(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】自動着岸装置、自動着岸システム、自動着岸方法、及び自動着岸プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/12 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
G01C21/12
(21)【出願番号】P 2024508913
(86)(22)【出願日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2023023759
【審査請求日】2024-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真康
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 純一
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸司
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/085274(WO,A1)
【文献】特開2021-032773(JP,A)
【文献】特開2020-069909(JP,A)
【文献】特開2019-200177(JP,A)
【文献】国際公開第2021/199674(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象バースにおいて、cm級の位置を標定するためのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を備えるGNSS/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御する自動着岸装置であって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成部と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成部と
を備える自動着岸装置であって、
前記対象レーダは
、ミリ波レーダであ
り、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した姿勢角を用いて水平方向を測定する自動着岸装置。
【請求項2】
前記GNSS/INS複合航法装置は、前記対象レーダが観測した速度及び方位に基づいて前記GNSS/INS複合航法装置の算出結果を補正する請求項1に記載の自動着岸装置。
【請求項3】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御する自動着岸装置であって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成部と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成部と
を備える自動着岸装置であって、
前記対象レーダは
、ミリ波レーダであり、
前記GNSS/INS複合航法装置が算出した姿勢角を用いて水平方向を測定し、
前記GNSS/INS複合航法装置は、前記ミリ波レーダが観測した速度及び方位に基づいて前記GNSS/INS複合航法装置の算出結果を補正する自動着岸装置。
【請求項4】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御する自動着岸装置であって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成部と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成部と
を備える自動着岸装置であって、
前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距する際に、前記対象船舶と、前記対象バースの岸壁との間の距離は、前記対象バースの形状に応じた距離である自動着岸装置。
【請求項5】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御する自動着岸装置であって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成部と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成部と
を備える自動着岸装置であって、
前記航法シナリオ生成部は、生成した計画に従って前記対象船舶を誘導し、
前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダは前記対象バースにおいて測距し、前記GNSS/INS複合航法装置は前記対象船舶の位置及び姿勢を算出し、
前記点群生成部は、前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果と、前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果とに基づいて前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である更新地図を生成し、
前記航法シナリオ生成部は、前記更新地図が示す航行可能領域と、前記対象地図が示す航行可能領域との間に差異が存在する場合に、前記対象船舶の誘導を停止する自動着岸装置。
【請求項6】
前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距する際に、前記対象船舶と、前記対象バースの岸壁との間の距離は、前記対象バースの形状に応じた距離である請求項1から3、及び5のいずれか1項に記載の自動着岸装置。
【請求項7】
前記対象レーダはミリ波レーダである請求項4又は5に記載の自動着岸装置。
【請求項8】
前記対象レーダはミリ波レーダであり、
前記点群の各点を対象点としたとき、前記対象レーダによって前記対象点が測距された時点において、前記対象レーダと前記対象点との間の距離が測距基準距離条件を満たし、かつ、前記対象レーダの中心と前記対象点とが成す角度が測距基準角度条件を満たす請求項1から5のいずれか1項に記載の自動着岸装置。
【請求項9】
前記対象船舶は磁気方位センサを備え、
前記GNSS/INS複合航法装置は、前記磁気方位センサが観測した方位に基づいて前記GNSS/INS複合航法装置の算出結果を補正する請求項2から5のいずれか1項に記載の自動着岸装置。
【請求項10】
前記航法シナリオ生成部は、生成した計画に従って前記対象船舶を誘導し、
前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダは前記対象バースにおいて測距し、前記GNSS/INS複合航法装置は前記対象船舶の位置及び姿勢を算出し、
前記点群生成部は、前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果と、前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果とに基づいて前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である更新地図を生成し、
前記航法シナリオ生成部は、前記更新地図が示す航行可能領域と、前記対象地図が示す航行可能領域との間に差異が存在する場合に、前記対象船舶の誘導を停止する請求項2から4のいずれか1項に記載の自動着岸装置。
【請求項11】
前記GNSS/INS複合航法装置と、
前記対象レーダであるミリ波レーダと、
請求項2から5のいずれか1項に記載の自動着岸装置と
を備える自動着岸システム。
【請求項12】
前記GNSS/INS複合航法装置は、
前記ミリ波レーダの観測結果から算出される速度に基づいて、前記対象船舶が停止しているか否かを判定する停止判定部
を備える請求項11に記載の自動着岸システム。
【請求項13】
対象バースにおいて、cm級の位置を標定するためのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を備えるGNSS/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御するコンピュータである自動着岸装置が実行する自動着岸方法であって、
前記自動着岸装置が、前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成し、
前記自動着岸装置が、前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する自動着岸方法であって、
前記対象レーダは
、ミリ波レーダであ
り、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した姿勢角を用いて水平方向を測定する自動着岸方法。
【請求項14】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御するコンピュータである自動着岸装置が実行する自動着岸方法であって、
前記自動着岸装置が、前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成し、
前記自動着岸装置が、前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する自動着岸方法であって、
前記対象レーダは
、ミリ波レーダであり、
前記GNSS/INS複合航法装置が算出した姿勢角を用いて水平方向を測定し、
前記GNSS/INS複合航法装置は、前記ミリ波レーダが観測した速度及び方位に基づいて前記GNSS/INS複合航法装置の算出結果を補正する自動着岸方法。
【請求項15】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御するコンピュータである自動着岸装置が実行する自動着岸方法であって、
前記自動着岸装置が、前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成し、
前記自動着岸装置が、前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する自動着岸方法であって、
前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距する際に、前記対象船舶と、前記対象バースの岸壁との間の距離は、前記対象バースの形状に応じた距離である自動着岸方法。
【請求項16】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御するコンピュータである自動着岸装置が実行する自動着岸方法であって、
前記自動着岸装置が、前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成し、
前記自動着岸装置が、前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する自動着岸方法であって、
前記自動着岸装置は、生成した計画に従って前記対象船舶を誘導し、
前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダは前記対象バースにおいて測距し、前記GNSS/INS複合航法装置は前記対象船舶の位置及び姿勢を算出し、
前記自動着岸装置は、前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果と、前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果とに基づいて前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である更新地図を生成し、
前記自動着岸装置は、前記更新地図が示す航行可能領域と、前記対象地図が示す航行可能領域との間に差異が存在する場合に、前記対象船舶の誘導を停止する自動着岸方法。
【請求項17】
対象バースにおいて、cm級の位置を標定するためのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を備えるGNSS/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御するコンピュータである自動着岸装置が実行する自動着岸プログラムであって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成処理と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成処理と
を前記自動着岸装置に実行させる自動着岸プログラムであって、
前記対象レーダは
、ミリ波レーダであ
り、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した姿勢角を用いて水平方向を測定する自動着岸プログラム。
【請求項18】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御するコンピュータである自動着岸装置が実行する自動着岸プログラムであって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成処理と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成処理と
を前記自動着岸装置に実行させる自動着岸プログラムであって、
前記対象レーダは
、ミリ波レーダであり、
前記GNSS/INS複合航法装置が算出した姿勢角を用いて水平方向を測定し、
前記GNSS/INS複合航法装置は、前記ミリ波レーダが観測した速度及び方位に基づいて前記GNSS/INS複合航法装置の算出結果を補正する自動着岸プログラム。
【請求項19】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御するコンピュータである自動着岸装置が実行する自動着岸プログラムであって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成処理と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成処理と
を前記自動着岸装置に実行させる自動着岸プログラムであって、
前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距する際に、前記対象船舶と、前記対象バースの岸壁との間の距離は、前記対象バースの形状に応じた距離である自動着岸プログラム。
【請求項20】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御するコンピュータである自動着岸装置が実行する自動着岸プログラムであって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成処理と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成処理と
を前記自動着岸装置に実行させる自動着岸プログラムであって、
前記航法シナリオ生成処理では、生成した計画に従って前記対象船舶を誘導し、
前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダは前記対象バースにおいて測距し、前記GNSS/INS複合航法装置は前記対象船舶の位置及び姿勢を算出し、
前記点群生成処理では、前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果と、前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果とに基づいて前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である更新地図を生成し、
前記航法シナリオ生成処理では、前記更新地図が示す航行可能領域と、前記対象地図が示す航行可能領域との間に差異が存在する場合に、前記対象船舶の誘導を停止する自動着岸プログラム。
【請求項21】
対象バースにおいて、cm級の位置を標定するためのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を備えるGNSS/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御する自動着岸装置であって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成部と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成部と
を備える自動着岸装置であって、
前記対象レーダはミリ波レーダであ
り、
前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距する際に、前記対象船舶と、前記対象バースの岸壁との間の距離は、前記対象バースの形状に応じた距離である自動着岸装置。
【請求項22】
前記GNSS/INS複合航法装置は、前記対象レーダが観測した速度及び方位に基づいて前記GNSS/INS複合航法装置の算出結果を補正する請求項
21に記載の自動着岸装置。
【請求項23】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御する自動着岸装置であって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成部と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成部と
を備える自動着岸装置であって、
前記対象レーダはミリ波レーダであり、
前記GNSS/INS複合航法装置は、前記ミリ波レーダが観測した速度及び方位に基づいて前記GNSS/INS複合航法装置の算出結果を補正
し、
前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距する際に、前記対象船舶と、前記対象バースの岸壁との間の距離は、前記対象バースの形状に応じた距離である自動着岸装置。
【請求項24】
対象バースにおいて、cm級の位置を標定するためのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を備えるGNSS/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御する自動着岸装置であって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成部と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成部と
を備える自動着岸装置であって、
前記対象レーダはミリ波レーダである自動着岸装置
であって、
前記GNSS/INS複合航法装置は、前記対象レーダが観測した速度及び方位に基づいて前記GNSS/INS複合航法装置の算出結果を補正し、
前記航法シナリオ生成部は、生成した計画に従って前記対象船舶を誘導し、
前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダは前記対象バースにおいて測距し、前記GNSS/INS複合航法装置は前記対象船舶の位置及び姿勢を算出し、
前記点群生成部は、前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果と、前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果とに基づいて前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である更新地図を生成し、
前記航法シナリオ生成部は、前記更新地図が示す航行可能領域と、前記対象地図が示す航行可能領域との間に差異が存在する場合に、前記対象船舶の誘導を停止する自動着岸装置。
【請求項25】
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御する自動着岸装置であって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成部と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が算出した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成部と
を備える自動着岸装置であって、
前記対象レーダはミリ波レーダであり、
前記GNSS/INS複合航法装置は、前記ミリ波レーダが観測した速度及び方位に基づいて前記GNSS/INS複合航法装置の算出結果を補正する自動着岸装置
であって、
前記航法シナリオ生成部は、生成した計画に従って前記対象船舶を誘導し、
前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダは前記対象バースにおいて測距し、前記GNSS/INS複合航法装置は前記対象船舶の位置及び姿勢を算出し、
前記点群生成部は、前記対象船舶が誘導されている途中において、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果と、前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を算出した結果とに基づいて前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である更新地図を生成し、
前記航法シナリオ生成部は、前記更新地図が示す航行可能領域と、前記対象地図が示す航行可能領域との間に差異が存在する場合に、前記対象船舶の誘導を停止する自動着岸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動着岸装置、自動着岸システム、自動着岸方法、及び自動着岸プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の自動着岸に係る従来技術では、船舶の位置が着岸位置から遠い場合にGNSS(Global Navigation Satellite System)測位を利用する。ここで、GNSS測位はマルチパスの影響を受けやすい。また、着岸位置の周囲には構造物が多く存在することもある。そこで、船舶が着岸位置に近づいた場合にLiDAR(Light Detection And Ranging,光学センサ)に基づく自動航行に切替わる。特許文献1は、LiDARによる自動着岸装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する技術によれば、LiDARによる自動航行に切替わった後に相対座標を用いる。そのため、当該技術には、LiDARによって地図を生成することができる地点まで移動しなければ自動着岸の航行シナリオを生成することができないという課題がある。
また、当該技術では、ユーザが着岸位置を入力する必要がある。そのため、当該技術には、特にクルーザのように着岸位置が固定されている場合において、着岸位置を毎回設定することが手間であるという課題がある。
【0005】
本開示は、船舶の自動着岸技術において、絶対座標を示す地図を生成し、生成した絶対座標を示す地図に基づいて自動的に着岸誘導することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る自動着岸装置は、
対象バースにおいて、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置と、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距する対象レーダとを備える対象船舶の自動着岸を制御する自動着岸装置であって、
前記GNSS/INS複合航法装置が前記対象船舶の位置及び姿勢を測位した結果に基づいて、前記対象レーダが前記対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、前記対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する点群生成部と、
前記対象地図に基づいて前記対象バースにおける前記対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、前記対象地図と、前記GNSS/INS複合航法装置が測位した前記対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、前記目標位置に前記目標姿勢で到達するよう前記対象船舶を誘導する計画を生成する航法シナリオ生成部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、点群生成部は、対象レーダの観測結果に基づいて、対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する。航法シナリオ生成部は、対象地図に基づいて目標位置に目標姿勢で到達するよう対象船舶を誘導する計画を生成する。生成された計画は、対象船舶を自動的に着岸誘導することに用いられてもよい。従って、本開示によれば、船舶の自動着岸技術において、絶対座標を示す地図を生成し、生成した絶対座標を示す地図に基づいて自動的に着岸誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る自動着岸システム90の構成例を示す図。
【
図2】実施の形態1に係る自動着岸システム90の機能構成例を示す図。
【
図3】実施の形態1に係る自動着岸システム90の機能構成例を示す図。
【
図4】実施の形態1に係る速度プロファイル部131の処理を説明する図。
【
図5】実施の形態1に係るレーダ/Body座標変換部132の処理を説明する図。
【
図6】実施の形態1に係る位置姿勢標定装置300の機能構成例を示す図。
【
図8】実施の形態1に係る自動着岸装置100のハードウェア構成例を示す図。
【
図9】実施の形態1に係る位置姿勢標定装置300の動作を示すフローチャート。
【
図10】実施の形態1に係る3自由度2次元航法のアルゴリズムを説明する図。
【
図11】実施の形態1に係る6自由度3次元航法のアルゴリズムを説明する図。
【
図12】実施の形態1に係る自動着岸システム90の動作を示すフローチャート。
【
図13】実施の形態1に係るユースケース1を説明する図。
【
図14】実施の形態1に係るユースケース1を説明する図。
【
図15】実施の形態1に係るユースケース2を説明する図。
【
図16】実施の形態1に係るユースケース2を説明する図。
【
図17】実施の形態1に係るユースケース2を説明する図。
【
図18】実施の形態1に係るユースケース2を説明する図。
【
図19】実施の形態1に係るユースケース2を説明する図。
【
図20】実施の形態1に係るユースケース2を説明する図。
【
図21】実施の形態1の変形例に係る自動着岸装置100のハードウェア構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態の説明及び図面において、同じ要素及び対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略又は簡略化する。図中の矢印はデータの流れ又は処理の流れを主に示している。また、「部」を、「装置」、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」又は「サーキットリー」に適宜読み替えてもよい。
【0010】
実施の形態1.
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態は、大型レジャークルーザ又は観光船等の船舶の帰港時におけるマリーナ桟橋への着岸の自動化を目的とする。
本実施の形態が対象とする船舶には自動航行システムが装着されている。そのため、当該船舶はWAYPOINTを指示することにより任意地点への自動航行が可能である。また、当該船舶は、ミリ波レーダと、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機と、IMU(Inertial Measurement Unit;慣性計測装置)等の各種センサを搭載する。
【0011】
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る自動着岸システム90の構成例を示している。自動着岸システム90は、
図1に示すように対象船舶20から成る。対象船舶20は移動体に当たる。対象船舶20は、ミリ波レーダ50と、自動着岸装置100と、GNSS/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置200とを備える。対象船舶20は、具体例として、小型レジャーボート、一般的なクルーザ、又はエンジン2基掛けのハイエンドクルーザである。対象船舶20は、ミリ波レーダ50を何個備えてもよい。
自動着岸システム90は、悪天候下においても検知能力が低下しない、「ミリ波レーダ」と、マルチパスの影響を低減することができる「GNSS/INS複合航法装置」と、自動航行制御のための「航法シナリオ生成装置」とを備える。
ミリ波レーダ50は、具体例として、76から77GHz帯、又は77から81GHzのFMCW(周波数連続変調)方式を採用しているレーダであり、距離と速度と角速度との各々を計測することができるレーダである。ミリ波レーダ50はミリ波センサとも呼ばれる。
【0012】
本実施の形態において、自動着岸は、ミリ波レーダ50による地図生成ステージと、GNSS/INS複合航法装置200の測位結果が示す位置及び姿勢を使った誘導ステージとの2ステージにより実現される。自動着岸の誘導制御の具体例は、参考文献1及び参考文献2に記載されている。
【0013】
[参考文献1]
国際公開第2018-100751号パンフレット
[参考文献2]
特開2020-059403号公報
【0014】
本実施の形態では、波浪動揺の軽減をするために、GNSS/INS複合航法装置200の測位結果が示す方位及び姿勢角を用いることによりミリ波レーダ50の空間安定化を行う。ミリ波レーダ50の空間安定化は、GNSS/INS複合航法装置200の測位結果が示す姿勢角をミリ波レーダ50のデータに付与し、ミリ波レーダ50において水平方向を測定することである。水平方向はX軸及びY軸により表現される。
地図は、着岸シーケンスの実行中においてリアルタイムで生成される。着岸シーケンスは、アプローチステップと、地図生成ステップと、経路計画ステップと、誘導制御ステップとから成る。なお、アプローチステップにおいて、対象船舶20は低速度で航行し、また、岸に対する対象船舶20の相対角として45°から60°を想定する。地図は、具体例として、停泊中である他の船舶等の障害物が含まれることもある線形地図である。
地図の座標系は、具体例として、他船舶等の障害物を含む絶対座標系(UTM(Universal Transverse Mercator)座標)である。
地図の精度及び信頼性を担保するため、具体例として、地図の生成時において、ミリ波レーダ50と着岸バースとの間の計測距離が21m以下であること、かつ、ミリ波レーダ50のアンテナ中心からの角度が-45°から+45°である範囲に着岸バースが存在することを満たすものとする。当該計測距離に関する条件は測距基準距離条件に当たる。当該角度の範囲に関する条件は測距基準角度条件に当たる。
地図フォーマットは、経路計画を自動化するために、具体例として、着岸バースと、着岸バースにおける停船船舶とを示す折れ線近似点であって、対象船舶20から見た水平面上の折れ線近似点とする。地図フォーマットは、ノード番号とXY座標とから成る。
本実施の形態では、河川又は橋の下等における衛星不可視対策として、ミリ波レーダ50とGNSS/INS複合航法装置200とを複合することにより測位精度を確保する。
本実施の形態では、GNSS/INS複合航法装置200において、GNSSの代わりにミリ波レーダ50を用いて対象船舶20から岸までの距離及び方位を測ることにより、衛星不可視であっても測位精度を確保する。
本実施の形態では、ミリ波レーダ50を用いて停止判定を行い、内部誤差の積算を防ぎ、測位精度を確保する。
本実施の形態では、磁気方位計を用いて絶対方位を測ることにより姿勢誤差の軽減を図ってもよい。
【0015】
図2は、本実施の形態に係る自動着岸システム90の機能構成例を示している。
自動着岸装置100は、
図2に示すように対象船舶20を備える。データ収集部110と、点群生成部120と、速度方位検出部130と、航法シナリオ生成部140とを備える。また、自動着岸装置100は地図データ190を記憶する。
自動着岸装置100は、対象バースにおいて、GNSS/INS複合航法装置200と、対象レーダとを備える対象船舶20の自動着岸を制御する。対象レーダは、電磁波を用いて周囲に存在する物体の相対位置を測距するレーダである。対象レーダは、具体例として、LiDAR(Light Detection And Ranging)又はミリ波レーダ50である。対象バースはマリーナバースとも呼ばれる。対象バースは、ホームバースであってもよく、サービスバースであってもよい。
なお、LiDARは悪天候時には検知能力が低下してしまい、自動航行不能な状況、又は自動航行中の検知誤り等による衝突等の危険性がある。また、LiDARによる測位では何かしらの物体を検知して相対的に自己位置を計算するため、周囲に検知可能な物体が存在しなければならない。一方、ミリ波レーダ50を用いる場合、LiDARを用いる場合と比較して処理が簡素になる。具体例として、ミリ波レーダ50を用いる場合、岸壁と船を区別する必要がない。
【0016】
データ収集部110は、ミリ波レーダ50による観測結果を示すデータを収集する。
【0017】
点群生成部120は、データ収集部110によって収集されたデータに基づいて点群を生成する。点群は、具体例として、岸壁と桟橋と障害物とに対応する。点群生成部120は、点群抽出部121と、座標変換部122と、地図生成部123とを備える。
点群抽出部121は、データ収集部110によって収集されたデータから点群を抽出する。抽出された点群の座標は相対座標である。
座標変換部122は、点群抽出部121によって抽出された点群の座標を絶対座標に変換する。
地図生成部123は、座標変換部122によって変換された絶対座標を示す地図を生成し、生成した地図を示すデータを地図データ190に追加する。
つまり、点群生成部120は、GNSS/INS複合航法装置200が対象船舶20の位置及び姿勢を測位した結果に基づいて、対象レーダが対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である対象地図を生成する。点群抽出部121によって抽出された点群は、対象レーダが対象バースにおいて測距した結果に対応する。対象レーダが対象バースにおいて測距する際に、対象船舶20と、対象バースの岸壁との間の距離は、対象バースの形状に応じた距離であってもよい。点群の各点を対象点としたとき、典型的には、ミリ波レーダ50によって対象点が測距された時点において、ミリ波レーダ50と対象点との間の距離が測距基準距離条件を満たし、かつ、ミリ波レーダ50の中心と対象点とが成す角度が測距基準角度条件を満たす。
【0018】
速度方位検出部130は、速度プロファイル部131と、レーダ/Body座標変換部132とを備える。Body座標は車体座標とも呼ばれる。
【0019】
航法シナリオ生成部140は、航法シナリオ生成装置に相当し、目標位置入力部141と、経路計画部142と、誘導制御部143とを備える。
目標位置入力部141は、地図データ190が生成された後に対象船舶20の目標位置の入力を受け付ける。目標位置入力部141は、目標位置における対象船舶20の目標姿勢の入力を受け付けてもよい。目標位置入力部141は、受け付けた目標位置と、地図データ190とに基づいて目標位置における目標姿勢を自動的に算出してもよい。
経路計画部142は、対象船舶20の現在の位置から、目標位置入力部141が受け付けた目標位置へ対象船舶20を誘導する経路を示す計画を生成する。当該計画は、対象船舶20が目標位置に目標姿勢で到達する計画である。この際、経路計画部142は、対象船舶20のサイズと、対象船舶20が移動可能である方向とを考慮する。また、経路計画部142は、具体例として一般的なMAKLINK法を利用する。MAKLINK法は、凸多角形近似された障害物と、スタート及びゴールを結ぶ経路とを自動的に生成するグラフ法の一種である。経路計画部142は、リアルタイムで生成した地図に基づいて複数のウェイポイントを生成してもよい。各ウェイポイントは、対象船舶20の位置及び姿勢を示す。
誘導制御部143は、経路計画部142によって生成された計画に従って対象船舶20を制御する。誘導制御部143は、具体例として、対象船舶20の位置及び姿勢が、生成された計画が示す各ウェイポイントに追従するように、対象船舶20の位置及び姿勢を制御する。
つまり、航法シナリオ生成部140は、対象地図に基づいて対象バースにおける対象船舶20の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、対象地図と、GNSS/INS複合航法装置200が測位した対象船舶20の位置及び姿勢とに基づいて、目標位置に目標姿勢で到達するよう対象船舶20を誘導する計画を生成する。また、航法シナリオ生成部140は、生成した計画に従って対象船舶20を誘導する。
【0020】
地図データ190は、絶対座標により対象船舶20の周囲を示す地図のデータであり、対象船舶20が停泊する場所を示すデータである。
【0021】
GNSS/INS複合航法装置200は、対象船舶20の位置及び姿勢を示す測位データを自動着岸装置100に送信する。また、GNSS/INS複合航法装置200は、対象船舶20の速度及び方位を示す情報をフィードバックとして受信する。
GNSS/INS複合航法装置200は、ミリ波レーダ50が観測した速度及び方位に基づいてGNSS/INS複合航法装置200の測位結果を補正する。
【0022】
図3は、本実施の形態に係る自動着岸システム90の機能構成例を示している。
ミリ波レーダ50は、
図3に示すように、シンセサイザ51と、発振器52と、ミリ波送受信アンテナ53と、ミキサー54と、信号処理部55と、シンボル捕捉追尾部56とを備える。
【0023】
シンセサイザ51は、発振器52からの信号の振幅を時間の関数として表現するチャープ信号を生成する。
【0024】
ミリ波送受信アンテナ53は、送信アンテナと受信アンテナとを備える。
送信アンテナは、チャープ信号を発信する。物体がチャープ信号を反射すると、反射されたチャープ信号が生成され、生成されたチャープ信号は受信アンテナによってキャプチャされる。
【0025】
ミキサー54は、送信信号と受信信号とを適宜組み合わせることにより中間周波数信号を生成する。
【0026】
信号処理部55は、中間周波数信号に対してフーリエ変換処理を行うことによってビート周波数を検知する。ここで、ビート周波数は距離に相関しているため、ビート周波数に基づいてターゲットまでの距離が算出される。また、フーリエ変換処理を行うことによって位相情報も一緒に得ることができ、得た位相情報に基づいて速度ドップラーを求めることができるため、フーリエ変換処理を行った結果に基づいてターゲットとの相対速度も算出される。
【0027】
シンボル捕捉追尾部56は、レーダエコー(反射物体)の強度に基づいて、シンボル化したターゲットと、スキャン結果が示すシンボル候補との相関を算出する。シンボル化したターゲットとの相関が高いシンボル候補が見つかった場合、シンボル捕捉追尾部56は、見つかったシンボル候補の速度情報に基づいて次回スキャン時の予測ゲートを設けることによってターゲットの追随を維持する。なお、各レーダエコーには、各シンボルIDと、ドップラー到来角と、ドップラー速度と、エコー強度と、前フレームからの速度の積分から求めた距離との各々を示す情報が付与される。
【0028】
速度プロファイル部131は、シンボル捕捉追尾部56が出力したシンボルの中からランダムに2点を選び、最小二乗法でy=Vs・cos(x-α)の係数であるドップラー速度Vsとドップラー到来角αとの各々を算出する。この際、速度プロファイル部131は、具体例としてフィッティングした曲線に対する残差が閾値以内である点が一番多い係数を選ぶ。フィッティング方式としては、具体例として、参考文献3に示すA Random Sample Consensus(RANSAC) algorithmが知られている。このように速度プロファイルのフィッティングを行うことにより、ミリ波レーダ50の角度分解能の粗さ及び速度分解能の粗さの各々を補完することができるため、速度及び角度の各々の精度を上げることができる。
【0029】
[参考文献3]
M.Fischler,R. Bolles.“Random sample consensus:a paradigm for model fitting with applications to image analysis and automated cartography.”,Communications of the ACM,1981.
【0030】
図4は、実際にシンボルをフィッティングした結果の具体例を示している。
図4において、各点はシンボルを示しており、曲線はフィッティング結果を示している。シンボルには比較的大きなばらつきがあるものの、フィッティング結果の極値におけるX軸の値がドップラー到来角として得られ、当該極値におけるY軸の値がドップラー速度として得られる。そのため、ミリ波レーダ50の角度分解能及び速度分解能の各々が粗いにも関わらず、角度のばらつきと、速度のばらつきとの各々を小さくすることができることが分かる。
【0031】
レーダ/Body座標変換部132は、
図5に示すような座標変換を行う。
図5において、X軸及びY軸はBody座標系のX軸及びY軸であり、X軸及びY軸が直交している位置にIMU40の中心があるものとする。
レーダ/Body座標変換部132は、レーダアンテナの移相中心の速度Vsと方位角αとを、移動体のBody座標系に座標変換し、[数1]に示すように極座標からXY軸におけるVb(X軸速度)及びω(Z軸角速度)に変換する。ここで、βは機首とアンテナの中心線とが成す角を示す。lyは、機首とアンテナの中心との間のY軸方向レバーアームを示す。lxは、アンテナの中心と、IMU40の中心との間のX軸方向レバーアームを示す。XY軸の中心がIMU40の中心である。対象船舶20のモデルは、具体例としてアッカーマンモデルである。
レーダ/Body座標変換部132は、座標変換した速度及び角速度を示すデータをGNSS/INS複合航法装置200に向けて出力する。
【0032】
【0033】
なお、自動着岸装置100は移動平均部を備えてもよい。自動着岸装置100が移動平均部を備える場合において、レーダ/Body座標変換部132は移動平均部が算出した結果を利用する。
移動平均部は、複数のエポックの移動平均を採用することによりランダムな測角誤差を軽減する。
以下、移動平均部が、ドップラー速度Vsとドップラー到来角αとの各々として、[数2]に示すように5エポックの移動平均を採用する具体例を示す。具体例として、移動平均部は、ミリ波シンボルが10Hz単位で更新される場合、過去4エポック分のデータを保持しておき、[数2]に示す演算により現在のエポックと過去4エポックとの計5データの移動平均を算出し、算出した値を10Hz単位で出力する。
【0034】
【0035】
点群生成部120は、相対座標の点群を絶対座標の点群へ変換し、変換した点群から成る地図を示すデータを地図データ190に追加する。点群生成部120は、変換した点群から成る地図に基づいて地図データ190の少なくとも一部を更新してもよい。
目標位置入力部141は、上位システム又はユーザから目標位置の入力を受け付ける。
経路計画部142は、計画した経路が示す各ウェイポイントを示すデータを誘導制御部143に送る。
誘導制御部143は、経路計画部142から受け取ったデータが示す各ウェイポイントを対象船舶20が順に通過するように対象船舶20を誘導制御する。
なお、地図生成と、各ウェイポイントの設定との各々において、他の船の占有領域が考慮されてもよい。
【0036】
GNSS/INS複合航法装置200は、
図3に示すように、GNSSアンテナ29と、GNSS受信機30と、IMU40と、ストラップダウン演算部220と、衛星観測データ推定部230と、誤差推定部240とを備える。GNSS/INS複合航法装置200は、参考文献4が開示する技術を適宜利用する。GNSS/INS複合航法装置200はGNSS/INS複合測位装置とも呼ばれる。
【0037】
[参考文献4]
特開2012-193965号公報
【0038】
IMU40は、慣性センサとも呼ばれ、3軸方向の加速度と、3軸方向の角速度との各々を計測する。3軸方向は、移動体の長さ方向と幅方向と高さ方向とを指す。以下、3軸方向の加速度を「三次元加速度」と呼び、3軸方向の角速度を「三次元角速度」と呼ぶ。IMU40は、加速度センサ41と、角速度センサ42とを備える。対象船舶20とIMU40とは一体的に剛体となっている。
加速度センサ41は加速度を計測する。
角速度センサ42は方位角の角速度を計測する。
GNSS受信機30は、GNSSアンテナ29が受信した信号を受信する。
ストラップダウン演算部220は、加速度センサ41が取得したデータと、角速度センサ42が取得したデータとに基づいて、速度と位置と姿勢と方位とを算出する。ストラップダウン演算部220の具体例は参考文献4に記載されている。
衛星観測データ推定部230は、GNSSによる観測データを推定する。
誤差推定部240は、自動着岸装置100又は磁気方位センサ60から受信したデータと、ストラップダウン演算部220が算出した位置と速度と姿勢とに基づいて、GNSSによる測位データに含まれている誤差を推定する。誤差推定部240は高精度測位計算部241を備える。
高精度測位計算部241は、具体例としてカルマンフィルタを用いて誤差を推定し、推定結果に基づいて対象船舶20の位置と速度と姿勢とを補正する。
GNSS受信機30とIMU40と測位プロセッサとは、GNSS/INS複合航法装置200を構成する。測位プロセッサは、測位のための計算を実行するプロセッサである。GNSS受信機30は、準天頂衛星又は無線通信から測位補強情報を受信する。GNSS受信機30は、測位補強情報に基づいてGNSS衛星から受信した測位信号について補正処理を行い、cm級の高精度な位置標定を行う。
【0039】
磁気方位センサ60は、具体例として、地球の地磁気を使って方位を求める比較的簡便なセンサである。GNSS/INS複合航法装置200は、磁気方位センサ60が観測した方位に基づいてGNSS/INS複合航法装置200の測位結果を補正してもよい。
スイッチ61は、磁気方位センサ60の出力と、レーダ/Body座標変換部132の出力とを切り替えるスイッチである。スイッチ61は、上位システム又はユーザによって切り替えられる。
対象船舶20には、ミリ波レーダ50の代わりに方位を計測する磁気方位センサ60が取り付けられていてもよい。以下、GNSS/INS複合航法装置200が磁気方位センサ60の出力を利用する場合について説明する。
GNSS/INS複合航法装置200は、ミリ波レーダ50により計測された速度及び角速度の代わりに、磁気方位センサ60により計測された方位の時間変化から算出された角速度を用いる。磁気方位センサ60の出力である方位データは、[数3]に示す演算を実行することによって角速度データに変換される。ここで、ΔΨは時刻t+1における角速度データを示し、Ψtは時刻tにおける方位データを示し、Ψt+1は時刻t+1における方位データを示す。ΔΨは、磁気方位センサ60により計測された方位の時間変化から算出された角速度に当たる。
【0040】
【0041】
磁気方位センサ60を用いた場合、ミリ波レーダ50を用いる場合と比較すると速度誤差を補正することはできない。しかしながら、高精度測位計算部241は、ストラップダウン演算部220の角速度誤差を補正する。そのため、本場合によれば、ジャイロの誤差等により方位の値がドリフトする事象を回避することができるため、対象船舶20の位置を比較的高い精度で標定することができる。
【0042】
対象船舶20の周囲には、鉄塔とビルと自動車等の磁気を帯びたものが少ない。そのため、ミリ波レーダ50の代わりに磁気方位センサ60を使うことにより、ミリ波レーダ50を使った場合における効果と同等の効果を得ることができる。
なお、自動着岸システム90は、ミリ波レーダ50と磁気方位センサ60とを併用してもよい。
【0043】
なお、ミリ波レーダ50は、アプローチから着岸までの間において常時桟橋を捉えることができない。そのため、ミリ波レーダ50と着岸バースと位置関係が一定の条件を満たす場合に、地図を生成し、生成した地図と船舶の位置とに基づいて経路計画を生成する。その後、経路計画が示す各ウェイポイントと、GNSS/INS複合航法装置200による自己位置標定及び姿勢の算出により、船舶の着岸を行う。一定の条件は、具体例として、ミリ波レーダ50と着岸バースとの間の計測距離が21m以下であること、かつ、ミリ波レーダ50のアンテナ中心からの角度が-45°から+45°である範囲に着岸バースが存在することである。
ミリ波レーダ50によって検出することができるボディ座標系におけるX軸及びY軸の各々における速度をGNSS/INS複合航法装置200に入力することにより、GNSS/INS複合航法装置200による速度及び姿勢計算の精度を向上させることができる。
ミリ波レーダ50による測距点に対してGNSS/INS複合航法装置200の測位結果が示す位置と速度と姿勢とに基づいて絶対座標を付与することにより、リアルタイムで絶対座標を示す3次元地図が生成される。
航法シナリオ生成部140は、リアルタイムで生成される3次元地図に基づいて、障害物を回避する経路であって、航行距離が比較的短い経路を示す航法シナリオを生成する。
また、航法シナリオ生成部140は、GNSS/INS複合航法装置200の測位結果が示す位置及び姿勢に基づいて、航法シナリオを都度更新及び修正する。
【0044】
GNSS/INS複合航法装置200は、位置姿勢標定装置300として機能する。位置姿勢標定装置300は、GNSS受信機30と、ミリ波レーダ50と、加速度センサ41と、角速度センサ42とが取り付けられた移動体の位置を標定する。位置姿勢標定装置300は、GNSS受信機30から取得したデータと、IMU40から取得したデータと、ミリ波レーダ50から取得したデータとを用いて、移動体の位置と姿勢と方位との各々を標定する。位置姿勢標定装置300は、自己位置姿勢標定装置とも呼ばれる。
【0045】
図6は、位置姿勢標定装置300の機能構成例を示している。位置姿勢標定装置300は、
図6に示すように、初期値算出部310と、標定部320と、カルマンフィルタ部330と、ストラップダウン演算部220と、記憶部390とを備える。
【0046】
初期値算出部310は、カルマンフィルタ部330を制御して方位角の初期値を算出する。
具体的には、まず、初期値算出部310は、角速度センサ42により計測された方位角の角速度に基づいて対象船舶20の方位角を第一航法方位角として算出する。次に、初期値算出部310は、算出した第一航法方位角に基づいて、ミリ波レーダ50により計測された速度及び角速度を積分して二次元座標における変化量を算出する。次に、初期値算出部310は、算出した変化量を二次元の位置初期値に加えることにより対象船舶20の二次元の座標値を第一航法座標値として算出する。二次元の位置初期値は航法座標系の初期位置である。次に、初期値算出部310は、算出した第一航法座標値とGNSS受信機30により測位された座標値に含まれる二次元の座標値とに基づいて第1のカルマンフィルタを用いて第一航法方位角を補正する補正値を算出する。次に、初期値算出部310は、算出した補正値を用いて第一航法方位角を補正し、補正後の第一航法方位角を方位角初期値として出力する。即ち、初期値算出部310は、角速度センサ42の計測値と、ミリ波レーダ50の計測値と、GNSS受信機30の測位結果とに基づいて、対象船舶20の方位角の初期値である方位角初期値を算出する。より具体的には、初期値算出部310は、角速度センサ42により計測された角速度に基づいて第一航法方位角を算出し、算出した第一航法方位角と、ミリ波レーダ50により計測された速度及び角速度と、二次元の位置初期値とに基づいて二次元の第一航法座標値を算出し、算出した二次元の第一航法座標値と、GNSS受信機30の測位結果とに基づいて第一航法方位角を補正することにより方位角初期値を算出する。
【0047】
ここで、
図7を用いて座標系を説明する。
航法座標系の初期位置は、電源投入時におけるIMU40の中心位置である。通常の場合、「二次元の位置初期値」として(0,0)を設定し、「三次元の位置初期値」として(0,0,0)を設定する。
また、
図7に示すように、対象船舶20の初期姿勢角におけるBody座標系のX軸、Y軸、及びZ軸を、それぞれ航法座標系のX軸、Y軸、及びZ軸とする。このとき、二次元の航法座標系における対象船舶20の位置は、対象船舶20の移動量であって、Body座標系におけるX軸及びY軸の移動量を加算することにより算出される。また、三次元の航法座標系における対象船舶20の位置は、対象船舶20の移動量であって、Body座標系におけるX軸、Y軸、及びZ軸の対象船舶20の移動量を加算することにより算出される。
Body座標系は、
図7に示すように、IMU40の中心を原点とし、対象船舶20の前進方向をX軸とし、対象船舶20の前進方向に対する右方向をY軸とし、対象船舶20の垂直下方向をZ軸とする座標系である。
【0048】
標定部320は、走行時標定部321と停止時標定部322と停止判定部323とを備える。標定部320は、角速度センサ42の計測値と、方位角初期値と、加速度センサ41の計測値と、GNSS受信機30の複合航法の測位結果とに基づいて対象船舶20の位置を標定する。より具体的には、標定部320は、角速度センサ42により計測された方位角の角速度に基づいて方位角の変化量を算出し、算出した方位角の変化量と、方位角初期値とに基づいて第二航法方位角を算出し、算出した第二航法方位角と、加速度センサ41により計測された加速度と、三次元の位置初期値とに基づいて三次元の第二航法座標値を算出し、算出した三次元の第二航法座標値と、GNSS受信機30の測位結果とに基づいて第二航法座標値を補正することにより対象船舶20の位置を標定する。三次元の位置初期値は航法座標系の初期位置である。
走行時標定部321は、対象船舶20が走行しているときに、カルマンフィルタ部330とストラップダウン演算部220とを制御して対象船舶20の位置と姿勢と方位とを標定(算出)する。走行時標定部321は標定値算出部とも呼ばれる。
停止時標定部322は、対象船舶20が停止しているときに、カルマンフィルタ部330とストラップダウン演算部220とを制御して対象船舶20の位置と姿勢と方位とを標定する。停止時標定部322は方位角補正部とも呼ばれる。
停止判定部323は、対象船舶20が停止したか又は発進したかを判定する。
【0049】
具体的には、まず、標定部320は、角速度センサ42により計測された方位角の角速度に基づいて方位角の変化量を算出し、算出した方位角の変化量と出力された方位角初期値とに基づいて対象船舶20の方位角を第二航法方位角として算出する。次に、標定部320は、算出した第二航法方位角に基づいて、加速度センサ41により計測された三次元の加速度を航法座標系の三次元の加速度に変換する。次に、標定部320は、変換後の三次元の加速度を積分して三次元座標における変化量を算出し、算出した変化量を三次元の位置初期値に加えることにより対象船舶20の三次元の座標値を第二航法座標値として算出する。次に、標定部320は、算出した第二航法座標値とGNSS受信機30により測位された三次元の座標値とに基づいて第2のカルマンフィルタを用いて第二航法座標値を補正する補正値を算出する。次に、標定部320は、算出した補正値を用いて第二航法座標値を補正し、対象船舶20の位置を標定した位置標定値として補正後の第二航法座標値を出力する。
また、標定部320は、移動していた対象船舶20が移動を停止した場合、前回算出された第二航法方位角と今回算出された第二航法方位角とに基づいて第3のカルマンフィルタを用いて今回算出された第二航法方位角を補正する方位角補正値を算出し、算出した方位角補正値を用いて今回算出された第二航法方位角を補正して補正後の第二航法方位角を算出する。ここで、第3のカルマンフィルタは、前回算出された第二航法方位角と今回算出された第二航法方位角とを一致させる補正値を方位角補正値として算出する。第3のカルマンフィルタは、前回算出された第二航法方位角と今回算出された第二航法方位角との差分を表す観測方程式を生成し、生成した観測方程式を用いて方位角補正値を算出する。
また、標定部320は、停止した対象船舶20が移動を再開した場合において、まず、補正後の第二航法方位角と新たな方位角の変化量とに基づいて新たな第二航法方位角を算出し、算出した新たな第二航法方位角に基づいて、加速度センサ41により計測された新たな三次元の加速度を航法座標系の三次元の加速度に変換する。次に、標定部320は、変換後の三次元の加速度を積分して三次元座標における変化量を算出し、算出した変化量を前回算出した第二航法座標値に加えることにより、新たな第二航法座標値を算出する。次に、標定部320は、算出した新たな第二航法座標値とGNSS受信機30により測位された新たな三次元の座標値とに基づいて新たな第二航法座標値を補正する位置補正値を第2のカルマンフィルタを用いて算出し、算出した位置補正値を用いて新たな第二航法座標値を補正し、補正後の新たな第二航法座標値を新たな位置標定値として出力する。
標定部320は、ミリ波レーダ50により計測された速度が所定の速度閾値未満である場合、対象船舶20が移動を停止したと判定する。標定部320は、対象船舶20が移動を停止したと判定した後、ミリ波レーダ50により計測された速度が速度閾値以上である場合、対象船舶20が移動を再開したと判定する。
【0050】
カルマンフィルタ部330は、観測方程式と状態方程式との少なくともいずれかを生成し、生成した観測方程式と状態方程式との少なくともいずれかを用いて各種データの補正値を算出する。
カルマンフィルタ部330は、観測方程式が互いに異なる複数のカルマンフィルタとして、第1のカルマンフィルタ331と、第2のカルマンフィルタ332と、第3のカルマンフィルタ333とを備える。
衛星観測データ推定部230は、カルマンフィルタ部330に内包されている処理を実行する。
誤差推定部240は、第1のカルマンフィルタ331と、第2のカルマンフィルタ332と、第3のカルマンフィルタ333とに相当する。
【0051】
ストラップダウン演算部220は、加速度データ393と角速度データ394とに基づいて速度と位置と姿勢と方位とを算出する。ストラップダウン演算部220の具体例は特許文献1に記載されている。
【0052】
記憶部390は、GNSSデータ391と、速度・角速度データ392と、加速度データ393と、角速度データ394とを記憶する。
GNSSデータ391は、GNSS受信機30が観測したデータから成る。
速度・角速度データ392は、ミリ波レーダ50が観測した速度及び角速度を示すデータから成る。
加速度データ393は、加速度センサ41が観測したデータから成る。
角速度データ394は、角速度センサ42が観測したデータから成る。
【0053】
位置姿勢標定装置300がミリ波レーダ50の出力の代わりに磁気方位センサ60の出力を利用する場合において、位置姿勢標定装置300は、速度・角速度データ392の代わりに方位データを用いる。即ち、この場合において、位置姿勢標定装置300は、ミリ波レーダ50により計測された速度及び角速度の代わりに、磁気方位センサ60により計測された方位の時間変化から算出された角速度を用いる。
【0054】
図8は、本実施の形態に係る自動着岸装置100のハードウェア構成例を示している。自動着岸装置100はコンピュータから成る。自動着岸装置100は複数のコンピュータから成ってもよい。
【0055】
自動着岸装置100は、本図に示すように、プロセッサ11と、メモリ12と、補助記憶装置13と、入出力IF(Interface)14と、通信装置15等のハードウェアを備えるコンピュータである。これらのハードウェアは、信号線19を介して適宜接続されている。
【0056】
プロセッサ11は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)であり、かつ、コンピュータが備えるハードウェアを制御する。プロセッサ11は、具体例として、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はGPU(Graphics Processing Unit)である。
自動着岸装置100は、プロセッサ11を代替する複数のプロセッサを備えてもよい。複数のプロセッサはプロセッサ11の役割を分担する。
【0057】
メモリ12は、典型的には揮発性の記憶装置であり、具体例としてRAM(Random Access Memory)である。メモリ12は、主記憶装置又はメインメモリとも呼ばれる。メモリ12に記憶されたデータは、必要に応じて補助記憶装置13に保存される。
【0058】
補助記憶装置13は、典型的には不揮発性の記憶装置であり、具体例として、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、又はフラッシュメモリである。補助記憶装置13に記憶されたデータは、必要に応じてメモリ12にロードされる。
メモリ12及び補助記憶装置13は一体的に構成されていてもよい。
【0059】
入出力IF14は、入力装置及び出力装置が接続されるポートである。入出力IF14は、具体例として、USB(Universal Serial Bus)端子である。入力装置は、具体例として、キーボード及びマウスである。出力装置は、具体例として、ディスプレイである。
【0060】
通信装置15は、レシーバ及びトランスミッタである。通信装置15は、具体例として、通信チップ又はNIC(Network Interface Card)である。
【0061】
自動着岸装置100の各部は、他の装置等と通信する際に、入出力IF14及び通信装置15を適宜用いてもよい。
【0062】
補助記憶装置13は自動着岸プログラムを記憶している。自動着岸プログラムは、自動着岸装置100が備える各部の機能をコンピュータに実現させるプログラムである。自動着岸プログラムは、メモリ12にロードされて、プロセッサ11によって実行される。自動着岸装置100が備える各部の機能は、ソフトウェアにより実現される。
【0063】
自動着岸プログラムを実行する際に用いられるデータと、自動着岸プログラムを実行することによって得られるデータ等は、記憶装置に適宜記憶される。自動着岸装置100の各部は記憶装置を適宜利用する。記憶装置は、具体例として、メモリ12と、補助記憶装置13と、プロセッサ11内のレジスタと、プロセッサ11内のキャッシュメモリとの少なくとも1つから成る。なお、データという用語と情報という用語とは同等の意味を有することもある。記憶装置は、コンピュータと独立したものであってもよい。
メモリ12及び補助記憶装置13の機能は、他の記憶装置によって実現されてもよい。
【0064】
自動着岸プログラムは、コンピュータが読み取り可能な不揮発性の記録媒体に記録されていてもよい。不揮発性の記録媒体は、具体例として、光ディスク又はフラッシュメモリである。自動着岸プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0065】
***動作の説明***
図9は、位置姿勢標定装置300の動作の一例を示すフローチャートである。
図9を用いて位置姿勢標定装置300の動作を説明する。
【0066】
(ステップS11)
初期値算出部310は、対象船舶20の出発時に3自由度2次元航法により、方位角の初期値を算出する。
【0067】
(ステップS12)
走行時標定部321は、対象船舶20が停止するまで、方位角の初期値、又は直近に標定した方位角を用いて6自由度3次元航法により、対象船舶20の位置と姿勢と方位との各々を標定する。
【0068】
(ステップS13)
対象船舶20が停止している場合、位置姿勢標定装置300はステップS14に進む。それ以外の場合、位置姿勢標定装置300はステップS12に進む。
【0069】
(ステップS14)
停止時標定部322は、対象船舶20が停止している間、拡張ZUPT(Zero Velocity Update)アルゴリズムに基づいて、6自由度3次元航法により、対象船舶20の位置と姿勢と方位との各々を標定する。拡張ZUPTアルゴリズムの概要は特許文献1に開示されている。
【0070】
(ステップS15)
対象船舶20が停止している場合、位置姿勢標定装置300はステップS14に進む。それ以外の場合、位置姿勢標定装置300はステップS12に進む。
【0071】
図10は、実施の形態1に係る3自由度2次元航法のアルゴリズムを示している。当該アルゴリズムは、特許文献1の
図7に示すアルゴリズムと同じである。以下、
図10について説明する。なお、初期値算出部310は、入力補正部311と、方位更新部312と、座標変換部313と、緯度経度更新部314と、出力補正部315とを備える。
【0072】
入力補正部311は、速度・角速度データ392が示す速度に対してカルマンフィルタ部330によって算出された補正値を加算することにより、速度・角速度データ392が示す速度(速度ベクトル)を補正する。
また、入力補正部311は、角速度データ394が示す「方位角」の角速度にカルマンフィルタ部330によって算出された補正値を加算することにより、方位角の角速度を補正する。
【0073】
方位更新部312は、入力補正部311によって補正された方位角の角速度を1回積分することにより、方位角の変化量を算出する。方位更新部312は、算出した方位角の変化量を、方位角の初期値、又は出力補正部315によって前回算出された方位角に加算することにより新たな方位角を算出する。ここで、方位角の初期値は適当な値であって構わない。
【0074】
座標変換部313は、方位更新部312によって算出された姿勢と方位とに基づいて、所定の変換式を用いて入力補正部311によって補正された速度をセンサ座標系の値から航法座標系の値に変換する。これにより、航法座標系の二次元速度が得られる。二次元速度は、緯度方向の速度と、経度方向の速度とから成る。
【0075】
緯度経度更新部314は、座標変換部313によって得られた二次元速度を1回積分して二次元座標の変化量を算出する。二次元座標は、緯度成分と経度成分とから成る。緯度経度更新部314は、算出した二次元座標の変化量を、二次元座標の初期値、又は出力補正部315によって前回算出された二次元座標に加算することにより新たな二次元座標を算出する。
具体例として、緯度経度更新部314は、対象船舶20が出発する前、つまり対象船舶20の停止時にGNSS受信機30により測位された二次元座標値を二次元座標の初期値として使用する。
【0076】
まず、カルマンフィルタ部330は、GNSSデータ391が示す二次元座標と、緯度経度更新部314によって算出された二次元座標との差を「座標残差」として算出する。
次に、カルマンフィルタ部330は、GNSSデータ391が示す二次元速度と、座標変換部313によって得られた二次元速度との差を「速度残差」として算出する。
次に、カルマンフィルタ部330は、算出した座標残差と速度残差とを入力として第1のカルマンフィルタ331を実行することにより、速度の補正値と、角速度の補正値と、二次元座標の補正値と、方位角の補正値との各々を算出する。
【0077】
出力補正部315は、緯度経度更新部314によって算出された二次元座標値にカルマンフィルタ部330によって算出された補正値を加算することにより二次元座標値を補正し、補正した二次元座標値を出力する。
さらに、出力補正部315は、方位更新部312によって算出された方位角にカルマンフィルタ部330によって算出された補正値を加算することにより方位角を補正し、補正した方位角を出力する。
【0078】
以上のように、3自由度2次元航法では、加速度センサ41が計測した加速度ではなく、ミリ波レーダ50が計測した速度を用いているために速度に積分誤差がのらない。また、方位角の初期値が不適切であっても、すぐに方位角として適切な値を求めることができる。これは、角速度センサ42が計測した角速度ではなく、ミリ波レーダ50が計測した角速度を用いているためである。
従って、3自由度2次元航法によれば、二次元座標を求めるための積分計算が1回で済み、速度の座標変換に用いる方位角の初期値の誤差の影響が比較的少なく、また、カルマンフィルタを用いて二次元座標値と方位角との各々を適切に補正することができる。
【0079】
図11は、実施の形態1に係る6自由度3次元航法のアルゴリズムを示している。当該アルゴリズムは、特許文献1の
図9に示すアルゴリズムと同じである。以下、
図11について説明する。なお、標定部320は、入力補正部324と、出力補正部325とを備える。
【0080】
入力補正部324は、加速度データ393が示す三次元加速度にカルマンフィルタ部330によって算出された補正値を加算することにより三次元加速度を補正する。
また、入力補正部324は、角速度データ394が示す三次元角速度にカルマンフィルタ部330によって算出された補正値を加算することにより三次元角速度を補正する。
【0081】
ストラップダウン演算部220は、入力補正部324によって補正された三次元加速度と、入力補正部324によって補正された三次元角速度とを用いて、対象船舶20の位置と姿勢と方位との各々を算出する。
【0082】
出力補正部325は、ストラップダウン演算部220によって算出された位置に対してカルマンフィルタ部330によって算出された補正値を加算することにより当該位置を補正し、補正した位置を標定結果の位置として出力する。
また、出力補正部325は、ストラップダウン演算部220によって算出された姿勢に対してカルマンフィルタ部330によって算出された補正値を加算することにより当該姿勢を補正し、補正した姿勢を標定結果の姿勢角として出力する。
さらに、出力補正部325は、ストラップダウン演算部220によって算出された方位に対してカルマンフィルタ部330によって算出された補正値を加算することにより当該方位を補正し、補正した方位を標定結果の方位角として出力する。
【0083】
停止判定部323は、ミリ波レーダ50の観測結果から算出される速度に基づいて、対象船舶20が停止しているか否かを判定する。
【0084】
カルマンフィルタ部330は、対象船舶20が停止してない場合、GNSSデータ391が示す位置と、ストラップダウン演算部220によって算出された位置との差を「位置残差」として算出する。
次に、カルマンフィルタ部330は、速度・角速度データ392が示す速度とストラップダウン演算部220によって算出された速度との差を「速度残差」として算出し、速度・角速度データ392が示す角速度とストラップダウン演算部220によって算出された角速度との差を「角速度残差」として算出する。
次に、カルマンフィルタ部330は、算出した位置残差と速度残差とを入力値として第2のカルマンフィルタ332を実行することにより、三次元加速度の補正値と、三次元角速度の補正値と、位置の補正値と、姿勢の補正値との各々を算出する。
【0085】
ステップS14では、6自由度3次元航法において、拡張ZUPTアルゴリズムを適用した第3のカルマンフィルタ333が実行される。
【0086】
図12は、自動着岸システム90において航法シナリオを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
図12を用いて航法シナリオを生成する処理を説明する。自動着岸システム90が備える各装置の動作手順は自動着岸方法に相当する。また、自動着岸システム90が備える各装置の動作を実現するプログラムは自動着岸プログラムに相当する。
【0087】
(ステップS101)
各ミリ波レーダ50は、各ミリ波レーダ50の周辺を測距し、X軸及びY軸についてのドップラー速度を測定する。
【0088】
(ステップS102)
各ミリ波レーダ50は、各ミリ波レーダ50の周辺を測距した結果を自動着岸装置100へ入力する。
【0089】
(ステップS103)
自動着岸装置100は、各ミリ波レーダ50によるドップラー速度の測定結果をGNSS/INS複合航法装置200へ入力する。
【0090】
(ステップS104)
GNSS/INS複合航法装置200は、時刻tにおける対象船舶20の位置と速度と姿勢とを計算する。
【0091】
(ステップS105)
GNSS/INS複合航法装置200は、計算した対象船舶20の位置と速度と姿勢とを自動着岸装置100へ入力する。
【0092】
(ステップS106)
点群生成部120は、各ミリ波レーダ50から入力されたデータと、GNSS/INS複合航法装置200から入力されたデータとに基づいて、地図データ190として、絶対座標を示す3次元地図を生成する。
【0093】
(ステップS107)
目標座標及び目標姿勢が設定されている場合、自動着岸システム90はステップS108に進む。それ以外の場合、自動着岸システム90はステップS101に戻る。
【0094】
(ステップS108)
経路計画部142は、生成された3次元地図と、現在の対象船舶20の位置と速度と姿勢とに基づいて、目標座標に目標姿勢で到達するまでの航法シナリオとして、障害物を回避し、かつ、合理的である経路計画と姿勢変更計画とを生成する。
【0095】
(ステップS109)
経路計画部142は、生成した航法シナリオにおける予定位置及び予定姿勢それぞれと、現在計測された対象船舶20の位置及び姿勢を比較する。
【0096】
(ステップS110)
経路計画部142は、ステップS109における比較結果を基に航法シナリオを修正する。
【0097】
(ステップS111)
目標座標に障害物がある場合、自動着岸システム90はステップS112に進む。それ以外の場合、自動着岸システム90はステップS113に進む。
【0098】
(ステップS112)
経路計画部142は、目標座標付近において障害物を回避することができる座標及び姿勢それぞれを、目標座標及び目標姿勢として再設定する。
【0099】
(ステップS113)
航法シナリオにおいて対象船舶20が目標座標及び目標姿勢に到達した場合、自動着岸システム90はステップS114に進む。それ以外の場合、自動着岸システム90はステップS101に戻る。
【0100】
(ステップS114)
自動着岸システム90は、航法シナリオの生成を終了する。
【0101】
図13は、ユースケース1における自動着岸システム90の運用シーケンスを説明する図である。ユースケース1は、具体例として、エンジン2基掛けのハイエンドクルーザがサービスバースへ着岸するケースである。ユースケース1は、最も実現容易な基本ユースケースに当たる。
図13を用いてユースケース1の具体例を説明する。本例において、一般的なMAKLINK法を利用している。
図13において、アンテナの中心に対応するシンボル地図のエリアと、アンテナの中心から±45度の範囲のエリアに対応するシンボル地図のエリアと、アンテナの中心のLOSと、アンテナ覆域±45度の範囲との各々が示されている。LOSはLine Of Sightの略記である。
【0102】
(1)アプローチ開始
対象船舶20は、マリーナバースに対する着岸アプローチを開始する。
【0103】
(2)地図生成スタート
対象船舶20は、マリーナバースに対する離隔距離が15mである地点において地図生成を開始する。対象船舶20は、マリーナバースの岸に平行に進みながら地図を生成する。
【0104】
(3)地図生成完了
対象船舶20は、地図を生成しながら1から2艇身程度直進し、地図の生成を完了する。
【0105】
(4)経路計画実施
対象船舶20は、生成した地図と、対象船舶20の位置及び姿勢とに基づいて経路計画を実施する。なお、対象船舶20の目標位置及び目標姿勢が設定されているものとする。
【0106】
(5)自動着岸
対象船舶20は、実施した経路計画に基づいて自動着岸を実施する。
【0107】
図14は、ユースケース1における自動着岸システム90の運用シーケンスを説明する図であって、ウェイポイント及び地図の具体例を表記した図である。本例において、目標座標及び目標姿勢が示されており、また、マリーナバースには障害物として他の船が存在する。本例において、地図は複数のノードを示す。隣接する各2つのノードを結んだ線は、航行不能ラインを示す。航行不能ラインは、対象船舶20が進入することができない領域の端部を示し、航行可能領域と航行不能領域との境界に対応する。各ノードは、ミリ波レーダ50の観測結果を示し、具体例として、岸壁、桟橋、又は障害物の一部を示す。
図14において、航行不能ラインよりも対象船舶20側の領域が航行可能領域である。
【0108】
なお、対象船舶20は、自動着岸の実施中に地図形状の差異を検知した場合、直ちに自動着岸を停止する。地図形状の差異は、自動着岸の実施前に生成した地図が示す航行不能ラインと、自動着岸の実施中においてミリ波レーダ50により観測した結果に基づく航行不能ラインとの差異である。地図形状の差異は、具体例として、自動着岸の実施前において停泊中であった他船が動き出すことによって生じる。ここで、本実施の形態では、地図が絶対座標系であるため、過去の地図と現在の地図との間における相似性を常に検証することができ、また、地図形状の差異を検知することができる。一方、既存技術では、地図が相対座標系であるため、過去の地図と現在の地図との間における相似性を検証することができない。なお、航行不能ラインは3次元的な面であってもよい。
上位システム又はユーザが対象船舶20の周囲の安全を確認した後、自動着岸システム90は、ミリ波レーダ50による観測結果に基づいて地図を更新し、運用シーケンス(4)から再開する。
つまり、対象船舶20が誘導されている途中において、対象レーダは対象バースにおいて測距し、GNSS/INS複合航法装置200は対象船舶20の位置及び姿勢を測位する。点群生成部120は、対象船舶20が誘導されている途中において、対象レーダが対象バースにおいて測距した結果と、GNSS/INS複合航法装置200が対象船舶20の位置及び姿勢を測位した結果とに基づいて更新地図を生成する。更新地図は、対象バースにおける航行可能領域を示す地図であって、絶対座標を示す地図である。航法シナリオ生成部140は、更新地図が示す航行可能領域と、対象地図が示す航行可能領域との間に差異が存在する場合に、対象船舶20の誘導を停止する。
【0109】
図15は、ユースケース2における自動着岸システム90の運用シーケンスを説明する図である。ユースケース2は、具体例として、エンジン2基掛けのハイエンドクルーザがホームバースへ着岸するケースである。ユースケース2は、実運用時の標準ケースに当たる。ユースケース2における処理の流れは、ユースケース1における処理の流れと同様である。
なお、ユースケース1において、対象船舶20は、地図を生成するために岸壁にかなり近づくことができる。しかしながら、ユースケース2において、対象船舶20は、岸壁に近づこうとすると桟橋に衝突する可能性がある。そのため、ユーザ又は上位システム等は、ユースケースに応じて着岸モードを変更する必要がある。ユーザは、入出力装置を用いてユースケースを設定してもよい。目標位置に基づき、予め設定された目標位置に基づくユースケースの対応テーブルを参照して、目標位置の近傍におけるユースケースが自動的に設定されてもよい。
【0110】
図16から
図20は、ユースケース2における自動着岸システム90の運用シーケンスを時系列で説明する図である。
図16から
図20を用いて当該運用シーケンスの具体例を説明する。本例において、一般的なMAKLINK法を利用している。
【0111】
(1)アプローチ開始
対象船舶20は、
図16に示すように、桟橋のへりをサーチするために岸壁が存在する方向へ向かう。なお、対象船舶20の着岸モードはユースケース2に対応するモードに設定されている。
【0112】
(2)地図生成スタート
対象船舶20は、
図17に示すように、桟橋のへりを観測した後、バースのへりをサーチするためにバースのへりが存在すると考えられる方向へ進む。
対象船舶20は、
図18に示すように、ホームバースの幅が判明した後、検出したホームバースの中をサーチしに行く。ホームバースの幅は、観測した桟橋のへりと、観測したバースのへりとに基づいて算出される。
対象船舶20は、
図19に示すように、検出したホームバースの中へ入り、ホームバースの形状を地図化する。
以降の処理はユースケース1の処理と同様である。なお、
図20は、生成された地図と、目標座標及び目標姿勢と、計画された経路が示す各ウェイポイントとを示している。
【0113】
***実施の形態1の効果の説明***
本実施の形態によれば、リアルタイムで着岸位置を示す地図を自動的に生成するため、事前の着岸位置の登録が不要である、また、本実施の形態によれば、他の船がバースに停泊している場合であっても、自動的に他の船を避けながら任意のバースに着岸することができる。
本実施の形態によれば、絶対座標によって航法シナリオを生成することができるため、クルーザの運用のように着岸位置が固定的である運用において、制御用の上位システム等から予め着岸座標を指定しておくことが可能である。そのため、ユーザが手動で着岸座標を設定する必要はない。なお、着岸位置が変更となる場合に、ユーザが手動で着岸位置の座標を設定することも可能である。
本実施の形態によれば、着岸位置を絶対座標で指定することができる。そのため、本実施の形態によれば、ミリ波レーダ50の測距範囲外において地図が生成されていない領域における航行シナリオを生成することもできる。
【0114】
***他の構成***
<変形例1>
図21は、本変形例に係る自動着岸装置100のハードウェア構成例を示している。
自動着岸装置100は、プロセッサ11、プロセッサ11とメモリ12、プロセッサ11と補助記憶装置13、あるいはプロセッサ11とメモリ12と補助記憶装置13とに代えて、処理回路18を備える。
処理回路18は、自動着岸装置100が備える各部の少なくとも一部を実現するハードウェアである。
処理回路18は、専用のハードウェアであってもよく、また、メモリ12に格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
【0115】
処理回路18が専用のハードウェアである場合、処理回路18は、具体例として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はこれらの組み合わせである。
自動着岸装置100は、処理回路18を代替する複数の処理回路を備えてもよい。複数の処理回路は、処理回路18の役割を分担する。
【0116】
自動着岸装置100において、一部の機能が専用のハードウェアによって実現されて、残りの機能がソフトウェア又はファームウェアによって実現されてもよい。
【0117】
処理回路18は、具体例として、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせにより実現される。
プロセッサ11とメモリ12と補助記憶装置13と処理回路18とを、総称して「プロセッシングサーキットリー」という。つまり、自動着岸装置100の各機能構成要素の機能は、プロセッシングサーキットリーにより実現される。
【0118】
***他の実施の形態***
実施の形態1について説明したが、本実施の形態のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、本実施の形態を部分的に実施しても構わない。その他、本実施の形態は、必要に応じて種々の変更がなされても構わず、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施されても構わない。
なお、前述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示と、その適用物と、用途の範囲とを制限することを意図するものではない。フローチャート等を用いて説明した手順は適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0119】
11 プロセッサ、12 メモリ、13 補助記憶装置、14 入出力IF、15 通信装置、18 処理回路、19 信号線、20 対象船舶、29 GNSSアンテナ、30 GNSS受信機、40 IMU、41 加速度センサ、42 角速度センサ、50 ミリ波レーダ、51 シンセサイザ、52 発振器、53 ミリ波送受信アンテナ、54 ミキサー、55 信号処理部、56 シンボル捕捉追尾部、60 磁気方位センサ、61 スイッチ、90 自動着岸システム、100 自動着岸装置、110 データ収集部、120 点群生成部、121 点群抽出部、122 座標変換部、123 地図生成部、130 速度方位検出部、131 速度プロファイル部、132 レーダ/Body座標変換部、140 航法シナリオ生成部、141 目標位置入力部、142 経路計画部、143 誘導制御部、190 地図データ、200 GNSS/INS複合航法装置、220 ストラップダウン演算部、230 衛星観測データ推定部、240 誤差推定部、241 高精度測位計算部、300 位置姿勢標定装置、310 初期値算出部、311 入力補正部、312 方位更新部、313 座標変換部、314 緯度経度更新部、315 出力補正部、320 標定部、321 走行時標定部、322 停止時標定部、323 停止判定部、324 入力補正部、325 出力補正部、330 カルマンフィルタ部、331 第1のカルマンフィルタ、332 第2のカルマンフィルタ、333 第3のカルマンフィルタ、390 記憶部、391 GNSSデータ、392 速度・角速度データ、393 加速度データ、394 角速度データ。
【要約】
自動着岸装置(100)は、点群生成部(120)と航法シナリオ生成部(140)とを備える。点群生成部(120)は、GNSS/INS複合航法装置(200)が対象船舶の位置及び姿勢を測位した結果に基づいて、対象レーダが対象バースにおいて測距した結果に対応する点群の各点に対応する相対座標を絶対座標に変換し、変換された各点に対応する絶対座標に基づいて、対象バースにおける航行可能領域を示し、絶対座標を示す対象地図を生成する。航法シナリオ生成部(140)は、対象地図に基づいて対象バースにおける対象船舶の目標位置及び目標姿勢が指定されたとき、対象地図と、測位された対象船舶の位置及び姿勢とに基づいて、目標位置に目標姿勢で到達するよう対象船舶を誘導する計画を生成する。