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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】プラント制御保護装置
(51)【国際特許分類】
   G21D 3/04 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
G21D3/04 A
G21D3/04 D
G21D3/04 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024515742
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2022018001
(87)【国際公開番号】W WO2023203594
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 奨
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-319501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21D 3/04
G05B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント機器を定常状態に維持するための監視操作を行う監視操作設備と、前記プラント機器の状態検出および検出されたプラント機器の状態に応じて前記プラント機器に対して自動制御信号を発信してプロセス制御を行う保護制御装置とを有し、
前記監視操作設備には、想定外の事象が発生した場合に、前記自動制御信号が前記プラント機器に出力されるのを手動で阻止する手動ブロック信号を発信する手動発信部が設けられるとともに、
前記保護制御装置には、制御ロジック部が実装されており、前記制御ロジック部は、前記自動制御信号が入力されている状態で前記手動ブロック信号が入力された場合には、前記自動制御信号が前記プラント機器に出力されるのを阻止するものであって、
前記制御ロジック部は、
前記自動制御信号を第1NOT回路を経由してリセット信号として、また前記手動ブロック信号をレベル反転用のトリガ信号として、それぞれ入力するTフリップフロップ回路と、
前記自動制御信号を一方の入力として、また前記Tフリップフロップ回路から第2NOT回路を経由した出力を他方の入力として取り込むAND回路と、
からなるロジック回路を備える、プラント制御保護装置。
【請求項2】
前記ロジック回路に入力される前記自動制御信号は、前記プラント機器を自動でON操作する自動起動信号である、請求項1に記載のプラント制御保護装置。
【請求項3】
前記自動制御信号は、前記プラント機器を自動でON操作する自動起動信号、および前記プラント機器を自動でOFF操作する自動停止信号を含み、
前記手動発信部は、前記手動ブロック信号に加えて、前記プラント機器を手動でON操作する手動起動信号、および手動でOFF操作する手動停止信号を発信するものであり、
前記制御ロジック部は、
前記ロジック回路を2つ有し、一方の前記ロジック回路には前記自動起動信号と前記手動ブロック信号とが、他方の前記ロジック回路には前記自動停止信号と前記手動ブロック信号とが、それぞれ入力され、かつ、
他方の前記ロジック回路から第3NOT回路を経由した出力を一方の入力として、また前記手動起動信号を他方の入力として取り込む第1AND回路と
一方の前記ロジック回路から第4NOT回路を経由した出力を一方の入力として、また前記手動停止信号を他方の入力として取り込む第2AND回路と、
一方の前記ロジック回路からの出力を一方の入力として、また前記第1AND回路からの出力を他方の入力として取り込む第1OR回路と、
他方の前記ロジック回路からの出力を一方の入力として、また前記第2AND回路からの出力を他方の入力として取り込む第2OR回路と、
を含む請求項1に記載のプラント制御保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、プラント制御保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラントとして、例えば原子力プラントを制御するための弁、ポンプなどのプラント機器は、運転員の手動操作に基づく手動制御信号に加えて、プラント機器の状態を監視している制御装置が予め設定された制御ロジックに基づく自動制御信号を生成、出力することにより、自動制御動作を可能としている。
【0003】
この場合、手動制御信号および自動制御信号のどちらでも機器の制御を可能としているため、手動制御信号と自動制御信号が矛盾した際に機器をどちらの信号を優先して出力するかを設計する必要がある。
【0004】
従来技術では、原子力プラントに異常が発生した際には、プラント機器に対して、自動制御信号を手動制御信号よりも常に優先させることで、原子力プラントを安全に停止させるようにした技術が開示されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0005】
すなわち、この従来技術では、制御装置はプラント機器に対してONおよびOFFのいずれの自動操作信号も発信していない場合には、手動操作信号による機器の動作が可能である。
【0006】
一方、プラント機器に対してOFFの自動操作信号が発信されている場合には、同時にONの手動操作信号が発信された場合でも、制御装置はプラント機器に対してOFF信号を出力する。同様に、プラント機器に対してONの自動操作信号が発信されている場合には、同時にOFFの手動操作信号が発信された場合でも、制御装置はプラント機器に対してON信号を出力する。
【0007】
このように、従来のシステムでは、手動制御信号よりも自動制御信号を優先させているので、操作端末の故障などによる誤信号などに起因して、事前に設計、検証した安全保護動作、および制御動作が阻害されることを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5660833号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プラント、特に原子力プラント向けの制御ロジックは、非常に高い信頼性を確保する必要があるため、様々な事象を想定して機能を設計することが重要である。
【0010】
上記の従来技術では、プラントの状態がシステムの機能設計時に想定していなかった状態となった場合には、運転員は、プラント機器をその状況に適合するように動作をさせようとするが、自動制御信号が常に優先されるため、意図した機器操作ができない事態が想定される。
【0011】
例えば、制御装置は、入力したプラント監視信号および実装した制御ロジックにより、プラント機器である例えばポンプの作動信号を発信してポンプを作動させていた。そして、その動作の途中でプラントの設計時には想定していなかった事象が発生したため、起動したポンプを停止させたい事態が生じても、制御装置は、制御ロジックに従ってポンプの自動制御信号を出力し続けているので、運転員が手動制御信号を発信しても自動制御信号が優先されてしまい、ポンプを停止できないという不具合を生じる。
【0012】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、通常時には自動制御信号を優先しつつも、想定外の事象が発生した際には、手動操作により自動制御信号を無効化することで、プラント運用の信頼性を向上したプラント制御保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願に開示されるプラント制御保護装置は、
プラント機器を定常状態に維持するための監視操作を行う監視操作設備と、前記プラント機器の状態検出および検出されたプラント機器の状態に応じて前記プラント機器に対して自動制御信号を発信してプロセス制御を行う保護制御装置とを有し、
前記監視操作設備には、想定外の事象が発生した場合に、前記自動制御信号が前記プラント機器に出力されるのを手動で阻止する手動ブロック信号を発信する手動発信部が設けられるとともに、
前記保護制御装置には、制御ロジック部が実装されており、前記制御ロジック部は、前記自動制御信号が入力されている状態で前記手動ブロック信号が入力された場合には、前記自動制御信号が前記プラント機器に出力されるのを阻止するものであって、
前記制御ロジック部は、
前記自動制御信号を第1NOT回路を経由してリセット信号として、また前記手動ブロック信号をレベル反転用のトリガ信号として、それぞれ入力するTフリップフロップ回路と、
前記自動制御信号を一方の入力として、また前記Tフリップフロップ回路から第2NOT回路を経由した出力を他方の入力として取り込むAND回路と、
からなるロジック回路を備える。
【発明の効果】
【0014】
本願に開示されるプラント制御保護装置によれば、通常時には制御装置の生成する自動制御信号を優先しつつも、当初の設計時に想定していなかった事象が発生した際には、運転員の判断により、手動ブロック信号を発信することで自動制御信号を無効化することができる。これにより、臨機応変な対応が可能となり、プラント運用の信頼性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1によるプラント制御保護装置の全体の概略構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1によるプラント保護制御装置が備える制御ロジック部の具体的な回路図である。
図3図2のロジック回路に含まれるTFF回路の動作説明に供するタイミングチャートである。
図4図2に示す制御ロジック部を構成するロジック回路の各部の動作説明に供するタイミングチャートである。
図5】実施の形態2によるプラント制御保護装置の全体の概略構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態2によるプラント制御保護装置が備える制御ロジック部の具体的な回路図である。
図7】制御ロジック部をプロセッサと記憶装置とで構成した場合のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は本願の実施の形態1によるプラント制御保護装置の全体の概略構成を示すブロック図である。
この実施の形態1のプラント制御保護装置は、監視操作設備1、および保護制御装置2を備える。
【0017】
監視操作設備1は、各種のプラント機器4を定常状態に維持するための監視操作を行うものである。そして、監視操作設備1には、想定外の事象が発生した場合に、保護制御装置2から発信される後述の自動制御信号がプラント機器4に出力されるのを手動で阻止する手動ブロック信号Sbを発信する手動発信部6が設けられている。
【0018】
一方、保護制御装置2は、各種のプラント検出器5で検出されたプラント機器4の状態に応じてプラント機器4に対して自動制御信号を発信してプロセス制御を行うものである。なお、この実施の形態1において、上記の自動制御信号は、プラント機器4を自動でON操作するための自動起動信号Stである。そして、この保護制御装置2には、制御ロジック部3が実装されている。
【0019】
図2は、保護制御装置2が備える制御ロジック部3の具体的な回路図である。
制御ロジック部3は、自動起動信号Stおよび手動ブロック信号Sbをそれぞれ入力する。そして、制御ロジック部3は、自動起動信号Stを第1NOT回路11を経由してリセット信号として、また手動ブロック信号Sbをレベル反転用のトリガ信号として、それぞれ入力するTフリップフロップ回路(以下、TFF回路と呼ぶ)12と、自動起動信号Stを一方の入力として、またTFF回路12から第2NOT回路13を経由した出力を他方の入力として、それぞれ取り込むAND回路14と、からなるロジック回路7を備える。
【0020】
図3は、図2のロジック回路7を構成するTFF回路12の動作説明に供するタイミングチャートである。
【0021】
TFF回路12は、周知のように、レベル反転用のトリガ信号となる入力信号Sin、およびリセット信号Sretの2つの信号入力に対して、1つの出力信号Soutを発生させる機能を持つ。そして、リセット信号SretがOFFの場合は、入力信号SinがOFFからONに変化するごとに出力信号Soutがレベル反転する。また、リセット信号SretがONの場合は、入力信号Sinの状態にかかわらず、出力信号SoutをOFFとする。
【0022】
そして、この実施の形態1では、TFF回路12のリセット信号Sretが、自動起動信号Stを第1NOT回路11でレベル反転したものに相当し、またレベル反転用のトリガ信号となる入力信号Sinが、手動ブロック信号Sbに相当する。
【0023】
次に、上記構成のプラント制御保護装置の動作について説明する。
監視操作設備1により、プラントの流量、水位、圧力などのプロセス値を制御するための弁、ポンプなどのプラント機器4に対する監視操作を実施する。
【0024】
また、プラント設計時には想定していなかった事象が発生した場合には、運転員が監視操作設備1に設けられた手動発信部6を手動操作して、保護制御装置2から発信される自動制御信号(ここでは自動起動信号St)がプラント機器4に出力されるのを手動で阻止する手動ブロック信号Sbを発信する。この手動ブロック信号Sbは、保護制御装置2に伝送される。
【0025】
一方、保護制御装置2は、各種のプラント機器4のプロセス値を検出するプラント検出器5からの信号に基づき、プラント機器4を動作させる条件を満たしたと判断した場合には、プラント機器4に対する自動制御信号(ここでは自動起動信号St)を発信する。この発信された自動起動信号Stは制御ロジック部3に入力される。また、監視操作設備1の手動発信部6から手動ブロック信号Sbが発信された場合、この手動ブロック信号Sbも同じく制御ロジック部3に入力される。
【0026】
図4は、図2に示す制御ロジック部を構成するロジック回路の各部の動作説明に供するタイミングチャートである。
【0027】
自動起動信号Stおよび手動ブロック信号Sbがいずれも発信されていない場合、自動起動信号StはOFFなので、第1NOT回路11の出力はONであり、TFF回路12はリセットされて、TFF回路12の出力はOFFの状態にある。このため、TFF回路12の出力信号を入力する第2NOT回路13の出力信号はONとなり、AND回路14の他方の入力端子に入力される。このため、AND回路14のゲートが開となるが、その際、自動起動信号Stは発信されていないので、AND回路14の出力はOFFのままである(図4の時刻t1までの期間Ta)。
【0028】
保護制御装置2がプラント機器4を動作させる条件を満たしたと判断した場合には、プラント機器4に対する自動起動信号Stを発信する(図4の時刻t1)。この自動起動信号Stはロジック回路7のAND回路14の一方の入力端子に入力されるとともに、第1NOT回路11でレベル反転されるため、第1NOT回路11の出力はOFFとなる。このため、TFF回路12はリセットされず、TFF回路12の出力は依然OFFのままである。
【0029】
その際、監視操作設備1の手動発信部6から手動ブロック信号Sbがロジック回路7に入力されていないときには、上記のようにTFF回路12の出力信号はOFFの状態なので、第2NOT回路13の出力信号はONとなり、これがAND回路14の他方の入力端子に入力される。これにより、AND回路14のゲートが開となり、自動起動信号Stがプラント機器4に送信される(図4の時刻t1~t2までの期間Tb)。
【0030】
このように、手動ブロック信号Sbが発信されていない場合には、自動起動信号Stによりプラント機器4を動作させることが可能である。
【0031】
自動起動信号Stによってプラント機器4を動作させている状態で、プラント設計時には想定していなかった事象が発生し、運転員により監視操作設備1の手動発信部6が手動操作されて手動ブロック信号Sbが制御ロジック部3に入力された場合(図4の時刻t2)、この手動ブロック信号SbによってTFF回路12への入力がOFFからONとなるので、TFF回路102の出力もONとなる。なお、このとき、自動起動信号StはONであるため、第1NOT回路11の出力はOFFであり、TFF回路12はリセットされない。
【0032】
こうして、TFF回路12の出力がONとなると、第2NOT回路13の出力信号がOFFとなり、これがAND回路14の他方の入力端子に入力される。これに伴い、AND回路14のゲートが閉となり、自動起動信号Stがプラント機器4に送信されるのが阻止される。
【0033】
このように、自動起動信号Stによってプラント機器4が制御されている途中で手動ブロック信号Sbが発信された場合には、自動起動信号StがONの状態でも手動ブロック信号Sbによってプラント機器4への自動起動信号Stの発信が阻止される(図4の時刻t2以降の期間Tc)。
【0034】
保護制御装置2から自動起動信号Stが発信されていない状態で、手動発信部6が誤って手動操作されて手動ブロック信号Sbが制御ロジック部3に入力された場合(図4の時刻t3)、自動起動信号Stは発信されていないので、第1NOT回路11の出力はONであり、TFF回路12の出力はリセットされてOFFのまま維持される。
【0035】
このため、第2NOT回路13の出力信号がONとなり、これがAND回路14の他方の入力端子に入力されるので、AND回路14のゲートが開となるが、保護制御装置2からは自動起動信号Stが未だ発信されていない状態なので、AND回路14の出力はOFFのままである(図4の時刻t4までの期間Td)。
【0036】
この状態で、次に保護制御装置2から自動起動信号Stが発信された場合(図4の時刻t4)、先の時刻t1の場合と同様にして、自動起動信号StがAND回路14を通過してプラント機器4に送信されるので、自動起動信号Stによるプラント機器4の制御動作が可能となる(図4の時刻t4以降の期間Te)。
【0037】
このように、自動起動信号Stの発信前の手動操作によって、誤って手動ブロック信号Sbが制御ロジック部3に入力された場合でも、何ら問題はなく、次の段階で自動起動信号Stが発信されたときには、問題なく自動起動信号Stをプラント機器4に発信することができる。
【0038】
以上のように、この実施の形態1では、保護制御装置2から自動制御信号(ここでは自動起動信号St)がプラント機器4に発信されるのを、運転員の手動操作によって発せられる手動ブロック信号Sbにより阻止する機能を設けているので、通常時には保護制御装置2が生成する自動起動信号Stを優先しつつも、当初の設計時に想定していなかった事象が発生した場合には、運転員の判断により自動起動信号Stを無効化することが可能になる。これにより、臨機応変な対応が可能となり、プラント運用の信頼性がより一層向上する。
【0039】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2によるプラント制御保護装置の全体の概略構成を示すブロック図であり、図6は、実施の形態2によるプラント制御保護装置が備える制御ロジック部の具体的な回路図である。
実施の形態1では、監視操作設備1の手動発信部6からは手動ブロック信号Sbのみ送信するようにしている。これに対して、この実施の形態2では、監視操作設備1の手動発信部6からは、手動ブロック信号Sbに加えて、プラント機器4を手動でON操作する手動起動信号St2、および手動でOFF操作する手動停止信号Sp2を発信するようにしている。
【0040】
また、実施の形態1では、保護制御装置2は、各種のプラント検出器5で検出されたプラント機器4の状態に応じてプラント機器4を自動でON操作する自動起動信号Stのみ発信している。これに対して、この実施の形態2では、プラント機器4に対して発信する自動制御信号として、プラント機器4を自動でON操作する自動起動信号St1に加えて、プラント機器4を自動でOFF操作する自動停止信号Sp1を発信する。
【0041】
図6に示すように、実施の形態2の制御ロジック部3は、実施の形態1(図2)で示したロジック回路7と同じ構成の2つのロジック回路71、72を有する。ここでは、便宜上、一方のロジック回路71を第1ロジック回路と、他方のロジック回路72を第2ロジック回路と称する。
【0042】
そして、第1ロジック回路71には、自動起動信号St1と手動ブロック信号Sbとが、第2ロジック回路72には、自動停止信号Sp1と手動ブロック信号Sbとが、それぞれ入力される。
【0043】
さらに、この実施の形態2の制御ロジック部3は、第3NOT回路105、第4NOT回路205、第1AND回路106、第2AND回路206、および第1OR回路107、第2OR回路207を備える。
【0044】
この場合、第1AND回路106は、第2ロジック回路72から第3NOT回路105を経由した出力を一方の入力とし、また、手動起動信号St2を他方の入力として取り込む。第2AND回路206は、第1ロジック回路71から第4NOT回路205を経由した出力を一方の入力とし、また手動停止信号Sp2を他方の入力として取り込む。第1OR回路107は、第1ロジック回路71からの出力を一方の入力として、また第1AND回路106からの出力を他方の入力として取り込む。さらに、第2OR回路207は、第2ロジック回路72からの出力を一方の入力として、また第2AND回路206からの出力を他方の入力として取り込む。
【0045】
次に、上記構成の制御ロジック部3の動作について説明する。
第1ロジック回路71と第2ロジック回路72の基本的な動作は、実施の形態1の場合と同じである。第1ロジック回路71と第2ロジック回路72の動作の詳細な説明は省略する。
【0046】
まず、自動起動信号St1と手動ブロック信号Sbがいずれも発信されていない場合は、第1ロジック回路71のAND回路14の出力はOFFであるため、第4NOT回路205の出力信号はONとなり、第2AND回路206のゲートが開になる。このため、第2OR回路207を通じて手動停止信号Sp2によるプラント機器4の停止操作が可能となる。
【0047】
また、同様に、自動停止信号Sp1と手動ブロック信号Sbがいずれも発信されていない場合は、第2ロジック回路72のAND回路14の出力はOFFであるため、第3NOT回路105の出力信号はONとなり、第1AND回路106のゲートが開になる。このため、第1OR回路107を通じて手動起動信号St2によるプラント機器4の起動操作が可能となる。
【0048】
一方、自動起動信号St1が発信されている場合、未だ手動ブロック信号Sbが発信されていない場合には、第1ロジック回路71のAND回路14の出力がONとなるため、第1OR回路107を通じてプラント機器4に自動起動信号St1が出力される。また、第1ロジック回路71のAND回路14の出力がONとなると、第4NOT回路205の出力がOFFとなり、第2AND回路206のゲートが閉となる。このため、プラント機器4には手動停止信号Sp2を出力することができない。
【0049】
また、同様に、自動停止信号Sp1が発信されている場合、未だ手動ブロック信号Sbが発信されていない場合には、第2ロジック回路72のAND回路14の出力がONとなるため、第2OR回路207を通じてプラント機器4に自動停止信号Sp1が出力される。また、第2ロジック回路72のAND回路14の出力がONとなると、第3NOT回路105の出力がOFFとなり、第1AND回路106のゲートが閉となる。このため、プラント機器4には手動起動信号St2を出力することができない。
【0050】
このように、自動起動信号St1が発信されている場合に勝手に手動停止信号Sp2を出力してプラント機器4を停止させたり、自動停止信号Sp1が発信されている場合に勝手に手動起動信号St2を出力してプラント機器4を起動させたりすることはできない。
【0051】
自動起動信号Stによってプラント機器4を動作させている状態で、プラント設計時には想定していなかった事象が発生したため、運転員により監視操作設備1の手動発信部6が手動操作されて手動ブロック信号Sbが発信された場合、この手動ブロック信号Sbにより制御ロジック部3の第1ロジック回路71のAND回路14のゲートが閉となり、自動起動信号St1の出力が阻止される。そして、第1ロジック回路71のAND回路14の出力がOFFになると、第4NOT回路205の出力がONとなり、第2AND回路206のゲートが開になるので、第2OR回路207を通じて手動停止信号Sp2によりプラント機器4を停止することが可能となる。
【0052】
つまり、自動起動信号St1によるプラント機器4の起動後は、手動ブロック信号Sbを発信し、次いで手動停止信号Sp2を発信することでプラント機器4の手動停止が可能となる。
【0053】
また、同様に、自動停止信号Sp1によってプラント機器4を停止させている状態で、手動ブロック信号Sbが制御ロジック部3に入力された場合、第2ロジック回路72のAND回路14のゲートが閉となり、自動停止信号Sp1の出力が阻止される。そして、第2ロジック回路72のAND回路14の出力がOFFになると、第3NOT回路105の出力がONとなり、第1AND回路106のゲートが開になるので、第1OR回路107を通じて手動起動信号St2によりプラント機器4を起動することが可能となる。
【0054】
つまり、自動停止信号Sp1によるプラント機器4の停止後は、手動ブロック信号Sbを発信し、次いで手動起動信号St2を発信することでプラント機器4の手動起動が可能となる。
【0055】
以上のように、この実施の形態2では、通常時には保護制御装置2が生成する自動起動信号St1、自動停止信号Sp1を優先しつつも、当初の設計時に想定していなかった事象が発生した場合には、運転員の手動操作によって発せられる手動ブロック信号Sbにより、自動起動信号St1を無効化した後に手動停止信号Sp2によるプラント機器4の手動停止する、あるいは自動停止信号Sp1を無効化した後に手動起動信号St2によるプラント機器4を手動起動することが可能となる。これにより、保護制御装置2から自動起動信号St1、および自動停止信号Sp1が発信される場合でも、臨機応変な対応が可能となり、プラント運用の信頼性がより一層向上する。
【0056】
なお、上記の実施の形態1、2において、制御ロジック部3は、図2図6に示したような具体的なロジック回路を組み合わせたハードウェアで構成しているが、ソフトウェアで構成することも可能である。
【0057】
例えば、図7に示すように、プロセッサ300と記憶装置301と用い、プロセッサ300が記憶装置301に予め記憶されたプログラムを実行することで、制御ロジック部3と同様の動作を実行させる。
【0058】
記憶装置301は、図示していなが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ300は、記憶装置301から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ300にプログラムが入力される。また、プロセッサ300は、演算結果等のデータを記憶装置301の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0059】
なお、本願は、様々な例示的な実施の形態が記載されているが、一つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるものではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
【0060】
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも一つの構成要素を変形する場合、追加する場合、または省略する場合、さらには、少なくとも一つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれものとする。
【符号の説明】
【0061】
1 監視操作設備、2 保護制御装置、3 制御ロジック部、4 プラント機器、5 プラント検出器、6 手動発信部、7 ロジック回路、11 第1NOT回路、12 TFF回路、13 第2NOT回路、14 AND回路、71 第1ロジック回路、72 第2ロジック回路、105 第3NOT回路、106 第1AND回路、107 第1OR回路、205 第4NOT回路、206 第2AND回路、207 第2OR回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7