(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】電力制御装置、電力制御システム、電力制御方法、および電力制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60M 3/00 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
B60M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2024540822
(86)(22)【出願日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2024006116
【審査請求日】2024-07-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】石山 琢麻
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 一豪
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅也
(72)【発明者】
【氏名】進士 晃輔
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-132980(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第4207529(EP,A1)
【文献】特開2014-73014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車へ電気を送る設備を含むき電系統設備、前記電車、および駅設備のうち少なくとも一つの被管理対象から状態データを取得するデータ取得部と、
前記き電系統設備、前記電車、および前記駅設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、前記被制御対象とは異なる前記被管理対象の前記状態データに基づいて算出する演算部と、
算出された前記制御パラメータを前記被制御対象へ送信する送信処理部と、を備え
、
前記データ取得部は、前記き電系統設備および前記駅設備を含む鉄道システムの外部の施設であって、前記鉄道システムから供給される電力を利用できる外部施設の状態データを更に取得し、
前記演算部は、取得された前記外部施設の前記状態データに基づいて、前記被制御対象の制御に用いる前記制御パラメータを算出する
ことを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記被制御対象における電力の制御に用いる前記制御パラメータを、前記被制御対象とは異なる前記被管理対象の前記状態データを含む状態データ群に基づいて算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記駅設備には、前記電車が発生する回生電力を取り込んで他の前記駅設備または前記外部施設へ電力を供給する電源装置が含まれており、
前記データ取得部は、前記被管理対象である前記電源装置の前記状態データを取得し、
前記送信処理部は、前記被制御対象である前記電源装置へ前記制御パラメータを送信する
ことを特徴とする請求項
1または2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記データ取得部は、前記状態データとして、前記被管理対象における電気的状態を示すデータおよび物理的状態を示すデータのうち少なくとも一方を取得する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記データ取得部は、前記状態データとして、前記被管理対象の位置の気象データを更に取得し、
前記演算部は、取得された前記気象データに基づいて、前記被制御対象の制御に用いる前記制御パラメータを算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記被管理対象は、複数の鉄道事業者により管理され、
前記データ取得部は、複数の前記鉄道事業者により管理される前記被管理対象の前記状態データを取得し、
前記送信処理部は、複数の前記鉄道事業者により管理される前記被制御対象へ前記制御パラメータを送信する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項7】
前記演算部は、
前記き電系統設備および前記駅設備を含む鉄道システムの電力消費を、前記状態データと前記電車の運行ダイヤとに基づいてシミュレーションするシミュレータと、
前記シミュレータによるシミュレーションの結果に基づいて前記制御パラメータを算出する制御パラメータ算出部と、を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項8】
前記制御パラメータ算出部は、複数の目的関数に基づいて前記制御パラメータを算出する
ことを特徴とする請求項
7に記載の電力制御装置。
【請求項9】
前記制御パラメータ算出部は、複数の前記目的関数の各々の重み付けを調整して、各々の前記重み付けが調整された複数の前記目的関数に基づいて前記制御パラメータを算出する
ことを特徴とする請求項
8に記載の電力制御装置。
【請求項10】
前記制御パラメータ算出部は、複数の前記目的関数の各々の前記重み付けを指定する操作に従って前記重み付けを調整する
ことを特徴とする請求項
9に記載の電力制御装置。
【請求項11】
前記制御パラメータ算出部は、前記状態データに基づいて複数の前記目的関数の各々の前記重み付けを調整する
ことを特徴とする請求項
9に記載の電力制御装置。
【請求項12】
前記演算部は、前記データ取得部により前記状態データが取得されたときに、取得された前記状態データの演算により前記制御パラメータを算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項13】
前記演算部は、設定された期間における前記状態データの演算により前記制御パラメータを算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項14】
前記演算部は、前記設定された期間の時期的な種別を示す種別情報が紐付けられた前記制御パラメータである時期別制御パラメータを保持し、保持されている前記時期別制御パラメータの中から前記種別情報に基づいて前記時期別制御パラメータを選択することによって、前記送信処理部による送信が予定される前記制御パラメータを決定する
ことを特徴とする請求項
13に記載の電力制御装置。
【請求項15】
電車へ電気を送る設備を含むき電系統設備、前記電車、および駅設備のうち少なくとも一つの被管理対象から状態データを取得するデータ取得部と、
前記き電系統設備、前記電車、および前記駅設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、前記被制御対象とは異なる前記被管理対象の前記状態データに基づいて算出する演算部と、
算出された前記制御パラメータを前記被制御対象へ送信する送信処理部と、を備え、
前記演算部は、
前記き電系統設備および前記駅設備を含む鉄道システムの電力消費を、前記状態データと前記電車の運行ダイヤとに基づいてシミュレーションするシミュレータと、
前記シミュレータによるシミュレーションの結果に基づいて前記制御パラメータを算出する制御パラメータ算出部と、を有し、
前記制御パラメータ算出部は、複数の目的関数に基づいて前記制御パラメータを算出し、
複数の前記目的関数には、前記鉄道システム、および前記鉄道システムの外部の施設であって前記鉄道システムから供給される電力を利用できる外部施設のうち少なくとも一方における二酸化炭素排出量を表す第1の目的関数と、前記鉄道システムおよび前記外部施設のうち少なくとも一方における電気料金を表す第2の目的関数と、前記鉄道システムおよび前記外部施設のうち少なくとも一方における電力系統の安定性を表す第3の目的関数と、前記電車の実際の運行と前記運行ダイヤとのずれを表す第4の目的関数と、が含まれる
ことを特徴とする電力制御装置。
【請求項16】
電車と、
駅設備と、
前記電車へ電気を送る設備を含むき電系統設備と、
前記電車、前記駅設備、および前記き電系統設備のうち少なくとも一つの被管理対象の状態データを取得するデータ取得部と、前記電車、前記駅設備、および前記き電系統設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、前記被制御対象とは異なる前記被管理対象の前記状態データに基づいて算出する演算部と、算出された前記制御パラメータを前記被制御対象へ送信する送信処理部とを有する電力制御装置と、を備え
、
前記データ取得部は、前記き電系統設備および前記駅設備を含む鉄道システムの外部の施設であって、前記鉄道システムから供給される電力を利用できる外部施設の状態データを更に取得し、
前記演算部は、取得された前記外部施設の前記状態データに基づいて、前記被制御対象の制御に用いる前記制御パラメータを算出する
ことを特徴とする電力制御システム。
【請求項17】
電車と、
駅設備と、
前記電車へ電気を送る設備を含むき電系統設備と、
前記電車、前記駅設備、および前記き電系統設備のうち少なくとも一つの被管理対象の状態データを取得するデータ取得部と、前記電車、前記駅設備、および前記き電系統設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、前記被制御対象とは異なる前記被管理対象の前記状態データに基づいて算出する演算部と、算出された前記制御パラメータを前記被制御対象へ送信する送信処理部とを有する電力制御装置と、を備え、
前記演算部は、
前記き電系統設備および前記駅設備を含む鉄道システムの電力消費を、前記状態データと前記電車の運行ダイヤとに基づいてシミュレーションするシミュレータと、
前記シミュレータによるシミュレーションの結果に基づいて前記制御パラメータを算出する制御パラメータ算出部と、を有し、
前記制御パラメータ算出部は、複数の目的関数に基づいて前記制御パラメータを算出し、
複数の前記目的関数には、前記鉄道システム、および前記鉄道システムの外部の施設であって前記鉄道システムから供給される電力を利用できる外部施設のうち少なくとも一方における二酸化炭素排出量を表す第1の目的関数と、前記鉄道システムおよび前記外部施設のうち少なくとも一方における電気料金を表す第2の目的関数と、前記鉄道システムおよび前記外部施設のうち少なくとも一方における電力系統の安定性を表す第3の目的関数と、前記電車の実際の運行と前記運行ダイヤとのずれを表す第4の目的関数と、が含まれる
ことを特徴とする電力制御システム。
【請求項18】
電車へ電気を送る設備を含むき電系統設備、前記電車、および駅設備のうち少なくとも一つの被管理対象から状態データを取得するステップと、
前記き電系統設備、前記電車、および前記駅設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、前記被制御対象とは異なる前記被管理対象の前記状態データに基づいて算出するステップと、
算出された前記制御パラメータを前記被制御対象へ送信するステップと、を含
み、
前記状態データを取得する前記ステップでは、前記き電系統設備および前記駅設備を含む鉄道システムの外部の施設であって、前記鉄道システムから供給される電力を利用できる外部施設の状態データを更に取得し、
前記制御パラメータを算出する前記ステップでは、取得された前記外部施設の前記状態データに基づいて、前記被制御対象の制御に用いる前記制御パラメータを算出する
ことを特徴とする電力制御方法。
【請求項19】
電車へ電気を送る設備を含むき電系統設備、前記電車、および駅設備のうち少なくとも一つの被管理対象から状態データを取得するステップと、
前記き電系統設備、前記電車、および前記駅設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、前記被制御対象とは異なる前記被管理対象の前記状態データに基づいて算出するステップと、
算出された前記制御パラメータを前記被制御対象へ送信するステップと、を含み、
前記制御パラメータを演算する前記ステップは、
前記き電系統設備および前記駅設備を含む鉄道システムの電力消費を、前記状態データと前記電車の運行ダイヤとに基づいてシミュレーションするステップと、
前記シミュレーションの結果に基づいて前記制御パラメータを算出するステップと、を含み、
前記シミュレーションの結果に基づいて前記制御パラメータを算出する前記ステップでは、複数の目的関数に基づいて前記制御パラメータを算出し、
複数の前記目的関数には、前記鉄道システム、および前記鉄道システムの外部の施設であって前記鉄道システムから供給される電力を利用できる外部施設のうち少なくとも一方における二酸化炭素排出量を表す第1の目的関数と、前記鉄道システムおよび前記外部施設のうち少なくとも一方における電気料金を表す第2の目的関数と、前記鉄道システムおよび前記外部施設のうち少なくとも一方における電力系統の安定性を表す第3の目的関数と、前記電車の実際の運行と前記運行ダイヤとのずれを表す第4の目的関数と、が含まれる
ことを特徴とする電力制御方法。
【請求項20】
コンピュータに、
電車へ電気を送る設備を含むき電系統設備、前記電車、および駅設備のうち少なくとも一つの被管理対象から状態データを取得するステップと、
前記き電系統設備、前記電車、および前記駅設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、前記被制御対象とは異なる前記被管理対象の前記状態データに基づいて算出するステップと、
算出された前記制御パラメータを前記被制御対象へ送信するステップと、を実行させ
、
前記状態データを取得する前記ステップでは、前記き電系統設備および前記駅設備を含む鉄道システムの外部の施設であって、前記鉄道システムから供給される電力を利用できる外部施設の状態データを更に取得し、
前記制御パラメータを算出する前記ステップでは、取得された前記外部施設の前記状態データに基づいて、前記被制御対象の制御に用いる前記制御パラメータを算出する
ことを特徴とする電力制御プログラム。
【請求項21】
コンピュータに、
電車へ電気を送る設備を含むき電系統設備、前記電車、および駅設備のうち少なくとも一つの被管理対象から状態データを取得するステップと、
前記き電系統設備、前記電車、および前記駅設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、前記被制御対象とは異なる前記被管理対象の前記状態データに基づいて算出するステップと、
算出された前記制御パラメータを前記被制御対象へ送信するステップと、を実行させ、
前記制御パラメータを演算する前記ステップは、
前記き電系統設備および前記駅設備を含む鉄道システムの電力消費を、前記状態データと前記電車の運行ダイヤとに基づいてシミュレーションするステップと、
前記シミュレーションの結果に基づいて前記制御パラメータを算出するステップと、を含み、
前記シミュレーションの結果に基づいて前記制御パラメータを算出する前記ステップでは、複数の目的関数に基づいて前記制御パラメータを算出し、
複数の前記目的関数には、前記鉄道システム、および前記鉄道システムの外部の施設であって前記鉄道システムから供給される電力を利用できる外部施設のうち少なくとも一方における二酸化炭素排出量を表す第1の目的関数と、前記鉄道システムおよび前記外部施設のうち少なくとも一方における電気料金を表す第2の目的関数と、前記鉄道システムおよび前記外部施設のうち少なくとも一方における電力系統の安定性を表す第3の目的関数と、前記電車の実際の運行と前記運行ダイヤとのずれを表す第4の目的関数と、が含まれる
ことを特徴とする電力制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力系統を制御する電力制御装置、電力制御システム、電力制御方法、および電力制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車および駅を含む鉄道システムにおける電力の有効利用を図るための種々の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、電車の回生動作により発生する回生電力を蓄電装置において蓄え、蓄電装置に蓄えられた電力を電車または駅にて利用する鉄道システムが開示されている。特許文献1によると、鉄道システムのエネルギー管理を担う電力管理システムは、運行ダイヤに従って電車が走行した場合における電車の消費電力量の推移と電車が発生する回生電力量の推移とを算出することにより、蓄電装置における蓄電量の推移と蓄電装置による放電量の推移とを推測する。かかる電力管理システムは、蓄電量の推移と放電量の推移とを推測した結果に基づいて蓄電装置を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道システムがエネルギー管理の範囲とされる場合において、鉄道システムに含まれる設備の状況に応じて鉄道システムの全体における適切な電力利用が可能であることが望まれる。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、鉄道システムに含まれる設備の状況に応じた適切な電力利用を行わせることを可能とする電力制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る電力制御装置は、電車へ電気を送る設備を含むき電系統設備、電車、および駅設備のうち少なくとも一つの被管理対象から状態データを取得するデータ取得部と、き電系統設備、電車、および駅設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、被制御対象とは異なる被管理対象の状態データに基づいて算出する演算部と、算出された制御パラメータを被制御対象へ送信する送信処理部と、を備える。データ取得部は、き電系統設備および駅設備を含む鉄道システムの外部の施設であって、鉄道システムから供給される電力を利用できる外部施設の状態データを更に取得する。演算部は、取得された外部施設の状態データに基づいて、被制御対象の制御に用いる制御パラメータを算出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電力制御装置は、鉄道システムに含まれる設備の状況に応じた適切な電力利用を行わせることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る電力制御システムによるエネルギー管理の対象の例を示す模式図
【
図2】実施の形態1に係る電力制御システムの構成例を示す図
【
図3】実施の形態1に係る電力制御システムによる動作手順の例を示すフローチャート
【
図4】実施の形態1の変形例に係る演算部の構成例を示す図
【
図5】実施の形態1の変形例に係る演算部において保持される時期別制御パラメータの例を示す図
【
図6】実施の形態1の変形例において送信処理部により制御パラメータが送信されるスケジュールの例を示す図
【
図7】実施の形態1の変形例に係る電力制御システムによる動作手順の例を示すフローチャート
【
図8】実施の形態1に係る電力制御装置のハードウェア構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係る電力制御装置、電力制御システム、電力制御方法、および電力制御プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力制御システムによるエネルギー管理の対象の例を示す模式図である。実施の形態1に係る電力制御システムは、鉄道システム1の電力系統を制御する。鉄道システム1は、鉄道を運行する電車5と、電車5へ電気を送る設備を含むき電系統設備2と、鉄道の駅3とを含む。また、電力制御システムは、鉄道システム1と外部施設13とのエネルギー管理を担う。外部施設13は、鉄道システム1の外部の施設であって、鉄道システム1から供給される電力を利用可能な施設である。実施の形態1では、エネルギー管理とは、鉄道システム1および外部施設13における電力の利用状況をモニタすることによって、鉄道システム1と外部施設13とを含むシステム全体における電力の利用状況を把握することを指すものとする。このように、電力制御システムによるエネルギー管理が実行される範囲には、鉄道システム1と外部施設13とが含まれている。
【0012】
変電所6は、電車5へ電気を送る設備である。変電所6には、商用系統から交流電圧が供給される。変電所6は、交流電圧を降圧し、交流電圧を直流電圧へ変換する。変電所6は、直流電圧をき電線7へ供給する。実施の形態1において、き電系統設備2とは、例えば、変電所6およびき電線7である。なお、き電線7に接続される変電所6の数は任意であるものとする。
図1では、商用系統の図示を省略する。
【0013】
鉄道を運行する複数の電車5は、レール8を走行する。各電車5は、き電線7から電力が供給されることによって力行する。
図1では、レール8を走行する複数の電車5のうちの1つを示す。各電車5は、回生動作により回生電力を発生させる。例えば、ある1つの電車5にて回生電力が発生した場合に、当該電車5の近くを走行する電車5は、その回生電力を、力行または車両機器の駆動に利用することができる。車両機器とは、電車5に設置されている電気機器であって、空調機器または照明機器などである。き電系統設備2で余剰となった回生電力は、駅3に設置されている電源装置9にて回収される。
【0014】
鉄道システム1には、鉄道の路線に設置されている複数の駅3が含まれる。
図1には、鉄道の路線に設置されている複数の駅3のうちの1つを示す。駅3には、電源装置9と、複数の駅舎設備10と、送電設備11とが設置されている。電源装置9と、複数の駅舎設備10と、送電設備11との各々は、鉄道の駅3に設置される設備である。実施の形態1では、鉄道の駅3に設置されるこれらの設備の各々を、駅設備と称する。なお、
図1では、複数の駅舎設備10のうちの1つを示している。
【0015】
複数の駅舎設備10の各々は、駅舎に設置される電気設備である。駅舎設備10の例は、空調機器、照明機器、自動改札機、掲示板、サイネージ、または昇降機などである。電源装置9と、複数の駅舎設備10と、送電設備11との各々は、配線12を介して互いに接続されている。
【0016】
電源装置9は、電車5が発生する回生電力を取り込んで、回生電力を蓄える。電源装置9は、回生電力を直流電力から交流電力へ変換する。電源装置9は、電力制御システムによる制御に従い、複数の駅舎設備10と送電設備11とのうち少なくとも1つへ電力を供給する。送電設備11は、電源装置9により供給された電力を外部施設13へ送る。電源装置9は、電車5が発生する回生電力を取り込んで駅設備および外部施設13の各々へ電力を供給する。
【0017】
なお、駅3には、駅設備である太陽光発電装置が設置されても良い。太陽光発電装置は、電力制御システムによる制御に従い、複数の駅舎設備10と送電設備11とのうち少なくとも1つへ電力を供給する。送電設備11は、太陽光発電装置により供給された電力を外部施設13へ送る。送電設備11は、電源装置9へ電力を供給しても良い。この場合、電源装置9は、太陽光発電装置により供給された電力を蓄える。
【0018】
駅3には、駅設備であるEV(Electric Vehicle)充電装置が設置されても良い。EV充電装置は、駅3の駐車場に設置される。EV充電装置は、電力制御システムによる制御に従い、EVへ電力を供給する。EVは、EV充電装置に接続されることによって充電を行う。
【0019】
外部施設13は、例えば、商業ビルまたはオフィスビルといった施設、集合住宅、あるいは戸建住宅である。外部施設13には、送電設備11から送られる電力により駆動する電気機器が設置されている。かかる電気機器は、空調機器、照明機器、昇降機、または家庭用電気機械器具などである。なお、送電設備11に接続される外部施設13の数は任意であるものとする。
【0020】
実施の形態1において、外部施設13における電力の利用状況の管理は、電力制御システムによって行われる。一方、電力制御システムは、外部施設13における電力利用に関する制御に関与しないものとする。外部施設13における電力利用に関する制御は、外部施設13において独自に実行される。このように、外部施設13は、電力の利用状況が電力制御システムによって管理される対象には該当し、電力制御システムによって制御される対象には該当しないものとする。なお、電力の利用状況が電力制御システムによって管理される外部施設13の中には、電力制御システムによって制御される対象に該当する施設が含まれていても良い。
【0021】
次に、電力制御システムの構成について説明する。
図2は、実施の形態1に係る電力制御システム20の構成例を示す図である。電力制御システム20は、複数の電車5、駅設備、き電系統設備2、および電力制御装置21を備える。電力制御装置21は、例えば、鉄道システム1の運転指令所に設置される。運転指令所の指令員は、電車5の運行状況を監視して電車5の乗務員または駅員へ業務指示を行う。なお、
図2では、複数の電車5、駅設備、およびき電系統設備2の図示を省略する。
【0022】
実施の形態1において、被管理対象とは、電力制御装置21によって電力の利用状況が管理される対象とする。電力制御装置21は、被管理対象の状態をモニタする。各電車5、き電系統設備2の変電所6、各駅設備、および外部施設13の各々は、被管理対象である。
図2には、複数の被管理対象のうちの1つを示す。各被管理対象は、電力制御装置21へ状態データを送信する。電力制御装置21は、各被管理対象の状態データを取得する。電力制御装置21は、取得された状態データに基づいて、鉄道システム1および外部施設13における電力の利用状況をモニタする。状態データは、被管理対象の電気的状態を示すデータと被管理対象の物理的状態を示すデータとの少なくとも一方を含む。状態データの詳細については後述する。
【0023】
複数の被管理対象のうちの一部についての状態データは、クラウド環境に一時的に蓄えられて、クラウド環境から電力制御装置21へ送信されても良い。
図2には、クラウド環境において状態データを蓄えるクラウドサーバ41を示す。
図2に示すクラウドサーバ41は、電力制御システム20の構成要素の1つである。クラウドサーバ41は、クラウドサービスプラットフォームにおいて提供されるコンピュータ資源を含むクラウド環境に構築されるサーバである。クラウドサーバ41は、ネットワークに接続されている。被管理対象から送信された状態データは、ネットワークを介してクラウドサーバ41へ入力される。
【0024】
複数の被管理対象のうち電力制御装置21へ状態データを送信する被管理対象の各々は、ネットワークに接続されており、ネットワークを介して電力制御装置21へ状態データを送信する。クラウドサーバ41は、ネットワークを介して電力制御装置21へ状態データを送信する。実施の形態1において、ネットワークは、例えば、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)であるが、LAN(Local Area Network)であっても良い。
【0025】
電力制御システム20は、ヒューマンマシンインターフェース(HMI:Human Machine Interface)42を備える。HMI42は、電力制御装置21へ入力される情報を受け付け、かつ電力制御装置21から送信された情報を出力する入出力装置である。HMI42は、ネットワークに接続されている。HMI42は、ネットワークを介して電力制御装置21へ情報を送信する。電力制御装置21は、ネットワークを介してHMI42へ情報を送信する。HMI42は、例えば、電力制御装置21に設けられていても良い。
【0026】
電力制御装置21は、データ取得部22と、データ保持部23と、演算部24と、送信処理部25と、通信部26とを備える。
【0027】
通信部26は、情報の送受信を行うためのインタフェースであり、電力制御装置21の外部の装置との通信を行う。
図2に示す例において、通信部26は、複数の被管理対象、クラウドサーバ41、およびHMI42の各々との通信を行う。また、通信部26は、後述する被制御対象との通信を行う。通信部26は、例えば有線ネットワーク端子であるLAN端子であるが、これに限られず、ワイヤレスLAN方式によって無線通信を行っても良い。
【0028】
通信部26は、複数の被管理対象の各々から送信される状態データを受信する。複数の被管理対象のうちの一部についての状態データがクラウドサーバ41に蓄えられる場合は、データ取得部22は、クラウドサーバ41から送信される状態データを受信する。通信部26は、受信された状態データをデータ取得部22へ出力する。これにより、データ取得部22は、複数の被管理対象から状態データを取得する。データ取得部22が取得する状態データは、き電系統設備2、電車5、および駅設備のうち少なくとも一つの被管理対象の状態データである。データ取得部22は、被管理対象の電気データおよび物理データのうちの少なくとも一方を取得する。データ取得部22は、取得された状態データをデータ保持部23へ出力する。
【0029】
通信部26は、HMI42から送信されるシミュレーション条件情報を受信する。通信部26は、受信されたシミュレーション条件情報をデータ取得部22へ出力する。これにより、データ取得部22は、シミュレーション条件情報を取得する。シミュレーション条件情報は、後述するシミュレータ34が実行するシミュレーションの条件を示す情報である。データ取得部22は、取得されたシミュレーション条件情報をデータ保持部23へ出力する。
【0030】
データ保持部23は、状態データ保持部31、シミュレーション条件保持部32、および制御パラメータ保持部33を備える。状態データ保持部31は、データ保持部23へ入力された状態データを保持する。シミュレーション条件保持部32は、データ保持部23へ入力されたシミュレーション条件情報を保持する。このように、データ保持部23は、データ取得部22により取得された状態データとシミュレーション条件情報とを保持する。
【0031】
シミュレーション条件情報には、車両特性情報と、運行ダイヤ情報と、路線情報と、変電所特性情報とが含まれる。車両特性情報は、複数の電車5の各々である車両の特性を示す情報である。運行ダイヤ情報は、複数の電車5の各々の運行ダイヤを示す情報である。路線情報は、複数の電車5の各々について、電車5が運行される鉄道路線を示す情報である。路線情報には、各電車5の具体的な走行経路である運行系統の情報が含まれる。変電所特性情報は、変電所6の特性を示す情報である。
【0032】
なお、車両特性情報、運行ダイヤ情報、路線情報、および変電所特性情報の各情報は、シミュレーション条件情報に含まれる情報の例であるものとする。シミュレーション条件情報には、車両特性情報、運行ダイヤ情報、路線情報、および変電所特性情報のうちの1つ以上の情報が含まれていなくても良い。シミュレーション条件情報には、車両特性情報、運行ダイヤ情報、路線情報、および変電所特性情報以外の情報が含まれても良い。
【0033】
データ保持部23には、演算部24により算出された制御パラメータが入力される。制御パラメータ保持部33は、データ保持部23へ入力されたシミュレーション条件情報を保持する。このように、データ保持部23は、演算部24により算出された制御パラメータを保持する。
【0034】
演算部24は、データ取得部22により取得された状態データの演算により、鉄道システム1の電力利用に関しての制御に使用される制御パラメータを算出する。演算部24は、き電系統設備2、電車5、および駅設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、被制御対象とは異なる被管理対象の状態データに基づいて算出する。実施の形態1において、被制御対象とは、電力制御装置21によって電力の制御が実行される対象とする。
【0035】
演算部24は、シミュレータ34と制御パラメータ算出部35とを備える。シミュレータ34は、鉄道システム1の電力消費を、状態データと電車5の運行ダイヤとに基づいてシミュレーションする。シミュレータ34が実行するシミュレーションは、後述する運行シミュレーション、および、後述する電力シミュレーションである。制御パラメータ算出部35は、シミュレータ34によるシミュレーションの結果に基づいて制御パラメータを算出する。制御パラメータ算出部35は、算出された制御パラメータを制御パラメータ保持部33へ出力する。制御パラメータ算出部35により算出された制御パラメータは、制御パラメータ保持部33において保持される。
【0036】
演算部24は、データ取得部22により取得された状態データについて、HMI42での表示のための加工を行うデータ加工部を備える。データ加工部は、加工後の状態データを通信部26へ出力する。通信部26は、加工後の状態データをHMI42へ送信する。データ加工部の図示は省略する。
【0037】
シミュレータ34は、状態データ保持部31から状態データを読み出す。シミュレータ34は、シミュレーション条件保持部32からシミュレーション条件情報を読み出す。シミュレータ34は、読み出されたシミュレーション条件情報に含まれる運行ダイヤ情報および路線情報に基づいて、運行シミュレーションを実行する。運行シミュレーションは、運行ダイヤに示される路線にて電車5を運行した場合における運行状況についてのシミュレーションである。
【0038】
また、シミュレータ34は、読み出された状態データと、運行シミュレーションの結果と、読み出されたシミュレーション条件情報に含まれる車両特性情報および変電所特性情報とに基づいて、電力シミュレーションを実行する。電力シミュレーションは、鉄道システム1における電力消費についてのシミュレーションである。シミュレータ34は、運行シミュレーションの結果に従って電車5を運行した場合における電力シミュレーションを実行する。シミュレータ34は、電力シミュレーションの結果を制御パラメータ算出部35へ出力する。また、シミュレータ34は、電力シミュレーションの結果を通信部26へ出力する。通信部26は、電力シミュレーションの結果をHMI42へ送信する。
【0039】
制御パラメータ算出部35は、電力シミュレーションの結果に基づいて制御パラメータを算出する。その際に、制御パラメータ算出部35は、互いに異なる目的を表す複数の目的関数に基づいて制御パラメータを算出する。制御パラメータ算出部35は、複数の目的関数の各々を最適化させる制御パラメータを算出する。ここでは、複数の目的関数は、4つの目的関数であるものとする。
【0040】
4つの目的関数のうち第1の目的関数は、鉄道システム1および外部施設13のうち少なくとも一方における二酸化炭素排出量を表す。第1の目的関数により表される目的は、鉄道システム1と外部施設13とを含むシステム全体における二酸化炭素排出量を最小化させることである。二酸化炭素排出量を最小化させるとは、電力系統において消費または損失される電力量を最小化させること、または、商用系統から鉄道システム1へ供給される電力量を最小化させることともいえる。
【0041】
4つの目的関数のうち第2の目的関数は、鉄道システム1および外部施設13のうち少なくとも一方における電気料金を表す。第2の目的関数により表される目的は、鉄道システム1と外部施設13とを含むシステム全体における電気料金を最小化させることである。ここで、システム全体における電気料金を最小化させるとは、当該システム全体の中で電気料金が課せられる全ての施設の各々における電気料金を合計した額を最小化させることを指すものとする。
【0042】
4つの目的関数のうち第3の目的関数は、鉄道システム1および外部施設13のうち少なくとも一方における電力系統の安定性を表す。第3の目的関数により表される目的は、鉄道システム1および外部施設13における電力系統を安定化させることである。電力系統の安定化には、例えば、天候の変化があった場合における電力潮流の急変を緩和させることなどが含まれる。
【0043】
4つの目的関数のうち第4の目的関数は、電車5の実際の運行と運行ダイヤとのずれを表す。第4の目的関数により表される目的は、電車5の実際の運行と運行ダイヤとのずれを最小化させることである。
【0044】
制御パラメータ算出部35は、複数の目的関数の各々の重み付けを調整する。制御パラメータ算出部35は、各々の重み付けが調整された複数の目的関数に基づいて制御パラメータを算出する。
【0045】
ここで、複数の目的関数の各々について、重み付けを表す係数をωkとする。kは1からmまでの整数を表す。mは、目的関数の個数を表す。制御パラメータ算出部35は、各係数であるω1,・・・,ωmを調整する。上記の例では、m=4である。ω1は、第1の目的関数の重み付けを表す係数である。ω2は、第2の目的関数の重み付けを表す係数である。ω3は、第3の目的関数の重み付けを表す係数である。ω4は、第4の目的関数の重み付けを表す係数である。
【0046】
以下の説明にて、xは制御パラメータ、Fk(x)は複数の目的関数の各々を表すものとする。F1(x)は、第1の目的関数を表す。F2(x)は、第2の目的関数を表す。F3(x)は、第3の目的関数を表す。F4(x)は、第4の目的関数を表す。
【0047】
制御パラメータ算出部35は、Fk(x)の総和であるF(x)が最小または最大となるxを求める。F(x)は、次の式(1)により表される。
F(x)=ω1×F1(x)+ω2×F2(x)+ω3×F3(x)+ω4×F4(x) ・・・(1)
【0048】
このように、制御パラメータ算出部35は、各々の重み付けが調整された複数の目的関数に基づいて制御パラメータを算出する。
【0049】
ここで、鉄道システム1と外部施設13とを含むシステム全体における二酸化炭素排出量の最小化のみを目的として鉄道システム1を制御する場合における制御の態様を、第1の制御モードとする。鉄道システム1と外部施設13とを含むシステム全体における電気料金の最小化のみを目的として鉄道システム1を制御する場合における制御の態様を、第2の制御モードとする。鉄道システム1および外部施設13における電力系統の安定化のみを目的として鉄道システム1を制御する場合における制御の態様を、第3の制御モードとする。電車5の実際の運行と運行ダイヤとのずれの最小化のみを目的として鉄道システム1を制御する場合における制御の態様を、第4の制御モードとする。係数の集合[ω1,ω2,ω3,ω4]に含まれる要素である各係数を調整することは、これらの各制御モードによる制御の割合を調整することといえる。以下の説明において、制御モードの割合を調整するとは、複数の目的関数の各々についての重み付けを調整することを指すものとする。制御モードの割合とは、係数の集合[ω1,ω2,ω3,ω4]における各係数の配分を表す。以下、係数の集合[ω1,ω2,ω3,ω4]を、モード割合情報と称する。
【0050】
HMI42は、通信部43と、情報を表示する表示部44と、情報入力のための操作を受け付ける操作部45とを備える。通信部43は、HMI42の外部の装置との通信を行う。
図2に示す例において、通信部43は、電力制御装置21との通信を行う。
【0051】
通信部43は、表示のための加工が施された状態データを受信し、受信された状態データを表示部44へ出力する。表示部44は、表示部44へ入力された状態データを表示する。HMI42は、制御パラメータ算出部35により算出された制御パラメータを通信部43にて受信し、制御パラメータに基づいて、電力制御システム20による鉄道システム1の制御の状況についての表示を表示部44にて行うこととしても良い。通信部43は、シミュレータ34による電力シミュレーションの結果を受信し、電力シミュレーションの結果を表示部44へ出力する。表示部44は、表示部44へ入力された電力シミュレーションの結果を表示する。
【0052】
操作部45は、鉄道システム1の運転指令所にて監視制御業務に従事する指令員によって操作される。操作部45は、制御モードの割合を指定するための操作を受け付ける。すなわち、操作部45は、複数の目的関数の各々の重み付けを指定する操作を受け付ける。通信部43は、操作部45への操作によってHMI42へ入力された入力情報を電力制御装置21へ送信する。電力制御装置21の通信部26は、入力情報を受信し、入力情報を演算部24へ出力する。制御パラメータ算出部35は、演算部24へ入力された入力情報に従ってモード割合情報を設定する。このようにして、制御パラメータ算出部35は、操作部45への操作に従って、複数の目的関数の各々の重み付けを調整する。
【0053】
送信処理部25は、制御パラメータ算出部35により算出された制御パラメータを、通信部26を介して被制御対象へ送信する。送信処理部25は、送信データ作成部36と、送信対象判別部37と、送信データ出力部38とを備える。
【0054】
送信データ作成部36は、制御パラメータ保持部33から制御パラメータを読み出し、送信データを作成する。送信データは、制御パラメータ保持部33から読み出された制御パラメータを含むデータであって、被制御対象である設備へ送信されるデータである。電車5、き電系統設備2の変電所6、および駅施設の各々は、被制御対象である。電力の利用状況が電力制御システム20によって管理される外部施設13の中には、被制御対象に該当する施設が含まれていても良い。送信データ作成部36は、作成された送信データを送信対象判別部37へ出力する。電気利用に関する制御については後述する。
【0055】
送信対象判別部37は、送信データを送信する対象である被制御対象を、送信データに基づいて判別する。送信対象判別部37は、判別された被制御対象を示す情報が紐付けられた送信データを送信データ出力部38へ出力する。送信データ出力部38は、送信データを通信部26へ出力する。通信部26は、送信データに紐付けられている情報に示される被制御対象へ送信データを送信する。
図2において、通信部26から電力制御装置21の外部へ向かう矢印は、通信部26から被制御対象へ送信データが送信されることを表す。
【0056】
次に、データ取得部22によって取得される状態データの例について説明する。以下、状態データのうち被管理対象の電気的状態を示すデータを、電気データと称する。また、状態データのうち被管理対象の物理的状態を示すデータを、物理データと称する。
【0057】
データ取得部22は、電車5の電気データおよび電車5の物理データを取得する。電車5の電気データの例は、電車5へ供給される電圧、電流、電力、または電力量のデータ、電車5の力率のデータ、あるいは、回生絞り込み電力量のデータなどである。回生絞り込み電力量とは、回生絞り込み制御が行われる際における電車5の電力量である。回生絞り込み制御は、回生電力の一部または全部のき電線7への供給を抑止する制御である。電力制御装置21は、回生動作を行っている電車5で発生した回生電力に対し、力行運転を行っている電車5が必要とする力行電力が少ない場合に、回生絞り込み制御を行う。電力制御装置21は、回生絞り込み制御を行うことによって、き電線7の電圧が高くなりすぎることを防止する。
【0058】
電車5の物理データの例は、電車5を構成する車両の重量、電車5が居る位置、電車5の速度、電車5における乗客の数、電車5における乗客の総重量、または、電車5が居る位置の標高などのデータである。電力制御装置21は、電車5の状態データを取得することにより、電車5の状況、および電車5における電力の利用状況をモニタする。また、電車5の物理データには、電車5の運行実績を示すデータが含まれても良い。運行実績を示すデータの例は、駅3から電車5が出発した時刻、駅3へ電車5が到着した時刻、駅間において電車5が走行した時間、または、駅3にて電車5が停車した時間などのデータである。
【0059】
データ取得部22は、き電系統設備2である変電所6の電気データを取得する。変電所6の電気データの例は、変電所6からき電線7へ出力される電流、電圧、電力、または電力量のデータ、あるいは、変電所6に設けられている変圧器のタップ値などである。電力制御装置21は、変電所6の状態データを取得することにより、変電所6からき電線7へ電力が供給されている状況をモニタする。変電所6の物理データの例は、変電所6に設けられている整流器の稼動台数などのデータである。
【0060】
データ取得部22は、駅設備の電気データおよび駅設備の物理データを取得する。駅設備である電源装置9の電気データの例は、電源装置9へ取り込まれる電力のデータ、電源装置9から出力される電力のデータ、または回生判定指標値などである。回生判定指標値は、電車5が回生動作をしているか否かを判定するための指標の値である。
【0061】
駅設備である駅舎設備10の電気データの例は、駅舎設備10へ供給される電圧、電流、電力、または電力量のデータ、あるいは駅舎設備10の力率のデータなどである。駅設備である駅舎設備10の物理データの例は、自動改札機を通過した人数などのデータである。駅設備である太陽光発電装置の電気データの例は、発電量のデータなどである。駅設備であるEV充電装置の電気データの例は、EV充電装置からEVへ出力される電力または電力量のデータなどである。駅設備であるEV充電装置の物理データの例は、EV充電装置に接続されているEVの数、または、充電を待機しているEVの数などのデータである。駅設備である送電設備11の電気データの例は、送電設備11から外部施設13へ送られる電力または電力量のデータなどである。電力制御装置21は、送電設備11の状態データを取得することにより、送電設備11から外部施設13へ電力が供給されている状況をモニタする。
【0062】
データ取得部22は、外部施設13の電気データを取得する。外部施設13の電気データの例は、外部施設13へ供給される電圧、電流、電力、または電力量のデータ、あるいは外部施設13に設置されている設備の力率のデータなどである。電力制御装置21は、外部施設13の状態データを取得することにより、外部施設13における電力の利用状況をモニタする。
【0063】
被管理対象が複数の鉄道事業者により管理される場合に、データ取得部22は、複数の鉄道事業者により管理される被管理対象の状態データを取得する。この場合、演算部24は、取得された状態データに基づいて、複数の鉄道事業者により管理される被制御対象の制御に用いる制御パラメータを算出する。送信処理部25は、複数の鉄道事業者により管理される被制御対象へ制御パラメータを送信する。
【0064】
例えば、鉄道システム1では、複数の鉄道事業者の各々が管轄する路線を跨いで複数の鉄道事業者の電車5が運行されても良い。すなわち、複数の鉄道事業者の電車5が共通の路線において運行されても良い。この場合、各鉄道事業者によって運行される複数の電車5の各々は、複数の鉄道事業者により管理される被管理対象である。鉄道システム1には、各鉄道事業者によって運行される複数の電車5が含まれる。データ取得部22は、各鉄道事業者によって運行される各電車5の状態データを取得する。
【0065】
複数の鉄道事業者の各々が管轄する路線を跨いで電車5が運行する場合、各鉄道事業者が管轄する範囲の分界点に変成器を設けることとし、変成器により電気データが取得されても良い。複数の鉄道事業者の各々が管轄する路線を跨いで電車5が運行する場合における電気データの例は、電圧、あるいは、複数の鉄道事業者間で相互に流入または流出する電流などのデータである。複数の鉄道事業者の各々が管轄する路線を跨いで電車5が運行する場合における物理データの例は、運行される電車5の数などのデータである。
【0066】
複数の鉄道事業者の電車5が共通の路線において運行される場合に、データ取得部22は、各鉄道事業者によって運行される電車5についてのシミュレーション条件情報である、車両特性情報と運行ダイヤ情報と路線情報とを取得する。各鉄道事業者によって運行される電車5についてのシミュレーション条件情報は、各鉄道事業者によって提供される。
【0067】
なお、実施の形態1において、鉄道システム1は、全路線において1つの鉄道事業者の電車5のみが運行されるものであっても良い。鉄道システム1は、全路線の中に、1つの鉄道事業者の電車5のみが運行される路線と、複数の鉄道事業者の各々の電車5が運行される路線とが含まれても良い。
【0068】
データ取得部22によって取得される状態データには、被管理対象の位置の気象データが含まれる。気象データには、被管理対象が設けられている場所における天候または気温などを示すデータが含まれる。被管理対象が設けられている場所についての気象データは、当該被管理対象についての状態データに含まれるものとする。気象データは、例えば、気象データを配信する事業者から取得される。データ取得部22によって気象データが取得される場合、演算部24は、取得された気象データに基づいて、被制御対象の制御に用いる制御パラメータを算出する。なお、電力制御装置21によって取得される状態データは、被管理対象の状態についてのデータであれば良く、上記のデータに限られないものとする。
【0069】
次に、送信処理部25によって出力される制御パラメータの例について説明する。ここでは、送信処理部25によって出力される制御パラメータの5つの例を説明する。
【0070】
制御パラメータの第1の例は、変電所6によりき電線7へ出力される電圧を制御するための制御パラメータである。送信処理部25は、第1の例の制御パラメータを変電所6へ送信する。第1の例の制御パラメータには、変電所6に設けられている変圧器のタップ値を変更するためのパラメータ、または、運転する整流器の数を変更するためのパラメータなどが含まれる。第1の例の制御パラメータによる変電所6の制御によって、電車5同士での融通を可能とする回生電力を増加させ、回生電力を有効に利用することができる。これにより、電力制御装置21は、電車5の運行による消費電力の削減が可能となる。
【0071】
制御パラメータの第2の例は、電源装置9によるき電線7からの電力の取り込みを制御するための制御パラメータである。送信処理部25は、第2の例の制御パラメータを電源装置9へ送信する。第2の例の制御パラメータには、回生判定指標値などが含まれる。第2の例の制御パラメータによる電源装置9の制御によって、回生電力の損失を低減させることができる。これにより、電力制御装置21は、鉄道システム1における消費電力の削減が可能となる。
【0072】
制御パラメータの第3の例は、電車5を制御するための制御パラメータである。送信処理部25は、第3の例の制御パラメータを電車5へ送信する。第3の例の制御パラメータには、運転指令所から電車5の運転士へ出される指示を調整するためのパラメータが含まれる。電車5の操作支援画面に示される操作内容の設定、またはランカーブの変更などが、当該パラメータに基づいて行われる。また、第3の例の制御パラメータには、電車5の車両機器を制御するためのパラメータなどが含まれる。第3の例の制御パラメータによる電車5の制御によって、電車5の省電力の促進が可能となる。または、第3の例の制御パラメータにより電車5の走行が調整されることで、電車5の実際の運行と運行ダイヤとのずれを減少させることが可能となる。
【0073】
制御パラメータの第4の例は、駅3または電車5における人流を制御するための制御パラメータである。第4の例の制御パラメータには、駅3に居る人または電車5の乗客に提示されるガイダンスの内容を設定するためのパラメータが含まれる。当該ガイダンスは、駅3の待合室などに設置される掲示板、トレインビジョン、あるいは、駅3に居る人または電車5の乗客が所持する携帯端末において表示される。第4の例の制御パラメータによる人流の制御によって、駅務員の業務負荷を低減させることができる。または、第4の例の制御パラメータによる人流の制御によって駅3または電車5の混雑が緩和されることで、駅3に居る人または電車5の乗客のQOL(Quality Of Life)を向上させることができる。電車5の混雑の緩和により電車5の乗客が減ることで、電車5の重量が減少することとなり、電車5の力行の際における消費電力の削減が可能となる。また、電車5の乗客が減ることで、空調の強度を下げても車内の快適さを保つことができ、電車5の消費電力の削減が可能となる。
【0074】
制御パラメータの第5の例は、駅設備の制御に関する制御パラメータである。第5の例の制御パラメータには、電源装置9の充電を制御するためのパラメータ、電源装置9からEV充電装置または送電設備11への電力供給を制御するためのパラメータ、あるいは、太陽光発電装置から電源装置9または送電設備11への電力供給を制御するためのパラメータが含まれる。また、第5の例の制御パラメータには、EV充電装置による充電を促すガイダンスをEVの利用者へ配信するためのパラメータが含まれる。当該ガイダンスを受けた利用者によるEVの充電が促進されることで、電源装置9に蓄えられた電力または太陽光発電装置で発生した電力の有効利用が促進される。第5の例の制御パラメータによる駅設備の制御によって、電力の有効利用が可能となる。または、第5の例の制御パラメータによる駅設備の制御によって、電力潮流の急変を緩和させることが可能となる。
【0075】
複数の鉄道事業者の電車5が共通の路線において運行される場合、各鉄道事業者によって運行される電車5は、被制御対象である。送信処理部25は、各鉄道事業者によって運行される電車5へ制御パラメータを送信する。
【0076】
なお、上記では、制御パラメータ算出部35は、操作部45への操作に従ってモード割合情報を設定することとした。制御パラメータ算出部35は、操作部45への操作によらず、データ取得部22により取得される状態データに基づいて、モード割合情報を設定することとしても良い。例えば、制御パラメータ算出部35が、電車5の運行実績を示すデータから、電車5の実際の運行と運行ダイヤとのずれがある基準を超えたと判断したとする。この場合、制御パラメータ算出部35は、当該ずれが無い場合に比べて第4の目的関数の重み付けを大きくする。また、制御パラメータ算出部35は、気象データから天候が急変したと判断した場合には、天候の変化が無い場合に比べて第3の目的関数の重み付けを大きくする。このように、電力制御装置21は、状態データから判断される状況に鑑みて、各制御モードの最も適切な割合を選択する。これにより、電力制御装置21は、状況の変化に合わせて鉄道システム1の制御の最適化を図ることができる。
【0077】
なお、制御パラメータ算出部35において設定されるモード割合情報には、複数の制御モードの各々による制御の効果についての交互作用が反映されても良い。例えば、複数の制御モードのうち第一に優先される制御モードがある場合に、第一に優先される制御モードの次に優先される制御モードとしては、第一に優先される制御モードとの交互作用がある制御モードが選択される。これにより、制御パラメータ算出部35は、制御モード同士の交互作用を考慮した制御パラメータを算出することができる。
【0078】
次に、シミュレーションおよび制御パラメータ算出の方法の例について説明する。ここでは、シミュレーションおよび制御パラメータ算出の例として、2つの方法を説明する。
【0079】
シミュレーションおよび制御パラメータ算出の第1の方法において、演算部24は、電力制御装置21へ入力された状態データをリアルタイムで取得して、シミュレーションと制御パラメータ算出とを行う。第1の方法では、演算部24は、データ取得部22により状態データが取得されたときに、取得された状態データの演算により制御パラメータを算出する。
【0080】
データ取得部22は、複数の被管理対象の状態データを取得し、複数の被管理対象の状態データである状態データ群を状態データ保持部31に保存する。状態データ保持部31に保存される状態データ群は、複数の被管理対象から取得された状態データのグループである。演算部24は、被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、被制御対象とは異なる被管理対象の状態データを含む状態データ群に基づいて算出する。状態データ群は、複数の被管理対象について互いに同時に取得された状態データのグループであっても良い。第1の方法では、状態データ群が状態データ保持部31に格納されると、演算部24は、当該状態データ群を状態データ保持部31から読み出す。シミュレータ34は、読み出された状態データ群に基づいて、運行シミュレーションと電力シミュレーションとを実行する。
【0081】
制御パラメータ算出部35は、電力シミュレーションの結果を基に、制御パラメータを算出する。制御パラメータ算出部35は、操作部45への操作または状態データに基づいてモード割合情報を設定し、複数の目的関数の総和が最小または最大となる制御パラメータを算出する。すなわち、制御パラメータ算出部35は、重み付けが調整された複数の目的関数を最適化させる制御パラメータを算出する。制御パラメータ算出部35は、複数の被制御対象に対する制御パラメータである制御パラメータ群を出力する。
【0082】
図3は、実施の形態1に係る電力制御システム20による動作手順の例を示すフローチャートである。
図3では、演算部24において第1の方法によるシミュレーションおよび制御パラメータ算出が行われる場合における電力制御装置21の動作手順の例を示す。
【0083】
ステップS1において、データ取得部22は、被管理対象の状態データを取得する。データ取得部22は、複数の被管理対象の状態データ群を状態データ保持部31に保存する。
【0084】
ステップS2において、制御パラメータ算出部35は、モード割合情報を設定する。制御パラメータ算出部35は、操作部45への操作によって入力された情報に従ってモード割合情報を設定する。または、制御パラメータ算出部35は、ステップS1において取得された状態データに基づいて、モード割合情報を設定する。
【0085】
シミュレータ34は、状態データ保持部31から状態データ群を読み出す。シミュレータ34は、シミュレーション条件保持部32からシミュレーション条件情報を読み出す。ステップS3において、シミュレータ34は、状態データ群と、シミュレーション条件情報のうちの運行ダイヤ情報および路線情報とに基づいて、運行シミュレーションを実行する。
【0086】
ステップS4において、シミュレータ34は、ステップS3における運行シミュレーションの結果と、状態データ群と、シミュレーション条件情報のうちの車両特性情報および変電所特性情報とに基づいて、電力シミュレーションを実行する。
【0087】
ステップS5において、制御パラメータ算出部35は、ステップS2において設定されたモード割合情報とステップS4における電力シミュレーションの結果とに基づいて、制御パラメータを算出する。制御パラメータ算出部35は、算出された制御パラメータを制御パラメータ保持部33に保存する。
【0088】
送信データ作成部36は、制御パラメータを含む送信データを作成する。ステップS6において、送信データ出力部38は、制御パラメータを含む送信データを通信部26へ出力する。通信部26は、制御パラメータを含む送信データを被制御対象へ送信する。以上により、電力制御装置21は、
図3に示す手順による動作を終了する。電力制御装置21は、複数の被管理対象の状態データを随時取得して、
図3に示す手順による動作を実行する。
【0089】
なお、演算部24は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いて制御パラメータを算出することとしても良い。この場合、演算部24は、状態データと制御パラメータとの関係を学習させた学習済モデルへ状態データを入力することによって、制御パラメータを算出する。
【0090】
次に、シミュレーションおよび制御パラメータ算出の第2の方法について説明する。第2の方法によるシミュレーションおよび制御パラメータ算出は、変形例に係る演算部により実現される。
図4は、実施の形態1の変形例に係る演算部51の構成例を示す図である。演算部51は、シミュレータ52と、制御パラメータ算出部53と、時期別制御パラメータ保持部54とを備える。
図4には、通信部26を介して演算部51と情報をやり取りするHMI42も示す。
図4では、通信部26の図示を省略する。
【0091】
第2の方法において、電力制御装置21は、データ取得部22により取得された状態データをデータ保持部23において蓄積する。演算部51は、データ保持部23に集められた状態データをデータ保持部23から一括で取得して、設定された期間の状態データについてのシミュレーションと制御パラメータ算出とを行う。第2の方法では、演算部51は、いわゆるバッチ処理によりシミュレーションと制御パラメータ算出とを行う。
【0092】
データ取得部22は、複数の被管理対象の各々についての状態データを取得し、複数の被管理対象の状態データである状態データ群を状態データ保持部31に保存する。第2の方法では、データ取得部22による状態データの取得と状態データ保持部31への状態データ群の保存とが随時繰り返されることによって、データ保持部23に状態データ群が蓄積される。
【0093】
演算部51は、状態データ保持部31に蓄積された状態データ群を、あらかじめ決められた日時において読み出す。演算部51は、例えば夜間の決められた時刻に、1日分の状態データ群を読み出す。この場合、演算部51は、1日を周期として状態データ群を取得する。なお、演算部51が状態データ群を取得する周期は任意であるものとする。周期は、1日よりも短い期間でも1日よりも長い期間でも良い。
【0094】
シミュレータ52は、設定された期間の状態データ群に基づいて、運行シミュレーションと電力シミュレーションとを実行する。制御パラメータ算出部53は、電力シミュレーションの結果を基に、制御パラメータを算出する。すなわち、第2の方法では、演算部51は、設定された期間における状態データの演算により制御パラメータを算出する。設定された期間とは、例えば、1日を複数の時間帯に分けた場合における各時間帯を指すものとする。
【0095】
制御パラメータ算出部53は、設定された期間ごとについて、複数の被制御対象に対する制御パラメータである制御パラメータ群を算出する。制御パラメータ算出部53は、設定された期間ごとについての制御パラメータ群を時期別制御パラメータ保持部54へ出力する。
【0096】
時期別制御パラメータ保持部54へ入力される制御パラメータ群には、設定された期間の時期的な種別を示す種別情報が付与される。制御パラメータ群は、種別情報が紐付けられて時期別制御パラメータ保持部54に保存される。演算部51は、種別情報が紐付けられた制御パラメータである時期別制御パラメータを、時期別制御パラメータ保持部54において保持する。時期別制御パラメータ保持部54には、互いに異なる内容の種別情報が紐付けられている複数の制御パラメータ群が蓄積される。
【0097】
図5は、実施の形態1の変形例に係る演算部51において保持される時期別制御パラメータの例を示す図である。
図5では、時期別制御パラメータである制御パラメータと、当該制御パラメータに紐付けられている種別情報とを、表形式のデータとして示している。また、
図5に示す例では、制御パラメータには、種別情報と併せて、制御パラメータが算出された際に適用された制御モードの割合を示すモード割合情報が紐付けられている。
【0098】
図5に示す例において、設定された期間は、平日および休日の区分を表す「日種別」、季節を表す「季節種別」、および「時間帯」の3つの要素により分類される。種別情報には、「日種別」、「季節種別」、および「時間帯」の各情報が含まれる。
【0099】
例えば、ある期間の状態データに基づいて制御パラメータ群である「制御パラメータ群A」が算出され、当該期間が、夏の平日における6時0分から7時0分までの期間であったとする。この場合、「制御パラメータ群A」に紐付けられている種別情報には、当該期間の種別を示す「日種別[平日]」、「季節種別[夏]」、および「時間帯[6:00-7:00]」の各情報が含まれる。また、
図5に示す例では、「制御パラメータ群A」には、当該種別情報とともに「パターンA」が紐付けられている。「パターンA」とは、「制御パラメータ群A」が算出された際に適用された制御モードの割合を示すモード割合情報とする。
【0100】
図5において、「制御パラメータ群A」および「制御パラメータ群B」は、時期別制御パラメータ保持部54に蓄積されている時期別制御パラメータを例示したものである。「制御パラメータ群B」は、夏の平日における7時0分から8時0分までの期間の状態データに基づいて算出された制御パラメータ群である。この場合、「制御パラメータ群B」に紐付けられている種別情報には、当該期間の種別を示す「日種別[平日]」、「季節種別[夏]」、および「時間帯[7:00-8:00]」の各情報が含まれる。また、
図5に示す例では、「制御パラメータ群B」が算出された際に適用された制御モードの割合は、「制御パラメータ群A」が算出された際に適用された制御モードの割合と同じである。「制御パラメータ群B」には、当該種別情報とともに、モード割合情報である「パターンA」が紐付けられている。このように、時期別制御パラメータ保持部54に保存される時期別制御パラメータには、設定された期間に応じた種別情報と、制御モードの割合に応じたモード割合情報とが紐付けられる。
【0101】
被制御対象の制御が行われる際に、制御パラメータ算出部53は、制御が行われる時期に当てはまる種別情報が紐付けられている時期別制御パラメータを時期別制御パラメータ保持部54において検索する。制御パラメータ算出部53は、制御が行われる時期に当てはまる種別情報が紐付けられている時期別制御パラメータを検索によって特定し、特定された時期別制御パラメータを読み出す。また、制御パラメータ算出部53は、読み出された時期別制御パラメータの中に、時期別制御パラメータに紐付けられているモード割合情報が、被制御対象の制御が行われる際に設定されたモード割合情報と同じである時期別制御パラメータがあるか否かを判断する。
【0102】
読み出された時期別制御パラメータの中に、紐付けられているモード割合情報が、設定されたモード割合情報と同じである時期別制御パラメータがある場合、制御パラメータ算出部53は、当該時期別制御パラメータを選択する。読み出された時期別制御パラメータの中に、紐付けられているモード割合情報が、設定されたモード割合情報と一致している時期別制御パラメータが無い場合、制御パラメータ算出部53は、時期別制御パラメータ保持部54における検索を再度行う。制御パラメータ算出部53は、制御が行われる時期と時期的条件が最も近い種別情報が紐付けられている時期別制御パラメータであって、紐付けられているモード割合情報が、設定されたモード割合情報と一致している時期別制御パラメータを時期別制御パラメータ保持部54において検索する。制御パラメータ算出部53は、検索によって特定された時期別制御パラメータを選択する。
【0103】
このようにして、制御パラメータ算出部53は、時期別制御パラメータ保持部54に保持されている時期別制御パラメータの中から種別情報およびモード割合情報に基づいて時期別制御パラメータを選択する。制御パラメータ算出部53は、種別情報およびモード割合情報に基づいて時期別制御パラメータを選択することによって、送信処理部25による送信が予定される制御パラメータを決定する。制御パラメータ算出部53は、決定された制御パラメータを制御パラメータ保持部33へ出力する。
【0104】
制御パラメータ保持部33は、制御パラメータ保持部33へ入力された制御パラメータを、当該制御パラメータが送信される予定を示すスケジュールとして保持する。送信データ作成部36は、スケジュールとして保持されている制御パラメータを、制御パラメータ保持部33から読み出す。送信データ出力部38は、制御パラメータを含む送信データを、スケジュールに従って出力する。
【0105】
図6は、実施の形態1の変形例において送信処理部25により制御パラメータが送信されるスケジュールの例を示す図である。
図6では、制御パラメータと、当該制御パラメータが送信される日および時間帯とを、表形式のデータとして示している。ここでは、時期別制御パラメータに紐付けられているモード割合情報が、被制御対象の制御が行われる際に設定されたモード割合情報と同じであるものとする。
【0106】
図6には、「XXXX年8月Y日」についてのスケジュールの一部を例示している。「XXXX年8月Y日」は、平日であるものとする。
図5に示す「制御パラメータ群A」に紐付けられている種別情報は、「XXXX年8月Y日」における6時0分から7時0分までの期間に当てはまる種別情報である。制御パラメータ算出部53は、「XXXX年8月Y日」の6時0分から7時0分までにおける制御に適用される制御パラメータとして、「制御パラメータ群A」を選択する。また、
図5に示す「制御パラメータ群B」に紐付けられている種別情報は、「XXXX年8月Y日」における7時0分から8時0分までの期間に当てはまる種別情報である。制御パラメータ算出部53は、「XXXX年8月Y日」の7時0分から8時0分までにおける制御に適用される制御パラメータとして、「制御パラメータ群B」を選択する。
【0107】
制御パラメータ保持部33には、日を示す「XXXX年8月Y日」、および時間帯を示す「6:00-7:00」の各情報に紐付けられた「制御パラメータ群A」が保持される。また、日を示す「XXXX年8月Y日」、および時間帯を示す「7:00-8:00」の各情報に紐付けられた「制御パラメータ群B」が保持される。このように、制御パラメータ保持部33において、制御パラメータは、当該制御パラメータが送信される予定を示すスケジュールとして保持される。
【0108】
図7は、実施の形態1の変形例に係る電力制御システム20による動作手順の例を示すフローチャートである。
図7では、演算部51において第2の方法によるシミュレーションおよび制御パラメータ算出が行われる場合における電力制御装置21の動作手順の例を示す。
図7に示す動作手順の開始時において、データ取得部22により取得された状態データが状態データ保持部31に蓄積されているものとする。
【0109】
ステップS11からステップS14は、時期別制御パラメータを求めるときの動作であって、周期的に実行される動作である。ステップS11において、シミュレータ52は、状態データ保持部31に蓄積された状態データを読み出す。また、シミュレータ52は、シミュレーション条件保持部32からシミュレーション条件情報を読み出す。
【0110】
ステップS12において、シミュレータ52は、運行シミュレーションおよび電力シミュレーションを実行する。シミュレータ52は、状態データ群と、シミュレーション条件情報のうちの運行ダイヤ情報および路線情報とに基づいて、運行シミュレーションを実行する。シミュレータ52は、運行シミュレーションの結果と、状態データ群と、シミュレーション条件情報のうちの車両特性情報および変電所特性情報とに基づいて、電力シミュレーションを実行する。シミュレータ52は、設定された期間ごとの運行シミュレーションおよび電力シミュレーションを実行する。
【0111】
制御パラメータ算出部53は、操作部45への操作によって入力された情報に従ってモード割合情報を設定する。または、制御パラメータ算出部53は、ステップS11において読み出された状態データに基づいて、モード割合情報を設定する。ステップS13において、制御パラメータ算出部53は、設定されたモード割合情報とステップS12における電力シミュレーションの結果とに基づいて、制御パラメータを算出する。制御パラメータ算出部53は、設定された期間ごとについて、制御パラメータを算出する。
【0112】
ステップS14において、制御パラメータ算出部53は、時期別制御パラメータ保持部54に、種別情報が紐付けられた制御パラメータである時期別制御パラメータを保存する。ステップS11からステップS14により、時期別制御パラメータ保持部54には、時期別制御パラメータが蓄積される。
【0113】
ステップS15およびステップS16は、被制御対象の制御が行われるときの動作である。ステップS15において、制御パラメータ算出部53は、時期別制御パラメータを選択することによって、送信が予定される制御パラメータを決定する。制御パラメータ算出部53は、制御が行われる時期に当てはまる種別情報が紐付けられている時期別制御パラメータを検索によって特定し、特定された時期別制御パラメータを読み出す。
【0114】
読み出された時期別制御パラメータの中に、時期別制御パラメータに紐付けられているモード割合情報が、被制御対象の制御が行われる際に設定されたモード割合情報と同じである時期別制御パラメータがある場合、制御パラメータ算出部53は、当該時期別制御パラメータを選択する。
【0115】
読み出された時期別制御パラメータの中に、紐付けられているモード割合情報が、設定されたモード割合情報と一致している時期別制御パラメータが無い場合、制御パラメータ算出部53は、時期別制御パラメータ保持部54における検索を再度行う。制御パラメータ算出部53は、制御が行われる時期と条件が最も近い種別情報が紐付けられている時期別制御パラメータであって、紐付けられているモード割合情報が、設定されたモード割合情報と一致している時期別制御パラメータを時期別制御パラメータ保持部54において検索する。制御パラメータ算出部53は、検索によって特定された時期別制御パラメータを選択する。
【0116】
制御パラメータ算出部53は、このようにして、種別情報およびモード割合情報に基づいて時期別制御パラメータを選択することによって、送信が予定される制御パラメータを決定する。制御パラメータ保持部33は、制御パラメータ算出部53により決定された制御パラメータを、当該制御パラメータが送信される予定を示すスケジュールとして保持する。
【0117】
ステップS16において、送信データ出力部38は、制御パラメータ保持部33において保持されているスケジュールに従って、制御パラメータを含む送信データを出力する。すなわち、送信データ出力部38は、制御パラメータ保持部33において保持されているスケジュールに従って、制御パラメータを含む送信データを被制御対象へ送信する。以上により、電力制御装置21は、
図7に示す手順による動作を終了する。
【0118】
なお、演算部51は、AIを用いて制御パラメータを算出することとしても良い。この場合、演算部51は、状態データと制御パラメータとの関係を学習させた学習済モデルへ状態データを入力することによって、制御パラメータを算出する。
【0119】
次に、実施の形態1に係る電力制御装置21のハードウェア構成について説明する。
図8は、実施の形態1に係る電力制御装置21のハードウェア構成例を示す図である。電力制御装置21は、処理回路60および通信装置63を備えるコンピュータシステムにより実現される。処理回路60は、プロセッサ61およびメモリ62を備える。処理回路60は、プロセッサ61がソフトウェアを実行する回路である。
【0120】
電力制御装置21の処理部である、データ取得部22、演算部24、および送信処理部25は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ62に格納される。処理回路60では、メモリ62に記憶されたプログラムである電力制御プログラムをプロセッサ61が読み出して実行することにより、電力制御装置21の処理部の機能を実現する。処理回路60は、電力制御システム20の処理が結果的に実行されることになる電力制御プログラムを格納するメモリ62を備える。また、電力制御プログラムは、電力制御システム20の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0121】
プロセッサ61は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)ともいう)である。メモリ62は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。電力制御装置21のデータ保持部23は、メモリ62により実現される。
【0122】
通信装置63は、電力制御装置21の外部の装置との通信を行う。電力制御装置21の通信部26は、通信装置63により実現される。通信装置63は、被管理対象の状態データを受信する。通信装置63は、制御パラメータを含む送信データを被制御対象へ送信する。
【0123】
電力制御装置21は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を含んでいても良い。電力制御プログラムは、CD(Compact Disc)-ROM、DVD-ROMなどの記録媒体に格納され、電力制御システム20を実現させるために記録媒体が提供されても良い。
【0124】
上記では、電力制御システム20は、電力制御装置21の使用により実現されるものとした。電力制御システム20は、2つ以上の装置で構成されても良い。2つ以上の装置のうちの少なくとも1つは、クラウドサーバであっても良く、オンプレミスのサーバであっても良い。2つ以上の装置の各々は、
図8に示す処理回路60および通信装置63と同様の構成を備える。2つ以上の装置間の通信は、通信装置63により行われる。
【0125】
HMI42は、
図8に示すハードウェア構成と同様のハードウェア構成を備える。HMI42の通信部43は、通信装置63と同様の構成により実現される。また、HMI42は、入力のため装置である入力デバイスと、画面を表示するモニタとを備える。入力デバイスは、例えば、キーボード、マウス、キーパッド、またはタッチパネルなどを含む。操作部45は、入力デバイスにより実現される。モニタは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどである。表示部44は、モニタにより実現される。
【0126】
実施の形態1によると、電力制御装置21は、き電系統設備2、電車5、および駅設備のうち少なくとも一つの被管理対象から状態データを取得するデータ取得部22と、き電系統設備2、電車5、および駅設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、被制御対象とは異なる被管理対象の状態データに基づいて算出する演算部24と、算出された制御パラメータを被制御対象へ送信する送信処理部25と、を備える。電力制御装置21は、被制御対象とは異なる被管理対象の状態データに基づいて制御パラメータを算出することで、被制御対象とは異なる被管理対象の状況に応じて、鉄道システム1の全体における適切な電力利用を図ることが可能となる。これにより、電力制御装置21は、電車5および駅3を含む鉄道システム1において、鉄道システム1の状況に応じた適切な電力利用を行わせることができる。
【0127】
また、演算部24は、被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、被制御対象とは異なる被管理対象の状態データを含む状態データ群に基づいて算出する。これにより、電力制御装置21は、複数の被管理対象から取得された状態データ群に基づいて、鉄道システム1における適切な電力利用を図ることができる。
【0128】
また、データ取得部22は、鉄道システム1の外部の施設であって、鉄道システム1から供給される電力を利用できる外部施設13の状態データを更に取得する。演算部24は、取得された外部施設13の状態データに基づいて、被制御対象の制御に用いる制御パラメータを算出する。これにより、電力制御装置21は、鉄道システム1と外部施設13とを含むシステム全体における電力の有効利用を図ることができる。
【0129】
また、駅設備には、電車5が発生する回生電力を取り込んで他の駅設備または外部施設13へ電力を供給する電源装置9が含まれている。データ取得部22は、被管理対象である電源装置9の状態データを取得する。送信処理部25は、被制御対象である電源装置9へ制御パラメータを送信する。これにより、電力制御装置21は、鉄道システム1または外部施設13の状況に応じて、駅設備または外部施設13において回生電力を有効に利用させることができる。
【0130】
また、データ取得部22は、状態データとして、被管理対象における電気的状態を示すデータおよび物理的状態を示すデータのうち少なくとも一方を取得する。これにより、電力制御装置21は、被管理対象の電気的状態および物理的状態の少なくとも一方に応じて、適切な電力利用を鉄道システム1に行わせることができる。
【0131】
また、データ取得部22は、状態データとして、被管理対象の位置の気象データを更に取得する。演算部24は、取得された気象データに基づいて、被制御対象の制御に用いる制御パラメータを算出する。これにより、電力制御装置21は、被管理対象の位置における気象の状況に応じて、適切な電力利用を鉄道システム1に行わせることができる。
【0132】
また、被管理対象は、複数の鉄道事業者により管理される。データ取得部22は、複数の鉄道事業者により管理される被管理対象の状態データを取得する。送信処理部25は、複数の鉄道事業者により管理される被管理対象へ制御パラメータを送信する。これにより、電力制御装置21は、複数の鉄道事業者により管理される被管理対象を含む鉄道システム1において、状況に応じた適切な電力利用を行わせることができる。
【0133】
また、演算部24は、鉄道システム1の電力消費を状態データと運行ダイヤとに基づいてシミュレーションするシミュレータ34と、シミュレータ34によるシミュレーションの結果に基づいて制御パラメータを算出する制御パラメータ算出部35と、を有する。これにより、電力制御装置21は、状況に応じた適切な電力利用を鉄道システム1に行わせるための制御パラメータを求めることができる。
【0134】
また、制御パラメータ算出部35は、複数の目的関数に基づいて制御パラメータを算出する。これにより、電力制御装置21は、鉄道システム1において、複数の目的の各々を最適化させ得る電力利用を行わせることができる。
【0135】
また、制御パラメータ算出部35は、複数の目的関数の各々の重み付けを調整して、各々の重み付けが調整された複数の目的関数に基づいて制御パラメータを算出する。これにより、電力制御装置21は、鉄道システム1の状況に応じて制御モードの割合を調整することができる。
【0136】
また、制御パラメータ算出部35は、複数の目的関数の各々の重み付けを指定する操作に従って重み付けを調整する。これにより、電力制御装置21は、任意の操作に従って制御モードの割合を調整することができる。
【0137】
また、制御パラメータ算出部35は、状態データに基づいて複数の目的関数の各々の重み付けを調整する。これにより、電力制御装置21は、鉄道システム1の状況に応じて、制御モードの割合を操作によらずに調整することができる。
【0138】
また、複数の目的関数には、鉄道システム1および外部施設13のうち少なくとも一方における二酸化炭素排出量を表す第1の目的関数と、鉄道システム1および外部施設13のうち少なくとも一方における電気料金を表す第2の目的関数と、鉄道システム1および外部施設13のうち少なくとも一方における電力系統の安定性を表す第3の目的関数と、電車5の実際の運行と運行ダイヤとのずれを表す第4の目的関数と、が含まれる。これにより、電力制御装置21は、二酸化炭素排出量の最小化を目的とする制御と、電気料金の最小化を目的とする制御と、電力系統の安定化を目的とする制御と、電車5の実際の運行と運行ダイヤとのずれの最小化を目的とする制御と、を同時に行うことができる。
【0139】
また、演算部24は、データ取得部22により状態データが取得されたときに、取得された状態データの演算により制御パラメータを算出する。これにより、電力制御装置21は、鉄道システム1の状況に応じた適切な電力利用をリアルタイムにて行わせることができる。
【0140】
また、演算部24は、設定された期間における状態データの演算により制御パラメータを算出する。これにより、電力制御装置21は、設定された期間について最適化された制御パラメータを求めることができる。
【0141】
また、演算部24は、設定された期間の時期的な種別を示す種別情報が紐付けられた制御パラメータである時期別制御パラメータを保持し、保持されている時期別制御パラメータの中から種別情報に基づいて時期別制御パラメータを選択することによって、送信処理部25による送信が予定される制御パラメータを決定する。これにより、電力制御装置21は、制御パラメータが送信される予定を示すスケジュールを設定して、スケジュールに従って被制御対象へ制御パラメータを送信することができる。
【0142】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。実施の形態の構成は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 鉄道システム、2 き電系統設備、3 駅、5 電車、6 変電所、7 き電線、8 レール、9 電源装置、10 駅舎設備、11 送電設備、12 配線、13 外部施設、20 電力制御システム、21 電力制御装置、22 データ取得部、23 データ保持部、24,51 演算部、25 送信処理部、26,43 通信部、31 状態データ保持部、32 シミュレーション条件保持部、33 制御パラメータ保持部、34,52 シミュレータ、35,53 制御パラメータ算出部、36 送信データ作成部、37 送信対象判別部、38 送信データ出力部、41 クラウドサーバ、42 HMI、44 表示部、45 操作部、54 時期別制御パラメータ保持部、60 処理回路、61 プロセッサ、62 メモリ、63 通信装置。
【要約】
電力制御装置(21)は、電車へ電気を送る設備を含むき電系統設備、電車、および駅設備のうち少なくとも一つの被管理対象から状態データを取得するデータ取得部(22)と、き電系統設備、電車、および駅設備のうち少なくとも一つの被制御対象における電力の制御に用いる制御パラメータを、被制御対象とは異なる被管理対象の状態データに基づいて算出する演算部(24)と、算出された制御パラメータを被制御対象へ送信する送信処理部(25)と、を備える。