(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/77 20180101AFI20241101BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20241101BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20241101BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20241101BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
F24F11/77
F24F11/74
F24F11/64
F24F7/007 B
F24F7/06 101Z
(21)【出願番号】P 2024507380
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012501
(87)【国際公開番号】W WO2023175874
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】浦辺 優人
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134343(JP,A)
【文献】特開2005-337634(JP,A)
【文献】特開2005-048975(JP,A)
【文献】特開平05-312377(JP,A)
【文献】特開2013-164191(JP,A)
【文献】特開2015-117879(JP,A)
【文献】特開2005-188804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F24F 7/007
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間から空気を吸い込む吸込口と、送風機と、熱交換器と、前記空調対象空間へ空気を吹出す吹出口とを備える空気調和機であって、
前記空気調和機の操作系統とは異なる操作系統により独立して制御が行われる換気装置とダクトを介して接続するための換気用ダクト孔と、
前記空気調和機の操作系統による制御に応じて前記送風機を制御するとともに、前記換気装置が前記換気用ダクト孔に前記ダクトを介して接続されている状態において、前記送風機の制御状態に基づいて前記換気装置の運転状態を判定する制御部と、
を備える空気調和機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記送風機の回転数が所望の回転数になるように前記送風機を駆動するための電圧を制御する電圧制御部と、
前記電圧制御部が制御する前記電圧で駆動された前記送風機の回転数を検出する回転数検出部と、
前記送風機の回転数と前記電圧との相関関係に基づく第1情報が記憶された記憶部と、
前記電圧制御部の制御による前記電圧と前記回転数検出部により検出された前記送風機の回転数と前記第1情報とに基づいて、前記換気装置の運転状態を判定する運転状態判定部と、
を備える請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記第1情報には、前記送風機の回転数に対する前記電圧の閾値を示す電圧閾値の情報が含まれており、
前記運転状態判定部は、
前記電圧制御部の制御による前記電圧と前記電圧閾値とを前記送風機の回転数が同一の条件で比較した結果に基づいて、前記換気装置の運転状態を判定する、
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、
前記送風機に流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記送風機の回転数と前記電流値との相関関係に基づく第2情報が記憶された記憶部と、
前記電流検出部により検出された前記電流値と前記送風機の回転数と前記第2情報とに基づいて、前記換気装置の運転状態を判定する運転状態判定部と、
を備える請求項1に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記第2情報には、前記送風機の回転数に対する前記電流値の閾値を示す電流閾値の情報が含まれており、
前記運転状態判定部は、
前記電流検出部により検出された前記電流値と前記電流閾値とを前記送風機の回転数が同一の条件で比較した結果に基づいて、前記換気装置の運転状態を判定する、
請求項4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記空気調和機の操作系統には、前記空気調和機の運転の指令及び設定を行うリモートコントローラが含まれ、
前記制御部は、
判定した前記換気装置の運転状態に基づく情報を前記リモートコントローラへ出力する出力制御部、
を備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項7】
無線通信を用いて端末装置と通信可能な通信部を備え、
前記制御部は、
判定した前記換気装置の運転状態に基づく情報を、前記通信部を介して前記端末装置へ出力する出力制御部、
を備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記出力制御部は、
前記換気装置の運転状態に基づく情報として、前記換気装置の運転状態に基づく適切な操作内容をユーザに提示する情報を出力する、
請求項6または請求項7に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室など湿気がたまりやすい空間を空調する際に、空気調和機に加えて換気装置が必要な場合がある。そのような環境に対応するために、換気装置を備える空気調和機がある。例えば、換気装置を備える空気調和機において、換気用ファンの駆動時に、空調用ファンを換気用ファンに関連させて駆動制御することによって、空調性能の変動を防止するように制御する空気調和機が開示されている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように空気調和機が換気装置を備える構成では、空気調和機が大型になるため、施工性の悪化、施工先の限定、また、空気調和機に備えられている換気装置の能力によって排気経路(形状、長さ、圧損)に制限がある。例えば、別々の製品の空気調和機と換気装置とを使用すれば、空気調和機と換気装置とのそれぞれが大型化することはなく設置する場所の自由度も上がるため、施工性への影響を抑えられる。しかしながら、別々の製品の空気調和機と換気装置とを使用する場合には、各々が異なる操作系統により独立して制御が行われるため、空気調和機から換気装置の運転状態を判別することができないという課題がある。
【0005】
本開示は、上記した事情に鑑みてなされたもので、空気調和機の操作系統とは異なる操作系統により独立して制御が行われる換気装置の運転状態を容易に判別できる空気調和機を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る空気調和機は、空調対象空間から空気を吸い込む吸込口と、送風機と、熱交換器と、前記空調対象空間へ空気を吹出す吹出口とを備える空気調和機であって、前記空気調和機の操作系統とは異なる操作系統により独立して制御が行われる換気装置とダクトを介して接続するための換気用ダクト孔と、前記空気調和機の操作系統による制御に応じて前記送風機を制御するとともに、前記換気装置が前記換気用ダクト孔に前記ダクトを介して接続されている状態において、前記送風機の制御状態に基づいて前記換気装置の運転状態を判定する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、空気調和機の操作系統とは異なる操作系統により独立して制御が行われる換気装置の運転状態を容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る空調システムの一例を示すシステム図。
【
図2】第1の実施形態に係る室内機の外観の一例を示す斜視図。
【
図3】第1の実施形態に係る室内機のキャビネット内部の構成例を示す斜視図。
【
図4】第1の実施形態に係る室内機の内部構成の一例を示す断面図。
【
図5】第1の実施形態に係るファンモータの構造の一例を示す断面図。
【
図6】第1の実施形態に係る換気装置の外観の一例を示す斜視図。
【
図7】第1の実施形態に係る換気装置の内部構成の一例を示す断面図。
【
図8】第1の実施形態に係る空調制御部及びファンモータ駆動部の構成の一例を示すブロック図。
【
図9】第1の実施形態に係る遠心ファンの場合の速度指令電圧と回転数との相関関係を示す図。
【
図10】第1の実施形態に係る軸流ファンの場合の速度指令電圧と回転数との相関関係を示す図。
【
図11】第1の実施形態に係る換気装置の運転状態に基づく情報の出力に関する構成例を示す図。
【
図12】第1の実施形態に係る運転状態判定処理の一例を示すフローチャート。
【
図13】第2の実施形態に係る空調制御部およびファンモータ駆動部の構成の一例を示すブロック図。
【
図14】第2の実施形態に係る遠心ファンの場合の電流値と回転数との相関関係を示す図。
【
図15】第2の実施形態に係る軸流ファンの場合の電流値と回転数との相関関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る空調システムの一例を示すシステム図である。
図示する空調システムSYSは、空気調和機1と、換気装置40とを備えている。
【0011】
空気調和機1は、室内機10と、室外機20と、室内機10と室外機20とを接続する液延長配管2およびガス延長配管3と、リモコン30とを備えている。
【0012】
室内機10は、空調対象空間である建物内の閉空間(以下「室内」と称す)などに設置されている。室内機10は、冷凍サイクルの一部を実行する室内熱交換器(不図示)などを備えている。室外機20は、室外に設置されており、冷凍サイクルの一部を実行する圧縮機、室外熱交換器および膨張弁(何れも不図示)などを備えている。そして、室外機20の圧縮機、室外熱交換器、膨張弁および室内機10の室内熱交換器は、冷媒を循環することができるように冷媒配管(液延長配管2、ガス延長配管3および図示しない配管)によって連通されている。
【0013】
また、室内機10には室内の空気を室外に排気するための換気ダクト6の一端が接続され、換気ダクト6の他端は換気装置40に接続されている。換気装置40には一端が室外へと配管されている換気ダクト7の他端がさらに接続されている。室内機10から排出された空気は、換気ダクト6、換気装置40および換気ダクト7を通って室外へ排気される。
【0014】
リモコン30は、空気調和機1の冷房運転または暖房運転などのON・OFF(運転開始・停止)、運転時の温度設定などについてのユーザの操作を受け付けるリモートコントローラである。リモコン30は、有線の信号線4で、室内機10に接続されている。リモコン30は、リモコン30に対するユーザの操作に基づく操作信号を出力する。リモコン30から出力された操作信号は、信号線4を介して室内機10に備えられている空調制御部150へ送信される。空調制御部150は、空気調和機1の各部を制御するための電子部品および回路を含む基板により構成されている。
【0015】
リモコン50は、換気装置40の運転のON・OFF(運転開始・停止)、運転時の風量設定などについてのユーザの操作を受け付けるリモートコントローラである。リモコン50は、有線の信号線5で、換気装置40に接続されている。リモコン50は、リモコン50に対するユーザの操作に基づく操作信号を出力する。リモコン50から出力された操作信号は、信号線5を介して換気装置40の換気装置制御部450へ送信される。換気装置制御部450は、換気装置40の各部を制御するための電子部品および回路を含む基板により構成されている。
【0016】
このように、空気調和機1の操作系統(リモコン30から信号線4を介して室内機10へ操作信号が送られる操作系統)と、換気装置40の操作系統(リモコン50から信号線5を介して換気装置40へ操作信号が送られる操作系統)とは、異なる操作系統である。空気調和機1は、空気調和機1の操作系統により独立して制御が行われる。換気装置40は、換気装置40の操作系統により独立して制御が行われる。つまり、空気調和機1と換気装置40とは、換気ダクト6によって室内機10と換気装置40とが接続されているが電気的には接続されておらず、別々のリモコンの操作によって別々に制御が行われる。
【0017】
なお、換気装置40は、換気対象の室内の体積により仕様が選定される。また、仕様の選定の際には空気調和機1の圧力損失、各建物によって異なる換気ダクトのダクト圧損を加味して仕様の選定がなされる。各建物によって換気ダクトの経路、長さが異なるため、各建物によって適した換気装置40の仕様が選定される。
【0018】
(室内機の構成)
次に、
図2~
図4を参照して、室内機10の構成について詳しく説明する。
図2は、本実施形態に係る室内機の外観の一例を示す斜視図である。室内機10は、室内(天井)に設置された状態で下面となる側が開口した略直方体の箱体(断面正方形の底付き筐体)のキャビネット11と、キャビネット11の開口側(下面)を覆う矩形状の化粧パネル12とを備えている。化粧パネル12には、吸込口13(開口部)と、吹出口14が形成されている。キャビネット11には、換気ダクト6が接続される換気用ダクト孔15が設けられている。
【0019】
図3は、本実施形態に係る室内機のキャビネット内部の構成例を示す斜視図である。なお、この
図3は、
図2から化粧パネル12を取り外した状態であり、また、化粧パネル12が取り付く側が図示の上側である。また、
図4は、本実施形態に係る室内機の内部構成の一例を示す断面図である。
【0020】
キャビネット11の送風機室16側には送風機110が設置されている。送風機110は、ファンモータ111、ファン112,113、ファンケーシング114を含んで構成される。ファンモータ111は、ファン112,113を回転させるためのモータである。ファンモータ111の回転軸にファン112,113が取り付けられている。
図3に示す例では、シロッコタイプの2個のファン112,113が、両軸のファンモータ111の両側に設置されている例を示している。なお、図示する送風機110の構成は一例であって、ファンの種類、ファンの個数、ファンモータの個数などは、室内機10(ユニット)のサイズ、コスト、空気調和機1に要求される能力によって設定される。
【0021】
送風機110の風の吹出し側には、室内熱交換器120が配置されている。配管部品125には、室内熱交換器120に接続する冷媒配管などが設けられている。室内熱交換器120の下流側(送風機110からの風の下流側)に風路17が構成され、室内熱交換器120において熱交換された空気と室内機10の外側とを断熱するインナーカバーが、室内熱交換器120を囲むようにキャビネット11の天面および側面の内側に配置されている。また、室内熱交換器120の下部(化粧パネル12側)には、熱交換の際に発生する凝縮水を受けると共に、風路17を構成する要素の一つとなるドレンパン19が配置されている。ドレンパン19の下部には化粧パネル12が取り付けられている。
【0022】
化粧パネル12において、キャビネット11の送風機室16に連通する吸込口13(開口部)には、室内機10の内部に塵埃等が侵入するのを防止するフィルタ121が設けられている。フィルタ121は、吸込口13に設けられているグリル131、または化粧パネル自体によって支持されている。グリル131は、目隠しとして機能する網目構造を有する。また、化粧パネル12に形成された吹出口14は、インナーカバー18およびドレンパン19により構成される風路17に連通している。ファンケーシング114は、吸込口13から吸込んだ空気をファン112,113にスムーズに導入するためのベルマウスを備えており、ファン112,113を囲むように配置されている。
【0023】
吸込口13から吸込んだ空気は、ファン112,113を回転させることにより室内熱交換器120側へ流れ、室内熱交換器120で熱交換されて風路17を通り、吹出口14から吹き出す。吹出口14には上下方向の吹出方向を制御可能な風向ベーン141が設置されている。なお、吹出口14には左右方向の吹出し方向を制御可能な風向フラップが備えられてもよい。
【0024】
換気用ダクト孔15は、換気ダクト6を接続するために送風機室16の側面に設けられている。換気用ダクト孔15の径は換気ダクト6の径により選定されたり、空気調和機1内の圧損設計に合わせた寸法、形状に設計されたりする。なお、換気用ダクト孔15は、円形でなくでもよく、楕円形や四角形でもよい。例えば、換気用ダクト孔15の仕様は、工業規格で規定されているものから決定される。
【0025】
なお、空気調和機1内の圧損設計のために換気用ダクト孔15と送風機110との間に障害物(不図示)を設けるなどの圧損設計がなされる場合もある。これにより換気装置40を介して空気が排気されたときに空気調和機1の性能の低下をある程度抑制することもできる。
【0026】
(ファンモータの構成)
図5は、本実施形態に係るファンモータの構造の一例を示す断面図である。図示するファンモータ111は、ブラシレスDCモータである。ファンモータ111は、主に、回転子161と、固定子162とを備えている。
【0027】
回転子161は、固定子162の内側に配置され、固定子鉄心163と対向して回転軸164の外周側に配置された永久磁石で構成されるマグネット165を有する。マグネット165は、回転軸164と締結されている。なお、マグネット165と回転軸164との間に樹脂、ゴムなどが介在している場合もある。回転軸164は、不図示の軸受けにより保持され、回転方向に回転する。固定子162は、電磁鋼板が積層されて構成された固定子鉄心163と、巻線166を絶縁するためのインシュレータ167と、インシュレータ167と一体となった固定子鉄心163の各スロットに巻き付けられた巻線166とを含んで構成される。
【0028】
また、ファンモータ111は、ファンモータ111を駆動するための回路が実装された基板を含むファンモータ駆動部200を備えている。なお、ファンモータ駆動部200は、ファンモータ111に内蔵されず、上位システム(例えば、空気調和機1側)に設けられる場合もある。本実施形態では、ファンモータ駆動部200がファンモータ111に内蔵されている構成の例を説明する。
【0029】
(換気装置の構成)
次に、
図6および
図7を参照して、換気装置40の構成について詳しく説明する。
図6は、本実施形態に係る換気装置の外観の一例を示す斜視図である。また、
図7は、本実施形態に係る換気装置の内部構成の一例を示す断面図である。
【0030】
換気装置40の筐体には、ダクト接続口41,42と、電源線の結線部43と、天吊り金具44とが設けられている。ダクト接続口41は、換気ダクト6が接続される吸込み側(上流側)のダクト孔である。ダクト接続口42は、換気ダクト7が接続される吹出し側(下流側)のダクト孔である。電源線の結線部43には、換気装置40へ給電する電源線が接続される。天吊り金具44は、複数の設けられており、換気装置40を設置する際の支持部として使用される。
【0031】
また、換気装置40の内部には、送風機45と、送風機45の駆動を制御する換気装置制御部450とが設けられている。送風機45は、換気用ファン46、換気用ファン46を回転させるためのファンモータ(不図示)、換気装置40内を空気がスムーズに流れるようにするためのファンケーシング47などを備えている。
【0032】
換気装置制御部450は、リモコン50からの信号線5が接続されており、リモコン50に対するユーザの操作に応じて、運転状態を制御する。例えば、換気装置制御部450は、運転ONの状態(運転している状態)では、換気装置40の送風機45を駆動することにより、ダクト接続口41から吸込んだ空気(室内機10から送られてきた室内の空気)をダクト接続口42から換気ダクト7を介して室外へと吹き出す。一方、換気装置制御部450は、運転OFFの状態(運転停止の状態)では、換気装置40の送風機45を停止させるため、換気機能が停止する。
【0033】
(制御について)
次に、本実施形態に係る空気調和機1の制御について説明する。空調制御部150は、リモコン30からの操作信号に基づいて、冷凍サイクル(室外機20の圧縮機)の実行を制御したり、送風機110の運転を制御したりする。なお、本実施形態では、
図1などに示すように空調制御部150が室内機10に備えられている例を示しているが、これに限定されるものではなく、室外機20に搭載されてもよいし、室内機10と室外機20とに分けて備えられてもよい。
【0034】
また、空調制御部150は、換気ダクト6を介して接続されている換気装置40の運転状態を判定する。例えば、空調制御部150は、送風機110の制御状態に基づいて換気装置40の運転状態を判定する。以下、
図8を参照して、送風機110の制御状態に基づいて換気装置40の運転状態を判定する構成について、詳しく説明する。
【0035】
図8は、本実施形態に係る空調制御部及びファンモータ駆動部の構成の一例を示すブロック図である。送風機110は、パワーIC201と制御IC202とが実装された基板を含むファンモータ駆動部200と、ファンモータ111の回転子161の位置を検知する磁気センサ210(例えば、ホールICなど)とを含む回路を備えている。パワーIC201と固定子162の巻線166とは、巻線端子を介して接続される。ファンモータ駆動部200の基板は、空調制御部150の基板とリード線を介して接続される。
【0036】
なお、制御IC202は、例えばマイクロコンピュータで構成されてもよい。また、制御IC202とパワーIC201が一つのICとなって構成されてもよい。回転子161のマグネット165の磁極位置に応じてパワーIC201が適切なタイミングでスイッチングする。これにより、ブラシレスDCモータであるファンモータ111は、回転動力を得る。このスイッチング信号は、制御IC202が生成する。
【0037】
制御IC202は、空調制御部150から出力される速度指令電圧(Vsp)に応じたスイッチング信号をパワーIC201に出力する。パワーIC201は、このスイッチング信号に応じて固定子162の巻線166に電圧を印加する。これにより固定子162に磁界が発生し、回転子161が引き込まれることよりファンモータ111が回転する、または回転数が変化する。つまり、空調制御部150からの速度指令電圧(Vsp)により送風機110(ファンモータ111)の回転数が決定する。なお、「回転数」とは、単位時間あたりに回転する回数のことを意味している。また、制御IC202は、磁気センサ210の検知結果に基づいて送風機110の回転数を示す回転数信号を空調制御部150へ出力する。
【0038】
空調制御部150は、CPU(Central Processing Unit)またはマイクロコンピュータ、メモリ(記憶部)、各種のデバイスなどを含んで構成される。図示する空調制御部150は、例えばCPUがプログラムを実行することにより実現される機能構成として、電圧制御部151と、回転数検出部152と、運転状態判定部153と、出力制御部154とを備えている。また、空調制御部150は、各種のデータなどを記憶する記憶部155を備えている。
【0039】
電圧制御部151は、ファンモータ111を回転させるための母線電圧(Vdc)と、制御IC202を駆動するための制御電圧(Vcc)とをファンモータ駆動部200へ出力する。また、電圧制御部151は、送風機110の回転数が所望の回転数になるように駆動するための速度指令電圧(Vsp)を制御してファンモータ駆動部200(制御IC202)へ出力する。
【0040】
回転数検出部152は、ファンモータ駆動部200(制御IC202)から出力された回転数信号を取得することにより、送風機110の回転数を検出する。これにより、ファンモータ駆動部200から空調制御部150へ送風機110の回転数の情報が伝達(フィードバック)される。
【0041】
電圧制御部151は、送風機110の回転数の制御としては、回転数検出部152により検出されたファンモータ111の回転数の情報に基づいてフィードバック制御を行う。電圧制御部151は、検出されたファンモータ111の回転数に基づいて送風機110が所定の回転数になるように速度指令電圧(Vsp)を制御する。ファンモータ111は、その速度指令電圧(Vsp)に応じてファンモータ駆動部200により駆動され、回転数が決定する。
【0042】
室内機10の風路17上の圧力損失(以後、「圧損」と称する)、または空気の温度変化(密度変化)などにより回転数と風量の関係が変化するが、ファンモータ111からみると回転数とトルクの関係が変化することを意味する。
【0043】
ここで通常負荷の状態では、送風機110の回転数と速度指令電圧(Vsp)とは一定の相関関係がある。しかし、風路17上の圧損が悪化するなどの変化が発生すると、回転数と風量(=トルク)との関係が変動し、所望の回転数を回すために必要な速度指令電圧(Vsp)が変動することになる。つまり、室内機10の圧損変化により回転数と速度指令電圧(Vsp)との関係か変化することになる。
【0044】
この室内機10の負荷による回転数と速度指令電圧(Vsp)の関係は、送風機110のファンの種類によって異なる。例えば、
図3に示すファン112,113のような遠心ファン(シロッコファン、ターボファン、クロスフローファンなど)の場合には、羽根のPQ特性の関係から、圧損がかかるような状態(締切側)では羽根が風を曲げる力が小さくて済むためトルクが小さくなる。よって、圧損が大きいほどトルク負荷としては小さくなり、所望の回転数を出すための速度指令電圧(Vsp)は小さくなる。
【0045】
換気装置40が運転ONの状態では、ファンに対して圧損がかかる状態となるため、トルク負荷としては小さくなり、所望の回転数を出すための速度指令電圧(Vsp)は小さくなる。一方、換気装置40が運転OFFの状態では、換気装置40が接続されていない室内機10単体のトルク負荷となる。
【0046】
運転状態判定部153は、室内機10の負荷によって送風機110の回転数と速度指令電圧(Vsp)の関係が変化することを利用して、換気ダクト6を介して接続されている換気装置40の運転状態を判定する。
【0047】
図9は、遠心ファンの場合の速度指令電圧(Vsp)と回転数との相関関係を示す図である。この図において、横軸が送風機110の回転数、縦軸が速度指令電圧(Vsp)である。
図9の(A)は、換気装置40が運転ONの状態であると判定する条件を示している。一方、
図9の(B)は、換気装置40が運転OFFの状態であると判定する条件を示している。
【0048】
速度指令電圧閾値(Vspm)は、換気装置40が運転ONの状態であるか、運転OFFであるかを判定するための閾値である。例えば、速度指令電圧閾値(Vspm)は、換気装置40が運転ONの状態のときの実際の速度指令電圧(Vsp)と、換気装置40が運転OFFであるときの実際の速度指令電圧(Vsp)とに基づいて予め設定された設計値である。
【0049】
図9の(A)に示すように、換気装置40が運転ONの状態であると判定する条件は、同一の回転数の条件で比較したときに、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)未満(Vsp<Vspm)であることである。一方、
図9の(B)に示すように、換気装置40が運転OFFの状態であると判定する条件は、同一の回転数の条件で比較したときに、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)以上(Vsp≧Vspm)であることである。
【0050】
この
図9に示す判定条件を示す情報(判定条件情報)は、記憶部155に記憶されている。運転状態判定部153は、電圧制御部151の制御による速度指令電圧(Vsp)と回転数検出部152により検出された送風機110の回転数と上記の判定条件情報とに基づいて、換気装置40の運転状態を判定する。
【0051】
例えば、運転状態判定部153は、速度指令電圧(Vsp)と速度指令電圧閾値(Vspm)とを送風機110の回転数が同一の条件のときで比較し、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)未満(Vsp<Vspm)である場合には、換気装置40の運転状態が運転ONの状態であると判定する。一方、運転状態判定部153は、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)以上(Vsp≧Vspm)である場合には、換気装置40の運転状態が運転OFFの状態であると判定する。
【0052】
なお、送風機110のファンの種類が軸流ファン(プロペラファン)の場合には、上述した遠心ファンの場合とは異なる判定条件となる。軸流ファンの場合には、圧損が高くなると風を前方(軸流方向)に押し出す力が減少してしまうことから羽根の遠心方向に風が流れるようになる。遠心方向に風を出すほうがより大きなトルクが必要になることから大きなトルクが発生することになる。よって、圧損が大きいほどトルク負荷としては大きくなり、所望の回転数を出すための速度指令電圧(Vsp)は大きくなる。
【0053】
換気装置40が運転ONの状態では、ファンに対して圧損がかかる状態となるため、トルク負荷としては大きくなり、所望の回転数を出すための速度指令電圧(Vsp)は大きくなる。一方、換気装置40が運転OFFの状態では、換気装置40が接続されていない室内機10単体のトルク負荷となる。
【0054】
図10は、軸流ファンの場合の速度指令電圧(Vsp)と回転数との相関関係を示す図である。この図において、横軸が送風機110の回転数、縦軸が速度指令電圧(Vsp)である。
図10の(A)は、換気装置40が運転ONの状態であると判定する条件を示している。一方、
図10の(B)は、換気装置40が運転OFFの状態であると判定する条件を示している。
【0055】
図10の(A)に示すように、換気装置40が運転ONの状態であると判定する条件は、同一の回転数の条件で比較したときに、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)以上(Vsp≧Vspm)であることである。一方、
図10の(B)に示すように、換気装置40が運転OFFの状態であると判定する条件は、同一の回転数の条件で比較したときに、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)未満(Vsp<Vspm)であることである。
【0056】
軸流ファンの場合には、この
図10に示す判定条件情報が、記憶部155に記憶されている。例えば、運転状態判定部153は、速度指令電圧(Vsp)と速度指令電圧閾値(Vspm)とを送風機110の回転数が同一の条件のときで比較し、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)以上(Vsp≧Vspm)である場合には、換気装置40の運転状態が運転ONの状態であると判定する。一方、運転状態判定部153は、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)未満(Vsp<Vspm)である場合には、換気装置40の運転状態が運転OFFの状態であると判定する。
【0057】
このように、速度指令電圧(Vspc)と速度指令電圧閾値(Vspm)との符号の大小関係は使用するファンの種類によって異なる。そのため、換気装置40の運転状態を判定する制御において、判定条件となる速度指令電圧(Vspc)と速度指令電圧閾値(Vspm)との符号の大小関係については、ファンの種類によって変更される。
【0058】
図8に戻り、出力制御部154は、運転状態判定部153により判定された換気装置40の運転状態に基づく情報をリモコン30へ出力する。また、出力制御部154は、運転状態判定部153により判定された換気装置40の運転状態に基づく情報を携帯端末70へ出力してもよい。
【0059】
図11は、本実施形態に係る換気装置の運転状態に基づく情報の出力に関する構成例を示す図である。
図1でも説明したように、室内機10とリモコン30とは、有線の信号線4で接続されている。なお、室内機10とリモコン30との接続は、無線通信によるものであってもよい。
【0060】
リモコン30は、ユーザの操作により、冷凍サイクルの起動または停止を指令したり、冷房、暖房、乾燥などの空調の運転モードを設定したり、吹出空気温度を設定したり、吹出空気の方向および風速などの空調条件を設定したりする操作信号を、室内機10へ信号線4を介して送信する。
【0061】
また、室内機10の出力制御部154は、この信号線4を介して、換気装置40の運転状態に基づく情報をリモコン30へ送信する。リモコン30は、表示部31を備えており、室内機10から送信された換気装置40の運転状態に基づく情報を表示部31に表示する。表示部31は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスを含んで構成されている。リモコン30が換気装置40の運転状態を表示することにより、ユーザがリモコン30の表示画面で換気装置40の運転状況を確認することができる。
【0062】
なお、出力制御部154は、換気装置40が運転ONの状態であると判定された場合のみ、換気装置40の運転状態に基づく情報をリモコン30または携帯端末70へ送信してもよい。
【0063】
ここで、換気装置40の運転状態に基づく情報とは、例えば換気装置40の運転状態を示す情報である。運転状態を示す情報とは、例えば「運転ON」、「運転中」、「運転しています」、「運転OFF」、「停止」などである。
【0064】
また、換気装置40の運転状態に基づく情報とは、換気装置40の運転状態に基づく適切な操作内容をユーザに提示する情報であってもよい。例えば、現在の空気調和機1の運転モードに対して最適な状態となるようにリモコン30に表示することもできる。一例として、空気調和機1の運転モードが「冷房」の場合、空気調和機1は、部屋の空気を吸込み、熱交換をして冷たい空気を吹出す。この際に、換気装置40が運転ONの状態になっていると、吸込む空気量が低下するため、所望の風量を確保できず、最大限の能力を確保できない場合がある。また、余計な電力を消費してしまう。そこで、リモコン30に「冷房運転では換気装置を停止したほうが効率よく涼しくなります。換気装置を停止してはどうでしょうか」というような表示をさせることにより、ユーザに最適な運転状態を提案することができる。
【0065】
なお、空気調和機1の運転操作についてはリモコン30を主に用いるが、リモコン30に代えてまたは加えて、ユーザが使用する携帯端末70を用いてもよい。例えば、室内機10は、携帯端末70と無線通信により接続可能であってもよい。携帯端末70は、スマートフォン、タブレット型のPC(Personal Computer)など、ユーザが使用する電子機器である。例えば、出力制御部154は、Wi-Fi(登録商標)などの無線通信に対応した通信デバイスを備え、換気装置40の運転状態に基づく情報を携帯端末70へ送信する。携帯端末70は、表示部71を備えており、室内機10から送信された換気装置40の運転状態に基づく情報を表示部71に表示する。表示部71は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスを含んで構成されている。携帯端末70は、リモコン30と同様に、換気装置40の運転状態に基づく情報を表示することにより、同様の効果を得る。
【0066】
(換気装置の運転状態判定処理の動作)
次に、
図12を参照して、空調制御部150が換気装置40の運転状態を判定する運転状態判定処理の動作について説明する。
図12は、本実施形態に係る運転状態判定処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、送風機110のファンが遠心ファンの場合の処理の動作について説明する。
【0067】
停止状態において、リモコン30にて、冷房運転または暖房運転の開始(運転ON)の操作が行われると、空調制御部150は、運転ONの操作信号をリモコン30から取得する(ステップS101)。
【0068】
空調制御部150は、運転ONの操作信号を取得すると、予め設定されていた吹出空気温度、吹出空気の方向および風速などの空調条件に基づいて、あるいは、リモコン30の操作によって ユーザが設定した新たな設定温度などの空調条件に基づいて冷房運転または暖房運転を開始し、室外機20の圧縮機(不図示)の運転およびファンモータ111を目標の回転数で回転させる。具体的には、空調制御部150は、目標の回転数とするための速度指令電圧(Vspc)を、ファンモータ駆動部200へ伝達することにより、ファンモータ111が回転し、送風機110の運転が開始される。(ステップS103)
【0069】
次に、送風機110の運転が開始されると、送風機110の実回転数(実際の回転数)の情報がファンモータ駆動部200から空調制御部150へフィードバックされる。空調制御部150は、ファンモータ駆動部200から送風機110の実回転数の情報を取得する(ステップS105)。
【0070】
空調制御部150は、送風機110の実回転数の情報に基づいて目標の回転数となるように速度指令電圧(Vspc)を算出し、算出した速度指令電圧(Vspc)に制御する(ステップS107)。
【0071】
空調制御部150は、速度指令電圧(Vsp)と回転数との相関関係(
図9参照)に基づく判定条件を記憶部155から読み出し、速度指令電圧(Vsp)と速度指令電圧閾値(Vspm)とを送風機110の回転数が同一の条件のときで比較する(ステップS109)。
【0072】
空調制御部150は、ステップS109において比較した結果、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)未満である場合(Vsp<Vspm)、換気装置40が運転ONの状態(運転している状態)であると判定する(ステップS111)。
【0073】
空調制御部150は、ステップS111において換気装置40が運転ONの状態であると判定した場合、換気装置40が運転ONの状態であることを示す情報をリモコン30へ送信する。これにより、リモコン30は、換気装置40が運転ONの状態であることを示す情報を表示する。なお、換気装置40が運転ONの状態であることを示す情報に代えて又は加えて、換気装置40の運転状態に基づく適切な操作内容を示す情報(例えば、「冷房運転では換気装置を停止したほうが効率よく涼しくなります。換気装置を停止してはどうでしょうか」)であってもよい。
【0074】
また、空調制御部150は、リモコン30から送信される操作信号に基づいて、リモコン30にて空気調和機1の運転OFFの操作がされたか否かを判定する(ステップS115)。空調制御部150は、リモコン30にて運転OFFの操作がされていないと判定した場合(NO)、ステップS105の処理へ戻る。一方、空調制御部150は、リモコン30にて運転OFFの操作がされたと判定した場合(YES)、空気調和機1の運転を停止させ(ステップS117)、処理を終了する。
【0075】
一方、空調制御部150は、ステップS109において比較した結果、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)以上である場合(Vsp≧Vspm)、換気装置40が運転OFFの状態(運転していない状態)であると判定する(ステップS121)。
【0076】
空調制御部150は、ステップS121において換気装置40が運転OFFの状態であると判定した場合、リモコン30から送信される操作信号に基づいて、リモコン30にて空気調和機1の運転OFFの操作がされたか否かを判定する(ステップS123)。空調制御部150は、リモコン30にて運転OFFの操作がされていないと判定した場合(NO)、ステップS105の処理へ戻る。一方、空調制御部150は、リモコン30にて運転OFFの操作がされたと判定した場合(YES)、空気調和機1の運転を停止させ(ステップS125)、処理を終了する。
【0077】
なお、この速度指令電圧閾値の考え方については、通常負荷時の「回転数と速度指令電圧の関係」を記憶しておき、その通常負荷時の速度指令電圧と、電圧制御部151により制御された速度指令電圧(Vspc)との差分を計測し、その差分がある閾値を超えた場合に換気装置40が運転OFFの状態であると判定する方式でもよい。
【0078】
なお、
図12に示す運転状態判定処理は、送風機110のファンが遠心ファンの場合の処理の例であるが、軸流ファンの場合には、ステップS109の処理を変更すればよい。例えば、軸流ファンの場合の運転状態判定処理では、空調制御部150は、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)以上である場合(Vsp≧Vspm)、換気装置40が運転ONの状態(運転している状態)であると判定する(ステップS111)。また、空調制御部150は、速度指令電圧(Vsp)が速度指令電圧閾値(Vspm)未満である場合(Vsp<Vspm)、換気装置40が運転OFFの状態(運転していない状態)であると判定する(ステップS121)。
【0079】
また、本実施形態に係る換気装置40の運転状態を判定する運転状態判定処理を実施するか否かは、空気調和機1の施工時等に設定することが可能である。例えば、空気調和機1と換気装置40とを接続しない場合には、運転状態判定処理を未実施にすることが可能である。また、空気調和機1と換気装置40とを接続した場合でも、換気装置40の運転状態を判定する処理を実施しないという意思がある場合には、運転状態判定処理を未実施にすることが可能である。
【0080】
また、室内機10の圧損はフィルタ121へのほこりの蓄積等により経年的に増加していく。よって、フィルタ121へのほこりの蓄積等により経年的に速度指令電圧についても徐々に変化(遠心ファンでは低下、軸流ファンでは増加)していくことになる。経年的な速度指令電圧の増減が、記憶部155に記憶されている判定条件(
図9、10参照)の速度指令電圧閾値(Vspm)をまたがった場合には、換気装置40の運転状態が運転OFFであっても運転ONと誤判断をしてしまうことになる。そこで、空気調和機1の累積運転時間が所定の累積時間に達している場合には、運転状態判定処理を無効化してもよい。
【0081】
例えば、空気調和機1の累積運転時間は、空調制御部150が計時して記憶部155に記憶している。空調制御部150は、累積運転時間が所定の累積時間となった場合にはリモコン30または携帯端末70に「フィルタお掃除サイン」などを表示させる機能を有しているものがある。空調制御部150は、この累積運転時間を利用して、上述したように累積運転時間が所定の累積時間に達している場合には、運転状態判定処理を無効化してもよい。
【0082】
以上説明してきたように、本実施形態に係る空気調和機1は、空調対象空間(例えば、室内)から空気を吸い込む吸込口13と、送風機110と、室内熱交換器120(熱交換器の一例)と、空調対象空間へ空気を吹出す吹出口14とを備えている。また、空気調和機1は、空気調和機1の操作系統とは異なる操作系統により独立して制御が行われる換気装置40と換気ダクト6(ダクトの一例)を介して接続するための換気用ダクト孔15を備えている。そして、空気調和機1は、空気調和機1の操作系統による制御に応じて送風機110を制御するとともに、換気装置40が換気用ダクト孔15に換気ダクト6を介して接続されている状態において、送風機110の制御状態に基づいて換気装置40の運転状態を判定する。
【0083】
これにより、空気調和機1は、空気調和機1の操作系統とは異なる操作系統により独立して制御が行われる換気装置40が換気ダクト6を介して接続されている状態であっても、空気調和機1内の情報を用いて換気装置40の運転状態を容易に判別することができる。よって、空気調和機1は、空調対象空間内で、換気装置40の換気運転も考慮した最適な空調運転をユーザに支援することができる。
【0084】
例えば、空気調和機1は、送風機110の回転数が所望の回転数(例えば、目標の回転数)になるように送風機110を駆動するための速度指令電圧(電圧の一例)を制御する。また、空気調和機1は、速度指令電圧(Vspc)で駆動された送風機110の回転数を検出する。また、空気調和機1は、送風機110の回転数と速度指令電圧(Vspc)との相関関係に基づく判定条件情報(第1情報、
図9または
図10参照)を記憶部155に記憶している。そして、空気調和機1は、速度指令電圧(Vspc)と送風機110の回転数と判定条件情報とに基づいて、換気装置40の運転状態を判定する。
【0085】
これにより、空気調和機1は、室内機10の負荷によって送風機110を駆動する電圧と送風機110の回転数との関係が変化することを利用して、換気ダクト6を介して接続されている換気装置40の運転状態を、容易に判別することができる。
【0086】
具体的には、上記判定条件情報には、送風機110の回転数に対する速度指令電圧の閾値を示す速度指令電圧閾値(Vspm)の情報が含まれている。空気調和機1は、速度指令電圧(Vspc)と速度指令電圧閾値(Vspm)とを送風機110の回転数が同一の条件で比較した結果に基づいて、換気装置40の運転状態を判定する。
【0087】
これにより、空気調和機1は、室内機10の負荷によって送風機110を駆動する電圧と送風機110の回転数との関係が変化することを利用して、換気ダクト6を介して接続されている換気装置40の運転状態を、容易に判別することができる。
【0088】
また、空気調和機1の操作系統には、空気調和機1は、の運転の指令及び設定を行うリモコン30が含まれている。空気調和機1は、判定した換気装置40の運転状態に基づく情報をリモコン30へ出力する。
【0089】
これにより、空気調和機1は、換気装置40の運転状態をリモコン30に表示させることができるため、換気装置40の運転状態をユーザに容易に伝達することができる。
【0090】
また、空気調和機1は、無線通信を用いて携帯端末70(端末装置の一例)と通信可能な通信デバイス(通信部)を備えている。空気調和機1は、判定した換気装置40の運転状態に基づく情報を、通信デバイスを介して携帯端末70へ出力する。
【0091】
これにより、空気調和機1は、換気装置40の運転状態をユーザが所持する携帯端末70に表示させることができるため、換気装置40の運転状態をユーザに容易に伝達することができる。
【0092】
なお、空気調和機1は、表示により換気装置40の運転状態をユーザに伝達するのに代えてまたは加えて、ブザーまたは音声などでユーザに伝達してもよい。
【0093】
例えば、空気調和機1は、換気装置40の運転状態に基づく情報として、換気装置40の運転状態に基づく適切な操作内容をユーザに提示する情報を出力してもよい。例えば、空気調和機1は、換気装置40の運転状態に基づいて、リモコン30または携帯端末70に「冷房運転では換気装置を停止したほうが効率よく涼しくなります。換気装置を停止してはどうでしょうか」というような表示をさせてもよい。
【0094】
これにより、空気調和機1は、換気装置40の運転状態によって、換気装置40の換気運転も考慮した最適な運転状態をユーザに提案することができる。
【0095】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形について説明する。
第1の実施形態では、速度指令電圧(Vspc)に閾値設定して、換気装置40の運転状態の判定を行ったが、本実施形態では、速度指令電圧に代えてファンモータ111に流れる電流値を使用して判定を行う。この判定方法は、例えば、ファンモータ111を駆動する回路が室内機10側の基板に備えられている構成の場合に有効となる。
【0096】
図13は、本実施形態に係る空調制御部およびファンモータ駆動部の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態では、ファンモータ駆動部200Aが空気調和機1(ここでは、室内機10)側の基板に実装される。本実施形態では、第1の実施形態における空調制御部150に対応する構成を空調制御部150Aとし、空調制御部150Aがファンモータ駆動部200Aを備える。また、本実施形態に係る送風機110Aは、ファンモータ駆動部を備えていない点が、第1の実施形態に係る送風機110と異なる。
【0097】
ファンモータ駆動部200Aは、パワーIC201Aと、制御IC202Aと、電流検出部203Aとを備える。電流検出部203Aは、ファンモータ111の巻線に流れる電流値を計測することができる。この電流値はファンモータ111が発生するトルクと相関があるため、電流値から室内機10の圧損の負荷を予測することができる。よって、この電流値の情報から換気装置40の運転状態を判定することが可能となる。
【0098】
パワーIC201Aと制御IC202Aとは、それぞれ、
図8のパワーIC201Aと制御IC202Aとに対応する。また、空調制御部150Aは、ファンモータ駆動部200Aの他に、回転数指示部151Aと、運転状態判定部153Aと、出力制御部154Aと、記憶部155Aとを備える。
【0099】
ファンモータ111を目標の回転数で回転させるための要求回転数情報が、回転数指示部151Aからファンモータ駆動部220Aの制御IC202Aへ入力される。制御IC202Aは、入力された要求回転数情報に従って駆動信号を生成してパワーIC201Aへ出力する。パワーIC201と固定子162の巻線166とは、巻線端子を介して接続されている。パワーIC201Aは、制御IC202Aから入力された駆動信号に従ってパルスを生成し、ファンモータ111の固定子162の巻線166に電圧を印加する。これにより、ファンモータ111が目標の回転数で回転する。
【0100】
ここで、室内機10の負荷変動はファンモータ111に流れる相電流の大きさと相関がある。室内機10の負荷が大きいほど各相電流に流れる電流も大きくなる。ファンモータ111の回転数の制御としては、相電流の大きさに応じて巻線166に印加する電圧を変化させることにより、回転数を制御する。パルスのON時間により電圧を変化させ、ONしている時間の平均が多いほど電圧が大きくなる(即ち、回転数がUPする)。
【0101】
運転状態判定部153Aは、ファンモータ111の巻線に流れる電流値がファンモータ111の発生するトルクと相関があることを利用して、換気ダクト6を介して接続されている換気装置40の運転状態を判定する。
【0102】
図14および
図15を参照して、本実施形態に係る換気装置40の運転状態の判定条件について説明する。
【0103】
図14は、遠心ファンの場合の電流値(Ic)と回転数との相関関係を示す図である。この図において、横軸が送風機110Aの回転数、縦軸がファンモータ111の巻線に流れる電流値(Ic)である。
図14の(A)は、換気装置40が運転ONの状態であると判定する条件を示している。一方、
図14の(B)は、換気装置40が運転OFFの状態であると判定する条件を示している。
【0104】
電流閾値(Im)は、換気装置40が運転ONの状態であるか、運転OFFであるかを判定するための閾値である。例えば、電流閾値(Im)は、換気装置40が運転ONの状態のときの実際の電流閾値(Im)と、換気装置40が運転OFFであるときの実際の電流閾値(Im)とに基づいて予め設定された設計値である。
【0105】
図14の(A)に示すように、換気装置40が運転ONの状態であると判定する条件は、同一の回転数の条件で比較したときに、電流値(Ic)が電流閾値(Im)未満(Ic<Im)であることである。一方、
図14の(B)に示すように、換気装置40が運転OFFの状態であると判定する条件は、同一の回転数の条件で比較したときに、電流値(Ic)が電流閾値(Im)以上(Ic≧Im)であることである。
【0106】
この
図14に示す判定条件情報が、記憶部155Aに記憶されている。運転状態判定部153Aは、ファンモータ111の巻線に流れる電流値(Ic)と送風機110Aの回転数と上記の判定条件情報とに基づいて、換気装置40の運転状態を判定する。
【0107】
例えば、運転状態判定部153Aは、電流値(Ic)と電流閾値(Im)とを送風機110Aの回転数が同一の条件のときで比較し、電流値(Ic)が電流閾値(Im)未満(Ic<Im)である場合には、換気装置40の運転状態が運転ONの状態であると判定する。一方、運転状態判定部153Aは、電流値(Ic)が電流閾値(Im)以上(Ic≧Im)である場合には、換気装置40の運転状態が運転OFFの状態であると判定する。
【0108】
図15は、軸流ファンの場合の電流値(Ic)と回転数との相関関係を示す図である。この図において、横軸が送風機110Aの回転数、縦軸がファンモータ111の巻線に流れる電流値(Ic)である。
図15の(A)は、換気装置40が運転ONの状態であると判定する条件を示している。一方、
図15の(B)は、換気装置40が運転OFFの状態であると判定する条件を示している。
【0109】
図15の(A)に示すように、換気装置40が運転ONの状態であると判定する条件は、同一の回転数の条件で比較したときに、電流値(Ic)が電流閾値(Im)以上(Ic≧Im)であることである。一方、
図15の(B)に示すように、換気装置40が運転OFFの状態であると判定する条件は、同一の回転数の条件で比較したときに、電流値(Ic)が電流閾値(Im)未満(Ic<Im)であることである。
【0110】
軸流ファンの場合には、この
図15に示す判定条件情報が、記憶部155Aに記憶されている。例えば、運転状態判定部153Aは、電流値(Ic)と電流閾値(Im)とを送風機110Aの回転数が同一の条件のときで比較し、電流値(Ic)が電流閾値(Im)以上(Ic≧Im)である場合には、換気装置40の運転状態が運転ONの状態であると判定する。一方、運転状態判定部153Aは、電流値(Ic)が電流閾値(Im)未満(Ic<Im)である場合には、換気装置40の運転状態が運転OFFの状態であると判定する。
【0111】
出力制御部154Aは、運転状態判定部153Aにより判定された換気装置40の運転状態に基づく情報をリモコン30へ出力する。また、出力制御部154Aは、運転状態判定部153Aにより判定された換気装置40の運転状態に基づく情報を携帯端末70へ出力してもよい。
【0112】
以上説明したように、本実施形態に係る空気調和機1は、送風機110A(ファンモータ111の巻線)に流れる電流値(Ic)を検出する。また、空気調和機1は、送風機110Aの回転数と送風機110Aに流れる電流値(Ic)との相関関係に基づく判定条件情報(第2情報、
図14または
図15参照)を記憶部155Aに記憶している。そして、空気調和機1は、検出した送風機110Aに流れる電流値(Ic)と送風機110Aの回転数と判定条件情報とに基づいて、換気装置40の運転状態を判定する。
【0113】
これにより、空気調和機1は、室内機10の負荷によって送風機110に流れる電流値と送風機110の回転数との関係が変化することを利用して、換気ダクト6を介して接続されている換気装置40の運転状態を、容易に判別することができる。
【0114】
具体的には、上記判定条件情報には、送風機110Aの回転数に対する電流値の閾値を示す電流閾値(Im)の情報が含まれている。空気調和機1は、検出した電流値(Ic)と電流閾値(Im)とを送風機110Aの回転数が同一の条件で比較した結果に基づいて、換気装置40の運転状態を判定する。
【0115】
これにより、空気調和機1は、室内機10の負荷によって送風機110に流れる電流値と送風機110の回転数との関係が変化することを利用して、換気ダクト6を介して接続されている換気装置40の運転状態を、容易に判別することができる。
【0116】
なお、空調制御部150(150A)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより空調制御部150(150A)の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0117】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上記のプログラムを所定のサーバに記憶させておき、他の装置からの要求に応じて、当該プログラムを通信回線を介して配信(ダウンロード等)させるようにしてもよい。
【0118】
また、空調制御部150(150A)の機能の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 空気調和機
2 液延長配管
3 ガス延長配管
4,5 信号線
6,7 換気ダクト
7 換気ダクト
11 キャビネット
12 化粧パネル
13 吸込口
14 吹出口
15 換気用ダクト孔
20 室外機
30 リモコン
31 表示部
40 換気装置
41,42 ダクト接続口
46 換気用ファン
50 リモコン
110,110A 送風機
111 ファンモータ
112,113 ファン
120 室内熱交換器
150,150A 空調制御部
151 電圧制御部
151A 回転数指示部
152, 回転数検出部
153,153A 運転状態判定部
154,154A 出力制御部
155,155A 記憶部
161 回転子
162 固定子
166 巻線
200,200A ファンモータ駆動部
201,201A パワーIC
202,202A 制御IC
203A 電流検出部
210 磁気センサ
450 換気装置制御部