(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】電力変換装置、モータ駆動装置および冷凍サイクル適用機器
(51)【国際特許分類】
H02P 21/05 20060101AFI20241101BHJP
H02P 6/10 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H02P21/05
H02P6/10
(21)【出願番号】P 2023564705
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2021044501
(87)【国際公開番号】W WO2023100359
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】松尾 遥
(72)【発明者】
【氏名】沓木 知宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼原 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】有澤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健治
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/143514(WO,A1)
【文献】特開平6-261584(JP,A)
【文献】特開2021-78262(JP,A)
【文献】特開2009-291019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/05
H02P 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源から供給される第1の交流電圧を整流するコンバータと、
前記コンバータの出力端に接続され、前記コンバータで整流された第1の直流電圧を、第1のリプルを含む第2の直流電圧に平滑化するコンデンサと、
前記コンデンサの両端に接続され、前記第2の直流電圧を所望の周波数に応じた第2の交流電圧に変換するインバータと、
前記第2の直流電圧と相関のある物理量を検出する検出部と、
を備え、
前記第1のリプルと相関のある第2のリプルを前記インバータからの出力電圧に重畳するように前記第2の交流電圧を制御する電力変換装置。
【請求項2】
前記第1のリプルの周波数は、前記第1の交流電圧の基本周波数の2倍の周波数または6倍の周波数である、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1のリプルの周波数は、前記第1の交流電圧の基本周波数の2倍の周波数成分および6倍の周波数成分の和である、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1の交流電圧の各相の電圧の平衡状態に応じて、前記和における前記第1の交流電圧の基本周波数の2倍の周波数成分、および前記第1の交流電圧の基本周波数の6倍の周波数成分の割合を変化させる、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記物理量は、前記第1のリプルを含む前記第2の直流電圧の瞬時値、または前記コンデンサに流れる電流の瞬時値である、
請求項1から4のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記インバータはモータに接続され、前記検出部を第1の検出部とし、前記物理量を第1の物理量とし、
さらに、
前記モータによって発生する回転数と相関のある第3のリプルを含む第2の物理量を取得する第2の検出部、
を備え、
前記第3のリプルと相関のある第4のリプルを前記インバータからの出力電圧に重畳するように前記第2の交流電圧を制御する、
請求項1から5のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記コンバータは、少なくとも1つのスイッチング素子を有する、
請求項1から6のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記三相交流電源の電源周波数である前記第1の交流電圧の基本周波数を定期的に算出する、
請求項1から7のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の電力変換装置を備えるモータ駆動装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1つに記載の電力変換装置を備える冷凍サイクル適用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交流電力を所望の電力に変換する電力変換装置、モータ駆動装置および冷凍サイクル適用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源から供給される交流電力を所望の交流電力に変換し、空気調和機などの負荷に供給する電力変換装置がある。例えば、特許文献1には、空気調和機の制御装置である電力変換装置が、交流電源から供給される交流電力を整流部であるダイオードスタックで整流し、さらに平滑コンデンサで平滑した電力を、複数のスイッチング素子からなるインバータで所望の交流電力に変換し、負荷である圧縮機モータに出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によれば、平滑コンデンサに大きな電流が流れるため、平滑コンデンサの経年劣化が加速する、という問題があった。このような問題に対して、平滑コンデンサの容量を大きくすることでコンデンサ電圧のリプル変化を抑制する、またはリプルによる劣化耐量の大きい平滑コンデンサを使用する方法が考えられるが、コンデンサ部品のコストが高くなり、また装置が大型化してしまう。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、平滑用のコンデンサの劣化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制可能な電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る電力変換装置は、三相交流電源から供給される第1の交流電圧を整流するコンバータと、コンバータの出力端に接続され、コンバータで整流された第1の直流電圧を、第1のリプルを含む第2の直流電圧に平滑化するコンデンサと、コンデンサの両端に接続され、第2の直流電圧を所望の周波数に応じた第2の交流電圧に変換するインバータと、第2の直流電圧と相関のある物理量を検出する検出部と、を備える。電力変換装置は、第1のリプルと相関のある第2のリプルをインバータからの出力電圧に重畳するように第2の交流電圧を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る電力変換装置は、平滑用のコンデンサの劣化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の構成例を示す図
【
図2】実施の形態1に係る電力変換装置において、交流電源から供給される第1の交流電圧が三相平衡の状態にあるときの直流母線電圧の脈動の例を示す図
【
図3】実施の形態1に係る電力変換装置において、交流電源から供給される第1の交流電圧が三相非平衡の状態にあるときの直流母線電圧の脈動の例を示す図
【
図4】実施の形態1に係る電力変換装置の制御部が備える直流母線電圧の脈動を抑制するq軸電流指令を生成する構成を示す第1のブロック図
【
図5】実施の形態1に係る電力変換装置の制御部が備える直流母線電圧の脈動を抑制するq軸電流指令を生成する構成を示す第2のブロック図
【
図6】実施の形態1に係る電力変換装置の制御部によるq軸電流指令に対する各制御の電流量の割合を示す第1の図
【
図7】実施の形態1に係る電力変換装置の制御部によるq軸電流指令に対する各制御の電流量の割合を示す第2の図
【
図8】実施の形態1に係る電力変換装置の制御部の動作を示すフローチャート
【
図9】実施の形態1に係る電力変換装置が備える制御部を実現するハードウェア構成の一例を示す図
【
図10】実施の形態2に係る電力変換装置の構成例を示す第1の図
【
図11】実施の形態2に係る電力変換装置の構成例を示す第2の図
【
図12】実施の形態3に係る冷凍サイクル適用機器の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態に係る電力変換装置、モータ駆動装置および冷凍サイクル適用機器を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置1の構成例を示す図である。電力変換装置1は、交流電源110および圧縮機315に接続される。電力変換装置1は、三相交流電源である交流電源110から供給される電源電圧Vsの第1の交流電圧を所望の振幅および位相を有する第2の交流電圧に変換し、圧縮機315に供給する。交流電源110の結線方式については、Y結線でもよいし、Δ結線でもよい。電力変換装置1は、電圧検出部501と、コンバータ150と、平滑部200と、電圧検出部502と、インバータ310と、電流検出部313a,313bと、制御部400と、を備える。コンバータ150は、リアクトル120~122と、整流部130と、を備える。なお、電力変換装置1、および圧縮機315が備えるモータ314によって、モータ駆動装置2を構成している。
【0011】
電圧検出部501は、交流電源110から供給される電源電圧Vsの第1の交流電圧の電圧値を検出し、検出した電圧値を制御部400に出力する。電圧検出部501は、第1の交流電圧の電力状態を検出する検出部である。なお、電圧検出部501は、第1の交流電圧の電力状態として、第1の交流電圧のゼロクロスを検出してもよい。
【0012】
コンバータ150は、三相交流電源である交流電源110から供給される電源電圧Vsの第1の交流電圧を整流する。コンバータ150において、リアクトル120~122は、交流電源110と整流部130との間に接続される。整流部130は、整流素子131~136によって構成される整流回路を有し、交流電源110から供給される電源電圧Vsの第1の交流電圧を整流して出力する。整流部130は、全波整流を行うものである。
【0013】
平滑部200は、整流部130の出力端に接続される。平滑部200は、平滑素子としてコンデンサ210を有し、整流部130によって整流された電圧を平滑化する。コンデンサ210は、例えば、電解コンデンサ、フィルムコンデンサなどである。コンデンサ210は、コンバータ150の出力端、具体的には整流部130の出力端に接続され、整流部130によって整流された電圧を平滑化するような容量を有する。平滑化によりコンデンサ210に発生する電圧は交流電源110の全波整流波形形状ではなく、直流成分に交流電源110の周波数に応じた電圧リプルが重畳した波形形状となり、大きく脈動しない。この電圧リプルの周波数は、交流電源110が三相交流電源の場合は電源電圧Vsの周波数の6倍成分が主成分となる。交流電源110から入力される電力とインバータ310から出力される電力とが変化しない場合、この電圧リプルの振幅はコンデンサ210の容量によって決まる。例えば、コンデンサ210に発生する電圧リプルの最大値が最小値の2倍未満となるような範囲で脈動している。このように、コンデンサ210は、コンバータ150の出力端に接続され、コンバータ150で整流された第1の直流電圧を、第1のリプルを含む第2の直流電圧に平滑化する。
【0014】
電圧検出部502は、整流部130によって整流され、整流部130から平滑部200に流入される電流によって充電された平滑部200すなわちコンデンサ210の両端電圧である直流母線電圧Vdcを検出し、検出した電圧値を制御部400に出力する。電圧検出部502は、コンデンサ210の電力状態として、第1のリプルを含む第2の直流電圧と相関のある物理量を検出する検出部である。以降の説明において、電圧検出部502を第1の検出部と称し、電圧検出部502で検出される物理量を第1の物理量と称することがある。
【0015】
インバータ310は、平滑部200、すなわちコンデンサ210の両端に接続される。インバータ310は、スイッチング素子311a~311f、および還流ダイオード312a~312fを有する。インバータ310は、制御部400の制御によってスイッチング素子311a~311fをオンオフし、整流部130および平滑部200から出力される電圧を所望の振幅および位相を有する第2の交流電圧に変換、すなわち第2の交流電圧を生成して、接続される圧縮機315のモータ314に出力する。インバータ310は、第1のリプルを含む第2の直流電圧を所望の周波数に応じた第2の交流電圧に変換する。
【0016】
電流検出部313a,313bは、各々、インバータ310から出力される3相の電流のうち1相の電流値を検出し、検出した電流値を制御部400に出力する。なお、制御部400は、インバータ310から出力される3相の電流値のうち2相の電流値を取得することで、インバータ310から出力される残りの1相の電流値を算出することができる。電流検出部313a,313bは、モータ314によって発生する回転数と相関のある第3のリプルを含む第2の物理量を取得する検出部である。以降の説明において、電流検出部313a,313bを第2の検出部と称することがある。
【0017】
圧縮機315は、圧縮機駆動用のモータ314を有する負荷である。モータ314は、インバータ310から供給される第2の交流電圧の振幅および位相に応じて回転し、圧縮動作を行う。例えば、圧縮機315が空気調和機などで使用される密閉型圧縮機の場合、圧縮機315の負荷トルクは定トルク負荷とみなせる場合が多い。モータ314について、
図1ではモータ巻線がY結線の場合を示しているが、一例であり、これに限定されない。モータ314のモータ巻線は、Δ結線であってもよいし、Y結線とΔ結線とが切り替え可能な仕様であってもよい。
【0018】
なお、電力変換装置1において、
図1に示す各構成の配置は一例であり、各構成の配置は
図1で示される例に限定されない。例えば、電力変換装置1は、昇圧部を備えてもよいし、整流部130に昇圧部の機能を持たせるようにしてもよい。以降の説明において、電圧検出部501,502、および電流検出部313a,313bをまとめて検出部と称することがある。また、電圧検出部501,502で検出された電圧値、および電流検出部313a,313bで検出された電流値を、検出値と称することがある。
【0019】
制御部400は、電圧検出部501から第1の交流電圧の電源電圧Vsの電圧値を取得し、電圧検出部502から平滑部200の直流母線電圧Vdcの電圧値を取得し、電流検出部313a,313bからインバータ310によって変換された所望の振幅および位相を有する第2の交流電圧の電流値を取得する。制御部400は、各検出部によって検出された検出値を用いて、インバータ310の動作、具体的には、インバータ310が有するスイッチング素子311a~311fのオンオフを制御する。また、制御部400は、各検出部によって検出された検出値を用いて、モータ314の動作を制御する。本実施の形態において、制御部400は、整流部130から平滑部200のコンデンサ210に流入する電流の脈動に応じた脈動を含む第2の交流電圧をインバータ310から負荷である圧縮機315に出力するようにインバータ310の動作を制御する。平滑部200のコンデンサ210に流入する電流の脈動に応じた脈動とは、例えば、平滑部200のコンデンサ210に流入する電流の脈動の周波数などによって変動する脈動である。これにより、制御部400は、平滑部200のコンデンサ210に流れる電流を抑制する。なお、制御部400は、各検出部から取得した全ての検出値を用いなくてもよく、一部の検出値を用いて制御を行ってもよい。制御部400は、電圧検出部502で検出された第1のリプルと相関のある第2のリプルをインバータ310からの出力電圧に重畳するように第2の交流電圧を制御する。
【0020】
制御部400は、モータ314の速度、電圧、電流のいずれかが所望の状態になるように制御を行う。ここで、モータ314が圧縮機315の駆動用に使用され、圧縮機315が密閉型圧縮機の場合、モータ314に回転子位置を検出する位置センサを取り付けることが構造的にもコスト的にも難しいので、制御部400は、モータ314の制御を位置センサレスで行う。モータ314の位置センサレス制御方法については、一次磁束一定制御、およびセンサレスベクトル制御の2種類がある。本実施の形態では、一例として、センサレスベクトル制御をベースに説明する。なお、以降で説明する制御方法については、軽微な変更で一次磁束一定制御に適用することも可能である。本実施の形態において、制御部400は、後述するように、モータ314の回転子位置に同期して回転するdq回転座標を用いて、インバータ310およびモータ314の動作を制御する。
【0021】
つづいて、制御部400における、平滑部200のコンデンサ210に流れる電流を抑制する制御について説明する。
図1に示すように、電力変換装置1において、整流部130から平滑部200のコンデンサ210への入力電流を入力電流I1とし、平滑部200のコンデンサ210からインバータ310への出力電流を出力電流I2とし、平滑部200のコンデンサ210の充放電電流を充放電電流I3とする。この場合、入力電流I1=出力電流I2+充放電電流I3の関係が成り立つ。コンデンサ210に充放電電流I3が流れるということは、コンデンサ210が充放電していることを意味しており、コンデンサ210の充放電によってコンデンサ210の両端電圧、すなわち直流母線電圧V
dcは脈動する。そのため、制御部400は、直流母線電圧V
dcの脈動を抑制するように制御することで、コンデンサ210の充放電電流I3を抑制する。制御部400は、直流母線電圧V
dcの脈動に相当する電流を、出力電流I2に追加することで、コンデンサ210の充放電電流I3を抑制することができる。
【0022】
直流母線電圧V
dcの脈動は、三相交流電源である交流電源110の影響を受けており、大きく分けて2種類の周波数成分がある。具体的には、三相交流の各相の重なりによって生じる交流電源110の電源周波数に対して6倍の周波数成分、および三相交流の不平衡によって生じる交流電源110の電源周波数に対して2倍の周波数成分である。
図2は、実施の形態1に係る電力変換装置1において、交流電源110から供給される第1の交流電圧が三相平衡の状態にあるときの直流母線電圧V
dcの脈動の例を示す図である。
図3は、実施の形態1に係る電力変換装置1において、交流電源110から供給される第1の交流電圧が三相非平衡の状態にあるときの直流母線電圧V
dcの脈動の例を示す図である。ここで、三相交流電源である交流電源110の電源周波数、すなわち第1の交流電圧の基本周波数をfとする。
【0023】
図2に示すように、第1の交流電圧が三相平衡の状態の場合、直流母線電圧V
dcの脈動は6f周期となる。
図3に示すように、第1の交流電圧が三相非平衡の状態の場合、直流母線電圧V
dcの脈動は2f周期となる。三相交流電源である交流電源110の電源周波数、すなわち第1の交流電圧の基本周波数が50Hzの場合、6f=300Hzとなり、2f=100Hzとなる。前述の第1のリプルの周波数は、三相交流電源である交流電源110の電源周波数、すなわち第1の交流電圧の基本周波数の2倍の周波数または6倍の周波数である。なお、
図2および
図3では、基本周波数fを電源1fと表記し、第1の交流電圧が三相平衡の状態のときの直流母線電圧V
dcの脈動周波数を電源6fと表記し、第1の交流電圧が三相非平衡の状態のときの直流母線電圧V
dcの脈動周波数を電源2fと表記している。実際の電力変換装置1では、交流電源110の配線の影響、負荷である圧縮機315の動作状態に応じて様々な周波数帯の脈動が発生しているが、ここでは省略している。
【0024】
制御部400は、直流母線電圧V
dcの脈動状態を正しく取得できれば、インバータ310、モータ314などの動作を制御することによって、直流母線電圧V
dcの脈動を抑制するように制御することができる。本実施の形態では、電圧検出部502が直流母線電圧V
dcの電圧値を直接検出しているので、制御部400は、電圧検出部502から検出値を取得することで、直流母線電圧V
dcの脈動状態を正しく取得することができる。なお、制御部400が直流母線電圧V
dcの脈動状態を取得する方法はこれに限定されない。例えば、電力変換装置1の母線に流れる電流から直流母線電圧V
dcの脈動状態を推定することができ、コンデンサ210に流れる電流から直流母線電圧V
dcの脈動状態を推定することができる。そのため、制御部400は、
図1において図示しない、電力変換装置1の母線に流れる電流を検出する検出部、またはコンデンサ210に流れる電流を検出する検出部などから検出値を取得し、直流母線電圧V
dcの脈動状態を推定してもよい。例えば、制御部400は、一般的なコンデンサの電圧電流式、すなわち「I=C・dV/dt」→「dV/dt=I/C」を用いることで、直流母線電圧V
dcの脈動を算出することができる。
【0025】
このように、制御部400は、直流母線電圧Vdcの瞬時値、コンデンサ210に流れる電流の瞬時値など、直流母線電圧Vdcの脈動と相関のある物理量を取得することで、直流母線電圧Vdcの脈動の周波数成分を抽出することができる。直流母線電圧Vdcと相関のある物理量は、第1のリプルを含む第2の直流電圧である直流母線電圧Vdcの瞬時値、またはコンデンサ210に流れる電流の瞬時値である。
【0026】
前述のように、制御部400は、コンデンサ210に流れる電流である充放電電流I3に相当する直流母線電圧Vdcの脈動を検知し、脈動を抑えるようにインバータ出力を制御することで間接的にコンデンサ210に流れる電流、すなわち充放電電流I3を低減する。ここで、制御部400が上記のような制御を行うために必要となる情報は、直流母線電圧Vdcの検出値、および直流母線電圧Vdcの脈動の周波数成分である。
【0027】
図4は、実施の形態1に係る電力変換装置1の制御部400が備える直流母線電圧V
dcの脈動を抑制するq軸電流指令を生成する構成を示す第1のブロック図である。
図4に示す構成は、直流母線電圧V
dcの脈動を0にするため、q軸電流指令の値が0のフィードバックループによって形成される。直流母線電圧V
dcについては、電圧検出部502の検出値によって得ることができるが、前述のように他の検出部の検出値から推定した値を用いてもよい。以降の説明において、q軸電流指令の値が0のことを指令値0と省略して記載することがある。
【0028】
2次ローパスフィルタ401は、直流母線電圧Vdcの直流成分を通過させる。減算部402は、直流母線電圧Vdcから2次ローパスフィルタ401を通過後の直流母線電圧Vdcの直流成分を減算することで、直流母線電圧Vdcから直流成分を除去する。すなわち、フィルタ403は、直流母線電圧Vdcから直流成分を除去するある種のハイパスフィルタである。なお、フィルタ403は後述する脈動分の抽出を高精度にすることが目的であるので、フィルタ403については省略してもよい。減算部404は、指令値0と直流成分除去後の直流母線電圧Vdcとの差分を演算する。
【0029】
脈動分抽出部405は、指令値0と直流成分除去後の直流母線電圧Vdcとの差分から特定周波数成分、具体的にはcos2f成分を直流化して抽出する。2fとは、交流電源110の電源周波数、すなわち第1の交流電圧の基本周波数の2倍の周波数である。脈動分抽出部407は、指令値0と直流成分除去後の直流母線電圧Vdcとの差分から特定周波数成分、具体的にはsin2f成分を直流化して抽出する。脈動分抽出部405,407は、特定周波数成分の脈動だけを抽出して減少させることで、ビート、側帯波などの発生を抑え、波形を歪みにくくする。制御部400は、脈動分抽出部405が抽出したい特定周波数成分と同じ周波数の三角関数cos2fを積算し、脈動分抽出部407が抽出したい特定周波数成分と同じ周波数の三角関数sin2fを積算することで、簡易的なフーリエ変換を実施している。
【0030】
積分制御部406は、脈動分抽出部405で抽出された周波数成分がゼロになるように積分制御を実施し、必要な電流量を演算する。積分制御部408は、脈動分抽出部407で抽出された周波数成分がゼロになるように積分制御を実施し、必要な電流量を演算する。なお、積分制御部406,408については、積分制御の他、比例制御、微分制御などと組み合わせて演算を行ってもよい。
【0031】
交流復元処理部409は、積分制御部406,408の演算結果を入力とし、演算結果を1つの交流信号に復元する。交流復元処理部409は、復元した交流信号をq軸電流指令として出力する。これにより、制御部400は、直流母線電圧Vdcと同じ周波数でq軸電流を脈動させ、インバータ310の出力電圧を脈動させることができる。
【0032】
なお、制御部400は、
図4の例では、第1の交流電圧の基本周波数の2倍の周波数成分の脈動を抑制するため、脈動分抽出部405,407で第1の交流電圧の基本周波数の2倍の周波数成分を抽出しているが、前述のように、第1の交流電圧の基本周波数の6倍の周波数成分の脈動を抑制したい場合、脈動分抽出部405,407で第1の交流電圧の基本周波数の6倍の周波数成分を抽出すればよい。また、制御部400は、複数の周波数成分の脈動を抑制したい場合、例えば、第1の交流電圧の基本周波数の2倍および6倍の周波数成分の脈動を抑制したい場合、脈動分抽出部および積分制御部を周波数分並列にして、第1の交流電圧の基本周波数の2倍および6倍の周波数成分を抽出することができる。
【0033】
図5は、実施の形態1に係る電力変換装置1の制御部400が備える直流母線電圧V
dcの脈動を抑制するq軸電流指令を生成する構成を示す第2のブロック図である。
図5に示す構成は、
図4に示す構成に対して、脈動分抽出部410,412および積分制御部411,413を追加したものである。
【0034】
脈動分抽出部410は、指令値0と直流成分除去後の直流母線電圧Vdcとの差分から特定周波数成分、具体的にはcos6f成分を直流化して抽出する。6fとは、交流電源110の電源周波数、すなわち第1の交流電圧の基本周波数の6倍の周波数である。脈動分抽出部412は、指令値0と直流成分除去後の直流母線電圧Vdcとの差分から特定周波数成分、具体的にはsin6f成分を直流化して抽出する。脈動分抽出部410,412によって得られる効果は、前述の脈動分抽出部405,407の所で説明した通りである。
【0035】
積分制御部411は、脈動分抽出部410で抽出された周波数成分がゼロになるように積分制御を実施し、必要な電流量を演算する。積分制御部413は、脈動分抽出部412で抽出された周波数成分がゼロになるように積分制御を実施し、必要な電流量を演算する。なお、積分制御部411,413については、積分制御の他、比例制御、微分制御などと組み合わせて演算を行ってもよい。
【0036】
交流復元処理部409は、積分制御部406,408,411,413の演算結果を入力とし、演算結果を1つの交流信号に復元する。交流復元処理部409は、復元した交流信号をq軸電流指令として出力する。これにより、制御部400は、直流母線電圧Vdcと同じ周波数でq軸電流を脈動させ、インバータ310の出力電圧を脈動させることができる。
【0037】
制御部400は、直流母線電圧Vdcの脈動を抑制するために必要なq軸電流指令を、既存のq軸電流指令に追加する。ここで、既存のq軸電流指令について説明する。モータ磁石の磁束方向をd軸と定義し、d軸から電気角位相で90度進んだ方向、すなわちd軸と直行する方向をq軸と定義する。このq軸方向に対してモータコイルに電流Iqを流すことでモータ314にトルクが発生し回転力を生み出すことは公知技術である。一般的に、モータ314に接続される電力変換装置1の制御部400は、モータ314を所望の回転数に制御するための図示しない速度制御部を有している。速度制御部の構成は一般的な構成でよいので、詳細な説明については省略する。速度制御部の出力をiqpiとすると、既存のq軸電流指令iq
*は式(1)のように表される。
【0038】
iq
*=iqpi …(1)
【0039】
つぎに、直流母線電圧Vdcの脈動の振幅成分をIqvdcとし、交流電源110から供給される第1の交流電圧の基本周波数の2倍の周波数の角速度を2ωinとし、直流母線電圧Vdcの脈動の位相をδとすると、直流母線電圧Vdcの脈動を抑制するために必要なq軸電流指令は式(2)のように表される。
【0040】
Iqvdcsin(2ωin+δ) …(2)
【0041】
従って、直流母線電圧Vdcの脈動を抑制するために必要なq軸電流指令を、既存のq軸電流指令iq
*に追加すると、式(3)のように表される。
【0042】
iq
*=iqpi+Iqvdcsin(2ωin+δ) …(3)
【0043】
制御部400は、直流母線電圧Vdcの脈動を抑制するため、式(3)に示すq軸電流指令iq
*を生成して、インバータ310、モータ314などの動作を制御する。なお、制御部400は、第1の交流電圧の基本周波数の6倍の周波数を対象にしたい場合、式(2)および式(3)において、2ωinを6ωinとすればよい。また、制御部400は、直流母線電圧Vdcの脈動を抑制する際に複数の周波数を対象、具体的には、第1の交流電圧の基本周波数の2倍および6倍の周波数を対象にする場合、式(4)に示すq軸電流指令iq
*を生成して、インバータ310、モータ314などの動作を制御してもよい。
【0044】
iq
*=iqpi+Iqvdcsin(2ωin+δ)+Iqvdcsin(6ωin+δ) …(4)
【0045】
また、制御部400は、式(3)または式(4)に示すq軸電流指令iq
*に、さらにモータ314の振動抑制制御のためのq軸電流指令を追加してもよい。圧縮機315のモータ314の回転によって生じる負荷脈動については、例えば、特許第6537725号公報に記載のような脈動補償部が出力するq軸電流指令によって抑制することができる。そのため、制御部400は、このような脈動補償部を有していればよい。圧縮機315の負荷脈動の振幅成分をIqavsとし、圧縮機315の機械角回転周波数の角速度ωmとし、圧縮機315の負荷脈動の位相をεとすると、脈動補償部から出力されるq軸電流指令は式(5)のように表される。
【0046】
Iqavssin(ωm+ε) …(5)
【0047】
制御部400は、前述の第3のリプルと相関のある第4のリプルをインバータ310からの出力電圧に重畳するように第2の交流電圧を制御する。従って、振動抑制制御のためのq軸電流指令を、式(3)および式(4)のq軸電流指令に追加すると、それぞれ式(6)および式(7)のように表される。
【0048】
iq
*=iqpi+Iqvdcsin(2ωin+δ)+Iqavssin(ωm+ε) …(6)
【0049】
iq
*=iqpi+Iqvdcsin(2ωin+δ)+Iqvdcsin(6ωin+δ)+Iqavssin(ωm+ε) …(7)
【0050】
制御部400は、直流母線電圧Vdcの脈動を抑制し、さらに振動抑制制御をするため、式(6)または式(7)に示すq軸電流指令iq
*を生成して、インバータ310、モータ314などの動作を制御する。ここで、実際にはq軸電流として流せる電流量に制限がある、すなわち最大電流量があるので、式(3)、式(4)、式(6)、および式(7)のq軸電流指令iq
*の通りの電流量が流せない場合が考えられる。そのため、制御部400は、各制御用のq軸電流指令に対してリミット値を設定する。リミット値の設定方法については、例えば、優先順位を決めて都度q軸電流を割り振る方法、最初から決められた比率でq軸電流を分配する方法などがある。前者については、例えば、iqpi>Iqvdc>Iqavsのように優先順位を決定する。後者については、例えば、使用可能なq軸電流のリミット値を、iqpi:Iqvdc:Iqavs=4:3:3のように分割する。
【0051】
また、制御部400は、速度制御部からのq軸電流指令i
qpiは制限せず、最大電流量からq軸電流指令i
qpiを差し引いた残りの電流量を、直流母線電圧V
dcの脈動を抑制するためのq軸電流指令I
qvdcおよび脈動補償部からのq軸電流指令I
qavsに分配してもよい。
図6は、実施の形態1に係る電力変換装置1の制御部400によるq軸電流指令i
q
*に対する各制御の電流量の割合を示す第1の図である。
図7は、実施の形態1に係る電力変換装置1の制御部400によるq軸電流指令i
q
*に対する各制御の電流量の割合を示す第2の図である。なお、
図6および
図7は式(6)を対象にしており、I
qvdc2はI
qvdcsin(2ω
in+δ)を表している。制御部400は、
図6に示すように、最大電流量に対して、q軸電流指令i
qpiおよびq軸電流指令I
qvdc2をそのまま割り当て、余った電流量をq軸電流指令I
qavsに割り当ててもよい。また、制御部400は、
図7に示すように、最大電流量に対して、q軸電流指令i
qpiをそのまま割り当て、余った電流量をq軸電流指令I
qvdc2およびq軸電流指令I
qavsに2等分にして割り当ててもよい。制御部400は、
図7の例において式(7)を対象にする場合、最大電流量に対して、q軸電流指令i
qpiをそのまま割り当て、余った電流量をq軸電流指令I
qvdc2、q軸電流指令I
qvdc6、およびq軸電流指令I
qavsに3等分にして割り当ててもよい。なお、I
qvdc6はI
qvdcsin(6ω
in+δ)を表しているものとする。
【0052】
制御部400は、速度制御部からの出力であるq軸電流指令i
qpiの電流を制限すると所望のモータ314の回転を維持できないため、基本的にはq軸電流指令i
qpiを優先するが、モータ314の回転数を落としてでも運転を継続させたいなどの用途によってはq軸電流指令i
qpiに制限を加えてもよい。また、制御部400は、
図6および
図7において、各制御に対する比率について、目的に応じて自由に設定してよい。制御部400は、例えば、低速で振動が気になるときにはq軸電流指令I
qavsに多くの電流を割り当ててもよい。
【0053】
このように、制御部400は、三相交流電源である交流電源110によって生じる直流母線電圧V
dcの脈動と同じ周波数成分を含む脈動をインバータ出力に重畳することで、直流母線電圧V
dcの脈動を低減させることができる。制御部400は、前述の周波数成分として、三相交流電源である交流電源110の電源周波数、すなわち第1の交流電圧の基本周波数に対する6倍の周波数、または2倍の周波数、または6倍の周波数および2倍の周波数の両方を使用する。制御部400は、三相交流電源である交流電源110の電源周波数、すなわち第1の交流電圧の基本周波数に対する6倍の周波数および2倍の周波数の両方を使用する場合、一方の周波数成分を大きくし、他方の周波数成分を小さくしてもよい。例えば、
図2および
図3に示すように、交流電源110から供給される第1の交流電圧が三相平衡の状態であれば直流母線電圧V
dcは第1の交流電圧の基本周波数に対する6倍の周波数で脈動し、交流電源110から供給される第1の交流電圧が三相非平衡の状態であれば直流母線電圧V
dcは第1の交流電圧の基本周波数に対する2倍の周波数で脈動する。そのため、制御部400は、交流電源110から供給される第1の交流電圧の平衡状態に応じて、インバータ出力に重畳する脈動の周波数の割合を変化させてもよい。この場合、前述の第1のリプルの周波数は、三相交流電源である交流電源110の電源周波数、すなわち第1の交流電圧の基本周波数の2倍の周波数成分および6倍の周波数成分の和となる。
【0054】
なお、制御部400は、電圧検出部501からの検出値によって交流電源110から供給される第1の交流電圧が平衡か否かを判定することができる。また、制御部400は、
図5に示す各脈動分抽出部の出力から交流電源110から供給される第1の交流電圧が平衡か否かを推定してもよい。このように、制御部400は、第1の交流電圧の各相の電圧の平衡状態に応じて、前述の和における第1の交流電圧の基本周波数の2倍の周波数成分、および第1の交流電圧の基本周波数の6倍の周波数成分の割合を変化させる。
【0055】
また、制御部400は、電圧検出部501の検出値を用いて、三相交流電源である交流電源110の電源周波数である第1の交流電圧の基本周波数を定期的に算出する。交流電源110の電源周波数は、一日の中でも僅かに周波数が変動することがある。そのため、制御部400は、交流電源110の電源周波数である第1の交流電圧の基本周波数を定期的に算出することで、これまで説明してきた制御の精度を向上させることができる。
【0056】
制御部400の動作を、フローチャートを用いて説明する。
図8は、実施の形態1に係る電力変換装置1の制御部400の動作を示すフローチャートである。電力変換装置1において、制御部400は、直流母線電圧V
dcと相関のある物理量を取得する(ステップS1)。制御部400は、直流母線電圧V
dcに含まれる第1のリプルを特定する(ステップS2)。制御部400は、第1のリプルと相関のある第2のリプルをインバータ310からの出力電圧に重畳するように、q軸電流指令を生成する(ステップS3)。
【0057】
つづいて、電力変換装置1が備える制御部400のハードウェア構成について説明する。
図9は、実施の形態1に係る電力変換装置1が備える制御部400を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。制御部400は、プロセッサ91およびメモリ92により実現される。
【0058】
プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ92は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)といった不揮発性または揮発性の半導体メモリを例示できる。またメモリ92は、これらに限定されず、磁気ディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)でもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電力変換装置1において、制御部400は、三相交流電源である交流電源110によって生じる直流母線電圧Vdcの脈動と同じ周波数成分を含む脈動をインバータ出力に重畳することで、直流母線電圧Vdcの脈動を低減させることができる。また、電力変換装置1は、平滑用のコンデンサ210の劣化を抑制しつつ、装置の大型化を抑制できる。
【0060】
実施の形態2.
実施の形態2では、コンバータが昇圧回路を備える場合について説明する。
【0061】
図10は、実施の形態2に係る電力変換装置1aの構成例を示す図である。電力変換装置1aは、
図1に示す実施の形態1の電力変換装置1に対して、コンバータ150および制御部400を、コンバータ150aおよび制御部400aに置き換えたものである。コンバータ150aは、リアクトル120~122と、整流部130と、昇圧部140と、を備える。昇圧部140は、リアクトル141と、スイッチング素子142と、整流素子143と、を備え、昇圧回路を構成している。昇圧部140は、制御部400aがスイッチング素子142のオンオフを制御することによって、整流部130で整流された電圧を昇圧する。昇圧部140の昇圧動作は一般的なものでよいので、詳細な説明については省略する。制御部400aは、制御部400の機能とともに、昇圧部140のスイッチング素子142のオンオフを制御する機能を有する。すなわち、制御部400aは、昇圧部140を備えるコンバータ150aの動作を制御する。なお、電力変換装置1a、および圧縮機315が備えるモータ314によって、モータ駆動装置2aを構成している。
【0062】
電力変換装置1aは、昇圧回路を搭載して直流母線電圧Vdcを上昇させることで、例えば、モータ314の回転に対して弱め磁束制御などの電流が不要となるため、実施の形態1のようにコンバータ150がパッシブ回路の場合と比較して、よりq軸電流に使用できる電流量を多くすることができる。電力変換装置1aは、実施の形態1の電力変換装置1と比較して、同じ負荷条件、回転速度などにおいても、q軸電流指令Iqvdcに割り当て可能な電流を増やすことができ、直流母線電圧Vdcの脈動を抑制する効果を高めることができる。
【0063】
なお、電力変換装置のコンバータが昇圧機能を有する構成については、
図10の例に限定されない。実施の形態1の電力変換装置1のコンバータ150は、受動部品で構成されたパッシブ回路であり、直流母線電圧V
dcの値は交流電源110から供給される第1の交流電圧の振幅値で決まる方式であった。しかしながら、実施の形態1では、直流母線電圧V
dcの脈動が正しく検知でき、その脈動と同じ周波数成分の脈動をインバータ310から出力できればよい。そのため、例えば、整流部130において、ダイオードなどの整流素子131~136を、半導体素子、すなわちスイッチング素子のようなアクティブ素子に置き換えて昇圧回路を構成し、制御部400などがアクティブ素子の動作を制御してもよい。
【0064】
図11は、実施の形態2に係る電力変換装置1bの構成例を示す図である。電力変換装置1bは、
図1に示す実施の形態1の電力変換装置1に対して、コンバータ150および制御部400を、コンバータ150bおよび制御部400bに置き換えたものである。コンバータ150bは、リアクトル120~122と、整流部130bと、を備える。整流部130bは、スイッチング素子161~166を有する。スイッチング素子161~166は、例えば、半導体素子であり、制御部400bの制御によってオンオフする。整流部130bは、スイッチング素子161~166がオンオフすることによって、電圧を昇圧して出力することができる。制御部400bは、制御部400の機能とともに、整流部130bのスイッチング素子161~166のオンオフを制御する機能を有する。すなわち、制御部400bは、コンバータ150bの動作を制御する。なお、整流部130bは、6つの素子のうち、一部の素子をスイッチング素子とし、他の素子をダイオードなどの整流素子とする構成であってもよい。この場合においても、
図10に示す電力変換装置1aと同様の効果を得ることができる。なお、電力変換装置1b、および圧縮機315が備えるモータ314によって、モータ駆動装置2bを構成している。
【0065】
このように、電力変換装置1aにおいてコンバータ150a、または電力変換装置1bにおいてコンバータ150bは、少なくとも1つのスイッチング素子を有する。
【0066】
実施の形態3.
図12は、実施の形態3に係る冷凍サイクル適用機器900の構成例を示す図である。実施の形態3に係る冷凍サイクル適用機器900は、実施の形態1で説明した電力変換装置1を備える。なお、冷凍サイクル適用機器900は、実施の形態2で説明した電力変換装置1aまたは電力変換装置1bを備えることも可能であるが、ここでは一例として、電力変換装置1を備える場合について説明する。実施の形態3に係る冷凍サイクル適用機器900は、空気調和機、冷蔵庫、冷凍庫、ヒートポンプ給湯器といった冷凍サイクルを備える製品に適用することが可能である。なお、
図12において、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素には、実施の形態1と同一の符号を付している。
【0067】
冷凍サイクル適用機器900は、実施の形態1におけるモータ314を内蔵した圧縮機315と、四方弁902と、室内熱交換器906と、膨張弁908と、室外熱交換器910とが冷媒配管912を介して取り付けられている。
【0068】
圧縮機315の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構904と、圧縮機構904を動作させるモータ314とが設けられている。
【0069】
冷凍サイクル適用機器900は、四方弁902の切替動作により暖房運転又は冷房運転をすることができる。圧縮機構904は、可変速制御されるモータ314によって駆動される。
【0070】
暖房運転時には、実線矢印で示すように、冷媒が圧縮機構904で加圧されて送り出され、四方弁902、室内熱交換器906、膨張弁908、室外熱交換器910及び四方弁902を通って圧縮機構904に戻る。
【0071】
冷房運転時には、破線矢印で示すように、冷媒が圧縮機構904で加圧されて送り出され、四方弁902、室外熱交換器910、膨張弁908、室内熱交換器906及び四方弁902を通って圧縮機構904に戻る。
【0072】
暖房運転時には、室内熱交換器906が凝縮器として作用して熱放出を行い、室外熱交換器910が蒸発器として作用して熱吸収を行う。冷房運転時には、室外熱交換器910が凝縮器として作用して熱放出を行い、室内熱交換器906が蒸発器として作用し、熱吸収を行う。膨張弁908は、冷媒を減圧して膨張させる。
【0073】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1,1a,1b 電力変換装置、2,2a,2b モータ駆動装置、110 交流電源、120~122,141 リアクトル、130,130b 整流部、131~136,143 整流素子、140 昇圧部、142,161~166,311a~311f スイッチング素子、150,150a,150b コンバータ、200 平滑部、210 コンデンサ、310 インバータ、312a~312f 還流ダイオード、313a,313b 電流検出部、314 モータ、315 圧縮機、400,400a,400b 制御部、401 2次ローパスフィルタ、402,404 減算部、403 フィルタ、405,407,410,412 脈動分抽出部、406,408,411,413 積分制御部、409 交流復元処理部、501,502 電圧検出部、900 冷凍サイクル適用機器、902 四方弁、904 圧縮機構、906 室内熱交換器、908 膨張弁、910 室外熱交換器、912 冷媒配管。