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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】機器診断装置及び機器診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20241101BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024507500
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2022042020
(87)【国際公開番号】W WO2023176039
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2022042713
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 佳正
(72)【発明者】
【氏名】岡田 泰行
(72)【発明者】
【氏名】井上 甚
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/158910(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/193743(WO,A1)
【文献】特開2019-109192(JP,A)
【文献】特開2010-213400(JP,A)
【文献】特開2012-200052(JP,A)
【文献】特開平11-311653(JP,A)
【文献】特開昭61-138178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50-31/74、
31/00-31/01、
31/24-31/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部から電路を通して供給される電力によって駆動する負荷機器の診断を行う機器診断装置であって、
前記電路から漏洩する電流に応じた波形の検出信号を出力する漏電センサと、
前記負荷機器の状態又は前記負荷機器の周辺環境の少なくとも一方である機器状態を取得する機器状態取得部と、
前記機器状態取得部から出力される状態信号に基づいて前記漏電センサの動作モードを、通常時の漏電検出用の動作モード又は異常診断用の動作モードに決定する動作モード決定部と、
前記漏電センサを前記動作モード決定部によって決定された前記動作モードで動作させる漏電センサ駆動部と、
前記漏電センサから出力される前記検出信号と前記機器状態取得部から出力される前記状態信号とに基づいて前記診断を行う診断部と
を有し、
前記動作モード決定部は、前記漏電センサが前記通常時の漏電検出用の動作モードで動作しているときに前記機器状態が予め定められた切替条件を満たす場合、前記漏電センサの動作モードを前記異常診断用の動作モードに切り替え
前記漏電センサが前記異常診断用の動作モードで動作するときの電流検出感度は、前記漏電センサが前記通常時の漏電検出用の動作モードで動作するときの電流検出感度より高い、
ことを特徴とする機器診断装置。
【請求項2】
前記漏電センサが前記異常診断用の動作モードで動作するときの周波数帯域は、前記漏電センサが前記通常時の漏電検出用の動作モードで動作するときの周波数帯域より広い、
ことを特徴とする請求項に記載の機器診断装置。
【請求項3】
前記機器状態取得部は、前記負荷機器で発生した振動又は音に応じた信号を前記状態信号として出力し、
前記動作モード決定部は、前記信号の振幅が予め定められた閾値以上である場合に前記切替条件を満たすと判断して、前記漏電センサの動作モードを前記異常診断用の動作モードに切り替える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の機器診断装置。
【請求項4】
前記動作モード決定部は、前記信号の振幅が前記閾値未満である場合に前記切替条件を満たさないと判断して、前記漏電センサの動作モードを前記通常時の漏電検出用の動作モードに維持する、
ことを特徴とする請求項に記載の機器診断装置。
【請求項5】
前記機器状態取得部は、前記負荷機器の振動を測定する振動センサ、前記負荷機器の温度を測定する温度センサ又は赤外線センサ、前記負荷機器の動きを検出するモーションセンサ、前記負荷機器の動作時の異音を検出する異音センサ、前記負荷機器における放電の有無を検出する電磁波センサ、前記負荷機器における漏水の有無を検出する漏水センサ、及び前記負荷機器における漏油の有無を検出する漏油センサ及び前記負荷機器における発煙の有無を検出する発煙センサのうちの少なくとも1つを有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の機器診断装置。
【請求項6】
前記機器状態取得部は、前記負荷機器の電気ノイズまたは電磁気ノイズを測定するノイズ計である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の機器診断装置。
【請求項7】
前記機器状態取得部によって取得される前記負荷機器の周辺環境は、前記負荷機器が設置される設置場所における天候、前記設置場所における雨量、前記設置場所における照度、前記設置場所における風速、前記設置場所における温度及び前記設置場所における湿度のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の機器診断装置。
【請求項8】
前記異常診断用の動作モードは、第1の計測ダイナミックレンジで動作する第1の異常診断モードと、第2の計測ダイナミックレンジで動作する第2の異常診断モードとを有し、
前記動作モード決定部は、前記切替条件を満たす場合、前記通常時の漏電検出用の動作モードから前記第1の異常診断モードへの切り替え、前記第1の異常診断モードから前記第2の異常診断モードへの切り替え、前記第2の異常診断モードから前記通常時の漏電検出用の動作モードへの切り替えを順に行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の機器診断装置。
【請求項9】
前記漏電センサは、
鉄心部と、
前記鉄心部に巻き付けられていて且つ前記漏電センサ駆動部から印加される駆動電流である励磁電流が流れる第1のコイルと、
前記鉄心部に巻き付けられていて且つ前記励磁電流によって発生する誘導起電力を示す信号を前記検出信号として出力する第2のコイルと
を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の機器診断装置。
【請求項10】
前記漏電センサ駆動部は、前記励磁電流の電流値、前記励磁電流の周波数及び前記励磁電流の波形の少なくとも1つを制御することで、前記漏電センサを、前記動作モード決定部によって決定された動作モードで動作させる、
ことを特徴とする請求項に記載の機器診断装置。
【請求項11】
前記診断部における前記診断の結果を報知する報知部を更に有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の機器診断装置。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の前記機器診断装置と、
ネットワークを介して前記機器診断装置と通信するサーバと
を有し、
前記サーバは、前記診断部と連携して前記負荷機器の前記診断を行う、
ことを特徴とする機器診断システム。
【請求項13】
前記サーバは、前記動作モード決定部と連携して前記漏電センサの動作モードを決定する、
請求項12に記載の機器診断システム。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の前記機器診断装置と、
ネットワークを介して前記機器診断装置と通信する複数の別の機器診断装置群と
を有し、
前記機器診断装置群は、個々の前記診断部を連携して前記負荷機器の前記診断を行う、
ことを特徴とする機器診断システム。
【請求項15】
前記機器診断装置群は、前記動作モード決定部と連携して前記漏電センサの動作モードを決定する、
請求項14に記載の機器診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機器診断装置及び機器診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電源から供給される電力によって駆動する負荷機器(例えば、電動機など)が、広く普及している。負荷機器が長期間使用された場合、絶縁部材の経年劣化による絶縁劣化、部品の故障及び損傷などが発生する。
【0003】
絶縁劣化が生じた箇所に漏洩電流(以下、「漏電」とも呼ぶ。)が流れると、人体への感電の発生又は電源と負荷機器との間に設けられた漏電センサ(例えば、漏電遮断器又は漏電リレー)が作動する要因となる。この場合、緊急の点検又は安全確保のために、負荷機器への電力の供給を停止して、漏電の発生原因及び漏電の発生箇所を特定する必要がある。また、部品の故障及び損傷が発生した場合には、突発的な作業(具体的には、交換部品の手配及び部品の交換作業など)にも時間を要する。そのため、負荷機器の診断装置の高度化が求められている。
【0004】
一般的に、絶縁劣化に伴う漏洩電流の測定には、漏電遮断器又は漏電リレーに搭載された零相変流器(ZCT:Zero-phase Current Transfomer)が用いられる。また、電源と負荷機器とを繋ぐ電路における電圧情報及び漏電情報に基づいて絶縁監視を行うシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
零相変流器を搭載した漏電センサは、例えば、いわゆるパッシブ方式のセンサであり、磁性体コアに巻き付けられたコイルの両端に接続された負荷抵抗に基づいて漏電を計測する。また、近年では、漏電センサとして、磁場の変化を検出するフラックスゲート法を応用したアクティブ方式のセンサも用いられている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
また、電力設備における絶縁劣化を検出するために、種類の異なる複数のセンサから出力される信号に基づいて診断精度を高める構成が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。また、電流センサによって検出された電流の周波数スペクトルに基づいて、負荷機器の劣化の検出及び部品の故障又は損傷の有無を判定する装置も知られている(例えば、特許文献4及び5を参照)。更に、負荷機器に備えられた振動センサの検出結果に基づいて当該負荷機器の部品における故障又は損傷の有無を判定する装置も知られている(例えば、特許文献6を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-109192号公報(図1参照)
【文献】特表2013-539538号公報(図2参照)
【文献】特開2019-135455号公報(図5参照)
【文献】国際公開第2018/087885号(図1参照)
【文献】特開2017-181437号公報(図4参照)
【文献】特開2021-144054号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
負荷機器の絶縁劣化及び負荷機器の部品の故障又は損傷など、様々な判定を1つのセンサによって計測することは容易ではないため、センサ・フュージョンの技術の重要性が高まっている。漏電センサの検出感度は絶縁監視を行う目的及び用途に応じて異なるが、一般的に、検出感度は固定値である。そのため、1つの漏電センサによって、絶縁監視を含む様々な事象を診断することは困難である。漏電遮断器の後段に設けられた増幅アンプのゲインを調整することで検出感度を変更する方法も考えられるが、通常の運転状況下において検出感度を変更することは困難である。また、特許文献1のように漏電センサにテスト電流を流す方法も、通常の運転状況下において検出感度を頻繁に変えることになるため、困難である。
【0009】
また、特許文献3のように、検出感度が異なる複数の漏電センサを装置に配置する場合、コストが増大する。更に、負荷機器の異常と漏電センサの出力信号との相関関係が判明していない場合にも、漏電センサの個数を増加させる必要があり、コストが増大する。また、当該相関関係のデータベースを作る場合にもコストが増大する。
【0010】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、低コストであって、負荷機器の診断が容易で且つ当該診断の信頼性が高い機器診断装置及び機器診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様に係る機器診断装置は、電源部から電路を通して供給される電力によって駆動する負荷機器の診断を行う機器診断装置であって、前記電路から漏洩する電流に応じた波形の検出信号を出力する漏電センサと、前記負荷機器の状態又は前記負荷機器の周辺環境の少なくとも一方である機器状態を取得する機器状態取得部と、前記機器状態取得部から出力される状態信号に基づいて前記漏電センサの動作モードを、通常時の漏電検出用の動作モード又は異常診断用の動作モードに決定する動作モード決定部と、前記漏電センサを前記動作モード決定部によって決定された前記動作モードで動作させる漏電センサ駆動部と、前記漏電センサから出力される前記検出信号と前記機器状態取得部から出力される前記状態信号とに基づいて前記診断を行う診断部とを有し、前記動作モード決定部は、前記漏電センサが前記通常時の漏電検出用の動作モードで動作しているときに前記機器状態が予め定められた切替条件を満たす場合、前記漏電センサの動作モードを前記異常診断用の動作モードに切り替え、前記漏電センサが前記異常診断用の動作モードで動作するときの電流検出感度は、前記漏電センサが前記通常時の漏電検出用の動作モードで動作するときの電流検出感度より高い
【0012】
本開示の他の態様に係る機器診断システムは、上述した機器診断装置と、ネットワークを介して前記機器診断装置と通信するサーバとを有し、前記サーバは、上述した診断部と連携して上述した負荷機器の診断を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、低コストであって、負荷機器の診断が容易で且つ当該診断の信頼性が高い機器診断装置及び機器診断システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係る機器診断装置の構成を示す構成図である。
図2図1に示される漏電センサの構成の一例を示す斜視図である。
図3図2に示される漏電センサの電路上における配置の一例を示す図である。
図4】(A)は、図2及び3に示される磁性体コアのB-H曲線である。(B)は、零相電流の電流値が0である場合の磁性体コアにおける励磁磁界の波形を示すグラフである。(C)は、零相電流の電流値が0である場合の磁性体コアを通過する磁束の時間変化を示すグラフである。(D)は、零相電流の電流値が0である場合に検出コイルから出力される電圧の波形を示すグラフである。
図5】(A)は、図2及び3に示される磁性体コアのB-H曲線である。(B)は、零相電流の電流値が0でない場合の磁性体コアにおける励磁磁界の波形を示すグラフである。(C)は、零相電流の電流値が0でない場合の磁性体コアを通過する磁束の時間変化を示すグラフである。(D)は、零相電流の電流値が0でない場合に検出コイルから出力される電圧の波形を示すグラフである。
図6図1に示される制御装置の構成を示すブロック図である。
図7】(A)は、実施の形態1に係る機器診断装置のハードウェア構成の一例を示す図である。(B)は、実施の形態1に係る機器診断装置のハードウェア構成の他の例を示す図である。
図8】実施の形態1に係る機器診断装置の動作を示すフローチャートである。
図9】実施の形態1の変形例に係る機器診断装置の構成を示すブロック図である。
図10】実施の形態2に係る機器診断装置の構成を示すブロック図である。
図11】実施の形態2に係る機器診断装置の構成の他の例を示すブロック図である。
図12】実施の形態2に係る機器診断装置の漏電センサの動作シーケンスの一例を示す図である。
図13】実施の形態3に係る機器診断システムの構成を示すブロック図である。
図14】実施の形態3に係る機器診断システムの構成の他の例を示すブロック図である。
図15】実施の形態3の変形例に係る機器診断システムの構成を示すブロック図である。
図16】実施の形態3の変形例に係る機器診断システムの構成の他の例を示すブロック図である。
図17】実施の形態4に係る機器診断システムの構成の他の例を示すブロック図である。
図18】実施の形態4に係る機器診断システムの構成の他の例を示すブロック図である。
図19】実施の形態4の変形例に係る機器診断システムの構成を示すブロック図である。
図20】実施の形態4の変形例に係る機器診断システムの構成の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示の実施の形態に係る機器診断装置及び機器診断システムを、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、実施の形態を適宜組み合わせること及び各実施の形態を適宜変更することが可能である。
【0016】
《実施の形態1》
〈機器診断装置100の構成〉
図1は、実施の形態1に係る機器診断装置100の構成を示す構成図である。図1に示されるように、機器診断装置100は、電源部2から供給される電力によって駆動する負荷機器1の診断を行う装置である。機器診断装置100は、負荷機器1における異常の有無を診断する異常診断装置である。
【0017】
実施の形態1では、負荷機器1が三相交流電力によって駆動される場合を例にして説明する。この場合、負荷機器1には、電路としての複数(例えば、3本又は4本)の電線ケーブル3a、3b、3cを通して三相交流電力が供給される。なお、負荷機器1が単相交流電力によって駆動される場合、電源部2と負荷機器1とを繋ぐ電線の数は、2本又は3本である。また、電源部2のグランド線、アース線及び中性線は、負荷機器1と結線されていてもよい。
【0018】
負荷機器1は、例えば、電動機、当該電動機を有する産業機器若しくは産業機械、業務用電気機器、IT(Information Technology)機器、OA(Office Automation)機器、家庭用電気機器又は照明機器などである。実施の形態1では、負荷機器1が電動機である場合を例にして説明する。
【0019】
機器診断装置100は、1つの漏電センサ10と、機器状態取得部としての状態検知センサ20と、制御部としての制御装置30と、報知部としての表示部40とを有する。
【0020】
〈漏電センサ10の構成〉
図2は、図1に示される漏電センサ10の構成の一例を示す斜視図である。漏電センサ10は、電線ケーブル3a~3cに流れる電流に応じた波形(各電線ケーブル3a~3cに流れる電流を総和したもの)の検出信号を出力する。すなわち、各電線ケーブル3a~3cに流れる電流の総和が零にならない場合には、電路において漏電が発生していることを意味する。漏電センサ10は、いわゆるアクティブ方式のセンサである。漏電センサ10は、例えば、フラックスゲート型磁気センサを応用した電流センサである。
【0021】
漏電センサ10は、鉄心部としての円筒状の磁性体コア11と、第1のコイルとしての励磁コイル12と、第2のコイルとしての検出コイル13とを有する。励磁コイル12及び検出コイル13は、磁性体コア11に巻き付けられている。
【0022】
励磁コイル12には、後述する図6に示される漏電センサ駆動部31から出力されるセンサ駆動信号が印加される。センサ駆動信号は、例えば、交流電流信号である。駆動電流としての交流電流(以下、「励磁電流」とも呼ぶ。)が励磁コイル12に流れることで、磁性体コア11が周期的に磁気飽和する。検出コイル13は、励磁コイル12に励磁電流が流れたときに発生する誘導起電力を示す信号を検出信号として出力する。なお、漏電センサ10は、漏電センサ駆動部31(図6参照)から出力されるセンサ駆動信号に基づいて動作するセンサであれば、他のセンサであってもよい。例えば、漏電センサ10は、高感度磁気センサ又は磁気センサデバイスを用いた電流センサ、光ファイバを利用した電流センサであってもよい。
【0023】
図3は、図2に示される漏電センサ10の電線ケーブル3a~3c上における配置の一例を示す図である。図3に示されるように、漏電センサ10は、電線ケーブル3a~3cが磁性体コア11の中空部11aを貫通するように配置されている。漏電センサ10は、電線ケーブル3a~3cに流れる三相電流を総和した零相電流を検出する。ここで、零相電流とは、電線ケーブル3a~3c及び負荷機器1から絶縁抵抗及び浮遊容量を介してアース9に流れる漏洩電流Iaと等価である。なお、図3では、漏洩電流Iaが負荷機器1からアース9に流れる例が示されている。また、以下の説明では、零相電流に符号Iを付して説明する。
【0024】
図2及び3では、説明の理解を容易にするために、励磁コイル12及び検出コイル13が磁性体コア11の一部に巻き付けられており、励磁コイル12の巻数が検出コイル13の巻数より多い例が示されている。なお、巻きムラ及び外部磁界による出力の変動を抑制するために、励磁コイル12及び検出コイル13は、磁性体コア11の全周に均等に巻き付けられていてもよい。また、励磁コイル12及び検出コイル13のそれぞれの巻数についても、図2及び3に示される巻数に限定されない。例えば、検出コイル13の巻数が励磁コイル12の巻数より多くてもよく、励磁コイル12の巻数は検出コイル13の巻数と同じであってもよい。
【0025】
また、図2及び3に示す例では、励磁コイル12及び検出コイル13は、磁性体コア11に直接巻き付けられているが、磁性体コア11が封入された樹脂製のケースの外面に巻き付けられていてもよい。これにより、励磁コイル12及び検出コイル13の巻き付け時に磁性体コア11に生じる応力である巻線応力によって、磁性体コア11の特性が劣化することを防止できる。また、励磁コイル12と検出コイル13とは、磁性体コア11を介して磁気的に結合しているが、励磁コイル12及び検出コイル13を単一のコイルとして磁性体コア11に結合してもよい。更に、漏電センサ10は、円筒状の磁性体コア11に開閉機能が設けられた、クランプ開閉型漏電センサであってもよい。
【0026】
漏電センサ10は、後述する図6に示される漏電センサ駆動部31及び第1の信号収集部32に接続されている。具体的には、漏電センサ10の励磁コイル12が漏電センサ駆動部31に接続され、検出コイル13が第1の信号収集部32に接続されている。
【0027】
〈漏電センサ10の動作原理〉
次に、漏電センサ10の動作原理について説明する。まず、図4(A)から(D)を用いて、零相電流Iの電流値が0である場合の漏電センサ10の動作原理について説明する。図4(A)は、図2及び3に示される磁性体コア11の磁気特性を示すB-H曲線である。図4(A)において、縦軸は、磁束密度Bの大きさを示し、横軸は、励磁コイル12に励磁電流(交流電流)が流れたときに発生する励磁磁界(以下、「交流磁界H」とも呼ぶ。)の大きさを示す。図4(A)に示されるように、磁性体コア11では、交流磁界Hの大きさが飽和磁界H、-Hに達した場合、磁束密度Bが飽和する。
【0028】
図4(B)は、零相電流Iの電流値が0である場合の磁性体コア11における交流磁界Hの波形W11を示すグラフである。図2及び3に示される励磁コイル12に三角波形状の励磁電流が通電された場合、交流磁界Hの波形W11は、正負対称の波形を示す。なお、励磁コイル12の巻数をN、励磁電流をI、磁性体コア11の平均半径をrとしたとき、交流磁界Hは、以下の式(1)によって表される。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、磁性体コア11の断面積をS、磁性体コア11を通過する磁束をφとしたとき、磁束φは、磁束密度Bと断面積Sとの積である。図4(C)は、零相電流Iの電流値が0である場合の磁性体コア11を通過する磁束φの時間変化を示すグラフW12である。図4(A)及び(C)に示されるように、磁性体コア11の磁束密度Bが飽和しているときに、磁束φの時間変化は0である。図4(C)に示されるように、零相電流Iの電流値が0である場合、磁束φが正であるときの時間変化が0である周期tは、磁束φが負であるときの時間変化が0である周期tと同じである。
【0031】
次に、零相電流Iの電流値が0であるときに、検出コイル13(図2及び3参照)に生じる誘導起電力を示す出力電圧をV、検出コイル13の巻数をNとしたとき、出力電圧Vは、ファラデーの電磁誘導の法則に従って、以下の式(2)によって表される。
【0032】
【数2】
【0033】
ここで、磁性体コア11の断面積Sは定数である。また、磁性体コア11の透磁率をμとしたとき、磁束密度Bは透磁率μと交流磁界Hとの積であるため、式(2)を以下の式(3)に変形することができる。
【0034】
【数3】
【0035】
式(3)において、μは真空の透磁率を示し、μは磁性体コア11の比透磁率を示す。実施の形態1では、真空の透磁率μは、例えば、4π×10-7(H/m)である。上述した式(2)に示されるように、出力電圧Vは、磁束φの時間変化に比例する。磁束φは磁束密度Bと磁性体コア11の断面積Sとの積であり、当該断面積Sは定数であるため、磁束密度Bの時間変化に応じた出力電圧Vが得られる。
【0036】
図4(D)は、零相電流Iの電流値が0である場合の出力電圧Vの波形W13を示すグラフである。図4(A)、(C)及び(D)に示されるように、磁束密度Bの時間変化が0である場合、すなわち、磁束密度Bが飽和しているとき、出力電圧Vも0である。図4(A)に示されるように、磁性体コア11のB-H曲線は原点対称の曲線であるため、出力電圧Vが0となる周期は、交流磁界Hの周波数の2倍の周期で繰り返される。図4(D)に示されるように、磁束φの変化が正であるときの出力電圧Vが0である間隔tは、磁束φの変化が負であるときの出力電圧Vが0である間隔tと同じである。
【0037】
次に、図5(A)から(D)を用いて、零相電流Iの電流値が0でない場合の漏電センサ10の動作原理について説明する。以下の説明において、零相電流Iによって、磁性体コア11(図2及び3を参照)に発生する励磁磁界をHとする。励磁磁界Hは、アンペールの法則に従って、以下の式(4)によって表される。式(4)において、rは、磁性体コア11の平均半径を示す。
【0038】
【数4】
【0039】
図5(A)は、図2及び3に示される磁性体コア11のB-H曲線を示すグラフである。図5(A)において、縦軸は、磁束密度Bの大きさを示し、横軸は、励磁磁界Hの大きさを示す。励磁磁界Hは、励磁コイル12に励磁電流が流れたときに発生する交流磁界Hと、上述した励磁磁界Hとの和である。零相電流Iの電流値が0でない場合、磁性体コア11は、図4(A)と同様に、励磁磁界Hの大きさが飽和磁界H、-Hにした場合、磁束密度Bが飽和する。
【0040】
図5(B)は、零相電流Iの電流値が0でない場合の磁性体コア11に印加される励磁磁界Hの波形W21を示すグラフである。ここで、零相電流Iが直流電流である場合、当該直流電流によって発生した励磁磁界Hは、直流のバイアス磁界として、交流磁界Hに重畳される。そのため、図5(B)に示されるように、励磁磁界Hの波形W21は、正負非対称の波形を示す。
【0041】
図5(C)は、零相電流Iの電流値が0でない場合の磁性体コア11を通過する磁束φの時間変化を示すグラフW22である。図5(C)に示されるように、零相電流Iの電流値が0でない場合、磁束φが正であるときの時間変化が0である周期tは、磁束φが負であるときの時間変化が0である周期tと異なる。これは、図5に示される励磁磁界Hの波形W21は、正負非対称の波形を示すためである。
【0042】
図5(D)は、零相電流Iの電流値が0でないときの検出コイル13に生じる出力電圧Vの波形W23を示すグラフである。図5(D)に示されるように、零相電流Iの電流値が0でないとき、出力電圧Vが0である間隔は一定ではない。具体的には、図5(D)に示される磁束φの変化が正であるときの出力電圧Vが0である間隔tは、磁束φの変化が負であるときの出力電圧Vが0である間隔tより長い。
【0043】
図5(D)に示される出力電圧Vの変化は、励磁磁界Hの周波数fの2倍の周期で得られる。よって、図5(D)に示される出力電圧Vの波形W23から励磁磁界Hの周波数fの2倍に相当する成分(すなわち、第2次高調波成分)V2fのみを抽出することによって、被測定電流である零相電流I(すなわち、漏洩電流)を算出することができる。なお、第2次高調波成分V2fの抽出には、励磁磁界Hの制御と同期するロックインアンプが用いられてもよい。また、第2次高調波成分V2fの抽出には、アナログ回路によって構築されたバンドパスフィルタ、デジタル回路によって構築されたデジタルフィルタであってもよい。また、マイクロコンピュータを用いることでフーリエ演算によって算出された特定の周波数成分を第2次高調波成分V2fとして抽出してもよい。
【0044】
次に、零相電流Iと検出コイル13に生じる出力電圧Vとの関係について説明する。図5(D)に示される出力電圧Vの波形W23についてフーリエ級数展開を行うと以下の式(5)が得られる。式(5)において、nは、1以上の整数である。
【0045】
【数5】
【0046】
式(5)において、nが偶数であるとき、フーリエ係数a=0であり、フーリエ係数a=0である。また、出力電圧Vの第n次高調波成分Vnfは、以下の式(6)によって表される。
【0047】
【数6】
【0048】
式(6)において、fは励磁磁界Hの周波数を示し、Hは磁性体コア11の飽和磁界を示し、Hは励磁磁界Hの最大値を示す。式(6)にn=2を代入すると、以下の式(7)が算出される。
【0049】
【数7】
【0050】
上述した式(4)を式(7)に代入することによって、以下の式(8)が得られる。
【0051】
【数8】
【0052】
式(8)に示されるように、出力電圧Vの第2次高調波成分V2fは、零相電流Iに比例する。また、式(7)及び(8)に示されるように、第2次高調波成分V2fは、励磁磁界Hの周波数f、検出コイル13の巻き数N、励磁磁界Hの最大値H、磁性体コア11の飽和磁界H、磁性体コア11の比透磁率μ及び磁性体コア11の断面積Sなどに依存する。
【0053】
式(8)の算出にあたって、励磁磁界Hの波形が三角波である場合を例にして説明したが、励磁磁界Hの波形が正弦波であっても、係数は異なるが、第2次高調波成分V2fが依存するパラメータは同じである。また、式(8)の算出にあたって、零相電流Iが直流電流である場合を例にして説明したが、サンプリング条件を調整することで、零相電流Iが交流電流であっても算出することができる。当該サンプリング条件は、励磁磁界Hの周波数を零相電流Iの周波数に対して2倍以上にする等である。
【0054】
〈状態検知センサ20の構成〉
次に、上述した図1に示される状態検知センサ20の構成について説明する。状態検知センサ20は、負荷機器1の状態を示す物理量を取得する。状態検知センサ20は、例えば、負荷機器1の振動を測定する振動センサである。なお、状態検知センサ20は、負荷機器1の温度を測定する温度センサ又は赤外線センサであってもよい。当該温度センサ又は赤外線センサは、負荷機器1の過熱領域を検出する。また、状態検知センサ20は、負荷機器1の動きを検出するモーションセンサであってもよい。
【0055】
また、状態検知センサ20は、負荷機器1における放電の有無を検出する電磁波センサであってもよい。当該電磁波センサは、例えば、コイル又は磁気センサを有することで、放電によって発生する電磁波ノイズを検出する。また、状態検知センサ20は、負荷機器1の動作時の異音(「変音」とも呼ぶ。)を検出する異音センサ(例えば、マイク)であってもよい。また、状態検知センサ20は、負荷機器1における漏水の有無を検出する漏水センサ又は負荷機器1における漏油の有無を検出する漏油センサであってもよい。また、状態検知センサ20は、負荷機器1における発煙の有無を検出する発煙センサであってもよい。なお、状態検知センサ20は、負荷機器1の状態を直接的又は間接的に検出可能であれば、任意の方法で配置されていればよい。
【0056】
また、機器状態取得部としての状態検知センサ20は、負荷機器1及び電源部の出力におけるEMC(Electromagnetic Compatibility)に関連する電磁ノイズ放出の有無を検出するノイズ計であってもよい。当該ノイズ計は、例えば、コイル又はノイズの周波数に合わせたアンテナ(ダイポールアンテナ、八木アンテナ(登録商標))を有することで、負荷機器1及び電源部の出力に搭載された各種フィルタの劣化により増大し、空間中を伝搬するEMC関連の電磁ノイズを検出する。また、電源、信号、グランドライン(配線)を介してもEMC関連の電磁ノイズは伝搬するため、ノイズ計は高周波の読みとりに対応した電圧読取器の機能を有するものであってもよい。
【0057】
〈制御装置30の構成〉
次に、制御装置30の構成について説明する。図6は、実施の形態1に係る制御装置30の構成を示すブロック図である。図6に示されるように、制御装置30は、漏電センサ駆動部31と、第1の信号収集部32と、第1の信号処理部33とを有する。
【0058】
漏電センサ駆動部31は、励磁コイル12(図2及び3参照)に通電する励磁電流の電流値、励磁電流の周波数f及び励磁電流の波形を制御する。なお、漏電センサ駆動部31は、励磁電流の電流値、励磁電流の周波数f及び励磁電流の波形の少なくとも1つを制御してもよい。
【0059】
第1の信号収集部32は、検出コイル13から出力される出力電圧を示す信号(以下、「検出信号」とも呼ぶ。)が入力される信号入力部である。第1の信号収集部32は、漏電センサ10から出力される検出信号を、所望の信号形態で取得してもよい。例えば、検出信号がアナログ信号である場合、第1の信号収集部32は、当該アナログ信号をデジタル信号に変換してもよい。
【0060】
第1の信号処理部33は、第1の信号収集部32に記憶された検出電圧信号及び漏電センサ10の駆動条件に基づいて、検出電圧信号の第2次高調波成分を抽出する。第1の信号処理部33は、漏電センサ駆動部31から出力される励磁電流の周波数fに応じて駆動させる必要がある。このように、漏電センサ駆動部31と第1の信号処理部33とを同期させることで、漏電センサ10(図1参照)によって検出された零相電流に対応するセンサ出力の大きさ(すなわち、電流検出感度)及び検出可能な零相電流の周波数帯域を調整することができる。すなわち、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを調整することができる。なお、第1の信号処理部33は、上述した図5(D)に示される出力電圧Vの時間変化を直接測定してもよいし、磁性体コア11が磁気飽和に至るまでの時間を計測してもよい。
【0061】
制御装置30は、第2の信号収集部34と、第2の信号処理部35とを更に有する。
【0062】
第2の信号収集部34は、状態検知センサ20から出力される負荷機器1の状態を示す状態信号(以下、「機器状態信号」とも呼ぶ。)が入力される信号入力部である。第2の信号収集部34は、状態検知センサ20から出力される信号を所望の信号形態で取得してもよい。第2の信号収集部34は、例えば、状態検知センサ20から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換してもよい。
【0063】
第2の信号処理部35は、第2の信号収集部34に記憶された機器状態信号から特徴量を抽出する。例えば、第2の信号処理部35は、出力信号の波形の振幅値又は実効値を算出する。また、第2の信号処理部35は、予め定められた閾値を超えている値を特徴量として算出してもよい。更に、第2の信号処理部35は、周波数スペクトル又は主要周波数成分の分析によって特徴量を算出してもよい。
【0064】
ここで、負荷機器1の状態に応じて、電線ケーブル3a~3cを流れる漏洩電流の電流値が増減する場合がある。また、人体の保護及び火災防止などの絶縁監視を行うために漏洩電流の定格感度電流では、負荷機器1の状態の変化に応じた漏洩電流の変化をとらえられない場合がある。
【0065】
具体的には、漏電センサ10を用いて絶縁監視を行う目的又は漏電センサ10の用途に応じて、定格感度電流が異なる。例えば、絶縁監視を行う目的が人体保護である場合、定格感度電流は5mA又は30mAが用いられる。また、漏電センサ10の定格に応じて、漏電センサ10が遮断動作を行う電流範囲が異なる。例えば、定格感度電流が5mAである場合には、4mAから6mAまでの動作電流範囲内で、定格感度電流が30mAである場合には、15mAから30mAまでの動作電流範囲内で動作するように規格が定められているため、漏電センサ10の感度は固定値である。なお、漏電センサに備えられた感度調整トリマ又は感度調整ダイヤルによって、漏電センサの後段に設けられた増幅アンプのゲインを調整することで感度を調整できる場合もあるが、通常の運転状況下で頻繁に感度を調整することは困難である。
【0066】
実施の形態1では、制御装置30は、動作モード決定部36と、診断部としての異常判定部37とを更に有する。
【0067】
動作モード決定部36は、状態検知センサ20から出力される機器状態信号に基づいて漏電センサ10の動作モードを、通常時の動作モードである漏電検出用の動作モード又は異常診断用の動作モードに決定する。動作モード決定部36は、第2の信号収集部34及び第2の信号処理部35を介して提供される機器状態信号の特徴量に基づいて、漏電センサ10の動作モードを決定(設定)する。動作モード決定部36は、決定された動作モードを示す動作モード設定信号を漏電センサ駆動部31に出力する。漏電センサ駆動部31は、当該動作モード設定信号に基づいて、励磁コイル12(図2及び3参照)に通電する励磁電流の電流値、励磁電流の周波数f及び励磁電流の波形の少なくとも1つを制御する。これにより、漏電センサ駆動部31は、漏電センサ10を、動作モード決定部36によって決定された動作モードで動作させる。
【0068】
以下の説明において、通常時の漏電検出用の動作モードを「通常監視モード」、異常診断用の動作モードを「異常診断モード」とも呼ぶ。「通常監視モード」とは、負荷機器1の通常時の運転状況を監視するモードである。「異常診断モード」とは、負荷機器1の異常診断を行うために、漏電センサ4の計測ダイナミックレンジを調整して漏電電流を計測するモードである。ここで、計測ダイナミックレンジとは、漏電センサ10の電流検出感度及び周波数帯域を言う。「異常診断モード」の計測ダイナミックレンジは、「通常監視モード」の計測ダイナミックレンジより広い。
【0069】
次に、動作モード決定部36が、動作モードに応じて漏電センサ10のダイナミックレンジを調整する一例について説明する。動作モードが「通常監視モード」であるときの計測ダイナミックレンジは、通常監視用の第1のダイナミックレンジである。第1のダイナミックレンジでは、検出感度が低く、周波数帯域が狭いダイナミックレンジである。例えば、第1のダイナミックレンジでは、定格電流300mA、周波数50Hz/60Hzのように設定されてもよい。
【0070】
動作モードが「異常診断モード」であるときの計測ダイナミックレンジは、漏電検出用の第2のダイナミックレンジである。第2のダイナミックレンジでは、検出感度が高く、周波数帯域が広いダイナミックレンジである。例えば、第2のダイナミックレンジでは、定格電流10mA、DC~周波数10kHzのように設定されてもよい。
【0071】
動作モード決定部36が、漏電センサ10の動作モードを「通常監視モード」に設定した場合、漏電センサ駆動部31は励磁コイル12(図2参照)に出力するセンサ駆動信号を制御することで、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを上述した「第1のダイナミックレンジ」に設定する。このとき、第1の信号処理部33は、第1の信号収集部32から提供される検出コイル13の出力信号に基づいて零相電流の電流値を検出する。異常判定部37は、異常電流の電流値に基づいて負荷機器1の異常の有無を判定する。
【0072】
動作モード決定部36が漏電センサ10の動作モードを「異常診断モード」に切り替えた場合、漏電センサ駆動部31は励磁コイル12(図2参照)に出力するセンサ駆動信号を制御することで、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを上述した「第2のダイナミックレンジ」に設定する。このとき、第1の信号処理部33は、第1の信号収集部32から提供される検出コイル13の出力信号とセンサ駆動信号とを同期させて特定の周波数成分のみを抽出してもよい。動作モード決定部36は、例えば、漏電センサ10の電流検出感度を調整することで、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを調整する。また、動作モード決定部36は、漏電センサ10の周波数帯域を調整することで、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを調整してもよい。更に、動作モード決定部36は、漏電センサ10の電流検出感度及び周波数帯域の両方を調整することで、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを調整してもよい。
【0073】
動作モード決定部36は、判定結果を示す信号、具体的には、動作モードの切り替えの有無の判定結果を示す信号を異常判定部37に出力する。
【0074】
異常判定部37は、第1の信号処理部33から出力される信号、第2の信号処理部35から出力される信号及び動作モード決定部36から出力される判定結果を示す信号に基づいて、負荷機器1における異常の有無を判定する。このように、異常判定部37は、種類の異なる複数のセンサから出力される情報に基づいて負荷機器1の異常の有無を診断する。よって、機器診断装置100の診断の信頼性を高めることができる。このように、機器診断装置100では、負荷機器1の異常の有無の判定にあたって、漏電センサ10と状態検知センサ20とが連動している。
【0075】
〈表示部40の構成〉
次に、図1に戻って、表示部40の構成について説明する。表示部40は、異常判定部37における診断の結果(すなわち、異常の有無についての判定の結果)を報知する。表示部40は、例えば、当該判定結果を示す情報を表示するディスプレイなどである。なお、機器診断装置100は、表示部40の代わりに、遮断器、リレー、警告ブザーなどの保安機器を報知部として有していてもよい。このように、機器診断装置100は、異常診断後の負荷機器1の運用方法に対応する手段によって、異常判定部37における判定結果をユーザに報知すればよい。
【0076】
なお、図1及び6では、機器診断装置100の各構成要素の接続形態は、有線及び無線のいずれであってもよい。また、機器診断装置100は、単一の状態検知センサ20に限られず、複数の状態検知センサ20を有していてもよい。また、機器診断装置100は、種類の異なる複数の状態検知センサ20を有していてもよい。また、図1に示される負荷機器1と電源部2との間には、インバータ制御機器が設けられていてもよい。これにより、機器診断装置100を、三相交流の周波数を可変できる電路に適用することができる。また、機器診断装置100を、電源部2が太陽電池又は燃料電池などの直流電源であることで直流電流が流れる電路に適用することができる。
【0077】
〈ハードウェア構成〉
次に、機器診断装置100のハードウェア構成について説明する。図7(A)は、機器診断装置100のハードウェア構成を概略的に示す図である。図7(A)に示されるように、機器診断装置100の制御装置30は、例えば、ソフトウェアとしてのプログラムを格納する記憶装置としてのメモリ30aと、メモリ30aに格納されたプログラムを実現する情報処理部としてのプロセッサ30bとを用いて(例えば、コンピュータによって)実現することができる。プロセッサ30bには、漏電センサ10、状態検知センサ20及び表示部40が、バス30dを介して接続されている。なお、制御装置30の構成要素の一部が、図7(A)に示されるメモリ30aと、プログラムを実行するプロセッサ30bとによって実現されてもよい。また、制御装置30は、電気回路によって実現されてもよい。
【0078】
図7(B)は、機器診断装置100のハードウェア構成の他の例を概略的に示す図である。図7(B)に示されるように、制御装置30は、単一回路又は複合回路等の専用のハードウェアとしての処理回路30cを用いて実現されていてもよい。この場合、制御装置30の機能は、処理回路30cによって実現される。
【0079】
〈動作〉
次に、実施の形態1に係る機器診断装置100の動作について説明する。図8は、実施の形態1に係る機器診断装置100の動作を示すフローチャートである。以下では、漏電センサ10の動作モードを、「通常監視モード」から「異常診断モード」に切り替える例を説明する。
【0080】
先ず、ステップST1において、漏電センサ駆動部31は、漏電センサ10の動作モードを「通常監視モード」に設定する。
【0081】
ステップST2において、動作モード決定部36は、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを、上述した第1のダイナミックレンジに設定する。
【0082】
ステップST3において、状態検知センサ20は、負荷機器1の状態を示す信号である機器状態信号を取得する。
【0083】
ステップST4において、第2の信号処理部35は、状態検知センサ20から提供される機器状態信号に対して、信号処理(例えば、デジタル信号への変換など)を行う。
【0084】
ステップST5において、動作モード決定部36は、第2の信号処理部35から提供される機器状態信号が予め定められた切替条件を満たすか否かを判定する。動作モード決定部36は、切替条件を満たすと判定した場合(つまり、ステップST5において、判定がYesである場合)、処理をステップST6に進める。
【0085】
状態検知センサ20が振動センサである場合、動作モード決定部36は、負荷機器1で発生した振動に応じた信号、すなわち、負荷機器1の速度(単位:m/s)の振幅に応じた信号を取得することができる。動作モード決定部36は、振動センサから出力される信号に基づいて漏電センサ10の動作モードを切り替える。例えば、動作モード決定部36は、信号の振幅の大きさが予め定められた閾値Th以上である場合に切替条件を満たすと判断して、漏電センサ10の動作モードを「異常診断モード」に切り替える。なお、振動センサは、負荷機器1の変位量(単位:m)又は加速度(単位:m/s)を検出してもよく、動作モード決定部36は当該負荷機器1の変位量(又は加速度)と閾値Thとを比較することで、漏電センサ10の動作モードを切り替えてもよい。なお、動作モード決定部36は、漏電センサ10から出力される検出信号を電気信号として評価する場合、漏電センサ10の定格電圧の1/2又は1/3の電圧値と閾値Thとを比較してもよい。
【0086】
また、状態検知センサ20が異音センサである場合、動作モード決定部36は、負荷機器1で発生した異音に応じた信号が提供される。動作モード決定部36は、例えば、異音センサから出力される信号に対して周波数解析を行うことで周波数スペクトルを取得する。動作モード決定部36は、例えば、当該周波数スペクトルの特定の周波数における振幅値が閾値Th以上である場合に切替条件を満たすと判断して、漏電センサ10の動作モードを「異常診断モード」に切り替える。なお、動作モード決定部36は、特定の周波数帯又は複数の周波数に基づいて漏電センサ10の動作モードを切り替えてもよい。
【0087】
一方、動作モード決定部36は、負荷機器1で発生した振動又は音に応じた信号の振幅が予め定められた閾値Th未満である場合(すなわち、ステップST6において判定がNoである場合)、上記切替条件を満たさないと判断して、処理をステップST8に進める。このとき、動作モード決定部36は、漏電センサ10の動作モードを通常監視モードに維持する。
【0088】
ステップST6において、漏電センサ駆動部31は、漏電センサ10の動作モードを、「通常監視モード」から「異常診断モード」に切り替える。
【0089】
ステップST7において、動作モード決定部36は、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを、上述した第2のダイナミックレンジに変更する。
【0090】
ステップST8において、漏電センサ10は、電線ケーブル3a~3cから漏洩する電流の電流値を検出する。
【0091】
ステップST9において、第1の信号処理部33は、漏電センサ10から提供される電線ケーブル3a~3cから漏洩する電流に応じた波形の検出信号に対して、信号処理(例えば、デジタル信号への変換など)を行う。
【0092】
ステップST10において、異常判定部37は、第1の信号処理部33から提供される漏電センサ10の検出信号及び第2の信号処理部35から提供される機器状態信号に基づいて、負荷機器1における異常の発生の有無を判定する。
【0093】
異常判定部37は、漏電センサ10及び状態検知センサ20の各々から出力される時系列データに基づいて、負荷機器1における異常の発生の有無についての判定(以下、「異常判定」とも呼ぶ。)を行う。実施の形態1では、異常判定部37は、各センサから出力される時系列データとしての信号波形の振幅値と閾値とを比較することで、負荷機器1における異常の発生の有無を判定する。具体的には、漏電センサ10から出力される信号波形の振幅値及び状態検知センサ20から出力される信号波形の振幅値の両方が閾値を超えている場合、異常判定部37は、負荷機器1において、異常が発生していると判断する。
【0094】
また、異常判定部37は、漏電センサ10及び状態検知センサ20から出力される各信号のS/N比を比較することによって、負荷機器1における異常の発生の有無を判定してもよい。例えば、状態検知センサ20から出力される機器状態信号よりも漏電センサ10から出力される検出信号に基づいて異常判定が行い易い場合、異常判定部37は、漏電センサ10及び状態検知センサ20の各検出結果に重み付けを行うなど、当該検出結果に優先順位を付けることで異常判定を行ってもよい。なお、異常判定部37は、上述した時系列データに基づいて異常判定を行う場合、当該時系列データに対して周波数解析処理を行ってもよく、当該時系列データが特徴量を示す信号を含んでいるか否かを分析する処理を行ってもよい。
【0095】
そして、異常判定部37は、第1の信号収集部32から提供される漏電センサ10の検出信号と漏電センサ駆動部31から提供されるセンサ駆動信号(励磁電流の電流値など)とに基づいて、漏電電流の時系列データを生成する。異常判定部37は、2種類の時系列データ、すなわち、漏電電流の時系列データと第2の信号処理部35から提供される状態検知信号の時系列データとに基づいて、負荷機器1における異常の発生の有無を判定する。ここで、「時系列」とは、時間の経過に従って定期的に計測して得た値を整理又は配列した系列のことである。
【0096】
ステップST11において、表示部40は、異常判定部37の判定結果を表示する。
【0097】
〈実施の形態1の効果〉
以上に説明した実施の形態1によれば、機器診断装置100は、漏電センサ10と、負荷機器1の状態を取得する状態検知センサ20とを有する。また、機器診断装置100の動作モード決定部36は、漏電センサ10が通常監視モードで動作しているときに負荷機器1の状態が切替条件を満たす場合、漏電センサ10の動作モードを異常診断用の動作モードに切り替える。これにより、負荷機器1の通常の運転状況下で漏電センサ10の検出感度を頻繁に変更する必要がないため、負荷機器1の診断を容易に行うことができる。言い換えれば、負荷機器1の通常時の漏電の有無の監視と負荷機器1についての異常診断を、1つの漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを調整することで実施することができる。よって、検出感度の異なる複数の漏電センサ10を備える必要がないため、低コストの機器診断装置100を提供することができる。
【0098】
また、実施の形態1によれば、機器診断装置100は、漏電センサ10から出力される検出信号と状態検知センサ20から出力される機器状態信号とに基づいて負荷機器1の診断を行う。これにより、複数の種類のセンサから出力される信号に基づいて負荷機器1における異常の発生の有無を診断することができる。よって、信頼性の高い機器診断装置100を提供することができる。したがって、低コストであって、負荷機器1の診断が容易で且つ当該診断の信頼性が高い機器診断装置100を提供することができる。
【0099】
《実施の形態1の変形例》
図9は、実施の形態1の変形例に係る機器診断装置100Aの構成を示すブロック図である。実施の形態1の変形例に係る機器診断装置100Aは、状態検知センサ20の代わりに、機器状態取得部としての周辺環境情報取得部20Aを有する点で、実施の形態1に係る機器診断装置100と相違する。これ以外の点については、実施の形態1の変形例に係る機器診断装置100Aは、実施の形態1に係る機器診断装置100と同じである。そのため、以下の説明では、図1を参照する。
【0100】
図9に示されるように、機器診断装置100Aは、漏電センサ10と、機器状態取得部としての周辺環境情報取得部20Aと、制御装置30と、表示部40とを有する。
【0101】
周辺環境情報取得部20Aは、負荷機器1(図1を参照)の周辺環境の状態を示す周辺環境情報を検知する。周辺環境情報は、例えば、負荷機器1が設置される設置場所における天候、設置場所における雨量、設置場所における照度、設置場所における風速、設置場所における温度及び設置場所における湿度のうちの少なくとも1つを含む。なお、「設置場所」とは、負荷機器1が設置される場所の周辺を含む。
【0102】
周辺環境情報取得部20Aは、例えば、負荷機器1の設置場所における降雨量を検出する降雨センサである。周辺環境情報取得部20Aは、負荷機器1の設置場所における照度を検出する照度センサであってもよく、当該設置場所における風速を検出する風速センサであってもよい。また、周辺環境情報取得部20Aは、当該設置場所における温度を検出する温度センサであってもよく、当該設置場所における湿度を検出する湿度センサなどである。また、周辺環境情報取得部20Aは、例えば、気象情報提供サービスのサーバにアクセスして、負荷機器1の設置場所における天候を示す天候情報を取得してもよい。周辺環境情報取得部20Aは、負荷機器1の周辺環境を示す状態信号としての周辺環境信号を、第2の信号収集部34に入力する。なお、周辺環境情報取得部20Aは、負荷機器1の周辺環境を直接的又は間接的に検出可能であれば、任意の方法で配置されていればよい。
【0103】
負荷機器1の周辺環境は、負荷機器1の運転状況と連動していないが、外的要因として負荷機器1の動作に影響を及ぼす場合がある。実施の形態1の変形例では、制御装置30の動作モード決定部36は、漏電センサ10が通常監視モードで動作しているときに負荷機器1の周辺環境が予め定められた切替条件を満たす場合、漏電センサ10の動作モードを異常診断用の動作モードに切り替える。言い換えれば、動作モード決定部36は、負荷機器1の周辺環境が切替条件を満たす場合、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを、上述した検出感度の高い第2のダイナミックレンジに切り替える。なお、負荷機器1の周辺環境が動作モードの切替条件を満たす場合、動作モード決定部36は、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを、周波数帯域の広いダイナミックレンジに切り替えることもできる。また、負荷機器1の周辺環境が動作モードの切替条件を満たす場合、動作モード決定部36は、漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを、検出感度が高く且つ周波数帯域の広いダイナミックレンジに切り替えることもできる。
【0104】
異常判定部37は、漏電センサ10及び周辺環境情報取得部20Aの各々から出力される時系列データに基づいて、負荷機器1における異常判定を行う。具体的には、漏電センサ10から出力される信号波形の振幅値が閾値を超えていて且つ周辺環境情報取得部20Aから出力される周辺環境情報が予め定められた条件を満たしている場合、異常判定部37は、負荷機器1において、異常が発生していると判断する。
【0105】
〈実施の形態1の変形例の効果〉
以上に説明した実施の形態1の変形例によれば、機器診断装置100Aは、漏電センサ10と、負荷機器1の周辺環境を取得する周辺環境情報取得部20Aと、動作モード決定部36とを有する。動作モード決定部36は、負荷機器1の周辺環境が切替条件を満たす場合、漏電センサ10の動作モードを異常診断用の動作モードに切り替える。これにより、負荷機器1の通常の運転状況下で漏電センサ10の検出感度を頻繁に変更する必要がないため、負荷機器1の診断を容易に行うことができる。言い換えれば、負荷機器1の通常時の漏電の有無の監視と負荷機器1についての異常診断を、1つの漏電センサ10の計測ダイナミックレンジを調整することで実施することができる。よって、検出感度の異なる複数の漏電センサ10を備える必要がないため、低コストの機器診断装置100Aを提供することができる。
【0106】
また、実施の形態1の変形例によれば、機器診断装置100Aは、漏電センサ10から出力される検出信号と周辺環境情報取得部20Aから出力される周辺環境信号とに基づいて負荷機器1の診断を行う。これにより、複数の種類のセンサから出力される信号に基づいて負荷機器1における異常の発生の有無を診断することができる。よって、信頼性の高い機器診断装置100Aを提供することができる。したがって、低コストであって、負荷機器1の診断が容易で且つ当該診断の信頼性が高い機器診断装置100Aを提供することができる。
【0107】
《実施の形態2》
図10は、実施の形態2に係る機器診断装置200の構成を示すブロック図である。図10において、図1及び6に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、図1及び6に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態2に係る機器診断装置200の動作モード決定部は、動作モードの順序を示す動作シーケンスを決定する動作シーケンス決定部236である点で、実施の形態1に係る機器診断装置100と相違する。これ以外の点については、実施の形態2に係る機器診断装置200は、実施の形態1に係る機器診断装置100と同じである。そのため、以下の説明では、図1を参照する。
【0108】
図10に示されるように、機器診断装置200は、漏電センサ10と、状態検知センサ20と、制御装置230と、表示部40とを有する。
【0109】
制御装置230は、漏電センサ駆動部31と、第1の信号収集部32と、第1の信号処理部33と、第2の信号収集部34と、第2の信号処理部35と、動作シーケンス決定部236と、異常判定部37とを有する。
【0110】
動作シーケンス決定部236は、状態検知センサ20から第2の信号処理部35を介して提供される負荷機器1(図1参照)の状態を示す機器状態信号に基づいて漏電センサ10の動作シーケンスを決定する。
【0111】
図11は、実施の形態2に係る機器診断装置200Aの構成の他の例を示すブロック図である。図11に示されるように、機器診断装置200Aは、状態検知センサ20の代わりに、上述した図9に示される周辺環境情報取得部20Aを有していてもよい。この場合、動作シーケンス決定部236は、周辺環境情報取得部20Aから提供される周辺環境情報に基づいて漏電センサ10の動作シーケンスを決定してもよい。
【0112】
図12は、実施の形態2に係る機器診断装置200の漏電センサ10の動作シーケンスA~Dの一例を示す図である。図12に示される「動作シーケンスA」は、2種類の動作モードである通常監視モード及び異常診断モードを交互に実行するシーケンスである。具体的には、動作シーケンスAでは、負荷機器1の状態(又は、負荷機器1の周辺環境)が動作モードの切替条件を満たす場合、通常監視モードから異常監視モードへの切り替えが行われる。そして、負荷機器1の状態(又は、負荷機器1の周辺環境)が動作モードの切替条件を満たさなくなった場合、異常監視モードから通常監視モードへの切り替えが行われる。
【0113】
「動作シーケンスB」は、「通常監視モード+異常診断モード」を繰り返す実行するシーケンスである。「通常監視モード+異常診断モード」とは、通常監視モードと異常診断モードを同時に実行するモードである。
【0114】
「動作シーケンスC」は、3種類の動作モードである「通常監視モード」、「第1の異常診断モード」及び「第2の異常診断モード」の順に、漏電センサ10を動作するシーケンスである。「第1の異常診断モード」とは、第1の計測ダイナミックレンジで漏電センサ10を動作する異常診断モードである。「第2の異常診断モード」とは、第2の計測ダイナミックレンジで漏電センサ10を動作する異常診断モードである。
【0115】
動作シーケンス決定部236は、負荷機器1の状態が切替条件を満たす場合、通常監視モードから第1の異常診断モードへの切り替え、第1の異常診断モードから第2の異常診断モードへの切り替え、第2の異常診断モードから通常監視モードへの切り替えを順に行う。このように、動作シーケンスCでは、漏電センサ10が計測ダイナミックレンジの異なる2種類の異常診断モードで動作することによって、電線ケーブル3a~3c(図2参照)における漏電の有無を検出する。これにより、機器状態信号(又は、周辺環境情報)と漏電センサ10から出力される検出信号との相関関係を分析し易くなる。また、負荷機器1における異常の有無を判定するにあたって、漏電センサ10から出力される検出信号の情報量が増えるため、機器診断装置200、200Aの信頼性を高めることができる。
【0116】
「動作シーケンスD」は、2種類の動作モードである「通常監視モード+第1の異常診断モード」及び「通常監視モード+第2の異常診断モード」を交互に実行するシーケンスである。「通常監視モード+第1の異常診断モード」とは、通常監視モードと上述した第1の異常診断モードを同時に実行するモードである。また、「通常監視モード+第2の異常診断モード」とは、通常監視モードと上述した第2の異常診断モードを同時に実行するモードである。なお、漏電センサ10の動作シーケンスを構成する動作モードの種類は、3種類より多くてもよい。このように、実施の形態2では、2種類の動作モード又は3種類以上の動作モードが1セットとなることで、漏電センサ10が動作する。
【0117】
〈実施の形態2の効果〉
以上に説明した実施の形態2によれば、機器診断装置200の動作シーケンス決定部236は、状態検知センサ20における検出結果及び負荷機器1の使用環境を示す環境情報に基づいて漏電センサ10の動作シーケンスを判定する。これにより、診断モードを複数実行することができるため、負荷機器1の異常診断の判定についての情報量を増やすことができる。よって、機器診断装置200、200Aの信頼性を高めることができる。
【0118】
《実施の形態3》
図13は、実施の形態3に係る機器診断システム350の構成を示すブロック図である。図13において、図1及び6に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、図1及び6に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態3は、機器診断装置100と通信するサーバ50が異常判定部37及び動作モード決定部36と連携する点で、実施の形態1と相違する。これ以外の点については、実施の形態3は、実施の形態1と同じである。
【0119】
図13に示されるように、機器診断システム350は、機器診断装置100と、外部サーバであるサーバ50とを備える。サーバ50は、ネットワークを介して機器診断装置100と通信する。サーバ50は、例えば、クラウドサーバである。
【0120】
サーバ50は、異常判定部37と連携(共働)して負荷機器1の診断を行う。また、サーバ50は、動作モード決定部36と連携(共働)して漏電センサ10の動作モードを決定する。これにより、異常判定部37における判定結果に基づいて動作モード決定部36による切替条件を更新することができる。また、サーバ50を有しない構成(スタンドアローン型の構成)と比較して、様々なフィールドにおける情報が入力されるサーバ50を備えていることで、負荷機器1(図1参照)の診断にあたっての情報量が増えることにより、負荷機器1の診断の信頼性を高めることができる。更に、サーバ50は、人工知能などを活用して、状態検知センサ20と漏電センサ10との相関関係を分析することで、負荷機器1の診断の信頼性を高めることができる。
【0121】
図14は、実施の形態3に係る機器診断システム350の構成の他の例を示すブロック図である。図14に示されるように、機器診断システム350は、実施の形態1の変形例に係る機器診断装置100Aとサーバ50とによって構成されていてもよい。このとき、サーバ50は、人工知能などを活用して、周辺環境情報取得部20Aと漏電センサ10との相関関係を分析してもよい。
【0122】
〈実施の形態3の効果〉
以上に説明した実施の形態3によれば、機器診断システム350は、機器診断装置100と、ネットワークを介して機器診断装置100、100Aと通信するサーバ50とを備え、サーバ50は、異常判定部37と連携して負荷機器1の診断を行う。これにより、負荷機器1の診断の信頼性を高めることができる。したがって、低コストであって、負荷機器1の診断が容易で且つ当該診断の信頼性が高い機器診断システム350を提供することができる。
【0123】
また、実施の形態3によれば、サーバ50は、動作モード決定部36と連携して漏電センサ10の動作モードを決定する。これにより、異常判定部37における判定結果に基づいて動作モード決定部36による動作モードの切替条件を更新することができる。
【0124】
《実施の形態3の変形例》
図15は、実施の形態3の変形例に係る機器診断システム350Aの構成を示すブロック図である。図15において、図10に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、図10に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態3の変形例に係る機器診断システム350Aは、実施の形態2に係る機器診断装置200とサーバ50とによって構成されている点で、実施の形態3に係る機器診断システム350と相違する。これ以外の点については、実施の形態3の変形例に係る機器診断システム350Aは、実施の形態3に係る機器診断システム350と同じである。
【0125】
図15に示されるように、機器診断システム350Aは、機器診断装置200と、サーバ50とを備える。サーバ50は、ネットワークを介して機器診断装置200と通信する。サーバ50は、動作シーケンス決定部236と連携(共働)して漏電センサ10の動作シーケンスを決定する。これにより、異常判定部37における判定結果に基づいて動作シーケンス決定部236による動作シーケンスの切替条件を更新することができる。
【0126】
図16は、実施の形態3の変形例に係る機器診断システム350Aの構成の他の例を示すブロック図である。図16に示されるように、機器診断システム350Aは、上述した図11に示される機器診断装置200Aとサーバ50とによって構成されていてもよい。
【0127】
〈実施の形態3の変形例の効果〉
以上に説明した実施の形態3の変形例によれば、サーバ50は、動作シーケンス決定部236と連携して漏電センサ10の動作シーケンスを決定する。これにより、異常判定部37における判定結果に基づいて動作シーケンス決定部236による動作シーケンスの切替条件を更新することができる。
【0128】
《実施の形態4》
図17は、実施の形態4に係る機器診断システム350Bの構成を示すブロック図である。図17において、図1及び6に示される構成要素と同一又は対応する構成要素が含まれ、その構成要素には図1及び6に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態4は、複数の機器診断装置100が互いにネットワークを構成し、ネットワークを介して連携した複数の機器診断装置100が異常判定部37及び動作モード決定部36の動作を決定づける点で、実施の形態1、3と相違する。これ以外の点については、実施の形態4は、実施の形態1、3と同じである。複数の機器診断装置100によって、機器診断装置100とネットワークを介して機器診断装置100と通信する複数の別の機器診断装置群とが構成される。
【0129】
図17に示されるように、機器診断システム350Bは、複数の機器診断装置100を備える。複数の機器診断装置100は、ネットワークを介して各機器診断装置100と通信する。ネットワークは、例えば、メッシュネットワークなどの無線ネットワークである。
【0130】
ネットワーク上の各機器診断装置100は、特定の機器診断装置100の異常判定部37と連携(共働)して負荷機器1の診断を行う。また、同様にネットワーク上の各機器診断装置100は、特定の機器診断装置の動作モード決定部36と連携(共働)して漏電センサ10の動作モードを決定する。これにより、異常判定部37における判定結果に基づいて動作モード決定部36による切替条件を更新することができる。また、ネットワークを有しない構成(スタンドアローン型の構成)と比較して、様々なフィールドにおける情報が入力される各機器診断装置100の情報を活用することで、負荷機器1(図1参照)の診断にあたっての情報量が増えることにより、負荷機器1の診断の信頼性を高めることができる。更に、ネットワーク上の各機器診断装置100での分散処理による人工知能などを活用して、状態検知センサ20と漏電センサ10との相関関係を分析することで、負荷機器1の診断の信頼性を高めることができる。なお、特定の機器診断装置100の診断、分析終了後は、ネットワーク上の複数の機器診断装置100のうち一台を特定の機器診断装置100として、順次診断、分析を実行していく。
【0131】
図18は、実施の形態4に係る機器診断システム350Bの構成の他の例を示すブロック図である。図18に示されるように、機器診断システム350は、実施の形態1の変形例に係る機器診断装置100A(図9及び図14に示される)によって構成されていてもよい。このとき、ネットワーク上の各機器診断装置100Aでの分散処理による人工知能などを活用して、周辺環境情報取得部20Aと漏電センサ10との相関関係を分析してもよい。
【0132】
〈実施の形態4の効果〉
以上に説明した実施の形態4によれば、機器診断システム350Bは、複数の機器診断装置100、100Aがネットワークを介して通信を行い、複数の機器診断装置100、100Aが特定の機器診断装置100、100Aの異常判定部37と連携して負荷機器1の診断を行う。これにより、負荷機器1の診断の信頼性を高めることができ、また、サーバレス化できる。したがって、低コスト、サーバといった単一故障によるシステム障害の排除が可能であって、負荷機器1の診断が容易で且つ当該診断の信頼性が高い機器診断システム350Bを提供することができる。
【0133】
また、実施の形態4によれば、複数の機器診断装置100、100Aが特定の機器診断装置100、100Aの動作モード決定部36と連携して漏電センサ10の動作モードを決定する。これにより、異常判定部37における判定結果に基づいて動作モード決定部36による動作モードの切替条件を更新することができる。
【0134】
《実施の形態4の変形例》
図19は、実施の形態4の変形例に係る機器診断システム350Cの構成を示すブロック図である。図19において、図10に示される構成要素と同一又は対応する構成要素が含まれ、その構成要素には、図10に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態4の変形例に係る機器診断システム350Cは、実施の形態2に係る複数の機器診断装置200によって構成されている点で、実施の形態4に係る機器診断システム350Bと相違する。これ以外の点については、実施の形態4の変形例に係る機器診断システム350Cは、実施の形態4に係る機器診断システム350Bと同じである。
【0135】
図19に示されるように、機器診断システム350Cは、複数の機器診断装置200を備える。複数の機器診断装置200は、ネットワークを介して各機器診断装置200と通信する。ネットワーク上の各機器診断装置200は、特定の機器診断装置200の動作シーケンス決定部236と連携(共働)して漏電センサ10の動作シーケンスを決定する。これにより、異常判定部37における判定結果に基づいて動作シーケンス決定部236による動作シーケンスの切替条件を更新することができる。
【0136】
図20は、実施の形態4の変形例に係る機器診断システム350Cの構成の他の例を示すブロック図である。図20に示されるように、機器診断システム350Cは、上述した図11に示される機器診断装置200A(図11及び図16に示される)によって構成されていてもよい。
【0137】
〈実施の形態4の変形例の効果〉
以上に説明した実施の形態4の変形例によれば、複数の機器診断装置200、200Aがネットワークを介して通信を行い、複数の機器診断装置200、200Aが特定の機器診断装置200、200Aの動作シーケンス決定部236と連携して漏電センサ10の動作シーケンスを決定する。これにより、異常判定部37における判定結果に基づいて動作シーケンス決定部236による動作シーケンスの切替条件を更新することができる。
【符号の説明】
【0138】
1 負荷機器、 2 電源部、 3a、3b、3c 電線ケーブル、 9 アース、 10 漏電センサ、 11 磁性体コア、 11a 中空部、 12 励磁コイル、 13 検出コイル、 20 状態検知センサ、 20A 周辺環境情報取得部、 30、30A、230 制御装置、 31 漏電センサ駆動部、 32 第1の信号収集部、 33 第1の信号処理部、 34 第2の信号収集部、 35 第2の信号処理部、 36 動作モード決定部、 37 異常判定部、 50 サーバ、 100、100A、200、200A 機器診断装置、 236 動作シーケンス決定部、 350、350A、350B、350C 機器診断システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20