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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】目標追尾装置及び目標追尾方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/66 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
G01S13/66
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023573317
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2022006289
(87)【国際公開番号】W WO2023157157
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-11-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 洋志
(72)【発明者】
【氏名】白石 將
(72)【発明者】
【氏名】川南 遼平
(72)【発明者】
【氏名】系 正義
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-169786(JP,A)
【文献】特開2005-274300(JP,A)
【文献】特開平9-189761(JP,A)
【文献】特開昭64-73275(JP,A)
【文献】米国特許第5313212(US,A)
【文献】特開2013-253909(JP,A)
【文献】特開2012-251904(JP,A)
【文献】特開2009-14596(JP,A)
【文献】特開2003-161778(JP,A)
【文献】特開2002-328162(JP,A)
【文献】特開平11-304915(JP,A)
【文献】特開平9-297176(JP,A)
【文献】特開平6-347542(JP,A)
【文献】ZENG, Jianghui; GAO, Yongming; DING, Dan,“Positioning and Tracking Performance Analysis of Hypersonic Vehicle based on Aerodynamic Model”,2019 IEEE International Conference on Artificial Intelligence and Computer Applications (ICAICA),2019年03月29日,pp. 312-318,DOI: 10.1109/ICAICA.2019.8873439
【文献】HUANG, Jingshuai; ZHANG, Hongbo; TANG, Guojian; BAO, Weimin,“Radar Tracking for Hypersonic Glide Vehicle Based on Aerodynamic Model”,2017 29th Chinese Control And Decision Conference (CCDC),2017年05月28日,pp. 1080-1084,DOI: 10.1109/CCDC.2017.7978679
【文献】WATSON, G.A.; BLAIR, W.D.,“Interacting Acceleration Compensation Algorithm For Tracking Maneuvering Targets”,IEEE TRANSACTIONS ON AEROSPACE AND ELECTRONIC SYSTEMS,1995年07月,Vol. 31, No. 3,pp. 1152-1159,DOI: 10.1109/7.395225
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 13/00-13/95
G01S 7/00-7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉ループを成す、平滑部と予測部と、を備え、
前記平滑部は、追尾対象の観測位置を示す観測位置情報を取得し、かつ、前記追尾対象の観測位置が観測された時点である位置観測時点よりも1サンプリング前に予測された、前記位置観測時点における前記追尾対象の状態の予測値を取得し、前記観測位置情報と前記追尾対象の状態の予測値とから、前記位置観測時点における前記追尾対象の状態を推定し、
前記観測位置情報と、前記位置観測時点における前記追尾対象の状態の予測値とから、前記追尾対象の運動モデルに含まれている前記追尾対象の機動方向の変化に係る加速度項から導かれる定数加速度ベクトルを補正し、
前記予測部は、前記平滑部により推定された状態から、前記位置観測時点よりも1サンプリング後の前記追尾対象の状態を予測し、前記追尾対象の状態の予測値を前記平滑部に出力する、
目標追尾装置。
【請求項2】
前記予測部は、
前記平滑部による補正後の定数加速度ベクトルに基づく運動モデルを用いて、前記平滑部により推定された状態から、前記位置観測時点よりも1サンプリング後の前記追尾対象の状態を予測し、前記追尾対象の状態の予測値を前記平滑部に出力することを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
【請求項3】
前記予測部が用いる複数の運動モデルは、それぞれ、
前記追尾対象の機動方向の変化に係る加速度項のほか、重力及び空気力のそれぞれに係る項を含むものである、
請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記平滑部とともに前記閉ループを成す、複数の予測処理部と予測値統合部とを備え、
複数の前記予測処理部のそれぞれは、互いに異なる複数の運動モデルのち対応する1つを用いて、前記平滑部により推定された状態から、前記追尾対象の状態を予測し、前記追尾対象の状態のそれぞれに対して予測した値を前記予測値統合部に出力し、
前記予測値統合部は、複数の前記予測処理部から出力された予測した値を統合し、統合した値を前記平滑部に出力する、
請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項5】
前記観測位置情報と、前記位置観測時点における前記追尾対象の状態の予測値とを取得し、前記観測位置情報が示す前記追尾対象の観測位置と、前記追尾対象の状態の予測値に含まれている前記追尾対象の予測位置との差分が閾値以下であれば、前記観測位置情報を前記平滑部に出力する追尾ゲート部を備えたことを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
【請求項6】
閉ループを成す、平滑部と予測部と、を備える目標追尾装置の目標追尾方法であって、
前記平滑部が、
追尾対象の観測位置を示す観測位置情報を取得し、かつ、前記追尾対象の観測位置が観測された時点である位置観測時点よりも1サンプリング前に予測された、前記位置観測時点における前記追尾対象の状態の予測値を取得し、前記観測位置情報と前記追尾対象の状態の予測値とから、前記位置観測時点における前記追尾対象の状態を推定し、
前記観測位置情報と、前記位置観測時点における前記追尾対象の状態の予測値とから、前記追尾対象の運動モデルに含まれている前記追尾対象の機動方向の変化に係る加速度項から導かれる定数加速度ベクトルを補正し、
前記予測部が、
前記平滑部により推定された状態から、前記位置観測時点よりも1サンプリング後の前記追尾対象の状態を予測し、前記追尾対象の状態の予測値を前記平滑部に出力する、
目標追尾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、目標追尾装置及び目標追尾方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
追尾対象の運動モデルを用いて、追尾対象の状態を予測する目標追尾装置がある(例えば、非特許文献1を参照)。追尾対象の状態としては、例えば、追尾対象の位置、追尾対象の速度及び追尾対象の空力係数がある。
当該目標追尾装置は、平滑部及び予測部を備えている。平滑部は、追尾対象の観測位置を示す観測位置情報を取得し、かつ、予測部から予測値を取得する。予測値は、観測位置が観測された時点である位置観測時点よりも1サンプリング前に、予測部によって予測された、位置観測時点における追尾対象の状態の予測結果である。予測部は、追尾対象の運動モデル(式(8)を参照)を用いて、平滑部により推定された状態から、位置観測時点よりも1サンプリング後の追尾対象の状態を予測し、追尾対象の状態の予測値を平滑部に出力する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Jingshuai Huang, Hongbo Zhang, Guojian Tang, Weimin Bao,“Radar Tracking for Hypersonic Glide Vehicle Based on Aerodynamic Model”,2017 29th Chinese Control And Decision Conference (CCDC),28-30 May 2017,p.1080-1084
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
追尾対象の将来の状態は、追尾対象の機動方向が変化することでも変化する。非特許文献1に開示されている目標追尾装置の予測部が用いる追尾対象の運動モデルでは、追尾対象の機動方向の変化が考慮されていないという課題があった。このため、当該目標追尾装置では、例えば、追尾対象の姿勢角の変化に伴って、追尾対象の機動方向が変化したときに、予測部による追尾対象の状態の予測精度が劣化してしまうことがある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、追尾対象の機動方向を考慮した追尾対象の状態予測を行うことができる目標追尾装置及び目標追尾方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る目標追尾装置は、閉ループを成す、平滑部と予測部と、を備え、平滑部は、追尾対象の観測位置を示す観測位置情報を取得し、かつ、追尾対象の観測位置が観測された時点である位置観測時点よりも1サンプリング前に予測された、位置観測時点における追尾対象の状態の予測値を取得し、観測位置情報と追尾対象の状態の予測値とから、位置観測時点における追尾対象の状態を推定し、観測位置情報と、位置観測時点における追尾対象の状態の予測値から追尾対象の運動モデルに含まれている追尾対象の機動方向の変化に係る加速度項から導かれる定数加速度ベクトル補正し、予測部は、平滑部により推定された状態から、位置観測時点よりも1サンプリング後の追尾対象の状態を予測し、追尾対象の状態の予測値を平滑部に出力する、というものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、追尾対象の機動方向を考慮した追尾対象の状態予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る目標追尾装置を示す構成図である。
図2】実施の形態1に係る目標追尾装置のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図3】目標追尾装置が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
図4】定数加速度ベクトルを示す説明図である。
図5】目標追尾装置の処理手順である目標追尾方法を示すフローチャートである。
図6】実施の形態2に係る目標追尾装置を示す構成図である。
図7】実施の形態2に係る目標追尾装置のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る目標追尾装置を示す構成図である。
図2は、実施の形態1に係る目標追尾装置のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図1に示す目標追尾装置は、追尾ゲート部1、平滑部2及び予測部3を備えている。
【0011】
追尾ゲート部1は、例えば、図2に示す追尾ゲート回路11によって実現される。
追尾ゲート部1は、例えば、図示せぬ目標観測装置から、追尾対象の観測位置を示す観測位置情報を取得し、予測部3から、追尾対象の状態の予測値を取得する。予測値は、観測位置が観測された時点である位置観測時点よりも1サンプリング前に予測された、位置観測時点における追尾対象の状態の予測結果を示すものである。
追尾ゲート部1は、観測位置情報が示す追尾対象の観測位置と、予測値に含まれている追尾対象の予測位置との差分を算出する。
追尾ゲート部1は、観測位置と予測位置との差分が閾値以下であれば、観測位置情報を平滑部2に出力し、差分が閾値よりも大きければ、観測位置情報を破棄する。閾値は、追尾ゲート部1の内部メモリに格納されていてもよいし、図1に示す目標追尾装置の外部から与えられるものであってもよい。
【0012】
平滑部2は、例えば、図2に示す平滑回路12によって実現される。
平滑部2は、追尾ゲート部1から、観測位置情報を取得し、予測部3から、予測値を取得する。
平滑部2は、観測位置情報と予測値とから、位置観測時点における追尾対象の状態を推定する。
平滑部2は、追尾対象の状態の推定値を外部に出力し、かつ、追尾対象の状態の推定値を予測部3に出力する。
【0013】
予測部3は、例えば、図2に示す予測回路13によって実現される。
予測部3は、N個の予測処理部4-1~4-Nと、予測値統合部5とを備えている。Nは、1以上の整数である。
予測部3は、平滑部2から、追尾対象の状態の推定値を取得する。
予測部3は、追尾対象の運動モデルとして、追尾対象の機動方向の変化に係る加速度項を含む運動モデルを用いて、平滑部2により推定された状態から、位置観測時点よりも1サンプリング後の追尾対象の状態を予測する。
予測部3は、追尾対象の状態の予測値を追尾ゲート部1及び平滑部2のそれぞれに出力する。
【0014】
予測処理部4-n(n=1,・・・,N)は、追尾対象の運動モデルとして、重力及び空気力のそれぞれに係る項と、追尾対象の機動方向の変化に係る加速度項とを含む運動モデルを備えている。予測処理部4-1~4-Nのそれぞれが備えている運動モデルは、互いに異なる運動モデルである。
図1に示す目標追尾装置では、追尾対象の運動モデルが、重力及び空気力のそれぞれに係る項と、追尾対象の機動方向の変化に係る加速度項とを含んでいる。しかし、追尾対象の運動モデルは、追尾対象の機動方向の変化に係る加速度項を含んでいればよく、重力及び空気力のそれぞれに係る項を含んでいなくてもよい。
予測処理部4-nは、運動モデルを用いて、平滑部2により推定された状態から、位置観測時点よりも1サンプリング後の追尾対象の状態を予測し、追尾対象の状態の予測値を予測値統合部5に出力する。
図1に示す目標追尾装置では、予測処理部4-nが、運動モデルを備えている。しかし、これは一例に過ぎず、運動モデルが目標追尾装置の外部から与えられるものであってもよい。
【0015】
予測値統合部5は、予測処理部4-1~4-Nのそれぞれから予測値を取得する。
予測値統合部5は、N個の予測値を統合し、統合後の予測値を追尾ゲート部1及び平滑部2のそれぞれに出力する。
【0016】
図1では、目標追尾装置の構成要素である追尾ゲート部1、平滑部2及び予測部3のそれぞれが、図2に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、目標追尾装置が、追尾ゲート回路11、平滑回路12及び予測回路13によって実現されるものを想定している。
追尾ゲート回路11、平滑回路12及び予測回路13のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0017】
目標追尾装置の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、目標追尾装置が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
【0018】
図3は、目標追尾装置が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
目標追尾装置が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、追尾ゲート部1、平滑部2及び予測部3におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ31に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0019】
また、図2では、目標追尾装置の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図3では、目標追尾装置がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、目標追尾装置における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0020】
最初に、図1に示す目標追尾装置による追尾対象の状態推定原理を説明する。
追尾対象の状態を示す状態ベクトルxは、例えば、以下の式(1)に示すように、追尾対象の位置ベクトルx,y,z、追尾対象の速度ベクトルxドット,yドット,zドット及び空力係数α,β,γによって表される。kは、1以上の整数である。
状態ベクトルxと位置ベクトルxとは、同じxで表しているが、位置ベクトルxは、スカラーである。位置ベクトルy,zについてもスカラーである。位置ベクトルx,y,zのそれぞれは、例えば、北基準直交座標系における追尾対象の3次元位置を表している。
【0021】
明細書の文章中では、電子出願の関係上、文字(x,y,z)の上に“・”の記号を付することができないため、速度ベクトルxドット,yドット,zドットのように表記している。
αは、揚力を示す空力係数、βは、抗力を示す空力係数、γは、空気力を示す空力係数である。
【0022】

【0023】
図示せぬ目標観測装置から追尾ゲート部1に与えられる観測位置情報を示す観測ベクトルzは、以下の式(2)に示すように、追尾対象の3次元の観測位置を示すベクトルであり、観測ベクトルzの要素であるx,y,zのそれぞれは、スカラーである。
【0024】

【0025】
予測処理部4-n(n=1,・・・,N)に用いられる運動モデルは、以下の式(3)に示すように、式(1)に示す状態ベクトルxについての1階の微分方程式で表すことができる。
【0026】

【0027】
式(3)において、wは、駆動雑音ベクトルであり、以下の式(4)及び式(5)に示す性質を有している。
【0028】

【0029】
式(3)において、f(x)は、以下の式(6)に示すように、空力係数α,β,γを用いて表される。
式(5)において、Qは、駆動雑音誤差共分散行列である。式(5a)において、0m×nは、m行n列の零行列、Q pvは、位置及び速度に関する駆動雑音行列パラメータ、Qα,Qβ,Qγのそれぞれは、空力係数に関する駆動雑音行列パラメータ(スカラー値)である。diag[A,B,C]は、A,B,Cを要素とする対角行列である。この例では、3行3列である。
【0030】


式(6)において、μは、万有引力定数、ρは、空気密度、rは、距離、Vは、速度である。
【0031】
式(3)に示す運動モデルは、以下の式(7)に示すように、離散系で表現することができる。
【0032】

【0033】
予測処理部4-n(n=1,・・・,N)に用いられる運動モデルは、以下の式(9)に示すように、駆動雑音ベクトルw及び定数加速度ベクトルの変換行列Γ’k-1のそれぞれによって拡張されている。
【0034】

式(9)において、uは、サンプリング時刻tにおいて、N個の運動モデルに含まれる定数加速度ベクトルであり、以下の式(10)のように表される。
Γ’k-1は、サンプリング時刻tk-1における定数加速度ベクトルの変換行列であり、以下の式(11)のように表される。
【0035】

式(11)において、Fは、定数加速度ベクトルuを定義した座標系から、状態ベクトルxを定義した座標系への座標変換行列である。Im×nは、m行n列の単位行列である。
【0036】
図4は、定数加速度ベクトルを示す説明図である。
図4において、Oは、目標観測装置を原点とした座標O-xyzの原点、Xは、東方向をx軸の正とした座標O-xyzのx軸、Yは、北方向をy軸の正とした座標O-xyzのy軸、Zは、上方向をz軸の正とした座標O-xyzのz軸である。
αは、y軸正方向の定数加速度ベクトル、αは、y軸負方向の定数加速度ベクトルである。
αは、x軸正方向の定数加速度ベクトル、αは、x軸負方向の定数加速度ベクトルである。
αは、z軸正方向の定数加速度ベクトル、αは、z軸負方向の定数加速度ベクトルである。
定数加速度ベクトルα~αの他に、定数加速度ベクトルα=0を定義すると、運動モデルの数は、7個となる。定数加速度の1軸には、北基準直交座標系の北方向、推定速度ベクトル、又は、LOS(Line Of Sight)等が考えられる。LOSは、目標観測装置から追尾対象を見た視線方向のベクトルである。
【0037】
次に、サンプリング時刻tにおいて、以下の式(12)が真である場合の運動モデルを以下の式(13)のように定義する。
【0038】

【0039】
ここでは、運動モデルΨk,aの推移がマルコフ性であると仮定する。即ち、運動モデルΨk,aは、サンプリング時刻tk-1の運動モデルΨk-1,aによって決まり、サンプリング時刻tk-2までの運動モデルΨk-2,a等には依存しないものとする。
例えば、最小サンプリング間隔がt(=t-tk-1)である場合の運動モデル間推移確率pk,abは、以下の式(14)に示すように表される。
N×N行列において、a行b列の要素をpabとしたものを、運動モデル間推移確率行列Πで表し、サンプリング間隔をt-tk-1=mt(m=1,2,・・・)で表す場合、サンプリング時刻tでの運動モデル間推移確率行列Πは、以下の式(15)のように表される。運動モデル間推移確率行列Πのa行b列の要素が運動モデル間推移確率pk,abである。
【0040】

【0041】
サンプリング時刻tまでの観測情報Zに基づく、サンプリング時刻tでの運動モデルΨk,aの信頼度μk,a(+)は、以下の式(16)に示すように、条件付き確率密度関数P[Ψk,a|Z]によって定義すると、以下の式(17)のように表現できる。
【0042】

式(17)において、vk,aは、式(18)に示すように、観測ベクトルの正規分布近似P[Z|Ψk,a,Zk-1]を多変量正規分布で近似したものである。
【0043】
サンプリング時刻tk-1までの観測情報Zk-1に基づく、サンプリング時刻tでの運動モデルΨk,aの事前信頼度μk,a(-)は、以下の式(19)に示すように、条件付き確率密度関数P[Ψk,a|Zk-1]によって定義すると、以下の式(20)のように表現できる。
【0044】

【0045】
サンプリング時刻tまでの観測情報Zに基づく、定数加速度ベクトルの推定値uk-1(+)は、以下の式(21)のように定義すると、以下の式(22)のように表現できる。以下、定数加速度ベクトルの推定値uk-1(+)を推定加速度ベクトルという。
【0046】

【0047】
サンプリング時刻tk-1までの観測情報Zk-1に基づく、定数加速度ベクトルの推定値uk-1(-)は、以下の式(23)のように定義すると、以下の式(24)のように表現できる。以下、定数加速度ベクトルの推定値uk-1(-)を予測加速度ベクトルという。
【0048】

【0049】
式(2)に示す観測ベクトルzに関する観測モデルZは、以下の式(25)のように表される。
【0050】

式(25)において、Hは、以下の式(26)に示すように、サンプリング時刻tにおける観測行列である。
は、サンプリング時刻tでの観測ベクトルzに対応する観測雑音ベクトルであり、観測雑音ベクトルは、以下の式(27)に示すように、平均が0の3次元正規分布白色雑音である。
【0051】

式(28)において、Rは、サンプリング時刻tにおける観測雑音共分散行列であって、運動モデルに依らない値である。駆動雑音ベクトルと観測雑音ベクトルとは、互いに独立である。
【0052】
サンプリング時刻tからサンプリング時刻tまでの観測ベクトルの蓄積は、以下の式(29)のように表される。
【0053】

【0054】
カルマンフィルタの理論によれば、式(25)に示す観測モデルに従ってサンプリング時刻tで観測値が得られた場合の状態ベクトルxの推定値X(+)は、以下の式(30)~(38)によって計算される。
【0055】

【0056】

【0057】
Xハットk,a(-)は、サンプリング時刻tk-1までの観測情報Zk-1と運動モデルΨk,aとに基づくXの条件付き平均値である。当該平均値は、サンプリング時刻tk-1までの観測情報Zk-1と運動モデルΨk,aとに基づいてサンプリング時刻tの真値を推定した予測ベクトルに相当する。
Xハットk,a(+)は、サンプリング時刻tまでの観測情報Zと運動モデルΨk,aとに基づくXの条件付き平均値である。当該平均値は、サンプリング時刻tまでの観測情報Zと運動モデルΨk,aとに基づいてサンプリング時刻tの真値を推定した平滑ベクトルに相当する。
Xハット(-)は、サンプリング時刻tk-1までの観測情報Zk-1に基づくXの条件付き平均値である。当該平均値は、サンプリング時刻tk-1までの観測情報Zk-1に基づいてサンプリング時刻tの真値を推定した予測ベクトルに相当する。
Xハット(+)は、サンプリング時刻tまでの観測情報Zに基づくXの条件付き平均値である。当該平均値は、サンプリング時刻tまでの観測情報Zに基づいてサンプリング時刻tの真値を推定した平滑ベクトルに相当する。
明細書の文書中では、電子出願の関係上、文字(Xk,a(-),Xk,a(+),X(-),X(+))の上に“^”の記号を付することができないため、Xハットk,a(-),Xハットk,a(+),Xハット(-),Xハット(+)のように表記している。
【0058】
k,a(-)は、Xハットk,a(-)の誤差共分散行列を示す運動モデル毎の予測誤差共分散行列である。
k,a(+)は、Xハットk,a(+)の誤差共分散行列を示す運動モデル毎の平滑誤差共分散行列である。
(-)は、Xハット(-)の誤差共分散行列を示すN個の運動モデルによる予測誤差共分散行列である。
(+)は、Xハット(+)の誤差共分散行列を示すN個の運動モデルによる平滑誤差共分散行列である。
式(34)に示すKは、サンプリング時刻tにおけるゲイン行列である。また、カルマンフィルタを適用する場合と同様に、初期値X(+)及び初期値P(+)のそれぞれは、別途定まっているものとする。
k,a(-)は、式(31)に示すように、運動モデルΨk,aに依らない値であるため、式(34)に示すK及び式(36)に示すPk,a(+)のそれぞれも、運動モデルΨk,aに依らない値である。
【0059】
次に、図1に示す目標追尾装置の動作について説明する。
図5は、目標追尾装置の処理手順である目標追尾方法を示すフローチャートである。
予測処理部4-n(n=1,・・・,N)は、N個の定数加速度ベクトルα~αのうち、いずれかの定数加速度ベクトルαを有する、式(13)に示すような運動モデルΨk,a(a=1,・・・,N)を備えている。
【0060】
予測処理部4-nは、平滑部2から、位置観測時点における追尾対象の状態の推定値を取得する。
予測処理部4-nは、運動モデルΨk,aを用いて、追尾対象の状態の推定値から、位置観測時点よりも1サンプリング後の追尾対象の状態を予測する(図5のステップST1)。
予測処理部4-nは、追尾対象の状態の予測値を予測値統合部5に出力する。
【0061】
以下、予測処理部4-nによる追尾対象の状態予測処理を具体的に説明する。
予測処理部4-nは、平滑部2から、追尾対象の状態の推定値として、平滑ベクトルXハットk,a(+)又は平滑ベクトルXハット(+)と、平滑誤差共分散行列P(+)とを取得する。
予測処理部4-nは、式(30)に示すxk-1(+)として、平滑ベクトルXハットk,a(+)又は平滑ベクトルXハット(+)を式(30)に代入することで、追尾対象の状態の予測値として、予測ベクトルXハットk,a(-)を算出する。
また、予測処理部4-nは、式(31)に示すPk-1(+)として、平滑誤差共分散行列P(+)を式(31)に代入することで、予測誤差共分散行列Pk,a(-)を算出する。
予測処理部4-nは、予測ベクトルXハットk,a(-)及び予測誤差共分散行列Pk,a(-)のそれぞれを予測値統合部5に出力する。
【0062】
予測値統合部5は、予測処理部4-1~4-Nから、追尾対象の状態の予測値として、N個の予測ベクトルXハットk,a(-)を取得し、N個の予測ベクトルXハットk,a(-)を統合する(図5のステップST2)。
統合後の予測値である予測ベクトルXハット(-)は、式(32)に示すxk-1(+)として、平滑ベクトルXハットk,a(+)又は平滑ベクトルXハット(+)を式(32)に代入することで算出されるものに相当する。
予測値統合部5は、予測ベクトルXハットk,a(-)を平滑部2に出力し、予測ベクトルXハット(-)を追尾ゲート部1及び平滑部2のそれぞれに出力する。
【0063】
また、予測値統合部5は、予測処理部4-1~4-Nから、N個の予測誤差共分散行列Pk,a(-)を取得し、N個の予測誤差共分散行列Pk,a(-)を統合する。
即ち、予測値統合部5は、予測誤差共分散行列Pk,a(-)を式(33)に代入することで、統合後の予測誤差共分散行列P(-)を算出する。
予測値統合部5は、予測誤差共分散行列P(-)を平滑部2に出力する。
【0064】
追尾ゲート部1は、例えば、図示せぬ目標観測装置から、追尾対象の観測位置を示す観測位置情報として、観測ベクトルzを取得する。
また、追尾ゲート部1は、予測値統合部5から、位置観測時点よりも1サンプリング前に予測された予測値として、予測ベクトルXハットk-1(-)を取得する。
追尾ゲート部1は、観測ベクトルzの要素である追尾対象の観測位置(x,y,z)と、予測ベクトルXハットk-1(-)の要素である追尾対象の予測位置との差分を算出する。
追尾ゲート部1は、観測位置と予測位置との差分が閾値以下であれば(図5のステップST3:YESの場合)、観測ベクトルzを平滑部2に出力する(図5のステップST4)。
追尾ゲート部1は、観測位置と予測位置との差分が閾値よりも大きければ(図5のステップST3:NOの場合)、観測ベクトルzを破棄する(図5のステップST5)。
【0065】
平滑部2は、追尾ゲート部1から、観測ベクトルzを取得し、予測値統合部5から、位置観測時点よりも1サンプリング前に予測された予測値として、予測ベクトルXハットk-1(-)を取得する。
平滑部2は、観測ベクトルzと、予測ベクトルXハットk-1(-)とから、追尾対象の状態を推定する(図5のステップST6)。
平滑部2は、追尾対象の状態の推定値として、平滑ベクトルXハットk,a(+)又は平滑ベクトルXハット(+)と、平滑誤差共分散行列P(+)とを外部に出力する。
また、平滑部2は、平滑ベクトルXハットk,a(+)又は平滑ベクトルXハット(+)と、平滑誤差共分散行列P(+)とを予測部3に出力する。
【0066】
以下、平滑部2による追尾対象の状態推定処理を具体的に説明する。
まず、平滑部2は、サンプリング時刻tまでの観測情報Zを式(16)に代入することで、サンプリング時刻tでの運動モデルΨk,aの信頼度μk,a(+)を算出する。
平滑部2は、信頼度μk,a(+)を式(22)に代入することで、推定加速度ベクトルuk-1(+)を算出する。
次に、平滑部2は、予測値統合部5から、予測誤差共分散行列Pk,a(-)を取得する。
平滑部2は、予測誤差共分散行列Pk,a(-)及び観測雑音共分散行列Rのそれぞれを式(34)に代入することで、ゲイン行列Kを算出する。
【0067】
次に、平滑部2は、予測値統合部5から、予測ベクトルXハットk,a(-)及び予測ベクトルXハット(-)のそれぞれを取得する。
平滑部2は、観測情報Z及び予測ベクトルXハットk,a(-)のそれぞれを式(35)に代入することで、平滑ベクトルXハットk,a(+)を算出する。
また、平滑部2は、式(37)に示すxk-1(-)として、予測ベクトルXハット(-)を式(37)に代入し、かつ、推定加速度ベクトルuk-1(+)を式(37)に代入することで、平滑ベクトルXハット(+)を算出する。
【0068】
次に、平滑部2は、予測誤差共分散行列Pk,a(-)及びゲイン行列Kのそれぞれを式(36)に代入することで、平滑誤差共分散行列Pk,a(+)を算出する。
また、平滑部2は、平滑誤差共分散行列Pk,a(+)及びゲイン行列Kのそれぞれを式(38)に代入することで、平滑誤差共分散行列P(+)を算出する。
【0069】
以降、図1に示す目標追尾装置は、追尾対象の追尾を終了するまで、ステップST1~ST6の処理を繰り返し実施する。
【0070】
以上の実施の形態1では、追尾対象の観測位置を示す観測位置情報を取得し、かつ、観測位置が観測された時点である位置観測時点よりも1サンプリング前に予測された、位置観測時点における追尾対象の状態の予測値を取得し、観測位置情報と予測値とから、位置観測時点における追尾対象の状態を推定する平滑部2と、追尾対象の運動モデルとして、追尾対象の機動方向の変化に係る加速度項を含む運動モデルを用いて、平滑部2により推定された状態から、位置観測時点よりも1サンプリング後の追尾対象の状態を予測し、追尾対象の状態の予測値を平滑部2に出力する予測部3とを備えるように、目標追尾装置を構成した。したがって、目標追尾装置は、追尾対象の機動方向を考慮した追尾対象の状態予測を行うことができる。
【0071】
実施の形態2.
実施の形態2では、平滑部6が、観測位置情報と、位置観測時点よりも1サンプリング前に予測された予測値とから、運動モデルに含まれている加速度項を補正する目標追尾装置について説明する。
【0072】
図6は、実施の形態2に係る目標追尾装置を示す構成図である。図6において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図7は、実施の形態2に係る目標追尾装置のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図7において、図2と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図6に示す目標追尾装置は、追尾ゲート部1、平滑部6及び予測部7を備えている。
【0073】
平滑部6は、例えば、図7に示す平滑回路14によって実現される。
平滑部6は、図1に示す平滑部2と同様に、追尾ゲート部1から、観測位置情報を取得し、予測部7から、追尾対象の状態の予測値を取得する。予測値は、観測位置が観測された時点である位置観測時点よりも1サンプリング前に予測された、位置観測時点における追尾対象の状態の予測結果を示すものである。
平滑部6は、図1に示す平滑部2と同様に、観測位置情報と予測値とから、位置観測時点における追尾対象の状態を推定する。
平滑部6は、観測位置情報と予測値とから、運動モデルに含まれている加速度項を補正する
平滑部6は、追尾対象の状態の推定値を外部に出力する。平滑部6は、追尾対象の状態の推定値及び補正後の加速度項のそれぞれを予測部7に出力する。
【0074】
予測部7は、例えば、図7に示す予測回路15によって実現される。
予測部7は、N個の予測処理部4-1~4-Nと、予測値統合部8とを備えている。
予測部7は、平滑部6から、追尾対象の状態の推定値及び補正後の加速度項のそれぞれを取得する。
予測部7は、補正後の加速度項を含む追尾対象の運動モデルを用いて、平滑部6により推定された状態から、位置観測時点よりも1サンプリング後の、追尾対象の状態を予測する。
予測部3は、追尾対象の状態の予測値を追尾ゲート部1及び平滑部6のそれぞれに出力する。
【0075】
予測値統合部8は、予測処理部4-1~4-Nのそれぞれから予測値を取得する。
予測値統合部8は、N個の予測値を統合し、統合後の予測値を追尾ゲート部1及び平滑部6のそれぞれに出力する。
【0076】
図6では、目標追尾装置の構成要素である追尾ゲート部1、平滑部6及び予測部7のそれぞれが、図7に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、目標追尾装置が、追尾ゲート回路11、平滑回路14及び予測回路15によって実現されるものを想定している。
追尾ゲート回路11、平滑回路14及び予測回路15のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0077】
目標追尾装置の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、目標追尾装置が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
目標追尾装置が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、追尾ゲート部1、平滑部6及び予測部7におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図3に示すメモリ31に格納される。そして、図3に示すプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0078】
また、図7では、目標追尾装置の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図3では、目標追尾装置がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、目標追尾装置における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0079】
次に、図6に示す目標追尾装置の動作について説明する。平滑部6及び予測部7以外は、図1に示す目標追尾装置と同様であるため、ここでは、平滑部6及び予測部7の動作のみを説明する。
【0080】
平滑部6は、追尾ゲート部1から、観測位置情報として、観測ベクトルzを取得し、予測値統合部8から、予測ベクトルXハット(-)を取得する。
平滑部6は、以下の式(47)に示すx(-)として、予測ベクトルXハット(-)を式(47)に代入し、観測ベクトルzを式(47)に代入することで、イノベーションベクトルΔを算出する。
【0081】

【0082】
平滑部6は、予測値統合部8から、予測誤差共分散行列Pk-1(-)を取得する。
平滑部6は、以下の式(48)に示すPチルダk-1(-)として、予測誤差共分散行列Pk-1(-)を式(48)に代入し、イノベーションベクトルΔを式(48)に代入することで、予測残差共分散行列Vを算出する。
明細書の文章中では、電子出願の関係上、文字Pk-1(-)の上に“~”の記号を付することができないため、Pチルダk-1(-)のように表記している。
【0083】

【0084】
また、平滑部6は、以下の式(49)に示すPチルダk-1(-)として、予測誤差共分散行列Pk-1(-)を式(49)に代入することで、予測位置誤差共分散行列Mを算出する。
平滑部6は、以下の式(50)に示すように、予測残差共分散行列Vから予測位置誤差共分散行列Mを減算することで、予測残差共分散行列Nを算出する。
【0085】

【0086】
平滑部6は、以下の式(51)に示すように、予測位置誤差共分散行列Mの対角成分であるM(x,y,z)と、予測残差共分散行列Nの対角成分であるN(x,y,z)とから、直交座標系を構成する3軸におけるそれぞれの遅れ量に対応する定数加速度ベクトルuk-1(-)の修正係数λ(x,y,z)を算出する。
【0087】

【0088】
平滑部6は、以下の式(52)に示すように、定数加速度ベクトルuk-1(-)の修正係数λ(x,y,z)を用いて、定数加速度ベクトルuk-1(-)を補正する。u’(-)は、補正後の定数加速度ベクトルである。
【0089】

【0090】
予測部7は、補正後の定数加速度ベクトルu’(-)を含む追尾対象の運動モデルを用いて、平滑部6により推定された状態から追尾対象の状態を予測する。
予測部7の予測値統合部8は、予測処理部4-1~4-Nのそれぞれから、追尾対象の状態の予測値として、N個の予測ベクトルXハットk,a(-)を取得し、N個の予測ベクトルXハットk,a(-)を統合する。
【0091】
即ち、予測値統合部8は、補正後の定数加速度ベクトルu’(-)を以下の式(54)に代入し、式(54)に示すxk-1(+)として、平滑ベクトルXハットk,a(+)又は平滑ベクトルXハット(+)を式(54)に代入することで、統合後の予測値である予測ベクトルXハット(-)を算出する。
また、予測値統合部8は、補正後の定数加速度ベクトルu’(-)を以下の式(55)に代入し、予測処理部4-1~4-Nのそれぞれから出力された予測誤差共分散行列Pk,a(-)を式(55)に代入することで、統合後の予測誤差共分散行列P(-)を算出する。
【0092】

【0093】
以上の実施の形態2では、平滑部6が、観測位置情報と、位置観測時点における追尾対象の状態の予測値とから、運動モデルに含まれている加速度項を補正するように、図6に示す目標追尾装置を構成した。したがって、図6に示す目標追尾装置は、図1に示す目標追尾装置と同様に、追尾対象の機動方向を考慮した追尾対象の状態予測を行うことができるほか、図1に示す目標追尾装置よりも、平滑部2の推定精度を高めることができる。
【0094】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示は、目標追尾装置及び目標追尾方法に適している。
【符号の説明】
【0096】
1 追尾ゲート部、2 平滑部、3 予測部、4-1~4-N 予測処理部、5 予測値統合部、6 平滑部、7 予測部、8 予測値統合部、11 追尾ゲート回路、12 平滑回路、13 予測回路、14 平滑回路、15 予測回路、31 メモリ、32 プロセッサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7