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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241101BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024523936
(86)(22)【出願日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2023024031
【審査請求日】2024-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 晃久
(72)【発明者】
【氏名】田屋 昌樹
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-66199(JP,A)
【文献】特開2012-69725(JP,A)
【文献】特開2021-145015(JP,A)
【文献】特開2017-42819(JP,A)
【文献】特開2008-311550(JP,A)
【文献】国際公開第2021/095147(WO,A1)
【文献】特開2017-5181(JP,A)
【文献】特開2017-126681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャケットと、前記ジャケットに取り付けられている天板とを有する冷却器と、
前記冷却器上に配置されているコンポーネントとを備え、
前記冷却器の内部には、冷媒が流れる冷媒流路があり、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記冷媒流路の流路面積は、前記コンポーネントの温度が基準温度以上となる温度域において、前記コンポーネントの温度変化に伴う前記天板の反り変形により縮小される、電力変換装置。
【請求項2】
冷却器と、
前記冷却器上に配置されているコンポーネントとを備え、
前記冷却器の内部には、冷媒が流れる冷媒流路があり、
前記冷媒流路の流路面積は、前記コンポーネントの温度が基準温度以上となる温度域において縮小され、
前記冷却器は、ジャケットと、天板とを有し、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記天板の線膨張係数は、前記コンポーネントの線膨張係数よりも大きい電力変換装置。
【請求項3】
冷却器と、
前記冷却器上に配置されているコンポーネントとを備え、
前記冷却器の内部には、冷媒が流れる冷媒流路があり、
前記冷媒流路の流路面積は、前記コンポーネントの温度が基準温度以上となる温度域において縮小され、
前記冷却器は、ジャケットと、天板とを有し、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記ジャケットの線膨張係数は、前記天板の線膨張係数よりも大きい電力変換装置。
【請求項4】
記天板は、前記天板の厚さ方向に沿って重ねられている複数の層で構成されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記複数の層は、第1層と、前記第1層よりも前記第1面側にある第2層とを有し、
前記第2層の線膨張係数は、前記第1層の線膨張係数よりも大きい、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記複数の層は、第1層と、前記第1層よりも前記第1面側にある第2層とを有し、
平面視において、前記第1層の面積は、前記第2層の面積よりも小さく、
前記第2層の厚さは、外周縁部において、前記外周縁部の内側よりも少なくとも部分的に厚くなっている、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
記第1面には、複数のフィンが形成されており、
前記第1面は、平面視において前記コンポーネントと重なる第1領域と、平面視において前記コンポーネントと重ならない第2領域とを有し、
前記複数のフィンは、前記第1領域に形成されている第1フィンと、前記第2領域に形成されている第2フィンとを有し、
前記第2フィンは、前記第1フィンよりも長い、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
冷却器と、
前記冷却器上に配置されているコンポーネントとを備え、
前記冷却器の内部には、冷媒が流れる冷媒流路があり、
前記冷媒流路の流路面積は、前記コンポーネントの温度が基準温度以上となる温度域において縮小され、
前記冷却器は、ジャケットと、天板とを有し、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記第1面には、複数のフィンが形成されており、
前記複数のフィンのうちの少なくとも一部は、前記冷媒流路の流路面積が縮小された際に前記ジャケットに接触する電力変換装置。
【請求項9】
ジャケットと、前記ジャケットに取り付けられている天板と、前記ジャケットの内部空間に配置されている板部材とを有する冷却器と、
前記冷却器上に配置されているコンポーネントとを備え、
前記冷却器の内部には、冷媒が流れる冷媒流路があり、
前記冷媒流路は、前記内部空間、前記天板及び前記板部材で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記第2面には、複数のフィンが形成されており、
前記冷媒流路の面積は、前記コンポーネントの温度が基準温度以上となる温度域において、前記コンポーネントの温度変化に伴う前記板部材の反り変形により変化される電力変換装置。
【請求項10】
ジャケットと、前記ジャケットに取り付けられている天板と、前記ジャケットの内部空間に配置されている板部材とを有する冷却器と、
前記冷却器上に配置されているコンポーネントとを備え、
前記冷却器の内部には、冷媒が流れる冷媒流路があり、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記冷媒流路の面積は、前記コンポーネントの温度が基準温度以上となる温度域において、前記コンポーネントの温度変化に伴う前記ジャケットの反り変形により変化される、電力変換装置。
【請求項11】
前記基準温度は、前記コンポーネントの動作範囲温度における最低温度である、請求項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記コンポーネントは、パワーデバイスである、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-130430号公報(特許文献1)には、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板が記載されている。特許文献1に記載のヒートシンク付きパワーモジュール用基板では、温度変化に伴う変形(反り)が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-130430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワーデバイス等のコンポーネントを冷却するための冷却器の内部には、冷媒を流す冷媒流路が設けられる。通常、冷却器では、冷媒流路の流路面積を極力小さくすることで冷媒の流速を高め、冷媒への熱伝達を促進する設計が行われる。冷媒流路の流路面積を小さくする設計では、冷媒が冷媒流路を流れる際の圧力損失が大きくなる。特許文献1のように温度変化に伴う変形を抑制すると、上記の圧力損失が常に大きくなり、コンポーネントに対する強い冷却の必要がない場合、すなわちコンポーネントが低温である場合に非効率である。
【0005】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、コンポーネントに対する効率的な冷却が可能な電力変換装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電力変換装置は、ジャケットと、ジャケットに取り付けられている天板とを有する冷却器と、冷却器上に配置されているコンポーネントとを備えている。冷却器の内部には、冷媒が流れる冷媒流路がある。冷媒流路は、ジャケットの内部空間及び天板で画されている。天板は、内部空間側を向いている第1面と、第1面の反対面である第2面とを有し、コンポーネントは、第2面上に配置されている。冷媒流路の流路面積は、コンポーネントの温度が基準温度以上となる温度域において、コンポーネントの温度変化に伴う天板の反り変形により縮小される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電力変換装置によると、コンポーネントに対する効率的な冷却が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電力変換装置100Aの斜視図である。
図2図1中のII-IIにおける断面図である。
図3】電力変換装置100Aの動作を説明する第1説明図である。
図4】電力変換装置100Aの動作を説明する第2説明図である。
図5】電力変換装置100Aを用いた冷却システム200の模式図である。
図6】変形例に係る電力変換装置100Aの動作を説明する説明図である。
図7】電力変換装置100Bの断面図である。
図8】変形例に係る電力変換装置100Bの動作を説明する第1説明図である。
図9】変形例に係る電力変換装置100Bの動作を説明する第2説明図である。
図10】電力変換装置100Cの断面図である。
図11】電力変換装置100Cにおける天板30の底面図である。
図12】変形例に係る電力変換装置100Cの動作を説明する第1説明図である。
図13】変形例に係る電力変換装置100Cの動作を説明する第2説明図である。
図14】変形例に係る電力変換装置100Cにおける天板30の底面図である。
図15】電力変換装置100Dの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1に係る電力変換装置を説明する。実施の形態1に係る電力変換装置を、電力変換装置100Aとする。
【0011】
(電力変換装置100Aの構成)
以下に、電力変換装置100Aの構成を説明する。
【0012】
図1は、電力変換装置100Aの斜視図である。図2は、図1中のII-IIにおける断面図である。図1及び図2に示されているように、電力変換装置100Aは、冷却器10と、コンポーネント50とを有している。
【0013】
冷却器10は、ジャケット20と、天板30とを有している。冷却器10の内部には、冷媒流路40がある。冷媒流路40には、冷媒が流れる。冷媒は、例えば水である。
【0014】
ジャケット20は、側壁21と、底壁22とを有している。底壁22は、側壁21の下端に連なっている。側壁21及び底壁22で画されている空間を、ジャケット20の内部空間23とする。側壁21には、冷媒流入口21aと、冷媒流出口21bとが形成されている。冷媒流入口21a及び冷媒流出口21bは、内部空間23とジャケット20の外部とを連通させている。
【0015】
天板30は、第1面30aと、第2面30bとを有している。第1面30a及び第2面30bは、天板30の厚さ方向における端面である。第2面30bは、第1面30aの反対面である。天板30は、内部空間23を閉塞するようにジャケット20に取り付けられている。天板30がジャケット20に取り付けられた状態で、第1面30aは、内部空間23側を向いている。冷媒流路40は、内部空間23及び天板30(第1面30a)で画されている。冷媒流入口21aから流入する冷媒は、冷媒流路40を流れて冷媒流出口21bから流出する。なお、図2中では、冷媒は、紙面垂直方向に流れている。
【0016】
第1面30aには、複数のフィン31が形成されている。フィン31は、第2面30bとは反対側に向かって、第1面30aから突出している。つまり、複数のフィン31は、冷媒流路40の内部にある。
【0017】
コンポーネント50は、冷却器10上に配置されている。より具体的には、コンポーネント50は、第2面30b上に配置されている。コンポーネント50は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオード等のパワー半導体素子を有するパワーデバイスである。但し、コンポーネント50は、これに限られない。コンポーネント50は、例えば、キャパシタ等であってもよい。コンポーネント50は、例えば、冷却器10(第2面30b)に面接触している。コンポーネント50は、例えば、筐体51と、筐体51から突出している端子52とを有している。筐体51はパワー半導体素子を封止しており、端子52はパワー半導体素子に電気的に接続されている。
【0018】
図3は、電力変換装置100Aの動作を説明する第1説明図である。図4は、電力変換装置100Aの動作を説明する第2説明図である。図3にはコンポーネント50の温度が基準温度未満となる温度域における電力変換装置100Aの状態が示されており、図4にはコンポーネント50の温度が基準温度以上となる温度域における電力変換装置100Aの状態が示されている。なお、この基準温度は、例えば、コンポーネント50の動作温度範囲における最低温度である。図3及び図4に示されているように、天板30は、コンポーネント50の温度が基準温度未満となる温度域において内部空間23とは反対側に向かって反る一方で、コンポーネント50の温度が基準温度以上となる温度域において内部空間23側に反る。これにより、冷媒流路40の流路面積は、コンポーネント50の温度が基準温度以上となる温度域において縮小する。
【0019】
上記のような冷媒流路40の流路面積の変化は、天板30の線膨張係数をコンポーネント50の線膨張係数よりも大きくすることにより実現される。冷媒流路40の流路面積の十分な縮小を得るために、天板30の線膨張係数とコンポーネント50の線膨張係数との差は、例えば、3ppm/K以上10ppm/K以下である。この線膨張係数との差は、好ましくは、7ppm/K以上である。例えば、天板30の構成材料をアルミニウム、アルミニウム合金、銅等とし、コンポーネント50にDCB(Direct Copper Bonding)基板(すなわち、セラミック絶縁層とセラミック絶縁層上に配置されている銅配線層とを有する基板)を用いる場合、このような線膨張係数の差を実現可能である。天板30の線膨張係数及びコンポーネント50の線膨張係数は、例えば、それぞれ17ppm/K以上及び10ppm/K以下である。
【0020】
天板30の線膨張係数とコンポーネント50の線膨張係数との差が小さい場合でも、天板30の剛性を低くする(天板30の厚さを小さくする)こと又はコンポーネント50の温度の変化幅を大きくすることで、冷媒流路40の流路面積の十分な縮小が得られる。上記のような冷媒流路40の流路面積の変化は、ジャケット20の線膨張係数を天板30の線膨張係数よりも大きくすることにより実現されてもよい。
【0021】
ジャケット20の構成材料は、例えば、アルミニウム合金である。天板30の構成材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、MMC(Metal Matrix Composites、金属基複合材料)である。筐体51の構成材料は、例えばシリカフィラーを含有するエポキシ樹脂である。端子52の構成材料は、例えば銅等である。筐体51は、型枠内にシリコーンゲル等を滴下して形成してもよい。
【0022】
図5は、電力変換装置100Aを用いた冷却システム200の模式図である。図5に示されているように、冷却システム200は、電力変換装置100Aと、ポンプ110と、他のコンポーネント群120とを有している。ポンプ110は、冷媒を循環させる。これにより、冷媒は、冷媒流入口21aから冷媒流路40に流入して冷媒流出口21bから流出する。冷媒流出口21bから流出した冷媒は、他のコンポーネント群120の冷却器を通り、ポンプ110に戻る。このように、冷却システム200では、電力変換装置100Aに直列に接続されている他のコンポーネント群120も同様に冷却される。
【0023】
(電力変換装置100Aの効果)
以下に、電力変換装置100Aの効果を説明する。
【0024】
コンポーネント50の温度が低い場合には冷却器10によるコンポーネント50の冷却の必要性が低い一方、コンポーネント50の温度が高い場合には冷却器10によるコンポーネント50の冷却の必要性が高い。電力変換装置100Aでは、コンポーネント50の温度が高い場合には、冷媒流路40の流路面積が縮小され、冷却器10の冷却性能が向上される。他方で、コンポーネント50の温度が低い場合には、冷媒流路40の流路面積が拡大されて冷却性能が低下する代わりに、冷媒が冷媒流路40を流れる際の圧力損失が減少する。そのため、電力変換装置100Aによると、コンポーネント50の温度に応じてコンポーネント50に対する効率的な冷却が可能になる。
【0025】
(変形例)
以下に、電力変換装置100Aの変形例を説明する。
【0026】
図6は、変形例に係る電力変換装置100Aの動作を説明する説明図である。図6に示されているように、コンポーネント50の温度が上昇に伴い、フィン31の先端は、ジャケット20(底壁22)に接触してもよい。フィン31の先端がジャケット20と接触すると、フィン31の先端とジャケット20との間の空間が無くなり、当該空間に冷媒が流れなくなるため、冷媒は、隣り合うフィン31の間に流れ込みやすくなる。その結果、コンポーネント50の温度が上昇した際の冷却効率がさらに高まる。なお、コンポーネント50の温度が低い場合、フィン31の先端は、ジャケット20から離間する。
【0027】
コンポーネント50がどのような温度になった際にフィン31の先端がジャケット20に接触するかは、任意に設定可能である。例えば、ジャケット20に取り付ける前に天板30に予め反りを加えておき、その反りの程度を調整することにより、フィン31の先端がジャケット20に接触する際のコンポーネント50の温度を調整可能である。
【0028】
実施の形態2.
実施の形態2に係る電力変換装置を説明する。実施の形態2に係る電力変換装置を、電力変換装置100Bとする。ここでは、電力変換装置100Aと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0029】
(電力変換装置100Bの構成)
以下に、電力変換装置100Bの構成を説明する。
【0030】
図7は、電力変換装置100Bの断面図である。図7に示されているように、電力変換装置100Bは、冷却器10と、コンポーネント50とを有している。電力変換装置100Bでは、冷却器10がジャケット20と天板30とを有しており、冷却器10の内部に冷媒流路40がある。これらの点に関して、電力変換装置100Bの構成は、電力変換装置100Aの構成と共通している。
【0031】
電力変換装置100Bでは、天板30が、複数の層で構成されている。図7に示される例では、天板30が、2層(第1層32及び第2層33)で構成されており、フィン31が第2層33の一部をなしている。第2層33は、第1層32よりも第1面30aの近くにある(冷媒流路40の近くにある)。天板30を構成している複数の層の各々は、第1面30aの近くにある(冷媒流路40の近くにある)ものほど、線膨張係数が大きくなっている。図7に示されている例では、第2層33の線膨張係数が第1層32の線膨張係数よりも大きい。第1層32の構成材料は、例えば銅、銅合金又はMMCである。第2層33の構成材料は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金である。これらの点に関して、電力変換装置100Bの構成は、電力変換装置100Aの構成と異なっている。
【0032】
(電力変換装置100Bの効果)
以下に、電力変換装置100Bの効果を説明する。
【0033】
電力変換装置100Bでは、第1層32と第2層33との線膨張係数の差に起因して、コンポーネント50の温度の上昇に伴って冷媒流路40の流路面積が縮小される一方、コンポーネント50の温度の下降に伴って冷媒流路40の流路面積が拡大されるため、電力変換装置100Aと同様に、コンポーネント50の温度に応じてコンポーネント50に対する効率的な冷却が可能になる。
【0034】
電力変換装置100Bでは、天板30を構成している複数の層の各々の線膨張係数が冷媒流路40に近づくにつれて大きくなるように変化しているため、隣り合う層の間で生じる応力を低減することが可能であり、天板30の構造信頼性が改善される。
【0035】
(変形例)
以下に、電力変換装置100Bの変形例を説明する。
【0036】
図8は、変形例に係る電力変換装置100Bの動作を説明する第1説明図である。図9は、変形例に係る電力変換装置100Bの動作を説明する第2説明図である。図8及び図9に示されているように、平面視において、第1層32の面積は、第2層33の面積よりも小さくてもよい。すなわち、平面視において、第1層32の外周縁は、第2層33の外周縁よりも内側にあってもよい。
【0037】
第2層33の平面視における外周縁部は、当該外周縁部よりも内側にある第2層33の部分よりも、厚さが大きくなっていてもよい。第2層33の外周縁部は、側壁21の上端上にある。第2層33の外周縁部上には、第1層32が配置されていない。なお、第2層33の外周縁部は、全周にわたって厚さが厚くなっている必要はない。第2層33の外周縁部は、部分的に厚さが厚くなっていてもよい。
【0038】
天板30は、第2層33の外周縁部よりも内側において、第1層32の線膨張係数と第2層33の線膨張係数との差に起因して、大きな反り変形量を示す。他方で、第2層33の外周縁部では、厚さが大きくなっているため、反り変形量が小さくなる。その結果、冷媒がジャケット20と天板30との間から流出しにくくなる。このように、上記の構成によると、コンポーネント50の温度に応じてコンポーネント50に対する効率的な冷却を実現しつつ、冷媒漏れのリスクを低減することが可能である。
【0039】
実施の形態3.
実施の形態3に係る電力変換装置を説明する。実施の形態3に係る電力変換装置を、電力変換装置100Cとする。ここでは、電力変換装置100Aと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0040】
(電力変換装置100Cの構成)
以下に、電力変換装置100Cの構成を説明する。
【0041】
図10は、電力変換装置100Cの断面図である。図10に示されているように、電力変換装置100Cは、冷却器10と、コンポーネント50とを有している。電力変換装置100Cでは、冷却器10がジャケット20と天板30とを有しており、冷却器10の内部に冷媒流路40がある。これらの点に関して、電力変換装置100Cの構成は、電力変換装置100Aの構成と共通している。
【0042】
図11は、電力変換装置100Cにおける天板30の底面図である。なお、図11中では、フィン31の図示が省略されている。図10及び図11に示されているように、第1面30aは、第1領域30aaと、第2領域30abとを有している。第1領域30aaは、平面視においてコンポーネント50と重なっている第1面30aの領域である。第2領域30abは、平面視においてコンポーネント50と重なっていない第1面30aの領域である。図11に示されている例では、1つのコンポーネント50が平面視における天板30の中央部に配置されており、第2領域30abが第1領域30aaの周囲を取り囲んでいる。
【0043】
第1領域30aaに形成されているフィン31を、フィン31aとする。第2領域30abに形成されているフィン31を、フィン31bとする。フィン31bは、フィン31aよりも長い。これらの点に関して、電力変換装置100Cの構成は、電力変換装置100Aの構成と異なっている。
【0044】
(電力変換装置100Cの効果)
以下に、電力変換装置100Cの効果を説明する。
【0045】
図12は、変形例に係る電力変換装置100Cの動作を説明する第1説明図である。図13は、変形例に係る電力変換装置100Cの動作を説明する第2説明図である。図12及び図13に示されているように、コンポーネント50の温度が下降すると天板30が内部空間23とは反対側に向かって反る一方、コンポーネント50の温度が上昇すると天板が内部空間23側に向かって反る。
【0046】
上記のとおり、フィン31bはフィン31aよりも長いため、コンポーネント50の温度が上昇する際、フィン31aの先端及びフィン31bの先端の高さ位置が互いに近くなり、フィン31aの先端及びフィン31bの先端とジャケット20(底壁22)との間のクリアランスが狭くなる。その結果、冷媒は、フィン31aの先端及びフィン31bの先端とジャケット20との間を流れにくくなり、隣り合うフィン31の間に流れ込みやすくなる。このように、電力変換装置100Cによると、コンポーネント50の温度が上昇した際の冷却効率がさらに高まる。
【0047】
(変形例)
以下に、電力変換装置100Cの変形例を説明する。
【0048】
図14は、変形例に係る電力変換装置100Cにおける天板30の底面図である。図14に示されているように、複数のコンポーネント50が冷媒の流れの方向に沿って列をなすように並んでいる場合、第1領域30aaが冷媒の流れに直交する方向において2つの第2領域30abの間に配置されてもよい。すなわち、第1領域30aa及び第2領域30abは、ストライプ状に配置されてもよい。
【0049】
実施の形態4.
実施の形態4に係る電力変換装置を説明する。実施の形態4に係る電力変換装置を、電力変換装置100Dとする。ここでは、電力変換装置100Aと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0050】
(電力変換装置100Dの構成)
以下に、電力変換装置100Dの構成を説明する。
【0051】
図15は、電力変換装置100Dの断面図である。図15に示されているように、電力変換装置100Dは、冷却器10と、コンポーネント50とを有している。電力変換装置100Dでは、冷却器10がジャケット20と天板30とを有しており、冷却器10の内部に冷媒流路40がある。これらの点に関して、電力変換装置100Dの構成は、電力変換装置100Aの構成と共通している。
【0052】
電力変換装置100Dは、板部材60を有している。板部材60は、天板30と間隔を空けて対向するように内部空間23に配置されている。電力変換装置100Dでは、冷媒流路40が、内部空間23、天板30(第1面30a)及び板部材60により画されている。板部材60は、複数の層で構成されている。図15に示されている例では、板部材60は、第1層61と第2層62とで構成されている。板部材60を構成している複数の層は、冷媒流路40の近くにあるものほど、線膨張率が小さくなっている。図15に示されている例では、第1層61の線膨張係数が、第2層62の線膨張係数よりも小さくなっている。第1層61の構成材料は、例えば銅、銅合金又はMMCである。第2層62の構成材料は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金である。これらの点に関して、電力変換装置100Dの構成は、電力変換装置100Aの構成と異なっている。
【0053】
(電力変換装置100Dの効果)
以下に、電力変換装置100Dの効果を説明する。
【0054】
上記のとおり、第1層61の線膨張係数は、第2層62の線膨張係数よりも小さい。そのため、電力変換装置100Dでは、コンポーネント50の温度が上昇すると、板部材60が天板30側に向かって反り、冷媒流路40の流路面積が縮小される。他方で、コンポーネント50の温度が下降すると、板部材60が天板30とは反対側に反り、冷媒流路40の流路面積が拡大される。そのため、電力変換装置100Dによると、電力変換装置100Aと同様に、コンポーネント50の温度に応じてコンポーネント50に対する効率的な冷却が可能になる。
【0055】
(変形例)
以下に、電力変換装置100Dの変形例を説明する。
【0056】
ジャケット20は、通常、インバータ筐体の一部をなすため、高い剛性を有しており、反りは殆ど生じない。しかしながら、電力変換装置100Dでは、例えばジャケット20の肉厚を小さくしてジャケット20の剛性を下げることにより、コンポーネント50の温度に応じて冷媒流路40の流路面積を変化させてもよい。この場合、電力変換装置100Dは、板部材60を有していなくてもよい。また、この場合、ジャケット20の肉厚は、ジャケット20の強度を確保しつつ冷媒流路40の流路面積の変化を可能にする観点から0.5mm以上3.0mm以上であることが好ましい。
【0057】
(付記)
本開示の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
【0058】
<付記1>
冷却器と、
前記冷却器上に配置されているコンポーネントとを備え、
前記冷却器の内部には、冷媒が流れる冷媒流路があり、
前記冷媒流路の流路面積は、前記コンポーネントの温度が基準温度以上となる温度域において縮小される、電力変換装置。
【0059】
<付記2>
前記冷却器は、ジャケットと、天板とを有し、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記天板の線膨張係数は、前記コンポーネントの線膨張係数よりも大きい、付記1に記載の電力変換装置。
【0060】
<付記3>
前記冷却器は、ジャケットと、天板とを有し、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記ジャケットの線膨張係数は、前記天板の線膨張係数よりも大きい、付記1に記載の電力変換装置。
【0061】
<付記4>
前記冷却器は、ジャケットと、天板とを有し、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記天板は、前記天板の厚さ方向に沿って重ねられている複数の層で構成されている、付記1に記載の電力変換装置。
【0062】
<付記5>
前記複数の層は、第1層と、前記第1層よりも前記第1面側にある第2層とを有し、
前記第2層の線膨張係数は、前記第1層の線膨張係数よりも大きい、付記4に記載の電力変換装置。
【0063】
<付記6>
前記複数の層は、第1層と、前記第1層よりも前記第1面側にある第2層とを有し、
平面視において、前記第1層の面積は、前記第2層の面積よりも小さく、
前記第2層の厚さは、外周縁部において、前記外周縁部の内側よりも少なくとも部分的に厚くなっている、付記4に記載の電力変換装置。
【0064】
<付記7>
前記冷却器は、ジャケットと、天板とを有し、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記第1面には、複数のフィンが形成されており、
前記第1面は、平面視において前記コンポーネントと重なる第1領域と、平面視において前記コンポーネントと重ならない第2領域とを有し、
前記複数のフィンは、前記第1領域に形成されている第1フィンと、前記第2領域に形成されている第2フィンとを有し、
前記第2フィンは、前記第1フィンよりも長い、付記1に記載の電力変換装置。
【0065】
<付記8>
前記冷却器は、ジャケットと、天板とを有し、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記第1面には、複数のフィンが形成されており、
前記複数のフィンのうちの少なくとも一部は、前記冷媒流路の流路面積が縮小された際に前記ジャケットに接触する、付記1に記載の電力変換装置。
【0066】
<付記9>
前記冷却器は、ジャケットと、天板と、板部材とを有し、
前記板部材は、前記ジャケットの内部空間に配置されており、
前記冷媒流路は、前記内部空間、前記天板及び前記板部材で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記第2面には、複数のフィンが形成されており、
前記冷媒流路の面積は、前記コンポーネントの温度変化に伴う前記板部材の反り変形により変化される、付記1に記載の電力変換装置。
【0067】
<付記10>
前記冷却器は、ジャケットと、天板とを有し、
前記冷媒流路は、前記ジャケットの内部空間及び前記天板で画されており、
前記天板は、前記内部空間側を向いている第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを有し、
前記コンポーネントは、前記第2面上に配置されており、
前記冷媒流路の面積は、前記コンポーネントの温度変化に伴う前記ジャケットの反り変形により変化される、付記1に記載の電力変換装置。
【0068】
<付記11>
前記基準温度は、前記コンポーネントの動作範囲温度における最低温度である、付記1から付記10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【0069】
<付記12>
前記コンポーネントは、パワーデバイスである、付記1から付記11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【0070】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この出願の範囲は上記の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
100A,100B,100C,100D 電力変換装置、10 冷却器、20 ジャケット、21 側壁、21a 冷媒流入口、21b 冷媒流出口、22 底壁、23 内部空間、30 天板、30a 第1面、30aa 第1領域、30ab 第2領域、30b 第2面、31,31a,31b フィン、32 第1層、33 第2層、40 冷媒流路、50 コンポーネント、51 筐体、52 端子、60 板部材、61 第1層、62 第2層、110 ポンプ、120 コンポーネント群、200 冷却システム。
【要約】
電力変換装置(100A,100B,100C,100D)は、冷却器(10)と、冷却器上に配置されているコンポーネント(50)とを備えている。冷却器の内部には、冷媒が流れる冷媒流路(40)がある。冷媒流路の流路面積は、コンポーネントの温度が基準温度以上となる温度域において縮小される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15