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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】電動機監視装置および電動機監視方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/14 20060101AFI20241101BHJP
   H02P 23/08 20060101ALI20241101BHJP
   H02P 21/20 20160101ALI20241101BHJP
【FI】
H02P23/14
H02P23/08
H02P21/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023544959
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032583
(87)【国際公開番号】W WO2023032182
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】三好 将仁
(72)【発明者】
【氏名】金丸 誠
(72)【発明者】
【氏名】古谷 真一
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-186794(JP,A)
【文献】特開2016-116273(JP,A)
【文献】特開2002-027774(JP,A)
【文献】特開平07-167928(JP,A)
【文献】特開平05-236607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P21/00-25/03
25/04
25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の固定子電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電動機の固定子電流を検出する電流検出回路と、
前記電動機に関する情報を取得するモータ特性入力器と、
前記電圧検出回路、前記電流検出回路および前記モータ特性入力器からの情報をもとに出力値を算出して出力する論理演算回路とを備え、
前記モータ特性入力器は、
前記電動機の固定子相抵抗、極対数および定格出力と、
前記電動機に供給される電源周波数と、
前記電動機に電源電圧および前記電源周波数が供給されたときの負荷率100%における負荷特性である定格すべりおよび定格回転角速度の少なくとも一方、定格効率および定格三相電流実効値とを取得し、
前記論理演算回路は、
前記モータ特性入力器が前記定格すべりおよび前記定格回転角速度のうちの前記定格すべりのみを取得した場合は、前記電源周波数と前記極対数と前記定格すべりとから前記定格回転角速度の値を求め、
前記モータ特性入力器が前記定格すべりおよび前記定格回転角速度のうちの前記定格回転角速度のみを取得した場合は、前記電源周波数と前記極対数と前記定格回転角速度とから前記定格すべりの値を求め、
前記論理演算回路は、
前記固定子電圧、前記固定子電流および前記固定子相抵抗から前記電動機の固定子鎖交磁束を算出する磁束算出部と、
前記固定子鎖交磁束、前記固定子電流および前記極対数から全トルクを算出する全トルク算出部と、
前記定格出力および前記定格効率から全損失を算出し、前記固定子相抵抗および前記定格三相電流実効値から一次銅損を算出し、前記定格すべりおよび前記定格出力から二次銅損を算出し、前記全損失、前記一次銅損、前記二次銅損および前記定格回転角速度から無負荷損トルクを算出する無負荷損トルク算出部と、
前記全トルクおよび前記無負荷損トルクから推定トルクを算出し、前記推定トルクを前記出力値として出力する推定トルク算出部とを備えたことを特徴とする電動機監視装置。
【請求項2】
前記モータ特性入力器は、前記定格出力における漂遊負荷損の割合である漂遊負荷損割合の情報を取得し、
前記無負荷損トルク算出部は、前記定格出力に前記漂遊負荷損割合を掛け合わせたものを前記漂遊負荷損として算出し、前記全損失、前記一次銅損、前記二次銅損、前記漂遊負荷損および前記定格回転角速度から前記無負荷損トルクを算出し、
前記推定トルク算出部は、前記全トルクおよび前記無負荷損トルクから一次推定トルクを算出し、前記定格出力および前記定格回転角速度から定格トルクを算出し、前記定格トルク、前記一次推定トルクおよび前記漂遊負荷損割合から漂遊負荷損トルクを算出し、前記一次推定トルクから前記漂遊負荷損トルクを除くことにより前記推定トルクを算出することを特徴とする請求項1に記載の電動機監視装置。
【請求項3】
前記論理演算回路は、
前記定格出力、前記定格回転角速度、前記電源周波数、前記極対数、前記定格すべりおよび前記推定トルクから推定出力を算出し、前記推定出力を前記出力値として出力する推定出力算出部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の電動機監視装置。
【請求項4】
前記論理演算回路は、
前記推定出力を、前記固定子電圧および前記固定子電流から求めた入力電力で除算して推定効率を算出し、前記推定効率を前記出力値として出力する推定効率算出部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の電動機監視装置。
【請求項5】
前記磁束算出部は、前記固定子相抵抗に前記固定子電流を掛けたものを前記固定子電圧から引き去った値を積分処理することにより前記固定子鎖交磁束を算出し、
前記積分処理は、前記電源周波数をカットオフ周波数とするローパスフィルタを2つと、前記電源周波数の1/10以下の周波数をカットオフ周波数とするハイパスフィルタを1つとを直列につなげたフィルタによって行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機監視装置。
【請求項6】
前記論理演算回路からの出力を表示するあるいは前記論理演算回路からの出力をもとに警報を発する出力器を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電動機監視装置。
【請求項7】
前記論理演算回路は、
前記固定子電圧あるいは前記固定子電流から推定電源周波数を検出する電源周波数検出部と、
前記定格出力、前記定格回転角速度、前記推定電源周波数、前記極対数、前記定格すべりおよび前記推定トルクから推定出力を算出し、前記推定出力を前記出力値として出力する推定出力算出部とを備え、
前記磁束算出部は、前記固定子相抵抗に前記固定子電流を掛けたものを前記固定子電圧から引き去った値を積分処理することにより前記固定子鎖交磁束を算出し、
前記積分処理は、前記推定電源周波数をカットオフ周波数とするローパスフィルタを2つと、前記推定電源周波数の1/10以下の周波数をカットオフ周波数とするハイパスフィルタを1つとを直列につなげたフィルタによって行うことを特徴とする請求項1または2に記載の電動機監視装置。
【請求項8】
電動機の固定子電圧、前記電動機の固定子電流および前記電動機の固定子相抵抗から固定子鎖交磁束を算出する磁束算出ステップと、
前記固定子鎖交磁束、前記固定子電流および前記電動機の極対数から全トルクを算出する全トルク算出ステップと、
前記電動機の定格出力および前記電動機の定格効率から全損失を算出し、前記固定子相抵抗および前記電動機の定格三相電流実効値から一次銅損を算出し、前記電動機の定格すべりおよび前記定格出力から二次銅損を算出し、前記全損失、前記一次銅損、前記二次銅損および前記電動機の定格回転角速度から無負荷損トルクを算出する無負荷損トルク算出ステップと、
前記全トルクおよび前記無負荷損トルクから推定トルクを算出する推定トルク算出ステップとを含む電動機監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電動機監視装置および電動機監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
閉鎖配電盤などを有するコントロールセンタにおいては、電気回路の制御、監視および保護が行われる。電動機につながる配線の電流および電圧を検出することで、電動機のトルクを監視する電動機監視装置も搭載することができる。電動機のトルクを推定する方法として、電動機の固定子側の電流および磁束をそれぞれ二相に換算した後、その外積を計算することでトルクが演算できることが知られている。本手法では、三相のうち少なくとも二相の電圧および電流を測定すればよく、その他に必要なパラメータは固定子抵抗のみである。ただし、実際にはこの電流と磁束の外積から求められるモータのトルクは、実際の電動機が出力するトルクよりも大きい。これは、実際には電動機の軸には伝わらず、損失として電動機の中で熱あるいは振動として消費されるエネルギーがあるからである。つまり、上記手法で演算したトルクは、鉄損、機械損、および漂遊負荷損に相当するトルクだけ実際より高い値となっており、誤差が存在する。誤差を補正する方法として、例えば、電動機のT型等価回路において、鉄損抵抗を考慮し、鉄損抵抗に流れる電流はトルクには寄与しないものとして除き、有効な電流である負荷電流を演算した上で、負荷電流と磁束の外積を演算し、鉄損に相当するトルクを含まないトルクを演算する方法がある(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-046723号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】S. Yamamoto, H. Hirahara and B. A. Shantha, "A Method to Estimate Torque and Stray Load Loss of Induction Motor without Torque Detector," 2019 IEEE Energy Conversion Congress and Exposition (ECCE), 2019, pp.2341-2346
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電動機の鉄損抵抗を把握することは容易ではない。鉄損抵抗を含む電動機のパラメータあるいは機械損を取得するためには、一般に無負荷試験をする必要がある。無負荷試験のためには、電動機を同期速度で外部から回転させるか、カップリングを外したうえで運転する必要がある。鉄損を機械損と分離して鉄損抵抗を把握するためには、複数の電圧値における無負荷試験結果が必要となる。通常の運転状態とは別の条件で運転する必要がありその実施は容易ではなく、結果としてトルク推定が容易ではないという課題があった。
【0006】
本願は、上述の課題を解決するためになされたものであり、鉄損抵抗を求めることなくトルク推定を行う電動機監視装置および電動機監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される電動機監視装置は、電動機の固定子電圧を検出する電圧検出回路と、電動機の固定子電流を検出する電流検出回路と、電動機に関する情報を取得するモータ特性入力器と、電圧検出回路、電流検出回路およびモータ特性入力器からの情報をもとに出力値を算出して出力する論理演算回路とを備え、モータ特性入力器は、電動機の固定子相抵抗、極対数および定格出力と、電動機に供給される電源周波数と、電動機に電源電圧および電源周波数が供給されたときの負荷率100%における負荷特性である定格すべりおよび定格回転角速度の少なくとも一方、定格効率および定格三相電流実効値とを取得し、論理演算回路は、モータ特性入力器が定格すべりおよび定格回転角速度のうちの定格すべりのみを取得した場合は、電源周波数と極対数と定格すべりとから定格回転角速度の値を求め、モータ特性入力器が定格すべりおよび定格回転角速度のうちの定格回転角速度のみを取得した場合は、電源周波数と極対数と定格回転角速度とから定格すべりの値を求め、論理演算回路は、固定子電圧、固定子電流および固定子相抵抗から電動機の固定子鎖交磁束を算出する磁束算出部と、固定子鎖交磁束、固定子電流および極対数から全トルクを算出する全トルク算出部と、定格出力および定格効率から全損失を算出し、固定子相抵抗および定格三相電流実効値から一次銅損を算出し、定格すべりおよび定格出力から二次銅損を算出し、全損失、一次銅損、二次銅損および定格回転角速度から無負荷損トルクを算出する無負荷損トルク算出部と、全トルクおよび無負荷損トルクから推定トルクを算出し、推定トルクを出力値として出力する推定トルク算出部とを備える。



【発明の効果】
【0008】
本願に開示される電動機監視装置は、固定子電圧、固定子電流および固定子相抵抗から電動機の固定子鎖交磁束を算出する磁束算出部と、固定子鎖交磁束、固定子電流および極対数から全トルクを算出する全トルク算出部と、定格出力および定格効率から全損失を算出し、固定子相抵抗および定格三相電流実効値から一次銅損を算出し、定格すべりおよび定格出力から二次銅損を算出し、全損失、一次銅損、二次銅損および定格回転角速度から無負荷損トルクを算出する無負荷損トルク算出部と、全トルクおよび無負荷損トルクから推定トルクを算出し、推定トルクを出力値として出力する推定トルク算出部とを備えているので、鉄損抵抗を求めることなくトルク推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1による電動機監視装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態1における論理演算回路の構成を示す図である。
図3】実施の形態1における論理演算回路の動作を説明するフローチャートである。
図4】実施の形態1における磁束算出部、全トルク算出部および推定トルク算出部の処理を示すブロック線図である。
図5】実施の形態1における磁束算出部の積分処理に用いるフィルタのボード線図である。
図6】実施の形態1における推定出力算出部の処理を示すブロック線図である。
図7】実施の形態1における推定効率算出部の処理を示すブロック線図である。
図8】実施の形態2による電動機監視装置の構成を示す図である。
図9】実施の形態2における論理演算回路の構成を示す図である。
図10】実施の形態2における論理演算回路の動作を説明するフローチャートである。
図11】実施の形態2における推定トルク算出部の処理を示すブロック線図である。
図12】実施の形態3による電動機監視装置の構成を示す図である。
図13】実施の形態3における論理演算回路の構成を示す図である。
図14】実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3における電動機監視装置のハードウェアの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る電動機監視装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による電動機監視装置の構成を示す図である。図1において、電力系統の主母線1から分岐して引き込まれた主回路2に、配線用遮断器3、電磁接触器4、計器用変圧器5および計器用変成器6が設けられており、この主回路2に電動機7が接続されている。電動機7は例えば三相誘導電動機であり、この電動機7に負荷装置8が接続されている。
【0012】
電動機監視装置10は、電動機7が接続された主回路2の電圧を検出する電圧検出回路11と、主回路2の電流を検出する電流検出回路12と、電動機7に関する情報を取得するモータ特性入力器14と、電圧検出回路11、電流検出回路12およびモータ特性入力器14からの情報をもとに出力値を算出して出力する論理演算回路13と、論理演算回路13の出力を表示する出力器15とを備えている。
【0013】
電圧検出回路11は、計器用変圧器5を通して主回路2の電圧を検出して、検出した主回路2の電圧を所定の信号に変換して論理演算回路13に出力する。電圧検出回路11は、例えば、三相の固定子電圧v、v、vを検出し、三相の固定子電圧v、v、vを二相の固定子電圧vα、vβに変換し、論理演算回路13に出力する。三相の固定子電圧v、v、vから二相の固定子電圧vα、vβへの変換は、例えば、以下の式(1)によって行われる。また、零相電圧がゼロであるとして、電圧検出回路11において三相の固定子電圧v、v、vのうちのvおよびvの2つの電圧を検出し、以下の式(2)によって二相の固定子電圧vα、vβに変換してもよい。ここで検出される固定子電圧は、電動機7の固定子巻線に印加される電圧である。
【0014】
【数1】
【0015】
電流検出回路12は、計器用変成器6を通して主回路2の負荷電流を検出して、検出した主回路2の負荷電流を所定の信号に変換して論理演算回路13に出力する。電流検出回路12は、例えば、三相の固定子電流i、i、iを検出し、三相の固定子電流i、i、iを二相の固定子電流iα、iβに変換し、論理演算回路13に出力する。ここで検出される固定子電流は、電動機7の固定子巻線に流れる電流である。
【0016】
モータ特性入力器14は、電動機7に関する情報を取得して入力するものであり、取得された情報は論理演算回路13に出力される。モータ特性入力器14によって取得される情報は、電動機7の銘板またはテストレポートのうち少なくとも一方からの情報であり、例えば、電動機7の固定子相抵抗R、極対数pおよび定格出力Pと、電動機7に供給される電源周波数fと、主母線1に接続されている電源の電源電圧および電源周波数fが電動機7に供給されるときの負荷率100%における負荷特性である定格すべりs100および定格回転角速度ω100の少なくとも一方、定格効率η100および定格三相電流実効値I100とである。定格回転角速度ω100[rad/s]は、例えば、銘板またはテストレポートに示されている定格回転数N100[rpm]から求めることができる。定格すべりs100と定格回転角速度ω100とは、いずれか一方の情報を入手すれば、電源周波数fと極対数pとを用いて互いに換算することができる。電源周波数fは、例えば、テストレポートに記載されている値であり、50Hzまたは60Hzである。モータ特性入力器14は、例えば、電動機7に関する情報を取得するインターフェースであり、キーボードあるいはタッチパネル、通信回線から情報を受け取る受信機などである。なお、論理演算回路13に出力された情報は、必要に応じて記憶装置に保存してもよい。
【0017】
固定子相抵抗Rは、例えば、テストレポートに示された端子間の巻線抵抗である端子間抵抗Rの半分である。なお、テストレポートに示されている端子間の巻線抵抗は、計器用変圧器5が主回路2に接続された位置である測定点から電動機7までの配線の抵抗は考慮されていない。よって、計器用変圧器5が主回路2に接続された位置である測定点において電動機7の端子間抵抗Rを測定し、その値をもとに固定子相抵抗Rを求めてもよい。
【0018】
出力器15は、論理演算回路13からの出力を表示するものであり、例えば、出力値を表示するディスプレイであり、出力値を通信回線に送信する送信機などである。出力器15は、論理演算回路13からの出力をもとに警報を発する警報器であってもよい。出力器15が警報器のときは、例えば、論理演算回路13からの出力があらかじめ定められた値を超えたときに警報を発する。
【0019】
次に、実施の形態1による論理演算回路13について説明する。モータ特性入力器14において定格すべりs100または定格回転角速度ω100のいずれか一方のみを取得した場合、論理演算回路13は、電源周波数fと極対数pとを用いて、以下に示す式(3)あるいは式(4)によって定格すべりs100および定格回転角速度ω100の一方から他方の値を求める。モータ特性入力器14において、定格すべりs100および定格回転角速度ω100の両方の値を取得している場合は、この処理は不要である。
【0020】
【数2】
【0021】
図2は実施の形態1における論理演算回路13の構成を示す図であり、図3は実施の形態1における論理演算回路13の動作を説明するフローチャートである。なお、論理演算回路13は、電圧検出回路11、電流検出回路12およびモータ特性入力器14から入手した情報を記憶装置に保存し、必要に応じて記憶装置から読み出してもよい。図3に示すフローチャートにおいて、ステップS01は磁束算出ステップであり、ステップS02は全トルク算出ステップであり、ステップS03は無負荷損トルク算出ステップであり、ステップS04は推定トルク算出ステップであり、ステップS05は推定出力算出ステップであり、ステップS06は推定効率算出ステップである。
【0022】
ステップS01では、磁束算出部131は、固定子電圧vα、vβ、固定子電流iα、iβおよび固定子相抵抗Rの情報から電動機7の固定子鎖交磁束ψα、ψβを算出し、ステップS02に進む。固定子鎖交磁束を時間tで微分した値である誘起電圧は、固定子電圧から抵抗による電圧降下を除いた値であり、以下の式(5)(6)で表される。そのため、以下の式(5)(6)のそれぞれの右辺を時間tで積分することにより、固定子鎖交磁束ψα、ψβを得ることができる。例えば、固定子相抵抗Rに固定子電流iαを掛けたものを固定子電圧vαから引き去った値を時間tで積分することにより固定子鎖交磁束ψαが得られ、固定子相抵抗Rに固定子電流iβを掛けたものを固定子電圧vβから引き去った値を時間tで積分することにより固定子鎖交磁束ψβが得られる。
【0023】
【数3】
【0024】
ステップS02では、全トルク算出部132は、ステップS01で求めた固定子鎖交磁束ψα、ψβからなる固定子鎖交磁束ベクトルと固定子電流iα、iβからなる固定子電流ベクトルとの外積に電動機7の極対数pを掛けることにより、以下の式(7)から全トルクTallを算出し、ステップS03に進む。
【0025】
【数4】
【0026】
ステップS03では、無負荷損トルク算出部133は、定格出力P、定格効率η100、固定子相抵抗R、定格三相電流実効値I100、定格すべりs100および定格回転角速度ω100の情報から、無負荷損トルクTnllを算出し、ステップS04に進む。ステップS03では、無負荷損トルク算出部133は、定格出力Pおよび定格効率η100の情報から、以下の式(8)によって負荷率100%における全損失Pallを算出する。また、固定子相抵抗Rおよび定格三相電流実効値I100の情報から以下の式(9)によって負荷率100%における一次銅損Pc1を求め、定格すべりs100と定格出力Pの情報から以下の式(10)によって負荷率100%における二次銅損Pc2を求める。最後に、全損失Pallから一次銅損Pc1および二次銅損Pc2の値を引き去り、定格回転角速度ω100で割ることにより、以下の式(11)によって無負荷損トルクTnllを算出し、ステップS04に進む。なお、実施の形態1による無負荷損トルク算出部133では、漂遊負荷損は十分小さく無視できるものとしている。よって、ここで求めた無負荷損トルクTnllは、鉄損トルクTironと機械損トルクTmechとを足し合わせたものに相当する。
【0027】
【数5】
【0028】
ステップS04では、推定トルク算出部134は、ステップS02で求めた全トルクTallからステップS03で求めた無負荷損トルクTnllを引き去ることにより、以下の式(12)によって推定トルクT’を算出し、ステップS05に進む。算出された推定トルクT’の情報は、例えば、論理演算回路13の出力値として出力器15に出力される。以上のステップS01からステップS04の処理によって、負荷試験および無負荷試験によって鉄損抵抗を求めることなく、さらに、鉄損と機械損とを区別して求めることなく、トルク推定を行うことができる。
【0029】
【数6】
【0030】
図4は、実施の形態1における磁束算出部131、全トルク算出部132および推定トルク算出部134の処理を示すブロック線図である。図4において、G(s)は磁束算出部131において式(5)(6)のそれぞれの右辺を時間tで積分するときの伝達関数を表している。G(s)は、例えば、G(s)=1/sである。
【0031】
積分の演算において例えばG(s)=1/sによって固定子鎖交磁束ψα、ψβを求めようとすると、低周波数における伝達関数G(s)のゲインが大きいため、固定子電圧vα、vβあるいは固定子電流iα、iβの検出値に、直流成分あるいは低周波成分が含まれている場合は算出された固定子鎖交磁束ψα、ψβの値が不正確になることがある。よって、実施の形態1における磁束算出部131では、例えば、以下の式(13)の伝達関数によって示されたフィルタを用いて積分処理を行う。式(13)は、時定数Tのローパスフィルタを2つと、時定数Tのハイパスフィルタを1つとを直列につなげたものを示している。時定数Tに対応するローパスフィルタのカットオフ周波数をf、時定数Tに対応するハイパスフィルタのカットオフ周波数をfとしたときに、ローパスフィルタのカットオフ周波数fは電源周波数fとし、ハイパスフィルタのカットオフ周波数fは電源周波数fの1/10以下とする。
【0032】
【数7】
【0033】
図5は、実施の形態1における磁束算出部131の積分処理に用いる式(13)に示すフィルタのボード線図である。図5において、実線は式(13)に示すフィルタの特性を示しており、点線は理想的な積分器であるG(s)=1/sで示されるフィルタの特性を示している。電源周波数fの1/10以下の周波数をカットオフ周波数fとするハイパスフィルタを備えることにより、電圧検出回路11の出力である固定子電圧vα、vβあるいは電流検出回路12の出力である固定子電流iα、iβにオフセットに起因する誤差を含んでいる場合に、低周波数のゲインを小さくすることによりオフセットに起因する誤差の影響を小さくすることができるとともに、ハイパスフィルタによる位相の影響を小さくすることができる。また、電源周波数fをカットオフ周波数とするローパスフィルタを2つ直列につなげることにより、電源周波数fにおいてフィルタの位相およびゲインが理想的な積分器であるG(s)=1/sと一致するため、電源周波数fにおいてフィルタの出力が理想的な積分器を通したときの結果と一致する。また、式(13)に示すフィルタによって積分処理を行うことにより、逆相トルクも正確に考慮することができる。以上のように、磁束算出部131において、電源周波数fをカットオフ周波数fとするローパスフィルタを2つと、電源周波数fの1/10以下の周波数をカットオフ周波数fとするハイパスフィルタを1つとを直列につなげたフィルタによって積分処理を行うことにより、低周波数の誤差成分の影響を抑えた積分処理を行うことができる。
【0034】
図3に示すフローチャートのステップS05では、推定出力算出部135は、定格出力P、定格回転角速度ω100、電源周波数f、極対数p、定格すべりs100および推定トルクT’から推定出力Poutを算出し、ステップS06に進む。ステップS05では、推定出力算出部135は、最初に、定格出力Pを定格回転角速度ω100で割ることにより、以下の式(14)によって負荷率100%での定格トルクT100を求める。次に、トルクとすべりが比例関係にあると仮定し、電源周波数fと、極対数pと、定格すべりs100と、定格トルクT100と、ステップS04で求めた推定トルクT’とから、以下の式(15)によって推定回転角速度ωを算出する。最後に、推定トルクT’に推定回転角速度ωを掛けることにより、以下の式(16)によって推定出力Poutを算出し、ステップS06に進む。図6は、推定出力算出部135の処理を示すブロック線図である。算出された推定出力Poutの情報は、例えば、論理演算回路13の出力値として出力器15に出力される。以上のステップS01からステップS05の処理によって、負荷試験および無負荷試験によって鉄損抵抗を求めることなく、さらに、鉄損と機械損とを区別して求めることなく、出力推定を行うことができる。
【0035】
【数8】
【0036】
ステップS06では、推定効率算出部136は、推定出力Pout、固定子電圧vα、vβおよび固定子電流iα、iβから、推定効率η’を算出し、論理演算回路13の処理を終了する。ステップS06では、推定効率算出部136は、最初に、固定子電圧vα、vβおよび固定子電流iα、iβから、以下の式(17)によって入力電力Pinを求める。次に、ステップS05で求めた推定出力Poutを入力電力Pinで割ることにより、以下の式(18)によって推定効率η’を算出し、論理演算回路13の処理を終了する。図7は、推定効率算出部136の処理を示すブロック線図である。算出された推定効率η’の情報は、例えば、論理演算回路13の出力値として出力器15に出力される。以上のステップS01からステップS06の処理によって、負荷試験および無負荷試験によって鉄損抵抗を求めることなく、さらに、鉄損と機械損とを区別して求めることなく、効率推定を行うことができる。
【0037】
【数9】
【0038】
式(17)によって入力電力Pinを求めるとしたが、電圧検出回路11から三相の固定子電圧v、v、vを取得し、電流検出回路12から三相の固定子電流i、i、iを取得し、Pin=v+v+vによって入力電力Pinを求めてもよい。さらに、零相電流がゼロであれば、電圧検出回路11においてuw間電圧のvuwおよびvw間電圧のvvwを取得し、電流検出回路12から三相の固定子電流のうち固定子電流i、iを取得し、Pin=vuw+vvwによって入力電力Pinを求めてもよい。
【0039】
以上のように、実施の形態1による電動機監視装置10は、電動機7の固定子電圧vα、vβを検出する電圧検出回路11と、電動機7の固定子電流iα、iβを検出する電流検出回路12と、電動機7に関する情報を取得するモータ特性入力器14と、電圧検出回路11、電流検出回路12およびモータ特性入力器14からの情報をもとに出力値を算出して出力する論理演算回路13とを備え、モータ特性入力器14は、電動機7の固定子相抵抗R、極対数pおよび定格出力Pと、電動機7に供給される電源周波数fと、電動機7に電源電圧および電源周波数fが供給されたときの負荷率100%における負荷特性である定格すべりs100および定格回転角速度ω100の少なくとも一方、定格効率η100および定格三相電流実効値I100とを取得し、論理演算回路13は、固定子電圧vα、vβ、固定子電流iα、iβおよび固定子相抵抗Rから電動機7の固定子鎖交磁束ψα、ψβを算出する磁束算出部131と、固定子鎖交磁束ψα、ψβ、固定子電流iα、iβおよび極対数pから全トルクTallを算出する全トルク算出部132と、定格出力Pおよび定格効率η100から全損失Pallを算出し、固定子相抵抗Rおよび定格三相電流実効値I100から一次銅損Pc1を算出し、定格すべりs100および定格出力Pから二次銅損Pc2を算出し、全損失Pall、一次銅損Pc1、二次銅損Pc2および定格回転角速度ω100から無負荷損トルクTnllを算出する無負荷損トルク算出部133と、全トルクTallおよび無負荷損トルクTnllから推定トルクT’を算出し、推定トルクT’を出力値として出力する推定トルク算出部134とを備えたので、鉄損抵抗を求めることなくトルク推定を行うことができる。
【0040】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2による電動機監視装置10aの構成を示す図である。図8に示す実施の形態2による電動機監視装置10aを図1に示す実施の形態1による電動機監視装置10と比較すると、論理演算回路13が論理演算回路13aに、モータ特性入力器14がモータ特性入力器14aになっている。実施の形態2による電動機監視装置10aの他の構成は、実施の形態1による電動機監視装置10の構成と同じである。
【0041】
実施の形態2による電動機監視装置10aのモータ特性入力器14aにおいては、実施の形態1におけるモータ特性入力器14と同じ情報を取得するとともに、定格出力Pに対する、定格出力Pにおける漂遊負荷損PSLLの割合である漂遊負荷損割合xの情報を取得する。漂遊負荷損割合xは、例えば0.5%である。漂遊負荷損割合xは、例えば0.1%から10%までの値でもよい。
【0042】
図9は実施の形態2における論理演算回路13aの構成を示す図であり、図10は実施の形態2における論理演算回路13aの動作を説明するフローチャートである。図9に示す実施の形態2における論理演算回路13aを図2に示す実施の形態1における論理演算回路13と比較すると、無負荷損トルク算出部133が無負荷損トルク算出部133aになっており、推定トルク算出部134が推定トルク算出部134aになっている。実施の形態2における論理演算回路13aの他の構成は、実施の形態1における論理演算回路13の構成と同じである。同様に、図10に示す実施の形態2における論理演算回路13aの動作を説明するフローチャートを図3に示す実施の形態1における論理演算回路13の動作を説明するフローチャートと比較すると、ステップS03がステップS03aになっており、ステップS04がステップS04aになっている。実施の形態2における論理演算回路13aの動作の他のステップは、実施の形態1における論理演算回路13と同じである。
【0043】
ステップS03aでは、無負荷損トルク算出部133aは、式(8)によって全損失Pallを算出し、式(9)によって一次銅損Pc1を求め、式(10)によって二次銅損Pc2を求めるのは、実施の形態1における無負荷損トルク算出部133と同じである。次に、無負荷損トルク算出部133aは、定格出力Pに漂遊負荷損割合xを掛け合わせることにより、以下の式(19)から定格出力Pにおける漂遊負荷損PSLLを算出する。例えば、漂遊負荷損割合xを0.5%とした場合は、以下の式(20)によって定格出力Pにおける漂遊負荷損PSLLが算出される。最後に、全損失Pallから一次銅損Pc1、二次銅損Pc2および定格出力Pにおける漂遊負荷損PSLLを除いた値を定格回転角速度ω100で割ることにより、以下の式(21)によって無負荷損トルクTnllを算出し、ステップS04aに進む。実施の形態2における無負荷損トルク算出部133aでは、定格出力Pにおける漂遊負荷損PSLLを考慮し、より正確に無負荷損トルクTnllを求めている。
【0044】
【数10】
【0045】
ステップS04aでは、推定トルク算出部134aは、最初に、ステップS02で求めた全トルクTallからステップS03aで求めた無負荷損トルクTnllを除くことにより、以下の式(22)によって一次推定トルクT”を算出する。次に、式(14)によって、定格出力Pおよび定格回転角速度ω100から負荷率100%での定格トルクT100を求める。負荷率100%における漂遊負荷損によるトルク損失は負荷率100%の定格トルクT100に漂遊負荷損割合xを掛け合わせたものであり、さらに、漂遊負荷損によるトルク損失である漂遊負荷損トルクTSLLが運転時のトルクの2乗に比例すると仮定し、定格トルクT100と一次推定トルクT”と漂遊負荷損割合xとから、以下の式(23)によって漂遊負荷損トルクTSLLを算出する。例えば、漂遊負荷損割合xを0.5%とした場合は、以下の式(24)によって漂遊負荷損トルクTSLLを算出する。最後に、一次推定トルクT”から漂遊負荷損トルクTSLLを除くことにより、以下の式(25)によって推定トルクT’を算出し、ステップS05に進む。算出された推定トルクT’の情報は、例えば、論理演算回路13の出力値として出力器15に出力される。実施の形態2における推定トルク算出部134aでは、一次推定トルクT”から漂遊負荷損トルクTSLLを除くことにより、より正確に推定トルクT’を求めている。図11は、実施の形態2における推定トルク算出部134aの処理を示すブロック線図である。
【0046】
【数11】
【0047】
以上のように、実施の形態2による電動機監視装置10aは、モータ特性入力器14aは、定格出力Pにおける漂遊負荷損PSLLの割合である漂遊負荷損割合xの情報を取得し、無負荷損トルク算出部133aは、定格出力Pに漂遊負荷損割合xを掛け合わせたものを漂遊負荷損PSLLとして算出し、全損失Pall、一次銅損Pc1、二次銅損Pc2、漂遊負荷損PSLLおよび定格回転角速度ω100から無負荷損トルクTnllを算出し、推定トルク算出部134aは、全トルクTallおよび無負荷損トルクTnllから一次推定トルクT”を算出し、定格出力Pおよび定格回転角速度ω100から定格トルクT100を算出し、定格トルクT100、一次推定トルクT”および漂遊負荷損割合xから漂遊負荷損トルクTSLLを算出し、一次推定トルクT”から漂遊負荷損トルクTSLLを除くことにより推定トルクT’を算出するので、鉄損抵抗を求めることなく、漂遊負荷損による影響を含めて正確にトルク推定を行うことができる。
【0048】
実施の形態3.
図12は、実施の形態3による電動機監視装置10bの構成を示す図である。図12に示す実施の形態3による電動機監視装置10bを図1に示す実施の形態1による電動機監視装置10と比較すると、論理演算回路13が論理演算回路13bになっている。実施の形態3による電動機監視装置10bの他の構成は、実施の形態1による電動機監視装置10の構成と同じである。
【0049】
図13は、実施の形態3における論理演算回路13bの構成を示す図である。図13に示す実施の形態3における論理演算回路13bを図2に示す実施の形態1における論理演算回路13と比較すると、電源周波数検出部137が追加されており、磁束算出部131が磁束算出部131bになっており、推定出力算出部135が推定出力算出部135bになっている。実施の形態3における論理演算回路13bの他の構成は、実施の形態1における論理演算回路13の構成と同じである。
【0050】
電源周波数検出部137は、電圧検出回路11からの固定子電圧vα、vβまたは電流検出回路12からの固定子電流iα、iβを取得し、周波数解析を行うことにより、主母線1に接続されている電源の電源周波数を推定し、推定電源周波数fesを検出する。電源周波数検出部137は、例えば、固定子電圧vα、vβまたは固定子電流iα、iβの各周波数の周波数成分を求め、最も大きな周波数成分を持った周波数を推定電源周波数fesとする。
【0051】
磁束算出部131bは、式(5)(6)のそれぞれの右辺を、式(13)の伝達関数によって示されたフィルタを用いて積分処理を行うが、ローパスフィルタのカットオフ周波数fは電源周波数検出部137で検出した推定電源周波数fesとし、ハイパスフィルタのカットオフ周波数fは推定電源周波数fesの1/10以下とする。推定電源周波数fesの情報からカットオフ周波数fおよびfを定めることにより、磁束算出部131bにおける積分処理をより正確に行うことができる。
【0052】
全トルク算出部132、無負荷損トルク算出部133、推定トルク算出部134および推定効率算出部136における処理は、実施の形態1における処理と同じである。推定出力算出部135bは、定格出力P、定格回転角速度ω100、推定電源周波数fes、極対数p、定格すべりs100および推定トルクT’から推定出力Poutを算出する。推定出力算出部135bは、最初に、定格出力Pを定格回転角速度ω100で割ることにより、式(14)によって負荷率100%での定格トルクT100を求めることは、実施の形態1における推定出力算出部135と同じである。推定出力算出部135bは、次に、トルクとすべりが比例関係にあると仮定し、推定電源周波数fesと、極対数pと、定格すべりs100と、定格トルクT100と、ステップS04で求めた推定トルクT’とから、以下の式(26)によって推定回転角速度ωを算出する。最後に、推定トルクT’に推定回転角速度ωを掛けることにより、式(16)によって推定出力Poutを算出する。推定電源周波数fesの情報から推定回転角速度ωを算出することにより、推定出力算出部135bにおいてより正確に推定出力Poutを算出することができる。
【0053】
【数12】
【0054】
電源周波数は、通常は、電源周波数は50Hzあるいは60Hzであり、ほとんど変動しない。しかし、電源周波数が50Hzあるいは60Hzから変動することがある。また50Hzあるいは60Hzとは異なる電源周波数が用いられることがある。実施の形態3による電動機監視装置10bは、論理演算回路13bは、固定子電圧vα、vβあるいは固定子電流iα、iβから推定電源周波数fesを検出する電源周波数検出部137と、定格出力P、定格回転角速度ω100、推定電源周波数fes、極対数p、定格すべりs100および推定トルクT’から推定出力Poutを算出し、推定出力Poutを出力値として出力する推定出力算出部135bとを備え、磁束算出部131bは、固定子相抵抗Rに固定子電流iα、iβを掛けたものを固定子電圧vα、vβから引き去った値を積分処理することにより固定子鎖交磁束ψα、ψβを算出し、積分処理は、推定電源周波数fesをカットオフ周波数fとするローパスフィルタを2つと、推定電源周波数fesの1/10以下の周波数をカットオフ周波数fとするハイパスフィルタを1つとを直列につなげたフィルタによって行うことにより、実施の形態1による電動機監視装置10の効果に加えて、電源周波数が変動する、あるいは、50Hzあるいは60Hzとは異なる電源周波数が用いられたときでも、推定トルクT’を精度よく求めることができる。
【0055】
なお、電動機監視装置10bにおいて、モータ特性入力器14を実施の形態2に示したモータ特性入力器14aとし、論理演算回路13bにおいて、無負荷損トルク算出部133を実施の形態2に示した無負荷損トルク算出部133aとし、推定トルク算出部134を実施の形態2に示した推定トルク算出部134aとしてもよい。これにより、実施の形態2による電動機監視装置10aの効果に加えて、電源周波数が変動する、あるいは、50Hzあるいは60Hzとは異なる電源周波数が用いられたときでも、推定トルクT’あるいは推定出力Poutを精度よく求めることができる。
【0056】
図14は、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3による電動機監視装置のハードウェアの一例を示す模式図である。論理演算回路13、13a、13bは、メモリ202に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ201によって実現される。メモリ202は、プロセッサ201が実行する各処理における一時記憶装置としても使用される。また、複数の処理回路が連携して上記機能を実行してもよい。さらに、専用のハードウェアによって上記機能を実現してもよい。専用のハードウェアによって上記機能を実現する場合は、専用のハードウェアは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC、FPGA、あるいは、これらを組み合わせたものである。上記機能は、専用ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせ、あるいは、専用ハードウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現してもよい。メモリ202は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROMなどの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、または、これらを組み合わせたものである。プロセッサ201、メモリ202、電圧検出回路11、電流検出回路12、モータ特性入力器14および出力器15は、互いにバス接続されている。
【0057】
本願は、様々な例示的な実施の形態が記載されているが、1つまたは複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0058】
1 主母線、2 主回路、3 配線用遮断器、4 電磁接触器、5 計器用変圧器、6 計器用変成器、7 電動機、8 負荷装置、10、10a、10b 電動機監視装置、11 電圧検出回路、12 電流検出回路、13、13a、13b 論理演算回路、14、14a モータ特性入力器、15 出力器、131、131b 磁束算出部、132 全トルク算出部、133、133a 無負荷損トルク算出部、134、134a 推定トルク算出部、135、135b 推定出力算出部、136 推定効率算出部、137 電源周波数検出部、201 プロセッサ、202 メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14