(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 43/16 20200101AFI20241101BHJP
B62M 23/02 20100101ALI20241101BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241101BHJP
【FI】
B62J43/16
B62M23/02 110
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2023570559
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048748
(87)【国際公開番号】W WO2023127077
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高山 慶士
(72)【発明者】
【氏名】中田 正人
(72)【発明者】
【氏名】古田 慎司
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-81486(JP,A)
【文献】特開2013-136311(JP,A)
【文献】特開2008-80986(JP,A)
【文献】特開2006-151189(JP,A)
【文献】特開2006-182315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 43/16
B62M 23/02
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪(4)に駆動力を与える駆動モータ(M1)と、前記駆動モータ(M1)に電力を与えるバッテリ(37)と、前記駆動モータ(M1)を制御する制御装置(34)と、乗員が着座するシート(21)と、を備え、
前記バッテリ(37)は、互いに別体の第一バッテリ(37a,137a,237a)および第二バッテリ(37b,137b,237b)を備え、
前記制御装置(34)および前記バッテリ(37)は、前記シート(21)の前後幅内で前記シート(21)の下方に配置され、
前記第一バッテリ(37a,137a,237a)および前記第二バッテリ(37b,137b,237b)の各々は、平面視で前記制御装置(34)の左右方向両側にそれぞれ配置されている鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記駆動モータ(M1)とは別に設けられる第二モータ(M2)と、前記第二モータ(M2)を駆動して発電させる内燃機関(E)と、を備え、
前記制御装置(34)および前記内燃機関(E)は、平面視で車体左右中央(CL)と重なって配置され、
前記第一バッテリ(37a,137a,237a)および前記第二バッテリ(37b,137b,237b)は、平面視で車体左右中央(CL)の左右両側に振り分けて配置され、
前記駆動モータ(M1)および前記第二モータ(M2)は、平面視で車体左右中央(CL)の左右両側に振り分けて配置されている請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記第一バッテリ(237a)および前記第二バッテリ(237b)の各々は、平面視で前記制御装置(34)の左右側面に沿って前後方向に延びる側部延出部(38)と、前記側部延出部(38)の後方側に連なり、平面視で前記制御装置(34)の後面に沿って左右方向内側に延びる後部延出部(39)と、を備えている請求項1から3の何れか一項に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、発電機駆動用エンジンが搭載されたハイブリッド式自動二輪車が開示されている。この自動二輪車では、既存車両の変速機部分に駆動モータを配置し、この駆動モータと後輪とをドライブチェーン等で連結している。
特許文献1にはモータおよび制御装置の冷却構造についての開示はないが、例えば特許文献2には、ハイブリッド式自動二輪車において、発電機から駆動モータに供給する電力を制御するインバータを含むコントロールユニットと、駆動モータ及び/又はインバータを冷却するラジエータと、を備えることが開示されている。この自動二輪車では、ラジエータはエンジン前方に配置され、コントロールユニットはエンジン後方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-173622号公報
【文献】特開2020-175822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の脱炭素社会の実現に向けて、ハイブリッド車両においても、よりエンジンの稼働を少なくしてバッテリでの走行を増やすことが望まれる。すなわち、ハイブリッド車両も純EV車両と同様、より大きなバッテリ容量を確保できる構成が望まれる。特に、鞍乗り型電動車両の場合、バッテリが着脱式であることがあり、この点も考慮した構成が望まれる。
【0005】
そこで本発明は、駆動輪に駆動力を与える駆動モータおよびその制御装置、ならびに駆動モータに電力を供給するバッテリを備える鞍乗り型車両において、バッテリ容量を確保し、かつバッテリへのアクセスを良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明は、駆動輪(4)に駆動力を与える駆動モータ(M1)と、前記駆動モータ(M1)に電力を与えるバッテリ(37)と、前記駆動モータ(M1)を制御する制御装置(34)と、乗員が着座するシート(21)と、を備え、前記バッテリ(37)は、互いに別体の第一バッテリ(37a,137a,237a)および第二バッテリ(37b,137b,237b)を備え、前記制御装置(34)および前記バッテリ(37)は、前記シート(21)の前後幅内で前記シート(21)の下方に配置され、前記第一バッテリ(37a,137a,237a)および前記第二バッテリ(37b,137b,237b)の各々は、平面視で前記制御装置(34)の左右方向両側にそれぞれ配置されている鞍乗り型車両を提供する。
この構成によれば、シート下方の制御装置の左右両側に第一バッテリおよび第二バッテリを配置することで、制御装置の左右方向外側のスペースをバッテリ配置スペースとして有効活用し、バッテリ全体の大きさひいてはバッテリ容量を確保することができる。すなわち、バッテリを第一バッテリおよび第二バッテリに分割することで、バッテリ容量を確保しながら、制御装置の周囲に効率よく配置することができる。
また、シートの着脱または開閉によって、制御装置周辺のメンテナンスを可能にするとともに、バッテリの着脱を可能にすることができる。また、バッテリを複数体に分割しながら、バッテリと制御装置とを左右に隣接させることで、バッテリと制御装置との接続に要する配線長さを短くし、コスト及び重量の低減を図ることができる。さらに、第一バッテリおよび第二バッテリを車体左右両側に振り分けることで、車両の左右バランスを取りやすくすることができる。
【0007】
本発明において、前記第一バッテリ(37a,137a,237a)および前記第二バッテリ(37b,137b,237b)の各々は、側面視で前記制御装置(34)と重なる上下方向高さに配置されている構成でもよい。
この構成によれば、バッテリと制御装置とが平面視で隣接するだけでなく側面視で重なる上下方向高さに配置されることで、バッテリと制御装置との接続に要する配線長さを確実に短くし、コスト及び重量の低減を図ることができる。
【0008】
本発明において、前記駆動モータ(M1)とは別に設けられる第二モータ(M2)と、前記第二モータ(M2)を駆動して発電させる内燃機関(E)と、を備え、前記制御装置(34)および前記内燃機関(E)は、平面視で車体左右中央(CL)と重なって配置され、前記第一バッテリ(37a,137a,237a)および前記第二バッテリ(37b,137b,237b)は、平面視で車体左右中央(CL)の左右両側に振り分けて配置され、前記駆動モータ(M1)および前記第二モータ(M2)は、平面視で車体左右中央(CL)の左右両側に振り分けて配置されている構成でもよい。
この構成によれば、内燃機関および制御装置は、車体左右中央寄りに配置し、第一バッテリおよび第二バッテリの組、ならびに第一モータおよび第二モータの組は、それぞれ車体左右両側に振り分けて配置することで、車両の左右バランスをより一層取りやすくすることができる。
【0009】
本発明において、前記第一バッテリ(137a)および前記第二バッテリ(137b)の各々は、平面視で車両前方側ほど互いに近付くように傾斜して配置されている構成でもよい。
この構成によれば、シート下方の制御装置の左右両側に位置する第一バッテリおよび第二バッテリが、車両前方側ほど互いに近付くように傾斜することで、シートの前方側ほど第一バッテリおよび第二バッテリの間隔が狭くなり、車体を幅狭にすることができるため、車両の足つき性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、前記第一バッテリ(237a)および前記第二バッテリ(237b)の各々は、平面視で前記制御装置(34)の左右側面に沿って前後方向に延びる側部延出部(38)と、前記側部延出部(38)の後方側に連なり、平面視で前記制御装置(34)の後面に沿って左右方向内側に延びる後部延出部(39)と、を備えている構成でもよい。
この構成によれば、第一バッテリおよび第二バッテリの後方側に、制御装置の後面に沿って左右方向内側に延びる後部延出部を備えることで、バッテリ容量を確保しながら、制御装置の左右側面に沿って延びる側部延出部を幅狭にして左右方向外側への張り出しを抑え、車体を幅狭にして車両の足つき性を向上させることができる。また、制御装置に後方からの外乱が至ることを、第一バッテリおよび第二バッテリの各後部延出部によって抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動輪に駆動力を与える駆動モータおよびその制御装置、ならびに駆動モータに電力を供給するバッテリを備える鞍乗り型車両において、バッテリ容量を確保し、かつバッテリへのアクセスを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態における自動二輪車の概略を示す左側面図である。
【
図2】上記自動二輪車の駆動システムの概略を示す構成図である。
【
図3】上記駆動システムのEVモードを示す
図2に相当する構成図である。
【
図4】上記駆動システムのハイブリッドモードを示す
図2に相当する構成図である。
【
図5】上記駆動システムの回生モードを示す
図2に相当する構成図である。
【
図6】上記駆動システムのエンジンドライブモードを示す
図2に相当する構成図である。
【
図7】上記駆動システムの制御部の概略を示す構成図である。
【
図9】第二実施形態における自動二輪車の概略を示す平面図である。
【
図10】第三実施形態における自動二輪車の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車体左右中央を示す線CLが示されている。本実施形態で用いる「中間」とは、対象の両端間の中央のみならず、対象の両端間の内側の範囲を含む意とする。
【0014】
<車両全体>
図1は、本実施形態の鞍乗り型車両の一例としての自動二輪車1を示す。自動二輪車1は、エンジン(内燃機関)Eおよび二つの電気モータM1,M2を含む駆動システムSを構成し、エンジン動力とモータ動力とを協働させて走行する。自動二輪車1は、いわゆる2モータハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド車両である。なお、以下に説明する本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、1モータ式のハイブリッド車両や内燃機関を有さない電動車両に適用してもよい。
【0015】
自動二輪車1は、ハンドル2によって操舵される前輪(操舵輪)3と、駆動システムSによって駆動される後輪(駆動輪)4と、を備えている。自動二輪車1は、運転者が車体を跨いで乗車する鞍乗り型車両であり、前後輪3,4の接地点を基準に車体を左右方向(ロール方向)に揺動(バンク)可能である。ハンドル2は、左右一体のバーハンドルでも左右別体のセパレートハンドルでもよく、かつバータイプのハンドルでなくてもよい。
【0016】
自動二輪車1は、車体の主要骨格となる車体フレーム5を備えている。車体フレーム5は、ヘッドパイプ6、メインフレーム7、ピボットフレーム8、リヤフレーム9を備えている。
車体フレーム5は、前端部の左右中央に位置するヘッドパイプ6において、前輪懸架装置11のフロントフォーク12を転舵可能に支持する。車体フレーム5は、前後中間部に位置するピボットフレーム8において、後輪懸架装置15のスイングアーム16を上下揺動可能に支持する。車体フレーム5は、ヘッドパイプ6からピボットフレーム8よりも後方のリヤフレーム9に渡って、溶接等の結合手段によって一体に設けられている。車体フレーム5は、一部(例えばリヤフレーム9等)をボルト締結等で着脱可能としてもよい。
【0017】
図中符号7aはメインフレーム7が備える左右一対のメインフレーム部材、符号8aはピボットフレーム8が備える左右一対のピボットフレーム部材、符号9aはリヤフレーム9が備える左右一対のリヤフレーム部材をそれぞれ示す。左右一対のフレーム部材は、それぞれ車幅方向で互いに離隔している。
【0018】
ヘッドパイプ6は、鉛直方向に対して後傾したステアリング軸線を有している。ヘッドパイプ6は、前輪3および前輪懸架装置11をステアリング軸線回りに回動可能に支持している。例えば、前輪懸架装置11は、左右一対のフロントフォーク12を備えている。左右フロントフォーク12の上部は、ステアリングステムを介してヘッドパイプ6に支持されている。左右フロントフォーク12の下端部は、前輪3の車軸3aを支持している。左右フロントフォーク12は、それぞれテレスコピック式とされ、自動二輪車1のフロントサスペンションを構成している。前輪懸架装置11は、テレスコピック式のフロントサスペンションを構成するものに限らず、例えばリンク式のフロントサスペンションを構成してもよい。
【0019】
ピボットフレーム8は、車幅方向に延びるピボット軸(揺動軸)17を介して、スイングアーム16の前端部を支持している。スイングアーム16の後端部には、後輪4の車軸4aが支持されている。例えば、スイングアーム16の前部と車体フレーム5の前後中間部(例えばピボットフレーム8近傍のクロスフレーム)との間には、リヤクッションが介装されている。スイングアーム16およびリヤクッションは、自動二輪車1のリヤサスペンションを構成している。リヤクッションは、スイングアーム16の後部と車体フレーム5の後部(例えばリヤフレーム9)との間に介装されてもよい。
【0020】
車体フレーム5を含む車体の全体は、車体カバー19で覆われている。車体カバー19は、例えば車体前後中央を境に、車体前部を覆うフロントボディカバー19aと、車体後部を覆うリヤボディカバー19bと、に分けられる。
【0021】
リヤフレーム9は、ピボットフレーム8の後上方へ延びている。リヤフレーム9上には、乗員着座用のシート21が支持されている。リヤフレーム9は、シート21に着座した乗員の着座荷重を支持する。リヤフレーム9は、リヤクッションが連結される場合はクッション伸縮時の反力を受ける。
【0022】
シート21は、例えば運転者が座る前着座部と後部同乗者が座る後着座部とを一体に備えている。リヤフレーム9の周囲は、シート21の両側部の下方から後方に渡るリヤボディカバー19bで覆われている。リヤボディカバー19bの内側には、駆動システムSのPCU34およびバッテリ37を収納する収納部が配置されている。
【0023】
シート21は、例えばリヤボディカバー19b側に着脱可能あるいは開閉可能に取り付けられている。シート21を着脱あるいは開閉することで、リヤボディカバー19bの上部が開閉される。シート21を取り付けてリヤボディカバー19bの上部を閉塞した閉状態において、乗員がシート21に着座可能となる。シート21を取り外してリヤボディカバー19bの上部を開放した開状態において、シート21下方の部品や空間にアクセス可能となる。シート21は、閉状態で施錠可能である。シート21は、例えば前後何れかに設けたヒンジ軸を中心に回動してリヤボディカバー19bの上部を開閉する構成でもよい。
【0024】
シート21の前方でメインフレーム7の上方には、ニーグリップ部を有する車両構成部品23が支持されている。車両構成部品23は、例えばエンジンE用の燃料タンクやエアクリーナ、補機用の12Vバッテリ、乗員が荷物を出し入れする物品収納部、等の既存の車両構成部品を含んでいる。
なお、本発明は、シート21の前方に車両構成部品を有さず跨ぎ空間を形成したスクータ型車両に適用してもよい。
【0025】
<駆動システム>
図2は、駆動システムSの構成を示すブロック図である。
駆動システムSは、エンジンEと、第一モータM1と、第二モータM2と、動力切替装置31と、PCU34と、バッテリ37と、を備えている。
【0026】
エンジンEは、例えば複数気筒エンジンであり、各気筒のピストンの往復動からクランクシャフト26の回転駆動力を生成する。
図1を併せて参照し、エンジンEは、クランクシャフト26の回転中心軸線C1を車幅方向(左右方向)に沿わせて配置されている。クランクシャフト26は、クランクケース27内に収容されている。クランクケース27からはシリンダブロック28が突出し、シリンダブロック28内には各気筒に対応するピストンが嵌装されている。各ピストンは、コネクティングロッドを介してクランクシャフト26に連結されている。
【0027】
本実施形態において、第一モータM1は、エンジンEの右後方に配置され、第二モータM2は、エンジンEの左側部に配置されている(
図8参照)。第一モータM1および第二モータM2は、それぞれブラシレスの三相交流モータである。第一モータM1は、後輪駆動用の回転駆動力を発生する駆動用モータであり、車両減速時等には回生(発電)を行う。第二モータM2は、エンジンEの駆動力を受けて発電を行う発電用モータであり、バッテリ37の充電および第一モータM1への電力供給の少なくとも一方を行う。
【0028】
第一モータM1は、後輪4を駆動させて自動二輪車1を走行させるとき、例えばVVVF(variable voltage variable frequency)制御による可変速駆動がなされる。第一モータM1は、無段変速機を有する如く変速制御されるが、これに限らず、有段変速機を有する如く変速制御されてもよい。第一モータM1の作動は、エンジンEの駆動補助を行うアシストモータとしての駆動を含んでもよい。第一モータM1の作動は、エンジンEのスタータモータとしての駆動を含んでもよい。
【0029】
第一モータM1の駆動時、バッテリ37からの電力は、PCU34に供給され、直流から三相交流に変換されて、第一モータM1に供給される。第一モータM1の発電時、第一モータM1の発電電力は、レギュレータの整流回路等を経て、バッテリ37に蓄電される。
【0030】
第二モータM2は、エンジンEの運転中にクランクシャフト26の回転動力でロータを回転させて発電を行う。第二モータM2の作動は、エンジンEの駆動補助を行うアシストモータとしての駆動を含んでもよい。第二モータM2の作動は、エンジンEのスタータモータとしての駆動を含んでもよい。
【0031】
第二モータM2の駆動時、バッテリ37からの電力は、PCU34に供給され、直流から三相交流に変換されて、第二モータM2に供給される。第二モータM2の発電時、第二モータM2の発電電力は、レギュレータの整流回路等を経て、バッテリ37に蓄電される。
PCU34は、第一モータM1を制御する第一モータ制御部と、第二モータM2を制御する第二モータ制御部と、を別体に備えてもよい。
【0032】
動力切替装置31は、エンジンE、第一モータM1および第二モータM2の間の動力伝達経路を切り替える。動力切替装置31の制御により、エンジンE、第一モータM1および第二モータM2が協働して後輪4を駆動させる(自動二輪車1を走行させる)。動力切替装置31の制御により、第一モータM1および第二モータM2が駆動して発電可能である。駆動システムSと後輪4との間は、例えばチェーン式の伝動機構56で連結されている。
【0033】
図7を併せて参照し、PCU(Power Control Unit)34は、PDU(Power Drive Unit)34aおよびECU(Electric Control Unit)34bを備えた一体の制御ユニットである。PCU34は、各種センサ情報に基づいて、主に第一モータM1および第二モータM2の作動(駆動および発電)を制御する。PCU34は、第一モータM1および第二モータM2とバッテリ37との間の電流および電圧をコントロールする。
【0034】
PCU34は、電圧を昇降させるコンバータと、DC電流をAC電流に変換するインバータと、を備えている。インバータは、トランジスタ等のスイッチング素子を複数用いたブリッジ回路及び平滑コンデンサ等を具備し、第一モータM1および第二モータM2の各ステータ巻線に対する通電を制御する。第一モータM1および第二モータM2は、PCU34による制御に応じて、力行運転と発電とを切り替える。
【0035】
バッテリ37は、例えば複数の単位バッテリ37a,37bを直列に結線して所定の高電圧(例えば48V~192V)を得る。バッテリ37は、充放電が可能なエネルギーストレージとしてリチウムイオンバッテリを備えている。バッテリ37は、第一モータM1に電力を供給するとともに、第一モータM1による回生電力および第二モータM2による発電電力を蓄電可能である。
【0036】
バッテリ37からの電力は、例えば自動二輪車1のメインスイッチと連動するコンタクタ等を介して、モータドライバたるPDU34aに供給される。バッテリ37からの電力は、PDU34aにて直流から三相交流に変換された後、第一モータM1および第二モータM2に供給される。
【0037】
バッテリ37からの出力電圧は、DC-DCコンバータを介して降圧され、12Vのサブバッテリの充電に供される。サブバッテリは、灯火器等の一般電装部品、メーターおよび施錠装置、ならびにECU等の制御系部品に電力を供給する。サブバッテリを搭載することで、バッテリ37を取り外した状態等でも各種電磁ロック等を操作可能である。
【0038】
バッテリ37は、例えば車体に搭載された状態で、外部電源に接続したチャージャーによって充電可能である。バッテリ37は、車体から取り外した状態で、車外の充電器によって充電可能でもよい。
【0039】
バッテリ37は、充放電状況や温度等を監視するBMU(Battery Management Unit)を備えている。BMUが監視した情報は、バッテリ37を車体に搭載した際にECU34bに共有される。ECU34bは、各種センサから入力された検知情報に基づき、PDU34aを介して第一モータM1および第二モータM2を駆動制御する。
【0040】
<制御部>
図7は、駆動システムSの制御部41の構成を示すブロック図である。
制御部41は、PCU34と、エンジンECU42と、クラッチECU43と、を備えている。
PCU34は、第一モータM1および第二モータM2の作動(駆動および発電)を制御する。
【0041】
エンジンECU42は、アクセル開度等に応じて点火装置および燃料噴射装置といったエンジン補機を作動させて、エンジンEの始動、運転および停止を制御する。エンジンECU42には、アクセル操作子(例えばアクセルグリップ)の操作量を検出するアクセル開度センサ46、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ47、自動二輪車1の車速(例えば車輪速度)を検出する車速センサ48、等の検出情報が入力される。エンジンECU42は、入力された各種の検出情報に基づき、点火装置および燃料噴射装置といったエンジン補機を作動させる。
【0042】
クラッチECU43は、動力切替制御部であり、各種センサ情報に基づいて動力切替装置31を作動させる。クラッチECU43は、エンジンE、第一モータM1および第二モータM2の何れを、後輪4と動力伝達可能に連結するかを切り替える。クラッチECU43には、例えば動力切替装置31内のクラッチを断接させるクラッチアクチュエータ32が接続されている。
エンジンECU42とクラッチECU43とは、互いに別体に設けられても一体に設けられてもよい。
【0043】
制御部41には、例えばエンジンEの燃料タンクの残容量を検知する燃料残容量センサ45、乗員のアクセル開度(出力要求量)を検知するアクセル開度センサ46、エンジンEの回転数を検知するエンジン回転数センサ47、自動二輪車1の車速を検知する車速センサ48、バッテリ37の残容量を検知するバッテリ残容量センサ49、等の各種センサが接続されている。
【0044】
制御部41は、例えば自動二輪車1のメインスイッチがオンになると起動し、駆動システムSの制御を開始する。制御部41は、例えばアクセル開度毎に車速と出力(トルク)との相関を設定したマップを、メモリに記憶している。制御部41は、各センサからの出力および予め定められたマップ等に基づいて、エンジンE、第一モータM1および第二モータM2を適宜協働させる。制御部41は、駆動システムSから後輪4にトルクを付与して自動二輪車1を走行させるとともに、バッテリ37を充電可能とする。
【0045】
制御部41は、エンジンE、第一モータM1および第二モータM2を協働させる複数の制御モードを有している。制御部41は、複数の制御モードを切り替える制御モード切替部として機能する。制御モードの切り替えは、予め設定されたコンピュータプログラムに基づいて実行される処理によって、機能的に実現される。
【0046】
<制御モード>
制御部41の複数の制御モードは、EVモードと、ハイブリッドモードと、回生モードと、エンジンドライブモードと、を含む。
図3を参照し、EVモードは、エンジンEを停止して第一モータM1を駆動させ、第一モータM1の駆動力で自動二輪車1を走行させる。
図4を参照し、ハイブリッドモードは、エンジンEにより第二モータM2を発電機として駆動させつつ、第一モータM1の駆動力で自動二輪車1を走行させる。
【0047】
図5を参照し、回生モードは、自動二輪車1の減速時等に自動二輪車1の運動エネルギーによって第一モータM1を発電機として駆動させ、第一モータM1の発電電力でバッテリ37を充電する。
図6を参照し、エンジンドライブモードは、エンジンEの駆動力で自動二輪車1を走行させる。
各制御モードは、センサ出力等に応じて自動的に切り替え可能、または乗員の操作によって任意に切り替え可能である。
【0048】
以下、複数の制御モードについてより詳細に説明する。
まず、エンジンEを停止して第一モータM1の駆動力で車両を走行させるEV(Electric Vehicle)モードについて説明する。EVモードは、例えば自動二輪車1の発進時から中低速の走行時(特にクルーズ走行時)等において、第一モータM1の駆動力(モータトルク)のみによって走行可能なモータドライブモードである。EVモードでは、エンジンEおよび第二モータM2と後輪4との連結を解除した状態で自動二輪車1を走行させる。
【0049】
EVモードにおいて、エンジンEを駆動し、エンジンEの駆動力によって第二モータM2で発電を行うことも可能である(ハイブリッドモード)。ハイブリッドモードにおいて、第二モータM2の発電電力は、バッテリ37に蓄電されるが、第一モータM1に直接供給されてもよい。
【0050】
ハイブリッドモードは、例えば自動二輪車1の発進時から規定速度に達するまでの間、上り坂走行時、急加速要求時等に実施される。ハイブリッドモードは、バッテリ残容量が少ない場合にも実施される。自動二輪車1は乗用車に比べて小型であり、バッテリ37の搭載サイズ(容量)も制限されるため、EVモードよりもハイブリッドモードとなる機会が多い。
【0051】
ハイブリッドモードにおいて、エンジンEおよび第二モータM2の駆動力の少なくとも一部を、駆動システムSの出力部に供給することも可能である。これにより、エンジンEおよび第二モータM2のトルクで後輪駆動をアシストすることが可能である。バッテリ残容量が第一の規定値を下回っている場合は、第二モータM2による駆動アシストを制限してもよい。また、バッテリ残容量がさらに低い第二の規定値を下回る場合は、第一モータM1による駆動を制限してエンジンドライブモードに切り替えてもよい。燃料タンクの残容量が規定値を下回る場合は、第一モータM1および第二モータM2による後輪駆動の割合を増やしてもよい。
【0052】
EVモードおよびハイブリッドモードにおいて、自動二輪車1の減速時や下り坂走行時には、「回生モード」に移行する。回生モードでは、後輪4の回転エネルギーを第一モータM1に入力して回生(発電)を行い、この発電電力をバッテリ37に蓄電する。このとき、動力切替装置31の切り替えによって、エンジンEと後輪4との連結を解除し、効率よく回生を行う構成としてもよい。回生モードでは、後輪4に回生ブレーキ(機関ブレーキ)を発生させる。バッテリ37の充電量が規定値以上の場合には、第一モータM1を空転させて回生を停止してもよい。このとき、動力切替装置31の切り替えによって、エンジンEと後輪4とを連結し、エンジンブレーキを発生させてもよい。
【0053】
高速走行時(特に定速走行時)等では、動力切替装置31においてエンジンEと後輪4との間を動力伝達可能に連結し、エンジンEの駆動力によって自動二輪車1を走行させる(エンジンドライブモード)。エンジンドライブモードにおいて、エンジンEの駆動力によって第二モータM2を駆動して発電を行い、バッテリ37に蓄電してもよい。エンジンドライブモードにおいて、第一モータM1および第二モータM2の少なくとも一方を駆動させ、後輪駆動をアシストしてもよい。
【0054】
<エンジン配置>
図1を参照し、例えば、エンジンEは、クランクシャフト26の後方にトランスミッションを有さない構成であり、クランクケース27の前後幅を狭めている。本実施形態のエンジンEは、クランクケース27の前部から斜め前上方へシリンダブロック28を突出させている。図中符号C2はシリンダブロック28の突出方向に沿う軸線(シリンダボアの中心軸線、シリンダ軸線)を示す。シリンダブロック28は、シリンダ軸線C2を垂直方向に対して前方へ傾斜させている。シリンダ軸線C2の垂直方向に対する前傾角度は、例えば45度以上とされており、エンジンE全体の上下高さを抑えている。
【0055】
<モータ配置>
図1を参照し、第一モータM1は、エンジンEのクランクケース27の右側部の後方に配置されている。第一モータM1は、上下方向でエンジンEのクランクケース27と重なる高さに配置されている。第一モータM1は、回転軸151を左右方向に沿わせて配置されている。図中符号C3は第一モータM1の回転軸151の中心軸線を示す。
例えば、第一モータM1の回転軸151は、上下方向でクランクシャフト26と重なる高さに配置されている。第一モータM1は、ピボットフレーム8よりも前方に配置されている。
【0056】
図8併せて参照し、例えば、第一モータM1は、車体左右中央CLに対して、車幅方向一側(右側)にオフセットして配置されている。車体左右中央CLに対して車両左右方向一側にずれて配置されるとは、第一モータM1全体が車体左右中央CLよりも一側に配置されることの他、第一モータM1の左右中央が車体左右中央CLよりも一側にあることを含む。第一モータM1は、車体左右中央CLを左右に跨ぐように配置されてもよい。この場合、第一モータM1を大型化しやすく、自動二輪車1の駆動力を確保しやすい。
【0057】
図1を参照し、例えば第一モータM1の左側には、回転軸151と同軸の出力軸55が配置されている。出力軸55は、駆動システムSの出力部であり、動力切替装置31を介して駆動力(トルク)が出力される。出力軸55は、ピボット軸17よりも前方で、上下方向でピボット軸17と重なる高さに配置されている。出力軸55は、例えばチェーン式の伝動機構56を介して後輪4と連結されている。出力軸55の右端部には、伝動機構56のドライブスプロケット56aが一体回転可能に支持されている。
【0058】
図8を参照し、第二モータM2は、車体左右中央CLに対して、車幅方向他側(左側)にオフセットして配置されている。第二モータM2は、クランクケース27の左側部に備えられている。第二モータM2は、クランクシャフト26の左側部に連結されている。第二モータM2は、クランクシャフト26と回転中心軸線を一致させて配置(同軸配置)されている。第二モータM2は、いわゆるACG(AC Generator:交流発電機)であり、エンジンEを始動するスタータモータとしても機能する。図中符号251は第二モータM2の回転軸、符号C4は第二モータM2の回転軸251の中心軸線をそれぞれ示す。
【0059】
<バッテリ配置>
図1を参照し、シート21の下方には、駆動システムSの電源であるバッテリ37が配置されている。バッテリ37は、複数体に分割され、同じくシート21の下方に配置されたPCU34の左右両側に配置されている(
図8参照)。PCU34は、車体左右中央に配置(車体左右中央CLを左右に跨いで配置)されている(
図8参照)。バッテリ37は、PCU34を挟んで左右両側に配置されている。
【0060】
バッテリ37は、複数(左右一対)の単位バッテリ37a,37bで構成されている。本実施形態では、左側の単位バッテリを符号37aで示し、右側の単位バッテリを符号37bで示す。各単位バッテリ37a,37bは、例えば互いに同一構成である。各単位バッテリ37a,37bは、例えば断面矩形状をなして長手方向に延びる角柱状(直方体状)をなしている。以下、左側の単位バッテリ37aを第一バッテリ37a、右側の単位バッテリ37bを第二バッテリ37b、ということがある。
【0061】
各単位バッテリ37a,37bは、上下面を車幅方向に沿わせて配置されている。各単位バッテリ37a,37bは、長手方向および上下面を後上がりに傾斜させて配置され、全体的に後上がりのリヤボディカバー19b内に収まりやすくしている。各単位バッテリ37a,37bは、例えばPCU34とともに、一体の電装ボックスに収容されている。各単位バッテリ37a,37bは、例えばリヤボディカバー19bの上部開口から電装ボックスに対して挿入・離脱可能である。リヤボディカバー19bの上部開口は、例えばシート21の着脱または開閉によって開閉可能である。各単位バッテリ37a,37bは、車体上方寄り(例えばヘッドパイプ6と上下方向で重なる高さ)に配置されおり、ユーザーからのアクセス性がよい。
【0062】
バッテリ37は、複数の単位バッテリ37a,37bを直列に結線することで、所定の高電圧(48~72V)を発生させている。各単位バッテリ37a,37bは、それぞれ充放電可能なエネルギーストレージとして、例えばリチウムイオンバッテリで構成されている。各単位バッテリ37a,37bは、ジャンクションボックス(分配器)およびコンタクタ(電磁開閉器)を介して、PCU34に接続されている。PCU34からは三相ケーブルが延び、この三相ケーブルが第一モータM1に接続されている。
【0063】
図1、
図8の例では、左右単位バッテリ37a,37bは、車体左右中央のPCU34を挟んで左右対称に設けられているが、これに限らない。例えば車両の駆動系や排気系等のレイアウトに応じて左右非対称に設けられてもよい。また、左右単位バッテリ37a,37bは、PCU34とともに、上下面を後上がりに傾斜させて配置されているが、これに限らない。例えば、左右単位バッテリ37a,37bならびにPCU34の少なくとも一つが、上下面を略水平にしたり後下がりに傾斜させたりする等、異なる配置とされてもよい。
【0064】
左右単位バッテリ37a,37bならびにPCU34は、左右リヤフレーム部材9aの間に配置されるとよいが、これに限らない。例えば、PCU34のみ左右リヤフレーム部材9aの間に配置され、左右単位バッテリ37a,37bは左右リヤフレーム部材9aの左右外側に配置される構成でもよい。左右単位バッテリ37a,37bは、左右リヤフレーム部材9aにそれぞれ支持されている。左右単位バッテリ37a,37bは、リヤボディカバー19bの上部開口からアクセス(着脱および充電等のメンテナンスを含む)可能であるとよいが、これに限らない。例えば、左右単位バッテリ37a,37bは、リヤボディカバー19bの側部の開閉または着脱等により、車幅方向外側からアクセス可能であってもよい。
【0065】
<PCU配置>
図1、
図8を参照し、PCU34は、直方体状の外形をなし、上下面を車幅方向に沿わせて配置されている。PCU34は、各単位バッテリ37a,37bと同様、上下面を後上がりに傾斜させて配置されている。PCU34は、車体左右中央CLを左右に跨いで配置されている(
図8参照)。PCU34は、側面視で各単位バッテリ37a,37bと概ね全体が重なるように配置されている。PCU34は、左右リヤフレーム部材9aに両持ち支持されている。
【0066】
バッテリ37およびPCU34は、リヤボディカバー19bの内側に配置されている。各単位バッテリ37a,37bは、平面視でPCU34の左右方向両側にそれぞれ配置されている。各単位バッテリ37a,37bは、側面視でPCU34の概ね全体と重なるように配置されている。これにより、バッテリ37とPCU34との接続に要する配線長さが短くて済む。
【0067】
以上説明したように、上記実施形態における自動二輪車1は、後輪4に駆動力を与える駆動用の第一モータM1と、前記第一モータM1に電力を与えるバッテリ37と、前記第一モータM1を制御するPCU34と、乗員が着座するシート21と、を備え、前記バッテリ37は、互いに別体の第一バッテリ37aおよび第二バッテリ37bを備え、前記PCU34は、前記シート21の下方に配置され、前記第一バッテリ37aおよび前記第二バッテリ37bの各々は、平面視で前記PCU34の左右方向両側にそれぞれ配置されている。
この構成によれば、シート21下方のPCU34の左右両側に第一バッテリ37aおよび第二バッテリ37bを配置することで、PCU34の左右方向外側のスペースをバッテリ配置スペースとして有効活用し、バッテリ37全体の大きさひいてはバッテリ容量を確保することができる。すなわち、バッテリ37を第一バッテリ37aおよび第二バッテリ37bに分割することで、バッテリ容量を確保しながら、PCU34の周囲に効率よく配置することができる。
また、シート21の着脱または開閉によって、PCU34周辺のメンテナンスを可能にするとともに、バッテリ37の着脱を可能にすることができる。また、バッテリ37を複数体に分割しながら、バッテリ37とPCU34とを左右に隣接させることで、バッテリ37とPCU34との接続に要する配線長さを短くし、コスト及び重量の低減を図ることができる。さらに、第一バッテリ37aおよび第二バッテリ37bを車体左右両側に振り分けることで、自動二輪車1の左右バランスを取りやすくすることができる。
【0068】
また、上記自動二輪車1において、前記第一バッテリ37aおよび前記第二バッテリ37bの各々は、側面視で前記PCU34と重なる上下方向高さに配置されている。
この構成によれば、バッテリ37とPCU34とが平面視で隣接するだけでなく側面視で重なる上下方向高さに配置されることで、バッテリ37とPCU34との接続に要する配線長さを確実に短くし、コスト及び重量の低減を図ることができる。
【0069】
また、上記自動二輪車1において、前記第一モータM1とは別に設けられる第二モータM2と、前記第二モータM2を駆動して発電させるエンジンEと、を備え、前記PCU34および前記エンジンEは、平面視で車体左右中央CLと重なって配置され、前記第一バッテリ37aおよび前記第二バッテリ37bは、平面視で車体左右中央CLの左右両側に振り分けて配置され、前記第一モータM1および前記第二モータM2は、平面視で車体左右中央CLの左右両側に振り分けて配置されている。
この構成によれば、エンジンEおよびPCU34は、車体左右中央寄りに配置し、第一バッテリ37aおよび第二バッテリ37bの組、ならびに第一モータM1および第二モータM2の組は、それぞれ車体左右両側に振り分けて配置することで、自動二輪車1の左右バランスをより一層取りやすくすることができる。
【0070】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について図を参照して説明する。
第二実施形態の自動二輪車101は、上記第一実施形態に対し、特に第一バッテリ37aおよび第二バッテリ37bの配置が異なる。その他の、上記第一実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0071】
第二実施形態の第一バッテリ137aおよび第二バッテリ137bの各々は、平面視で車両前方側ほど互いに近付くように傾斜して配置されている。第一バッテリ137aおよび第二バッテリ137bの前部は、前後方向位置がシート21の前部と重なるように配置されている。このため、シート21の前部周辺において車体左右幅を狭めることが可能であり、シート21に着座した運転者が足を下ろしやすくなる。すなわち、運転者の足つき性を向上させることができる。
【0072】
以上説明した第二実施形態の自動二輪車101では、前記第一バッテリ137aおよび前記第二バッテリ137bの各々は、平面視で車両前方側ほど互いに近付くように傾斜して配置されている。
この構成によれば、シート21下方のPCU34の左右両側に位置する第一バッテリ137aおよび第二バッテリ137bが、車両前方側ほど互いに近付くように傾斜することで、シート21の前方側ほど第一バッテリ137aおよび第二バッテリ137bの間隔が狭くなり、車体を幅狭にすることができるため、自動二輪車101の足つき性を向上させることができる。
【0073】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について図を参照して説明する。
第三実施形態の自動二輪車201は、上記第一実施形態に対し、特に第一バッテリ37aおよび第二バッテリ37bの平面視形状が異なる。その他の、上記第一実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0074】
第三実施形態の第一バッテリ237aおよび第二バッテリ237bの各々は、平面視で略L字形の形状を有している。第一バッテリ237aおよび第二バッテリ237bの各々は、前記PCU34の左右側面に沿って前後方向に延びる側部延出部38と、前記側部延出部38の後方側に連なり、平面視で前記PCU34の後面に沿って左右方向内側に延びる後部延出部39と、を備えている。第一バッテリ237aおよび第二バッテリ237bの各々は、単にPCU34の左右外側に並列に配置する場合に比べて、PCU34の後方に回り込むように形成されることで、全体的な大きさ(容量)を確保した上で、車幅方向外側への張り出しを抑え、リヤボディカバー19bのスリム化および足つき性の向上が図られる。
【0075】
さらに、第一バッテリ237aおよび第二バッテリ237bの各側部延出部38は、前端部38aがPCU34の前端部34cよりも後方に配置されている。すなわち、第一バッテリ237aおよび第二バッテリ237bの各前端部は、PCU34の前端部34cよりも後方に配置されている。このため、シート21の前部周辺の車体左右幅をより一層狭めることが可能となり、さらなる足つき性の向上が図られる。
【0076】
以上説明した第三実施形態の自動二輪車201では、前記第一バッテリ237aおよび前記第二バッテリ237bの各々は、平面視で前記PCU34の左右側面に沿って前後方向に延びる側部延出部38と、前記側部延出部38の後方側に連なり、平面視で前記PCU34の後面に沿って左右方向内側に延びる後部延出部39と、を備えている。
この構成によれば、第一バッテリ237aおよび第二バッテリ237bの後方側に、PCU34の後面に沿って左右方向内側に延びる後部延出部39を備えることで、バッテリ容量を確保しながら、PCU34の左右側面に沿って延びる側部延出部38を幅狭にして左右方向外側への張り出しを抑え、車体を幅狭にして自動二輪車201の足つき性を向上させることができる。また、PCU34に後方からの外乱が至ることを、第一バッテリ237aおよび第二バッテリ237bの各後部延出部39によって抑えることができる。
【0077】
また、上記自動二輪車201において、前記側部延出部38は、前端部38aが前記PCU34の前端部34cよりも後方に配置されている。
この構成によれば、側部延出部38の前端部38aひいては第一バッテリ237aおよび第二バッテリ237bの前端部がPCU34の前端部34cよりも後方に配置されているので、PCU34の前端部34cの左右両側に第一バッテリ237aおよび第二バッテリ237bが存在しなくなり、PCU34の前端部34c周辺において車体を幅狭にして自動二輪車201の足つき性を向上させることができる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。鞍乗り型車両には、自動二輪車のように車体をバンクさせた方向に旋回する車両のみならず、車体をバンクさせずに操舵輪の転舵によって旋回する車両も含まれる。
【0079】
上記実施形態では、ハイブリッド式自動二輪車への適用例を示したが、これに限らず、駆動用モータを備える二輪、三輪および四輪の各種の鞍乗り型車両に適用してもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1,101,201 自動二輪車(鞍乗り型車両)
4 後輪(駆動輪)
21 シート
34 PCU(制御装置)
34a 前端部
37 バッテリ
37a,137a,237a 単位バッテリ(第一バッテリ)
37b,137b,237b 単位バッテリ(第二バッテリ)
38 側部延出部
38a 前端部
39 後部延出部
M1 第一モータ
M2 第二モータ
CL 車体左右中央
E エンジン(内燃機関)