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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】エレベーター装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
B66B5/02 V
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024541861
(86)(22)【出願日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2023038273
【審査請求日】2024-07-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 潤
(72)【発明者】
【氏名】上西 一輝
(72)【発明者】
【氏名】山口 智香
(72)【発明者】
【氏名】垣尾 政之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 然一
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/185511(WO,A1)
【文献】特開2019-210086(JP,A)
【文献】特開2017-039565(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097373(WO,A1)
【文献】特開昭57-042470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0240301(US,A1)
【文献】中国実用新案第208500054(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を移動する乗りかごと、
前記乗りかごの移動を制御する運行制御部と、
前記乗りかごの速度が基準速度に達したことを検出する過速度検出部と、
前記過速度検出部が、前記乗りかごの速度が前記基準速度に達したことを検出した場合、前記乗りかごの移動に制動力を加える制動部と、
前記過速度検出部の誤動作を検出する誤動作検出部と、
前記過速度検出部が、前記乗りかごの速度が前記基準速度に達したことを検出した場合、前記乗りかごの速度を計測する速度計測部と、
前記誤動作検出部が、前記過速度検出部の誤動作を検出した場合、加速度センサからの情報に基づき、前記速度計測部により前記乗りかごの速度を計測しつつ、救出運転を行う救出運転部と、
前記加速度センサが計測した加速度に基づき、前記加速度センサの異常を検知する、異常検知部と、
を備え、
救出運転時において、前記異常検知部が、前記加速度センサの異常を検知した場合に、前記制動部により、前記乗りかごの移動に制動力を加える、エレベーター装置。
【請求項2】
前記過速度検出部が、前記乗りかごの速度が前記基準速度に達したことを検出した時点において、前記速度計測部により計測された前記乗りかごの速度が、前記基準速度よりも小さい場合、前記誤動作検出部は、前記過速度検出部の誤動作であると判定する、請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記速度計測部は、前記過速度検出部が、前記乗りかごの速度が前記基準速度に達したことを検出した時点から、前記乗りかごの速度を計測する、請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項4】
前記速度計測部は、前記加速度センサが3軸方向の加速度を計測する場合に、前記加速度センサからの情報に基づき、前記乗りかごの速度を計測する、請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項5】
前記速度計測部は、前記加速度センサが計測した3軸方向の加速度から合成加速度を算出し、前記合成加速度に基づき、前記乗りかごの速度を計測する、請求項4に記載のエレベーター装置。
【請求項6】
前記異常検知部は、前記加速度センサが計測した3軸方向の加速度のうち、前記乗りかごの移動方向と直交する方向の加速度に基づき、前記加速度センサの異常を検知する、請求項4に記載のエレベーター装置。
【請求項7】
昇降路を移動する乗りかごと、
前記乗りかごの移動を制御する運行制御部と、
前記乗りかごの速度が基準速度に達したことを検出する過速度検出部と、
前記過速度検出部が、前記乗りかごの速度が前記基準速度に達したことを検出した場合、前記乗りかごの移動に制動力を加える制動部と、
前記過速度検出部の誤動作を検出する誤動作検出部と、
前記過速度検出部が、前記乗りかごの速度が前記基準速度に達したことを検出した場合、前記乗りかごの速度を計測する速度計測部と、
前記誤動作検出部が、前記過速度検出部の誤動作を検出した場合、前記速度計測部により前記乗りかごの速度を計測しつつ、救出運転を行う救出運転部と、
を備え、
前記速度計測部は、複数の加速度センサ、速度センサまたは位置センサである複数のセンサからの情報に基づき、前記乗りかごの速度を計測し、
救出運転時において、前記複数のセンサの計測値のばらつきが、所定値以上である場合に、前記制動部により、前記乗りかごの移動に制動力を加える、エレベーター装置。
【請求項8】
救出運転時における前記乗りかごの速度は、通常運転時における前記乗りかごの速度よりも小さい、請求項1または請求項7に記載のエレベーター装置。
【請求項9】
遠隔監視する監視センタと通信可能な通信装置をさらに備え、
前記救出運転部は、前記監視センタからの指示に基づき、救出運転を行う、請求項1または請求項7に記載のエレベーター装置。
【請求項10】
救出運転時において、前記速度計測部が、前記乗りかごの速度が異常速度に達したことを検出した場合、前記制動部により、前記乗りかごの移動に制動力を加える、請求項1または請求項7に記載のエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗りかごの速度が基準速度に達した場合に、乗りかごの移動を停止させる安全装置を備えたエレベーター装置が開示されている。また、特許文献1のエレベーター装置においては、安全装置が作動し、乗客が乗りかご内に閉じ込められた場合、遠隔にいるオペレータが、安全装置が正常に動作したか否かを自身で判断する。そして、安全装置の誤動作であった場合、オペレータが安全装置の回路を短絡させ、救出運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-220075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、特許文献1に開示されたエレベーター装置では、安全装置の誤動作で乗りかごが停止した場合、安全装置の回路を短絡させ、無効化した後に救出運転を行う。そのため、救出運転中に乗りかごの速度超過が発生した場合、安全装置を作動させることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るエレベーター装置は、昇降路を移動する乗りかごと、乗りかごの移動を制御する運行制御部と、乗りかごの速度が基準速度に達したことを検出する過速度検出部と、過速度検出部が、乗りかごの速度が基準速度に達したことを検出した場合、乗りかごの移動に制動力を加える制動部と、過速度検出部の誤動作を検出する誤動作検出部と、過速度検出部が、乗りかごの速度が基準速度に達したことを検出した場合、乗りかごの速度を計測する速度計測部と、誤動作検出部が、過速度検出部の誤動作を検出した場合、速度計測部により乗りかごの速度を計測しつつ、救出運転を行う救出運転部と、を備え、救出運転時において、速度計測部が、乗りかごの速度が異常速度に達したことを検出した場合、制動部により、乗りかごの移動に制動力を加えることを特徴とする。
【0006】
本構成によれば、救出運転中において、乗りかごの速度が基準速度に達した場合、制動部により乗りかごの移動に制動力を加えることができるため、乗客の安全を確保しながら救出運転を行うことができる。
【0007】
また、上記の誤動作検出部は、過速度検出部により乗りかごの速度が基準速度に達したことが検出された時点における速度計測部により計測された乗りかごの速度が、基準速度よりも小さい場合、過速度検出部が誤動作であると判定してもよい。また、上記の速度計測部は、過速度検出部により、乗りかごの速度が基準速度に達したことが検出された時点から、乗りかごの速度を計測してもよい。本構成によれば、乗りかごの速度を計測する時間が短くなり、エレベーター装置に設けられるメモリ容量を小さくすることができる。
【0008】
また、上記の速度計測部は、加速度センサからの情報に基づき、乗りかごの速度を計測してもよい。また、当該加速度センサは3軸方向の加速度を計測し、速度計測部は、計測した3軸方向の合成加速度を用いて、乗りかごの速度を計測してもよい。本構成によれば、加速度センサの計測方向が、乗りかごの移動方向と厳密に一致していない場合においても、乗りかごの速度を正確に計測することが容易になる。その結果、加速度センサの計測方向と、乗りかごの移動方向とを厳密に一致させる必要がないため、加速度センサの設置が容易になる。
【0009】
また、当該加速度センサは3軸方向の加速度を計測し、エレベーター装置は、計測した3軸方向の加速度のうち、乗りかごの移動方向と直交する方向の加速度に基づき、加速度センサの異常を検知する、異常検知部をさらに備え、救出運転時において、上記の異常検知部により加速度センサの異常が検知された場合、制動部により、乗りかごの移動に制動力を加えてもよい。乗りかごは、通常、移動方向(例えば、鉛直方向)と直交する方向(例えば、水平方向)には移動しない。そのため、加速度センサが正常である場合、乗りかごの移動方向と直交する方向の加速度は0に近い値となる。換言すると、上下方向と直交する方向の加速度の計測値が所定の値よりも大きい場合、加速度センサに異常が生じている可能性があると言える。よって、救出運転時に加速度センサの異常が検知された場合に、乗りかごの移動に制動力を加えることで、乗客の安全をより確保しながら、救出運転を行うことができる。
【0010】
また、上記の速度計測部は、複数の加速度センサ、速度センサまたは位置センサである複数のセンサからの情報に基づき、乗りかごの速度を計測してもよい。本構成によれば、乗りかごの速度をより正確に計測することができ、乗客の安全をより確保しながら救出運転を行うことができる。
【0011】
また、救出運転時において、当該複数のセンサの計測値のばらつきが、所定値以上である場合、制動部により、乗りかごの移動に制動力を加えてもよい。複数の加速度センサの計測値のばらつきが、所定値以上である場合、センサに何らかの異常が生じている可能性がある。そのため、救出運転時に複数のセンサの計測値のばらつきが、所定値以上である場合に、救出運転時を停止することで、乗客の安全をより確保しながら、救出運転を行うことができる。
【0012】
また、本発明に係るエレベーター装置は、遠隔監視する監視センタと通信可能な通信装置をさらに備え、上記の救出運転部は、監視センタからの指示に基づき、救出運転を行ってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るエレベーター装置によれば、乗客の安全を確保しながら救出運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の一例であるエレベーター装置を備えるエレベーターシステムを示す概略図である。
図2】実施形態の一例であるエレベーター装置を備えるエレベーターシステムの構成を示すブロック図である。
図3】実施形態の一例である救出運転における処理手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態の他の一例であるエレベーター装置の乗りかごの速度の一例を模式的に示す図である。
図5】実施形態の他の一例である救出運転における処理手順を示すフローチャートである。
図6】実施形態の他の一例であるエレベーター装置を備えるエレベーターシステムの構成を示すブロック図である。
図7】実施形態の他の一例である救出運転における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るエレベーター装置の実施形態について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0016】
[第1実施形態]
図1および図2を参照しながら、第1実施形態のエレベーター装置10を備えるエレベーターシステム1について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るエレベーターシステム1を示す概略図であり、図2は、エレベーターシステム1の構成を示すブロック図である。
【0017】
図1および図2に示すように、エレベーターシステム1は、エレベーター装置10を備える。エレベーター装置10は、ネットワークを介して遠隔に設けられた監視センタ2と接続されている。監視センタ2には、例えば、エレベーター装置10を監視するオペレータが存在する。オペレータは、必要に応じて、エレベーター装置10の運行に関する指令をエレベーター装置10へ送信する。
【0018】
エレベーター装置10は、乗りかご11、巻上機12、および過速度検出部としての調速機13を有する。
【0019】
乗りかご11は、建造物内で鉛直方向に延在する空間として設けられた昇降路14内に設置される。乗りかご11には、かご扉15が設けられている。乗りかご11が乗り場に到着すると、乗り場に設けられた乗場扉16が、かご扉15に連動して開き、乗客の乗り降りが可能となる。また、本実施形態では、昇降路14の天井部の上に機械室17が設けられている。
【0020】
乗りかご11には、主ロープ18の一方端が接続されている。また、主ロープ18の他方端には、釣り合い錘19が接続されている。また、主ロープ18の中間部分は、巻上機12の駆動綱車に巻回され、巻上機12の駆動綱車の回転動作によって、主ロープ18が移動する。これにより、乗りかご11および釣り合い錘19が互いに反対方向に昇降する。
【0021】
巻上機12は、機械室17内に配置され、乗りかご11を駆動させる。巻上機12には、ブレーキ装置20が設けられている。ブレーキ装置20は、本発明の制動部に相当する。ブレーキ装置20は、巻上機12の駆動綱車が回転することを阻止するための力を発生させ、乗りかご11の移動に制動力を加える。ブレーキ装置20は、例えば、駆動綱車に連動して回転する制動面に、ばねによる付勢力によりブレーキシューを押し付けることで生じる摩擦力によって、駆動綱車が回転することを阻止する。
【0022】
詳しくは後述するが、ブレーキ装置20は、調速機13が乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出した場合に作動する。なお、ブレーキ装置20は、巻上機12の一機能として備えられていてもよい。
【0023】
調速機13は、例えば、1本の環状のロープである調速機ロープ21と、機械室17内に配置される調速車22と、張り車23と、調速車22に設けられた振り子(図示せず)と、電気スイッチ24とを有する。調速機ロープ21は、昇降路14内において上下にわたって配置された環状のロープである。調速機ロープ21は、上端の折り返し部分は調速車22に巻き掛けられ、下端の折り返し部分は張り車23に巻き掛けられている。調速機ロープ21は、乗りかご11の昇降動作に連動するように乗りかご11に接続固定されている。
【0024】
乗りかご11が上下に移動すると、調速機ロープ21が連動して移動し、調速車22が回転する。すると、調速車22に設けられた振り子が、調速車22の中心から離れるように移動する。このとき、乗りかご11の速度が基準速度に達すると、振り子が電気スイッチ24に当たる。これにより、調速機13は、乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出できる。調速機13は、乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出すると、後述する制御装置30に信号を送信する。
【0025】
エレベーター装置10は、加速度センサ25をさらに有する。本実施形態では、加速度センサ25は、乗りかご11の上面に配置されている。加速度センサ25は、少なくとも鉛直方向を含む1軸以上の方向における乗りかご11の加速度を検出する。加速度センサ25は、計測した乗りかご11の加速度を制御装置30へ送信する。詳しくは後述するが、制御装置30は、計測した加速度に基づき、乗りかご11の速度を算出する。
【0026】
加速度センサ25は、3軸方向の加速度を計測する加速度センサであってもよい。すなわち、加速度センサ25は、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の加速度を計測してもよい。なお、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向は互いに直交する。例えば、3軸の加速度センサのZ軸方向が乗りかご11の移動方向(上下方向)となるように配置される場合、乗りかご11はX軸方向およびY軸方向には移動しないため、乗りかご11の移動時のX軸方向、およびY軸方向の加速度は0に近い値となる。しかしながら、加速度センサ25が故障している場合、または加速度センサ25の配置のずれが生じている場合、X軸方向またはY軸方向の加速度は0に近い値とはならない場合がある。換言すると、加速度センサ25に3軸の加速度センサを用い、X軸方向およびY軸方向の加速度を計測することにより、加速度センサ25の故障、および加速度センサ25の配置について、正規状態に対する傾き等のずれを検出することができる。
【0027】
加速度センサ25は、常時乗りかご11の加速度を計測していてもよいが、好ましくは調速機13が乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出した時点以降における、乗りかご11の加速度を計測する。これにより、加速度センサ25の稼働時間が短くなり、制御装置30のメモリ容量を小さくできる。その結果、制御装置30の価格を安価にすることができる。
【0028】
エレベーター装置10は、制御装置30および通信装置40をさらに有する。本実施形態では、制御装置30および通信装置40は、いずれも機械室17内に配置されている。なお、制御装置30および通信装置40の少なくとも一方は、例えば、昇降路14下部のピットに配置されていてもよい。また、制御装置30は、複数の装置で構成されていてもよい。
【0029】
制御装置30は、乗りかご11の移動の制御を含め、エレベーター装置10の統括的な制御を行う。制御装置30は、各種設定情報、制御プログラム等を記憶するメモリと、制御プログラムを読み出して実行することにより各処理部の機能を実現するプロセッサとを有する。
【0030】
図2に示すように、制御装置30は、調速機13および加速度センサ25と接続され、調速機13および加速度センサ25から制御に必要な情報を取得する。また、制御装置30は、巻上機12およびブレーキ装置20と接続され、巻上機12およびブレーキ装置20に対して制御信号を送信するように構成されている。制御装置30は、運行制御部31と、速度計測部32と、誤動作検出部33と、救出運転部34とを含む。
【0031】
運行制御部31は、通常運転時において、巻上機12を制御することにより、乗りかご11の移動の制御を行う。なお、通常運転とは、後述の救出運転以外の場合における運転を意味する。また、運行制御部31は、調速機13からの信号に基づき、乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出した場合、ブレーキ装置20を作動させ、巻上機12の駆動を停止させる。
【0032】
速度計測部32は、加速度センサ25の測定結果に基づき、乗りかご11の速度を算出する。速度計測部32は、例えば、加速度センサ25が計測した乗りかご11の加速度を時間で積分することにより、乗りかご11の速度を算出する。速度計測部32は、常時乗りかご11の速度を計測していてもよいが、少なくとも、制御装置30が調速機13から乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出した信号(以下、「過速度検出信号」と称する)を取得した時点、および救出運転を行っている間において、乗りかご11の速度を計測する。
【0033】
誤動作検出部33は、調速機13が誤動作したか否かを判定する。上記の通り、調速機13は、乗りかご11の速度が基準速度に達した際、振り子が電気スイッチ24に当たることにより、乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出する。しかしながら、調速機13は、例えば、調速機ロープ21に付着した固形油が電気スイッチ24に接触することにより、電気スイッチ24が作動してしまう場合がある。また、振り子の支持部に異物が入り込むことにより、乗りかご11の速度が基準速度に達していないにも関わらず、電気スイッチ24が作動してしまう場合もある。つまり、乗りかご11の速度が基準速度に達していないにも関わらず、電気スイッチ24が作動してしまう場合がある。
【0034】
そこで、誤動作検出部33は、制御装置30が過速度検出信号を取得した時点における、速度計測部32により計測された乗りかご11の速度と、予め定められた基準速度との比較を行う。そして、速度計測部32により計測された乗りかご11の速度が、基準速度よりも小さい場合、実際には過速が生じていないため、調速機13の誤動作であると判定する。一方、速度計測部32により計測された乗りかご11の速度が、基準速度以上の場合、実際に過速が生じているため、調速機13の誤動作ではないと判定する。
【0035】
誤動作検出部33は、制御装置30が過速度検出信号を取得した時点において、調速機13の誤動作を判定してもよいし、ブレーキ装置20が作動し、乗りかご11が完全に停止した後に、調速機13の誤動作を判定してもよい。
【0036】
救出運転部34は、誤動作検出部33が調速機13の誤動作を検出した場合、乗りかご11を最寄りの階の着床位置へ移動させ、救出運転を行う。より詳細には、救出運転部34は、誤動作検出部33が調速機13の誤動作を検出した場合、調速機13に設けられた電気スイッチ24を含む安全装置の回路を短絡させ、無効化した後、ブレーキ装置20を解除し、巻上機12を駆動させることにより救出運転を行う。
【0037】
ここで、救出運転部34は、速度計測部32により、乗りかご11の速度を計測しつつ、救出運転を行う。そして、救出運転時において、速度計測部32が乗りかご11の速度が異常速度に達したことを検出した場合、救出運転部34は、ブレーキ装置20を再度作動させ、巻上機12の駆動を停止させる。つまり、通常運転時においては、上記の通り、調速機13により乗りかご11の速度を監視するが、救出運転時においては、誤動作が生じている調速機13ではなく、速度計測部32により乗りかご11の速度を監視する。なお、上記の異常速度は、安全性の観点から乗りかご11を停止させる必要があると判断される速度であり、基準速度と同一でもよいし、基準速度と異なっていてもよい。これにより、救出運転時においても、乗りかご11の速度が異常速度に達したことが検出された場合、ブレーキ装置20を作動することができ、乗客の安全を確保しながら救出運転を行うことができる。
【0038】
救出運転部34は、救出運転を行う際、遠隔位置に設けられた監視センタ2からの情報に基づき、救出運転を行ってもよい。制御装置30は、例えば、誤動作検出部33が調速機13の誤動作を検出した場合、通信装置40を介して、調速機13の誤動作であることを監視センタ2へ送信する。そして、制御装置30が、通信装置40を介して、救出運転に関する情報を監視センタ2から取得すると、救出運転部34は、当該情報に基づき救出運転を開始する。なお、救出運転中において、制御装置30が、救出運転を停止する指令を監視センタ2から取得した場合、救出運転部34は、ブレーキ装置20を作動させ、巻上機12の駆動を停止させる。
【0039】
通信装置40は、遠隔位置に設けられた監視センタ2と通信し、エレベーター装置10の運行状況を監視センタ2へ送信するための装置である。通信装置40は、制御装置30と有線または無線で接続されている。
【0040】
通信装置40は、制御装置30が過速度検出信号を取得すると、乗りかご11の速度が基準速度に達したことを知らせる情報を監視センタ2へ送信する。また、通信装置40は、誤動作検出部33の検出結果を監視センタ2へ送信する。なお、誤動作検出部33の検出結果を監視センタ2へ送信する際、通信装置40は、速度計測部32が計測した乗りかご11の速度に関する情報を併せて監視センタ2へ送信してもよい。
【0041】
また、通信装置40は、監視センタ2から情報を取得し、当該情報を制御装置30へ送信してもよい。監視センタ2から取得する情報としては、例えば、救出運転開始の指令や、救出運転時の乗りかご11の速度・行先に関する情報が挙げられる。
【0042】
次に、図3を参照しながら、本実施形態のエレベーターシステム1の処理手順について説明する。図3は、エレベーターシステム1の動作を示すフローチャートであり、制御装置30の処理手順が示されている。ここでは、制御装置30が、監視センタ2からの指令を受信せずに、救出運転を行う場合を例示する。
【0043】
図3に示すように、制御装置30は、調速機13から乗りかご11の速度が基準速度V1に達したことを検出した信号(過速度検出信号)を取得する(ステップS1:Yes)。すると、制御装置30は、過速度検出信号を取得した時点から乗りかご11の加速度を加速度センサ25から取得を開始する(ステップS2)。その直後、制御装置30は、ブレーキ装置20を作動させ、巻上機12の駆動を停止させる(ステップS3)。制御装置30は、巻上機12の駆動が停止し、乗りかご11の移動が完全に停止されるまでの間、乗りかご11の加速度を加速度センサ25から取得する。なお、制御装置30は、ブレーキ装置20を作動させる際、乗客に対して、乗りかご11の内部に設けられたモニタ、スピーカ等を通じて、乗りかご11が停止することを知らせてもよい。
【0044】
その後、制御装置30は、取得した乗りかご11の加速度データを用いて過速度検出信号を取得した時点における、乗りかご11の速度を算出する(ステップS4)。そして、ステップS5において、制御装置30は、算出した速度と予め定められた基準速度V1とを比較することにより、調速機13が誤動作したか否かを判定する。上記の算出した速度が、基準速度V1よりも小さい場合、制御装置30は、調速機13の誤動作があると判定する(ステップS5:Yes)。一方、算出した速度が基準速度V1以上の場合、すなわち調速機13の誤動作がない場合(ステップS5:No)、実際に過速が生じているため、エレベーター装置10に何らかの異常が生じている可能性がある。よって、乗客の安全を確保した上で、後述のステップS6からステップS11の救出運転を行うことが困難であるため、本フローを終了する。
【0045】
次に、調速機13の誤動作である場合、制御装置30は、救出運転を行う(ステップS6)。より詳細には、制御装置30は、電気スイッチ24を含む安全装置の回路を短絡させ、無効化した後、ブレーキ装置20を解除する。そして、巻上機12の駆動を制御することで、乗りかご11を最寄りの階の着床位置へ移動させる。なお、救出運転を行う際、乗客に対して、乗りかご11の内部に設けられたモニタ、スピーカ等を通じて、救出運転を開始することを知らせてもよい。
【0046】
救出運転中において、制御装置30は、乗りかご11の加速度を加速度センサ25から取得する(ステップS7)。そして、取得した乗りかご11の加速度に基づき、救出運転中の乗りかご11の速度を算出する(ステップS8)。
【0047】
次に、ステップS9において、上記の算出した速度と予め定められた異常速度V2とを比較する。ここで、算出した速度が異常速度V2未満の場合(ステップS9:Yes)、救出運転が正常に行われているため、救出運転を継続する。一方、算出した速度が異常速度V2以上の場合、救出運転中において過速が生じている。そのため、制御装置30は、ブレーキ装置20を作動させ(ステップS10)、救出運転を停止する。
【0048】
救出運転中において、乗りかご11の速度が異常速度V2未満の場合、制御装置30は、ステップS11において、救出運転が完了したか、すなわち、乗りかご11が最寄りの階の着床位置へ移動したかを判定する。救出運転が完了していない場合(ステップS11:No)、ステップS7に戻り、乗りかご11の速度を監視しつつ、救出運転を継続する。一方、救出運転が完了した場合(ステップS11:Yes)、本フローを終了する。
【0049】
[第2実施形態]
次に、図4および図5を参照しながら、第2実施形態のエレベーター装置10を備えるエレベーターシステム1について詳細に説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態と同一の作用効果および変形例についての記載を省略し、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0050】
図4は、調速機13により乗りかご11の過速が検出され、ブレーキ装置20が作動した場合における、乗りかご11の実際の速度変化の一例を模式的に示す図である。また、図5は、本実施形態のエレベーターシステム1の動作を示すフローチャートであり、制御装置30の処理手順が示されている。詳しくは後述するが、本実施形態では、速度計測部32による乗りかご11の速度の算出方法が、第1実施形態と異なる。
【0051】
図4に示すように、ブレーキ装置20が作動すると、乗りかご11は減速し、やがて完全に停止する。しかしながら、加速度センサ25のゼロ点が正常状態と異なっていると、乗りかご11が完全に停止しているにもかかわらず、加速度センサ25は、乗りかご11の加速度を検出してしまう場合がある。また、加速度センサ25のゼロ点が正常状態と異なっていると、乗りかご11が動いているのに、加速度センサ25が乗りかご11の停止を検出してしまう場合もある。その場合、調速機13の誤動作を正確に判断することが困難であるため、加速度センサ25のゼロ点を補正する必要がある。
【0052】
図5に、加速度センサ25のゼロ点の補正を考慮した制御装置30の処理手順を示す。図3に示すフローと同様に、ここでは、制御装置30が、監視センタ2からの指令を受信せずに、救出運転を行う場合を例示する。
【0053】
図5に示すように、制御装置30は、調速機13から乗りかご11の速度が基準速度V1に達したことを検出した信号(過速度検出信号)を取得する(ステップS21:Yes)。すると、制御装置30は、過速度検出信号を取得した時点から乗りかご11の加速度を加速度センサ25から取得を開始する(ステップS22)。その直後、制御装置30は、ブレーキ装置20を作動させ、巻上機12の駆動を停止させる(ステップS23)。制御装置30は、巻上機12の駆動が停止し、乗りかご11の移動が完全に停止されるまでの間、乗りかご11の加速度を加速度センサ25から取得する。
【0054】
乗りかご11の完全停止は、ブレーキ装置20を作動させてから指定の時間経過したことから判断する。その他にも、加速度センサ25の値が一定時間指定の変化量以内に収まっていることから判断しても良いし、巻上機12に設けられた回転位置センサ(図示せず)において判断しても良い。制御装置30は、例えば、回転位置センサから乗りかご11の完全停止時点を取得してから、加速度センサ25からゼロ点を取得するまでの時間をオフセット値として取得する(ステップS24)。
【0055】
そして、ステップS25において、取得したオフセット値が、予め定められた範囲内か否かを判定する。取得したオフセット値が予め定められた範囲内でない場合(ステップS25:No)、つまり、乗りかご11が停止しているにも関わらず、一定量の加速度が検出されている場合、加速度センサ25に異常が生じている可能性がある。よって、乗客の安全を確保した上で、救出運転中を行うことが困難であるため、本フローを終了する。なお、加速度センサ25に異常が生じている可能性がある場合、制御装置30は、当該異常を知らせる情報を監視センタ2へ送信してもよい。
【0056】
一方、取得したオフセット値が予め定められた範囲内である場合(ステップS25:Yes)、過速度検出信号を取得した時点における乗りかご11の加速度のデータについて、上記のオフセット値に基づきオフセット補正を行う。そして、オフセット補正後の加速度データに基づき、過速度検出信号を取得した時点における、乗りかご11の速度を算出する(ステップS26)。
【0057】
そして、図3に示すフローと同様に、制御装置30は、算出した速度と予め定められた基準速度V1とを比較することにより、調速機13が誤動作したか否かを判定する(ステップS27)。上記で算出した速度が基準速度V1よりも小さい場合、制御装置30は、調速機13の誤動作であると判定する(ステップS27:Yes)。一方、算出した速度が基準速度V1以上の場合(ステップS27:No)、すなわち調速機13の誤動作でない場合、実際に過速が生じているため、本フローを終了する。
【0058】
次に、調速機13の誤動作がある場合、制御装置30は、救出運転を行う(ステップS28)。救出運転においては何か異常が発生した場合に、直ぐに乗りかご11を停止できるように通常運転時よりも低い速度で運転しても良い。そして、救出運転中において、制御装置30は、乗りかご11の加速度を加速度センサ25から取得する(ステップS29)。そして、制御装置30は、取得した乗りかご11の加速度に基づき、救出運転中の乗りかご11の速度を算出する(ステップS30)。この際、ステップS24で取得したオフセット値に基づきオフセット補正を行った後、乗りかご11の速度を算出することが好ましい。これにより、乗りかご11の速度を正確に算出することができる。その結果、乗客の安全をより確保した上で、救出運転中を行うことができる。
【0059】
次に、ステップS31において、上記の算出した速度と予め定められた救出運転時の乗りかご11の速度に応じた異常速度V2とを比較する。ここで算出した速度が異常速度V2未満の場合(ステップS31:Yes)、救出運転が正常に行われているため、救出運転を継続する。一方、算出した速度が異常速度V2以上の場合、救出運転中において過速が生じている。そのため、制御装置30は、ブレーキ装置20を作動させ(ステップS32)、救出運転を停止する。
【0060】
救出運転中において、乗りかご11の速度が異常速度V2未満の場合、制御装置30は、ステップS33において、救出運転が完了したか、すなわち、乗りかご11が最寄りの階の着床位置へ移動したかを判定する。救出運転が完了していない場合(ステップS33:No)、ステップS29に戻り、乗りかご11の速度を監視しつつ、救出運転を継続する。一方、救出運転が完了した場合(ステップS33:Yes)、本フローを終了する。
【0061】
[第3実施形態]
次に、図6および図7を参照しながら、第3実施形態のエレベーター装置10を備えるエレベーターシステム1について詳細に説明する。なお、第3実施形態は、第1実施形態と同一の作用効果および変形例についての記載を省略し、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0062】
図6は、本実施形態のエレベーターシステム1の構成を示すブロック図である。また、図7は、本実施形態のエレベーターシステム1の動作を示すフローチャートであり、制御装置30の処理手順が示されている。本実施形態では、加速度センサ25は、3軸方向の加速度を計測する加速度センサである。
【0063】
図6に示すように、本実施形態では、制御装置30は、運行制御部31、速度計測部32、誤動作検出部33、および救出運転部34に加え、異常検知部35を含む。
【0064】
異常検知部35は、加速度センサ25が計測する値に基づき、加速度センサ25の異常を検知する。より詳細には、異常検知部35は、加速度センサ25が計測した3軸方向の加速度のうち、乗りかご11の移動方向(上下方向)と直交する方向の加速度が、予め定められた所定の値よりも大きい場合に、加速度センサ25の異常を検知する。例えば、3軸の加速度センサのZ軸方向が、上下方向となるように配置される場合、乗りかご11の移動時のX軸方向、Y軸方向の加速度は、本来は0に近い値となる。そのため、異常検知部35は、X軸方向、Y軸方向の加速度が、予め定められた所定値以上である場合、加速度センサ25に異常が生じていると判断する。
【0065】
図7に、加速度センサ25の異常検知を考慮した制御装置30の処理手順を示す。図3に示すフローと同様に、ここでは、制御装置30が、監視センタ2からの指令を受信せずに、救出運転を行う場合を例示する。また、本実施形態では、3軸の加速度センサのZ軸方向が、乗りかご11の移動方向と一致するように配置されている。
【0066】
図7に示すように、制御装置30は、調速機13から乗りかご11の速度が基準速度V1に達したことを検出した信号(過速度検出信号)を取得する(ステップS41:Yes)。すると、制御装置30は、過速度検出信号を取得した時点から乗りかご11の加速度を加速度センサ25から取得を開始する(ステップS42)。その直後、制御装置30は、ブレーキ装置20を作動させ、巻上機12の駆動を停止させる(ステップS43)。制御装置30は、巻上機12の駆動が停止し、乗りかご11の移動が完全に停止されるまでの間、乗りかご11の加速度を加速度センサ25から取得する。
【0067】
その後、制御装置30は、取得した乗りかご11の加速度データを用いて過速度検出信号を取得した時点における、乗りかご11の速度を算出する(ステップS44)。そして、ステップS45において、制御装置30は、算出した速度と予め定められた基準速度V1とを比較することにより、調速機13が誤動作したか否かを判定する。算出した速度が基準速度V1よりも小さい場合、制御装置30は、調速機13の誤動作があると判定する(ステップS45:Yes)。一方、算出した速度が基準速度V1以上の場合、すなわち調速機13の誤動作がない場合(ステップS45:No)、実際に過速が生じているため、本フローを終了する。
【0068】
次に、調速機13の誤動作がある場合、制御装置30は、救出運転を行う(ステップS46)。そして、救出運転中において、制御装置30は、乗りかご11の3軸方向の加速度を加速度センサ25から取得する(ステップS47)。
【0069】
次に、ステップS48において、乗りかご11の移動方向(Z軸方向)と直交する方向(X軸方向およびY軸方向)の加速度が、予め定められた所定の値以下であるか否か判定する。X軸方向およびY軸方向の加速度が、予め定められた所定の値以下の場合(ステップS48:Yes)、加速度センサ25に異常が生じていないため、ステップS49に進む。一方、X軸方向およびY軸方向の加速度が、予め定められた所定の値よりも大きい場合(ステップS48:No)、加速度センサ25に配置ずれ等の異常が生じている可能性がある。よって、乗客の安全を確保した上で、救出運転を行うことが困難である。そのため、ブレーキ装置20を作動させ、救出運転を停止する(ステップS51)。なお、加速度センサ25に異常が生じている可能性がある場合、制御装置30は、当該異常を知らせる情報を監視センタ2へ送信してもよい。
【0070】
次に、ステップS49において、制御装置30は、加速度センサ25から取得した加速度に基づき、救出運転中の乗りかご11の速度を算出する。なお、制御装置30は、Z軸方向の加速度のみを用いて乗りかご11の速度を算出してもよいし、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の加速度から合成加速度を算出し、当該合成加速度を時間で積分することにより、乗りかご11の速度を算出してもよい。この場合、加速度センサ25のZ軸方向と上下方向とが、厳密に一致していない場合においても、乗りかご11の速度を正確に算出することができる。なお、以降のフローは、図3に示す第1実施形態のフローと同様である。
【0071】
なお、上記の実施形態は、本開示の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上記の実施形態では、乗りかご11に設けられた加速度センサ25の計測値に基づき、乗りかご11の速度を計測しているが、これに限定されない。例えば、昇降路14の側に磁気または明暗が周期的に変化する磁気テープまたはIDテープ等を設け、乗りかご11に当該テープを読み取る読み取り装置である位置センサを設けることで、乗りかご11の位置を検出する。そして、検出した位置に関する情報に基づき、時間微分を用いて、乗りかご11の速度を算出してもよい。また、調速機13にエンコーダ式の回転位置センサを設けて回転位置センサの出力情報に基づき、時間微分を用いて、乗りかご11の速度を算出してもよい。また、昇降路14の側にレールを設けて、乗りかご11に同期して移動するローラをレールに押し付けて回転させ、その回転位置をエンコーダ式の回転位置センサで検出し、回転位置センサの出力から乗りかご11の速度を算出してもよい。または、上記の各位置センサの出力から乗りかご11の速度を計測する速度センサを設けて、その速度センサの計測値が制御装置30に出力されてもよい。この場合、過速度検出部により乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出した場合に乗りかご11の速度を計測する速度計測部32は、速度センサと、制御装置30に設けられ速度センサの計測値を取得する速度取得部とから構成されてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、エレベーター装置10は、1つの加速度センサ25を有しているが、複数の加速度センサ25を有していてもよい。そして、制御装置30は、複数の加速度センサ25が計測する乗りかご11の加速度の平均値、または中央値を用いて乗りかご11の速度を算出してもよい。これにより、乗りかご11の速度の計測精度を高くできる。
【0073】
また、救出運転中において、複数の加速度センサ25の計測値のばらつき(例えば、最大値と最小値の差分)が、予め定められた所定値以上である場合、制御装置30は、ブレーキ装置20を作動させ、救出運転を停止してもよい。複数の加速度センサ25の計測値のばらつきが、予め定められた所定値以上である場合、加速度センサ25に異常が生じている可能性がある。よって、上記の場合に救出運転を停止することで、乗客の安全をより確保することができる。同様に、上記の位置センサまたは速度センサが複数設けられ、複数の位置センサまたは速度センサの計測値のばらつきが、予め定められた所定値以上である場合、制御装置30は、ブレーキ装置20を作動させ、救出運転を停止してもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、調速機13に設けられた電気スイッチ24により、乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出しているが、これに限定されない。例えば、調速機13に光学式または磁気式の回転位置センサを設け、調速機13の回転角度を検出し、当該回転角度の時間変化に基づき、乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出してもよい。また、乗りかご11の速度が基準速度に達したことを検出するための構成として、電気スイッチ24と、上記の調速機13に設けられた回転位置センサとを併用してもよい。
【0075】
また、乗りかご11の内部に乗客の有無を検知するカメラ、センサ等を設け、乗りかご11内部に乗客が存在する場合のみ、救出運転を行ってもよい。換言すると、乗りかご11内部に乗客が存在しない場合は、調速機13の誤動作を検出せず、救出運転を行わなくてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 エレベーターシステム、2 監視センタ、10 エレベーター装置、11 乗りかご、12 巻上機、13 調速機、14 昇降路、15 かご扉、16 乗場扉、17 機械室、18 主ロープ、19 釣り合い錘、20 ブレーキ装置、21 調速機ロープ、22 調速車、23 張り車、24 電気スイッチ、25 加速度センサ、30 制御装置、31 運行制御部、32 速度計測部、33 誤動作検出部、34 救出運転部、35 異常検知部、40 通信装置
【要約】
本発明に係るエレベーター装置(10)は、昇降路を移動する乗りかご(11)と、乗りかご(11)の速度が基準速度に達したことを検出する過速度検出部と、乗りかご(11)の移動に制動力を加える制動部と、過速度検出部の誤動作を検出する誤動作検出部と、過速度検出部が、乗りかご(11)の速度が基準速度に達したことを検出した場合、乗りかご(11)の速度を計測する速度計測部と、誤動作検出部が、過速度検出部の誤動作を検出した場合、救出運転を行う救出運転部と、を備え、救出運転時において、速度計測部が、乗りかご(11)の速度が異常速度に達したことを検出した場合、制動部により、乗りかご(11)の移動に制動力を加えることを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7