(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20241101BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20241101BHJP
H02K 15/12 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H01F41/02 B
H02K15/02 F
H02K15/12 A
(21)【出願番号】P 2023514664
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2022017687
(87)【国際公開番号】W WO2022220260
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2021068134
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和年
(72)【発明者】
【氏名】高谷 真介
(72)【発明者】
【氏名】平山 隆
(72)【発明者】
【氏名】福地 美菜子
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 賢明
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 真
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-038119(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123885(WO,A1)
【文献】特開2011-023523(JP,A)
【文献】特開2019-212756(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129929(WO,A1)
【文献】特許第7467634(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 3/08、27/245、41/02
H02K 1/06、15/02、15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面または両面にプレス加工油を塗布した帯状鋼板にプレス加工を行い、前記帯状鋼板の片面に嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を塗布して複数枚の鋼板部品を得て、前記各鋼板部品を積層接着することによって接着積層コアを製造する方法であって、
前記プレス加工油を塗布する前の前記帯状鋼板の片面又は両面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を塗布して乾燥させた硬化促進層を形成する
ことを特徴とする接着積層コア製造方法。
【請求項2】
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤と前記瞬間接着剤用硬化促進剤とをチェッカー状に配置して前記硬化促進層を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項3】
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤及び前記瞬間接着剤用硬化促進剤を予め混合させた状態で、前記帯状鋼板の片面又は両面に塗布して乾燥させることで、前記硬化促進層を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項4】
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤と前記瞬間接着剤用硬化促進剤とを縞状に配置して前記硬化促進層を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項5】
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1面と、前記第1面上に形成された前記硬化促進層と、前記硬化促進層上に配置された前記プレス加工油とを有する前記第1鋼板部品を準備する第1の工程と、
第2面と、前記第2面上に配置された前記嫌気性接着剤及び前記瞬間接着剤と、を有する前記第2鋼板部品を準備する第2の工程と、
前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第3の工程と、
を有することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項6】
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1面と、前記第1面上に形成された前記硬化促進層と、前記硬化促進層上に配置された前記プレス加工油と、前記プレス加工油上に配置された前記嫌気性接着剤及び前記瞬間接着剤とを有する前記第1鋼板部品を準備する第4の工程と、
第2面を有する前記第2鋼板部品を準備する第5の工程と、
前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第6の工程と、
を有することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項7】
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤が、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される嫌気硬化を促進する有効成分を含むことを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項8】
前記瞬間接着剤用硬化促進剤が、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択される2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含むことを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項9】
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤及び前記瞬間接着剤用硬化促進剤の少なくとも一方が、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤等の溶剤により希釈されている
ことを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項10】
前記接着積層コアが、回転電機用の固定子であることを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項11】
帯状鋼板から打ち抜かれた複数枚の鋼板部品を備える接着積層コアを製造する装置であって、
前記帯状鋼板の片面または両面にプレス加工油を塗布するプレス加工油塗布部と、
前記帯状鋼板にプレス加工を加えるプレス加工部と、
前記帯状鋼板の片面に嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を塗布する接着剤塗布部と、
前記プレス加工油を塗布する前の前記帯状鋼板の片面又は両面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を塗布して乾燥させた硬化促進層を形成する硬化促進層形成部と、
を備えることを特徴とする接着積層コア製造装置。
【請求項12】
前記硬化促進層形成部が、前記嫌気性接着剤用硬化促進剤及び前記瞬間接着剤用硬化促進剤をチェッカー状に塗布するノズルを備える
ことを特徴とする請求項11に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項13】
前記硬化促進層形成部が、前記嫌気性接着剤用硬化促進剤及び前記瞬間接着剤用硬化促進剤を予め混合させた状態で流す硬化促進剤供給流路と、前記硬化促進剤供給流路に通じるノズルとを備える
ことを特徴とする請求項11に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項14】
前記硬化促進層形成部が、前記嫌気性接着剤用硬化促進剤及び前記瞬間接着剤用硬化促進剤を縞状に塗布するノズルを備える
ことを特徴とする請求項11に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項15】
前記硬化促進層形成部を有する第1ステージと、
前記第1ステージから移された前記帯状鋼板を前記プレス加工油塗布部に向かって送り出す搬送部を有する第2ステージと、
を備え、
前記第2ステージに、前記帯状鋼板の送り方向に沿って、前記搬送部と、前記プレス加工油塗布部と、前記プレス加工部及び前記接着剤塗布部とが、この順に並んで配置されている
ことを特徴とする請求項11~14の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項16】
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤が、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される嫌気硬化を促進する有効成分を含むことを特徴とする請求項11~
14の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項17】
前記瞬間接着剤用硬化促進剤が、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択される2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含むことを特徴とする請求項11~
14の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項18】
前記接着積層コアが、回転電機用の固定子であることを特徴とする請求項11~
14の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置に関する。
本願は、2021年4月14日に、日本国に出願された特願2021-068134号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば電動機として用いられる回転電機は、積層コアを備えている。この積層コアは、帯状鋼板を間欠的に送りながら複数回に分けて所定形状に打ち抜き、得られた鋼板部品を複数枚積層することで製造される。各鋼板部品間の固定は、溶接、接着、かしめ等により行われるが、これらの中でも、積層コアの鉄損を効果的に抑制できる観点より、接着による固定方法が注目されている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、片面または両面にプレス加工油を塗布したフープ材に複数のプレス加工を順次施し、当該フープ材の片面に接着剤を塗布した上で外形打抜き加工を行って金属薄板を得て、当該金属薄板を所定枚数積層接着することによって金属薄板積層体を製造する方法であって、前記プレス加工油に硬化促進剤が添加された金属薄板積層体の製造方法が開示されている。
この金属薄板積層体の製造方法によれば、プレス加工油に硬化促進剤を添加したため、プレス加工油を除去することなく金属薄板間の接着が迅速かつ強固に行われ、製造工程の簡略化や順送り金型装置における金型の小型等が可能となって製品品質および生産性の向上や製造設備の小型化等が実現される、と説明されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、断続的に送られる帯状鋼板から所定形状の鋼板部品を打ち抜くとともに該鋼板部品を積層する打抜き積層プレス方法において、上記帯状鋼板から上記鋼板部品を打ち抜くプレス加工位置よりも上流側において、上記帯状鋼板の下面に、接着剤と、該接着剤の硬化を促進するための硬化促進剤とのうちのいずれか一方を塗布する第1塗布工程と、上記プレス加工位置において、上記帯状鋼板の上面に、上記接着剤と上記硬化促進剤とのうちの他方を塗布する第2塗布工程とを含む打抜き積層プレス方法が開示されている。
この打抜き積層プレス方法によれば、第1塗布工程と第2塗布工程とを行うことにより接着剤の硬化時間を大幅に短縮することができ、複数の鋼板部品を積層して製造するコアの生産性を高めることができる、と説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許第4648765号公報
【文献】日本国特許第6164029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の金属薄板積層体の製造方法によれば、硬化促進剤の利用によって金属薄板間の接着を迅速に行えるとしている。硬化促進剤はプレス加工油の添加によって薄められた状態で塗布されるため、より高い硬化促進効果が求められる場合には、硬化促進剤の含有量を相当量まで増やす必要がある。しかしこの場合、今度はプレス加工油の割合が減ってしまうため、金属薄板を打ち抜く際の打ち抜き加工性に影響を及ぼす懸念がある。
また、上記特許文献2の打抜き積層プレス方法によれば、接着剤の硬化時間を大幅に短縮できるとしている。しかし、ここでも、打ち抜き加工に必須であるプレス加工油が硬化促進剤に与える影響については全く検討されていない。
【0007】
このように、接着積層コアの生産性をさらに高めるには、鋼板打ち抜き時におけるプレス加工油の潤滑機能と、鋼板接着時の硬化促進剤利用による接着剤の硬化促進機能とを、より高次に発揮させる必要がある。しかし、従来は、硬化促進剤の塗布形態について十分な検討がなされてこなかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接着積層コアの製造に際し、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られる、接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
(1)本発明の一態様に係る接着積層コア製造方法は、
片面または両面にプレス加工油を塗布した帯状鋼板にプレス加工を行い、前記帯状鋼板の片面に嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を塗布して複数枚の鋼板部品を得て、前記各鋼板部品を積層接着することによって接着積層コアを製造する方法であって、
前記プレス加工油を塗布する前の前記帯状鋼板の片面又は両面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を塗布して乾燥させた硬化促進層を形成する。
上記(1)に記載の接着積層コア製造方法によれば、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の両方とも、自然乾燥ではなく、加熱あるいは送風等を加えることによって積極的に乾燥させる。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層を形成しているので、後加工で塗布されるプレス加工油と混ざり合って希釈されてしまうことが抑制される。したがって、各鋼板部品間を積層して接着する際に、嫌気性接着剤用硬化促進剤がその高い濃度を維持したまま嫌気性接着剤と混ざり合い、また、瞬間接着剤用硬化促進剤もその高い濃度を維持したまま瞬間接着剤と混ざり合うことができる。そのため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。さらに、耐熱性に強く、初期強度の発現が遅い嫌気性接着剤と、初期強度の発現が速い瞬間接着剤とを併用することで、鋼板部品を積層接着後すぐにハンドリングすることができる。したがって、積層接着した接着積層コアを早期に次工程に移送したり、作業スペース外に移したりすることで、作業スペースを空けることができる。
【0010】
(2)上記(1)に記載の接着積層コア製造方法において、
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤と前記瞬間接着剤用硬化促進剤とをチェッカー状に配置してもよい。
上記(2)に記載の接着積層コア製造方法によれば、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を、帯状鋼板の塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0011】
(3)上記(1)に記載の接着積層コア製造方法において、
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤及び前記瞬間接着剤用硬化促進剤を予め混合させた状態で、前記帯状鋼板の片面又は両面に塗布して乾燥させることで、前記硬化促進層を形成してもよい。
上記(3)に記載の接着積層コア製造方法によれば、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を、帯状鋼板の塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0012】
(4)上記(1)に記載の接着積層コア製造方法において、
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤と前記瞬間接着剤用硬化促進剤とを縞状に配置して前記硬化促進層を形成してもよい。
上記(4)に記載の接着積層コア製造方法によれば、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を、帯状鋼板の塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0013】
(5)上記(1)~(4)の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法において、以下のようにしてもよい:
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1面と、前記第1面上に形成された前記硬化促進層と、前記硬化促進層上に配置された前記プレス加工油とを有する前記第1鋼板部品を準備する第1の工程と、
第2面と、前記第2面上に配置された前記嫌気性接着剤及び前記瞬間接着剤と、を有する前記第2鋼板部品を準備する第2の工程と、
前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第3の工程と、
を有する。
上記(5)に記載の接着積層コア製造方法によれば、第1の工程において、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の両方とも、予め乾燥させた硬化促進層とされており、プレス加工油と混ざり合うのが抑制された状態にある。そのため、第3の工程で第1鋼板部品及び第2鋼板部品を重ね合わせて接着する際に、嫌気性接着剤用硬化促進剤がその高い濃度を維持したまま嫌気性接着剤と混ざり合い、また、瞬間接着剤用硬化促進剤もその高い濃度を維持したまま瞬間接着剤と混ざり合うことができる。
【0014】
(6)上記(1)~(4)の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法において、以下のようにしてもよい:
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1面と、前記第1面上に形成された前記硬化促進層と、前記硬化促進層上に配置された前記プレス加工油と、前記プレス加工油上に配置された前記嫌気性接着剤及び前記瞬間接着剤とを有する前記第1鋼板部品を準備する第4の工程と、
第2面を有する前記第2鋼板部品を準備する第5の工程と、
前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第6の工程と、
を有する。
上記(6)に記載の接着積層コア製造方法によれば、第4の工程において、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の両方とも、予め乾燥させた硬化促進層とされており、プレス加工油と混ざり合うのが抑制された状態にある。そのため、第6の工程で第1鋼板部品及び第2鋼板部品を重ね合わせて接着する際に、嫌気性接着剤用硬化促進剤がその高い濃度を維持したまま嫌気性接着剤と混ざり合い、また、瞬間接着剤用硬化促進剤もその高い濃度を維持したまま瞬間接着剤と混ざり合うことができる。
【0015】
(7)上記(1)~(6)の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法において、
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤が、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される嫌気硬化を促進する有効成分を含んでもよい。
すなわち、嫌気性接着剤の硬化を促進する有効成分は、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、クロム、銀、及びマンガン、並びにそれらの組み合わせから選択されてもよい。望ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、及びクロム、並びにそれらの組み合わせであり得る。望ましくは、金属酸化物または塩の形態で提供される。好ましくは、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、ステアリン酸バナジル、バナジウムプロポキシド、バナジウムブトキシド、五酸化バナジウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ヘキサン酸銅、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅(II)等から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
上記(7)に記載の接着積層コア製造方法によれば、嫌気性接着剤の硬化が速やか、かつ完全に進行するため、特に短時間の製造やアウトガスの抑制等を要求される製造に極めて優れ、生産性が向上することができるという利点が得られる。
【0016】
(8)上記(1)~(7)の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法において、
前記瞬間接着剤用硬化促進剤が、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択される2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含んでもよい。
すなわち、瞬間接着剤の硬化を促進する有効成分の具体例としては、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
上記(8)に記載の接着積層コア製造方法によれば、瞬間接着剤の硬化が速やか、かつ完全に進行するため、特に短時間の製造やアウトガスの抑制等を要求される製造に極めて優れ、生産性が向上することができるという利点が得られる。
【0017】
(9)上記(1)~(8)の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法において、
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤及び前記瞬間接着剤用硬化促進剤の少なくとも一方が、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤等の溶剤により希釈されていてもよい。
溶剤種としては、上記溶剤種から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが選択される。接着積層コア製造上、好ましくは酢酸エチル、アセトン、エタノール、メタノール、ブタノール、トルエン、ヘプタンから選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0018】
(10)上記(1)~(9)の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法において、
前記接着積層コアが、回転電機用の固定子であってもよい。
上記(10)に記載の接着積層コア製造方法によれば、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られるので、高い性能を持ちながらも製造コストが低い回転電機用の固定子を製造することが可能になる。
【0019】
(11)本発明の一態様に係る接着積層コア製造装置は、
帯状鋼板から打ち抜かれた複数枚の鋼板部品を備える接着積層コアを製造する装置であって、
前記帯状鋼板の片面または両面にプレス加工油を塗布するプレス加工油塗布部と、
前記帯状鋼板にプレス加工を加えるプレス加工部と、
前記帯状鋼板の片面に嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を塗布する接着剤塗布部と、
前記プレス加工油を塗布する前の前記帯状鋼板の片面又は両面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を塗布して乾燥させた硬化促進層を形成する硬化促進層形成部と、
を備える。
上記(11)に記載の接着積層コア製造装置によれば、硬化促進層形成部により、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の両方を、自然乾燥ではなく、加熱あるいは送風等を加えることによって積極的に乾燥させる。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層を形成しているので、後加工で塗布されるプレス加工油と混ざり合って希釈されてしまうことが抑制される。したがって、各鋼板部品間を積層して接着する際に、嫌気性接着剤用硬化促進剤がその高い濃度を維持したまま嫌気性接着剤と混ざり合い、また、瞬間接着剤用硬化促進剤もその高い濃度を維持したまま瞬間接着剤と混ざり合うことができる。そのため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
【0020】
(12)上記(11)に記載の接着積層コア製造装置において、
前記硬化促進層形成部が、前記嫌気性接着剤用硬化促進剤及び前記瞬間接着剤用硬化促進剤をチェッカー状に塗布するノズルを備えてもよい。
上記(12)に記載の接着積層コア製造装置によれば、ノズルにより、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を、帯状鋼板の塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0021】
(13)上記(11)に記載の接着積層コア製造装置において、
前記硬化促進層形成部が、前記嫌気性接着剤用硬化促進剤及び前記瞬間接着剤用硬化促進剤を予め混合させた状態で流す硬化促進剤供給流路と、前記硬化促進剤供給流路に通じるノズルとを備えてもよい。
上記(13)に記載の接着積層コア製造装置によれば、ノズルにより、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を、帯状鋼板の塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0022】
(14)上記(11)に記載の接着積層コア製造装置において、
前記硬化促進層形成部が、前記嫌気性接着剤用硬化促進剤及び前記瞬間接着剤用硬化促進剤を縞状に塗布するノズルを備えてもよい。
上記(14)に記載の接着積層コア製造装置によれば、ノズルにより、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を、帯状鋼板の塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0023】
(15)上記(11)に記載の接着積層コア製造装置において、以下のように構成してもよい:
前記硬化促進層形成部を有する第1ステージと、
前記第1ステージから移された前記帯状鋼板を前記プレス加工油塗布部に向かって送り出す搬送部を有する第2ステージと、
を備え、
前記第2ステージに、前記帯状鋼板の送り方向に沿って、前記搬送部と、前記プレス加工油塗布部と、前記プレス加工部及び前記接着剤塗布部とが、この順に並んで配置されている。
上記(15)に記載の接着積層コア製造装置によれば、第1ステージで硬化促進層を予め形成した帯状鋼板を纏めて作り置きしておくことができる。そして、これら帯状鋼板のうちより必要な数の帯状鋼板を取り出して第2ステージに移し、プレス加工油の塗布、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤の塗布、そして各鋼板部品間の接着を行える。このように、接着積層コア製造装置を第1ステージと第2ステージに分けた場合も、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
【0024】
(16)上記(11)~(15)の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置において、
前記嫌気性接着剤用硬化促進剤が、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される嫌気硬化を促進する有効成分を含んでもよい。
すなわち、上記(16)に記載の接着積層コア製造装置において、前記嫌気性接着剤の硬化促進剤としては前記嫌気硬化を促進する有効成分を含むものが挙げられる。
嫌気硬化を促進する有効成分は、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、クロム、銀、及びマンガン、並びにそれらの組み合わせから選択されてもよい。望ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、及びクロム、並びにそれらの組み合わせであり得る。望ましくは、金属酸化物または塩の形態で提供される。好ましくは、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、ステアリン酸バナジル、バナジウムプロポキシド、バナジウムブトキシド、五酸化バナジウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ヘキサン酸銅、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅(II)等から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
上記(16)に記載の接着積層コア製造装置によれば、嫌気性接着剤の硬化が速やか、かつ完全に進行するため、特に短時間の製造やアウトガスの抑制等を要求される製造に極めて優れ、生産性が向上することができるという利点が得られる。
【0025】
(17)上記(11)~(16)の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置において、
前記瞬間接着剤用硬化促進剤が、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択される2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含んでもよい。
すなわち、上記(17)に記載の接着積層コア製造装置において、前記瞬間接着剤用硬化促進剤としては、2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含むものが挙げられる。
2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分の具体例としては、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
上記(17)に記載の接着積層コア製造装置によれば、瞬間接着剤の硬化が速やか、かつ完全に進行するため、特に短時間の製造やアウトガスの抑制等を要求される製造に極めて優れ、生産性が向上することができるという利点が得られる。
【0026】
(18)上記(11)~(17)の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置において、
前記接着積層コアが、回転電機用の固定子であってもよい。
上記(18)に記載の接着積層コア製造装置によれば、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られるので、高い性能を持ちながらも製造コストが低い回転電機用の固定子を製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の上記各態様によれば、接着積層コアの製造に際し、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られる、接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の各実施形態で製造されるステータ用接着積層コアを備えた、回転電機の断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
【
図4】同実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第1形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のA-A断面図である。
【
図6】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第2形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のB-B断面図である。
【
図7】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第3形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のC-C断面図である。
【
図8】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
【
図10】同実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図11】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第1形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のD-D断面図である。
【
図12】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第2形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のE-E断面図である。
【
図13】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第3形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のF-F断面図である。
【
図14】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
【
図16】同実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図17】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第1形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のG-G断面図である。
【
図18】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第2形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のH-H断面図である。
【
図19】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第3形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のI-I断面図である。
【
図20】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図21】本発明の第4実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
【
図22】同実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図23】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第1形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のJ-J断面図である。
【
図24】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第2形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のK-K断面図である。
【
図25】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の第3形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のL-L断面図である。
【
図26】同実施形態に係る接着積層コア製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図27】本発明の第5実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施形態に係る接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置を説明する。その前に、
図1及び
図2を用いて、各実施形態で製造されるステータ用接着積層コア(接着積層コア。回転電機用の固定子)を先に説明する。
【0030】
[ステータ用接着積層コア]
図1は、各実施形態で製造されるステータ用接着積層コア21を備えた、回転電機10の断面図である。
図2は、同ステータ用接着積層コア21の側面図である。
以下、
図1に示す回転電機10が、電動機、具体的には交流電動機、より具体的には同期電動機、より一層具体的には永久磁石界磁型電動機である場合を例示して説明する。この種の電動機は、例えば、電気自動車などに好適に採用される。
【0031】
図1に示すように、回転電機10は、ステータ20と、ロータ30と、ケース50と、回転軸60と、を備える。ステータ20およびロータ30は、ケース50内に収容される。ステータ20は、ケース50内に固定される。
図1の例では、回転電機10として、ロータ30がステータ20の径方向内側に位置するインナーロータ型を例示している。しかしながら、回転電機10として、ロータ30がステータ20の外側に位置するアウターロータ型であってもよい。また、ここでは、回転電機10が12極18スロットの三相交流モータである場合を例示する。しかし、極数、スロット数、相数などは、適宜変更できる。
回転電機10は、例えば、各相に実効値10A、周波数100Hzの励磁電流を印加することにより、回転数1000rpmで回転することができる。
【0032】
ステータ20は、ステータ用接着積層コア21と、図示しない巻線と、を備える。
ステータ用接着積層コア21は、環状のコアバック部22と、複数のティース部23と、を備える。以下では、ステータ用接着積層コア21(又はコアバック部22)の中心軸線O方向を軸方向と言い、ステータ用接着積層コア21(又はコアバック部22)の径方向(中心軸線Oに直交する方向)を径方向と言い、ステータ用接着積層コア21(又はコアバック部22)の周方向(中心軸線O回りに周回する方向)を周方向と言う。
【0033】
コアバック部22は、ステータ20を軸方向から見た平面視において円環状に形成されている。
複数のティース部23は、コアバック部22の内周から径方向内側に向けて突出する。複数のティース部23は、周方向に同等の角度間隔をあけて配置されている。
図1の例では、中心軸線Oを中心とする中心角20度おきに18個のティース部23が設けられている。複数のティース部23は、互いに同等の形状でかつ同等の大きさに形成されている。よって、複数のティース部23は、互いに同じ厚み寸法を有している。
前記巻線は、ティース部23に巻回されている。前記巻線は、集中巻きされていてもよく、分布巻きされていてもよい。
【0034】
ロータ30は、ステータ20(ステータ用接着積層コア21)に対して径方向の内側に配置されている。ロータ30は、ロータコア31と、複数の永久磁石32と、を備える。
ロータコア31は、ステータ20と同軸に配置される環状(円環状)に形成されている。ロータコア31内には、回転軸60が配置されている。回転軸60は、ロータコア31に固定されている。
複数の永久磁石32は、ロータコア31に固定されている。
図1の例では、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成している。複数組の永久磁石32は、周方向に同等の角度間隔をあけて配置されている。
図1の例では、中心軸線Oを中心とする中心角30度おきに12組(全体では24個)の永久磁石32が設けられている。
【0035】
図1の例では、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型モータが採用されている。ロータコア31には、ロータコア31を軸方向に貫通する複数の貫通孔33が形成されている。複数の貫通孔33は、複数の永久磁石32の配置に対応して設けられている。各永久磁石32は、対応する貫通孔33内に配置された状態でロータコア31に固定されている。各永久磁石32のロータコア31への固定は、例えば永久磁石32の外面と貫通孔33の内面とを接着剤により接着すること等により、実現できる。なお、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型に代えて表面磁石型モータを採用してもよい。
【0036】
ステータ用接着積層コア21およびロータコア31は、いずれも積層コアである。例えばステータ用接着積層コア21は、
図2に示すように、複数の電磁鋼板40が積層方向に積層されることで形成されている。
なお、ステータ用接着積層コア21およびロータコア31それぞれの積厚(中心軸線Oに沿った全長)は、例えば50.0mmとされる。ステータ用接着積層コア21の外径は、例えば250.0mmとされる。ステータ用接着積層コア21の内径は、例えば165.0mmとされる。ロータコア31の外径は、例えば163.0mmとされる。ロータコア31の内径は、例えば30.0mmとされる。ただし、これらの値は一例であり、ステータ用接着積層コア21の積厚、外径や内径、およびロータコア31の積厚、外径や内径は、これらの値のみに限られない。ここで、ステータ用接着積層コア21の内径は、ステータ用接着積層コア21におけるティース部23の先端部を基準とする。すなわち、ステータ用接着積層コア21の内径は、全てのティース部23の先端部に内接する仮想円の直径である。
【0037】
ステータ用接着積層コア21およびロータコア31を形成する各電磁鋼板40は、例えば、母材となる帯状鋼板を打ち抜き加工することにより形成される。電磁鋼板40としては、公知の電磁鋼板を用いることができる。電磁鋼板40の化学組成は、以下に質量%単位で示すように、質量%で2.5%~3.9%のSiを含有する。化学組成をこの範囲とすることにより、各電磁鋼板40の降伏強度を、380MPa以上540MPa以下に設定することができる。
【0038】
Si:2.5%~3.9%
Al:0.001%~3.0%
Mn:0.05%~5.0%
残部:Fe及び不純物
【0039】
本実施形態では、電磁鋼板40として、無方向性電磁鋼板を採用している。無方向性電磁鋼板としては、JISC2552:2014の無方向性電鋼帯を採用できる。しかしながら、電磁鋼板40として、無方向性電磁鋼板に代えて方向性電磁鋼板を採用してもよい。この場合の方向性電磁鋼板としては、JISC2553:2012の方向性電鋼帯を採用できる。
【0040】
積層コアの加工性や、積層コアの鉄損を改善するため、電磁鋼板40の両面は、リン酸塩系の絶縁被膜で被覆されている。絶縁被膜を構成する物質としては、例えば、(1)無機化合物、(2)有機樹脂、(3)無機化合物と有機樹脂との混合物、などが採用できる。無機化合物としては、例えば、(1)重クロム酸塩とホウ酸の複合物、(2)リン酸塩とシリカの複合物、などが挙げられる。有機樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0041】
[第1実施形態]
図3~
図8を用いて、本発明の第1実施形態を以下に説明する。
先ず、
図3に示す側面図を用いて、本実施形態に係る接着積層コア製造装置100を説明する。
図3に示すように、接着積層コア製造装置100は、帯状鋼板供給部110と、硬化促進層形成部120と、駆動部(不図示)と、プレス加工油塗布部130と、プレス加工部140と、接着剤塗布部150と、積層接着部160とを備える。
【0042】
帯状鋼板供給部110には、電磁鋼板(鋼板部品)40の素材となる帯状鋼板Mを巻回したフープ材Fが軸支されており、
図3の紙面右側に向かって帯状鋼板Mを送り出す。以下の説明において、帯状鋼板Mの送り方向である紙面右側を下流側、その逆方向である紙面左側を上流側という場合がある。この帯状鋼板供給部110より下流側に向けて送られる帯状鋼板Mは、上述した化学組成を有する鋼板であり、その両面が上述した絶縁被膜で被覆されている。
【0043】
硬化促進層形成部120は、硬化促進剤タンク121と、ノズル122と、乾燥機123とを有する。
硬化促進剤タンク121は、溶剤に溶かした嫌気性接着剤用硬化促進剤を貯留する第1貯留部と、溶剤に溶かした瞬間接着剤用硬化促進剤を貯留する第2貯留部と、硬化促進剤混合部とを有する(不図示)。前記第1貯留部と前記第2貯留部との間は、嫌気性接着剤用硬化促進剤と瞬間接着剤用硬化促進剤とが混じり合わないように区画されている。
【0044】
嫌気性接着剤用硬化促進剤としては、嫌気性接着剤の硬化を促進する有効成分を含むものが用いられる。また、瞬間接着剤用硬化促進剤としては、2-シアノアクリレート系接着剤の瞬時硬化を促進する有効成分を含むものが用いられる。嫌気性接着剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤は、それぞれ、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤等の溶剤によって適切な濃度に希釈されている。
溶剤種としては、上記溶剤種から選ばれる一種、あるいは組み合わせが選択される。
接着積層コアの製造上、溶剤種としては、酢酸エチル、アセトン、エタノール、メタノール、ブタノール、トルエンから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを用いることが好ましい。
【0045】
嫌気性接着剤用硬化促進剤の有効成分は、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、クロム、銀、及びマンガン、並びにそれらの組み合わせから選択されてもよい。望ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、及びクロム、並びにそれらの組み合わせであり得る。望ましくは、金属酸化物または塩の形態で提供される。好ましくは、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、ステアリン酸バナジル、バナジウムプロポキシド、バナジウムブトキシド、五酸化バナジウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ヘキサン酸銅、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅(II)等から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが例示される。嫌気性接着剤用硬化促進剤は、嫌気性接着剤と混ざり合うことで、嫌気性接着剤の瞬時硬化を促す。
【0046】
瞬間接着剤用硬化促進剤は、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択される2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含む。好ましくは、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0047】
ノズル122は、嫌気性接着剤用硬化促進剤を塗布するための複数の第1ノズル孔と、瞬間接着剤用硬化促進剤を塗布するための複数の第2ノズル孔とを有する(不図示)。
前記各第1ノズル孔は、第1配管を介して硬化促進剤タンク121の前記第1貯留部に対して直接的に接続されている。
前記各第2ノズル孔は、第2配管を介して硬化促進剤タンク121の前記第2貯留部に対して直接的に接続されている。
さらに、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方は、第3配管を介して前記硬化促進剤混合部にも接続されている。前記硬化促進剤混合部は、第4配管を介して前記第1貯留部及び前記第2貯留部の双方に接続されている。前記硬化促進剤混合部は、前記第1貯留部からの嫌気性接着剤用硬化促進剤と、前記第2貯留部からの瞬間接着剤用硬化促進剤とを取り込んで攪拌混合することができる。
【0048】
前記第1配管、前記第2配管、そして前記第4配管は、切り替えバルブ(不図示)に接続されている。この切り替えバルブを操作することにより、下記(1)または下記(2)に、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の流れを切り換えることができる。
(1)前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤を前記第1配管により前記第1ノズル孔に流すと同時に、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤を前記第2配管により前記第2ノズル孔に流す。その結果、前記各第1ノズル孔からは嫌気性接着剤用硬化促進剤が吐出され、前記各第2ノズル孔からは瞬間接着剤用硬化促進剤が吐出される。
(2)前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤と、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤との両方を、前記第4配管により前記硬化促進剤混合部に取り込んで攪拌混合させる。このようにして嫌気性接着剤用硬化促進剤と瞬間接着剤用硬化促進剤とを混合した混合促進剤を、前記第3配管を介して前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方に流す。その結果、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方より、前記混合促進剤が吐出される。
【0049】
前記各第1ノズル孔は、それらの吐出口が帯状鋼板Mの上面に向いており、嫌気性接着剤用硬化促進剤あるいは前記混合促進剤を、前記上面に対して点状あるいは線状に塗布することができる。
前記各第2ノズル孔も、それらの吐出口が帯状鋼板Mの上面に向いており、瞬間接着剤用硬化促進剤あるいは前記混合促進剤を、前記上面に対して点状あるいは線状に塗布することができる。
ノズル122において、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔は、交互に並ぶように配置されており、それぞれから吐出された硬化促進剤が帯状鋼板Mの塗布面において過度に混じり合わないようにピッチが定められている。嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を、
図5を用いて後述するようなチェッカー状に塗布する場合は、これらの塗布位置と、後工程における嫌気性接着剤及び瞬間接着剤の塗布位置とが相対的に一致するように、前記ピッチを、後述するノズル153の各ノズル孔のピッチと同じにすることが好ましい。
【0050】
前記切り替えバルブによって上記(1)及び上記(2)の何れか一方に切り換えることにより、帯状鋼板Mの塗布面へ塗布される嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の塗布形態が、未混合状態で塗布する場合と、混合状態で塗布する場合とに分かれる。以降の説明においては、嫌気性接着剤用硬化促進剤、瞬間接着剤用硬化促進剤、混合促進剤、の3つを包含して単に「硬化促進剤」と呼ぶ場合がある。一方、これらの区別が必要である場合には、嫌気性接着剤用硬化促進剤、瞬間接着剤用硬化促進剤、混合促進剤の3つに分けて説明する。
【0051】
乾燥機123は、一対のローラー123aと、ドライヤー123bとを有する。
一対のローラー123aは、ノズル122の下流側に配置されている。一対のローラー123aは、これらの間を通過していく帯状鋼板Mが常に水平に保たれるように保持する。
ドライヤー123bは、一対のローラー123a間に挟まれる位置に配置されている。ドライヤー123bは、帯状鋼板Mの上面及び下面に空気を吹き付けることで硬化促進剤を乾燥させる。これにより、帯状鋼板Mは、一対のローラー123aのうちの上流側の方を超えた時点で空気の吹き付けを受けて硬化促進剤が乾燥し始め、そして一対のローラー123aのうちの下流側の方に至る前に乾燥が完了している。したがって、一対のローラー123aの下流側を経た後の帯状鋼板Mの上面には、溶剤が乾燥した硬化促進層が均等厚かつ全面にわたって形成されている。硬化促進層の厚みとしては、0.1μmを例示できる。一方、帯状鋼板Mの下面は、硬化促進剤が塗布されていないため、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
なお、硬化促進層は、前記切り替えバルブの操作などにより、複数のパターンを選ぶことができる。このパターンについては、
図5~
図7を用いて後述する。
【0052】
前記駆動部は、硬化促進層形成部120とプレス加工油塗布部130との間の位置DRに配置されている。前記駆動部は、帯状鋼板Mを、硬化促進層形成部120からプレス加工油塗布部130に向かう紙面右方向に向けて間欠的に送り出す。なお、硬化促進層形成部120から送り出された帯状鋼板Mの上面には、前記駆動部に入る前に、硬化促進剤が乾燥した硬化促進層が既に形成されている。一方、前記駆動部に入る前における帯状鋼板Mの下面は、硬化促進層がなく、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
【0053】
プレス加工油塗布部130は、塗布ローラー131とオイルパン132とを備える。
オイルパン132は、帯状鋼板Mの下方でかつ塗布ローラー131の真下の位置に配置されている。塗布ローラー131は、上ローラー131a及び下ローラー131bを有する。
上ローラー131aは、帯状鋼板Mの真上に配置され、上下動することにより、帯状鋼板Mの上面に対して接した状態と離間した状態との間で切り換え可能である。上ローラー131aは、図示されないプレス加工油供給部から供給されたプレス加工油をその外周面に浸透させた状態で鋼板Mの上面に対して接しながら転動することで、帯状鋼板Mの上面にプレス加工油を塗布可能である。
下ローラー131bは、帯状鋼板Mの真下に配置され、上下動することにより、帯状鋼板Mの下面に対して接した状態と離間した状態との間で切り換え可能である。下ローラー131bは、前記プレス加工油供給部から供給されたプレス加工油をその外周面に浸透させた状態で鋼板Mの下面に対して接しながら転動することで、帯状鋼板Mの下面にプレス加工油を塗布可能である。
オイルパン132は、上ローラー131a及び下ローラー131bから垂れてきた余剰のプレス加工油を受け止めて回収し、そしてこれを前記プレス加工油供給部に戻す。
【0054】
上記プレス加工油塗布部130によれば、上ローラー131aを帯状鋼板Mの上面に当接させた状態で前記プレス加工油供給部からプレス加工油を供給することにより、帯状鋼板Mの上面にプレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
同様に、下ローラー131bを帯状鋼板Mの下面に当接させた状態で前記プレス加工油供給部からプレス加工油を供給することにより、帯状鋼板Mの下面にプレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
【0055】
あるいは、上ローラー131a及び下ローラー131b間に帯状鋼板Mを挟み込むことにより、帯状鋼板Mの上下面の両方に、プレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
このように、上ローラー131a及び下ローラー131bの各位置を必要に応じてそれぞれ上下動させることにより、プレス加工油の塗布を、帯状鋼板Mの上面のみに行う場合、帯状鋼板Mの下面のみに行う場合、帯状鋼板Mの上下面の両方に行う場合、の3通りから選択することができる。
【0056】
ここで、上記の何れの場合においても、プレス加工油が塗布される前の時点で、帯状鋼板Mの上面に塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の両方を、自然乾燥ではなく積極的に乾燥させる。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層を形成しているので、プレス加工油と混ざり合って希釈されてしまうことが抑制される。したがって、プレス加工油塗布後の帯状鋼板Mの上面における嫌気性接着剤用硬化促進剤の濃度及び瞬間接着剤用硬化促進剤の濃度は、共に、プレス加工油の塗布前後で変わることなく維持されている。よって、プレス加工油塗布部130を経た後の帯状鋼板Mは、その上面における硬化促進剤の濃度を維持したまま、プレス加工部140へと送られる。
【0057】
プレス加工部140は、第1段打ち抜き部141と第2段打ち抜き部142とを備える。
第1段打ち抜き部141は、プレス加工油塗布部130の下流側に配置され、雄金型141a及び雌金型141bを有する。雄金型141a及び雌金型141bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型141aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型141bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型141aを下方に向けて移動させて雌金型141b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な1回目の打ち抜き加工を行う。この時、帯状鋼板Mにはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型141aを上方に移動させて雌金型141bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0058】
第2段打ち抜き部142は、第1段打ち抜き部141の下流側に配置され、雄金型142a及び雌金型142bを有する。雄金型142a及び雌金型142bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、1回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型142aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型142bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型142aを下方に向けて移動させて雌金型142b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な2回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mにはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型142aを上方に移動させて雌金型142bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0059】
接着剤塗布部150は、プレス加工部140の下流側に配置されている。接着剤塗布部150は、空気圧送機151と、シリンジ152と、ノズル153と、鋼板抑え154とを備える。
シリンジ152は、嫌気性接着剤を貯留する空間と、瞬間接着剤を貯留する空間とを有する容器である(不図示)。嫌気性接着剤を貯留する空間と、瞬間接着剤を貯留する空間との間は、嫌気性接着剤と瞬間接着剤が混じり合わないように区画されている。ここで、嫌気性接着剤としては東亞合成株式会社製「アロンタイト」(商標登録)を、瞬間接着剤(2-シアノアクリレート系接着剤)としては東亞合成株式会社製「アロンアルフア」(商標登録)を例示できる。シリンジ152と空気圧送機151との間は、空気圧送機151からの空気をシリンジ152へ送る配管により接続されている。また、シリンジ152とノズル153との間は、シリンジ152からノズル153へと、嫌気性接着剤を供給する第5配管と、瞬間接着剤を供給する第6配管と、を介して接続されている。
【0060】
ノズル153は、吐出口が上方を向いた複数本のニードル(不図示)を備える。これらニードルは、帯状鋼板Mの下方に配置されている。よって、前記各ニードルの吐出口は、帯状鋼板Mの下面に対向している。前記各ニードルは、嫌気性接着剤を塗布するための複数の第1ニードルと、瞬間接着剤を塗布するための複数の第2ニードルとを有する(不図示)。これら第1ニードル及び第2ニードルは、それぞれの吐出口が、ノズル153を平面視したときに交互かつ均等に配置されている。
【0061】
ここで、後述する
図5に示すように嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤をチェッカー状に配置する場合には、前記各第1ニードルの吐出口の位置を、帯状鋼板Mの上面に塗布及び乾燥された各嫌気性接着剤用硬化促進剤の位置と一致させることが好ましい。同様に、前記各第2ニードルの吐出口の位置も、帯状鋼板Mの上面に塗布及び乾燥された各瞬間接着剤用硬化促進剤と一致させることが好ましい。この場合、プレス加工部140を経てノズル153の上方で帯状鋼板Mの送りを一旦停止させた際、帯状鋼板Mの上面にある各嫌気性接着剤用硬化促進剤と前記各第1ニードルの吐出口との相対位置が一致し、なおかつ、各瞬間接着剤用硬化促進剤と前記各第2ニードルの吐出口との相対位置が一致する。これにより、各接着剤を、各硬化促進剤に対して正しい組み合わせで塗布できる。
【0062】
前記各第1ニードルは、前記第5配管を介して、前記嫌気性接着剤を貯留する空間に直接的に接続されている。一方、前記各第2ニードルは、前記第6配管を介して、前記瞬間接着剤を貯留する空間に直接的に接続されている。
そして、前記各第1ニードル及び前記各第2ニードルは、帯状鋼板Mの下面に対してチェッカー状(格子状)をなすように、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を塗布できる。これにより、嫌気性接着剤からなる正方形あるいは円形の模様と、瞬間接着剤からなる正方形あるいは円形の模様とが、帯状鋼板Mの下面側に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って交互に配置される。すなわち、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤は、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って互いに隣り合うように配置できる。
【0063】
鋼板抑え154は、ノズル153の上方(前記各第1ニードル及び前記各第2ニードルの直上)に配置されている。よって、鋼板抑え154は、帯状鋼板Mの上面に対向している。鋼板抑え154は、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、下方に向かって押し下げられる。これにより、鋼板抑え154の下面が帯状鋼板Mの上面に当接して帯状鋼板Mを下方に押し下げる。これにより、帯状鋼板Mの高さ位置を、ノズル153による接着剤塗布位置まで押し下げて位置決めできる。この位置決め状態では、帯状鋼板Mの下面が前記各第1ニードル及び前記各第2ニードルの吐出口に近接する。
【0064】
さらに、この位置決め状態において、前記空気圧送機151よりシリンジ152に空気が圧送されると、この空気が、前記嫌気性接着剤を貯留する空間と、前記瞬間接着剤を貯留する空間との両方に対して均等に供給される。すると、嫌気性接着剤が前記第5配管を介して前記各第1ニードルに供給され、瞬間接着剤が前記第6配管を介して前記各第2ニードルに供給される。そして、前記各第1ニードルの吐出口から嫌気性接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの下面に塗布される。同様に、前記各第2ニードルの吐出口から瞬間接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの下面に塗布される。その後、前記油圧機構により鋼板抑え154を上昇させることで、帯状鋼板Mの高さ位置を元の高さに復帰させる。
【0065】
積層接着部160は、接着剤塗布部150の下流側に配置されている。積層接着部160は、外周打ち抜き雄金型161と、外周打ち抜き雌金型162と、スプリング163と、加熱器164と、を備える。
外周打ち抜き雄金型161は、円形の底面を有する円柱形状の金型であり、その上端にはスプリング163の下端が接続されている。そして、外周打ち抜き雄金型161は、スプリング163で支持された状態で、スプリング163と共に上下動可能とされている。外周打ち抜き雄金型161は、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ外径寸法を有している。
【0066】
外周打ち抜き雌金型162は、円柱形状の内部空間を有する金型であり、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ内径寸法を有している。
加熱器164は、外周打ち抜き雌金型162に、一体に組み込まれている。加熱器164は、外周打ち抜き雌金型162内に積層された各電磁鋼板(鋼板部品)40をその周囲より加熱する。前記接着剤として加熱硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱器164からの熱を受けて硬化する。一方、接着剤として常温硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱を要することなく室温にて硬化する。
【0067】
上記積層接着部160によれば、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、外周打ち抜き雄金型161を降下させて帯状鋼板Mを外周打ち抜き雌金型162との間に挟み込み、さらに外周打ち抜き雄金型161を外周打ち抜き雌金型162内に押し込むことで、帯状鋼板Mから外周打ち抜きされた電磁鋼板40が得られる。
この打ち抜かれた電磁鋼板40は、先に打ち抜かれて外周打ち抜き雌金型162内に積層及び接着された他の電磁鋼板40の上面に積層され、さらに外周打ち抜き雄金型161からの加圧力と、加熱器164からの加熱とを受ける。この時、外周打ち抜き雄金型161から電磁鋼板40に加えられる加圧力は、前記スプリング163の付勢力によって常に一定に維持される。
以上により、今回打ち抜いた電磁鋼板40が、前回に打ち抜かれた電磁鋼板40の上面に対して接着固定される。このような外周打ち抜き、加圧、そして加熱の各工程を各電磁鋼板40の積層枚数分の回数、繰り返すことで、外周打ち抜き雌金型162内にステータ用接着積層コア21が形成される。
【0068】
図3に示すように、前記雌金型141b、前記雌金型142b、前記ノズル153、前記外周打ち抜き雌金型162、及び前記加熱器164は、共通の固定基台171上に固定されている。したがって、これら雌金型141b、雌金型142b、ノズル153、外周打ち抜き雌金型162、及び加熱器164は、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
同様に、前記雄金型141a、前記雄金型142a、前記鋼板抑え154、及び前記外周打ち抜き雄金型161も、共通の可動基台172の下面に固定されている。したがって、これら雄金型141a、雄金型142a、鋼板抑え154、及び外周打ち抜き雄金型161は、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
【0069】
前記駆動部が帯状鋼板Mを下流側に向かって送り出し、一時停止させた時に可動基台172を下降させることで、電磁鋼板40の外周打ち抜き及び積層及び接着と、帯状鋼板Mで次に外周打ち抜きされる電磁鋼板40の位置への嫌気性接着剤及び瞬間接着剤の塗布と、帯状鋼板Mで次に嫌気性接着剤及び瞬間接着剤が塗布される位置への前記2回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記2回目の打ち抜き加工を行う位置への前記1回目の打ち抜き加工と、が同時に行われる。
続いて、可動基台172を上昇させて帯状鋼板Mの上方に退避させた後、前記駆動部により帯状鋼板Mを再び下流側に所定距離だけ送り出し、そして再び一時停止させる。この状態で可動基台172を再び下降させ、各位置での加工を継続して行う。このように、前記駆動部により帯状鋼板Mを間欠的に送りながら、一時停止時に可動基台172を上下動させる工程を繰り返すことにより、ステータ用接着積層コア21が製造される。
【0070】
以上説明の構成を有する接着積層コア製造装置100を用いた接着積層コア製造方法について、
図4~
図8を用いて以下に説明する。
図4は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するためのフローチャートである。また、
図5は、同接着積層コア製造方法の第1形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のA-A断面図である。
図6は、同接着積層コア製造方法の第2形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のB-B断面図である。
図7は、同接着積層コア製造方法の第3形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のC-C断面図である。
図8は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
【0071】
図4に示すように、本実施形態の接着積層コア製造方法は、鋼板送り出し工程S1と、硬化促進剤塗布工程S2と、硬化促進剤乾燥工程S3と、加工油塗布工程S4と、1回目打ち抜き工程S5と、2回目打ち抜き工程S6と、接着剤塗布工程S7と、積層及び接着工程S8と、積層枚数確認工程S9と、取り出し工程S10と、を有する。
【0072】
鋼板送り出し工程S1では、フープ材Fから下流側に向けて帯状鋼板Mを送り出す。
続く硬化促進剤塗布工程S2では、ノズル122から帯状鋼板Mの上面の全面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布する。この時点の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、共に液状である。
【0073】
ここで、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の塗布パターンとして、
図5~
図7に3パターンを例示する。
図5~
図7は、積層及び接着工程S8に対応する図であるが、硬化促進剤塗布工程S2で形成された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の塗布パターンは、硬化促進剤乾燥工程S3以降、固定されたままになる。よって、これら図面を用いて塗布パターンを説明する。
【0074】
例えば
図5の塗布パターンでは、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の上面に対してチェッカー状(格子状)をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が配置される。より具体的には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1からなる正方形あるいは円形の模様と、瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる正方形あるいは円形の模様とが、帯状鋼板Mの上面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って交互に配置されている。すなわち、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って互いに隣り合うように配置されている。
このように塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、続く硬化促進剤乾燥工程S3で乾燥されて一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。
【0075】
また、
図6の塗布パターンでは、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が予め混合した状態で、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の上面に配置されている。この混合は、前記硬化促進層形成部120において、前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2との両方を、前記第3配管により前記硬化促進剤混合部に取り込んで攪拌混合させることで得られる。このようにして得られた混合促進剤は、前記第4配管を介して前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方に供給される。その結果、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方より、前記混合促進剤が吐出される。そして、吐出された混合促進剤は、帯状鋼板Mの上面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って均等に配置される。
このように塗布された前記混合促進剤は、続く硬化促進剤乾燥工程S3で乾燥されて一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。
【0076】
あるいは、
図7の塗布パターンでは、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の上面に対して縞状(線状)をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が交互に配置される。より具体的には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1からなる線状の模様と、瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる線状の模様とが、帯状鋼板Mの上面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向に沿って交互に配置されている。すなわち、
図7(b)の紙面右方向を帯状鋼板Mの送り方向とした場合、この送り方向に直交する方向に平行をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2がそれぞれ直線状に形成されている。そして、これら嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、帯状鋼板Mの送り方向に沿って見た場合には交互に隣接して配置されている。
このように塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、続く硬化促進剤乾燥工程S3で乾燥されて一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。
なお、上記の塗布形態に代わり、
図7(b)の紙面下方向が帯状鋼板Mの送り方向となるように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、前記送り方向に平行をなす直線状に形成してもよい。
【0077】
図4に戻り、続く硬化促進剤乾燥工程S3では、ドライヤー123bからの空気を帯状鋼板Mの上下面に吹き付け、液状であった嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を乾燥させて硬化促進層aを形成する。この硬化促進層aは固体である。
続く加工油塗布工程S4では、上ローラー131aが前記プレス加工油供給部から供給されたプレス加工油bをその外周面に浸透させた状態で、鋼板Mの上面に対して接しながら転動する。その結果、帯状鋼板Mの上面側のみ、全面においてプレス加工油bが塗布される。すなわち、プレス加工油bは、硬化促進層aの上面を覆うように塗布される。
この時、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の両方とも、予め乾燥させた硬化促進層aとされているので、その上面に塗布されるプレス加工油bと混ざり合って希釈されてしまうことが抑制されている。
一方、下ローラー131bは、下降して帯状鋼板Mの下面から離間しているため、帯状鋼板Mの下面にはプレス加工油bが塗布されず、絶縁被膜が露出したままになっている。
【0078】
続く1回目打ち抜き工程S5では、第1段打ち抜き部141により帯状鋼板Mの1回目の打ち抜きが行われる。この時、帯状鋼板Mの上面にはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型141a及び雌金型141b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
続く2回目打ち抜き工程S6では、第2段打ち抜き部142により帯状鋼板Mの2回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mの上面にはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型142a及び雌金型142b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
以上の1回目打ち抜き工程S5及び2回目打ち抜き工程S6により、外形部分を除き、
図1に示したコアバック部22及びティース部23が帯状鋼板Mに形成される。
【0079】
続く接着剤塗布工程S7では、
図5~
図7に示すように、ノズル153から吐出された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、帯状鋼板Mの下面に直接塗布される。この時、嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、所定の厚み寸法と所定の径寸法を持つ点状に塗布される。ここで、嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、まだ硬化促進層aと混ざっていないため、液状をなしている。
また、
図5(b)に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2をチェッカー状に配置した場合には、これらの相対位置に合わせて、嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2もチェッカー状に配置される。
【0080】
続く積層及び接着工程S8では、
図5~
図7に示すように、外周打ち抜き雄金型161によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層される。この時、前記他の電磁鋼板40の上面には、プレス加工油bで被覆された硬化促進層aが形成されている。この上に今回外周打ち抜きをした電磁鋼板40を積層して加圧しながら加熱する。すると、今回外周打ち抜きをした電磁鋼板40の下面にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、先に外周打ち抜きをした前記他の電磁鋼板40の上面側にあるプレス加工油bを押し退けてその下にある硬化促進層aと混ざり合う。その結果、嫌気性接着剤c1が硬化促進層a内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と混ざり合いながら硬化する。同様に、瞬間接着剤c2が硬化促進層a内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
【0081】
以上の工程を順次繰り返すことで所定枚数の電磁鋼板40を積層及び接着し、ステータ用接着積層コア21が完成する。
すなわち、積層枚数確認工程S9において電磁鋼板40の積層枚数が所定枚数に達したか否かが判断される。その結果、達していない場合(判定:NO)には、フローが鋼板送り出し工程S1に戻り、鋼板送り出し工程S1~積層及び接着工程S8が再び繰り返される。一方、積層枚数確認工程S9において所定枚数に達した場合(判定:YES)には、フローが取り出し工程S10へと進む。
続く取り出し工程S10では、完成したステータ用接着積層コア21を外周打ち抜き雌金型162内から取り出すことで、接着積層コア製造方法の全工程が終了する。
【0082】
以上説明の接着積層コア製造装置100を用いた接着積層コア製造方法の骨子を、以下に纏める。
本実施形態の接着積層コア製造方法は、片面(上面)に嫌気性接着剤a1及び瞬間接着剤a2を塗布し、さらにその上にプレス加工油bを塗布した帯状鋼板Mにプレス加工を行い、複数枚の電磁鋼板40(鋼板部品)を得て、各電磁鋼板40を積層接着することによってステータ用接着積層コア21(接着積層コア)を製造する方法である。
そして、本実施形態では、プレス加工油bを塗布する前の帯状鋼板Mの上面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布して乾燥させた硬化促進層aを形成する。
この接着積層コア製造方法によれば、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の両方を、自然乾燥ではなく積極的に乾燥させている。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層aを形成しているので、後加工で塗布されるプレス加工油bと混ざり合って希釈されてしまうことが抑制される。したがって、各電磁鋼板40間を積層して接着する際に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1がその高い濃度を維持したまま嫌気性接着剤c1と混ざり合い、また、瞬間接着剤用硬化促進剤a2もその高い濃度を維持したまま瞬間接着剤c2と混ざり合うことができる。そのため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
【0083】
図5に示したように、上記接着積層コア製造方法において、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と瞬間接着剤用硬化促進剤a2とをチェッカー状に配置してもよい。
または、
図6に示したように、上記接着積層コア製造方法において、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を予め混合させた状態で、帯状鋼板Mの上面に塗布して乾燥させることで、硬化促進層aを形成してもよい。
あるいは、
図7に示したように、上記接着積層コア製造方法において、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と瞬間接着剤用硬化促進剤a2とを縞状に配置して硬化促進層aを形成してもよい。
上記の何れの場合においても、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、帯状鋼板Mの塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0084】
上記接着積層コア製造方法は、より詳しく言うと以下の各工程を有する。
すなわち、各電磁鋼板40が、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第1鋼板部品)40及び後に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第2鋼板部品)40を含む。そして、この接着積層コア製造方法は、上面(第1面)と、この上面上に形成された硬化促進層aと、この硬化促進層a上に配置されたプレス加工油bとを有する電磁鋼板(第1鋼板部品)40を準備する第1の工程と;下面(第2面)と、この下面上に配置された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2と、を有する後に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第2鋼板部品)40を準備する第2の工程と;前記上面及び前記下面が互いに対向するように、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第1鋼板部品)40と後に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第2鋼板部品)40とを重ね合わせて接着する第3の工程と;を有する。
この接着積層コア製造方法によれば、第1の工程において、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の両方とも、予め乾燥させた硬化促進層aとされており、プレス加工油bと混ざり合うのが抑制された状態にある。そのため、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第1鋼板部品)40と後に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第2鋼板部品)40とを第3の工程で重ね合わせて接着する際に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1がその高い濃度を維持したまま嫌気性接着剤c1と混ざり合い、また、瞬間接着剤用硬化促進剤a2もその高い濃度を維持したまま瞬間接着剤c2と混ざり合うことができる。
【0085】
上記接着積層コア製造方法において、ステータ用接着積層コア(接着積層コア)21が、回転電機用の固定子であってもよい。
この接着積層コア製造方法によれば、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られるので、高い性能を持ちながらも製造コストが低い回転電機用の固定子を製造することが可能になる。
【0086】
本実施形態の接着積層コア製造装置100は、帯状鋼板Mから打ち抜かれた複数枚の電磁鋼板(鋼板部品)40を備えるステータ用接着積層コア(接着積層コア)21を製造する装置である。
そして、本実施形態の接着積層コア製造装置100は、帯状鋼板Mの上面(片面)側にプレス加工油bを塗布するプレス加工油塗布部130と;帯状鋼板Mにプレス加工を加えるプレス加工部140と;帯状鋼板Mの下面に嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2を塗布する接着剤塗布部150と;プレス加工油bを塗布する前の帯状鋼板Mの上面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布して乾燥させた硬化促進層aを形成する硬化促進層形成部120と;を備える。
【0087】
上記接着積層コア製造装置100によれば、硬化促進層形成部120により、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の両方を、自然乾燥ではなく積極的に乾燥させている。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層aを形成しているので、後加工で塗布されるプレス加工油bと混ざり合って希釈されてしまうことが抑制される。したがって、各電磁鋼板40間を積層して接着する際に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1がその高い濃度を維持したまま嫌気性接着剤c1と混ざり合い、また、瞬間接着剤用硬化促進剤a2もその高い濃度を維持したまま瞬間接着剤c2と混ざり合うことができる。そのため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
【0088】
上記接着積層コア製造装置100において、硬化促進層形成部120が、
図5に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2をチェッカー状に塗布するノズル122を備えてもよい。
または、上記接着積層コア製造装置100において、硬化促進層形成部120が、
図6に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を予め混合させた状態で流す配管(硬化促進剤供給流路)と、この配管に通じるノズル122とを備えてもよい。
あるいは、上記接着積層コア製造装置100において、硬化促進層形成部120が、
図7に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を縞状に塗布するノズル122を備えてもよい。
上記の何れの場合においても、ノズル122により、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、帯状鋼板Mの塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0089】
なお、本実施形態では、
図4に示した加工油塗布工程S4で、帯状鋼板Mの上面のみにプレス加工油bを塗布する場合について説明したが、この形態のみに限らない。例えば
図8の変形例に示すように、帯状鋼板Mの下面のみ、あるいは帯状鋼板Mの上下面の両方にプレス加工油bを塗布する加工油塗布工程S4Aを採用してもよい。
【0090】
この加工油塗布工程S4Aでは、帯状鋼板Mの下面のみにプレス加工油bを塗布する場合には、上ローラー131aを帯状鋼板Mの上面より上方に退避させて非接触とする一方、下ローラー131bをその外周面にプレス加工油bを浸透させた状態で帯状鋼板Mの下面に対して転動させる。その結果、帯状鋼板Mの下面にのみ、全面にプレス加工油が塗布される。その結果、帯状鋼板Mの上面には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる硬化促進層aが露出した状態で形成される。一方、帯状鋼板Mの下面には、プレス加工油bと、このプレス加工油b上に塗布された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2とが形成される。
【0091】
この場合、
図8の積層及び接着工程S8Aでは、外周打ち抜き雄金型161によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に外周打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層され、加圧しながら加熱される。その際、後に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の下面にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、これらの上にあるプレス加工油bを押し退けて電磁鋼板40の下面に塗布される。同時に、後に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の下面にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の上面にある硬化促進層aと混ざり合う。その結果、嫌気性接着剤c1が硬化促進層a内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と混ざり合いながら硬化する。同様に、瞬間接着剤c2が硬化促進層a内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
なお、その他工程は
図4で説明した各工程と同じであるので、同じ符号を用いて重複説明を省略する。
【0092】
あるいは、例えば
図8の変形例に示す加工油塗布工程S4Aにおいて、帯状鋼板Mの上下面の両方にプレス加工油bを塗布してもよい。
その場合の加工油塗布工程S4Aでは、上ローラー131a及び下ローラー131bの双方にプレス加工油bを浸透させてからこれらの間に帯状鋼板Mを挟み込んだまま、上ローラー131a及び下ローラー131bを転動させる。その結果、帯状鋼板Mの上面には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる硬化促進層aと、硬化促進層aの上面を覆うプレス加工油bとが形成される。一方、帯状鋼板Mの下面には、プレス加工油bと、このプレス加工油b上に塗布された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2とが形成される。
【0093】
そして、
図8の積層及び接着工程S8Aでは、外周打ち抜き雄金型161によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に外周打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層され、加圧しながら加熱される。その際、後に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の下面にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、これらの上にあるプレス加工油bを押し退けて電磁鋼板40の下面に塗布される。同時に、後に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の下面にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の上面にあるプレス加工油bを押し退けながら、その下にある硬化促進層aと混ざり合う。その結果、嫌気性接着剤c1が硬化促進層a内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と混ざり合いながら硬化する。同様に、瞬間接着剤c2が硬化促進層a内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
なお、その他工程は
図4で説明した各工程と同じであるので、同じ符号を用いて重複説明を省略する。
【0094】
[第2実施形態]
図9~
図14を用いて、本発明の第2実施形態を以下に説明する。
先ず、
図9に示す側面図を用いて、本実施形態に係る接着積層コア製造装置200を説明する。
図9に示すように、接着積層コア製造装置200は、帯状鋼板供給部210と、硬化促進層形成部220と、駆動部(不図示)と、プレス加工油塗布部230と、プレス加工部240と、接着剤塗布部250と、積層接着部260とを備える。
【0095】
帯状鋼板供給部210には、電磁鋼板(鋼板部品)40の素材となる帯状鋼板Mを巻回したフープ材Fが軸支されており、
図9の紙面右側に向かって帯状鋼板Mを送り出す。以下の説明において、帯状鋼板Mの送り方向である紙面右側を下流側、その逆方向である紙面左側を上流側という場合がある。この帯状鋼板供給部210より下流側に向けて送られる帯状鋼板Mは、上述した化学組成を有する鋼板であり、その両面が上述した絶縁被膜で被覆されている。
【0096】
硬化促進層形成部220は、硬化促進剤タンク221と、ノズル222と、シールボックス223と、拭き取りローラー224とを有する。
硬化促進剤タンク221は、溶剤に溶かした嫌気性接着剤用硬化促進剤を貯留する第1貯留部と、溶剤に溶かした瞬間接着剤用硬化促進剤を貯留する第2貯留部と、硬化促進剤混合部とを有する(不図示)。前記第1貯留部と前記第2貯留部との間は、嫌気性接着剤用硬化促進剤と瞬間接着剤用硬化促進剤とが混じり合わないように区画されている。
嫌気性接着剤用硬化促進剤は、嫌気性接着剤と混ざり合うことで嫌気性接着剤の瞬時硬化を促すものであり、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。同様に、瞬間接着剤用硬化促進剤は、瞬間接着剤用硬化促進剤(2-シアノアクリレート系接着剤)と混ざり合うことで瞬間接着剤の瞬時硬化を促すものであり、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。また、溶剤種も、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。
【0097】
ノズル222は、嫌気性接着剤用硬化促進剤を塗布するための複数の第1ノズル孔と、瞬間接着剤用硬化促進剤を塗布するための複数の第2ノズル孔とを有する(不図示)。
前記各第1ノズル孔は、第1配管を介して硬化促進剤タンク221の前記第1貯留部に対して直接的に接続されている。
前記各第2ノズル孔は、第2配管を介して硬化促進剤タンク221の前記第2貯留部に対して直接的に接続されている。
さらに、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方は、第3配管を介して前記硬化促進剤混合部にも接続されている。前記硬化促進剤混合部は、第4配管を介して前記第1貯留部及び前記第2貯留部の双方に接続されている。前記硬化促進剤混合部は、前記第1貯留部からの嫌気性接着剤用硬化促進剤と、前記第2貯留部からの瞬間接着剤用硬化促進剤とを取り込んで攪拌混合することができる。
【0098】
前記第1配管、前記第2配管、そして前記第4配管は、切り替えバルブ(不図示)に接続されている。この切り替えバルブを操作することにより、下記(1)または下記(2)に、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の流れを切り換えることができる。
(1)前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤を前記第1配管により前記第1ノズル孔に流すと同時に、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤を前記第2配管により前記第2ノズル孔に流す。その結果、前記各第1ノズル孔からは嫌気性接着剤用硬化促進剤が吐出され、前記各第2ノズル孔からは瞬間接着剤用硬化促進剤が吐出される。
(2)前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤と、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤との両方を、前記第4配管により前記硬化促進剤混合部に取り込んで攪拌混合させる。このようにして嫌気性接着剤用硬化促進剤と瞬間接着剤用硬化促進剤とを混合した混合促進剤を、前記第3配管を介して前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方に流す。その結果、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方より、前記混合促進剤が吐出される。
【0099】
前記各第1ノズル孔は、それらの吐出口が帯状鋼板Mの下面に向いており、嫌気性接着剤用硬化促進剤あるいは前記混合促進剤を、前記下面に対して点状あるいは線状に塗布することができる。
前記各第2ノズル孔も、それらの吐出口が帯状鋼板Mの下面に向いており、瞬間接着剤用硬化促進剤あるいは前記混合促進剤を、前記下面に対して点状あるいは線状に塗布することができる。
ノズル222において、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔は、交互に並ぶように配置されており、それぞれから吐出された硬化促進剤が帯状鋼板Mの塗布面において過度に混じり合わないようにピッチが定められている。嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を、
図11を用いて後述するようなチェッカー状に塗布する場合は、これらの塗布位置と、後工程における嫌気性接着剤及び瞬間接着剤の塗布位置とが相対的に一致するように、前記ピッチを、後述するノズル253の各ノズル孔のピッチと同じにすることが好ましい。
【0100】
前記切り替えバルブによって上記(1)及び上記(2)の何れか一方に切り換えることにより、帯状鋼板Mの塗布面へ塗布される嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の塗布形態が、未混合状態で塗布する場合と、混合状態で塗布する場合とに分かれる。以降の説明においては、嫌気性接着剤用硬化促進剤、瞬間接着剤用硬化促進剤、混合促進剤、の3つを包含して単に「硬化促進剤」と呼ぶ場合がある。一方、これらの区別が必要である場合には、嫌気性接着剤用硬化促進剤、瞬間接着剤用硬化促進剤、混合促進剤の3つに分けて説明する。
【0101】
シールボックス223は、内部空間を有する箱であり、この内部空間に通じる入口及び出口を有する。帯状鋼板Mは、その水平状態を保ったまま、前記入口よりシールボックス223の内部空間に送り込まれた後、前記出口からシールボックス223の外へと送り出される。このシールボックス223の内部空間の下方には、前記ノズル222が配置されている。そして上述の通り、帯状鋼板Mのうち、前記内部空間を挿通する部分の下面にノズル222のノズル口が向けられている。ノズル222より帯状鋼板Mの下面に噴霧された硬化促進剤は、溶剤が揮発するため、瞬時に乾燥する。これにより、帯状鋼板Mが前記出口から出る前に、帯状鋼板Mの下面には、溶剤が乾燥した硬化促進層が均等厚かつ全面にわたって形成されている。硬化促進層の厚みとしては、0.1μmを例示できる。なお、帯状鋼板Mの上面は、硬化促進剤が殆ど塗布されていないため、ほぼ、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
拭き取りローラー224は、主に帯状鋼板Mの上面に残った硬化促進剤を余剰として拭き取る。これにより、拭き取りローラー224を経た後の帯状鋼板Mの上面は、硬化促進剤が完全に拭き取られて絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
なお、硬化促進層は、前記切り替えバルブの操作により、複数のパターンを選ぶことができる。このパターンについては、
図11~
図13を用いて後述する。
【0102】
前記駆動部は、硬化促進層形成部220とプレス加工油塗布部230との間の位置DRに配置されている。前記駆動部は、帯状鋼板Mを、硬化促進層形成部220からプレス加工油塗布部230に向かう紙面右方向に向けて間欠的に送り出す。なお、硬化促進層形成部220から送り出された帯状鋼板Mの下面には、前記駆動部に入る前に、硬化促進剤が乾燥した硬化促進層が既に形成されている。一方、前記駆動部に入る前における帯状鋼板Mの上面は、硬化促進層がなく、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
【0103】
プレス加工油塗布部230は、塗布ローラー231とオイルパン232とを備える。
オイルパン232は、帯状鋼板Mの下方でかつ塗布ローラー231の真下の位置に配置されている。塗布ローラー231は、上ローラー231a及び下ローラー231bを有する。
上ローラー231aは、帯状鋼板Mの真上に配置され、上下動することにより、帯状鋼板Mの上面に対して接した状態と離間した状態との間で切り換え可能である。上ローラー231aは、図示されないプレス加工油供給部から供給されたプレス加工油をその外周面に浸透させた状態で鋼板Mの上面に対して接しながら転動することで、帯状鋼板Mの上面にプレス加工油を塗布可能である。
下ローラー231bは、帯状鋼板Mの真下に配置され、上下動することにより、帯状鋼板Mの下面に対して接した状態と離間した状態との間で切り換え可能である。下ローラー231bは、前記プレス加工油供給部から供給されたプレス加工油をその外周面に浸透させた状態で鋼板Mの下面に対して接しながら転動することで、帯状鋼板Mの下面にプレス加工油を塗布可能である。
オイルパン232は、上ローラー231a及び下ローラー231bから垂れてきた余剰のプレス加工油を受け止めて回収し、そしてこれを前記プレス加工油供給部に戻す。
【0104】
上記プレス加工油塗布部230によれば、上ローラー231aを帯状鋼板Mの上面に当接させた状態で前記プレス加工油供給部からプレス加工油を供給することにより、帯状鋼板Mの上面にプレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
同様に、下ローラー231bを帯状鋼板Mの下面に当接させた状態で前記プレス加工油供給部からプレス加工油を供給することにより、帯状鋼板Mの下面にプレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
【0105】
あるいは、上ローラー231a及び下ローラー231b間に帯状鋼板Mを挟み込むことにより、帯状鋼板Mの上下面の両方に、プレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
このように、上ローラー231a及び下ローラー231bの各位置を必要に応じてそれぞれ上下動させることにより、プレス加工油の塗布を、帯状鋼板Mの上面のみに行う場合、帯状鋼板Mの下面のみに行う場合、帯状鋼板Mの上下面の両方に行う場合、の3通りから選択することができる。
【0106】
ここで、上記の何れの場合においても、プレス加工油が塗布される前の時点で、帯状鋼板Mの下面に塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の両方を、自然乾燥ではなく積極的に乾燥させている。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層を形成しているので、プレス加工油と混ざり合って希釈されてしまうことが抑制される。したがって、プレス加工油塗布後の帯状鋼板Mの下面における嫌気性接着剤用硬化促進剤の濃度及び瞬間接着剤用硬化促進剤の濃度は、共に、プレス加工油の塗布前後で変わることなく維持されている。よって、プレス加工油塗布部230を経た後の帯状鋼板Mは、その下面における硬化促進剤の濃度を維持したまま、プレス加工部240へと送られる。
【0107】
プレス加工部240は、第1段打ち抜き部241と第2段打ち抜き部242と第3段打ち抜き部243とを備える。
第1段打ち抜き部241は、プレス加工油塗布部230の下流側に配置され、雄金型241a及び雌金型241bを有する。雄金型241a及び雌金型241bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型241aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型241bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型241aを下方に向けて移動させて雌金型241b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な1回目の打ち抜き加工を行う。この時、帯状鋼板Mにはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型241aを上方に移動させて雌金型241bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0108】
第2段打ち抜き部242は、第1段打ち抜き部241の下流側に配置され、雄金型242a及び雌金型242bを有する。雄金型242a及び雌金型242bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、1回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型242aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型242bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型242aを下方に向けて移動させて雌金型242b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な2回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mにはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型242aを上方に移動させて雌金型242bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0109】
第3段打ち抜き部243は、第2段打ち抜き部242の下流側に配置され、雄金型243a及び雌金型243bを有する。雄金型243a及び雌金型243bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、2回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型243aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型243bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型243aを下方に向けて移動させて雌金型243b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な3回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mにはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型243aを上方に移動させて雌金型243bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0110】
接着剤塗布部250は、プレス加工部240の下流側にある積層接着部260内に組み込まれている。接着剤塗布部250は、空気圧送機251と、シリンジ252と、ノズル253とを備える。
シリンジ252は、嫌気性接着剤を貯留する空間と、瞬間接着剤を貯留する空間とを有する容器である(不図示)。嫌気性接着剤を貯留する空間と、瞬間接着剤を貯留する空間との間は、嫌気性接着剤と瞬間接着剤が混じり合わないように区画されている。ここで、嫌気性接着剤としては、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。同様に、瞬間接着剤としては、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。
シリンジ252と空気圧送機251との間は、空気圧送機251からの空気をシリンジ252へ送る配管により接続されている。また、シリンジ252とノズル253との間は、シリンジ252からノズル253へと、嫌気性接着剤を供給する第5配管と、瞬間接着剤を供給する第6配管と、を介して接続されている。
【0111】
ノズル253は、吐出口が下方を向いた複数本のニードル(不図示)を備える。これらニードルは、帯状鋼板Mの上方に配置されている。よって、前記各ニードルの吐出口は、帯状鋼板Mの上面に対向している。前記各ニードルは、嫌気性接着剤を塗布するための複数の第1ニードルと、瞬間接着剤を塗布するための複数の第2ニードルとを有する(不図示)。これら第1ニードル及び第2ニードルは、それぞれの吐出口が、ノズル253を底面視したときに交互かつ均等に配置されている。
【0112】
ここで、後述する
図11に示すように嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤をチェッカー状に配置する場合には、前記各第1ニードルの吐出口の位置を、帯状鋼板Mの下面に塗布及び乾燥された各嫌気性接着剤用硬化促進剤の位置と一致させることが好ましい。同様に、前記各第2ニードルの吐出口の位置も、帯状鋼板Mの下面に塗布及び乾燥された各瞬間接着剤用硬化促進剤と一致させることが好ましい。この場合、プレス加工部140を経てノズル153の上方で帯状鋼板Mの送りを一旦停止させた際、帯状鋼板Mの下面にある各嫌気性接着剤用硬化促進剤と前記各第1ニードルの吐出口との相対位置が一致し、なおかつ、各瞬間接着剤用硬化促進剤と前記各第2ニードルの吐出口との相対位置が一致する。これにより、各接着剤を、各硬化促進剤に対して正しい組み合わせで塗布できる。
【0113】
前記各第1ニードルは、前記第5配管を介して、前記嫌気性接着剤を貯留する空間に直接的に接続されている。一方、前記各第2ニードルは、前記第6配管を介して、前記瞬間接着剤を貯留する空間に直接的に接続されている。
そして、前記各第1ニードル及び前記各第2ニードルは、帯状鋼板Mの上面に対してチェッカー状(格子状)をなすように、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を塗布できる。これにより、嫌気性接着剤からなる正方形あるいは円形の模様と、瞬間接着剤からなる正方形あるいは円形の模様とが、帯状鋼板Mの上面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って交互に配置される。すなわち、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤は、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って互いに隣り合うように配置できる。
【0114】
さらに、この位置決め状態において、前記空気圧送機251よりシリンジ252に空気が圧送されると、この空気が、前記嫌気性接着剤を貯留する空間と、前記瞬間接着剤を貯留する空間との両方に対して均等に供給される。すると、嫌気性接着剤が前記第5配管を介して前記各第1ニードルに供給され、瞬間接着剤が前記第6配管を介して前記各第2ニードルに供給される。そして、前記各第1ニードルの吐出口から嫌気性接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの上面に塗布される。同様に、前記各第2ニードルの吐出口から瞬間接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの上面に塗布される。
【0115】
積層接着部260は、外周打ち抜き雄金型261と、外周打ち抜き雌金型262と、スプリング263と、加熱器264とを備える。
外周打ち抜き雄金型261は、円形の底面を有する円柱形状の金型であり、その上端にはスプリング263の下端が接続されている。そして、外周打ち抜き雄金型261は、スプリング263で支持された状態で、スプリング263と共に上下動可能とされている。外周打ち抜き雄金型261は、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ外径寸法を有している。
【0116】
外周打ち抜き雌金型262は、円柱形状の内部空間を有する金型であり、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ内径寸法を有している。
加熱器264は、外周打ち抜き雌金型262に、一体に組み込まれている。加熱器264は、外周打ち抜き雌金型262内に積層された各電磁鋼板(鋼板部品)40をその周囲より加熱する。前記接着剤として加熱硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱器264からの熱を受けて硬化する。一方、接着剤として常温硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱を要することなく室温にて硬化する。
【0117】
上記積層接着部260によれば、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、外周打ち抜き雄金型261を降下させて帯状鋼板Mを外周打ち抜き雌金型262との間に挟み込み、さらに外周打ち抜き雄金型261を外周打ち抜き雌金型262内に押し込むことで、帯状鋼板Mから外周打ち抜きされた電磁鋼板40が得られる。
この打ち抜かれた電磁鋼板40は、先に打ち抜かれて外周打ち抜き雌金型262内に積層及び接着された他の電磁鋼板40の上面に積層され、さらに外周打ち抜き雄金型261からの加圧力と、加熱器264からの加熱とを受ける。この時、外周打ち抜き雄金型261から電磁鋼板40に加えられる加圧力は、前記スプリング263の付勢力によって常に一定に維持される。
以上により、今回打ち抜いた電磁鋼板40が、前回に打ち抜かれた電磁鋼板40の上面に対して接着固定される。このような外周打ち抜き、加圧、そして加熱の各工程を各電磁鋼板40の積層枚数分の回数、繰り返すことで、外周打ち抜き雌金型262内にステータ用接着積層コア21が形成される。
【0118】
図9に示すように、前記雌金型241b、前記雌金型242b、前記雌金型243b、前記外周打ち抜き雌金型262、及び前記加熱器264は、共通の固定基台271上に固定されている。したがって、これら雌金型241b、雌金型242b、雌金型243b、外周打ち抜き雌金型262、及び前記加熱器264は、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
同様に、前記雄金型241a、前記雄金型242a、前記雄金型243a、前記ノズル253、及び前記外周打ち抜き雄金型261も、共通の可動基台272の下面に固定されている。したがって、これら雄金型241a、雄金型242a、雄金型243a、ノズル253、及び外周打ち抜き雄金型261も、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
【0119】
前記駆動部が帯状鋼板Mを下流側に向かって送り出し、一時停止させた時に可動基台272を下降させることで、電磁鋼板40の外周打ち抜き及び積層及び接着ならびに次工程のための接着剤塗布と、帯状鋼板Mで次に外周打ち抜きされる位置への前記3回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記3回目の打ち抜き加工を行う位置への前記2回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記2回目の打ち抜き加工を行う位置への前記1回目の打ち抜き加工と、が同時に行われる。
続いて、可動基台272を上昇させて帯状鋼板Mの上方に退避させた後、前記駆動部により帯状鋼板Mを再び下流側に所定距離だけ送り出し、そして再び一時停止させる。この状態で可動基台272を再び下降させ、各位置での加工を継続して行う。このように、前記駆動部により帯状鋼板Mを間欠的に送りながら、一時停止時に可動基台272を上下動させる工程を繰り返すことにより、ステータ用接着積層コア21が製造される。
【0120】
以上説明の構成を有する接着積層コア製造装置200を用いた接着積層コア製造方法について、
図10~
図14を用いて以下に説明する。
図10は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するためのフローチャートである。また、
図11は、同接着積層コア製造方法の第1形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のD-D断面図である。
図12は、同接着積層コア製造方法の第2形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のE-E断面図である。
図13は、同接着積層コア製造方法の第3形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のF-F断面図である。
図14は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
【0121】
図10に示すように、本実施形態の接着積層コア製造方法は、鋼板送り出し工程S11と、硬化促進剤塗布乾燥工程S12と、余剰分拭き取り工程S13と、加工油塗布工程S14と、1回目打ち抜き工程S15と、2回目打ち抜き工程S16と、3回目打ち抜き工程S17と、積層及び接着工程S18と、積層枚数確認工程S19と、取り出し工程S20と、を有する。
【0122】
鋼板送り出し工程S11では、フープ材Fから下流側に向けて帯状鋼板Mを送り出す。
続く硬化促進剤塗布乾燥工程S12では、ノズル222から帯状鋼板Mの下面の全面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布して乾燥させる。これにより、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる硬化促進層aが形成される。硬化促進層aは、固体である。
【0123】
ここで、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の塗布パターンとして、
図11~
図13に3パターンを例示する。
図11~
図13は、積層及び接着工程S18に対応する図であるが、硬化促進剤塗布乾燥工程S12で形成された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の塗布パターンは、硬化促進剤塗布乾燥工程S12以降、固定されたままになる。よって、これら図面を用いて塗布パターンを説明する。
【0124】
例えば
図11の塗布パターンでは、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の下面に対してチェッカー状(格子状)をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が配置される。より具体的には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1からなる正方形あるいは円形の模様と、瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる正方形あるいは円形の模様とが、帯状鋼板Mの下面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って交互に配置されている。すなわち、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って互いに隣り合うように配置されている。
このように塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、シールボックス223を出る前に乾燥され、一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。この硬化促進層aは固体である。
【0125】
また、
図12の塗布パターンでは、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が予め混合した状態で、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の下面に配置されている。この混合は、前記硬化促進層形成部220において、前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2との両方を、前記第3配管により前記硬化促進剤混合部に取り込んで攪拌混合させることで得られる。このようにして得られた混合促進剤は、前記第4配管を介して前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方に供給される。その結果、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方より、前記混合促進剤が吐出される。そして、吐出された混合促進剤は、帯状鋼板Mの下面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って均等に配置される。
このように塗布された前記混合促進剤は、シールボックス223を出る前に乾燥され、一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。この硬化促進層aは固体である。
【0126】
あるいは、
図13の塗布パターンでは、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の下面に対して縞状(線状)をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が交互に配置される。より具体的には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1からなる線状の模様と、瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる線状の模様とが、帯状鋼板Mの下面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向に沿って交互に配置されている。すなわち、
図13(b)の紙面右方向を帯状鋼板Mの送り方向とした場合、この送り方向に直交する方向に平行をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2がそれぞれ直線状に形成されている。そして、これら嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、帯状鋼板Mの送り方向に沿って見た場合には交互に隣接して配置されている。
このように塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、シールボックス223を出る前に乾燥され、一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。この硬化促進層aは固体である。
なお、上記の塗布形態に代わり、
図13(b)の紙面下方向が帯状鋼板Mの送り方向となるように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、前記送り方向に平行をなす直線状に形成してもよい。
【0127】
図10に戻り、続く余剰分拭き取り工程S13では、帯状鋼板Mの上面における余剰の硬化促進剤が拭き取られる。よって、帯状鋼板Mの上面には硬化促進層aが形成されていない。
続く加工油塗布工程S14では、下ローラー131bが前記プレス加工油供給部から供給されたプレス加工油bをその外周面に浸透させた状態で、鋼板Mの下面に対して接しながら転動する。その結果、帯状鋼板Mの下面にのみ、全面においてプレス加工油bが塗布される。すなわち、プレス加工油bは、硬化促進層aの表面を覆うように塗布される。
この時、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の両方を、自然乾燥ではなく積極的に乾燥させる。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層aを形成しているので、その表面に塗布されるプレス加工油bと混ざり合って希釈されてしまうことが抑制されている。
一方、上ローラー131aは、上昇して帯状鋼板Mの上面から離間しているため、帯状鋼板Mの上面にはプレス加工油bが塗布されず、絶縁被膜が露出したままになっている。
【0128】
続く1回目打ち抜き工程S15では、第1段打ち抜き部241により帯状鋼板Mの1回目の打ち抜きが行われる。この時、帯状鋼板Mの下面にはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型241a及び雌金型241b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
続く2回目打ち抜き工程S16では、第2段打ち抜き部242により帯状鋼板Mの2回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mの下面にはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型242a及び雌金型242b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
【0129】
続く3回目打ち抜き工程S17では、第3段打ち抜き部243により帯状鋼板Mの3回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mの下面にはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型243a及び雌金型243b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
以上の1回目打ち抜き工程S15~3回目打ち抜き工程S17により、外形部分を除き、
図1に示したコアバック部22及びティース部23が帯状鋼板Mに形成される。
【0130】
続く積層及び接着工程S18では、外周打ち抜き雄金型261によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層される。この時、前記他の電磁鋼板40の上面には、接着剤cが塗布されている。また、その上に積層される電磁鋼板40の下面には、プレス加工油bで被覆された硬化促進層aが形成されている。
なお、
図11(b)に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2をチェッカー状に配置した場合には、これらの相対位置に合わせて、嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2もチェッカー状に配置される。
そして、各電磁鋼板40を、積層及び加圧された状態で加熱する。すると、先に外周打ち抜きをした電磁鋼板40の上面にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、後に外周打ち抜きをした電磁鋼板40の下面側にあるプレス加工油bを押し退けてその上にある硬化促進層aと混ざり合う。その結果、嫌気性接着剤c1が硬化促進層a内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と混ざり合いながら硬化する。同様に、瞬間接着剤c2が硬化促進層a内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
【0131】
以上の工程を順次繰り返すことで所定枚数の電磁鋼板40を積層及び接着し、ステータ用接着積層コア21が完成する。
すなわち、積層枚数確認工程S19において電磁鋼板40の積層枚数が所定枚数に達したか否かが判断される。その結果、達していない場合(判定:NO)には、フローが鋼板送り出し工程S11に戻り、鋼板送り出し工程S11~積層及び接着工程S18が再び繰り返される。一方、積層枚数確認工程S19において所定枚数に達した場合(判定:YES)には、フローが取り出し工程S20へと進む。
続く取り出し工程S20では、完成したステータ用接着積層コア21を外周打ち抜き雌金型262内から取り出すことで、接着積層コア製造方法の全工程が終了する。
【0132】
以上説明の接着積層コア製造装置200を用いた接着積層コア製造方法の骨子を、以下に纏める。
本実施形態の接着積層コア製造方法は、片面(下面)側に嫌気性接着剤a1及び瞬間接着剤a2を塗布し、さらにその上にプレス加工油bを塗布した帯状鋼板Mにプレス加工を行い、複数枚の電磁鋼板40(鋼板部品)を得て、各電磁鋼板40を積層接着することによってステータ用接着積層コア21(接着積層コア)を製造する方法である。
そして、本実施形態では、プレス加工油bを塗布する前の帯状鋼板Mの下面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布して乾燥させた硬化促進層aを形成する。
以上説明の接着積層コア製造装置100を用いた接着積層コア製造方法によれば、上記第1実施形態で説明したものと同じ作用効果を得ることが出来る。
【0133】
加えて、
図11に示したように、上記接着積層コア製造方法において、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と瞬間接着剤用硬化促進剤a2とをチェッカー状に配置してもよい。
または、
図12に示したように、上記接着積層コア製造方法において、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を予め混合してから塗布及び乾燥させることで、硬化促進層aを形成してもよい。
あるいは、
図13に示したように、上記接着積層コア製造方法において、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と瞬間接着剤用硬化促進剤a2とを縞状に配置して硬化促進層aを形成してもよい。
上記の何れの場合においても、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、帯状鋼板Mの塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0134】
上記接着積層コア製造方法は、より詳しく言うと以下の各工程を有する。
すなわち、各電磁鋼板40が、後に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第1鋼板部品)40及び先に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第2鋼板部品)40を含む。そして、この接着積層コア製造方法は、下面(第1面)と、この下面上に形成された硬化促進層aと、この硬化促進層上に配置されたプレス加工油bとを有する後に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第1鋼板部品)40を準備する第1の工程と;上面(第2面)と、この上面上に配置された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2とを有する先に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第2鋼板部品)40を準備する第2の工程と;前記上面及び前記下面が互いに対向するように、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第2鋼板部品)40と後に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第1鋼板部品)40とを重ね合わせて接着する第3の工程と;を有する。
この接着積層コア製造方法によれば、上記第1実施形態で説明したものと同じ作用効果を得ることが出来る。
【0135】
上記接着積層コア製造方法において、ステータ用接着積層コア(接着積層コア)21が、回転電機用の固定子であってもよい。
この接着積層コア製造方法によれば、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られるので、高い性能を持ちながらも製造コストが低い回転電機用の固定子を製造することが可能になる。
【0136】
本実施形態の接着積層コア製造装置200は、帯状鋼板Mから打ち抜かれた複数枚の電磁鋼板(鋼板部品)40を備えるステータ用接着積層コア(接着積層コア)21を製造する装置である。
そして、本実施形態の接着積層コア製造装置200は、帯状鋼板Mの下面(片面)側にプレス加工油bを塗布するプレス加工油塗布部230と;帯状鋼板Mにプレス加工を加えるプレス加工部240と;帯状鋼板Mの上面に嫌気性接着剤a1及び瞬間接着剤a2を塗布する接着剤塗布部250と;プレス加工油bを塗布する前の帯状鋼板Mの下面側に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布して乾燥させた硬化促進層aを形成する硬化促進層形成部220と;を備える。
上記接着積層コア製造装置200によれば、上記第1実施形態で説明したものと同じ作用効果を得ることが出来る。
【0137】
上記接着積層コア製造装置200において、硬化促進層形成部220が、
図11に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2をチェッカー状に塗布するノズル222を備えてもよい。
または、上記接着積層コア製造装置200において、硬化促進層形成部220が、
図12に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を予め混合させた状態で流す配管(硬化促進剤供給流路)と、この配管に通じるノズル222とを備えてもよい。
あるいは、上記接着積層コア製造装置200において、硬化促進層形成部220が、
図13に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を縞状に塗布するノズル222を備えてもよい。
上記の何れの場合においても、ノズル222により、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、帯状鋼板Mの塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0138】
なお、本実施形態では、
図10に示した加工油塗布工程S14で、帯状鋼板Mの下面側のみにプレス加工油bを塗布する場合について説明したが、この形態のみに限らない。例えば
図14の変形例に示すように、帯状鋼板Mの上面のみ、あるいは帯状鋼板Mの上下面の両方にプレス加工油bを塗布する加工油塗布工程S14Aを採用してもよい。
【0139】
この加工油塗布工程S14Aでは、帯状鋼板Mの上面のみにプレス加工油bを塗布する場合には、下ローラー131bを帯状鋼板Mの下面より下方に退避させて非接触とする一方、上ローラー131aをその外周面にプレス加工油bを浸透させた状態で帯状鋼板Mの上面に対して転動させる。これにより、帯状鋼板Mの上面にのみ、全面にプレス加工油が塗布される。そして、帯状鋼板Mの下面には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる硬化促進層aが露出した状態で形成される。一方、帯状鋼板Mの上面には、プレス加工油bと、このプレス加工油b上に塗布された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2とが形成される。
【0140】
この場合、
図14の積層及び接着工程S18Aでは、外周打ち抜き雄金型261によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に外周打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層され、加圧しながら加熱される。その際、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の上面側にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、これらの下にあるプレス加工油bを押し退けて電磁鋼板40の上面に塗布される。同時に、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の上面にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、後に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の下面にある硬化促進層aと混ざり合う。その結果、嫌気性接着剤c1が硬化促進層a内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と混ざり合いながら硬化する。同様に、瞬間接着剤c2が硬化促進層a内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
なお、その他工程は
図10で説明した各工程と同じであるので、同じ符号を用いて重複説明を省略する。
【0141】
あるいは、例えば
図14の変形例に示す加工油塗布工程S14Aにおいて、帯状鋼板Mの上下面の両方にプレス加工油bを塗布してもよい。
その場合の加工油塗布工程S14Aでは、上ローラー131a及び下ローラー131bの双方にプレス加工油bを浸透させてからこれらの間に帯状鋼板Mを挟み込んだまま、上ローラー131a及び下ローラー131bを転動させる。その結果、帯状鋼板Mの下面には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる硬化促進層aと、硬化促進層aの表面を覆うプレス加工油bとが形成される。一方、帯状鋼板Mの上面には、プレス加工油bと、このプレス加工油b上に塗布された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2とが形成される。
【0142】
そして、
図14の積層及び接着工程S18Aでは、外周打ち抜き雄金型261によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に外周打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層され、加圧しながら加熱される。その際、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の上面側にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、これらの下にあるプレス加工油bを押し退けて電磁鋼板40の上面に塗布される。同時に、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の上面にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、後に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の下面側にあるプレス加工油bを押し退けてその上にある硬化促進層aと混ざり合う。その結果、嫌気性接着剤c1が硬化促進層a内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と混ざり合いながら硬化する。同様に、瞬間接着剤c2が硬化促進層a内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
なお、その他工程は
図10で説明した各工程と同じであるので、同じ符号を用いて重複説明を省略する。
【0143】
[第3実施形態]
図15~
図21を用いて、本発明の第3実施形態を以下に説明する。
先ず、
図15に示す側面図を用いて、本実施形態に係る接着積層コア製造装置300を説明する。
図15に示すように、接着積層コア製造装置300は、帯状鋼板供給部310と、硬化促進層形成部320と、駆動部(不図示)と、プレス加工油塗布部330と、プレス加工部340と、接着剤塗布部350と、積層接着部360とを備える。
【0144】
帯状鋼板供給部310には、電磁鋼板(鋼板部品)40の素材となる帯状鋼板Mを巻回したフープ材Fが軸支されており、
図15の紙面右側に向かって帯状鋼板Mを送り出す。以下の説明において、帯状鋼板Mの送り方向である紙面右側を下流側、その逆方向である紙面左側を上流側という場合がある。この帯状鋼板供給部310より下流側に向けて送られる帯状鋼板Mは、上述した化学組成を有する鋼板であり、その両面が上述した絶縁被膜で被覆されている。
【0145】
硬化促進層形成部320は、硬化促進剤タンク321と、ノズル322と、乾燥機323とを有する。
硬化促進剤タンク321は、溶剤に溶かした嫌気性接着剤用硬化促進剤を貯留する第1貯留部と、溶剤に溶かした瞬間接着剤用硬化促進剤を貯留する第2貯留部と、硬化促進剤混合部とを有する(不図示)。前記第1貯留部と前記第2貯留部との間は、嫌気性接着剤用硬化促進剤と瞬間接着剤用硬化促進剤とが混じり合わないように区画されている。
嫌気性接着剤用硬化促進剤は、嫌気性接着剤と混ざり合うことで嫌気性接着剤の瞬時硬化を促すものであり、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。同様に、瞬間接着剤用硬化促進剤は、瞬間接着剤用硬化促進剤(2-シアノアクリレート系接着剤)と混ざり合うことで瞬間接着剤の瞬時硬化を促すものであり、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。また、溶剤種も、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。
【0146】
ノズル322は、嫌気性接着剤用硬化促進剤を塗布するための複数の第1ノズル孔と、瞬間接着剤用硬化促進剤を塗布するための複数の第2ノズル孔とを有する(不図示)。
前記各第1ノズル孔は、第1配管を介して硬化促進剤タンク321の前記第1貯留部に対して直接的に接続されている。
前記各第2ノズル孔は、第2配管を介して硬化促進剤タンク321の前記第2貯留部に対して直接的に接続されている。
さらに、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方は、第3配管を介して前記硬化促進剤混合部にも接続されている。前記硬化促進剤混合部は、第4配管を介して前記第1貯留部及び前記第2貯留部の双方に接続されている。前記硬化促進剤混合部は、前記第1貯留部からの嫌気性接着剤用硬化促進剤と、前記第2貯留部からの瞬間接着剤用硬化促進剤とを取り込んで攪拌混合することができる。
【0147】
前記第1配管、前記第2配管、そして前記第4配管は、切り替えバルブ(不図示)に接続されている。この切り替えバルブを操作することにより、下記(1)または下記(2)に、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の流れを切り換えることができる。
(1)前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤を前記第1配管により前記第1ノズル孔に流すと同時に、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤を前記第2配管により前記第2ノズル孔に流す。その結果、前記各第1ノズル孔からは嫌気性接着剤用硬化促進剤が吐出され、前記各第2ノズル孔からは瞬間接着剤用硬化促進剤が吐出される。
(2)前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤と、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤との両方を、前記第4配管により前記硬化促進剤混合部に取り込んで攪拌混合させる。このようにして嫌気性接着剤用硬化促進剤と瞬間接着剤用硬化促進剤とを混合した混合促進剤を、前記第3配管を介して前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方に流す。その結果、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方より、前記混合促進剤が吐出される。
【0148】
前記各第1ノズル孔は、それらの吐出口が帯状鋼板Mの上面に向いており、嫌気性接着剤用硬化促進剤あるいは前記混合促進剤を、前記上面に対して点状あるいは線状に塗布することができる。
前記各第2ノズル孔も、それらの吐出口が帯状鋼板Mの上面に向いており、瞬間接着剤用硬化促進剤あるいは前記混合促進剤を、前記上面に対して点状あるいは線状に塗布することができる。
ノズル322において、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔は、交互に並ぶように配置されており、それぞれから吐出された硬化促進剤が帯状鋼板Mの塗布面において過度に混じり合わないようにピッチが定められている。嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を、
図17を用いて後述するようなチェッカー状に塗布する場合は、これらの塗布位置と、後工程における嫌気性接着剤及び瞬間接着剤の塗布位置とが相対的に一致するように、前記ピッチを、後述するノズル353の各ノズル孔のピッチと同じにすることが好ましい。
【0149】
前記切り替えバルブによって上記(1)及び上記(2)の何れか一方に切り換えることにより、帯状鋼板Mの塗布面へ塗布される嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の塗布形態が、未混合状態で塗布する場合と、混合状態で塗布する場合とに分かれる。以降の説明においては、嫌気性接着剤用硬化促進剤、瞬間接着剤用硬化促進剤、混合促進剤、の3つを包含して単に「硬化促進剤」と呼ぶ場合がある。一方、これらの区別が必要である場合には、嫌気性接着剤用硬化促進剤、瞬間接着剤用硬化促進剤、混合促進剤の3つに分けて説明する。
【0150】
乾燥機323は、一対のローラー323aと、ドライヤー323bとを有する。
一対のローラー323aは、ノズル322の下流側に配置されている。一対のローラー323aは、これらの間を通過していく帯状鋼板Mが常に水平に保たれるように保持する。
ドライヤー323bは、一対のローラー323a間に挟まれる位置に配置されている。ドライヤー323bは、帯状鋼板Mの上面及び下面に空気を吹き付けることで硬化促進剤を乾燥させる。これにより、帯状鋼板Mは、一対のローラー323aのうちの上流側の方を超えた時点で空気の吹き付けを受けて硬化促進剤が乾燥し始め、そして一対のローラー323aのうちの下流側の方に至る前に乾燥が完了している。したがって、一対のローラー323aの下流側を経た後の帯状鋼板Mの上面には、溶剤が乾燥した硬化促進層が均等厚かつ全面にわたって形成されている。硬化促進層の厚みとしては、0.1μmを例示できる。一方、帯状鋼板Mの下面は、硬化促進剤が塗布されていないため、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
なお、硬化促進層は、前記切り替えバルブの操作により、複数のパターンを選ぶことができる。このパターンについては、
図17~
図19を用いて後述する。
【0151】
前記駆動部は、硬化促進層形成部320とプレス加工油塗布部330との間の位置DRに配置されている。前記駆動部は、帯状鋼板Mを、硬化促進層形成部320からプレス加工油塗布部330に向かう紙面右方向に向けて間欠的に送り出す。なお、硬化促進層形成部320から送り出された帯状鋼板Mの上面には、前記駆動部に入る前に、硬化促進剤が乾燥した硬化促進層が既に形成されている。一方、前記駆動部に入る前における帯状鋼板Mの下面は、硬化促進層がなく、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
【0152】
プレス加工油塗布部330は、塗布ローラー331とオイルパン332とを備える。
オイルパン332は、帯状鋼板Mの下方でかつ塗布ローラー331の真下の位置に配置されている。塗布ローラー331は、上ローラー331a及び下ローラー331bを有する。
上ローラー331aは、帯状鋼板Mの真上に配置され、上下動することにより、帯状鋼板Mの上面に対して接した状態と離間した状態との間で切り換え可能である。上ローラー331aは、図示されないプレス加工油供給部から供給されたプレス加工油をその外周面に浸透させた状態で鋼板Mの上面に対して接しながら転動することで、帯状鋼板Mの上面にプレス加工油を塗布可能である。
下ローラー331bは、帯状鋼板Mの真下に配置され、上下動することにより、帯状鋼板Mの下面に対して接した状態と離間した状態との間で切り換え可能である。下ローラー331bは、前記プレス加工油供給部から供給されたプレス加工油をその外周面に浸透させた状態で鋼板Mの下面に対して接しながら転動することで、帯状鋼板Mの下面にプレス加工油を塗布可能である。
オイルパン332は、上ローラー331a及び下ローラー331bから垂れてきた余剰のプレス加工油を受け止めて回収し、そしてこれを前記プレス加工油供給部に戻す。
【0153】
上記プレス加工油塗布部330によれば、上ローラー331aを帯状鋼板Mの上面に当接させた状態で前記プレス加工油供給部からプレス加工油を供給することにより、帯状鋼板Mの上面にプレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
同様に、下ローラー331bを帯状鋼板Mの下面に当接させた状態で前記プレス加工油供給部からプレス加工油を供給することにより、帯状鋼板Mの下面にプレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
【0154】
あるいは、上ローラー331a及び下ローラー331b間に帯状鋼板Mを挟み込むことにより、帯状鋼板Mの上下面の両方に、プレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
このように、上ローラー331a及び下ローラー331bの各位置を必要に応じてそれぞれ上下動させることにより、プレス加工油の塗布を、帯状鋼板Mの上面のみに行う場合、帯状鋼板Mの下面のみに行う場合、帯状鋼板Mの上下面の両方に行う場合、の3通りから選択することができる。
【0155】
ここで、上記の何れの場合においても、プレス加工油が塗布される前の時点で、帯状鋼板Mの上面に塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の両方を、自然乾燥ではなく積極的に乾燥させている。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層を形成しているので、プレス加工油と混ざり合って希釈されてしまうことが抑制される。したがって、プレス加工油塗布後の帯状鋼板Mの上面における嫌気性接着剤用硬化促進剤の濃度及び瞬間接着剤用硬化促進剤の濃度は、共に、プレス加工油bの塗布前後で変わることなく維持されている。よって、プレス加工油塗布部330を経た後の帯状鋼板Mは、その上面における硬化促進剤の濃度を維持したまま、プレス加工部340へと送られる。
【0156】
プレス加工部340は、第1段打ち抜き部341と第2段打ち抜き部342と第3段打ち抜き部343とを備える。
第1段打ち抜き部341は、プレス加工油塗布部330の下流側に配置され、雄金型341a及び雌金型341bを有する。雄金型341a及び雌金型341bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型341aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型341bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型341aを下方に向けて移動させて雌金型341b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な1回目の打ち抜き加工を行う。この時、帯状鋼板Mにはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型341aを上方に移動させて雌金型341bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0157】
第2段打ち抜き部342は、第2段打ち抜き部341の下流側に配置され、雄金型342a及び雌金型342bを有する。雄金型342a及び雌金型342bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、1回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型342aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型342bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型342aを下方に向けて移動させて雌金型342b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な2回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mにはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型342aを上方に移動させて雌金型342bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0158】
第3段打ち抜き部343は、第2段打ち抜き部342の下流側に配置され、雄金型343a及び雌金型343bを有する。雄金型343a及び雌金型343bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、2回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型343aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型343bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型343aを下方に向けて移動させて雌金型343b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な3回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mの上面にはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型343aを上方に移動させて雌金型343bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0159】
接着剤塗布部350は、プレス加工部340の下流側にある積層接着部360内に組み込まれている。接着剤塗布部350は、空気圧送機351と、シリンジ352と、ノズル353とを備える。
シリンジ352は、嫌気性接着剤を貯留する空間と、瞬間接着剤を貯留する空間とを有する容器である(不図示)。嫌気性接着剤を貯留する空間と、瞬間接着剤を貯留する空間との間は、嫌気性接着剤と瞬間接着剤が混じり合わないように区画されている。ここで、嫌気性接着剤としては、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。同様に、瞬間接着剤としては、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。
シリンジ352と空気圧送機351との間は、空気圧送機351からの空気をシリンジ352へ送る配管により接続されている。また、シリンジ352とノズル353との間は、シリンジ352からノズル353へと、嫌気性接着剤を供給する第5配管と、瞬間接着剤を供給する第6配管と、を介して接続されている。
【0160】
ノズル353は、吐出口が下方を向いた複数本のニードル(不図示)を備える。これらニードルは、帯状鋼板Mの上方に配置されている。よって、前記各ニードルの吐出口は、帯状鋼板Mの上面に対向している。前記各ニードルは、嫌気性接着剤を塗布するための複数の第1ニードルと、瞬間接着剤を塗布するための複数の第2ニードルとを有する(不図示)。これら第1ニードル及び第2ニードルは、それぞれの吐出口が、ノズル353を底面視したときに交互かつ均等に配置されている。
【0161】
ここで、後述する
図17に示すように嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤をチェッカー状に配置する場合には、前記各第1ニードルの吐出口の位置を、帯状鋼板Mの上面に塗布及び乾燥された各嫌気性接着剤用硬化促進剤の位置と一致させることが好ましい。同様に、前記各第2ニードルの吐出口の位置も、帯状鋼板Mの上面に塗布及び乾燥された各瞬間接着剤用硬化促進剤と一致させることが好ましい。この場合、プレス加工部140を経てノズル153の上方で帯状鋼板Mの送りを一旦停止させた際、帯状鋼板Mの上面にある各嫌気性接着剤用硬化促進剤と前記各第1ニードルの吐出口との相対位置が一致し、なおかつ、各瞬間接着剤用硬化促進剤と前記各第2ニードルの吐出口との相対位置が一致する。これにより、各接着剤を、各硬化促進剤に対して正しい組み合わせで塗布できる。
【0162】
前記各第1ニードルは、前記第5配管を介して、前記嫌気性接着剤を貯留する空間に直接的に接続されている。一方、前記各第2ニードルは、前記第6配管を介して、前記瞬間接着剤を貯留する空間に直接的に接続されている。
そして、前記各第1ニードル及び前記各第2ニードルは、帯状鋼板Mの上面に対してチェッカー状(格子状)をなすように、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を塗布できる。これにより、嫌気性接着剤からなる正方形あるいは円形の模様と、瞬間接着剤からなる正方形あるいは円形の模様とが、帯状鋼板Mの上面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って交互に配置される。すなわち、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤は、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って互いに隣り合うように配置できる。
【0163】
さらに、この位置決め状態において、前記空気圧送機351よりシリンジ352に空気が圧送されると、この空気が、前記嫌気性接着剤を貯留する空間と、前記瞬間接着剤を貯留する空間との両方に対して均等に供給される。すると、嫌気性接着剤が前記第5配管を介して前記各第1ニードルに供給され、瞬間接着剤が前記第6配管を介して前記各第2ニードルに供給される。そして、前記各第1ニードルの吐出口から嫌気性接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの上面に塗布される。同様に、前記各第2ニードルの吐出口から瞬間接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの上面に塗布される。
【0164】
積層接着部360は、外周打ち抜き雄金型361と、外周打ち抜き雌金型362と、スプリング363と、加熱器364と、を備える。
外周打ち抜き雄金型361は、円形の底面を有する円柱形状の金型であり、その上端にはスプリング363の下端が接続されている。そして、外周打ち抜き雄金型361は、スプリング363で支持された状態で、スプリング363と共に上下動可能とされている。外周打ち抜き雄金型361は、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ外径寸法を有している。
【0165】
外周打ち抜き雌金型362は、円柱形状の内部空間を有する金型であり、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ内径寸法を有している。
加熱器364は、外周打ち抜き雌金型362に、一体に組み込まれている。加熱器364は、外周打ち抜き雌金型362内に積層された各電磁鋼板(鋼板部品)40をその周囲より加熱する。前記接着剤として加熱硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱器364からの熱を受けて硬化する。一方、接着剤として常温硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱を要することなく室温にて硬化する。
【0166】
上記積層接着部360によれば、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、外周打ち抜き雄金型361を降下させて帯状鋼板Mを外周打ち抜き雌金型362との間に挟み込み、さらに外周打ち抜き雄金型361を外周打ち抜き雌金型362内に押し込むことで、帯状鋼板Mから外周打ち抜きされた電磁鋼板40が得られる。
この打ち抜かれた電磁鋼板40は、先に打ち抜かれて外周打ち抜き雌金型362内に積層及び接着された他の電磁鋼板40の上面に積層され、さらに外周打ち抜き雄金型361からの加圧力と、加熱器364からの加熱とを受ける。この時、外周打ち抜き雄金型361から電磁鋼板40に加えられる加圧力は、前記スプリング363の付勢力によって常に一定に維持される。
以上により、今回打ち抜いた電磁鋼板40が、前回に打ち抜かれた電磁鋼板40の上面に対して接着固定される。このような外周打ち抜き、加圧、そして加熱の各工程を各電磁鋼板40の積層枚数分の回数、繰り返すことで、外周打ち抜き雌金型362内にステータ用接着積層コア21が形成される。
【0167】
図15に示すように、前記雌金型341b、前記雌金型342b、前記雌金型343b、前記外周打ち抜き雌金型362、及び前記加熱器364は、共通の固定基台371上に固定されている。したがって、これら雌金型341b、雌金型342b、雌金型343b、外周打ち抜き雌金型362、及び前記加熱器364は、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
同様に、前記雄金型341a、前記雄金型342a、前記雄金型343a、前記ノズル353、及び前記外周打ち抜き雄金型361も、共通の可動基台372の下面に固定されている。したがって、これら雄金型341a、雄金型342a、ノズル353、及び外周打ち抜き雄金型361も、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
【0168】
前記駆動部が帯状鋼板Mを下流側に向かって送り出し、一時停止させた時に可動基台372を下降させることで、電磁鋼板40の外周打ち抜き及び積層及び接着ならびに次工程のための接着剤塗布と、帯状鋼板Mで次に外周打ち抜きされる位置への前記3回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記3回目の打ち抜き加工を行う位置への前記2回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記2回目の打ち抜き加工を行う位置への前記1回目の打ち抜き加工と、が同時に行われる。
続いて、可動基台372を上昇させて帯状鋼板Mの上方に退避させた後、前記駆動部により帯状鋼板Mを再び下流側に所定距離だけ送り出し、そして再び一時停止させる。この状態で可動基台372を再び下降させ、各位置での加工を継続して行う。このように、前記駆動部により帯状鋼板Mを間欠的に送りながら、一時停止時に可動基台372を上下動させる工程を繰り返すことにより、ステータ用接着積層コア21が製造される。
【0169】
以上説明の構成を有する接着積層コア製造装置300を用いた接着積層コア製造方法について、
図16~
図20を用いて以下に説明する。
図16は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するためのフローチャートである。また、
図17は、同接着積層コア製造方法の第1形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のG-G断面図である。
図18は、同接着積層コア製造方法の第2形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のH-H断面図である。
図19は、同接着積層コア製造方法の第3形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のI-I断面図である。
図20は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
【0170】
図16に示すように、本実施形態の接着積層コア製造方法は、鋼板送り出し工程S21と、硬化促進剤塗布工程S22と、硬化促進剤乾燥工程S23と、加工油塗布工程S24と、1回目打ち抜き工程S25と、2回目打ち抜き工程S26と、3回目打ち抜き工程S27と、積層及び接着工程S28と、積層枚数確認工程S29と、取り出し工程S30とを有する。
【0171】
鋼板送り出し工程S21では、フープ材Fから下流側に向けて帯状鋼板Mを送り出す。
続く硬化促進剤塗布工程S22では、ノズル322から帯状鋼板Mの上面の全面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布する。この時点の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、共に液状である。
【0172】
ここで、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の塗布パターンとして、
図17~
図19に3パターンを例示する。
図17~
図19は、積層及び接着工程S28に対応する図であるが、硬化促進剤塗布工程S22で形成された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の塗布パターンは、硬化促進剤乾燥工程S23以降、固定されたままになる。よって、これら図面を用いて塗布パターンを説明する。
【0173】
例えば
図17の塗布パターンでは、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の上面に対してチェッカー状(格子状)をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が配置される。より具体的には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1からなる正方形あるいは円形の模様と、瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる正方形あるいは円形の模様とが、帯状鋼板Mの上面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って交互に配置されている。すなわち、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って互いに隣り合うように配置されている。
このように塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、続く硬化促進剤乾燥工程S23で乾燥されて一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。
【0174】
また、
図18の塗布パターンでは、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が予め混合した状態で、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の上面に配置されている。この混合は、前記硬化促進層形成部320において、前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2との両方を、前記第3配管により前記硬化促進剤混合部に取り込んで攪拌混合させることで得られる。このようにして得られた混合促進剤は、前記第4配管を介して前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方に供給される。その結果、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方より、前記混合促進剤が吐出される。そして、吐出された混合促進剤は、帯状鋼板Mの上面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って均等に配置される。
このように塗布された前記混合促進剤は、続く硬化促進剤乾燥工程S23で乾燥されて一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。
【0175】
あるいは、
図19の塗布パターンでは、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の上面に対して縞状(線状)をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が交互に配置される。より具体的には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1からなる線状の模様と、瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる線状の模様とが、帯状鋼板Mの上面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向に沿って交互に配置されている。すなわち、
図19(b)の紙面右方向を帯状鋼板Mの送り方向とした場合、この送り方向に直交する方向に平行をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2がそれぞれ直線状に形成されている。そして、これら嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、帯状鋼板Mの送り方向に沿って見た場合には交互に隣接して配置されている。
このように塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、続く硬化促進剤乾燥工程S3で乾燥されて一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。
なお、上記の塗布形態に代わり、
図19(b)の紙面下方向が帯状鋼板Mの送り方向となるように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、前記送り方向に平行をなす直線状に形成してもよい。
【0176】
図16に戻り、続く硬化促進剤乾燥工程S23では、ドライヤー323bからの空気を帯状鋼板Mの上下面に吹き付け、液状であった嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を乾燥させて硬化促進層aを形成する。この硬化促進層aは固体である。
続く加工油塗布工程S24では、上ローラー331aが前記プレス加工油供給部から供給されたプレス加工油bをその外周面に浸透させた状態で、鋼板Mの上面に対して接しながら転動する。その結果、帯状鋼板Mの上面にのみ、全面においてプレス加工油が塗布される。すなわち、プレス加工油bは、硬化促進層aの上面を覆うように塗布される。
この時、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の両方を、自然乾燥ではなく積極的に乾燥させる。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層aを形成しているので、その上面に塗布されるプレス加工油bと混ざり合って希釈されてしまうことが抑制されている。
一方、下ローラー331bは、下降して帯状鋼板Mの下面から離間しているため、帯状鋼板Mの下面にはプレス加工油bが塗布されず、絶縁被膜が露出したままになっている。
【0177】
続く1回目打ち抜き工程S25では、第1段打ち抜き部341により帯状鋼板Mの1回目の打ち抜きが行われる。この時、帯状鋼板Mの上面にはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型341a及び雌金型341b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
続く2回目打ち抜き工程S26では、第2段打ち抜き部342により帯状鋼板Mの2回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mの上面にはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型342a及び雌金型342b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
【0178】
続く3回目打ち抜き工程S27では、第3段打ち抜き部343により帯状鋼板Mの3回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mの上面にはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型343a及び雌金型343b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
以上の1回目打ち抜き工程S25~3回目打ち抜き工程S27により、外形部分を除き、
図1に示したコアバック部22及びティース部23が帯状鋼板Mに形成される。
【0179】
続く積層及び接着工程S28では、外周打ち抜き雄金型361によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層される。この時、前記他の電磁鋼板40の上面には、硬化促進層aと、この硬化促進層aの上面を覆うプレス加工油bと、このプレス加工油b上に塗布された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2とが配置されている。一方、その上に積層される電磁鋼板40の下面は、絶縁被膜が露出したままになっている。
なお、
図17(b)に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2をチェッカー状に配置した場合には、これらの相対位置に合わせて、嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2もチェッカー状に配置される。
そして、各電磁鋼板40が積層及び加圧された状態で加熱する。すると、先に外周打ち抜きをした電磁鋼板40の上面にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、後に外周打ち抜きをした電磁鋼板40の下面に塗布される。さらに、これら嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、その下にあるプレス加工油bを押し退けてさらにその下にある硬化促進層aと混ざり合う。その結果、嫌気性接着剤c1が硬化促進層a内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と混ざり合いながら硬化する。同様に、瞬間接着剤c2が硬化促進層a内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
【0180】
以上の工程を順次繰り返すことで所定枚数の電磁鋼板40を積層及び接着し、ステータ用接着積層コア21が完成する。
すなわち、積層枚数確認工程S29において電磁鋼板40の積層枚数が所定枚数に達したか否かが判断される。その結果、達していない場合(判定:NO)には、フローが鋼板送り出し工程S21に戻り、鋼板送り出し工程S21~積層及び接着工程S28が再び繰り返される。一方、積層枚数確認工程S29において所定枚数に達した場合(判定:YES)には、フローが取り出し工程S30へと進む。
続く取り出し工程S30では、完成したステータ用接着積層コア21を外周打ち抜き雌金型362内から取り出すことで、接着積層コア製造方法の全工程が終了する。
【0181】
以上説明の接着積層コア製造装置300を用いた接着積層コア製造方法の骨子を、以下に纏める。
本実施形態の接着積層コア製造方法は、片面(上面)側に嫌気性接着剤a1及び瞬間接着剤a2を塗布し、さらにその上にプレス加工油bを塗布した帯状鋼板Mにプレス加工を行い、複数枚の電磁鋼板40(鋼板部品)を得て、各電磁鋼板40を積層接着することによってステータ用接着積層コア21(接着積層コア)を製造する方法である。
そして、本実施形態では、プレス加工油bを塗布する前の帯状鋼板Mの上面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布して乾燥させた硬化促進層aと、この硬化促進層a上に塗布されたプレス加工油bと、このプレス加工油b上に塗布された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2とを配置する。
以上説明の接着積層コア製造装置300を用いた接着積層コア製造方法によれば、上記第1実施形態で説明したものと同じ作用効果を得ることが出来る。
【0182】
加えて、
図17に示したように、上記接着積層コア製造方法において、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と瞬間接着剤用硬化促進剤a2とをチェッカー状に配置してもよい。
または、
図18に示したように、上記接着積層コア製造方法において、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を予め混合させた状態で塗布して乾燥させることで、硬化促進層aを形成してもよい。
あるいは、
図19に示したように、上記接着積層コア製造方法において、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と瞬間接着剤用硬化促進剤a2とを縞状に配置して硬化促進層aを形成してもよい。
上記の何れの場合においても、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、帯状鋼板Mの塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0183】
上記接着積層コア製造方法は、より詳しく言うと以下の各工程を有する。
すなわち、各電磁鋼板40が、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第2鋼板部品)40及び後に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第1鋼板部品)40を含む。そして、この接着積層コア製造方法は、上面(第1面)と、この上面上に形成された硬化促進層aと、この硬化促進層a上に配置されたプレス加工油bと、プレス加工油b上に配置された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2とを有する、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第2鋼板部品)40を準備する第4の工程と;下面(第2面)を有し、後に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第1鋼板部品)40を準備する第5の工程と;前記上面及び前記下面が互いに対向するように、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第2鋼板部品)40と後に外周打ち抜きされた電磁鋼板(第1鋼板部品)40とを重ね合わせて接着する第6の工程と;を有する
この接着積層コア製造方法によれば、上記第1実施形態で説明したものと同じ作用効果を得ることが出来る。
【0184】
上記接着積層コア製造方法において、ステータ用接着積層コア(接着積層コア)21が、回転電機用の固定子であってもよい。
この接着積層コア製造方法によれば、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られるので、高い性能を持ちながらも製造コストが低い回転電機用の固定子を製造することが可能になる。
【0185】
本実施形態の接着積層コア製造装置300は、帯状鋼板Mから打ち抜かれた複数枚の電磁鋼板(鋼板部品)40を備えるステータ用接着積層コア(接着積層コア)21を製造する装置である。
そして、本実施形態の接着積層コア製造装置300は、帯状鋼板Mの上面(片面)側にプレス加工油bを塗布するプレス加工油塗布部330と;帯状鋼板Mにプレス加工を加えるプレス加工部340と;帯状鋼板Mの上面に嫌気性接着剤a1及び瞬間接着剤a2を塗布する接着剤塗布部350と;プレス加工油bを塗布する前の帯状鋼板Mの上面側に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布して乾燥させた硬化促進層aを形成する硬化促進層形成部320と;を備える。
上記接着積層コア製造装置300によれば、上記第1実施形態で説明したものと同じ作用効果を得ることが出来る。
【0186】
上記接着積層コア製造装置300において、硬化促進層形成部320が、
図17に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2をチェッカー状に塗布するノズル322を備えてもよい。
または、上記接着積層コア製造装置300において、硬化促進層形成部320が、
図18に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を予め混合させた状態で流す配管(硬化促進剤供給流路)と、この配管に通じるノズル322とを備えてもよい。
あるいは、上記接着積層コア製造装置300において、硬化促進層形成部320が、
図19に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を縞状に塗布するノズル322を備えてもよい。
上記の何れの場合においても、ノズル322により、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、帯状鋼板Mの塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0187】
なお、本実施形態では、
図16に示した加工油塗布工程S24で、帯状鋼板Mの上面のみにプレス加工油bを塗布する場合について説明したが、この形態のみに限らない。例えば
図20の変形例に示すように、帯状鋼板Mの上下面の両方にプレス加工油bを塗布する加工油塗布工程S24Aを採用してもよい。
【0188】
この加工油塗布工程S24Aでは、帯状鋼板Mの上下面の両方にプレス加工油bを塗布する。すなわち、上ローラー331a及び下ローラー331bの双方にプレス加工油bを浸透させてからこれらの間に帯状鋼板Mを挟み込んだまま、上ローラー331a及び下ローラー331bを転動させる。その結果、帯状鋼板Mの上面には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる硬化促進層aと、硬化促進層aの表面を覆うプレス加工油bと、プレス加工油bの表面に塗布された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2とが形成される。一方、帯状鋼板Mの下面には、プレス加工油bのみが形成される。
【0189】
そして、
図20の積層及び接着工程S28Aでは、外周打ち抜き雄金型361によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に外周打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層され、加圧しながら加熱される。その際、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の上面側にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、後に外周打ち抜きされた鋼板部品40の下面に対し、この下面に塗布されたプレス加工油bを押し退けて塗布される。同時に、先に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の上面にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、自らの下にあるプレス加工油bを押し退けてその下にある硬化促進層aと混ざり合う。その結果、嫌気性接着剤c1が硬化促進層a内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と混ざり合いながら硬化する。同様に、瞬間接着剤c2が硬化促進層a内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
なお、その他工程は
図16で説明した各工程と同じであるので、同じ符号を用いて重複説明を省略する。
【0190】
[第4実施形態]
図21~
図26を用いて本発明の第4実施形態を以下に説明する。
先ず、
図21に示す側面図を用いて、本実施形態に係る接着積層コア製造装置400を説明する。
図21に示すように、接着積層コア製造装置400は、帯状鋼板供給部410と、硬化促進層形成部420と、駆動部(不図示)と、プレス加工油塗布部430と、プレス加工部440と、接着剤塗布部450と、積層接着部460とを備える。
【0191】
帯状鋼板供給部410には、電磁鋼板(鋼板部品)40の素材となる帯状鋼板Mを巻回したフープ材Fが軸支されており、
図21の紙面右側に向かって帯状鋼板Mを送り出す。以下の説明において、帯状鋼板Mの送り方向である紙面右側を下流側、その逆方向である紙面左側を上流側という場合がある。この帯状鋼板供給部410より下流側に向けて送られる帯状鋼板Mは、上述した化学組成を有する鋼板であり、その両面が上述した絶縁被膜で被覆されている。
【0192】
硬化促進層形成部420は、硬化促進剤タンク421と、ノズル422と、シールボックス423と、拭き取りローラー424とを有する。
硬化促進剤タンク421は、溶剤に溶かした嫌気性接着剤用硬化促進剤を貯留する第1貯留部と、溶剤に溶かした瞬間接着剤用硬化促進剤を貯留する第2貯留部と、硬化促進剤混合部とを有する(不図示)。前記第1貯留部と前記第2貯留部との間は、嫌気性接着剤用硬化促進剤と瞬間接着剤用硬化促進剤とが混じり合わないように区画されている。
嫌気性接着剤用硬化促進剤は、嫌気性接着剤と混ざり合うことで嫌気性接着剤の瞬時硬化を促すものであり、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。同様に、瞬間接着剤用硬化促進剤は、瞬間接着剤用硬化促進剤(2-シアノアクリレート系接着剤)と混ざり合うことで瞬間接着剤の瞬時硬化を促すものであり、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。また、溶剤種も、上記第1実施形態で例示したものを使用できる。
【0193】
ノズル422は、嫌気性接着剤用硬化促進剤を塗布するための複数の第1ノズル孔と、瞬間接着剤用硬化促進剤を塗布するための複数の第2ノズル孔とを有する(不図示)。
前記各第1ノズル孔は、第1配管を介して硬化促進剤タンク421の前記第1貯留部に対して直接的に接続されている。
前記各第2ノズル孔は、第2配管を介して硬化促進剤タンク421の前記第2貯留部に対して直接的に接続されている。
さらに、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方は、第3配管を介して前記硬化促進剤混合部にも接続されている。前記硬化促進剤混合部は、第4配管を介して前記第1貯留部及び前記第2貯留部の双方に接続されている。前記硬化促進剤混合部は、前記第1貯留部からの嫌気性接着剤用硬化促進剤と、前記第2貯留部からの瞬間接着剤用硬化促進剤とを取り込んで攪拌混合することができる。
【0194】
前記第1配管、前記第2配管、そして前記第4配管は、切り替えバルブ(不図示)に接続されている。この切り替えバルブを操作することにより、下記(1)または下記(2)に、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の流れを切り換えることができる。
(1)前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤を前記第1配管により前記第1ノズル孔に流すと同時に、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤を前記第2配管により前記第2ノズル孔に流す。その結果、前記各第1ノズル孔からは嫌気性接着剤用硬化促進剤が吐出され、前記各第2ノズル孔からは瞬間接着剤用硬化促進剤が吐出される。
(2)前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤と、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤との両方を、前記第4配管により前記硬化促進剤混合部に取り込んで攪拌混合させる。このようにして嫌気性接着剤用硬化促進剤と瞬間接着剤用硬化促進剤とを混合した混合促進剤を、前記第3配管を介して前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方に流す。その結果、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方より、前記混合促進剤が吐出される。
【0195】
前記各第1ノズル孔は、それらの吐出口が帯状鋼板Mの下面に向いており、嫌気性接着剤用硬化促進剤あるいは前記混合促進剤を、前記下面に対して点状あるいは線状に塗布することができる。
前記各第2ノズル孔も、それらの吐出口が帯状鋼板Mの下面に向いており、瞬間接着剤用硬化促進剤あるいは前記混合促進剤を、前記下面に対して点状あるいは線状に塗布することができる。
ノズル422において、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔は、交互に並ぶように配置されており、それぞれから吐出された硬化促進剤が帯状鋼板Mの塗布面において過度に混じり合わないようにピッチが定められている。嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を、
図23を用いて後述するようなチェッカー状に塗布する場合は、これらの塗布位置と、後工程における嫌気性接着剤及び瞬間接着剤の塗布位置とが相対的に一致するように、前記ピッチを、後述するノズル453の各ノズル孔のピッチと同じにすることが好ましい。
【0196】
前記切り替えバルブによって上記(1)及び上記(2)の何れか一方に切り換えることにより、帯状鋼板Mの塗布面へ塗布される嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の塗布形態が、未混合状態で塗布する場合と、混合状態で塗布する場合とに分かれる。以降の説明においては、嫌気性接着剤用硬化促進剤、瞬間接着剤用硬化促進剤、混合促進剤、の3つを包含して単に「硬化促進剤」と呼ぶ場合がある。一方、これらの区別が必要である場合には、嫌気性接着剤用硬化促進剤、瞬間接着剤用硬化促進剤、混合促進剤の3つに分けて説明する。
【0197】
シールボックス423は、内部空間を有する箱であり、この内部空間に通じる入口及び出口を有する。帯状鋼板Mは、その水平状態を保ったまま、前記入口よりシールボックス423の内部空間に送り込まれた後、前記出口からシールボックス423の外へと送り出される。このシールボックス423の内部空間の下方には、前記ノズル422が配置されている。そして上述の通り、帯状鋼板Mのうち、前記内部空間を挿通する部分の下面にノズル422のノズル口が向けられている。ノズル422より帯状鋼板Mの下面に噴霧された硬化促進剤は、溶剤が揮発するため、瞬時に乾燥する。これにより、帯状鋼板Mが前記出口から出る前に、帯状鋼板Mの下面には、溶剤が乾燥した硬化促進層が均等厚かつ全面にわたって形成されている。硬化促進層の厚みとしては、0.1μmを例示できる。なお、帯状鋼板Mの上面は、硬化促進剤が殆ど塗布されていないため、ほぼ、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
拭き取りローラー424は、主に帯状鋼板Mの上面に残った硬化促進剤を余剰として拭き取る。これにより、拭き取りローラー424を経た後の帯状鋼板Mの上面は、硬化促進剤が完全に拭き取られて絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
なお、硬化促進層は、前記切り替えバルブの操作により、複数のパターンを選ぶことができる。このパターンについては、
図23~
図25を用いて後述する。
【0198】
前記駆動部は、硬化促進層形成部420とプレス加工油塗布部430との間の位置DRに配置されている。前記駆動部は、帯状鋼板Mを、硬化促進層形成部420からプレス加工油塗布部430に向かう紙面右方向に向けて間欠的に送り出す。なお、硬化促進層形成部420から送り出された帯状鋼板Mの下面には、前記駆動部に入る前に、硬化促進剤が乾燥した硬化促進層が既に形成されている。一方、前記駆動部に入る前における帯状鋼板Mの上面は、硬化促進層がなく、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
【0199】
プレス加工油塗布部430は、塗布ローラー431とオイルパン432とを備える。
オイルパン432は、帯状鋼板Mの下方でかつ塗布ローラー431の真下の位置に配置されている。塗布ローラー431は、上ローラー431a及び下ローラー431bを有する。
上ローラー431aは、帯状鋼板Mの真上に配置され、上下動することにより、帯状鋼板Mの上面に対して接した状態と離間した状態との間で切り換え可能である。上ローラー431aは、図示されないプレス加工油供給部から供給されたプレス加工油をその外周面に浸透させた状態で鋼板Mの上面に対して接しながら転動することで、帯状鋼板Mの上面にプレス加工油を塗布可能である。
下ローラー431bは、帯状鋼板Mの真下に配置され、上下動することにより、帯状鋼板Mの下面に対して接した状態と離間した状態との間で切り換え可能である。下ローラー431bは、前記プレス加工油供給部から供給されたプレス加工油をその外周面に浸透させた状態で鋼板Mの下面に対して接しながら転動することで、帯状鋼板Mの下面にプレス加工油を塗布可能である。
オイルパン432は、上ローラー431a及び下ローラー431bから垂れてきた余剰のプレス加工油を受け止めて回収し、そしてこれを前記プレス加工油供給部に戻す。
【0200】
上記プレス加工油塗布部430によれば、上ローラー431aを帯状鋼板Mの上面に当接させた状態で前記プレス加工油供給部からプレス加工油を供給することにより、帯状鋼板Mの上面にプレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
同様に、下ローラー431bを帯状鋼板Mの下面に当接させた状態で前記プレス加工油供給部からプレス加工油を供給することにより、帯状鋼板Mの下面にプレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
【0201】
あるいは、上ローラー431a及び下ローラー431b間に帯状鋼板Mを挟み込むことにより、帯状鋼板Mの上下面の両方に、プレス加工油の層を全面にわたって形成させつつ、連続的あるいは間欠的に帯状鋼板Mを下流側に送り出すことができる。
このように、上ローラー431a及び下ローラー431bの各位置を必要に応じてそれぞれ上下動させることにより、プレス加工油の塗布を、帯状鋼板Mの上面のみに行う場合、帯状鋼板Mの下面のみに行う場合、帯状鋼板Mの上下面の両方に行う場合、の3通りから選択することができる。
【0202】
ここで、上記の何れの場合においても、プレス加工油が塗布される前の時点で、帯状鋼板Mの下面に塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の両方を、自然乾燥ではなく積極的に乾燥させている。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層を形成しているので、プレス加工油と混ざり合って希釈されてしまうことが抑制される。したがって、プレス加工油塗布後の帯状鋼板Mの下面における嫌気性接着剤用硬化促進剤の濃度及び瞬間接着剤用硬化促進剤の濃度は、共に、プレス加工油bの塗布前後で変わることなく維持されている。よって、プレス加工油塗布部430を経た後の帯状鋼板Mは、その下面における硬化促進剤の濃度を維持したまま、プレス加工部440へと送られる。
【0203】
プレス加工部440は、第1段打ち抜き部441と第2段打ち抜き部442とを備える。
第1段打ち抜き部441は、プレス加工油塗布部430の下流側に配置され、雄金型441a及び雌金型441bを有する。雄金型441a及び雌金型441bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型441aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型441bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型441aを下方に向けて移動させて雌金型441b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な1回目の打ち抜き加工を行う。この時、帯状鋼板Mにはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型441aを上方に移動させて雌金型441bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0204】
第2段打ち抜き部442は、第1段打ち抜き部441の下流側に配置され、雄金型442a及び雌金型442bを有する。雄金型442a及び雌金型442bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、1回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型442aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型442bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型442aを下方に向けて移動させて雌金型442b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な2回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mにはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型442aを上方に移動させて雌金型442bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0205】
接着剤塗布部450は、プレス加工部440の下流側に配置されている。接着剤塗布部450は、空気圧送機451と、シリンジ452と、ノズル453と、鋼板抑え454とを備える。
シリンジ452は、嫌気性接着剤を貯留する空間と、瞬間接着剤を貯留する空間とを有する容器である(不図示)。嫌気性接着剤を貯留する空間と、瞬間接着剤を貯留する空間との間は、嫌気性接着剤と瞬間接着剤が混じり合わないように区画されている。ここで、嫌気性接着剤としては東亞合成株式会社製「アロンタイト」(商標登録)を、瞬間接着剤(2-シアノアクリレート系接着剤)としては東亞合成株式会社製「アロンアルフア」(商標登録)を例示できる。シリンジ452と空気圧送機451との間は、空気圧送機451からの空気をシリンジ452へ送る配管により接続されている。また、シリンジ452とノズル453との間は、シリンジ452からノズル453へと、嫌気性接着剤を供給する第5配管と、瞬間接着剤を供給する第6配管と、を介して接続されている。
【0206】
ノズル453は、吐出口が上方を向いた複数本のニードル(不図示)を備える。これらニードルは、帯状鋼板Mの下方に配置されている。よって、前記各ニードルの吐出口は、帯状鋼板Mの下面に対向している。前記各ニードルは、嫌気性接着剤を塗布するための複数の第1ニードルと、瞬間接着剤を塗布するための複数の第2ニードルとを有する(不図示)。これら第1ニードル及び第2ニードルは、それぞれの吐出口が、ノズル453を平面視したときに交互かつ均等に配置されている。
【0207】
ここで、後述する
図23に示すように嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤をチェッカー状に配置する場合には、前記各第1ニードルの吐出口の位置を、帯状鋼板Mの下面に塗布及び乾燥された各嫌気性接着剤用硬化促進剤の位置と一致させることが好ましい。同様に、前記各第2ニードルの吐出口の位置も、帯状鋼板Mの下面に塗布及び乾燥された各瞬間接着剤用硬化促進剤と一致させることが好ましい。この場合、プレス加工部440を経てノズル453の上方で帯状鋼板Mの送りを一旦停止させた際、帯状鋼板Mの下面にある各嫌気性接着剤用硬化促進剤と前記各第1ニードルの吐出口との相対位置が一致し、なおかつ、各瞬間接着剤用硬化促進剤と前記各第2ニードルの吐出口との相対位置が一致する。これにより、各接着剤を、各硬化促進剤に対して正しい組み合わせで塗布できる。
【0208】
前記各第1ニードルは、前記第5配管を介して、前記嫌気性接着剤を貯留する空間に直接的に接続されている。一方、前記各第2ニードルは、前記第6配管を介して、前記瞬間接着剤を貯留する空間に直接的に接続されている。
そして、前記各第1ニードル及び前記各第2ニードルは、帯状鋼板Mの下面に対してチェッカー状(格子状)をなすように、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を塗布できる。これにより、嫌気性接着剤からなる正方形あるいは円形の模様と、瞬間接着剤からなる正方形あるいは円形の模様とが、帯状鋼板Mの下面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って交互に配置される。すなわち、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤は、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って互いに隣り合うように配置できる。
【0209】
鋼板抑え454は、ノズル453の上方(前記各第1ニードル及び前記各第2ニードルの直上)に配置されている。よって、鋼板抑え454は、帯状鋼板Mの上面に対向している。鋼板抑え454は、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、下方に向かって押し下げられる。これにより、鋼板抑え454の下面が帯状鋼板Mの上面に当接して帯状鋼板Mを下方に押し下げる。これにより、帯状鋼板Mの高さ位置を、ノズル453による接着剤塗布位置まで押し下げて位置決めできる。この位置決め状態では、帯状鋼板Mの下面が前記各第1ニードル及び前記各第2ニードルの吐出口に近接する。
【0210】
さらに、この位置決め状態において、前記空気圧送機451よりシリンジ452に空気が圧送されると、この空気が、前記嫌気性接着剤を貯留する空間と、前記瞬間接着剤を貯留する空間との両方に対して均等に供給される。すると、嫌気性接着剤が前記第5配管を介して前記各第1ニードルに供給され、瞬間接着剤が前記第6配管を介して前記各第2ニードルに供給される。そして、前記各第1ニードルの吐出口から嫌気性接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの下面に塗布される。同様に、前記各第2ニードルの吐出口から瞬間接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの下面に塗布される。その後、前記油圧機構により鋼板抑え454を上昇させることで、帯状鋼板Mの高さ位置を元の高さに復帰させる。
【0211】
積層接着部460は、接着剤塗布部450の下流側に配置されている。積層接着部460は、外周打ち抜き雄金型461と、外周打ち抜き雌金型462と、スプリング463と、加熱器464と、を備える。
外周打ち抜き雄金型461は、円形の底面を有する円柱形状の金型であり、その上端にはスプリング463の下端が接続されている。そして、外周打ち抜き雄金型461は、スプリング463で支持された状態で、スプリング463と共に上下動可能とされている。外周打ち抜き雄金型461は、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ外径寸法を有している。
【0212】
外周打ち抜き雌金型462は、円柱形状の内部空間を有する金型であり、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ内径寸法を有している。
加熱器464は、外周打ち抜き雌金型462に、一体に組み込まれている。加熱器464は、外周打ち抜き雌金型462内に積層された各電磁鋼板(鋼板部品)40をその周囲より加熱する。前記接着剤として加熱硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱器464からの熱を受けて硬化する。一方、接着剤として常温硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱を要することなく室温にて硬化する。
【0213】
上記積層接着部460によれば、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、外周打ち抜き雄金型461を降下させて帯状鋼板Mを外周打ち抜き雌金型462との間に挟み込み、さらに外周打ち抜き雄金型461を外周打ち抜き雌金型462内に押し込むことで、帯状鋼板Mから外周打ち抜きされた電磁鋼板40が得られる。
この打ち抜かれた電磁鋼板40は、先に打ち抜かれて外周打ち抜き雌金型462内に積層及び接着された他の電磁鋼板40の上面に積層され、さらに外周打ち抜き雄金型461からの加圧力と、加熱器464からの加熱とを受ける。この時、外周打ち抜き雄金型461から電磁鋼板40に加えられる加圧力は、前記スプリング463の付勢力によって常に一定に維持される。
以上により、今回打ち抜いた電磁鋼板40が、前回に打ち抜かれた電磁鋼板40の上面に対して接着固定される。このような外周打ち抜き、加圧、そして加熱の各工程を各電磁鋼板40の積層枚数分の回数、繰り返すことで、外周打ち抜き雌金型462内にステータ用接着積層コア21が形成される。
【0214】
図21に示すように、前記雌金型441b、前記雌金型442b、前記ノズル453、前記外周打ち抜き雌金型462、及び前記加熱器464は、共通の固定基台471上に固定されている。したがって、これら雌金型441b、雌金型442b、前記ノズル453、外周打ち抜き雌金型462、及び加熱器464は、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
同様に、前記雄金型441a、前記雄金型442a、前記鋼板抑え454、及び前記外周打ち抜き雄金型461も、共通の可動基台472の下面に固定されている。したがって、これら雄金型441a、雄金型442a、鋼板抑え454、及び外周打ち抜き雄金型461は、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
【0215】
前記駆動部が帯状鋼板Mを下流側に向かって送り出し、一時停止させた時に可動基台472を下降させることで、電磁鋼板40の外周打ち抜き及び積層及び接着と、帯状鋼板Mで次に外周打ち抜きされる電磁鋼板40の位置への嫌気性接着剤及び瞬間接着剤の塗布と、帯状鋼板Mで次に嫌気性接着剤及び瞬間接着剤が塗布される位置への前記2回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記2回目の打ち抜き加工を行う位置への前記1回目の打ち抜き加工と、が同時に行われる。
続いて、可動基台472を上昇させて帯状鋼板Mの上方に退避させた後、前記駆動部により帯状鋼板Mを再び下流側に所定距離だけ送り出し、そして再び一時停止させる。この状態で可動基台472を再び下降させ、各位置での加工を継続して行う。このように、前記駆動部により帯状鋼板Mを間欠的に送りながら、一時停止時に可動基台472を上下動させる工程を繰り返すことにより、ステータ用接着積層コア21が製造される。
【0216】
以上説明の構成を有する接着積層コア製造装置400を用いた接着積層コア製造方法について、
図22~
図26を用いて以下に説明する。
図22は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するためのフローチャートである。また、
図23は、同接着積層コア製造方法の第1形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のJ-J断面図である。
図24は、同接着積層コア製造方法の第2形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のK-K断面図である。
図25は、同接着積層コア製造方法の第3形態を説明する図であって、(a)が積層及び接着工程を示す部分縦断面図であり、(b)が(a)のL-L断面図である。
図26は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
【0217】
図22に示すように、本実施形態の接着積層コア製造方法は、鋼板送り出し工程S31と、硬化促進剤塗布乾燥工程S32と、余剰分拭き取り工程S33と、加工油塗布工程S34と、1回目打ち抜き工程S35と、2回目打ち抜き工程S36と、接着剤塗布工程S37と、積層及び接着工程S38と、積層枚数確認工程S39と、取り出し工程S40と、を有する。
【0218】
鋼板送り出し工程S31では、フープ材Fから下流側に向けて帯状鋼板Mを送り出す。
続く硬化促進剤塗布乾燥工程S32では、ノズル422から帯状鋼板Mの下面の全面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布して乾燥させる。この時点の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、共に乾燥して固体となる。
【0219】
ここで、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の塗布パターンとして、
図23~
図25に3パターンを例示する。
図23~
図25は、積層及び接着工程S38に対応する図であるが、硬化促進剤塗布乾燥工程S32で形成された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の塗布パターンは、硬化促進剤塗布乾燥工程S32以降、固定されたままになる。よって、これら図面を用いて塗布パターンを説明する。
【0220】
例えば
図23の塗布パターンでは、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の下面に対してチェッカー状(格子状)をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が配置される。より具体的には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1からなる正方形あるいは円形の模様と、瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる正方形あるいは円形の模様とが、帯状鋼板Mの下面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って交互に配置されている。すなわち、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って互いに隣り合うように配置されている。
このように塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、シールボックス423を出る前に乾燥され、一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。この硬化促進層aは固体である。
【0221】
また、
図24の塗布パターンでは、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が予め混合した状態で、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の下面に配置されている。この混合は、前記硬化促進層形成部420において、前記第1貯留部内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と、前記第2貯留部内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2との両方を、前記第3配管により前記硬化促進剤混合部に取り込んで攪拌混合させることで得られる。このようにして得られた混合促進剤は、前記第4配管を介して前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方に供給される。その結果、前記各第1ノズル孔及び前記各第2ノズル孔の双方より、前記混合促進剤が吐出される。そして、吐出された混合促進剤は、帯状鋼板Mの下面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向及び帯状鋼板Mの幅方向の双方に沿って均等に配置される。
このように塗布された前記混合促進剤は、シールボックス223を出る前に乾燥され、一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。この硬化促進層aは固体である。
【0222】
あるいは、
図25の塗布パターンでは、帯状鋼板M(電磁鋼板40)の下面に対して縞状(線状)をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2が交互に配置される。より具体的には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1からなる線状の模様と、瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる線状の模様とが、帯状鋼板Mの下面に形成された絶縁皮膜上に、帯状鋼板Mの長手方向に沿って交互に配置されている。すなわち、
図25(b)の紙面右方向を帯状鋼板Mの送り方向とした場合、この送り方向に直交する方向に平行をなすように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2がそれぞれ直線状に形成されている。そして、これら嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、帯状鋼板Mの送り方向に沿って見た場合には交互に隣接して配置されている。
このように塗布された嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2は、シールボックス423を出る前に乾燥され、一定の膜厚を有する硬化促進層aを形成する。この硬化促進層aは固体である。
なお、上記の塗布形態に代わり、
図25(b)の紙面下方向が帯状鋼板Mの送り方向となるように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、前記送り方向に平行をなす直線状に形成してもよい。
【0223】
図22に戻り、続く余剰分拭き取り工程S33では、帯状鋼板Mの上面における余剰の硬化促進剤が拭き取られる。よって、帯状鋼板Mの上面には硬化促進層aが形成されていない。
続く加工油塗布工程S34では、下ローラー131bが前記プレス加工油供給部から供給されたプレス加工油bをその外周面に浸透させた状態で、鋼板Mの下面に対して接しながら転動する。その結果、帯状鋼板Mの下面にのみ、全面においてプレス加工油bが塗布される。すなわち、プレス加工油bは、硬化促進層aの表面を覆うように塗布される。
この時、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2の両方を、自然乾燥ではなく積極的に乾燥させる。このように、予め積極的に乾燥させて硬化促進層aを形成しているので、その表面に塗布されるプレス加工油bと混ざり合って希釈されてしまうことが抑制されている。
一方、上ローラー131aは、上昇して帯状鋼板Mの上面から離間しているため、帯状鋼板Mの上面にはプレス加工油bが塗布されず、絶縁被膜が露出したままになっている。
【0224】
続く1回目打ち抜き工程S35では、第1段打ち抜き部441により帯状鋼板Mの1回目の打ち抜きが行われる。この時、帯状鋼板Mの下面にはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型441a及び雌金型441b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
続く2回目打ち抜き工程S36では、第2段打ち抜き部442により帯状鋼板Mの2回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mの下面にはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型442a及び雌金型442b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
以上の1回目打ち抜き工程S35及び2回目打ち抜き工程S36により、外形部分を除き、
図1に示したコアバック部22及びティース部23が帯状鋼板Mに形成される。
【0225】
続く接着剤塗布工程S37では、
図23~
図25に示すように、ノズル453から吐出された嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、帯状鋼板Mの下面に直接塗布される。この時、嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、所定の厚み寸法と所定の径寸法を持つ点状に塗布される。ここで、嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、まだ硬化促進層aと混ざっていないため、液状をなしている。
なお、
図23(b)に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2をチェッカー状に配置した場合には、これらの相対位置に合わせて、嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2もチェッカー状に配置される。
【0226】
続く積層及び接着工程S38では、
図23~
図25に示すように、外周打ち抜き雄金型461によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層される。この時、前記他の電磁鋼板40の上面は、絶縁被膜が露出した状態になっている。この上に今回外周打ち抜きをした電磁鋼板40を積層して加圧しながら加熱する。すると、今回外周打ち抜きをした電磁鋼板40の下面側にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、先に外周打ち抜きをした前記他の電磁鋼板40の上面に塗布される。同時に、今回外周打ち抜きをした電磁鋼板40の下面側にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、その上にあるプレス加工油bを押し退けて、さらにその上にある硬化促進層aと混ざり合う。その結果、嫌気性接着剤c1が硬化促進層a内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と混ざり合いながら硬化する。同様に、瞬間接着剤c2が硬化促進層a内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
【0227】
以上の工程を順次繰り返すことで所定枚数の電磁鋼板40を積層及び接着し、ステータ用接着積層コア21が完成する。
すなわち、積層枚数確認工程S39において電磁鋼板40の積層枚数が所定枚数に達したか否かが判断される。その結果、達していない場合(判定:NO)には、フローが鋼板送り出し工程S31に戻り、鋼板送り出し工程S31~積層及び接着工程S38が再び繰り返される。一方、積層枚数確認工程S39において所定枚数に達した場合(判定:YES)には、フローが取り出し工程S40へと進む。
続く取り出し工程S40では、完成したステータ用接着積層コア21を外周打ち抜き雌金型462内から取り出すことで、接着積層コア製造方法の全工程が終了する。
【0228】
以上説明の接着積層コア製造装置400を用いた接着積層コア製造方法の骨子を、以下に纏める。
本実施形態の接着積層コア製造方法は、片面(下面)側に嫌気性接着剤a1及び瞬間接着剤a2を塗布し、さらにその上にプレス加工油bを塗布した帯状鋼板Mにプレス加工を行い、複数枚の電磁鋼板40(鋼板部品)を得て、各電磁鋼板40を積層接着することによってステータ用接着積層コア21(接着積層コア)を製造する方法である。
そして、本実施形態では、プレス加工油bを塗布する前の帯状鋼板Mの下面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布して乾燥させた硬化促進層aを形成する。
この接着積層コア製造方法によれば、上記第1実施形態で説明したものと同じ作用効果を得ることが出来る。
【0229】
上記接着積層コア製造方法において、ステータ用接着積層コア(接着積層コア)21が、回転電機用の固定子であってもよい。
この接着積層コア製造方法によれば、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られるので、高い性能を持ちながらも製造コストが低い回転電機用の固定子を製造することが可能になる。
【0230】
本実施形態の接着積層コア製造装置400は、帯状鋼板Mから打ち抜かれた複数枚の電磁鋼板(鋼板部品)40を備えるステータ用接着積層コア(接着積層コア)21を製造する装置である。
そして、本実施形態の接着積層コア製造装置400は、帯状鋼板Mの下面(片面)側にプレス加工油bを塗布するプレス加工油塗布部430と;帯状鋼板Mにプレス加工を加えるプレス加工部440と;帯状鋼板Mの下面側に嫌気性接着剤a1及び瞬間接着剤a2を塗布する接着剤塗布部450と;プレス加工油bを塗布する前の帯状鋼板Mの下面側に、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を塗布して乾燥させた硬化促進層aを形成する硬化促進層形成部420と;を備える。
上記接着積層コア製造装置400によれば、上記第1実施形態で説明したものと同じ作用効果を得ることが出来る。
【0231】
上記接着積層コア製造装置400において、硬化促進層形成部420が、
図23に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2をチェッカー状に塗布するノズル422を備えてもよい。
または、上記接着積層コア製造装置400において、硬化促進層形成部420が、
図24に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を予め混合させた状態で流す配管(硬化促進剤供給流路)と、この配管に通じるノズル422とを備えてもよい。
あるいは、上記接着積層コア製造装置400において、硬化促進層形成部420が、
図25に示したように、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を縞状に塗布するノズル422を備えてもよい。
上記の何れの場合においても、ノズル422により、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2を、帯状鋼板Mの塗布面に沿って均等に配置できる。そのため、塗布面に沿った接着力を均等にすることができる。
【0232】
なお、本実施形態では、
図22に示した加工油塗布工程S34で、帯状鋼板Mの下面のみにプレス加工油bを塗布する場合について説明したが、この形態のみに限らない。例えば
図26の変形例に示すように、帯状鋼板Mの上下面の両方にプレス加工油bを塗布する加工油塗布工程S34Aを採用してもよい。
【0233】
この加工油塗布工程S34Aでは、帯状鋼板Mの上下面の両方にプレス加工油bを塗布する。すなわち、上ローラー431a及び下ローラー431bの双方にプレス加工油bを浸透させてからこれらの間に帯状鋼板Mを挟み込んだまま、上ローラー431a及び下ローラー431bを転動させる。その結果、帯状鋼板Mの上面には、プレス加工油bのみが形成される。一方、帯状鋼板Mの下面には、嫌気性接着剤用硬化促進剤a1及び瞬間接着剤用硬化促進剤a2からなる硬化促進層aと、硬化促進層aの表面を覆うプレス加工油bとが形成される。
【0234】
そして、
図26の積層及び接着工程S38Aでは、外周打ち抜き雄金型461によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に外周打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層され、加圧しながら加熱される。その際、後に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の下面側にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2が、先に外周打ち抜きされた鋼板部品40の上面に対し、この上面に塗布されたプレス加工油bを押し退けて塗布される。同時に、後に外周打ち抜きされた電磁鋼板40の下面側にある嫌気性接着剤c1及び瞬間接着剤c2は、自らの上にあるプレス加工油bを押し退けて、さらにその上にある硬化促進層aと混ざり合う。その結果、嫌気性接着剤c1が硬化促進層a内の嫌気性接着剤用硬化促進剤a1と混ざり合いながら硬化する。同様に、瞬間接着剤c2が硬化促進層a内の瞬間接着剤用硬化促進剤a2と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
なお、その他工程は
図22で説明した各工程と同じであるので、同じ符号を用いて重複説明を省略する。
【0235】
[第5実施形態]
図27を用いて本発明の第5実施形態を以下に説明する。
図27は、本実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
本実施形態は、上記第1実施形態について一点だけ変えた変形例に相当するものであるので、以下の説明では、上記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を用いてそれらの詳細説明を省略する。
【0236】
本実施形態の接着積層コア製造装置500は、前記硬化促進層形成部120を有する第1ステージAと、第1ステージAから移された帯状鋼板Mをプレス加工油塗布部130に向けて送り出す搬送部を有する第2ステージBとを備える。第2ステージBには、帯状鋼板Mの送り方向に沿って、前記搬送部と、プレス加工油塗布部130と、プレス加工部140及び接着剤塗布部150とが、この順に並んで配置されている。
【0237】
第1ステージAは、フープ材Fを送り出す搬送部と、硬化促進層形成部120と、硬化促進層aを形成した後の帯状鋼板Mを巻き取ってフープ材F1とする巻き取り部とを有する。第1ステージAで製造された中間材であるフープ材F1は、ステージAの巻き取り部から取り外され、他の場所に移動される。これを複数回行うことで、複数のフープ材F1を作り置きすることができる。
第2ステージBは、作り置きされたフープ材F1を受け入れてプレス加工油塗布部130に向けて送り出す他の搬送部及び前記駆動部(不図示)と、プレス加工油塗布部130と、プレス加工部140と、接着剤塗布部150と、積層接着部160とを備える。前記他の搬送部から送り出される帯状鋼板Mは、前記駆動部によりプレス加工油塗布部130に向けて送り出される。
以上説明の接着積層コア製造装置500を用いた接着積層コア製造方法においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
また、上記第1実施形態以外の上記第2実施形態~上記第4実施形態においても、この第5実施形態と同様に、第1ステージA及び第2ステージBに分けた構成としてもよい。
【0238】
以上、本発明の各実施形態について説明した。ただし、本発明の技術的範囲は上記各実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、ステータ用接着積層コア21の形状は、各実施形態で示した形態のみに限定されるものではない。具体的には、ステータ用接着積層コア21の外径および内径の寸法、積厚、スロット数、ティース部23の周方向と径方向の寸法比率、ティース部23とコアバック部22との径方向の寸法比率等は、所望の回転電機の特性に応じて任意に設計可能である。
また、ロータ30では、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成しているが、本発明の製造対象はこの形態のみに限られない。例えば、1つの永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよく、3つ以上の永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよい。
【0239】
また、回転電機10として、永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明したが、回転電機10の構造は、以下に例示するようにこれのみに限られず、更には以下に例示しない種々の公知の構造も採用可能である。
また、回転電機10として、永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれのみに限られない。例えば、回転電機10がリラクタンス型電動機や電磁石界磁型電動機(巻線界磁型電動機)であってもよい。
また、交流電動機として、同期電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が誘導電動機であってもよい。
また、回転電機10として、交流電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が直流電動機であってもよい。
また、回転電機10として、電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が発電機であってもよい。
【0240】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。例えば、上記第1実施形態~第5実施形態では、硬化促進層aを片面(上面または下面)のみに形成したが、必要に応じて両面(上下面)に形成してもよい。
【実施例】
【0241】
まず、以下の表1に示す硬化促進剤成分である化合物を準備した。すなわち、嫌気性接着剤の硬化促進作用を持つ化合物と、瞬間接着剤の硬化促進作用を持つ化合物とを準備した。
そして、これら化合物をそれぞれ含有する硬化促進剤溶液を調製した。具体的には、発明例1~5及び比較例1~4のそれぞれについて、表1に示す含有量の硬化促進剤溶液を調整した。なお、比較例2では、硬化促進剤溶液を用いないケースであるため、全ての化合物の含有量がゼロになっている。
【0242】
【0243】
一方、平均質量%で、Si:3.1%、Al:0.6%、Mn:0.1%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、平均板厚が0.30mmであり、L方向及びC方向の平均表面粗度がRa(中心線平均粗さ)でそれぞれ0.28μmである無方向性電磁鋼板を複数枚、用意した。そして、比較例5を除き、これら無方向性電磁鋼板それぞれの表面に、上記した硬化促進剤溶液を、塗布量が0.5μg/m2から5.0μg/m2になるように、予め、塗布装置で塗布した。
そして、塗布した硬化促進剤溶液を50℃の温風で乾燥させることにより硬化促進剤塗布部を形成し乾燥後の硬化促進剤塗布部の上面を覆うようにプレス加工油を全面に塗布している。
【0244】
一方、比較例1に関しては、塗布した硬化促進剤溶液を乾燥させず、硬化促進剤溶液を塗布した液体状態のままとし、硬化促進剤溶液が自然乾燥しないうちに、その上面を覆うようにプレス加工油を全面に塗布している。
また、比較例5に関しては、無方向性電磁鋼板の表面の全面に、先にプレス加工油を塗布し、その後に、プレス加工油の上に塗布量が0.5μg/m2から5.0μg/m2で重なるように、硬化促進剤溶液を塗布装置で塗布した。すなわち、比較例5では、発明例1と同じ硬化促進剤溶液を用いたものの、硬化促進剤溶液がプレス加工油の上面に浮いている状態とした。そして、この硬化促進剤溶液が自然乾燥する前に、後述する初期接着強度及び最終接着強度の評価に用いた。
【0245】
なお、表1に示す硬化促進剤化合物は、予め、各種溶液に、化合物を溶解したり、微粒子化して添加分散させたり、エマルジョン化したり、キレートを用いて溶体化することで硬化促進剤溶液として用いた。溶媒としては、純水以外に、ジオキサン、エタノール、アセトン、セロソルブ等の有機溶剤を適宜用いた。
【0246】
それらを、表1に示す硬化促進剤溶液を無方向性電磁鋼板の表面に所定の塗布パターンで薄く均一に残存するように塗布あるいは噴霧した後、積極的に乾燥させることにより、表1に示した所定量とした。ただし、比較例1に関しては硬化促進剤溶液を積極的に乾燥させず、プレス加工油の下にある硬化促進剤溶液が自然乾燥しない液体状態のうちに、下表2に示す各項目を評価した。比較例5についても、プレス加工油上の硬化促進剤溶液が自然乾燥しないうちに、下表2に示す各項目を評価した。
【0247】
続いて、接着剤及び硬化促進用の加工物成分の組み合わせを、発明例1~5及び比較例1~5それぞれのようにした場合について、初期接着強度及び最終接着強度を調べた。その結果を下表2に示す。
【0248】
【0249】
表2において、初期接着強度及び最終接着強度の評価に際しては、まず、上述の処理を施した無方向性電磁鋼板から30mm×60mmの試料片を複数枚、作成した(以下、これを「一方の試料片」と呼ぶ)。加えて、上述の処理を施していない他の無方向性電磁鋼板からも30mm×60mmの試料片を複数枚、作成した(以下、これを「他方の試料片」と呼ぶ)。
そして、前記一方の試料片の表面の全面に、プレス加工油を塗布した。ただし、比較例5は既にプレス加工油を塗布済みであるため、再度のプレス加工油の塗布は行わなかった。
その後、前記一方の試料片の表面の端部に、30mm×10mmの範囲で5μlの嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を滴下して接着面とした。そして、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を滴下した直後に、この一方の試料片の接着面に対し、前記他方の試料片を重ね合わせて接着開始した。
重ね合わせ開始から20秒間保持した後に接着強度を測定したものを、初期接着強度とした。そして、重ね合わせ開始から24時間放置後に接着強度を測定したものを、最終接着強度とした。
【0250】
また、初期接着強度及び最終接着強度の評価に加えて、表2に示すように、100枚積層時の取り出し時間も評価した。
すなわち、表2に示した「100枚積層コア取り出し時間」は、まず、表1に示した化合物成分を持つ無方向性電磁鋼板を、金型を用いて、外径60mm、内径40mmのリング状をなす複数枚の試料片に加工した。そして、これら試料片の各表面にプレス加工油を塗布した後に、各表面の4か所それぞれに嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を5μlずつ塗布した。そして、嫌気性接着剤及び瞬間接着剤を塗布した直後に、これら試料片を他の試料片の上に積層した。
【0251】
この積層の際、比較例1に関しては硬化促進剤溶液を乾燥させず、プレス加工油の下にある硬化促進剤溶液が自然乾燥しない液体状態のうちに積層させた。また、比較例5についても、プレス加工油上の硬化促進剤溶液が自然乾燥しないうちに積層させた。
このような積層を、20spmの積層速度で繰り返し、その結果として試料片100枚を積層して積層コアを得た。このようにして得た積層コアを、積層が完了した測定開始時点から、ずれることなく取り出すことができた測定終了時点までの最も短い時間を、「100枚積層コア取り出し時間」とした。なお、ずれが発生したりして積層が完了しなかったり、積層するのに300秒以上かかった場合には、表2では300秒と表記した。
【0252】
以上の評価結果の下、全ての評価項目でGoodであったものを総合評価Goodとし、少なくとも1つのNot Goodを含んだものを総合評価Not Goodとし、少なくとも1つのBadを含んだものを総合評価Badとした。
表2に示した通り、発明例1~5の全てにおいて総合評価Goodが得られ、その一方で、比較例1,2,4,5では総合評価がBad、比較例3では総合評価がNot Goodとなった。以上より、プレス加工油を塗布する前の帯状鋼板の片面又は両面に、嫌気性接着剤用硬化促進剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤を塗布して乾燥させた硬化促進層を形成することで、接着積層コアの製造に際し、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られることが確認された。
【0253】
一般的な接着工程においては、嫌気性接着剤と瞬間接着剤の何れか一方を用途に応じて選択し、その上で接着することが行われる。これに対し、本発明では、嫌気性接着剤、瞬間接着剤、嫌気性接着剤用硬化促進剤、瞬間接着剤用硬化促進剤の4つを同時併用するという通常ではなされない接着工程を採用している。その結果、接着直後のハンドリング性の高さ、すなわち接着直後の積層コアを他の位置に払い下げする際の電磁鋼板間のずれ防止を、瞬間接着剤及び瞬間接着剤用硬化促進剤の組み合わせにより発現する瞬時接着力によって担保している。加えて、積層コアをモータ等に部品として組み込んだ際に求められる耐久性の高さを、嫌気性接着剤及び嫌気性接着剤用の組み合わせにより発現する強固な接着力によって担保している。このように、ハンドリング性の高さと製品耐久性の高さとを両立可能としており、その効果の高さは、上記実施例に示した通りである。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明の上記各態様によれば、接着積層コアの製造に際し、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られる、接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置を提供できる。よって、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0255】
21 ステータ用接着積層コア(接着積層コア、回転電機用の固定子)
40 電磁鋼板(鋼板部品、第1鋼板部品、第2鋼板部品)
100,200,300,400,500 接着積層コア製造装置
120,220,320,420 硬化促進層形成部
130,230,330,430 プレス加工油塗布部
140,240,340,440 プレス加工部
150,250,350,450 接着剤塗布部
153,253,353,453 ノズル
a 硬化促進層
a1 嫌気性接着剤用硬化促進剤
a2 瞬間接着剤用硬化促進剤
b プレス加工油
c1 嫌気性接着剤(接着剤)
c2 瞬間接着剤(接着剤)
M 帯状鋼板