロマトグラフィーのカップリングの手段によって決定して)例えば800~2,200g/molの範囲にある。
【0058】
特に好ましくは、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)は、成分(i)と(ii)と(iii)との反応生成物からなる。そのため、多官能性有機アミン(A2)は、前述した反応生成物とは別の、さらなる化合物は含まない。
【0059】
分散体(B)は、好ましくは、分散体の総質量に対して、かつDIN EN ISO3251:2018-07に準拠して決定して、25~45質量%の固体含有量を有する。
【0060】
少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)ならびに樹脂成分(RC)を含む水性分散体(B)は、例えば、本明細書で後に詳細に記載されることになる2工程方法によって製造可能である。
【0061】
工程(1):
第1の工程(1)では、アミノ官能性樹脂混合物(I)は、エポキシ官能性樹脂混合物(Ia)を、少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)を含有する成分(Ib)と反応させることによって製造される。エポキシ官能性樹脂混合物(Ia)は、400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)を、少なくとも1種の化合物X-Rと反応させることによって製造される。この目的のために、エポキシ樹脂(ER2)のエポキシ基は、化合物X-Rの反応性単位Xに対するモル化学両論過剰量において使用される。反応性単位Xの数は、各エポキシ基についての化合物X-R中の潜在的結合部位の数を意味する。ヒドロキシル基または第二級アミノ基について、例えば、X基1個当たり1つの反応性単位が存在する。第一級アミノ基について、2つの反応性単位(2つのNH官能価)が存在する。好ましくは、エポキシ樹脂(ER2)のエポキシ基の、成分X-RのX基のエポキシ反応性単位に対するモル比は、10~1.1、より好ましくは5~1.5、特に好ましくは3.5~1.8である。エポキシ樹脂(ER2)中のエポキシ基の量は、エポキシ当量質量を決定することによって、得ることができる、または適当に適合させることができる。X基中の反応性単位の量は、例えば、アミン価、OH価または酸価の決定によって決定することができる(DIN53176:2002-11、DIN53240-3:2016-03、DIN EN ISO2114 Correction1:2006-11)。
【0062】
エポキシ官能性樹脂混合物(Ia)は、好ましくは500~1,500g/mol、より好ましくは600~1,200g/molのエポキシ当量質量を有する。
【0063】
エポキシ官能性樹脂混合物(Ia)と反応させる成分(Ib)は、少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)を含む。好ましくは、成分(Ib)は、少なくとも1種のそのようなアミン(A1)からなる。
【0064】
好適なエポキシ樹脂(ER2)、化合物X-Rおよびアミン(A1)の例は、既に上に記載されており、かつ対応して当てはまりうる。
【0065】
樹脂混合物(I)は、アミノ官能性樹脂混合物である。そのため、化合物(Ib)の、エポキシ官能性樹脂混合物(Ia)に対する、モル過剰量のNH当量が用いられなければならない。特に、樹脂混合物(I)のNH当量は、50~140g/mol、好ましくは70~130g/molである(決定の方法については実施例セクションを参照されたい)。さらに、樹脂混合物(I)は、17.5%~40質量%、好ましくは25質量%~35質量%の比率の、二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、すなわち成分(Ib)を含む。両方の評価基準を、当業者により、2種の成分のモル量の好適な選択によって、かつそれ自体公知の条件および反応レジメ下でエポキシ基およびNH官能価の定量的転換が存在するという知識において、適合させることができる。好ましくは、樹脂混合物(I)は、その製造後、水中分散体にあり、この場合、水性分散体にある。
【0066】
樹脂混合物(I)は、上に記載の通りにそのようなものとして生成することができ、ゆえに水性分散体において得ることができる。市販の樹脂混合物(I)の水性分散体を購入することが、同様に可能である(例えばBeckopox VEH2849w/80WA(Allnex製)として)。
【0067】
工程(2):
水性分散体(B)は、第2の工程(2)において、アミノ官能性樹脂混合物(I)を含有する成分(IIa)を、400g/mol未満、好ましくは350g/mol未満、より好ましくは250g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性有機エポキシ樹脂(ER2)を含有する成分(IIb)と反応させることによって得られる。所望であれば、水性分散体(B)の製造中に使用される有機溶媒を除去することができる。樹脂成分(RC)がアミン官能性であるため、成分(IIa)のNH当量の、成分(IIb)のエポキシ基に対するモル過剰量が用いられる。
【0068】
好ましいのは、工程(1)からの直接反応生成物を成分(IIa)として使用することであり、その理由は、樹脂混合物(I)が工程(1)後に水性分散体として得られ、かつそのようにして工程(2)において直接使用することができ、これが水性相中で起こるためである。工程(2)を実施する前に、溶媒または添加剤、例えば乳化剤を、前記反応生成物に添加することができる。
【0069】
成分(IIa)は、好ましくは、アミノ官能性樹脂混合物(I)とは別に、成分(IIb)と反応することができる任意のさらなる化合物を含有しない。
【0070】
成分(IIb)は、好ましくは、上記の必要条件に合致するエポキシ当量質量を有する少なくとも1種の、好ましくは正確に1種の、二官能性および/または多官能性有機エポキシ樹脂(ER2)からなる。好適なエポキシ化合物の例は、成分として既に上に記載されたものである。
【0071】
上記の方法はまた、既存の市販製品(例えば上記のBeckopox VEH2849w/80WA)の利用も可能にする。そのため、水性分散体(B)は、適当なエポキシドを有する市販製品の単純な改質によって容易に得ることができる(その理由は、この最後の反応とは別に、すべてのさらなる反応プロセスが、市販製品の製造において既に実践されているためである)。
【0072】
しかしながら、水性分散体(B)はまた、1工程方法によっても得ることができ、そこで、すべての出発材料は、アミンおよびエポキシドの化学量論を適合させることによって一緒に反応させる。最初にエポキシ樹脂(ER2)を化合物X-Rと反応させて、さらに、得られた生成物を、さらなるエポキシドおよび単量体アミン(A1)と反応させることもまた可能であると考えられる。
【0073】
樹脂成分(RC)は、それぞれの場合に水性コーティング組成物の固体含有量に対して、10~30質量%、好ましくは15~25質量%の総量において存在することが好ましい。
【0074】
少なくとも1種のカルボン酸基を有する芳香族化合物(C):
本発明の水性コーティング組成物の第3の必須成分は、少なくとも1種のカルボン酸基を有する芳香族化合物(C)である。芳香族化合物は、分子中に少なくとも1つの芳香族部分を有する化合物を表す。カルボン酸基は、芳香族部分に直接結合されうるか、またはリンカーを介して結合されうるか、のいずれかである。好ましくは、カルボン酸基は、芳香族部分に直接結合される。
【0075】
好ましい化合物(C)は、少なくとも1個のヒドロキシル基をさらに含む。少なくとも1個のヒドロキシル基の存在は、ヒドロキシル基を一切有していない芳香族化合物と比較して、架橋反応の促進を改善することが見出された。
【0076】
特に好ましいのは、レゾルシノール、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸(ベータ-レソルシル酸)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチシン酸)、2,6-ジヒドロキシ安息香酸(ガンマ-レソルシル酸)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸(プロトカテキュ酸)、3,5-ジヒドロキシ安息香酸(アルファ-レソルシル酸)、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸、およびこれらのアルキル誘導体、例えば2-ヒドロキシ-3-、-4-および-5-メチル-安息香酸(クレソチン酸)、およびそれらの混合物である。特に好ましくは、サリチル酸が、化合物(C)として使用される。
【0077】
少なくとも1種の芳香族化合物(C)は、それぞれの場合に水性コーティング組成物の総質量に対して、0.1~5質量%、より好ましくは0.2~3質量%、さらにより好ましくは0.3~1質量%、きわめて好ましくは0.4~0.7質量%の総量において存在することが好ましい。
【0078】
水性コーティング組成物のさらなる任意の成分:
本発明の水性コーティング組成物は、好ましくは、少なくとも1種の顔料および/または充填剤を含む、すなわち本発明の水性コーティング組成物は、好ましくは着色コーティング層をもたらす。好ましい顔料は、黒色および/または白色顔料である。コーティング組成物は、このように、好ましくは、少なくとも1種の黒色顔料もしくは少なくとも1種の白色顔料、または少なくとも1種の白色顔料および1種の黒色顔料を含有する。これは、本発明のコーティング組成物が、好ましくは、黒色、白色または(多様なグラデーションにおける)灰色を有することを意味する。組成物はまた、さらなる顔料も含有することができる。好ましい黒色顔料は、粉末形態において市販されている、典型的な有機および無機の、特に無機の黒色顔料である。特に挙げるべきなのは、顔料ブラック(カーボンブラック)、酸化鉄(Fe)顔料、例えば典型的な合成酸化鉄(例えば、Lanxessから商品名Bayferroxで入手可能)、混合酸化物顔料、例えばマンガンブラックまたはスピネルブラックである。きわめて特に好ましいのは、顔料ブラック(カーボンブラック)および酸化鉄顔料である。
【0079】
好ましい白色顔料は、典型的な無機白色顔料、例えば、二酸化チタン(例えば、Kronosからの商品名Kronosで知られるルチル顔料)、亜鉛15酸化物、硫酸亜鉛または三酸化アンチモニーである。きわめて特に好ましいのは、二酸化チタン、特にそのルチル修飾における二酸化チタンである。
【0080】
さらなる好ましい顔料は、「耐食性顔料」として当業者に公知である顔料である。本明細において特に好ましいのは、リン酸亜鉛である。リン酸亜鉛は白色を有しているものの、それは白色顔料として分類されず、その耐食効果によって耐食性顔料として分類されている。
【0081】
顔料の比率は、それぞれの場合にコーティング組成物の固体含有量に対して、好ましくは15~25質量%、きわめて好ましくは20質量%である。
【0082】
存在するのが好ましい充填剤は、それ自体公知であり、当業者に馴染みがあるすべての無機および有機充填剤であり、好ましくは無機充填剤である。そのため、充填剤は特に、例えば、コーティング組成物の特定の物理的性質の達成のために顆粒形態においてまたは粉末形態において使用される、かつそれぞれの使用媒質中で不溶性である、当業者に公知の物質が挙げられる。これらとしては、特に、炭酸塩、例えば炭酸カルシウムまたは炭酸バリウム、硫酸塩、例えば硫酸カルシウムおよび硫酸バリウム、ケイ酸塩および層状ケイ酸塩、例えばタルク、ピロフィライト、マイカ、カオリン、沈降ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム/アルニミウム、ケイ酸ナトリウム/アルミニウム、およびムライト、シリカ、例えば石英、クリストバライト、沈降シリカ、または特に、例えば商品名Aerosil(Evonik製)で入手可能なフュームドシリカ、金属酸化物および水酸化物、例えば水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0083】
充填剤の比率は、それぞれの場合にコーティング組成物の固体含有量に対して、好ましくは30~50質量%、特に30~40質量%である。
【0084】
加えて、コーティング組成物はまた、少なくとも1種の添加剤も含有してもよい。そのような添加剤の例は、光安定剤、抗酸化剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合抑制剤、付着促進剤、レベリング剤、成膜助剤、増粘剤、垂れ調整剤(SCA)または腐食抑制剤である。それらは、通例かつ既知の量において使用される。同じことが、それらがコーティング組成物の水性特性を変更しないような量で使用される有機溶媒の可能な使用にも当てはまる。
【0085】
水性コーティング組成物の性質
硬化条件下で迅速で完全な架橋を確実にするために、水性コーティング組成物は、好ましくは、樹脂化合物(RC)のNH基の、エポキシ樹脂(ER1)のエポキシ基に対する特定のモル比を含有する。したがって、樹脂化合物(RC)のNH基の、エポキシ樹脂(ER1)のエポキシ基に対するモル比が、0.74:1~0.95:1、好ましくは0.9:1であるならば、好ましい。
【0086】
2Kコーティング組成物の固体含有量は、個々の場合の要請に応じて多様であってもよいが、好ましくは水性コーティング組成物の総質量に対して、かつDIN EN ISO3251:2018-07に準拠して決定して、70~85質量%の範囲内にある。固体含有量は、主に用途のために、より特定すると噴霧用途のために要請される粘度によって導かれ、したがって、いくつかの調査試験からの支援を任意に伴って、当業者の一般の当技術分野の知識に基づいて、当業者により適合されうる。
【0087】
コーティング組成物は、コーティング組成物の製造に通例かつ公知である混合方法および混合ユニット、例えば撹拌タンク、撹拌ミル、パールミル、押出機、混錬機、Ultraturrax、インライン溶解機、静的ミキサー、歯付きリング分散機、膨張ノズルおよび/または微細流動化装置を用いて製造することができる。
【0088】
本発明のコーティング組成物は、サーフェサーおよび/またはプライマーサーフェサーとして優れた好適性のものである。したがって、本発明のコーティング組成物は、好ましくはサーフェサーまたはプライマーサーフェサーである。サーフェサーおよびプライマーサーフェサーの使用の、機能、立体配置および分野は、原則的に当業者に公知であり、この点において分界特性を有する。サーフェサーは、一般に、自動車OEM塗装の文脈において(先に硬化された電着への)中間層として適用され、別々に硬化され、次いでベースコートおよびクリアコートでオーバーコーティングされる。プライマーサーフェサーは、特に、それらが、元の塗装系における局所損傷領域を充填すること、および基材上の適当な付着性および耐食性の保証を得ることを左右するところの自動車塗り替えセクターにおける使用を見出している。
【0089】
本発明のキットオブパーツ:
エポキシ樹脂(ER1)の、水性分散体(B)の成分との反応を阻止するために、本発明のコーティング組成物は、好ましくは多成分コーティング組成物、より好ましくは2成分コーティング組成物として配合される。多成分組成物では、コーティング組成物の化合物は、別々の容器中に収容され、かつコーティング組成物は、好ましくは製造済みコーティング組成物を基材に適用する直前に、容器の含有物を混合することによって製造される。
【0090】
したがって、本発明はまた、2種の別々の成分A)とB)を含むキットオブパーツであって、成分A)とB)が、
A)エポキシ樹脂(ER1)の少なくとも1種の水性分散体(A)を含有する少なくとも1種の水性ベースワニスであり、前記エポキシ樹脂(ER)が平均して分子1個当たり少なくとも1個のエポキシ基を有する、水性ベースワニスと、
B)少なくとも1種の水性硬化剤成分であり、
- 0.5~5質量%の比率の、少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、ならびに150~400g/molのNH当量を有する樹脂成分(RC)を含む少なくとも1種の水性樹脂分散体(B)であり、該樹脂成分(RC)が、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)を含み、前記少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)が、
(i)400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)、
(ii)少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、および
(iii)少なくとも1種の化合物X-R(式中、Xは、エポキシ基に対して反応性である官能基であり、Rは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン単位を含有し、かつさらなるX基を含有しない有機基である)
の反応生成物を含有する、水性樹脂分散体(B)、ならびに
-少なくとも1個のカルボン酸基を有する少なくとも1種の芳香族化合物(C)
を含有する、
水性硬化剤成分と
である、
キットオブパーツにも関する。
【0091】
したがって、本発明のキットオブパーツは、少なくとも2種の成分A)とB)とを含み、好ましくは、該キットオブパーツは、正確にこれらの2種の成分A)とB)とからなる。さらなる化合物、例えば溶媒または添加剤が、別々の成分として存在することができること、および成分A)とB)とを混合した後に得られたコーティング組成物の粘度を適合させるのに使用できることもまた、本発明において可能である。
【0092】
前記本発明のキットオブパーツでは、以下に定義されるベースワニス(成分A))および硬化剤成分(成分B))は、互いに別々に製造されて貯蔵され、基材に適用するすぐ直前にのみ互いに混合される。処理時間またはポットライフ(すなわち、その中で成分A)とB)とを混合することによって得られるコーティング組成物の時間が、室温(15~25℃、特に20℃)にて処理されて適用されうる)は、ベースワニスおよび硬化剤成分中に存在する化合物に依存する。本発明の文脈では、成分A)とB)とを混合することによって得られたコーティング組成物の処理時間は、好ましくは少なくとも2分~最大で60分、より好ましくは少なくとも5分~最大で60分である。そのような2成分コーティング組成物の特定の利点は、硬化を、100℃未満の温度にて果たすことができ、そのため、前記2成分組成物を、塗り替え用途において好適にすることである。
【0093】
ベースワニスA)が、結合剤および溶媒として使用されるエポキシ樹脂(ER1)は別として、組成物のすべてのまたは大半のさらなる官能性構成成分、例えば、顔料、充填剤および添加剤を通常含有し、その一方で、硬化剤成分B)が、溶媒および存在する任意の添加剤は別として、架橋を意図された化合物のみを含有することは、同様に知られている。多成分コーティング組成物との関連における用語「ベースワニス成分」および「硬化剤成分」は、当業者に公知であり、かつ立体配置の一定の範囲内で、特徴付けする要素、およびゆえに分界特性もまた有する。ベースワニスA)が、成分A)とB)とを混合した後に得られたコーティング組成物中で使用される顔料および充填剤、好ましくはすべての顔料および充填剤を含有しているならば、本発明の文脈において特に好ましい。ベースワニスA)が、少なくとも1種のエポキシ樹脂(ER1)は別として、他のエポキシ樹脂を全く含まないことが同様に好ましく、すなわち、エポキシ樹脂(ER1)では、ベースワニスA)の結合剤成分が、少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%を占める。結合剤成分は、分散体の固体(不揮発性成分)から、顔料と充填剤との比率をマイナスすることから得られる。エポキシ基は、2種の主な成分A)とB)とを混合した後に、硬化剤成分B)中に存在するポリアミン成分のNH官能価と反応してネットワーク構造を形成し、このようにしてコーティング組成物から生成されたコーティング層を硬化させるのに寄与することができる。
【0094】
ベースワニスA)が水性分散体の形態にあるならば、さらにより好ましい。
【0095】
顔料および充填剤が、コーティング組成物中、分散体の形態において使用されることは原則的に公知である。これは、コーティング組成物の製造が、そこで顔料または充填剤が、粉砕機または溶解機中の高い剪断力の導入を伴って、樹脂および一般に水等の溶媒を用いて分散される工程を含むことを意味する。樹脂は、本明細書では、分散効果または乳化効果を有し、単純に、顔料または充填剤の安定化を促進する。分散のさらなる支援のために、当然ながら、追加の添加剤を使用することもまた可能である。分散体の生成が、ベースワニスA)がこのようにして最終的に分散体からなるように、ベースワニスA)中に導入されることになるすべての塗装構成成分の添加を含むことも、同様に可能である。そのため、分散体は、少なくとも(しかし必ずしも排他的にではなく)相互に分散された形態にある樹脂ならびに顔料および/または充填剤を含有する混合物である。
【0096】
ベースワニスA)が好ましくは分散体を含有するまたは分散体からなるという事実は、そのようにして、分散体が、上に記載されたように生成され、次いで、ベースワニスA)を生成するのに依然として不在であるさらなる塗装成分を用いて(例えば標準の撹拌機器を用いて)完了させるか、あるいは、分散体の生成の場合に、ベースワニスA)のすべての構成成分が分散プロセスへと導入されて、それゆえに分散体がベースワニスA)を構成するか、のいずれかを意味する。分散体が好ましくは水性であるため、水が、好ましくは、実際の分散プロセスにおいて使用される。
【0097】
少なくとも1種のエポキシ樹脂(ER1)、水性分散体(B)、化合物(C)、顔料および/または充填剤、ならびに本発明のキットオブパーツの成分A)および/またはB)中に存在しうるさらなる添加剤および化合物を含む好ましい水性分散体(A)に関して、本発明のコーティング組成物に関する前記成分の説明への参照がなされる。
【0098】
本発明のコーティング組成物について言われてきたことは、本発明のキットオブパーツのさらなる好ましい実施形態に関して準用される。
【0099】
本発明の方法:
本発明は、そこで本発明のコーティング組成物が基材に適用され、コーティング膜が形成され、その後、硬化される、コーティングを基材上に生成する方法をさらに提供する。硬化コーティング層は研磨されて、さらなるコーティング層でコーティングされうる。そこでコーティング組成物が使用される本発明の方法の文脈において、上に記載した、コーティング組成物に関しての特定のかつ好ましい実施形態を同様に当てはめることができることが認められることになる。
【0100】
工程(i):
本発明の方法の工程(i)では、本発明の水性コーティング組成物、または本発明のキットオブパーツから製造されたコーティング組成物が、基材に適用される。本発明の意味における組成物の基材への適用は、金属基材上への直接の適用に制限されない。そうではなく、金属基材と、組成物によって形成された層との間の少なくとも1つのさらなる層が存在してもよい。これは、例えば、コーティング組成物がOEM塗装におけるサーフェサーとして使用されるときの場合である。その理由は、そのような場合、サーフェサー層と金属基材との間に少なくとも1つの電着層が存在することになるためである。換言すると、そこに本発明の組成物が適用される基材は、そのようにして、電着層でコーティングされた金属基材である。
【0101】
組成物の基材への適用は、最先端の公知の方法によって、例えば噴霧、ナイフコーティング、塗装、注入、液浸、浸透、散水またはローリングによって果たすことができる。好ましいのは、噴霧方法を採ることである。
【0102】
使用される基材は、例えば、金属基材、好ましくは自動車工業(車両製造)において使用される金属基材である。有利には、未合金化および合金化の鋼および/または鉄、亜鉛およびアルミニウム基材ならびに対応する合金が使用される。さらに、コーティング組成物はまた、プラスチック基材、ならびに金属部分およびプラスチック部分を有する基材にも適用することができる。さらに、組成物はまた、古い塗装、例えば、欠陥部位を有する多層コーティング上にも適用することができる。
【0103】
工程(ii):
コーティング組成物が基材に適用された後、ポリマー膜がそこから形成される。前記成膜は、好ましくは、適用済み組成物の乾燥によっておよび/または蒸散によって行われる。本発明の文脈における乾燥および蒸散は、有機溶媒および/または水の蒸発を意味し、その結果として塗装は乾燥するが、未だ硬化はせず、より特定すると完全に架橋されたコーティング膜を未だ形成していない。
【0104】
適用済みコーティング組成物の乾燥および/または蒸散は、好ましくは15~25℃にて1~60分間実施される。
【0105】
工程(iii):
本発明の方法の工程(iii)では、工程(ii)において形成されたコーティング膜は、公知の方法によって硬化される。硬化は、当業者に公知の方法、換言すると、膜として基材に適用されたコーティング組成物の、すぐ使える状態への転換、したがって、換言すると、そこで、検討中のコーティングで付与された基材がその意図された使用に置かれうる状態への転換を意味する。同様に塗り替えに関連性のある問題との、かつ本発明の文脈において取り組まれてきた問題との関連で、すなわち良好な研磨性、正確には研磨性およびそれに続くオーバーコーティング性を得ることは、当然ながら、意図された使用のための評価基準である。硬化は、特に、エポキシド樹脂(ER1)の反応性官能基と、水性分散体(B)の化合物との化学反応によって果たされる。これらの架橋反応の結果として、かつ存在する任意の有機溶媒および/または水の平行した蒸発の結果として、コーティング膜が生成され、すなわち硬化コーティング層(硬化コーティング)が生成される。反応の活性化が、熱エネルギーの手段によって可能であるが、本発明の場合、高い温度が必要でないという上記の利点が存在する。
【0106】
硬化は、例えば、15~180℃、特に20~80℃、最も好ましくは20~65℃の温度にて果たされる。これらの好ましい比較的低い硬化温度は、特に、コーティング組成物が、好ましくは(2K)コーティング組成物として配合されるという事実からもたらされ、その場合、具体的には、低い硬化温度のみが熱架橋に必要とされる。硬化の期間は、個々の場合で著しく多様であってもよく、例えば、5分から16時間の間、好ましくは20分~80分である。これらの好ましい比較的短い硬化時間は、特に、本発明の組成物が、それにもかかわらず、硬化コーティングの研磨を可能にするのに十分な硬度を有するために、それにもかかわらず比較的低い温度にて、比較的短い硬化時間のみを要するという事実からもたらされる。それがこの点においてきわめて特に好ましい硬化操作は、40~65℃にて20~80分間、果たされる。
【0107】
工程(iii)における硬化の後にもたらされる好ましい層の厚さは、車両工業において通例の厚さであり、例えば、5~200マイクロメートル、好ましくは10~150マイクロメートル、より好ましくは30~80マイクロメートルの範囲である。
【0108】
任意の工程(iv):
本発明の方法の任意の工程(iv)では、工程(iii)後に得られた硬化コーティング層が研磨される。この工程は、好ましくは、さらなるコーティング層が、工程(iii)において形成された硬化コーティング層の頂部上に適用されることになる場合に実施される。研磨は、当技術分野で一般に公知である方法によって、例えば、適当なサンドペーパーおよび研磨機器を用いることによって実施することができる。
【0109】
任意の工程(v):
本発明の方法の任意の工程(v)では、少なくとも1つのさらなるコーティング層が適用されて硬化される。前記工程は、工程(iii)または任意の工程(iv)の後に、好ましくは任意の工程(iv)の後に実施することができる。少なくとも1つのさらなるコーティング層は、着色ベースコート層および/またはクリアコート層から選択される。
【0110】
ベースコート層および/またはクリアコート層は、商業的に公知の水性または溶媒系ベースコートおよび/またはクリアコート組成物の適用によって得ることができる。さらなるコーティング組成物が適用される場合、マルチコート塗装系が形成される。
【0111】
既に上に示されたように、本発明のコーティング組成物は、特に有利には、塗り替えセクターにおける、特に自動車塗り替えにおけるプライマーサーフェサーとして使用可能である。したがって、本発明の特定の実施形態では、基材は、そこで、それぞれの多層コーティングが局所的損傷(欠陥)を有している、既に完全に塗装済みの金属基材、特にマルチコート自動車塗装系で塗装されたものである。より特定すると、これらは、そのように、損傷、例えばストーンチップ損傷などを有する、自動車の車体またはその部品である。そのため、損傷領域において、元の多層コーティングは、外部の作用によって少なくとも部分的に剥離されてきた。次いで、本発明のコーティング組成物は、これらの損傷領域の修復、すなわち塗り替えにおいて、プライマーサーフェサーとして使用される。一般に、塗り替え操作において、プライマーの適用は、損傷した元のコーティング済み基材の洗浄および研磨の後に行われる。これは、存在する元のコーティングの任意の不十分でしかない付着領域および部分的な剥離領域、ならびに/または既に形成されていて特に金属基材を局所的に暴露させている腐食生成物を除去する。そのため、それは、広範な異なる界面を有する複合的な基材表面である。ここでの1つの界面は、完全に暴露された金属基材を伴うものである。さらなる界面および端部を、洗浄され研磨された損傷部位と、無傷な元の塗装系を有するこれらの部位を囲む領域との間の領域において見出すことができる。すべてのこれらの界面において、1種かつ同一のコーティング組成物が、適切な付着を確実にしなければならない。そのため、本発明の組成物は大いなる有利性を付与し、その理由は、この損傷領域においてさえ、優れた付着性、耐食性および研磨性が、それにもかかわらず得られるためである。
【0112】
本発明のコーティング組成物および本発明のキットオブパーツについて言われてきたことは、本発明の方法のさらなる好ましい実施形態に関して準用される。
【0113】
本発明のコーティング済み基材:
本発明の方法の工程(iii)または任意の工程(v)後の結果は、コーティング済み基材である。
【0114】
本発明のコーティング組成物、本発明のキットオブパーツおよび本発明の方法について言われてきたことは、本発明のコーティング済み基材のさらなる好ましい実施形態に関して準用される。
【0115】
本発明は、以下の実施形態によって、具体的に説明される:
実施形態1:
水性コーティング組成物であって、
a)エポキシ樹脂(ER1)の少なくとも1種の水性分散体(A)であり、前記エポキシ樹脂(ER)が平均して分子1個当たり少なくとも1個のエポキシ基を有する、水性分散体(A)と、
b)0.5~5質量%の比率の、少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、ならびに150~400g/molのNH当量を有する樹脂成分(RC)を含む、少なくとも1種の水性樹脂分散体(B)と、
c)少なくとも1個のカルボン酸基を有する少なくとも1種の芳香族化合物(C)と
を含み、
該樹脂成分(RC)が、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)を含み、前記少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)が、
(i)400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)、
(ii)少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、ならびに
(iii)少なくとも1種の化合物X-R(式中、Xは、エポキシ基に対して反応性である官能基であり、Rは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン単位を含有し、かつさらなるX基を含有しない有機基である)
の反応生成物を含有する、
水性コーティング組成物。
【0116】
実施形態2:エポキシ樹脂(ER1)が、二価アルコールまたはフェノールのグリシジルエーテル、ノボラクス、カルボン酸のグリシジルエステル、またはそれらの混合物、好ましくはフェノールのグリシジルエーテル、より好ましくはビスフェノールAのグリシジルエーテルから選択される、実施形態1に記載の水性コーティング組成物。
【0117】
実施形態3:エポキシ樹脂(ER1)が、ASTM D1652-11(2019)に準拠して決定して、100~400g/eq、好ましくは120~300g/eq、より好ましくは150~250g/eq、きわめて好ましくは185~210g/eqのエポキシ当量質量(EEW)を有する、実施形態1または2に記載の水性コーティング組成物。
【0118】
実施形態4:エポキシ樹脂(ER1)が、ASTM D2196-18に準拠して決定して、1,000~20,000mPas、好ましくは1,500~15,000mPas、きわめて好ましくは2,500~9,500mPasの、25℃での粘度を有する、実施形態1から3のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0119】
実施形態5:エポキシ樹脂(ER1)が、VLN305に準拠して決定して、250~700g/eq、好ましくは300~600g/eq、より好ましくは350~550g/eq、きわめて好ましくは380~520g/eqのエポキシ当量質量(EEW)を有する、実施形態1または2に記載の水性コーティング組成物。
【0120】
実施形態6:エポキシ樹脂(ER1)が、DIN EN ISO3219:1994-10に準拠して決定して、100~3,000mPas、好ましくは150~2,500mPas、より好ましくは200~2,000mPas、きわめて好ましくは250~1,400mPasの、100s-1における23℃での動粘度を有する、実施形態1、2または5のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0121】
実施形態7:エポキシ樹脂(ER1)の少なくとも1種の分散体(A)が、それぞれの場合に水性コーティング組成物の総質量に対して、5~50質量%、好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~30質量%、きわめて好ましくは18~25質量%の総量において存在する、実施形態1から6のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0122】
実施形態8:エポキシ樹脂(ER1)が、それぞれの場合に水性コーティング組成物の総質量に対して、1~30質量%、好ましくは5~25質量%、より好ましくは8~20質量%、きわめて好ましくは10~15質量%の総量において存在する、実施形態1から7のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0123】
実施形態9:少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)が、少なくとも65mol-%、好ましくは少なくとも75mol-%、より好ましくは少なくとも90mol-%、きわめて好ましくは100mol-%の、アミノ基および炭化水素基からなるアミンからなる、実施形態1から8のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0124】
実施形態10:少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)が、二官能性単量体第一級および/または第二級アミン、好ましくは二官能性単量体第一級アミン、きわめて好ましくはイソホロンジアミンおよび/またはm-キシレンジアミンから選択される、実施形態1から9のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0125】
実施形態11:水性分散体(B)中の少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、好ましくはイソホロンジアミンおよび/またはm-キシレンジアミンの比率が、水性分散体(B)の総質量に対して、1~4.5質量%、好ましくは1.5~4質量%である、実施形態1から10のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0126】
実施形態12:樹脂成分(RC)が、160~350g/mol、好ましくは170~250g/molのNH当量を有する、請求項1から11のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0127】
実施形態13:樹脂成分(RC)が、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A3)をさらに含有し、前記多官能性有機アミン(A3)が、
(iii)400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)と、
(iv)少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)と
の反応生成物である、
実施形態1から12のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0128】
実施形態14:樹脂成分(RC)が、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)、ならびに第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A3)からなる、実施形態1から13のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0129】
実施形態15:少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)が、DIN EN ISO 3001:2019-08に準拠して決定して、350g/mol未満、好ましくは300g/mol未満、より好ましくは250g/mol未満、さらにより好ましくは200g/mol未満、きわめて好ましくは160~200g/molの平均エポキシ当量質量を有する、実施形態1から14のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0130】
実施形態16:少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)が、平均して1~5のエポキシ官能価、好ましくは1~4のエポキシ官能価、より好ましくは1~3のエポキシ官能価、きわめて好ましくは2のエポキシ官能価を有する、実施形態1から15のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0131】
実施形態17:少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)が、二価アルコールまたはフェノールのグリシジルエーテル、ノボラクス、カルボン酸のジグリシジルエステル、またはそれらの混合物、好ましくはフェノールのグリシジルエーテル、きわめて好ましくはビスフェノールAのグリシジルエーテルから選択される、実施形態1から16のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0132】
実施形態18:少なくとも1種の化合物X-R中のXが、第一級もしくは第二級アミノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基またはチオール基、好ましくは第一級アミノ基から選択される、実施形態1から17のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0133】
実施形態19:少なくとも1種の化合物X-R中の有機基R中の少なくとも1つのポリオキシアルキレン単位が、ポリエチレン単位、ポリプロピレン単位およびポリエチレン/ポリプロピレン混合単位から選択される、実施形態1から18のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0134】
実施形態20:少なくとも1種の化合物X-R中のRが、ポリオキシアルキレン単位からなる、実施形態1から19のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0135】
実施形態21:少なくとも1種の化合物X-Rが、第一級ポリオキシアルキレンモノアミンから選択される、実施形態1から20のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0136】
実施形態22:少なくとも1種の化合物X-Rが、光散乱にカップリングされたGPCによって決定して、800~2,200g/molの質量平均分子量Mを有する、実施形態1から21のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0137】
実施形態23:第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)が、成分(i)と(ii)と(iii)との反応生成物からなる、実施形態1から22のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0138】
実施形態24:少なくとも1個の分散体(B)が、分散体の総質量に対して、かつDIN EN ISO3251:2018-07に準拠して決定して、25~45質量%の固体含有量を有する、実施形態1から23のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0139】
実施形態25:樹脂成分(RC)が、それぞれの場合に水性コーティング組成物の固体含有量に対して、10~30質量%、好ましくは15~25質量%の総量において存在する、実施形態1から24のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0140】
実施形態26:少なくとも1種の芳香族化合物(C)が、少なくとも1個のヒドロキシ基をさらに含む、実施形態1から25のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0141】
実施形態27:少なくとも1種の芳香族化合物(C)が、レゾルシノール、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸、クレソチン酸、およびそれらの混合物から選択され、好ましくはサリチル酸である、実施形態1から26のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0142】
実施形態28:少なくとも1種の芳香族化合物(C)が、それぞれの場合に水性コーティング組成物の総質量に対して、0.1~5質量%、好ましくは0.2~3質量%、より好ましくは0.3~1質量%、きわめて好ましくは0.4~0.7質量%の総量において存在する、実施形態1から27のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0143】
実施形態29:水性樹脂化合物(RC)のNH基の、エポキシ樹脂(ER1)のエポキシ基に対するモル比が、0.74:1~0.95:1、好ましくは0.9:1である、実施形態1から28のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0144】
実施形態30:少なくとも1種の顔料および/または充填剤をさらに含む、実施形態1から29のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0145】
実施形態31:少なくとも1種の顔料が、(i)黒色顔料、例えばカーボンブラック、酸化鉄顔料、マンガンブラックおよびスピネルブラック、好ましくはカーボンブラックおよび酸化鉄顔料、(ii)白色顔料、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛および三酸化アンチモニー、好ましくは二酸化チタン、ならびに(iii)それらの混合物から選択される、実施形態30に記載の水性コーティング組成物。
【0146】
実施形態32:少なくとも1種の充填剤が、(i)炭酸塩、例えば炭酸カルシウムまたは炭酸バリウム、(ii)硫酸塩、例えば硫酸カルシウムおよび硫酸バリウム、(iii)ケイ酸塩および層状ケイ酸塩、例えばタルク、ピロフィライト、マイカ、カオリン、沈降ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム/アルミニウム、ケイ酸ナトリウム/アルミニウム、およびムライト、(iv)シリカ、例えば石英、クリストバライト、沈降シリカおよびフュームドシリカ、(v)金属酸化物および水酸化物、例えば水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム、ならびに(vi)それらの混合物から選択される、実施形態30または31に記載の水性コーティング組成物。
【0147】
実施形態33:少なくとも1種の顔料、好ましくは少なくとも1種の白色および/または黒色顔料が、それぞれの場合に水性コーティング組成物の固体含有量に対して、15~20質量%、好ましくは20質量%の総量において存在する、実施形態30から32のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0148】
実施形態34:少なくとも1種の充填剤が、それぞれの場合に水性コーティング組成物の固体含有量に対して、30~50質量%、好ましくは30~40質量%の総量において存在する、実施形態30から33のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0149】
実施形態35:少なくとも1種の添加剤をさらに含む、実施形態1から34のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0150】
実施形態36:少なくとも1種の添加剤が、光安定剤、抗酸化剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合抑制剤、付着促進剤、レベリング剤、成膜助剤、増粘剤、垂れ調整剤(SCA)、腐食抑制剤、およびそれらの混合物から選択される、実施形態35に記載の水性コーティング組成物。
【0151】
実施形態37:水性コーティング組成物の総質量に対して、かつDIN EN ISO3251:2018-07に準拠して決定して、70~85質量%の固体含有量を有する、実施形態1から36のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0152】
実施形態38:サーフェサーまたはプライマーサーフェサーである、実施形態1から37のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
【0153】
実施形態39:2種の別々の成分A)とB)を含むキットオブパーツであって、前記成分A)とB)が、
A)エポキシ樹脂(ER1)の少なくとも1種の水性分散体(A)を含有する少なくとも1種の水性ベースワニスであり、前記エポキシ樹脂(ER)が平均して分子1個当たり少なくとも1個のエポキシ基を有する、水性ベースワニスと、
B)少なくとも1種の水性硬化剤成分であり、
- 0.5~5質量%の比率の、少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)、ならびに150~400g/molのNH当量を有する樹脂成分(RC)を含む少なくとも1種の水性樹脂分散体(B)であり、該樹脂成分(RC)が、第一級および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)を含み、前記少なくとも1種の多官能性有機アミン(A2)が、
(i)400g/mol未満の平均エポキシ当量質量を有する少なくとも1種の二官能性および/または多官能性エポキシ樹脂(ER2)、
(ii)少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A3)、および
(iii)少なくとも1種の化合物X-R(式中、Xは、エポキシ基に対して反応性である官能基であり、Rは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン単位を含有し、かつさらなるX基を含有しない有機基である)
の反応生成物を含有する、水性樹脂分散体(B)、ならびに
-少なくとも1個のカルボン酸基を有する少なくとも1種の芳香族化合物(C)
を含有する、水性硬化剤成分と
である、キットオブパーツ。
【0154】
実施形態40:少なくとも1つのコーティング層を基材上に生成する方法であって、
i)実施形態1から38のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物、または実施形態39に記載のキットオブパーツから製造されたコーティング組成物を、基材に適用する工程と、
ii)工程(i)において適用されたコーティング組成物からコーティング膜を形成する工程と、
iii)工程(ii)において形成されたコーティング膜を硬化させる工程と、
iv)任意に、工程(iii)において得られた硬化コーティング層を研磨する工程と、
v)任意に、少なくとも1つのさらなるコーティング層を適用して、前記コーティング層を硬化させる工程と
を含む、方法。
【0155】
実施形態41:基材が、(i)金属基材、例えば未合金化および合金化の鋼および/または鉄、亜鉛およびアルミニウムの各基材ならびに対応する合金、(ii)プラスチック基材、(iii)金属部分およびプラスチック部分を含む基材、ならびに(iv)多層コーティングで塗装され、好ましくは欠陥を有する金属基材から選択される、実施形態40に記載の方法。
【0156】
実施形態42:工程(ii)における成膜が、適用済みコーティング組成物の、15~25℃での1~60分間の乾燥および/または蒸散によって実施される、実施形態40または41に記載の方法。
【0157】
実施形態43:工程(iii)における硬化が、15~180℃、好ましくは20~80℃、より好ましくは20~65℃の温度にて、20分~16時間、好ましくは20~80分間実施される、実施形態40から42のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
実施形態44:工程(iii)後に生じた硬化コーティング層の乾燥膜厚が、5~200μm、好ましくは10~150μm、きわめて好ましくは30~80μmである、実施形態40から43のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
実施形態45:工程(v)において適用されて硬化された少なくとも1つのさらなるコーティング層が、着色ベースコート層および/またはクリアコート層から選択される、実施形態40から44のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
実施形態46:少なくとも1つの欠陥部位を有する多層塗装系を修復するのに使用される、実施形態40から45のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
実施形態47:実施形態40から46のいずれか1つに記載の方法によって生成された、コーティング済み基材。
【実施例
【0162】
本発明は今や、実施例の使用を通じてより詳細に説明されることになるが、本発明は、これらの実施例に決して限定されない。さらに、実施例中の用語「部分」、「%」および「比」は、別段の指定がない限り、それぞれ「質量部」、「質量%」および「質量比」を表す。
【0163】
1.決定の方法:
1.1 固体含有量(固体、不揮発性画分)
別段のことが述べられていない限り、固体含有量(固体の比率、固体状態含有量、不揮発性の比率とも称される)は、DIN EN ISO3251:2018-07により、130℃、60分、出発質量1.0gにおいて決定した。
【0164】
1.2 水性分散体(B)中の単量体アミン(A1)の比率
水性分散体(B)中の少なくとも1種の二官能性および/または多官能性単量体第一級および/または第二級アミン(A1)の比率を、DIN51405:2004-01に準拠して、ガスクロマトグラフィーにより以下の通り決定する:
(アミン含有量による)約100~500mgのそれぞれの水性分散体(B)を、化学天秤上の5mLのスナップボトル中へ、0.1mg正確に秤量する。約5%のISTDジエチレングリコールジメチルエーテルを、試料中へ、0.1mg正確に秤量する。試料を、5mLのTHFで希釈する(試料がTHF中に溶解しない場合、好適な溶媒を実験により見出さなければならない)。
【0165】
そのようにして製造した試料を、Agilent 7890ガスクロマトグラフ上で分析する。注入は、自動サンプラーの手段によって果たす。試料を、火炎イオン検出器を備えたガスクロマトグラフのスプリット注入器中に直接注入し、極性相を有するカラム(ポリエチレングリコール;ポリエチレングリコール相を有する50mのフューズドシリカキャピラリカラム)上と、非極性相を有するカラム(ポリジメチルシロキサン;ポリジメチルシロキサン相を有する50mの溶融シリカキャピラリカラム)上との両方で分離する。評価を、ISTD%法によって果たす。
【0166】
ガスクロマトグラフィー条件:
オーブンプログラム:40℃(保持時間5分)(3℃/分)→100℃(10℃/分)→230℃(保持時間5分)、
キャリアガス:水素、
分離カラム:Agilent Innowax:長さ50m、膜厚0.2μm、直径0.2mm、圧力1.0バールHP-1、長さ50m、膜厚0.33μm、直径0.2mm、圧力1.3バール、
注入器の温度:250℃(必要な場合、より低く)、
注入器の容積:0.3μL(手動注入0.3~0.6μL)、
検出器:火炎イオン化検出器、
検出器の温度:275℃、
分流:15mL/分。
【0167】
アミン(A1)を、極性および非極性カラム上のそれらの保持時間によって画定する。未知の成分については、GC/MS分析を行わなければならない。
【0168】
検出したアミンを含有する内部標準を、化学天秤上の試料における近似比に従って正確に0.1mgに秤量する。総体的な較正溶液中のアミンの濃度は、製造した試料中のアミンの濃度に対応させた(アミンの濃度は、GC分析プログラムによって算出する)。続いて、較正溶液を、試料および物質特定修正因子を確認するのと同じ条件下で分析する。
【0169】
試料のアミン含有量を、GCアナライザプログラムの助けを借りてISTD%法によって算出する。
【0170】
1.3 エポキシ当量質量
エポキシ当量質量を、エポキシ樹脂(ER1)についてはASTM D1652-11(2019)に準拠して決定し、エポキシ樹脂(ER2)についてはDIN EN ISO3001:2019-08に準拠して決定した。
【0171】
1.4 水性分散体(B)中の樹脂成分(RC)の比率
それぞれの水性分散体(B)を130℃にて8時間(60分ではなく)保持したことを除き、ポイント1.1に記載の通り、決定を実施した。これは、残存している不揮発性単量体アミン(A1)の量が、無視できるほど少なく、かつ得られた質量が、水性分散体(B)中に存在する樹脂成分(RC)の比率に対応することを確実にする。
【0172】
1.5 NH当量
樹脂成分(RC)のNH当量を、以下の2工程の方法に従って決定する:
【0173】
工程1:
まず第1に、水性分散体中に存在する樹脂混合物(I)のNH当量を決定する。この目的のために、水性分散体中の第一級および第二級アミノ基の(それぞれ窒素%としての)異なる質量比率を、DIN EN ISO9702(1998年10月)に準拠して、脂肪族アミンについての方法を用いて決定する。次いで、得られた質量比率を用いて、水性分散体100g中のNH基のモル量を、以下の等式を用いて得る:
n(NH)=(m(第一級アミノ基からのN)/(14g/mol))2+m(第二級アミノ基からのN)/(14g/mol)
この等式中、「m」は、第一級および第二級アミノ基について測定した質量比率を表す。
【0174】
NH基のモル量および試料(100g)の質量を用いて、試料(水性分散体(B))のNH当量、すなわちそこに1molのNH官能価が存在する試料の質量を得ることができる。
【0175】
試料の樹脂混合物(I)の比率の決定によって、次いで、樹脂混合物(I)のNH当量を、以下の等式を用いて算出することができる:
NH当量(樹脂混合物(I)=NH当量(試料)比率(試料中の樹脂混合物(I))
【0176】
工程2:
次いで、樹脂成分(RC)のNH当量を、先に決定した樹脂混合物(I)のNH当量、ステージ(B)において用いた樹脂混合物(I)の質量、ステージ(B)において用いた成分(IIb)の質量、ならびに成分(IIb)において用いたエポキシ基のモル量(使用した成分(IIb)の質量およびエポキシ当量質量によって決定する)から算出する。これは、成分(IIb)のエポキシ基の、樹脂混合物(I)のNH官能価との定量的反応を見積もる。樹脂成分(RC)の総質量は、使用した樹脂混合物(I)の質量と、使用した成分(IIb)の質量との加算によって得られる。
【0177】
1.6 研磨性の決定
以下のポイント3.1に記載する通りに製造したコーティング済み基材を、20℃にて20分間貯蔵し、その後、09560black control powder(3M製)をコーティング済み表面に適用し、Excenter(FESTOOL LEX3)、5mmのexcentric stroke、およびRODIM製のサンドペーパー、Standard P400 typeを用いて、black control powderが完全に除去されるまで乾燥研磨した。
【0178】
研磨性を、サンドペーパーの評価により、以下のように決定した:
0→目詰まりなし(研磨性がきわめて良好)
1→最小の目詰まり(研磨性が依然として許容される)
2→目詰まり、小さい「結節」の形成(研磨性が不良)
3→ひどい目詰まり、「結節」の形成(スペーサ)(研磨性がきわめて不良)
【0179】
サンドペーパー上のコーティング材料の目詰まりは、black control powderの使用によってきわめて即座に確認可能である。目詰まりなしは、研磨されて除去された材料が、微細な塵として得られ、それゆえにサンドペーパーを目詰まりさせず、かつコーティング表面上で除去が困難な残留物へと至らせないことを意味する。
【0180】
1.7 恒常的な気候試験の後の膨れの決定
ポイント3.2に記載した通りに製造したパネルを、DIN EN ISO 6270-2:2005-09に準拠したCH試験条件下で、コンディショニングチャンバ中、10日にわたり貯蔵した。コンディショニングチャンバから取り出した後1時間以内に、次いで、パネルを、DIN EN ISO 4628-2:2016-07に準拠して膨れについて検査した。
【0181】
膨れの発生を、2つの値の組み合わせを通して以下のように評価した:
膨れの数を、定量的な数1~5によって評価し、m1はきわめて少ない膨れを表し、m5はきわめて多い膨れを表す。
【0182】
膨れのサイズを、ここでもまた1~5のサイズの数によって評価し、g1はきわめて小さい膨れを表し、g5はきわめて大きい膨れを表す。
【0183】
したがって、呼称m0g0は、縮合-水貯蔵後に膨れを有していない塗装系を表し、その一方で呼称m1g1は、きわめて少ない小さい膨れを有する塗装系を表す。
【0184】
1.8 恒常的な気候試験の後のクロスカット付着性の決定
ポイント3.2に記載した通りに製造したパネルを、DIN EN ISO6270-2:2005-09に準拠したCH試験条件下、コンディショニングチャンバ中、10日にわたり貯蔵した。コンディショニングチャンバから取り出して1時間以内に、次いで、クロスカット付着性を、DIN EN ISO2409:2013-06に準拠して決定した(レーティングGT0~GT5、GT0=最も良いスコア、GT5=最も悪いスコア)。
【0185】
1.9 ストーンチップ抵抗の決定
ストーンチップ抵抗を、ISO20567-1に準拠して決定した(コーティングのストーンチップ抵抗の決定-パート1:2バールの圧力および2×500gのグリットを用いた多衝撃試験(ISO20567-1:2017))。
【0186】
1.10 乾燥膜厚の決定
乾燥膜厚を、2007年5月のDIN EN ISO2808に準拠して、Fischer製のDualscope MP40、probe ED10を用いて決定した。
【0187】
2.水性分散体(B)の製造
2.1 水性分散体(B1)の製造
水性分散体(B1)を以下の手順に従って製造した:
683.00gのBeckopox VEH 2849W(樹脂混合物(I)の水性分散体、ここで、該樹脂混合物は、27.5質量%の単量体アミン(イソホロンジアミンおよびキシレンジアミン)ならびに72.5質量%のポリアミンを含有し、さらに、108g/molのNH当量を有する)と、1663.77gの脱塩水とを反応容器中で合わせ、連続して撹拌し、95℃にて1時間保持した。続いて、該混合物を70℃に冷却し、186.5g/molの平均エポキシ当量質量を有する163.44gのビスフェノールAジグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、395g/molの平均エポキシ当量質量を有する酸化ポリプロピレンに基づく39.46gのポリアルキレンポリエーテルエポキシド、81.96gのエトキシプロパノール、81.47gのメチルエチルケトンおよび81.72gのイソブタノールの混合物を、4時間にわたって撹拌しながら連続して秤量し、該混合物を70℃にてさらに1時間保持する。このようにして得た反応生成物を、45℃に冷却する。生成物の粘度は、25℃にて150~250mPasである。
【0188】
続く方法の工程では、溶媒イソブタノールおよびメチルエチルケトンを、減圧下、蒸留によって生成物から除去する。得られた水性分散体(B1)は、<0.5%(ガスクロマトグラフィー)の、イソブタノールおよびメチルエチルケトンの残存含有量を有する。
【0189】
水性分散体中の単量体アミン(A1)の含有量は2.4%であり、樹脂成分(RC)の含有量は31質量%である。樹脂成分は、さらに、171g/molのアミン当量質量(NH当量質量)を有する。
【0190】
2.2 水性分散体(B2)の製造
876.19gのBeckopox VEH 2849W(樹脂混合物(I)の水性分散体、前記樹脂混合物は、27.5質量%の単量体アミン(A1)(イソホロンジアミンおよびキシレンジアミン)ならびに72.5質量%の多官能性有機アミン(A2)を含有し、かつ108g/molのNH当量を有する)と、2132.20gの(脱塩)水とを反応容器中で合わせ、連続して撹拌し、95℃にて1時間保持した。続いて、186.5g/molの平均エポキシ当量質量を有する233.41gのビスフェノールAジグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、117.30gのエトキシプロパノール、117.30gのメチルエチルケトン、117.30gのイソブタノールおよび58.21gのサリチル酸の混合物を、4時間にわたって撹拌しながら連続して添加した。その後、得られた分散体を撹拌しながら30℃に冷却する。
【0191】
続く方法の工程では、該方法の溶媒のエトキシプロパノール、メチルエチルケトンおよびイソブタノールを、減圧下、蒸留によって分散体から除去する。
【0192】
水性分散体中の単量体アミン(A1)の含有量は3質量%(1.5質量%のm-キシレンジアミンおよび1.5質量%のイソホロンジアミン)であり、樹脂成分(RC)の含有量は32質量%である。樹脂成分は、171g/molのアミン当量質量(NH当量質量)を有する。
【0193】
3.水性コーティング組成物の製造
記述した配合物の構成成分およびそれらの量に関して、以下を念頭に置くべきである:市販製品への任意の参照は、構成成分について選択した特定のプリンシパル名とは無関係に、正確にその市販製品への参照である。
【0194】
本発明の水性コーティング組成物(I1)および(I2)ならびに比較の水性コーティング組成物(C1)および(C2)を、ベースワニス(A)を硬化成分(B)と混合し、追加の水を添加し、緊密混合して製造した。製造したコーティング組成物を基板上に適用し、それらの製造後1時間以内に硬化させた。ベースワニス(A)および硬化性成分(B)の成分を、表1に列挙する。
【0195】
【表1】
【0196】
*本発明の
1)液体ビスフェノールA系エポキシ樹脂の水性エマルション、EEW=193-204g/eq(Blue Cube Germany)
2)ポリマー非イオン性分散性添加剤、50%の固体含有量(Allnex Belgium S.A)
3)シリコーン非含有、ポリマー系消泡剤(Byk Chemie GmbH)
4)水和ケイ酸マグネシウム、D50=1.8μm(Elementis)
5)ルチルTiO2、ジルコニウムおよびアルミナの無機コーティング、有機処理(Huntsman)
6)粉末状酸化鉄黒色顔料(Lanxess AG)
7)沈降硫酸バリウム、平均粒径1.7μm(Solvay)
8)有機修飾塩基性オルトリン酸亜鉛水和物(Heubach GmbH)
9)亜鉛-5-ニトロイソフタレート(Heubach GmbH)
10)ポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン(BYK Chemie GmbH)
11)1.6質量%のサリチル酸を含有する
12)アミン樹脂は、少なくとも1つの第一級および/または少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンの反応生成物、ポリアルキレンエーテルポリオールとエポキシ樹脂とサリチル酸との付加物を含有する;NH当量:138g/mol、固体含有量に対するサリチル酸の量:10~15質量%(Allnex Belgium S.A.)
13)(トリス-2,4,6-ジメチルアミノエチルフェノール)(Evonik Industries AG)
14)硬化触媒サリチル酸またはAncamine K54の量
【0197】
3.コーティング組成物I1、I2、C1およびC2からのコーティング済み基材の製造
3.1 研磨性のための、コーティング済み基材C-I1、C-I2、C-C1およびC-C2の製造
研磨性を、得られたコーティング済み基材上で、以下の手順に従って試験した:
冷間圧延鋼パネル(60cm×50cm)を基材として使用した。これらを、以下のように予備処理した/洗浄した:360-4Glasurit金属クリーナーを用いて洗浄し、Mirka製のP80、gold typeで研磨し、再度洗浄し、360-4 Glasuritを用いて研磨塵を除去した。15分間、換気した。
【0198】
それぞれのコーティング組成物I1、I2、C1およびC2を、それぞれ、かき回し、薄い連続的噴霧操作において、標準的な塗装ガン(例えば、SATA100 B F1.6mm RP、2.0バールで)を用いて基材上に塗装し、5分間蒸散させ、さらなる完全な噴霧操作において塗装し、5分間蒸散させ、次いで60℃の温度にて35分間硬化させた。乾燥膜厚は、それぞれの場合に60μmから80μmの間であった。
【0199】
ポイント1.6で説明した研磨性の決定の前に、製造済みパネルを、23℃にて、20分間貯蔵し(60℃にて硬化させる場合)、または16時間貯蔵した(23℃にて硬化させる場合)。
【0200】
3.2 ストーンチップ抵抗および耐湿試験のための、コーティング済み基材C-I1、C-I2、C-C1およびC-C2の製造
最初に、基材をその材料タイプに応じて洗浄し、すなわち金属基材はGlasurit Sheet Metal Cleaner360-4を用いて、プラスチック部分はGlasurit Universal Cleaner for Plastics 541-30を用いて、古い塗装物または工場でプライミングされた新しい部分は、Glasurit KH Remover for Silicone and Tar 541-5を用いて、洗浄した。
【0201】
その後、基材を、その材料タイプに応じて、層状鋼はP80で、亜鉛メッキシート鋼は研磨パッドで、アルミニウムはP150で、プラスチックおよび古い塗装物または工場でプライミングした新しい部分は研磨パッドで研磨する。次いで、研磨塵を、前述した洗浄剤を用いて除去する。乾燥摩擦後、それぞれの水性プライマーサーフェサー組成物I1、I2、C1またはC2の適用を実施する。この目的のために、それぞれの組成物を、生じた60μmおよび80μmの乾燥膜厚が得られるように、2つのフルコートにおいて、フローカップガン(SATA BF100 RP1.6、2.0バールで)を用いて、中間蒸散時間なしで適用する。第2のコートの適用後、得られたプライマーサーフェサー層を、60℃にて40分間硬化させる。
【0202】
コーティング済み基材を冷却した後、プライマーサーフェサー層を研磨する。この目的のために、control black(09560 Black Fa.3M)を、コーティング済み表面に適用し、表面を、偏心研磨機(Festool製のLEX3)、5mmのストロークおよびサンドペーパーP400(RODIM製の標準タイプ)を用いて研磨する。その後、研磨済み表面を、Glasurit Cleaner 700-1で洗浄し、その後にベースコート層を適用する。この目的のために、市販の水系ベースコート組成物(Glasurit90-1250 Deep Black、BASF Coatings GmbHから入手可能)を、塗装スプレーガン(SATA5000 HVLP1.3、2.0バールで)を用いて、2つの被覆コートおよび1つの効果コートにおいて、生じた乾燥膜厚が10μmから15μmの間であるように、およそ5分間の蒸散時間を伴って適用する。
【0203】
続いて、市販の溶媒系クリアコーティング組成物(Glasurit HS Clear Coat High Gloss VOC 923-630、BASF Coatings GmbHから入手できる)を、塗装スプレーガン(SATA5000 RP1.3、2.0バールで)を用いて、2つのコートにおいて、3分の中間蒸散時間を伴い、50~60μmの乾燥膜厚において適用する。適用済みベースコート層およびクリアコート層の最終硬化を、60℃にて30分間実施する。
【0204】
耐湿試験およびストーンチップ抵抗を実施する前に、製造済みパネルを、23℃にて少なくとも10日間エージングした。
【0205】
4.結果
先に説明した通りに製造したコーティング済みパネルの、研磨性、膨れ、クロスカット付着性およびストーンチップ抵抗について得た結果を、表2に列挙する。
【0206】
【表2】
【0207】
5.結果の検討
本発明のコーティング組成物(I1)および(I2)を使用して製造したコーティング済みパネルは、前記本発明のコーティング組成物をプライマーサーフェサーとして使用して製造した多層コーティングの優れた膨れ安定性およびクロスカット付着性に悪影響を及ぼすことなく、優れた研磨性および高いストーンチップ抵抗を示した。達成した優れた性質は、特定の樹脂成分(RC)を含有する水性分散体(B)と、硬化触媒としてのサリチル酸との組み合わせに起因する。驚くべきことに、サリチル酸を、コーティング組成物(コーティング組成物I1)の製造中に別々の化合物として添加しないが、水性分散体(B2)(コーティング組成物I2)によって組み込んだ場合に、匹敵する結果が得られる。サリチル酸は、エポキシ基とアミノ基との間の反応を触媒することが公知であるため、水性分散体(B)の製造中のサリチル酸の使用は、コーティング組成物の硬化中に触媒作用に悪影響を及ぼすことなく、さらなる触媒の使用なしで、水性分散体(B)の効率的な調製を可能にする。
【0208】
対照的に、公知の硬化触媒Ancamine K54の、架橋剤としての水性分散体(B)との組み合わせにおける使用(比較のコーティング組成物C1)は、湿潤条件下、硬化触媒としてサリチル酸を含む本発明のコーティング組成物(I1)または(I2)でコーティングしたパネルと比べて、著しく低下した膨れ安定性およびクロスカット付着性を有するコーティング済みパネルをもたらす。
【0209】
特定の樹脂成分(RC)を含まない硬化剤の水性分散体(比較のコーティング組成物C2)の、硬化触媒としてのサリチル酸との組み合わせにおける使用はまた、著しく低下した膨れ安定性、クロスカット付着性およびストーンチップ抵抗ももたらす。
【0210】
そのため、多層コーティングの高い膨れ安定性およびクロスカット付着に悪影響を及ぼさない、優れた研磨性および高いストーンチップ抵抗は、プライマーサーフェサーが、特定の樹脂成分(RC)を含む水性分散体(B)と、硬化触媒としてのサリチル酸との組み合わせを含有する場合にのみ得られる。