(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】変圧装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M3/155 H
H02M3/155 C
(21)【出願番号】P 2022572125
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2021045371
(87)【国際公開番号】W WO2022138209
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2020216358
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 和成
(72)【発明者】
【氏名】橋野 哲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】池田 晃二
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-97287(JP,A)
【文献】特開2011-101554(JP,A)
【文献】特開2017-158373(JP,A)
【文献】特開2013-5589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気結合インターリーブ型チョッパ回路と、当該磁気結合インターリーブ型チョッパ回路を制御する制御部とを備える
変圧装置であって、
前記制御部は、前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の動作状態を示す
一次電圧、二次電圧及びリアクトル電流に基づいて前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路のスイッチング周波数を設定するスイッチング周波数設定部を備え、当該スイッチング周波数設定部が設定した前記スイッチング周波数の変圧用ゲート信号を生成して前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路に出力
し、
前記スイッチング周波数設定部は、前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の回路損失を最小化するように前記スイッチング周波数を設定し、
前記スイッチング周波数設定部は、前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の昇圧比が2倍となる動作状態における前記スイッチング周波数を、前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の前記昇圧比が2倍の前後となる前記動作状態における前記スイッチング周波数よりも低く設定する変圧装置。
【請求項2】
前記スイッチング周波数設定部は、前記リアクトル電流が異常値の場合には前記スイッチング周波数を上昇させる請求項1に記載の変圧装置。
【請求項3】
前記スイッチング周波数設定部は、前記一次電圧、前記二次電圧及び前記リアクトル電流に応じた複数の周波数値が前記スイッチング周波数として登録された周波数マップを備え、前記一次電圧、前記二次電圧及び前記リアクトル電流に基づいて前記周波数マップを検索することにより前記変圧用ゲート信号を生成する請求項1又は2に記載の変圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧装置に関する。
本願は、2020年12月25日に、日本に出願された特願2020-216358号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、DC/DCコンバータが開示されている。このDC/DCコンバータは、直流電圧源と、直流電圧源の正極に一端が接続された第1インダクタと、直流電圧源の正極に一端が接続され、前記第1インダクタに対して並列接続された第2インダクタと、第1インダクタの他端と第2インダクタの他端との間に接続されたキャパシタと、第1インダクタとキャパシタの共通接続点にアノード端子が接続された第1ダイオードと、第2インダクタとキャパシタの共通接続点にアノード端子が接続されたダイオードと、第2インダクタとキャパシタの共通接続点と直流電圧源の負極との間に接続された第1スイッチングデバイスと、キャパシタと第1ダイオードの共通接続点と直流電圧源の負極との間に接続された第2スイッチングデバイスと、第1,第2ダイオードのカソード端子に接続された出力コンデンサとを備え、第1インダクタ及び第2インダクタに鎖交する直流磁束を打ち消す方向に結合させた結合インダクタを用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記DC/DCコンバータは、所謂磁気結合インターリーブ型チョッパ回路と言われ、第1スイッチングデバイスと第2スイッチングデバイスとを180°ずらした位相でスイッチングさせることにより、入出力コンデンサ及びリアクトルに流れるリップル電流を低減する。
【0005】
また、このDC/DCコンバータは、第1スイッチングデバイス及び第2スイッチングデバイスのスイッチング損失及びサージ電圧の低減を目的とし、この目的を達成するために第1インダクタの他端と第2インダクタの他端との間にキャパシタを設けている。すなわち、このDC/DCコンバータは、回路損失として、第1スイッチングデバイス及び第2スイッチングデバイスのスイッチング損失に着目している。
【0006】
しかしながら、上記DC/DCコンバータは、固定値として予め設定されたスイッチング周波数で第1スイッチングデバイス及び第2スイッチングデバイスをスイッチング動作させる。そのため、DC/DCコンバータの動作状態によってはスイッチング損失を十分に低減することができない可能性がある。すなわち、磁気結合インターリーブ型チョッパ回路のスイッチング周波数を固定値とした場合、回路損失等の性能を必ずしも向上させることができない可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされ、動作状態に応じて磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の性能をより確実に向上させることが可能な変圧装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、磁気結合インターリーブ型チョッパ回路と、当該磁気結合インターリーブ型チョッパ回路を制御する制御部とを備える変圧装置であって、前記制御部は、前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の動作状態を示す状態量に基づいて前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路のスイッチング周波数を設定するスイッチング周波数設定部を備え、当該スイッチング周波数設定部が設定した前記スイッチング周波数の変圧用ゲート信号を生成して前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路に出力する。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、前記スイッチング周波数設定部は、前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の回路損失を最小化するように前記スイッチング周波数を設定する。
【0010】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様において、前記スイッチング周波数設定部は、前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の昇圧比が2倍となる動作状態における前記スイッチング周波数を、前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の前記昇圧比が2倍の前後となる前記動作状態における前記スイッチング周波数よりも低く設定する。
【0011】
本発明の第4の態様は、上記第1~第3の何れかの態様において、前記状態量は、前記磁気結合インターリーブ型チョッパ回路に流れるリアクトル電流を含み、前記スイッチング周波数設定部は、前記リアクトル電流が異常値の場合には前記スイッチング周波数を上昇させる。
【0012】
本発明の第5の態様は、上記第1~第4の何れかの態様において、前記スイッチング周波数設定部は、前記状態量に応じた複数の周波数値が前記スイッチング周波数として登録された周波数マップを備え、前記状態量に基づいて前記周波数マップを検索することにより前記変圧用ゲート信号を生成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、動作状態に応じて磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の性能をより確実に向上させることが可能な変圧装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置Aの全体構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態における変圧用ゲート信号生成部の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態におけるキャリア周波数マップの構成を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る変圧装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る変圧装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態における昇降圧コンバータの回路効率とスイッチング周波数との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る制御装置Aは、
図1に示すようにPCU(Power Control Unit)1、ゲートドライバ2及びECU(Electronic Control Unit)3を備えている。
【0016】
また、PCU1は、図示するように3つの電力変換回路つまり昇降圧コンバータD1、駆動用インバータD2及び発電用インバータD3を備えている。また、ゲートドライバ2は、図示するように3つの変圧用ゲート信号生成部つまり変圧用ゲート信号生成部2a、駆動用ゲート信号生成部2b及び発電用ゲート信号生成部2cを備えている。
【0017】
さらに、PCU1の昇降圧コンバータD1は、第1コンデンサ4、トランス5、4つの変圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)6a~6d及び第2コンデンサ7を備えている。同じくPCU1の駆動用インバータD2は、6つの駆動用IGBT8a~8fを備え、発電用インバータD3は、6つの発電用IGBT9a~9fを備えている。なお、この昇降圧コンバータD1は、本発明に係る磁気結合インターリーブ型チョッパ回路に相当する構成要素である。
【0018】
このような制御装置Aには、図示するように電池P、三相モータM(電動機)及び発電機Gがそれぞれ接続されている。すなわち、この制御装置Aは、外部接続用の端子として、電池Pが接続される一対の電池用端子E1、E2、三相モータMが接続される3つのモータ用端子Fu、Fv、Fw、また発電機Gが接続される3つの発電機用端子Hu、Hv、Hwを備えている。
【0019】
このような制御装置Aは、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車両に備えられる電気装置であり、回転電機である三相モータMを制御すると共に、発電機Gで発生した交流電力の電池Pへの充電を制御する。すなわち、この制御装置Aは、電池Pの出力(電池電力)に基づく三相モータMの駆動制御と発電機Gの出力電力(発電電力)に基づく電池Pの充電制御とを行う。
【0020】
ここで、上記電池Pは、図示するように、プラス電極がプラス極電池用端子E1に接続され、マイナス電極がマイナス極電池用端子E2に接続されている。この電池Pは、リチウムイオン電池等の二次電池であり、制御装置Aに対する直流電力の放電と制御装置Aを介した直流電力の充電とを行う。
【0021】
三相モータMは、相数が「3」の三相電動機であり、駆動用インバータD2の負荷である。この三相モータMは、U相入力端子がU相モータ用端子Fuに接続され、V相入力端子がV相モータ用端子Fvに接続され、またW相入力端子がW相モータ用端子Fwに接続されている。このような三相モータMは、回転軸(駆動軸)が電動車両の車輪に接続されており、当該車輪に回転動力を作用させることにより車輪を回転駆動する。
【0022】
発電機Gは、三相発電機であり、U相出力端子がU相発電機用端子Huに接続され、V相出力端子がV相発電機用端子Hvに接続され、またW相出力端子がW相発電機用端子Hwに接続されている。この発電機Gは、電動車両に搭載されたエンジン等の動力源の出力軸に接続されており、三相交流電力を制御装置Aに出力する。
【0023】
昇降圧コンバータD1は、所謂磁気結合インターリーブ型チョッパ回路と言われる電力回路である。この昇降圧コンバータD1は、一対の電池用端子E1、E2を介して電池Pから入力された直流電力を昇圧して駆動用インバータD2に出力する昇圧動作と、駆動用インバータD2或いは発電用インバータD3から入力された直流電力を降圧して一対の電池用端子E1、E2を介して電池Pに出力する降圧動作とを択一的に行う。すなわち、昇降圧コンバータD1は、電池Pと駆動用インバータD2或いは発電用インバータD3との間で直流電力を双方向に入出力する電力変換回路である。
【0024】
駆動用インバータD2は、三相モータM(電動機)の相数に対応して3つ(複数)設けられた3つ(複数)のスイッチングレグ(U相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグ)を備える。この駆動用インバータD2は、力行動作と回生動作とを択一的に行う電力変換回路である。
【0025】
すなわち、駆動用インバータD2は、昇降圧コンバータD1から入力された直流電力を三相交流電力に変換し、3つのモータ用端子Fu、Fv、Fwを介して三相モータMに出力する力行動作と、3つのモータ用端子Fu、Fv、Fwを介して三相モータMから入力された三相交流電力を直流電力に変換して昇降圧コンバータD1に出力する回生動作とを択一的に行う。このような駆動用インバータD2は、昇降圧コンバータD1と三相モータMとの間で直流電力と三相交流電力とを相互変換する電力回路である。
【0026】
発電用インバータD3は、3つの発電機用端子Hu、Hv、Hwを介して発電機Gから入力される三相交流電力を直流電力に変換して昇降圧コンバータD1に出力する電力変換回路である。すなわち、この発電用インバータD3は、昇降圧コンバータD1と発電機Gとの間で直流電力と三相交流電力とを相互変換する電力回路である。
【0027】
ここで、PCU1の昇降圧コンバータD1、駆動用インバータD2及び発電用インバータD3の各構成についてさらに詳しく説明する。最初に昇降圧コンバータD1において、第1コンデンサ4は、一端が第1の直流入出力端子E1及びトランス5に接続され、他端が第2の直流入出力端子E2に接続されている。このような第1コンデンサ4の両端は、昇降圧コンバータD1における一次側入出力端子である。
【0028】
すなわち、この第1コンデンサ4は、電池Pに対して並列接続されており、当該電池Pから昇降圧コンバータD1に入力される直流電力(電池電力)に含まれ得る高周波ノイズを除去する。また、この第1コンデンサ4は、トランス5から入力される直流電力(充電電力)については、含まれ得るリップルを平滑化する。
【0029】
トランス5は、一次巻線5aと二次巻線5bとを備えており、一次巻線5aの一端及び二次巻線5bの一端が上記第1の直流入出力端子E1及び第1コンデンサ4の一端に接続されている。また、一次巻線5aの他端は、第1の変圧用IGBT6aのエミッタ端子及び第2の変圧用IGBT6bのコレクタ端子に接続され、二次巻線5bの他端は、第3の変圧用IGBT6cのエミッタ端子及び第4の変圧用IGBT6dのコレクタ端子に接続されている。
【0030】
このようなトランス5は、一次巻線5aと二次巻線5bとが所定の結合係数kで電磁気的に結合している。すなわち、一次巻線5aは、自身の巻き数等に応じた所定の第1自己インダクタンスLaを有し、二次巻線5bは自身の巻き数等に応じた所定の第2自己インダクタンスLbを有している。また、一次巻線5aと二次巻線5bとは、上述した第1自己インダクタンスLa、第2自己インダクタンスLb及び結合係数kに基づく相互インダクタンスMを有している。
【0031】
4つの変圧用IGBT6a~6dのうち、第1の変圧用IGBT6a及び第2の変圧用IGBT6bは、昇降圧コンバータD1におけるA相変圧用スイッチングレグを構成している。また、第3の変圧用IGBT6c及び第4の変圧用IGBT6dは、昇降圧コンバータD1におけるB相変圧用スイッチングレグを構成している。
【0032】
第1の変圧用IGBT6aは、コレクタ端子が第3の変圧用IGBT6cのコレクタ端子及び第2コンデンサ7の一端に共通接続されており、エミッタ端子が一次巻線5aの他端及び第2の変圧用IGBT6bのコレクタ端子に共通接続され、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第1出力端子に接続されている。このような第1の変圧用IGBT6aは、ゲートドライバ2から入力される第1変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0033】
第2の変圧用IGBT6bは、コレクタ端子が一次巻線5aの他端及び第1の変圧用IGBT6aのエミッタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第4の変圧用IGBT6dのエミッタ端子、第1コンデンサ4の他端及び第2コンデンサ7の他端に共通接続され、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第2出力端子に接続されている。このような第2の変圧用IGBT6bは、ゲートドライバ2から入力される第2変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0034】
第3の変圧用IGBT6cは、コレクタ端子が第1の変圧用IGBT6aのコレクタ端子及び第2コンデンサ7の一端に共通接続され、エミッタ端子が二次巻線5bの他端及び第4の変圧用IGBT6dのコレクタ端子に共通接続され、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第3出力端子に接続されている。このような第3の変圧用IGBT6cは、ゲートドライバ2から入力される第3変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0035】
第4の変圧用IGBT6dは、コレクタ端子が二次巻線5bの他端及び第3の変圧用IGBT6cのエミッタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第2の変圧用IGBT6bのエミッタ端子、第1コンデンサ4の他端及び第2コンデンサ7の他端に共通接続され、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第4出力端子に接続されている。このような第4の変圧用IGBT6dは、ゲートドライバ2から入力される第4変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0036】
また、第2コンデンサ7は、一端が第1の変圧用IGBT6aのコレクタ端子及び第3の変圧用IGBT6cのコレクタ端子に接続され、他端が第2の変圧用IGBT6bのエミッタ端子、第4の変圧用IGBT6dのエミッタ端子、第1コンデンサ4の他端及び第2の直流入出力端子E2に共通接続されている。このような第2コンデンサ7の両端は、昇降圧コンバータD1における二次側入出力端子である。
【0037】
このような第2コンデンサ7は、A相変圧用スイッチングレグ及びB相変圧用スイッチングレグから入力される直流電力(昇圧電力)に含まれ得るリップルを平滑化する。また、この第2コンデンサ7は、駆動用インバータD2から入力される直流電力(回生電力)及び発電用インバータD3から入力される直流電力(充電電力)に含まれ得るリップルを平滑化する。
【0038】
ここで、図示しないが、昇降圧コンバータD1には、昇降圧コンバータD1の動作状態を示す状態量を検出する検出器として、一次側電圧センサ、二次側電圧センサ及びリアクトル電流センサが付帯的に設けられている。一次側電圧センサは、昇降圧コンバータD1の一次側つまり電池P側の一次電圧V1を検出する電圧センサであり、昇降圧コンバータD1の状態量である一次側電圧V1をECU3に出力する。
【0039】
二次側電圧センサは、昇降圧コンバータD1の二次側つまり駆動用インバータD2側(発電用インバータD3側)の二次電圧V2を検出する電圧センサであり、昇降圧コンバータD1の状態量である二次側電圧V2をECU3に出力する。なお、この二次電圧V2は、駆動用インバータD2の一次側電圧及び発電用インバータD3の二次側電圧でもある。
【0040】
また、リアクトル電流センサは、トランス5の一次巻線5aに流れる一次電流と二次巻線5bに流れる二次電流との合計電流をリアクトル電流Iとして検出する電流センサであり、昇降圧コンバータD1の状態量であるリアクトル電流IをECU3に出力する。このリアクトル電流Iは、昇降圧コンバータD1における一次側から二次側に流れる力行電流或いは二次側から一次側に流れる回生電流又は充電電流に相当する。
【0041】
続いて、駆動用インバータD2を構成する6つの駆動用IGBT8a~8fのうち、第1の駆動用IGBT8a及び第2の駆動用IGBT8bはU相駆動用スイッチングレグを構成し、第3の駆動用IGBT8c及び第4の駆動用IGBT8dはV相駆動用スイッチングレグを構成し、第5の駆動用IGBT8e及び第6の駆動用IGBT8fはW相駆動用スイッチングレグを構成している。
【0042】
第1の駆動用IGBT8a及び第2の駆動用IGBT8bのうち、第1の駆動用IGBT8aは、コレクタ端子が第3の駆動用IGBT8cのコレクタ端子及び第5の駆動用IGBT8eのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第2の駆動用IGBT8bのコレクタ端子及びU相モータ用端子Fuに共通接続されている。
【0043】
また、この第1の駆動用IGBT8aは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第1出力端子に接続されている。このような第1の駆動用IGBT8aは、ゲートドライバ2から入力される第1駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0044】
第2の駆動用IGBT8bは、コレクタ端子が第1の駆動用IGBT8aのエミッタ端子及びU相モータ用端子Fuに共通接続され、エミッタ端子が第4の駆動用IGBT8dのエミッタ端子及び第6の駆動用IGBT8fのエミッタ端子に共通接続されている。
【0045】
また、この第2の駆動用IGBT8bは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第2出力端子に接続されている。このような第2の駆動用IGBT8bは、ゲートドライバ2から入力される第2駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0046】
第3の駆動用IGBT8cは、コレクタ端子が第1の駆動用IGBT8aのコレクタ端子及び第5の駆動用IGBT8eのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第4の駆動用IGBT8dのコレクタ端子及びV相モータ用端子Fvに共通接続されている。
【0047】
また、この第3の駆動用IGBT8cは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第2出力端子に接続されている。このような第3の駆動用IGBT8cは、ゲートドライバ2から入力される第3駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0048】
第4の駆動用IGBT8dは、コレクタ端子が第3の駆動用IGBT8cのエミッタ端子及びV相モータ用端子Fvに共通接続され、エミッタ端子が第2の駆動用IGBT8bのエミッタ端子及び第6の駆動用IGBT8fのエミッタ端子に共通接続されている。
【0049】
また、この第4の駆動用IGBT8dは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第4出力端子に接続されている。このような第4の駆動用IGBT8dは、ゲートドライバ2から入力される第4駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0050】
第5の駆動用IGBT8eは、コレクタ端子が第1の駆動用IGBT8aのコレクタ端子及び第3の駆動用IGBT8cのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第6の駆動用IGBT8fのコレクタ端子及びW相モータ用端子Fwに共通接続されている。
【0051】
また、この第5の駆動用IGBT8eは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第5出力端子に接続されている。このような第5の駆動用IGBT8eは、ゲートドライバ2から入力される第5駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0052】
第6の駆動用IGBT8fは、コレクタ端子が第5の駆動用IGBT8eのエミッタ端子及びW相モータ用端子Fwに共通接続され、エミッタ端子が第2の駆動用IGBT8bのエミッタ端子及び第4の駆動用IGBT8dのエミッタ端子に共通接続されている。
【0053】
また、この第6の駆動用IGBT8fは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第6出力端子に接続されている。このような第6の駆動用IGBT8fは、ゲートドライバ2から入力される第6駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0054】
このような駆動用インバータD2において、相互に共通接続された3つのスイッチングレグつまりU相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグの両端、つまり第1の駆動用IGBT8aのコレクタ端子、第3の駆動用IGBT8cのコレクタ端子及び第5の駆動用IGBT8eのコレクタ端子と第2の駆動用IGBT8bのエミッタ端子、第4の駆動用IGBT8dのエミッタ端子及び第6の駆動用IGBT8fのエミッタ端子とは、駆動用インバータD2の一次側入出力端子である。また、U相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグにおける3つの中点、つまり第1の駆動用IGBT8aのエミッタ端子と第2の駆動用IGBT8bのコレクタ端子との接続点、第3の駆動用IGBT8cのエミッタ端子と第4の駆動用IGBT8dのコレクタ端子との接続点及び第5の駆動用IGBT8eのエミッタ端子と第6の駆動用IGBT8fのコレクタ端子との接続点は、駆動用インバータD2の二次側入出力端子である。
【0055】
すなわち、第1の駆動用IGBT8aのエミッタ端子と第2の駆動用IGBT8bのコレクタ端子との接続点、第3の駆動用IGBT8cのエミッタ端子と第4の駆動用IGBT8dのコレクタ端子との接続点及び第5の駆動用IGBT8eのエミッタ端子と第6の駆動用IGBT8fのコレクタ端子との接続点は、駆動用インバータD2の二次側入出力端子である。
【0056】
また、駆動用インバータD2の一次側入出力端子の一方つまり第1の駆動用IGBT8aのコレクタ端子、第3の駆動用IGBT8cのコレクタ端子及び第5の駆動用IGBT8eのコレクタ端子は、昇降圧コンバータD1における二次側入出力端子の一方、つまり第2コンデンサ7の一端、第1の変圧用IGBT6aのコレクタ端子及び第3の変圧用IGBT6cのコレクタ端子に接続されている。
【0057】
さらに、駆動用インバータD2の一次側入出力端子の他方つまり第2の駆動用IGBT8bのエミッタ端子、第4の駆動用IGBT8dのエミッタ端子及び第6の駆動用IGBT8fのエミッタ端子は、昇降圧コンバータD1における二次側入出力端子の他方、つまり第1、第2コンデンサ4、7の他端、第2の変圧用IGBT6bのエミッタ端子及び第4の変圧用IGBT6dのエミッタ端子に接続されている。
【0058】
続いて、発電用インバータD3を構成する6つの発電用IGBT9a~9fのうち、第1の発電用IGBT9a及び第2の発電用IGBT9bはU相発電用スイッチングレグを構成し、第3の発電用IGBT9c及び第4の発電用IGBT9dはV相発電用スイッチングレグを構成し、第5の発電用IGBT9e及び第6の発電用IGBT9fはW相発電用スイッチングレグを構成している。
【0059】
第1の発電用IGBT9a及び第2の発電用IGBT9bのうち、第1の発電用IGBT9aは、コレクタ端子が第3の発電用IGBT9cのコレクタ端子及び第5の発電用IGBT9eのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第2の発電用IGBT9bのコレクタ端子及びU相発電機用端子Huに共通接続されている。
【0060】
また、この第1の発電用IGBT9aは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第1出力端子に接続されている。このような第1の発電用IGBT9aは、ゲートドライバ2から入力される第1発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0061】
第2の発電用IGBT9bは、コレクタ端子が第1の発電用IGBT9aのエミッタ端子及びU相発電機用端子Huに共通接続され、エミッタ端子が第4の発電用IGBT9dのエミッタ端子及び第6の発電用IGBT9fのエミッタ端子に共通接続されている。
【0062】
また、この第2の発電用IGBT9bは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第2出力端子に接続されている。このような第2の発電用IGBT9bは、ゲートドライバ2から入力される第2発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0063】
第3の発電用IGBT9cは、コレクタ端子が第1の発電用IGBT9aのコレクタ端子及び第5の発電用IGBT9eのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第4の発電用IGBT9dのコレクタ端子及びV相発電機用端子Hvに共通接続されている。
【0064】
また、この第3の発電用IGBT9cは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第3出力端子に接続されている。このような第3の発電用IGBT9cは、ゲートドライバ2から入力される第3発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0065】
第4の発電用IGBT9dは、コレクタ端子が第3の発電用IGBT9cのエミッタ端子及びV相発電機用端子Hvに共通接続され、エミッタ端子が第2の発電用IGBT9bのエミッタ端子及び第6の発電用IGBT9fのエミッタ端子に共通接続されている。
【0066】
また、この第4の発電用IGBT9dは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第4出力端子に接続されている。このような第4の発電用IGBT9dは、ゲートドライバ2から入力される第4発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0067】
第5の発電用IGBT9eは、コレクタ端子が第1の発電用IGBT9aのコレクタ端子及び第3の発電用IGBT9cのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第6の発電用IGBT9fのコレクタ端子及びW相発電機用端子Hwに共通接続されている。
【0068】
また、この第5の発電用IGBT9eは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第5出力端子に接続されている。このような第5の発電用IGBT9eは、ゲートドライバ2から入力される第5発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0069】
第6の発電用IGBT9fは、コレクタ端子が第5の発電用IGBT9eのエミッタ端子及びW相発電機用端子Hwに共通接続され、エミッタ端子が第2の発電用IGBT9bのエミッタ端子及び第4の発電用IGBT9dのエミッタ端子に共通接続されている。
【0070】
また、この第6の発電用IGBT9fは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第6出力端子に接続されている。このような第6の発電用IGBT9fは、ゲートドライバ2から入力される第6発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0071】
このような発電用インバータD3において、U相発電用スイッチングレグ、V相発電用スイッチングレグ及びW相発電用スイッチングレグにおける3つの中点、つまり第1の発電用IGBT9aのエミッタ端子と第2の発電用IGBT9bのコレクタ端子との接続点、第3の発電用IGBT9cのエミッタ端子と第4の発電用IGBT9dのコレクタ端子との接続点及び第5の発電用IGBT9eのエミッタ端子と第6の発電用IGBT9fのコレクタ端子との接続点は、発電用インバータD3の一次側入出力端子である。
【0072】
このような発電用インバータD3における3つの一次側入出力端子のうち、U相発電用スイッチングレグの中点はU相発電機用端子Huに接続され、V相発電機用端子Hvの中点はV相発電機用端子Hvに接続され、またW相発電機用端子Hwの中点はW相発電機用端子Hvに接続されている。
【0073】
また、発電用インバータD3において相互に共通接続されたU相発電用スイッチングレグ、V相発電用スイッチングレグ及びW相発電用スイッチングレグの両端、つまり第1の発電用IGBT9aのコレクタ端子、第3の発電用IGBT9cのコレクタ端子及び第5の発電用IGBT9eのコレクタ端子と第2の発電用IGBT9bのエミッタ端子、第4の発電用IGBT9dのエミッタ端子及び第6の発電用IGBT9fのエミッタ端子とは、発電用インバータD3における二次側入出力端子である。
【0074】
このような発電用インバータD3の二次側入出力端子は、図示するように、昇降圧コンバータD1の二次側入出力端子及び駆動用インバータD2の一次側入出力端子に共通接続されている。すなわち、昇降圧コンバータD1は、電池Pとの間において駆動用インバータD2及び/或いは発電用インバータD3と直流電力の入出力を相互に行う。
【0075】
ここで、上述した変圧用IGBT6a~6d、駆動用IGBT8a~8f及び発電用IGBT9a~9fは、図示するように各々に還流ダイオードを備えている。すなわち、この還流ダイオードは、各々のIGBTについて、カソード端子がコレクタ端子に接続され、またアノード端子がエミッタ端子に接続されている。このような還流ダイオードは、IGBTがOFF状態の時にアノード端子からカソード端子に還流電流を流すことができる。
【0076】
続いて、ゲートドライバ2は、変圧用ゲート信号生成部2a、駆動用ゲート信号生成部2b及び発電用ゲート信号生成部2cを備え、ECU3から入力される各種Duty指令値(変圧用Duty指令値、駆動用Duty指令値及び発電用Duty指令値)に基づいて第1~第4変圧用ゲート信号、第1~第6駆動用ゲート信号及び第1~第6発電用ゲート信号を生成する回路である。
【0077】
変圧用ゲート信号生成部2aは、昇降圧コンバータD1に対応し、ECU3から入力される変圧用Duty指令値及び変圧用キャリア周波数に基づいて第1~第4変圧用ゲート信号を生成する。すなわち、変圧用ゲート信号生成部2aは、変圧用Duty指令値を変圧用キャリア周波数に相当する周期の搬送波(三角波)と比較することにより、変圧用キャリア周波数及び変圧用Duty指令値に応じた繰返し周波数(繰返し周期)及びデューティ比を有するPWM(Pulse Width Modulation)信号を第1~第4変圧用ゲート信号として生成する。
【0078】
この変圧用ゲート信号生成部2aは、第1変圧用ゲート信号を昇降圧コンバータD1の第1変圧用IGBT6aのゲート端子に出力し、第2変圧用ゲート信号を昇降圧コンバータD1の第2変圧用IGBT6bのゲート端子に出力し、第3変圧用ゲート信号を昇降圧コンバータD1の第3変圧用IGBT6cに出力し、第4変圧用ゲート信号を昇降圧コンバータD1の第4変圧用IGBT6dに出力する。
【0079】
駆動用ゲート信号生成部2bは、駆動用インバータD2に対応し、ECU3から入力される駆動用Duty指令値及び駆動用キャリア周波数に基づいて第1~第6駆動用ゲート信号生成する。すなわち、駆動用ゲート信号生成部2bは、駆動用Duty指令値を駆動用キャリア周波数に相当する周期の搬送波(三角波)と比較することにより、駆動用キャリア周波数及び駆動用Duty指令値に応じた繰返し周波数(繰返し周期)及びデューティ比を有するPWM信号を第1~第6駆動用ゲート信号として生成する。
【0080】
この駆動用ゲート信号生成部2bは、第1駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2の第1駆動用IGBT8aのゲート端子に出力し、第2駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2の第2駆動用IGBT8bのゲート端子に出力し、第3駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2の第3駆動用IGBT8cのゲート端子に出力し、第4駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2の第4駆動用IGBT8dのゲート端子に出力し、第5駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2の第5駆動用IGBT8eのゲート端子に出力し、第6駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2の第6駆動用IGBT8fのゲート端子に出力する。
【0081】
発電用ゲート信号生成部2cは、発電用インバータD3に対応し、ECU3から入力される発電用Duty指令値及び発電用キャリア周波数に基づいて第1~第6発電用ゲート信号生成する。すなわち、発電用ゲート信号生成部2cは、発電用Duty指令値を発電用キャリア周波数に相当する周期の搬送波(三角波)と比較することにより、発電用キャリア周波数及び発電用Duty指令値に応じた繰返し周波数(繰返し周期)及びデューティ比を有するPWM信号を第1~第6発電用ゲート信号として生成する。
【0082】
この発電用ゲート信号生成部2cは、第1発電用ゲート信号を発電用インバータD3の第1発電用IGBT9aのゲート端子に出力し、第2発電用ゲート信号を発電用インバータD3の第2発電用IGBT9bのゲート端子に出力し、第3発電用ゲート信号を発電用インバータD3の第3発電用IGBT9cのゲート端子に出力し、第4発電用ゲート信号を発電用インバータD3の第4発電用IGBT9dのゲート端子に出力し、第5発電用ゲート信号を発電用インバータD3の第5発電用IGBT9eのゲート端子に出力し、第6発電用ゲート信号を発電用インバータD3の第6発電用IGBT9fのゲート端子に出力する。
【0083】
ECU3は、予め記憶された制御プログラムに基づいて所定の制御処理を行う制御回路である。このECU3は、上記制御処理に基づいて生成した各種Duty指令値(変圧用Duty指令値、駆動用Duty指令値及び発電用Duty指令値)をゲートドライバ2に出力する。
【0084】
このようなECU3は、PCU1及びゲートドライバ2を介して三相モータMの駆動制御及び電池Pの充電制御を行う。すなわち、このECU3は、昇降圧コンバータD1、駆動用インバータD2及び発電用インバータD3に付帯的に設けられる電圧センサの検出値(電圧検出値)及び電流センサの検出値(電流検出値)並びに電動車両の操作情報等に基づいて昇降圧コンバータD1、駆動用インバータD2及び発電用インバータD3に関する各種Duty指令値(変圧用Duty指令値、駆動用Duty指令値及び発電用Duty指令値)を生成する。
【0085】
このECU3は、上記各種Duty指令値(変圧用Duty指令値、駆動用Duty指令値及び発電用Duty指令値)をゲートドライバ2に供給することにより第1~第4変圧用ゲート信号、第1~第6駆動用ゲート信号及び第1~第6発電用ゲート信号を生成させる。第1~第4変圧用ゲート信号によって昇降圧コンバータD1が制御され、第1~第6駆動用ゲート信号によって駆動用インバータD2が制御され、また第1~第6発電用ゲート信号によって発電用インバータD3が制御される。
【0086】
続いて、上述した昇降圧コンバータD1を制御する変圧制御部Bの構成について、
図2を参照して詳しく説明する。
【0087】
この変圧制御部Bは、上述した変圧用ゲート信号生成部2aとECU3の一部機能構成要素とによって構成され、昇降圧コンバータD1の制御に特化した制御構成要素である。この変圧制御部Bは、
図2に示すように目標値設定部10、電流制御部11、電圧制御部12、Duty制御部13、キャリア周波数設定部14及び変圧用ゲート信号生成部2aを備える。
【0088】
目標値設定部10は、電動自動車の操作量等に基づいて変圧用制御目標値X0を設定する機能構成要素である。この変圧用制御目標値X0は、昇降圧コンバータD1が昇圧動作をする場合の昇圧比の目標量又は昇降圧コンバータD1が降圧動作をする場合の降圧比の目標量である。目標値設定部10は、このような変圧用制御目標値X0を電流制御部11に出力する。なお、上記昇圧比又は降圧比は、上述した一次電圧V1と二次電圧V2との比率である。
【0089】
電流制御部11は、上記変圧用制御目標値X0、また一次側電圧センサから入力される一次電圧V1、二次側電圧センサから入力される二次電圧V2及びリアクトル電流センサから入力されるリアクトル電流Iに基づいて電流指令値X1を演算する演算部である。この電流制御部11は、電流指令値X1を電圧制御部12に出力する。
【0090】
電圧制御部12は、上記電流指令値X1及びリアクトル電流Iに基づいて電圧指令値X2を演算する演算部である。この電圧制御部12は、電圧指令値X2をDuty制御部13に出力する。Duty制御部13は、上記電圧指令値X2に基づいて第1~第4変圧用ゲート信号(PWM信号)のデューティ比を示すDuty指令値X3、X4を演算する演算部である。
【0091】
ここで、本実施形態における昇降圧コンバータD1は、磁気結合した一次巻線5aと二次巻線5bとを備えると共にA相変圧用スイッチングレグとB相スイッチングレグとを備える磁気結合インターリーブ型チョッパ回路である。A相変圧用スイッチングレグとB相スイッチングレグとは、位相関係(位相)が180°異なる第1、第2変圧用ゲート信号と第3、第4変圧用ゲート信号とによって制御される。
【0092】
このような昇降圧コンバータD1に対応するため、上記Duty指令値X3、X4は、A相用Duty指令値X3とB相用Duty指令値X4とからなる。すなわち、A相用Duty指令値X3は、第1変圧用ゲート信号及び第2変圧用ゲート信号のデューティ比を指定する指令値であり、B相用Duty指令値X4は、第3変圧用ゲート信号及び第4変圧用ゲート信号のデューティ比を指定する指令値である。
【0093】
キャリア周波数設定部14は、上述した一次電圧V1、二次電圧V2及びリアクトル電流Iに基づいて第1~第4変圧用ゲート信号の繰返し周波数(キャリア周波数fc)を設定する機能構成要素である。このキャリア周波数fcは、変圧用ゲート信号生成部2aが第1~第4変圧用ゲート信号の生成に使用する搬送波(三角波)の周波数に相当する発電用キャリア周波数である。
【0094】
このようなキャリア周波数設定部14は、本発明のスイッチング周波数設定部に相当する機能構成要素であり、またキャリア周波数fcは、昇降圧コンバータD1を構成する第1~第4変圧用IGBT6a~6dのスイッチング周波数を指定する物理量である。すなわち、このキャリア周波数設定部14は、昇降圧コンバータD1(磁気結合インターリーブ型チョッパ回路)の動作状態を示す一次電圧V1、二次電圧V2及びリアクトル電流I(状態量)に基づいて、昇降圧コンバータD1(磁気結合インターリーブ型チョッパ回路)のキャリア周波数fcを設定する。
【0095】
このキャリア周波数設定部14は、ECU3が予め記憶しているキャリア周波数マップ15を用いることによりキャリア周波数fcの周波数値X5を設定する。上記キャリア周波数マップ15は、
図3に示すように、所定範囲に亘る二次電圧V2及びリアクトル電流Iについて二次電圧V2に関する離散的な複数の値及びリアクトル電流Iに関する離散的な複数の値に各々対応するキャリア周波数fcの周波数値X5が登録された二次元テーブルである。
【0096】
すなわち、キャリア周波数マップ15は、
図3に示すように、一次電圧V1が220V(ボルト)の場合に関する二次元テーブルであり、二次電圧V2について220V~700Vの範囲で合計11点の電圧値、またリアクトル電流Iについて-200A(アンペア)~+200Aの範囲で合計41点の電流値についてキャリア周波数fcの周波数値X5が登録されている。
【0097】
このようなキャリア周波数マップ15には、昇降圧コンバータD1の動作状態を示す3つの物理量つまり一次電圧V1、二次電圧V2及びリアクトル電流Iの各値について、昇降圧コンバータD1の全体的な回路損失が最小となる周波数値X5が登録されている。なお、
図3におけるリアクトル電流Iの極性は、リアクトル電流Iが昇降圧コンバータD1の一次側から二次側に向かって流れる場合を+(プラス)とし、二次側から一次側に向かって流れる場合を-(マイナス)としている。
【0098】
このようなキャリア周波数マップ15における各周波数値X5は、例えばPCU1を電動車両に搭載する前の昇降圧コンバータD1の性能に関する事前実験において、昇降圧コンバータD1の全体的な回路損失を最小化する値として見出されている。
【0099】
例えば、キャリア周波数上限値をIGBTの熱要件を満たす値とし、またキャリア周波数下限値を装置のノイズバイブレーションを満たす値とするキャリア周波数範囲を定めている。そうして、当該キャリア周波数範囲内の一次電圧V1、二次電圧V2及びリアクトル電流Iの各値について、昇降圧コンバータD1の全体的な回路損失が最小となる周波数値X5を導くマップを策定している。そのため、装置の最適なキャリア周波数を設定できる。
【0100】
ここで、
図3では、一次電圧V1が220Vの場合における二次電圧V2及びリアクトル電流Iの各値に対応する周波数値X5が一例として記載さおり、二次電圧V2が450V(ボルト)かつリアクトル電流Iが-20A(アンペア)に対応するキャリア周波数fcは12kHz(キロヘルツ)である。すなわち、一次電圧V1が220V、二次電圧V2が450Vかつリアクトル電流Iが-20Aの場合、昇降圧コンバータD1の全体的な回路損失が最小となる条件は、キャリア周波数fcの周波数値X5を12kHzに設定した場合である。
【0101】
また、キャリア周波数マップ15の周波数値X5は、
図3に示すように、昇降圧コンバータD1の昇圧比が約2倍、つまり二次電圧V2が450Vとなる動作状態において、前後の昇圧比における周波数値X5よりも低くなるように設定されている。すなわち、昇降圧コンバータD1の昇圧比が2倍となる動作状態における周波数値X5が、昇降圧コンバータD1の昇圧比が2倍の前後となる動作状態における周波数値X5よりも低く設定されている。
図3を用いて具体例を以下に述べる。
【0102】
例えば、二次電圧V2が450Vかつリアクトル電流Iが-30Aの場合、周波数値X5は9kHzであるが、二次電圧V2が400Vかつリアクトル電流Iが-30Aの場合の周波数値X5は11kHzであり、また二次電圧V2が500Vかつリアクトル電流Iが-30Aの場合の周波数値X5は12kHzである。
【0103】
また、二次電圧V2が450Vかつリアクトル電流Iが20Aの場合、周波数値X5は11kHzであるが、二次電圧V2が400Vかつリアクトル電流Iが20Aの場合の周波数値X5は12kHzであり、また二次電圧V2が500Vかつリアクトル電流Iが20Aの場合の周波数値X5は12kHzである。
【0104】
磁気結合インターリーブ型チョッパ回路として構成された昇降圧コンバータD1では、昇圧比が2倍となる動作状態においてトランス5の一次巻線5aに流れるリアクトル電流Iaによって発生する磁束と二次巻線5bに流れるリアクトル電流Ibとによって発生する磁束とが相殺されコア損失が最小化するという特徴がある。
【0105】
したがって、本実施形態では、昇圧比が2倍となる動作状態において、A相スイッチングレグ及びB相スイッチングレグにおけるスイッチング損失つまり第1~第4変圧用IGBT6a~6dのスイッチング損失を低下させ、以って昇降圧コンバータD1の全体的な回路損失を最小化するためにキャリア周波数fcを他の昇圧比よりも低下させる。
【0106】
このキャリア周波数マップ15では、一次電圧V1の値、二次電圧V2の値及びリアクトル電流Iの値が指定されることによって1つのキャリア周波数fcの周波数値X5が抽出される。すなわち、キャリア周波数設定部14は、外部から入力された一次電圧V1、二次電圧V2及びリアクトル電流Iの各値に対応するキャリア周波数fcの周波数値X5をキャリア周波数マップ15から検索し、当該検索の結果である周波数値X5を変圧用ゲート信号生成部2aに出力する。
【0107】
ここで、変圧制御部Bを構成する各構成要素のうち、目標値設定部10、電流制御部11、電圧制御部12及びDuty制御部13は、周知のゲート信号生成装置における構成要素と同様である。すなわち、変圧制御部Bの各構成要素のうち、本実施形態における最も特徴的な構成要素は、キャリア周波数設定部14である。
【0108】
このような変圧制御部Bは、昇降圧コンバータD1と共に本実施形態に係る変圧装置を構成している。すなわち、本実施形態に係る変圧装置は、磁気結合インターリーブ型チョッパ回路(昇降圧コンバータD1)と、磁気結合インターリーブ型チョッパ回路を制御する制御部(変圧制御部B)とから構成されている。
【0109】
次に、本実施形態に係る制御装置Aの要部動作つまり変圧制御部Bの制御動作について、
図4~
図6を参照して詳しく説明する。
【0110】
この変圧制御部Bでは、最初にキャリア周波数設定部14が昇降圧コンバータD1の一次側電圧センサ、二次側電圧センサ及びリアクトル電流センサから取得した一次側電圧V1、二次電圧V2及びリアクトル電流Iの各値に対応するキャリア周波数fcの周波数値X5を取得する(ステップS1)。
【0111】
すなわち、キャリア周波数設定部14は、一次側電圧V1、二次電圧V2の値及びリアクトル電流Iに基づいてキャリア周波数マップ15を検索することにより、1つの周波数値X5を取得する。そして、キャリア周波数設定部14は、検索結果である周波数値X5を変圧用ゲート信号生成部2aに出力する。
【0112】
一方、変圧制御部Bでは、目標値設定部10が電動自動車の操作量等に基づいて変圧用制御目標値X0を設定する(ステップS2)。そして、目標値設定部10は、この変圧用制御目標値X0を電流制御部11に出力する。
【0113】
そして、電流制御部11は、変圧用制御目標値X0に加え、一次側電圧V1、二次電圧V2の値及びリアクトル電流Iに基づいて電流指令値X1を算出する(ステップS3)。そして、電流制御部11は、この電流指令値X1を電圧制御部12に出力する。
【0114】
そして、電圧制御部12は、上記電流指令値X1に加え、リアクトル電流Iに基づいて電圧指令値X2を算出する(ステップS4)。そして、電圧制御部12は、上記電圧指令値X2をDuty制御部13に出力する。
【0115】
そして、Duty制御部13は、上記電圧指令値X2に基づいて、昇降圧コンバータD1におけるA相スイッチングレグ用のA相用Duty指令値X3とB相スイッチングレグ用のB相用Duty指令値X4を算出する(ステップS5)。そして、Duty制御部13は、A相用Duty指令値X3及びB相用Duty指令値X4を変圧用ゲート信号生成部2aに出力する。
【0116】
そして、変圧用ゲート信号生成部2aは、上記A相用Duty指令値X3及びB相用Duty指令値X4に基づいて第1~第4変圧用ゲート信号を生成する(ステップS6)。そして、変圧用ゲート信号生成部2aは、第1~第4変圧用ゲート信号を昇降圧コンバータD1を構成する第1~第4変圧用IGBT6a~6dの各ゲート端子に出力する。この結果、昇降圧コンバータD1は、変圧用制御目標値X0で指定された変圧比(昇圧比又は降圧比)で変圧動作する。
【0117】
ここで、
図5は、昇降圧コンバータD1の昇圧動作時における第1~第4変圧用ゲート信号の一例を示している。この昇圧動作時において、第1、第2変圧用ゲート信号は、第1、第2変圧用IGBT6a、6bを同期してON/OFFするようハイ電位とロー電位とを一定周期で繰り返し、第3、第4変圧用ゲート信号は、第1、第2変圧ゲート信号と反転する信号として、第3、第4変圧用IGBT6c、6dを同期してON/OFFするようハイ電位とロー電位とを一定周期で繰り返すパルス信号となる。
【0118】
また、A相スイッチングレグを構成する第1、第2変圧用IGBT6a、6bを制御する第1、第2変圧用ゲート信号は、B相スイッチングレグを構成する第3、第4変圧用IGBT6c、6dを制御する第3、第4変圧用ゲート信号に対して位相が180°異なる位相関係にある。この結果、A相スイッチングレグに接続する一次巻線5aのリアクトル電流(A相リアクトル電流Ia)とB相スイッチングレグに接続する二次巻線5bのリアクトル電流(B相リアクトル電流Ib)とは、リップル電流の位相が180°異なる関係となる。
【0119】
このようなA相リアクトル電流Iaは、第1変圧用IGBT6aに設けられた還流ダイオードを介して第2コンデンサ7に流れ、またB相リアクトル電流Ibは、第3変圧用IGBT6cに設けられた還流ダイオードを介して第2コンデンサ7に流れる。すなわち、第2コンデンサ7にはA相リアクトル電流Ia及びB相リアクトル電流Ibの合成電流が流れるが、合成電流の振幅は、A相リアクトル電流IaとB相リアクトル電流Ibとが180°異なる位相関係にあるので極めて小さい。
【0120】
このような昇降圧コンバータD1、つまりA相及びB相の二相からなる磁気結合インターリーブ型チョッパ回路によれば、単相構成の一般的なチョッパ回路に比較して出力電流リップルを大幅に低減することが可能である。
【0121】
また、本実施形態によれば、一次側電圧V1、二次電圧V2の値及びリアクトル電流Iの各値に応じて第1~第4変圧用ゲート信号の繰返し周波数(繰返し周期)が昇降圧コンバータD1の全体的な回路損失を最小化するように設定されるので、昇降圧コンバータD1の全動作範囲(全変圧比)において全体的な回路損失が最小化される。
【0122】
したがって、本実施形態によれば、昇降圧コンバータD1の動作状態を示す一次側電圧V1、二次電圧V2の値及びリアクトル電流Iに応じて、昇降圧コンバータD1の性能の1つである回路損失を確実に向上させることが可能である。
【0123】
また、本実施形態によれば、昇降圧コンバータD1(磁気結合インターリーブ型チョッパ回路)の昇圧比が2倍となる動作状態におけるキャリア周波数fc(スイッチング周波数)を前後の昇圧比におけるキャリア周波数fc(スイッチング周波数)よりも低く設定する。このような本実施形態によれば、トランス5におけるインダクタ損失だけではなく、第1~第4変圧用IGBT6a~6dのスイッチング損失をも低下させることが可能である。
【0124】
また、本実施形態によれば、状態量である一次側電圧V1、二次電圧V2の値及びリアクトル電流Iに応じた複数の周波数値がキャリア周波数fc(スイッチング周波数)として登録されたキャリア周波数マップ15(周波数マップ)を備え、上記状態量に基づいてキャリア周波数マップ15を検索することにより第1~第4変圧用ゲート信号を生成する。
【0125】
このような本実施形態によれば、一次側電圧V1、二次電圧V2の値及びリアクトル電流I(状態量)に応じたキャリア周波数fcを比較的短時間で取得することが可能である。そして、この結果として、第1~第4変圧用ゲート信号を比較的短時間で生成することができる。
【0126】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、昇降圧コンバータD1つまりA相及びB相の二相構成の磁気結合インターリーブ型チョッパ回路について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、三相以上の構成を備える磁気結合インターリーブ型チョッパ回路にも適用することが可能である。
【0127】
(2)上記実施形態では、キャリア周波数マップ15に基づいてキャリア周波数fcを設定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、リアクトル電流Iが異常値を示す場合には、
図6に示すようにキャリア周波数fc(スイッチング周波数)を緊急避難的に上昇させてもよい。
【0128】
この
図6では、変圧制御部Bがリアクトル電流Iの増加に伴ってキャリア周波数fcを順次低下させている状態でリアクトル電流Iが電流しきい値Rを越えた状態を示している。この電流しきい値Rは、変圧制御部Bに制御データとして予め記憶されてあり、昇降圧コンバータD1の正常電流領域と異常電流領域とを区分けする電流値である。
【0129】
このように昇降圧コンバータD1の動作状態が正常電流領域から異常電流領域に移行した場合、第1~第4変圧用IGBT6a~6dが異常電流によって損傷する可能性があるが、キャリア周波数fcを上昇させることによりリアクトル電流Iのピーク電流を低く抑制することができる。
【0130】
この変形例によれば、第1~第4変圧用IGBT6a~6dのスイッチング負荷を軽減することができるので、異常電流による第1~第4変圧用IGBT6a~6dの損傷を効果的に回避することが可能である。なお、このような異常電流は、電動車両がスリップした場合等に発生し得る。
【0131】
(3)上記実施形態では、キャリア周波数マップ15を用いてキャリア周波数fcを設定したが、本発明はこれに限定されない。例えば事前実験によって求めた周波数値に基づいて関数を設定し、当該関数に状態量を代入することによってキャリア周波数fcの周波数値X5を取得してもよい。
【0132】
(4)上記実施形態では、
図3に示す論理構成のキャリア周波数マップ15を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、キャリア周波数マップ15における各物理量の範囲(例えば一次電圧V1、二次電圧V2及びリアクトル電流Iの範囲)は、昇降圧コンバータD1(磁気結合インターリーブ型チョッパ回路)の動作範囲に基づいて適宜設定されるべきである。したがって、各物理量の範囲は、
図3に限定されない。
【0133】
また、
図3のキャリア周波数マップ15は、一次電圧V1が220Vの場合に関するが、一次電圧V1は220Vに限定されない。すなわち、一次電圧V1は電池Pの出力電圧によって規定されるので、電池Pの出力電圧に応じて適宜設定させるべきである。
【0134】
(5)上記実施形態では、半導体スイッチング素子としてIGBTを用いたPCU1について説明したが、本発明はこれに限定されない。半導体スイッチング素子として、例えばMOSFETを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明によれば、動作状態に応じて磁気結合インターリーブ型チョッパ回路の性能をより確実に向上させることが可能な変圧装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0136】
A 制御装置
B 変圧制御部
D1 昇降圧コンバータ(磁気結合インターリーブ型チョッパ回路)
D2 駆動用インバータ
D3 発電用インバータ
E1、E2 電池用端子
Fu、Fv、Fw モータ用端子
G 発電機
Hu、Hv、Hw 発電機用端子
P 電池
M 三相モータ(電動機)
1 PCU(パワーコントロールユニット)
2 ゲートドライバ
2a 変圧用ゲート信号生成部
2b 駆動用ゲート信号生成部
2c 発電用ゲート信号生成部
3 ECU
4 第1コンデンサ
5 トランス
5a 一次巻線
5b 二次巻線
6a~6d 変圧用IGBT
7 第2コンデンサ
8a~8f 駆動用IGBT
9a~9f 発電用IGBT
10 目標値設定部
11 電流制御部
12 電圧制御部
13 Duty制御部
14 キャリア周波数設定部(スイッチング周波数設定部)
15 キャリア周波数マップ(周波数マップ)