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特許7580622空気調和機、空気調和機の制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】空気調和機、空気調和機の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20241101BHJP
   F25B 41/40 20210101ALI20241101BHJP
【FI】
F25B1/00 331E
F25B1/00 304Q
F25B41/40 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023549258
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021035091
(87)【国際公開番号】W WO2023047534
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】服部 弘憲
(72)【発明者】
【氏名】本村 耕二郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝
(72)【発明者】
【氏名】児玉 拓也
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-052884(JP,A)
【文献】特開2019-086239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 40/02
F25B 41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、該凝縮器により凝縮された冷媒を過冷却状態にする過冷却装置と、該過冷却装置を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、該膨張弁により膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を有する冷媒回路と、
前記圧縮機によって圧縮された後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の圧力を測定する第1センサと、
前記過冷却装置によって過冷却状態にされた後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の温度を測定する第2センサと、
前記膨張弁によって膨張した後、かつ前記圧縮機によって圧縮される前の冷媒の圧力または温度を測定する第3センサと、
前記第2センサが測定した温度値で冷媒が飽和液となるときの圧力値を求めると共に、前記第3センサが測定した圧力値または温度値に基づいて前記膨張弁の出口の圧力値を求め、さらに前記第1センサが測定した圧力値と求めた前記飽和液の圧力値との差分dPおよび、求めた前記飽和液の圧力値と前記膨張弁の出口の圧力値との差分dPを求め、求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第1下限値よりも小さい場合には、前記膨張弁の開度を大きくし、求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第1上限値よりも大きい場合には、前記膨張弁の開度を小さくするコントローラと、
を備える空気調和機。
【請求項2】
前記冷媒回路は、前記凝縮器を通過した冷媒のうちの一部の冷媒を分流して前記圧縮機の吸入口へ流すバイパス管と、該バイパス管に設けられ、前記冷媒を膨張させるバイパス膨張弁と、をさらに有し、
前記膨張弁には、前記凝縮器を通過した冷媒のうちの、前記バイパス管に分流されずに流れる残りの冷媒が供給され、前記膨張弁は、その供給された冷媒を膨張させ、
前記過冷却装置は、前記凝縮器を通過して前記バイパス管に分流されるまでの冷媒と前記バイパス膨張弁により膨張された冷媒とを熱交換させて冷媒を過冷却状態にする、
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記コントローラは、前記差分dPに対する前記差分dPの大きさを数式1に示すパラメータKで表す場合に、該パラメータKを数式1により求め、求めた該パラメータKの値が、冷媒通過音の発生が抑制されているときの該パラメータKの値の分布範囲を示す数値範囲に含まれる値であるか否かを判定することにより、冷媒通過音の発生の有無を判定し、求めた該パラメータKの値が前記数値範囲に含まれない値であり、かつ求めた該パラメータKの値が前記数値範囲の第2下限値よりも小さい場合には、冷媒通過音が抑制されていないと判定し、かつ前記膨張弁の開度を大きくし、さらに、求めた該パラメータKの値が前記数値範囲に含まれない値であり、かつ求めた該パラメータKの値が前記数値範囲の第2上限値よりも大きい場合には、冷媒通過音が抑制されていないと判定し、かつ前記膨張弁の開度を小さくする、
請求項1に記載の空気調和機。
K=(dP+dP)/dP・・・(数式1)
【請求項4】
前記コントローラは、前記差分dP に対する前記差分dP の大きさを数式1に示すパラメータKで表す場合に、該パラメータKを数式1により求め、求めた該パラメータKの値が、冷媒通過音の発生が抑制されているときの該パラメータKの値の分布範囲を示す数値範囲に含まれる値であるか否かを判定することにより、冷媒通過音の発生の有無を判定し、求めた該パラメータKの値が前記数値範囲に含まれない値であり、かつ求めた該パラメータKの値が前記数値範囲の第2下限値よりも小さい場合には、冷媒通過音が抑制されていないと判定し、かつ前記膨張弁の開度を大きくし、さらに、求めた該パラメータKの値が前記数値範囲に含まれない値であり、かつ求めた該パラメータKの値が前記数値範囲の第2上限値よりも大きい場合には、冷媒通過音が抑制されていないと判定し、かつ前記膨張弁の開度を小さくする、
請求項2に記載の空気調和機。
K=(dP +dP )/dP ・・・(数式1)
【請求項5】
冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、該凝縮器により凝縮された冷媒を過冷却状態にする過冷却装置と、該過冷却装置を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、該膨張弁により膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記凝縮器を通過した冷媒のうちの一部の冷媒を分流して前記圧縮機の吸入口へ流すバイパス管と、該バイパス管に設けられ、前記冷媒を膨張させるバイパス膨張弁と、を有し、前記膨張弁には、前記凝縮器を通過した冷媒のうちの、前記バイパス管に分流されずに流れる残りの冷媒が供給され、前記膨張弁は、その供給された冷媒を膨張させ、前記過冷却装置は、前記凝縮器を通過して前記バイパス管に分流されるまでの冷媒と前記バイパス膨張弁により膨張された冷媒とを熱交換させて冷媒を過冷却状態にする冷媒回路と、
前記圧縮機によって圧縮された後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の圧力を測定する第1センサと、
前記過冷却装置によって過冷却状態にされた後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の温度を測定する第2センサと、
前記膨張弁によって膨張した後、かつ前記圧縮機によって圧縮される前の冷媒の圧力または温度を測定する第3センサと、
前記第2センサが測定した温度値で冷媒が飽和液となるときの圧力値を求めると共に、前記第3センサが測定した圧力値または温度値に基づいて前記膨張弁の出口の圧力値を求め、さらに前記第1センサが測定した圧力値と求めた前記飽和液の圧力値との差分dPおよび、求めた前記飽和液の圧力値と前記膨張弁の出口の圧力値との差分dPを求め、求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第3下限値よりも小さい場合には、前記バイパス膨張弁の開度を小さくし、求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第3上限値よりも大きい場合には、前記バイパス膨張弁の開度を大きくするコントローラと、
を備える空気調和機。
【請求項6】
前記コントローラは、前記差分dPに対する前記差分dPの大きさを数式1に示すパラメータKで表す場合に、該パラメータKを数式1により求め、求めた該パラメータKの値が、冷媒通過音の発生が抑制されているときの該パラメータKの値の分布範囲を示す数値範囲に含まれる値であるか否かを判定することにより、冷媒通過音の発生の有無を判定し、求めた該パラメータKの値が前記数値範囲に含まれない値であり、かつ求めた該パラメータKの値が前記数値範囲の第4下限値よりも小さい場合には、冷媒通過音が抑制されていないと判定し、かつ前記バイパス膨張弁の開度を小さくし、さらに、求めた該パラメータKの値が前記数値範囲に含まれない値であり、かつ求めた該パラメータKの値が前記数値範囲の第4上限値よりも大きい場合には、冷媒通過音が抑制されていないと判定し、かつ前記バイパス膨張弁の開度を大きくする、
請求項に記載の空気調和機。
K=(dP+dP)/dP・・・(数式1)
【請求項7】
前記冷媒回路は、前記バイパス管へ分流された一部の冷媒以外の他の冷媒を、前記膨張弁につながる接続配管へ流すための接続ユニットを有し、
前記第2センサは、前記接続ユニットに設けられている、
請求項2、4からのいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記第2センサは、前記膨張弁の入口に設けられている、
請求項1からのいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項9】
前記第1センサは、前記圧縮機の出口または、前記膨張弁の入口に設けられている、
請求項1からのいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項10】
前記第3センサは、前記膨張弁の出口に設けられ、前記膨張弁の出口を流れる冷媒の圧力を測定する、
請求項1からのいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項11】
前記第3センサの設置箇所に応じて前記第3センサの測定値を補正するための補正データを記憶する第1記憶装置を有し、
前記コントローラは、前記第3センサが測定した圧力値または温度値および前記補正データに基づいて前記膨張弁の出口の圧力値を求める、
請求項1からのいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項12】
前記第3センサは、前記蒸発器に設けられ、前記蒸発器を流れる冷媒の圧力を測定し、
前記補正データは、前記膨張弁の出口から前記蒸発器の、前記第3センサが設けられた箇所までの冷媒の圧力損失に応じた、前記第3センサの測定値を補正するためのデータであり、
前記コントローラは、前記第3センサが測定した圧力値および前記補正データに基づいて前記膨張弁の出口の前記圧力値を求める、
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項13】
前記冷媒回路を流れる冷媒の物性データを記憶する第2記憶装置を有し、
前記第3センサは、前記蒸発器に設けられ、前記蒸発器を流れる冷媒の温度を測定し、
前記補正データは、前記膨張弁の出口から前記蒸発器の、前記第3センサが設けられた箇所までの冷媒の圧力損失に応じた、前記第3センサの測定値を補正するためのデータであり、
前記コントローラは、前記第3センサが測定した温度値および前記物性データを用いて、前記第3センサが設置された箇所を流れる冷媒の圧力値を求め、求めた冷媒の該圧力値および前記補正データに基づいて前記膨張弁の出口の前記圧力値を求める、
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項14】
前記冷媒回路を流れる冷媒の物性データを記憶する第2記憶装置を有し、
前記コントローラは、前記物性データを用いて前記第2センサが測定した温度値で冷媒が飽和液となるときの圧力値を求める、
請求項1から1のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項15】
冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、該凝縮器により凝縮された冷媒を過冷却状態にする過冷却装置と、該過冷却装置を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、該膨張弁により膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を有する冷媒回路を備える空気調和機の制御方法であって、
前記過冷却装置によって過冷却状態にされた後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の温度を測定し、その測定により得た温度値で冷媒が飽和液となるときの圧力値を求める工程と、
前記膨張弁によって膨張した後、かつ前記圧縮機によって圧縮される前の冷媒の圧力または温度を測定し、その測定により得た圧力値または温度値に基づいて前記膨張弁の出口の圧力値を求める工程と、
前記圧縮機によって圧縮された後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の圧力を測定し、その測定により得た圧力値と前記飽和液の圧力値との差分dPおよび、前記飽和液の圧力値と前記膨張弁の出口の圧力値との差分dPを求める工程と、
求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第1下限値よりも小さい場合には、前記膨張弁の開度を大きくし、求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第1上限値よりも大きい場合には、前記膨張弁の開度を小さくする工程と、
を備える空気調和機の制御方法。
【請求項16】
冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、該凝縮器により凝縮された冷媒を過冷却状態にする過冷却装置と、該過冷却装置を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、該膨張弁により膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記凝縮器を通過した冷媒のうちの一部の冷媒を分流して前記圧縮機の吸入口へ流すバイパス管と、該バイパス管に設けられ、前記冷媒を膨張させるバイパス膨張弁と、を有し、前記膨張弁には、前記凝縮器を通過した冷媒のうちの、前記バイパス管に分流されずに流れる残りの冷媒が供給され、前記膨張弁は、その供給された冷媒を膨張させ、前記過冷却装置は、前記凝縮器を通過して前記バイパス管に分流されるまでの冷媒と前記バイパス膨張弁により膨張された冷媒とを熱交換させて冷媒を過冷却状態にする冷媒回路を備える空気調和機の制御方法であって、
前記過冷却装置によって過冷却状態にされた後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の温度を測定し、その測定により得た温度値で冷媒が飽和液となるときの圧力値を求める工程と、
前記膨張弁によって膨張した後、かつ前記圧縮機によって圧縮される前の冷媒の圧力または温度を測定し、その測定により得た圧力値または温度値に基づいて前記膨張弁の出口の圧力値を求める工程と、
前記圧縮機によって圧縮された後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の圧力を測定し、その測定により得た圧力値と前記飽和液の圧力値との差分dPおよび、前記飽和液の圧力値と前記膨張弁の出口の圧力値との差分dPを求める工程と、
求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第3下限値よりも小さい場合には、前記バイパス膨張弁の開度を小さくし、求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第3上限値よりも大きい場合には、前記バイパス膨張弁の開度を大きくする工程と、
を備える空気調和機の制御方法。
【請求項17】
冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、該凝縮器により凝縮された冷媒を過冷却状態にする過冷却装置と、該過冷却装置を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、該膨張弁により膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を有する冷媒回路と、
前記圧縮機によって圧縮された後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の圧力を測定する第1センサと、
前記過冷却装置によって過冷却状態にされた後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の温度を測定する第2センサと、
前記膨張弁によって膨張した後、かつ前記圧縮機によって圧縮される前の冷媒の圧力または温度を測定する第3センサと、
を備える空気調和機を制御するコンピュータに、
前記第2センサが測定した温度値で冷媒が飽和液となるときの圧力値を求めると共に、前記第3センサが測定した圧力値または温度値に基づいて前記膨張弁の出口の圧力値を求め、さらに前記第1センサが測定した圧力値と求めた前記飽和液の圧力値との差分dPおよび、求めた前記飽和液の圧力値と前記膨張弁の出口の圧力値との差分dPを求めるステップと、
求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第1下限値よりも小さい場合には、前記膨張弁の開度を大きくし、求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第1上限値よりも大きい場合には、前記膨張弁の開度を小さくするステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項18】
冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、該凝縮器により凝縮された冷媒を過冷却状態にする過冷却装置と、該過冷却装置を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、該膨張弁により膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記凝縮器を通過した冷媒のうちの一部の冷媒を分流して前記圧縮機の吸入口へ流すバイパス管と、該バイパス管に設けられ、前記冷媒を膨張させるバイパス膨張弁と、を有し、前記膨張弁には、前記凝縮器を通過した冷媒のうちの、前記バイパス管に分流されずに流れる残りの冷媒が供給され、前記膨張弁は、その供給された冷媒を膨張させ、前記過冷却装置は、前記凝縮器を通過して前記バイパス管に分流されるまでの冷媒と前記バイパス膨張弁により膨張された冷媒とを熱交換させて冷媒を過冷却状態にする冷媒回路と、
前記圧縮機によって圧縮された後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の圧力を測定する第1センサと、
前記過冷却装置によって過冷却状態にされた後、かつ前記膨張弁によって膨張する前の冷媒の温度を測定する第2センサと、
前記膨張弁によって膨張した後、かつ前記圧縮機によって圧縮される前の冷媒の圧力または温度を測定する第3センサと、
を備える空気調和機を制御するコンピュータに、
前記第2センサが測定した温度値で冷媒が飽和液となるときの圧力値を求めると共に、前記第3センサが測定した圧力値または温度値に基づいて前記膨張弁の出口の圧力値を求め、さらに前記第1センサが測定した圧力値と求めた前記飽和液の圧力値との差分dPおよび、求めた前記飽和液の圧力値と前記膨張弁の出口の圧力値との差分dPを求めるステップと、
求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第3下限値よりも小さい場合には、前記バイパス膨張弁の開度を小さくし、求めた前記差分dPに対する前記差分dPの大きさが第3上限値よりも大きい場合には、前記バイパス膨張弁の開度を大きくするステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は空気調和機、空気調和機の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機には、室外ユニットが圧縮機、凝縮器、凝縮器および過冷却装置を備え、室内ユニットが膨張弁および蒸発器を備えるものがある。このような空気調和機では、冷媒が、室外ユニットの凝縮器から室内ユニットの膨張弁の入口までを接続する配管を通過するときに音が発生することがある。そこで、空気調和機には、その音を抑制するため、冷媒の温度を測定する温度センサまたは、冷媒の圧力を測定する圧力センサの出力値に基づいて、膨張弁の開度を調整するコントローラを備えるものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、室外ユニットが、凝縮器を通過した冷媒のうちの一部の冷媒を分流するバイパス管と、バイパス管に設けられたバイパス膨張弁と、凝縮器を通過した冷媒のうち、バイパス管に分流されずに流れる残りの冷媒を室外ユニットの出口に導く配管に設けられた室外膨張弁と、を備え、過冷却装置が、凝縮器を通過してバイパス管に分流されるまでの冷媒とバイパス膨張弁により膨張された冷媒を熱交換させる空気調和機において、コントローラが、室外膨張弁の入口にある温度センサによって測定された冷媒の温度値が飽和液温度よりも小さくなるまで、バイパス膨張弁の開度を大きくすることが開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の空気調和機では、室内ユニットが上記バイパス管に分流されずに流れる残りの冷媒を膨張させる室内膨張弁を有するところ、コントローラが室内膨張弁の入口にある圧力センサによって測定された冷媒の圧力値が飽和液圧力よりも大きくなるまで、室外膨張弁の開度を大きくする。
【0005】
また、特許文献2には、特許文献1に記載の室外膨張弁と同様の箇所に設けられた室外膨張弁を備える空気調和機において、圧縮機の吸入圧力を測定する第1圧力センサと圧縮機の吐出圧力を測定する第2圧力センサの出力値に基づいて、室外ユニットの出口と室内ユニットの入口を接続する配管の圧力損失を算出し、算出された圧力損失の値に基づいて、室外膨張弁の開度を調整するコントローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/203624号
【文献】特開2019-20112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の空気調和機では、室内膨張弁の前後で温度、圧力等の冷媒の状態を測定するセンサが存在しないため、室内膨張弁の前後での冷媒の状態が正確に把握できない。その結果、バイパス膨張弁と室外膨張弁の開度をより正確に制御することが難しい。これにより、室内膨張弁を通過するときの冷媒の通過音の発生を十分に抑制することができない。
【0008】
また、特許文献2に記載の空気調和機でも、室内膨張弁の前後で温度、圧力等の冷媒の状態を測定するセンサが存在しない。このため、特許文献2に記載の空気調和機の場合と同様に、室内膨張弁を通過するときの冷媒の通過音の発生を十分に抑制することができない。
【0009】
本開示は上記の課題を解決するためになされたもので、膨張弁を通過するときの冷媒の通過音の発生を十分に抑制することができる空気調和機、空気調和機の制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本開示に係る空気調和機は、冷媒回路と、第1センサと、第2センサと、第3センサと、コントローラと、を備える。冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮器により凝縮された冷媒を過冷却状態にする過冷却装置と、過冷却装置を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張弁により膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を有する。第1センサは、圧縮機によって圧縮された後、かつ膨張弁によって膨張する前の冷媒の圧力を測定する。第2センサは、過冷却装置によって過冷却状態にされた後、かつ膨張弁によって膨張する前の冷媒の温度を測定する。第3センサは、膨張弁によって膨張した後、かつ圧縮機によって圧縮される前の冷媒の圧力または温度を測定する。コントローラは、第2センサが測定した温度値で冷媒が飽和液となるときの圧力値を求めると共に、第3センサが測定した圧力値または温度値に基づいて膨張弁の出口の圧力値を求め、さらに第1センサが測定した圧力値と求めた飽和液の圧力値との差分dPおよび、求めた飽和液の圧力値と膨張弁の出口の圧力値との差分dPを求め、求めた差分dPに対する差分dPの大きさに基づいて膨張弁の開度を調整する。求めた差分dPに対する差分dPの大きさが第1下限値よりも小さい場合には、膨張弁の開度を大きくし、求めた差分dP に対する差分dP の大きさが第1上限値よりも大きい場合には、膨張弁の開度を小さくする。
【発明の効果】
【0011】
本開示の構成によれば、コントローラは、第2センサが測定した温度値で冷媒が飽和液となるときの圧力値を求めると共に、第3センサが測定した圧力値または温度値に基づいて膨張弁の出口の圧力値を求め、さらに第1センサが測定した圧力値と求めた飽和液の圧力値との差分dPおよび、求めた飽和液の圧力値と膨張弁の出口の圧力値との差分dPを求め、求めた差分dPに対する差分dPの大きさに基づいて膨張弁の開度を調整する。その結果、膨張弁の入口で冷媒を液状態にすると共に、膨張弁の出口で冷媒を気液二相状態にして、膨張弁を通過するときの冷媒の通過音の発生を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1に係る空気調和機の冷媒回路図
図2】本開示の実施の形態1に係る空気調和機を冷媒の状態を示すph線図
図3】本開示の実施の形態1に係る空気調和機が備えるコントローラのハードウエア構成図
図4】本開示の実施の形態1に係る空気調和機が備えるコントローラのブロック図
図5】本開示の実施の形態1に係る空気調和機が備えるコントローラが行う弁制御処理のフローチャート
図6】本開示の実施の形態1に係る空気調和機が備えるコントローラが行うパラメータK値導出処理のフローチャート
図7A】本開示の実施の形態1に係る空気調和機が備えるコントローラが演算するパラメータKの値が0.8のときの冷媒の状態を示すph線図
図7B】本開示の実施の形態1に係る空気調和機が備えるコントローラが演算するパラメータKの値が2のときの冷媒の状態を示すph線図
図7C】本開示の実施の形態1に係る空気調和機が備えるコントローラが演算するパラメータKの値が10のときの冷媒の状態を示すph線図
図8】本開示の実施の形態2に係る空気調和機の冷媒回路図
図9】本開示の実施の形態3に係る空気調和機の冷媒回路図
図10】本開示の実施の形態3に係る空気調和機が備える記憶装置のブロック図
図11】本開示の実施の形態4に係る空気調和機の冷媒回路図
図12】本開示の実施の形態5に係る空気調和機が備えるコントローラのブロック図
図13】本開示の実施の形態1に係る空気調和機の冷媒回路の変形例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態に係る空気調和機、空気調和機の制御方法およびプログラムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。
【0014】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る空気調和機は、室内膨張弁を通過する冷媒の通過音を抑制するため、バイパス膨張弁の開度を調整するコントローラを備える。まず、図1および図2を参照して、コントローラの制御対象である空気調和機の構成について説明する。
【0015】
図1は、実施の形態1に係る空気調和機1Aの冷媒回路図である。なお、図1では、理解を容易にするため、四方弁を省略している。また、コントローラ40の接続関係を省略している。
【0016】
図1に示すように、空気調和機1Aは、空気調和を行う部屋の外に設置される室外ユニット10と、その部屋の内部に設置される室内ユニット20と、室外ユニット10と室内ユニット20を接続する接続ユニット30と、室外ユニット10および室内ユニット20等の動作を制御するコントローラ40と、を備える。
【0017】
室外ユニット10は、室内ユニット20および接続ユニット30と共に、冷凍サイクル装置の一態様である空気調和機を構成するユニットである。室外ユニット10は、冷媒を圧縮する圧縮機11と、冷媒と空気を熱交換させる室外熱交換器12と、バイパス流路に設けられたバイパス膨張弁13と、室外熱交換器12により熱交換された冷媒を過冷却させる過冷却装置14と、を備える。
【0018】
圧縮機11は、吸入した低圧の冷媒を圧縮して高圧の冷媒に変換する装置である。圧縮機11には、例えば、ロータリー圧縮機、スクロール圧縮機が用いられている。
【0019】
圧縮機11は、冷媒を吸入する吸入口と圧縮した冷媒を吐出する吐出口を有する。そして、圧縮機11の吸入口と吐出口は、図示しない四方弁の第1ポートと第2ポートに接続されている。
【0020】
その図示しない四方弁は、これらポートのほか、接続ユニット30が有する接続配管31に接続された第3ポートと、室外熱交換器12につながる冷媒管51に接続された第4ポートとを有する。四方弁は、コントローラ40により制御されることにより、ポート同士の接続関係を切り替える。その結果、四方弁は、圧縮機11の吐出口が接続ユニット30の接続配管31につながる状態と吐出口が室外熱交換器12の冷媒管51につながる状態とに切り替える。これにより、四方弁は、冷媒の流れの向きを切り替えて、空気調和機1Aの運転状態を冷房運転状態と暖房運転状態とに切り替える。なお、以下、空気調和機1Aが冷房運転状態にあるときを冷房運転時という。
【0021】
圧縮機11は、四方弁の切り替えによって空気調和機1Aが冷房運転状態に切り替えられると、吸入口から接続ユニット30の接続配管31内の冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮して室外熱交換器12につながる冷媒管51へ吐出する。これにより、圧縮機11は、室外熱交換器12に高圧の冷媒を供給する。
【0022】
室外熱交換器12は、フィン・アンド・チューブ型の熱交換器であり、冷媒と装置周辺の室外空気を熱交換させる。
【0023】
詳細には、室外熱交換器12には、上述したように、冷房運転時に、圧縮機11から高圧の冷媒の供給を受ける。一方、室外ユニット10は、図示しないファンを有する。室外熱交換器12には、そのファンから室外空気が送風される。室外熱交換器12は、圧縮機11から供給された高圧の冷媒とファンから送風された室外空気を熱交換させる。これにより、室外熱交換器12は、冷媒を凝縮する。その結果、室外熱交換器12は、凝縮器として機能する。
【0024】
また、室外熱交換器12には、冷媒管52が接続されている。室外熱交換器12によって凝縮された冷媒は、その冷媒管52に流される。
【0025】
冷媒管52の途中には、過冷却装置14に冷媒の一部を流すため、分岐管53が設けられている。その分岐管53には、過冷却装置14を経由して圧縮機11まで延在するバイパス管54が接続されている。バイパス管54の中間部分には、バイパス膨張弁13と、過冷却装置14が備える伝熱管141とが、分岐管53の側からこの順序で設けられている。
【0026】
バイパス膨張弁13は、電子膨張弁であり、コントローラ40によって、弁の開度が制御される。バイパス膨張弁13は、コントローラ40の制御により、冷房運転時に、バイパス管54に分岐管53からの冷媒を流す。また、バイパス管54を流れる冷媒の流量を調整する。その結果、バイパス膨張弁13は、冷房運転時に、減圧された冷媒を過冷却装置14の伝熱管141へ導く。
【0027】
過冷却装置14は、冷媒管52の、分岐管53と室外熱交換器12との間に位置する中間部分に伝熱管142を有する。伝熱管142には、冷房運転時に、冷媒管52を流通する高圧の冷媒が流れる。一方、過冷却装置14は、上述したように、バイパス管54の中間部分に伝熱管141を有する。伝熱管141には、冷房運転時に、バイパス膨張弁13によって減圧された低圧の冷媒が流れる。過冷却装置14は、伝熱管141と142に互いに熱を伝えて、伝熱管142を流れる高圧の冷媒と伝熱管141を流れる低圧の冷媒に熱交換させる。これにより、過冷却装置14は、伝熱管142を流れる高圧の冷媒を冷却する。冷却された冷媒の一部は、分岐管53からバイパス管54へ流れ、その他の残りの冷媒は、冷媒管52の末端部分にある、室外ユニット10の接続口15へ流れる。接続口15には、接続ユニット30が接続されている。
【0028】
接続ユニット30は、一端から他端に向かう途中で分岐する接続配管32を有する。その接続配管32の分岐数は、室内ユニット20が有する室内熱交換器21と同数である。そして、接続配管32の一端は、接続口15につなげられている。また、接続配管32の分岐した後の他端それぞれは、冷媒管55それぞれに接続されている。冷媒管55それぞれは、室内ユニット20が有する室内熱交換器21それぞれにつなげられている。これにより、接続配管32は、冷房運転時に、接続口15から流れる冷媒を室内熱交換器21に分配する。
【0029】
また、接続ユニット30は、接続配管32の分岐後の他端の側それぞれに、室内膨張弁33を有する。
【0030】
室内膨張弁33には、バイパス膨張弁13と同じく、電子膨張弁であり、弁の開度がコントローラ40によって制御される。室内膨張弁33は、冷房運転時に室外ユニット10の接続口15から冷媒が流れてくると、コントローラ40の制御により、その冷媒を膨張させ、減圧させる。これにより、室内膨張弁33は、接続配管32の他端に接続された冷媒管55に減圧された冷媒を流す。その結果、減圧された冷媒が室内熱交換器21へ供給される。
【0031】
室内熱交換器21は、室外熱交換器12と同じく、フィン・アンド・チューブ型の熱交換器であり、冷媒と装置が設置された室内の空気に熱交換させる。
【0032】
詳細には、室内熱交換器21には、冷房運転時、冷媒管55から減圧された冷媒が供給される。また、室内熱交換器21には、室内ユニット20が備える、図示しないファンから室内空気が送風される。その結果、室内熱交換器21は、冷媒管55から供給される冷媒とファンから送風された室内空気を熱交換させる。そして、室内熱交換器21は、室内空気から熱を吸収して冷媒を蒸発させる。これにより、室内熱交換器21は、蒸発器として機能する。また、室内空気を冷却させる。
【0033】
室内熱交換器21には、冷媒管56が接続されている。室内熱交換器21によって蒸発された冷媒は、その冷媒管56に流される。そして、冷媒管56は、接続ユニット30まで延びて、接続ユニット30が有する接続配管31に接続されている。その結果、接続配管31には、室内熱交換器21によって蒸発された冷媒が流れる。
【0034】
接続配管31は、一端から他端に向かう途中で分岐する。その分岐数は、室内熱交換器21と同数である。そして、接続配管31の他端は、冷媒管56に接続されている。これに対して、接続配管31の一端は、室外ユニット10の接続口16に接続されている。これにより、接続配管31は、冷媒管56からの冷媒を集約して、室外ユニット10の接続口16に流す。
【0035】
接続口16は、上述した図示しない四方弁の第3ポートに接続される。その結果、接続口16は、四方弁の切り替えにより、空気調和機1Aが冷房運転状態に切り替えられていると、圧縮機11の吸入口と連通する。その結果、冷媒が圧縮機11に戻される。
【0036】
このように、空気調和機1Aは、四方弁の切り替えにより、室内空気を冷却する冷房運転を行う。このときの冷媒の状態を図2に示す。
【0037】
図2は、空気調和機1Aを流れる冷媒の状態を示すph線図である。なお、図2では、横軸が冷媒のエンタルピーを示し、縦軸が冷媒圧力を示す。また、図2には、理解を容易にするため、飽和液線100および飽和蒸気線110を示している。
【0038】
まず、冷媒は、圧縮機11に圧縮されることにより、図2の点A-点Bの経路に示すように、高圧の高温ガスになり、室外熱交換器12へ流入する。そして、室外熱交換器12に流入した冷媒は、凝縮され、図2の点B-点Cの経路に示すように、ガス状態から気液二相の状態となる。続いて、冷媒は、過冷却装置14へ流れ、その過冷却装置14によって過冷却状態となる。その結果、冷媒は、図2の点C-点Dの経路に示すように、液単相状態となる。液単相状態となった冷媒は、室内膨張弁33に流入し、室内膨張弁33により、図2の点D-点Eの経路に示すように、液単相状態から低圧の気液二相の状態となる。その後、低圧の気液二相の状態の冷媒は、室内膨張弁33から接続配管32の他端を経由して、冷媒管55を流れる。このとき、冷媒は、冷媒管55の長さに応じた圧力損失分だけ、図2の点E-点Fの経路に示すように、さらに減圧される。その結果、減圧された冷媒が室内熱交換器21へ供給される。室内熱交換器21では、冷媒は、室内空気と熱交換をして、減圧され、図2の点F-点Aの経路に示すように、気液二相の状態からガス状の冷媒となる。そして、圧縮機11に流入する。
【0039】
空気調和機1Aは、このような冷凍サイクルで冷房運転を行う。そして、この冷凍サイクルでは、過冷却装置14が冷媒を過冷却することにより、空気調和機1Aの冷凍効率が高められる。しかし、過冷却装置14の過冷却度101が大きすぎると、室内膨張弁33で冷媒が液単相となってしまい、冷媒の通過音が発生してしまう。逆に過冷却装置14の過冷却度101が小さすぎると、室内膨張弁33で冷媒が気液二相の状態となってしまい、室内膨張弁33で冷媒の通過音が発生してしまう。
【0040】
そこで、空気調和機1Aでは、コントローラ40が、室内膨張弁33前後の冷媒の状態に応じてバイパス膨張弁13の開度を調整する。続いて、図1および図2のほか、図3および図4を参照して、コントローラ40の構成について説明する。
【0041】
図3は、空気調和機1Aが備えるコントローラ40のハードウエア構成図である。図4は、空気調和機1Aが備えるコントローラ40のブロック図である。なお、図3および図4では、理解を容易にするため、コントローラ40の接続先の構成も示している。
【0042】
図3に示すように、コントローラ40は、I/Oポート(Input/Output Port)41および、記憶装置42Aを備える。
【0043】
I/Oポート41には、冷房運転時の室内膨張弁33によって膨張される前の状態の冷媒の圧力を測定する第1センサ61Aと、同運転時の室内膨張弁33によって膨張される前の状態の冷媒の温度を測定する第2センサ62Aと、同運転時の室内膨張弁33によって膨張された後の状態の冷媒の圧力を測定する第3センサ63Aと、が接続されている。
【0044】
第1センサ61Aは、冷媒の圧力を測定する圧力センサである。第1センサ61Aは、図1に示すように、接続ユニット30が有する接続配管32の、室内膨張弁33の設置位置よりも、室外ユニット10の側にある部分に設けられている。詳細には、第1センサ61Aは、接続配管32の、室内膨張弁33の入口に近接する部分に設けられている。これにより、第1センサ61Aは、室内膨張弁33の入口を流れる冷媒の圧力を測定する。
【0045】
また、第2センサ62Aは、冷媒の温度を測定する温度センサである。第2センサ62Aは、第1センサ61Aと同じ、接続配管32の、室内膨張弁33の入口に近接する部分に設けられている。その結果、第2センサ62Aは、室内膨張弁33の入口を流れる冷媒の温度を測定する。
【0046】
さらに、第3センサ63Aは、冷媒の圧力を測定する圧力センサである。第3センサ63Aは、接続ユニット30が有する接続配管32の、室内膨張弁33の設置位置よりも、室内ユニット20の側にある部分に設けられている。詳細には、第3センサ63Aは、接続配管32の、室内膨張弁33の出口に近接する部分に設けられている。その結果、第3センサ63Aは、室内膨張弁33の出口を流れる冷媒の圧力を測定する。
【0047】
図3に戻って、第1センサ61A、第2センサ62A、第3センサ63Aは、I/Oポート41を経由して、それぞれの測定データをCPU(Central Processing Unit)43に送信する。
【0048】
記憶装置42Aは、EEPROM(Electrical erasable Programmable Read-Only Memory)またはフラッシュメモリ等を有する。そして、記憶装置42Aは、空気調和機1Aを流れる冷媒の物性データを記憶する。詳細には、空気調和機1Aを流れる冷媒のph線図での等温線データ421、飽和液線データ422を記憶する。
【0049】
また、コントローラ40は、CPU43、ROM(Read-Only Memory)44およびRAM(Random Access Memory)45を含むコンピュータを備える。そして、上述したI/Oポート41には、第1センサ61A、第2センサ62Aおよび、第3センサ63Aのほか、バイパス膨張弁13が電気的に接続されている。また、図3には示さないが、室内膨張弁33、圧縮機11等の空気調和機1Aの各部品が電気的に接続されている。コントローラ40は、記憶装置42AまたはROM44に記憶された各種プログラムをRAM45に読み出して実行することにより、空気調和機1Aの各部品を制御する各種処理を行う。例えば、コントローラ40は、ROM44に記憶された弁制御プログラムを読み出して実行することにより、バイパス膨張弁13の開度を制御する弁制御処理を行う。その弁制御処理を行うため、コントローラ40は、図4に示すソフトウェアとして構成される各種ブロックを備える。
【0050】
詳細には、コントローラ40は、第1センサ61A、第2センサ62Aおよび第3センサ63Aから測定データを取得するデータ取得部411と、データ取得部411が取得した測定データから冷媒の状態を示すパラメータKの値を演算する演算部412と、演算部412が演算したパラメータKの値が一定の範囲内にあるかどうかを判定する判定部413と、判定結果に基づいてバイパス膨張弁13の開度を制御する弁制御部414とを備える。
【0051】
データ取得部411は、第1センサ61A、第2センサ62Aおよび、第3センサ63Aから、測定結果のデータを取得する。これにより、データ取得部411は、各センサが配置された箇所の圧力、温度の各データを取得する。すなわち、データ取得部411は、室内膨張弁33の入口を流れる冷媒の圧力、同入口を流れる冷媒の温度、および、室内膨張弁33の出口を流れる冷媒の圧力の各データを取得する。データ取得部411は、取得した各データを演算部412に送信する。
【0052】
演算部412は、データ取得部411から各データを取得すると、記憶装置42Aから等温線データ421および飽和液線データ422を読み出す。そして、データ取得部411から取得した室内膨張弁33の入口を流れる冷媒の温度データと読み出した等温線データ421および飽和液線データ422から、その温度での冷媒の飽和液の圧力を求める。さらに、演算部412は、データ取得部411から取得した室内膨張弁33の入口を流れる冷媒の圧力のデータおよび、室内膨張弁33の出口を流れる冷媒の圧力のデータと、求めた飽和液の圧力の値とに基づいて、後ほど詳細に説明するパラメータKの値を演算する。演算部412は、パラメータKの値を演算すると、演算して得たパラメータKの値を判定部413に送信する。
【0053】
判定部413は、演算部412が求めたパラメータKの値が一定の範囲にあるか否かを判定する。詳細には、判定部413は、パラメータKの値が一定の範囲よりも大きいか、或いは、小さいかを判定し、その判定結果を弁制御部414に送信する。
【0054】
ここで、一定の範囲とは、冷媒通過音の発生が抑制されているときのパラメータKの値の分布範囲を示す数値範囲のことをいう。
【0055】
弁制御部414は、判定部413の判定結果が、パラメータKの値が一定の範囲に含まれないという結果である場合、バイパス膨張弁13の開度を変更する。詳細には、弁制御部414は、パラメータKの値が一定の範囲よりも大きいという判定結果の場合、バイパス膨張弁13の開度を大きくし、パラメータKの値が一定の範囲よりも小さいという判定結果の場合、バイパス膨張弁13の開度を小さくする。また、弁制御部414は、パラメータKの値が一定の範囲に含まれる場合、バイパス膨張弁13の開度を変更しないでそのままとする。
【0056】
コントローラ40は、上述したデータ取得部411、演算部412、判定部413および、弁制御部414の一連の動作を繰り返して、演算部412で演算されるパラメータKの値が一定の範囲に収めるか、或いは、一定の範囲に近づける。これにより、コントローラ40は、室内膨張弁33の入口に液単相状態の冷媒を流し、さらに、室内膨張弁33の出口で気液二相状態の冷媒を流す。その結果、コントローラ40は、室内膨張弁33を通過する冷媒の通過音の発生または音量を抑制する。
【0057】
次に、図5図6および図7A図7Cを参照して、コントローラ40の動作について説明する。以下の説明では、空気調和機1Aは、図示しない電源スイッチおよび運転モード選択ボタンを備え、これら電源スイッチおよび運転モード選択ボタンにより、空気調和機1Aが起動し、冷房運転が選択されるものとする。
【0058】
図5は、空気調和機1Aが備えるコントローラ40が行う弁制御処理のフローチャートである。図6は、コントローラ40が行うパラメータK値導出処理のフローチャートである。
【0059】
図示しない電源スイッチおよび運転モード選択ボタンが押されて、空気調和機1Aが起動し、冷房運転が選択されると、コントローラ40が備えるCPU43によって弁制御プログラムが実行され、その結果、弁制御処理のフローが開始される。
【0060】
まず、図5に示すように、パラメータK導出処理が実行される(ステップS1)。
【0061】
そのパラメータK導出処理では、はじめに、コントローラ40が第1センサ61A、第2センサ62Aおよび、第3センサ63Aの測定データを取得する(ステップS11)。詳細には、上述したように、第1センサ61Aは、室内膨張弁33の入口を流れる冷媒の圧力を測定し、第2センサ62Aは、同入口を流れる冷媒の温度を測定する。また、第3センサ63Aは、室内膨張弁33の出口を流れる冷媒の圧力を測定する。コントローラ40は、第1センサ61A、第2センサ62Aおよび、第3センサ63Aの出力から、室内膨張弁33の入口を流れる冷媒の圧力値、温度値、室内膨張弁33の出口を流れる冷媒の圧力値の各データを取得する。
【0062】
各データを取得すると、コントローラ40は、記憶装置42Aから冷媒の物性データを読み出す(ステップS12)。詳細には、コントローラ40は、記憶装置42Aから等温線データ421を読み出す。また、必要に応じて、飽和液線データ422を読み出す。
【0063】
次に、コントローラ40は、取得したデータのうちの第2センサ62Aが測定した温度値と、読み出した等温線データ421とから、第2センサ62Aの測定温度で冷媒が飽和液となった場合の、その場合の冷媒の圧力を求める(ステップS13)。例えば、コントローラ40は、読み出した等温線データ421から、取得した第2センサ62Aの測定値の温度での等温線データを特定し、その等温線データで等温線を描いたときの屈曲点から、飽和液のときの冷媒の圧力を求める。すなわち、図2に示す点Gの圧力値を求める。
【0064】
なお、この場合、記憶装置42Aから飽和液線データ422を読み出しておき、その飽和液線データ422と等温線データ421から、第2センサ62Aの測定値の温度で冷媒が飽和液となった場合の、その場合の冷媒の圧力を求めてもよい。
【0065】
次に、コントローラ40は、差分dPおよびdPを演算する(ステップS14)。詳細には、コントローラ40は、取得したデータのうちの、第1センサ61Aが測定した圧力値と求めた飽和液の圧力との差分dPを演算する。また、求めた飽和液の圧力と第3センサ63Aが測定した圧力値との差分dPを演算する。これにより、図2に示す点D-点Gの間の圧力差と点G-点Eの間の圧力差を演算する。なお、差分dP、dP共に、飽和液の圧力を基準とするため、差分dP、dPは、正負のいずれの数値もとりうる。
【0066】
コントローラ40は、差分dPおよびdPを演算すると、続けて、数式1で表されるパラメータKの値を演算する(ステップS15)。
【0067】
【数1】
【0068】
コントローラ40では、パラメータKは、差分dPに対する差分dPの大きさを測る指標として用いられている。詳細には、図2に示す点D-点Eの間の圧力差は、室内膨張弁33の減圧分を示すところ、パラメータKは、その室内膨張弁33の減圧分のうちの、冷媒が気液二相状態である部分の占める割合を示す指標として用いられている。これは、パラメータKの大きさを得ることにより、室内膨張弁33の減圧前後で冷媒の状態を知ることができるからである。図7A図7CにパラメータKの大きさと冷媒の状態との関係を例示する。
【0069】
図7Aは、コントローラ40が演算するパラメータKの値が0.8のときの冷媒の状態を示すph線図である。図7Bは、パラメータKの値が2のときの冷媒の状態を示すph線図である。図7Cは、パラメータKの値が10のときの冷媒の状態を示すph線図である。
【0070】
図7Aに示すように、パラメータKが小さすぎる場合、室内膨張弁33の減圧後の冷媒の状態を示す点Eが飽和液線100よりも高圧側に位置してしまい、冷媒は、室内膨張弁33の減圧前後で液単相状態である。その結果、室内膨張弁33を冷媒が通過するときに音が発生してしまう。
【0071】
また、図7Cに示すように、パラメータKが大きすぎる場合、室内膨張弁33の減圧前の冷媒の状態を示す点Dが飽和液線100よりも低圧側にしてしまい、冷媒は、室内膨張弁33の減圧前後で気液二相状態である。その結果、室内膨張弁33を冷媒が通過するときに音が発生してしまう。
【0072】
これらに対して、図7Bに示すように、パラメータKが適度な大きさの場合、点Dが飽和液線100よりも高圧側に位置し、点Eが飽和液線100よりも低圧側に位置する。その結果、冷媒は、室内膨張弁33の減圧前で液単相状態であり、室内膨張弁33の減圧後、気液二相状態である。これにより、冷媒の通過音が抑制される。
【0073】
このようなパラメータKと冷媒の通過音との関係から、パラメータKは、一定の範囲内の数値であることが望ましいことがわかる。また、過冷却度101が大きすぎたり小さすぎたりすることに起因して、パラメータKが一定の範囲内の数値でなくなることがわかる。そこで、コントローラ40では、図6に示すステップS15でパラメータKの値を演算すると、パラメータK導出処理を終了させ、図5に示す弁制御処理に戻って、パラメータKの値が一定の範囲内の数値であるか否かの判定を行う。そして、その判定結果に基づいて、バイパス膨張弁13の開度を調整する。
【0074】
図5に示すように、コントローラ40は、ステップS1のパラメータK導出処理に続いて、パラメータKの数値が上限値よりも大きいか否かを判定する(ステップS2)。この判定でいう上限値とは、実験により求めた、冷媒の通過音が抑制されていると判断されたKの最大値よりも安全率分だけ小さいK値のことである。例えば、室内膨張弁33の減圧前の冷媒の過冷却度が0よりも大きいK値のことである。なお、ここでいう安全率とは、上記のパラメータKの最大値と、冷媒の通過音が許容できる大きさに抑制されているときのパラメータKの許容最大値との比のことであり、安全率分とは、それらの差分のことである。
【0075】
コントローラ40は、パラメータKの数値が上限値よりも大きいと判定した場合(ステップS2のYes)、バイパス膨張弁13の開度を大きくする(ステップS3)。例えば、バイパス膨張弁13の開度を一定値だけ大きくする。換言すると、バイパス膨張弁13を一定分だけ開く。そして、コントローラ40は、ステップS3を行うと、ステップS1に戻り、再度、パラメータK導出処理を実行する。
【0076】
一方、コントローラ40は、パラメータKの数値が上限値以下であると判定した場合(ステップS2のNo)、ステップS4に進み、パラメータKの数値が下限値未満であるか否かを判定する(ステップS4)。ここで、下限値とは、実験により求めた、冷媒の通過音が抑制されていると判断されたKの最小値よりも安全率分だけ大きいK値のことである。例えば、室内膨張弁33の減圧後の冷媒の乾き度が0よりも大きいK値のことである。また、ここでいう安全率とは、上記のパラメータKの最小値と、冷媒の通過音が許容できる大きさに抑制されているときのパラメータKの許容最小値との比のことであり、安全率分とは、それらの差分のことである。
【0077】
コントローラ40は、パラメータKの数値が下限値未満であると判定した場合(ステップS4のYes)、バイパス膨張弁13の開度を小さくする(ステップS5)。例えば、バイパス膨張弁13の開度を一定値だけ小さくする。すなわち、バイパス膨張弁13を一定分だけ絞る。コントローラ40は、ステップS3の場合と同様に、ステップS5の後、ステップS1に戻り、再度、パラメータK導出処理を実行する。
【0078】
一方、コントローラ40は、パラメータKの数値が下限値以上であると判定した場合(ステップS4のNo)、バイパス膨張弁13の開度は適切であるとして、バイパス膨張弁13の開度を変更しない。そして、ステップS1に戻り、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0079】
ユーザーによって、図示しない電源スイッチが押されて電源が切られた場合、或いは、運転モード選択ボタンが押されて、暖房運転に切り替えられた場合、コントローラ40は、弁制御処理を強制的に終了させる。
【0080】
なお、上記の形態では、空気調和機1Aが起動し、かつ冷房運転が選択された後、強制的に終了されるまで、コントローラ40は、弁制御処理を続けるが、コントローラ40は、例えば、冷房運転が選択された後、一定の期間だけ弁制御処理を続けてもよい。また、空気調和機1Aが起動した後の一定の期間だけ弁制御処理を続けてもよい。このような期間で、冷媒の通過音が発生しやすいからである。
【0081】
また、上記の形態では、室内ユニット20が3つ存在しているが、室内ユニット20は、1つ以上存在すればよい。室内ユニット20が複数個、存在する場合、室内ユニット20のいずれかが冷房運転をするときに、弁制御処理が実行されるとよい。その場合も、弁制御処理は、冷房運転開始後、一定の期間だけ実行されてもよい。
【0082】
以上のように、実施の形態1に係る空気調和機1Aでは、コントローラ40は、第2センサ62Aが測定した温度値で冷媒が飽和液となるときの圧力値を求め、第1センサ61Aが測定した圧力値と求めた飽和液の圧力値との差分dPおよび、求めた飽和液の圧力値と第3センサ63Aが測定した室内膨張弁33の出口の圧力値との差分dPを求め、さらに、求めた差分dPに対する差分dPの大きさに基づいてバイパス膨張弁13の開度を調整する。その結果、室内膨張弁33の入口で冷媒を液状態にすると共に、室内膨張弁33の出口で冷媒を気液二相状態にして、室内膨張弁33を通過するときの冷媒の通過音の発生を十分に抑制することができる。
【0083】
なお、実施の形態1で説明した室内膨張弁33は、本開示でいうところの膨張弁の一例である。記憶装置42Aは、本開示でいうところの第2記憶装置の一例である。なお、本開示でいうところの膨張弁とは、バイパス管54により形成されるバイパス流路ではなく、メインの流路に設けられる膨張弁のことをいう。
【0084】
(実施の形態2)
実施の形態1では、第1センサ61Aが室内膨張弁33の入口を流れる冷媒の圧力を測定し、第2センサ62Aが室内膨張弁33の入口を流れる冷媒の温度を測定する。しかし、第1センサ61Aと第2センサ62Aは、これに限定されない。第1センサ61Aは、圧縮機11によって圧縮された後、かつ室内膨張弁33によって膨張する前の冷媒の圧力を測定するものであればよい。また、第2センサ62Aは、バイパス管54に分流された後、かつ室内膨張弁33によって膨張する前の冷媒の温度を測定するものであればよい。
【0085】
実施の形態2に係る空気調和機1Bでは、第1センサ61Bと第2センサ62Bが、接続ユニット30ではなく、室外ユニット10に設けられている。以下、図8を参照して、実施の形態2に係る空気調和機1Bについて説明する。実施の形態2では、実施の形態1と異なる構成を中心に説明する。
【0086】
図8は、実施の形態2に係る空気調和機1Bの冷媒回路図である。なお、図8では、図1と同様に、四方弁を省略している。
【0087】
図8に示すように、第1センサ61Bは、室外ユニット10が有する冷媒管51の、圧縮機11の吐出口に近接する部分に設けられている。そして、第1センサ61Bは、第1センサ61Aと同じく、冷媒の圧力を測定する圧力センサである。その結果、第1センサ61Aは、圧縮機11により圧縮された冷媒の圧力を測定する。
【0088】
また、第2センサ62Bは、室外ユニット10が有する冷媒管52の、接続口15に近接する末端部分に設けられている。第2センサ62Bは、第2センサ62Aと同じく、冷媒の温度を測定する温度センサである。その結果、バイパス管54に分流された後の冷媒の温度を測定する。
【0089】
第1センサ61Bが測定する冷媒の圧力は、実施の形態1で説明した図2の点Bでの冷媒の圧力である。図2から明らかなように、第1センサ61Bが測定する圧力は、実施の形態1で説明した第1センサ61Aが測定する、図2の点Dでの冷媒の圧力と同じである。さらに、第2センサ62Bは、実施の形態1で説明した第2センサ62Aよりも室内膨張弁33の入口から離れているものの、室内膨張弁33によって膨張される前の温度を測定する。このため、第2センサ62Bの測定値は、実施の形態1で説明した第2センサ62Aとあまり差がなく、概ね同じである。その結果、測定誤差が発生する以外、コントローラ40でのパラメータK導出処理は、実施の形態1と同じである。このため、パラメータK導出処理の説明は省略する。また、弁制御処理の説明も省略する。
【0090】
以上のように、実施の形態2に係る空気調和機1Bでは、第1センサ61Bと第2センサ62Bが室外ユニット10に設けられている。このような形態においても、実施の形態1と同様に、室内膨張弁33を通過するときの冷媒の通過音の発生を十分に抑制することができる。
【0091】
なお、実施の形態2で説明した圧縮機11の吐出口は、本開示でいうところの圧縮機11の出口の一例である。
【0092】
(実施の形態3)
実施の形態1および2では、第3センサ63Aは、室内膨張弁33の出口を流れる冷媒の圧力を測定する。しかし、第3センサ63Aは、これに限定されない。第3センサ63Aは、室内膨張弁33によって膨張した後、かつ圧縮機11によって圧縮される前の冷媒の圧力を測定するものであってもよい。
【0093】
実施の形態3に係る空気調和機1Cでは、第3センサ63Cが、接続ユニット30ではなく、室内ユニット20に設けられている。以下、図9および図10を参照して、実施の形態3に係る空気調和機1Cについて説明する。実施の形態3では、実施の形態1および2と異なる構成を中心に説明する。
【0094】
図9は、実施の形態3に係る空気調和機1Cの冷媒回路図である。図10は、空気調和機1Cが備える記憶装置42Cのブロック図である。なお、図9でも、図1図8と同様に、四方弁を省略している。
【0095】
図9に示すように、第3センサ63Cは、室内ユニット20が有する室内熱交換器21に設けられている。また、第3センサ63Cは、第3センサ63Aと同じく、冷媒の圧力を測定する圧力センサである。そして、第3センサ63Cは、室内熱交換器21の内部を流れる冷媒の圧力を測定する。
【0096】
第3センサ63Cが測定する冷媒の圧力は、実施の形態1で説明した図2の点F-点Aの間の状態にある冷媒の圧力である。図2に示すように、第3センサ63Cが測定する、その点F-点Aの間の状態にある冷媒の圧力は、実施の形態1で説明した第3センサ63Aが測定する、点Eでの冷媒の圧力よりも低圧である。そのため、第3センサ63Cの測定値で正確なパラメータKの値を導出するには、測定値の補正が必要である。
【0097】
そこで、その圧力差を補って、誤差が小さいパラメータKの値を導出するため、空気調和機1Cは、等温線データ421、飽和液線データ422に加えて、圧力補正データ423を記憶する記憶装置42Cを備える。
【0098】
圧力補正データ423には、実施の形態1で説明した第3センサ63Aの設置箇所から本実施の形態の第3センサ63Cの設置箇所へ、設置箇所がずれることに起因する圧力損失のデータが格納されている。詳細には、圧力補正データ423は、接続配管32、冷媒管55等の配管に起因する圧力損失と室内熱交換器21の入口から本実施の形態の第3センサ63Cの設置箇所までの圧力損失が足し合わされて得られる圧力値のデータが格納されている。
【0099】
コントローラ40は、パラメータK導出処理のステップS11で、実施の形態1で説明した第3センサ63Aの代わりに、第3センサ63Cの測定データを取得する。そして、ステップS12で、記憶装置42Cから、等温線データ421、飽和液線データ422に加えて、圧力補正データ423を読み出す。さらに、ステップS14で、第3センサ63Cが測定した圧力値に読み出した圧力補正データ423の圧力値を加算して、室内膨張弁33の出口を流れる冷媒の圧力を求める。そして、ステップS13で求めた飽和液の圧力から、上記の加算で求めた、室内膨張弁33の出口の冷媒圧力を減算して、差分dPを求める。その結果、ステップS15で誤差が小さいパラメータKの値が得られる。
【0100】
コントローラ40は、実施の形態1で説明した弁制御処理を実行する。これにより、バイパス膨張弁13の開度を調整する。
【0101】
以上のように、実施の形態3に係る空気調和機1Cでは、第3センサ63Cが室内熱交換器21に設けられ、記憶装置42Cが、第3センサ63Cの設置箇所に基づいた圧力補正データ423を記憶している。コントローラ40が、この圧力補正データ423に基づいて第3センサ63Cの測定値を補正することにより、誤差が小さいパラメータKの値を得ることができる。その結果、実施の形態1および2と同様に、室内膨張弁33を通過するときの冷媒の通過音の発生を十分に抑制することができる。
【0102】
なお、上述した圧力補正データ423は、本開示でいうところの補正データの一例である。また、記憶装置42Cは、本開示でいうところの第1記憶装置の一例である。
【0103】
(実施の形態4)
実施の形態3では、第3センサ63Cが室内熱交換器21に設けられ、冷媒の圧力を測定している。しかし、第3センサ63Cは、これに限定されない。第3センサ63Cは、室内膨張弁33によって膨張した後、かつ圧縮機11によって圧縮される前の冷媒の温度を測定するものであってもよい。
【0104】
実施の形態4に係る空気調和機1Dでは、第3センサ63Dが、室内ユニット20に設けられた温度センサである。以下、図11を参照して、実施の形態4に係る空気調和機1Dについて説明する。実施の形態4では、実施の形態1-3と異なる構成を中心に説明する。
【0105】
図11は、実施の形態4に係る空気調和機1Dの冷媒回路図である。なお、図11でも、図1図8図9と同様に、四方弁を省略している。
【0106】
図11に示すように、第3センサ63Dは、実施の形態3で説明した第3センサ63Cと同じく、室内熱交換器21に設けられている。一方、第3センサ63Dは、実施の形態3で説明した第3センサ63Cと異なり、冷媒の温度を測定する温度センサである。第3センサ63Dは、室内熱交換器21の内部を流れる冷媒の温度を測定する。
【0107】
空気調和機1Dでは、ステップS11で、第3センサ63Cの代わりに第3センサ63Dの測定データを取得すること、ステップS14において、第3センサ63Dの測定データと、記憶装置42Cから読み出した等温線データ421と、ステップS13で求めた飽和液の圧力のときの冷媒のエンタルピーとに基づいて、室内熱交換器21を流れる冷媒の圧力を求め、さらに、実施の形態3で説明した圧力補正データ423の圧力値を加算して、室内膨張弁33の出口を流れる冷媒の圧力を求めること、を除いて、実施の形態3と同じパラメータK導出処理を行う。このため、パラメータK導出処理の詳細な説明を省略する。
【0108】
以上のように、実施の形態4に係る空気調和機1Dでは、第3センサ63Cが室内熱交換器21を流れる冷媒の温度を測定する。空気調和機1Dでも、実施の形態3と同様に、圧力補正データ423に基づいて第3センサ63Dの測定値を補正する。その結果、誤差が小さいパラメータKの値を得ることができる。
【0109】
(実施の形態5)
実施の形態1-4では、コントローラ40は、パラメータKの値を求め、そのパラメータKの値に基づいてバイパス膨張弁13の開度を調整する。しかし、コントローラ40は、これに限定されない。コントローラ40は、パラメータKの値に基づいて室内膨張弁33の開度を調整してもよい。
【0110】
実施の形態5に係る空気調和機1Eでは、コントローラ40が室内膨張弁33の開度を調整する。以下、図12を参照して、実施の形態5に係る空気調和機1Eについて説明する。実施の形態5では、実施の形態1-4と異なる構成を中心に説明する。
【0111】
図12は、実施の形態5に係る空気調和機1Eが備えるコントローラ40のブロック図である。
【0112】
図12に示すように、コントローラ40には、室内膨張弁33が電気的に接続されている。そして、コントローラ40が備える弁制御部414は、バイパス膨張弁13の開度の代わりに、室内膨張弁33の開度を調整する。
【0113】
コントローラ40は、実施の形態1で説明した弁制御処理のステップS3において、バイパス膨張弁13の開度を大きくする代わりに、室内膨張弁33の開度を小さくする。また、ステップS5において、バイパス膨張弁13の開度を小さくする代わりに、室内膨張弁33の開度を大きくする。その結果、実施の形態1-4と同様に、室内膨張弁33を通過するときの冷媒の通過音の発生が抑制される。
【0114】
なお、実施の形態5では、弁制御部414が室内膨張弁33の開度を調整するが、弁制御部414は、室内膨張弁33の開度を調整すると共に、バイパス膨張弁13の開度も調整してもよい。
【0115】
以上のように、実施の形態5に係る空気調和機1Eでは、パラメータKの値に基づいて室内膨張弁33の開度が調整される。その結果、空気調和機1Eは、室内膨張弁33を通過するときの冷媒の通過音の発生を十分に抑制することができる。
【0116】
なお、実施の形態5で説明したバイパス膨張弁13、室内膨張弁33は、本開示でいうところの膨張弁の一例である。
【0117】
以上、本開示の実施の形態に係る空気調和機1A-1E、空気調和機1A-1Eの制御方法およびプログラムについて説明したが、空気調和機1A-1E、空気調和機1A-1Eの制御方法およびプログラムは、これに限定されない。
【0118】
実施の形態1-4では、過冷却装置14がバイパス管54に分流された後の冷媒を用いて、室外熱交換器12から流れる冷媒を過冷却にし、さらにバイパス膨張弁13が、バイパス管54に分流される冷媒を膨張させている。しかし、過冷却装置14はこれに限定されない。過冷却装置14は、凝縮器により凝縮された冷媒を過冷却状態にするものであればよい。
【0119】
図13は、実施の形態1に係る空気調和機1Aの冷媒回路の変形例を示す回路図である。
【0120】
図13に示すように、過冷却装置14は、室外熱交換器12を通過した冷媒と、圧縮機11に圧縮される前の冷媒、すなわち、圧縮機11の吸入口側の冷媒とが熱交換することにより、室外熱交換器12を通過した冷媒が過冷却されるものであってもよい。この場合、バイパス膨張弁13は備えていなくてもよい。そして、コントローラ40は、パラメータKの値に基づいて室内膨張弁33の開度を調整するとよい。
【0121】
実施の形態1-4では、コントローラ40が数式1で表されるパラメータKの値を演算し、演算されたパラメータKの値に基づいて、バイパス膨張弁13の開度または室内膨張弁33の開度を調整している。しかし、コントローラ40はこれに限定されない。コントローラ40は、差分dPに対する差分dPの大きさに基づいてバイパス膨張弁13の開度または室内膨張弁33の開度を調整するものであるとよい。例えば、パラメータKを差分dPの差分dPに対する比、すなわち(dP/dP)としてもよい。
【0122】
実施の形態1-4では、室内膨張弁33が、接続ユニット30に設けられている。しかし、室内膨張弁33はこれに限定されない。室内膨張弁33は、過冷却装置14を通過した冷媒を膨張させる膨張弁であればよく、単に膨張弁と呼ばれてもよい。例えば、室内膨張弁33は、室内ユニット20に設けられてもよい。また、室内膨張弁33は、室外ユニット10に設けられ、膨張弁と呼ばれてもよい。
【0123】
なお、上記実施形態では、弁制御プログラムがROM44に格納されているが、弁制御プログラムは、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optical Disc)等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納されて配布されても良い。この場合、その記録媒体に格納された弁制御プログラムがコンピュータにインストールされることにより、弁制御処理を実行するコントローラ40が構成されてもよい。
【0124】
また、弁制御プログラムは、インターネットの通信ネットワーク上のサーバー装置が有するディスク装置に格納され、その弁制御プログラムが、例えば、搬送波に重畳されて、ダウンロードされてもよい。
【0125】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態および変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。つまり、本開示の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内およびそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0126】
1A-1E 空気調和機、10 室外ユニット、11 圧縮機、12 室外熱交換器、13 バイパス膨張弁、14 過冷却装置、15,16 接続口、20 室内ユニット、21 室内熱交換器、30 接続ユニット、31,32 接続配管、33 室内膨張弁、40 コントローラ、41 I/Oポート、42A,42C 記憶装置、43 CPU、44 ROM、45 RAM、51,52 冷媒管、53 分岐管、54 バイパス管、55,56 冷媒管、61A,61B 第1センサ、62A,62B 第2センサ、63A,63C,63D 第3センサ、100 飽和液線、101 過冷却度、110 飽和蒸気線、141,142 伝熱管、411 データ取得部,412 演算部、413 判定部、414 弁制御部、421 等温線データ、422 飽和液線データ、423 圧力補正データ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13