(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】介助用具および介助用具セット
(51)【国際特許分類】
A61G 1/048 20060101AFI20241101BHJP
A61G 1/04 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
A61G1/048
A61G1/04
(21)【出願番号】P 2023206867
(22)【出願日】2023-12-07
【審査請求日】2023-12-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】723017222
【氏名又は名称】足立 眞由美
(72)【発明者】
【氏名】足立 眞由美
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3108190(JP,U)
【文献】特開平11-276533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0186012(US,A1)
【文献】特開2006-181160(JP,A)
【文献】米国特許第6453492(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0276235(US,A1)
【文献】特開2005-334347(JP,A)
【文献】特開2011-255014(JP,A)
【文献】特開2005-118471(JP,A)
【文献】特開2004-209050(JP,A)
【文献】特開2019-130152(JP,A)
【文献】特開平10-37012(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207382(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/048
A61G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介助者を載置する長尺のマット部と、
介助者の背中側に配置されるベスト部と、
長尺であり長手方向における中央部が前記ベスト部に保持されるとともに、長手方向における両端部それぞれが前記マット部に連結された肩ベルトと、
前記ベスト部と連続一体に形成され前記ベスト部を前記介助者に固定するための腰部ベルトと、を備え、
前記マット部は、長尺板状のマット部本体と、前記マット部本体の裏面に、前記マット部本体の長手方向に2つの環状部分が並ぶように8の字状に縫い付けられるとともに、2つの環状部分それぞれに2つずつ連結部が設けられた第1マット部ベルトを有し、
前記肩ベルトの両端部は、それぞれ、前記連結部に連結され、
前記マット部本体における前記第1マット部ベルトが縫い付けられた部分は、使用時において、前記被介助者の少なくとも体幹と大腿部とを支えるように配置され、
前記第1マット部ベルトは、前記マット部本体の厚さ方向から前記マット部本体を見たときに、全体が前記マット部本体の内側に配置されるように、前記マット部本体の裏面に縫い付けられている、介助用具。
【請求項2】
被介助者を載置する長尺のマット部と、
介助者の背中側に配置されるベスト部と、
長尺であり長手方向における中央部が前記ベスト部に保持されるとともに、長手方向における両端部それぞれが前記マット部に連結された肩ベルトと、
前記ベスト部と連続一体に形成され前記ベスト部を前記介助者に固定するための腰部ベルトと、を備え、
前記マット部は、長尺板状のマット部本体と、前記マット部本体の裏面に、前記マット部本体の長手方向に2つの環状部分が並ぶように8の字状に縫い付けられるとともに、2つの環状部分それぞれに2つずつ連結部が設けられた第1マット部ベルトを有し、
前記肩ベルトの両端部は、それぞれ、前記連結部に連結され、
前記マット部本体における前記第1マット部ベルトが縫い付けられた部分は、使用時において、前記被介助者の少なくとも体幹と大腿部とを支えるように配置され、
前記マット部本体には、前記第1マット部ベルトの前記2つの環状部分それぞれに2つずつ設けられた4つの連結部を隠す位置に外側に向けて突き出した4つの舌片が設けられている、介助用具。
【請求項3】
被介助者を載置する長尺のマット部と、
介助者の背中側に配置されるベスト部と、
長尺であり長手方向における中央部が前記ベスト部に保持されるとともに、長手方向における両端部それぞれが前記マット部に連結された肩ベルトと、
前記ベスト部と連続一体に形成され前記ベスト部を前記介助者に固定するための腰部ベルトと、を備え、
前記マット部は、長尺板状のマット部本体と、前記マット部本体の裏面に、前記マット部本体の長手方向に2つの環状部分が並ぶように8の字状に縫い付けられるとともに、2つの環状部分それぞれに2つずつ連結部が設けられた第1マット部ベルトを有し、
前記肩ベルトの両端部は、それぞれ、前記連結部に連結され、
前記マット部本体における前記第1マット部ベルトが縫い付けられた部分は、使用時において、前記被介助者の少なくとも体幹と大腿部とを支えるように配置され、
前記第1マット部ベルトは、前記マット部本体における前記介助者側における互いに離間した2箇所の一方の前記被介助者の大腿部側から前記介助者側とは反対側に向かって延在する大腿部支持部分と、前記2箇所のうちの他方の前記被介助者の背部側から前記介助者側とは反対側に向かって延在する背部支持部分と、を有し、
前記大腿部支持部分と前記背部支持部分とは、前記介助者側とは反対側に位置するほど互いに離れるように縫製されている、
介助用具。
【請求項4】
被介助者を載置する長尺のマット部と、
介助者の背中側に配置されるベスト部と、
長尺であり長手方向における中央部が前記ベスト部に保持されるとともに、長手方向における両端部それぞれが前記マット部に連結された肩ベルトと、
前記ベスト部と連続一体に形成され前記ベスト部を前記介助者に固定するための腰部ベルトと、を備え、
前記マット部は、長尺板状のマット部本体と、前記マット部本体の裏面に、前記マット部本体の長手方向に2つの環状部分が並ぶように8の字状に縫い付けられるとともに、2つの環状部分それぞれに2つずつ連結部が設けられた第1マット部ベルトを有し、
前記肩ベルトの両端部は、それぞれ、前記連結部に連結され、
前記マット部本体における前記第1マット部ベルトが縫い付けられた部分は、使用時において、前記被介助者の少なくとも体幹と大腿部とを支えるように配置され、
前記マット部本体の裏面には、前記被介助者の臀部にあたる位置には前記被介助者が前記マット部本体と共に滑り落ちるのを防ぐために滑り止め生地を縫製した滑り止め部を有し、前記滑り止め部以外はベッド上での移動がスムーズになるように滑りやすい生地になっている、
介助用具。
【請求項5】
前記マット部本体には、前記マット部に前記被介助者が所定の位置に載置された状態で、前記被介助者の頭部、前記被介助者の背中および前記被介助者の大腿部の位置の目印となる環状のステッチが形成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の介助用具。
【請求項6】
前記第1マット部ベルトにおける前記連結部が設けられた部分の近傍は、前記マット部本体から離脱可能となっている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の介助用具。
【請求項7】
前記マット部本体の長手方向における前記第1マット部ベルトが縫製された部分の外側には、前記被介助者の頭部及び足部を支えるとともに両端部が持ち手となる0の字状の第2マット部ベルトが縫い付けられている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の介助用具。
【請求項8】
前記マット部本体には、一端が前記介助者の反対側に縫い付けられ、前記被介助者の体を包んで保護するためのくるみ布が設けられている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の介助用具。
【請求項9】
前記マット部本体の短手方向における両端縁は、前記マット部本体の長手方向における中央部から両端部に近づくほど、前記マット部本体の短手方向における幅が狭くなるように湾曲している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の介助用具。
【請求項10】
前記肩ベルトは、2本存在し、
前記ベスト部は、2本の前記肩ベルトを、2本の前記肩ベルトそれぞれの長手方向における中央部において互いに交差するように保持し、
2本の前記肩ベルトそれぞれの両端部には、前記第1マット部ベルトに設けられた4つの前記連結部に連結可能な連結具が取り付け可能であり、
2本の前記肩ベルトそれぞれには、前記肩ベルトの長さを調節するための長さ調節金具が設けられている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の介助用具。
【請求項11】
前記肩ベルトは、
長尺であり長手方向における一端部に前記連結具が取り付けられるとともに、他端部に前記長さ調節金具が取り付けられた第1サブベルトと、
長尺であり長手方向における一端部に前記連結具が取り付けられるとともに、他端部が前記長さ調節金具に保持され、前記長さ調節金具により保持される部分を変更することにより前記肩ベルトの長さを変更できる第2サブベルトと、を有し、
前記第2サブベルトの他端部には、前記第2サブベルトにおける前記長さ調節金具により保持される部分よりも前記他端部側の部分を折り曲げた状態で保持するための環状ゴムが取り付けてある、
請求項10に記載の介助用具。
【請求項12】
被介助者を載置する長尺のマット部と、
介助者の背中側に配置されるベスト部と、
長尺であり長手方向における中央部が前記ベスト部に保持されるとともに、長手方向における両端部それぞれが前記マット部に連結された肩ベルトと、
前記ベスト部と連続一体に形成され前記ベスト部を前記介助者に固定するための腰部ベルトと、を備え、
前記マット部は、長尺板状のマット部本体と、前記マット部本体の裏面に、前記マット部本体の長手方向に2つの環状部分が並ぶように8の字状に縫い付けられるとともに、2つの環状部分それぞれに2つずつ連結部が設けられた第1マット部ベルトを有し、
前記肩ベルトの両端部は、それぞれ、前記連結部に連結され、
前記マット部本体における前記第1マット部ベルトが縫い付けられた部分は、使用時において、前記被介助者の少なくとも体幹と大腿部とを支えるように配置され、
前記ベスト部は、
前記介助者に装着された状態で前記介助者の背中を覆う背覆い部と
、
前記背覆い部と連続一体に形成され、前記介助者に装着された状態で、前記背覆い部の2箇所それぞれから前記介助者の両肩を覆うように延在する2つの肩覆い部と、を有し、
前記背覆い部は、前記ベスト部が前記介助者に装着された状態で、前記介助者の左右肩側から左右脇側へ前記肩ベルトを通すための開口部を有し、
左右脇側の前記開口部の幅は、前記肩ベルトの幅の1.5倍以上である、
介助用具。
【請求項13】
前記背覆い部は、前記ベスト部が前記介助者に装着された状態で、前記介助者の背中に接触する側の内側シートと、前記内側シートにおける前記介助者に接触する側とは反対側から前記内側シートを覆うように重ね合わされ、周部における前記開口部に対応する部分を除く部分全体に亘って前記内側シートに縫い付けされた外側シートと、を有し、前記肩ベルトにおける、前記内側シートと前記外側シートとの間に介在する部分の移動を規制するように前記内側シートと前記外側シートとを縫い合わせてなるステッチ部分が形成されている、
請求項12に記載の介助用具。
【請求項14】
前記肩ベルトの長さ調整金具は、前記肩覆い部と重なる位置に配置されており、
前記肩覆い部における前記背覆い部から離間した位置において前記肩ベルトが前記肩覆い部と重なった位置から離脱するのを防止する離脱防止部が設けられている、
請求項12または13に記載の介助用具。
【請求項15】
前記背覆い部における前記肩覆い部側とは反対側の端部よりも前記肩覆い部側に位置し且つ前記ベスト部が前記介助者に装着された状態で前記介助者の背中に接触する部分に固定され、前記腰部ベルトを揺動自在に支持する腰部ベルト支持部を更に備える、
請求項12に記載の介助用具。
【請求項16】
前記腰部ベルトは、前記介助者に装着された状態で、両端部が前記介助者のへその下方に位置する形状を有する、
請求項1から4、
12のいずれか1項に記載の介助用具。
【請求項17】
前記腰部ベルトは、背部に非伸縮性メッシュ素材、腹側部に伸縮素材、腹部に非伸縮性で厚みのあるソフトな素材でできており、装着は腹部で重ね面ファスナーにより行う、
請求項1から4、
12のいずれか1項に記載の介助用具。
【請求項18】
前記腰部ベルトには、前記肩ベルトの端部に設けられた前記連結部に連結される連結具を掛止し、前記肩ベルトが前記ベスト部から抜け落ちることを防ぐ引っ掛け部が設けられている、
請求項1から4、
12のいずれか1項に記載の介助用具。
【請求項19】
前記肩ベルトにおける前記連結具が設けられる側の端部に固定され、前記引っ掛け部に連結された環状ゴムを更に備える、
請求項18に記載の介助用具。
【請求項20】
前記第1マット部ベルトの前記介助者と反対側の2つの前記連結部には、青糸の刺繍が施され、前記介助者側の2つの前記連結部には赤糸の刺繍が施され、2つの前記肩ベルトの前記介助者の胸側の先端部には、青糸の刺繍が施され、脇側の先端部には、赤糸の刺繍が施されており、前記肩ベルトと前記第1マット部ベルトの前記連結部は、同色の前記連結具で連結されている、
請求項
10に記載の介助用具。
【請求項21】
請求項1から4、
12のいずれか1項に記載の介助用具と、
袋状であり前記マット部を収納可能な第1収納部と、袋状であり前記第1収納部の内側に配置されるとともに、開口端部の一部が前記第1収納部の開口端部に縫い付けられ、前記ベスト部および前記腰部ベルトを収納可能な第2収納部と、前記第1収納部の開口端部における前記第2収納部が縫い付けられた縫い付け部分に両端部が固定された第1把持部と、前記第1収納部の開口端部における前記縫い付け部分以外の部分に固定された第2把持部と、前記第2収納部の開口端部における前記縫い付け部分以外の部分に固定された第3把持部と、を有するバッグと、を備える、
介助用具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介助用具および介助用具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
臥床中心の生活で、立位・座位の困難な被介助者のベッドから車等への移動移乗は、介助者ともに極めて困難で危険であり日常生活に大きな制約となっている。
これまでの介助用具は、被介助者をシート状のものや板状のものの上に載置し移動することに焦点が置かれていて、外出におけるベッドから車等への移乗および狭い空間への移動移乗介助は一人介助で行う必要があり、従来の技術では実現できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】登録実用新案第3108190号
【文献】登録実用新案第3124647号
【文献】特許第4662572号公報
【文献】特開2021-183754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベッド上中心の生活の方、立位・座位の難しい方の日常生活は制限されることが多く、特に「移動移乗」は極めて困難であり大きな課題である。
寝たままの姿勢で移動移乗ができ被介助者と介助者の両者が楽に自由に外出することができたなら、移動移乗・外出は「特別なこと」ではなくなる。
【0005】
介護生活の中の課題として、「廃用症候群」がある。この廃用症候群は、生活の中心をベッド上で過ごすことで、気分転換もできず精神的ストレスで心や体の不調に陥る可能性が大きくなる症状である。心の不調は体の不調につながり、体の不調は心の不調につながる。運動量が減り食欲が落ち栄養不足から筋肉量も低下して益々体力が落ち悪循環に陥る。そして、被介助者が体調を崩すと介助者も精神的身体的な負担がかかり、介助者が体調を崩すと被介助者もその影響を受ける。このように互いに影響しあっていて共に厳しい状況に陥り、希望が持てなくなる。
外部とのコミュニケーションが少なく孤独を感じるなど、社会から孤立する。
場所や時間にとらわれないで、自由な行動ができない。移動移乗は介助者、被介助者ともに身体の負担が大きく、外出するには介護タクシーを利用しなければならず、経済的な負担が大きく気軽に外出できない。
体調不良時の移動手段が救急車か介護タクシーとなり、病院へ行くことをためらってしまい、早期発見ができても早期治療につながらない。
新型コロナウイルス禍等で感染の不安がある場合には、介護タクシーを利用したくない。
社会的動向として、入院から在宅介護へ移行し、その人らしい人生を送ることが出来る環境の整備に向かっているが、家などの環境を整備することは難しく、移動が困難であるために行動が制限され、住み慣れた環境で住み続けることは難しい。
少子高齢化や、同居家族がいても家庭内での介助者は限定的で、一人で介護を担っている場合は少なくない。在宅介護を行っている介助者の「介護うつ」が増加している。
【0006】
また、複数人で抱えるスペースのない狭い空間での移動移乗は一人で介助しなければ不可能である。車の座席や車いすなどに乗降するといった狭い空間での移動介助は極めて困難で危険であり、介助者一人で被介助者を移動移乗介助することはできない。
つかみどころのない被介助者をしっかり抱き抱え保持することは難しい。移動移乗介助時の不安定かつ無理な体勢での介助は、肩痛腰痛など体に大きな負担となる。
屋内外には段差があり車いすでは通過できず、外出することが困難である。
体の弱い被介助者は移動移乗による負担が大きい。被介助者の体勢が不安定である為に介助者の握力や腕力による強い支持が必要となり、強く抱き抱えられることで圧迫感や痛みを感じる。さらに、移乗の際にも強い力を必要とする介助に伴う揺さぶられや衝撃は少なからずあり、被介助者はその度に苦痛を感じる。
【0007】
また、介助者は被介助者を落とさないように強い握力と腕力を必要とする。さらに、移動移乗の際、被介助者の手足が周囲に引っ掛かったりぶつけたり落とさないように、そして、自身の体勢が崩れないようにと注意点が多く危険である。
介助者は水平移乗介助とは異なり、上下動作を伴う移動介助や抱き抱えての移動介助、そして、家の廊下や車などの乗降という狭い空間での移動、車とリクライニング車いす間などの移動など、強力な力を必要とする複雑な動作を伴う。よって、体への負担は大きく危険である。特に被介助者を抱えながらの車座席の乗降は大きな負荷が介助者にかかり、両手は被介助者を抱えている為、自身の不安定な体勢を周囲に手をついて支えることもできず危険である。介助者自身が不安定な体勢ということは、被介助者も危険な状態ということがいえる。
これらの課題は、外出することを困難にし日常生活が制限されることに繋がっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、
被介助者を載置する長尺のマット部と、
介助者の背中側に配置されるベスト部と、
長尺であり長手方向における中央部が前記ベスト部に保持されるとともに、長手方向における両端部それぞれが前記マット部に連結された肩ベルトと、
前記ベスト部と連続一体に形成され前記ベスト部を前記介助者に固定するための腰部ベルトと、を備え、
前記マット部は、長尺板状のマット部本体と、前記マット部本体の裏面に、前記マット部本体の長手方向に2つの環状部分が並ぶように8の字状に縫い付けられるとともに、2つの環状部分それぞれに2つずつ連結部が設けられた第1マット部ベルトを有し、
前記肩ベルトの両端部は、それぞれ、前記連結部に連結され、
前記マット部本体における前記第1マット部ベルトが縫い付けられた部分は、使用時において、前記被介助者の少なくとも体幹と大腿部とを支えるように配置され、
前記第1マット部ベルトは、前記マット部本体の厚さ方向から前記マット部本体を見たときに、全体が前記マット部本体の内側に配置されるように、前記マット部本体の裏面に縫い付けられている、介助用具である
【発明の効果】
【0009】
これまでの移動に関する介助用具との大きな違いとして次の点があげられる。
これまでの介助用具は被介助者をシート状のものや板状のものの上に載置させて移動することに焦点を当てた介助用具であり、介助者の体を守るという点において至っておらず、介助者の負担は軽減されていない。介助者の負担が大きいということは、被介助者も安全性に欠けるということが言える。
本発明の介助用具は、被介助者と介助者、両者の体を守り負担を軽減することによって、臥床中心の生活、立位・座位のとりにくい方を一人で移動移乗介助が行えるようになり、さらに、その強みを活かして、一人介助でしか実現できない狭い空間にも移動移乗ができる介助用具である。そうすることによって、外出の自由を得、その先にあるQOLの向上と、それぞれの可能性の広がりを期待できるものである。
これらは、従来の移動移乗に関する介助用具では成しえなかった領域である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)はマット部を上から見た図、(b)は介助者が抱えたイメージ図。
【
図2】(a)はマット部を上から見て透過した図、(b)はA-A線断面図、(c)はB-B線断面図、(d)はC-C線断面図。
【
図3】被介助者が載置されたマット部を下から見た図。
【
図4】マット部とベスト部を透過して、マット部本体裏面の第1マット部ベルトとベスト部の肩ベルトとの構造と関係性、被介助者との関係性を表した図。
【
図6】マット部本体の舌片について、(a)は舌片の間に凹部を設けた図、(b)は凹部を設けない場合の図。
【
図7】ベスト部と肩ベルトと腰部ベルトを表した図。
【
図8】肩ベルトを外した状態の図で、(a)はベスト部と腰部ベルトの外側の図、(b)はベスト部と腰部ベルトの内側の図。
【
図9】ベスト部と腰部ベルトとの内側の構造を表す図。
【
図10】(a)は肩ベルトの構造を示す図、(b)は環状ゴムの使い方を示す図、(c)は長さ調節部分を表した図、(d)と(e)は長さ調節金具の使い方を側面から見た図。
【
図11】(a)は介助者にベスト部と腰部ベルトが装着された正面イメージ図、(b)は介助者にベスト部と腰部ベルトが装着された後ろ姿を表す図、(c)は外側シートとステッチの必要性を説明する為の比較として用いた図。
【
図12】ベスト部と腰部ベルトが装着された介助者を横から見た図であり、(a)は介助前の装着イメージ図、(b)は介助中のイメージ図。
【
図13】(a)は介助者と被介助者が接触した状態の図、(b)は介助者と被介助者が離れた状態の図。
【
図14】人を省いて表現した図で、(a)はベスト部と腰部ベルトの正面イメージ図、(b)はマット部とベスト部と腰部ベルトのイメージ図。
【
図15】(a)はマット部とベスト部を連結したイメージ図、(b)は介助中のイメージ図。
【
図16】人を省いて後ろから見た図で、(a)はベスト部と腰部ベルトのイメージ図、(b)はマット部とベスト部と腰部ベルトのイメージ図。
【
図17】後ろから見た図で、(a)はマット部とベスト部を連結したイメージ図、(b)は介助中のイメージ図。
【
図19】(a)は収納バッグの完成図、(b)は第1収納部の図、(c)は第2収納部の図。
【
図23】被介助者の体の下にマット部を敷き込んでいる図。
【
図26】ベスト部を装着した介助者が、被介助者を引き寄せて抱え上げようとしている図。
【
図34】リクライニング車いすを車の横に置き左側アームレストを下げた図。
【
図36】リクライニング車いすから抱え上げる介助動作を表した図。
【
図37】マット部本体裏面の高摩擦部によるズレ下がりの防止を表した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の介助用具は、被介助者の体を守ることと、介助者にかかる負担を軽減し動作をサポートすることで、一人介助による安定性と安全性の高い移動移乗介助を可能にする介助用具を提供するものである。
【0012】
はじめに、本発明の介助用具の背景と経緯を説明する。
私は、臥床中心の生活であった母の移動を、緊急時以外は毎月の通院と体調不良時の昼夜を問わない病院搬送など自家用車で行っていた。その中で移動移乗は、疼痛のある母にとって大きな負担であり、そして、母を抱き抱えて移動介助する私自身も母の体が周辺に当たらないよう、落とさないよう、また、つまずかないようにと様々に注意を払いながら移動移乗介助を行っていた。
しかし、体力低下が進み私の首に両腕を回してしっかりつかまることができなくなると、以前と変わらない母の体重はとても重く感じ、移動移乗介助することが困難になった。そのような中、病院から帰宅し車からベッドへの移動介助時、私は母をずり落としそうになる怖い経験をし、強い腕力の支持が必要な介助に限界を感じた。そして、介護生活の中で最も重要であり、最も困ったことを解決するために本発明の介助用具に至った。
【0013】
次に、本発明の介助用具について説明する。
本発明の介助用具は、被介助者を載置する長尺のマット部1と、介助者の背中側に配置されるベスト部30と、長尺であり長手方向における中央部がベスト部30に保持されるとともに、長手方向における両端部それぞれがマット部1に連結された肩ベルト32と、ベスト部30と連続一体に形成されベスト部30を介助者に固定するための腰部ベルト31とを備えている。
マット部1は、マット部本体裏面2bの長手方向に2つの環状部分が並ぶように8の字状の第1マット部ベルト28が縫い付けられるとともに、2つの環状部分それぞれに2つずつ連結部10,11と連結部12,13が設けられている。
肩ベルト32の両端部に備わる連結具であるカラビナ35,36それぞれは、マット部本体2の連結部10,11と連結部12,13に連結され、マット部本体裏面2bにおける第1マット部ベルト28が縫い付けられた部分は、使用時において、被介助者の少なくとも体幹と大腿部とを支えるように配置されている。
【0014】
本発明の介助用具は、被介助者の下にマット部本体2を敷き込み、くるみ布9で被介助者の体を包み保護しハンモックのように面で支える。ベスト部30と腰部ベルト31は介助者の動作をサポートする。マット部1とベスト部30を連結し、介助動作に応じた荷重バランスがとれる設計になっている。
マット部1を肩から下げる構造にすることで、介助者は腕力や握力の強い支持を必要とせず、体全体の大きな筋肉で保持できるので、両上肢は補助的な支持で落とす心配もなく介助が行える。また、不安定な体勢をとる場面では左上肢を被介助者から放して周囲に手をつくなど、自身の体を支えることで、ゆっくりとした動作で被介助者をやさしく移乗させることができる。安全で楽に移動移乗介助ができるため、被介助者と介助者の精神的身体的な負担が軽減される。
【0015】
また、扱い易さに配慮したシンプルな構造は、直感的な扱いでスムーズに移動移乗介助の一連の動作を行うことができ、被介助者と介助者の負担を軽減し、移動移乗とその介助による危険を回避することができる。また、被介助者に関わる人たち皆が容易に扱うことを可能にし、且つ、一人介助から複数人での介助まであらゆる場面で様々な移乗に対応できるものである。
また、本発明の介助用具は、体に当たったり車いすに巻き込んだり、複数人での移動介助の際に邪魔になるような金具類などは最小限としマット部1には用いず、肩ベルト32に集約されており、マット部1と肩ベルト32との分離後は、柔らかい素材のみとなり安全に過ごすことができる。
また、本発明の介助用具は洗濯することができて衛生的に扱え、また、折り畳んでコンパクトに収納でき持ち運びも楽に行える。
【0016】
次に、マット部1の構造について
図1~
図4を用いて説明する。
マット部1は、マット部本体2とくるみ布9とで形成されている。マット部本体裏面2bには、第1マット部ベルト28がマット部本体2の長手方向に2つの環状部分が並ぶように8の字状に縫い付けられ、第1マット部ベルト28には連結部10~13が設けられている。第1マット部ベルト28は、マット部本体2の短手方向に延在して被介助者の大腿部を支える大腿部支持部分23と、腰部を支える互いの中央部で交差した2本の腰部支持部分24,25と、マット部本体2の短手方向に延在して背部を支える背部支持部分26で構成されている。大腿部支持部分23の両端がそれぞれ腰部支持部分24及び腰部支持部分25の一端と連結部10,11を介して繋がって1つの環状部分を構成している。また、背部支持部分26の両端がそれぞれ腰部支持部分24及び腰部支持部分25の他端と連結部12,13を介して繋がって他の1つの環状部分を構成している。マット部本体裏面2bの長手方向における第1マット部ベルト28が縫製された部分の外側には、被介助者の頭部及び足部を支える第2マット部ベルト21,22が0の字状に縫い付けられるとともに、第2マット部ベルト21,22の2つの環状部分それぞれに2つずつ両端部が持ち手となる持ち手14~17が設けられている。
【0017】
マット部本体2には、連結部10~13を隠す位置に外側に向けて突き出した4つの舌片3~6が設けられている。
第1マット部ベルト28で、体重の大部分を支えるため、連結部10~13とカラビナ35,36との連結時におけるマット部本体2の連結部付近にかかる被介助者の体へのくい込みを防止して体を保護している。
また、抱えやすさも考慮すると、
図6(b)に示すように、凹部を設けない場合、くい込みは防げるが抱き抱えた時に、被介助者の体側面に沿ってこの部分が起き上がる(
図15参照)ので舌片がよれて介助の邪魔になる。よって、
図6(a)に示すように、舌片3と舌片4、舌片5と舌片6のように間を凹ませることで抱えた時のマットのよれを防ぎ抱えやすくしている。これは、紙の模型を例にあげると、のりしろには切り込みが入っていることで自由に形成することができる。この仕組みを用いることでマット部1はよれることなく様々な形に変化できるので、介助がしやすくなる。
また、
図3および
図6(a)に示すように、介助者側の位置に設けられた舌片5と舌片6との間隔は、介助者の反対側の位置に設けられた舌片3と舌片4の間隔より広くなっており介助者が入るスペースを設けることでより抱えやすくなり動作を妨げることなく介助できる。
【0018】
図1に示すように、マット部本体2の短手方向における両端縁である側部7,8は、マット部本体2の長手方向における中央部から両端部に近づくほど、マット部本体2の短手方向における幅が狭くなるように湾曲しており、マット部本体2の余分な面積を省き抱き抱えやすくしている。且つ、用具の軽量化にもなっている。
【0019】
図1~
図3に示すように、マット部本体表面2aには、被介助者が所定の位置に載置された状態で、被介助者の頭部、背中および大腿部の位置の目印となる環状のステッチ18a,18b,18cが形成されているので、マット部1の方向が明確で扱いに迷わず、頭部が頭側のステッチ18aにくるように載置すると、第1マット部ベルト28の位置に支えたい部位が載置される。
また、ステッチ18a~18dによりマット部本体2に用いるウレタンフォーム64と表生地65とを固定し、マット部本体2を強化している。加えて、それが折り目となってマット部本体2が曲がりやすくなり抱えやすく収納もしやすくなる。
【0020】
図1および
図5に示すように、マット部本体2には、一端が介助者の反対側に縫い付けられ、被介助者の体を包んで保護するためのくるみ布9が設けられている。被介助者の上肢、体幹、下肢を伸縮性のある柔らかい生地でくるみ一体化し、上肢、下肢のばらつきを防ぎ、移動中の周囲へのぶつかりや引っ掛かりをなくし体を保護する。さらに、くるみ布9で包んだ体はコンパクトで体勢が崩れにくくなるので、介助者は抱き抱えやすくなり、荷重を重心で保持でき自然な姿勢で介助を行うことが可能となる。また、くるみ布9でくるむことで介助者の反対側に被介助者の体が逃げることなく落とすこともないので、介助者は自身の介助動作に集中できる。
また、体力がなく全身に力が入りにくくつかみどころのない状態の被介助者を抱き抱える場合、介助者は、落とさないように力を入れ、バランスをとるなど重さとは別のところでさらに力が必要となってくる。この時の被介助者は強く抱えられることで圧迫感や痛みを感じる。また、このような状態では、介助者は無理な体勢を強いられ負荷はさらに大きくなり、双方共に大変危険である。「持ちにくさ」を解消し持ちやすくすることで、「体重」は同じでも「感じる重さ」が軽くなる。且つ、被介助者も強く抱えられることの苦痛がなくなる。
【0021】
図2に示すように、
図2(a)は、マット部1を上から見て透過した図であり、薄い実線がマット部本体裏面2bに配置された第1マット部ベルト28と第2マット部ベルト21,22と高摩擦部19であり、薄い破線がそれぞれの縫製された位置を表している。
図2(b)~
図2(d)の断面図に示すように、マット部本体表面2aのステッチ18a~18dはマット部本体裏面2bまで貫通しているが、マット部本体裏面2bに縫製された位置である
図2(a)の薄い破線で表している縫い目はマット部本体表面2aには現れない。
また、マット部本体2の制作工程として、まず、マット部本体裏面2bに第1マット部ベルト28と第2マット部ベルト21,22と高摩擦部19とを縫い付ける。次に、マット部本体2に用いるウレタンフォーム64のマット部本体表面2a側に表生地65を重ね合わせステッチ18a~18dを入れて、くるみ布9を縫い付け、最後に縁取りテープ66で周部を縫い合わせるとマット部本体表面2aの表生地65が引っ張れてマット部本体2の周部のみが浮き上がる。これにより、体を包みやすく抱えやすくする効果が増す。
【0022】
図3は、被介助者が載置された状態でマット部1を下から見た図である。第1マット部ベルト28は、マット部本体裏面2bにおける介助者側における互いに離間した2箇所の一方の被介助者の大腿部側から介助者側とは反対側に向かって延在する大腿部支持部分23と、2箇所のうちの他方の被介助者の背部側から介助者側とは反対側に向かって延在する背部支持部分26とを備え、大腿部支持部分23と背部支持部分26とは、介助者側とは反対側に位置するほど互いに離れるように縫製されており、抱えた時被介助者を介助者の方に引き寄せやすく安定した保持が出来るように配置されている。
且つ、大腿部支持部分23および背部支持部分26は、介助者が抱き抱える両上肢に沿う位置に配置されており、介助者は両上肢による強い支持は必要としない。
また、大腿部支持部分23と背部支持部分26とは、介助者側に位置するほど互いに寄るように縫製されており、介助者の身幅に沿い抱き抱えた時にマット部本体2によれが生じることを防ぎ介助しやすいように配置されている。
また、体は部位によって密度に分布がある。この密度の大きい部位(体幹46%、大腿部14%)と両上肢16%を合わせると体重の約76%になるが、
図3に示すように、第1マット部ベルト28が縫い付けられた部分は、使用時において、被介助者の体重の大部分を支えるように配置されているので、被介助者の体勢が崩れにくく安定したホールド感を可能にする。また、腰部支持部分24,25を交差して縫製し被介助者の腰部をしっかり下から支えるので、抱き抱えた時の腰部の落ち込みを防ぐことができる。
【0023】
図3は、マット部本体裏面2bに配置された第1マット部ベルト28と第2マット部ベルト21,22の縫い目を破線で表した図である。第1マット部ベルト28における連結部10~13が設けられた部分の近傍は、マット部本体2から離脱可能となっており、大腿部支持部分23、腰部支持部分24,25、背部支持部分26は、マット部本体2の短手方向端部まで縫い付けられておらず、カラビナ35,36と連結された連結部10~13が自由に動く振れ幅を設けている。
詳しく説明すると、
図4に示すように、カラビナ35,36と連結部10~13とを連結した際、カラビナ35,36が左右にスライドすることで連結部10~13も連動し左右に動く。この振れ幅があることで、カラビナ35Lと連結部10、および、カラビナ35Rと連結部12が左右に動き被介助者の体の支持したいポイントに動いて保持することが出来るようになる。同様に、カラビナ36Lと連結部11、および、カラビナ36Rと連結部13も左右に動く振れ幅を設けることで介助者の身幅に沿うことができるようになる。よって、被介助者と介助者それぞれの体型に沿うように動き、被介助者の体勢を保ちながら安定した介助が行えるようになる。
また、
図3に示すように、持ち手14~17は、複数人での介助時に使用するので、第2マット部ベルト21,22は、マット部本体2の短手方向端部まで縫い付け固着し把持しやすくしている。
【0024】
図3および
図37に示すように、マット部本体裏面2bには、被介助者の臀部と大腿部にあたる位置には、フルフラット以外の姿勢をとっている場合に被介助者がマット部1と共にズレ下がるのを防ぐために滑り止め生地である高摩擦部19で構成された滑り止め部を備え、また、
図3および
図38に示すように、高摩擦部19以外はベッド上での移動がスムーズになるように滑りやすい生地である低摩擦部20を備えている。
【0025】
第1マット部ベルト28および、第2マット部ベルト21,22は、環状にそれぞれ一本のベルトで縫製されており、ベルトの耐久性と強度を保っている。
【0026】
図3に示すように、マット部本体2の短手方向両端部には、それぞれ4箇所ずつ計8箇所の持ち手10~17を備えている。
第1マット部ベルト28の連結部(持ち手)10~13と、第2マット部ベルト21,22の持ち手14~17を備えており、水平移乗や持ち上げ下げ移乗など複数人での介助が可能である(
図38,
図39)。
【0027】
図3に示すように、持ち手10~17は全て、マット部本体2の長手方向中心線から両端部に向かって同じ出である。本発明の介助用具は一人介助と複数人での介助を可能にするため、持ち手の長さは重要である。持ち手が長くなると、一人介助をする場合に持ち手14~17がマット部本体2からぶら下がり周囲のものに引っ掛かる危険があり介助の邪魔になる。また、複数人での介助時には介助者の強い力が必要となる。また、カラビナ35,36との連結時の肩ベルト32との長さのバランスも考慮し、連結部(持ち手)10~13と持ち手14~17とは介助者に配慮された長さとなっている。
【0028】
図3に示すように、舌片3,4の端部はマット部本体2の長手方向中心線と平行に突き出している。また、舌片5,6の端部はマット部本体2の長手方向中心線と平行に突き出しておらず、斜めにカットされておりマット部本体2に必要のない部分を省き、介助者がカラビナ36(R,L)と連結部11,13との連結と分離の操作を容易にしている。
【0029】
次に、マット部1の構造に適した素材について説明する。
マット部本体2は、10ミリ程度の厚みのあるウレタンフォーム64を用い、マット部本体表面2aには、滑りにくく通気性があり吸放湿機能のある肌触りの良い素材である表生地65を用いている。また、マット部本体裏面2bに配置されている高摩擦部19は、滑り止め加工した生地を用い、高摩擦部19以外の部分である低摩擦部20には、ストッキングや靴の内側などに使用されるトリコット素材などの滑りやすく摩擦に強い生地を用いている。くるみ布9は、肌触りが良く伸縮性と通気性があり吸放湿機能のある素材で形成されており、マット部本体裏面2bに配置されている第1マット部ベルト28と第2マット部ベルト21,22には、幅50ミリ程度のシートベルトのような素材を用いている。
【0030】
マット部1に用いる各素材の特徴を生かして得られる効果について説明する。
マット部本体2に用いるウレタンフォーム64は、クッション性と通気性、柔軟性があり、軽く、適度なハリと厚みのある肌触りの良い素材であるので、被介助者を優しく支え、移乗先の形状や硬さを気にすることなく移乗でき、振動や衝撃を吸収し体を保護し快適に過ごすことができる。
例えば、移乗先は、検査台、車の座席やリクライニング車いす、ストレッチャー等様々であり、水平移動や上下移動を伴う移動移乗時に生じる被介助者の体への振動を軽減する。さらに、移乗先の形状(凹凸面や広さ)にマット部本体2が柔軟に変形し、居心地を損なうことなく体を保護することができる。また、リクライニング時に圧のかかる臀部の負担を和らげる。また、寒い季節には、リクライニング車いす等、座面が冷たく硬くなっているがマット部本体2に載置されたまま移乗するので防寒にもなる。
また、一人介助を行うには、扱いやすさの点からみてもマット部本体2は柔軟性があり適度なハリと厚みが必要である。被介助者の下に敷き込みやすく外しやすい。また、移動移乗時等にマット部本体2が型崩れせずに介助することができる。布状の素材は抱え上げた時等、形が崩れるので介助しづらく移乗の度に整え直す必要があり適さない。
【0031】
マット部本体表面2aの表生地65に用いる滑りにくく通気性があり吸放湿機能のある肌触りの良い素材は、被介助者が、リクライニング時に体がズレ下がるのを防ぎ、長時間の臥床でも快適に過ごすことができる。
マット部本体裏面2bの高摩擦部19に用いる滑り止め加工した生地は、車やリクライニング車いす等に乗っている時にマット部1が座面からズレ下がることを防止する(
図37)。
また、マット部本体裏面2bの低摩擦部20に用いる摩擦に強く滑りやすい特徴のあるトリコット素材などは、ベッド上での引き寄せや水平移乗などが楽にスムーズに行え、被介助者と介助者にかかる負担を軽減する(
図38)。
【0032】
くるみ布9に用いる吸放湿機能があり、柔らかく伸縮性・通気性のある肌触りの良い軽い素材は、ムレを防ぎ、被介助者の体を締め付けず圧迫感なく包み込むことができるので、楽な体勢で過ごすことができる。
【0033】
第1マット部ベルト28と第2マット部ベルト21,22に用いるシートベルトのような耐久性のあるしなやかな素材は、体に優しく沿うことができ、体へのくい込みを防ぎながらしっかり安定したホールド感が得られる。また、連結部(持ち手)10~13および持ち手14~17としても、容易に加工ができ痛くなく把持することができる。
【0034】
次に、ベスト部30と腰部ベルト31の構造について説明する。
図7に示すように、介助者が装着するベスト部30は肩ベルト32を備え、腰部ベルト31と一体に構成されている。
【0035】
ベスト部30は、介助者に装着された状態で、介助者の背中を覆う背覆い部42と背覆い部42の2箇所それぞれから介助者の両肩を覆うように延在する2つの肩覆い部41とを備え、介助者の肩部や背部を覆って保護し被介助者による負荷を軽減している。
背覆い部42は、ベスト部30が介助者に装着された状態で、介助者の左右肩側から左右脇側へ肩ベルト32を通すための左右肩側の開口部43(R,L)及び左右脇側の開口部44(R,L)を備えている。また、左右脇側の開口部44(R,L)の幅は、肩ベルト32が上下左右に自由に動けるような振れ幅を備えており、肩ベルト32の幅の1.5倍以上であることが望ましい。
これにより、マット部1に載置された被介助者を抱えた介助者の様々な動作や体勢に応じて、マット部1と連結した肩ベルト32が上下左右に動くことができ、荷重バランスを保つことが出来て、介助者の一連の動作の安定性を高めることができ、且つ、被介助者も安定した移乗ができる。
【0036】
図7および
図11(b)に示すように、背覆い部42は、ベスト部30が介助者に装着された状態で、介助者の背中に接触する側の内側シート29bと、内側シート29bにおける介助者に接触する側とは反対側から内側シート29bを覆うように重ね合わされ、周部における開口部43,44に対応する部分を除く部分全体に亘って内側シート29bに縫い付けられた外側シート29aとを有し、肩ベルト32における内側シート29bと外側シート29aとの間に介在する部分の移動を規制するように内側シート29bと外側シート29aとを縫い合わせてなるステッチ47,48が形成されている。
これにより、肩ベルト32が上下左右に自由に動く振れ幅を保ちつつ、ねじれたり暴れたりしないように交差する部分(通り道)を規制し、カラビナ36を掴みやすくし操作性を高めている。また、ステッチ47,48を施すことで、ベスト部30が強化される。
仮に、
図11(c)に示すように、交差部分のみで肩ベルトを規制した場合、ベスト部の装着中は自身の後ろ側(背中側)のことは見えず、肩ベルトを整えることもできない、肩ベルトが動きすぎてカラビナを掴みにくい、肩ベルトがねじれたままカラビナを連結してしまうなど、扱いづらくなり一連の介助動作は困難になる。また、構造上、介助動作によるマット部と連結された肩ベルトの動きが、交差部分に集中してしまい破損の可能性がある。
【0037】
図7および
図11(a)に示すように、長さ調整金具37は、肩覆い部41と重なる位置に配置されており、肩覆い部41における背覆い部42から離間した位置において肩ベルト32が肩覆い部41と重なった位置から離脱するのを防止する離脱防止部45が設けられており、肩から外れることを防ぐとともに、長さ調節金具37が介助者に直接触れることを防ぐことができる。加えて、被介助者の目の前に金具(硬い物)があるのは被介助者にとって怖く感じるのでそういった不安に配慮した形状となっている。
【0038】
図7および
図11に示すように、ベスト部30における外側シート29aと離脱防止部45との間となる肩ベルト32を覆わない開口部49を設け、更に、肩に沿う形状の湾曲部46を形成することで、肩の前後の丸みと肩の傾斜に沿うことができ、肩の動きに対し、肩覆い部41が肩からずれることなく介助することができる。
また、
図14および
図15に示すように、湾曲部46と開口部49により、肩の形状に沿いつつ、肩覆い部41がマット部本体2の連結部10,12の方向に向きやすくなる。仮に、開口部49を設けず湾曲部46が真っ直ぐ伸びていると、マット部本体2との連結時肩のフィット感が低下し介助動作が困難になる。
【0039】
肩ベルト32は、2本存在し、ベスト部30により肩ベルト32それぞれの長手方向における中央部において互いに交差するように保持されている。
図10に示すように、肩ベルト32は、長尺であり長手方向における一端部にカラビナ36が取り付けられるとともに、他端部に長さ調節金具37が取り付けられた第1サブベルト34と、長尺であり長手方向における一端部にカラビナ35が取り付けられるとともに、他端部が長さ調節金具37に保持され、長さ調節金具37により保持される部分を変更することにより肩ベルト32の長さを変更できる第2サブベルト33とで構成されている。
また、肩ベルト32は、青と赤の2色のカラビナを取り付け可能であり、肩ベルト32Rは青カラビナ35Rと赤カラビナ36Lを備え、青カラビナ35Rはマット部本体2の連結部12に連結し、赤カラビナ36Lはマット部本体2の連結部11と連結する。同様に、肩ベルト32Lは青カラビナ35Lと赤カラビナ36Rを備え、青カラビナ35Lはマット部本体2の連結部10と連結し、赤カラビナ36Rはマット部本体2の連結部13と連結する(
図4参照)。
【0040】
図7に示すように、肩ベルト32Rは、介助者の右胸側の離脱防止部45Rを通り、右肩側の開口部43Rから背覆い部42の中(外側シート29aと内側シート29bとの間)を通り左脇側の開口部44Lに引き出す。同様に、肩ベルト32Lは左胸側の離脱防止部45Lを通り、左肩側の開口部43Lから背覆い部42の中を通り右脇側の開口部44Rに引き出す。この2本の肩ベルト32(R,L)は、背覆い部42の中で互いに交差している。
【0041】
図11(b)に示すように、肩ベルト32は、背覆い部42の中で互いに介助者の背部で交差しており肩にかかる負担を分散する。加えて、腰部ベルト31が腰部の負担を軽減する。よって、自然な体勢を保ちながら安定した移動移乗介助が可能となる。
また、肩ベルト32は縫い付けず(固定せず)自由に動くので、左右別々の調整ができ、介助者の様々な動作や体勢に対してそれぞれ前後左右に動き被介助者が載置されたマット部1との荷重バランスを保つことができる。そうすることで、一連の動作の安定性を高めている。
また、肩ベルト32は固定せず自由に動くが、移動介助中はマット部1とのバランスを保つために肩ベルト32が介助者の前後に滑って動きすぎないよう、背覆い部42の中の内側シート29b側に高摩擦素材を用い、被介助者の荷重がかかることで介助者の前後に肩ベルト32が滑りにくくなり移動介助中のマット部1とのバランスを保つことができる。
【0042】
図10および
図11(a)に示すように、肩ベルト32それぞれに設けられた長さ調節金具37による肩ベルト32の長さ調節は、介助者の胸前の長さ調節金具37の2箇所のみで行い、介助者の抱えやすい長さに調節し楽な姿勢を保持しながら介助を行うことができる。
図10(d)および(e)に示すように、肩ベルト32の長さ調節は、第2サブベルト33と長さ調節金具37で行う。
図10(d)に示すように、長さ調節金具37の先端を矢印の方向に上げて第2サブベルト33の青カラビナ35が取り付けられた側を引っ張ると肩ベルト32が長くなり、第2サブベルト33の環状ゴム38が取り付けられた側を引っ張ると肩ベルト32が短くなる。そして、長さ調節金具37から手を放すとロック状態になり、介助者自身に合った長さを維持することができる。
【0043】
また、
図10(b)および(c)に示すように、第2サブベルト33の他端部には、第2サブベルト33における長さ調節金具37により保持される部分よりも他端部側の部分を折り曲げた状態で保持するための環状ゴム38が取り付けられている。これにより、肩ベルト32の長さを短く調節した場合の余分になった第2サブベルト33を巻いて止めることができ、介助動作をスムーズにする。
更に、
図10および
図12に示すように、第1サブベルト34におけるカラビナ36が設けられる側の端部に固定され、腰部ベルト31に備わる引っ掛け部53に連結された環状ゴム40を備え、赤カラビナ36が背覆い部42の中に入り込むことを防いでいる。また、環状ゴム40は、ボタン1つとボタンを通す等間隔のボタン穴が数箇所開いており、介助者が扱い易いように環状ゴム40の長さを調整することができる。
【0044】
図10に示すように、第1サブベルト34におけるカラビナ36が設けられる側の端部である握りやすい形状に形成された把持部39は、ベスト部30と腰部ベルト31とが介助者に装着された状態で赤カラビナ36(R,L)を握る時の手の向きに合った形状にすることで握りやすくし赤カラビナ36(R,L)を扱い易くしている。
【0045】
ベスト部30が介助者に装着された状態で、ベスト部30の背中に接触する側の内側シート29bには、腰部ベルト31が揺動自在に支持されている腰部ベルト支持部55を更に備えている。
図9に示すように、腰部ベルト31は、介助者の背中に接触する側の内側シート29bに備えられた腰部ベルト支持部55と連続一体に形成され、介助者の背中に接触する側の内側シート29bからぶら下がっている。よって、ベスト部30と腰部ベルト31は別々の動きが可能となり、上半身の動きと下半身の動きに対してベスト部30は影響を受けにくく、ずれることなく介助者の様々な動きに対応できるようになる。加えて、腰部ベルト支持部55に伸縮性のある素材を使用することで、更に前後左右の体の動きに対応できるようになる。
また、ベスト部30は、介助者の動きに影響を受けないことから、介助者の体に固定するためのベルト等は必要とせず肩に乗せるのみのシンプルな構造が可能になる。
【0046】
図11(a)に示すように、腰部ベルト31は、介助者に装着された状態で、両端部が介助者のへその下方に位置する形状を備え、腰部ベルト31の上端がへその位置より下に装着されることで、前屈時の胃部の圧迫を防ぎ、腰の可動域が広く動作を妨げず介助ができるようになる。
【0047】
図8に示すように、腰部ベルト31は、背部に硬質の非伸縮性メッシュ素材を使った腰当部50aと、腹側部には滑り止め機能を備えた伸縮素材を使ったズレ防止部51と、腹部は非伸縮性で厚みのあるソフトな素材を使った前合わせ部52とで構成されており、コルセットのような使用感で服の上から装着する。装着は前合わせ部52を重ね合わせ面ファスナー56でとめるので、簡単に装着と取り外しができる。また、面ファスナー56は、体型に合わせて調節できるので体にフィットし、介助時の体のぐらつきを防ぎ腰部の負担を軽減しながら動作をサポートする。
また、
図8(b)に示すように、腰部ベルト内側31bには体型の違いや介助中の腰部ベルト31のズレを防ぐために滑り止めを施している。腰部ベルトの腹側部に設けられているズレ防止部51と背部にはズレ防止素材を使ったズレ防止部50bを備えている。
【0048】
図12に示すように、腰部ベルト31には、カラビナ35,36を掛止し、肩ベルト32がベスト部30から抜け落ちることを防ぐための引っ掛け部53が設けられている。
青カラビナ35(R,L)は、引っ掛け部53に掛止されることで、連結部10,12に連結する時に介助者が青カラビナ35(R,L)を操作しやすく、また、被介助者に当たらないように配慮されている。
また、赤カラビナ36(R,L)は、環状ゴム40で引っ掛け部53に掛止されているので背覆い部42の中に入りきることはないが、入りかけて赤カラビナ36(R,L)を掴みにくくなっても環状ゴム40を手繰り寄せて持つことができるので引っかけ部53に掛止してもしなくてもよい。
また、本発明の介助用具は、環状ゴム40を引っ掛け部53に掛止した状態で使用するが、洗濯時は引っ掛け部53から外してベスト部30から肩ベルト32を外し、肩ベルト32からカラビナ35,36を外すと肩ベルト32も洗うことができる。
【0049】
ベスト部30は腰部ベルト31と一体化することで、ベスト部30の装着感を安定させている。加えて、肩ベルト32に被介助者の荷重がかかりベスト部30を押さえるので更に安定する。よって、ベスト部30は肩に乗せるのみという構造の簡略化ができシンプルな扱いができる。
【0050】
ベスト部30は、介助者の体をサポーターのように引き締めて動作を支援するものではない。逆に開放して、介助中のあらゆる体勢の連続した一連の動作を妨げない仕様としている。介助者は、肩ベルト32の長さを調節することによって、被介助者を自身の自然な姿勢に引き寄せて保持できるようになるため、介助者の体をサポートしなければならないのは腰部であり、それは腰部ベルト31により腰のぐらつきを防ぎ負担を軽減し動作を支援している。さらに、そうすることによって、介助者の下肢の大きな筋肉を効率的に使うことでき腰の負担はより軽減できる。
また、
図13に示すように、ベスト部30が支点となり重力の作用によりマット部1とのバランスを保っている。移動介助中の被介助者を介助者に引き寄せて接触した状態(
図13(a))から、移乗の際の被介助者を介助者から離す(置く)動作(
図13(b))までの一連の動作に対応した荷重バランスを保つことが可能になる。
また、
図13(b)に示すように、前かがみになる場面では被介助者は介助者の体に接触していない状態であり介助者の腰に負担がかかる。このような時は、介助者は自身の体を支える為に、被介助者から左上肢を放し、手をついたり周囲に掴まることで腰にかかる負担は軽減され、ゆっくりと被介助者を移乗させることができる。
【0051】
次に、ベスト部30と腰部ベルト31の構造に適した素材について説明する。
ベスト部30の内側シート29bは、10ミリ程度の厚みのあるウレタンフォーム64を用い、腰部ベルト支持部55は、くるみ布9と同じ素材である肌触りが良く伸縮性と通気性があり吸放湿機能のある素材で形成されている。肩ベルト32は第1マット部ベルト28と第2マット部ベルト21,22と同じ素材である幅50ミリ程度のシートベルトのような素材で形成され、長さ調節金具37は、登山用ハーネスなどに使用されている金具を用い、カラビナ35,36は、登山やクライミングなどで使用されるものを用いている。
腰部ベルト31は、腰当部50aに硬質の非伸縮性メッシュ素材を使用し、ズレ防止部50bにはズレ防止素材を用い、腹側部のズレ防止部51には両面に滑り止め機能のある伸縮素材を用い、前合わせ部52には非伸縮性で厚みのあるソフトな素材を用いて形成されている。
【0052】
ベスト部30と腰部ベルト31に用いる各素材の特徴を生かして得られる効果について説明する。
ベスト部30の内側シート29bに用いるウレタンフォーム64は、クッション性と通気性、柔軟性があり、軽く、適度なハリと厚みのある肌触りの良い素材である。
クッション性があることで、負荷のかかる肩ベルト32による介助者の負担を軽減する。且つ、ベスト部30は長さ調節金具37やカラビナ35,36が介助者や被介助者の体に直接触れない形状になっていることで体を保護している。
適度な厚みとハリと柔軟性は、ベスト部30の装着と取り外しを容易にする。装着は、ベスト部30を肩にかけ腰部ベルト31を装着するのみであるが、形が崩れることなく介助者の体にしなやかにフィットし装着感もよく介助者の動きを妨げることはない。布状の素材は形が崩れ装着しづらく扱いづらいので適さない。
さらに、ウレタンフォーム64は、介助者の体型を選ばず誰でも使用することができる柔軟さを備えている。
【0053】
腰部ベルト支持部55に用いる生地は、吸放湿機能があり、伸縮性と通気性があり肌触りの良い軽い素材であるため、ベスト部30の装着感が良く、また、腰部ベルト支持部55に伸縮性のある素材を用いることで、腰部ベルト支持部55による揺動自在に動く構造の効果をさらに高めている。
【0054】
肩ベルト32に用いるシートベルトのような素材は、介助者の肩へのくい込みを防ぎ、体にかかる負担を軽減する。耐久性のあるしなやかな素材であるため、体に優しく沿い、体へのくい込みを防ぎながらしっかり安定したホールド感が得られる。また、ベルトのしなやかさは、容易に加工ができ握りやすい形状に縫製できるのでカラビナ35,36の操作性が良くなる。
【0055】
長さ調節金具37に用いる登山用ハーネスなどに使用されている金具は、介助者の胸前で体に合った調整が容易に行え、被介助者を抱え上げる高さを介助者の自然な姿勢で保持できるようにしっかり固定することができる。
【0056】
カラビナ35,36は、登山やクライミングなどで使用されるもので、軽く握りやすい形と大きさであり連結部10~13との連結および分離が容易である。また、色は2色(青・赤)を使用し、連結部10~13にも青刺繍67と赤刺繍68を施すことで、同色同士を繋ぐ、直感的な操作を行うことができる。
【0057】
腰当部50aには硬質の非伸縮性メッシュ素材を用い腰を支える。腰当部50aの内側のズレ防止部50bにズレ防止素材を用い、ズレ防止部51に滑り止め機能のある伸縮素材を用いて体型の違いや介助中の腰部ベルト31のズレを防ぐ。また、前合わせ部52に用いる非伸縮性で厚みのあるソフトな素材は腹部を圧迫しない柔らかな装着感が得られ、面ファスナー56は体型の違いや衣服の厚みなど腰周りに合わせた調節ができる。
これらの素材で構成されたコルセット仕様の腰部ベルト31は、介助者の前後左右の動作の自由を確保し、特に前傾姿勢時の腰部ベルト31による胃の圧迫を防ぎながら腰にかかる負担を軽減し動作をサポートすることができる。また、軽量でかさばらず、装着と取り外しが容易で持ち運びも楽に行える。
【0058】
マット部1とベスト部30と腰部ベルト31の組み合わせによる効果について説明する。
マット部1は、マット部本体2とくるみ布9で被介助者の全身を優しく包み込んで保護し、第1マット部ベルト28で体を下からしっかり支える。ベスト部30と腰部ベルト31は、介助者の動作をサポートし負担を軽減する。連結部10~13とカラビナ35,36とを連結することで、均衡を保ちながら介助動作を行える仕組みになっている。
マット部1でコンパクトに包んで体の崩れを防いだ状態になった被介助者を、介助者は体にフィットするベスト部30と腰部ベルト31とを装着してカラビナ35,36を連結部10~13に繋ぐ。長さ調節金具37で自身に合った長さに肩ベルト32(33)を調節することで、被介助者を引き寄せ体の中心に近づけることができる。そうすることで、重さを腰で真っ直ぐ受けることができ、荷重を軽く感じられるようになり、自然な姿勢で被介助者を保持しながら移動できるようになる。同じ重さでも、重心が下にある状態より上にある状態の方が軽く感じる。仮に、介助者の方に被介助者を引き寄せられず重心で抱き抱えることができない状態で介助した場合、特に腰や肩、腕に大きな負担がかかり体勢も崩れやすくなる。そのような状態で介助される被介助者はさらに危険が増すことになる。
【0059】
被介助者の体重約76%の重さを第1マット部ベルト28が下からしっかり支持する。その荷重を受ける肩ベルト32は、背覆い部42の中で交差することによって、介助者の肩から背部の負荷を分散する(
図4)。また、腰部ベルト31は腰の負荷を軽減する。加えて、第1マット部ベルト28は、介助者が抱き抱える両上肢の位置に沿う配置になっているので、腕力、握力による強い支持は必要とせず、すくい上げるように抱き抱えて、一人で移動移乗介助が行える。
さらに、安定した保持が可能となることで、下肢に至る体全体の大きな筋肉で支えることができ、安定した介助が行える。
また、被介助者の体幹と大腿部は、第1マット部ベルト28と肩ベルト32とで保持できている(
図4参照)ので、介助者は左上肢を被介助者から放すことが可能である。よって介助時の自身の不安定な体勢をとる場面(被介助者の体が介助者の体から離れた状態。
図13(b)参照)では、左上肢を放し周辺に掴まるなど自身を支えて負担を軽減しながら介助が行え、被介助者を静かに移乗させることが可能となる。
結果、マット部1およびベスト部30と腰部ベルト31の組み合わせによって、一人介助はもちろん、一人介助でしか実現できない狭い空間への移動移乗もゆっくりとした動作で安定した一連の動作が可能となる。
【0060】
図4に示すように、第1マット部ベルト28における介助者と反対側の2つの連結部10,12には青糸の刺繍67が施され、介助者側の2つの連結部11,13には赤糸の刺繍68が施されている。
また、カラビナは青と赤の2色を用い、青をカラビナ35に赤をカラビナ36に用いる。青カラビナ35Rは青刺繍67が施された連結部12に連結し、青カラビナ35Lは青刺繍67が施された連結部10に連結する。同様に、赤カラビナ36Rは赤刺繍68が施された連結部13に連結し、赤カラビナ36Lは赤刺繍68が施された連結部11に連結する。このように、カラビナ35,36と連結部10~13の同色同士を連結することで視認性を高め直感的で確実な操作ができる。
更に、
図10(a)に示すように、介助者の胸側の第2サブベルト33の先端部には青刺繍67が施され、脇側の第1サブベルト34の先端部には赤刺繍68が施されており、同色のカラビナ35,36が取り付けられている。第2サブベルト33および第1サブベルト34からカラビナ35,36を外して洗濯した場合、再度取り付ける時に取り付け箇所を間違わないように視認性を高めている。
【0061】
次に、本発明の介助用具の活用例を説明する。
一人で抱き抱えて安定した移動移乗介助が行えるため、外部の移動手段を利用しなくて済むので経済的な負担が軽減できる。
病状が急変した時や、救急車を呼ぶ緊急性はないけれど病院に行きたい時など直ぐに病院搬送できる。早期発見早期治療につながり身体の負担が軽く済む。また、直ぐに対応できることは「安心」にもつながる。
【0062】
ベッド上はマットレスやエアーマットレス等を敷いているため、救急搬送時に体の下に移乗のための板状のものを滑り込ませることが困難であり、被介助者の体に負担がかかる。そこで、本発明の介助用具を体の下に敷くことにより、救急隊はストレッチャーへの移乗がスムーズに行える。さらに救急搬送後の一連の移動移乗(救急車のストレッチャーから病院のストレッチャーに移乗する。検査台や院内ベッドへ移乗する。病院から自家用車に移乗して帰宅し家のベッドへ移乗する。)の全ての流れを家族、救急隊員、病院スタッフがスムーズに行えるようになる。
また、夜間の救急搬送時は、診察や処置が終わればスムーズに帰宅できる。もしも、本発明の介助用具がなければ深夜に介護タクシーは利用できず朝まで待つことになる。または、介護タクシーは予約制でいつ帰宅できるかわからない。睡眠時間のとれない状態で次の日を迎えいつもと同じように活動しなければならず介助者の負担は大きくなる。
また、普段の受診の際は、病院内ではリクライニング車いす等で移動し、検査台や院内ベッドへの移乗は院内スタッフが複数人でマット部本体2の持ち手10~17を持ちマット部本体2を滑らせて水平移乗介助を行う。
このように、家のベッドからマット部1に載置された状態で来院するので全ての移乗は皆がスムーズに行える。且つ、被介助者も移乗の度の負担が軽減される。
【0063】
本発明の介助用具を活用することによって、外出は「特別なこと」ではなくなる。今まで出来なかったことが出来るようになる。自由に外出して家族や身近な人たちとの時間を気兼ねなく過ごせる。自然の空気、風、景色に触れる。食欲も出て美味しく食べることが出来る。日常の苦痛や苦悩から解放され、心も体もリフレッシュできる。そして被介助者も介助者も新たな気持ちをもちやすくなり、前向きに生活することが出来るようになる。自分たちの世界が広がり希望や幸せを感じることもできる。一般的に、日常生活の中では移乗動作の数が多いほど生活の質(QOL)は高くなるといわれており、極めて重要な動作といえる。
さらに、QOLの向上は、被介助者だけでなく介助者にも同様のことがいえる。なぜなら、外部の移動手段を利用しなくても移動が自由に行えることが現実的になれば、介助者自身の意識が変わり心の視野が広がる。そういったことが介助者の心身の健康につながることになる。互いに相乗効果が得られる。
移動の自由、行動の自由は、心の自由となり、それは必ずその人の人生に変化をもたらすことに確実になる。
【0064】
次に、移動の流れと移動移乗介助の仕方について、
図21に沿って説明する。
まず、家(ベッド)から車へ移動する方法について説明する。
図22に示すように、介助者の腰の負担を軽減するために、介護ベッドの高さを上げる。
図23に示すように、被介助者を側臥位にしてマット部1を折り曲げて体の下に敷き込む。
図24に示すように、被介助者の体を介助者側に側臥位にし、折り曲げていたマット部1を平らに広げ、くるみ布9を引き出して体がマット部本体2の中央に載置されるように整える。
図25に示すように、被介助者の手を腹の上に乗せてもらい、くるみ布9で包み体をコンパクトにする。
【0065】
介助者はベスト部30と腰部ベルト31を装着し赤カラビナ36(R,L)を赤刺繍68の入った連結部11,13に連結し、青カラビナ35(R,L)を青刺繍67の入った連結部10,12に連結する。
そして、
図26に示すように、載置された被介助者をベッド中央から介助者側(ベッドの端)へ引き寄せる。この時の介助者の動作は腕力で近づけるのではなく、背中を反らせるように上体を起こすだけで、被介助者の体はベッド上を滑り介助者の方に近づくので腕や腰の負担は回避できる。
そして、介助者が自然な姿勢で抱えるために肩ベルト32の長さ調節金具37で長さ調節をする。目安として、抱え上げた時介助者の肘の角度が90度程度になるように肩ベルト32を調節する。
そして、
図26および
図27に示すように、マット部本体2の下に両上肢を入れて膝を落とし下肢の力で抱え上げ、介助者の重心に被介助者を引き寄せて保持し移動する。
【0066】
次に、車へ移乗する方法について説明する。
図28に示すように、助手席側、又は車を正面から見て右側座席のドアを開けておき、座席シートは倒しておく。
図31,
図32に示すように、座席シートの傾きは、初めは介助しやすい角度にしておき、移乗してから更に倒す等、被介助者と介助者に合った介助で行う。
次に、
図29に示すように、介助者は助手席側のステップに右足を乗せて、被介助者の足側から車内へ入れる。
図30に示すように、介助者は右足に力を入れて上体を車内に入れ左手で掴まりやすいところに掴まり、右上肢で被介助者の肩から頭部あたりを支えながら移乗させる。
図31は、
図30の詳細図であり運転席側から見た移乗時のイメージ図である。介助者の左手は助手席の右肩部分に掴まり自身の体を支え、右上肢は被介助者の肩から頭部あたりをマット部本体2の下から支えている。マット部本体裏面2bを通る第1マット部ベルト28が被介助者の体を下から支え、且つ、介助者が装着しているベスト部30の肩ベルト32によって、マット部1をハンモックのように被介助者を吊り下げて介助者の体全体で保持しているので左上肢を放してもそっと着座でき、安定した移乗が可能となる。介助者自身の体重移動を無理なく行うことで被介助者も安全に移乗できる。
【0067】
図32は助手席側から見た図である。車の座席は、巻いたタオルやクッションなどを座席の窪みに敷き段差をなくし滑らかな座面に整える。足元にもクッションなどを置いて脚を伸ばせるようにする。また、足元の保護も兼ねている(
図31~
図33のグレーの部分)。
被介助者を車の助手席に移乗させたら連結部10,12から青カラビナ35(R,L)を外し車外に出て、連結部11,13から赤カラビナ36(R,L)も外す。又は、長さ調節金具37で肩ベルト32を伸ばし車外に出てから青カラビナ35(R,L)と赤カラビナ36(R,L)を外す。という2通りのやり方があるので介助者のやりやすい方法で分離する。
被介助者にシートベルトをして出発する(
図33)。
【0068】
本発明の介助用具は、介助者一人で被介助者を抱き抱えて移動移乗すること、そして、両者ともに身体の負担を軽減し安全に行うことを可能にしたものである。しかし、主介助者(ベスト部30および腰部ベルト31装着者)が不安な場合は、副介助者(ベスト部30および腰部ベルト31非装着者)と2人で被介助者の両側から抱え移動介助し、車の座席等の狭い所への移乗のみ主介助者が行うようにする。
【0069】
次に、病院に到着しリクライニング車いす等へ移乗し院内で移動移乗する方法を説明する。
図34に示すように、車の横にリクライニング車いす等を置き、車いすの左アームレストを下げておく。
再び、介助者はベスト部30と腰部ベルト31とを装着し赤カラビナ36(R,L)を連結部11,13に連結し、青カラビナ35(R,L)を連結部10,12に連結する。
介助者はマット部本体2の下に両上肢を入れ被介助者を抱え、被介助者の上半身から車外に出しリクライニング車いす等へ移乗する(
図35)。介助者は、連結部10~13からカラビナ35,36を分離しベスト部30と腰部ベルト31とを外す。そして、マット部1に載置された状態で院内を移動する。
また、受診の際、検査台(レントゲン台、心電図等)や院内ベッドへ移乗する場合は、持ち手10~17を持つ、又は、移乗方向となるマット部本体2の片側4箇所の持ち手を持ち、院内スタッフが水平移乗介助をする(
図38,39参照)。
【0070】
次に、病院から帰宅する方法について説明する。
図35に示すように、車の横にリクライニング車いす等を置き、車いすの左側アームレストを下げる。介助者はベスト部30と腰部ベルト31とを装着し、カラビナ35,36を連結部10~13と同色同士連結する。
次に、
図36に示すように、介助者は、マット部本体2の下に両上肢を入れて、膝を曲げて腰を落とし被介助者を引き寄せながら下肢の力で抱え上げる。
車の助手席に移乗して連結部10~13からカラビナ35,36を分離し、シ-トベルトをして病院を出る(
図28~
図33)。
【0071】
次に、デザイン性について説明する。
これまでの移動移乗に関する介助用具は、被介助者を「運ぶ」ことに焦点がおかれていた。本発明の介助用具は、移動の自由を得ることによりその先にあるそれぞれの人生において「~したい」という希望を叶えるための用具として寄り添えるものである。よって、どのようなシーンにも合うデザイン性と気持ちよく過ごせる快適性を兼ね備えている。用途だけの無機質な介助用具ではなく温かみのあるデザインとする。普段の外出時や緊急時など、あらゆる場面で活用できるものである。
洋服のようなニュアンスのあるカラーバリエーションを展開し、利用者の好みの色を選べるようにする。例えば、表生地65と外側シート29aと肩覆い部41と離脱防止部45と前合わせ部52とを同一色とし、ベージュ系、ボルドー系、カーキ系、ブラウン系、ネイビー系、グレー系など数種類展開する。
また、その他の要素は各共通の色で統一する。例えば、くるみ布9はライトグレーで統一し、肩ベルト32と第1マット部ベルト28と第2マット部ベルト21,22とはライトグレーで統一し、外側シート29a側の内側シート29bと腰当部50aとズレ防止部51はブラックで統一するなど、各カラーバリエーション全体的にみても統一感のあるコーディネートをする。
【0072】
次に、本発明の介助用具を収納するバッグについて説明する。
臥床中心の生活の被介助者の外出は、持ち運ぶ物が多いのでコンパクトに収納できるバッグを用いることで、介助者の負担を軽減する。
図19に示すように、収納バッグ57は、袋状でありマット部1を収納可能な第1収納部58と、袋状であり第1収納部58の内側に配置されるとともに、開口端部の一部が第1収納部58の開口端部に位置する縫い合わせ部63に縫い付けられ、ベスト部30および腰部ベルト31を収納可能な第2収納部59とが一体に形成されており、第2収納部59の開口端部にはベスト部30および腰部ベルト31を収納時に開口部を閉じるためのファスナー60を備えている。それぞれを分けて収納することで互いにもつれることなく収納ができる。
【0073】
収納バッグ57は、マット部1およびベスト部30と腰部ベルト31とを収納する場合と、ベスト部30と腰部ベルト31とをのみ収納する場合のバッグの大きさが変えられる仕組みになっており、介助用具の収納および持ち運びを容易にする。
本発明の介助用具であるマット部1およびベスト部30と腰部ベルト31とは軽く柔らかな素材で構成されているので丸めてコンパクトにして、収納バッグに入れることで置き場所にも困らず、持ち運びも楽に行える。収納バッグ57は撥水加工の軽い素材を用い、雨の時も安心して持ち運ぶことができるものである。
【0074】
図19に示すように、収納バッグ57には同じ長さの3つの把持部となる第1把持部62aと第2把持部62bと第3把持部62cとが備わっている。
第1収納部58の開口端部における第2収納部59が縫い付けられた縫い付け部分に両端部が固定された第1把持部62aと、第1収納部58の開口端部における縫い付け部分以外の部分に固定された第2把持部62bと、第2収納部59の開口端部における縫い付け部分以外の部分に固定された第3把持部62cとで構成されている。
第1把持部62aと第2把持部62bは第1収納部58の持ち手となり、第1把持部62aと第3把持部62cは第2収納部59の持ち手となる。第1把持部62aは第1収納部58と第2収納部59の共通の持ち手となる。持ち手の長さは肩から下げることのできる長さであり両手がふさがることはない。
【0075】
第2収納部59には、ポケット61を設け第1収納部58を折り畳んで収納する。そうすることで、被介助者がマット部1を使用している間はベスト部30と腰部ベルト31とを第2収納部59に入れコンパクトにして持ち運ぶことができる。
図20に示すように、第1収納部58の中から第2収納部59を出す(
図20(a))。第1収納部58の底面を折り破線部分で両端部を中央に向かって折り畳む(
図20(b))。さらに、第1収納部58を
図20(c)の破線部分で折り畳む(
図20(d))。折り畳んだ第1収納部58をポケット61に入れると(
図20(e),(f))第2収納部59が表に現れ、小さいバッグとなり、ベスト部30と腰部ベルト31とをコンパクトに収納しファスナー60で開口部を閉じることで中身が出てくることもなく持ち運ぶことができる。
【0076】
最後に、困難なことの多い介護生活を送っている被介助者と介助者は、ともに大変な状況にある。その困難の中でひとつでも心配事を減らすことは重要である。「大丈夫」と思えることがあれば、介助者の安心になり、その分、心にゆとりが生まれる。本発明の介助用具は、介助者一人でも被介助者の移動移乗ができ、かつ、両者ともに身体的負担を軽減できる安全性と操作性を備えている。そして、その先にあるQOLの向上が期待できるものである。高齢者や身体の不自由な方の多様な悩みに寄り添う介助用具として、それぞれの想いの実現のために活用してほしい。不自由だったからこそ、他の人には感じられないものを感じることができると思う。不自由のなかにも自由はあるんだということ、可能性を広げ前向きになれる力になるものを見つけてほしいと願う。
本発明の介助用具は、介助者自身の経験から生まれたものであり、被介助者と支える人たちにやさしい介助用具に仕上がったと思う。
【符号の説明】
【0077】
1 マット部
2 マット部本体
2a マット部本体表面
2b マット部本体裏面
3~6 舌片
7,8 側部
9 くるみ布
10~13 連結部(持ち手)
14~17持ち手
18a,18b,18c,18d、47,48 ステッチ
19 高摩擦部
20 低摩擦部
21,22 第2マット部ベルト
23 大腿部支持部分
24,25 腰部支持部分
26 背部支持部分
27 腰部支持部分の交差部分
28 第1マット部ベルト
29a 外側シート
29b 内側シート
30 ベスト部
30a ベスト部外側
30b ベスト部内側
31 腰部ベルト
31a 腰部ベルト外側
31b 腰部ベルト内側
32(R,L) 肩ベルト
33 第2サブベルト
34 第1サブベルト
35(R,L) 青カラビナ(連結具)
36(R,L) 赤カラビナ(連結具)
37 長さ調節金具
38,40 環状ゴム
39 把持部
41 肩覆い部
42 背覆い部
43(R,L),44(R,L),49 開口部
45(R,L) 離脱防止部
46 湾曲部
50a 腰当部
50b,51 ズレ防止部
52 前合わせ部
53 引っ掛け部
55 腰部ベルト支持部
56 面ファスナー
57 収納バッグ
58 第1収納部
59 第2収納部
60 ファスナー
61 ポケット
62a 第1把持部
62b 第2把持部
62c 第3把持部
63 縫い合わせ部
64 ウレタンフォーム
65 表生地
66 縁取りテープ
67 青刺繍
68 赤刺繍
【要約】
【課題】被介助者と介助者との負担を軽減し動作をサポートすることで、一人介助による移動移乗介助を可能にする介助用具。
【解決手段】マット部1とベスト部30とベスト部30に保持され両端部それぞれがマット部1に連結された肩ベルト32と、ベスト部30と連続一体に形成された腰部ベルト31とを備えている。マット部1は被介助者を保護し介助者はベスト部30と腰部ベルト31を装着することで負担を軽減した介助動作ができる。マット部本体裏面2bの長手方向に連結部を備えた第1マット部ベルト28が縫い付けられ、被介助者の少なくとも体幹と大腿部とを支えるように配置されている。2本の肩ベルト32に取り付け可能なカラビナ35,36を連結部10~13に連結し、ベスト部30に保持され移動自在に収納された肩ベルト32はマット部1との荷重バランスを保ち被介助者を重心で保持し移動介助が行える。
【選択図】
図16