IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 共同印刷株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】抗菌剤、抗菌製品、及び抗菌性塗料
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20241101BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241101BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20241101BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20241101BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20241101BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241101BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20241101BHJP
   C04B 35/40 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
A01N59/16 Z
A01P3/00
A01N25/10
A01N25/04
C09D5/14
C09D201/00
C04B35/50
C04B35/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023500779
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2022005167
(87)【国際公開番号】W WO2022176742
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2021024451
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【弁理士】
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】狩野 朋未
(72)【発明者】
【氏名】寺田 暁
(72)【発明者】
【氏名】小林 文人
(72)【発明者】
【氏名】山田 厚
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106719817(CN,A)
【文献】特開2005-272320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0171234(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0014652(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第112778451(CN,A)
【文献】ATEIA, Ebtesam E. et al.,Core-shell nanomaterials based on La2Fe2O6 particles coated with polyvinylpyrrolidone for biomedical,Journal of Materials Science: Materials in Electronics,2020年,31,19355-19365
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/16
A01P 3/00
A01N 25/10
A01N 25/04
C09D 5/14
C09D 201/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、抗菌剤:
Ln2xFe2(1-x) (1)
(式(1)中、Lnは、ランタンであり、xは、0.45以上1.00未満の数である。)。
【請求項2】
前記式(1)中のxは、0.65以上0.85以下の数である、請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項3】
基体、及び抗菌層を含む、抗菌製品であって、
前記抗菌層は、請求項1又は2に記載の抗菌剤を含む層である、
抗菌製品。
【請求項4】
前記抗菌層は、樹脂を更に含む、請求項に記載の抗菌製品。
【請求項5】
内壁、建材、目地材、シーリング材、家具、エアフィルター、インソール、衣料品、衛生用品、医療用資材又は器具、バスマット、タオル、及び寝具からなる群より選択される、請求項3又は4に記載の抗菌製品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の抗菌剤を含む、抗菌性塗料。
【請求項7】
樹脂、及び溶剤を更に含む、請求項に記載の抗菌性塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤、当該抗菌剤を含む抗菌層を備える抗菌製品、及び当該抗菌剤を含む抗菌性塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生性の観点から、抗菌加工が施された種々のものが流通している。消費者が直接使用するものに限らず、例えば、建物の外壁、内壁、建材、エアフィルター、パッキン等についても、抗菌のニーズは高まっている。
【0003】
抗菌効果を発現する薬剤としては、フェノール系、有機スズ系、トリアジン系、ハロゲン化スルホニルピリジン系、キャプタン系、有機銅系、クロルナフタリン系、クロロフェニルピリタジン系等の化合物が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、抗菌効果を発現するイオンとして、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等が知られている。例えば、銀、銅、亜鉛等の金属粉、又はその合金や化合物を、担体に保持させた態様とし、微量のこれら金属イオンを溶出させることで、その毒性を利用する。特許文献2には、カルボキシル基含有ポリマーと金属化合物とから形成されたカルボン酸金属塩が分散された、消臭性、及び抗菌・抗かび性を有する分散液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-17249号公報
【文献】特開平2-288804号公報
【文献】特開2005-272320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、最近では、薬剤形態の抗菌剤や、金属イオンの毒性を利用する抗菌剤は、環境汚染性や安全性が問題視される場合があった。
【0007】
ところで、近年、環境汚染度が低く、安全性にも優れた防藻剤として、フェライト化合物が提案されている。例えば、特許文献3には、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、及びイットリウム(Y)から選択される希土類元素、鉄、及び酸素を含むオルソフェライトを主成分とする防藻用添加剤、これを用いた防藻性塗料、及び該塗料を基材表面に塗布した防藻製品が開示されている。
【0008】
特許文献3においては、防藻効果を材料の磁性と関連付けて考えており、保磁力が小さく、植物の固有磁場に近い磁力を示す、希土類酸化物:Fe=1:1(モル比)のオルソフェライトが、防藻用添加剤として最も好ましいと説明されている。なお、特許文献3においては、オルソフェライトの抗菌効果については、検討していない。
【0009】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、環境汚染度が低く、安全性にも優れた抗菌剤、当該抗菌剤を含む抗菌層を備える抗菌製品、及び当該抗菌剤を含む抗菌性塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、特定の組成を有する希土類フェライトは、環境汚染度が低く、安全性にも優れた抗菌剤となりうることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0011】
《態様1》
下記式(1)で表される、抗菌剤:
Ln2xFe2(1-x) (1)
(式(1)中、Lnは、ランタン、プラセオジム、ネオジム、及びイットリウムからなる群より選択される希土類元素であり、xは、0.45以上1.00未満の数である。)。
《態様2》
前記式(1)中のxは、0.65以上0.85以下の数である、態様1に記載の抗菌剤。
《態様3》
前記式(1)中のLnが、ランタンである、態様1又は2に記載の抗菌剤。
《態様4》
基体、及び抗菌層を含む、抗菌製品であって、
前記抗菌層は、態様1~3のいずれか一態様に記載の抗菌剤を含む層である、
抗菌製品。
《態様5》
前記抗菌層は、樹脂を更に含む、態様4に記載の抗菌製品。
《態様6》
内壁、建材、目地材、シーリング材、家具、エアフィルター、インソール、衣料品、衛生用品、医療用資材又は器具、バスマット、タオル、及び寝具からなる群より選択される、態様4又は5に記載の抗菌製品。
《態様7》
態様1~3のいずれか一態様に記載の抗菌剤を含む、抗菌性塗料。
《態様8》
樹脂、及び溶剤を更に含む、態様7に記載の抗菌性塗料。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、環境汚染度が低く、安全性にも優れた、抗菌剤が提供される。
【0013】
また、本発明の抗菌剤は、その周囲についても、抗菌効果を発現する。すなわち、本発明の抗菌剤が直接接触していない部分にも、抗菌効果を波及させることができる。このため、本発明の抗菌剤を用いた抗菌製品を作製する際に、製品となる物品全体に抗菌剤を存在させなくとも、抗菌効果を発現させることができる。
【0014】
また、本発明の抗菌剤は、水や有機溶剤等への分散性に優れる。このため、様々な媒体に分散させた分散液や塗料等を作製することができる。したがって、本発明の抗菌剤を含む塗料等を、基体となる物品等に塗布して抗菌剤を含む層を形成することにより、これまで抗菌剤が適用できなかった材料や、複雑な形状を有する場所等に、抗菌効果を付与することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《抗菌剤》
本発明の抗菌剤は、特定の組成を有する希土類フェライト化合物であり、下記式(1)で表される:
Ln2xFe2(1-x) (1)
(式(1)中、Lnは、ランタン、プラセオジム、ネオジム、及びイットリウムからなる群より選択される希土類元素であり、xは、0.45以上1.00未満の数である。)。
【0016】
本発明者らは、希土類フェライトの組成と、その抗菌効果について詳細に検討した。その結果、希土類フェライト中の希土類(Ln):Fe比を、上記の範囲に設定することにより、高い抗菌効果が得られることを見出した。
【0017】
本発明の抗菌剤は、上記式(1)中のxが、0.45以上1.00未満の数である限り、どのような形態であってもよい。例えば、全体が均一な組成である固溶体を形成していてもよいし、LnFeO相とLn相との混合物であってもよいし、均一組成の固溶体とLnFeO相とLn相との混合物であってもよい。また、これら以外の相を含んでいてもよい。
【0018】
式(1)中のxは、0.50以上、0.55以上、0.60以上、0.65以上、0.70以上、又は0.75以上であってもよく、0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、0.70以下、0.65以下、又は0.60以下であってもよい。
【0019】
上記式(1)中のxは、典型的には、例えば、0.50以上0.90以下の数であってよく、更には、0.65以上0.85以下であってよく、特には、0.70以上0.80以下の数でであってよい。
【0020】
式(1)中の希土類(Ln)は、抗菌性及びコストの観点から、特に、ランタンであってよく、したがって本発明の抗菌剤は、ランタンフェライトであってよい。
【0021】
<抗菌剤の製造方法>
本発明の抗菌剤の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、希土類源と鉄源とを所定の割合で含有する混合物に、適当な応力を印加して粉砕混合した後、焼成することにより、製造されてよい。ここで印加される応力としては、例えば、摩擦力、せん断力、ずり応力、衝撃力等であってよい。希土類源と鉄源との混合物に、このような応力を印加する方法としては、例えば、ボールミル中で湿式粉砕する方法等が挙げられる。
【0022】
希土類源としては、例えば、所望の希土類元素の酸化物を使用してよい他、バストネサイト、モナザイト、ゼノタイム等を使用してよい。
【0023】
希土類元素としては、得られる希土類フェライトの優れた防カビ性、及びコストの観点から、ランタンを用いることが好ましい。中でも、ランタン源としてLaを用いれば、効果が高く、比較的コストが安価なランタンフェライトを製造することができる。
【0024】
鉄源としては、FeO、Fe、Fe等の酸化物;FeOOH、フェリヒドライト、シュベルマンライト等のオキシ酸化物;Fe(OH)、Fe(OH)等の水酸化物;等を使用してよい。
【0025】
これらの中で、鉄源としてFeOOHを用いれば、Fe等と比較して反応性が高いため、低温での焼成が可能となり、また、Fe等を鉄源とする場合と比較して粒経の小さい抗菌剤を製造することができる。
【0026】
希土類源と鉄源との混合物の粉砕混合を、湿式粉砕にて実施する場合には、液状媒体として、例えば、水、アルコール等を使用してよい。希土類源と鉄源との混合物を粉砕混合した後は、必要に応じて、加熱乾燥等の適宜の方法によって液状媒体を除去し、その後に焼成を実施してもよい。
【0027】
焼成温度は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。例えば、700℃以上、800℃以上、900℃以上、又は1,000℃以上であって、かつ、例えば、1,300℃以下、1,200℃以下、1,100℃以下、又は1,000℃以下の温度において、実施してよい。
【0028】
焼成時間についても、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、6時間以上、8時間以上、12時間以上、又は15時間以上であって、かつ、72時間以下、48時間以下、36時間以下、24時間以下、18時間以下、又は15時間以下の時間で、実施してよい。
【0029】
焼成時の周囲雰囲気は、酸化性雰囲気であってよく、例えば、空気中で焼成してよい。
【0030】
焼成後、必要に応じて、適宜の方法で粉砕、分級等を行うことにより、本発明の抗菌剤を得ることができる。
【0031】
<抗菌剤の使用量>
本発明の抗菌剤の使用形態は、特に限定されるものではないが、例えば、粉末状態、含侵状態、塗膜状態にて使用することが可能である。
【0032】
抗菌剤の使用形態が粉末状態である場合には、抗菌効果を十分に発現させるためには、1g以上の抗菌剤を使用することが好ましい。
【0033】
抗菌剤の使用形態が含浸状態である場合には、例えば、0.06gの紙に0.01~0.5gの抗菌剤を含浸させることが好ましい。
【0034】
抗菌剤の使用形態が塗膜状態であり、抗菌剤を含む塗料として使用する場合には、例えば、塗料の全固形分において抗菌剤を30質量%以上含有させることが好ましい。
【0035】
《抗菌製品》
また別の本発明は、本発明の抗菌剤を含む抗菌層を備える抗菌製品である。具体的には、基体、及び抗菌層を含み、抗菌層は、本発明の抗菌剤を含む層である、抗菌製品である。
【0036】
<基体>
本発明の抗菌製品における基体は、抗菌性を付与すべきあらゆる物品であってよい。あらゆる材料からなる、あらゆる形状を有する物品であって、抗菌性が求められるあらゆる物品であってよい。
【0037】
<抗菌層>
本発明の抗菌製品における抗菌層は、本発明の抗菌剤を含む層であれば、特に限定されるものではない。例えば、本発明の抗菌剤の粉末を樹脂等にブレンドして、押出コーティング等により作製した層であってもよいし、後記する本発明の抗菌性塗料の硬化物であってよい。
【0038】
抗菌層には、本発明の抗菌剤以外に、任意の成分が含まれていてもよい。任意の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂、結着剤、抗菌以外の機能を発現させるための添加剤等が挙げられる。
【0039】
本発明の抗菌製品の抗菌層に任意に含まれる樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等であってよい。
【0040】
抗菌層の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、1μm以上1mm以下程度であってよい。
【0041】
抗菌層を、抗菌性塗料等によって作製する場合には、その塗工量は、単位面積当たりの溶剤除去後の乾燥質量として、例えば、5g/m以上、10g/m以上、15g/m以上、20g/m以上、又は25g/m以上であってよく、例えば、200g/m以下、150g/m以下、120g/m以下、100g/m以下、80g/m以下、又は70g/m以下であってよい。
【0042】
<その他の構成>
本発明の抗菌製品は、基体、及び抗菌層を必須の構成として含んでいればよく、その他の構成を含んでいてもよい。その他の構成としては、例えば、その他の層が挙げられ、その他の層は、基体の外側、基体と抗菌層の間、抗菌層の外側のいずれであってもよい。
【0043】
その他の層としては、例えば、基体に形成するプライマー層が挙げられる。プライマー層上に抗菌層を形成することで、密着性を向上させることができる。
【0044】
また、抗菌層の外側に、更に樹脂等を積層して被覆することで、長期使用による抗菌剤の脱落や漏出による、抗菌効果の低下を抑制してもよい。
【0045】
更に、抗菌層の外側に、色相顔料層等を積層することで、抗菌製品の色デザインの自由度を増加させてもよく、また、他の機能性層を積層したり複合化したりして、抗菌以外の性能を備えさせてもよい。
【0046】
<用途>
本発明の抗菌製品は、特に限定されるものではないが、例えば、内壁、建材、目地材、シーリング材、家具、エアフィルター、インソール、衣料品、衛生用品、医療用資材又は器具、バスマット、タオル、寝具等であってよい。
【0047】
《抗菌性塗料》
また別の本発明は、本発明の抗菌剤を含む抗菌性塗料である。抗菌性塗料は、本発明の抗菌剤の他に、樹脂及び溶剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0048】
<樹脂>
本発明の抗菌性塗料に任意に含まれる樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等であってよい。
【0049】
<溶剤>
本発明の抗菌性塗料に含まれる溶剤は、特に限定されるものではなく、例えば、水、アルコール、ケトン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル等から選択されてもよい。
【0050】
<抗菌剤の含有量>
本発明の抗菌性塗料における抗菌剤の含有量は、高い抗菌性能を発現する観点から、該塗料中の樹脂と抗菌剤との合計に対する抗菌剤の割合として、例えば1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、とりわけ好ましくは30質量%以上であってもよく、良好な塗布性を得る観点から、例えば80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、とりわけ好ましくは30質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。
【0051】
<抗菌性塗料の製造方法>
本発明の抗菌性塗料の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、市販の合成樹脂塗料と、本発明の抗菌剤とを、所定の割合で混合することにより、調製されてよい。
【0052】
<用途>
本発明の抗菌性塗料は、上記した本発明の抗菌製品における抗菌層の形成に用いることができる。また、例えば、目地材(タイル、コンリート、煉瓦等の隙間の充填材)、シーリング材、コーキング材、接着剤等として用いてもよい。
【実施例
【0053】
《実施例1~3》
<ランタンフェライトの合成>
粉砕メディアとして10mmΦのアルミナ球を使用するボールミル中に、0.4モル部のLa、0.2モル部のFeOOH、及び水を仕込み、5時間粉砕混合した。得られた粉砕物を、300℃にて15時間乾燥した後、回転式粉砕機で解砕した。得られた解砕物を、1,000℃にて15時間焼成した後、ハンマーミルで粉砕することにより、ランタンフェライトを得た。
【0054】
得られたランタンフェライトのLa:Fe比は、各実施例においてそれぞれ以下のとおりであった。
実施例1及び2、La:Fe=80:20(モル比)、式La1.6Fe0.4
実施例3、La:Fe=50:50(モル比)、式La1.0Fe1.0
【0055】
<評価>
(抗菌活性値の測定)
得られたランタンフェライトを、全固形分に対する濃度が表1に記載の濃度となるように、二液溶剤系アクリルウレタン樹脂(主剤:DIC株式会社製、アクリディック(登録商標)A-801-P、硬化剤:DIC株式会社製、バーノック(登録商標)DN-980)に混合し、評価用塗料を作製した。
【0056】
PETフィルムに、作製した評価用塗料を、約70μmの厚みになるよう塗工し、室温で1日乾燥させて塗膜を作製した。得られた塗膜について、JIS Z 2801に従い、Escherichia coli(大腸菌)及びStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)に対する抗菌活性値をそれぞれ測定した。
【0057】
(抗菌効果の判定)
上記で得られた抗菌活性値に基づき、以下の評価基準にて、抗菌効果の判定を実施した。判定結果を表1に示す。
AA:大腸菌及び黄色ブドウ球菌の抗菌活性値の何れもが2.0以上
A:大腸菌及び黄色ブドウ球菌の抗菌活性値の何れもが1.0以上2.0未満
B:大腸菌及び黄色ブドウ球菌の抗菌活性値の何れかが1.0以上2.0未満
C:大腸菌及び黄色ブドウ球菌の抗菌活性値の何れもが1.0未満
【0058】
《比較例1》
ランタンフェライトを混合せず、二液溶剤系アクリルウレタン樹脂のみを用いて、実施例1と同様にして塗膜を形成した。得られた塗膜について、実施例1と同様にして抗菌活性値を測定し、抗菌効果の判定を実施した。測定結果及び判定結果を、表1に示す。
【0059】
《実施例4》
(抗菌活性値の測定)
実施例1と同様にして得られたランタンフェライトを、全固形分に対する濃度が表1に記載の濃度となるように、水系アクリルウレタンエマルジョン(DIC株式会社製、ボンコート(登録商標)HY-364)に混合し、評価用塗料を作製した。
【0060】
PETフィルムに、作製した評価用塗料を、約70μmの厚みになるよう塗工し、室温で1日乾燥させて塗膜を作製した。得られた塗膜について、JIS Z 2801に従い、Escherichia coli(大腸菌)、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、サルモネラ菌、及びレジオネラ菌に対する抗菌活性値をそれぞれ測定した。
【0061】
(抗菌効果の判定)
上記で得られた抗菌活性値に基づき、以下の評価基準にて、抗菌効果の判定を実施した。判定結果を表2に示す。
AA:全菌種についての抗菌活性値が2.0以上
A:全菌種についての抗菌活性値が1.0以上2.0未満
B:全菌種についての抗菌活性値が1.0以上2.0未満
C:全菌種についての抗菌活性値が1.0未満
【0062】
《実施例5》
(抗菌活性値の測定)
実施例3と同様にして得られたランタンフェライトを用いた他は、実施例5と同様にして、抗菌効果の判定を実施した。判定結果を表2に示す。
【0063】
《参考例1》
PETフィルム上に塗膜を形成せずに、無加工のまま、JIS Z 2801に従い、Escherichia coli(大腸菌)及びStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)の生菌数をそれぞれ測定した。測定結果を、表1の下段に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1中の樹脂種の略称は、それぞれ、以下の意味である。
A-801-P:二液溶剤系アクリルウレタン樹脂(主剤:DIC株式会社製、アクリディック(登録商標)A-801-P、硬化剤:DIC株式会社製、バーノック(登録商標)DN-980)
HY-364:水系アクリルウレタンエマルジョン(DIC株式会社製、ボンコート(登録商標)HY-364)
【0066】
《実施例6》
(抗菌活性値の測定)
実施例1と同様にして得られたランタンフェライトを、全固形分に対する濃度が表2に記載の濃度となるように、水系アクリルウレタンエマルジョン(DIC株式会社製、ボンコート(登録商標)HY-364)に混合し、評価用塗料を作製した。
【0067】
PETフィルムに、作製した評価用塗料を、約70μmの厚みになるよう塗工し、室温で1日乾燥させて塗膜を作製した。得られた塗膜について、JIS Z 2801に従い、Escherichia coli(大腸菌)、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、O-157、及びMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対する抗菌活性値をそれぞれ測定した。
【0068】
(抗菌効果の判定)
上記で得られた抗菌活性値に基づき、以下の評価基準にて、抗菌効果の判定を実施した。判定結果を表2に示す。
AA:全菌種についての抗菌活性値が2.0以上
A:全菌種についての抗菌活性値が1.0以上2.0未満
B:全菌種についての抗菌活性値が1.0以上2.0未満
C:全菌種についての抗菌活性値が1.0未満
【0069】
《参考例2》
PETフィルム上に塗膜を形成せずに、無加工のまま、JIS Z 2801に従い、Escherichia coli(大腸菌)、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、O-157、及びMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の生菌数をそれぞれ測定した。測定結果を、表2の下段に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2の下段に示した参考例2の生菌数は、表1の下段に示した参考例1の生菌数と比較して、約10(10億)~1010(100億)倍多い。したがって、実施例6の試験は、実施例1~5及び比較例1の試験と比較して、極めて過酷な試験である。