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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
A61B1/06 531
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023541394
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2022028916
(87)【国際公開番号】W WO2023017731
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2021132058
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伶
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 恵一
(72)【発明者】
【氏名】飯田 友樹
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/056851(WO,A1)
【文献】特開2018-166986(JP,A)
【文献】特開2010-194123(JP,A)
【文献】特開2011-217969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端に配置された先端部材に固定された観察窓と、
前記観察窓の視野方向を照明する発光素子と、
前記発光素子に電源を供給する電源線と、
前記発光素子と前記電源線との接続部を囲む照明枠と、
内視鏡用プロセッサに接続されるコネクタ部と、
前記照明枠と前記コネクタ部とを接続する導体線と
を備え、
前記発光素子は、発光素子基板の第1実装面に実装されており、
前記電源線は、前記第1実装面と反対側である第2実装面に実装されており、
前記照明枠は、前記発光素子基板の側面を囲む筒状であり、
前記第1実装面は前記照明枠の端部に配置され、
前記第2実装面は、前記照明枠の内部に配置されており、
前記照明枠は、前記第2実装面が配置される側の端面に連続する窪みを外面に有し、
前記導体線は、前記窪みに接続されている
内視鏡。
【請求項2】
前記照明枠は金属製であり、
前記電源線は前記照明枠と絶縁されている
請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記照明枠は銅合金製である
請求項に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記照明枠は真鍮製である
請求項に記載の内視鏡。
【請求項5】
挿入部の先端に配置された先端部材に固定された観察窓と、
前記観察窓の視野方向を照明する発光素子と、
前記発光素子に電源を供給する電源線と、
前記発光素子と前記電源線との接続部を囲む照明枠と、
内視鏡用プロセッサに接続されるコネクタ部と、
前記照明枠と前記コネクタ部とを接続する導体線と
を備え、
前記発光素子は、発光素子基板の第1実装面に実装されており、
前記電源線は、前記第1実装面と反対側である第2実装面に実装されており、
前記照明枠は、前記発光素子基板の側面を囲む筒状であり、
前記第1実装面は前記照明枠の端部に配置され、
前記第2実装面は、前記照明枠の内部に配置されており、
前記照明枠は、前記第2実装面が配置された側の端面に開口する切欠部を有し、
前記導体線は、前記切欠部の内側に配置されている
内視鏡。
【請求項6】
前記照明枠は金属製であり、
前記電源線は前記照明枠と絶縁されている
請求項に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記照明枠は銅合金製である
請求項6に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記照明枠は真鍮製である
請求項6に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記導体線は、前記電源線の周囲を囲むシールド線である
請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
挿入部の先端に発光素子を配置した内視鏡が提案されている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/061838号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子の発熱等により、発光素子自体の温度が上昇した場合、輝度の低下、発光色の変化、および寿命の短縮等の悪影響が生じる可能性がある。一つの側面では、発光素子の温度上昇を防止した内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
内視鏡は、挿入部の先端に配置された先端部材に固定された観察窓と、前記観察窓の視野方向を照明する発光素子と、前記発光素子に電源を供給する電源線と、前記発光素子と前記電源線との接続部を囲む照明枠と、内視鏡用プロセッサに接続されるコネクタ部と、前記照明枠と前記コネクタ部とを接続する導体線とを備え、前記発光素子は、発光素子基板の第1実装面に実装されており、前記電源線は、前記第1実装面と反対側である第2実装面に実装されており、前記照明枠は、前記発光素子基板の側面を囲む筒状であり、前記第1実装面は前記照明枠の端部に配置され、前記第2実装面は、前記照明枠の内部に配置されており、前記照明枠は、前記第2実装面が配置される側の端面に連続する窪みを外面に有し、前記導体線は、前記窪みに接続されている。
【発明の効果】
【0006】
一つの側面では、発光素子の温度上昇を防止した内視鏡を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】内視鏡の外観図である。
図2図1におけるII部拡大図である。
図3】内視鏡用キャップを外した挿入部の拡大図である。
図4】照明光学系の分解斜視図である。
図5】照明部組の分解図である。
図6】照明ケーブルの処理を説明する説明図である。
図7図3の部分断面図である。
図8図7におけるVIII部拡大図である。
図9】先端部材の正面図である。
図10図9におけるX-X線による断面図である。
図11図4におけるXI矢視図である。
図12図5におけるXII矢視図である。
図13】照明枠の斜視図である。
図14図13におけるXIV矢視図である。
図15図14におけるXV-XV線による断面図である。
図16】スペーサの斜視図である。
図17】スペーサの斜視図である。
図18】ケーブル保持具の斜視図である。
図19】ケーブル保持具の断面図である。
図20】照明光学系の組立手順を説明する説明図である。
図21】照明光学系の組立手順を説明する説明図である。
図22】照明枠と発光素子基板とを固定する工程の変形例を説明する説明図である。
図23】実施の形態2の照明部組の分解図である。
図24】実施の形態2の発光素子基板の斜視図である。
図25】実施の形態2の発光素子基板の斜視図である。
図26】実施の形態3の照明部組の構成を説明する説明図である。
図27】実施の形態3の照明枠の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施の形態1]
図1は、内視鏡10の外観図である。本実施の形態の内視鏡10は、十二指腸向けの軟性鏡である。内視鏡10は、挿入部20、操作部40、ユニバーサルコード59およびコネクタ部50を有する。操作部40は、湾曲ノブ41およびチャンネル入口42を有する。
【0009】
挿入部20は長尺であり、一端が折止部26を介して操作部40に接続されている。挿入部20は、操作部40側から順に軟性部21、湾曲部22および先端部23を有する。湾曲部22は、湾曲ノブ41の操作に応じて湾曲する。
【0010】
チャンネル入口42から先端部23まで、挿入部20を貫通するチャンネルが設けられている。チャンネル入口42には、処置具等を挿入する挿入口を有する鉗子栓43が取り付けられている。
【0011】
以後の説明では、挿入部20の長手方向を挿入方向と記載する。同様に、挿入方向に沿って操作部40に近い側を操作部側、操作部40から遠い側を先端側と記載する。
【0012】
ユニバーサルコード59は長尺であり、第一端が操作部40に、第二端がコネクタ部50にそれぞれ接続されている。コネクタ部50は、電気コネクタ51を有する。電気コネクタ51は、図示を省略する内視鏡用プロセッサに接続される。
【0013】
図2は、図1におけるII部拡大図である。図2に示すように、先端部23の側面に、照明窓60と観察窓27とが配置されている。本実施の形態の内視鏡10は、観察窓27の視野方向が挿入方向に対して略垂直である、いわゆる側視型である。照明窓60および観察窓27の横に起上台25が配置されている。挿入部20の先端には、起上台25と共に着脱可能な内視鏡用キャップ24が取り付けられている。
【0014】
図3は、内視鏡用キャップ24を外した挿入部20の拡大図である。図3においては、湾曲部22を構成する部品等の図示を省略し、先端部23を構成する主な部品のみを図示する。
【0015】
観察窓27および照明窓60は、略円柱状の先端部材30に固定されている。照明窓60は、観察窓27に対して挿入方向に沿って先端側に位置している。図3においては、照明窓60および観察窓27の上側に配置されていた起上台25は、内視鏡用キャップ24と共に挿入部20から取り外されている。
【0016】
図4は、照明光学系の分解斜視図である。図4においては、照明光学系以外の部品については図示を省略する。照明光学系は、照明部組66と照明カバー61とを含む。照明カバー61は透光性である。照明カバー61は、たとえば厚さ0.7ミリメートル程度の薄い平板である。照明ケーブル65に、ケーブル保持具68が挿通されている。
【0017】
図5は、照明部組66の分解図である。照明部組66は、照明ケーブル65、発光素子633が実装された発光素子基板63、照明枠64、および、第2絶縁シート622を含む。
【0018】
図6は、照明ケーブル65の端末処理を説明する説明図である。照明ケーブル65は、4本の照明ケーブル芯線659を含む。それぞれの照明ケーブル芯線659は、絶縁性被覆により覆われており、端部のみ絶縁性被覆が除去されている。絶縁性被覆は、照明ケーブル芯線659ごとに異なる色で着色されている。
【0019】
4本の照明ケーブル芯線659の外周に、図示を省略する抑え巻が巻かれている。抑え巻の外側に、多数の金属線により構成されたシールド線655が巻かれている。シールド線655を構成する金属線は、たとえば銅線である。シールド線655の外周は軟性樹脂製の外皮656により覆われている。
【0020】
照明ケーブル65の端部で、外皮656が除去されてシールド線655と照明ケーブル芯線659とが分離されている。分離されたシールド線655は、第2チューブ652で覆われている。外皮656の端部と、第2チューブ652の端部とを覆うように、第1チューブ651が被せられている。
【0021】
本実施の形態においては、第1チューブ651および第2チューブ652は、絶縁性を有する熱収縮チューブである。以上により、照明ケーブル65の端部以外の場所では、シールド線655は照明ケーブル芯線659および周囲から絶縁されている。4本の照明ケーブル芯線659も、照明ケーブル65の端部以外の場所では周囲から絶縁されている。なお、本実施の形態においては、「絶縁」は500ボルトの交流電圧を連続して1分間印加しても、通電しない状態を意味する。
【0022】
図7は、図3の部分断面図である。図7には、図3におけるVIIA-VIIA断面、VIIB-VIIB断面およびVIIC-VIIC断面をそれぞれ示す。図8は、図7におけるVIII部拡大図である。
【0023】
図7および図8を使用して、VIIA-VIIA断面に表れている部分について説明する。先端部材30の側面に設けられた照明孔31に、照明カバー61が水密および気密に固定されている。照明カバー61の奥に、発光素子633が搭載された発光素子基板63が配置されている。
【0024】
発光素子基板63は、第1実装面631および第2実装面632を有する正方形板状である。発光素子基板63は、第1実装面631に発光素子633を実装する銅箔パターン等のランドを有し、第2実装面632に2個のランド635(図12参照)を有する。第1実装面631に設けられた発光素子633実装用のランドと、第2実装面632に設けられたランド635とは、発光素子基板63の内部で接続されている。
【0025】
4本の照明ケーブル芯線659は2本ずつ縒り合された後に、図5に示すように略L字型に折り曲げられて、それぞれのランド635に半田付け等により実装されている。照明ケーブル芯線659は、発光素子633に電源を供給する電源線の機能を果たす。シールド線655は、電源線に沿って延びる導体線の例示である。
【0026】
発光素子基板63は、たとえば多層プリント基板である。発光素子基板63は、高熱伝導樹脂を用いた多層プリント基板、アルミナ基板または窒化アルミニウム基等のセラミック基板、または金属ベース基板等の、高放熱基板であることが望ましい。
【0027】
発光素子基板63の側面に、第1絶縁シート621が貼付されている。第1絶縁シート621は、たとえばポリイミド製テープである。ポリイミドは絶縁性能が高いため、数十マイクロメートル程度の厚さで十分な絶縁性を確保できる。なお、図8において第1絶縁シート621は発光素子基板63の左側の側面に貼付されているが、右側の側面には貼付されていない。第1絶縁シート621は、発光素子基板63の側面全周に貼付されていてもよい。
【0028】
発光素子基板63の側面は、第1絶縁シート621を介して筒状の照明枠64で囲まれている。照明枠64は、観察窓27側の面に円形貫通孔である治具孔641を有する。照明枠64の一方の端面は、発光素子633の上面と略同一面上である。すなわち、発光素子633の側方は、照明枠64により囲まれている。照明枠64の他方の端面は第2実装面632よりも図8における下側に突出している。
【0029】
第2実装面632と、照明枠64の突出部分とは、図8における下向きの箱型を形成している。箱の内側に、第2実装面632に照明ケーブル芯線659を実装した実装部分を覆う絶縁性樹脂が充填されている。
【0030】
照明枠64の端部と、先端部材30との間に、絶縁性のスペーサ69が配置されている。照明枠64の外周面に第2絶縁シート622が貼付されている。第2絶縁シート622は、たとえばポリイミド製テープである。ポリイミドは絶縁性能が高いため、数十マイクロメートル程度の厚さで十分な絶縁性を確保できる。第2絶縁シート622は、照明枠64の外周を覆う。第2絶縁シート622は、多層に貼付されている部分があってもよい。第2絶縁シート622は、あらかじめ筒状に成形されていてもよい。
【0031】
図9は、先端部材30の正面図である。図10は、図9におけるX-X線による断面図である。先端部材30は、前述の照明孔31に加えて観察孔39を側面に有する。照明孔31および観察孔39は略長方形断面を有する。照明孔31および照明ケーブル孔32の縁は、開口部側が太い段付きになっている。
【0032】
先端部材30の操作部側の端面から照明孔31に連通する照明ケーブル孔32と、観察孔39に連通する観察ケーブル孔38とが、略平行に配置されている。図10に示すように、照明孔31は、照明ケーブル孔32との接続部分の手前で段差部を介して細くなっている。照明孔31と照明ケーブル孔32との接続部分は、斜めに拡げられている。先端部材30はたとえばステンレス鋼等の、強度が高い金属製である。
【0033】
図11は、図4におけるXI矢視図である。図11においては、ケーブル保持具68の図示を省略する。4本の照明ケーブル芯線659を有することにより、照明ケーブル65の断面は略円形になっている。したがって、挿入部20の内部でねじれ等を生じて、他の内蔵物に負荷を加えることを防止できる。
【0034】
図7に戻って説明を続ける。図3におけるVIIB-VIIB断面に表れている部分について説明する。前述のとおり、照明ケーブル65は、ケーブル保持具68により照明ケーブル孔32に固定されている。ケーブル保持具68の端部に設けられた太径部682は、照明ケーブル孔32の外側に位置し、先端部材30に突き当てられている。ケーブル保持具68の構造の詳細については後述する。
【0035】
図7および図8のVIIC-VIIC断面に表れている部分について説明する。第2チューブ652の先端から露出したシールド線655は、図4および図11に示すように、はんだ付け等により平らに成形された状態で、照明枠64の表面に接続されている。
【0036】
図12は、図5におけるXII矢視図である。前述のとおり、第2実装面632には2個のランド635が配置されている。上側のランド635は、右上部分が斜めに切り落とされた形状になっている。二つのランド635の形状が異なることにより、発光素子633の正側電極に接続されているランド635と、負側電極に接続されているランド635とを容易に識別できる。
【0037】
なお、ランド635の数は2個に限定しない。たとえば、白色光用と、狭帯域光用の2種類の発光素子633が第1実装面631に実装される場合、それぞれの発光素子633用のランド635が設けられる。
【0038】
図13は、照明枠64の斜視図である。図14は、図13におけるXIV矢視図である。図15は、図14におけるXV-XV線による断面図である。図13から図15を使用して、照明枠64の形状を説明する。
【0039】
照明枠64は、略四角形断面の筒状である。断面の外形は略長方形であり、断面の内形は略正方形である。図14における左右の壁は、上下の壁に比べて厚くなっている。図14における照明枠64の右側の壁の外面は、上側の部分が下側の部分に比べて一段窪んだ階段状の形状である。そのため、図14における右側の壁の上半分は、上下の壁と略同一厚さである薄肉部642になっている。すなわち薄肉部642の外面は、照明枠64の軸方向に沿って形成された窪みである。薄肉部642の設けられた面の中央部に、治具孔641が設けられている。薄肉部642に接する角に、略U字形状の照明枠溝643が設けられている。
【0040】
なお、薄肉部642は照明枠64の軸方向に沿った全長にわたって設けられていなくてもよい。たとえば図13における治具孔641よりも手前側の部分に、端面に連続する窪みにより薄肉部642が形成されており、治具孔641よりも奥側は下側と上側とが同じ厚さになっていてもよい。
【0041】
照明枠64は、導体製である。照明枠64は、金属製であることが望ましい。照明枠64は、銅合金製であることがさらに望ましい。照明枠64は、真鍮製であることがさらにのぞましい。照明枠64は導電性樹脂製または導電性セラミックス製であってもよい。以下の説明では、照明枠64は半田付け可能な金属製である場合を例にして説明する。
【0042】
図14に示すように、内面の角部は、照明枠溝643が設けられた側の端面から途中まで円弧状に除去されている。図15に示すように、照明枠溝643が設けられた側と反対側の端部に突当部645が設けられている。図14に二点鎖線で示すように、照明枠溝643が設けられた側から発光素子基板63が挿入された場合、発光素子基板63の縁が突当部645に突き当てられる。
【0043】
図11に示すように、薄肉部642の外側にシールド線655が接続されて、半田接続部649が形成される。薄肉部642が設けられているため、半田接続部649の盛り上がりを少なくできる。そのため、先端部材30を小型化できる。シールド線655をはんだ付けにより照明枠64に接続する場合、照明枠64の表面には、錫メッキ等の、はんだ付け性を向上させる表面処理が施されていてもよい。
【0044】
はんだ付けの前またははんだ付けの後に、第2チューブ652で覆われたシールド線655が、照明枠溝643の部分を通って発光素子基板63の背面側に折り返されてもよい。照明枠溝643により、シールド線655の余剰部分と照明孔31とが干渉しないように整形できる。
【0045】
照明枠溝643の部分を通って、4本の照明ケーブル芯線659が照明枠64の内側に引き込まれてもよい。照明枠溝643が設けられているため、照明枠64を低くできる。そのため、先端部材30を小型化できる。
【0046】
図16および図17は、スペーサ69の斜視図である。スペーサ69は、略C字板状の鍔部693と、鍔部693の両面からそれぞれ略C字板状に突出する第1突起691および第2突起692を有する。
【0047】
第1突起691、第2突起692および鍔部693の内面は、滑らかな円弧状の曲面を形成する。第1突起691は、外面の4か所に平面部を有する。スペーサ69は、図8に示すように第1突起691が照明枠64の端部に嵌め込まれ、鍔部693が照明枠64の端部に突き当てられる形状である。
【0048】
図18は、ケーブル保持具68の斜視図である。図19は、ケーブル保持具68の断面図である。ケーブル保持具68は、円環状の太径部682と、太径部682の一方の面から突出する4本のケーブル保持爪681とを有する。太径部682の外径は、照明ケーブル孔32の内径よりも大きい。それぞれのケーブル保持爪681は、外面に外面突起685を、内面に内面突起686を有する。内面突起686の端部は鈍角になっている。
【0049】
なお、ケーブル保持爪681は4本に限定しない。ケーブル保持爪681は、2本以上の任意の数であってもよい。
【0050】
図7のVIIB-VIIB断面の部分に戻って説明を続ける。図7においては図示を省略するが、照明ケーブル孔32の内面により外面突起685が押圧されて、4本のケーブル保持爪681は内向きに変形する。内面突起686が外皮656に喰い込んで、照明ケーブル65を強固に保持する。内面突起686の先端は鈍角であるため、外皮656は内面突起686により破断されない。
【0051】
図20および図21は、照明光学系の組立手順を説明する説明図である。以下の説明では担当者が手作業で照明光学系を組み立てる場合を例にして説明する。工程ごとに異なる担当者が作業を行なってもよい。組立工程の一部または全部が、組立用ロボット等の自動組立装置により行なわれてもよい。
【0052】
担当者は、リール巻等の形態で供給されている照明ケーブル65を所定の長さに切断する(ステップS501)。所定の長さは、たとえば先端部23から操作部40およびユニバーサルコード59を経由してコネクタ部50に到達するまでの長さよりも若干長い程度である。所定の長さは、先端部23から操作部40までの長さ程度であってもよい。
【0053】
担当者は、切断した照明ケーブル65の端部をケーブル保持具68に挿通する(ステップS502)。以後の説明ではケーブル保持爪681が向いている側の照明ケーブル65の端部に対する処理について説明する。
【0054】
担当者は、照明ケーブル65の端部を第1チューブ651に挿通する(ステップS503)。担当者は、照明ケーブル65の端部を先端部材30の照明ケーブル孔32側から挿通して、照明孔31から突出させる(ステップS504)。前述のように、照明孔31と照明ケーブル孔32との接続部分が斜めに拡げられているため、担当者は照明ケーブル65の端部を容易に照明孔31から突出させられる。
【0055】
担当者は、所定の長さの外皮656および図示を省略する抑え巻を除去して、照明ケーブル芯線659とシールド線655とを分離する(ステップS505)。所定の長さは、数センチメートル程度である。担当者は図示を省略する介在をできるだけ外皮656の端部に近い位置で切断して除去する。担当者は、シールド線655を撚り合わせて1本にまとめる。
【0056】
担当者は4本の照明ケーブル芯線659それぞれの被覆を所定の長さで除去する(ステップS506)。所定の長さは数ミリメートル程度である。担当者は、照明ケーブル芯線659の被覆を除去した部分を2本ずつ撚り合わせる。どの照明ケーブル芯線659同士をより合わせるかは、被覆の色で定められている。
【0057】
担当者は、撚り合わせた照明ケーブル芯線659を図5に示すように略L字型に成形して、半田をプレコートする。担当者は、2組の照明ケーブル芯線659をそれぞれ発光素子基板63のランド635に接続する(ステップS507)。どちらのランド635にどちらの組を接続するかは、被覆の色で定められている。以上により、ランド635に照明ケーブル芯線659が実装される。
【0058】
担当者は、発光素子基板63の側面に第1絶縁シート621を貼付する(ステップS508)。担当者は、発光素子基板63に照明枠64を被せて、隙間が大きいと判断した場合にのみ、第1絶縁シート621を貼付してもよい。担当者は、発光素子基板63が照明枠64にちょうど収容される状態になるまで、第1絶縁シート621の貼付と、照明枠64との間の隙間の確認とを繰り返してもよい。
【0059】
なお、発光素子基板63に照明枠64を被せる際、担当者は図11に示されているように、治具孔641が設けられた面を照明ケーブル芯線659が引き出される方向に向ける。
【0060】
発光素子基板63および照明枠64を高精度で製造可能である場合、発光素子基板63の側面に第1絶縁シート621を1周巻いた状態で、発光素子基板63が照明枠64にちょうど収容される寸法にすることが望ましい。発光素子基板63の側面と、発光素子基板63の内部電極との間の距離を十分に確保できる場合、第1絶縁シート621を貼付しない状態で発光素子基板63が照明枠64にちょうど収容される寸法にしてもよい。
【0061】
担当者は、照明枠64の内側に発光素子基板63を挿入する。担当者は、第1実装面631を突当部645に突き当てた状態で、発光素子基板63と照明枠64とを仮固定する(ステップS509)。仮固定には、たとえばシアノアクリレート系接着剤等の短時間で硬化する接着剤を使用する。仮固定に粘性の低い接着剤を使用する場合、担当者は治具孔641から接着剤を滴下してもよい。滴下された接着剤は、毛細管現象により発光素子基板63と照明枠64の内面との間に広がりながら硬化する。なお、ステップS509において、エポキシ系接着剤等を使用した強固な接着が行なわれてもよい。
【0062】
担当者は、撚り合わせてあるシールド線655を所定の長さに切断した第2チューブ652に挿通する。第2チューブ652の先端から、シールド線655が数ミリメートル露出した状態になる。担当者は、第2チューブ652に熱を加えて収縮させることにより、シールド線655と第2チューブ652とを固定する(ステップS510)。
【0063】
担当者は、外皮656の端部と、第2チューブ652の端部とを覆うように、第1チューブ651の位置を調整する。担当者は、第1チューブ651に熱を加えて収縮させることにより、外皮656と、第2チューブ652と第1チューブ651とを固定する(ステップS511)。
【0064】
担当者は、シールド線655の先端を平らに成形して、半田をプレコートする。担当者は、照明枠64の薄肉部642にシールド線655を半田により接続する(ステップS512)。以下の説明では、シールド線655と照明枠64とを半田付けにより接続した部分を半田接続部649と記載する。
【0065】
半田接続部649は、シールド線655を構成する金属線と、金属線同士を接続する半田とにより構成されている。図11に示すように、半田接続部649の表面は平らに成形されていることが望ましい。担当者は、半田接続部649の表面をたとえばヤスリ等を用いて整形してもよい。
【0066】
担当者は、スペーサ69を照明枠64に取り付ける(ステップS513)。具体的には、担当者はスペーサ69の開口部と、照明枠溝643との向きをそろえた状態で、スペーサ69の第1突起691を照明枠64の内側に挿入する。担当者は、第1突起691と照明枠64の端面とが突き当たる状態まで押し込み、スペーサ69と照明枠64とを仮固定する。仮固定には、たとえばシアノアクリレート系接着剤等の短時間で硬化する接着剤を使用する。
【0067】
担当者は、スペーサ69を上にした状態で照明枠64を保持する。担当者は、第2実装面632と、発光素子基板63とにより形成された箱の中に、絶縁性樹脂を注入して硬化させる(ステップS514)。絶縁性樹脂により、照明ケーブル芯線659を半田付けした実装部分が保護される。同時に、絶縁性樹脂により、発光素子基板63と、照明枠64とスペーサ69とが強固に接着される。
【0068】
担当者は、照明枠64の外周に第2絶縁シート622を貼付する(ステップS515)。担当者は、第2絶縁シート622の表面に接着剤を塗布した後に、照明枠64を照明孔31の内部に挿入する(ステップS516)。担当者は、余剰の接着剤を拭き取った後に、所定の硬化条件で接着剤を硬化させる。
【0069】
担当者は、ケーブル保持具68を照明ケーブル孔32に押し込んで固定する(ステップS517)。ケーブル保持具68は、弾性により照明ケーブル孔32の内部に固定される。照明ケーブル孔32の内面に、ケーブル保持具68の爪を保持する窪みが設けられていてもよい。担当者は、ケーブル保持具68と照明ケーブル孔32とを接着固定してもよい。
【0070】
担当者は、照明カバー61を照明孔31の端部に接着固定する(ステップS518)。この際、担当者は照明カバー61の縁と照明孔31の内面との間に接着剤が十分に回り込ませることにより、照明カバー61と照明孔31との間を水密にする。以上により、先端部材30に固定された状態の照明光学系が完成する。
【0071】
照明ケーブル65の他端側は、コネクタ部50の電気コネクタ51に接続される。なお、照明ケーブル65は、操作部40の内部で接続された他のケーブルを介して電気コネクタ51に接続されてもよい。
【0072】
照明ケーブル芯線659等の、発光素子633の電源経路は、殆どの部分がシールド線655およびシールド線655と導通する照明枠64により覆われている。シールド線655は、電気コネクタ51を介して内視鏡用プロセッサのシグナルGND(Ground)、すなわち患者回路のGNDに接続される。
【0073】
先端部材30は、湾曲部22内部の湾曲機構および軟性部21の外装を構成する可撓管内の金属部材を介して、操作部40およびコネクタ部50に設けられた金属部材に導通している。これらの金属部材は、コネクタ部50の内部等に設けられたコンデンサを介して内視鏡用プロセッサの筐体、すなわちフレームGNDに容量接続される。内視鏡10を構成する金属部材をフレームGNDに接続する構造は従来から使用されているため、詳細については説明を省略する。
【0074】
シールド線655と発光素子633とは、第1絶縁シート621、照明ケーブル芯線659と発光素子基板63との接続部を覆う絶縁性樹脂、第2チューブ652、および、照明ケーブル芯線659の被覆等により絶縁されている。シールド線655と、先端部材30および内視鏡10を構成する金属部分とは、第2絶縁シート622、第2チューブ652、外皮656等により絶縁されている。発光素子633の電源回路のうち、GND側は、電気コネクタ51を介して患者回路のGND電位等に接続される。
【0075】
発光素子633と、内視鏡10を構成する金属部材とは、照明ケーブル芯線659と発光素子基板63との接続部を覆う絶縁性樹脂、スペーサ69および照明ケーブル芯線659の被覆等により絶縁されている。
【0076】
すなわち、本実施の形態の内視鏡10では、コネクタ部50以外の部分においては、発光素子633と、内視鏡10を構成する金属部材と、シールド線655とは、それぞれ互いに絶縁されている。このような絶縁構造により、医用電気機器に要求される電気安全性が確保されている。
【0077】
本実施の形態の照明光学系が組み込まれた内視鏡10の使用方法の概要を説明する。内視鏡用プロセッサから、照明ケーブル65を介して発光素子633に電源が供給される。供給された電源の電流に応じた輝度で発光素子633が発光して、観察窓27の視野方向を照明する。発光素子633の発光輝度は、たとえば内視鏡用プロセッサの自動調光機能により調整される。医師等のユーザの操作に基づいて、発光輝度が調整されてもよい。
【0078】
患者、医師または内視鏡10の先端部23周辺に配置された器具等が静電気により帯電しており、先端部23との間で放電が発生する場合がある。仮に放電による電流が発光素子633を経由した場合、発光素子633が損傷を受ける可能性がある。
【0079】
しかしながら、本実施の形態の内視鏡10においては、発光素子633は発光面を除き導体である照明枠64に囲まれている。照明枠64からシールド線655を介してコネクタ部50に繋がる導電経路が避雷針の役割を果たすことにより、放電による電流により発光素子633が破損する可能性を低減できる。
【0080】
発光素子633で発生した熱について説明する。第1絶縁シート621および第2絶縁シート622に厚さ数十マイクロメートル程度のシートを使用した場合、発光素子633で発生した熱は熱伝導によりこれらのシートを通過して照明枠64に到達する。
【0081】
したがって発光素子633で発生した熱は、照明ケーブル芯線659と、シールド線655の両方を介して操作部側に伝導しながら、挿入部20の内部に拡散する。すなわち、シールド線655は熱伝導線の機能を果たす。
【0082】
すなわち、発光素子633に電源を供給する照明ケーブル65に加えて、照明枠64およびシールド線655も、発光素子633で発生した熱を放散させる放熱経路の役割を果たす。両方の放熱経路により、発光素子633の温度上昇を低減できる。
【0083】
本実施の形態によると、静電気による破損が生じにくい内視鏡10を提供できる。本実施の形態によると、発光素子633の温度上昇を防止した内視鏡10を提供できる。
【0084】
照明ケーブル芯線659は、先端で2本ずつ撚り合わせているため、仮に1本の照明ケーブル芯線659が破断した場合であっても内視鏡検査に支障を及ぼさない内視鏡10を提供できる。
【0085】
先端部材30にステンレス等の金属を使用することにより、たとえば鉗子起上機能を備える十二指腸用内視鏡等の、先端部23に複雑な構造を有する内視鏡10であっても細径化および先端硬性長の短縮を図れる。
【0086】
シールド線655と照明枠64との接続方法は、半田づけに限定しない。たとえばロー付け、超音波溶接、または導電性接着剤等により、シールド線655と照明枠64とが接続されてもよい。
【0087】
内視鏡10は、側視型に限定しない。内視鏡10は、先端部23の端面に観察窓27および照明窓60を備える、いわゆる直視型であってもよい。内視鏡10は、挿入方向に対して斜めの向きに観察窓27および照明窓60を備える、いわゆる斜視型であってもよい。
【0088】
[変形例-1]
図22は、照明枠64と発光素子基板63とを固定する工程の変形例を説明する説明図である。図22に示す工程は、図20を使用して説明したステップS509の変形例である。
【0089】
担当者は、照明枠64の内面のうち、治具孔641が設けられた面とは反対側の面に少量の接着剤を塗布した後に、発光素子基板63を照明枠64の内側に挿入する。なお担当者は、照明枠64の内面の代わりに、発光素子基板63の側面に少量の接着剤を塗布しておいてもよい。
【0090】
担当者は、第1実装面631を突当部645に突き当てた後に、図22に示すように治具孔641に円柱状の治具18を差し込んで発光素子基板63を押圧し、照明枠64の内面に押し当てる。担当者は、押圧を続けながら、接着剤を硬化させる。
【0091】
治具18は、円柱状に限定しない。治具18は、照明枠64を押さえる機構を含んでいてもよい。治具18は、押圧力を適切な強さに設定する機構を含んでいてもよい。
【0092】
本変形例によると、仮固定時に発光素子基板63と照明枠64との位置関係がずれることによる、発光素子633から放射される照明光の向きのばらつきを防止した内視鏡10を提供できる。
【0093】
[変形例-2]
本変形例は、照明ケーブル65がシールド線655を備えない内視鏡10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0094】
照明ケーブル65は、図6を使用して説明した4本の照明ケーブル芯線659に加えて、1本の導体線を有する。導体線は絶縁性被覆により覆われている。4本の照明ケーブル芯線659と導体線との外周に、抑え巻が巻かれている。抑え巻は軟性樹脂製の外皮656により覆われている。
【0095】
照明ケーブル65の端部で、外皮656が除去されて導体線と照明ケーブル芯線659とが分離される。導体線の先端の絶縁性被覆が除去されて、照明枠64に接続される。本変形例によると、第2チューブ652および第1チューブ651を取り付ける工程を省略できる。
【0096】
なお、導体線は絶縁性被覆に覆われていなくてもよい。そのようにする場合には、外皮656を除去した後に、第2チューブ652および第1チューブ651を組み付けて、照明枠64に接続される箇所以外を絶縁することが望ましい。
【0097】
[実施の形態2]
本実施の形態は、第1絶縁シート621を使用しない内視鏡10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。図23は、実施の形態2の照明部組66の分解図である。図24および図25は、実施の形態2の発光素子基板63の斜視図である。
【0098】
発光素子基板63は、実施の形態1のランド635の代わりに、第2実装面632から突出する接続ピン636を有する。接続ピン636は、照明ケーブル芯線659と同数であっても、ランド635と同様に2個であってもよい。
【0099】
図24に示すように、発光素子基板63は側面に照明枠接続部638を備える。照明枠接続部638は、はんだ付け可能なランドであり、発光素子基板63を構成する絶縁性素材によって、接続ピン636とは絶縁されている。照明枠接続部638を有さない側面も、発光素子基板63内部の配線材から絶縁されている。
【0100】
図25に示すように、発光素子基板63は第1実装面631に略正方形に窪んだ素子凹部634を有する。素子凹部634の寸法は、発光素子633より一回り大きい。素子凹部634の底部には、発光素子633を実装するランドが配置されている。発光素子基板63は、素子凹部634に発光素子633が実装された状態で供給される。実装された発光素子633は、1個であっても、複数個であってもよい。
【0101】
発光素子基板63は、発光波長を変換する蛍光体を有さない発光素子633と、素子凹部634内に充填されており発光素子633を覆う蛍光体とを有してもよい。発光素子633を第1実装面631に実装した後に、蛍光体を含む樹脂を充填および硬化させることにより、このような発光素子基板63が製作される。発光素子基板63が蛍光体を含む樹脂により封止されるため、耐久性の高い発光素子基板63を実現できる。
【0102】
図20を使用して説明したステップS507において、担当者は、照明ケーブル芯線659の被覆を除去した部分に半田をプレコートした後に、接続ピン636に沿った状態に配置して、はんだ付けを行なう。作業者は、照明ケーブル芯線659に熱収縮チューブを挿通しておき、半田付けした部分を熱収縮チューブで覆ってもよい。
【0103】
本実施の形態においては、第1絶縁シート621を使用しない。すなわち、図20を使用して説明したステップS508は不要である。
【0104】
図20を使用して説明したステップS509において、担当者は照明枠接続部638に半田をプレコートする。担当者は、照明枠64の内側に発光素子基板63を挿入する。担当者は、第1実装面631を突当部645に突き当てた状態で、照明枠64に半田ごてを当てて、照明枠接続部638にプレコートした半田を溶融させる。半田ごてを離すと、照明枠64と発光素子基板63との仮固定が終了する。
【0105】
本実施の形態によると、第1絶縁シート621を使用しないため、第1絶縁シート621の皺等に起因する発光素子基板63と照明枠64との間の傾きを防止できる。したがって、発光素子633から放射される照明光の向きのばらつきを防止した内視鏡10を提供できる。
【0106】
本実施の形態によると、照明枠64と発光素子基板63との固定を容易に行なえる。作業者は、照明枠64に半田ごてをあてることにより、照明枠64と発光素子基板63とを必要に応じて取り外せる。
【0107】
本実施の形態によると、照明枠64と発光素子基板63とが熱伝導率の高い半田により密に接合される。したがって、発光素子633で発生した熱が第1絶縁シート621を介した場合よりも容易に照明枠64へ伝わる。以上により、実施の形態1よりも発光素子633の温度上昇を低減できる。
【0108】
[実施の形態3]
本実施の形態は、照明枠64の壁面の一部をシールド線655により構成する内視鏡10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0109】
図26は、実施の形態3の照明部組66の構成を説明する説明図である。図26は、第2絶縁シート622を貼付する前の照明部組66を、図11と同様の方向から見た図である。図26においても、図11と同様にケーブル保持具68の図示を省略する。
【0110】
図27は、実施の形態3の照明枠64の斜視図である。図27は、図13と同様の方向から見た斜視図であり、図14を使用して説明した突当部645が奥側に設けられている。照明枠64には、突当部645が設けられていない側に開口する接続溝648が設けられている。
【0111】
接続溝648は、照明枠64の筒状部分を厚さ方向に貫通し、照明枠64を外側から見た場合に略U字型の形状である。接続溝648の側面は、照明枠64の内面と外面とを接続している。
【0112】
図26に戻って説明を続ける。本実施の形態においては、シールド線655の先端部分は接続溝648に差し込まれた状態で、照明枠64に半田付けされる。半田接続部649の表面は、照明枠64の外面と略同一面を形成し、半田接続部649の裏面は照明枠64の内面と略同一面を形成する。すなわち、シールド線655と、シールド線655を固定する半田とが一体になって接続溝648を埋めることにより、照明枠64の壁面を構成する。
【0113】
なお半田接続部649の外面は、半田付けの完了後に、たとえば研磨またはやすり掛けにより、照明枠64の外面と略同一面になるように加工されてもよい。
【0114】
本実施の形態によると、シールド線655が多い照明ケーブル65を使用する場合であっても、照明枠64から半田接続部649が盛り上がることを防止できる。シールド線655が多い照明ケーブル65を使用することにより、外来ノイズ等による静電気が発光素子633に影響を及ぼしにくい内視鏡10を提供できる。
【0115】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0116】
(付記1)
挿入部の先端に配置された先端部材に固定された観察窓と、
前記観察窓の視野方向を照明する照明部とを備え、
前記照明部は、
発光素子と、
前記発光素子に電源を供給する電源線および該電源線に沿って延びる導体線と、
前記発光素子と前記電源線との接続部を囲み、前記電源線と絶縁されて、前記導体線と導通する導電性の照明枠と
を備える内視鏡。
【0117】
(付記2)
前記導体線は、前記電源線の周囲を囲むシールド線である
付記1に記載の内視鏡。
【0118】
(付記3)
前記シールド線のうち、前記電源線の周囲から取り外された部分は、絶縁性チューブに挿通されている
付記2に記載の内視鏡。
【0119】
(付記4)
前記シールド線は、それぞれが絶縁性の被覆で覆われた4本の前記電源線の周囲を囲む
付記2または付記3に記載の内視鏡。
【0120】
(付記5)
前記電源線は、前記発光素子の正側電極と負側電極にそれぞれ2本ずつ接続されている
付記4に記載の内視鏡。
【0121】
(付記6)
前記先端部材は導電性であり、前記照明枠および前記電源線のいずれとも絶縁されている
付記1から付記5のいずれか一つに記載の内視鏡。
【0122】
(付記7)
前記発光素子は、発光素子基板の第1実装面に実装されており、
前記電源線は、前記第1実装面と反対側である第2実装面に実装されている
付記1から付記6のいずれか一つに記載の内視鏡。
【0123】
(付記8)
前記照明枠は、前記発光素子基板の側面を囲む筒状であり、
前記第1実装面は前記照明枠の端部に配置され、
前記第2実装面は、前記照明枠の内部に配置されている
付記7に記載の内視鏡。
【0124】
(付記9)
前記第2実装面と、前記照明枠の内面とにより形成された箱の内側に、前記発光素子と前記電源線との接続部を覆う絶縁性樹脂が配置されている
付記8に記載の内視鏡。
【0125】
(付記10)
前記発光素子基板の側面と、前記照明枠の内面との間に、第1絶縁シートが配置されている
付記8または付記9に記載の内視鏡。
【0126】
(付記11)
前記導体線は、前記照明枠の外面に接続されている
付記8から付記10のいずれか一つに記載の内視鏡。
【0127】
(付記12)
前記照明枠の前記第2実装面側の端部に固定されたスペーサを備える
付記8から付記11のいずれか一つに記載の内視鏡。
【0128】
(付記13)
前記スペーサは、端部が前記照明枠に挿入されている
付記12に記載の内視鏡。
【0129】
(付記14)
前記先端部材は、前記照明枠を収容する照明孔を備え、
前記照明枠の外面と、前記照明孔の内面との間に、第2絶縁シートが配置されている
付記7から付記13のいずれか一つに記載の内視鏡。
【0130】
(付記15)
前記照明枠は、一方の端部に縁から内向きに突出する突当部を備え、
前記発光素子基板は、前記照明枠の内側から前記突当部に突き当てられている
付記7から付記14のいずれか一つに記載の内視鏡。
【0131】
(付記16)
前記照明部は、第1実装面に前記発光素子が実装されており、第2実装面から前記電源線が接続される接続ピンが突出する発光素子基板を備える
付記1から付記6のいずれか一つに記載の内視鏡。
【0132】
(付記17)
前記発光素子基板は、前記第1実装面に凹部を有し、
前記発光素子は前記凹部の内部に配置されている
付記16に記載の内視鏡。
【0133】
(付記18)
内視鏡用プロセッサに接続されるコネクタ部を有し、
前記コネクタ部が前記内視鏡用プロセッサに接続された場合に、前記導体線は、前記内視鏡用プロセッサの患者回路のGNDに接続される
付記1から付記17のいずれか一つに記載の内視鏡。
【0134】
(付記19)
前記先端部材は、前記導体線と前記電源線とが挿通される照明ケーブル孔を備え、
前記導体線の外側と前記照明ケーブル孔の内面との間に配置された環状のケーブル保持具を備える
付記1から付記18のいずれか一つに記載の内視鏡。
【0135】
(付記20)
前記ケーブル保持具は、前記照明ケーブル孔の内径よりも太い太径部と、前記太径部から一方に突出する複数のケーブル保持爪とを備え、
前記ケーブル保持爪は、前記照明ケーブル孔の内部で前記導体線および前記電源線を保持する
付記19に記載の内視鏡。
【0136】
(付記21)
側視型である、付記1から付記20のいずれか一つに記載の内視鏡。
【0137】
(付記22)
直視型である、付記1から付記20のいずれか一つに記載の内視鏡。
【符号の説明】
【0138】
10 内視鏡
18 治具
20 挿入部
21 軟性部
22 湾曲部
23 先端部
24 内視鏡用キャップ
25 起上台
26 折止部
27 観察窓
30 先端部材
31 照明孔
32 照明ケーブル孔
38 観察ケーブル孔
39 観察孔
40 操作部
41 湾曲ノブ
42 チャンネル入口
43 鉗子栓
50 コネクタ部
51 電気コネクタ
59 ユニバーサルコード
60 照明窓
61 照明カバー
621 第1絶縁シート
622 第2絶縁シート
63 発光素子基板
631 第1実装面
632 第2実装面
633 発光素子
634 素子凹部(凹部)
635 ランド
636 接続ピン
638 照明枠接続部
64 照明枠
641 治具孔
642 薄肉部
643 照明枠溝
645 突当部
648 接続溝
649 半田接続部
65 照明ケーブル
651 第1チューブ(絶縁性チューブ)
652 第2チューブ(絶縁性チューブ)
655 シールド線(導体線)
656 外皮
659 照明ケーブル芯線(電源線)
66 照明部組
68 ケーブル保持具
681 ケーブル保持爪
682 太径部
685 外面突起
69 スペーサ
691 第1突起
692 第2突起
693 鍔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27