(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】推奨量出力システム、推奨量出力方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/60 20180101AFI20241101BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20241101BHJP
【FI】
G16H20/60
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2024068601
(22)【出願日】2024-04-19
【審査請求日】2024-05-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智也
(72)【発明者】
【氏名】大槻 純也
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-043721(JP,A)
【文献】特開2018-049393(JP,A)
【文献】特開2014-021723(JP,A)
【文献】国際公開第2023/017857(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象ユーザのエクオール産生能の程度を表す指標値と、当該対象ユーザの状態を表す情報とを取得することと、
予め記憶装置に蓄積された、他のユーザのエクオール産生能の程度を表す指標値と、当該他のユーザの状態を表す情報と、当該他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量を表す情報とを含む他のユーザの情報を用いて、前記対象ユーザとエクオール産生能及び状態を表す情報が類似する前記他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量に基づいて、前記対象ユーザが摂取すべきエクオール及び/又はイソフラボンの推奨量を決定する決定処理と、
決定された推奨量を出力することと、
を実行する1以上のコンピュータを含む推奨量出力システム。
【請求項2】
前記指標値は、ユーザが所定期間以上、食事によるイソフラボンの摂取を控え、且つ所定量のイソフラボン含有サプリメントを摂取してから所定時間経過後のエクオール排出量又は血中濃度に応じた値である
請求項1に記載の推奨量出力システム。
【請求項3】
前記状態を表す情報は、更年期障害によって表れ得る症状についてユーザが回答した程度を表す情報である
請求項1又は2に記載の推奨量出力システム。
【請求項4】
前記状態を表す情報は、ユーザの心電図、心拍数、血中酸素濃度、睡眠の質を表す指標、体温、発汗量及び汗の成分の少なくとも何れかを含む
請求項1又は2に記載の推奨量出力システム。
【請求項5】
前記他のユーザの情報は、複数の時点における、前記他のユーザの状態を表す情報と、当該他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量を表す情報とを含み、
前記決定処理は、第1の時点における前記他のユーザの状態を表す情報よりも、前記第1の時点よりも後の第2の時点における前記他のユーザの状態を表す情報が改善した、前記他のユーザの情報を用いて、前記対象ユーザとエクオール産生能及び前記第1の時点における状態を表す情報が類似する、前記他のユーザの前記第1の時点におけるエクオール
及び/又はイソフラボンの摂取量に基づいて、前記対象ユーザが摂取すべきエクオール及び/又はイソフラボンの推奨量を決定する
請求項1又は2に記載の推奨量出力システム。
【請求項6】
出力された推奨量の前記エクオール及び/又はイソフラボンを前記対象ユーザが所定期間摂取しても、当該対象ユーザの状態を表す情報が所定の基準に基づいて改善したと判断されない場合、前記決定処理において前記推奨量を補正する
請求項1又は2に記載の推奨量出力システム。
【請求項7】
対象ユーザのエクオール産生能の程度を表す
指標値と、当該対象ユーザの状態を表す情報とを取得することと、
予め記憶装置に蓄積された、他のユーザのエクオール産生能の程度を表す情報と、当該他のユーザの状態を表す情報と、当該他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量を表す情報とを含む他のユーザの情報を用いて、前記対象ユーザとエクオール産生能及び状態を表す情報が類似する前記他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量に基づいて、前記対象ユーザが摂取すべきエクオール及び/又はイソフラボンの推奨量を決定する決定処理と、
決定された推奨量を出力することと、
を1以上のコンピュータが実行する推奨量出力方法。
【請求項8】
前記指標値は、前記ユーザが所定期間以上、食事によるイソフラボンの摂取を控え、且つ所定量のイソフラボン含有サプリメントを摂取してから所定時間経過後のエクオール排出量又は血中濃度に応じた値である
請求項7に記載の推奨量出力方法。
【請求項9】
対象ユーザのエクオール産生能の程度を表す
指標値と、当該対象ユーザの状態を表す情報とを取得することと、
予め記憶装置に蓄積された、他のユーザのエクオール産生能の程度を表す情報と、当該他のユーザの状態を表す情報と、当該他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量を表す情報とを含む他のユーザの情報を用いて、前記対象ユーザとエクオール産生能及び状態を表す情報が類似する前記他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量に基づいて、前記対象ユーザが摂取すべきエクオール及び/又はイソフラボンの推奨量を決定する決定処理と、
決定された推奨量を出力することと、
を1以上のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
前記指標値は、前記ユーザが所定期間以上、食事によるイソフラボンの摂取を控え、且つ所定量のイソフラボン含有サプリメントを摂取してから所定時間経過後のエクオール排出量又は血中濃度に応じた値である
請求項9に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推奨量出力システム、推奨量出力方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが摂取不足している栄養素を補う食品リストを提案するシステムが提案されていた(例えば特許文献1)。本システムでは、携帯端末から、ユーザの摂取した栄養素の過不足量を商品提案サーバに送信する。商品提案サーバは、受信した栄養素の過不足情報に応じて、各種栄養素を補う商品名を格納した商品データベースを参照して、ユーザが摂取すべき商品に関する情報を携帯端末に返信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イソフラボンから産生されるエクオールの産生能は、腸内環境に依存し、個人によって大きく異なる。しかしながら、エクオールやイソフラボンのサプリメントには、一律の摂取量が記載されることが一般的であり、個別のユーザに適量を提案することは困難であった。本開示は、個別のユーザのエクオール摂取量を改善するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の態様により実現することができる。
(態様1)
対象ユーザのエクオール産生能の程度を表す指標値と、当該対象ユーザの状態を表す情報とを取得することと、
予め記憶装置に蓄積された、他のユーザのエクオール産生能の程度を表す指標値と、当該他のユーザの状態を表す情報と、当該他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量を表す情報とを含む他のユーザの情報を用いて、前記対象ユーザとエクオール産生能及び状態を表す情報が類似する前記他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量に基づいて、前記対象ユーザが摂取すべきエクオール及び/又はイソフラボンの推奨量を決定する決定処理と、
決定された推奨量を出力することと、
を実行する1以上のコンピュータを含む推奨量出力システム。
(態様2)
前記指標値は、前記ユーザが所定期間以上、食事によるイソフラボンの摂取を控え、且つ所定量のイソフラボン含有サプリメントを摂取してから所定時間経過後のエクオール排出量又は血中濃度に応じた値である
態様1に記載の推奨量出力システム。
(態様3)
前記状態を表す情報は、更年期障害によって表れ得る症状についてユーザが回答した程度を表す情報である
態様1又は2に記載の推奨量出力システム。
(態様4)
前記状態を表す情報は、ユーザの心電図、心拍数、血中酸素濃度、睡眠の質を表す指標、体温、発汗量及び汗の成分の少なくとも何れかを含む
態様1から3の何れか一つに記載の推奨量出力システム。
(態様5)
前記他のユーザの情報は、複数の時点における、前記他のユーザの状態を表す情報と、当該他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量を表す情報とを含み、
前記決定処理は、第1の時点における前記他のユーザの状態を表す情報よりも、前記第1の時点よりも後の第2の時点における前記他のユーザの状態を表す情報が改善した、前記他のユーザの情報を用いて、前記対象ユーザとエクオール産生能及び前記第1の時点における状態を表す情報が類似する、前記他のユーザの前記第1の時点におけるエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量に基づいて、前記対象ユーザが摂取すべきエクオール及び/又はイソフラボンの推奨量を決定する
態様1から4の何れか一つに記載の推奨量出力システム。
(態様6)
出力された推奨量の前記エクオール及び/又はイソフラボンを前記対象ユーザが所定期間摂取しても、当該対象ユーザの状態を表す情報が所定の基準に基づいて改善したと判断されない場合、前記決定処理において前記推奨量を補正する
態様1から5の何れか一つに記載の推奨量出力システム。
(態様7)
対象ユーザのエクオール産生能の程度を表す情報と、当該対象ユーザの状態を表す情報とを取得することと、
予め記憶装置に蓄積された、他のユーザのエクオール産生能の程度を表す情報と、当該他のユーザの状態を表す情報と、当該他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量を表す情報とを含む他のユーザの情報を用いて、前記対象ユーザとエクオール産生能及び状態を表す情報が類似する前記他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量に基づいて、前記対象ユーザが摂取すべきエクオール及び/又はイソフラボンの推奨量を決定する決定処理と、
決定された推奨量を出力することと、
を1以上のコンピュータが実行する推奨量出力方法。
(態様8)
前記指標値は、前記ユーザが所定期間以上、食事によるイソフラボンの摂取を控え、且つ所定量のイソフラボン含有サプリメントを摂取してから所定時間経過後のエクオール排出量又は血中濃度に応じた値である
態様7に記載の推奨量出力方法。
(態様9)
対象ユーザのエクオール産生能の程度を表す情報と、当該対象ユーザの状態を表す情報とを取得することと、
予め記憶装置に蓄積された、他のユーザのエクオール産生能の程度を表す情報と、当該他のユーザの状態を表す情報と、当該他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量を表す情報とを含む他のユーザの情報を用いて、前記対象ユーザとエクオール産生能及び状態を表す情報が類似する前記他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量に基づいて、前記対象ユーザが摂取すべきエクオール及び/又はイソフラボンの推奨量を決定する決定処理と、
決定された推奨量を出力することと、
を1以上のコンピュータに実行させるためのプログラム。
(態様10)
前記指標値は、前記ユーザが所定期間以上、食事によるイソフラボンの摂取を控え、且つ所定量のイソフラボン含有サプリメントを摂取してから所定時間経過後のエクオール排出量又は血中濃度に応じた値である
態様9に記載のプログラム。
【0006】
なお、課題を解決するための手段の内容は、コンピュータ等の装置若しくは複数の装置
を含むシステム、1以上のコンピュータが実行する方法、又は1以上のコンピュータに実行させるプログラムとして提供することができる。なお、プログラムを保持する記録媒体を提供するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、個別のユーザのエクオール摂取量を改善するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るシステムの一例を表す図である。
【
図2】
図2は、イソフラボンの摂取量とエクオールの産生量との関係を説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る学習処理を説明するための処理フロー図である。
【
図4】
図4は、データの収集及び前処理の詳細を説明するための処理フロー図である。
【
図5】
図5は、記憶装置に蓄積されるデータの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、推奨量出力処理の一例を表す処理フロー図である。
【
図7】
図7は、第1の変形例において記憶装置に記憶されるデータの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の変形例において記憶装置に記憶されるデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係るシステムの一例を表す図である。システム100は、サーバ1と、端末2(2A、2B、2C)とを含む。サーバ1は、ユーザのエクオール産生能、例えば更年期障害に関する自覚症状等のようなユーザの状態に関する情報、並びにイソフラボン及びエクオールの少なくとも何れかの摂取量の関係を学習するとともに、学習結果に基づいてユーザに対し摂取すべき成分(すなわち、イソフラボン及びエクオールの少なくとも何れか)を推奨する処理を行う。なお、学習処理と推奨処理とは異なる装置が実行してもよい。端末2は、例えば、摂取すべき成分の提案を受ける対象のユーザが所持するコンピュータである。サーバ1は、端末2を介して、ユーザの排泄物中のエクオール量(以下、「エクオール排出量」とする)等や、ユーザの状態に関する情報を収集したり、端末2へ、摂取すべき成分の推奨量を出力したりする。なお、端末2は、例えばユーザのエクオール排出量を測定する検査機関等のコンピュータを含んでいてもよい。また、サーバ1と端末2とは、ネットワーク3を介して通信可能に接続されている。ネットワーク3は、例えばIP(Internet Protocol)ネットワークを含み、ネットワーク3に接続された
装置は所定の通信プロトコルに基づいて通信を行うことができる。ネットワーク3の一部は、電話網(固定電話網又は移動体通信網)、アドホック・ネットワーク(ad hoc network)、イントラネット、VPN(Virtual Private Network)、LAN(Local Area Network)、無線LAN(Wireless LAN)、WAN(Wide Area Network)、インターネットであってもよい。
【0011】
なお、本開示におけるイソフラボンとは、エクオール産生能を有する個人の腸内において、エクオールに変換される、イソフラボン(3-フェニルクロモン)を基本骨格とするフラボノイドを含むものである。このようなフラボノイドとしては、例えば、ダイゼイン等が挙げられる。ダイゼインは、エクオール産生能を有する個人の腸内において、エクオールに変換されるものである。また、本開示におけるイソフラボンは、ゲニステイン、グ
リシテイン等をさらに含んでよい。また、本開示におけるイソフラボンとしては、例えば、大豆イソフラボン、葛イソフラボン等が挙げられる。
【0012】
サーバ1は、コンピュータであり、プロセッサ11と、記憶装置12と、通信インターフェース(IF)13とを含む。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit
)等の演算処理装置であり、プログラムを実行することにより本実施形態に係る各処理を行う。記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の主記憶装置、及びHDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置(二次記憶装置)である。主記憶装置は、プロセッサ11が読み出したプログラムを一時的に記憶したり、プロセッサ11の作業領域を確保したりする。補助記憶装置は、プロセッサ11が実行するプログラムやその他のデータを記憶する。通信IF13は、ネットワーク3を介して通信を行うためのネットワークモジュールであり、所定のプロトコルに基づいてデータを送受信する。
【0013】
端末2は、タブレットやスマートフォン、PC(Personal Computer)、ウェアラブル
端末等のコンピュータである。端末2は、プロセッサ、記憶装置、通信IFの他、ユーザに対して情報の入出力を行うための入出力インターフェース(IF)を備える。
【0014】
本実施形態においては、ユーザ毎のエクオールの産生能を測定しておき、摂取すべき成分及び推奨量を産生能に応じて決定する。具体的には、予め個々のユーザが、所定期間、食事によるイソフラボンの摂取を控え、且つ所定量のイソフラボン含有サプリメントを摂取した後のエクオール排出量等を測定するものとする。なお、食事によるイソフラボンの摂取とは、イソフラボン含有食品を料理として摂取することを含む。サプリメントとは、所定の成分を含有する製品であり、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の剤形に加工されたもののほか、所定の成分の含有量が定まっている保健機能食品その他の健康食品を含むものとする。エクオールは、イソフラボンから腸内細菌(エクオール産生菌)により産生される。すなわち、個人の腸内環境に応じて、エクオール産生能には差が生じる。また、エクオール産生能の程度は、尿検査及び便検査の少なくとも何れかで測定できるエクオール排出量、並びに血液検査で測定できるエクオールの血中濃度の少なくとも何れかに基づいて知ることができる。なお、検汗(発汗量若しくは汗の成分、又はこれらの組合せに関する検査)や心拍数の変化などにより、エクオールの産生能を類推してもよい。
図2は、イソフラボンの摂取量とエクオールの産生量との関係を説明するための図である。
図2のグラフは、横軸がイソフラボンの摂取量を示し、縦軸がエクオールの産生量を示す。
図2のグラフには、所定量のイソフラボン含有サプリメントを摂取した場合のエクオールの産生量の模式的な例を丸印でプロットしている。エクオールの産生能が高いユーザほどエクオール産生量は大きく、産生能が低いユーザほどエクオール産生量は小さい。また、エクオール産生量は、イソフラボンの摂取量に比例して大きくなる。また、エクオール産生量は、ユーザの尿や便におけるエクオールの排出量の大きさに表れると解される。予めエクオールの排出量を測定しておくことで、個々のユーザのエクオール産生能の程度を把握することができる。なお、一般的に、エクオールは、イソフラボン含有食品の摂取後、8時間程度で血中濃度に表れ、12から24時間程度で血中濃度が最大となり、72時間程度で体外に排出される。よって、血液検査、検尿及び検便は、それぞれ、ユーザがサプリメント等を摂取してから所定時間以上経過した後、且つそれよりも長い所定時間以内に行うことが好ましい。すなわち、エクオールの血中濃度及び排出量を測定すべき期間は、例えば血中濃度が最大となることが期待されるタイミングを基準として適宜定めることができる。
【0015】
また、本実施形態においては、複数のユーザから、例えば更年期障害により表れ得る症状の程度等、ユーザの状態に関する情報、及び自身が食品及びサプリメントの少なくとも何れかにより摂取している成分(すなわち、イソフラボン及びエクオールの少なくとも何
れか)及び摂取量に関する情報を収集し、状態が類似するユーザが摂取している成分及び摂取量に基づいて推奨処理を行う。なお、上述した成分は、一般的に、イソフラボン含有食品、イソフラボン含有サプリメント、及びエクオール含有サプリメントの少なくとも何れかにより摂取することができる。ユーザの状態に関する情報は、例えば、肩こり、疲れやすさ、頭痛、のぼせ、腰痛、発汗、不眠、いら立ち、皮膚の掻痒感、動悸、気分の落ち込み、めまい、胃もたれ、膣乾燥感等のような、更年期障害により表れ得る症状の少なくとも何れかについて、例えば症状の程度を段階的な評価値で表す情報を含む。ユーザの状態に関する情報や、摂取している成分及びその摂取量は、例えばアンケートに対する回答としてユーザから収集してもよい。また、推奨処理においては、例えばユーザーベースの協調フィルタリングを行う。すなわち、対象のユーザと症状の傾向が類似するユーザが摂取している成分及び摂取量を特定し、特定された成分及び摂取量に基づいて対象のユーザへ推奨する成分及び推奨量を決定する。なお、推奨処理の手法は特に限定されず、症状の傾向と摂取している成分及び摂取量との関係を事前にモデル化してモデルベースの協調フィルタリングを行うようにしてもよいし、症状の傾向を説明変数とし、摂取している成分及び摂取量を目的変数として両者の関係を深層学習によりモデル化して、対象のユーザの症状に基づいて推奨量を決定するモデルに基づく推奨処理を行うようにしてもよい。なお、アンケートに回答するユーザのエクオール産生能がわかっている場合は、イソフラボン含有食品の摂取量やイソフラボン含有サプリメントの摂取量をエクオール産生量に換算し、目的変数をエクオールの摂取量に統一してもよい。また、症状の傾向と摂取量との関係に基づくルールを予め作成しておき、ルールベースの推奨処理を行うようにしてもよい。
【0016】
また、エクオール産生能が同程度のユーザのイソフラボン等の摂取量に基づいて推奨処理を行うことが好ましい。すなわち、エクオール産生能には個人差があり、産生能に応じてイソフラボン等の好ましい摂取量も変わる。よって、本実施形態では、エクオール産生能が同程度のユーザ毎に、症状の類似性に基づく推奨処理を行う。
【0017】
<学習処理>
図3は、実施形態に係る学習処理を説明するための処理フロー図である。学習処理においては、サーバ1は、ユーザ毎のエクオール産生能を表す指標値と、ユーザの状態に関する情報とを収集し、前処理を行う(
図3:S1)。
図4は、データの収集及び前処理の詳細を説明するための処理フロー図である。サーバ1のプロセッサ11は、未処理のデータを1件取得する(
図4:S11)。
【0018】
図5は、記憶装置12に蓄積されるデータの一例を示す図である。なお、本実施形態に示すテーブルはデータベースの一例であり、適宜、正規化して複数のテーブルに情報を分けて記憶させたり、非正規化して1つのテーブルに情報をまとめて記憶させたりしてもよい。
図5のテーブルは、「ユーザID」、「産生能」、「状態」、「摂取量」の各属性を含む。「ユーザID」のフィールドには、ユーザを一意に特定するための識別情報が登録される。「産生能」のフィールドには、当該ユーザのエクオール産生能の程度を表す指標値が登録される。指標値は、予めユーザが測定した、エクオール排出量の測定値に応じた値であってもよいし、測定値そのものであってもよい。また、指標値は、例えば、イソフラボンの摂取量(mg)に対するエクオールの排出量(mg)の割合として算出してもよい。「状態」は、「肩こり」、「疲れ易い」、・・・、「腰痛」、「発汗」、「不眠」等の症状を表す属性を含む。また、「状態」の各フィールドには、例えば状態が悪いことを示す「1」から状態が良いことを示す「5」までの5段階評価によってユーザ自身が回答した値が登録される。「摂取量」のフィールドには、ユーザが日常的に摂取しているイソフラボンの量、又はイソフラボンから産生されるエクオールの量の換算値が登録される。例えば、アンケートに対し、1日あたり納豆1パック及び豆乳1杯(200g)を摂取する旨を回答した場合、あらかじめ定められた食品とイソフラボンとの換算式に基づいて、1日あたりのイソフラボン摂取量に換算された値が「摂取量」のフィールドに登録される
。
図4のS11においては、プロセッサ11は、例えば
図5に示した1つのレコードに相当するデータを取得する。
【0019】
S11の後、プロセッサ11は、取得したデータが示すユーザがエクオールの産生能を有するか判断する(
図4:S12)。本ステップでは、取得したデータのうち産生能の指標値が、予め定められた閾値以上であるか判断する。なお、産生能の有無を判定するための閾値として、例えば0に近い所定の値が記憶されているものとする。産生能の指標値が閾値未満である場合は、産生能がないと判断され(S11:NO)、プロセッサ11は、当該データを第1の学習データ(学習データ1とも呼ぶ)に分類する(
図4:S13)。例えば、
図5のユーザ1は産生能が0であり、当該レコードは学習データ1に分類される。
【0020】
一方、産生能の指標値が閾値以上である場合は、産生能があると判断され(S11:YES)、プロセッサ11は、ユーザの産生能が所定の基準以上であるか判断する(
図4:S14)。なお、所定の基準として、S12の閾値よりも大きい第2の閾値が予め設定されているものとする。例えば、予め所定の基準が0.2と定められている。産生能の指標値が所定の基準に満たない場合(S14:NO)、プロセッサ11は、当該データを第2の学習データ(学習データ2とも呼ぶ)に分類する(
図4:S15)。
図5のユーザ2は産生能が基準よりも低い0.1であり、当該レコードは学習データ2に分類される。
【0021】
一方、産生能の指標値が所定の基準以上である場合(S14:YES)、プロセッサ11は、当該データを第3の学習データ(学習データ3とも呼ぶ)に分類する(
図4:S16)。
図5のユーザ3は産生能が基準以上の0.3であり、当該レコードは学習データ3に分類される。
【0022】
そして、S13、S15又はS16の後、プロセッサ11は、前処理を終了するか判断する(
図4:S17)。例えば
図5に示したレコードをすべて処理した場合、プロセッサ11は処理を終了すると判断し(S17:YES)、
図3の処理に戻る。一方、未処理のレコードが存在する場合、プロセッサ11は処理を終了しないと判断し(S17:NO)、S11へ戻って
図4の処理を繰り返す。
【0023】
以上のような前処理により、産生能が同程度のユーザ毎に学習データを分類することができる。なお、分類する際のグループの数は3には限定されない。
【0024】
図3のS1の後、プロセッサ11は、分類されたデータ毎にモデル構築を行う(
図3:S2)。本ステップでは、モデルベースの協調フィルタリングや深層学習による推奨処理を行う場合にモデル作成を行う。なお、例えばユーザーベースの協調フィルタリングを行う場合には、S2は省略してもよい。
【0025】
<推奨量出力処理>
図6は、推奨量出力処理の一例を表す処理フロー図である。推奨量出力処理は、例えば定期的に、又はユーザの操作によって端末2から要求を受けた場合に開始される。
【0026】
サーバ1のプロセッサ11は、推奨量を提案する対象のユーザについて、産生能の指標値及びユーザの状態に関する情報(たとえば症状に関する情報)を取得する(
図6:S21)。これらの情報は、例えばユーザに対するアンケートへの回答として端末2から受信してもよい。
【0027】
S21の後、プロセッサ11は、対象のユーザについて、所定の基準値以上の産生能があるか判断する(
図6:S22)。本ステップは、
図4のS12と同様の判断を行う。す
なわち、プロセッサ11は、対象のユーザの識別情報に対応付けて記憶されている指標値が、予め定められた閾値以上であるか判断する。指標値が閾値未満である場合は、産生能がないと判断され(S22:NO)、予め定められた目標量に相当するエクオール含有サプリメントを推奨する旨の情報が、ユーザの端末2へ送信される(
図6:S23)。エクオール産生能が基準よりも低いユーザに対しては、推奨量出力処理において、S23の処理が繰り返し行われる。
【0028】
一方、指標値が閾値以上である場合は、産生能があると判断され(S22:YES)、プロセッサ11は、対象のユーザについて、ユーザの状態に関する情報が類似する他のユーザの摂取量に基づく推奨量を決定する(
図6:S24)。本ステップでは、例えば
図3のS2において作成されたモデルを用いて対象のユーザが摂取すべき成分及び推奨量を決定する。すなわち、対象のユーザとエクオール産生能及び状態を表す情報が類似する他のユーザが摂取している成分及び摂取量に基づいて、対象のユーザが摂取すべき成分の推奨量を決定する。なお、ユーザーベースの協調フィルタリングを行う場合は、学習済のモデルを使用せず、対象のユーザとエクオール産生能及び状態を表す情報が類似する他のユーザを
図5に示したようなテーブルから抽出し、抽出されたユーザが摂取している成分及び摂取量に基づいて摂取すべき成分及び推奨量を決定する。なお、複数のユーザが抽出される場合は、抽出されたユーザの摂取量の平均値のような統計量に基づいて推奨量を決定してもよい。
【0029】
S24の後、プロセッサ11は、イソフラボン含有食品、イソフラボン含有サプリメント、及びエクオール含有サプリメントの少なくとも何れかをユーザに提案する(
図6:S25)。推奨される摂取態様は、(1)エクオール含有サプリメントのみ、(2)イソフラボン含有サプリメントのみ、(3)イソフラボン含有食品のみ、(4)エクオール含有サプリメント及びイソフラボン含有サプリメント、(5)エクオール含有サプリメント及びイソフラボン含有食品、(6)イソフラボン含有サプリメント及びイソフラボン含有食品、(7)エクオール含有サプリメント、イソフラボン含有サプリメント及びイソフラボン含有食品、少なくとも何れかを含む。プロセッサ11は、S24で決定された、摂取すべき成分及び推奨量を提案する旨の情報を、ネットワークIF13及びネットワーク3を介して、ユーザの端末2へ送信する。
【0030】
<効果>
以上の実施形態によれば、個々のユーザについて、他のユーザとの産生能及び状態の類似性に基づいて摂取量の提案ができる。したがって、個別のユーザのエクオール摂取量を改善できるようになる。
【0031】
<変形例1>
次に、第1の変形例について上述した実施形態との相違点を中心に説明する。本変形例では、ユーザがスマートウォッチや活動量計などのウェアラブル端末である端末2を所持し、ウェアラブル端末から得られるデータを、ユーザの状態を表す情報として用いる。ウェアラブル端末は、生体センサを備え、ユーザの心電図、心拍数、血中酸素濃度、睡眠の質に関する情報、体温(皮膚温度)、発汗量、汗の成分等の少なくとも何れかを含むバイタルデータを出力する。バイタルデータは、エクオールによる改善が期待できる、更年期障害の影響が表れるデータであることが好ましい。また、所定時間安静にした後等、ユーザがバイタルデータを測定する際の条件をできるだけ統一することが望ましい。
【0032】
バイタルデータは、ウェアラブル端末から得られるデータそのものを用いるようにしてもよいし、例えば体調の良し悪しを表す5段階評価として例えばユーザが入力するようにしてもよい。
図7は、本変形例において記憶装置12に記憶されるデータの一例を示す図である。
図7のテーブルは、「状態」として「心電図」、「心拍数」、・・・、「睡眠の
質」、「体温」、「発汗量」の各属性を含む。また、「状態」の各フィールドには、例えば状態が悪いことを示す「1」から状態が良いことを示す「5」までの5段階評価によってユーザ自身が入力した値、又はバイタルデータから自動的に変換された値が登録される。なお、「状態」の各フィールドには、バイタルデータそのものを登録してもよい。
【0033】
そして、上述した実施形態においてアンケート等により収集した症状の程度に関する情報に代えて、又は症状の程度に関する情報に加えて、変形例に係るバイタルデータを用いることにより、対象のユーザとエクオール産生能及び状態を表す情報が類似する他のユーザが摂取している成分及び摂取量に基づいて、対象のユーザが摂取すべき成分及び推奨量を決定する。このようにしても、個々のユーザについて、他のユーザとの産生能及び状態の類似性に基づいて摂取すべき成分及び摂取量の提案ができる。なお、バイタルデータそのものを利用すれば、ユーザにとってアンケートへの回答の煩わしさを低減させることができる。
【0034】
<変形例2>
次に、第2の変形例について上述した実施形態との相違点を中心に説明する。本変形例では、記憶装置12に、複数の時点における他のユーザの状態及び摂取量を蓄積しておき、状態が改善した他のユーザが、改善前に摂取していた成分及び摂取量に基づいて推奨処理を行う。
【0035】
図8は、本変形例において記憶装置12に記憶されるデータの一例を示す図である。ユーザ4は、3月20日の状態よりも5月25日の状態の方が総じて評価が高くなっている。一方、ユーザ5は、4月10の状態と8月12日の状態とで全体としては評価が改善したとはいえない。なお、評価が改善したか否かは、あらかじめ定められた任意の判断基準に基づいて判断することができる。サーバ1のプロセッサ11は、例えば各状態の評価について増減の平均に基づいて評価が改善したか否かを判断したり、さらに所定の基準以上低下した値がないこと等の条件を設けて判断をしたりすることができる。本変形例においては、例えばユーザ4のように状態が改善したユーザが、改善前に摂取していた成分及び摂取量に基づいて推奨処理を行う。
【0036】
すなわち、
図4の処理においては、産生能の大きさだけでなく、状態が改善したと判断されたユーザのデータを学習データに分類する。また、
図6の処理においては、状態が改善したと判断された他のユーザの、改善前の時点において摂取していた成分及び摂取量に基づいて、対象のユーザが摂取すべき成分及び推奨量を決定する。
【0037】
本変形例によれば、状態が改善した実績のあるユーザとの産生能及び状態の類似性に基づいて摂取量の提案ができる。したがって、改善がより期待できる成分及び推奨量を提案できるようになる。なお、第1の変形例と第2の変形例とを組み合わせて、バイタルデータの評価が改善したユーザとの産生能及び状態の類似性に基づいて摂取量の提案をしてもよい。
【0038】
<変形例3>
対象のユーザが推奨量の摂取すべき成分を所定期間摂取しても状態が改善されない場合、
図3のS2で作成したモデルを修正したり、決定される推奨量を補正するための係数を調整したりして、
図6のS25で提案する推奨量を変更してもよい。例えば補正するための係数を用いる場合は、
図6のS25においては決定された推奨量にさらに当該係数を乗じて、出力する推奨量を算出する。また、例えば、推奨量を増減させた後、さらに所定期間後に状態が改善したか否かに応じて推奨量の変更を繰り返すようにしてもよい。
【0039】
<その他>
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0040】
サーバ1の機能の少なくとも一部は、複数の装置に分散して実現するようにしてもよいし、同一の機能を複数の装置が並列に提供するようにしてもよい。
【0041】
また、本開示は、上述した処理を実行する方法やコンピュータプログラム、当該プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む。当該プログラムが記録された記録媒体は、プログラムをコンピュータに実行させることにより、上述の処理が可能となる。
【0042】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としては、HDDやSSD(Solid State Drive)、ROM等がある。
【符号の説明】
【0043】
100:システム
1:サーバ、11:プロセッサ、12:記憶装置、13:通信IF
2:端末
3:ネットワーク
【要約】
【課題】個別のユーザのエクオール摂取量を改善するための技術を提供する。
【解決手段】推奨量出力システムは、対象ユーザのエクオール産生能の程度を表す指標値と、当該対象ユーザの状態を表す情報とを取得することと、予め記憶装置に蓄積された、他のユーザのエクオール産生能の程度を表す指標値と、当該他のユーザの状態を表す情報と、当該他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量を表す情報とを含む他のユーザの情報を用いて、対象ユーザとエクオール産生能及び状態を表す情報が類似する他のユーザのエクオール及び/又はイソフラボンの摂取量に基づいて、対象ユーザが摂取すべきエクオール及び/又はイソフラボンの推奨量を決定する決定処理と、決定された推奨量を出力することとを実行する1以上のコンピュータを含む。
【選択図】
図6