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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20241101BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20241101BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K9/19 A
H02K15/14 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023536275
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2021027210
(87)【国際公開番号】W WO2023002584
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 和希
(72)【発明者】
【氏名】内田 達也
(72)【発明者】
【氏名】趙 イウェイ
(72)【発明者】
【氏名】本田 史雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】望月 洋治郎
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011076532(DE,A1)
【文献】国際公開第2020/213052(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008035896(DE,A1)
【文献】中国実用新案第204794400(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 9/19
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ及びロータを有する回転電機であって、
前記ステータ及び前記ロータを収容する円筒状のインナーハウジングと、
前記インナーハウジングの外周を覆う有底円筒状のアウターハウジングと、
前記インナーハウジングの外周面に環状に形成された第1溝内に収容され、前記インナーハウジングの外周面と前記アウターハウジングの内周面との間をシールする第1シール部材と、
前記インナーハウジングの外周面に前記第1溝と間隔をあけて環状に形成された第2溝内に収容され、前記インナーハウジングの外周面と前記アウターハウジングの前記内周面との間をシールする第2シール部材と、
前記第1シール部材、前記第2シール部材、前記インナーハウジングと、前記アウターハウジングと、によって囲まれた領域によって形成され、前記ステータを冷却する冷媒が流れる冷媒通路と、を備え、
前記アウターハウジングの前記内周面は、
開口部側に設けられ、前記第1シール部材が接触する第1円筒面と、
前記第1円筒面より小径で前記第1円筒面より底部側に設けられ、前記第2シール部材が接触する第2円筒面と、
前記第2円筒面より小径で前記第2円筒面より底部側に設けられ、前記インナーハウジングの先端部が圧入される第3円筒面と、を有し、
前記インナーハウジングを前記アウターハウジング内に挿入するとき、前記第1シール部材が前記第1円筒面に接触するとともに、前記第2シール部材が前記第2円筒面に接触した時点では、前記インナーハウジングの前記軸方向において、前記インナーハウジングの前記先端部と前記第3円筒面との間に隙間がある、
回転電機。
【請求項2】
請求項に記載の回転電機であって、
前記インナーハウジングを前記アウターハウジング内に挿入するときに、前記第2シール部材が前記第2円筒面に接触した後、前記第1シール部材が前記第1円筒面に接触する、
回転電機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転電機であって、
前記インナーハウジングの一端には、前記アウターハウジングの前記開口部に当接するフランジ部が設けられ、
前記フランジ部が前記アウターハウジングに当接したときに、前記軸方向において前記インナーハウジングの先端面と前記アウターハウジングとの間に隙間がある、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及びロータを有する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2020/213052A1には、円筒状のアウターハウジングの内部に円筒状のインナーハウジングを設け、これらの間に冷却液流路を形成した回転電機が記載されている。
【発明の概要】
【0003】
WO2020/213052A1に記載された回転電機では、インナーハウジングをアウターハウジング内に組み付ける際に、インナーハウジングの先端部をアウターハウジングに圧入するとともに、インナーハウジングに設けられたフランジをアウターハウジングに固定している。
【0004】
しかしながら、WO2020/213052A1に記載された回転電機において、圧入時にインナーハウジングの先端部の芯出しが不十分であると、インナーハウジングが傾いた状態でアウターハウジングに圧入されてしまい、シール部分から冷却液が漏れてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、インナーハウジングをアウターハウジング内に組み付ける際に、インナーハウジングの先端部の芯出しをより確実に行うことのできる回転電機を提供することを目的とする。
【0006】
本発明のある態様によれば、回転電機は、ステータ及びロータを収容する円筒状のインナーハウジングと、インナーハウジングの外周を覆う有底円筒状のアウターハウジングと、インナーハウジングの外周面に環状に形成された第1溝内に収容され、インナーハウジングの外周面とアウターハウジングの内周面との間をシールする第1シール部材と、インナーハウジングの外周面に第1溝と間隔をあけて環状に形成された第2溝内に収容され、インナーハウジングの外周面とアウターハウジングの内周面との間をシールする第2シール部材と、第1シール部材、第2シール部材、インナーハウジングと、アウターハウジングと、によって囲まれた領域によって形成され、ステータを冷却する冷媒が流れる冷媒通路と、を備える。アウターハウジングの内周面は、開口部側に設けられ、第1シール部材が接触する第1円筒面と、第1円筒面より小径で第1円筒面より底部側に設けられ、第2シール部材が接触する第2円筒面と、第2円筒面より小径で第2円筒面より底部側に設けられ、インナーハウジングの先端部が圧入される第3円筒面と、を有する。回転電機では、インナーハウジングをアウターハウジング内に挿入するとき、第1シール部材が第1円筒面に接触するとともに、第2シール部材が第2円筒面に接触した時点では、インナーハウジングの軸方向において、インナーハウジングの先端部と第3円筒面との間に隙間がある。
【0007】
本発明によれば、インナーハウジングの先端部が第3円筒面に接触する前に、第1シール部材が第1円筒面に接触する、あるいは、第2シール部材が第2円筒面に接触するので、インナーハウジングの先端部を圧入する前に、インナーハウジングの芯出しをすることができる。これにより、インナーハウジングとアウターハウジングとを組み立てる際に、インナーハウジングがアウターハウジングに対して傾くことなく、インナーハウジングの先端部をアウターハウジングに圧入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る回転電機を有する駆動ユニットの正面から見た概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係る回転電機を有する駆動ユニットを側面から見た模式図である。
図3図3は、本実施形態に係る回転電機の要部を示す部分断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る回転電機におけるインナーハウジングとアウターハウジングとの寸法関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る回転電機Mを備えた駆動ユニット100を正面から見た概略図である。図2は、駆動ユニット100を側面から見た模式図である。図3は、回転電機Mの要部を示す軸方向における断面図である。
【0011】
駆動ユニット100は、車両に搭載される。図1及び図2に示すように、駆動ユニット100は、回転電機Mと、インバータIと、減速機Gと、を備える。駆動ユニット100は、例えば、内燃機関(図示せず)の動力により発電モータ(図示せず)で発電した電力を利用して、回転電機Mを駆動して走行するシリーズハイブリッド車両の駆動源として使用される。なお、これに限らず、駆動ユニット100は、例えば、バッテリの電力によって駆動する電動車両の駆動源として使用されてもよい。
【0012】
図1及び図2に示すように、回転電機Mの上部には、インバータIが配置される。インバータIのケースが回転電機Mのハウジングにボルトによって固定されることで、回転電機MとインバータIとは一体化される。
【0013】
減速機Gは、回転電機Mのハウジングにボルト締結によって固定される。回転電機Mの回転軸7には、減速機Gの入力軸(図示せず)が接続される。回転電機Mの駆動力は減速機Gによって減速されて、シャフトSを通じて駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0014】
本実施形態の回転電機Mは、電動機及び発電機として動作する電動発電機である。具体的には、回転電機Mは、バッテリ(図示せず)からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作し、駆動輪から回転エネルギーを受ける場合には、発電機として機能する。
【0015】
回転電機Mは、例えば、同期型回転電機である。回転電機Mは、電動機として動作する際には、コントローラ(図示せず)からの指令に基づいて、インバータIによって作り出された三相交流が印加されることにより動作する。また、回転電機Mは、発電機として動作する際には、駆動輪(図示せず)からの駆動力によって回転することで電力を発生し、バッテリを充電する。
【0016】
図3に示すように、回転電機Mは、ステータ1と、ロータ2と、ステータ1及びロータ2を収容するインナーハウジング3と、インナーハウジング3の外周を覆うアウターハウジング4と、を有する。
【0017】
ステータ1は、ステータコア1aと、ステータコア1aに巻回されたステータコイル1bと、を有する。ロータ2は、ステータ1の内周に、ステータ1と若干の隙間を隔てて設けられる。ロータ2は、回転軸7に取り付けられてステータ1内に回転自在に支持される。
【0018】
図3に示すように、インナーハウジング3は、円筒状に形成される。インナーハウジング3は、例えば、アルミ合金製であり、鋳造などによって形成される。インナーハウジング3は、ステータ1及びロータ2を収容する円筒部3aと、円筒部3aの一端に設けられ、アウターハウジング4の一端側の開口部4cに当接するフランジ部3bと、を有する。インナーハウジング3は、フランジ部3bをアウターハウジング4にボルト8によって締結することでアウターハウジング4に固定される。
【0019】
インナーハウジング3の円筒部3aの外周面には、環状に形成された第1溝3cと、環状に形成された第2溝3dと、が設けられる。第1溝3cと第2溝3dとは、インナーハウジング3の軸方向において互いに間隔をあけて設けられる。第1溝3c及び第2溝3d内には、インナーハウジング3の外周面とアウターハウジング4の内周面との間をシールする第1シール部材としてのOリング6a及び第2シール部材としてのOリング6bがそれぞれ設けられる。
【0020】
また、インナーハウジング3は、円筒部3aの外周面から領域R内に突出し、インナーハウジング3の円筒部3aの外周面に沿ってらせん状に延びるリブ3eをさらに有する。リブ3eは、アウターハウジング4の内周面と間に若干の隙間を設けるようにして形成される。
【0021】
アウターハウジング4は、有底円筒形状に形成される。アウターハウジング4は、例えば、アルミ合金製であり、鋳造などによって形成される。アウターハウジング4は、インナーハウジング3の外周を覆う円筒部4aと、円筒部4aの一端を閉塞する底部4bと、開口部4c側に設けられ円筒部4aより肉厚の肉厚部4dと、を有する。
【0022】
インナーハウジング3の外周面とアウターハウジング4の内周面との間には、ステータ1を冷却する冷媒が流れる冷媒通路5が設けられる。冷媒通路5は、Oリング6a、Oリング6b、インナーハウジング3の外周面と、アウターハウジング4の内周面と、によって囲まれた領域R内において、ステータ1の外周を覆うように形成される。本実施形態では、冷媒通路5は、インナーハウジング3の外周面に設けられたらせん状に延びるリブ3eに沿って冷媒が流れるように形成され、つまり、冷媒通路5は、領域R内においてらせん状に形成される。
【0023】
アウターハウジング4の円筒部4aの内周面は、開口部4c側に設けられ、Oリング6aが接触する第1円筒面41と、第1円筒面41より小径で第1円筒面41より底部4b側に設けられ、Oリング6bが接触する第2円筒面42と、第2円筒面42より小径で第2円筒面42より底部4b側に設けられ、インナーハウジング3の先端部3fが圧入される第3円筒面43と、を有する。
【0024】
本実施形態の回転電機Mでは、インナーハウジング3をアウターハウジング4の開口部4cから挿入していき、インナーハウジング3の先端部3fをアウターハウジング4の第3円筒面43に圧入する。そして、インナーハウジング3のフランジ部3bをアウターハウジング4の肉厚部4dにボルト8によって固定することで、インナーハウジング3はアウターハウジング4に固定される。
【0025】
ところで、インナーハウジング3の圧入時に、インナーハウジング3の先端部3fの芯出しが不十分であると、インナーハウジング3とアウターハウジング4の中心軸がずれた状態、あるいは、インナーハウジング3が傾いた状態で、インナーハウジング3がアウターハウジング4に圧入されるおそれがある。インナーハウジング3がこのような状態で圧入された場合には、例えば、Oリング6a,6bなどのシール部分に偏りが生じて冷媒が漏れてしまう、あるいは、インナーハウジング3とアウターハウジング4との間にこじりが生じ、コンタミが発生するおそれがある。
【0026】
そこで、本実施形態の回転電機Mでは、インナーハウジング3の軸方向において、インナーハウジング3の先端部3fが第3円筒面43に接触する前に、少なくとも、Oリング6aを第1円筒面41に接触させる、あるい、Oリング6bを第2円筒面42に接触させることで、インナーハウジング3の芯出しを行う。以下に、具体的な構成に説明する。
【0027】
図4は、インナーハウジング3を開口部4cからアウターハウジング4内に挿入していったときに、Oリング6aが第1円筒面41に接触するとともに、Oリング6bがアウターハウジング4の第2円筒面42に接触した状態を示す図である。図4に示すように、Oリング6aが第1円筒面41に接触するとともに、Oリング6bが第2円筒面42に接触した時点では、インナーハウジング3の軸方向において、インナーハウジング3の先端部3fとアウターハウジング4の第3円筒面43との間に隙間Cが存在する。言い換えると、回転電機Mでは、インナーハウジング3の先端部3fが第3円筒面43に接触する前に、Oリング6aが第1円筒面41に接触するとともに、Oリング6bが第2円筒面42に接触する。
【0028】
このような構成を実現するために、回転電機Mでは、第1円筒面41の開口部4c側の端部41aから第3円筒面43の開口部4c側の端部43aまでの軸方向の距離をD1とし、第3円筒面43と接触する先端部3fの外周面の底部4b側の端部3gと第1溝3cの軸方向における中心位置3iとの間の距離をD2としたとき、D1>D2となるような位置に第1溝3cを形成する。また、第2円筒面42の開口部4c側の端部42aから第3円筒面43の開口部4c側の端部43aまでの距離をD3とし、先端部3fの端部3gと第2溝3dの軸方向における中心位置3hとの間の距離をD4としたとき、D3>D4となるような位置に第2溝3dを形成する。
【0029】
第1溝3c及び第2溝3dをこのような位置に配置することにより、インナーハウジング3の先端部3fが第3円筒面43に接触する前に、Oリング6aを第1円筒面41に接触させるとともに、Oリング6bを第2円筒面42に接触させることができる。なお、図4に示す位置、すなわち、軸方向において、第1溝3cの軸方向における中心位置3iと第1円筒面41の開口部4c側の端部41aとが一致する位置であれば、Oリング6aは、アウターハウジング4の第1円筒面41に確実に接触する。同様に、第2溝3dの軸方向における中心位置3hと第2円筒面42の開口部4c側の端部42aとが一致する位置であれば、Oリング6bは、アウターハウジング4の第2円筒面42に確実に接触する。よって、上述のような位置に第1溝3c及び第2溝3dを配置することにより、インナーハウジング3の先端部3fが圧入される前に、Oリング6a,6bをそれぞれ第1円筒面41及び第2円筒面42に接触させてインナーハウジング3の芯出しをすることができる。
【0030】
なお、Oリング6aが第1円筒面41に接触するとともに、Oリング6bがアウターハウジング4の第2円筒面42に接触した後は、インナーハウジング3をアウターハウジング4の底部4bに向かってさらに挿入することで、インナーハウジング3の先端部3fが、第3円筒面43に圧入される。そして、インナーハウジング3をアウターハウジング4の底部4bに向かってさらに挿入すると、インナーハウジング3のフランジ部3bがアウターハウジング4の開口部4c(肉厚部4d)に当接する。
【0031】
この状態で、ボルト8によりフランジ部3bをアウターハウジング4に固定することで、インナーハウジング3とアウターハウジング4が一体化され、組み立てが終了する。
【0032】
なお、本実施形態の回転電機Mでは、図3に示すように、インナーハウジング3のフランジ部3bがアウターハウジング4の開口部4c(肉厚部4d)に当接したときに、軸方向においてインナーハウジング3の先端面3jとアウターハウジング4との間に隙間Dが存在するようになっている。これにより、フランジ部3bをアウターハウジング4の開口部4c(肉厚部4d)に確実に当接させることができるので、インナーハウジング3の先端面3jがアウターハウジング4に押し付けられて、インナーハウジング3が変形することを防止できる。
【0033】
以上のように、本実施形態の回転電機Mでは、インナーハウジング3の先端部3fが第3円筒面43に接触する前に、Oリング6bが第2円筒面42に接触するとともに、Oリング6aが第1円筒面41に接触する。これにより、インナーハウジング3の先端部3fが圧入される前に、インナーハウジング3の芯出しをすることができる。この結果、インナーハウジング3とアウターハウジング4とを組み立てる際に、インナーハウジング3の中心軸がアウターハウジング4の中心軸に対してずれた状態、あるいは、インナーハウジング3がアウターハウジング4に対して傾いた状態で、インナーハウジング3の先端部3fがアウターハウジング4に圧入されることを防止できる。
【0034】
なお、上記実施形態では、Oリング6a、6bが、第1円筒面41及び第2円筒面42に同時に接触する場合を例に説明したが、Oリング6a、6bは、組み立ての際に第1円筒面41及び第2円筒面42に同時に接触しなくてもよい。具体的には、インナーハウジング3の先端部3fが第3円筒面43に接触する前に、Oリング6a、6bが、それぞれ第1円筒面41及び第2円筒面42に接触していれば、インナーハウジング3がOリング6a、6bという二つの個所で芯出しされることになるので、インナーハウジング3の芯出しを確実に行うことができる。
【0035】
Oリング6a、6bが、第1円筒面41及び第2円筒面42に同時に接触しない場合には、例えば、Oリング6bが第2円筒面42に接触したときに、Oリング6aが第1円筒面41より外側に位置するように、第1溝3c及び第2溝3dを形成することが好ましい。この構成では、Oリング6bが第2円筒面42に接触した後、Oリング6aが第1円筒面41に接触する。Oリング6bが第2円筒面42に接触する前に、Oリング6aが第1円筒面41に接触する構成では、インナーハウジング3がアウターハウジング4に対して傾いて挿入された場合に、Oリング6aが第2円筒面42に接触することでインナーハウジング3がOリング6aを支点として傾くことになる。このとき、支点となるOリング6aと先端部3fとの間の距離が長いため、先端部3fの径方向のずれ量が大きくなる。そこで、Oリング6aが第1円筒面41に接触するより前にOリング6bが第2円筒面42に接触する構成とすることで、仮に、インナーハウジング3がアウターハウジング4に対して傾いて挿入されても、インナーハウジング3が先端部3fに近いOリング6bを支点として傾くことになる。このとき、支点となるOリング6bと先端部3fとの間の距離が比較的短いため、先端部3fの径方向のずれ量が小さくなる。よって、このような配置とすることにより、先端部3fの径方向のずれ量が小さくなるので、インナーハウジング3が傾いた状態でアウターハウジング4に圧入されることをより確実に防止できる。
【0036】
なお、Oリング6aが第1円筒面41に接触した後、Oリング6bが第2円筒面42に接触するようにしてもよい。この構成であっても、インナーハウジング3の先端部3fが第3円筒面43に接触する前に、インナーハウジング3がOリング6a、6bという二つの個所で芯出しされることになるので、インナーハウジング3の芯出しを行うことができる。
【0037】
さらに、組み立て時に、インナーハウジング3の傾きやずれ量が許容できる範囲に収まるのであれば、インナーハウジング3の先端部3fが第3円筒面43に接触する前に、少なくとも、Oリング6aのみを第1円筒面41に接触させる、あるい、インナーハウジング3の先端部3fが第3円筒面43に接触する前に、Oリング6bのみを第2円筒面42に接触させる構成としてもよい。この場合にも、インナーハウジング3の先端部3fが第3円筒面43に圧入される前に、Oリング6aまたはOリング6bによって、インナーハウジング3の芯出しを行うことができる。
【0038】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0039】
回転電機Mは、ステータ1及びロータ2を収容する円筒状のインナーハウジング3と、インナーハウジング3の外周を覆う有底円筒状のアウターハウジング4と、インナーハウジング3の外周面に環状に形成された第1溝3c内に収容され、インナーハウジング3の外周面とアウターハウジング4の内周面との間をシールするOリング6a(第1シール部材)と、インナーハウジング3の外周面に第1溝3cと間隔をあけて環状に形成された第2溝3d内に収容され、インナーハウジング3の外周面とアウターハウジング4の内周面との間をシールするOリング6b(第2シール部材)と、Oリング6a(第1シール部材)、Oリング6b(第2シール部材)、インナーハウジング3と、アウターハウジング4と、によって囲まれた領域Rによって形成され、ステータ1を冷却する冷媒が流れる冷媒通路5と、を備える。アウターハウジング4の内周面は、開口部4c側に設けられ、Oリング6a(第1シール部材)が接触する第1円筒面41と、第1円筒面41より小径で第1円筒面41より底部4b側に設けられ、Oリング6b(第2シール部材)が接触する第2円筒面42と、第2円筒面42より小径で第2円筒面42より底部4b側に設けられ、インナーハウジング3の先端部3fが圧入される第3円筒面43と、を有する。回転電機Mでは、インナーハウジング3をアウターハウジング4内に挿入するとき、Oリング6a(第1シール部材)が第1円筒面41に接触した時点、あるいはOリング6b(第2シール部材)が第2円筒面42に接触した時点では、インナーハウジング3の軸方向において、インナーハウジング3の先端部3fと第3円筒面43との間に隙間Cがある。
【0040】
この構成では、インナーハウジング3の先端部3fが第3円筒面43に接触する前に、Oリング6bが第2円筒面42に接触する、あるいは、Oリング6aが第1円筒面41に接触する。これにより、インナーハウジング3の先端部3fを圧入する前に、インナーハウジング3の芯出しをすることができる。よって、インナーハウジング3とアウターハウジング4とを組み立てる際に、インナーハウジング3がアウターハウジング4に対して傾くことなく、インナーハウジング3の先端部3fをアウターハウジング4に圧入することができる。
【0041】
回転電機Mでは、インナーハウジング3をアウターハウジング4内に挿入するときに、Oリング6a(第1シール部材)が第1円筒面41に接触するとともに、Oリング6b(第2シール部材)が第2円筒面42に接触した時点では、インナーハウジング3の軸方向において、インナーハウジング3の先端部3fと第3円筒面43との間に隙間Cがある。
【0042】
この構成では、インナーハウジング3の先端部3fが圧入される前に、Oリング6a、6bが第1円筒面41及び第2円筒面42に接触する。これにより、インナーハウジング3がOリング6a、6bという二つの個所で芯出しされるので、インナーハウジング3の芯出しをより確実にすることができる。
【0043】
回転電機Mでは、インナーハウジング3をアウターハウジング4内に挿入するときに、Oリング6b(第2シール部材)が第2円筒面42に接触した後、Oリング6a(第1シール部材)が第1円筒面41に接触する。
【0044】
この構成では、インナーハウジング3がアウターハウジング4に対して傾いていても、Oリング6bが第2円筒面42に接触することで、インナーハウジング3が先端部3fに近いOリング6bを支点として傾くことになる。これにより、先端部3fの傾き量を小さくすることができるので、先端部3fが傾いた状態でアウターハウジング4に圧入されることを抑制できる。
【0045】
回転電機Mでは、インナーハウジング3の一端には、アウターハウジング4の開口部4cに当接するフランジ部3bが設けられる。フランジ部3bがアウターハウジング4に当接したときに、軸方向においてインナーハウジング3の先端面3jとアウターハウジング4との間に隙間Dがある。
【0046】
この構成では、フランジ部3bをアウターハウジング4の開口部4cに確実に当接させることができる。これにより、インナーハウジング3の先端面3jがアウターハウジング4に押し付けられて、インナーハウジング3が過剰に変形することを防止できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び各変形例で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0048】
上記実施形態では、回転電機Mが電動発電機である場合を例に説明したが、回転電機Mは、発電機、あるいは、電動機であってもよい。また、回転電機Mは、車両用の駆動源として用いられるものに限らず、どのような装置に用いられるものであってもよい。
【0049】
例えば、回転電機Mにおいて、リブ3eは必ずしも設ける必要はない。また、上記実施形態では、第1、第2シール部材としてOリング6a,6bを例に説明したが、シール部材は、Xリングなどどのようなものであってもよい。
【0050】
上記実施形態では、インナーハウジング3のフランジ部3bがアウターハウジング4の開口部4cに当接する場合を例に説明したが、これに限らず、例えば、アウターハウジング4にボスを設けこのボスにフランジ部3bが当接するようにしてもよい。
図1
図2
図3
図4