(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】クロストリジウム・パーフリンジェンスに対する特異的な死滅能を有する新規なバクテリオファージ及びそれを含む抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 7/00 20060101AFI20241101BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241101BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241101BHJP
A01N 63/40 20200101ALI20241101BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20241101BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241101BHJP
A23K 10/10 20160101ALI20241101BHJP
【FI】
C12N7/00 ZNA
A61K35/76
A61P31/04 171
A01N63/40
A01P1/00
A01P3/00
A23K10/10
(21)【出願番号】P 2023552166
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 KR2021007484
(87)【国際公開番号】W WO2022181894
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0025978
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12934P
(73)【特許権者】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ジョン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ムーン、ジュン オク
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョン ピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユ ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スン ウン
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0340685(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 7/08
A61K 35/76
A61P 31/04
A01N 63/40
A01P 1/00
A01P 3/00
A23K 10/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens: CP)に特異的な死滅能を有し、
配列番号1のヌクレオチド配列を有する、受託番号KCCM12934Pとして寄託したバクテリオファージCJ_CP_20-25。
【請求項2】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物。
【請求項3】
前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患は壊死性腸炎である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む抗生剤。
【請求項5】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む飼料添加剤。
【請求項6】
請求項5に記載の飼料添加剤を含む飼料。
【請求項7】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む飲料水添加剤。
【請求項8】
請求項7に記載の飲料水添加剤を含む飲料水。
【請求項9】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む消毒剤。
【請求項10】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む洗浄剤。
【請求項11】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_CP_20-25、又は請求項2に記載の組成物をヒト以外の動物に投与するステップを含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療方法。
【請求項12】
前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患は壊死性腸炎である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患を予防又は治療するための、請求項1に記載のバクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む組成物の
ヒト以外の動物に対する使用。
【請求項14】
クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物の製造における、請求項1に記載のバクテリオファージCJ_CP_20-25の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、クロストリジウム・パーフリンジェンスに対する特異的な死滅能を有する新規なバクテリオファージ及びそれを含む抗菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)は、大型のグラム陽性偏性嫌気性桿菌であり、鞭毛がなく、芽胞を形成する菌として知られている。クロストリジウム・パーフリンジェンスは、動物、特にニワトリ、ブタなどをはじめとする家畜において下痢などを誘発する菌であり、サルモネラによる家禽チフスにも劣らず、畜産業において重要かつ致命的な病原菌の一つとして認識されている。
【0003】
現在、養鶏及び養豚産業において最も頻繁に発生する疾病の一つである、クロストリジウム・パーフリンジェンス感染による壊死性腸炎(Necrotic Enteritis)は、ニワトリやブタなどの小腸の下部に重篤な壊死性病変を誘発し、血液が混ざった下痢をする症状などを主症状として誘発する疾患である。このような壊死性腸炎は、その発症の程度に応じて感染動物に脱水症状、間欠的下痢症状などを起こし、徐々に動物の身体を衰弱させて成長障害を誘発するなど、畜産業において大きな問題となっている疾病である。さらに、壊死性腸炎の原因となるクロストリジウム・パーフリンジェンスは動物の糞便を介して容易に伝播するので、土壌や汚染された飼料を介した経口感染などにより共同飼育場内の動物間で容易に伝染し、特に幼畜の発症率が高いことが問題となっている。
【0004】
畜産業などの分野においては、家畜の細菌感染による疾患を予防及び治療するために様々な抗生剤が用いられてきたが、抗生剤の誤用・乱用又は耐性問題や、動物体内に残留する可能性などの問題が表面化してきており、現在では全世界的に抗生剤投与に多くの制限がある。
【0005】
よって、最近は、特定細菌に感染して細菌の成長を抑制する細菌特異的ウイルスであるバクテリオファージの方が抗生剤より宿主特異性が強いので、新たな抗生剤の代替剤として研究されているが、いまだその数が絶対的に不足している現状である。よって、養豚及び養鶏をはじめとする畜産業において重要な問題となっているクロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患を予防及び治療するために、広範囲の溶菌スペクトルを有し、耐酸性及び耐熱性に優れ、産業的に活用可能性が高い新たなバクテリオファージの開発が継続して求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、クロストリジウム・パーフリンジェンスに特異的な死滅能を有し、受託番号KCCM12934Pとして寄託したバクテリオファージCJ_CP_20-25、それを有効成分として含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防もしくは治療用組成物、抗生剤、飼料添加剤、飲料水添加剤、消毒剤もしくは洗浄剤、前記飼料添加剤を含む飼料、又は前記飲料水添加剤を含む飲料水を提供することを目的とする。
【0008】
また、本出願は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25、又はそれを有効成分として含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防もしくは治療用組成物を用いた、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本出願は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25、又はそれを有効成分として含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防もしくは治療用組成物の、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防剤又は治療剤製造のための用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。さらに、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本出願の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本出願に含まれることが意図されている。
【0011】
一態様は、クロストリジウム・パーフリンジェンスに特異的な死滅能を有し、受託番号KCCM12934Pとして寄託したバクテリオファージCJ_CP_20-25を提供する。
【0012】
本明細書における「クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens: CP)」は、グラム陽性の嫌気性桿菌であり、ニワトリ、ブタなどの動物において感染性疾患を誘発する原因菌に該当する。
【0013】
本明細書における「バクテリオファージ(bacteriophage)」とは、特定細菌に感染して当該細菌の成長を抑制する細菌特異的ウイルスであって、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNAを遺伝物質として含むウイルスを意味する。
【0014】
他の態様は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物を提供する。
【0015】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25については前述した通りである。
【0016】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25は、クロストリジウム・パーフリンジェンスに特異的な死滅能を有するものであるので、個体にクロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の発症前に投与すると、個体に流入するクロストリジウム・パーフリンジェンスを死滅させることにより、それによる感染を抑制し、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患を予防することができる。また、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患が発症した個体に前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を投与すると、個体に存在するクロストリジウム・パーフリンジェンスを死滅させることにより、それにより現れる症状を緩和又は消滅させることができるので、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患を治療することができる。
【0017】
本明細書における「予防」とは、バクテリオファージ又は組成物の投与により個体における疾病の発症を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味するものであり、「治療」とは、バクテリオファージ又は組成物の投与により個体における疾病の症状を好転、緩和又は消滅させるあらゆる行為を意味する。
【0018】
前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患は、例えば壊死性腸炎であるが、これに限定されるものではない。
【0019】
本明細書における「壊死性腸炎(Necrotic Enteritis)」とは、クロストリジウム・パーフリンジェンスにより誘発される感染性疾病の一つであり、食鶏などの家畜において頻繁に発症し、多くの被害を及ぼす細菌性疾病に該当する。壊死性腸炎の症状は、小腸でクロストリジウム・パーフリンジェンスが過度に増殖することにより現れ、消化器粘膜壊死、突然の下痢などを誘発する。例えば、養豚において、甚急性壊死性腸炎の場合は、発症後1日~2日経過すると斃死し、急性壊死性腸炎の場合は、血液が混ざった下痢の後2日~3日経過すると斃死する。また、亜急性壊死性腸炎の場合は、下痢(血便なし)が5日~7日間続いて衰弱及び脱水症状を起こし、慢性壊死性腸炎の場合は、間欠的下痢が誘発され、成長障害を起こす。
【0020】
前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を1×102~1×1012PFU/mL又は1×105~1×1010PFU/gで含むものであってもよい。
【0021】
前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含むものであってもよく、前記担体と共に製剤化されて食品、医薬品、飼料添加剤、飲料水添加剤などとして提供されてもよい。
【0022】
本明細書における「薬学的に許容される担体」とは、生物体を刺激することなく、投与化合物の生物学的活性及び特性を損なわない担体や希釈剤などを意味する。
【0023】
前記組成物に含まれる担体の種類は特に限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いられて薬学的に許容される担体であれば、いかなるものでも用いることができる。前記担体の例としては、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、グルコース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加してもよい。また、希釈剤、分散剤、結合剤及び滑沢剤をさらに添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤に製剤化してもよい。
【0024】
前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物は、経口投与又は非経口投与で投与してもよく、疾患部位に塗布又は噴霧する方法を用いてもよい。非経口投与の場合は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与又は局部投与を用いてもよい。前記組成物の好適な塗布、噴霧及び投与量は、製剤化方法、投与方法、対象となる動物及び患者の年齢、体重、性別、疾病症状の程度、食餌、投与時間、投与経路、排泄速度、反応感度などの要因により異なり、通常は習熟した医師又は獣医師により目的とする治療に効果的な投与量が容易に決定及び処方される。
【0025】
前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物の経口投与用剤形としては、例えば錠剤、トローチ剤、ドロップ剤(lozenge)、水溶性又は油性懸濁液、調製粉末又は顆粒、エマルジョン、ハード又はソフトカプセル、シロップ又はエリキシル剤が挙げられる。錠剤、カプセルなどの剤形に製剤化するために、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アミロペクチン、セルロース、ゼラチンなどの結合剤、第二リン酸カルシウムなどの賦形剤、トウモロコシデンプン、サツマイモデンプンなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコールワックスなどの潤滑油を含んでもよく、カプセル剤形の場合は、前述した物質以外に脂肪油などの液体担体をさらに含んでもよい。
【0026】
前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物の非経口投与用剤形としては、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射などの注射剤形、坐剤の剤形、呼吸器から吸入可能なエアゾール剤などのスプレー剤形が挙げられる。注射剤形に製剤化するために、本発明の組成物を安定化剤又は緩衝剤と共に水で混合して溶液又は懸濁液とし、それをアンプル又はバイアルの単位投与用に製剤化してもよい。エアゾール剤などのスプレー剤形の場合は、水分散した濃縮物又は湿潤粉末を噴射するための推進剤などが添加剤と共に配合されてもよい。
【0027】
前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物は、保存剤、安定化剤、湿潤剤又は乳化剤、凍結保護剤(cryoprotectant)、賦形剤などを含んでもよい。
【0028】
前記保存剤、安定化剤又は賦形剤は、前記組成物の品質低下(deterioration)を減少させるのに十分な有効量で組成物に含まれるものであってもよい。
【0029】
本明細書における「品質低下」は、組成物などに含まれるバクテリオファージCJ_CP_20-25の菌数減少、活性低下又はそれらの組み合わせを含むものであってもよい。
【0030】
例えば、前記組成物は、組成物の品質低下を減少させるのに十分な有効量の保存剤、安定化剤又は賦形剤を含むことにより、自然状態で存在するバクテリオファージとは異なり、組成物中にバクテリオファージCJ_CP_20-25がより長期間生存するか、活性が保持されるものであってもよい。
【0031】
前記保存剤、安定化剤又は賦形剤としては、前記組成物の品質低下を減少させることができるものであれば、当該技術分野で通常用いられるいかなるものを用いてもよい。例えば、前記安定化剤は、アルギン酸塩(alginate)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、カゼイン、カゼインナトリウム、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(sodium carboxymethylcellulose)、ペクチン、ゼラチン、アラビアガム、キサンタンガム、デキストラン、シクロデキストリン及びデンプンからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0032】
前記凍結保護剤は、前記組成物が凍結乾燥した状態のときに組成物の品質低下を減少させるのに十分な有効量で組成物に含まれるものであってもよい。例えば、凍結乾燥した組成物中では活性が低下するか、生存できない、自然状態で存在するバクテリオファージとは異なり、前記組成物が凍結乾燥した状態で組成物の品質低下を減少させるのに十分な有効量の凍結保護剤を含むことにより、凍結乾燥した組成物中でもバクテリオファージ活性を保持するものであってもよく、バクテリオファージを生存させるものであってもよい。
【0033】
前記凍結保護剤としては、凍結乾燥した状態の組成物の品質低下を減少させるためのものであれば、当該技術分野で通常用いられるいかなるものを用いてもよい。例えば、前記凍結保護剤は、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide: DMSO)、グルコース、トレハロース、マルトデキストリン、デキストリン、スキムミルク及びデンプンからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0034】
さらに他の態様は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む抗生剤を提供する。
【0035】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25については前述した通りである。
【0036】
本明細書における「抗生剤」とは、菌を死滅させるか、菌の成長を抑制する製剤を意味し、防腐剤、殺菌剤及び抗菌剤を総称するものである。
【0037】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む抗生剤は、従来の抗生剤に比べてクロストリジウム・パーフリンジェンスに対する特異性が非常に高く、有益菌は死滅させず、特定病原菌のみ死滅させることができ、薬物耐性を誘導しないので、従来の抗生剤に比べて製品寿命を延長させる効果を発揮する。
【0038】
前記抗生剤は、当該技術分野で通常用いられる製造方法により製造することができる。
【0039】
前記抗生剤は、抗生剤の品質低下を減少させるのに十分な有効量の添加剤を含むものであってもよく、前記添加剤は、保存剤、安定化剤、賦形剤、凍結保護剤などであってもよい。前記抗生剤は、前記添加剤を含むことにより、自然状態で存在するバクテリオファージとは異なり、抗生剤中にバクテリオファージCJ_CP_20-25がより長期間生存するか、活性が保持されるものであってもよい。前記保存剤、安定化剤、賦形剤又は凍結保護剤としては、抗生剤の品質低下を減少させることができるものであれば、当該技術分野で通常用いられるいかなるものを用いてもよい。
【0040】
さらに他の態様は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む飼料添加剤を提供する。さらに他の態様は、前記飼料添加剤を含む飼料を提供する。さらに他の態様は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む飲料水添加剤を提供する。さらに他の態様は、前記飲料水添加剤を含む飲料水を提供する。
【0041】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25については前述した通りである。
【0042】
前記飼料添加剤又は飲料水添加剤は、バクテリオファージCJ_CP_20-25を含む組成物の形態に製造して飼料又は飲料水に混合するものであってもよく、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を飼料又は飲料水製造時に直接添加する方法で用いるものであってもよい。
【0043】
前記飼料添加剤又は飲料水添加剤中に含まれるバクテリオファージCJ_CP_20-25は、液体状態であってもよく、乾燥した固体状態であってもよく、具体的には乾燥した粉末形態であってもよい。前記バクテリオファージCJ_CP_20-25の乾燥方法は、通風乾燥、自然乾燥、噴霧乾燥又は凍結乾燥方法であるが、これらに限定されるものではない。前記バクテリオファージCJ_CP_20-25は、乾燥した粉末形態を飼料添加剤又は飲料水添加剤の重量の0.05~10重量%、具体的には0.1~2重量%で混合するものであってもよい。
【0044】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む、飼料添加剤又は飲料水添加剤は、必要に応じて、他の添加剤をさらに含んでもよい。前述した使用可能な添加剤としては、例えば飼料又は飲料水の品質低下を防止するために添加する、結合剤、乳化剤、保存剤などや、飼料又は飲料水の効用増大のために添加する、アミノ酸剤、ビタミン剤、酵素剤、生菌剤、香味剤、非タンパク窒素化合物(non-protein nitrogen compound: NPN)、ケイ酸塩剤、緩衝剤、着色剤、抽出剤、オリゴ糖などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらは単独で添加してもよく、2種以上を共に添加してもよい。
【0045】
前記飼料又は飲料水に含まれるバクテリオファージCJ_CP_20-25以外の原料としては、当該技術分野で通常用いられるものであればいかなるものを用いてもよい。前記飼料の例としては、穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、ウリ類、穀物副産物類などの植物性飼料と、タンパク質類、無機物類、油脂類、ミネラル類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類、飲食物などの動物性飼料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
前記飼料添加剤は、飼料100重量部に対して、0.05~10重量部、例えば0.1~2重量部含まれるものであってもよい。前記飲料水添加剤は、飲料水100重量部に対して、0.0001~0.01重量部、例えば0.001~0.005重量部含まれるものであってもよい。
【0047】
前記飼料添加剤、飼料、飲料水添加剤又は飲料水は、当該技術分野で通常用いられる製造方法により製造することができる。
【0048】
前記飼料添加剤、飼料、飲料水添加剤又は飲料水は、これらの品質低下を減少させるのに十分な有効量の添加剤を含むものであってもよく、前記添加剤は、保存剤、安定化剤、賦形剤、凍結保護剤などであってもよい。前記飼料添加剤、飼料、飲料水添加剤又は飲料水は、前記添加剤を含むことにより、自然状態で存在するバクテリオファージとは異なり、飼料添加剤、飼料、飲料水添加剤又は飲料水中にバクテリオファージCJ_CP_20-25がより長期間生存するか、活性が保持されるものであってもよい。前記保存剤、安定化剤、賦形剤又は凍結保護剤としては、飼料添加剤、飼料、飲料水添加剤又は飲料水の品質低下を減少させることができるものであれば、当該技術分野で通常用いられるいかなるものを用いてもよい。
【0049】
さらに他の態様は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む消毒剤を提供する。さらに他の態様は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25を有効成分として含む洗浄剤を提供する。
【0050】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25については前述した通りである。
【0051】
前記消毒剤又は洗浄剤の剤形は、特に限定されるものではなく、当該技術分野における通常知られた剤形に製造されて用いられる。前記消毒剤又は洗浄剤は、当該技術分野で通常用いられる製造方法により製造することができる。
【0052】
前記消毒剤は、クロストリジウム・パーフリンジェンスを除去するために散布され、動物の活動領域、屠殺場、斃死地域、調理場所、調理設備などに散布されるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
前記洗浄剤は、クロストリジウム・パーフリンジェンスに曝露したか、曝露するリスクのある動物の皮膚の表面、身体の各部位などを洗浄する用途に用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
前記消毒剤又は洗浄剤は、これらの品質低下を減少させるのに十分な有効量の添加剤を含むものであってもよく、前記添加剤は、保存剤、安定化剤、賦形剤、凍結保護剤などであってもよい。前記消毒剤又は洗浄剤は、前記添加剤を含むことにより、自然状態で存在するバクテリオファージとは異なり、消毒剤又は洗浄剤中にバクテリオファージCJ_CP_20-25がより長期間生存するか、活性が保持されるものであってもよい。前記保存剤、安定化剤、賦形剤又は凍結保護剤としては、消毒剤又は洗浄剤の品質低下を減少させることができるものであれば、当該技術分野で通常用いられるいかなるものを用いてもよい。
【0055】
さらに他の態様は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25、又はそれを有効成分として含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物をヒト以外の動物に投与するステップを含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0056】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25、それを有効成分として含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物、及びクロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患については前述した通りである。具体的には、前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患は、例えば壊死性腸炎である。
【0057】
前記予防又は治療方法は、具体的には、クロストリジウム・パーフリンジェンスにより感染したか、感染するリスクのある、ヒト以外の動物に、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25又はそれを有効成分として含む組成物を薬学的に有効量で投与するステップを含む。前記バクテリオファージCJ_CP_20-25又はそれを有効成分として含む組成物は、薬学的製剤の形態で動物に投与するものであってもよく、飼料添加剤又は飲料水添加剤の形態で動物の飼料又は飲料水に混合してそれを摂取させる方法で投与するものであってもよい。
【0058】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25又はそれを有効成分として含む組成物の投与経路は、標的組織に送達できるものであれば、経口又は非経口の様々な経路で投与することができ、具体的には、口腔、直腸、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、鼻腔内、吸入など通常の方式で投与することができる。
【0059】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25又はそれを有効成分として含む組成物の好適な1日総使用量は、正しい医学的判断の範囲内で担当医により決定され、これは当該技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0060】
特定動物に対する前記バクテリオファージCJ_CP_20-25又はそれを有効成分として含む組成物の具体的な薬学的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、当該個体の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食餌はもとより、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25又はそれを有効成分として含む組成物の投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間などを考慮して決定され、同時又は異時に共に用いられる薬物、その他組成物の成分などをはじめとする様々な因子及び医薬分野で周知の類似の因子に応じて異なる。
【0061】
前記ヒト以外の動物は、クロストリジウム・パーフリンジェンスにより感染し得る動物であれば特に限定されるものではない。例えば、前記動物は、鳥類及び哺乳類であり、具体的には、ニワトリ、カモ、ブタなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
さらに他の態様は、前記バクテリオファージCJ_CP_20-25、又はそれを有効成分として含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物のクロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防剤又は治療剤製造のための用途を提供する。
【0063】
前記バクテリオファージCJ_CP_20-25、それを有効成分として含む、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用組成物、及びクロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患については前述した通りである。具体的には、前記クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患は、例えば壊死性腸炎である。
【発明の効果】
【0064】
新規なバクテリオファージCJ_CP_20-25は、クロストリジウム・パーフリンジェンスを特異的に死滅させる効果を有し、耐酸性及び耐熱性に優れるので、クロストリジウム・パーフリンジェンスによる感染性疾患の予防又は治療用途として、抗生剤、飼料添加剤、飲料水添加剤、飼料、飲料水、消毒剤、洗浄剤などに広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】新規バクテリオファージCJ_CP_20-25の電子顕微鏡写真である。
【
図2】新規バクテリオファージCJ_CP_20-25のpH安定性を確認した結果を示すグラフである。
【
図3】新規バクテリオファージCJ_CP_20-25の60℃での安定性を確認した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0067】
クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens: CP)に対する死滅能を有するバクテリオファージの分離
実施例1-1.糞便試料前処理液の作製
韓国のソウル市、京畿道、忠清道、慶尚道地域の農場において、養豚、養鶏及び畜牛の糞便試料を採取し、各試料20gを80mLのPBSに希釈し、10,000rpmで15分間遠心分離した。上清を0.2μmフィルターで濾過し、その後濾液に10%(w/v)塩化ナトリウム水溶液を添加し、4℃で12時間保管した。その後、それに10%(w/v)ポリエチレングリコール8000(Sigma-Aldrich, Cat. No. P2139)を添加して4℃で12時間保管し、次いで濃縮のために15,000rpmで1時間遠心分離して上清を除去した。沈殿物を10mLのSMバッファ(5.8g/L塩化ナトリウム,2g/L MgSO4・7H2O,0.05M Tris-Cl(pH7.5))に溶解し、その後0.2μmフィルターで濾過してその濾液を4℃で保管した。
【0068】
実施例1-2.バクテリオファージ濃縮液の作製
韓国のソウル市、京畿道、忠清道、慶尚道地域の家畜農家において収集した糞便試料から分離したCP菌株、及び国立獣医科学検疫院から分譲されたCP菌株を2mLのBHI(Brain Heart Infusion)培地に接種し、42℃及び嫌気条件で18時間静置培養し、その後50mLのBHI培地に、前記CP菌株の培養液1mL、及び実施例1-1で得られた糞便試料前処理液1mLを接種して42℃で18時間混合静置培養した。混合培養液を6,000rpmで20分間遠心分離し、その後上清を0.2μmフィルターで濾過し、それに10%(w/v)ポリエチレングリコール8000を添加して4℃で12時間保管した。その後、濃縮のために15,000rpmで1時間遠心分離して上清を除去し、沈殿物を1mLのSMバッファに溶解し、0.2μmフィルターで濾過してその濾液を4℃で保管した。
【0069】
実施例1-3.バクテリオファージのスクリーニング及び分離
実施例1-2で作製したバクテリオファージ濃縮液50μLを0.7%(w/v)寒天(BD DIFCO, Cat. No.44164)5mL、及び実施例1-2で用いたものと同一のCP菌株を600nmで吸光度(O.D.)が2になるように振盪培養した培養液50μLと混合し、直径150mmのBHI平板培地を用いてDouble-layer agar plaque assayを行った。ソフトアガーに形成された溶菌斑を200μLチップでパンチングし、0.5mLのSMバッファに入れて溶出した。溶出したバクテリオファージ含有溶液は、同一形態の単一溶菌斑が形成されるまでDouble-layer agar plaque assayを繰り返し、純粋なバクテリオファージ含有溶液を分離した。得られたバクテリオファージ含有溶液を0.2μmフィルターで濾過し、それに10%(w/v)ポリエチレングリコール8000を添加して4℃で12時間保管した。その後、濃縮のために15,000rpmで1時間遠心分離して上清を除去し、沈殿物を1mLのSMバッファに溶解し、0.2μmフィルターで濾過してその濾液を4℃で保管した。
【実施例2】
【0070】
分離したバクテリオファージの全ゲノムシーケンシング(whole genome sequencing: WGS)分析
CsCl gradient法及びファージDNA分離キット(Norgen Biotek-Corp. Kit, Cat. No.46800)を用いて、実施例1-3で純粋分離したバクテリオファージ濃縮液1mLからDNAを抽出した。(株)マクロジェン(Macrogen Inc.)に依頼して全ゲノムシーケンシング分析を行い、De novo assemblyソフトウェア(SPAdes 3.13.0)を用いて遺伝子を組み合わせ、Open reading frame(ORF)は、GeneMark.hmmとNCBI ORF finderを用いて行った。BLASTP(E values of <0.1)とPSI-BLAST(E value of <0.005)プログラムを用いて、各ORFの機能を命名(annotation)した。
【0071】
その結果、分離したバクテリオファージは、51,670bp、73ORF、G+C含有量34.10%である配列番号1の塩基配列を有することが確認され、これは従来から報告されているClostridium phage CP3(MF001357.1)と97%の配列同一性を示すが、全ての断片が100%一致するバクテリオファージはないことが確認されたので、前記バクテリオファージは、新規に分離されたバクテリオファージであることが分かった。よって、前記新規バクテリオファージをバクテリオファージCJ_CP_20-25と命名し、2021年1月18日付けでブダペスト条約上の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms)に受託番号KCCM12934Pとして寄託した。
【実施例3】
【0072】
バクテリオファージCJ_CP_20-25の形態分析
高純度のバクテリオファージ溶液を得るために、CsCl gradient法を行った。具体的には、密度が1.7、1.5、1.45又は1.3のSMバッファに溶解したCsCl溶液を準備し、15mL超遠心分離(ultracentrifuge)用チューブ(Beckman Coulter, Cat. No. Z00901SCA)に前記CsCl溶液を高密度から低密度に層をなすように2mLずつ分注し、最も上段に実施例1-3で得られたバクテリオファージCJ_CP_20-25濃縮液2mLを分注した。これを4℃及び25,000rpmで2時間遠心分離し、その後チューブに形成された白色のバクテリオファージ層のみをシリンジ(Satorius, Cat. No.17822-K)で採取した。採取したバクテリオファージ溶液1μLをcarbon-coated copper grid上にスポッティングし、その後2%酢酸ウラニルで15秒間染色し、電子顕微鏡(TEM, JEOL JEM-101, Tokyo, Japan)で形態を観察した。
【0073】
その結果、
図1に示すように、バクテリオファージCJ_CP_20-25は、形態学的に二十面体の頭部と長さ約100nmの収縮性の尾部(contractile tail)を有することが観察され、カウドウイルス目(Caudovirales order)、マイオウイルス科(Myoviridae family)に属することが分かった。
【実施例4】
【0074】
バクテリオファージCJ_CP_20-25のpH安定性の評価
バクテリオファージCJ_CP_20-25が広いpH範囲で安定性を有するか否かを確認するために、pH4、7、7.5又は10の溶液(pH4:0.2M酢酸ナトリウム(sodium acetate)溶液;pH7,7.5:0.2Mリン酸ナトリウム(sodium phosphate)溶液;pH10:0.2Mトリス(Tris-HCl)溶液)を準備した。各pHの溶液450μLと2×1010PFU/mLのバクテリオファージ溶液50μLを混合して4℃で2時間静置し、その後Double-layer agar plaque assayを行ってtiterの増減を評価した。
【0075】
その結果、
図2に示すように、バクテリオファージCJ_CP_20-25は、pH7~10において活性を失わず、安定しており、pH4においてもpH7.5の群に比べて約1.3ログ程度のみ活性が低下したので、優れた耐酸性を有するバクテリオファージであることが分かった。
【実施例5】
【0076】
バクテリオファージCJ_CP_20-25の熱安定性の評価
バクテリオファージCJ_CP_20-25が高温において安定性を有するか否かを確認するために、2×108PFU/mLのバクテリオファージ溶液500μLを60℃で0、3、6又は24時間静置し、その後Double-layer agar plaque assayを行ってtiterの増減を評価した。
【0077】
その結果、
図3に示すように、バクテリオファージCJ_CP_20-25は、60℃に3時間曝露すると、0時間曝露した対照群に比べて約1.2ログの活性低下を示し、6時間曝露すると、対照群に比べて約1.6ログの活性低下を示し、24時間曝露すると、対照群に比べて約5.4ログの活性低下を示すが、依然として活性を有する。よって、バクテリオファージCJ_CP_20-25は、優れた耐熱性を有するバクテリオファージであることが分かった。
【実施例6】
【0078】
バクテリオファージCJ_CP_20-25の溶菌範囲(spectrum)の評価
バクテリオファージCJ_CP_20-25の溶菌範囲を評価するために、韓国のソウル市、京畿道、忠清道、慶尚道地域の家畜農家において収集した糞便試料から分離したCP菌株、及び国立獣医科学検疫院から分譲されたCP菌株全45種をそれぞれBHI液体培地で培養し、その後0.7%ソフトアガー5mLに前記菌株の培養物各50μLを接種し、ペトリディッシュに注入してプレーティングし、次いで5分間静置した。その後、ソフトアガー上に実施例1-3で得られたバクテリオファージCJ_CP_20-25濃縮液10μLを滴下(spotting)し、次いで42℃で18時間静置培養した。培養終了後に、ソフトアガー上に形成された溶菌斑の有無によりバクテリオファージCJ_CP_20-25の溶菌範囲を評価した。
【0079】
【0080】
その結果、表1に示すように、試験を行った45種のCP菌株の全てにおいて溶菌斑が形成されたので、バクテリオファージCJ_CP_20-25は、広範囲のCP菌株に死滅能を有することが確認された。
【0081】
以上の説明から、本出願の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【0082】
【配列表】