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特許7580629磁気ギアードモーターおよび磁気ギアードモーターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】磁気ギアードモーターおよび磁気ギアードモーターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/10 20060101AFI20241101BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20241101BHJP
   H02K 16/02 20060101ALN20241101BHJP
【FI】
H02K7/10 A
F16H49/00 A
H02K16/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023558028
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2022040688
(87)【国際公開番号】W WO2023080110
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2021179989
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乙坂 純香
(72)【発明者】
【氏名】鬼橋 隆之
(72)【発明者】
【氏名】亀山 正樹
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0042965(US,A1)
【文献】国際公開第2015/178111(WO,A1)
【文献】特開2018-143473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/10
H02K 16/02
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーター、前記ステーターの内周に回転可能に配設された第一のローター、前記第一のローターと同軸に配設され、前記第一のローターの回転に応じて回転する第二のローターを備えた磁気ギアードモーターにおいて、
前記第二のローターは、前記第一のローターの回転速度をあらかじめ定められた減速比で減速した回転速度で回転し、
前記ステーターは、第一のコイルを巻回した複数の第一のティースと前記複数の第一のティースを繋ぐ鉄心からなり、前記第一のコイルにコンデンサー、単相交流電源、および直流電源が接続されており、前記コンデンサーと前記直流電源とは、スイッチによって切替え可能となっており、
前記第一のローターの始動時には、前記第一のコイルに前記コンデンサーが接続され、前記第一のローターの予め定められた回転時には、前記スイッチによって、前記第一のコイルに前記直流電源が接続されることを特徴とする磁気ギアードモーター。
【請求項2】
ステーター、前記ステーターの内周に回転可能に配設された第一のローター、前記第一のローターと同軸に配設され、前記第一のローターの回転に応じて回転する第二のローターを備えた磁気ギアードモーターにおいて、
前記第二のローターは、前記第一のローターの回転速度をあらかじめ定められた減速比で減速した回転速度で回転し、
前記ステーターは、第一のコイルを巻回した複数の第一のティースと前記第一のティースを繋ぐ鉄心からなり、前記第一のコイルに直流電源と、前記第一のローターの極数と同じ個数のブラシとが接続されており、
前記第一のローターは、前記ブラシにスリップリングが触れることにより前記直流電源に接続されることを特徴とする磁気ギアードモーター。
【請求項3】
ステーター、前記ステーターの内周に回転可能に配設された第一のローター、前記第一のローターと同軸に配設され、前記第一のローターの回転に応じて回転する第二のローターを備えた磁気ギアードモーターにおいて、
前記第二のローターは、前記第一のローターの回転速度をあらかじめ定められた減速比で減速した回転速度で回転し、
前記ステーターは、第一のコイルを巻回した複数の第一のティースと前記複数の第一のティースを繋ぐ鉄心からなり、前記第一のコイルに単相交流電源または直流電源が接続され、
前記第一のティースの先端形状が左右非対称であることを特徴とする磁気ギアードモーター。
【請求項4】
ステーター、前記ステーターの内周に回転可能に配設された第一のローター、前記第一のローターと同軸に配設され、前記第一のローターの回転に応じて回転する第二のローターを備えた磁気ギアードモーターにおいて、
前記第二のローターは、前記第一のローターの回転速度をあらかじめ定められた減速比で減速した回転速度で回転し、
前記ステーターは、第一のコイルを巻回した複数の第一のティースと前記複数の第一のティースを繋ぐ鉄心からなり、前記第一のコイルに単相交流電源または直流電源が接続され、
前記第一のローターと前記ステーターのコイルの結線部分にスイッチを設け、前記第一のローターと前記ステーターの極数を切替え可能とする磁気ギアードモーター。
【請求項5】
前記第一のローターは、周方向に等間隔に配置された第二のティースに第二のコイルを巻回して構成され、前記第二のコイルに単相交流電源が接続されており、または前記第二のコイルに代えて永久磁石を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気ギアードモーター。
【請求項6】
前記第一のティースを繋ぐ鉄心に磁石を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気ギアードモーター。
【請求項7】
前記第一のティースの先端部分に磁石を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の磁気ギアードモーター。
【請求項8】
前記第二のローターは、周方向に等間隔をおいて並ぶ複数のポールピースを有し、前記第一のローターの極対数をNh、前記ポールピースの数をNl、前記ステーターの極対数をNs、減速比をGrとした場合、Ns=Nl±Nh、Gr=Nl/Nhであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気ギアードモーター。
【請求項9】
ステーター、前記ステーターの内周に回転可能に配設された第一のローター、前記第一のローターと同軸に配設され、前記第一のローターの回転に応じて回転する第二のローターを備えた磁気ギアードモーターの製造方法において、前記ステーター、前記ステーターに巻回するコイル、前記第二のローターを構成するポールピースと絶縁部材をモールドで一体に成形し、その後、前記ステーターを構成する部分と前記第二のローターを構成する部分とを切り離すことを特徴とする磁気ギアードモーターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、磁気ギアードモーターおよび磁気ギアードモーターの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高トルク密度を実現した磁束変調型の磁気減速機(磁気ギア)と、巻線型ステーターを一体にした磁気歯車型回転電機(以下、磁気ギアードモーターと称す)が知られている。この磁気ギアードモーターでは、内部に配置されたステーターコイルによって高速側ローターが回転し、高速側ローターに配置された磁石の磁束を変調磁極(ポールピースと称す)で変調させることで、低速側ローターを回転させる。これによって、低速側ローターには高速側ローターの速度比(減速比)だけ増加したトルクを得ることができる。このため高トルク密度な機器を得ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5723987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の磁気ギアードモーターは、高速側ローター、低速側ローターの両方に永久磁石が使われている。このため、永久磁石が多量に使用されており高価である。また、ステーターコイルに三相交流電源を印加することにより高速側ローターを回転させている。この場合、回転子の位相と固定子の回転磁界を同期させないと始動できないため、インバータなど、始動のための回路を必要とする。これにより、モーターシステムとして高価となり、汎用的な用途としての実用化には、問題があった。
【0005】
本願は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ステーターコイルに単相交流電源あるいは直流電源を接続する構成により、インバータなどを使用せず、電圧電流を直入れすることで始動できるとともに、永久磁石を削減できる安価な磁気ギアードモーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される磁気ギアードモーターは、ステーター、ステーターの内周に回転可能に配設された第一のローター、第一のローターと同軸に配設され、第一のローターの回転に応じて回転する第二のローターを備えたものであって、第二のローターは、第一のローターの回転速度をあらかじめ定められた減速比で減速した回転速度で回転し、ステーターは、第一のコイルを巻回した複数の第一のティースと複数の第一のティースを繋ぐ鉄心からなり、第一のコイルにコンデンサー、単相交流電源、および直流電源が接続されており、コンデンサーと直流電源とは、スイッチによって切替え可能となっており、第一のローターの始動時には、第一のコイルにコンデンサーが接続され、第一のローターの予め定められた回転時には、スイッチによって、第一のコイルに直流電源が接続されることを特徴とする。

【発明の効果】
【0007】
本願に開示される磁気ギアードモーターによれば、ステーターの第一のコイルに単相交流電源または直流電源を接続することにより、インバータなどを用いずに始動できるとともに、永久磁石が削減でき、安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る磁気ギアードモーターの断面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】実施の形態1に係る磁気ギアードモーターの断面図である。
図4】実施の形態1に係る磁気ギアードモーターのステーターコイルと単相交流電源との接続を示す回路図である。
図5】実施の形態1に係る磁気ギアードモーターの断面図である。
図6】実施の形態1に係る磁気ギアードモーターのステーターコイルと直流電源との接続を示す回路である。
図7】実施の形態2に係る磁気ギアードモーターの断面図である。
図8】実施の形態3に係る磁気ギアードモーターの断面図である。
図9】実施の形態4に係る磁気ギアードモーターの断面図である。
図10】実施の形態4に係る磁気ギアードモーターの高速ローターの巻線の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願に係る磁気ギアードモーターの好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、同一内容および相当部については同一符号を配し、その詳しい説明は省略する。以降の実施の形態も同様に、同一符号を付した構成について重複した説明は省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る磁気ギアードモーターの断面図、図2は、図1のA-A断面図である。図1に示すように磁気ギアードモーターは、複数のティース11をもつ鉄心12、コイル13、シャフト14を有する高速ローター(第一のローター)1と、複数のポールピース21と絶縁部材22を周方向に交互に配置する低速ローター(第二のローター)2と、高速ローター1を回転させるための回転磁界を発生させるステーター3を有する。そして、径方向内側から外側に、高速ローター1、低速ローター2、ステーター3の順で配置されている。コイル13は、絶縁紙または絶縁材で形作ったインシュレータにより鉄心12と絶縁されている。
【0011】
高速ローター1は、シャフト14に回転軸の中心があり、シャフト14の外周に鉄心12が固定されている。鉄心12は複数のティース11を有する。ティース11は円周上に等間隔に配置されている。ティース11のそれぞれには、コイル13が巻き回されており、単相交流電圧または直流電圧がコイル13に印加されることで、電磁石となる。図1中、コイル13を貫通するように表された矢印は、電圧印加時の磁界の方向の一例を示す。以降の図も同様である。
【0012】
図2に示すように、高速ローター1の径方向外側に、空気のギャップ4を介して、低速ローター2が配置される。低速ローター2は、電磁鋼板を周方向に積層したポールピース21と、絶縁部材22とが周方向に交互に配置される。また、低速ローター2は、軸方向両端で樹脂またはアルミなどの非磁性材61、62で固定され、軸受7a、7bで支持する構造である。
【0013】
低速ローター2の径方向外側に空気のギャップ5を介して、ステーター3が配置される。ステーター3は、複数のティース31を繋ぐ鉄心32、絶縁材、コイル33からなる。鉄心32に対して絶縁材で絶縁を確保しながらコイル33が巻かれている。コイル33は主コイル331と補助コイル332から構成される。
また、図3のように高速ローター1のコイル13からなる電磁石の代わりに永久磁石15を使用してもよい。このように巻線界磁でも永久磁石でもよい。
【0014】
図4に単相交流電源9をステーター3のコイル33に接続した回路図の一例を示す。上述したように、ステーター3には、主コイル331、補助コイル332が巻回され、コイル33端部にコンデンサー8、単相交流電源9、直流電源10が接続されている。コンデンサー8と直流電源10はスイッチ16によって切替えることができる。このように接続することで、ステーター3に4極の回転磁界が発生する。高速ローター1は単相誘導モーターの原理に従って始動し、定格回転時にはスイッチ16によって直流電源10に切替えられ、磁気ギアードモーターとして駆動する。また、図4には示されていないが、高速ローター1のコイル13にも単相交流電源が接続され、単相交流電圧が印加される。
【0015】
高速ローター1とステーター3により発生する磁束を低速ローター2で変調する。すなわち、高速ローター1の極数と低速ローター2の磁極数の比に従って高速ローター1の速度が減速され低速ローター2が回転する。
【0016】
単相交流電源9を使用することで、2本の電源線の片方を切り離すだけで完全に電流経路を絶つことができるため、保護回路をヒューズ1個のみで構成することができる。さらに、運転停止スイッチの設置が片側だけで良く、大型の設備が不要となりシステム全体の小型化が可能なだけでなく、コストを低減することができる。また、コンデンサー始動モーターの特徴として、無負荷に近い時に効率が高く、磁気ギアードモーターの特徴から高速側はトルクが小さいため無負荷に近い状態となる。低速側は必要な負荷で効率よく駆動できる。
【0017】
また、図5図6に、単相交流電源9に代えて、直流電源10を接続する場合のステーター3の断面図と回路図の一例を示す。この構成の場合、図6に示すように高速ローター1の極数である8個のブラシ17と、8個のブラシ17に触れるように図示しないスリップリングが16個で構成される。これにより、直流電源10が高速ローター1に接続され、コイル13に直流電圧が印加される。
【0018】
このような構成により、モーターと減速機構で構成されるものが、本実施の形態では減速機構部分にモーターも含まれており小型化できる。ステーター3のコイル33に単相交流電流あるいは直流電流を印加すること、および高速ローター1のコイル13に単相交流電圧または直流電圧を印加することにより、始動時に、電圧電流を直入れすることができ、インバータなどの始動のための回路が不要となり、システム全体の小型化が可能なだけでなく、コストを低減することができる。さらに、永久磁石が削減でき、大幅なコスト低減が可能である。また、回転周波数を変更したい場合にも必要となるインバータ素子数を削減できる効果もある。
【0019】
なお、単相交流電圧あるいは直流電圧を印加するのは、ステーターのコイル33またはローターのコイル13のいずれかでもよい。
【0020】
次に本実施の形態で構成される磁気ギアードモーターの回転数とトルクの関係について説明する。
高速ローター1の極対数をNh、低速ローター2のポールピース数をNl、ステーター3のスロット数をNsとするとき、以下の関係となっている。
Ns=Nl±Nh・・・(式1)
【0021】
このとき、減速比をGrとすると、
Gr=Nl/Nh・・・(式2)
となり、高速ローター1の速度が1/Gr倍され低速ローター2に伝わり、高速ローター1のトルクがGr倍され低速ローター2に伝わることになる。
【0022】
本実施の形態の図1での各数値は、Nl=4、Ns=2、Nh=2である。つまり、減速比Gr=2となる。上記式1、式2を満たす全ての組合せをとることができる。
【0023】
また、高速ローター1に備えられるブラシ17の数をNbとすると、上記の例で言えば
2×Nh=Nb・・・(式3)
と表せるので、
【数1】

と表すことができる。
【0024】
このため、高速ローター1のコイル13に単相交流電流または直流電流を供給するスリップリングおよびブラシ17の構造を簡素化できる。また、図1では、低速ローター2のポールピース21と絶縁部材22を等間隔に配置しているが、そうでなくてもよい。
【0025】
また、径方向の内側から外側に、高速ローター1、低速ローター2、ステーター3の順で配置されているとしたが、低速ローター2を固定し、ステーター3を回転させるアウターローター型でもよい。
【0026】
また、本実施の形態では、運転用のコンデンサー8を使用して始動して運転する、コンデンサー運転形の単相モーターと同じ駆動原理で説明している。しかし、これに限るものではなく、遠心力スイッチにより始動コイルを切り離す分相始動形でもよい。また、始動用のコンデンサーと遠心力スイッチがあるコンデンサー始動形でもよい。また、遠心力スイッチと始動用コンデンサーを直列に、運転用コンデンサーをそれらと並列に繋いだコンデンサー始動コンデンサー運転形でもよい。また、整流子、ブラシ、および整流子ショートリングを用いた反発始動形でもよい。また、くまとりコイルを用いたくまとり始動形でもよい。
【0027】
また、本実施の形態では、高速ローター1にティース11を設け、コイル13を巻回して電磁石を構成しているが、電磁石ではなく鉄心12の外周面に永久磁石を貼り付けて表面磁石型としてもよく、鉄心12に磁石を埋め込んだ埋込磁石型でも構わない。
【0028】
また、本実施の形態では、低速ローター2のポールピース21は、電磁鋼板を周方向に積層しているが、径方向に積層してもよいし圧粉鉄心でもよく、磁性体であればよい。ポールピース21、絶縁部材22、軸方向の固定部材、シャフトは一体成型してもよい。一体成型する際のモールド樹脂は、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene terephthalate)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が考えられる。このモールド樹脂は、ポールピース21の固定に使用しているため、非導電性材料とすることが望ましい。こうすることで渦電流を抑制し機器の効率向上に寄与することができる。
【0029】
また、主コイル331、補助コイル332を含むステーター3と、低速ローター2を構成するポールピース21、絶縁部材22、軸方向の固定部材、シャフト14を樹脂等のモールドで一体に成形し、組立後にステーター3を構成する部分と低速ローター2を構成する部分とを切り離す構造でもよい。この場合、ステーター3と低速ローター2間はモールドで薄く繋がっている。これにより、別々に組立てる場合に比べ、組立時の部品点数を削減できることから加工費の低減が可能である。さらに、組立時に径方向の位置決め精度を高くでき、ステーター3と低速ローター2の隙間であるギャップの幅をより小さくすることができるために、使用するコイルの巻数、流す電流、および磁石量を減らすことができ原価低減が可能である。それだけでなく、軸ぶれの可能性も低減できる。また、軸方向の位置決め精度も高くできるため、設計時に想定した以上の漏れ磁束が生じる恐れもない。また、一体成型することにより、ポールピース21の冷却が容易となり、渦電流を低減し、効率を向上することが可能となる。以上のことから、より小型で安価な磁気ギアードモーターを提供できる。
【0030】
鉄心12、ポールピース21、鉄心32の材料は電磁鋼板、圧粉鉄心、アモルファス金属、パーメンジュールなどの軟磁性材料で構成される(ただし、仕様上、問題がなければS45CまたはSS400などの強磁性材料であっても良い)。電磁鋼板は磁束変化による渦電流を防止するために、薄い板を複数枚積層して構成される。
【0031】
また、モールドまたはブラケットを絶縁性の樹脂で構成している。このため、軸受の内輪と外輪が導通する電食を防止することができ、磁気ギアードモーターの品質をより高めることが可能である。
【0032】
実施の形態2.
図7は本実施の形態の磁気ギアードモーターの断面図である。本実施の形態では、ステーター3のスロットが円形に等間隔に配置されていないこと、ステーター3の鉄心32に永久磁石を挿入していることが実施の形態1と異なる。他の構成は実施の形態1と同じであるため説明を省略する。なお、図7において、Ns=2極対、Nl=4磁極、Nh=2極対(4極)、Gr=2である。
【0033】
このような構成により、ステーター3のスロットが円形に等間隔に配置されてないことで、磁気ギアードモーター全体の小型化が可能である。なお、実施の形態1同様、ステーター3のコイル33には単相交流電圧または直流電圧を印加する。例えば、実施の形態1と同様のコンデンサー運転形の単相モーターであれば、図7中、ステーター3の上側のティースの内、左側のティースに主コイルが巻かれ、右側のティースに補助コイルが巻かれ、補助コイルに始動用コンデンサーが接続される。しかし、これに限るものではなく、遠心力スイッチにより始動コイルを切り離す分相始動形でもよい。また、始動用のコンデンサーと遠心力スイッチがあるコンデンサー始動形でもよい。また、遠心力スイッチと始動用コンデンサーを直列に、運転用コンデンサーをそれらと並列に繋いだコンデンサー始動コンデンサー運転形でもよい。また、整流子、ブラシ、および整流子ショートリングを用いた反発始動形でもよい。また、くまとりコイルを用いたくまとり始動形でもよい。さらに、自己始動形でもよい。
【0034】
さらに、ステーター3に磁石34を挿入することにより、効率が上がるだけでなく、ステーター3の鉄心32内の磁束量を増やし低速ローター2とステーター3間のギャップ磁束密度を高める効果がある。この構成により、出力側である低速ローター2に伝わる伝達トルクを大きくすることができる。このような構成により小型で安価な磁気ギアードモーターを提供できる。鉄心32に磁石を埋め込んだが、仕様によってはコイルを巻回し、電磁石としてもよい。
【0035】
実施の形態3.
図8は、本実施の形態の磁気ギアードモーターの断面図である。本実施の形態では、上下一対のティース31の先端形状が左右非対称であるとともに、ティース31の先端中央部に磁石35を配置している。また、上下のティースに巻回されるコイルは、単相交流電源または直流電源に直接接続され、自己始動形の構成である。その他の構成は実施の形態1および2と同じであるため省略する。なお、自己始動形の構成に限ることはなく、実施の形態1および2同様、単相モーターを始動する他の回路構成でもよい。
【0036】
単相モーターの始動時に高速ローター1の回転方向がわからないということがある。これに対し、ティース31の先端形状を左右非対称にすることで、始動時に高速ローター1を意図した方向に回転させることができる。図8の場合、長く伸びたティース側の端が最もギャップ長が小さく吸引力が大きいため、反時計周りに回転始動する。このような構成により、ティースと低速ローターの安定点が反時計回りの方向にずれる。これにより、小さい始動トルクで、低速ローター2の出力軸に繋いだ機器の回転方向を意図した方向に回転させることができるため、より広い用途に磁気ギアードモーターを提供できる。
【0037】
また、磁石35をステーター3のティース31の先端中央部に配置することで、ティース数を増やすことなくステーター3側の極数を増やすことができる。図8の場合、磁石35がなければステーター3の極対数は1極対であるが、磁石35を置くことでコンシクエント構造となり、ステーター3の極対数を3極対とすることができ、ギア比を大きくすることができる。図6において、Ns=3極対、Nl=5磁極、Nh=1極対(2極)、Gr=2.5である。
【0038】
また、永久磁石を用いることで伝達トルクの向上が見込まれる。ステーターの鉄心32に磁石34を埋め込んだが、仕様によってはコイルを巻き回し、電磁石としてもよい。本実施の形態では、ティース31の先端中央部に磁石35を配置したが、図8のティース31の先端両脇部に磁石を配置し、ティース31の先端中央部を鉄心としてもよい。
【0039】
また、ステーター3のティース31の先端に磁石を埋め込んだあと、樹脂材料によってコイルを含むステーターをモールド成形することで一体化してもよいし、しなくてもよい。
【0040】
実施の形態4.
図9は実施の形態4に係る磁気ギアードモーターの断面図、図10は、実施の形態4に係る磁気ギアードモーターの巻線の一例を示す図である。図10に示すように、磁気ギアードモーターは2通りのギア比を実現することが可能である。1通り目は、図10(a)の1a~8a、図10(b)に示す高速ローター1の磁極で、Ns=2極対(4極)、Nl=6磁極、Nh=4極対(8極)、Gr=1.5である。2通り目は、図10(a)の1b~4b、図10(c)に示す高速ローター1の磁極で、Ns=4極対(8極)、Nl=6磁極、Nh=2極対(4極)Gr=3.0である。1通り目と2通り目の切替えは、高速ローター1とステーター3のコイルの結線部分に外部でスイッチを設け高速ローターとステーターの極数を切替えてもよい。
【0041】
図3で説明したように、電源に単相交流を繋ぎ、コンデンサー始動する場合、コンデンサー始動モーターの無負荷に近い時に効率が高いので、負荷に合わせて効率が最適となるギア比に切替えて駆動することができる。また、高速ローター1の極対数を交流電源時に2極対、直流電源時に4極対とすることで、図5図6で示したユニバーサルモーターのように汎用的な磁気ギアードモーターを実現することができる。
【0042】
図10のように高速ローター1の巻線をスイッチングで4極用(図10(b))、または2極用(図10(c))に切替える場合、高速ローター1の巻線を各スロットから外に引き出し、2枚の基板を上下に取り付けそれぞれの基板に被膜を剥離した巻線をはんだで固定してもよい。
【0043】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0044】
1:高速ローター、2:低速ローター、3:ステーター、8:コンデンサー、9:単相交流電源、10:直流電源、11:ティース、12:鉄心、13:コイル、14:シャフト、15:永久磁石、16:スイッチ、17:ブラシ、21:ポールピース、22:絶縁部材、31:ティース、32:鉄心、33:コイル、34、35:磁石、331:主コイル、332:補助コイル
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