(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】ゴム加工用プロセスオイル及びこれを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 91/00 20060101AFI20241101BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20241101BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20241101BHJP
C08L 23/22 20060101ALI20241101BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C08L91/00
C08K5/521
C08L23/08
C08L23/22
C08L9/00
(21)【出願番号】P 2023054603
(22)【出願日】2023-03-30
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2022-0055162
(32)【優先日】2022-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521319568
【氏名又は名称】ディーエル ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】イ フンジン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ ジンフン
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-072924(JP,A)
【文献】特表2018-525504(JP,A)
【文献】特開2020-139140(JP,A)
【文献】特開平05-004307(JP,A)
【文献】特表2018-501344(JP,A)
【文献】特開2009-235241(JP,A)
【文献】特表2008-546890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースオイルと、
前記ベースオイルに溶解し、エチレンと炭素数3~20のアルファオレフィンとの共重合によって製造された液状オレフィン共重合体と、
ポリイソブチレンと、
アルキル化ホスホニウムホスフェート化合物及びブチルヒドロキシベンゼン系化合物の中から選択される1種以上の添加剤と、を含む、ゴム加工用プロセスオイル。
【請求項2】
前記ゴム加工用プロセスオイルは、ベースオイル1~80重量%、液状オレフィン共重合体1~80重量%、ポリイソブチレン10~50重量%、及び添加剤0.01~3重量%を含むものである、請求項1に記載のゴム加工用プロセスオイル。
【請求項3】
前記液状オレフィン共重合体は、エチレン単位40~60モル%、及び炭素数3~20のアルファオレフィン単位60~40モル%を含む、請求項1に記載のゴム加工用プロセスオイル。
【請求項4】
前記ポリイソブチレンは、数平均分子量が500~6,000g/molである、請求項1に記載のゴム加工用プロセスオイル。
【請求項5】
前記アルキル化ホスホニウムホスフェート化合物は、下記化学式1を満たすものである、請求項1に記載のゴム加工用プロセスオイル。
[化学式1]
(式中、R
1~R
6は互いに独立して直鎖状または分岐状の炭素数1~20のアルキル基である。)
【請求項6】
前記アルキル化ホスホニウムホスフェート化合物は、
テトラオクチルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート
、テトラエチルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、及びトリブチルテトラデシルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェートの中から選択される1種以上である、請求項5に記載のゴム加工用プロセスオイル。
【請求項7】
前記ブチルヒドロキシベンゼン系化合物は、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド
]、ペンタエリトリトールテトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、アルキル-t-ブチルヒドロキシヒドロシンナメート、アルキル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、及びt-ブチルヒドロアニソールの中から選択される1種以上である、請求項1に記載のゴム加工用プロセスオイル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のゴム加工用プロセスオイルを含むゴム組成物。
【請求項9】
前記ゴム組成物は、ゴム100重量部に対してゴム加工用プロセスオイル80~200重量部を含む、請求項8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記ゴム組成物は、ジエン系ゴムをさらに含むものである、請求項8に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記ジエン系ゴムは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、イソブテン-イソプレンゴム(IIR)及びクロロプレンゴム(CR)の中から選択される1種以上である、請求項10に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム加工用プロセスオイル及びこれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
EPDM(Ethylene-Propylene Diene Monomer)/SEBS(Styrene-Ethylene/Butylene-Styrene)は、産業全般に使用されるゴムの種類である。特に、EPDMは、エチレンとプロピレンを共重合し、架橋することが可能な二重結合を含むことができるようにENB(Ethylene Norbonene)を含んで製造される。耐候性と耐オゾン性に優れるため、自動車のウェザーストリップに多く使用され、家電及び機械のゴム部品として広く使われている。
【0003】
EPDM/SEBSを用いてゴム製品を作るためには、所望の機械的特性を有するように組成を設計し、配合工程を経てゴム半製品を作られなければならない。一般に配合ゴムを製造する工程には、補強剤や油、酸化防止剤、活性化剤、架橋剤、促進剤、粘着剤、加工助剤などが用いられる。配合されたゴムは、押出または圧延などの工程を経て一定の形状に成形でき、成形されたゴムは、熱及び圧力によって架橋される工程を経て最終ゴム製品が製造される。
【0004】
ゴム製品は、変形してから戻る独特の特性を持つため、橋やビルを支えて振動を抑え、動く機械装置の間々に使われて騒音と振動を防ぐなど、産業全般で多様に活用されている。
【0005】
このように多様に使用されるゴムの機械的物性を満たすために多量のフィラーが使用されるが、ゴムにカーボンブラックやシリカなどの補強剤を一定量以上で投入すると、粘度があまり大きく増加して配合が難しくなる。また、ウェッティング(wetting)にならず、ゴムがばらばらになる現象が発生するが、この場合、ゴムの機械的物性を満たすことが難しい。
【0006】
このとき、オイルを適量使用して配合を容易に行うことができるが、その投入量を無限に増やすことはできない。オイルを過剰に投入する場合、配合は容易になるものの、ゴムの機械的物性が低下して設計物性との差が生じることがあり、これは製品性能に影響を与える。
【0007】
また、オイルは、分子量がゴムに比べて少なくて空気中に排出されることもあり、オイル含有量の低い周囲部分に拡散して時間経過に伴ってゴム内の残存量が減少する現象が発生する。これはゴムの機械的物性が変わる理由となり、ゴム老化の一種類である。
【0008】
これにより、オイル投入量を大幅に増加させることなく、ゴム配合加工性と押出及び圧延加工性を向上させることができ、ゴムの機械的物性を増加させることができ、オイル減少現象を抑制することができる技術に対する開発が求められる。
一方、これに対する類似先行文献としては、韓国登録特許公報10-1363718号が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国登録特許公報第10-1363718号(2014年2月10日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、オイル投入量を大幅に増加させることなくゴム配合加工性を向上させることができ、ゴムの機械的物性を向上させることができ、オイル減少現象を抑制することができるゴム加工用プロセスオイル及びこれを含むゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、ベースオイルと、前記ベースオイルに溶解し、エチレンと炭素数3~20のアルファオレフィンとの共重合によって製造された液状オレフィン共重合体と、ポリイソブチレンと、アルキル化ホスホニウムホスフェート化合物及びブチルヒドロキシベンゼン系化合物の中から選択される1種以上の添加剤と、を含む、ゴム加工用プロセスオイルに関する。
【0012】
前記一態様において、前記ゴム加工用プロセスオイルは、ベースオイル1~80重量%、液状オレフィン共重合体1~80重量%、ポリイソブチレン10~50重量%、及び添加剤0.01~3重量%を含むものであってもよい。
【0013】
前記一態様において、前記液状オレフィン共重合体は、エチレン単位40~60モル%、及び炭素数3~20のアルファオレフィン単位60~40モル%からなるものであってもよい。
【0014】
前記一態様において、前記ポリイソブチレンは、数平均分子量が500~6,000g/molであってもよい。
【0015】
前記一態様において、前記アルキル化ホスホニウムホスフェート化合物は、下記化学式1を満たすものであってもよい。
[化学式1]
(式中、R
1~R
6は互いに独立して直鎖状または分岐状の炭素数1~20のアルキル基である。)
【0016】
前記一態様において、前記アルキル化ホスホニウムホスフェート化合物は、テトラオクチルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブチルテトラデシルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、テトラエチルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、及びトリブチルテトラデシルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェートの中から選択される1種以上であってもよい。
【0017】
前記一態様において、前記ブチルヒドロキシベンゼン系化合物は、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、ペンタエリトリトールテトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、アルキル-t-ブチルヒドロキシヒドロシンナメート、アルキル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、及びt-ブチルヒドロアニソールの中から選択される1種以上であってもよい。
また、本発明の他の一態様は、上述したゴム加工用プロセスオイルを含むゴム組成物に関する。
前記他の一態様において、前記ゴム組成物は、ゴム100重量部に対してプロセスオイル80~200重量部を含むことができる。
【0018】
前記他の一態様において、前記ゴム組成物は、ジエン系ゴムをさらに含むことができ、前記ジエン系ゴムは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、イソブテン-イソプレンゴム(IIR)及びクロロプレンゴム(CR)の中から選択される1種以上であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるプロセスオイルは、ベースオイルに、液状オレフィン共重合体と、ポリイソブチレンと、アルキル化ホスホニウムホスフェート化合物またはブチルヒドロキシベンゼン系化合物の中から選択される1種以上の添加剤が添加されることにより、ゴム配合の際に従来と同様の添加量でプロセスオイルを添加するにも拘らず、加工線の改善に有利であるうえ、ゴムの機械的物性を向上させることができて好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態の利点及び特徴、及びそれらを達成する方法は、添付図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照することにより明確になるであろう。しかし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で実現できる。但し、本実施形態は、本発明の開示を完全たるものにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、特許請求の範囲の範疇によって定義されるだけである。明細書全体にわたって、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。
【0021】
本発明の実施形態を説明するにあたり、公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にするおそれがあると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。後述される用語は、本発明の実施形態における機能を考慮して定義された用語であって、これは、ユーザ、運用者の意図または慣例などによって変わり得る。したがって、その定義は、本明細書全体にわたる内容に基づいて下されるべきである。
【0022】
本発明の一態様は、ベースオイルと、前記ベースオイルに溶解し、エチレンと炭素数3~20のアルファオレフィンとの共重合によって製造された液状オレフィン共重合体と、ポリイソブチレンと、アルキル化ホスホニウムホスフェート化合物及びブチルヒドロキシベンゼン系化合物の中から選択される1種以上の添加剤と、を含む、ゴム加工用プロセスオイルに関する。
【0023】
このように、本発明によるプロセスオイルは、ベースオイルに、液状オレフィン共重合体、ポリイソブチレン、及びアルキル化ホスホニウムホスフェート化合物またはブチルヒドロキシベンゼン系化合物の中から選択される1種以上の添加剤が添加されることにより、ゴム配合の際に従来と同様の添加量でプロセスオイルを添加するにも拘らず、加工性の改善に有利であるうえ、ゴムの機械的物性を向上させることができて好ましい。
【0024】
このためには、プロセスオイルの各成分含有量を適宜調節することが良いが、前記ゴム加工用プロセスオイルは、ベースオイル1~80重量%、液状オレフィン共重合体1~80重量%、ポリイソブチレン10~50重量%及び添加剤0.01~3重量%を含むことができ、好ましくは、ベースオイル5~60重量%、液状オレフィン共重合体20~80重量%、ポリイソブチレン12~40重量%及び添加剤0.05~2重量%を含み、最も好ましくは、ベースオイル20~45重量%、液状オレフィン共重合体35~45重量%、ポリイソブチレン15~35重量%、及び添加剤0.1~1.5重量%を含むことができる。このような範囲でゴムを配合する際に、加工性改善効果に優れながらもゴムの機械的物性を向上させることができる。一方、上記の含有量の範囲から外れると、加工性改善効果が微々たるものであり或いは配合ゴムの機械的物性が低下することがある。
【0025】
以下、本発明の一例によるプロセスオイルについてより詳細に説明する。
まず、本発明の一例によるベースオイルは、製造方法や精製方法などによって粘度特性や耐熱性、酸化安定性等の性能が異なるが、当業分野で通常用いられるものであれば特に限定せずに使用することができ、一般にAPI(American Petroleum Institute)では、ベースオイルをグループI、II、III、IV及びVの5種類に分類している。これらのAPIカテゴリーはAPI Publication 1509、15th Edition、Appendix E、April 2002に定義されており、これは下記表1に示す通りである。
【0026】
【0027】
前記ベースオイルは、APIカテゴリーのグループI~Vのいずれであってもよく、本発明に適したベースオイルは、上述したAPIカテゴリーのI、IIIに属するものであって、「飽和炭化水素」とは、パラフィン系及びナフテン系化合物を意味することができる。パラフィン系化合物は、分岐を有していても直鎖状でもよく、ナフテン系化合物は、環状飽和炭化水素、すなわちシクロパラフィンであってもよい。環状構造を有する飽和炭化水素は、典型的にはシクロペンタンまたはシクロヘキサンの誘導体である。ナフテン系化合物は、単環構造(モノナフテン)または2つの単離された環構造(単離されたジナフテン)、または2つの融合環構造物(融合ジナフテン)、または3つ以上の融合環構造物(多環式ナフテンまたはポリナフテン)を含む。本発明の一例による液状オレフィン共重合体は、ゴム配合の際に補強剤のウェッティングが容易になり、配合機のせん断力(shear force)がゴムに伝達され、ゴムと補強剤がよく混合されるようにするためのもので、エチレンと炭素数3~20のアルファオレフィンとの共重合によって製造された液状オレフィン共重合体は、従来使用されるナフテン油やパラフィン油などのミネラルオイルとは異なる特性が現れるが、EPDM/SEBSゴムとその成分が類似してミネラルオイルに比べてゴムとの混和性に優れるうえ、配合ゴムの粘度を下げることができて好ましい。これは、押出または圧延工程で電気消費を低減することができ、所望の寸法に近いゴム製品を製作するのにも有利である。ゴム製品の寸法安定性に優れるほど、不良率が減少するにつれて製造コストが低くなる効果も期待することができる。
【0028】
前記液状オレフィン共重合体は、共重合体鎖中のアルファ-オレフィン単位が均一に分布するようにするために、シングルサイト触媒系下でエチレン及びアルファオレフィン単量体を共重合させて製造され、好ましくは、前記液状オレフィン共重合体は、架橋メタロセン化合物、有機金属化合物及び前記架橋メタロセン化合物と反応してイオン対を形成するイオン性化合物を含むシングルサイト触媒系下でエチレン及びアルファオレフィン単量体を反応させることにより製造できる。
【0029】
液状オレフィン共重合体の製造の際にエチレンと使用される前記アルファオレフィン単量体は、炭素数3~20の脂肪族オレフィンを含み、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン及び1-テトラデセンなどから選択される1種以上であってもよく、ここには、異性体が含まれた形態も該当し得るが、これに限定されるものではない。好ましくは、前記アルファオレフィン単量体は、1種以上の炭素数3~6のアルファオレフィン、最も好ましくはプロピレンであり得る。
【0030】
好ましくは、本発明に適した前記液状オレフィン共重合体は、エチレン単位40~60モル%、及び炭素数3~20のアルファオレフィン単位60~40モル%からなるものであり得る。このような範囲を有する液状オレフィン共重合体を使用することが加工性の改善及び機械的物性の向上に良い。これに対し、エチレン単位が40モル%未満または60モル%超過であれば、加工性の改善効果が微々たるものであるか、或いは配合ゴムの機械的物性が低下するおそれがある。
【0031】
また、前記液状オレフィン共重合体は、数平均分子量(Mn)が500~10,000g/molであり、分子量分布(Mw/Mn、Mwは重量平均分子量)が3以下であり、100℃での動粘度が30~5,000cStであり得る。
【0032】
本発明の一例によるポリイソブチレンは、主鎖がイソブチレンである重合体であって、前記液状オレフィン共重合体とポリイソブチレンを一緒にベースオイルに添加すると、ゴムの破断強度と破断伸びを同時に向上させることができる。EPDM/SEBSゴムの場合、滑らかな金属面に反復的なストレスによって微細に剥ぎ取られる摩耗現象が多く発生するおそれがあるが、本発明によって、液状オレフィン共重合体とポリイソブチレンを一緒に添加したプロセスオイルをゴム配合の際に添加すると、ゴムの破断強度と破断伸びが同時に良くなって摩耗性能の向上に寄与することができる。また、オイルが空気中に排出されるか或いは周辺ゴムへ拡散するのを抑制する役割を果たして配合ゴム内のオイル残存量が減少する現象を抑制することができ、これによってオイル減少によるゴム老化現象を防止することができ、反復変形により回復しない永久変形の発生を抑制することができる。
【0033】
好ましくは、本発明に適したポリイソブチレンは、数平均分子量が500~6,000g/mol、好ましくは1,000~4,000g/mol、最も好ましくは1,500~3,000g/molであり、分子量分布度(PI)は、1~5、好ましくは1~3であり得る。また、100℃での動粘度が2~10,000cSt、好ましくは100~5,000cSt、最も好ましくは1,000~3,000cStであり得る。
【0034】
本発明の一例による添加剤は、摩擦低減効果及び抗酸化効果のために添加されるものであって、上述したように、アルキル化ホスホニウムホスフェート化合物及びブチルヒドロキシベンゼン系化合物の中から選択される1種以上であり得る。
【0035】
前記アルキル化ホスホニウムホスフェート化合物は、下記化学式1を満足するものであってもよく、より具体的な一例示として、テトラオクチルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブチルテトラデシルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、テトラエチルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、及びトリブチルテトラデシルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどから選択される1種以上であってもよい。
[化学式1]
(式中、R
1~R
6は、互いに独立して直鎖状または分岐状の炭素数1~20のアルキル基である。)
【0036】
前記ブチルヒドロキシベンゼン系化合物は、ブチルヒドロキシベンゼン基を含有する化合物であり、具体的には、例えば、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、ペンタエリスリトールテトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、アルキル-t-ブチルヒドロキシヒドロシンナメート、アルキル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート及びt-ブチルヒドロアニソール等から選ばれる1種以上であってもよく、このとき、前記アルキルは、炭素数1~20のアルキル基であって、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0037】
また、本発明の他の一態様は、前述したゴム加工用プロセスオイルを含むゴム組成物に関し、詳細には、ゴム組成物は、ゴム、ゴム加工用プロセスオイル及び充填剤を含むことができる。
【0038】
このとき、ゴム加工用プロセスオイルは、前述と同様であるので重複説明は省略し、前記ゴム組成物は、ゴム100重量部に対してプロセスオイル80~200重量部を含むことができ、より好ましくは、プロセスオイル100~180重量部を含むことができる。このような範囲で加工性の改善効果に優れるとともに、配合ゴムの機械的物性の向上効果が良い。
【0039】
一方、本発明の一例によるゴムは、当業分野で通常用いられるものであれば特に限定することなく使用することができ、具体的には、例えばジエン系ゴムである。具体的な一例示として、前記ジエン系ゴムは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、イソブテン-イソプレンゴム(IIR)及びクロロプレンゴム(CR)から選択される1種以上であり得る。また、このようなゴムの誘導体、例えば、錫化合物で変性されたポリブタジエンゴム又はエポキシ変性、シラン変性又はマレイン酸変性ゴムを単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0040】
本発明の一例による充填剤は、シリカ、カーボンブラック、ホワイトカーボン、カーボンナノチューブ、粘土、タルク、及びこれらの混合物であり、より好ましくは、カーボンブラックであり得る。充填剤の含有量は、ゴム100重量部に対して10~150重量部、好ましくは30~120重量部、最も好ましくは50~100重量部であり得る。
【0041】
この他にも、前記ゴム組成物は、用途及び必要に応じて、ゴム産業分野で通常用いられる加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛及びステアリン酸などから選択される1種以上の配合成分をさらに含むことができる。前記加硫剤の例としては、硫黄(遊離硫黄)、アミンジスルフィド、重合体性ポリスルフィド、及び硫黄オレフィン付加物等から選ばれる1種以上であってもよく、加硫促進剤は、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、ナトリウム-2-メルカプトベンゾチアゾール、亜鉛塩-2-メルカプトベンゾチアゾール、シクロヘキシルアミン塩2-メルカプトベンゾチアゾール、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドまたはN-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのベンゾチアゾール系促進剤、及びテトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドまたはジペンタメチレンチウラムジスルフィドなどのチウラム系促進剤などから選択される1種以上であってもよい。前記配合成分は、それぞれゴム100重量部に対して0.1~10重量部で添加でき、これに限定されるものではない。
【0042】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明の範囲は下記の実施例によって限定されるものではなく、本発明で特に明示していない%は重量%を意味することができる。
【0043】
[製造例1~15及び比較製造例1~16]
下記表2に記載の添加量(重量%)に応じて、パラフィン油、ナフテン油、液状オレフィン共重合体(数平均分子量(Mn)7800g/mol、エチレン含有量50mol%)、ポリイソブチレン(PIB)(デリム社製、PB2000、Mn2180g/mol、100℃での動粘度2200~2400cSt)及び添加剤を混合してプロセスオイルを準備した。
このとき、表2に用いられた添加剤の略語は、次の通りである。
【0044】
TPEP:tetraoctylphosphonium bis(2-ethylhexyl)phosphate
TBPEHP:tributyltetradecylphosphonium bis(2-ethylhexyl)phosphate
TEPEHP:tetraethylphosphonium bis(2-ethylhexyl)phosphate
BHC:Octyl-3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyhydrocinnamate
BHPPA:N,N’-(hexane-1,6-diyl)bis[3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propanamide]
【0045】
【0046】
[実施例1~15及び比較例1~16]
下記表3に記載の添加量(重量%)によって、プロセスオイル、EPDM(錦湖ポリケム社製、KEP980N、エチレン含有量71重量%、ENB含有量4.5重量%、ムーニー粘度(ML(1+8)@125℃)58)、カーボンブラック(CB)、酸化亜鉛(ZnO)、ステアリン酸(SA)、硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)及び2,2’-ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)を混合して配合ゴムを製造した。
【0047】
【0048】
[特性評価]
下記方法によって各特性を試験するが、レオ試験、ムーニー粘度及び引張特性は、その結果を指数(index)で表記し、指数数値が高いほど有利な物性を有する。
1)レオ試験(Rheo(@160℃)):ASTM D5289に基づいて測定した。
【0049】
2)ムーニー粘度(Mooney viscosity、ML(1+4)@100℃):ASTM D1646に基づいて測定した。ムーニー粘度は、ゴムの粘度を示す指数であり、その数値が高いほど低い粘度をもって加工性が良い。
【0050】
3)永久圧縮率(CSET、Compression set)(%):ASTM D395に基づいて測定した。永久圧縮率は、ゴムの機械的強度を示すものであって、その数値が低いほど圧縮による変形の程度が少ない。
【0051】
4)引張(Tensile)特性:ASTM D412に基づいて破断強度及び破断伸びを測定した。引張特性はゴムの機械的強度を示すもので、指数数値が高いほど機械的強度に優れる。
【0052】
【0053】
前記表2~表4を参照すると、本発明によって、ベースオイルに、液状オレフィン共重合体、ポリイソブチレン、及びアルキル化ホスホニウムホスフェート化合物またはブチルヒドロキシベンゼン系化合物の中から選択される1種以上の添加剤を混合して製造されたプロセスオイルをゴムに配合した実施例の場合、液状オレフィン共重合体とポリイソブチレンのうちの1種以上を添加していない比較例に比べて加工性及びゴムの機械的物性が全般的に向上したことを確認することができた。
【0054】
ただし、実施例10、11及び15の場合、液状オレフィン共重合体又はポリイソブチレンの添加量が多少少ないため、加工性の改善及び機械的物性の向上効果が微々たるものであるか或いは低下した。
【0055】
[製造例16]
パラフィン油36.68重量%、ナフテン油21.51重量%、液状オレフィン共重合体(数平均分子量(Mn)7800g/mol、エチレン含有量35モル%)26.00重量%、ポリイソブチレン(PIB)(デリム社製、PB2000、Mn2180g/mol、100℃での動粘度2200~2400cSt)15.7重量%、及びBHC0.11重量%を混合してプロセスオイルを準備した。
【0056】
[製造例17]
パラフィン油37.76重量%、ナフテン油16.52重量%、液状オレフィン共重合体(数平均分子量(Mn)7800g/mol、エチレン含有量75mol%)25.50重量%、ポリイソブチレン(PIB)(デリム社製、PB2000、Mn2180g/mol、100℃での動粘度2200~2400cSt)20.1重量%、及びBHC0.12重量%を混合してプロセスオイルを準備した。
【0057】
[製造例18]
パラフィン油67.63重量%、液状オレフィン共重合体(数平均分子量(Mn)7800g/mol、エチレン含有量70mol%)25.00重量%、ポリイソブチレン(PIB)(デリム社製、PB2000、Mn2180g/mol、100℃での動粘度2200~2400cSt)7.25重量%、及びBHC0.12重量%を混合してプロセスオイルを準備した。
【0058】
[製造例19]
パラフィン油42.68重量%、ナフテン油23.35重量%、液状オレフィン共重合体(数平均分子量(Mn)7800g/mol、エチレン含有量30mol%)26.54重量%、ポリイソブチレン(PIB)(デリム社製、PB2000、Mn2180g/mol、100℃での動粘度2200~2400cSt)7.32重量%、及びBHC0.11重量%を混合してプロセスオイルを準備した。
【0059】
【0060】
[実施例16~19]
下記表6に記載の添加量(重量%)に応じて、プロセスオイル、EPDM(錦湖ポリケム社製、KEP980N、エチレン含有量71重量%、ENB含有量4.5重量%、ムーニー粘度(ML(1+8)@125℃)58)、カーボンブラック(CB)、酸化亜鉛(ZnO)、ステアリン酸(SA)、硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)及び2,2’-ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)を混合して配合ゴムを製造した。
【0061】
【0062】
[特性評価]
前述した方法によってレオ試験、ムーニー粘度、永久圧縮率及び引張特性を評価し、その結果を下記表7に示す。
【0063】
【表7】
前記実施例8及び実施例16~19は、エチレン含有量が異なる液状オレフィン共重合体を添加した実験例である。
【0064】
そのうち、エチレン含有量が40~60モル%を満たす液状オレフィン共重合体を用いた実施例8の場合、加工性に優れたうえ、永久圧縮率が10.22%、引張強度指数が157と測定されて機械的物性にも非常に優れた。
【0065】
一方、実施例16~19の場合、エチレン含有量が40~60モル%を超える液状オレフィン共重合体が添加されることにより、加工性の改善及び機械的物性の向上効果が微々たるものであるか或いは低下したことを確認することができた。