(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】機器の操作ハンドル構造
(51)【国際特許分類】
B62J 50/21 20200101AFI20241101BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20241101BHJP
B62K 21/26 20060101ALI20241101BHJP
B60R 16/027 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
B62J50/21
B62J45/00
B62K21/26
B60R16/027 T
(21)【出願番号】P 2023506934
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2022008285
(87)【国際公開番号】W WO2022196325
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2021041621
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】古賀 太
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0269868(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0267171(US,A1)
【文献】特開2016-068769(JP,A)
【文献】特開2002-113264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 50/21
B62J 45/00
B62K 21/26
B60R 16/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機を有する鞍乗り型車両(1)を操作可能
にし、操作者が把持するグリップ(41A,51A)と、
前記グリップ(41A,51A)に振動を伝達し、操作者に情報を報知する振動装置(46,56)と、
を備える
鞍乗り型車両の操作ハンドル構造において、
前記振動装置(46,56)は、前記グリップ(41A,51A)の端部(37e)
周辺に位置しており、
前記振動装置(46,56)は、アクチュエータ(71)および偏心ウェイト(72)を備え、前記グリップ(41A,51A)の内部の中空部(37c)に配置されており、
前記グリップ(41A,51A)は、前記操作者の左右の手でそれぞれ把持される左右一対のグリップ(41A,51A)を備え、
前記偏心ウェイト(72)は、前記アクチュエータ(71)よりも前記グリップ(41A,51A)の左右方向内側に配置されている
鞍乗り型車両の操作ハンドル構造。
【請求項2】
前記アクチュエータ(71)の回転軸(71a)は、前記グリップ(41A,51A)の中心軸線(83)と平行に配置されている請求項1に記載の
鞍乗り型車両の操作ハンドル構造。
【請求項3】
前記グリップ(41A,51A)おける中心軸線(83)よりも前記操作者が位置する側に、前記アクチュエータ(71)を前記グリップ(41A,51A)に支持する支持部(81d1,81b1)を備えている請求項1
又は2に記載の
鞍乗り型車両の操作ハンドル構造。
【請求項4】
前記グリップ(41A,51A)の内部に配策され、前記アクチュエータ(71)に接続されるハーネス(76)を備えている請求項1
から3の何れか一項に記載の
鞍乗り型車両の操作ハンドル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の操作ハンドル構造に関する。
本願は、2021年3月15日に、日本に出願された特願2021-041621号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車の操舵ハンドル構造において、運転者に触覚を通じた情報提示を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、運転者が把持する左右のグリップに振動子を内蔵し、この振動子の作動を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両等の機器の操作ハンドルは、機器本体(車体)の振動が伝わって振動を発生させることがある。この振動を抑制するために、以下のようにグリップの振動を抑える技術が周知である。その技術とは、グリップの端部等にハンドルウェイトを取り付け、グリップの端部における振動の増幅を抑制するものである。
しかし、限られたサイズのグリップに上記した振動子とハンドルウェイトとを共に取付けることは、以下の課題がある。すなわち、部品配置スペースの確保が困難であり、また部品コストも増加させるという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、グリップを把持する操作者への情報通知と、グリップの振動抑制と、を効率よく行うことができる、機器の操作ハンドル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の一態様は、機器(1)を操作可能とし、操作者が把持するグリップ(41A,51A)と、前記グリップ(41A,51A)に振動を伝達し、操作者に情報を報知する振動装置(46,56)と、を備える機器の操作ハンドル構造において、前記振動装置(46,56)は、前記グリップ(41A,51A)の端部(37e)の側に位置している。
この構成によれば、操作者に情報を報知する振動装置を、グリップの振動を抑制するためのハンドルウェイトとして利用可能となる。このため、振動装置とは別にハンドルウェイトを設けなくて済む。このため、ハンドルおよびその周辺における部品配置スペースおよび部品コストの増加を抑えることができる。このため、グリップを把持する操作者への情報通知と、グリップの振動抑制と、を効率よく行うことができる。なお、上記「端部の側」とは、端部の外側・内側などの周辺を含む。
【0007】
上記態様において、前記振動装置(46,56)は、アクチュエータ(71)および偏心ウェイト(72)を備え、前記グリップ(41A,51A)の内部の中空部(37c)に配置されてもよい。
この構成によれば、アクチュエータおよび偏心ウェイトを備える振動装置をハンドルウェイトとして利用するので、振動装置とは別にハンドルウェイトを設けなくて済む。このため、ハンドルおよびその周辺における部品配置スペースおよび部品コストの増加を抑えることができる。このため、グリップを把持する操作者への情報通知と、グリップの振動抑制と、を効率よく行うことができる。
【0008】
上記態様において、前記アクチュエータ(71)の回転軸(71a)は、前記グリップ(41A,51A)の中心軸線(83)と平行に配置されてもよい。
この構成によれば、アクチュエータおよびその回転軸に連なる偏心ウェイトを、グリップ内の中空部に収容しやすくすることができる。
【0009】
上記態様において、前記グリップ(41A,51A)おける中心軸線(83)よりも前記操作者が位置する側に、前記アクチュエータ(71)を前記グリップ(41A,51A)に支持する支持部(81d1,81b1)を備えてもよい。
この構成によれば、グリップの操作者側にアクチュエータの支持部を備えることで、グリップを把持した手に振動装置の振動が伝わりやすくなる。このため、操作者への情報通知を良好に行うことができる。
【0010】
上記態様において、前記グリップ(41A,51A)は、前記操作者の左右の手でそれぞれ把持される左右一対のグリップ(41A,51A)を備え、前記偏心ウェイト(72)は、前記アクチュエータ(71)よりも前記グリップ(41A,51A)の左右方向内側に配置されてもよい。
この構成によれば、グリップの左右方向内側(基端側)に偏心ウェイトを配置するので、操作者への情報通知を良好に行うことができる。すなわち、グリップの左右方向外側(先端側)に偏心ウェイトを配置する場合と比べて、偏心ウェイトの回転による振動がグリップを把持した手に伝わりやすくすることができる。
【0011】
上記態様において、前記グリップ(41A,51A)の内部に配策され、前記アクチュエータ(71)に接続されるハーネス(76)を備えてもよい。
この構成によれば、アクチュエータに接続されるハーネスがグリップ内に配策されるので、ハーネスへの被水等の外乱を抑制することができる。また、ハーネスを目立たなくして外観性向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、グリップを把持する操作者への情報通知と、グリップの振動抑制と、を効率よく行うことができる、機器の操作ハンドル構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態の自動二輪車の左側面図である。
【
図2】上記自動二輪車のハンドル周辺を運転者目線から見た斜視図である。
【
図3】上記自動二輪車の左ハンドルの構造を示す斜視図である。
【
図5】上記実施形態の変形例を示す
図4に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0015】
<車両全体>
図1は、本実施形態の自動二輪車(機器)1を示す。自動二輪車1は、ハンドル(操作ハンドル)2によって操舵される前輪3と、パワーユニット20によって駆動される後輪4と、を備えている。自動二輪車1は、運転者が車体を跨いで乗車する鞍乗り型車両である。自動二輪車1は、前後輪3,4の接地点を基準に車体を左右方向(ロール方向)に揺動(バンク)可能である。実施形態の車両は、自動二輪車のように車体をバンクさせた方向に旋回する車両であるが、これに限らない。実施形態の車両は、車体をバンクさせずに操舵輪の操舵によって旋回する車両を含んでもよい。
【0016】
自動二輪車1は、ハンドル2および前輪3を含むステアリング系部品10Aと、自動二輪車1の骨格となる車体フレーム5と、を備えている。ステアリング系部品10Aは、車体フレーム5の前端部のヘッドパイプ6に操舵可能に支持されている。前輪3は、ステアリング系部品10Aにおける左右一対のフロントフォーク10の下端部に支持されている。車体フレーム5の周囲は、車体カバー12で覆われている。
【0017】
車体フレーム5は、ヘッドパイプ6、左右一対のメインフレーム7、左右一対のピボットフレーム8、左右一対のシートフレーム9を備えている。
ヘッドパイプ6は、ステアリング系部品10Aを操舵可能に支持する。左右のメインフレーム7は、ヘッドパイプ6から後ろ下がりに延びる。左右のピボットフレーム8は、左右のメインフレーム7の各後端部からそれぞれ下方に延びる。左右のシートフレーム9は、左右のピボットフレーム8の各上部からそれぞれ後ろ上がりに延びる。
【0018】
左右のピボットフレーム8には、車幅方向(車体左右方向、以下、単に左右方向という。)に沿うピボット軸8aが渡設される。左右のピボットフレーム8には、ピボット軸8aを介して、スイングアーム11の前端部が上下揺動可能に支持されている。後輪4は、スイングアーム11の後端部に支持されている。
車体フレーム5とスイングアーム11との間には、緩衝器であるクッションユニット(不図示)が渡設される。
左右のメインフレーム7の上部には、燃料タンク18が支持されている。燃料タンク18の後方には、左右のシートフレーム9によってシート19が支持されている。
【0019】
自動二輪車1のパワーユニット20は、左右のメインフレーム7および左右のピボットフレーム8に支持されている。パワーユニット20の出力軸は、チェーン式伝動機構(不図示)を介して、後輪4に動力伝達可能に接続されている。
パワーユニット20は、原動機となるエンジン13と、エンジン13の後方に連なる変速機21と、を一体に備えている。
【0020】
自動二輪車1は、前輪3を制動する前輪ブレーキ3Bと、後輪4を制動する後輪ブレーキ4Bと、を備えている。前輪ブレーキ3Bおよび後輪ブレーキ4Bは、それぞれディスクブレーキである。
前輪ブレーキ3Bおよび後輪ブレーキ4Bは、前輪3および後輪4の回転を適宜制動する。この制動は、ブレーキ操作子であるブレーキレバー43(
図2参照)およびブレーキペダル(不図示)が操作されることでなされる。
【0021】
図2は、運転者目線から見た車体前部のハンドル2周辺を示す。左右のフロントフォーク10の上部は、ステアリングステム31を介してヘッドパイプ6に支持されている。左右のフロントフォーク10は、テレスコピック型の緩衝器である。ステアリングステム31は、トップブリッジ32およびボトムブリッジ33、ならびにステムシャフト34を備えている。トップブリッジ32およびボトムブリッジ33は、左右のフロントフォーク10の上部を連結する。ステムシャフト34は、ヘッドパイプ6に挿通される。車体前部は、車体カバー12のフロントカウル27に覆われている。
【0022】
例えば、自動二輪車1のハンドル2は、左右別体式のセパレートハンドルである。ハンドル2は、左右一対の右ハンドル36および左ハンドル37を備えている。例えば、右ハンドル36および左ハンドル37は、それぞれトップブリッジ32の下方において、同側のフロントフォーク10の上部に取り付けられている。
【0023】
右ハンドル36は、運転者が右手で把持する右グリップ41Aを備えている。右グリップ41Aは、車幅方向に長さを有して直線状に延びる円筒状の右グリップバー36Aと、右グリップバー36Aにその軸回りに回動可能に外嵌されるアクセルスリーブ41と、を備えている。右グリップバー36Aは、金属パイプ等からなる。アクセルスリーブ41は、合成樹脂製の本体の外周にラバーグリップを固定的に装着して構成される。
【0024】
右グリップバー36Aは、アクセルスリーブ41よりも車幅方向内側に延びる。右グリップバー36Aの車幅方向内側には、右スイッチボックス42および右レバーホルダ44が支持される。図中符号43は、右レバーホルダ44に揺動可能に支持される右レバー(例えばフロントブレーキレバー)を示す。右グリップバー36Aの車幅方向内側の端部は、右ハンドルクランプ36Bを介して、右側のフロントフォーク10の上部に固定されている。
右グリップ41Aは、右グリップバー36Aの内部空間(中空部)に、右振動装置46を備えている。右振動装置46は、運転者の右手に情報通知としての振動を与えるためのものである。
【0025】
左ハンドル37は、運転者が左手で把持する左グリップ51Aを備えている。左グリップ51Aは、車幅方向に長さを有して直線状に延びる円筒状の左グリップバー37Aと、左グリップバー37Aに固定的に装着されるハンドルグリップ51と、を備えている。左グリップバー37Aは、金属パイプ等からなる。ハンドルグリップ51は、合成ゴム製のラバーグリップである。
【0026】
左グリップバー37Aは、ハンドルグリップ51よりも車幅方向内側に延びる。左グリップバー37Aの車幅方向内側には、左スイッチボックス52および左レバーホルダ54が支持される。図中符号53は、左レバー(例えばクラッチレバー)を示す。左グリップバー37Aの車幅方向内側の端部は、左ハンドルクランプ37Bを介して、左側のフロントフォーク10の上部に固定されている。
左グリップ51Aは、左グリップバー37Aの内部空間(中空部)に、左振動装置56を備えている。左振動装置56は、運転者の左手に情報通知としての振動を与えるためのものである。
【0027】
フロントフォーク10の前方には、メータ装置61が配置される。メータ装置61は、車体フレーム5又はフロントカウル27に支持されている。メータ装置61は、表示画面62と、インジケータランプ群63と、を備えている。メータ装置61は、例えば車速およびエンジン回転数などを画像表示する液晶ディスプレイ等で構成される。インジケータランプ群63は、表示画面62の周囲に配置され、各種情報を運転者に通知する。
【0028】
インジケータランプ群63は、表示画面62の右側方に配置される右インジケータランプ66と、表示画面62の左側方に配置される左インジケータランプ67と、を備える。右インジケータランプ66は、右振動装置46の作動と連動して発光する。左インジケータランプ67は、左振動装置56の作動と連動して発光する。表示画面62は、予め定めた画像表示を行うことによって、運転者に予め定めた情報を通知する。インジケータランプ群63は、予め定めた発光表示(点灯または点滅)を行うことによって、運転者に予め定めた情報を通知する。予め定めた情報とは、例えば、各種の通知および警告等であり、自動二輪車1の運転アシスト制御および自動運転制御等に係るものが挙げられる。インジケータランプ群63の通知は、左右振動装置46,56と協働してなされる。
【0029】
ところで、自動二輪車1等の鞍乗り型車両は、エンジン等の原動機の振動、路面の凹凸による振動、タイヤのアンバランスによる振動、等の特有の振動を有している。このため、一般的なバイブレータを用いた振動では、前記特有の振動に紛れてしまい、運転者が警告に気付かないことがある。
【0030】
左右振動装置46,56は、運転者に通知および警告を与えるべく、予め定めた振動を発生させる。左右振動装置46,56は、自動二輪車1等の鞍乗り型車両に特有の振動周波数を避けた周波数帯で、前記通知および警告としての振動を発生させる。
これにより、当該鞍乗り型車両に特有のホイール振動およびエンジン振動等に、通知および警告としての振動が紛れ難くなる。このため、運転者が感知しやすい情報通知を良好に行うことができる。通知および警告としての振動は、いわゆるハプティック振動である。この振動は、左右グリップ41A,51Aを把持する運転者の手の触覚に刺激を与える。
【0031】
図3は、左ハンドル37内を透視して示す斜視図である。以下、
図3を参照し、左ハンドル37の内部に配置された左振動装置56を説明する。なお、
図3では、左ハンドル37のハンドルグリップ51(
図2参照)を省いている。右ハンドル36の内部に配置された右振動装置46については、左振動装置56と同一構造であるため、詳細説明は省略する(
図4および
図5についても同じ。)。
【0032】
左振動装置56は、電動モータ(アクチュエータ)71と、偏心ウェイト72と、を備えている。電動モータ71は、左グリップバー37Aの中空部37cの内周面37dに支持(固定)されている。偏心ウェイト72は、電動モータ71の回転軸71aの先端部に一体回転可能に支持されている。左グリップバー37Aの左右方向外側の端部37eには、中空部37cを塞ぐキャップ73が取り付けられている。左振動装置56の全体は、左グリップバー37Aの端部37eの末端よりも左右方向内側に配置されている。左振動装置56は、少なくとも一部が左グリップバー37Aの端部37eの末端よりも左右方向外側に配置されてもよい。この場合、左振動装置56が適宜のキャップで覆われる構成でもよい。
【0033】
電動モータ71は、回転軸71aの駆動、停止および回転数が制御される。この制御は、車体に備える制御装置(不図示)により、各種情報に基づいてなされる。電動モータ71は、回転軸71aを中心とした外周部を覆う筒状のハウジング75を備えている。
【0034】
例えば、ハウジング75の外周面75aからは、ワイヤハーネス76が延びている。ワイヤハーネス76は、複数の導線(不図示)を備えている。ワイヤハーネス76は、不図示の制御装置からの制御信号、および不図示のバッテリからの電力を電動モータ71に供給する。
ワイヤハーネス76は、左グリップバー37A内を、電動モータ71から車幅方向内側に延びように配策されている。ワイヤハーネス76は、左ハンドルクランプ37B(
図2参照)の近傍で、左グリップバー37Aの外部に引き出され、不図示のメインハーネスに合流する。
【0035】
例えば、偏心ウェイト72は、略半円柱状に形成されている。偏心ウェイト72は、電動モータ71の回転軸71aと軸方向を一致させている。偏心ウェイト72は、軸方向に沿う平面部72aと、回転軸71aを嵌入させる軸取付部72bと、を備えている。偏心ウェイト72の重心は、回転軸71aに対して偏心している。偏心ウェイト72は、電動モータ71の作動により、回転軸71aとともに回転することで、左振動装置56における振動を発生させる。その結果、左振動装置56を取付けた左グリップバー37Aが振動し、ハンドルグリップ51を握った運転者の左手に振動が伝わる。この振動により、運転者に予め定められた情報が通知される。
【0036】
中空の左グリップバー37A内に重量を有する電動モータ71および偏心ウェイト72を設置することで、以下の効果を奏する。すなわち、左振動装置56を、左ハンドル37の共振による振動発生を抑制するハンドルウェイトとして利用することができる。したがって、左ハンドル37には、別途のハンドルウェイトを設けなくて済み、左ハンドル37の内部および周囲に部品配置スペースを増設することが不要となる。また、部品点数および取付構造の増加を抑えてコストダウンを図ることができる。
【0037】
左振動装置56の振動発生源である偏心ウェイト72は、左ハンドル37の左右方向内側に配置されている。左ハンドル37の左右方向内側は、運転者の手の親指側である。運転者の手の親指側は、左ハンドル37前方のレバーを操作する指が左ハンドル37から離れても、運転者の手が常時接しやすい側である。したがって、偏心ウェイト72を左ハンドル37の左右方向内側に配置することで、運転者の手に振動を伝えやすくなる。
【0038】
例えば、電動モータ71の重量は、偏心ウェイト72の重量よりも重い。電動モータ71は、偏心ウェイト72の車幅方向外側に配置される。重量のある電動モータ71を左ハンドル37の左右方向外側(末端側)に配置することで、以下の効果を奏する。すなわち、左振動装置56がハンドルウェイトとして機能しやすくなり、左ハンドル37の振動を抑制する効果が高まる。
【0039】
図4に示すように、電動モータ71は、左グリップバー37Aの内周面37dに、スペーサー81を介して支持(固定)されている。
例えば、スペーサー81は、左グリップバー37Aと同軸の円筒状をなしている。スペーサー81は、外周面81aが左グリップバー37Aの内周面37dに嵌合されている。スペーサー81は、外周面81aを形成する円筒状の周壁81bと、周壁81bの内周面81cから径方向内側に突出する複数の内方突出部81dと、を備えている。
【0040】
複数の内方突出部81dは、径方向内側の内側端面81eを、電動モータ71のハウジング75の外周面75aに押し当てて、電動モータ71を保持している。換言すれば、スペーサー81は、各内側端面81eの内側に電動モータ71を嵌め込んで保持している。周方向で隣り合う内方突出部81dの間には、左グリップバー37Aの軸方向に沿って延びる空間S1が設けられている。この空間S1により、電動モータ71からの放熱が促される。
左グリップバー37Aとスペーサー81との間には、周方向に相対回動しないようにする回り止め(不図示)が設けられている。スペーサー81とハウジング75との間にも、前記同様の回り止めが設けられている。
【0041】
図中符号83は、直線状に延びる左グリップバー37Aの断面中心を通る中心軸線(軸心)を示す。図中符号71bは、電動モータ71の回転軸71aの中心軸線(軸心)を示す。実施形態において、これら両中心軸線83,71bは互いに一致している。即ち、電動モータ71は、左グリップバー37Aと軸方向を平行にして配置され、かつ左グリップバー37Aと同軸に配置されている。
【0042】
複数の内方突出部81dの少なくとも一つは、中心軸線83よりも車両後方側(運転者側)に配置されている。この後方側の内方突出部81dを符号81d1で示す。左ハンドル37の後方側は、レバー操作の有無によらず、運転者の手のひらが常時接しやすい側である。したがって、左ハンドル37の後方側に電動モータ71の支持部(内方突出部81d1)を設けることで、運転者の手に振動を伝えやすくなる。
【0043】
スペーサー81は、樹脂製又は金属製である。左振動装置56でハンドルウェイトを兼ねる場合、必要な重量によってスペーサー81の材料を選定するとよい。すなわち、左振動装置56だけでハンドルウェイトに必要な重量が足りるときには、スペーサー81を樹脂製にするとよい。左振動装置56だけではハンドルウェイトに必要な重量が足りない場合、スペーサー81を金属製にするとよい。金属製のスペーサー81でハンドルウェイトの重量を調整する場合、例えば、スペーサー81の周壁81bの厚さ、および内方突出部81dの断面積を大きくするとよい。スペーサー81を金属製とした場合、金属の良好な熱伝導性を利用して、電動モータ71からの放熱が良好になされる。
【0044】
図5は、
図4に示す実施形態に対し、電動モータ71を偏心配置した例を示す。
この例において、左グリップバー37Aおよび電動モータ71の両中心軸線83,71bは、互いに平行である。電動モータ71の中心軸線71bは、左グリップバー37Aの中心軸線83に対して、後方側に距離L1だけオフセットしている。
【0045】
電動モータ71は、左グリップバー37Aの内周面37dに、スペーサー85を介して支持(固定)されている。
例えば、スペーサー85は、外周面81aを形成する円筒状の周壁81bと、周壁81bの内周面81cから径方向内側に突出する複数の内方突出部81dと、を備えている。
【0046】
スペーサー85は、実施形態のスペーサー81よりも内方突出部81dの数が少ない。スペーサー85は、電動モータ71のハウジング75の外周面75aの後部を内方突出部81dで支持しない。スペーサー85は、外周面75aの後部を、周壁81bの後部81b1で支持している。電動モータ71のハウジング75の外周面75aの後部は、スペーサー85の周壁81bの後部81b1の内周面81cに押し当てられている。これにより、左振動装置56で発生する振動は、運転者の左手に直接的に伝わる。
このように、電動モータ71を左グリップバー37A内で後方側に偏心配置することで、左振動装置56で発生する振動を運転者の手のひらに伝えやすくなる。
【0047】
以上説明したように、上記実施形態における機器の操作ハンドル構造は、自動二輪車1を操舵可能とするハンドル2を備える。前記ハンドル2は、運転者が把持する右グリップ41Aおよび左グリップ51Aと、右グリップ41Aおよび左グリップ51Aの各内部の中空部37cに配置される右振動装置46および左振動装置56と、を備える。右振動装置46および左振動装置56は、前記右グリップ41Aおよび左グリップ51Aを把持する運転者の手に、予め定めた情報通知としての振動を与える。前記右振動装置46および左振動装置56は、それぞれ電動モータ71および偏心ウェイト72を備える。前記右振動装置46および左振動装置56は、それぞれハンドルウェイトを兼ねている。ハンドルウェイトは、前記右グリップ41Aおよび左グリップ51Aにおける前記自動二輪車1に特有の周波数帯の振動を抑制するものである。
【0048】
この構成によれば、電動モータ71および偏心ウェイト72を備える右振動装置46および左振動装置56を、自動二輪車1に特有の周波数帯の振動を抑制するハンドルウェイトとして利用するので、右振動装置46および左振動装置56とは別にハンドルウェイトを設けなくて済む。このため、ハンドル2およびその周辺における部品配置スペースおよび部品コストの増加を抑えることができる。また、右グリップ41Aおよび左グリップ51Aを把持する運転者への情報通知と、右グリップ41Aおよび左グリップ51Aの振動抑制と、を効率よく行うことができる。
【0049】
また、上記機器の操作ハンドル構造において、右振動装置46および左振動装置56は、電動モータ71と、電動モータ71によって駆動される偏心ウェイト72と、を備えている。これにより、ハンドルウェイトとしての重量を容易に確保することができる。
【0050】
また、上記機器の操作ハンドル構造において、前記電動モータ71の回転軸71aは、前記右グリップ41Aおよび左グリップ51Aの中心軸線83と平行かつ同軸に配置されている。これにより、右グリップ41Aおよび左グリップ51A内の中空部37cに、電動モータ71および偏心ウェイト72を収容しやすくすることができる。また、偏心ウェイト72の回転半径を最大限に確保することができる。
【0051】
また、上記機器の操作ハンドル構造において、前記右グリップ41Aおよび左グリップ51Aおける前記中心軸線83よりも前記運転者が位置する側(後方側)に、支持部(内方突出部81d1、周壁81bの後部81b1)を備えている。前記支持部は、前記電動モータ71を前記右グリップ41Aおよび左グリップ51Aに支持している。
この構成によれば、右グリップ41Aおよび左グリップ51Aの運転者側に電動モータ71の支持部を備えることで、運転者への情報通知を良好に行うことができる。すなわち、右グリップ41Aおよび左グリップ51Aを把持した手に、右振動装置46および左振動装置56の振動が伝わりやすくすることができる。
【0052】
また、上記機器の操作ハンドル構造において、前記ハンドル2は、前記運転者の左右の手でそれぞれ把持される左右一対のグリップ41A,51Aを構成している。グリップ41A,51Aは、車両左右方向内側の基端部が車体本体に支持されるとともに、前記基端部から左右方向外側に延びている。前記偏心ウェイト72は、前記電動モータ71よりも前記グリップ41A,51Aの左右方向内側に配置されている。
この構成によれば、左右グリップ41A,51Aの左右方向内側(基端側)に偏心ウェイト72を配置するので、左右グリップ41A,51Aの左右方向外側(先端側)に偏心ウェイト72を配置する場合と比べて、運転者への情報通知を良好に行うことができる。すなわち、偏心ウェイト72の回転による振動が、左右グリップ41A,51Aを把持した手に伝わりやすくすることができる。
【0053】
また、上記機器の操作ハンドル構造において、前記グリップ41A,51Aの内部に配策され、電動モータ71に接続されるワイヤハーネス76を備えている。これにより、ワイヤハーネス76等への被水等の外乱を抑制するとともに、ワイヤハーネス76を目立たなくして外観性向上を図ることができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、振動装置は、電動モータで駆動するものに限らない。例えば、振動装置は、空圧、油圧、磁気などにより駆動力を発生するアクチュエータと、アクチュエータにより駆動されるウェイトと、を備えて振動を発生させる構成でも良い。
偏心ウェイトは、電動モータよりも左右方向内側に配置される構成に限らない。例えば、偏心ウェイトは、電動モータよりも左右方向外側に配置されてもよい。この場合、偏心ウェイトがグリップの末端側で駆動するので、グリップ全体に情報通知としての振動を発生させやすくなる。また、偏心ウェイトの重量を調節してハンドルウェイトとして機能させやすくなる。
【0055】
スペーサーのグリップ内への固定方法、および電動モータのスペーサー内への固定方法は、
図4および
図5で説明した方法に限らない。例えば、スペーサーをグリップ内にねじ止めおよび加締めなどにより固定しても良い。また、電動モータをスペーサー内にねじ止めおよび加締めなどにより固定しても良い。
本発明を適用するハンドルは、左右別体のセパレートハンドルに限らない。ハンドルは、左右一体のバーハンドルでもよく、かつバータイプのハンドルでなくてもよい。
【0056】
本発明を適用する車両には、乗用車、バス、トラック、鞍乗り型車両、原動機付自転車、自転車、四輪バギー車などが含まれる。また、鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車およびスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。また、原動機に電動モータを含む車両も含まれる。
本実施形態は車両に適用したものであるが、本発明は車両への適用に限らない。例えば、本発明は、航空機および船舶等の種々輸送機器、ならびに建設機械および産業機械等、様々な乗物に適用してもよい。さらに、本発明は、乗物以外でも操作ハンドルを備える機器であれば、例えば手押しの芝刈り機および清掃機等に広く適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 自動二輪車(機器)
2 ハンドル(操作ハンドル)
37c 中空部
37e 端部
41A 右グリップ(グリップ)
46 右振動装置(振動装置)
51A 左グリップ(グリップ)
56 左振動装置(振動装置)
71 電動モータ(アクチュエータ)
71a 回転軸
71b 中心軸線
72 偏心ウェイト
76 ワイヤハーネス(駆動源供給部材)
83 中心軸線