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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241101BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H01L29/78 617N
H01L29/78 618B
H01L29/78 624
H01L29/78 617U
H01L29/78 617T
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023169591
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2022163783の分割
【原出願日】2014-05-13
(65)【公開番号】P2023165982
(43)【公開日】2023-11-17
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2013104583
(32)【優先日】2013-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】早川 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】松林 大介
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-151469(JP,A)
【文献】特開2012-033908(JP,A)
【文献】特開2013-035740(JP,A)
【文献】特開2011-243972(JP,A)
【文献】特開2012-019207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上の第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜を介して、前記第1の導電膜と重なる領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と電気的に接続された第2の導電膜と、
前記酸化物半導体膜と電気的に接続された第3の導電膜と、
前記酸化物半導体膜上の第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜を介して、前記酸化物半導体膜と重なる領域を有する第4の導電膜と、を有し、
前記第1の導電膜は、トランジスタの第1のゲート電極として機能する領域を有し、
前記酸化物半導体膜は、前記トランジスタのチャネル形成領域として機能する領域を有し、
前記第2の導電膜は、前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の一方として機能する領域を有し、
前記第3の導電膜は、前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の他方として機能する領域を有し、
前記第4の導電膜は、前記トランジスタの第2のゲート電極として機能する領域を有し、
前記トランジスタのチャネル幅方向において、前記第1の導電膜は、前記酸化物半導体膜と重ならない領域を有し、
前記トランジスタのチャネル幅方向において、前記第4の導電膜は、前記酸化物半導体膜と重ならない領域を有し、
暗室下のゲートBTストレス試験において、
前記基板の温度を60℃とし、
前記第1の導電膜及び前記第4の導電膜に+30Vを印加し、
ストレス時間を0.1時間として、
前記ゲートBTストレス試験前後の、前記トランジスタのドレイン電圧を1V又は10VとしたときにVg-Id特性から算出されるしきい値電圧の変動量が0.2V未満である、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記酸化物半導体膜は、Inと、M(MはAl、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)と、Znと、を有する、半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項において、
前記第1のゲート絶縁膜は、窒素と、シリコンと、を有する絶縁膜と、酸素と、シリコンと、を有する絶縁膜とがこの順に積層された積層構造を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸化物半導体膜を有するトランジスタを備えた半導体装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジスタ(TFT)と
もいう。)を構成する技術が注目されている。該トランジスタは、集積回路(IC)や画
像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適
用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料と
して酸化物半導体が注目されている。
【0003】
例えば、トランジスタの活性層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜
鉛(Zn)を含む酸化物半導体を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照
。)。
【0004】
また、酸化物半導体層を、積層構造とすることで、キャリアの移動度を向上させる技術
が開示されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-165528号公報
【文献】特開2011-138934号公報
【文献】特開2011-124360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、電気特性(例えば、オン電流、電界効果移動度、周波数特性等)の
優れたトランジスタを有する半導体装置を提供する。または、信頼性の高いトランジスタ
を有する半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の間に酸化物半導体膜が設
けられるデュアルゲート構造のトランジスタであって、トランジスタのチャネル幅方向に
おいて、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の側面はそれぞれ、酸化物半導体膜の側
面より外側に位置する半導体装置である。
【0008】
本発明の一態様は、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の間に酸化物半導体膜が設
けられるデュアルゲート構造のトランジスタであって、ストレス時間に対するトランジス
タのしきい値電圧の変動量を示す両対数グラフにおいて、横軸と縦軸の対数目盛の間隔が
等しく、ストレス時間に対するしきい値電圧の変動量の累乗近似線と、しきい値電圧の変
動量が0Vの直線とがなす角度が30°未満であり、且つストレス時間が0.1時間のと
きのしきい値電圧の変動量が0.2V未満である半導体装置である。なお、ストレス時間
とは、トランジスタに、電圧、温度等の負荷を与える時間のことをいう。
【0009】
本発明の一態様は、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の間に酸化物半導体膜が設
けられるデュアルゲート構造のトランジスタであって、ストレス時間に対するトランジス
タのしきい値電圧の変動量を示す両対数グラフにおいて、横軸と縦軸の対数目盛の間隔が
等しく、しきい値電圧の変動量の累乗近似線の傾きが0.5以下であり、ストレス時間が
0.1時間のときのしきい値電圧の変動量が0.2V未満である半導体装置である。
【0010】
なお、第1のゲート電極または第2のゲート電極は、第1のゲート電極または第2のゲ
ート電極と酸化物半導体膜との間に設けられたゲート絶縁膜を介して、酸化物半導体膜の
側面と対向してもよい。
【0011】
また、第1のゲート電極及び第2のゲート電極は、酸化物半導体膜の外側で絶縁膜を介
して対向してもてよい。
【0012】
また、上記トランジスタをチャネルエッチ構造のトランジスタとすることができる。ま
た、酸化物半導体膜上において、一対の電極の間隔を、1μm以上4μm未満とすること
ができる。
【0013】
酸化物半導体膜は、In、M(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd
)、及びZnを有する酸化物であり、Inの原子数比は、Mの原子数比以上であるスパッ
タリングターゲットで形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様により、電気特性(例えば、オン電流、電界効果移動度、周波数特性等
)の優れたトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の
一態様により、信頼性の高いトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】トランジスタの信頼性を説明する図である。
図2】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
図3】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
図4】トランジスタの作製方法の一形態を説明する断面図である。
図5】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
図6】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
図7】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
図8】トランジスタのバンド構造を説明する図である。
図9】半導体装置の一形態を説明するブロック図及び回路図である。
図10】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
図11】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
図12】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
図13】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
図14】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
図15】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
図16】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
図17】酸化物半導体の極微電子線回折パターンを示す図である。
図18】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
図19】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
図20】トランジスタのVg-Id特性を説明する図である。
図21】GBT試験後のトランジスタのVg-Id特性を説明する図である。
図22】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
図23】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
図24】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
図25】ストレス時間に対するトランジスタのΔVthを説明する図である。
図26】トランジスタの構造を説明する断面図である。
図27】電流電圧曲線を計算した結果を説明する図である。
図28】トランジスタのポテンシャルを計算した結果を説明する図である。
図29】モデルを説明する図である。
図30】モデルを説明する図である。
図31】電流電圧曲線を計算した結果を説明する図である。
図32】トランジスタの構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。また
、以下に説明する実施の形態及び実施例において、同一部分または同様の機能を有する部
分には、同一の符号または同一のハッチパターンを異なる図面間で共通して用い、その繰
り返しの説明は省略する。
【0017】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、
明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されな
い。
【0018】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるた
めに付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を
「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0019】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、回路動作において電流の方向が変化する場
合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレ
イン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0020】
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場
の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。た
だし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差
のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多
い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし
、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0021】
本明細書において、フォトリソグラフィ工程を行った後にエッチング工程を行う場合は
、フォトリソグラフィ工程で形成したマスクは除去するものとする。
【0022】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置及びその作製方法について図面を
参照して説明する。
【0023】
図2(A)乃至図2(C)に、半導体装置が有するトランジスタ50の上面図及び断面
図を示す。図2に示すトランジスタ50は、チャネルエッチ型のトランジスタである。図
2(A)はトランジスタ50の上面図であり、図2(B)は、図2(A)の一点鎖線A-
B間の断面図であり、図2(C)は、図2(A)の一点鎖線C-D間の断面図である。な
お、図2(A)では、明瞭化のため、基板11、ゲート絶縁膜17、酸化物絶縁膜23、
酸化物絶縁膜24、窒化物絶縁膜25などを省略している。
【0024】
図2(B)及び図2(C)に示すトランジスタ50は、基板11上に設けられるゲート
電極15と、基板11及びゲート電極15上に形成されるゲート絶縁膜17と、ゲート絶
縁膜17を介して、ゲート電極15と重なる酸化物半導体膜18と、酸化物半導体膜18
に接する一対の電極21、22と、ゲート絶縁膜17、酸化物半導体膜18、及び一対の
電極21、22上の保護膜26と、保護膜26を介して酸化物半導体膜18と重なるゲー
ト電極29を有する。なお、保護膜26は、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び
窒化物絶縁膜25を有する。
【0025】
本実施の形態に示すトランジスタ50は、複数のゲート電極を有し、該ゲート電極の間
に酸化物半導体膜18を有するデュアルゲート構造のトランジスタである。図2(C)に
示すチャネル幅方向において、酸化物半導体膜18の外側にゲート電極29の端部が位置
する。または、チャネル幅方向において、ゲート電極29は、保護膜26を介して酸化物
半導体膜18の側面と対向する。またはチャネル幅方向において、酸化物半導体膜18の
外側において、ゲート電極15及びゲート電極29は、ゲート絶縁膜17及び保護膜26
を介して対向する。
【0026】
図2(D)は、図2(C)の破線30の拡大図である。図2(D)を用いて、ゲート電
極15、酸化物半導体膜18、ゲート電極29の端部の位置について説明する。
【0027】
ここで、図2(D)に示すように、酸化物半導体膜18の端部及びゲート電極29の端
部の距離をdとし、保護膜26の厚さをtとすると、酸化物半導体膜18の端部及びゲー
ト電極29の端部の距離dは、保護膜26の厚さt以下であることが好ましい。酸化物半
導体膜18の端部及びゲート電極29の端部の距離dは、保護膜26の厚さt以下とする
ことで、酸化物半導体膜18の端部に、ゲート電極29の電界を影響させることが可能で
あり、酸化物半導体膜18の端部を含む全体をチャネルとして機能させることができる。
【0028】
エッチング等で加工された酸化物半導体膜の端部においては、加工におけるダメージに
より欠陥が形成される共に、不純物付着などにより汚染される。このため、電界などのス
トレスが与えられることによって、酸化物半導体膜の端部は、活性化しやすくなり、n型
(低抵抗)となりやすい。そのため、本実施の形態ではゲート電極15と重なる酸化物半
導体膜18の端部において、n型化しやすくなる。当該n型化された端部が、一対の電極
21、22の間に設けられると、該領域がキャリアのパスとなってしまい、寄生チャネル
が形成される。しかしながら、図2(C)に示すように、酸化物半導体膜18の外側にゲ
ート電極29の端部が位置することで、ゲート電極29の電界の影響により、酸化物半導
体膜18の側面またはその近傍における寄生チャネルの発生が抑制される。この結果、し
きい値電圧におけるドレイン電流の上昇が急峻である、電気特性の優れたトランジスタと
なる。
【0029】
また、ゲート電極15及びゲート電極29を設けることで、更にはゲート電極15及び
ゲート電極29を同電位とすることで、酸化物半導体膜18においてキャリアの流れる領
域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの移動量が増加する。この結果、ト
ランジスタ50のオン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が高くなる。
【0030】
また、ゲート電極15及びゲート電極29を有することで、それぞれが外部からの電界
を遮蔽する機能を有するため、基板11及びゲート電極15の間、ゲート電極29上に設
けられる荷電粒子等の電荷が酸化物半導体膜18に影響しない。この結果、ストレス試験
(例えば、ゲートに負の電荷を印加する-GBT(Gate Bias-Tempera
ture)ストレス試験)の劣化が抑制されると共に、異なるドレイン電圧におけるオン
電流の立ち上がり電圧の変動を抑制することができる。なお、この効果は、ゲート電極1
5及びゲート電極29が、同電位、または異なる電位の場合において生じる。
【0031】
なお、BTストレス試験は加速試験の一種であり、長期間の使用によって起こるトラン
ジスタの特性変化(即ち、経年変化)を、短時間で評価することができる。特に、BTス
トレス試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変動量は、信頼性を調べるための
重要な指標となる。BTストレス試験前後において、しきい値電圧の変動量が少ないほど
、信頼性が高いトランジスタであるといえる。
【0032】
また、ゲート電極15及びゲート電極29を有し、且つゲート電極15及びゲート電極
29を同電位とすることで、しきい値電圧の変動量が低減される。このため、複数のトラ
ンジスタにおける電気特性のバラつきも同時に低減される。
【0033】
また、トランジスタ50は、ゲートに正の電荷を印加する+GBTストレス試験前後に
おけるしきい値電圧の変動量が小さい。
【0034】
本実施の形態の示すトランジスタ50において、ゲートに正の電荷を印加するゲートB
Tストレス試験の前後において、ストレス時間に対するしきい値電圧の変動量(ΔVth
)を表す累乗近似線L1を図1に示す。なお、試験時間(ストレス時間)としきい値電圧
の変動量をグラフにプロットすると、プロットされた値は累乗近似線で近似することがで
き、その累乗近似線は両対数グラフ上では直線となる。図1において、図1は両対数グラ
フであり、横軸はストレス時間の対数を表し、縦軸はしきい値電圧の変動量の対数を表す
。また、ストレス試験の条件としては、基板温度を60℃とし、測定環境を暗室下(da
rk環境下)において、ゲート電圧に+30Vを印加して、任意の時間、例えば、1時間
のストレスをトランジスタに与える条件である。
【0035】
図1において、両対数グラフ上では累乗近似線L1は直線となるため、横軸と縦軸の対
数目盛の間隔が等しい場合、本実施の形態に示すトランジスタ50における累乗近似線L
1と、ストレス時間に対してしきい値電圧の変動量が無い(ΔVthが0V)ときの直線
、即ち、図1の破線で示す傾き0の直線L2とのなす角度θは、30度未満、または25
度未満である。なお、横軸と縦軸の対数目盛の間隔が等しいとは、例えば、横軸において
ストレス時間が10倍となる0.01時間から0.1時間の間隔と、縦軸において、ΔV
thが10倍となる0.01Vから0.1Vの間隔が等しい、ということである。
【0036】
なお、角度θの大きさが小さいほど、経年変化によるしきい値電圧の変動量が小さく、
信頼性の高いトランジスタである。
【0037】
また、図1において、横軸をx、縦軸をyとすると、累乗近似線は、数式1で示すこと
ができる。なお、b、Cは定数であり、bは、累乗近似線の傾きに相当する。
【0038】
【数1】
【0039】
本実施の形態に示すトランジスタ50における累乗近似線L1の傾きbは、0.5V/
hr以下、または0.4V/hr以下であり、且つストレス時間が0.1時間のときのΔ
Vthが0.2V未満、または0.5V未満である。
【0040】
累乗近似線L1の傾きbが小さい程、経年変化によるしきい値電圧の変動量が小さく、
信頼性の高いトランジスタである。また、ストレス時間が0.1時間のときのΔVthが
小さい程、動作初期時における信頼性が高いトランジスタである。この結果、累乗近似線
L1の傾きbが、0.5V/hr以下、または0.4V/hr以下であり、且つストレス
時間が0.1時間のときのΔVthが0.2V未満、または0.5V未満であるトランジ
スタは信頼性が高い。
【0041】
なお、図2(A)においては、チャネル長方向あたりのゲート電極15の幅より、酸化
物半導体膜18の幅が大きいが、図3(A)に示すトランジスタ51のように、チャネル
長方向あたりの酸化物半導体膜18の幅より、ゲート電極15の幅を大きくすることがで
きる。この結果、基板11側からの光の照射をゲート電極15で遮光することが可能であ
るため、トランジスタ51の電気特性の変動を抑制することができる。なお、図3(A)
は、トランジスタ51の上面図であり、図3(B)は、図3(A)の一点鎖線A-B間の
断面図であり、図3(C)は、図3(A)の一点鎖線C-D間の断面図である。
【0042】
なお、本実施の形態においては、ゲート電極15及びゲート電極29が接続され、同電
位であるが、ゲート電極15及びゲート電極29が接続されず、それぞれ異なる電位が印
加されてもよい。
【0043】
以下に、トランジスタ50の他の構成の詳細について説明する。
【0044】
基板11の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の
耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サフ
ァイア基板等を、基板11として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単
結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SO
I基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを
、基板11として用いてもよい。なお、基板11として、ガラス基板を用いる場合、第6
世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8
世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第1
0世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大型の表示装置
を作製することができる。
【0045】
また、基板11として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ50を
形成してもよい。または、基板11とトランジスタ50の間に剥離層を設けてもよい。剥
離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板11より分離し、他
の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ50は耐熱性の劣る基
板や可撓性の基板にも転載できる。
【0046】
ゲート電極15は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タン
グステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した
金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコ
ニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電
極15は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むア
ルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、窒化チタン
膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構
造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、
チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を
積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、
チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選
ばれた元素の膜、または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0047】
また、ゲート電極15は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸
化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化
物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加
したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、
上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0048】
ゲート絶縁膜17は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒
化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系金属
酸化物、窒化シリコンなどを用いればよく、積層または単層で設ける。
【0049】
また、ゲート絶縁膜17として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素が添加
されたハフニウムシリケート(HfSi)、窒素が添加されたハフニウムアル
ミネート(HfAl)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-
k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0050】
ゲート絶縁膜17の厚さは、5nm以上400nm以下、10nm以上300nm以下
、または50nm以上250nm以下とするとよい。
【0051】
酸化物半導体膜18は、代表的には、In-Ga酸化物膜、In-Zn酸化物膜、In
-M-Zn酸化物膜(MはAl、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)がある。
【0052】
なお、酸化物半導体膜18がIn-M-Zn酸化物膜であるとき、InおよびMの和を
100atomic%としたとき、InとMの原子数比率は、Inが25atomic%
以上及びMが75atomic%未満、またはInが34atomic%以上及びMが6
6atomic%未満とする。
【0053】
酸化物半導体膜18は、エネルギーギャップが2eV以上、2.5eV以上、または3
eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、
トランジスタ50のオフ電流を低減することができる。
【0054】
酸化物半導体膜18の厚さは、3nm以上200nm以下、3nm以上100nm以下
、または3nm以上50nm以下とする。
【0055】
酸化物半導体膜18がIn-M-Zn酸化物膜(MはAl、Ga、Y、Zr、La、C
e、またはNd)の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリング
ターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。この
ようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1
:1、In:M:Zn=3:1:2が好ましい。なお、成膜される酸化物半導体膜18の
原子数比はそれぞれ、誤差として上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の
原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。なお、酸化物半導体膜18に含まれるI
nの含有量が多いと、トランジスタのオン電流が増大し、電界効果移動度が高まる。この
ため、酸化物半導体膜18として、金属元素の原子数比がIn:M:Zn=3:1:2の
In-M-Zn酸化物のスパッタリングターゲットを用いて形成することで、電気特性の
優れたトランジスタを作製することができる。
【0056】
酸化物半導体膜18としては、キャリア密度の低い酸化物半導体膜を用いる。例えば、
酸化物半導体膜18は、キャリア密度が1×1017個/cm以下、1×1015個/
cm以下、1×1013個/cm以下、または1×1011個/cm以下の酸化物
半導体膜を用いる。
【0057】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効
果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とす
るトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜18のキャリア密度や不純物
濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとするこ
とが好ましい。
【0058】
なお、酸化物半導体膜18として、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導
体膜を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ
好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)こと
を高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真性で
ある酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができ
る場合がある。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは
、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少
ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密
度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的
に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×10
μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧
(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナ
ライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる。
従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変
動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。なお、酸化物半導体膜のトラ
ップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のよ
うに振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体膜にチャネル
領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。不純物としては
、水素、窒素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等がある。
【0059】
酸化物半導体膜に含まれる水素は金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、
酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。当該酸素欠損
に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が
金属原子と結合する酸素と結合することで、キャリアである電子を生成する場合がある。
従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性と
なりやすい。
【0060】
このため、酸化物半導体膜18は水素ができる限り低減されていることが好ましい。具
体的には、酸化物半導体膜18において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secon
dary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、
5×1019atoms/cm以下、1×1019atoms/cm以下、5×10
18atoms/cm以下、1×1018atoms/cm以下、5×1017at
oms/cm以下、または1×1016atoms/cm以下とする。
【0061】
酸化物半導体膜18において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると
、酸化物半導体膜18において酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、酸化物
半導体膜18におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度
)を、2×1018atoms/cm以下、または2×1017atoms/cm
下とする。
【0062】
また、酸化物半導体膜18において、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金
属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、または2×
1016atoms/cm以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物
半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大して
しまうことがある。このため、酸化物半導体膜18のアルカリ金属またはアルカリ土類金
属の濃度を低減することが好ましい。
【0063】
また、酸化物半導体膜18に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャ
リア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用い
たトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体膜におい
て、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、二次イオン質量分析法に
より得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm以下にすることが好ましい。
【0064】
また、酸化物半導体膜18は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば
、後述するCAAC-OS(C Axis Aligned Crystalline
Oxide Semiconductor)、多結晶構造、後述する微結晶構造、または
非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CA
AC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0065】
酸化物半導体膜18は、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の酸化物半導体膜は、
例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物膜
は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
【0066】
なお、酸化物半導体膜18が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領
域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域の二種以上を有する混合膜であってもよい
。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAA
C-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域を有する場合がある。また
、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAA
C-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域の積層構造を有する場合が
ある。
【0067】
一対の電極21、22は、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウ
ム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、
またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる。例えば、シリコ
ンを含むアルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、
タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウ
ム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングス
テン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜また
は窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜
または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、その
モリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さ
らにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、
酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0068】
酸化物絶縁膜23は、酸素を透過する酸化物絶縁膜である。なお、酸化物絶縁膜23は
、後に形成する酸化物絶縁膜24を形成する際の、酸化物半導体膜18へのダメージ緩和
膜としても機能する。
【0069】
酸化物絶縁膜23としては、厚さが5nm以上150nm以下、または5nm以上50
nm以下の酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。なお、本明細
書中において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多
い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い
膜を指す。
【0070】
また、酸化物絶縁膜23は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定
により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン
密度が3×1017spins/cm以下であることが好ましい。これは、酸化物絶縁
膜23に含まれる欠陥密度が多いと、当該欠陥に酸素が結合してしまい、酸化物絶縁膜2
3における酸素の透過量が減少してしまうためである。
【0071】
また、酸化物絶縁膜23と酸化物半導体膜18との界面における欠陥量が少ないことが
好ましく、代表的には、ESR測定により、酸化物半導体膜18の欠陥に由来するg=1
.93に現れる信号のスピン密度が1×1017spins/cm以下、さらには検出
下限以下であることが好ましい。
【0072】
なお、酸化物絶縁膜23においては、外部から酸化物絶縁膜23に入った酸素が全て酸
化物絶縁膜23の外部に移動せず、酸化物絶縁膜23にとどまる酸素もある。また、酸化
物絶縁膜23に酸素が入ると共に、酸化物絶縁膜23に含まれる酸素が酸化物絶縁膜23
の外部へ移動することで、酸化物絶縁膜23において酸素の移動が生じる場合もある。
【0073】
酸化物絶縁膜23として酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成すると、酸化物絶縁膜23
上に設けられる酸化物絶縁膜24から脱離する酸素を、酸化物絶縁膜23を介して酸化物
半導体膜18に移動させることができる。
【0074】
酸化物絶縁膜23に接するように酸化物絶縁膜24が形成されている。酸化物絶縁膜2
4は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いて形成す
る。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸
素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜
は、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms
/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上である酸化物絶縁膜であ
る。
【0075】
酸化物絶縁膜24としては、厚さが30nm以上500nm以下、または50nm以上
400nm以下の、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0076】
また、酸化物絶縁膜24は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定
により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン
密度が1.5×1018spins/cm未満、更には1×1018spins/cm
以下であることが好ましい。なお、酸化物絶縁膜24は、酸化物絶縁膜23と比較して
酸化物半導体膜18から離れているため、酸化物絶縁膜23より、欠陥密度が多くともよ
い。
【0077】
さらに、酸化物絶縁膜24上に、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等
のブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜25を設けることで、酸化物半導体膜18から
の酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜18への水素、水等の侵入を防ぐこと
ができる。窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニ
ウム膜、窒化酸化アルミニウム膜等がある。なお、酸素、水素、水、アルカリ金属、アル
カリ土類金属等のブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜の代わりに、酸素、水素、水等
のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。酸素、水素、水等のブロッキ
ング効果を有する酸化物絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜
、酸化ガリウム膜、酸化窒化ガリウム膜、酸化イットリウム膜、酸化窒化イットリウム膜
、酸化ハフニウム膜、酸化窒化ハフニウム膜等がある。
【0078】
なお、保護膜26の構成は上記構成に限定されず、適宜酸化物絶縁膜または窒化物絶縁
膜の単層、または積層とすることができる。または、2層、4層等の積層構造を適宜用い
ることができる。
【0079】
次に、図2に示すトランジスタ50の作製方法について、図4を用いて説明する。
【0080】
図4(A)に示すように、基板11上にゲート電極15を形成し、ゲート電極15上に
ゲート絶縁膜17を形成する。
【0081】
ここでは、基板11としてガラス基板を用いる。
【0082】
ゲート電極15の形成方法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、CVD法、蒸
着法等により導電膜を形成し、導電膜上に第1のフォトマスクを用いたフォトリソグラフ
ィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜の一部をエッチングして
、ゲート電極15を形成する。この後、マスクを除去する。
【0083】
なお、ゲート電極15は、上記形成方法の代わりに、電解メッキ法、印刷法、インクジ
ェット法等で形成してもよい。
【0084】
ここでは、厚さ200nmのタングステン膜をスパッタリング法により形成する。次に
、フォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いてタングステン膜を
ドライエッチングして、ゲート電極15を形成する。
【0085】
ゲート絶縁膜17は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で形成する。
【0086】
ゲート絶縁膜17として酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコ
ン膜を形成する場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0087】
また、ゲート絶縁膜17として酸化ガリウム膜を形成する場合、MOCVD(Meta
l Organic Chemical Vapor Deposition)法を用い
て形成することができる。
【0088】
ここでは、ゲート絶縁膜17として、厚さ400nmの窒化シリコン膜及び厚さ50n
mの酸化窒化シリコン膜を積層して形成する。窒化シリコン膜は、シラン、窒素、及びア
ンモニアを原料ガスとしたプラズマCVD法により形成する。酸化窒化シリコン膜は、シ
ラン及び一酸化二窒素を原料ガスとしたプラズマCVD法により形成する。
【0089】
次に、図4(B)に示すように、ゲート絶縁膜17上に酸化物半導体膜18を形成する
【0090】
酸化物半導体膜18の形成方法について、以下に説明する。ゲート絶縁膜17上に、酸
化物半導体膜18となる酸化物半導体膜を形成する。次に、酸化物半導体膜上に第2のフ
ォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用い
て酸化物半導体膜の一部をエッチングすることで、図4(B)に示すような、素子分離さ
れた酸化物半導体膜18を形成する。この後、マスクを除去する。
【0091】
後に酸化物半導体膜18となる酸化物半導体膜は、スパッタリング法、塗布法、パルス
レーザー蒸着法、レーザーアブレーション法等を用いて形成することができる。
【0092】
スパッタリング法で酸化物半導体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源
装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
【0093】
スパッタリングガスは、希ガス及び酸素の混合ガス、希ガス(代表的にはアルゴン)、
酸素等を適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガ
ス比を高めることが好ましい。
【0094】
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜の組成にあわせて、適宜選択すればよい
【0095】
高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜を得るためには、チャンバ
ー内を高真空排気するのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスと
して用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が-40℃以下、-80℃以下、-100℃
以下、または-120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体膜に水
分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0096】
ここでは、In-Ga-Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=3:1:2)と、
スパッタリングガスとして酸素を用いたスパッタリング法により、酸化物半導体膜として
厚さ35nmのIn-Ga-Zn酸化物膜を形成する。次に、酸化物半導体膜上にマスク
を形成し、酸化物半導体膜の一部を選択的にエッチングすることで、酸化物半導体膜18
を形成する。
【0097】
次に、図4(C)に示すように、一対の電極21、22を形成する。
【0098】
一対の電極21、22の形成方法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、CVD
法、蒸着法等で導電膜を形成する。次に、該導電膜上に第3のフォトマスクを用いたフォ
トリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜をエッチン
グして、一対の電極21、22を形成する。この後、マスクを除去する。
【0099】
ここでは、厚さ50nmのタングステン膜、厚さ400nmのアルミニウム膜、及び厚
さ200nmのチタン膜を順にスパッタリング法により積層する。次に、チタン膜上にフ
ォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いてタングステン膜、アル
ミニウム膜、及びチタン膜をドライエッチングして、一対の電極21、22を形成する。
【0100】
次に、図4(D)に示すように、酸化物半導体膜18及び一対の電極21、22上に、
酸化物絶縁膜23を形成する。次に、酸化物絶縁膜23上に酸化物絶縁膜24を形成する
【0101】
なお、酸化物絶縁膜23を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に酸化物絶縁膜2
4を形成することが好ましい。酸化物絶縁膜23を形成した後、大気開放せず、原料ガス
の流量、圧力、高周波電力及び基板温度の一以上を調整して、酸化物絶縁膜24を連続的
に形成することで、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24における界面の大気成分由来
の不純物濃度を低減することができると共に、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素を酸化物
半導体膜18に移動させることが可能であり、酸化物半導体膜18の酸素欠損量を低減す
ることができる。
【0102】
プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を280℃以上400
℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を20Pa以上25
0Pa以下、または100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高
周波電力を供給する条件により、酸化物絶縁膜23として酸化シリコン膜または酸化窒化
シリコン膜を形成することができる。
【0103】
酸化物絶縁膜23の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0104】
上記条件を用いることで、酸化物絶縁膜23として酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成
することができる。また、酸化物絶縁膜23を設けることで、後に形成する酸化物絶縁膜
24の形成工程において、酸化物半導体膜18へのダメージ低減が可能である。
【0105】
なお、酸化物絶縁膜23は、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内にお
ける圧力を100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力
を供給する条件により、酸化物絶縁膜23として、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコ
ン膜を形成することができる。
【0106】
当該成膜条件において、基板温度を上記温度とすることで、シリコン及び酸素の結合力
が強くなる。この結果、酸化物絶縁膜23として、酸素が透過し、緻密であり、且つ硬い
酸化物絶縁膜、代表的には、25℃において0.5重量%のフッ酸に対するエッチング速
度が10nm/分以下、または8nm/分以下である酸化シリコン膜または酸化窒化シリ
コン膜を形成することができる。
【0107】
また、加熱をしながら酸化物絶縁膜23を形成するため、当該工程において酸化物半導
体膜18に含まれる水素、水等を脱離させることができる。酸化物半導体膜18に含まれ
る水素は、プラズマ中で発生した酸素ラジカルと結合し、水となる。酸化物絶縁膜23の
成膜工程において基板が加熱されているため、酸素及び水素の結合により生成された水は
、酸化物半導体膜から脱離する。即ち、プラズマCVD法によって酸化物絶縁膜23を形
成することで、酸化物半導体膜18に含まれる水及び水素の含有量を低減することができ
る。
【0108】
また、酸化物絶縁膜23を形成する工程において加熱するため、酸化物半導体膜18が
露出された状態での加熱時間が少なく、加熱処理による酸化物半導体膜からの酸素の脱離
量を低減することができる。即ち、酸化物半導体膜中に含まれる酸素欠損量を低減するこ
とができる。
【0109】
さらには、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とすることで、酸化物絶縁膜
23に含まれる水の含有量が少なくなるため、トランジスタ50の電気特性のばらつきを
低減すると共に、しきい値電圧の変動を抑制することができる。
【0110】
また、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とすることで、酸化物絶縁膜23
を成膜する際に、酸化物半導体膜18へのダメージを低減することが可能であり、酸化物
半導体膜18に含まれる酸素欠損量を低減することができる。特に、酸化物絶縁膜23ま
たは後に形成される酸化物絶縁膜24の成膜温度を高くする、代表的には220℃より高
い温度とすることで、酸化物半導体膜18に含まれる酸素の一部が脱離し、酸素欠損が形
成されやすい。また、トランジスタの信頼性を高めるため、後に形成する酸化物絶縁膜2
4の欠陥量を低減するための成膜条件を用いると、酸素脱離量が低減しやすい。これらの
結果、酸化物半導体膜18の酸素欠損を低減することが困難な場合がある。しかしながら
、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とし、酸化物絶縁膜23の成膜時におけ
る酸化物半導体膜18へのダメージを低減することで、酸化物絶縁膜24からの少ない酸
素脱離量でも酸化物半導体膜18中の酸素欠損を低減することが可能である。
【0111】
なお、シリコンを含む堆積性気体に対する酸化性気体量を100倍以上とすることで、
酸化物絶縁膜23に含まれる水素含有量を低減することが可能である。この結果、酸化物
半導体膜18に混入する水素量を低減できるため、トランジスタのしきい値電圧のマイナ
スシフトを抑制することができる。
【0112】
ここでは、酸化物絶縁膜23として、シラン及び一酸化二窒素を原料ガスとしたプラズ
マCVD法により、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。当該条件により、酸
素が透過する酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0113】
酸化物絶縁膜24としては、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を180℃以上280℃以下、または200℃以上240℃以下に保持し、処理室
に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、または1
00Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm以上
0.5W/cm以下、または0.25W/cm以上0.35W/cm以下の高周波
電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0114】
酸化物絶縁膜24の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0115】
酸化物絶縁膜24の成膜条件として、上記圧力の処理室において上記パワー密度の高周
波電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増
加し、原料ガスの酸化が進むため、酸化物絶縁膜24中における酸素含有量が化学量論的
組成よりも多くなる。一方、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素
の結合力が弱いため、後の工程の加熱処理により膜中の酸素の一部が脱離する。この結果
、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離す
る酸化物絶縁膜を形成することができる。また、酸化物半導体膜18上に酸化物絶縁膜2
3が設けられている。このため、酸化物絶縁膜24の形成工程において、酸化物絶縁膜2
3が酸化物半導体膜18の保護膜となる。この結果、酸化物半導体膜18へのダメージを
低減しつつ、パワー密度の高い高周波電力を用いて酸化物絶縁膜24を形成することがで
きる。
【0116】
なお、酸化物絶縁膜24の成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積
性気体の流量を増加することで、酸化物絶縁膜24の欠陥量を低減することが可能である
。代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.0
01に現れる信号のスピン密度が6×1017spins/cm未満、3×1017
pins/cm以下、または1.5×1017spins/cm以下である欠陥量の
少ない酸化物絶縁膜を形成することができる。この結果トランジスタの信頼性を高めるこ
とができる。
【0117】
ここでは、酸化物絶縁膜24として、シラン及び一酸化二窒素を原料ガスとしたプラズ
マCVD法により、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0118】
次に、加熱処理を行う。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上400℃以下
、300℃以上400℃以下、または320℃以上370℃以下とする。
【0119】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いること
で、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱
処理時間を短縮することができる。
【0120】
加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、1ppm以下、
または10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行
えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれない
ことが好ましい。
【0121】
当該加熱処理により、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜18に
移動させ、酸化物半導体膜18に含まれる酸素欠損量をさらに低減することができる。
【0122】
また、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24に水、水素等が含まれる場合、水、水素
等をブロッキングする機能を有する窒化物絶縁膜25を後に形成し、加熱処理を行うと、
酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24に含まれる水、水素等が、酸化物半導体膜18に
移動し、酸化物半導体膜18に欠陥が生じてしまう。しかしながら、当該加熱により、酸
化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24に含まれる水、水素等を脱離させることが可能であ
り、トランジスタ50の電気特性のばらつきを低減すると共に、しきい値電圧の変動を抑
制することができる。
【0123】
なお、加熱しながら酸化物絶縁膜24を、酸化物絶縁膜23上に形成することで、酸化
物半導体膜18に酸素を移動させ、酸化物半導体膜18に含まれる酸素欠損を低減するこ
とが可能であるため、当該加熱処理を行わなくともよい。
【0124】
ここでは、窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行う。
【0125】
また、一対の電極21、22を形成する際、導電膜のエッチングによって、酸化物半導
体膜18はダメージを受け、酸化物半導体膜18のバックチャネル(酸化物半導体膜18
において、ゲート電極15と対向する面と反対側の面)側に酸素欠損が生じる。しかし、
酸化物絶縁膜24に化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を
適用することで、加熱処理によって当該バックチャネル側に生じた酸素欠損を修復するこ
とができる。これにより、酸化物半導体膜18に含まれる欠陥を低減することができるた
め、トランジスタ50の信頼性を向上させることができる。
【0126】
次に、スパッタリング法、CVD法等により、窒化物絶縁膜25を形成する。
【0127】
なお、窒化物絶縁膜25をプラズマCVD法で形成する場合、プラズマCVD装置の真
空排気された処理室内に載置された基板を300℃以上400℃以下、または320℃以
上370℃以下とすることで、緻密な窒化物絶縁膜を形成できるため好ましい。
【0128】
窒化物絶縁膜25としてプラズマCVD法により窒化シリコン膜を形成する場合、シリ
コンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いることが好ましい。
原料ガスとして、窒素と比較して少量のアンモニアを用いることで、プラズマ中でアンモ
ニアが解離し、活性種が発生する。当該活性種が、シリコンを含む堆積性気体に含まれる
シリコン及び水素の結合、及び窒素の三重結合を切断する。この結果、シリコン及び窒素
の結合が促進され、シリコン及び水素の結合が少なく、欠陥が少なく、緻密な窒化シリコ
ン膜を形成することができる。一方、原料ガスにおいて、窒素に対するアンモニアの量が
多いと、シリコンを含む堆積性気体及び窒素それぞれの分解が進まず、シリコン及び水素
結合が残存してしまい、欠陥が増大した、且つ粗な窒化シリコン膜が形成されてしまう。
これらのため、原料ガスにおいて、アンモニアに対する窒素の流量比を5以上50以下、
または10以上50以下とすることが好ましい。
【0129】
ここでは、シラン、窒素、及びアンモニアを原料ガスとしたプラズマCVD法により、
厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成する。
【0130】
以上の工程により、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25で構
成される保護膜26を形成することができる。
【0131】
次に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上40
0℃以下、300℃以上400℃以下、または320℃以上370℃以下とする。
【0132】
ゲート電極15及び後に形成するゲート電極29を接続させる場合は、ここで、ゲート
絶縁膜17、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25に開口部を形
成する。
【0133】
次に、図4(E)に示すように、ゲート電極29を形成する。ゲート電極29の形成方
法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等により導電膜を形成
し、導電膜上に第4のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成
する。次に、該マスクを用いて導電膜の一部をエッチングして、ゲート電極29を形成す
る。この後、マスクを除去する。
【0134】
なお、図3(C)に示すように、チャネル幅方向において、酸化物半導体膜18の外側
にゲート電極29の端部が位置するように、ゲート電極29を形成する。
【0135】
ここでは、厚さ100nmの酸化シリコンを有するインジウム錫酸化物(以下、ITO
と示す。)膜をスパッタリング法により形成する。次に、フォトリソグラフィ工程により
マスクを形成し、当該マスクを用いて酸化シリコンを有するITO膜をウエットエッチン
グして、ゲート電極29を形成する。この後、加熱処理を行ってもよい。
【0136】
以上の工程により、トランジスタ50を作製することができる。
【0137】
第1のゲート電極及び第2のゲート電極の間に酸化物半導体膜が設けられるデュアルゲ
ート構造のトランジスタであって、トランジスタのチャネル幅方向において、第1のゲー
ト電極及び第2のゲート電極の側面はそれぞれ、酸化物半導体膜の側面より外側に位置す
ることで、酸化物半導体膜18の端部に、ゲート電極29の電界を影響させることが可能
であり、酸化物半導体膜18の端部を含む全体をチャネルとして機能させることができる
。この結果、トランジスタのオン電流を増大させる共に、電界効果移動度を高めることが
可能である。
【0138】
また、本実施の形態に示すトランジスタは、第1のゲート電極及び第2のゲート電極を
有するため、それぞれのゲート電極が外部からの電界を遮蔽することが可能である。この
結果、ストレス試験の劣化が抑制されると共に、異なるドレイン電圧におけるオン電流の
立ち上がり電圧の変動を抑制することができる。この結果、電気特性の優れたトランジス
タを有する半導体装置を得ることができる。また、信頼性の高い半導体装置を得ることが
できる。
【0139】
<変形例1、下地絶縁膜について>
本実施の形態に示すトランジスタ50において、必要に応じて、基板11及びゲート電
極15の間に下地絶縁膜を設けることができる。下地絶縁膜の材料としては、酸化シリコ
ン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウ
ム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等がある。なお、下地
絶縁膜の材料として、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム
、酸化アルミニウム等を用いることで、基板11から不純物、代表的にはアルカリ金属、
水、水素等の酸化物半導体膜18への拡散を抑制することができる。
【0140】
下地絶縁膜は、スパッタリング法、CVD法等により形成することができる。
【0141】
<変形例2、ゲート絶縁膜について>
本実施の形態に示すトランジスタ50において、必要に応じて、ゲート絶縁膜17を積
層構造とすることができる。ここでは、ゲート絶縁膜17の構成について、図5を用いて
説明する。
【0142】
図5(A)に示すように、ゲート絶縁膜17は、窒化物絶縁膜17a及び酸化物絶縁膜
17bが、ゲート電極15側から順に積層される積層構造とすることができる。ゲート電
極15側に窒化物絶縁膜17aを設けることで、ゲート電極15からの不純物、代表的に
は、水素、窒素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等が酸化物半導体膜18に移動
することを防ぐことができる。
【0143】
また、酸化物半導体膜18側に酸化物絶縁膜17bを設けることで、ゲート絶縁膜17
及び酸化物半導体膜18界面における欠陥準位密度を低減することが可能である。この結
果、電気特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。なお、酸化物絶縁膜17
bとして、酸化物絶縁膜24と同様に、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を
含む酸化物絶縁膜を用いて形成すると、ゲート絶縁膜17及び酸化物半導体膜18界面に
おける欠陥準位密度をさらに低減することが可能であるため、さらに好ましい。
【0144】
図5(B)に示すように、ゲート絶縁膜17は、欠陥の少ない窒化物絶縁膜17cと、
水素ブロッキング性の高い窒化物絶縁膜17dと、酸化物絶縁膜17bとが、ゲート電極
15側から順に積層される積層構造とすることができる。ゲート絶縁膜17として、欠陥
の少ない窒化物絶縁膜17cを設けることで、ゲート絶縁膜17の絶縁耐圧を向上させる
ことができる。また、水素ブロッキング性の高い窒化物絶縁膜17dを設けることで、ゲ
ート電極15及び窒化物絶縁膜17cからの水素が酸化物半導体膜18に移動することを
防ぐことができる。
【0145】
図5(B)に示す窒化物絶縁膜17c、17dの作製方法の一例を以下に示す。はじめ
に、シラン、窒素、及びアンモニアの混合ガスを原料ガスとして用いたプラズマCVD法
により、欠陥の少ない窒化シリコン膜を窒化物絶縁膜17cとして形成する。次に、原料
ガスを、シラン及び窒素の混合ガスに切り替えて、水素濃度が少なく、且つ水素をブロッ
キングすることが可能な窒化シリコン膜を窒化物絶縁膜17dとして成膜する。このよう
な形成方法により、欠陥が少なく、且つ水素のブロッキング性を有する窒化物絶縁膜が積
層されたゲート絶縁膜17を形成することができる。
【0146】
図5(C)に示すように、ゲート絶縁膜17は、不純物のブロッキング性が高い窒化物
絶縁膜17eと、欠陥の少ない窒化物絶縁膜17cと、水素ブロッキング性の高い窒化物
絶縁膜17dと、酸化物絶縁膜17bとが、ゲート電極15側から順に積層される積層構
造とすることができる。ゲート絶縁膜17として、不純物のブロッキング性が高い窒化物
絶縁膜17eを設けることで、ゲート電極15からの不純物、代表的には、水素、窒素、
アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等が酸化物半導体膜18に移動することを防ぐこ
とができる。
【0147】
図5(C)に示す窒化物絶縁膜17e、17c、17dの作製方法の一例を以下に示す
。はじめに、シラン、窒素、及びアンモニアの混合ガスを原料ガスとして用いたプラズマ
CVD法により、不純物のブロッキング性が高い窒化シリコン膜を窒化物絶縁膜17eと
して形成する。次に、アンモニアの流量を増加させることで、欠陥の少ない窒化シリコン
膜を窒化物絶縁膜17cとして形成する。次に、原料ガスを、シラン及び窒素の混合ガス
に切り替えて、水素濃度が少なく、且つ水素をブロッキングすることが可能な窒化シリコ
ン膜を窒化物絶縁膜17dとして成膜する。このような形成方法により、欠陥が少なく、
且つ不純物のブロッキング性を有する窒化物絶縁膜が積層されたゲート絶縁膜17を形成
することができる。
【0148】
<変形例3、一対の電極について>
本実施の形態に示すトランジスタ50に設けられる一対の電極21、22として、タン
グステン、チタン、アルミニウム、銅、モリブデン、クロム、またはタンタル単体若しく
は合金等の酸素と結合しやすい導電材料を用いることができる。この結果、酸化物半導体
膜18に含まれる酸素と一対の電極21、22に含まれる導電材料とが結合し、酸化物半
導体膜18において、酸素欠損領域が形成される。また、酸化物半導体膜18に一対の電
極21、22を形成する導電材料の構成元素の一部が混入する場合もある。これらの結果
図6に示すように、酸化物半導体膜18において、一対の電極21,22と接する領域
近傍に、低抵抗領域20a、20bが形成される。低抵抗領域20a、20bは、一対の
電極21、22に接し、且つゲート絶縁膜17と、一対の電極21、22の間に形成され
る。低抵抗領域20a、20bは、導電性が高いため、酸化物半導体膜18と一対の電極
21、22との接触抵抗を低減することが可能であり、トランジスタのオン電流を増大さ
せることが可能である。
【0149】
また、一対の電極21、22を、上記酸素と結合しやすい導電材料と、窒化チタン、窒
化タンタル、ルテニウム等の酸素と結合しにくい導電材料との積層構造としてもよい。こ
のような積層構造とすることで、一対の電極21、22と酸化物絶縁膜23との界面にお
いて、一対の電極21、22の酸化を防ぐことが可能であり、一対の電極21、22の高
抵抗化を抑制することが可能である。
【0150】
<変形例4、酸化物半導体膜について>
本実施の形態に示すトランジスタ50の作製方法において、一対の電極21、22を形
成した後、酸化物半導体膜18を酸素雰囲気で発生させたプラズマに曝し、酸化物半導体
膜18に酸素を供給することができる。酸化雰囲気としては、酸素、オゾン、一酸化二窒
素、二酸化窒素等の雰囲気がある。さらに、当該プラズマ処理において、基板11側にバ
イアスを印加しない状態で発生したプラズマに酸化物半導体膜18を曝すことが好ましい
。この結果、酸化物半導体膜18にダメージを与えず、且つ酸素を供給することが可能で
あり、酸化物半導体膜18に含まれる酸素欠損量を低減することができる。また、エッチ
ング処理により酸化物半導体膜18の表面に残存する不純物、例えば、フッ素、塩素等の
ハロゲン等を除去することができる。また、当該プラズマ処理を300℃以上で加熱しな
がら行うことが好ましい。プラズマ中の酸素と酸化物半導体膜18に含まれる水素が結合
し、水となる。基板が加熱されているため、当該水は酸化物半導体膜18から脱離する。
この結果、酸化物半導体膜18に含まれる水素及び水の含有量を低減することができる。
【0151】
<変形例5>
本実施の形態に示すトランジスタ50は、基板を280℃以上400℃以下に保持しな
がら酸化物絶縁膜23を形成することで、酸化物半導体膜18に含まれる水素、水等を脱
離させることができる。一方、図4(B)に示す酸化物半導体膜18を形成した後、15
0℃以上基板歪み点未満、200℃以上450℃以下、または300℃以上450℃以下
の加熱処理を行った後、基板を180℃以上260℃以下に保持しながら、酸化物絶縁膜
23を形成してもよい。この結果、酸化物半導体膜18に含まれる水素、水等の含有量を
さらに低減することが可能であり、さらに電気特性の優れたトランジスタを作製すること
ができる。
【0152】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0153】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と比較して、酸化物半導体膜の欠陥量をさらに低減す
ることが可能なトランジスタを有する半導体装置について図面を参照して説明する。本実
施の形態で説明するトランジスタは、実施の形態1と比較して、酸化物半導体膜が積層さ
れた多層膜を有する点が異なる。
【0154】
図7に、半導体装置が有するトランジスタ60の上面図及び断面図を示す。図7(A)
はトランジスタ60の上面図であり、図7(B)は、図7(A)の一点鎖線A-B間の断
面図であり、図7(C)は、図7(A)の一点鎖線C-D間の断面図である。なお、図7
(A)では、明瞭化のため、基板11、ゲート絶縁膜17、酸化物絶縁膜23、酸化物絶
縁膜24、窒化物絶縁膜25などを省略している。
【0155】
図7(A)乃至図7(C)に示すトランジスタ60は、基板11上に設けられるゲート
電極15と、ゲート絶縁膜17と、ゲート絶縁膜17を介して、ゲート電極15と重なる
多層膜20と、多層膜20に接する一対の電極21、22と、ゲート絶縁膜17、多層膜
20、及び一対の電極21、22上の保護膜26と、保護膜26上のゲート電極29と、
を有する。保護膜26は、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25
を有する。保護膜26はゲート絶縁膜として機能する。
【0156】
本実施の形態に示すトランジスタ60において、多層膜20は、酸化物半導体膜18及
び酸化物半導体膜19を有する。即ち、多層膜20は2層構造である。また、酸化物半導
体膜18の一部がチャネル領域として機能する。また、多層膜20に接するように、酸化
物絶縁膜23が形成されている。酸化物半導体膜18と酸化物絶縁膜23との間に、酸化
物半導体膜19が設けられている。また、酸化物絶縁膜23に接するように酸化物絶縁膜
24が形成されている。
【0157】
酸化物半導体膜19は、酸化物半導体膜18を構成する元素の一種以上から構成される
酸化物膜である。このため、酸化物半導体膜18と酸化物半導体膜19との界面において
、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されないた
め、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。
【0158】
酸化物半導体膜19は、代表的には、In-Ga酸化物膜、In-Zn酸化物膜、In
-M-Zn酸化物膜(MはAl、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)であり、且
つ酸化物半導体膜18よりも伝導帯の下端のエネルギーが真空準位に近く、代表的には、
酸化物半導体膜19の伝導帯の下端のエネルギーと、酸化物半導体膜18の伝導帯の下端
のエネルギーとの差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または
0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以
下である。即ち、酸化物半導体膜19の電子親和力と、酸化物半導体膜18の電子親和力
との差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.15eV
以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下である。
【0159】
酸化物半導体膜19は、Inを含むことで、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる
ため好ましい。
【0160】
酸化物半導体膜19として、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNdをInよ
り高い原子数比で有することで、以下の効果を有する場合がある。(1)酸化物半導体膜
19のエネルギーギャップを大きくする。(2)酸化物半導体膜19の電子親和力を小さ
くする。(3)外部からの不純物を遮蔽する。(4)酸化物半導体膜18と比較して、絶
縁性が高くなる。(5)Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNdは、酸素との結
合力が強い金属元素であるため、酸素欠損が生じにくくなる。
【0161】
酸化物半導体膜19がIn-M-Zn酸化物膜であるとき、InおよびMの和を100
atomic%としたとき、InとMの原子数比率は、Inが50atomic%未満及
びMが50atomic%以上、または、Inが25atomic%未満及びMが75a
tomic%以上とする。
【0162】
また、酸化物半導体膜18及び酸化物半導体膜19が、In-M-Zn酸化物膜(Mは
Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜18と比較し
て、酸化物半導体膜19に含まれるM(Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd
)の原子数比が大きく、代表的には、酸化物半導体膜18に含まれる上記原子と比較して
、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上高い原子数比である。
【0163】
また、酸化物半導体膜18及び酸化物半導体膜19が、In-M-Zn酸化物膜(Mは
Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜19をIn:
M:Zn=x:y:z[原子数比]、酸化物半導体膜18をIn:M:Zn=x
:y:z[原子数比]とすると、y/xがy/xよりも大きく、または、y
/xがy/xよりも1.5倍以上である。または、y/xがy/xより
も2倍以上大きく、または、y/xがy/xよりも3倍以上大きい。このとき、
酸化物半導体膜において、yがx以上であると、当該酸化物半導体膜を用いたトラン
ジスタに安定した電気特性を付与できるため好ましい。
【0164】
酸化物半導体膜18がIn-M-Zn酸化物膜(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、
Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜18を成膜するために用いるターゲットにお
いて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x:y:zとすると/y
、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z/yは、1/3以上6以下
、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z/yを1以上6以下とする
ことで、酸化物半導体膜18としてCAAC-OS膜が形成されやすくなる。ターゲット
の金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn
=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2等がある。
【0165】
酸化物半導体膜19がIn-M-Zn酸化物膜(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、
Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜19を成膜するために用いるターゲットにお
いて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x:y:zとすると/y
/yであって、z/yは、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であるこ
とが好ましい。なお、z/yを1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜19とし
てCAAC-OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例と
しては、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=
1:3:6、In:M:Zn=1:3:8等がある。
【0166】
なお、酸化物半導体膜18及び酸化物半導体膜19の原子数比はそれぞれ、誤差として
上記の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0167】
酸化物半導体膜19は、後に形成する酸化物絶縁膜24を形成する際の、酸化物半導体
膜18へのダメージ緩和膜としても機能する。
【0168】
酸化物半導体膜19の厚さは、3nm以上100nm以下、または3nm以上50nm
とする。
【0169】
また、酸化物半導体膜19は、酸化物半導体膜18と同様に、例えば非単結晶構造でも
よい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC-OS、多結晶構造、後述する微結晶
構造、または非晶質構造を含む。
【0170】
酸化物半導体膜19は、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の酸化物半導体膜は、
例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物膜
は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
【0171】
なお、酸化物半導体膜18及び酸化物半導体膜19それぞれにおいて、非晶質構造の領
域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、及び単結晶構造の領
域の二種以上を有する混合膜を構成してもよい。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、
微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のいず
れか二種以上の領域を有する単層構造の場合がある。また、混合膜は、例えば、非晶質構
造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の
領域のいずれか二種以上が積層した積層構造を有する場合がある。
【0172】
ここでは、酸化物半導体膜18及び酸化物絶縁膜23の間に、酸化物半導体膜19が設
けられている。このため、酸化物半導体膜19と酸化物絶縁膜23の間において、不純物
及び欠陥によりトラップ準位が形成されても、当該トラップ準位と酸化物半導体膜18と
の間には隔たりがある。この結果、酸化物半導体膜18を流れる電子がトラップ準位に捕
獲されにくく、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると共に、電界効果
移動度を高めることができる。また、トラップ準位に電子が捕獲されると、該電子がマイ
ナスの固定電荷となってしまう。この結果、トランジスタのしきい値電圧が変動してしま
う。しかしながら、酸化物半導体膜18とトラップ準位との間に隔たりがあるため、トラ
ップ準位における電子の捕獲を低減することが可能であり、しきい値電圧の変動を低減す
ることができる。
【0173】
また、酸化物半導体膜19は、外部からの不純物を遮蔽することが可能であるため、外
部から酸化物半導体膜18へ移動する不純物量を低減することが可能である。また、酸化
物半導体膜19は、酸素欠損を形成しにくい。これらのため、酸化物半導体膜18におけ
る不純物濃度及び酸素欠損量を低減することが可能である。
【0174】
なお、酸化物半導体膜18及び酸化物半導体膜19は、各膜を単に積層するのではなく
連続接合(ここでは特に伝導帯の下端のエネルギーが各膜の間で連続的に変化する構造)
が形成されるように作製する。すなわち、各膜の界面にトラップ中心や再結合中心のよう
な欠陥準位を形成する不純物が存在しないような積層構造とする。仮に、積層された酸化
物半導体膜18及び酸化物半導体膜19の間に不純物が混在していると、エネルギーバン
ドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップされ、あるいは再結合して、消滅してし
まう。
【0175】
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装
置(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層するこ
とが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体膜にとって
不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポン
プを用いて高真空排気(5×10-7Pa乃至1×10-4Pa程度まで)することが好
ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャン
バー内に気体、特に炭素または水素を含む気体が逆流しないようにしておくことが好まし
い。
【0176】
なお、多層膜20の代わりに、図7(D)に示すトランジスタ65のように、多層膜3
4を有してもよい。
【0177】
多層膜34は、酸化物半導体膜31、酸化物半導体膜18、及び酸化物半導体膜19を
有する。即ち、多層膜34は3層構造である。また、酸化物半導体膜18がチャネル領域
として機能する。
【0178】
また、ゲート絶縁膜17及び酸化物半導体膜31が接する。即ち、ゲート絶縁膜17と
酸化物半導体膜18との間に、酸化物半導体膜31が設けられている。
【0179】
また、多層膜34及び酸化物絶縁膜23が接する。また、酸化物半導体膜19及び酸化
物絶縁膜23が接する。即ち、酸化物半導体膜18と酸化物絶縁膜23との間に、酸化物
半導体膜19が設けられている。
【0180】
酸化物半導体膜31は、酸化物半導体膜19と同様の材料及び形成方法を適宜用いるこ
とができる。
【0181】
酸化物半導体膜31は、酸化物半導体膜18より膜厚が小さいと好ましい。酸化物半導
体膜31の厚さを1nm以上5nm以下、または1nm以上3nm以下とすることで、ト
ランジスタのしきい値電圧の変動量を低減することが可能である。
【0182】
本実施の形態に示すトランジスタは、酸化物半導体膜18及び酸化物絶縁膜23の間に
、酸化物半導体膜19が設けられている。このため、酸化物半導体膜19と酸化物絶縁膜
23の間において、不純物及び欠陥によりトラップ準位が形成されても、当該トラップ準
位と酸化物半導体膜18との間には隔たりがある。この結果、酸化物半導体膜18を流れ
る電子がトラップ準位に捕獲されにくく、トランジスタのオン電流を増大させることが可
能であると共に、電界効果移動度を高めることができる。また、トラップ準位に電子が捕
獲されると、該電子がマイナスの固定電荷となってしまう。この結果、トランジスタのし
きい値電圧が変動してしまう。しかしながら、酸化物半導体膜18とトラップ準位との間
に隔たりがあるため、トラップ準位における電子の捕獲を低減することが可能であり、し
きい値電圧の変動を低減することができる。
【0183】
また、酸化物半導体膜19は、外部からの不純物を遮蔽することが可能であるため、外
部から酸化物半導体膜18へ移動する不純物量を低減することが可能である。また、酸化
物半導体膜19は、酸素欠損を形成しにくい。これらのため、酸化物半導体膜18におけ
る不純物濃度及び酸素欠損量を低減することが可能である。
【0184】
また、ゲート絶縁膜17と酸化物半導体膜18との間に、酸化物半導体膜31が設けら
れており、酸化物半導体膜18と酸化物絶縁膜23との間に、酸化物半導体膜19が設け
られているため、酸化物半導体膜31と酸化物半導体膜18との界面近傍におけるシリコ
ンや炭素の濃度、酸化物半導体膜18におけるシリコンや炭素の濃度、または酸化物半導
体膜19と酸化物半導体膜18との界面近傍におけるシリコンや炭素の濃度を低減するこ
とができる。これらの結果、多層膜34において、一定光電流測定法で導出される吸収係
数は、1×10-3/cm未満、または1×10-4/cm未満となり、局在準位が極め
て少ない。
【0185】
このような構造を有するトランジスタ65は、酸化物半導体膜18を含む多層膜34に
おいて欠陥が極めて少ないため、トランジスタの電気特性を向上させることが可能であり
、代表的には、オン電流の増大及び電界効果移動度の向上が可能である。また、ストレス
試験の一例であるBTストレス試験及び光BTストレス試験におけるしきい値電圧の変動
量が少なく、信頼性が高い。
【0186】
<トランジスタのバンド構造>
次に、図7(A)に示すトランジスタ60に設けられる多層膜20、及び図7(D)に
示すトランジスタ65に設けられる多層膜34のバンド構造について、図8を用いて説明
する。
【0187】
ここでは、例として、酸化物半導体膜18としてエネルギーギャップが3.15eVで
あるIn-Ga-Zn酸化物を用い、酸化物半導体膜19としてエネルギーギャップが3
.5eVであるIn-Ga-Zn酸化物を用いる。エネルギーギャップは、分光エリプソ
メータ(HORIBA JOBIN YVON社 UT-300)を用いて測定すること
ができる。
【0188】
酸化物半導体膜18及び酸化物半導体膜19の真空準位と価電子帯上端のエネルギー差
(イオン化ポテンシャルともいう。)は、それぞれ8eV及び8.2eVであった。なお
、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultr
aviolet Photoelectron Spectroscopy)装置(PH
I社 VersaProbe)を用いて測定することができる。
【0189】
したがって、酸化物半導体膜18及び酸化物半導体膜19の真空準位と伝導帯下端のエ
ネルギー差(電子親和力ともいう。)は、それぞれ4.85eV及び4.7eVである。
【0190】
図8(A)は、多層膜20のバンド構造の一部を模式的に示している。ここでは、多層
膜20に酸化シリコン膜を接して設けた場合について説明する。なお、図8(A)に表す
EcI1は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物半導体膜
18の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS2は酸化物半導体膜19の伝導帯下端のエ
ネルギーを示し、EcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示す。また、E
cI1は、図7(B)において、ゲート絶縁膜17に相当し、EcI2は、図7(B)に
おいて、酸化物絶縁膜23に相当する。
【0191】
図8(A)に示すように、酸化物半導体膜18及び酸化物半導体膜19において、伝導
帯下端のエネルギーは障壁が無くなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化すると
もいうことができる。これは、多層膜20は、酸化物半導体膜18と共通の元素を含み、
酸化物半導体膜18及び酸化物半導体膜19の間で、酸素が相互に移動することで混合層
が形成されるためであるということができる。
【0192】
図8(A)より、多層膜20の酸化物半導体膜18がウェル(井戸)となり、多層膜2
0を用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が酸化物半導体膜18に形成されること
がわかる。なお、多層膜20は、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているため、
酸化物半導体膜18と酸化物半導体膜19とが連続接合している、ともいえる。
【0193】
なお、図8(A)に示すように、酸化物半導体膜19と、酸化物絶縁膜23との界面近
傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得るものの、酸化物半導体膜1
9が設けられることにより、酸化物半導体膜18と該トラップ準位とを遠ざけることがで
きる。ただし、EcS1とEcS2とのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体膜18
の電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。トラップ準位に電子
が捕獲されることで、酸化物絶縁膜界面にマイナスの電荷が生じ、トランジスタのしきい
値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。したがって、EcS1とEcS2とのエネルギ
ー差を、0.1eV以上、または0.15eV以上とすると、トランジスタのしきい値電
圧の変動が低減され、安定した電気特性となるため好適である。
【0194】
また、図8(B)は、多層膜20のバンド構造の一部を模式的に示し、図8(A)に示
すバンド構造の変形例である。ここでは、多層膜20に酸化シリコン膜を接して設けた場
合について説明する。なお、図8(B)に表すEcI1は酸化シリコン膜の伝導帯下端の
エネルギーを示し、EcS1は酸化物半導体膜18の伝導帯下端のエネルギーを示し、E
cI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示す。また、EcI1は、図7(B
)において、ゲート絶縁膜17に相当し、EcI2は、図7(B)において、酸化物絶縁
膜23に相当する。
【0195】
図7(B)に示すトランジスタにおいて、一対の電極21、22の形成時に多層膜20
の上方、すなわち酸化物半導体膜19がエッチングされる場合がある。一方、酸化物半導
体膜18の上面は、酸化物半導体膜19の成膜時に酸化物半導体膜18と酸化物半導体膜
19の混合層が形成される場合がある。
【0196】
例えば、酸化物半導体膜18が、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn-
Ga-Zn酸化物、またはIn:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]のIn-Ga-Z
n酸化物をスパッタリングターゲットに用いて成膜された酸化物半導体膜であり、酸化物
半導体膜19が、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物
、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、またはIn:
Ga:Zn=1:3:6[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物をスパッタリングターゲ
ットに用いて成膜された酸化物半導体膜である場合、酸化物半導体膜18よりも酸化物半
導体膜19のGaの含有量が多いため、酸化物半導体膜18の上面には、GaOx層また
は酸化物半導体膜18よりもGaを多く含む混合層が形成されうる。
【0197】
したがって、酸化物半導体膜19がエッチングされた場合においても、EcS1のEc
I2側の伝導帯下端のエネルギーが高くなり、図8(B)に示すバンド構造のようになる
場合がある。
【0198】
図8(B)に示すバンド構造のようになる場合、チャネル領域の断面観察時において、
多層膜20は、酸化物半導体膜18のみと見かけ上観察される場合がある。しかしながら
、実質的には、酸化物半導体膜18上には、酸化物半導体膜18よりもGaを多く含む混
合層が形成されているため、該混合層を1.5層として、捉えることができる。なお、該
混合層は、例えば、EDX分析等によって、多層膜20に含有する元素を測定した場合、
酸化物半導体膜18の上方の組成を分析することで確認することができる。例えば、酸化
物半導体膜18の上方の組成が、酸化物半導体膜18中の組成よりもGaの含有量が多い
構成となることで確認することができる。
【0199】
図8(C)は、多層膜34のバンド構造の一部を模式的に示している。ここでは、多層
膜34に酸化シリコン膜を接して設けた場合について説明する。なお、図8(C)に表す
EcI1は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物半導体膜
18の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS2は酸化物半導体膜19の伝導帯下端のエ
ネルギーを示し、EcS3は酸化物半導体膜31の伝導帯下端のエネルギーを示し、Ec
I2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示す。また、EcI1は、図7(D)
において、ゲート絶縁膜17に相当し、EcI2は、図7(D)において、酸化物絶縁膜
23に相当する。
【0200】
図8(C)に示すように、酸化物半導体膜31、酸化物半導体膜18、及び酸化物半導
体膜19において、伝導帯下端のエネルギーは障壁が無くなだらかに変化する。換言する
と、連続的に変化するともいうことができる。これは、多層膜34は、酸化物半導体膜1
8と共通の元素を含み、酸化物半導体膜18及び酸化物半導体膜31の間で、酸化物半導
体膜18及び酸化物半導体膜19の間で、酸素が相互に移動することで混合層が形成され
るためであるということができる。
【0201】
図8(C)より、多層膜34の酸化物半導体膜18がウェル(井戸)となり、多層膜3
4を用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が酸化物半導体膜18に形成されること
がわかる。なお、多層膜34は、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているため、
酸化物半導体膜31と、酸化物半導体膜18と、酸化物半導体膜19とが連続接合してい
る、ともいえる。
【0202】
なお、酸化物半導体膜18と、酸化物絶縁膜23との界面近傍、酸化物半導体膜18と
、ゲート絶縁膜17との界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され
得るものの、図8(C)に示すように、酸化物半導体膜19、31が設けられることによ
り、酸化物半導体膜18と該トラップ準位とを遠ざけることができる。ただし、EcS1
とEcS2とのエネルギー差、及びEcS1とEcS3とのエネルギー差が小さい場合、
酸化物半導体膜18の電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。
トラップ準位に電子が捕獲されることで、酸化物絶縁膜界面にマイナスの電荷が生じ、ト
ランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。したがって、EcS1とE
cS2とのエネルギー差、及びEcS1とEcS3とのエネルギー差を、0.1eV以上
、または0.15eV以上とすると、トランジスタのしきい値電圧の変動が低減され、安
定した電気特性となるため好適である。
【0203】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態に示す構成及び方法な
どと適宜組み合わせて用いることができる。
【0204】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2に示すデュアルゲート構造のトランジスタにおいて、
異なるゲート電極を接続し、同電位とした場合のトランジスタの電気特性について、図7
、及び図26乃至図31を用いて説明する。
【0205】
なお、ここでは、図7に示すゲート電極15と、ゲート電極29とを、電気的に短絡さ
せてゲート電圧を加えるような駆動方法を、Dual Gate駆動という。即ち、Du
al Gate駆動では、常にゲート電極15の電圧と、ゲート電極29の電圧とが等し
くなる。
【0206】
ここで、トランジスタの電気特性について計算した。図26に計算で用いたトランジス
タの構造を示す。なお、計算にはデバイスシミュレーションソフト Atlas(Sil
vaco社製)を用いた。
【0207】
図26(A)に示す構造1のトランジスタは、デュアルゲート構造のトランジスタであ
る。
【0208】
構造1のトランジスタは、ゲート電極201上に絶縁膜203が形成され、絶縁膜20
3上に酸化物半導体膜205が形成される。絶縁膜203及び酸化物半導体膜205上に
一対の電極207、208が形成され、酸化物半導体膜205及び一対の電極207、2
08上に絶縁膜209が形成される。絶縁膜209上にゲート電極213が形成される。
また、ゲート電極201及びゲート電極213は、絶縁膜203及び絶縁膜209に形成
される開口部(図示しない。)において、接続される。
【0209】
図26(B)に示す構造2のトランジスタはシングルゲート構造のトランジスタである
【0210】
構造2のトランジスタは、ゲート電極201上に絶縁膜203が形成され、絶縁膜20
3上に酸化物半導体膜205が形成される。絶縁膜203及び酸化物半導体膜205上に
一対の電極207、208が形成され、酸化物半導体膜205及び一対の電極207、2
08上に絶縁膜209が形成される。
【0211】
なお、計算において、ゲート電極201の仕事関数φを5.0eVと設定した。絶縁
膜203を、誘電率が4.1である厚さ100nmの膜と設定した。酸化物半導体膜20
5としてはIn-Ga-Zn酸化物膜(In:Ga:Zn=1:1:1)単層を想定し、
In-Ga-Zn酸化物膜のバンドギャップEを3.15eV、電子親和力χを4.6
eV、比誘電率を15、電子移動度を10cm/Vsとし、ドナー密度Nを3×10
17atoms/cmと設定した。一対の電極207、208の仕事関数φsdを4.
6eVとし、酸化物半導体膜205とオーミック接合と設定した。絶縁膜209の比誘電
率を4.1とし、厚さを100nmと設定した。なお、酸化物半導体膜205における欠
陥準位や表面散乱などのモデルは考慮していない。また、トランジスタのチャネル長及び
チャネル幅をそれぞれ10μm及び100μmとした。
【0212】
<初期特性バラつきの低減>
構造1に示すトランジスタのようにDual Gate駆動とすることで、初期特性の
バラつきを低減することができる。これは、Dual Gate駆動とすることで、Id
-Vg特性のしきい値電圧Vthの変動量が、構造2に示すトランジスタに比べて小さく
なることに起因する。
【0213】
ここで、一例として、半導体膜がn型化したことによるId-Vg特性のマイナスシフ
トについて説明する。
【0214】
ドナーイオンの電荷量の合計をQ(C)とし、ゲート電極201、絶縁膜203、及び
酸化物半導体膜205で形成される容量をCBottomとし、酸化物半導体膜205、
絶縁膜209、及びゲート電極213で形成される容量をCTopとする。このとき、構
造1に示すトランジスタのVthの変動量ΔVを数式(2)に示す。また、構造2に示す
トランジスタのVthの変動量ΔVを数式(3)に示す。
【0215】
【数2】
【0216】
【数3】
【0217】
数式(2)に示すように、構造1に示すトランジスタのようなDual Gate駆動
では、ドナーイオンとゲート電極の間の容量が、CBottom、及びCTopの和とな
るため、しきい値電圧の変動量が小さくなる。
【0218】
また、構造1及び構造2のトランジスタそれぞれにおいて、ドレイン電圧が0.1V及
び1Vのときの電流電圧曲線を計算した結果を図27に示す。なお、図27(A)は、構
造1に示すトランジスタの電流電圧曲線であり、図27(B)は、構造2に示すトランジ
スタの電流電圧曲線である。ドレイン電圧Vdが0.1Vのとき、構造1に示すトランジ
スタのしきい値電圧は-2.26Vであり、構造2に示すトランジスタのしきい値電圧は
-4.73Vであった。
【0219】
構造1に示すトランジスタのように、Dual Gate駆動を採用すると、しきい値
電圧の変動量が低減される。このため、複数のトランジスタにおける電気特性のバラつき
も同時に低減される。
【0220】
なお、ここではドナーイオンによるしきい値電圧のマイナスシフトを考慮したが、絶縁
膜203及び絶縁膜209中の固定電荷、可動電荷、あるいは負の電荷(アクセプターラ
イクな準位にトラップされた電子など)によるしきい値電圧のプラスシフトも同様に抑制
されるため、バラつきが低減すると考えられる。
【0221】
<-GBTストレス試験の劣化の抑制>
また、構造1に示すトランジスタのようにDual Gate駆動とすることで、-G
BTストレス試験の劣化を低減することができる。以下に、-GBTストレス試験の劣化
を低減することができる理由について説明する。
【0222】
一つ目の理由としては、Dual Gate駆動とすることで、静電ストレスが生じな
い点がある。図28(A)に、構造1のトランジスタにおいて、ゲート電極201及びゲ
ート電極213それぞれに-30Vを印加したときの、ポテンシャル等高線をプロットし
た図を示す。また、図28(B)に、図28(A)のA-B断面におけるポテンシャルを
示す。
【0223】
酸化物半導体膜205は真性半導体であり、ゲート電極201、213に負の電圧が印
加され、完全空乏化した時は、ゲート電極201、213の間には、一切の電荷が存在し
ない。この状態で、ゲート電極201及びゲート電極213を等電位にすると、図28
B)に示すように、ゲート電極201及びゲート電極213の間は完全に等電位となる。
電位が等しいため、絶縁膜203、酸化物半導体膜205、及び絶縁膜209に静電スト
レスは生じない。この結果、可動イオンや、絶縁膜203及び絶縁膜209におけるキャ
リアのトラップ・デトラップなど、-GBTストレス試験の劣化の原因となる現象が発生
しない。
【0224】
二つ目の理由としては、Dual Gate駆動とすることで、FETの外部からの電
場が遮蔽されることである。ここでは、図26(A)に示す構造1のトランジスタ、及び
図26(B)に示す構造2のトランジスタそれぞれにおいて、絶縁膜209またはゲート
電極213上に空気中の荷電粒子が吸着するモデルを図29に示す。
【0225】
図29(B)に示すように、構造2に示すトランジスタにおいては、絶縁膜209表面
に空気中の正の荷電粒子が吸着する。ゲート電極201に負の電圧が印加されると、正の
荷電粒子が絶縁膜209に吸着される。この結果、図29(B)の矢印で示すように、正
の荷電粒子の電場が酸化物半導体膜205の絶縁膜209の界面まで影響し、実質的に正
のバイアスが印加された状態となる。この結果、しきい値電圧が負にシフトすると考えら
れる。
【0226】
一方、図29(A)に示すように、構造1に示すトランジスタにおいては、ゲート電極
213表面に、正の荷電粒子が付着したとしても、図29(A)の矢印で示すように、ゲ
ート電極213が正の荷電粒子の電場を遮蔽するため、トランジスタの電気特性に正の荷
電粒子が影響しない。即ち、ゲート電極213を有すると、外部からの電荷から、トラン
ジスタを電気的に保護することが可能であり、-GBTストレス試験の劣化が抑制される
【0227】
以上の、二つの理由からDual Gate駆動のトランジスタにおいて、-GBTス
トレス試験の劣化が抑制される。
【0228】
<異なるドレイン電圧におけるオン電流の立ち上がり電圧の変動の抑制>
ここで、構造2とした場合の、異なるドレイン電圧におけるオン電流の立ち上がり電圧
の変動、及びその原因について説明する。
【0229】
図30に示すトランジスタは、ゲート電極231上にゲート絶縁膜233が設けられ、
ゲート絶縁膜233上に酸化物半導体膜235が設けられる。酸化物半導体膜235上に
一対の電極237、238が設けられ、ゲート絶縁膜233、酸化物半導体膜235、及
び一対の電極237、238上に、絶縁膜239が設けられる。
【0230】
なお、計算において、ゲート電極231の仕事関数φを5.0eVと設定した。ゲー
ト絶縁膜233を、誘電率が7.5である厚さ400nmの膜と、誘電率が4.1である
厚さ50nmの膜の積層構造と設定した。酸化物半導体膜235としてはIn-Ga-Z
n酸化物膜(In:Ga:Zn=1:1:1)単層を想定し、In-Ga-Zn酸化物膜
のバンドギャップEを3.15eV、電子親和力χを4.6eV、比誘電率を15、電
子移動度を10cm/Vsとし、ドナー密度Nは1×1013/cmと設定した。
一対の電極237、238の仕事関数φsdを4.6eVとし、酸化物半導体膜235と
オーミック接合と設定した。絶縁膜239の比誘電率を3.9とし、厚さを550nmと
設定した。なお、酸化物半導体膜235における欠陥準位や表面散乱などのモデルは考慮
していない。また、トランジスタのチャネル長及びチャネル幅をそれぞれ3μm及び50
μmとした。
【0231】
次に、図30(A)に示すトランジスタにおいて、絶縁膜239表面に正の荷電粒子が
吸着したトランジスタのモデルを図30(B)及び図30(C)に示す。なお、図30
B)においては、絶縁膜239の表面に正の固定電荷を一様に仮定した構造であり、図3
0(C)においては、絶縁膜239の表面に正の固定電荷を部分的に仮定した構造である
【0232】
図30(A)乃至図30(C)に示すトランジスタの電気特性を計算した結果を図31
(A)乃至図31(C)に示す。
【0233】
図31(A)に示すように、図30(A)に示すトランジスタの絶縁膜239に正の固
定電荷を仮定しない場合において、ドレイン電圧(Vd)が1V及び10V、それぞれの
立ち上がり電圧が略一致している。
【0234】
一方、図31(B)に示すように、図30(B)に示すトランジスタの絶縁膜239に
正の固定電荷を一様に仮定した場合は、しきい値電圧がマイナスシフトしている。一方、
ドレイン電圧(Vd)が1V及び10V、それぞれの立ち上がり電圧が略一致している。
【0235】
また、図31(C)に示すように、図30(C)に示すトランジスタの絶縁膜239に
正の固定電荷を部分的に仮定した場合は、ドレイン電圧(Vd)が1V及び10V、それ
ぞれの立ち上がり電圧が異なっている。
【0236】
一方、構造1に示すトランジスタにおいては、ゲート電極213が設けられているため
、上記<-GBTストレス試験の劣化の抑制>で説明したように、ゲート電極213が外
部の荷電粒子の電場を遮蔽するため、トランジスタの電気特性に荷電粒子が影響しない。
即ち、ゲート電極213を有すると、外部からの電荷から、トランジスタを電気的に保護
することが可能であり、異なるドレイン電圧におけるオン電流の立ち上がり電圧の変動を
抑制することができる。
【0237】
以上のことから、デュアルゲート構造とし、各ゲート電極に任意の電圧を印加すること
で、-GBTストレス試験の劣化の抑制及び異なるドレイン電圧におけるオン電流の立ち
上がり電圧の変動の抑制が可能である。また、デュアルゲート構造とし、各ゲート電極に
同電位の電圧を印加することで、初期特性バラつきの低減、-GBTストレス試験の劣化
の抑制及び異なるドレイン電圧におけるオン電流の立ち上がり電圧の変動の抑制が可能で
ある。
【0238】
<チャネル幅方向におけるゲート電極の端部と酸化物半導体膜の端部との距離と、しきい
値電圧の変動量について>
図32に、構造1に示すトランジスタのチャネル幅方向の断面模式図を示す。なお、図
32に示すトランジスタの断面模式図における各構成は、図26(A)に示す構造1の各
構成と縮尺が異なる。
【0239】
ここで、構造1に示すトランジスタのチャネル幅方向において、ゲート電極201とゲ
ート電極213が酸化物半導体膜205よりも、チャネル幅方向にtだけはみ出してい
るものの、酸化物半導体膜205の側面に対向するゲート電極が無い構造を構造3とする
図32(A)参照。)。
【0240】
このとき、構造3に示すトランジスタをDual Gate駆動したときの、電荷量Q
(C/m)によるVthの変動量ΔVは数式(4)のようになる。
【0241】
【数4】
【0242】
なお、トランジスタにおけるVthの変動量が数式(4)で表せる状況は、酸化物半導
体膜205の側面における電荷がVthのシフトを引き起こす主要因である場合に限る。
例えば、ゲート電極201あるいはゲート電極213が酸化物半導体膜205からチャネ
ル幅方向にはみ出していないときに、酸化物半導体膜205の側面おけるドナーイオンの
電荷により寄生チャネルが形成される場合がある。これに対し、構造3の場合は、数式(
4)にしたがって、電荷の影響が抑制される。
【0243】
以上では、電荷の起源として、特に酸化物半導体膜205の側面におけるドナーイオン
を想定したが、絶縁膜、絶縁膜界面、あるいは酸化物半導体膜における固定電荷、あるい
はトラップ準位に捉えられた電子やホールであっても、それらがVthのシフトを引き起
こす主要因である場合には同様の議論が成り立つ。
【0244】
構造3をより一般化した場合として、ゲート電極201とゲート電極213が酸化物半
導体膜205よりも、チャネル幅方向にそれぞれX、Xだけはみ出している構造4を
考える(図32(B)参照。)。このとき、CBottomとCTopは、それぞれ数式
(5)と数式(6)のように書き換えられる。
【0245】
【数5】
【0246】
【数6】
【0247】
、Xを変化させたときに、数式(5)と数式(6)は、それぞれX=t+t
os、X=t+tosで数式(7)に示す最大値CBottom Maxと数式(8)
に示すCTop Maxを取る。
【0248】
【数7】
【0249】
【数8】
【0250】
したがって、数式(4)に基づいてVthの変動量を最も小さくするには、X=t
+tos、X=t+tosとすれば良い。
【0251】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態に示す構成及び方法な
どと適宜組み合わせて用いることができる。
【0252】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置について、図面を用いて説明する
。なお、本実施の形態では、表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を説明
する。
【0253】
図9(A)に、半導体装置の一例を示す。図9(A)に示す半導体装置は、画素部10
1と、走査線駆動回路104と、信号線駆動回路106と、各々が平行または略平行に配
設され、且つ走査線駆動回路104によって電位が制御されるm本の走査線107と、各
々が平行または略平行に配設され、且つ信号線駆動回路106によって電位が制御される
n本の信号線109と、を有する。さらに、画素部101はマトリクス状に配設された複
数の画素100を有する。また、信号線109に沿って、各々が平行または略平行に配設
された容量線115を有する。なお、容量線115は、走査線107に沿って、各々が平
行または略平行に配設されていてもよい。また、走査線駆動回路104及び信号線駆動回
路106をまとめて駆動回路部という場合がある。
【0254】
各走査線107は、画素部101においてm行n列に配設された画素100のうち、い
ずれかの行に配設されたn個の画素100と電気的に接続される。また、各信号線109
は、m行n列に配設された画素100のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素10
0に電気的と接続される。m、nは、ともに1以上の整数である。また、各容量線115
は、m行n列に配設された画素100のうち、いずれかの行に配設されたn個の画素10
0と電気的に接続される。なお、容量線115が、信号線109に沿って、各々が平行ま
たは略平行に配設されている場合は、m行n列に配設された画素100のうち、いずれか
の列に配設されたm個の画素100に電気的と接続される。
【0255】
図9(B)、(C)は、図9(A)に示す表示装置の画素100に用いることができる
回路構成の一例を示している。
【0256】
図9(B)に示す画素100は、液晶素子121と、トランジスタ103と、容量素子
105と、を有する。
【0257】
液晶素子121の一対の電極の一方の電位は、画素100の仕様に応じて適宜設定され
る。液晶素子121は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。また、複数の
画素100のそれぞれが有する液晶素子121の一対の電極の一方に共通の電位(コモン
電位)を与えてもよい。また、各行の画素100毎の液晶素子121の一対の電極の一方
に異なる電位を与えてもよい。
【0258】
なお、液晶素子121は、液晶の光学的変調作用によって光の透過または非透過を制御
する素子である。なお、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦
方向の電界又は斜め方向の電界を含む)によって制御される。なお、液晶素子121とし
ては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、サーモトロピック液晶
、ライオトロピック液晶、強誘電液晶、反強誘電液晶等が挙げられる。
【0259】
液晶素子121を有する表示装置の駆動方法としては、例えば、TNモード、VAモー
ド、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro-ce
ll)モード、OCB(Optically Compensated Birefri
ngence)モード、MVAモード、PVA(Patterned Vertical
Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、またはTBA(Tran
sverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。ただし、こ
れに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様々なものを用いることができる。
【0260】
また、ブルー相(Blue Phase)を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物
により液晶素子を構成してもよい。ブルー相を示す液晶は、応答速度が1msec以下と
短く、光学的等方性であるため、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0261】
図9(B)に示す画素100の構成において、トランジスタ103のソース電極及びド
レイン電極の一方は、信号線109に電気的に接続され、他方は液晶素子121の一対の
電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ103のゲート電極は、走査線1
07に電気的に接続される。トランジスタ103は、オン状態またはオフ状態になること
により、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0262】
図9(B)に示す画素100の構成において、容量素子105の一対の電極の一方は、
電位が供給される容量線115に電気的に接続され、他方は、液晶素子121の一対の電
極の他方に電気的に接続される。なお、容量線115の電位の値は、画素100の仕様に
応じて適宜設定される。容量素子105は、書き込まれたデータを保持する保持容量とし
ての機能を有する。
【0263】
例えば、図9(B)の画素100を有する表示装置では、走査線駆動回路104により
各行の画素100を順次選択し、トランジスタ103をオン状態にしてデータ信号のデー
タを書き込む。
【0264】
データが書き込まれた画素100は、トランジスタ103がオフ状態になることで保持
状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0265】
また、図9(C)に示す画素100は、表示素子のスイッチングを行うトランジスタ1
33と、画素の駆動を制御するトランジスタ103と、トランジスタ135と、容量素子
105と、発光素子131と、を有する。
【0266】
トランジスタ133のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる
信号線109に電気的に接続される。さらに、トランジスタ103のゲート電極は、ゲー
ト信号が与えられる走査線107に電気的に接続される。
【0267】
トランジスタ133は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデー
タの書き込みを制御する機能を有する。
【0268】
トランジスタ103のソース電極及びドレイン電極の一方は、アノード線として機能す
る配線137と電気的に接続され、トランジスタ103のソース電極及びドレイン電極の
他方は、発光素子131の一方の電極に電気的に接続される。さらに、トランジスタ10
3のゲート電極は、トランジスタ133のソース電極及びドレイン電極の他方、及び容量
素子105の一方の電極に電気的に接続される。
【0269】
トランジスタ103は、オン状態またはオフ状態になることにより、発光素子131に
流れる電流を制御する機能を有する。
【0270】
トランジスタ135のソース電極及びドレイン電極の一方はデータの基準電位が与えら
れる配線139と接続され、トランジスタ135のソース電極及びドレイン電極の他方は
、発光素子131の一方の電極、及び容量素子105の他方の電極に電気的に接続される
。さらに、トランジスタ135のゲート電極は、ゲート信号が与えられる走査線107に
電気的に接続される。
【0271】
トランジスタ135は、発光素子131に流れる電流を調整する機能を有する。例えば
、発光素子131が劣化等により、発光素子131の内部抵抗が上昇した場合、トランジ
スタ135のソース電極及びドレイン電極の一方が接続された配線139に流れる電流を
モニタリングすることで、発光素子131に流れる電流を補正することができる。配線1
39に与えられる電位としては、例えば、0Vとすることができる。
【0272】
容量素子105の一対の電極の一方は、トランジスタ103のソース電極及びドレイン
電極の他方、及びトランジスタ133のゲート電極と電気的に接続され、容量素子105
の一対の電極の他方は、トランジスタ135のソース電極及びドレイン電極の他方、及び
発光素子131の一方の電極に電気的に接続される。
【0273】
図9(C)に示す画素100の構成において、容量素子105は、書き込まれたデータ
を保持する保持容量としての機能を有する。
【0274】
発光素子131の一対の電極の一方は、トランジスタ135のソース電極及びドレイン
電極の他方、容量素子105の他方の電極、及びトランジスタ103のソース電極及びド
レイン電極の他方と電気的に接続される。また、発光素子131の一対の電極の他方は、
カソードとして機能する配線141に電気的に接続される。
【0275】
発光素子131としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子とも
いう)などを用いることができる。ただし、発光素子131としては、これに限定されず
、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0276】
なお、配線137及び配線141の一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には
、低電源電位VSSが与えられる。図9(C)に示す構成においては、配線137に高電
源電位VDDを、配線141に低電源電位VSSを、それぞれ与える構成としている。
【0277】
図9(C)の画素100を有する表示装置では、走査線駆動回路104により各行の画
素100を順次選択し、トランジスタ102をオン状態にしてデータ信号のデータを書き
込む。
【0278】
データが書き込まれた画素100は、トランジスタ103がオフ状態になることで保持
状態になる。さらに、トランジスタ103は、容量素子105と接続しているため、書き
込まれたデータを長時間保持することが可能となる。また、トランジスタ133により、
ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子131は、流れる電
流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0279】
次いで、画素100に液晶素子を用いた液晶表示装置の具体的な例について説明する。
ここでは、図9(B)に示す画素100の上面図を図10に示す。なお、図10において
は、対向電極及び液晶素子を省略する。
【0280】
図10において、走査線として機能する導電膜304cは、信号線に略直交する方向(
図中左右方向)に延伸して設けられている。信号線として機能する導電膜310dは、走
査線に略直交する方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。容量線として機能す
る導電膜310fは、信号線と平行方向に延伸して設けられている。なお、走査線として
機能する導電膜304cは、走査線駆動回路104(図9(A)を参照。)と電気的に接
続されており、信号線として機能する導電膜310d及び容量線として機能する導電膜3
10fは、信号線駆動回路106(図9(A)を参照。)に電気的に接続されている。
【0281】
トランジスタ103は、走査線及び信号線が交差する領域に設けられている。トランジ
スタ103は、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜(図10に図示
せず。)、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成される酸化物半導体膜308
b、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310d、310e、酸化物半導
体膜308b上に形成された保護膜(図10に図示せず。)、及びゲート電極として機能
する導電膜316cにより構成される。なお、導電膜304cは、走査線としても機能し
、酸化物半導体膜308bと重畳する領域がトランジスタ102のゲート電極として機能
する。また、導電膜310dは、信号線としても機能し、酸化物半導体膜308bと重畳
する領域がトランジスタ102のソース電極またはドレイン電極として機能する。また、
図10において、走査線は、上面形状において端部が酸化物半導体膜308bの端部より
外側に位置する。このため、走査線はバックライトなどの光源からの光を遮る遮光膜とし
て機能する。この結果、トランジスタに含まれる酸化物半導体膜308bに光が照射され
ず、トランジスタの電気特性の変動を抑制することができる。また、ゲート電極として機
能する導電膜304c及びゲート電極として機能する導電膜316cは、開口部364c
において接続する。
【0282】
また、導電膜310eは、開口部364cにおいて、画素電極として機能する透光性を
有する導電膜316bと電気的に接続されている。
【0283】
容量素子105は、開口部362において容量線として機能する導電膜310fと接続
されている。また、容量素子105は、ゲート絶縁膜上に形成される導電性を有する膜3
08cと、トランジスタ103上に設けられる窒化物絶縁膜で形成される誘電体膜と、画
素電極として機能する透光性を有する導電膜316cと、で構成されている。導電性を有
する膜308cは透光性を有するため、容量素子105は透光性を有する。
【0284】
このように容量素子105は透光性を有するため、画素100内に容量素子105を大
きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、代表的には50%
以上、55%以上、または60%以上とすることが可能であると共に、電荷容量を増大さ
せた半導体装置を得ることができる。例えば、解像度の高い半導体装置、例えば液晶表示
装置においては、画素の面積が小さくなり、容量素子の面積も小さくなる。このため、解
像度の高い半導体装置において、容量素子に蓄積される電荷容量が小さくなる。しかしな
がら、本実施の形態に示す容量素子105は透光性を有するため、当該容量素子を画素に
設けることで、各画素において十分な電荷容量を得つつ、開口率を高めることができる。
代表的には、画素密度が200ppi以上、さらには300ppi以上、更には500p
pi以上である高解像度の半導体装置に好適に用いることができる。
【0285】
また、図10に示す画素100は、信号線として機能する導電膜310dと平行な辺と
比較して走査線として機能する導電膜304cと平行な辺の方が長い形状であり、且つ容
量線として機能する導電膜310fが、信号線として機能する導電膜310dと平行な方
向に延伸して設けられている。この結果、画素100に占める導電膜310fの面積を低
減することが可能であるため、開口率を高めることができる。また、容量線として機能す
る導電膜310fが接続電極を用いず、直接導電性を有する膜308cと接するため、さ
らに開口率を高めることができる。
【0286】
また、本発明の一態様は、高解像度の表示装置においても、開口率を高めることができ
るため、バックライトなどの光源の光を効率よく利用することができ、表示装置の消費電
力を低減することができる。
【0287】
次いで、図10の一点鎖線C-D間における断面図を図11に示す。なお、図11にお
いて、走査線駆動回路104及び信号線駆動回路106を含む駆動回路部(上面図を省略
する。)の断面図をA-Bに示す。本実施の形態においては、縦電界方式の液晶表示装置
について説明する。
【0288】
本実施の形態に示す表示装置は、一対の基板(基板302と基板342)間に液晶素子
322が挟持されている。
【0289】
液晶素子322は、基板302の上方の透光性を有する導電膜316bと、配向性を制
御する膜(以下、配向膜318、352という)と、液晶層320と、導電膜350と、
を有する。なお、透光性を有する導電膜316bは、液晶素子322の一方の電極として
機能し、導電膜350は、液晶素子322の他方の電極として機能する。
【0290】
このように、液晶表示装置とは、液晶素子を有する装置のことをいう。なお、液晶表示
装置は、複数の画素を駆動させる駆動回路等を含む。また、液晶表示装置は、別の基板上
に配置された制御回路、電源回路、信号生成回路及びバックライトモジュール等を含み、
液晶モジュールとよぶこともある。
【0291】
駆動回路部において、ゲート電極として機能する導電膜304a、ゲート絶縁膜として
機能する絶縁膜305及び絶縁膜306、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜30
8a、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310a、310bによりトラ
ンジスタ102を構成する。酸化物半導体膜308aは、ゲート絶縁膜上に設けられる。
【0292】
画素部において、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜として機能
する絶縁膜305及び絶縁膜306、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成さ
れる酸化物半導体膜308b、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310
d、310e、絶縁膜312、絶縁膜314、及びゲート電極として機能する導電膜31
6cによりトランジスタ103を構成する。酸化物半導体膜308bは、ゲート絶縁膜上
に設けられる。また、導電膜310d、310e上には、絶縁膜312、絶縁膜314が
保護膜として設けられている。
【0293】
また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bが、絶縁膜312及び絶
縁膜314に設けられた開口部において、導電膜310eと接続する。
【0294】
また、一方の電極として機能する導電性を有する膜308c、誘電体膜として機能する
絶縁膜314、他方の電極として機能する透光性を有する導電膜316bにより容量素子
105を構成する。導電性を有する膜308cは、ゲート絶縁膜上に設けられる。
【0295】
また、駆動回路部において、導電膜304a、304cと同時に形成された導電膜30
4bと、導電膜310a、310b、310d、310eと同時に形成された導電膜31
0cとは、透光性を有する導電膜316bと同時に形成された透光性を有する導電膜31
6aで接続される。
【0296】
導電膜304b及び透光性を有する導電膜316aは、絶縁膜306及び絶縁膜312
に設けられた開口部において接続する。また、導電膜310cと透光性を有する導電膜3
16aは、絶縁膜312及び絶縁膜314に設けられた開口部において接続する。
【0297】
ここで、図11に示す表示装置の構成要素について、以下に説明する。
【0298】
基板302上には、導電膜304a、304b、304cが形成されている。導電膜3
04aは、駆動回路部のトランジスタのゲート電極としての機能を有する。また、導電膜
304cは、画素部101に形成され、画素部のトランジスタのゲート電極として機能す
る。また、導電膜304bは、走査線駆動回路104に形成され、導電膜310cと接続
する。
【0299】
基板302は、実施の形態1に示す基板11の材料を適宜用いることができる。
【0300】
導電膜304a、304b、304cとしては、実施の形態1に示すゲート電極15の
材料及び作製方法を適宜用いることができる。
【0301】
基板302、及び導電膜304a、304c、304b上には、絶縁膜305、絶縁膜
306が形成されている。絶縁膜305、絶縁膜306は、駆動回路部のトランジスタの
ゲート絶縁膜、及び画素部101のトランジスタのゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0302】
絶縁膜305としては、実施の形態1に示すゲート絶縁膜17で説明した窒化物絶縁膜
を用いて形成することが好ましい。絶縁膜306としては、実施の形態1に示すゲート絶
縁膜17で説明した酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。
【0303】
絶縁膜306上には、酸化物半導体膜308a、308b、導電性を有する膜308c
が形成されている。酸化物半導体膜308aは、導電膜304aと重畳する位置に形成さ
れ、駆動回路部のトランジスタのチャネル領域として機能する。また、酸化物半導体膜3
08bは、導電膜304cと重畳する位置に形成され、画素部のトランジスタのチャネル
領域として機能する。導電性を有する膜308cは、容量素子105の一方の電極として
機能する。
【0304】
酸化物半導体膜308a、308b、及び導電性を有する膜308cは、実施の形態1
に示す酸化物半導体膜18の材料及び作製方法を適宜用いることができる。
【0305】
導電性を有する膜308cは、酸化物半導体膜308a、308bと同様に、酸化物半
導体膜であり、且つ不純物が含まれていることを特徴とする。不純物としては、水素があ
る。なお、水素の代わりに不純物として、ホウ素、リン、スズ、アンチモン、希ガス元素
、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が含まれていてもよい。
【0306】
酸化物半導体膜308a、308b、及び導電性を有する膜308cは共に、ゲート絶
縁膜上に形成されるが、不純物濃度が異なる。具体的には、酸化物半導体膜308a、3
08bと比較して、導電性を有する膜308cの不純物濃度が高い。例えば、酸化物半導
体膜308a、308bに含まれる水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、
5×1018atoms/cm以下、1×1018atoms/cm以下、5×10
17atoms/cm以下、または1×1016atoms/cm以下であり、導電
性を有する膜308cに含まれる水素濃度は、8×1019atoms/cm以上、1
×1020atoms/cm以上、または5×1020atoms/cm以上である
。また、酸化物半導体膜308a、308bと比較して、導電性を有する膜308cに含
まれる水素濃度は2倍、または10倍以上である。
【0307】
また、導電性を有する膜308cは、酸化物半導体膜308a、308bより抵抗率が
低い。導電性を有する膜308cの抵抗率が、酸化物半導体膜308a、308bの抵抗
率の1×10-8倍以上1×10-1倍以下で有ることが好ましく、代表的には1×10
-3Ωcm以上1×10Ωcm未満、または、抵抗率が1×10-3Ωcm以上1×1
-1Ωcm未満であるとよい。
【0308】
酸化物半導体膜308a、308bは、絶縁膜306及び絶縁膜312等の、酸化物半
導体膜との界面特性を向上させることが可能な材料で形成される膜と接しているため、酸
化物半導体膜308a、308bは、半導体として機能し、酸化物半導体膜308a、3
08bを有するトランジスタは、優れた電気特性を有する。
【0309】
一方、導電性を有する膜308cは、開口部362(図14(A)参照。)において絶
縁膜314と接する。絶縁膜314は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、
アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される膜であり、
更には水素を含む。このため、絶縁膜314の水素が酸化物半導体膜308a、308b
と同時に形成された酸化物半導体膜に拡散すると、該酸化物半導体膜において水素は酸素
と結合し、キャリアである電子が生成される。また、絶縁膜314をプラズマCVD法ま
たはスパッタリング法で成膜すると、酸化物半導体膜がプラズマに曝され、酸素欠損が生
成される。当該酸素欠損に絶縁膜314に含まれる水素が入ることで、キャリアである電
子が生成される。これらの結果、酸化物半導体膜は、導電性が高くなり導体として機能す
る。即ち、導電性の高い酸化物半導体膜ともいえる。ここでは、酸化物半導体膜308a
、308bと同様の材料を主成分とし、且つ水素濃度が酸化物半導体膜308a、308
bより高いことにより、導電性が高められた金属酸化物を、導電性を有する膜308cと
よぶ。
【0310】
ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されず、導電性を有する膜308c
は、場合によっては、絶縁膜314と接していないことも可能である。
【0311】
また、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されず、導電性を有する膜308cは
、場合によっては、酸化物半導体膜308a、または、308bと別々の工程で形成され
てもよい。その場合には、導電性を有する膜308cは、酸化物半導体膜308a、30
8bと、異なる材質を有していても良い。例えば、導電性を有する膜308cは、ITO
、または、インジウム亜鉛酸化物等を用いて形成してもよい。
【0312】
本実施の形態に示す半導体装置は、トランジスタの酸化物半導体膜と同時に、容量素子
の一方となる電極を形成する。また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜を容
量素子の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新たに導
電膜を形成する工程が不要であり、半導体装置の作製工程を削減できる。また、容量素子
は、一対の電極が透光性を有する導電膜で形成されているため、透光性を有する。この結
果、容量素子の占有面積を大きくしつつ、画素の開口率を高めることができる。
【0313】
導電膜310a、310b、310c、310d、310eは、実施の形態1に示す一
対の電極21、22の材料及び作製方法を適宜用いることができる。
【0314】
絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、導電性を有する膜308c、及び
導電膜310a、310b、310c、310d、310e上には、絶縁膜312、絶縁
膜314が形成されている。絶縁膜312は、絶縁膜306と同様に、酸化物半導体膜と
の界面特性を向上させることが可能な材料を用いることが好ましく、少なくとも実施の形
態1に示す酸化物絶縁膜24と同様の材料及び作製方法を適宜用いることができる。また
、実施の形態1に示すように、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜を積層して形成しても
よい。
【0315】
絶縁膜314は、絶縁膜305と同様に、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金
属、アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ま
しく、実施の形態1に示す窒化物絶縁膜25の材料及び作製方法を適宜用いることができ
る。
【0316】
また、絶縁膜314上には透光性を有する導電膜316a、316b、及びゲート電極
として機能する導電膜316cが形成されている。透光性を有する導電膜316aは、開
口部364a(図14(C)参照。)において導電膜304bと電気的に接続され、開口
部364b(図14(C)参照。)において導電膜310cと電気的に接続される。即ち
、導電膜304b及び導電膜310cを接続する接続電極として機能する。透光性を有す
る導電膜316bは、開口部364c(図14(C)参照。)において導電膜310eと
電気的に接続され、画素の画素電極としての機能を有する。また、透光性を有する導電膜
316bは、容量素子の一対の電極の一方として機能することができる。導電膜316c
は、開口部364c(図10参照。)において導電膜304cと電気的に接続される。
【0317】
導電膜304b及び導電膜310cが直接接するような接続構造とするには、導電膜3
10cを形成する前に、絶縁膜305、絶縁膜306に開口部を形成するためにパターニ
ングを行い、マスクを形成する必要があるが、図11の接続構造には、当該フォトマスク
が不要である。しかしながら、図11のように、透光性を有する導電膜316bにより、
導電膜304b及び導電膜310cを接続することで、導電膜304b及び導電膜310
cが直接接する接続部を作製する必要が無くなり、フォトマスクを1枚少なくすることが
できる。即ち、半導体装置の作製工程を削減することが可能である。
【0318】
透光性を有する導電膜316a、316b、導電膜316cとしては、酸化タングステ
ンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタン
を含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、ITO、インジウム亜
鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を
用いることができる。
【0319】
また、基板342上には、有色性を有する膜(以下、有色膜346という。)が形成さ
れている。有色膜346は、カラーフィルタとしての機能を有する。また、有色膜346
に隣接する遮光膜344が基板342上に形成される。遮光膜344は、ブラックマトリ
クスとして機能する。また、有色膜346は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、表示
装置が白黒の場合等によって、有色膜346を設けない構成としてもよい。
【0320】
有色膜346としては、特定の波長帯域の光を透過する有色膜であればよく、例えば、
赤色の波長帯域の光を透過する赤色(R)のカラーフィルタ、緑色の波長帯域の光を透過
する緑色(G)のカラーフィルタ、青色の波長帯域の光を透過する青色(B)のカラーフ
ィルタなどを用いることができる。
【0321】
遮光膜344としては、特定の波長帯域の光を遮光する機能を有していればよく、金属
膜または黒色顔料等を含んだ有機絶縁膜などを用いることができる。
【0322】
また、有色膜346上には、絶縁膜348が形成されている。絶縁膜348は、平坦化
層としての機能、または有色膜346が含有しうる不純物を液晶素子側へ拡散するのを抑
制する機能を有する。
【0323】
また、絶縁膜348上には、導電膜350が形成されている。導電膜350は、画素部
の液晶素子が有する一対の電極の他方としての機能を有する。なお、透光性を有する導電
膜316a、316b、及び導電膜350上には、配向膜としての機能を有する絶縁膜を
別途形成してもよい。
【0324】
また、透光性を有する導電膜316a、316b、導電膜316cと導電膜350との
間には、液晶層320が形成されている。また液晶層320は、シール材(図示しない)
を用いて、基板302と基板342の間に封止されている。なお、シール材は、外部から
の水分等の入り込みを抑制するために、無機材料と接触する構成が好ましい。
【0325】
また、透光性を有する導電膜316a、316b、導電膜316cと導電膜350との
間に液晶層320の厚さ(セルギャップともいう)を維持するスペーサを設けてもよい。
【0326】
図11に示す半導体装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について、
図12乃至図15を用いて説明する。
【0327】
まず、基板302を準備する。ここでは、基板302としてガラス基板を用いる。
【0328】
次に、基板302上に導電膜を形成し、該導電膜を所望の領域に加工することで、導電
膜304a、304b、304cを形成する。なお、導電膜304a、304b、304
cの形成は、所望の領域に第1のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆
われていない領域をエッチングすることで形成することができる。(図12(A)参照)
【0329】
また、導電膜304a、304b、304cとしては、代表的には、蒸着法、CVD法
、スパッタリング法、スピンコート法等を用いて形成することができる。
【0330】
次に、基板302、及び導電膜304a、304b、304c上に、絶縁膜305を形
成し、絶縁膜305上に絶縁膜306を形成する(図12(A)参照)。
【0331】
絶縁膜305及び絶縁膜306は、スパッタリング法、CVD法等により形成すること
ができる。なお、絶縁膜305及び絶縁膜306は、真空中で連続して形成すると不純物
の混入が抑制され好ましい。
【0332】
次に、絶縁膜306上に酸化物半導体膜307を形成する(図12(B)参照)。
【0333】
酸化物半導体膜307は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザ
ーアブレーション法などを用いて形成することができる。
【0334】
次に、酸化物半導体膜307を所望の領域に加工することで、島状の酸化物半導体膜3
08a、308b、308dを形成する。なお、酸化物半導体膜308a、308b、3
08dの形成は、所望の領域に第2のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスク
に覆われていない領域をエッチングすることで形成することができる。エッチングとして
は、ドライエッチング、ウエットエッチング、または双方を組み合わせたエッチングを用
いることができる(図12(C)参照)。
【0335】
次に、絶縁膜306、及び酸化物半導体膜308a、308b、308d上に導電膜3
09を形成する(図13(A)参照)。
【0336】
導電膜309としては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0337】
次に、導電膜309を所望の領域に加工することで、導電膜310a、310b、31
0c、310d、310eを形成する。なお、導電膜310a、310b、310c、3
10d、310eの形成は、所望の領域に第3のパターニングによるマスクの形成を行い
、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成することができる(図1
3(B)参照)。
【0338】
次に、絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308d、及び導電膜31
0a、310b、310c、310d、310e上を覆うように、絶縁膜311を形成す
る(図13(C)参照)。
【0339】
絶縁膜311としては、実施の形態1に示す酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24と
同様の条件を用いて積層して形成することができる。実施の形態1に示すように、酸化物
絶縁膜23を加熱しながら形成することで、酸化物半導体膜308a、308b、308
d、に含まれる水素、水等を脱離させ、高純度化された酸化物半導体膜を形成することが
できる。
【0340】
次に、絶縁膜311を所望の領域に加工することで、絶縁膜312、及び開口部362
を形成する。なお、絶縁膜311、及び開口部362の形成は、所望の領域に第4のパタ
ーニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングするこ
とで、形成することができる。(図14(A)参照)。
【0341】
なお、開口部362は、酸化物半導体膜308dの表面が露出するように形成する。開
口部362の形成方法としては、例えば、ドライエッチング法を用いることができる。た
だし、開口部362の形成方法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、ま
たはドライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。
【0342】
こののち、実施の形態1と同様に、加熱処理を行って、絶縁膜311に含まれる酸素の
一部を酸化物半導体膜308a、308bに酸素を移動させ、酸化物半導体膜308a、
308bに含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0343】
次に、絶縁膜312及び酸化物半導体膜308d上に絶縁膜313を形成する(図14
(B)参照)。
【0344】
絶縁膜313としては、外部からの不純物、例えば、酸素、水素、水、アルカリ金属、
アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ましく
、更には水素を含むことが好ましく、代表的には窒素を含む無機絶縁材料、例えば窒化物
絶縁膜を用いることができる。絶縁膜313としては、例えば、CVD法を用いて形成す
ることができる。
【0345】
絶縁膜314は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等
が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される膜であり、更には水素を含む。
このため、絶縁膜314の水素が酸化物半導体膜308dに拡散すると、該酸化物半導体
膜308dにおいて水素は酸素と結合し、キャリアである電子が生成される。この結果、
酸化物半導体膜308dは、導電性が高くなり、導電性を有する膜308cとなる。
【0346】
また、上記窒化シリコン膜は、ブロック性を高めるために、高温で成膜されることが好
ましく、例えば基板温度100℃以上400℃以下、または300℃以上400℃以下の
温度で加熱して成膜することが好ましい。また高温で成膜する場合は、酸化物半導体膜3
08a、308bとして用いる酸化物半導体から酸素が脱離し、キャリア濃度が上昇する
現象が発生することがあるため、このような現象が発生しない温度とする。
【0347】
次に、絶縁膜313を所望の領域に加工することで、絶縁膜314、及び開口部364
a、364b、364c、364d(図10参照。)、を形成する。なお、絶縁膜314
、及び開口部364a、364b、364cは、所望の領域に第5のパターニングによる
マスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで形成するこ
とができる(図14(C)参照)。
【0348】
また、開口部364aは、導電膜304bの表面が露出するように形成する。また、開
口部364bは、導電膜310cが露出するように形成する。また、開口部364cは、
導電膜310eが露出するように形成する。また、開口部364dは、導電膜304cが
露出するように形成する。
【0349】
なお、開口部364a、364b、364c、364dの形成方法としては、例えば、
ドライエッチング法を用いることができる。ただし、開口部364a、364b、364
c、364dの形成方法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、またはド
ライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。
【0350】
次に、開口部364a、364b、364c、364dを覆うように絶縁膜314上に
導電膜315を形成する(図15(A)参照)。
【0351】
導電膜315としては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0352】
次に、導電膜315を所望の領域に加工することで、透光性を有する導電膜316a、
316b、導電膜316cを形成する。なお、透光性を有する導電膜316a、316b
、導電膜316cの形成は、所望の領域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い
、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで形成することができる(図15
(B)参照)。
【0353】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6のパターニ
ング、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することができ
る。
【0354】
なお、本実施の形態では、絶縁膜314に含まれる水素を酸化物半導体膜308dに拡
散させて、酸化物半導体膜308dの導電性を高めたが、酸化物半導体膜308a、30
8bをマスクで覆い、酸化物半導体膜308dに不純物、代表的には、水素、ホウ素、リ
ン、スズ、アンチモン、希ガス元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を添加して、酸
化物半導体膜308dの導電性を高めてもよい。酸化物半導体膜308dに水素、ホウ素
、リン、スズ、アンチモン、希ガス元素等を添加する方法としては、イオンドーピング法
、イオン注入法等がある。一方、酸化物半導体膜308dにアルカリ金属、アルカリ土類
金属等を添加する方法としては、該不純物を含む溶液を酸化物半導体膜308dに曝す方
法がある。
【0355】
次に、基板302に対向して設けられる基板342上に形成される構造について、以下
説明を行う。
【0356】
まず、基板342を準備する。基板342としては、基板302に示す材料を援用する
ことができる。次に、基板342上に遮光膜344、有色膜346を形成する(図16
A)参照)。
【0357】
遮光膜344及び有色膜346は、様々な材料を用いて、印刷法、インクジェット法、
フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング方法などでそれぞれ所望の位置に形成する。
【0358】
次に、遮光膜344、及び有色膜346上に絶縁膜348を形成する(図16(B)参
照)。
【0359】
絶縁膜348としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等の有機絶
縁膜を用いることができる。絶縁膜348を形成することによって、例えば、有色膜34
6中に含まれる不純物等を液晶層320側に拡散することを抑制することができる。ただ
し、絶縁膜348は、必ずしも設ける必要はなく、絶縁膜348を形成しない構造として
もよい。
【0360】
次に、絶縁膜348上に導電膜350を形成する(図16(C)参照)。導電膜350
としては、導電膜315に示す材料を援用することができる。
【0361】
以上の工程で基板342上に形成される構造を形成することができる。
【0362】
次に、基板302と基板342上、より詳しくは基板302上に形成された絶縁膜31
4、透光性を有する導電膜316a、316bと、基板342上に形成された導電膜35
0上に、それぞれ配向膜318と配向膜352を形成する。配向膜318、配向膜352
は、ラビング法、光配向法等を用いて形成することができる。その後、基板302と、基
板342との間に液晶層320を形成する。液晶層320の形成方法としては、ディスペ
ンサ法(滴下法)や、基板302と基板342とを貼り合わせてから毛細管現象を用いて
液晶を注入する注入法を用いることができる。
【0363】
以上の工程で、図11に示す表示装置を作製することができる。
【0364】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0365】
<変形例1>
画素100に液晶素子を用いた液晶表示装置の変形例について説明する。図11に示す
液晶表示装置において、導電性を有する膜308cは絶縁膜314と接しているが、絶縁
膜305と接する構造とすることができる。この場合、図14に示すような開口部362
を設ける必要が無いため、透光性を有する導電膜316a、316b表面の段差を低減す
ることが可能である。このため、液晶層320に含まれる液晶材料の配向乱れを低減する
ことが可能である。また、コントラストの高い半導体装置を作製することができる。
【0366】
このような構造は、図12(B)において、酸化物半導体膜307を形成する前に、絶
縁膜306を選択的にエッチングして、絶縁膜305の一部を露出させればよい。
【0367】
<変形例2>
本実施の形態及び変形例では、絶縁膜314、透光性を有する導電膜316a、316
b、または導電膜316cと、配向膜318との間に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポ
リイミド等の有機絶縁膜を設けてもよい。アクリル系樹脂等の有機絶縁膜は平坦性が高い
ため、透光性を有する導電膜316bの表面の段差を低減することが可能である。このた
め、液晶層320に含まれる液晶材料の配向乱れを低減することが可能である。また、コ
ントラストの高い半導体装置を作製することができる。
【0368】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に含まれているトランジスタ
において、酸化物半導体膜に適用可能な一態様について説明する。
【0369】
酸化物半導体膜は、単結晶構造の酸化物半導体(以下、単結晶酸化物半導体という。)
、多結晶構造の酸化物半導体(以下、多結晶酸化物半導体という。)、微結晶構造の酸化
物半導体(以下、微結晶酸化物半導体という。)、及び非晶質構造の酸化物半導体(以下
、非晶質酸化物半導体という。)の一以上で構成されてもよい。また、酸化物半導体膜は
、CAAC-OS膜で構成されていてもよい。また、酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半
導体及び結晶粒を有する酸化物半導体で構成されていてもよい。以下に、単結晶酸化物半
導体、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、及び非晶質酸化物半
導体について説明する。
【0370】
<単結晶酸化物半導体>
単結晶酸化物半導体膜は、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損が少ない
)酸化物半導体膜である。そのため、キャリア密度を低くすることができる。従って、単
結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、ノーマリーオンの電気特性になることが少
ない。また、単結晶酸化物半導体膜は、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低いため、キ
ャリアトラップが少なくなる場合がある。従って、単結晶酸化物半導体膜を用いたトラン
ジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。
【0371】
なお、酸化物半導体膜は、欠陥が少ないと密度が高くなる。また、酸化物半導体膜は、
結晶性が高いと密度が高くなる。また、酸化物半導体膜は、水素などの不純物濃度が低い
と密度が高くなる。単結晶酸化物半導体膜は、CAAC-OS膜よりも密度が高い。また
、CAAC-OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも密度が高い。また、多結晶酸化物半
導体膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも密度が高い。また、微結晶酸化物半導体膜は、非
晶質酸化物半導体膜よりも密度が高い。
【0372】
<CAAC-OS>
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。また、CA
AC-OS膜に含まれる結晶部は、c軸配向性を有する。平面TEM像において、CAA
C-OS膜に含まれる結晶部の面積が2500nm以上、5μm以上、または100
0μm以上である。また、断面TEM像において、該結晶部を50%以上、80%以上
、または95%以上有することで、単結晶に近い物性の薄膜となる。
【0373】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elec
tron Microscope)によって観察すると、結晶同士の明確な境界、即ち結
晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CA
AC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0374】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観
察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原
子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹
凸を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。な
お、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配
置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直
」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従っ
て、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0375】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面T
EM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列している
ことを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られ
ない。
【0376】
なお、CAAC-OS膜に対し、電子線回折を行うと、配向性を示すスポット(輝点)
が観測される。
【0377】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有し
ていることがわかる。
【0378】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)
装置を用いて構造解析を行うと、CAAC-OS膜のout-of-plane法による
解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、I
nGaZn酸化物の結晶の(00x)面(xは整数)に帰属されることから、CAAC-
OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いて
いることが確認できる。
【0379】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-p
lane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピーク
は、InGaZn酸化物の結晶の(110)面に帰属される。InGaZn酸化物の単結
晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ
軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結
晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2
θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0380】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は
不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平
行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に
配列した金属原子の各層は、結晶のa-b面に平行な面である。
【0381】
なお、結晶は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行
った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面また
は上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の形
状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成面
または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0382】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS
膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上
面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CA
AC-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部
分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0383】
なお、CAAC-OS膜のout-of-plane法による解析では、2θが31°
近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近
傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶部が含まれるこ
とを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°
近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0384】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素
、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリ
コンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸
化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させ
る要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半
径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜
の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不
純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0385】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化
物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによっ
てキャリア発生源となることがある。
【0386】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性また
は実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体
膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当
該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノ
ーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度
真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体
膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる
。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する
時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高
く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定とな
る場合がある。
【0387】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特
性の変動が小さい。
【0388】
<多結晶酸化物半導体>
多結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶粒を確認することができる。多
結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶粒は、例えば、TEMによる観察像で、2nm以上3
00nm以下、3nm以上100nm以下または5nm以上50nm以下の粒径であるこ
とが多い。また、多結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶粒界を確認でき
る場合がある。
【0389】
多結晶酸化物半導体膜は、複数の結晶粒を有し、当該複数の結晶粒間において結晶の方
位が異なっている場合がある。また、多結晶酸化物半導体膜は、例えばXRD装置を用い
てout-of-plane法による分析を行うと、単一または複数のピークが現れる場
合がある。例えば多結晶のIGZO膜では、配向を示す2θが31°近傍のピーク、また
は複数種の配向を示す複数のピークが現れる場合がある。
【0390】
多結晶酸化物半導体膜は、高い結晶性を有するため、高い電子移動度を有する場合があ
る。従って、多結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有す
る。ただし、多結晶酸化物半導体膜は、粒界に不純物が偏析する場合がある。また、多結
晶酸化物半導体膜の粒界は欠陥準位となる。多結晶酸化物半導体膜は、粒界がキャリア発
生源、トラップ準位となる場合があるため、多結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタ
は、CAAC-OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性
の低いトランジスタとなる場合がある。
【0391】
<微結晶酸化物半導体>
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することがで
きない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以
下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10n
m以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrys
tal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline O
xide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、T
EMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0392】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以
上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異な
る結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。
従って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない
場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD
装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面を
示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径(例えば
50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を行うと
、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し、結晶
部の大きさと近いか結晶部より小さい径(例えば1nm以上30nm以下)の電子線を用
いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、スポットが観測される。
また、nc-OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くように(リング状に
)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子線
回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
【0393】
図17は、nc-OS膜を有する試料に対し、測定箇所を変えてナノビーム電子線回折
を行った例である。ここでは、試料を、nc-OS膜の被形成面に垂直な方向に切断し、
厚さが10nm以下となるように薄片化する。また、ここでは、径が1nmの電子線を、
試料の切断面に垂直な方向から入射させる。図17より、nc-OS膜を有する試料に対
し、ナノビーム電子線回折を行うと、結晶面を示す回折パターンが得られるが、特定方向
の結晶面への配向性は見られないことがわかった。
【0394】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そ
のため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし
、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-
OS膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0395】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態に示す構成及び方法な
どと適宜組み合わせて用いることができる。
【0396】
(実施の形態6)
上記実施の形態で開示された酸化物半導体膜はスパッタリングにより形成することがで
きるが、他の方法、例えば、熱CVD法により形成してもよい。熱CVD法の例としてM
OCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposi
tion)法やALD(Atomic Layer Deposition)法を使って
も良い。
【0397】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生
成されることが無いという利点を有する。
【0398】
熱CVD法は、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧
または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行ってもよい。
【0399】
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが
順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい
。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブとも呼ぶ)を切り替えて2種類以
上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の
原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、
第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスは
キャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入しても
よい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した
後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の層
を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の層が第1の層上に積層さ
れて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り
返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入
順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、
微細なFETを作製する場合に適している。
【0400】
MOCVD法やALD法などの熱CVD法は、これまでに記載した実施形態に開示され
た金属膜、酸化物半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜を形成することができ、例えば、I
nGaZnO膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、及び
ジメチル亜鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、In(CHであ
る。また、トリメチルガリウムの化学式は、Ga(CHである。また、ジメチル亜
鉛の化学式は、Zn(CHである。また、これらの組み合わせに限定されず、トリ
メチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(化学式Ga(C)を用いること
もでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式Zn(C)を用いること
もできる。
【0401】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn-Ga-Zn-
O膜を成膜する場合には、In(CHガスとOガスを順次繰り返し導入してIn
-O層を形成し、その後、Ga(CHガスとOガスを同時に導入してGaO層を
形成し、更にその後Zn(CHとOガスを同時に導入してZnO層を形成する。
なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてIn-Ga-
O層やIn-Zn-O層、Ga-Zn-O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお
、Oガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングして得られたHOガスを用いても
良いが、Hを含まないOガスを用いる方が好ましい。また、In(CHガスにか
えて、In(Cガスを用いても良い。また、Ga(CHガスにかえて、
Ga(Cガスを用いても良い。また、In(CHガスにかえて、In(
ガスを用いても良い。また、Zn(CHガスを用いても良い。
【0402】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態に示す構成及び方法な
どと適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0403】
本実施例では、トランジスタのVg-Id特性及びゲートBTストレス試験の測定結果
について説明する。
【0404】
本実施例では、本発明の一態様である試料1乃至3と、比較用の試料4乃至6を作製し
た。まず、試料1の作製工程について説明する。本発明の一態様である試料1乃至試料3
については図18を参照して、比較用の試料4乃至6については図19を参照して、それ
ぞれ説明を行う。
【0405】
(試料1)
試料1は、基板511と、基板511上のゲート電極515と、基板511及びゲート
電極515上のゲート絶縁膜517と、ゲート絶縁膜517上に設けられ、且つゲート電
極515と重畳する領域に設けられた酸化物半導体膜518と、ゲート絶縁膜517及び
酸化物半導体膜518上の一対の電極521、522と、酸化物半導体膜518及び一対
の電極521、522上の保護膜526と、保護膜526上に設けられ、且つゲート電極
515と重畳する領域に設けられたバックゲート電極527と、を有する(図18参照)
【0406】
なお、保護膜526は、酸化物絶縁膜523、酸化物絶縁膜524、及び窒化物絶縁膜
525の3層の積層構造で形成した。また、バックゲート電極527の両端部は、図18
(B)に示すように、ゲート電極515の両端部と概略一致している。また、バックゲー
ト電極527は、図18(C)に示すように、保護膜526を介して酸化物半導体膜51
8を覆うように形成した。
【0407】
次に、図18に示す試料1の作製方法を以下に示す。
【0408】
まず、基板511としてガラス基板を用い、基板511上にゲート電極515を形成し
た。
【0409】
ゲート電極515として、スパッタリング法で厚さ200nmのタングステン膜を形成
し、フォトリソグラフィ工程により該タングステン膜上にマスクを形成し、該マスクを用
いて該タングステン膜の一部をエッチングして形成した。
【0410】
次に、ゲート電極515上にゲート絶縁膜517を形成した。
【0411】
ゲート絶縁膜517として、厚さ400nmの窒化シリコン膜と、厚さ50nmの酸化
窒化シリコン膜を積層して形成した。
【0412】
なお、窒化シリコン膜は、第1の窒化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、及び第3の
窒化シリコン膜の3層積層構造とした。
【0413】
第1の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、流量2000sccm
の窒素、及び流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてプラズマCVD装置
の処理室に供給し、処理室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電
源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成した。第2の
窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、流量2000sccmの窒素、
及び流量2000sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてプラズマCVD装置の処理
室に供給し、処理室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用
いて2000Wの電力を供給して、厚さが300nmとなるように形成した。第3の窒化
シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、及び流量5000sccmの窒素を
原料ガスとしてプラズマCVD装置の処理室に供給し、処理室内の圧力を100Paに制
御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50
nmとなるように形成した。なお、第1の窒化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、及び
第3の窒化シリコン膜形成時の基板温度は350℃とした。
【0414】
酸化窒化シリコン膜としては、流量20sccmのシラン、流量3000sccmの一
酸化二窒素を原料ガスとしてプラズマCVD装置の処理室に供給し、処理室内の圧力を4
0Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて100Wの電力を供給して、酸
化窒化シリコン膜を形成した。なお、酸化窒化シリコン膜形成時の基板温度は350℃と
した。
【0415】
次に、ゲート絶縁膜517を介してゲート電極515に重なる酸化物半導体膜518を
形成した。
【0416】
ここでは、ゲート絶縁膜517上に厚さ35nmの酸化物半導体膜をスパッタリング法
で形成した。
【0417】
酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=3:1:2(原子
数比)のターゲットとし、流量100sccmの酸素をスパッタリングガスとしてスパッ
タリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.6Paに制御し、5kWの直流
電力を供給して形成した。なお、酸化物半導体膜を形成する際の基板温度を170℃とし
た。
【0418】
次に、酸化物半導体膜518に接する一対の電極521、522を形成した。
【0419】
ここでは、ゲート絶縁膜517及び酸化物半導体膜518上に導電膜を形成した。該導
電膜として、厚さ50nmのタングステン膜上に厚さ400nmのアルミニウム膜を形成
し、該アルミニウム膜上に厚さ200nmのチタン膜を形成した。次に、フォトリソグラ
フィ工程により該導電膜上にマスクを形成し、該マスクを用いて該導電膜の一部をエッチ
ングし、一対の電極521、522を形成した。
【0420】
次に、減圧された処理室に基板を移動し、350℃で加熱した後、処理室に設けられる
上部電極に27.12MHzの高周波電源を用いて150Wの高周波電力を供給して、一
酸化二窒素雰囲気で発生させた酸素プラズマに酸化物半導体膜518を曝した。
【0421】
次に、酸化物半導体膜518及び一対の電極521、522上に保護膜526を形成し
た。ここでは、保護膜526として、酸化物絶縁膜523、酸化物絶縁膜524、及び窒
化物絶縁膜525を形成した。
【0422】
まず、上記酸素プラズマ処理の後、大気に曝すことなく、連続的に酸化物絶縁膜523
及び酸化物絶縁膜524を形成した。酸化物絶縁膜523として厚さ50nmの酸化窒化
シリコン膜を形成し、酸化物絶縁膜524として厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を
形成した。
【0423】
酸化物絶縁膜523は、流量20sccmのシラン及び流量3000sccmの一酸化
二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を350℃とし、100W
の高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により形成した。
【0424】
酸化物絶縁膜524は、流量160sccmのシラン及び流量4000sccmの一酸
化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃とし、150
0Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により形成した。当該条件
により、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が
脱離する酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0425】
次に、加熱処理を行い、酸化物絶縁膜523及び酸化物絶縁膜524から水、窒素、水
素等を脱離させると共に、酸化物絶縁膜524に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜5
18へ供給した。ここでは、窒素及び酸素雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行っ
た。
【0426】
次に、酸化物絶縁膜524上に厚さ100nmの窒化物絶縁膜525を形成した。窒化
物絶縁膜525は、流量50sccmのシラン、流量5000sccmの窒素、及び流量
100sccmのアンモニアガスを原料ガスとし、処理室の圧力を100Pa、基板温度
を350℃とし、1000Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法に
より形成した。
【0427】
次に、保護膜526上に酸化物絶縁膜を形成した(図示しない)。ここでは、流量20
0sccmの有機シランガスである珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC
)と、流量10000sccmの酸素を原料ガスとし、処理室の圧力175Pa、基板温
度を350℃とし、3300Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法
により形成した。
【0428】
次に、保護膜526上の酸化物絶縁膜上にバックゲート電極527を形成した。ここで
は、バックゲート電極527として、スパッタリング法により厚さ100nmの酸化イン
ジウム-酸化スズ化合物(ITO-SiO)の導電膜を形成した。なお、該導電膜に用
いたターゲットの組成は、In:SnO:SiO=85:10:5[重量%]
とした。この後、窒素雰囲気で、250℃、1時間の加熱処理を行った。
【0429】
以上の工程により、本実施例の試料1を作製した。
【0430】
(試料2)
試料2は、試料1と比較し酸化物半導体膜518の構造が異なる。具体的には、試料2
の酸化物半導体膜518を、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の積層構造と
した。
【0431】
まず、第1の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=3:
1:2(原子数比)のターゲットとし、流量100sccmの酸素をスパッタリングガス
としてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.6Paに制御し、
5kWの直流電力を供給して形成した。
【0432】
次に、第1の酸化物半導体膜上に真空中で連続して第2の酸化物半導体膜を形成した。
第2の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=1:3:2(
原子数比)のターゲットとし、流量30sccmの酸素及び流量270sccmのアルゴ
ンをスパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力
を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。なお、第1の酸化物半導
体膜及び第2の酸化物半導体膜を形成する際の基板温度を170℃とした。
【0433】
試料2については、酸化物半導体膜518以外の構成については、試料1と同様のため
、試料1の記載を援用することで形成することができる。
【0434】
(試料3)
試料3は、試料1と比較し酸化物半導体膜518の構造が異なる。具体的には、試料3
の酸化物半導体膜518は、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜と第3の酸化
物半導体膜の積層構造とした。
【0435】
まず、第1の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=1:
3:2(原子数比)のターゲットとし、流量30sccmの酸素及び流量270sccm
のアルゴンをスパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室
内の圧力を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。
【0436】
次に、第1の酸化物半導体膜上に真空中で連続して第2の酸化物半導体膜を形成した。
第2の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=3:1:2(
原子数比)のターゲットとし、流量100sccmの酸素及び流量100sccmのアル
ゴンをスパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧
力を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。
【0437】
次に、第2の酸化物半導体膜上に真空中で連続して第3の酸化物半導体膜を形成した。
第3の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=1:3:2(
原子数比)のターゲットとし、流量30sccmの酸素及び流量270sccmのアルゴ
ンをスパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力
を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。なお、第1の酸化物半導
体膜、第2の酸化物半導体膜、及び第3の酸化物半導体膜を形成する際の基板温度を17
0℃とした。
【0438】
試料3については、酸化物半導体膜518以外の構成については、試料1と同様のため
、試料1の記載を援用することで形成することができる。
【0439】
(試料4)
試料4は、基板511と、基板511上のゲート電極515と、基板511及びゲート
電極515上のゲート絶縁膜517と、ゲート絶縁膜517上に設けられ、且つゲート電
極515と重畳する領域に設けられた酸化物半導体膜518と、ゲート絶縁膜517及び
酸化物半導体膜518上の一対の電極521、522と、酸化物半導体膜518及び一対
の電極521、522上の保護膜526と、保護膜526上に設けられ、且つゲート電極
515と重畳する領域に設けられたバックゲート電極528と、を有する(図19参照)
【0440】
なお、保護膜526は、酸化物絶縁膜523、酸化物絶縁膜524、及び窒化物絶縁膜
525の3層の積層構造で形成した。また、バックゲート電極528は、図19(B)に
示すように、酸化物半導体膜518の両端部よりも内側に位置するように形成した。また
、バックゲート電極528は、図19(C)に示すように、保護膜526を介して酸化物
半導体膜518の内側に位置するように形成した。ただし、図19(C)において、バッ
クゲート電極528の1つの端部は、酸化物半導体膜518よりも外側にはみ出すように
形成している。
【0441】
次に、図19に示す試料4の作製方法を以下に示す。
【0442】
保護膜526の形成までは、先に記載した試料1と同様の作製工程とした。
【0443】
次に、保護膜526上に酸化物絶縁膜を形成した(図示しない)。ここでは、流量20
0sccmの有機シランガスである珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC
)と、流量10000sccmの酸素を原料ガスとし、処理室の圧力175Pa、基板温
度を350℃とし、3300Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法
により形成した。
【0444】
次に、保護膜526上の酸化物絶縁膜上にバックゲート電極527を形成した。ここで
は、バックゲート電極527として、スパッタリング法により厚さ100nmの酸化イン
ジウム-酸化スズ化合物(ITO-SiO)の導電膜を形成した。なお、該導電膜に用
いたターゲットの組成は、In:SnO:SiO=85:10:5[重量%]
とした。この後、窒素雰囲気で、250℃、1時間の加熱処理を行った。
【0445】
以上の工程により、本実施例の試料4を作製した。
【0446】
(試料5)
試料5は、試料4と比較し酸化物半導体膜518の構造が異なる。具体的には、試料5
の酸化物半導体膜518は、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の積層構造と
した。
【0447】
まず、第1の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=3:
1:2(原子数比)のターゲットとし、流量100sccmの酸素及び流量100scc
mのアルゴンをスパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理
室内の圧力を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。
【0448】
次に、第1の酸化物半導体膜上に真空中で連続して第2の酸化物半導体膜を形成した。
第2の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=1:3:2(
原子数比)のターゲットとし、流量30sccmの酸素及び流量270sccmのアルゴ
ンをスパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力
を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。なお、第1の酸化物半導
体膜及び第2の酸化物半導体膜を形成する際の基板温度を170℃とした。
【0449】
試料5については、酸化物半導体膜518以外の構成については、試料4と同様のため
、試料4の記載を援用することで形成することができる。
【0450】
(試料6)
試料6は、試料4と比較し酸化物半導体膜518の構造が異なる。具体的には、試料6
の酸化物半導体膜518は、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜と第3の酸化
物半導体膜の積層構造とした。
【0451】
まず、第1の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=1:
3:2(原子数比)のターゲットとし、流量30sccmの酸素及び流量270sccm
のアルゴンをスパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室
内の圧力を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。
【0452】
次に、第1の酸化物半導体膜上に真空中で連続して第2の酸化物半導体膜を形成した。
第2の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=3:1:2(
原子数比)のターゲットとし、流量100sccmの酸素及び流量100sccmのアル
ゴンをスパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧
力を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。
【0453】
次に、第2の酸化物半導体膜上に真空中で連続して第3の酸化物半導体膜を形成した。
第3の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=1:3:2(
原子数比)のターゲットとし、流量30sccmの酸素及び流量270sccmのアルゴ
ンをスパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力
を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。なお、第1の酸化物半導
体膜、第2の酸化物半導体膜、及び第3の酸化物半導体膜を形成する際の基板温度を17
0℃とした。
【0454】
試料6については、酸化物半導体膜518以外の構成については、試料4と同様のため
、試料4の記載を援用することで形成することができる。
【0455】
なお、上記作製した試料1乃至試料6は、チャネル長(L)が6μm、チャネル幅(W
)が50μmのトランジスタである。
【0456】
<Vg-Id特性>
次に、試料1乃至試料6のトランジスタの初期特性としてVg-Id特性を測定した。
ここでは、基板温度を25℃とし、ソース-ドレイン間の電位差(以下、ドレイン電圧と
いう。)を1V、10Vとし、ソース-ゲート電極間の電位差(以下、ゲート電圧という
。)を-15V乃至+20Vまで変化させたときのソース-ドレイン間に流れる電流(以
下、ドレイン電流という。)の変化特性、すなわちVg-Id特性を測定した。
【0457】
<ゲートBTストレス試験>
次に、初期特性の測定が終了した試料1乃至試料6のゲートBTストレス試験(以下、
GBT試験)を行った。ここでは、GBT試験条件としては、基板温度を60℃とし、測
定環境を暗室下(dark環境下)において、ゲート電圧として+30Vを印加して1時
間のストレスを試料1乃至試料6に与えた。GBT試験は加速試験の一種であり、長期間
の使用によって起こるトランジスタの特性変化(即ち、経時変化)を短時間で評価するこ
とができる。GBT試験前後におけるトランジスタの特性の変動量を調べることは、信頼
性を調べるための重要な指標となる。
【0458】
図20及び図21に、各試料のトランジスタのVg-Id特性及びGBT試験後のVg
-Id特性を示す。なお、図20(A)は試料1の初期特性及びGBT後の特性結果を、
図20(B)は試料2の初期特性及びGBT後の特性結果を、図20(C)は試料3の初
期特性及びGBT後の特性結果を、図21(A)は試料4の初期特性及びGBT後の特性
結果を、図21(B)は試料5の初期特性及びGBT後の特性結果を、図21(C)は試
料6の初期特性及びGBT後の特性結果を、それぞれ表す。
【0459】
また、図20及び図21に示す各グラフにおいて、横軸はゲート電圧Vgを、第1の縦
軸はドレイン電流Idを、第2の縦軸は電界効果移動度μFEを、それぞれ表す。
【0460】
なお、横軸は-15Vから20Vとして示した。また、実線は、ドレイン電圧Vdが1
V、10Vのときの初期特性のVg-Id特性と、ゲート電圧Vgを10Vとしたときの
ゲート電圧に対する初期特性の電界効果移動度を表す。また、破線は、ドレイン電圧Vd
が1V、10VのときのGBT試験後のVg-Id特性と、ゲート電圧Vgを10Vとし
たときのゲート電圧に対するGBT試験後の電界効果移動度を表す。なお、当該電界効果
移動度は各試料の飽和領域での結果である。
【0461】
また、各試料において、基板内に同じ構造のトランジスタを20個作製した。したがっ
て、図20及び図21に示すグラフにおいては、20個のトランジスタのデータを重ねて
示している。
【0462】
図20及び図21より、試料1乃至試料6において、実線で示す初期特性においては、
良好なスイッチング特性が得られていることが分かる。一方で、破線で示すGBT試験後
の特性においては、試料1乃至試料3においては、初期特性に対して概ね変動がない、ま
たは変動が極めて少ない(破線が実線と概ね重なって図示されている)。しかしながら、
図21に示す試料4乃至試料6においては、実線で示す初期特性に対して、破線で示すG
BT試験後の特性において、大きな変動が確認される。具体的には、GBT試験後におい
て立ち上がりの電圧がマイナス方向にシフトしている。また、ゲート電圧(Vg)をマイ
ナス方向からプラス方向に変化させた際に段階的に変化する2つのピークを有している。
【0463】
本発明の一態様である試料1乃至試料3と、比較用の試料4乃至試料6の大きな構造の
違いとして、バックゲート電極(バックゲート電極527及びバックゲート電極528)
の形状が異なる。本発明の一態様である試料1乃至試料3においては、バックゲート電極
527の形状が酸化物半導体膜518を覆い、且つゲート電極515と端部と重畳してい
る。別言すると、酸化物半導体膜518のチャネル部の側面を上下のゲート電極(ゲート
電極515及びバックゲート電極527)によって、覆われた構造といえる。また、別言
すると、酸化物半導体膜518のチャネル部側面の外周部で上下のゲート電極(ゲート電
極515及びバックゲート電極527)が誘電体(ゲート絶縁膜517及び保護膜526
)を介して対向している構造ともいえる。
【0464】
一方で、比較用の試料4乃至試料6においては、バックゲート電極528の形状が、酸
化物半導体膜518よりも内側に形成されている。
【0465】
GBT試験後において、酸化物半導体膜518のチャネル部側面の外周部において、寄
生チャネルが形成されやすい。しかしながら、本発明の一態様の試料1乃至試料3は、酸
化物半導体膜518のチャネル部側面の外周部を、上下のゲート電極(ゲート電極515
及びバックゲート電極527)によって覆われた構造である。したがって、上下のゲート
電極によって、酸化物半導体膜518のチャネル部側面の外周部に発生しうる寄生チャネ
ルを無くす、または寄生チャネルの影響を低減することができる。
【実施例2】
【0466】
本実施例では、GBT試験後の劣化特性におけるデバイスの寿命推定について説明する
【0467】
本実施例では、本発明の一態様である試料7を作製した。また、試料8乃至10を比較
例として用いた。本発明の一態様である試料7については図22を参照して、比較用の試
料8乃至10については図23及び図24を参照して、それぞれ説明を行う。
【0468】
(試料7)
試料7は、基板511と、基板511上のゲート電極515と、基板511及びゲート
電極515上のゲート絶縁膜517と、ゲート絶縁膜517上に設けられ、且つゲート電
極515と重畳する領域に設けられた酸化物半導体膜518と、ゲート絶縁膜517及び
酸化物半導体膜518上の一対の電極521、522と、酸化物半導体膜518及び一対
の電極521、522上の保護膜526と、保護膜526上に設けられ、且つゲート電極
515と重畳する領域に設けられたバックゲート電極527と、を有する(図22参照)
【0469】
なお、保護膜526は、酸化物絶縁膜523、酸化物絶縁膜524、及び窒化物絶縁膜
525の3層の積層構造で形成した。また、バックゲート電極527の両端部は、図22
(B)に示すように、ゲート電極515の両端部と概略一致している。また、バックゲー
ト電極527は、図22(C)に示すように、保護膜526を介して酸化物半導体膜51
8を覆うように形成した。
【0470】
なお、図22に示す試料7の作製方法について、実施例1に示す試料1と同様の作製方
法である。したがって、試料7は、試料1に記載の作製方法を援用することで形成するこ
とができる。
【0471】
(試料8)
試料8は、基板511と、基板511上のゲート電極515と、基板511及びゲート
電極515上のゲート絶縁膜517と、ゲート絶縁膜517上に設けられ、且つゲート電
極515と重畳する領域に設けられた酸化物半導体膜518と、酸化物半導体膜518上
に設けられ、且つ酸化物半導体膜518に達する一対の開口部550、552を有する保
護膜540と、保護膜540上に設けられ、且つ酸化物半導体膜518に接する一対の電
極521、522と、保護膜540及び一対の電極521、522上の保護膜542と、
保護膜542上に設けられ、且つゲート電極515と重畳する領域に設けられたバックゲ
ート電極544と、を有する(図23参照)。
【0472】
なお、バックゲート電極544の端部は、図23(B)に示すように、ゲート電極51
5の両端部よりも内側に位置する。また、バックゲート電極544は、図23(C)に示
すように、保護膜540、542を介して酸化物半導体膜518を覆う。
【0473】
次に、図23に示す試料8の構成を以下に示す。
【0474】
基板511上にゲート電極515を有する。ゲート電極515は、厚さ30nmのMo
-Ti膜と厚さ315nmのCu膜の積層膜である。
【0475】
ゲート電極515上にゲート絶縁膜517を有する。ゲート絶縁膜517は、厚さ30
nmの窒化シリコン膜と、厚さ400nmの酸化シリコン膜の積層膜である。
【0476】
ゲート絶縁膜517上に酸化物半導体膜518を有する。酸化物半導体膜518は、厚
さ50nmのIGZO膜である。
【0477】
酸化物半導体膜518上に開口部550、552を備えた保護膜540を有する。保護
膜540は、厚さ100nmの酸化シリコン膜である。
【0478】
開口部550、552を覆うように保護膜540上に一対の電極521、522を有す
る。電極521、522は、厚さ30nmのMo-Ti膜と、厚さ425nmのCu膜の
積層膜である。
【0479】
保護膜540及び電極521、522上に保護膜542を有する。保護膜542は、厚
さ325nmの酸化シリコン膜である。
【0480】
保護膜542上にバックゲート電極544を有する。バックゲート電極544は、厚さ
30nmのMo-Ti膜と、厚さ10nmのITO膜の積層膜である。
【0481】
(試料9)
試料9は、基板511と、基板511上のゲート電極515と、基板511及びゲート
電極515上のゲート絶縁膜517と、ゲート絶縁膜517上に設けられ、且つゲート電
極515と重畳する領域に設けられた酸化物半導体膜518と、ゲート絶縁膜517及び
酸化物半導体膜518上の一対の電極521、522と、酸化物半導体膜518、及び一
対の電極521、522上の保護膜526と、を有する(図24参照)。
【0482】
なお、保護膜526は、酸化物絶縁膜523、酸化物絶縁膜524、及び窒化物絶縁膜
525の3層の積層構造で形成した。
【0483】
また、試料9は、試料7と比較しバックゲート電極が設けられていない構造である。
【0484】
次に、図24に示す試料9の作製方法を以下に示す。
【0485】
基板511上にゲート電極515を形成した。ゲート電極515としては、厚さ10n
mのタングステン膜を用いた。
【0486】
次に、ゲート電極515上にゲート絶縁膜517を形成した。ゲート絶縁膜517とし
ては、厚さ400nmの窒化シリコン膜と、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を積層し
て形成した。
【0487】
次に、ゲート絶縁膜517上に酸化物半導体膜518を形成した。酸化物半導体膜51
8としては、厚さ35nmのIGZO膜を用いた。該IGZO膜は、In:Ga:Zn=
1:1:1(原子数比)のターゲットを用いた。
【0488】
次に酸化物半導体膜518上に一対の電極521、522を形成した。電極521、5
22としては、厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmのアルミニウム膜と、
厚さ200nmのチタン膜と、の積層膜を用いた。
【0489】
次に、酸化物半導体膜518及び電極521、522上に保護膜526を形成した。保
護膜526としては、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜と、厚さ400nmの酸化窒化
シリコン膜と、厚さ100nmの窒化シリコン膜を用いた。なお、厚さ50nmの酸化窒
化シリコン膜は、基板温度を350℃として成膜した。また、厚さ400nmの酸化窒化
シリコン膜及び厚さ100nmの窒化シリコン膜は基板温度220℃として成膜した。
【0490】
以上の工程により、試料9を作製した。
【0491】
(試料10)
試料10は、先に記載した試料9と酸化物半導体膜518及び酸化物半導体膜518形
成後の熱処理が異なる。
【0492】
具体的には、試料10の酸化物半導体膜518としては、第1の酸化物半導体膜と、第
2の酸化物半導体膜の積層構造とした。第1の酸化物半導体膜としては、厚さ35nmの
IGZO膜を用いた。なお、第1の酸化物半導体膜は、In:Ga:Zn=1:1:1(
原子数比)のターゲットを用いた。また、第2の酸化物半導体膜としては、厚さ20nm
のIGZO膜を用いた。なお、第2の酸化物半導体膜は、In:Ga:Zn=1:3:2
(原子数比)のターゲットを用いた。
【0493】
また、試料10の酸化物半導体膜518形成後、窒素雰囲気で、450℃、1時間の加
熱処理を行った。
【0494】
以上の工程により、試料10を作製した。なお、試料10の上述した工程以外は、先に
記載の試料9と同様のため、先の記載を援用することで試料10を作製することができる
【0495】
なお、試料7、試料9、及び試料10のトランジスタは、チャネル長(L)が6μm、
チャネル幅(W)が50μmである。また、試料8のトランジスタは、チャネル長(L)
が10.2μm、チャネル幅(W)が82.6μmである。
【0496】
<プラスGBT試験におけるデバイス寿命推定について>
次に、上記作製した試料7乃至10のプラスGBT試験を行った。ここでは、ゲートB
Tストレス試験条件としては、基板温度を60℃とし、測定環境を暗室下(dark環境
下)において、ゲート電圧として+30Vを印加してストレス時間を条件振りした。
【0497】
なお、試料7、試料9、及び試料10については、それぞれにおいてストレス時間を1
00秒、500秒、1500秒、2000秒、3600秒として、しきい値電圧の変動量
を測定した。また、試料8については、ストレス時間を100秒、300秒、600秒、
1000秒、1800秒、3600秒として、しきい値電圧の変動量を測定した。
【0498】
図25に試料7乃至試料10の各ストレス時間におけるしきい値電圧の変動量と、各変
動量から得た近似曲線を示す。なお、図25に示す近似曲線は、全て累乗近似線とした。
また、図25は両対数グラフであり、図25において、横軸は対数で表したストレス時間
を示し、縦軸は対数で表したしきい値電圧の変動量(ΔVth)を示す。また、図25
示す両対数グラフは、横軸と縦軸の対数目盛の間隔が等しい。
【0499】
図25に示す結果より、本発明の一態様である試料7の対数で表したストレス時間に対
する、対数で表したしきい値電圧の変動量の累乗近似線と、しきい値電圧の変動量が0V
の直線とがなす角度が17°近傍であることがわかる。また、ストレス時間が0.1時間
のときのしきい値電圧の変動量が0.06V近傍であることがわかる。また、試料7の累
乗近似線の傾きは、0.3119V/hrであった。
【0500】
また、比較用の試料8の対数で表したストレス時間に対する、対数で表したしきい値電
圧の変動量の累乗近似線と、しきい値電圧の変動量が0Vの直線とがなす角度が31°近
傍であることがわかる。また、ストレス時間が0.1時間のときのしきい値電圧の変動量
が0.05V近傍であることがわかる。また、試料8の累乗近似線の傾きは、0.599
3V/hrであった。
【0501】
また、比較用の試料9の対数で表したストレス時間に対する、対数で表したしきい値電
圧の変動量の累乗近似線と、しきい値電圧の変動量が0Vの直線とがなす角度が24°近
傍であることがわかる。また、ストレス時間が0.1時間のときのしきい値電圧の変動量
が0.4V近傍であることがわかる。また、試料9の累乗近似線の傾きは、0.41V/
hrであった。
【0502】
また、比較用の試料10の対数で表したストレス時間に対する、対数で表したしきい値
電圧の変動量の累乗近似線と、しきい値電圧の変動量が0Vの直線とがなす角度が27°
近傍であることがわかる。また、ストレス時間が0.1時間のときのしきい値電圧の変動
量が0.02V近傍であることがわかる。また、試料10の累乗近似線の傾きは、0.4
153V/hrであった。
【0503】
図25に示すように、本発明の一態様の試料7は、対数で表したストレス時間に対する
、対数で表したしきい値電圧の変動量の累乗近似線と、しきい値電圧の変動量が0Vの直
線とがなす角度が30°以下であり、ストレス時間が0.1時間のときのしきい値電圧の
変動量が0.2V未満である。このような関係を用いた半導体装置は、しきい値電圧の変
動量が小さい。本発明の一態様の試料7は、酸化物半導体膜のチャネル形成領域の側面を
上下のゲート電極によって覆うことで、トランジスタ特性の変動量を低減できることが分
かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32