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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
F04C18/02 311Q
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023565671
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2021044652
(87)【国際公開番号】W WO2023105562
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】達脇 浩平
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-19979(JP,A)
【文献】特許第6678762(JP,B2)
【文献】特開昭58-172404(JP,A)
【文献】特開2003-239876(JP,A)
【文献】特開2012-219749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロール及び揺動スクロールを有し、冷媒を圧縮する圧縮機構部と、
偏心部を有する回転軸と、
前記回転軸を介して前記圧縮機構部を駆動する電動機部と、
前記圧縮機構部及び前記電動機部が収容される圧力容器と、
前記圧力容器の内部に固定され、前記回転軸が延びる軸方向に前記揺動スクロールを支持するフレームと、を備え、
前記揺動スクロールは、
揺動台板部と、
前記揺動台板部において前記固定スクロールの側の第1面に設けられた揺動渦巻歯と、
前記揺動台板部において前記第1面の裏面である第2面に設けられ、前記偏心部が嵌合されるボス部と、を有し、
前記軸方向から見て、前記揺動台板部と前記ボス部とは、前記揺動台板部の可動域の中心が前記フレームの中心から偏心するように、前記揺動台板部の中心の位置が前記ボス部の中心の位置と異なるように設けられている
スクロール圧縮機。
【請求項2】
前記軸方向から見て、前記フレームにおける前記揺動台板部の可動域よりも外周側の非可動域には、前記圧縮機構部に冷媒を供給する吸入ポートが形成されている
請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記フレームにおける前記揺動台板部の前記第2面と対向する対向面には、前記軸方向から見て、前記揺動台板部の可動域よりも外周側の非可動域に、凹部が形成されている
請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記フレームにおける前記揺動台板部の前記第2面と対向する対向面には、前記軸方向から見て、前記揺動台板部の可動域よりも外周側の非可動域に、凸部が形成されている
請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記軸方向から見て、前記吸入ポートは、前記フレームにおける前記揺動台板部の可動域の中心の偏心方向とは逆側に形成されている
請求項2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記固定スクロールは、固定台板部と、前記固定台板部において前記揺動スクロールの側の面に設けられた固定渦巻歯と、を有し、
前記軸方向から見て、前記揺動渦巻歯と前記固定渦巻歯とにより形成される2つの圧縮室入口は、前記吸入ポートからの直線距離が等しくなるように設けられている
請求項2又は5に記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
前記固定スクロールは、固定台板部と、前記固定台板部において前記揺動スクロールの側の面に設けられた固定渦巻歯と、を有し、
前記軸方向から見て、前記揺動渦巻歯と前記固定渦巻歯とにより形成される2つの圧縮室入口は、一方が前記吸入ポート側を向き、他方が前記吸入ポートと逆側を向き、前記他方と前記吸入ポートとの直線距離は、前記一方と前記吸入ポートとの直線距離よりも近い
請求項2又は5に記載のスクロール圧縮機。
【請求項8】
前記固定スクロールは、固定台板部と、前記固定台板部において前記揺動スクロールの側の面に設けられた固定渦巻歯と、を有し、
前記揺動渦巻歯と前記固定渦巻歯とは、周方向において巻終わり部が同じ位置に配置されるように一方が他方よりも長く、
前記揺動渦巻歯と前記固定渦巻歯とにより形成される圧縮室入口は、径方向において前記吸入ポートの側に設けられている
請求項2又は5に記載のスクロール圧縮機。
【請求項9】
前記固定スクロールは、前記フレームを介さずに前記圧力容器に直接固定されている
請求項1~8のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機構部を有するスクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構部と、回転軸と、回転軸を介して圧縮機構部を駆動する電動機部と、を備えている。圧縮機構部は、固定スクロールと揺動スクロールとを有し、これらの渦巻歯同士が噛み合うように対向して設けられ、これらの渦巻歯の間に圧縮室が形成されている。固定スクロールは、圧力容器の内部に固定されている。揺動スクロールは、台板部とボス部と有し、台板部の一方の面に渦巻歯が設けられ、その面の裏面に、回転軸の偏心軸部が嵌まったボス部が設けられている。スクロール圧縮機はまた、圧力容器の内部に固定され、揺動スクロールを支持するフレームを備える。スクロール圧縮機において、電動機部により回転軸が回転することで、偏心軸部に嵌った揺動スクロールが公転運動を行い、圧縮室の容積が変化して冷媒が圧縮される。このような圧縮機において、フレームの外周部に、吸入管から吸い込んだ冷媒を圧縮機構部に通すための吸入ポートが形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、一般に、スクロール圧縮機のフレームにおけるスラスト面の外周部には、吸入ポート等の穴だけでなく、例えば、吸入ポートとの隔離壁のような凸部が形成される場合もある。このような、フレーム外周部の構造物は、台板部によって塞がれることがないように、フレームにおいて台板部の可動域よりも外周側に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6678762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスクロール圧縮機では、フレーム上において揺動スクロールは、台板部の可動域の中心が回転軸の中心すなわちフレームの中心と一致するように、公転運動を行う構成とされる。すなわち、特許文献1では、フレームの上面において、台板部及びその可動領域と対向しない領域である非可動領域が、周方向に均等に設けられている。したがって、特許文献1のように台板部の可動域の中心がフレームの中心と一致する構成では、フレーム外周部の周方向の一部に設けられた吸入ポート等の構造物と、揺動スクロールの台板部の可動域とが重なって、圧縮機構部への冷媒供給が妨げられること等を回避するために、台板部の大きさが制限される。あるいは、台板部により、フレーム外周部の構造物の大きさが制限される。台板部の大きさが制限されると、揺動スクロールの大きさが制限されるので容量が低下し、一方、吸入ポートの大きさが制限されると、冷媒の吸入圧力が低下する。結果、性能の良いスクロール圧縮機を提供することができない。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、揺動スクロールの大きさ及びフレーム外周部の構造物の大きさの制限を緩和し、性能の良いスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るスクロール圧縮機は、固定スクロール及び揺動スクロールを有し、冷媒を圧縮する圧縮機構部と、偏心部を有する回転軸と、前記回転軸を介して前記圧縮機構部を駆動する電動機部と、前記圧縮機構部及び前記電動機部が収容される圧力容器と、前記圧力容器の内部に固定され、前記回転軸が延びる軸方向に前記揺動スクロールを支持するフレームと、を備え、前記揺動スクロールは、揺動台板部と、前記揺動台板部において前記固定スクロールの側の第1面に設けられた揺動渦巻歯と、前記揺動台板部において前記第1面の裏面である第2面に設けられ、前記偏心部が嵌合されるボス部と、を有し、前記軸方向から見て、前記揺動台板部と前記ボス部とは、前記揺動台板部の可動域の中心が前記フレームの中心から偏心するように、前記揺動台板部の中心の位置が前記ボス部の中心の位置と異なるように設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、軸方向から見て、揺動台板部とボス部とは、揺動台板部の中心の位置がボス部の中心の位置と異なるように設けられているので、揺動台板部の可動域の中心はフレームの中心から偏心する。よって、フレームにおいて非可動域は、偏心方向では狭くなる一方、偏心方向と逆側では広くなるので、フレームにおいて揺動台板部の可動域の偏心方向と逆側に構造部を設けても、非可動域には、揺動台板部を大きくする、又は構造部を大きくする余白ができる。結果、揺動スクロールの大きさ及びフレーム外周部の構造物の大きさの制限を緩和し、性能の良いスクロール圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る圧縮機の概略構成を示す縦断面図である。
図2図1の圧縮機における偏心軸の周辺構造を示す部分拡大図である。
図3図1の圧縮機における第1フレームの概略構成を示す平面図である。
図4図1の圧縮機において揺動スクロールが右に寄った時の揺動スクロールと第1フレームとの位置関係を模式的に示すA-A断面図である。
図5図4の圧縮機において揺動スクロールと第1フレームと回転軸との位置関係を模式的に示すB-B断面図である。
図6図5の圧縮機において揺動スクロールが左に寄った時の揺動スクロールと第1フレームと回転軸との位置関係を模式的に示す縦断面図である。
図7図1の圧縮機の圧縮機構部の第1変形例を模式的に示す横断面図である。
図8図1の圧縮機の圧縮機構部の第2変形例を模式的に示す横断面図である。
図9図1の圧縮機の圧縮機構部の第3変形例を模式的に示す横断面図である。
図10】実施の形態2に係る圧縮機の構成を模式的に示す部分断面図である。
図11】実施の形態2に係る圧縮機において揺動スクロールが右に寄った時の揺動スクロールと第1フレームとの位置関係を模式的に示す横断面図である。
図12図11の圧縮機において揺動スクロールが左に寄った時の揺動スクロールと第1フレームと回転軸との位置関係を模式的に示す縦断面図である。
図13】実施の形態3に係る圧縮機において揺動スクロールが右に寄った時の揺動スクロールと第1フレームとの位置関係を模式的に示す横断面図である。
図14図13の圧縮機において揺動スクロールが左に寄った時の揺動スクロールと第1フレームと回転軸との位置関係を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本開示が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本開示を限定するものではない。これらの方向を示す用語は、特に明示しない限り、スクロール圧縮機の回転軸33が延びる方向(軸方向)を高さ方向としてスクロール圧縮機を正面側(前側)から見た場合の方向を意味し、図1に前側から見たスクロール圧縮機の縦断面図を示す。各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。以降の説明において、スクロール圧縮機を、単に圧縮機と称する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る圧縮機100の概略構成を示す縦断面図である。図1において、矢印X方向は圧縮機100の幅方向を示し、矢印Y方向は圧縮機100の奥行き方向を示し、矢印Z方向は圧縮機100の高さ方向を示す。図2は、図1の圧縮機100における偏心軸の周辺構造を示す部分拡大図である。図3は、図1の圧縮機100における第1フレーム46の概略構成を示す平面図である。以下、図1図3に基づき、圧縮機100の構成について説明する。
【0011】
圧縮機100は、例えば、冷凍機、冷蔵庫、空気調和装置、給湯器又は自動販売機といった冷凍サイクル装置の構成要素の一つとなるものである。圧縮機100は、冷凍サイクルを循環する冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮して吐出する流体機械である。
【0012】
図1に示されるように、圧縮機100は、冷媒を圧縮する圧縮機構部10と、回転軸33と、回転軸33を介して圧縮機構部10を駆動する電動機部30と、圧縮機構部10及び電動機部30を収容する圧力容器40と、を備えている。また、圧縮機100は、圧縮機構部10を軸方向に支持する第1フレーム46を備えている。
【0013】
圧縮機構部10の内部には、回転軸33の回転に伴って容積が変化する圧縮室11が形成されており、圧縮室11において冷媒が圧縮される。また、圧縮機構部10には、圧縮室11で圧縮された冷媒を、圧力容器40内における圧縮機構部10外に吐出する吐出口3が形成されている。圧力容器40は、例えば、円筒状の胴部容器42と、胴部容器42の上側の開口部に溶接される上部容器41と、胴部容器42の下側の開口部に溶接される下部容器43と、を有している。また、圧力容器40には、外部の冷媒を圧力容器40内に吸入する吸入管44、及び、圧縮機構部10において圧縮された冷媒を圧力容器40外に吐出する吐出管45が接続されている。圧縮機構部10は、電動機部30により駆動されることで、吸入管44から吸入したガス冷媒を圧縮室11内で圧縮し、吐出口3を介して圧力容器40内における圧縮機構部10外に吐出する構成とされている。圧縮機構部10は、固定スクロール21及び揺動スクロール22を有している。第1フレーム46は、圧縮機構部10の揺動スクロール22を支持する。
【0014】
図1に示される例では、圧力容器40内の下部に電動機部30が配置され、圧力容器40内の上部に圧縮機構部10が配置され、固定スクロール21が圧縮機構部10の上部を構成し、揺動スクロール22が圧縮機構部10の下部を構成している。そして、揺動スクロール22の下方に第1フレーム46が配置され、固定スクロール21の上部に吐出口3が形成されている。また、図1に示される例では、圧力容器40の胴部容器42の右側に吸入管44が設けられ、圧力容器40の上部容器41に吐出管45が設けられている。そして、吸入管44は、第1フレーム46よりも下側の空間と連通するように設けられている。また、圧力容器40内の底部には、潤滑油を貯留する油溜めが設けられている。
【0015】
また、圧縮機100は、圧力容器40内であって固定スクロール21の上に配置されたチャンバー4を備えている。チャンバー4の下面には凹状部4aが形成され、圧縮機構部10の吐出口3から吐出された冷媒が一時的に凹状部4aに溜まる構成とされている。凹状部4aの中央部には、高さ方向(矢印Z方向)に延びるチャンバー吐出口4bが形成されている。圧縮機構部10の吐出口3とチャンバー4の凹状部4aとは連通しており、且つ、チャンバー4の凹状部4aとチャンバー吐出口4bとは連通している。これにより、圧縮機構部10の圧縮室11において圧縮された冷媒が、吐出口3、チャンバー4の凹状部4a及びチャンバー吐出口4bを介して、圧力容器40内における圧縮機構部10よりも上側の空間へ吐出される。
【0016】
以降の説明では、圧力容器40内の空間のうち、固定スクロール21よりも上側の空間を吐出空間Soと称し、また、第1フレーム46よりも下側であり、電動機部30を設けた空間をモータ空間Smと称する場合がある。
【0017】
また、圧縮機100は、チャンバー4上に配置された吐出弁5a及び弁押さえ5bを備えている。吐出弁5a及び弁押さえ5bは、その一端側の部分が、例えばボルト等で構成される固定部材5cによってチャンバー4上に固定されている。以下、吐出弁5a、弁押さえ5b及び固定部材5cを総称して、吐出弁機構5と称する。
【0018】
固定スクロール21に形成されている上記の吐出口3は、固定台板部23の略中央部に形成されており、圧縮室11内で圧縮されて高圧となったガス冷媒は、吐出口3から吐出される。また、固定スクロール21上に設置されている上述した吐出弁機構5は、固定台板部23における吐出口3の出口側の面(本実施の形態では、上面)に設置され、冷媒の吐出圧力に応じて吐出口3を開閉するとともに冷媒の逆流を防ぐ構成とされる。
【0019】
固定スクロール21は、固定台板部23と、固定台板部23の一方の面(図1では、下面)に立設されたインボリュート曲線形状の突起である固定渦巻歯25と、を有している。固定スクロール21は、圧力容器40の内壁面に焼嵌め又は溶接等で固定されている。具体的には、圧力容器40の胴部容器42の内壁面には、図示していない段差が設けられており、その段差に固定台板部23の外周縁部が嵌め込まれて接合されている。
【0020】
揺動スクロール22は、揺動台板部24と、揺動台板部24の一方の面(図1の例では、上面)に立設されたインボリュート曲線形状の突起である揺動渦巻歯26と、を有している。揺動スクロール22は、第1フレーム46によって回転自在に支持されている。また、揺動台板部24の他方の面には、円筒形状のボス部27が設けられている。ボス部27には、後述する回転軸33の偏心軸部33aが嵌入される。本開示の圧縮機100では、図2に示されるように、ボス部27の中心線53と揺動台板部24の中心線54とが、同じ鉛直方向の線上に存在しない構成とされている。図2に示されるボス部27の中心線53は、図1に示される偏心軸部33aの中心線Ax2と一致している。図1では、ボス部27の中心線53を省略し、図2では、偏心軸部33aの中心線Ax2を省略している。以下、偏心軸部33aを、回転軸33の偏心部と称する場合がある。
【0021】
また、図2に示されるように、揺動台板部24の他方の面(下面)におけるボス部27の外方位置には、第1オルダム溝24aが形成されている。第1オルダム溝24aには、後述するオルダムリング29の上面突起29bが配置され、第1オルダム溝24aがオルダムリング29の上面突起29bを案内する構成とされている。第1オルダム溝24aは径方向に長く、軸方向から見て、例えば長丸形状の溝とされている。第1オルダム溝24aは一対が対向するように設けられている。
【0022】
揺動スクロール22は、オルダムリング29により固定スクロール21に対して自転運動が制限されながら、偏心軸部33aによって公転運動する。つまり、揺動スクロール22は、公転旋回運動(いわゆる揺動運動)を行なう。
【0023】
図1に示されるように、固定スクロール21と揺動スクロール22とは、固定渦巻歯25と揺動渦巻歯26とを互いに噛み合わせるようにして嵌合し、圧力容器40内に装着される。上述した圧縮室11は、固定渦巻歯25と揺動渦巻歯26との間に形成される。圧力容器40内において揺動スクロール22が揺動運動することで固定渦巻歯25と揺動渦巻歯26との相対的な位置関係が変わり、それによって圧縮室11の容積が変化し、圧縮室11内で冷媒が圧縮される。
【0024】
なお、固定スクロール21は圧力容器40に直接固定されているものと定義したが、特にこれに限定されない。揺動スクロール22を支持する第1フレーム46に、固定スクロール21の固定台板部23とネジ止めされる外壁を設け、第1フレーム46の外壁を介して固定スクロール21が圧力容器40に固定される構成であってもよい。
【0025】
ただし、固定スクロール21が圧力容器40に直接固定される場合、第1フレーム46に固定スクロール21の側すなわち上側へ延びる外壁を設ける必要がないので、揺動スクロール22の外周部と胴部容器42の内壁面との間の空間が広くなる。よって、固定スクロール21が圧力容器40に直接固定される構成では、外壁による揺動スクロール22のサイズの制約がなくなり、揺動台板部24の外径及び揺動渦巻歯26の巻径を大きくすることができる。この場合、胴部容器42の直径は変更せずに圧縮機100の最大冷凍能力を大きくすることができる。また、揺動台板部24を大きくすることで、スラスト荷重を低減するように設計することもできる。あるいは、固定スクロール21が圧力容器40に直接固定される構成において、揺動スクロール22のサイズを変更しない場合には、胴部容器42の直径を小さくすることができる。この場合、最大冷凍能力を下げずに圧縮機100を小型化することができる。
【0026】
第1フレーム46は、例えば、鉄系の磁性材料で構成されている。第1フレーム46の上面において揺動台板部24と対向する部分にはスラストプレート46sが設けられている。スラストプレート46sは、揺動スクロール22を摺動自在に支持する。すなわち、揺動スクロール22が公転旋回運動を行う際、揺動スクロール22の下面が、第1フレーム46のスラストプレート46s上を摺動する。
【0027】
また、図2及び図3に示されるように、第1フレーム46の中央部には、揺動スクロール22のボス部27が収容されるボス収容部46fが設けられている。また、第1フレーム46においてボス収容部46fの下部には、内周側へ突出した、回転軸33を回転自在に保持する軸受部46bが設けられている。また、第1フレーム46においてボス収容部46fの上部には、内径が拡張したオルダム収容部46oが形成されており、オルダム収容部46oには、後述するオルダムリング29のリング部29r(図2参照)が収容される。また、図3に示されるように、第1フレーム46のオルダム収容部46oの底面には、第2オルダム溝46o1が形成されている。第1フレーム46の第2オルダム溝46o1には、オルダムリング29の下面突起(不図示)が配置され、第2オルダム溝46o1は、オルダムリング29の下面突起を案内する構成とされている。第2オルダム溝46o1は、径方向に延びており、一対が対向するように設けられている。図3には、第1フレーム46の一対の第2オルダム溝46o1を結ぶ線が一点鎖線で示され、図2に示される揺動台板部24の一対の第1オルダム溝24aを結ぶ線が二点鎖線で示されている。これらの線は直交している。
【0028】
また、図1に示されるように、吸入管44から吸入した冷媒を圧縮室11に供給するため、第1フレーム46よりも下側のモータ空間Smから揺動スクロール22との対向面に吸入ポート46aが貫通している。図1に示されるように、吸入ポート46aは、吸入管44と回転軸33を挟んで逆側の位相に配置されている。
【0029】
図1に示されるように、電動機部30は、圧力容器40に固定された固定子31と、固定子31の内周側に配置された回転子32と、を有している。回転子32は、固定子31に対して回転自在に取り付けられ、固定子31に通電されることにより回転駆動される。回転子32の中心には、回転軸33が取り付けられており、回転子32が回転駆動されると回転軸33が回転する構成とされている。回転軸33の上端には、揺動スクロール22のボス部27と回転自在に嵌合する偏心軸部33aが形成されている。電動機部30が回転軸33を介して揺動スクロール22を駆動することにより、圧縮機構部10でガス冷媒が圧縮されるようになっている。
【0030】
圧力容器40内における電動機部30の下方には、第2フレーム47が固定されている。第2フレーム47の中心部には、ボールベアリング48が圧入固定されている。第2フレーム47は、ボールベアリング48を圧力容器40内で支持する。第2フレーム47は、ボールベアリング48により、回転軸33の下端を回転自在に支持する。
【0031】
回転軸33は、金属製の棒状部材である。回転軸33は、回転軸33の主要部を構成する主軸部33bと、回転軸33の上端部を構成する偏心軸部33aと、を備えている。回転軸33の主軸部33bは、その中心線Ax1が胴部容器42の中心軸と一致するように配置されている。主軸部33bは、電動機部30の回転子32の中心の貫通孔に焼嵌め等により固定され、第1フレーム46の中央部に設けられた軸受部46bと、第2フレーム47の中央部に設けられたボールベアリング48とによって、回転自在に支持されている。
【0032】
回転軸33の偏心軸部33aは、その中心線Ax2が主軸部33bの中心線Ax1に対して偏心するように設けられている。偏心軸部33aは、揺動スクロール22のボス部27に嵌められ、ボス部27により回転自在に保持されている。回転軸33は、電動機部30の回転子32の回転に伴って回転し、偏心軸部33aにより揺動スクロール22を旋回させる。また、主軸部33b及び偏心軸部33aの内部には、通油路33cが上下に貫通して設けられており、回転軸33の回転に伴い、油溜めから吸い上げた潤滑油を、圧縮機構部10等の、機械的に接触するパーツ同士の間に供給する。
【0033】
また、圧縮機100は、揺動スクロール22の自転を規制するオルダムリング29と、揺動スクロール22と偏心軸部33aとを接続するブッシュ28と、を備えている。図2に基づき、オルダムリング29及びブッシュ28の構成について説明する。ブッシュ28は、回転軸33の偏心軸部33aの外周側に取り付けられて第1フレーム46のボス収容部46f内に配置される。オルダムリング29は、ブッシュ28の外周側に配置され、第1フレーム46のオルダム収容部46o内に配置される。
【0034】
オルダムリング29は、リング部29rと、リング部29rの上面に設けられた2つの上面突起29bと、リング部29rの下面に設けられた2つの下面突起(不図示)と、を備えている。2つの上面突起29bはリング部29rにおいて互いに対向する位置に設けられ、また、2つの下面突起も、リング部29rにおいて互いに対向する位置に設けられている。
【0035】
回転軸33の回転によって揺動スクロール22が公転旋回する際に、上面突起29bは揺動台板部24の第1オルダム溝24a内で、また、下面突起は第1フレーム46の第2オルダム溝46o1内で、溝内壁により移動範囲が規制されつつスライドする。このような構成により、揺動スクロール22が自転しない構成となっている。
【0036】
ブッシュ28は、例えば、鉄等の金属で構成される。ブッシュ28は、例えば、スライダ28aと、バランスウエイト28bと、を有している。スライダ28aは、鍔が形成された筒状の部材であり、スライダ28aの筒状の部分は、揺動スクロール22のボス部27の内周側に配置されて、偏心軸部33a及びボス部27のそれぞれに嵌入されている。バランスウエイト28bは、軸方向から見た形状がドーナツ状を呈した部材である。バランスウエイト28bは、スライダ28aの鍔に焼嵌め等の方法により嵌合されている。バランスウエイト28bは、軸方向から見た形状が略C状を呈するウェイト部28b1を備えている。図2に示される例では、バランスウエイト28bにおいてウェイト部28b1は、左側にのみ設けられている。バランスウエイト28bは、周方向の一部にのみ設けられるウェイト部28b1を備えることで、揺動スクロール22の遠心力を相殺する。
【0037】
次に、図1に基づき、圧縮機100の動作を説明する。圧縮機100において、電動機部30の固定子31に通電されると、回転子32、及び回転子32に取り付けられた回転軸33が回転する。回転軸33が回転することによって、回転軸33の偏心軸部33aにブッシュ28を介して取り付けられた揺動スクロール22が、固定スクロール21に対して揺動運動を行う。これにより、固定スクロール21の固定渦巻歯25と揺動スクロール22の揺動渦巻歯26との間に形成された圧縮室11の容積が連続的に変動する。このとき、圧縮室11の容積が増大すると、圧縮室11内の圧力が圧力容器40内における吸入空間(図1に示される例では、モータ空間Sm)内の圧力よりも低下し、吸入空間内の冷媒が吸入ポート46aを通して圧縮室11に吸入される。
【0038】
ここで、図1に示されるように、第1フレーム46において、主軸部33bの中心線Ax1すなわち第1フレーム46の中心に対して、吸入管44が設けられる側(例えば、主軸部33bの中心線Ax1よりも右側の半分)と反対の側(主軸部33bの中心線Ax1よりも左側の半分)に吸入ポート46aが設けられている場合、冷媒が吸入管44からモータ空間Smに入って圧縮室11に吸入されるまでに、冷媒により電動機部30を冷却することができる。
【0039】
その後、揺動スクロール22の揺動運動によって圧縮室11の容積が縮小していくと、圧縮室11内に吸入された冷媒が圧縮され、圧縮室11内の圧力が上昇する。圧縮室11内の圧力が予め設定された圧力より高くなると、圧縮された冷媒は、吐出弁機構20の吐出弁5aを押し上げ、吐出空間So及び吐出管45を介して圧力容器40外(例えば、冷凍サイクルの凝縮器)へ吐出される。
【0040】
図4は、図1の圧縮機100において揺動スクロール22が右に寄った時の揺動スクロール22と第1フレーム46との位置関係を模式的に示すA-A断面図である。また、図4には、二点一鎖線で固定渦巻歯25が示される。図5は、図4の圧縮機100において揺動スクロール22と第1フレーム46と回転軸33との位置関係を模式的に示すB-B断面図である。図6は、図5の圧縮機100において揺動スクロール22が左に寄った時の揺動スクロール22と第1フレーム46と回転軸33との位置関係を模式的に示す縦断面図である。図5及び図6では、説明を分かり易くするために、図1に示したブッシュ28及びオルダムリング29は省略している。
【0041】
以下、図4図6に基づき、第1フレーム46上における揺動台板部24の可動域R1及び非可動域R2について説明する。可動域R1及び非可動域R2は、胴部容器42内の空間において、第1フレーム46よりも上方の揺動台板部24及び揺動台板部24の外方に形成される円柱形状の空間を二分したものである。図4に示されるように、可動域R1は、第1フレーム46上において揺動スクロール22が公転旋回運動を行う際に揺動台板部24が移動する領域であり、円柱形状を呈する。一方、非可動域R2は、可動域R1の境界50よりも外方に設けられ、揺動台板部24が浸入しない領域であり、円筒形状を呈する。
【0042】
図5及び図6に示されるように、本開示では、揺動スクロール22においてボス部27の中心線53と揺動台板部24の中心線54とが、同じ鉛直方向(矢印Z方向)の直線上に存在しない構成とされている。つまり、主軸部33bから偏心した偏心軸部33aの中心線Ax2(図1参照)に対して揺動台板部24の中心線54が更に偏心した状態で、揺動スクロール22が揺動運動を行う。
【0043】
このような構成により、図4に示されるように軸方向から見て、揺動スクロール22が揺動運動を行う間の揺動台板部24の可動域R1の中心線51は、主軸部33bの中心線Ax1(図1参照)すなわち第1フレーム46の中心線52から偏心している。よって、第1フレーム46上において揺動台板部24の非可動域R2は、周方向で径方向の幅が均等でない円筒形状を呈する。より具体的には、非可動域R2において可動域R1の中心線51の偏心方向では径方向の幅が狭くなり、偏心方向と逆側では径方向の幅が広くなる。
【0044】
図4に示される例では、第1フレーム46上において揺動台板部24の可動域R1の中心線51は、第1フレーム46の中心線52から、吸入管44が設けられている右側へ偏心している。そして、非可動域R2において径方向の幅は、非可動域R2の左側において、右側、奥側及び手前側のいずれの部分よりも広くなっている。
【0045】
揺動スクロール22が吸入ポート46aを覆うことが無いように、揺動台板部24のサイズが設定されている。吸入ポート46aの大きさを確保し易いように、図4に示される例では、第1フレーム46において揺動台板部24の可動域R1の中心線51の偏心方向とは逆側すなわち第1フレーム46の左側半分に、吸入ポート46aが設けられている。また、図4に示される例では、円弧状の吸入ポート46aが、第1フレーム46に1箇所だけ設けられている。
【0046】
図4に示される可動域R1の境界50からも分かるように、揺動スクロール22の揺動運動の何れのタイミングにおいても、揺動台板部24が吸入ポート46aと重ならない構成となっている。図6に示される、幅方向(矢印X方向)において揺動スクロール22が最も吸入ポート46a側(図6では左側)に揺動した状態においても、揺動スクロール22は吸入ポート46a上に位置していない。
【0047】
また、図4に示される例では、揺動スクロール22の揺動渦巻歯26における巻終わり部26eは、吸入管44から前方に45°の位置に配置されている。図4に二点一鎖線で示される固定渦巻歯25は、揺動渦巻歯26と対象の渦巻形状を有し、固定渦巻歯25の巻終わり部25eは、揺動渦巻歯26の巻終わり部26eから180°の位置に配置されている。つまり、図4に示される例では、固定渦巻歯25の巻終わり部25eは、吸入管44から後方に135°の位置に配置されている。そして、揺動渦巻歯26の巻終わり部26eと固定渦巻歯25との間の隙間、又は、固定渦巻歯25の巻終わり部25eと揺動渦巻歯26との間の隙間を介して、第1フレーム46に設けられた吸入ポート46aからの冷媒が、圧縮室11へ流入する。以下、圧縮室11への冷媒の入口となるこれらの隙間を、圧縮室入口11aと称する場合がある。図4に示される例では、吸入ポート46aの周方向の中央位置Lpから、おおよそ手前側135°の位置及びおおよそ奥側45°の位置の2箇所に、圧縮室入口11aが設けられている。前側の圧縮室入口11aは左向きに開口しており、奥側の圧縮室入口11aは右向きに開口している。また、図4に示される例では、円弧状の吸入ポート46aは、第1フレーム46における左側に、手前側45°から奥側45°までの90°の角度範囲で設けられている。なお、周方向における巻終わり部25e及び26eの位置、圧縮室入口11aの配置、及び吸入ポート46aの角度範囲は、上記の場合に限定されない。変形例については後述する。
【0048】
また、本開示では、可動域R1の中心線51が偏心しているので、揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とが噛み合うように、軸方向から見て、固定渦巻歯25の巻始めの位置も、固定台板部23の中心から偏心している。具体的には、軸方向から見て、固定台板部23の中心に対して、固定渦巻歯25の巻始めの位置が、揺動台板部24の可動域R1の中心線51の偏心方向と同方向へずれた構成とされている。したがって、軸方向から見て、固定渦巻歯25の巻始めの位置は、図1に示される主軸部33bの中心線Ax1、及び図4に示される第1フレーム46の中心線52からも、揺動台板部24の可動域R1の中心線51の偏心方向と同方向に偏心している。また、軸方向から見て、固定渦巻歯25の巻始めの位置が固定台板部23の中心から偏心しているので、図1に示される固定台板部23の吐出口3も、巻始めの位置と同様に偏心している。
【0049】
このように、揺動台板部24の中心とボス部27の中心とが異なるように揺動台板部24とボス部27とが設けられることで、揺動渦巻歯26も従来の圧縮機よりも偏心方向にずれ、これに伴い、固定渦巻歯25、及び固定スクロール21の吐出口3も、固定台板部23の中心及び胴部容器42の中心からずれた位置に設けられる。
【0050】
ところで、従来のように、軸方向から見てボス部27の中心線53と揺動台板部24の中心線54とが同じ位置にあると、揺動スクロール22が揺動運動を行う間の揺動台板部24の可動域R1の中心線51は、第1フレーム46の中心線52と一致する。したがって、従来の構成では、非可動域R2の径方向の幅は、周方向で均等となり、本開示における非可動域R2の径方向の最大幅Wmaxと比べて小さいものとなる。
【0051】
本開示では、図4に示されるように、第1フレーム46上において揺動台板部24の可動域R1の中心線51は第1フレーム46の中心線52から偏心しているので、従来と比べて、非可動域R2の径方向の最大幅Wmaxを大きくすることができる。よって、胴部容器42内の空間を有効に活用することができる。例えば、胴部容器42の内径及び揺動台板部24の可動域R1の直径をそれぞれ従来と同様とした場合には、吸入ポート46aの面積を拡大することができる。この場合、冷媒の吸入圧損を従来よりも抑制できるので、圧縮機100の効率を向上させることができる。
【0052】
また、例えば、胴部容器42の内径及び吸入ポート46aの面積をそれぞれ従来と同様とした場合には、第1フレーム46上における揺動台板部24の可動域R1の直径を拡大する、あるいは揺動台板部24の直径を拡大することができる。この場合、圧縮機100の大きさを変えずに容量を増大させることができ、圧縮機100の効率を向上させることができる。
【0053】
また、本開示では、固定スクロール21が圧力容器40に直接固定される構成である場合、すなわち、第1フレーム46に、固定スクロール21の固定台板部23とネジ止めされる外壁が設けられていない場合に、その利点が損なわれない。図5に示されるように、揺動台板部24の可動域R1の中心線51の偏心方向において、揺動台板部24の可動域R1を、胴部容器42の内壁面の付近まで拡大することができる。
【0054】
また、図2の例のように、揺動スクロール22のボス部27に取り付けたブッシュ28にウェイト部28b1設け、このウェイト部28b1を、可動域R1の中心線51の偏心方向とは逆側に配置することで、偏心による揺動運動時の振動を抑制することができる。
【0055】
図7は、図1の圧縮機100の圧縮機構部10の第1変形例を模式的に示す横断面図である。図7に基づき、第1変形例における固定渦巻歯25と揺動渦巻歯26との位置関係について説明する。
【0056】
図7に示される第1変形例においても、図4に示される場合と同様、固定渦巻歯25と揺動渦巻歯26とは対象の渦巻形状を有している。ただし、第1変形例では、揺動渦巻歯26の巻終わり部26eが、固定渦巻歯25の巻終わり部25eから180°の位置に配置されている。また、第1変形例では、周方向における圧縮室入口11aの配置が、図4に示される場合と異なる。
【0057】
具体的には、第1変形例では、揺動渦巻歯26の巻終わり部26eは揺動台板部24における奥側に位置し、固定渦巻歯25の巻終わり部25eは手前側に位置する。そして、吸入ポート46aの周方向の中央位置Lpから、おおよそ手前側90°の位置及びおおよそ奥側90°の位置の2箇所に、圧縮室入口11aが形成されている。手前側の圧縮室入口11aは左向きに開口し、奥側の圧縮室入口11aは右向きに開口している。
【0058】
第1変形例のように吸入ポート46aから2つの圧縮室入口11aまでの距離を等しくすることで、吸入ポート46aからの冷媒を、揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とにより圧縮室11に均等に吸入できるようになる。この場合、巻終わり部25e及び26eの片側だけが吸入ポート46aの近くに位置する構成と比べ、効率が良くなる。
【0059】
図8は、図1の圧縮機100の圧縮機構部10の第2変形例を模式的に示す横断面図である。図8に示される第2変形例においても、図7に示される第1変形例の場合と同様、固定渦巻歯25と揺動渦巻歯26とは対象の渦巻形状を有し、揺動渦巻歯26の巻終わり部26eが、固定渦巻歯25の巻終わり部25eから180°の位置に配置されている。ただし、第2変形例では、周方向における圧縮室入口11aの配置が、第1変形例の場合と異なる。具体的には、第2変形例では、2つの圧縮室入口11aのうち吸入ポート46aと逆向きの圧縮室入口11a、すなわち右向きの圧縮室入口11aが、左向きの圧縮室入口11aよりも吸入ポート46aにより近くなるように配置される。そのため、固定渦巻歯25と揺動渦巻歯26とは、図7に示される位置から周方向に角度θ(例えば、30°)回転した位置に配置されている。図8に示される例では、図7に示される吸入ポート46aの周方向の中央位置Lpから、おおよそ手前側120°の位置及びおおよそ奥側60°の位置の2箇所に、圧縮室入口11aが設けられている。よって、奥側に位置する右向きの圧縮室入口11aは、手前側に位置する左向きの圧縮室入口11aよりも、吸入ポート46a(図7参照)からの直線距離が短くなる。
【0060】
右向きの圧縮室入口11aと左向きの圧縮室入口11aとでは、第1変形例のように吸入ポート46aからの直線距離が同じでも、実際には右向きの圧縮室入口11aの方が冷媒は回り込まなくてはならず入りにくい。これに対して、第2変形例のように圧縮室入口11aの向きに応じて吸入ポート46aからの直線距離を違えることで、第1変形例の場合と比べて、2つの圧縮室入口11aから圧縮室11に均等に冷媒を吸入できるようになる。なお、周方向で固定渦巻歯25及び揺動渦巻歯26を傾ける角度θは、上記の場合に限定されないが、0°より大きく30°以下となる回転範囲内であることが好ましい。
【0061】
図9は、図1の圧縮機100の圧縮機構部10の第3変形例を模式的に示す横断面図である。図9に基づき、第3変形例における固定渦巻歯25と揺動渦巻歯26との位置関係について説明する。
【0062】
図9に示される第3変形例では、揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とは、圧縮室入口11aが吸入ポート46aの近くに位置するように設けられ、周方向において揺動渦巻歯26の巻終わり部26eの位置と固定渦巻歯25の巻終わり部25eの位置とは同じである。第3変形例では、周方向において、円弧状の吸入ポート46aが設けられる角度範囲以内に圧縮室入口11aが位置するように、揺動渦巻歯26及び固定渦巻歯25のそれぞれの巻きの長さが決められている。
【0063】
図9に示される例では、揺動渦巻歯26の巻終わり部26e及び固定渦巻歯25の巻終わり部25eのそれぞれは、周方向において、吸入ポート46aの周方向の中央位置Lpと略同じ位置に配置され、圧縮室入口11aが奥側に開口する構成とされている。
【0064】
このように、揺動渦巻歯26の巻終わり部26e及び固定渦巻歯25の巻終わり部25eの双方が、周方向で吸入ポート46aが設けられる位置に配置されることにより、圧縮室入口11aを吸入ポート46aの近くに設けることができる。よって、揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とにより、吸入ポート46aから吸入した冷媒をより効率的に圧縮室11内に導入することができ、冷媒供給の改善につながる。
【0065】
なお、第3変形例において、周方向における圧縮室入口11aの位置は、吸入ポート46aの周方向の中央位置Lpと同じ位置に限定されず、径方向で吸入ポート46aの側の位置であればよい。例えば、左右方向において左側に圧縮室入口11aが配置される。換言すると、周方向の角度位置では、吸入ポート46aの周方向の中央位置Lpから手前側90°と奥側90°との間の区間に、揺動渦巻歯26の巻終わり部26eと固定渦巻歯25の巻終わり部25eとにより形成される圧縮室入口11aが配置されていればよい。
【0066】
以上のように、実施の形態1に係るスクロール圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構部10と、偏心軸部33aを有する回転軸33と、回転軸33を介して圧縮機構部10を駆動する電動機部30と、を備える。圧縮機構部10は、固定スクロール21及び揺動スクロール22を有する。また、スクロール圧縮機は、圧縮機構部10及び電動機部30が収容される圧力容器40と、圧力容器40の内部に固定され、回転軸33が延びる軸方向に揺動スクロール22を支持するフレーム(第1フレーム46)と、を備える。揺動スクロール22は、揺動台板部24と、揺動台板部24において固定スクロール21の側の第1面に設けられた揺動渦巻歯26と、揺動台板部24において第1面の裏面である第2面に設けられ、偏心軸部33aが嵌合されるボス部27と、を有している。軸方向から見て、揺動台板部24とボス部27とは、揺動台板部24の中心線54の位置がボス部27の中心線53の位置と異なるように設けられている。
【0067】
これにより、揺動台板部24の中心とボス部27の中心とが同じ鉛直方向(矢印Z方向)の直線上に存在しない構成となっている。したがって、揺動台板部24の可動域R1の中心線51は第1フレームの中心線52から偏心する。よって、第1フレーム46において非可動域R2は、偏心方向では狭くなる一方、偏心方向と逆側では広くなる。したがって、第1フレーム46において揺動台板部24の可動域R1の偏心方向と逆側に構造部を設けても、非可動域R2には、揺動台板部24を大きくする、又は構造部を大きくする余白ができる。結果、揺動スクロール22の大きさ及び第1フレーム46の外周部の構造物の大きさの制限を緩和し、性能の良いスクロール圧縮機を提供することができる。
【0068】
また、軸方向から見て、フレーム(第1フレーム46)における揺動台板部24の可動域R1よりも外周側の非可動域R2には、圧縮機構部10に冷媒を供給する吸入ポート46aが形成されている。これにより、非可動域R2に吸入ポート46aを設けることで、揺動台板部24による圧力損失を回避しつつ、圧縮室11へ冷媒を供給することができる。
【0069】
また、軸方向から見て、吸入ポート46aは、フレーム(第1フレーム46)における揺動台板部24の可動域R1の中心線51の偏心方向とは逆側に形成されている。これにより、吸入ポート46aを従来よりも大きくすることができ、圧縮室11へ供給できる冷媒量が増す。
【0070】
また、固定スクロール21は、固定台板部23と、固定台板部23において揺動スクロール22の側の面に設けられた固定渦巻歯25と、を有する。そして、軸方向から見て、揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とにより形成される2つの圧縮室入口11aは、吸入ポート46aからの直線距離が等しくなるように設けられている。
【0071】
これにより、吸入ポート46aからの冷媒を、揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とにより圧縮室11に均等に吸入できるようになる。この場合、巻終わり部25e及び26eの片側だけが吸入ポート46aの近くに位置する構成と比べ、効率が良くなる。
【0072】
また、固定スクロール21は、固定台板部23と、固定台板部23において揺動スクロール22の側の面に設けられた固定渦巻歯25と、を有する。そして、軸方向から見て、揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とにより形成される2つの圧縮室入口11aは、一方が吸入ポート46a側を向き、他方が吸入ポート46aと逆側を向き、他方と吸入ポート46aとの直線距離は、一方と吸入ポート46aとの直線距離よりも近い。これにより、圧縮室入口11aの向きによらず、揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とにより圧縮室11に均等に冷媒を吸入できる。
【0073】
また、固定スクロール21は、固定台板部23と、固定台板部23において揺動スクロール22の側の面に設けられた固定渦巻歯25と、を有する。揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とは、周方向において巻終わり部25e及び26eが同じ位置に配置されるように一方(図9の例では揺動渦巻歯26)が他方よりも長く設けられている。そして、揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とにより形成される圧縮室入口11aは、径方向において吸入ポート46aの側に設けられている。これにより、圧縮室入口11aを吸入ポート46aの近くに設けることができるので、揺動渦巻歯26と固定渦巻歯25とにより、吸入ポート46aから吸入した冷媒をより効率的に圧縮室11内に導入することができ、冷媒供給の改善につながる。
【0074】
また、固定スクロール21は、フレーム(第1フレーム46)を介さずに圧力容器40に直接固定されている。これにより、第1フレーム46を揺動台板部24よりも下側だけに設ければよいので、第1フレーム46が外壁を備える場合と比べ、揺動スクロール22の外周部と胴部容器42の内壁面との間の空間が広くなる。よって、外壁を備える場合と比べ、揺動スクロール22のサイズの制約がなくなり、揺動台板部24の外径及び揺動渦巻歯26の巻径を大きくすることができる。また、渦巻を大きくすることができるので、低GWP冷媒(低密度冷媒)で性能を確保することに有効である。
【0075】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2に係る圧縮機の構成を模式的に示す部分断面図である。図11は、実施の形態2に係る圧縮機100において揺動スクロール22が右に寄った時の揺動スクロール22と第1フレーム46との位置関係を模式的に示す横断面図である。図12は、図11の圧縮機100において揺動スクロール22が左に寄った時の揺動スクロール22と第1フレーム46と回転軸33との位置関係を模式的に示す縦断面図である。
【0076】
図10に示されるように、実施の形態2では、揺動台板部24の直径あるいは揺動台板部24の可動域R1(図11参照)の大きさを制限する構造物が、第1フレーム46に設けられた凹部である点が、実施の形態1の場合とは異なる。図11に示される例では、第1フレーム46において凹部の周方向の両側に吸入ポート46aが設けられ、凹部及び2つの吸入ポート46aが、揺動台板部24の直径等を制限する構造物とされる。実施の形態2では、実施の形態1と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1との相違点を中心に説明するものとする。
【0077】
実施の形態2では、図10に示されるように、第1フレーム46の外周部の上面には、固定スクロール21の固定台板部23との組み立て位相出しに用いられる凹部46a1が形成されている。図11に示される例では、第1フレーム46の凹部46a1は、軸方向から見て円形状を有し、第1フレーム46において左側、すなわち2つの吸入ポート46aの間に設けられている。また、図10に示されるように、固定台板部23の下面には、軸方向から見て第1フレーム46の凹部46a1と対向する位置に、穴23aが形成されている。固定台板部23の穴23aは、軸方向から見て、第1フレーム46の凹部46a1と同様の形状を有している。
【0078】
なお、固定台板部23の穴23aは、図10に示されるように貫通孔であってもよく、あるいは、固定台板部23の下面が上側へ凹んだ凹部であってもよい。また、固定台板部23の下面には、軸方向から見て第1フレーム46の凹部46a1と対向する位置に、下方へ延びる突起部が設けられ、この突起部の下面に穴23aが設けられる構成としてもよい。また、第1フレーム46において凹部46a1及び吸入ポート46aを設ける位置は、上記の位置に限定されない。ただし、これらの複数の構造物は、第1フレーム46の外周部の一領域(例えば、左側半分)に集中して設けられるとよい。
【0079】
圧縮機100の製造段階では、胴部容器42内において第1フレーム46と固定台板部23とが予め決められた位相で対向するように、位相決め部材6により位相出しが行われる。位相決め部材6は、例えば、円柱形状のピンで構成される。組み立て位相出しが行われる際、位相決め部材6の上端部が固定台板部23の穴23aに創通され、位相決め部材6の下端部が第1フレーム46の凹部46a1内に差し込まれる。組み立て位相出しが行われた後、位相決め部材6は抜き取られる。なお、組み立て後において、位相決め部材6を抜き取らない構成としてもよい。位相決め部材6を抜き取る構成とする場合には、固定台板部23の穴23aを介して冷媒が流れることを抑制する封止部材(図示を省略)を穴23aに設けるとよい。封止部材は、位相決め部材6を凹部46a1から抜き取って、穴23aの内部に留めることで形成してもよい。
【0080】
図12に示されるように、実施の形態2においても実施の形態1の場合と同様に、軸方向から見て、揺動台板部24の中心線54の位置はボス部27の中心線53の位置から偏心している。したがって、図11に示されるように、揺動台板部24の可動域R1の中心線51は、第1フレーム46の中心線52から偏心している。
【0081】
図11に示されるように、軸方向から見て、第1フレーム46の凹部46a1は揺動台板部24の非可動域R2に設けられている。よって、図12に示されるように、圧縮機100の駆動中に揺動台板部24が最も凹部46a1に近づいたときでも、揺動台板部24により第1フレーム46の凹部46a1が覆われることがない。
【0082】
以上のように、実施の形態2に係る圧縮機100においても、実施の形態1の場合と同様に、軸方向から見て、揺動スクロール22の揺動台板部24の中心線54とボス部27の中心線53とが異なる。よって、本開示では、揺動台板部24の非可動域R2の最大幅Wmax(図4参照)が従来よりも大きくなり、揺動台板部24を大きくする、又は凹部46a1等の構造部を大きくする余白ができる。結果、実施の形態2に係る圧縮機100においても、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。
【0083】
また、実施の形態2の圧縮機100では、フレーム(第1フレーム46)における揺動台板部24の第2面(下面)と対向する対向面には、軸方向から見て、揺動台板部24の可動域R1よりも外周側の非可動域R2に、凹部46a1が形成されている。これにより、非可動域R2に凹部46a1を設けることで、圧力容器40内において意図する位相で第1フレーム46を配置することが容易となる。
【0084】
また、図11に示される例では、吸入ポート46aを2か所に分けることで一部焼き嵌め箇所を残すことができるので、実施の形態1のように、吸入ポート46aを1か所に広範囲に設ける場合と比べて、固定渦巻を焼き嵌め固定する場所を確保でき、焼き嵌め保持力を確保することができる。
【0085】
なお、実施の形態2においても、実施の形態1の第1変形例~第3変形例のように固定渦巻歯25及び揺動渦巻歯26を配置してもよい。
【0086】
実施の形態3.
図13は、実施の形態3に係る圧縮機100において揺動スクロール22が右に寄った時の揺動スクロール22と第1フレーム46との位置関係を模式的に示す横断面図である。図14は、図13の圧縮機100において揺動スクロール22が左に寄った時の揺動スクロール22と第1フレーム46と回転軸33との位置関係を模式的に示す縦断面図である。図13及び図14に示される白抜き矢印は、冷媒の向きを表している。
【0087】
図13及び図14に示されるように、実施の形態3では、揺動台板部24の直径あるいは揺動台板部24の可動域R1の大きさを制限する構造物が、第1フレーム46に設けられた凸部である点が、実施の形態1の場合とは異なる。実施の形態3では、実施の形態1と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1との相違点を中心に説明するものとする。
【0088】
図14に示されるように、実施の形態3では、揺動台板部24に実施の形態1の吸入ポート46a(図5参照)は設けられておらず、吸入管44は、胴部容器42の高さ方向(矢印Z方向)において第1フレーム46と固定スクロール21との間に設置されている。つまり、実施の形態3では、吸入管44からの冷媒を、モータ空間Smを介さずに直接、冷媒吸入空間Siへ供給する構成とされている。また、実施の形態3では、吐出管45は、胴部容器42の高さ方向(矢印Z方向)において第1フレーム46よりも下側のモータ空間Smに設置されている。すなわち、実施の形態3では、圧力容器40内の空間のうち、固定スクロール21よりも上側の空間は開口が無い高圧空間となっており、第1フレーム46よりも下側のモータ空間Smが、吐出空間を兼ねる構成となっている。
【0089】
図13に示されるように、実施の形態3では、第1フレーム46の外周部における周方向の一部が切り欠かれている。そして、図14に示されるように、第1フレーム46におけるこの切り欠き部46cの縁部に、固定台板部23(図1参照)へ向かって上方へ延びる隔離壁46a2が設けられている。図13に示されるように軸方向から見て、隔離壁46a2の両側の側端部は胴部容器42の内壁面と接続されており、隔離壁46a2と胴部容器42の内壁面とで囲まれるように連絡路7が形成されている。図14に示されるように、連絡路7は、上方の高圧空間(不図示)と下方のモータ空間Smとを連通させる。
【0090】
図示していないが、固定台板部23(図1参照)には、軸方向において第1フレーム46の切り欠き部46cと対向する位置に開口部が形成されており、この開口部が連絡路7の冷媒入口となり、第1フレーム46の切り欠き部46cが連絡路7の冷媒出口となる。圧縮機構部10から吐出されて高圧空間に充満した高圧冷媒は、連絡路7を通って、モータ空間Smへ移動し、吐出管45を介して外部(例えば、凝縮器)へ吐出される。
【0091】
図14に示されるように、実施の形態3においても実施の形態1の場合と同様に、軸方向から見て、揺動台板部24の中心線54の位置はボス部27の中心線53の位置から偏心している。したがって、図13に示されるように、揺動台板部24の可動域R1の中心線51は、第1フレーム46の中心線52から偏心している。
【0092】
図13に示されるように、軸方向から見て、第1フレーム46の隔離壁46a2は揺動台板部24の非可動域R2に設けられている。よって、図14に示されるように、圧縮機100の駆動中に揺動台板部24が最も隔離壁46a2に近づいたときでも、揺動台板部24が隔離壁46a2に干渉することがない。
【0093】
以上のように、実施の形態3に係る圧縮機100においても、実施の形態1の場合と同様に、揺動スクロール22の揺動台板部24の中心線54とボス部27の中心線53とが異なる。よって、本開示では、揺動台板部24の非可動域R2の最大幅Wmaxが従来よりも大きくなり、揺動台板部24を大きくする、又は連絡路7を大きくする余白ができる。結果、実施の形態3に係る圧縮機100においても、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。
【0094】
また、実施の形態3の圧縮機100では、フレーム(第1フレーム46)における揺動台板部24の第2面(下面)と対向する対向面には、軸方向から見て、揺動台板部24の可動域R1よりも外周側の非可動域R2に、凸部(隔離壁46a2)が形成されている。
【0095】
これにより、連絡路7を設ける場合に、連絡路7と冷媒吸入空間Siとが隔離壁46a2により隔離されるので、気密性が確保される。結果、連絡路7に充満している高圧冷媒が冷媒吸入空間Siに漏れることによる電力入力のロスが抑制され、性能の向上を図ることができる。
【0096】
なお、実施の形態3においても、実施の形態1の第1変形例~第3変形例のように固定渦巻歯25及び揺動渦巻歯26を配置してもよい。ただし、実施の形態3では、圧縮室入口11aの配置は、吸入管44との位置関係に応じて決めるとよい。図13では、吸入管44が右側に設けられているので、圧縮室入口11aは、図7の場合と同じ配置か、あるいは、図9の場合とは逆側の配置となる。また、吸入管44が下に設けられる場合には、それにともなって固定渦巻歯25及び揺動渦巻歯26の位相も回転した構成とする。
【0097】
なお、各実施の形態を組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、又は省略したりすることが可能である。例えば、実施の形態1においても、実施の形態2の場合と同様、吸入ポート46aを2か所に分けて設けてもよい。
【符号の説明】
【0098】
3 吐出口、4 チャンバー、4a 凹状部、4b チャンバー吐出口、5 吐出弁機構、5a 吐出弁、5b 弁押さえ、5c 固定部材、6 位相決め部材、7 連絡路、10 圧縮機構部、11 圧縮室、11a 圧縮室入口、20 吐出弁機構、21 固定スクロール、22 揺動スクロール、23 固定台板部、23a 穴、24 揺動台板部、24a 第1オルダム溝、25 固定渦巻歯、25e 巻終わり部、26 揺動渦巻歯、26e 巻終わり部、27 ボス部、28 ブッシュ、28a スライダ、28b バランスウエイト、28b1 ウェイト部、29 オルダムリング、29b 上面突起、29r リング部、30 電動機部、31 固定子、32 回転子、33 回転軸、33a 偏心軸部、33b 主軸部、33c 通油路、40 圧力容器、41 上部容器、42 胴部容器、43 下部容器、44 吸入管、45 吐出管、46 第1フレーム、46a 吸入ポート、46a1 凹部、46a2 隔離壁、46b 軸受部、46c 切り欠き部、46f ボス収容部、46o オルダム収容部、46o1 第2オルダム溝、46s スラストプレート、47 第2フレーム、48 ボールベアリング、50 境界、51 中心線、52 中心線、53 中心線、54 中心線、100 圧縮機、Ax1 中心線、Ax2 中心線、R1 可動域、R2 非可動域、Si 冷媒吸入空間、Sm モータ空間、So 吐出空間、Lp 中央位置、Wmax 最大幅。
図1
図2
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