(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20241101BHJP
B63B 11/04 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
B63H21/38 B
B63B11/04 B
(21)【出願番号】P 2023147612
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2020015249の分割
【原出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】戸田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】大和 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】首藤 雄太
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069981(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0090032(KR,A)
【文献】特開平07-149284(JP,A)
【文献】特表2009-541140(JP,A)
【文献】特開2018-069934(JP,A)
【文献】米国特許第05388541(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/38
B63B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の舷側を有する船体と、
前記船体内の乾舷甲板よりも下層に設けられて、一対の前記舷側とともに、船幅方向に並んだ複数の熱機関が収容される機関室を形成する隔壁と、
前記隔壁と一対の前記舷側との接続部をそれぞれ囲むように配置されて、前記機関室の上下範囲にわたって延びる一対の水密区画を形成する一対の仕切壁と、
前記機関室と同一の階層に設けられるとともに、前記機関室の外部に設けられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
一対の前記水密区画に隣接して配置されたバルブ室に収容され、複数の前記熱機関に供給する燃料ガスの圧力をそれぞれ調整する前記熱機関と同数の圧力調整弁と、
前記液化ガスタンク内の前記液化ガスが気化した前記燃料ガスを複数の前記圧力調整弁に送給し、少なくとも一部に一対の前記水密区画内にそれぞれ配置される一重管を有したタンク側配管と、
前記タンク側配管により複数の前記圧力調整弁に送給されて各圧力調整弁を経由した前記燃料ガスを前記熱機関にそれぞれ送給し、前記機関室内で延びる二重管からなる複数の熱機関側配管と、
を備える船舶。
【請求項2】
前記熱機関側配管は、
前記水密区画内の前記タンク側配管と、前記熱機関とを接続する
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記機関室に対して船首尾方向の船首側に隣接し、前記液化ガスタンクを収容する気密性を有したタンク室を備える
請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記タンク室は、前記液化ガスタンク内の液化ガスを前記熱機関に供給する燃料供給装置を収容する
請求項3に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、船体に設けられた燃料タンクと、燃料タンクに貯蔵されたLPG(liquefied petroleum gas)を燃料として駆動される駆動部と、を備える船舶が開示されている。この特許文献1の船舶は、燃料タンクに貯蔵されたLPGを、船体内に設けられた駆動部に配管を通して送る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような船舶では、機関室など船体内の所定の区域にLPGを送る配管を設ける場合、LPGを送る配管をダクト等で囲う必要がある。
例えば、駆動部を収容する機関室等では、ダクトを設置することが困難な場合がある。このようにダクトを設置することが困難な場合、液化ガス燃料を送る配管として、内管及び外管を有した二重管を採用する場合がある。しかしながら、液化ガス燃料を送る配管として二重管を用いた場合、その製作、設置、設置後の検査、メンテナンス等の二重管の設置に伴う手間やコストが掛かる。
【0005】
本開示は、二重管の設置に伴う手間やコストを抑えることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る他の船舶は、船体と、隔壁と、一対の仕切壁と、液化ガスタンクと、圧力調整弁と、タンク側配管と、熱機関側配管と、を備える。船体は、一対の舷側を有する。隔壁は、前記船体内の乾舷甲板よりも下層に設けられて、一対の前記舷側とともに、船幅方向に並んだ複数の熱機関が収容される機関室を形成する。一対の前記仕切壁は、前記隔壁と一対の前記舷側との接続部をそれぞれ囲むように配置されて、前記機関室の上下範囲にわたって延びる一対の水密区画を形成する。液化ガスタンクは、前記機関室と同一の階層に設けられるとともに、前記機関室の外部に設けられ、液化ガスを貯留する。圧力調整弁は、前記熱機関と同数設けられ、一対の前記水密区画に隣接して配置されたバルブ室に収容され、複数の前記熱機関に供給する燃料ガスの圧力をそれぞれ調整する。タンク側配管は、前記液化ガスタンク内の前記液化ガスが気化した前記燃料ガスを複数の前記圧力調整弁に送給し、少なくとも一部に一対の前記水密区画内にそれぞれ配置される一重管を有する。熱機関側配管は、前記タンク側配管により複数の前記圧力調整弁に送給されて各前記圧力調整弁を経由した前記燃料ガスを前記熱機関にそれぞれ送給し、前記機関室内で延びる二重管からなる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の船舶によれば、二重管の設置に伴う手間及びコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の参考例に係る船舶の全体の概略構成を示す側面図である。
【
図2】本開示の参考例に係る船舶に設けられた機関室、水密区画、第一配管、及び第二配管の配置例を示す平面図である。
【
図3】本開示の参考例に係る船舶に設けられた機関室、水密区画、第一配管、及び第二配管の配置例を示す側断面図である。
【
図4】本開示の参考例に係る船舶に設けられた液体ガスタンク、及び燃料供給装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】本開示の参考例の変形例に係る船舶に設けられた機関室、水密区画、第一配管、及び第二配管の配置例を示す平面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る船舶に設けられた機関室、水密区画、タンク側配管、及び熱機関側配管の配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<参考例>
(船舶の全体構成)
以下、本開示の参考例及び実施形態に係る船舶について、
図1~
図5を参照して説明する。
図1に示すように、この参考例の船舶1は、船体2と、熱機関20と、液化ガスタンク30Aと、圧力調整弁41M,41Gと、第一配管51M,51Gと、第二配管52M,52Gと、を主に備えている。船舶1の船種は、特定のものに限られない。船舶1の船種は、例えばフェリー、RORO船(Roll-on/Roll-off船)、PCTC(Pure Car & Truck Carrier)等を例示できる。
【0010】
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底4と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板からなる。船底4は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を有する。これら一対の舷側3A,3B及び船底4により、船体2の外殻は、船首尾方向FAに直交する断面において、U字状を成している。
【0011】
船体2は、その内部に、乾舷甲板5、上甲板8を含む、複数層の甲板を備えている。この参考例における乾舷甲板5は、満載喫水線よりも上方に配置される全通甲板のうち、最下層に配置される全通甲板である。上甲板8は、全通甲板のうち、最上層に配置される全通甲板である。この参考例の上甲板8は、外部に露出する暴露甲板と称することもできる。この参考例で例示する船体2は、更に、乾舷甲板5の下方に、甲板7を備えている。
【0012】
図1、
図2に示すように、船体2は、乾舷甲板5と甲板7との間に、隔壁11と、隔壁12と、隔壁13と、を備えている。隔壁11と、隔壁12とは、船首尾方向FAに間隔を空けて配置されている。同様に、隔壁12と、隔壁13とは、船首尾方向FAに間隔を空けて配置されている。隔壁11、隔壁12及び隔壁13は、それぞれ舷側3Aから舷側3Bに至るとともに、それぞれ乾舷甲板5から甲板7に至っている。つまり、乾舷甲板5と甲板7との間の空間は、これら隔壁11、隔壁12及び隔壁13により、船首尾方向に区切られている。
【0013】
(機関室の構成)
この参考例において、乾舷甲板5と甲板7との間で且つ、隔壁11と隔壁13との間の区画は、機関室10とされている。機関室10は、主機関室10Aと、発電機室10Bと、を備えている。
主機関室10Aは、舷側3A,3Bと、乾舷甲板5及び甲板7と、隔壁11と、隔壁12と、によって形成されている。発電機室10Bは、舷側3A,3Bと、乾舷甲板5及び甲板7と、隔壁12と、隔壁13と、によって形成されている。機関室10と発電機室10Bとは、船首尾方向FAで隣接している。なお、この参考例において、隔壁11及び隔壁13の間であっても、水密区画S11,S12(後述する)については、機関室10に含まれない(以下、参考例の変形例及び実施形態の水密区画も同様)。
【0014】
(水密区画の構成)
乾舷甲板5と甲板7との間に、水密区画S11,S12が設けられている。水密区画S11,S12は、船体2の船幅方向Wの中心Cを挟んで船幅方向Wに対称に配置されている。水密区画S11,S12は、舷側3A、3Bと、区画壁15A,15Bと、に囲まれて、乾舷甲板5と甲板7との間で機関室10の上下全域にわたって形成されている。この参考例における区画壁15A,15Bは、隔壁12の一部と、仕切壁16A,16B(後述する)とにより形成されている。
【0015】
隔壁12は、第一隔壁部12aと、第二隔壁部12bと、第三隔壁部12cと、第四隔壁部12dと、第五隔壁部12eと、を備えている。
第一隔壁部12aは、舷側3Aに接続され、舷側3Aから船幅方向W内側に延びている。第二隔壁部12bは、第一隔壁部12aの船幅方向W内側の端縁に連続するように設けられ、船首尾方向FAの船尾側に延びている。第二隔壁部12bは、舷側3Aに対して船体2の船幅方向W内側に間隔を空けて設けられている。
【0016】
第三隔壁部12cは、第二隔壁部12bの船首尾方向FAの船尾側の端縁に連続するように設けられ、船幅方向Wに延びている。第三隔壁部12cは、水密区画S11から水密区画S12に至るよう設けられている。第四隔壁部12dは、船幅方向Wにおいて第二隔壁部12bと対称に設けられている。第四隔壁部12dは、第三隔壁部12cの船幅方向W方向右舷側の端縁から船首尾方向FAの船首側に延びている。第五隔壁部12eは、船幅方向Wにおいて第一隔壁部12aと対称に設けられている。第五隔壁部12eは、第四隔壁部12dの船首尾方向FAの船首側の端縁から船幅方向W外側に延び、舷側3Bに接続されている。
【0017】
左舷側(言い換えれば、舷側3A側)の仕切壁16Aは、第一仕切壁部16aと、第二仕切壁部16bと、を備えている。第一仕切壁部16aは、第一隔壁部12aに対して船首尾方向FAに間隔を空けて設けられている。第一仕切壁部16aは、舷側3Aに接続され、第一隔壁部12aと平行に、舷側3Aから船幅方向W内側に延びている。第二仕切壁部16bは、第一仕切壁部16aの船幅方向W内側の端縁から連続して設けられている。第二仕切壁部16bは、舷側3Aに対して船体2の船幅方向内側に間隔を空けて設けられている。第二仕切壁部16bは、第二隔壁部12bと連続するように船首尾方向FAに延びるように設けられている。
【0018】
右舷側(言い換えれば、舷側3B側)の仕切壁16Bは、第三仕切壁部16cと、第四仕切壁部16dと、を備えている。第三仕切壁部16cは、第五隔壁部12eに対して船首尾方向FAに間隔を空けて設けられている。第三仕切壁部16cは、舷側3Bに接続され、第五隔壁部12eと平行に、舷側3Bから船幅方向W内側に延びている。第四仕切壁部16dは、第三仕切壁部16cの船幅方向W内側の端縁から連続するように設けられている。第四仕切壁部16dは、舷側3Bに対して船体2の船幅方向内側に間隔を空けて設けられている。第四仕切壁部16dは、第四隔壁部12dと連続するように船首尾方向FAに延びるように設けられている。
【0019】
左舷側の区画壁15Aは、隔壁12の一部である第一隔壁部12a及び第二隔壁部12bと、仕切壁16Aを構成する第一仕切壁部16a及び第二仕切壁部16bとにより形成されている。左舷側の水密区画S11は、左舷側の舷側3Aと、隔壁12の一部である第一隔壁部12a及び第二隔壁部12bと、仕切壁16Aを構成する第一仕切壁部16a及び第二仕切壁部16bとによって形成されている。
【0020】
右舷側の区画壁15Bは、隔壁12の一部である第五隔壁部12e及び第四隔壁部12dと、仕切壁16Bを構成する第三仕切壁部16c及び第四仕切壁部16dとにより形成されている。右舷側の水密区画S12は、右舷側の舷側3Bと、隔壁12の一部である第五隔壁部12e及び第四隔壁部12dと、仕切壁16Bを構成する第三仕切壁部16c及び第四仕切壁部16dとによって形成されている。
【0021】
水密区画S11,S12は、隔壁12の第三隔壁部12cに対して、船首尾方向FA両側に跨がるように設けられている。本開示において、水密区画S11,S12は、舷側3A,3Bが損傷した場合に、船外から機関室10内に水が浸入するのを防止する浸水防止部屋Sa,Sbとして機能する。
【0022】
(ダクトの構成)
図3に示すように、船体2は、水密区画S11,S12の上方に、ダクトD1,D2を備えている。ダクトD1,D2は、水密区画S11,S12の上端から舷側3A,3Bに沿って、上方に向かって延びている。ダクトD1,D2は、その下端部が水密区画S11,S12に連通している。ダクトD1,D2は、その上端部が、上甲板8上で上方に向かって開口している。ここで、この参考例において、水密区画S11,S12は、ダクトD1,D2よりも水平断面積が大きい。この参考例において、乾舷甲板5は、車両が乗り込み可能な車両甲板となっている。ダクトD1,D2は、この車両が搭載される区画を高さ方向に貫通するように設けられている。
【0023】
(熱機関の構成)
図2、
図3に示すように、熱機関20は、機関室10内に収容されている。熱機関20は、液化ガスを燃料とする内燃機関又は外燃機関である。この参考例における船舶1は、熱機関20として、主機21と発電機用エンジン22と、を備えている。
主機21は、主機関室10A内に配置されている。主機21は、船舶1を航行させる推進力を発揮する。主機21は、船体2の後部2bの外部に設けられたスクリュー9(
図1参照)を回転駆動させる。主機21は、例えば蒸気タービン、ガスタービン、レシプロエンジン等を用いることができる。本開示において、主機21及びスクリュー9は、船幅方向Wに間隔を空けて二組設けられている。
【0024】
発電機用エンジン22は、発電機室10B内に配置されている。発電機用エンジン22は、発電機(図示せず)を駆動させる。発電機用エンジン22は、例えばガスタービンやレシプロエンジン等を用いることができる。発電機用エンジン22で発生した回転エネルギーは、発電機で電気エネルギーに変換され、船体2内各部へ供給される。本開示において、発電機用エンジン22は、船幅方向Wに間隔を空けて三基が設けられている。
【0025】
(液化ガスタンクの構成)
図1に示すように、液化ガスタンク30Aは、機関室10の外部に設けられている。本開示において、液化ガスタンク30Aは、船体2の後部2bの上甲板8上に設けられている。本開示において、液化ガスタンク30Aは、船幅方向Wに間隔を空けて複数基(例えば2基)が設けられている。この参考例における液化ガスタンク30Aは、主機21や発電機用エンジン22等の燃料となる液化天然ガス(LNG)等の液化ガスを貯留するための専用の燃料タンクである。
【0026】
(液化ガスタンクの付随機器の構成)
船体2は、さらに、ベントライザ31と、バンカーステーション33と、燃料供給装置35と、を備えている。ベントライザ31は、上方に向けて延びるように設けられている。ベントライザ31は、緊急時等に液化ガスタンク30A内で気化したボイルオフガスを排出する。バンカーステーション33は、陸上との間で液化ガスタンク30Aの積み下ろしを行う。バンカーステーション33は、陸上側の設備に接続可能な接続口と、この接続口と液化ガスタンク30Aとの間を接続する接続管と、接続管を通して液化ガスを送給するための荷役ポンプ(いずれも図示せず)等を備えている。
【0027】
燃料供給装置35は、液化ガスタンク30A内の液化ガスを熱機関20(主機21、発電機用エンジン22)に供給する。本開示において、燃料供給装置35は、上甲板8上に設けられている。
【0028】
図4に示すように、燃料供給装置35は、ポンプ35aと、蒸発器35bと、ガスヒータ35cと、ガス焼却炉35dと、を主に備えている。ポンプ35aは、液化ガスタンク30A内の液化ガスG1を、後述する第一配管51M,51Gに送り出す。蒸発器35bは、液化ガスG1を蒸発させて気化させ、燃料ガスG2を生成する。ガスヒータ35cは、液化ガスタンク30A内で発生したボイルオフガスG3を加熱して昇圧させる。ガス焼却炉35dは、ガスヒータ35cで昇圧されたボイルオフガスG3を燃焼させる。
【0029】
(圧力調整弁の構成)
図3に示すように、圧力調整弁41M,41Gは、熱機関20の主機21に供給する燃料ガスG2の圧力及び発電機用エンジン22に供給する燃料ガスG2の圧力をそれぞれ調整する。圧力調整弁41M,41Gは、機関室10内に設けられたバルブ室,40Gに収容されている。
【0030】
図2、
図3に示すように、バルブ室40Mは、主機関室10A内に配置されている。バルブ室40Mは、気密構造とされている。バルブ室40Mは、その内部に、主機21と同数の圧力調整弁41Mを収容している。この参考例で例示するバルブ室40Mは、船首尾方向FAで隔壁12の船尾側に配置されるとともに、隔壁12に隣接して設けられている。このバルブ室40Mは、隔壁12の第三隔壁部12cと、仕切壁16Aの第二仕切壁部16bと、仕切壁16Bの第四仕切壁部16dと、バルブ室壁42Mとにより形成されている。
【0031】
バルブ室壁42Mは、第三隔壁部12cに対して船首尾方向FAの船尾側に間隔を空けて設けられている。バルブ室壁42Mは、第二仕切壁部16bから第四仕切壁部16dに至るとともに、それぞれ乾舷甲板5から甲板7に至っている。このようにしてバルブ室40Mは、第二仕切壁部16b(仕切壁16A)、第四仕切壁部16d(仕切壁16B)を介して水密区画S11,S12に隣接して設けられている。
【0032】
バルブ室40Gは、発電機室10B内に配置されている。バルブ室40Gは、バルブ室40Mと同様に、気密構造とされている。バルブ室40Gは、その内部に、発電機用エンジン22と同数の圧力調整弁41Gを収容している。この参考例で例示するバルブ室40Gは、船首尾方向FAで隔壁12の船首側に配置されるとともに、隔壁12に隣接して設けられている。このバルブ室40Mは、隔壁12の第三隔壁部12cと、第二隔壁部12bと、第四隔壁部12dと、バルブ室壁42Gとにより形成されている。
【0033】
バルブ室壁42Gは、第三隔壁部12cに対して船首尾方向FAの船首側に間隔を空けて設けられている。バルブ室壁42Gは、第二隔壁部12bから第四隔壁部12dに至るとともに、それぞれ乾舷甲板5から甲板7に至っている。このようにしてバルブ室40Gは、隔壁12の第二隔壁部12b及び第四隔壁部12dを介して水密区画S11,S12に隣接して設けられている。
【0034】
(第一配管の構成)
図2、
図3に示すように、第一配管51M,51Gは、液化ガスタンク30A内の液化ガスG1が気化した燃料ガスG2を、圧力調整弁41M,41Gに送給する。第一配管51M,51Gは、燃料供給装置35のガスヒータ35cと、圧力調整弁41M,41Gとを接続している。第一配管51M,51Gは、外部を被覆する保護管(言い換えれば、外管)を有さない一重管である。第一配管51M,51Gは、上甲板8上では外気に晒される曝露状態で設けられている。
【0035】
第一配管51Mは、船体2内(上甲板8よりも下層)では、ダクトD1内、及び水密区画S11内に敷設されている。第一配管51Mは、上甲板8と乾舷甲板5との間で、ダクトD1内に設置され、ダクトD1内から乾舷甲板5を貫通して水密区画S11内へと延びている。第一配管51Mは、水密区画S11内を乾舷甲板5から下方に向かって延びた後、船幅方向Wの内側に向かって延びて第二仕切壁部16bを貫通してバルブ室40M内に導かれている。第一配管51Mは、バルブ室40M内で各圧力調整弁41Mに接続されている。第一配管51Mは、更に、圧力調整弁41Mからバルブ室壁42Mに至っている。なお、図示は省略するが、乾舷甲板5に対して第一配管51Mを貫通させる箇所及び第二仕切壁部16bに対して第一配管51Mを貫通させる箇所は、水密区画S11の水密性を担保するための処理がなされている(以下、参考例の変形例、実施形態の水密区画において配管を貫通させる箇所も同様)。
【0036】
第一配管51Gは、第一配管51Mと同様に、船体2内では、ダクトD2内、及び水密区画S12内に敷設されている。第一配管51Gは、上甲板8と乾舷甲板5との間で、ダクトD2内に設置され、ダクトD2内から乾舷甲板5を貫通して水密区画S12内へと延びている。第一配管51Gは、水密区画S12内を乾舷甲板5から下方に向かって延びた後、船幅方向Wの内側に向かって延びて第四隔壁部12dを貫通してバルブ室40G内に導かれている。第一配管51Gは、バルブ室40G内で各圧力調整弁41Gに接続されている。第一配管51Gは、更に、圧力調整弁41Gからバルブ室壁42Gに至っている。
【0037】
(第二配管の構成)
第二配管52M,52Gは、圧力調整弁41M,41Gを経由した燃料ガスG2を、熱機関20である主機21,発電機用エンジン22に送給する。第二配管52M,52Gは、バルブ室40M、バルブ室40Gの外部に敷設されている。この参考例で例示する第二配管52M,52Gは、それぞれ船首尾方向に延びている。これら第二配管52M,52Gは、それぞれ二重管を成している。
【0038】
第二配管52Mは、内管53Mと外管54Mとを備えている。内管53Mは、バルブ室40M内でバルブ室壁42Mまで延びた第一配管51Mの端部と、主機21とを接続している。外管54Mは、内管53Mよりも大径に形成されて内管53Mを外側から覆っている。この外管54Mは、気密になっている。そのため、仮に、内管53Mから燃料ガスG2が漏れたとしても、燃料ガスG2は、外管54M内に留まる。
【0039】
第二配管52Gは、第二配管52Mと同様に、内管53Gと外管54Gとを備えている。内管53Gは、バルブ室40M内でバルブ室壁42Gまで延びた第一配管51Gの端部と、発電機用エンジン22とを接続している。外管54Gは、内管53Gよりも大径に形成されて内管53Gを外側から覆っている。この外管54Gは、仮に、内管53Gから燃料ガスG2が漏れたとしても、燃料ガスG2が外管54M内に留まるように気密に構成されている。
【0040】
(液化ガスタンクから熱機関への燃料ガスの供給の流れ)
船舶1において、液化ガスタンク30Aから熱機関20に燃料ガスG2を供給するには、まず、燃料供給装置35のポンプ35aが、液化ガスタンク30A内の液化ガスG1を吸い出す。このポンプ35aで吸い出された液化ガスG1は、蒸発器35bで蒸発することで気化され、燃料ガスG2となる。燃料ガスG2は、第一配管51M,51Gを通してバルブ室40M,40G内の圧力調整弁41M,41Gに送られる。
【0041】
第一配管51M,51Gを通して圧力調整弁41M,41Gに送られた燃料ガスG2は、圧力調整弁41M,41Gで圧力調整された後、熱機関20の主機21,発電機用エンジン22に供給される。主機21は、供給された燃料ガスG2を燃焼させることで、スクリュー9を回転させる駆動力を発生させる。発電機用エンジン22は、供給された燃料ガスG2を燃焼させることで発電機(図示せず)を駆動する。
【0042】
(作用効果)
上記参考例の船舶1では、第一配管51M,51Gの一部が水密区画S11,S12内に配置されている。これにより、水密区画S11,S12内に配置された部分では、第一配管51M,51Gを二重管とする必要がない。
また、バルブ室40M,40Gが、水密区画S11,S12に隣接して設けられているので、水密区画S11,S12とバルブ室40M,40Gとの間で、第一配管51M,51Gを二重管とする必要がない。
したがって、参考例の船舶1によれば、二重管の使用量を減らし、二重管の設置に伴う手間及びコストを抑えることができる。
【0043】
参考例の船舶1では、液化ガスタンク30Aが、機関室10の上方に設けられ、第一配管51M,51Gの少なくとも一部が、水密区画S11,S12内を上下方向Dvに延びるように配置されている。
したがって、参考例の船舶1によれば、液化ガスタンク30Aが機関室10の上方に設けられ、第一配管51M,51Gが上下方向Dvに延びる場合、その少なくとも一部を水密区画S11,S12内に配置することで、二重管の使用量を減らし、二重管の設置に伴う手間及びコストを抑えることができる。
【0044】
参考例の船舶1では、水密区画S11,S12の上端部に連通し、船体2内で水密区画S11,S12から上方に向かって延びるダクトD1,D2をさらに備えている。第一配管51M,51Gは、水密区画S11,S12よりも上方においてダクトD1,D2内に配置されている。
したがって、参考例の船舶1によれば、水密区画S11,S12よりも上方において、第一配管51M,51GをダクトD1,D2内に配置することで、二重管の使用量を減らし、二重管の設置に伴う手間及びコストを抑えることができる。
【0045】
参考例の船舶1では、水密区画S11,S12の水平断面積は、ダクトD1,D2の水平断面積よりも大きい。
したがって、実施形態の船舶1によれば、第一配管51M,51Gが配置された水密区画S11,S12を、大きな容積を有した浸水防止部屋Sa,Sbとして活用することができる。
【0046】
(参考例の変形例)
上記参考例では、隔壁12が、船幅方向Wの両側に、第一隔壁部12a及び第二隔壁部12b、第四隔壁部12d及び第五隔壁部12eを備えるようにしたが、これに限らない。
例えば、隔壁12Aは、
図5の断面視において、船幅方向Wに延び、一対の舷側3A,3Bを接続する直線状に形成してもよい。この参考例の変形例では、水密区画S13,S14、S15,S16が設けられる場合を例示している。水密区画S13,S14、S15,S16は、乾舷甲板5と甲板7との間に設けられている。水密区画S13と水密区画S15とは、船体2の中心Cを挟んで船幅方向Wで対称に配置されている。水密区画S14と水密区画S16は、船体2の中心Cを挟んで船幅方向Wで対称に配置されている。左舷側の水密区画S13,S14は、隔壁12Aに対して船首尾方向FAの両側に対称に隣接配置されている。右舷側の水密区画S15,S16は、隔壁12Aに対して船首尾方向FAの両側に対称に隣接配置されている。
【0047】
左舷側の水密区画S13,S14は、舷側3Aと、隔壁12Aの船幅方向W左舷側の第一側部12fと、仕切壁16C,16Dとに囲まれて、乾舷甲板5と甲板7との間で機関室10の上下全域にわたって形成されている。仕切壁16Cは、舷側3Aと、隔壁12Aの第一側部12fとの接続部J3を囲むように配置されている。仕切壁16Dは、舷側3Bと、隔壁12Aの第二側部12gとの接続部J4を囲むように配置されている。仕切壁16Cは、第一仕切壁部16eと、第二仕切壁部16fと、を備えている。仕切壁16Dは、第一仕切壁部16gと、第二仕切壁部16hと、を備えている。
【0048】
第一仕切壁部16e,16gは、第一側部12fに対して船首尾方向FA両側に間隔を空けて設けられている。第一仕切壁部16e,16gは、舷側3Aに接続され、第一側部12fと平行に、舷側3Aから船幅方向W内側に延びている。第二仕切壁部16f,16hは、舷側3Aに対して船体2の船幅方向W内側に間隔を空けて設けられている。第二仕切壁部16f,16hは、第一仕切壁部16e,16gの船幅方向W内側の端縁と、第一側部12fとを接続する。
【0049】
右舷側の水密区画S15,S16は、舷側3Bと、隔壁12Aの船幅方向W右舷側の第二側部12gと、仕切壁16E,16Fとに囲まれて、乾舷甲板5と甲板7との間で機関室10の上下全域にわたって形成されている。仕切壁16E,16Fは、それぞれ、舷側3Bと、隔壁12Aの第二側部12gとの接続部J4を囲むように配置されている。仕切壁16E,16Fは、それぞれ、第一仕切壁部16i,16kと、第二仕切壁部16j,16mと、を備えている。
【0050】
第一仕切壁部16i,16kは、第二側部12gに対して船首尾方向FAに間隔を空けて設けられている。第一仕切壁部16i,16kは、舷側3Bに接続され、第二側部12gと平行に、舷側3Bから船幅方向W内側に延びている。第二仕切壁部16j,16mは、舷側3Bに対して船体2の船幅方向W内側に間隔を空けて設けられている。第二仕切壁部16j,16mは、第一仕切壁部16i,16kの船幅方向W内側の端縁と、第二側部12gとを接続するように設けられている。
【0051】
水密区画S13,S14、S15,S16は、隔壁12Aに接して設けられている。この参考例の変形例における水密区画S13,S14、S15,S16は、舷側3A,3Bが損傷した場合に、船外から機関室10内に水が浸入するのを防止する浸水防止部屋Sc,Sd、Se,Sfとして機能する。
【0052】
<実施形態>
次に、この発明に係る船舶の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、参考例と液化ガスタンクの配置が異なる。そのため、参考例と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0053】
(船舶の全体構成)
図6に示すように、この実施形態の船舶1Bは、船体2内に、熱機関20と、液化ガスタンク30Bと、圧力調整弁41M,41Gと、タンク側配管55M,55Gと、熱機関側配管56M,56Gと、を備えている。
【0054】
船体2は、乾舷甲板5と甲板7との間に、船首尾方向FAに間隔を空けて、船尾側から船首側に向かって順次、隔壁11と、隔壁12B、12Cと、隔壁13B、13Cと、を備えている。隔壁11、隔壁12B、12C、隔壁13B、13Cは、それぞれ、船幅方向Wに延び、舷側3Aから舷側3Bに至るとともに、それぞれ乾舷甲板5から甲板7に至っている。つまり、乾舷甲板5と甲板7との間の空間は、これら隔壁11、隔壁12B、12C及び隔壁13B、13Cにより、船首尾方向に区切られている。
【0055】
(水密区画の構成)
実施形態の船舶1Bは、水密区画S21,S22,S23,S24,S31,S32,S33,S34を備えている。水密区画S21,S22,S23,S24,S31,S32,S33,S34は、乾舷甲板5と甲板7との間に設けられている。
【0056】
水密区画S21と水密区画S22とは、船体2の中心Cを挟んで船幅方向に対称に配置されている。水密区画S21,S22は、舷側3A、3Bと、区画壁15G,15Hと、に囲まれて、乾舷甲板5と甲板7との間で機関室10(言い換えれば、主機関室10A)の上下全域にわたって形成されている。この実施形態における区画壁15G,15Hは、隔壁12Bの船幅方向W両側の第一側部12h,第二側部12iと、仕切壁16G,16Hとにより形成されている。仕切壁16Gは、舷側3Aと隔壁12Bとの接続部J5を船尾側から囲むように配置されている。仕切壁16Hは、舷側3Bと隔壁12Bとの接続部J6を船尾側から囲むように配置されている。
【0057】
左舷側の仕切壁16Gは、第一仕切壁部16pと、第二仕切壁部16qと、を備えている。第一仕切壁部16pは、第一側部12hに対して船首尾方向FAに間隔を空けて設けられている。第一仕切壁部16pは、舷側3Aに接続され、第一側部12hと平行に、舷側3Aから船幅方向W内側に延びている。第二仕切壁部16qは、第一仕切壁部16pと第一側部12hとを接続するように設けられている。第二仕切壁部16qは、舷側3Aに対して船体2の船幅方向W内側に間隔を空けて設けられている。
【0058】
右舷側の仕切壁16Hは、第三仕切壁部16rと、第四仕切壁部16sと、を備えている。第三仕切壁部16rは、第二側部12iに対して船首尾方向FAに間隔を空けて設けられている。第三仕切壁部16rは、舷側3Bに接続され、第二側部12iと平行に、舷側3Bから船幅方向W内側に延びている。第四仕切壁部16sは、第三仕切壁部16r及び第二側部12iの船幅方向W内側の端部同士を接続するように設けられている。第四仕切壁部16sは、舷側3Bに対して船体2の船幅方向内側に間隔を空けて設けられている。
【0059】
左舷側の区画壁15Gは、隔壁12Bの一部である第一側部12hと、仕切壁16Gを構成する第一仕切壁部16p及び第二仕切壁部16qとにより形成されている。左舷側の水密区画S21は、左舷側の舷側3Aと、隔壁12Bの一部である第一側部12hと、仕切壁16Gを構成する第一仕切壁部16p及び第二仕切壁部16qとに囲まれて形成されている。
【0060】
右舷側の区画壁15Hは、隔壁12Bの一部である第二側部12iと、仕切壁16Hを構成する第三仕切壁部16r及び第四仕切壁部16sとにより形成されている。右舷側の水密区画S22は、右舷側の舷側3Bと、隔壁12Bの一部である第二側部12iと、仕切壁16Hを構成する第三仕切壁部16r及び第四仕切壁部16sとに囲まれて形成されている。
【0061】
水密区画S23,S24は、舷側3A,3Bと、仕切壁16Ca,16Eaと、に囲まれて、乾舷甲板5と甲板7との間で発電機室10Bの上下全域にわたって形成されている。仕切壁16Caは、舷側3Aと、隔壁12Bの第一側部12hとの接続部J5を船首側から囲むように配置されている。仕切壁16Eaは、舷側3Bと、隔壁12Bの第二側部12iとの接続部J6を船首側から囲むように配置されている。仕切壁16Caは、第一仕切壁部16eと、第二仕切壁部16fと、を備えている。第一仕切壁部16eは、隔壁12Cのうちの舷側3Aに近い側の一部を形成している。第二仕切壁部16fは、舷側3Aに対して船体2の船幅方向W内側で、第一仕切壁部16eと第一側部12hとを接続するように設けられている。仕切壁16Eaは、第一仕切壁部16iと、第二仕切壁部16jと、を備えている。第一仕切壁部16iは、隔壁12Cのうちの舷側3Bに近い側の一部を形成している。第二仕切壁部16jは、舷側3Aに対して船体2の船幅方向W内側で、第一仕切壁部16iと第二側部12iとを接続するように設けられている。
【0062】
水密区画S31,S32,S33,S34は、上述した水密区画S21,S22,S23,S24と同様に形成されている。水密区画S21,S22,S23,S24が隔壁12Bに隣接して形成されていたのに対して、水密区画S31,S32,S33,S34は、隔壁13Bに隣接して形成されている。
【0063】
水密区画S31,S32は、舷側3A,3Bと、仕切壁16I,16Jと、に囲まれて、乾舷甲板5と甲板7との間で発電機室10Bの上下全域にわたって形成されている。仕切壁16Iは、舷側3Aと、隔壁13Bの第一側部13hとの接続部J7を船尾側から囲むように配置されている。仕切壁16Jは、舷側3Bと、隔壁13Bの第二側部13iとの接続部J8を船尾側から囲むように配置されている。左舷側の仕切壁16Iは、第一仕切壁部16tと、第二仕切壁部16uと、を備えている。右舷側の仕切壁16Jは、第一仕切壁部16vと、第二仕切壁部16wと、を備えている。
【0064】
第一仕切壁部16tは、第一側部13hに対して船首尾方向FAに間隔を空けて設けられている。第一仕切壁部16tは、舷側3Aに接続され、第一側部13hと平行に、舷側3Aから船幅方向W内側に延びている。第二仕切壁部16qは、第一仕切壁部16pと第一側部12hとを接続するように設けられている。第二仕切壁部16qは、舷側3Aに対して船体2の船幅方向W内側に間隔を空けて設けられている。
【0065】
第一仕切壁部16vは、第二側部13iに対して船首尾方向FAに間隔を空けて設けられている。第一仕切壁部16vは、舷側3Bに接続され、第二側部13iと平行に、舷側3Bから船幅方向W内側に延びている。第二仕切壁部16wは、第一仕切壁部16vと第二側部12iとを接続するように設けられている。第二仕切壁部16wは、舷側3Bに対して船体2の船幅方向W内側に間隔を空けて設けられている。
【0066】
水密区画S33,S34は、舷側3A,3Bと、仕切壁16Cb,16Ebと、に囲まれて、乾舷甲板5と甲板7との間でタンク室60(後述する)の上下全域にわたって形成されている。仕切壁16Cbは、舷側3Aと、隔壁13Bの第一側部13hとの接続部J7を船首側から囲むように配置されている。仕切壁16Ebは、舷側3Bと、隔壁13Bの第二側部13iとの接続部J8を船首側から囲むように配置されている。仕切壁16Cbは、第一仕切壁部16eと、第二仕切壁部16fと、を備えている。第一仕切壁部16eは、隔壁13Cのうち、舷側3Aに近い側の一部を形成している。第二仕切壁部16fは、舷側3Aに対して船体2の船幅方向W内側で、第一仕切壁部16eと第一側部13hとを接続するように設けられている。仕切壁16Eaは、第一仕切壁部16iと、第二仕切壁部16jと、を備えている。第一仕切壁部16iは、隔壁13Cのうち、舷側3Bに近い側の一部を形成している。第二仕切壁部16jは、舷側3Aに対して船体2の船幅方向W内側で、第一仕切壁部16iと第二側部13iとを接続するように設けられている。
【0067】
水密区画S21,S22,S23、S24は、隔壁12Bに接して設けられている。水密区画S31,S32,S33,S34は、隔壁13Bに接して設けられている。この実施形態において、水密区画S21,S22,S23、S24,S31,S32,S33,S34は、それぞれ、舷側3A,3Bが損傷した場合に、船外から機関室10(及び、後述するタンク室60)内に水が浸入するのを防止する浸水防止部屋Sg、Shとして機能する。
【0068】
この実施形態では、主機21用のバルブ室40Mは、隔壁12Bと隔壁12Cとの間で、水密区画S23と水密区画S24とに渡って配置されている。発電機用エンジン22用のバルブ室40Gは、隔壁13Bと隔壁13Cとの間で、水密区画S33と水密区画S34とに渡って配置されている。
【0069】
(液化ガスタンクの構成)
船体2は、機関室10に対して船首尾方向FAの船首側に隣接するタンク室60を備えている。つまり、この実施形態におけるタンク室60は、乾舷甲板5よりも下層に設けられている。
タンク室60は、液化ガスタンク30Bと、燃料供給装置35Bと、を収容している。つまり、液化ガスタンク30B及び燃料供給装置35Bは、機関室10の外部に設けられている。この実施形態で例示する液化ガスタンク30Bは、タンク室60内に、船幅方向Wに間隔を空けて複数基(例えば2基)設置されている。
【0070】
(液化ガスタンクの付随機器の構成)
燃料供給装置35Bは、液化ガスタンク30B内の液化ガスG1を熱機関20(主機21、発電機用エンジン22)に供給する。燃料供給装置35Bは、上記参考例の燃料供給装置35と同様、ポンプ35aと、蒸発器35bと、ガスヒータ35cと、ガス焼却炉35dと、を主に備えている。タンク室60は、液化ガスG1等がタンク室60外部に漏洩しないように気密性を有した構造とされている。
【0071】
(第一配管の構成)
タンク側配管55Mは、液化ガスタンク30B内の液化ガスG1を気化させた燃料ガスG2を、バルブ室40M内の圧力調整弁41Mに送給する。同様に、タンク側配管55Gは、液化ガスタンク30B内の液化ガスG1を気化させた燃料ガスG2を、バルブ室40G内の圧力調整弁41Gに送給する。言い換えれば、タンク側配管55Mは、燃料供給装置35Bと、圧力調整弁41Mとを接続し、タンク側配管55Gは、燃料供給装置35Bと、圧力調整弁41Gとを接続している。タンク側配管55Mの少なくとも一部は、水密区画S21,S22内に配置されている。タンク側配管55Gの少なくとも一部は、水密区画S31,S32内に配置されている。
【0072】
タンク側配管55Mは、第一タンク側配管55Maと、第二タンク側配管55Mbとを備えている。この実施形態における第一タンク側配管55Maは、燃料供給装置35Bからタンク室60内、水密区画S33内、水密区画S31内を経由して第一仕切壁部16tに至る範囲に敷設されている。第一タンク側配管55Maは、更に、第一仕切壁部16eから水密区画S23内、バルブ室40M内に至り、バルブ室40M内で分岐して二つの圧力調整弁41Mに接続されている。そして、二つの圧力調整弁41Mからそれぞれ水密区画S21内と水密区画S22とを経由して第一仕切壁部16pと第三仕切壁部16rに至っている。つまり、第一タンク側配管55Maは、熱機関20が収容される空間に対して仕切られた水密性、気密性を有する空間にのみ敷設されている。この第一タンク側配管55Maは、外管(保護管)を有さない一重管である。
【0073】
この実施形態における第二タンク側配管55Mbは、第一仕切壁部16tから第一仕切壁部16eに至る範囲に敷設されている。言い換えれば、第二タンク側配管55Mbは、水密区画S31から水密区画S23に至る範囲、すなわち発電機用エンジン22を収容する空間に敷設されている。この第二タンク側配管55Mbは、水密区画S31内の第一タンク側配管55Maと、水密区画S23内の第一タンク側配管55Maとを接続している。この第二タンク側配管55Mbは、内管55Mc(言い換えれば、実管)と外管55Md(言い換えれば、保護管)とを有する二重管である。
【0074】
タンク側配管55Gは、燃料供給装置35Bからタンク室60内を介してバルブ室40G内に至り、発電機用エンジン22の台数に応じて分岐して圧力調整弁41Gに接続されている。この実施形態におけるタンク側配管55Gは、三つの圧力調整弁41Gに分岐接続されている。さらに、この実施形態におけるタンク側配管55Gは、三つの圧力調整弁41Gのうち、船幅方向Wの両側に配置されている二つの圧力調整弁41Gから、水密区画S31,S32内を経由して第一仕切壁部16t,16vに至っている。さらに、タンク側配管55Gは、三つの圧力調整弁41Gのうち、船幅方向Wの中央部に配置されている圧力調整弁41Gから、隔壁13Bに至っている。
【0075】
(第二配管の構成)
熱機関側配管56M,56Gは、燃料ガスG2を、タンク側配管55M,55Gから熱機関20である主機21,発電機用エンジン22に送給する。
【0076】
熱機関側配管56Mは、水密区画S21,S22内のタンク側配管55Mと、二つの主機21とをそれぞれ接続する。二つの熱機関側配管56Mは、それぞれ主機関室10A内で第一仕切壁部16pから左舷側の主機21に向かって延びるともに、第三仕切壁部16rから右舷側の主機21に向かって延びている。これら熱機関側配管56Mは、内管58aと、内管58aを径方向外側から覆う外管58bを備える二重管である。
【0077】
熱機関側配管56Gは、水密区画S31,S32内のタンク側配管55Gと発電機用エンジン22とを接続する。熱機関側配管56Gは、更に、船幅方向Wにおける水密区画S31,S32との間の中央部にて、バルブ室40G内のタンク側配管55Gと発電機用エンジン22とを接続する。つまり、この実施形態では、三つの熱機関側配管56Gを備えている。これら熱機関側配管56Gは、発電機室10B内で第一仕切壁部16tから左舷側の発電機用エンジン22、第一仕切壁部16vから右舷側の発電機用エンジン22、及び、船幅方向Wの中央部の隔壁13Bから船幅方向Wの中央部の発電機用エンジン22に向かってそれぞれ延びている。これら熱機関側配管56Gは、熱機関側配管56Mと同様に、内管58aと、内管58aを径方向外側から覆う外管58bを備える二重管である。
【0078】
(液化ガスタンクから熱機関への燃料ガスの供給の流れ)
船舶1Bにおいて、液化ガスタンク30Bから熱機関20に燃料ガスG2を供給するには、まず、燃料供給装置35Bのポンプ35aが、液化ガスタンク30B内の液化ガスG1を吸い出す。このポンプ35aで吸い出された液化ガスG1は、蒸発器35bで蒸発することで気化され、燃料ガスG2となる。燃料ガスG2は、タンク側配管55M,55Gを通してバルブ室40M,40G内の圧力調整弁41M,41Gに送られる。
【0079】
タンク側配管55M,55Gを通して圧力調整弁41M,41Gに送られた燃料ガスG2は、圧力調整弁41M,41Gで圧力が調整された後、熱機関20の主機21,発電機用エンジン22に供給される。主機21は、供給された燃料ガスG2を燃焼させることで、スクリュー9を回転させる駆動力を発生させる。発電機用エンジン22は、供給された燃料ガスG2を燃焼させることで発電機(図示せず)を駆動する。
【0080】
(作用効果)
上記実施形態の船舶1Bでは、熱機関側配管56Mの一部が、機関室10内に形成された水密区画S21,S22,S23,S31内に配置されている。
したがって、実施形態の船舶1Bによれば、水密区画S21,S22,S23,S31内に配置された部分では、熱機関側配管56Mを二重管とする必要がない。その結果、二重管の使用量を減らし、二重管の設置に伴う手間及びコストを抑えることができる。 また、実施形態の船舶1Bでは、熱機関側配管56Gの一部が、機関室10内に形成された水密区画S31,S32内に配置されている。
したがって、実施形態の船舶1Bによれば、水密区画S31,S32内に配置された部分では、熱機関側配管56Gを二重管とする必要がない。その結果、二重管の使用量を減らし、二重管の設置に伴う手間及びコストを抑えることができる。
【0081】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0082】
参考例では、第一配管51M,51Gを、ダクトD1,D2内に配置するようにした。これら第一配管51M,51G、及びダクトD1,D2は、上下方向Dvにまっすぐ延びるとは限らない。例えば、水平方向や斜め方向に延びるダクトD1,D2内に第一配管51M,51Gを配置してもよい。
【0083】
参考例では、水密区画S11,S12の水平断面積がダクトD1,D2の水平断面積が大きくなるようにしたが、これに限られない。水密区画S11,S12は、その水平断面積がダクトD1,D2と同等またはそれ以上であってもよい。
【0084】
参考例では、液化ガスタンク30Aを、機関室10の上方の上甲板8上に設けるようにした。しかし、液化ガスタンク30Aは、上甲板8よりも下層に配置してもよい。 参考例において、主機21用のバルブ室40Mと、発電機用エンジン22用のバルブ室40Gとを別々に設けるようにしたが、主機21の圧力調整弁41Mと、発電機用エンジン22の圧力調整弁41Gとを、一つのバルブ室に収容するようにしてもよい。
【0085】
参考例、実施形態において、バルブ室40M、40Gを、船幅方向W両側の水密区画S11,S12、S13,S14、S15,S16、S21,S22の双方に接するように設けたが、これに限らない。バルブ室40M、40Gは、水密区画S11,S12、S13,S14、S15,S16、S21,S22のうち、何れか一方のみに接するように設けてもよい。
【0086】
参考例、実施形態において、バルブ室40M,40Gは、水密区画S11,S12、S13,S14、S15,S16、S21,S22と同様に、水密構造としてもよい。その場合、バルブ室40M、40Gと、水密区画S11,S12、S13,S14、S15,S16、S21,S22とが接する部分においては、仕切壁16A,16B,16C,16D,16E,16F,16G,16Hを水密構造としなくてもよい。
【0087】
参考例及び参考例の変形例において、バルブ室40M、40Gを、機関室10内に設けるようにしたが、これに限るものではない。バルブ室40M、40Gは、機関室10外に設けるようにしても良い。
【0088】
参考例、実施形態において、熱機関20として、主機21及び発電機用エンジン22を示したが、これに限らない。液化ガスタンク30A、30Bから燃料ガスG2が供給される熱機関20は、主機21と発電機用エンジン22との一方のみであってもよい。その場合、燃料ガスG2が供給されない他方は、燃料ガスG2以外を燃料とする熱機関や、電動機等としてもよい。
【0089】
実施形態において、タンク側配管55Mが水密区画S23,S33を通る場合を例示した。しかし、タンク側配管55Mは、水密区画S23,S33を通らずに、例えば、バルブ室40M,40Gを経由するようにしてもよい。また、三つの熱機関側配管56Gのうち船幅方向Wの中央部に配置される熱機関側配管56Gが隔壁13Bから発電機用エンジン22に向かって延びる場合を例示した。しかし、発電機用エンジン22から隔壁13Bまでの距離よりも、発電機用エンジン22から水密区画S31や水密区画S32までの距離が短くなる場合は、タンク側配管55G及び熱機関側配管56Gを水密区画S31や水密区画S32を経由させるようにしてもよい。
【0090】
<付記>
各実施形態に記載の船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0091】
(1)第1の態様に係る船舶1は、一対の舷側3A、3Bを有する船体2Bと、前記船体2内の乾舷甲板5よりも下層に設けられて、前記一対の舷側3A、3Bとともに、熱機関20が収容される機関室10を形成する隔壁12B,13Bと、前記隔壁12B,13Bと前記舷側3A、3Bとの接続部J5,J6,J7,J8を囲むように配置されて、前記機関室10の上下範囲にわたって延びる水密区画S21,S22,S31,S32を形成する仕切壁16G,16H,16I,16Jと、前記機関室10と同一の階層に設けられるとともに、前記機関室10の外部に設けられ、液化ガスG1を貯留する液化ガスタンク30Bと、前記水密区画S21,S22,S31,S32に隣接して配置されたバルブ室40M,40Gに収容され、前記熱機関20に供給する燃料ガスG2の圧力を調整する圧力調整弁41M,41Gと、前記液化ガスタンク30B内の前記液化ガスG1が気化した前記燃料ガスG2を前記圧力調整弁41M,41Gに送給し、少なくとも一部が前記水密区画S21,S22,S31,S32内に配置されたタンク側配管55M,55Gと、前記熱機関20が収容される空間に配置され、前記圧力調整弁41M,41Gを経由した前記燃料ガスG2を前記熱機関20に送給する二重管からなる熱機関側配管56M,56Gと、を備える。
【0092】
この船舶1Bは、タンク側配管55M,55Gの少なくとも一部が水密区画S21、S22,S31,S32内に配置されている。水密区画S21,S22,S31,S32内に配置された部分では、二重管とする必要がない。
したがって、二重管である熱機関側配管56M,56Gの使用量を減らし、二重管の設置に伴う手間及びコストを抑えることができる。
熱機関20の例としては、主機21や発電機用エンジン22が挙げられる。
【0093】
(2)第2の態様の船舶1は、(1)の船舶1であって、前記熱機関側配管56M,56Gは、前記水密区画S21,S22,S31,S32内の前記タンク側配管55M,55Gと、前記熱機関20とを接続する。
【0094】
これにより、二重管の使用量を減らし、二重管の設置に伴う手間及びコストを抑えることができる。
【0095】
(3)第3の態様の船舶1は、(1)または(2)の船舶1であって、前記機関室10に対して船首尾方向の船首側に隣接し、前記液化ガスタンク30Bを収容する気密性を有したタンク室60を備える。
【0096】
これにより、機関室10の船首側のタンク室60内に液化ガスタンク30Bが配置されている場合に、二重管の使用量を減らし、二重管の設置に伴う手間及びコストを抑えることができる。
【0097】
(4)第4の態様の船舶1は、(3)の船舶1であって、前記タンク室60は、前記液化ガスタンク30B内の液化ガスを前記熱機関20に供給する燃料供給装置35Bを収容する。
【符号の説明】
【0098】
1、1B…船舶 2、2B…船体 2b…後部 3A、3B…舷側 4…船底 5…乾舷甲板 7…甲板 8…上甲板 9…スクリュー 10…機関室 10A…主機関室 10B…発電機室 11…隔壁 12、12A、12B、12C…隔壁 12a…第一隔壁部 12b…第二隔壁部 12c…第三隔壁部 12d…第四隔壁部 12e…第五隔壁部 12f、12h…第一側部 12g、12i…第二側部 13、13B、13C…隔壁 15A、15B、15G、15H…区画壁 16A~16H…仕切壁 16a、16e、16g、16i、16k、16p…第一仕切壁部 16b、16f、16h、16j、16m、16q…第二仕切壁部 16c、16r…第三仕切壁部 16d、16s…第四仕切壁部 20…熱機関 21…主機 22…発電機用エンジン 30A、30B…液化ガスタンク 31…ベントライザ 33…バンカーステーション 35、35B…燃料供給装置 35a…ポンプ 35b…蒸発器 35c…ガスヒータ 35d…ガス焼却炉 40G、40M…バルブ室 41G、41M…圧力調整弁 42G、42M…バルブ室壁 51G、51M…第一配管 52G、52M…第二配管 54G、54M…外管 55G、55M…タンク側配管 56G、56M…熱機関側配管 58b…外管 60…タンク室 D1、D2…ダクト G1…液化ガス G2…燃料ガス G3…ボイルオフガス J1~J6…接続部 S11~S16…水密区画 S21~S24…水密区画 S31~S34…水密区画 Sa~Sh…浸水防止部屋 W…船幅方向