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特許7580530通信装置、制御方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】通信装置、制御方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20241101BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241101BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W84/12
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023093302
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2019061359の分割
【原出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2023110056
(43)【公開日】2023-08-08
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝文
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0255659(US,A1)
【文献】Graham Smith (SR Technologies),Dynamic OBSS_PD level,IEEE 802.11-18/0617r0,米国,IEEE mentor,2018年03月21日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線ネットワークを構築する基地局モードと、第2の無線ネットワークを構築するアクセスポイントに接続する端末モードと、を実行可能な通信装置であって、
前記基地局モードで前記第1の無線ネットワークを構築し、前記端末モードで前記アクセスポイントと接続している場合、前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおいて空間再利用通信を利用できないように制御する制御手段を有する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、空間再利用通信を許可しないことを示すフレームを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記通信装置が前記端末モードと前記基地局モードとをコンカレントに実行可能な状態であることに基づいて前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおいて空間再利用通信を利用できないように制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記端末モードで接続する前記アクセスポイントが構築する前記第2の無線ネットワークにおいて空間再利用通信が許可されていることに基づいて、前記制御手段は前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおける空間再利用通信を利用できないように制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか項に記載の通信装置。
【請求項5】
第1の無線ネットワークを構築する基地局モードと、第2の無線ネットワークを構築するアクセスポイントに接続する端末モードと、を実行可能な通信装置であって、
前記基地局モードで前記第1の無線ネットワークを構築し、前記端末モードで前記アクセスポイントと接続している場合、前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおいて空間再利用通信を利用できないことを示す情報を含む第1のフレームを送信する送信手段を有する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項6】
前記空間再利用通信を利用できないことを示す情報は、SRP_Disallowedを示す情報またはNon-SRG_OBSS_PD_SR_Disallowedを示す情報である
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記端末モードで接続する前記アクセスポイントから前記第2の無線ネットワークにおいて空間再利用通信が利用できることを示す情報を含む第2のフレームを受信する場合、前記送信手段は前記第1のフレームを送信する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の通信装置。
【請求項8】
第1の無線ネットワークを構築する基地局モードと、第2の無線ネットワークを構築するアクセスポイントに接続する端末モードと、を実行可能な通信装置であって、
前記基地局モードで前記第1の無線ネットワークを構築し、前記端末モードで前記アクセスポイントと接続している場合に、前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおいて空間再利用通信が無効となっている
ことを特徴とする通信装置。
【請求項9】
前記基地局モードで動作する場合に、空間再利用通信を許可しないことを示す情報を含む第1のフレームを送信する送信手段を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記空間再利用通信を許可しないことを示す情報は、SRP_Disallowedを示す情報またはNon-SRG_OBSS_PD_SR_Disallowedを示す情報である
ことを特徴とする請求項9に記載の通信装置。
【請求項11】
前記通信装置は、前記基地局モードにおいてIEEE802.11ax規格に準拠した無線通信を実行可能である
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記第1の無線ネットワークを構築する前記基地局モード動作する無線チャネルと前記第2の無線ネットワークを構築するアクセスポイントと接続する前記端末モード動作する無線チャネルとは同一の無線チャネルである
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか項に記載の通信装置。
【請求項13】
前記空間再利用通信は、IEEE802.11シリーズ規格で規定されたSpatial Reuse機能を用いた通信である
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項14】
前記基地局モードは、Wi-Fiダイレクトにおけるグループオーナ(GO)として動作するモードであり、前記端末モードは、インフラストラクチャモード形態におけるステーション(STA)として動作するモードである
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項15】
前記通信装置は前記基地局モードと前記端末モードとを時分割で動作させる
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項16】
第1の無線ネットワークを構築する基地局モードと、第2の無線ネットワークを構築するアクセスポイントに接続する端末モードと、を実行可能な通信装置が実行する制御方法であって、
前記基地局モードで前記第1の無線ネットワークを構築し、前記端末モードで前記アクセスポイントと接続している場合、前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおいて空間再利用通信を利用できないように制御する制御工程を有する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項17】
第1の無線ネットワークを構築する基地局モードと、第2の無線ネットワークを構築するアクセスポイントに接続する端末モードと、を実行可能な通信装置が実行する制御方法であって、
前記基地局モードで前記第1の無線ネットワークを構築し、前記端末モードで前記アクセスポイントと接続している場合、前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおいて空間再利用通信を利用できないことを示す情報を含む第1のフレームを送信する送信工程を有する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項18】
第1の無線ネットワークを構築する基地局モードと、第2の無線ネットワークを構築するアクセスポイントに接続する端末モードと、を実行可能な通信装置が実行する制御方法であって、
前記基地局モードで前記第1の無線ネットワークを構築し、前記端末モードで前記アクセスポイントと接続している場合に、前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおいて空間再利用通信が無効となっている
ことを特徴とする制御方法。
【請求項19】
無線通信部と接続されたコンピュータを、請求項1から15のいずれか1項に記載の通信装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多数の無線通信機器が存在する環境での無線媒体の効率的な利用を目指すIEEE802.11ax規格が検討されている。この検討においては複数のBSS(Basic Service Set)が無線媒体を有効に使用するための技術として空間再利用(SR:Spatial Reuse)処理が検討されている。SR処理は、複数のBSSが重なって配置されているようなOBSS(Overlapping BSS)環境下で効率よく無線媒体を利用するための通信技術である。BSSを識別する識別情報としてはBSSカラー(BSS Color)という情報を物理層ヘッダに含めて送信する方法が検討されている。特許文献1ではBSSカラーを用いて、OBSSの上り信号であるか下り信号であるかを判別して送信制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-225091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、無線LAN通信装置へのWi-Fiダイレクト(Wi-Fi Direct)の搭載も進んできている。Wi-Fiダイレクトにおいては、一方の通信装置がグループオーナ(GO)という簡易的なアクセスポイント(AP)として動作し、対向の通信装置がClientとしてGOに無線接続して直接通信を行う。さらに、Wi-Fiダイレクトを搭載した通信装置においては、GOとして動作しつつ、APが構築する無線ネットワークにステーション(STA)としてInfraモードで接続する、いわゆるコンカレント接続も可能である。
【0005】
しかしながら、コンカレント接続において、自装置が構築するGO側のネットワークと自装置がSTAとして接続するネットワークとが同一の周波数かつ異なるBSSカラーで動作している場合、信号の衝突が発生する可能性が高くなる。例えば、電波環境によっては、自装置がSTA側のインタフェース(I/F)でAP向けにデータを送信するタイミングで、GO側のClient装置においてSR処理がなされ、GO向けにデータが送信され、その結果、信号の衝突となりうる。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、無線通信における信号の衝突を低減可能とする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の問題点を解決するため、本発明に係る通信装置は以下の構成を備える。すなわち、第1の無線ネットワークを構築する基地局モードと、第2の無線ネットワークを構築するアクセスポイントに接続する端末モードと、を実行可能な通信装置は、
前記基地局モードで前記第1の無線ネットワークを構築し、前記端末モードで前記アクセスポイントと接続している場合、前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおいて空間再利用通信を利用できないように制御する制御手段を有する。
または、第1の無線ネットワークを構築する基地局モードと、第2の無線ネットワークを構築するアクセスポイントに接続する端末モードと、を実行可能な通信装置は、
前記基地局モードで前記第1の無線ネットワークを構築し、前記端末モードで前記アクセスポイントと接続している場合、前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおいて空間再利用通信を利用できないことを示す情報を含む第1のフレームを送信する送信手段を有する。
あるいは、第1の無線ネットワークを構築する基地局モードと、第2の無線ネットワークを構築するアクセスポイントに接続する端末モードと、を実行可能な通信装置は、
前記基地局モードで前記第1の無線ネットワークを構築し、前記端末モードで前記アクセスポイントと接続している場合に、前記基地局モードで構築する前記第1の無線ネットワークにおいて空間再利用通信が無効となっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無線通信における信号の衝突を低減可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図2】プリンタの機能構成を示す図である。
図3】スマートフォンの機能構成を示す図である。
図4】第1実施形態における通信のシーケンスを示す図である。
図5】PHY層におけるフレームフォーマットの例を示す図である。
図6】情報要素(IE)のフォーマットの例を示す図である。
図7】情報要素(IE)のフォーマットの例を示す図である。
図8】プリンタにおいてWi-Fiダイレクト接続を開始する際の動作を示すフローチャートである。
図9】プリンタにおいてInfra接続を停止する際の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(第1実施形態)
本発明に係る通信装置の第1実施形態として、無線LANシステムにおけるプリンタを例に挙げて以下に説明する。なお、以下では、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11シリーズに準拠した無線LANシステムを用いた例について説明するが、他の無線通信規格を利用するものであってもよい。
【0012】
無線LANにおいてはCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)方式による衝突回避が用いられている。CSMA/CAでは、他の通信装置が信号を送信しているか否かを判断し、他の通信装置が信号を送信していないと判断した上で自装置の信号を送信することで信号の衝突を回避している。
【0013】
また、SR(Spatial Reuse)処理を用いた通信(空間再利用通信)では、他の通信装置が信号を送信している場合に、自装置で当該信号を受信した際に当該信号が自装置の属するBSS向けの信号であるか否かを識別する。そして、当該信号が自装置の属するBSS以外に向けた信号である場合、自装置の送信信号が他のBSSに影響を与えるか否かを判定し、影響がないと判定された場合に、自装置から信号を送信することで無線媒体の効率的な利用を可能にしている。なお、具体的な動作として、OBSS_PD(Overlapping BSS Packet Detect)方式とSRP(Spatial Reuse Parameters)方式の2つの方式が検討されている。
【0014】
OBSS_PD方式は、受信信号が他のBSSに属する場合に、キャリアセンスの閾値と送信電力を制御することで、自装置の信号を送信可能なキャリアセンスレベルを動的に変更して信号を送信する方式である。SRP方式は、アクセスポイント(AP)が属するBSSにおいて許容できる受信干渉レベルに関するパラメータ値を通知し、他のBSSに属する端末はその値に基づいて送信レベルを決定して信号を送信する方式である。
【0015】
コンカレント接続が可能な通信装置においては、グループオーナ(GO)側のネットワークと、ステーション(STA)として接続する接続先APのネットワークの両方のネットワークでIEEE802.11ax規格(以下、単に802.11axと表記する)に対応した無線通信を実施することが可能である。また、802.11axでは各ネットワーク(BSS)を識別する識別情報としてBSSカラーが規定されている。
【0016】
<システム構成>
図1は、第1実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。アクセスポイント(AP)101は、基地局の機能を有する通信装置であり、プリンタ102及びスマートフォン103はそれぞれユーザ端末である通信装置である。また、プリンタ102およびスマートフォン103はWi-Fiダイレクト機能を有しており、ここでは、プリンタ102はWi-FiダイレクトのGOとして動作し、スマートフォン103は、Wi-FiダイレクトのClientとして動作する。
【0017】
無線ネットワーク104は、AP101とプリンタ102とを接続するネットワークであり、無線ネットワーク105は、プリンタ102とスマートフォン103とを接続する無線ネットワークである。また、無線ネットワーク104はAP101が形成する無線ネットワークであり、無線ネットワーク105はプリンタ102が形成する無線ネットワークである。
【0018】
すなわち、AP101は、無線ネットワーク104において、インフラストラクチャ(Infra)モード形態におけるアクセスポイントとして動作する。一方、プリンタ102は、無線ネットワーク104において、InfraモードにおけるSTAとして動作することが可能であると同時に、無線ネットワーク105において、Wi-FiダイレクトのGOとして動作することが可能である。なお、プリンタ102は、上述のSTAとしての動作とGOとしての動作とを同時に行うコンカレント動作も可能である。スマートフォン103は、無線ネットワーク105において、InfraモードにおけるSTAまたはWi-FiダイレクトにおけるClientとして動作することが可能である。なお、プリンタ102におけるInfraモードとは、IEEE802.11シリーズ規格に準拠したAPが構築する無線ネットワークにステーション(STA)として接続するモードである。
【0019】
尚、ここでは、プリンタ103は、コンカレント動作時において、GOとして動作する際の無線チャネル(周波数チャネル)は、AP101が構築する無線ネットワーク104と同じ無線チャネルであるものとする。また、AP101、プリンタ102、スマートフォン103共に802.11axに準拠し、SR処理に基づいた動作が可能なものとする。
【0020】
なお、以下の説明では、通信システムを構成する複数の装置をAP、プリンタ及びスマートフォンとして説明を行うが、例えば携帯電話、PC、ビデオカメラ、スマートウォッチ、PDA、カメラなどの他の装置であってもよい。また、プリンタ102がGOとして構築する無線ネットワーク105に対して、接続するClientを1台の場合で説明するが、2台以上であってもよい。
【0021】
以下の説明においては、AP101とプリンタ102とを無線LANのインフラストラクチャモード形態で接続させ、かつ、プリンタ102とスマートフォン103とをWi-Fiダイレクトで接続させる場合について説明する。次に、通信システムを構成する各装置の機能構成について説明する。なお、AP101の機能構成については、802.11ax機能で動作可能な一般的なアクセスポイントの構成と同様であるため説明は省略する。
【0022】
図2は、プリンタ102の機能構成を示す図である。印刷部201は、印刷処理を行う。画像処理部202は、印刷部201で印刷処理を行う前に印刷する画像の画像処理を行う。操作部203は、プリンタ102に対する各種入力等をユーザから受け付ける。操作部203で入力された情報を元に制御部206はプリンタ102全体を制御する。また、操作部203で入力された情報のうち記憶が必要な情報は記憶部207等のメモリに記憶される。
【0023】
表示部204は、視覚で認知可能な情報の出力、あるいはスピーカなどの音出力が可能な機能を有する。すなわち、表示部204は視覚情報および音情報の少なくともどちらか一方を出力する。視覚情報を表示する場合、表示部204は表示する視覚情報に対応する画像データを保持するVRAMを有する。表示部204は、VRAMに格納した画像データを表示させ続ける表示制御を行う。
【0024】
電源部205は、プリンタ102の各部に電源を供給する電源部である。電源205は、例えばAC電源あるいはバッテリから電力を取得する。制御部206は、記憶部207に記憶される制御プログラムを実行することによりプリンタ全体を制御する。制御部206は、CPUまたはMPUにより構成される。なお、制御部206が実行しているOS(Operating System)との協働によりプリンタ102全体を制御するようにしてもよい。後述する各種動作は、記憶部207に記憶された制御プログラムを制御部206が実行することにより行われる。
【0025】
記憶部207は、制御部206が実行する制御プログラムや、通信に関する情報など、各種情報を記憶する。記憶部207は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、着脱可能なSDカード、ROMまたはRAMなどの記憶媒体により構成される。
【0026】
アンテナ208は、無線LAN通信を行うための2.4GHz帯および/または5GHz帯で通信可能なアンテナである。通信部209はIEEE802.11シリーズに準拠した無線LAN通信を行うための無線通信部である。上述したように、802.11axに準拠した無線通信も可能である。ここでは、プリンタ102の通信部209は1チップ(1つのRF(Radio Frequency)回路)で構成されることを想定する。
【0027】
図3は、スマートフォン103の機能構成を示す図である。機能部301は、スマートフォン特有の機能を提供する。機能部301は、所定のハードウェア又はソフトウェア、あるいはそれらの組み合わせにより実現される。操作部302は、スマートフォン103に対する各種入力等をユーザから受け付ける。操作部302で入力された情報を元に制御部305はスマートフォン103全体を制御する。また、操作部302で入力された情報のうち記憶が必要な情報は記憶部306等のメモリに記憶される。
【0028】
表示部303は、視覚で認知可能な情報の出力、あるいはスピーカなどの音出力が可能な機能を有する。すなわち、表示部303は視覚情報および音情報の少なくともどちらか一方を出力する。視覚情報を表示する場合、表示部303は表示する視覚情報に対応する画像データを保持するVRAMを有する。表示部303は、VRAMに格納した画像データを表示させ続ける表示制御を行う。
【0029】
電源部304は、スマートフォン103の各部に電源を供給する電源部である。電源304は、例えばAC電源あるいはバッテリから電力を取得する。制御部305は、記憶部306に記憶される制御プログラムを実行することによりスマートフォン全体を制御する。制御部305は、CPUまたはMPUにより構成される。なお、制御部305が実行しているOS(Operating System)との協働によりスマートフォン103全体を制御するようにしてもよい。後述する各種動作は、記憶部306に記憶された制御プログラムを制御部305が実行することにより行われる。
【0030】
記憶部306は、制御部305が実行する制御プログラムや、通信に関する情報など、各種情報を記憶する。記憶部306は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、着脱可能なSDカード、ROMまたはRAMなどの記憶媒体により構成される。
【0031】
アンテナ307は、無線LAN通信を行うための2.4GHz帯および/または5GHz帯で通信可能なアンテナである。通信部308はIEEE802.11シリーズに準拠した無線LAN通信を行うためのハードウェアである。上述したように、802.11axに準拠した無線通信も可能である。
【0032】
<システムの動作>
続いて、上述の構成を有する通信システムの動作について説明する。ここでは、説明を簡単にするために、プリンタ102が、AP101と無線LANのInfraモードによる接続処理を行った後、スマートフォン103との間でWi-Fiダイレクトによる接続処理を行うものとする。ここで、無線ネットワーク104はAP101により構築され、AP101及びプリンタ102は、共に802.11axに準拠した無線LAN通信を行うものとする。また、無線ネットワーク105はGOとして動作するプリンタ102により構築され、スマートフォン103はClientとしてWi-Fiダイレクト接続する。また、プリンタ102及びスマートフォン103は、共に802.11axに準拠した無線LAN通信を行うものとする。
【0033】
加えて、無線ネットワーク104及び無線ネットワーク105は、共にSR処理を利用可能に構築され得るものとする。実際にSR処理を有効にするか否かは、無線ネットワークを構築する装置により決定される。SR処理に用いられる方式については前述のOBSS_PD方式、SRP方式のどちらでもよく、またこれらに限るものではない。
【0034】
図4は、第1実施形態における通信のシーケンスを示す図である。当該シーケンスは、プリンタ102が、操作部203を介してユーザからInfra接続の指示を受け付けることにより開始される。
【0035】
プリンタ102は、Infra接続の指示を受け付けた後、AP101とInfraモードで無線LAN接続する(F401)。ここで、AP101との接続は、AP101の無線LANパラメータ(SSIDやパスフレーズ等)をプリンタ102の操作部203を介して入力し、接続させるようにしてもよい。あるいはWPS(Wi-Fi Protected Setup)や、DPP(Device Provisioning Protocol)等のパラメータを自動設定するプロトコルを用いて接続するようにしてもよく、これらに限るものではない。
【0036】
ここで、AP101が構築する無線ネットワーク104は802.11axに準拠した無線ネットワークであり、SR処理を有効にした状態であるものとする。BSSを識別する情報としてBSSカラーが用いられ、ここでは無線ネットワーク104においてBSSカラーの値として「Color1」が用いられているものとする。BSSカラーの情報はAP101が送信する無線フレームの物理層ヘッダに含まれて送信されることを想定するが詳細は後述する。
【0037】
プリンタ102は、AP101に接続する過程で、AP101が送信する無線フレームを受信することで、AP101が構築する無線ネットワーク104のBSSカラーが「Color1」であることを識別できる。プリンタ102は、AP101が構築する無線ネットワーク104に接続後、自装置が無線ネットワーク104に無線フレームを送信する際、所定の無線フレームに「Color1」を含めて送信する。これにより、AP101は、当該無線フレームが無線ネットワーク104に属した無線フレームであることを識別できる。ここでは、プリンタ101は、接続したAP101のBSSカラーの値である「Color1」を記憶部207に記憶しておくものとする。
【0038】
続いて、プリンタ102において、AP101との接続完了後、ユーザから操作部203を介してWi-Fiダイレクト開始指示を受けるものとする。ここでは、プリンタ102は、Wi-Fiダイレクト開始指示を受けた際に既にInfraモードでAP101と接続している状態であることから、GOとして動作し、コンカレント動作すると判定するものとする。すなわち、Wi-Fiダイレクトの自律GO(Autonomous GO)モードでGOとして起動するものとする。自律GOモードは、対向装置とWi-FiダイレクトにおけるRole(GOとClientの何れか)の決定処理(GO(Group Owner)ネゴシエーション処理)をスキップし、自律的にGOとして起動するモードである。
【0039】
また、ここでは、プリンタ102において、GOとして起動すると判定した際に、802.11axに対応した無線ネットワーク105をGOとして構築するものとする。尚、GOとして構築する無線ネットワーク105の無線チャネルは、AP101が構築する無線ネットワーク104と同じ無線チャネルであるものとする。
【0040】
ここで、プリンタ102において、自身がGOとして構築する無線ネットワーク105のSR処理の利用についての判定処理を実施する(F402)。ここでは、プリンタ102は、AP101が構築する無線ネットワーク104においてSR処理が使用されていることから、SR処理を使用せずに無線ネットワーク105をGOとして構築すると判定する。なお、判定処理の詳細については後述する。プリンタ102はGOとして起動し、SR処理を無効にした状態で無線ネットワーク105を構築する(F403)。
【0041】
続いて、スマートフォン103において、操作部302を介してユーザからWi-Fiダイレクトの開始指示を受ける。Wi-Fiダイレクトの開始指示後、スマートフォン103において、Wi-Fiダイレクト端末の探索処理が実施される。ここでプリンタ102はGOとして無線ネットワーク105を構築しており、ビーコンを送信している状態である(F404)。
【0042】
スマートフォン103は、探索処理において、ビーコンを受信する。あるいは、Wi-Fiダイレクトの情報要素(IE:Information Element)を含んだProbe_Requestパケットを送信し、当該Probe_Requestパケットに対する応答としてプリンタ102から送信されるProbe_Responseパケットを受信する。当該Probe_ResponseパケットにはWi-FiダイレクトのIEが含まれる。スマートフォン103は、この探索処理により、プリンタ102がGOとして動作していることを検出することができる。この際、スマートフォン103は、プリンタ102が送信するビーコンやProbe_Response等の無線フレームに含まれる情報から無線ネットワーク105ではSR機能を使用していないことを検知する。スマートフォン103において、探索処理で発見されたWi-Fiダイレクトの端末が表示部303にリストで表示され、ユーザ選択により接続先を選択して接続する。ここでは、プリンタ102が接続先として選択されるものとする。その後、プリンタ102とスマートフォン103の間でWi-Fiダイレクトによる接続処理が実施される(F405)。
【0043】
接続が完了すると、プリンタ102とAP101との間は無線ネットワーク104でデータ通信が可能となる(F406)。同様に、プリンタ102とスマートフォン103との間は無線ネットワーク105でデータ通信が可能となる(F407)。この際、無線ネットワーク105においてはSR処理が有効にされていない状態である。その後、プリンタ102は、AP101との間のデータ通信が完了すると、AP101との無線LAN接続を切断する(F408)。
【0044】
プリンタ102は、AP101との切断を契機にSR処理の利用についての判定処理を実施する(F409)。AP101との無線LAN接続が切断されたため、プリンタ102において、無線ネットワーク104に対するデータの送信は発生することはない。すなわち、無線ネットワーク105におけるSR処理を有効にした場合であっても、無線ネットワーク104向けに送信される信号と無線ネットワーク105で受信する信号との衝突が発生しない状態になる。このような状態においては、無線媒体の効率的な利用を考慮すると、各無線ネットワークでSR処理を利用することが望ましい。そこで、プリンタ102は、無線ネットワーク105においてSR処理を有効にすると判定する。そこで、プリンタ102は、無線ネットワーク105でSR処理を有効にするための処理を実施し、スマートフォン103との間でSR処理を有効にしたデータ通信を実施する。
【0045】
図5は、PHY層におけるフレームフォーマットの例を示す図である。具体的には、802.11axにおける物理層フレームの一種であるHE_SU_PPDU(High Efficiency Single User PLCP Packet Data Unit)である。後述するように、HE_SU_PPDUは、SR処理の機能に関連した情報を含んでいる。
【0046】
HE_SU_PPDUフレーム500は、レガシー端末(HE非対応端末)向けのフィールド、HE対応端末向けのフィールド、データペイロード部508、PE(Packet Extension)フィールド509を含む。
【0047】
具体的には、L-STF(Legacy Short Training Field)501、L-LTF(Legacy Long Training Filed)502、L-SIG(Legacy Signal)503を含む。また、L-SIGフィールドの繰り返しシンボルであるRL-SIG(Repeated Legacy Signal)504を含む。RL-SIG504は、HE対応端末向けのフォーマットか否かを区別するために用いることができる。更に、HE-SIG-A(High Efficiency Signal-A)505、HE-STF(High Efficiency Short Training Field)506、HE-LTF(High Efficiency Long Training Field)507を含む。
【0048】
HE-SIG-Aフィールド505は、複数のフィールドから構成され、HE_SU_PPDUフォーマットにおいてはHE-SIG-A1、HE-SIG-A2で構成される。HE-SIG-A1フィールドにBSSカラー情報を識別するためのフィールドであるBSS_Colorフィールド510が含まれる。BSS_Colorフィールドは6ビットの情報要素であり、値として0~63までの値をとることができる。BSSカラーの値を用いることにより、OBSS間で同属のBSSか否かを判別することができる。また、同様にHE-SIG-A1フィールドにはSpatial_Reuseフィールド512が含まれ、SR処理の機能に関連した情報が設定されて通知される。
【0049】
尚、ここで示したフォーマットは一例であり、HE_PPDU関連のフォーマットは802.11axに準拠したフォーマットで構成されるものとする。
【0050】
図6及び図7は、MAC層におけるフレームフォーマットの例を示しており、SR処理の機能に関連した情報要素(IE)のフォーマットの例を示している。SR処理に関連した情報はMACフレームに含めて送受信され、SR処理に関連した制御を行うことが可能となる。
【0051】
図6は、SR_Parameter_set要素のフォーマットを示している。SR_Parameter_set要素を所定のMACフレームに付加することでSR処理に関連した制御を通信装置間で行うことが可能とある。
【0052】
SR_Parameter_set要素は、複数のフィールドから構成される。Element_ID601、Length602、Element_ID_Extention603は、情報要素のデータを識別するための基本的な情報を含んだフィールドである。SR_Controlフィールド604は、後述するサブフィールドのパラメータによりSR処理に関連したより詳細な制御が可能となる。Non-SRG(SR_Group)_OBSS_PD_Max_Offsetフィールド605は、Non-SRG_OBSS_PD_Maxパラメータの値を生成するために用いられる。SRG_OBSS_PD_Min_Offsetフィールド606は、SRG_OBSS_PD_Minパラメータの値を生成するために用いられる。SRG_OBSS_PD_Max_Offsetフィールド607は、SRG_OBSS_PD_Maxパラメータの値を生成するために用いられる。
【0053】
ここで、前述のSR処理の方式の1つであるOBSS_PD方式についてより詳細に説明する。OBSS_PD方式はさらに二つの処理タイプに分類される。1つはNon-SRG_OBSS_PDレベルを用いた処理であり、SRG以外のパケットを検出した場合の処理方法である。もう1つはSRG_OBSS_PDレベルを用いた処理であり、SRGのパケットを検出した場合の処理方法である。上述のフィールド605、606、607はこれら2つの処理方式に関連したパラメータであり、パケット検出に用いられる信号強度値の算出に用いられる。
【0054】
SRG_BSS_Color_Bitmapフィールド608は、信号を送信する装置がメンバーとして属するSRGで使われているBSSカラーの値をビットマップで示したフィールドである。SRG Partial BSSID Bitmapフィールド609は、信号を送信する装置がメンバーとして属するSRGで使われているBSSIDの部分的な値をビットマップで示したフィールドである。
【0055】
SR_Controlフィールド604は、複数のサブフィールドから構成される。SRP_Disallowedサブフィールド610は、APが構築する無線ネットワークにおいて、SRP方式によるSR処理が無効であるか否かを示す。Non-SRG_OBSS_PD_SR_Disallowedフィールド611は、APが構築する無線ネットワークにおいて、Non-SRG_OBSS_PDレベルを用いたSR処理が無効であるか否かを示す。Non-SRG_Offset_Presentサブフィールド612は、Non-SRG_OBSS_PD_Max_Offsetフィールド605がフレーム内に含まれるか否かを示す。SRG_Information_Presentサブフィールド613は、前述のフィールド606、607、608、609がSR_Parameter_set要素内に含まれるか否かを示す。SRGに関連する情報をこれらのフィールドを用いて共有することができる。HESIGA_Spatial_reuse_value15_allowedフィールド614は、MACとPHY間を通るTXVECTORにおけるパラメータであるSPATIAL_REUSEに対して、SRP_AND_NON_SRG_OBSS_PD_PROHIBITEDの値を設定できるか否か旨を示す。このパラメータを用いて、対象PPDU送信中はSRP方式およびNon_SRG_OBSS_PDレベルを用いたOBSS_PD方式によるSR処理を禁止することができる。
【0056】
図7は、HE_Operation要素のフォーマットを示している。BSSカラーの情報はMACフレームに含められて送受信され、BSSカラーに関連した制御を行うことが可能である。つまり、HE_Operation要素を所定のMACフレームに付加することでBSS内のSTA装置の高効率制御を行うことが可能となる。
【0057】
HE_Operation要素は、複数のフィールドから構成される。Element_ID701、Length702、Element_ID_Extention703は、情報要素のデータを識別するための基本的な情報を含んだフィールドである。HE_Operation_Parametersフィールド704には、高効率処理に必要なパラメータが含まれる。BSS_Color_Informationフィールド705には、BSSカラーに関する情報が含まれる。VHT(Very High Throughput)_Operation_Informationフィールド707には、VHT処理(高速伝送処理)に関する情報の有無を知らせる情報が含まれる。MAX_Co-Located_BSSID_Indicatorフィールド708には、共存するBSSの最大数に関連した情報が含まれる。共存するBSSとは複数のBSSが、同じアンテナコネクタを共有しているなどして、同じ無線チャネルや周波数帯で動作しているBSS群である。
【0058】
BSS_Color_Informationフィールド705は複数のサブフィールドから構成される。BSS_Colorサブフィールド709には、BSSカラーの識別情報が含まれる。Partial_BSS_Colorサブフィールド710には、BSSカラーに基づいたAID(Association IDentifier)の割り当てルールが当該BSSに適用されるか否かを示す情報が含まれる。ここで、AIDは接続端末を区別するためにAPが付す識別子である。BSS_Color_Disabledサブフィールド711は、HE対応端末がBSSカラーの重複を検知した場合などにBSSカラーの使用を一時的に停止していることを示すために用いられ得る。
【0059】
ここで示した図は一例であり、BSSカラーに関連したMACフレームフォーマットは802.11axの仕様に準拠したフォーマットが用いられる。
【0060】
図8は、プリンタにおいてWi-Fiダイレクト接続を開始する際の動作を示すフローチャートである。ここでは、図4において、プリンタ102に対してWi-Fiダイレクト開始指示があったタイミングで処理されるものとして説明するが、これに限定されるものではない。プログラム等によりWi-Fiダイレクト接続を開始すると判断された場合に実施するようにしてもよい。
【0061】
S801では、プリンタ102は、Wi-Fiダイレクトにおける自装置のRoleの決定処理を実施する。具体的には、Wi-FiダイレクトにおけるGOネゴシエーション処理を対向装置との間で実施し決定してもよい。あるいは、先に述べた自律GOモード(RoleはGOとなる)にて起動すると決定するようにしてもよい。この場合は、例えば、既にInfraモードでAPに接続中の状態であるか否かを判定し、接続中の状態であれば自律GOモードにて起動すると決定するとよい。あるいは、ユーザによりUI(例えば操作部203)を介してRoleを選択させるようにしてもよく、これらに限るものではない。
【0062】
S802では、プリンタ102は、Role決定処理で決定した自装置のRoleがGOか否かを判定する。GOであった場合はS803に進み、Clientであった場合はS809に進む。
【0063】
S803では、プリンタ102は、自装置が既にInfraモードでAPに接続中の状態か否かを判定する。APに接続中である場合はS804に進み、APに接続していない場合はS805に進む。また、APに接続中か否かのみではなく、APに接続するための処理を実施中か否かで判定するようにしてもよい。例えばAPには未接続状態であるが、対象APへの接続処理を実施中である場合は、S804に進むようにしてもよい。
【0064】
S804では、プリンタ102は、接続中のAP(あるいは接続先AP)がSR処理を使用中か否かを判定する。接続先のAPがSR処理を使用中か否かはAPから送信される無線フレームを受信し、フレームに含まれる情報から判断することが可能である。接続先APがSR処理を使用している場合はS806に進み、SR処理を使用していない場合はS805に進む。尚、ここでは、Infraモードで接続中のAPがSR処理を使用しているか否かを判別するようにしているが、対象APが802.11axに対応しているか否かで判定するようにしてもよい。対象APが802.11axに対応していない場合にS805に進み、802.11axに対応している場合に、SR処理を使用中か否かを判定するようにしてもよい。
【0065】
S805では、プリンタ102は、GOとして構築する無線ネットワーク105において、SR処理を使用すると判定する。一方、S806では、プリンタ102は、GOとして構築する無線ネットワーク105において、SR処理を使用しないと判定する。
【0066】
ここで、SR処理を使用しない場合の方法について一例を示す。GOとして構築する無線ネットワークにおいて、SR処理を使用しない場合、前述のSR_Parameter_set要素600を用いることもできる。SR_Parameter_set要素600に含まれるSRG_Information_Presentサブフィールド613の値を無効(0)にする。これにより、SRGに関連した情報はSR_Parameter_set要素には含まれない。そのため、GOの構築する無線ネットワーク内でSRGが存在しない状態となり、OBSS_PD方式におけるSRG_OBSS_PDレベルを用いたSR処理は実施されない状態になる。また、同様に、SRP_Disallowedサブフィールド610の値を有効(1)にする。これにより、GOが構築する無線ネットワークでSRP方式によるSR処理が不許可の状態となる。さらに、Non-SRG_OBSS_PD_SR_Disallowedフィールド611の値を有効(1)にする。これにより、GOが構築する無線ネットワークでOBSS_PD方式のNon-SRG_OBSS_PDレベルを用いたSR処理が不許可の状態になる。
【0067】
これらの値で設定されたSR_Parameter_set要素を、GOがClient向けに送信する無線フレーム(ビーコンやProbe_Responseなど)に情報要素として付加して通知する。これにより、無線ネットワーク105においてClient側でのSR処理の使用を制限することができる。
【0068】
尚、SR処理を使用しないと判定された後に、表示部204にて、ユーザに無線ネットワーク105においてSR処理を使用しない旨を表示して通知するよういしてもよい。あるいは表示部204にて、無線ネットワーク105でSR処理を使用するか否かをユーザに選択させるようにしてもよい。操作部203を介して、ユーザの選択結果に基づいてSR処理を使用するか否かを判定するようにしてもよい。
【0069】
尚、無線ネットワーク105でSR処理の使用を不許可にする方法は一例であり、これに限るものではない。他のパラメータを制御して実現してもよい。例えば、MACフレームに付加されるHE_Capability要素内に含まれるパラメータを用いて制御するようにしてもよい。例えば、HE_PHY_Capabilities_Informationフィールド内の、SRP-based_SR_Supportサブフィールドが利用可能である。これは、SRP方式のSR処理をサポートするか否かを示す。また、SR処理をサポートしないとしたHE_Capability要素を所定の無線フレームに付加して送信するようにしてもよい。
【0070】
あるいは、PHYフレームのヘッダ情報のパラメータを制御して実現するようにしてもよい。前述のPHYヘッダに含まれるHE-SIG-Aフィールド505内に含まれるSpatial_Reuseフィールド512を用いてもよい。このフィールドの値にSRP_DISALLOWやSPR_AND_NON_SRG_OBSS_PD_PHOHIBITEDのパラメータ値を設定した物理ヘッダを含む無線フレームを送信するようにしてもよい。これにより、GOが無線フレーム送信中は、Client側でSR処理は使用できない状態になるため、GOとClient間で送受信する信号の衝突を低減することができる。
【0071】
また、802.11axに準拠したパラメータを用いて実現してもよく、他の無線フレームを拡張して実現するようにしてもよい。これらの方法は個別に実施してもよく、あるいは組み合わせて実施してもよい。
【0072】
S807では、プリンタ102は、GOの起動処理を行う。GOとして構築する無線ネットワークでSR処理を使用するか否かはS805又はS806での判定結果に従う。GOとして起動するとBeaconを送信し、無線ネットワーク105を構築する。S808では、プリンタ102は、自装置がGOとして構築した無線ネットワーク105において、対向装置のClientと接続処理を実施する。接続処理が完了すると、対向装置のClientとWi-Fiダイレクトによる通信を開始する。
【0073】
一方、S802で自装置がClientとして動作すると判定された場合、S809では、プリンタ102は、Clientとして動作し、対向装置のGOと接続処理を実施し、Wi-Fiダイレクトによる通信を開始する。
【0074】
図9は、プリンタにおいてInfra接続を停止する際の動作を示すフローチャートである。Infra接続停止処理はユーザの指示に基づいて処理を開始するようにしてよいし、プログラムによる判断で自律的に開始するようにしてもよい。例えば、対向先のAPのBeaconを取得できなくなった場合やAPから明示的に切断パケット(Deauthenticationフレーム等)を受信したことに伴い、Infra接続停止処理を開始する。ここでは、図4における無線LAN切断(F408)の際にプリンタ102にて実施されることを想定する。
【0075】
S901では、プリンタ102は、Infraモードで接続中のAPと切断処理を実施する。例えば、APに対してDisassociationフレームを送信することで切断が可能である。尚、切断処理はこれに限らず、前述のとおり、APからのBeaconを受信できなくなった場合や、DeauthenticationフレームによりAPから明示的に切断された場合でもよく、これに限るものではない。APとの切断が完了するとS902に進む。
【0076】
S902では、プリンタ102は、自装置がGOとして動作中か否かを判定する。GOとして動作中であった場合は、S903に進み、GOとして動作していない場合はInfra接続停止処理を終了する。
【0077】
S903では、プリンタ102は、GOとして構築している無線ネットワーク105においてSR処理を使用しているか否かを判定する。SR処理を未使用の場合はS904に進み、SR処理を使用している場合はInfra接続停止処理を終了する。
【0078】
S904では、プリンタ102は、無線ネットワーク105のSR処理を使用可能な状態にする処理を行う。これは、前述の図4(F408)の処理の説明に記載した通り、無線ネットワーク104と無線ネットワーク105間での無線媒体の効率的な利用を考慮し、SR処理を有効にすると判定するものとする。例えば、以下の処理を実施することでSR処理を使用可能な状態に変更できる。
【0079】
SR_Parameter_set要素600に含まれるSRG_Information_Presentサブフィールド613の値を有効(1)にする。加えてSRGに関連したフィールド606、607,608、609に情報を入れ、SR_Parameter_set要素内に付加する。これにより、GOの構築する無線ネットワーク内でSRG情報が有効な状態になる。無線ネットワーク105において、OBSS_PD方式におけるSRG_OBSS_PDレベルを用いたSR処理の使用が可能な状態になる。
【0080】
また、同様に、SRP_Disallowedサブフィールド610の値を無効(0)にする。これにより、GOが構築する無線ネットワークでSRP方式によるSR処理が許可状態となる。さらに、Non-SRG_OBSS_PD_SR_Disallowedフィールド611の値を無効(0)にする。これにより、GOが構築する無線ネットワークでOBSS_PD方式のNon-SRG_OBSS_PDレベルを用いたSR処理が許可状態となる。これらの値で設定されたSR_Parameter_set要素を、GOがClient向けに送信する無線フレーム(ビーコンやProbe_Responseなど)に情報要素として付加して送信する。これにより、Client側でのSR処理の使用を許可することができる。
【0081】
尚、SR処理を使用許可にする方法としてはこれに限らない。MACフレームに付加可能な他の情報要素のパラメータを制御して送信してもよい。また、PHYフレームのヘッダ内のHE-SIG-Aフィールド等に含まれるSpatial_ReuseフィールドにSR処理を使用可能な値を設定して無線フレームを送信するようにしてもよい。または他の無線フレームを拡張して送信して通知するようにしてもよい。
【0082】
また、GOの無線ネットワーク105において、SR処理を使用可能とする際に、表示部204にて、ユーザに無線ネットワーク105においてSR処理を使用可能にする旨を表示して通知するよういしてもよい。あるいは表示部204にて、無線ネットワーク105でSR処理を使用可能にするか否かをユーザに選択させるようにしてもよい。操作部203を介して、ユーザの選択結果に基づいてSR処理を使用可能にするか否かを判定するようにしてもよい。
【0083】
以上説明したとおり第1実施形態によれば、プリンタ102がコンカレント動作する際に、基地局モード(Wi-FiダイレクトのGO)で構築する無線ネットワーク105のSR処理の利用可能性(有効/無効)を制御する。具体的には、端末モード(InfraのSTA)で接続する無線ネットワーク104においてSR処理が有効である場合に無線ネットワーク105におけるSR処理を無効にする。これにより、これらの無線ネットワーク間における信号衝突の発生を低減することができる。
【0084】
尚、上述の説明においては、プリンタ102のコンカレント動作として、InfraモードでSTAとしてAP101に接続後に、Wi-FiダイレクトのGOとして起動するシーケンスについて説明したがこれに限るものではない。先行してWi-FiダイレクトのGOとして起動した状態で、InfraモードのSTAとしてAP101に接続するシーケンスについても同じく適用可能である。
【0085】
その場合、GOとしてSR処理を有効とした無線ネットワーク105を構築している状態で、InfraモードでSTAとしてAP101に接続する際に、無線ネットワーク104においてSR処理が有効であるか否かの情報を取得する。そして、無線ネットワーク105と無線ネットワーク104とが同じ無線チャネルでありかつ無線ネットワーク104においてSR処理が有効である場合に、無線ネットワーク105におけるSR処理を無効にする処理を実施する。SR処理を無効にする変更処理は、上述の図8(S806)で説明した変更処理を適用することで実現できる。尚、無線ネットワーク104と無線ネットワーク105とが異なる無線チャネルで動作していた場合は、起動中のGOを一旦停止し、無線ネットワーク104と同じ無線チャネルで無線ネットワーク105を構築し、上述の処理を適用するようにしてもよい。
【0086】
また、上述のS904においてSR処理を有効にする場合の処理について記載した。その際に、プリンタ102において、GOの対向Clientであるスマートフォン103とデータ通信中であるか否かを判定するようにしてもよい。データ通信中である場合はSR処理を有効にする処理をデータ通信完了後に実施するようにしてもよい。
【0087】
更に、上述のS806の判定処理に先立って他の判定処理を実施するようにしてもよい。例えば、AP101とプリンタ102との距離を測定し、距離が所定条件を満たすか否かを判定するようにしてもよい。あるいは、AP101の無線ネットワーク104から受信する信号強度を測定し、受信信号強度が所定条件を満たすか否かを判定するようにしてもよい。距離の測定は所定の無線フレームを用いた送受信することにより測定することが出来る。
【0088】
所定条件は、例えば、AP101とプリンタ102間の距離が一定の距離より遠いこと、あるいは、受信信号強度が閾値より低いことである。これらの条件を満たす場合、無線ネットワーク105で送受信される信号と無線ネットワーク104で送受信される信号との間で衝突や干渉を及ぼす可能性が低いと考えられる。そこで、プリンタ102において、これらの条件を満たす場合、無線ネットワーク105におけるSR処理を有効にすると判断するようにしてもよい。この場合、無線ネットワーク104と無線ネットワーク105との間でSR処理を有効に利用することができるようになる。
【0089】
また、本実施形態においては、S806でSR処理を使用しないと判定したが、GOの無線ネットワーク105においてBSSカラーを無効にすると判定するようにしてもよい。無線ネットワーク105でBSSカラーを無効にする方法として、HE_Operation要素700内に含まれるBSS_Color_Disabledサブフィールド711の値を用いる。具体的には、BSS_Color_Disalbedサブフィールドの値を有効(1)にした状態で、GOから送信する所定の無線フレームにHE_Operation要素を付加して送信する。Client装置において、この無線フレームを受信することで無線ネットワーク105において、BSSカラーが無効状態であると判断し、BSSカラーに基づいたSR処理は実施されない状態になる。これにより、無線ネットワーク104および無線ネットワーク105間の信号の衝突の発生を低減することができる。
【0090】
また、本実施形態において、S806でSR処理を使用しないと判定したが、GO側の無線ネットワークでレガシーの無線ネットワーク(非802.11ax)を構築すると判定するようにしてもよい。その場合、S805ではGO側の無線ネットワークは802.11axの無線ネットワークで構築すると判定される。これにより、SR処理の有効、無効といった制御をせずに、コンカレント動作している無線ネットワーク間で信号衝突の発生を低減することができる。
【0091】
また、本実施形態において、コンカレント動作する際は、GO側の無線ネットワークでSR処理を不許可にする場合について記載したが、InfraモードのSTA側でSR処理を使用しないようにしてもよい。その場合、GO側の無線ネットワークでSR処理を使用する。STA側でSR処理を使用しないための方法としては、前述のHE-SIG-Aフィールド等に含まれるSpatial_Reuseフィールドの値を用いてもよい。このフィールドの値にSRP_DISAALOWやSPR_AND_NON_SRG_OBSS_PD_PHOHIBITEDのパラメータ値を設定した物理ヘッダを含む無線フレームをSTA側で無線ネットワーク104に送信するようにしてもよい。これにより、STAとして無線フレーム送信中は、SR処理は使用できない状態になるため、STA側とGO側の無線ネットワーク間での信号の衝突を低減することができる。
【0092】
また、コンカレント動作中に、STAとして接続している無線ネットワーク104においてSR処理が利用不可能になったことを検知した場合は、GO側の無線ネットワーク105でSR処理を有効にするように制御してもよい。これにより、無線ネットワーク105において、動的にSR処理の有効/無効を切り替えることができるようになる。
【0093】
また、GOにおいて、Client装置がSR処理を無効にしている、又は、802.11axに対応しているか否かを判別するようにしてもよい。Client装置がSR処理を無効にしている、又は、802.11axに対応していない場合は、GOの無線ネットワーク105ではSR処理を利用すると判定する。これによりGOの無線ネットワーク105と他の周囲の無線ネットワークとの間での無線媒体の効率的な利用が可能になる。
【0094】
また、コンカレント動作する場合に、STA側の無線ネットワーク104および、GOで動作している無線ネットワーク105の両方でSR処理を使用しないとするようにしてもよい。この場合、SR処理は使用できないが、SR処理に関連した複雑な制御を行うことなくコンカレント動作による通信が可能になる。
【0095】
(変形例)
上述の実施形態では、GOとして構築する無線ネットワークの無線チャネルについて、STAとして接続中のAPの無線ネットワークと同じ無線チャネルの場合について説明した。それぞれの無線ネットワークを異なるチャネルで構築可能な場合は、双方の無線ネットワークでSR処理を有効にするようにしてもよい。例えば1つのRF回路とアンテナを、コンカレント動作する無線ネットワーク間で時分割で使用する場合などである。また、同様に2つ以上のRF回路又はアンテナで構成されている通信装置において、無線ネットワーク毎に別のRF回路又はアンテナを使用できる場合などである。異なるチャネルで動作可能であれば、当該通信装置のコンカレント動作に伴った、各ネットワーク間のデータ衝突の発生は起きにくいため、各ネットワークでSR処理を効率的に利用することが可能になる。
【0096】
また、プリンタが構築する無線ネットワークをWi-FiダイレクトのGOとして構築する場合について述べたがこれに限るものではない。例えば、簡易的なAPモード(μAP等)で動作する場合にも適用できる。その場合、上述の実施形態においてWi-Fiダイレクト特有の無線フレームを用いている処理を、他の無線フレームに置き換えて実現するとよい。あるいは無線フレームを拡張して実現するようにしてもよい。更に、Ad-hocモードで動作している場合にも適用してもよい。
【0097】
また、プリンタ102はGOネゴシエーション処理の中でGOとして構築する無線ネットワークではSR処理を用いないことを通知するようにしてもよい。これは既存の無線フレームを拡張して通知するようにしてもよい。また、これに限るものではなく、他の無線フレームを用いて対向の通信装置に通知するようにしてもよい。接続処理の過程でSR処理を用いない旨を対向装置に事前に通知することができ処理の効率化を図ることができる。
【0098】
同様に上述の実施形態では、プリンタがInfraモードのSTAとして動作しAPに接続する形態について述べたが、InfraモードではなくAd-hocモードであってよい。あるいはWi-FiダイレクトのClientとして動作し、他のGOの装置に接続している場合にも適用することができる。
【0099】
また、上述の実施形態においてはIEEE802.11シリーズに準拠した無線LAN通信の形態に関して説明したが、これに限る物ではない。例えば、ワイヤレスUSB、MBOA、Bluetooth(登録商標)、UWB、ZigBee、NFC等の無線通信媒体を用いて、所定のフレームに適用して実施するようにしてもよい。ここで、MBOAは、Multi Band OFDM Allianceの略である。また、UWBには、ワイヤレスUSB、ワイヤレス1394、WINETなどが含まれる。
【0100】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0101】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0102】
101 基地局; 102 プリンタ; 103 スマートフォン; 104 無線ネットワーク(Infra); 105 無線ネットワーク(Wi-Fiダイレクト)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9