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特許7580685カーボンリサイクルコンビナート運営システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】カーボンリサイクルコンビナート運営システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/30 20230101AFI20241105BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20241105BHJP
【FI】
G06Q10/30
G06Q50/04
【請求項の数】 42
(21)【出願番号】P 2021001475
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022007936
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2020101136
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020129267
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502053100
【氏名又は名称】コンビナート高度統合運営技術研究組合
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 久光
(72)【発明者】
【氏名】西塚 隆
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 勝美
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-063245(JP,A)
【文献】国際公開第2012/046290(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/114703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の企業体で構成されるコンビナートにおいて生成される二酸化炭素をリサイクルするためのカーボンリサイクルコンビナート運営システムであって、
前記コンビナートを構成する前記複数の企業体は、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給企業体と二酸化炭素を受け入れる二酸化炭素受入企業体との組み合わせ、並びに水素を供給する水素供給企業体と水素を受入れる水素受入企業体との組み合わせの少なくともいずれかの組み合わせを含み、
前記カーボンリサイクルコンビナート運営システムは、
前記複数の企業体間に接続された情報ネットワークと、
前記情報ネットワークを介して接続された複数の端末及びサーバと、
前記二酸化炭素供給企業体と前記二酸化炭素受入企業体とを連結する二酸化炭素共通配管と、
前記水素供給企業体と前記水素受入企業体とを連結する水素共通配管と、
前記二酸化炭素供給企業体に設置され、前記二酸化炭素共通配管に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、
前記二酸化炭素受入企業体に設置され、前記二酸化炭素共通配管から二酸化炭素を受け入れる二酸化炭素受入装置と、
前記水素供給企業体に設置され、前記水素共通配管に水素を供給する水素供給装置と、
前記水素受入企業体に設置され、前記水素共通配管から水素を受け入れる水素受入装置と、
前記二酸化炭素受入企業体及び前記水素受入企業体の少なくともいずれか、かつカーボンリサイクルを実施する企業体に設置され、二酸化炭素をリサイクルするためのカーボンリサイクル装置と、を備え、
前記二酸化炭素供給装置は、
前記二酸化炭素供給企業体で生成した二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、
前記二酸化炭素共通配管との第1供給口に接続され、二酸化炭素の供給を制御する二酸化炭素供給制御手段と、を有し、
前記二酸化炭素受入装置は、
前記二酸化炭素共通配管との第1受入口に接続され、二酸化炭素の受入を制御する二酸化炭素受入制御手段を有し、
前記水素供給装置は、
前記水素供給企業体で生成した水素を回収する水素回収装置と、前記水素共通配管との第2供給口に接続され、水素の供給を制御する水素供給制御手段と、を有し、
前記水素受入装置は、
前記水素共通配管との第2受入口に接続され、水素の受入を制御する水素受入制御手段を有し、
前記カーボンリサイクル装置は、
前記二酸化炭素受入装置及び前記水素受入装置の少なくともいずれかと接続され、受入れた二酸化炭素及び水素の少なくともいずれかを原料として、カーボンリサイクルを実施する装置であり、
前記端末は、前記コンビナートを構成する前記複数の企業体に設置され、前記二酸化炭素供給制御手段、前記二酸化炭素受入制御手段、前記水素供給制御手段及び前記水素受入制御手段の少なくともいずれかと接続され、
前記端末は、
カーボンリサイクルに使用する予定の二酸化炭素の使用予定量、及び水素の使用予定量の少なくともいずれかの使用予定情報を入力する入力手段と、
前記使用予定情報と、前記二酸化炭素供給制御手段及び前記水素供給制御手段の少なくともいずれかから受信した供給情報と、前記二酸化炭素受入制御手段及び前記水素受入制御手段から送信された受入情報と、を前記サーバに送信する端末送信手段と、を有し、
前記サーバは、
前記端末送信手段により送信された前記使用予定情報、前記供給情報及び前記受入情報を記憶する記憶手段と、
前記使用予定情報、前記供給情報及び前記受入情報を前記記憶手段にそれぞれ記憶させる書込手段と、
前記記憶手段に記憶された前記使用予定情報、前記供給情報及び前記受入情報を、前記コンビナートを構成する前記複数の企業体に報知する報知手段と、
前記受入情報に基づいて、前記二酸化炭素供給制御手段による二酸化炭素の供給を制御するための二酸化炭素供給制御情報、及び前記水素供給制御手段による水素の供給を制御するための水素供給制御情報を生成する計算手段と、
前記二酸化炭素供給制御情報を前記二酸化炭素供給制御手段に送信し、前記水素供給制御情報を前記水素供給制御手段に送信するサーバ送信手段と、を有し、
前記二酸化炭素供給制御手段は、前記二酸化炭素供給制御情報に基づいて、前記二酸化炭素共通配管へ供給する二酸化炭素を制御し、
前記水素供給制御手段は、前記水素供給制御情報に基づいて、前記水素共通配管へ供給する水素を制御する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項2】
請求項1に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記コンビナートは、前記二酸化炭素供給企業体及び前記二酸化炭素受入企業体を含み、
前記二酸化炭素供給制御手段は、
二酸化炭素を圧縮して前記二酸化炭素共通配管内へ送る二酸化炭素圧縮機、
前記二酸化炭素共通配管内への二酸化炭素の供給を制御する第1供給バルブ、
前記二酸化炭素共通配管へ供給する二酸化炭素の圧力を検出する第1供給圧力計、及び
前記二酸化炭素共通配管へ供給する二酸化炭素の流量を検出する第1供給流量計、を有し、
前記二酸化炭素受入制御手段は、
前記二酸化炭素共通配管から二酸化炭素の受入れを制御する第1受入バルブ、
前記二酸化炭素共通配管から受入れる二酸化炭素の圧力を検出する第1受入圧力計、及び
前記二酸化炭素共通配管から受入れる二酸化炭素の流量を検出する第1受入流量計を有する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項3】
請求項2に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記二酸化炭素供給制御手段は、前記二酸化炭素共通配管へ供給する二酸化炭素の温度を検出する第1供給温度計をさらに有し、
前記二酸化炭素受入制御手段は、前記二酸化炭素共通配管から受入れる二酸化炭素の温度を検出する第1受入温度計をさらに有する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記二酸化炭素供給制御手段は、前記二酸化炭素供給制御情報に基づいて前記二酸化炭素共通配管内の圧力を一定に維持するように、前記二酸化炭素圧縮機の送気圧力を制御する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記端末は、前記二酸化炭素回収装置とも接続され、
前記サーバ送信手段は、前記二酸化炭素供給制御情報を前記二酸化炭素回収装置にも送信し、
前記二酸化炭素回収装置は、前記二酸化炭素供給制御情報に基づいて、常時、前記二酸化炭素回収装置の稼働状態を制御する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項6】
請求項5に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記二酸化炭素回収装置は、前記二酸化炭素供給制御情報に基づいて、前記二酸化炭素共通配管内の圧力を一定に維持するように、前記二酸化炭素回収装置の稼働状態を制御する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記コンビナートは、前記水素供給企業体及び前記水素受入企業体を含み、
前記水素供給制御手段は、
水素を圧縮して前記水素共通配管内へ送る水素圧縮機、
前記水素共通配管内への水素の供給を制御する第2供給バルブ、
前記水素共通配管へ供給する水素の圧力を検出する第2供給圧力計、及び
前記水素共通配管へ供給する水素の流量を検出する第2供給流量計と、を有し、
前記水素受入制御手段は、
前記水素共通配管から水素の受入れを制御する第2受入バルブ、
前記水素共通配管から受入れる水素の圧力を検出する第2受入圧力計、及び
前記水素共通配管から受入れる水素の流量を検出する第2受入流量計を有する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項8】
請求項7に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記水素供給制御手段は、前記水素共通配管へ供給する水素の温度を検出する第2供給温度計をさらに有し、
前記水素受入制御手段は、前記水素共通配管から受入れる水素の温度を検出する第2受入温度計をさらに有する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記水素供給制御手段は、前記水素供給制御情報に基づいて前記水素共通配管内の圧力を一定に維持するように、常時、前記水素圧縮機の送気圧力を制御する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記水素受入制御手段は、前記第2受入圧力計で検出した圧力及び前記第2受入流量計で検出した流量を、常時、前記水素回収装置に送信する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記端末は、前記水素回収装置とも接続され、
前記サーバ送信手段は、前記水素供給制御情報を前記水素回収装置にも送信し、
前記水素回収装置は、前記水素供給制御情報に基づいて、常時、前記水素回収装置の稼働状態を制御する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項12】
請求項11に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記水素供給企業体の少なくともいずれかが、水素を輸入する水素輸入基地を有し、
前記水素輸入基地は、前記水素回収装置と接続され、
前記端末の端末送信手段は、前記水素輸入基地が輸入した輸入水素量のうち、前記水素共通配管に供給された前記輸入水素量に関する情報を前記供給情報として、前記サーバに送信する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記水素回収装置は、前記水素供給制御情報に基づいて、水素共通配管内の圧力を一定に維持するように、前記水素回収装置の稼働状態を制御する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記コンビナートを構成する前記複数の企業体のうち少なくともいずれかの企業体が、水素を供給できる前記水素供給企業体であるとともに、水素を受入れることのできる前記水素受入企業体である、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記水素受入企業体のうち少なくともいずれかの企業体が、複数のカーボンリサイクル装置を有し、
前記水素受入装置は、前記水素共通配管から受入れた水素を前記複数のカーボンリサイクル装置に分岐させて供給するための複数の分岐配管を有する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
複数の前記カーボンリサイクル装置を有する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素及び水素を原料としてメタノール、メタン、パラキシレン及びジメチルエーテルの少なくともいずれかを製造する装置を含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素及び水素を原料として、メタノールを直接、製造する装置及びパラキシレンを直接、製造する装置の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したメタノール及びジメチルエーテルの少なくともいずれかを原料として、C1化学製品を製造する装置、並びにパラキシレンを直接、製造する装置の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したメタノールを原料として、ホルムアルデヒドを製造する装置又は酢酸を製造する装置の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項21】
請求項1から請求項20のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したメタノールを原料として、オレフィンを製造する装置を含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項22】
請求項1から請求項21のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したジメチルエーテルを原料として、エチレンを製造する装置を含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項23】
請求項1から請求項22のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素を原料として、含酸素化合物を製造する装置の少なくとも1種を含み、
前記含酸素化合物は、ポリカーボネート、尿素、サリチル酸、パラヒドロキシ安息香酸カリウム、酢酸、炭酸ナトリウム及びメチオニンからなる群から選択される少なくともいずれかの化合物である、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項24】
請求項1から請求項23のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素を液化する装置及び二酸化炭素を原料とする強化コンクリートを製造する装置の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項25】
請求項1から請求項24のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素及びエチレンを原料として、高吸水性樹脂を製造する装置を含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項26】
請求項1から請求項25のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記水素供給装置は、グリーン水素を製造するグリーン水素製造装置及びカーボンフリー水素輸入基地の少なくともいずれかをさらに有し、
前記水素供給装置は、前記グリーン水素製造装置で製造した製造グリーン水素及び前記カーボンフリー水素輸入基地で輸入した輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかを前記水素共通配管へ供給する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項27】
請求項26に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記端末送信手段は、前記水素共通配管へ供給した前記製造グリーン水素の製造グリーン水素供給情報、及び前記水素共通配管へ供給した輸入カーボンフリー水素の輸入カーボンフリー水素供給情報の少なくともいずれかを前記サーバに送信し、
前記サーバの前記記憶手段は、前記製造グリーン水素供給情報及び前記輸入カーボンフリー水素供給情報を記憶し、
前記報知手段は、前記記憶手段に記憶された前記製造グリーン水素供給情報及び前記輸入カーボンフリー水素供給情報の少なくともいずれかを、前記コンビナートを構成する前記複数の企業体に報知する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項28】
請求項27に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記水素受入装置は、前記水素共通配管から受入れて前記カーボンリサイクル装置に供給した製造グリーン水素量及び輸入カーボンフリー水素量の少なくともいずれかを含む合計カーボンフリー水素量を前記水素受入制御手段にて検出させて、前記合計カーボンフリー水素量を前記サーバに送信し、
前記記憶手段は、前記合計カーボンフリー水素量を記憶し、
前記計算手段は、前記カーボンリサイクル装置にて二酸化炭素をリサイクルして得たカーボンリサイクル製品中の、前記合計カーボンフリー水素量の質量割合を計算する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項29】
請求項26から請求項28のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、前記製造グリーン水素及び前記輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかと、二酸化炭素とを原料として、
カーボンフリーメタノールを製造する装置、
カーボンフリージメチルエーテルを製造する装置、及び
直接、パラキシレンを製造する装置の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項30】
請求項29に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、前記カーボンフリーメタノール、及び前記カーボンフリージメチルエーテルの少なくともいずれかを原料として、C1化学製品を製造する装置含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項31】
請求項29又は請求項30に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、前記カーボンフリーメタノールを原料として、ホルムアルデヒドを製造する装置又は酢酸を製造する装置の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項32】
請求項29から請求項31のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、前記カーボンフリーメタノールを原料として、オレフィンを製造する装置を含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項33】
請求項29から請求項32のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、前記カーボンフリージメチルエーテルを原料として、エチレンを製造する装置を含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項34】
請求項26から請求項33のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、前記製造グリーン水素及び前記輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかと、二酸化炭素とを原料として、e-fuelを製造する装置を含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項35】
請求項26から請求項34のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクル装置は、前記製造グリーン水素及び前記輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかと、二酸化炭素とを原料として、グリーンメタンを製造する装置を含む、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項36】
請求項1から請求項35のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記二酸化炭素受入装置は、前記二酸化炭素共通配管から受入れて前記カーボンリサイクル装置に供給した二酸化炭素量を前記二酸化炭素受入制御手段にて検出させて、前記二酸化炭素量を前記サーバに送信し、
前記記憶手段は、前記二酸化炭素量を記憶し、
前記計算手段は、回収した二酸化炭素を用いて前記カーボンリサイクル装置にて製造したカーボンリサイクル製品中の、前記二酸化炭素量の質量割合を計算する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項37】
請求項1から請求項36のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記サーバの前記計算手段は、前記二酸化炭素共通配管から受入れて使用した二酸化炭素の使用により生じる費用、及び前記水素共通配管から受入れて使用した水素の使用により生じる費用の少なくともいずれかを計算する費用計算手段を有する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項38】
請求項37に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記二酸化炭素受入装置は、前記受入情報として、前記二酸化炭素共通配管から受入れて使用した二酸化炭素の使用量を前記サーバへ送信し、
前記水素受入装置は、前記受入情報として、前記水素共通配管から受入れて使用した水素の使用量を前記サーバへ送信し、
前記記憶手段は、前記二酸化炭素の使用量及び前記水素の使用量を記憶し、
前記費用計算手段は、前記二酸化炭素の使用量及び前記水素の使用量に基づいて、費用を計算する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項39】
請求項37または請求項38に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記入力手段は、前記二酸化炭素供給企業体が前記二酸化炭素共通配管へ供給した二酸化炭素の製造コストの算出に用いる情報及び前記水素供給企業体が前記水素共通配管へ供給した水素の製造コストの算出に用いる情報の少なくともいずれかの製造コスト情報を入力し、
前記端末送信手段は、前記製造コスト情報を、前記サーバに送信し、
前記サーバの前記計算手段は、前記二酸化炭素の製造コストを算出する二酸化炭素製造コスト算出手段及び前記水素の製造コストに関する情報を算出する水素製造コスト算出手段の少なくともいずれかを有し、
前記二酸化炭素製造コスト算出手段は、前記二酸化炭素供給企業体のみが利用可能であり、
前記水素製造コスト算出手段は、前記水素供給企業体のみが利用可能であり、
前記費用計算手段は、前記二酸化炭素の使用量及び前記二酸化炭素の製造コストに基づいて、前記二酸化炭素受入企業体が使用した二酸化炭素の費用の算出及び前記水素の使用量及び前記水素の製造コストに基づいて、前記水素受入企業体が使用した水素の費用の算出の少なくともいずれかを実施する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項40】
請求項1から請求項39のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記カーボンリサイクルコンビナート運営システムは、
前記二酸化炭素供給企業体ではない複数の企業体で発生した排熱と、
前記二酸化炭素供給企業体内で発生した排熱と、を回収及び集約して、前記二酸化炭素回収装置へ供給するための排熱利用手段を有する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項41】
請求項40に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記排熱利用手段は、前記カーボンリサイクル装置の少なくともいずれかで発生した排熱を回収する、
ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【請求項42】
請求項1から請求項41のいずれか一項に記載のカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、
前記二酸化炭素共通配管は、前記コンビナート外の企業体から二酸化炭素の供給を受けるための外部受入口と、前記コンビナート外の企業体へ二酸化炭素を供給するための外部供給口と、を有する、
カーボンリサイクルコンビナート運営システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンリサイクルコンビナート運営システムに関する。
【背景技術】
【0002】
単一の機械装置、設備が集合し、相互に有機的に結合したコンビナートにおいて、原油を蒸留精製して得られる留分、輸入した留分、例えば、ナフサ留分は、クラッキングによりエチレン、プロピレンなどの石油化学製品の原料になる。また、コンビナートにおいて、石炭を主燃料としたボイラー発電による電力で輸入岩塩を電気分解して得られる塩素と、エチレンと、を原料として、塩化ビニルを生産する。
従来のコンビナートにおいて、製造した石油化学製品の原料は、パイプラインを通じて他社に移送されることにより、物流コストの低減を図っている。
例えば、特許文献1には、原料のパイプラインによる移送並びに生産された半製品の移送等以外の用役、具体的には、窒素及び酸素を共有化、一括管理して、在庫量の低減及び設備の有効利用を実現し、コスト低減を図るコンビナートにおける用役共有管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-062929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、コンビナートで発生する二酸化炭素をリサイクルする技術(カーボンリサイクル技術)について検討されている。
従来のコンビナートでは、石油化学製品の原料(エチレン等)や水素等のパイプラインによる移送や、生産された半製品の移送等については、合理化されているものの、カーボンリサイクルに必要な用役については、共有化されておらず、それぞれの企業体は、独自に必要な用役を調達し、企業体内で発生した二酸化炭素をカーボンリサイクルしている。
【0005】
また、企業体毎に、同一設備の運転、関連データ処理に人手を費やすことになるばかりか、各企業体が独自に、ある程度の在庫を抱える必要がある。そのため、各企業体は、余裕をもってこれら二酸化炭素の回収量、用役等を確保しなければならないから、貯留用の貯槽も必要になる。特に、気体状態の二酸化炭素及び水素は、リアルタイムな需給変動等に対してフレキシブルに追随するための自動化システム投資が各企業体に必要になる。
【0006】
また、これらカーボンリサイクルに係る二酸化炭素回収、水素供給、低温排熱確保、メタノール等のカーボンリサイクル製品の製造設備を各企業体が独自に備えても、自ら使用する目的生産物の製造のためにのみ稼働することになるので、小規模な供給設備、不足する設備(例えば、用役設備、貯留槽、入出荷設備等)の多くの新規増設を伴う。また、企業体毎にカーボンリサイクルのコストを低減するのに止まる。
【0007】
さらに、カーボンクレジット制度が確定した場合、各企業体は、煩雑なコスト計算を行うことになる。近隣企業体との二酸化炭素及び水素の少なくともいずれかの授受が生じる場合は、料金請求のための計算等の業務はさらに煩雑になる。
【0008】
本発明の目的は、カーボンリサイクルに係るコストを低減できるカーボンリサイクルコンビナート運営システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、複数の企業体で構成されるコンビナートにおいて生成される二酸化炭素をリサイクルするためのカーボンリサイクルコンビナート運営システムであって、前記コンビナートを構成する前記複数の企業体は、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給企業体と二酸化炭素を受け入れる二酸化炭素受入企業体との組み合わせ、並びに水素を供給する水素供給企業体と水素を受入れる水素受入企業体との組み合わせの少なくともいずれかの組み合わせを含み、前記カーボンリサイクルコンビナート運営システムは、前記複数の企業体間に接続された情報ネットワークと、前記情報ネットワークを介して接続された複数の端末及びサーバと、前記二酸化炭素供給企業体と前記二酸化炭素受入企業体とを連結する二酸化炭素共通配管と、前記水素供給企業体と前記水素受入企業体とを連結する水素共通配管と、前記二酸化炭素供給企業体に設置され、前記二酸化炭素共通配管に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、前記二酸化炭素受入企業体に設置され、前記二酸化炭素共通配管から二酸化炭素を受け入れる二酸化炭素受入装置と、前記水素供給企業体に設置され、前記水素共通配管に水素を供給する水素供給装置と、前記水素受入企業体に設置され、前記水素共通配管から水素を受け入れる水素受入装置と、前記二酸化炭素受入企業体及び前記水素受入企業体の少なくともいずれか、かつカーボンリサイクルを実施する企業体に設置され、二酸化炭素をリサイクルするためのカーボンリサイクル装置と、を備え、前記二酸化炭素供給装置は、前記二酸化炭素供給企業体で生成した二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、前記二酸化炭素共通配管との第1供給口に接続され、二酸化炭素の供給を制御する二酸化炭素供給制御手段と、を有し、前記二酸化炭素受入装置は、前記二酸化炭素共通配管との第1受入口に接続され、二酸化炭素の受入を制御する二酸化炭素受入制御手段を有し、前記水素供給装置は、前記水素供給企業体で生成した水素を回収する水素回収装置と、前記水素共通配管との第2供給口に接続され、水素の供給を制御する水素供給制御手段と、を有し、前記水素受入装置は、前記水素共通配管との第2受入口に接続され、水素の受入を制御する水素受入制御手段を有し、前記カーボンリサイクル装置は、前記二酸化炭素受入装置及び前記水素受入装置の少なくともいずれかと接続され、受入れた二酸化炭素及び水素の少なくともいずれかを原料として、カーボンリサイクルを実施する装置であり、前記端末は、前記コンビナートを構成する前記複数の企業体に設置され、前記二酸化炭素供給制御手段、前記二酸化炭素受入制御手段、前記水素供給制御手段及び前記水素受入制御手段の少なくともいずれかと接続され、前記端末は、カーボンリサイクルに使用する予定の二酸化炭素の使用予定量、及び水素の使用予定量の少なくともいずれかの使用予定情報を入力する入力手段と、前記使用予定情報と、前記二酸化炭素供給制御手段及び前記水素供給制御手段の少なくともいずれかから受信した供給情報と、前記二酸化炭素受入制御手段及び前記水素受入制御手段から送信された受入情報と、を前記サーバに送信する端末送信手段と、を有し、前記サーバは、前記端末送信手段により送信された前記使用予定情報、前記供給情報及び前記受入情報を記憶する記憶手段と、前記使用予定情報、前記供給情報及び前記受入情報を前記記憶手段にそれぞれ記憶させる書込手段と、前記記憶手段に記憶された前記使用予定情報、前記供給情報及び前記受入情報を、前記コンビナートを構成する前記複数の企業体に報知する報知手段と、前記受入情報に基づいて、前記二酸化炭素供給制御手段による二酸化炭素の供給を制御するための二酸化炭素供給制御情報、及び前記水素供給制御手段による水素の供給を制御するための水素供給制御情報を生成する計算手段と、前記二酸化炭素供給制御情報を前記二酸化炭素供給制御手段に送信し、前記水素供給制御情報を前記水素供給制御手段に送信するサーバ送信手段と、を有し、前記二酸化炭素供給制御手段は、前記二酸化炭素供給制御情報に基づいて、前記二酸化炭素共通配管へ供給する二酸化炭素を制御し、前記水素供給制御手段は、前記水素供給制御情報に基づいて、前記水素共通配管へ供給する水素を制御する、ことを特徴とするカーボンリサイクルコンビナート運営システムが提供される。
【0010】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記コンビナートは、前記二酸化炭素供給企業体及び前記二酸化炭素受入企業体を含み、前記二酸化炭素供給制御手段は、二酸化炭素を圧縮して前記二酸化炭素共通配管内へ送る二酸化炭素圧縮機、前記二酸化炭素共通配管内への二酸化炭素の供給を制御する第1供給バルブ、前記二酸化炭素共通配管へ供給する二酸化炭素の圧力を検出する第1供給圧力計、及び前記二酸化炭素共通配管へ供給する二酸化炭素の流量を検出する第1供給流量計、を有し、前記二酸化炭素受入制御手段は、前記二酸化炭素共通配管から二酸化炭素の受入れを制御する第1受入バルブ、前記二酸化炭素共通配管から受入れる二酸化炭素の圧力を検出する第1受入圧力計、及び前記二酸化炭素共通配管から受入れる二酸化炭素の流量を検出する第1受入流量計を有することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記二酸化炭素供給制御手段は、前記二酸化炭素共通配管へ供給する二酸化炭素の温度を検出する第1供給温度計をさらに有し、前記二酸化炭素受入制御手段は、前記二酸化炭素共通配管から受入れる二酸化炭素の温度を検出する第1受入温度計をさらに有することが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記二酸化炭素供給制御手段は、前記二酸化炭素供給制御情報に基づいて前記二酸化炭素共通配管内の圧力を一定に維持するように、前記二酸化炭素圧縮機の送気圧力を制御することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記端末は、前記二酸化炭素回収装置とも接続され、前記サーバ送信手段は、前記二酸化炭素供給制御情報を前記二酸化炭素回収装置にも送信し、前記二酸化炭素回収装置は、前記二酸化炭素供給制御情報に基づいて、常時、前記二酸化炭素回収装置の稼働状態を制御することが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記二酸化炭素回収装置は、前記二酸化炭素供給制御情報に基づいて、前記二酸化炭素共通配管内の圧力を一定に維持するように、前記二酸化炭素回収装置の稼働状態を制御することが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記コンビナートは、前記水素供給企業体及び前記水素受入企業体を含み、前記水素供給制御手段は、水素を圧縮して前記水素共通配管内へ送る水素圧縮機、前記水素共通配管内への水素の供給を制御する第2供給バルブ、前記水素共通配管へ供給する水素の圧力を検出する第2供給圧力計、及び前記水素共通配管へ供給する水素の流量を検出する第2供給流量計と、を有し、前記水素受入制御手段は、前記水素共通配管から水素の受入れを制御する第2受入バルブ、前記水素共通配管から受入れる水素の圧力を検出する第2受入圧力計、及び前記水素共通配管から受入れる水素の流量を検出する第2受入流量計を有することが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記水素供給制御手段は、前記水素共通配管へ供給する水素の温度を検出する第2供給温度計をさらに有し、前記水素受入制御手段は、前記水素共通配管から受入れる水素の温度を検出する第2受入温度計をさらに有することが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記水素供給制御手段は、前記水素供給制御情報に基づいて前記水素共通配管内の圧力を一定に維持するように、常時、前記水素圧縮機の送気圧力を制御することが好ましい。
【0018】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記水素受入制御手段は、前記第2受入圧力計で検出した圧力及び前記第2受入流量計で検出した流量を、常時、前記水素回収装置に送信することが好ましい。
【0019】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記端末は、前記水素回収装置とも接続され、前記サーバ送信手段は、前記水素供給制御情報を前記水素回収装置にも送信し、前記水素回収装置は、前記水素供給制御情報に基づいて、常時、前記水素回収装置の稼働状態を制御することが好ましい。
【0020】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記水素供給企業体の少なくともいずれかが、水素を輸入する水素輸入基地を有し、前記水素輸入基地は、前記水素回収装置と接続され、前記端末の端末送信手段は、前記水素輸入基地が輸入した輸入水素量のうち、前記水素共通配管に供給された前記輸入水素量に関する情報を前記供給情報として、前記サーバに送信することが好ましい。
【0021】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記水素回収装置は、前記水素供給制御情報に基づいて、前記水素共通配管内の圧力を一定に維持するように、前記水素回収装置の稼働状態を制御することが好ましい。
【0022】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記コンビナートを構成する前記複数の企業体のうち少なくともいずれかの企業体が、水素を供給できる前記水素供給企業体であるとともに、水素を受入れることのできる前記水素受入企業体であることが好ましい。
【0023】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記水素受入企業体のうち少なくともいずれかの企業体が、複数のカーボンリサイクル装置を有し、前記水素受入装置は、前記水素共通配管から受入れた水素を前記複数のカーボンリサイクル装置に分岐させて供給するための複数の分岐配管を有することが好ましい。
【0024】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、複数の前記カーボンリサイクル装置を有することが好ましい。
【0025】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素及び水素を原料としてメタノール、メタン、パラキシレン及びジメチルエーテルの少なくともいずれかを製造する装置を含むことが好ましい。
【0026】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素及び水素を原料として、メタノールを直接、製造する装置及びパラキシレンを直接、製造する装置の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0027】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したメタノール及びジメチルエーテルの少なくともいずれかを原料として、C1化学製品を製造する装置、並びにパラキシレンを直接、製造する装置の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0028】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したメタノールを原料として、
ホルムアルデヒドを製造する装置又は酢酸を製造する装置の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0029】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したメタノールを原料として、オレフィンを製造する装置を含むことが好ましい。
【0030】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したジメチルエーテルを原料として、エチレンを製造する装置を含むことが好ましい。
【0031】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素を原料として、含酸素化合物を製造する装置の少なくとも1種を含み、前記含酸素化合物は、ポリカーボネート、尿素、サリチル酸、パラヒドロキシ安息香酸カリウム、酢酸、炭酸ナトリウム及びメチオニンからなる群から選択される少なくともいずれかの化合物であることが好ましい。
【0032】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素を液化する装置及び二酸化炭素を原料とする強化コンクリートを製造する装置の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0033】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素及びエチレンを原料として、高吸水性樹脂を製造する装置を含むことが好ましい。
【0034】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記水素供給装置は、グリーン水素を製造するグリーン水素製造装置及びカーボンフリー水素輸入基地の少なくともいずれかをさらに有し、前記水素供給装置は、前記グリーン水素製造装置で製造した製造グリーン水素及び前記カーボンフリー水素輸入基地で輸入した輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかを前記水素共通配管へ供給することが好ましい。
【0035】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記端末送信手段は、前記水素共通配管へ供給した前記製造グリーン水素の製造グリーン水素供給情報、及び前記水素共通配管へ供給した輸入カーボンフリー水素の輸入カーボンフリー水素供給情報の少なくともいずれかを前記サーバに送信し、前記サーバの前記記憶手段は、前記製造グリーン水素供給情報及び前記輸入カーボンフリー水素供給情報を記憶し、前記報知手段は、前記記憶手段に記憶された前記製造グリーン水素供給情報及び前記輸入カーボンフリー水素供給情報の少なくともいずれかを、前記コンビナートを構成する前記複数の企業体に報知することが好ましい。
【0036】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記水素受入装置は、前記水素共通配管から受入れて前記カーボンリサイクル装置に供給した製造グリーン水素量及び輸入カーボンフリー水素量の少なくともいずれかを含む合計カーボンフリー水素量を前記水素受入制御手段にて検出させて、前記合計カーボンフリー水素量を前記サーバに送信し、前記記憶手段は、前記合計カーボンフリー水素量を記憶し、前記計算手段は、前記カーボンリサイクル装置にて二酸化炭素をリサイクルして得たカーボンリサイクル製品中の、前記合計カーボンフリー水素量の質量割合を計算することが好ましい。
【0037】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、前記製造グリーン水素及び前記輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかと、二酸化炭素とを原料として、カーボンフリーメタノールを製造する装置、カーボンフリージメチルエーテルを製造する装置、及び直接、パラキシレンを製造する装置の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0038】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、前記カーボンフリーメタノール、及び前記カーボンフリージメチルエーテルの少なくともいずれかを原料として、C1化学製品を製造する装置含むことが好ましい。
【0039】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、前記カーボンフリーメタノールを原料として、ホルムアルデヒドを製造する装置又は酢酸を製造する装置の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0040】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、前記カーボンフリーメタノールを原料として、オレフィンを製造する装置を含むことが好ましい。
【0041】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、前記カーボンフリージメチルエーテルを原料として、エチレンを製造する装置を含むことが好ましい。
【0042】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、前記製造グリーン水素及び前記輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかと、二酸化炭素とを原料として、e-fuelを製造する装置を含むことが好ましい。
【0043】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクル装置は、前記製造グリーン水素及び前記輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかと、二酸化炭素とを原料として、グリーンメタンを製造する装置を含むことが好ましい。
【0044】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記二酸化炭素受入装置は、前記二酸化炭素共通配管から受入れて前記カーボンリサイクル装置に供給した二酸化炭素量を前記二酸化炭素受入制御手段にて検出させて、前記二酸化炭素量を前記サーバに送信し、前記記憶手段は、前記二酸化炭素量を記憶し、前記計算手段は、回収した二酸化炭素を用いて前記カーボンリサイクル装置にて製造したカーボンリサイクル製品中の、前記二酸化炭素量の質量割合を計算することが好ましい。
【0045】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記サーバの前記計算手段は、前記二酸化炭素共通配管から受入れて使用した二酸化炭素の使用により生じる費用、及び前記水素共通配管から受入れて使用した水素の使用により生じる費用の少なくともいずれかを計算する費用計算手段を有することが好ましい。
【0046】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記二酸化炭素受入装置は、前記受入情報として、前記二酸化炭素共通配管から受入れて使用した二酸化炭素の使用量を前記サーバへ送信し、前記水素受入装置は、前記受入情報として、前記水素共通配管から受入れて使用した水素の使用量を前記サーバへ送信し、前記記憶手段は、前記二酸化炭素の使用量及び前記水素の使用量を記憶し、前記費用計算手段は、前記二酸化炭素の使用量及び前記水素の使用量に基づいて、費用を計算することが好ましい。
【0047】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記入力手段は、前記二酸化炭素供給企業体が前記二酸化炭素共通配管へ供給した二酸化炭素の製造コストの算出に用いる情報及び前記水素供給企業体が前記水素共通配管へ供給した水素の製造コストの算出に用いる情報の少なくともいずれかの製造コスト情報を入力し、前記端末送信手段は、前記製造コスト情報を、前記サーバに送信し、前記サーバの前記計算手段は、前記二酸化炭素の製造コストを算出する二酸化炭素製造コスト算出手段及び前記水素の製造コストに関する情報を算出する水素製造コスト算出手段の少なくともいずれかを有し、前記二酸化炭素製造コスト算出手段は、前記二酸化炭素供給企業体のみが利用可能であり、前記水素製造コスト算出手段は、前記水素供給企業体のみが利用可能であり、前記費用計算手段は、前記二酸化炭素の使用量及び前記二酸化炭素の製造コストに基づいて、前記二酸化炭素受入企業体が使用した二酸化炭素の費用の算出及び前記水素の使用量及び前記水素の製造コストに基づいて、前記水素受入企業体が使用した水素の費用の算出の少なくともいずれかを実施することが好ましい。
【0048】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記カーボンリサイクルコンビナート運営システムは、前記二酸化炭素供給企業体ではない複数の企業体で発生した排熱と、前記二酸化炭素供給企業体内で発生した排熱と、を回収及び集約して、前記二酸化炭素回収装置へ供給するための排熱利用手段を有することが好ましい。
【0049】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記排熱利用手段は、前記カーボンリサイクル装置の少なくともいずれかで発生した排熱を回収することが好ましい。
【0050】
本発明の一態様に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、前記二酸化炭素共通配管は、前記コンビナート外の企業体から二酸化炭素の供給を受けるための外部受入口と、前記コンビナート外の企業体へ二酸化炭素を供給するための外部供給口と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0051】
本発明の一態様によれば、カーボンリサイクルに係るコストを低減できるカーボンリサイクルコンビナート運営システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の一実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートの運営システムを示す概略図である。
図2】前記カーボンリサイクルコンビナートにおける各企業体間を結ぶ共通配管を示す概略図である。
図3】(A)は、二酸化炭素供給制御手段の構成を示す概略図であり、(B)は、二酸化炭素受入制御手段の構成を示す概略図であり、(C)は、水素供給制御手段の構成を示す概略図であり、(D)は、水素受入制御手段の構成を示す概略図である。
図4】(A)は、水素輸入基地で液体水素を受け入れる場合の水素供給装置の構成を示す概略図であり、(B)は、水素輸入基地で水素キャリアとしてのメチルシクロヘキサンを受け入れる場合の水素供給装置の構成を示す概略図である。
図5】前記カーボンリサイクルコンビナートにおけるサーバの構成を示す概略図である。
図6】(A)は、前記実施形態における受入情報記憶手段の内容を示す図であり、(B)は、前記実施形態における使用予定情報記憶手段の内容を示す図であり、(C)は、前記実施形態における供給情報記憶手段の内容を示す図である。
図7】第二実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートにおける二酸化炭素の受入れ及び払出しの構成を説明するための概略図である。
図8】第二実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートにおける二酸化炭素の受入れ及び払出しの別の構成を説明するための概略図である。
図9】第二実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートの運営システムの一部を抜粋して示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、複数の企業体で構成されるコンビナートにおいて生成される二酸化炭素をリサイクルするためのカーボンリサイクルコンビナート運営システムが説明される。
図1は、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートの運営システムを示す概略図である。図2は、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートの運営システムにおける各企業体の供給装置と受入装置とを連結する共通配管の概略を示す図である。
【0054】
本実施形態は、二酸化炭素と、水素又はエチレン等と、を原料として、また、低温排熱蒸気の利用や用役の共有管理を行い、メタン、メタノール、DME(dimethyl ether:ジメチルエーテル)、SAP(Superabsorbent polymer:高吸水性樹脂)、パラキシレン等のカーボンリサイクル製品を生産することができるカーボンリサイクルコンビナートの一貫操業の例である。本発明は、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートの例に限定されない。
【0055】
二酸化炭素は、化学的に不活性であり、酸化防止剤、爆発防止剤、食品などの貯蔵に利用され、さらに、液体二酸化炭素は、冷媒として食品の急速冷凍、貯蔵、低温粉砕などに利用される。
二酸化炭素は、コンビナート内の石炭ボイラー等の排ガスや、セメント製造時又は石油精製時等の排ガスから回収し、水素は塩化ナトリウム水素を電解して、塩化水素を得るための副産物としても得られる。さらに、水素は、ナフサ及びLPGを分解するとき、及びパラキシレン、ガソリン基材を生産するときにも大量に副生する。また、コンビナート内で使用する水素は、例えば、水素製造装置の余力の水素、輸入した水素、又は他のコンビナートから輸送された水素等でもよい。
【0056】
・企業体A~G
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートは、所定地域内に集合的に配置された複数の企業体A,B,C,D,E,F,Gで構成される。本明細書において、企業体A,B,C,D,E,F,Gを総称して、「企業体A~G」と略記する場合がある。
【0057】
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートを構成する前記複数の企業体は、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給企業体と二酸化炭素を受け入れる二酸化炭素受入企業体との組み合わせ、並びに水素を供給する水素供給企業体と水素を受入れる水素受入企業体との組み合わせの両者を含む。本実施形態において、二酸化炭素供給企業体は、企業体A及び企業体Bであり、二酸化炭素受入企業体は、企業体C、企業体D及び企業体Eであり、水素供給企業体は、企業体A、企業体B及び企業体Gであり、水素受入企業体は、企業体C及び企業体Fである。
本実施形態において、カーボンリサイクルを実施する企業体は、企業体C、企業体D、企業体E及び企業体Fである。
企業体A~Gには、図示省略されたプラントが設置されていてもよい。
【0058】
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、図1及び図2に示すように、複数の企業体A~G間に接続された情報ネットワークNWと、情報ネットワークNWを介して接続された複数の端末10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G及びサーバ20と、二酸化炭素供給企業体と二酸化炭素受入企業体とを連結する二酸化炭素共通配管100と、水素供給企業体と水素受入企業体とを連結する水素共通配管200と、二酸化炭素供給企業体に設置され、二酸化炭素共通配管100に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置300A,300Bと、二酸化炭素受入企業体に設置され、二酸化炭素共通配管100から二酸化炭素を受け入れる二酸化炭素受入装置400C,400D,400Eと、水素供給企業体に設置され、水素共通配管200に水素を供給する水素供給装置500A,500B,500Gと、水素受入企業体に設置され、水素共通配管200から水素を受け入れる水素受入装置600C,600Fと、二酸化炭素受入企業体及び水素受入企業体の少なくともいずれか、かつカーボンリサイクルを実施する企業体に設置され、二酸化炭素をリサイクルするためのカーボンリサイクル装置700C,700D,700E,700Fと、を備える。
【0059】
(情報ネットワーク)
情報ネットワークNWは、コンビナート内において異なる企業体A~G間で情報を相互に交信する通信手段である。通信手段としては、コンビナート内の工場情報伝達のために、無線インターネットクラウドシステムを利用する。例えば、セキュリティ確保のため閉域網でのCloud環境内でのベンダクラウドサービスを利用する。
操業データの蓄積と解析と相互授受書類作成のためには、リモートステーションサーバ性能(RTDB:Real Time Data Base)を活用する。操業データ関連であれば10年分以上の蓄積が可能かつ、処理速度は1分データ程度まで問題なくリアルタイム処理可能であるから定期的なデータ収納の労力を費やさない。
複数の企業体の二酸化炭素回収装置等の無人自動運転のためには、統合ゲイトウェイシステム機能を活用することで、異なるベンダーのDCS(Distributed Control System)、PLC(Programable Logic Controller)を統一したベンダーのオペレータコンソールで監視操作が可能となる。各企業体に必要な各種センサの追加設置に対しては産業用無線LAN環境を活用し、無線センサを設置することでケーブル敷設を不要にできるので、各企業体で実施するよりも、全体システムの維持向上にかかるコスト低減及び省力化も期待できる。
【0060】
(二酸化炭素共通配管)
二酸化炭素共通配管100は、二酸化炭素供給企業体としての企業体A,Bと、二酸化炭素受入企業体としての企業体C,D,Eと、を連結する配管である。二酸化炭素共通配管100は、第1供給口320A,320B及び第1受入口420C,420D,420Eを有する。第1供給口320A,320Bには、それぞれ、企業体A,Bの二酸化炭素供給装置300A,300Bから二酸化炭素を二酸化炭素共通配管100に供給するための供給用配管が連結されている。第1受入口420C,420D,420Eには、それぞれ、二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素を企業体C,D,Eの二酸化炭素受入装置400C,400D,400Eへと導くための受入用配管が連結されている。
【0061】
(水素共通配管)
水素共通配管200は、水素供給企業体としての企業体A,B,Gと、水素受入企業体としての企業体C,Fと、を連結する配管である。水素共通配管200は、第2供給口520A,520B,520G及び第2受入口620C,620Fを有する。第2供給口520A,520B,520Gには、それぞれ、企業体A,Bの水素供給装置500A,500B,500Gから水素を水素共通配管200に供給するための供給用配管が連結されている。第2受入口620C,620Fには、それぞれ、水素共通配管200から受入れた水素を企業体C,Fの水素受入装置600C,600Fへと導くための受入用配管が連結されている。
【0062】
(二酸化炭素供給装置)
二酸化炭素供給装置は、二酸化炭素を回収及び供給する装置である。本実施形態では、企業体A,Bが、それぞれ、二酸化炭素供給装置300A,300Bを所有し、企業体A,Bが二酸化炭素の回収及び供給を管理している。
二酸化炭素供給装置300A,300Bは、二酸化炭素供給企業体で生成した二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置310A,310Bと、二酸化炭素共通配管との第1供給口320A,320Bに接続され、二酸化炭素の供給を制御する二酸化炭素供給制御手段330A,330Bと、を有する。二酸化炭素供給制御手段330A,330Bと二酸化炭素共通配管100とは、供給用配管によって接続されている。
【0063】
二酸化炭素回収装置310A,310Bは、カーボンリサイクルコンビナートにおいて発生した二酸化炭素を回収することができる装置であれば特に限定されないが、例えば、二酸化炭素を捕獲した溶液(例えば、アミン類溶液)から二酸化炭素を脱離する装置が挙げられ、この装置で二酸化炭素の回収に使う用役は、主として低温低圧スチーム(低温排熱)である。
【0064】
企業体A,Bは、それぞれ、例えば、石炭ボイラーで発電した電力を利用している。企業体A,Bのそれぞれの石炭ボイラーから発生した二酸化炭素は、企業体A,Bのそれぞれの二酸化炭素回収装置310A,310Bによって回収され、二酸化炭素供給制御手段330A,330Bによって、二酸化炭素共通配管100へ供給される。例えば、企業体Bは、図2に示すように、石炭ボイラー901Bを有する。この石炭ボイラー901Bは、二酸化炭素回収装置310Bと、電気分解装置900Bと、接続されている。石炭ボイラー901Bから発生した二酸化炭素は、二酸化炭素回収装置310Bによって、回収される。
【0065】
二酸化炭素供給制御手段330A,330Bは、それぞれ、図3(A)に示すように、二酸化炭素を圧縮して二酸化炭素共通配管100内へ送るコンプレッサー等の二酸化炭素圧縮機331、二酸化炭素共通配管100内への二酸化炭素の供給を制御する第1供給バルブ332、二酸化炭素共通配管100へ供給する二酸化炭素の供給圧力を検出する第1供給圧力計333、二酸化炭素共通配管100へ供給する二酸化炭素の流量(供給量)を検出する第1供給流量計334、及び二酸化炭素共通配管100へ供給する二酸化炭素の温度を検出する第1供給温度計335を有する。二酸化炭素供給制御手段330A,330Bの少なくともいずれかにより、二酸化炭素共通配管100の圧力を一定に制御できる。
【0066】
二酸化炭素回収装置310A,310B及び二酸化炭素供給制御手段330A,330Bは、図1に示すように、それぞれ、端末10A,10Bと接続されている。二酸化炭素供給制御手段330A,330Bは、検出した値(供給情報)を、当該端末10A,10Bを介して、サーバ20に送信する。
【0067】
(二酸化炭素受入装置)
二酸化炭素受入装置は、二酸化炭素共通配管から二酸化炭素を受入れてカーボンリサイクル装置へ二酸化炭素を供給する装置である。本実施形態では、企業体C,D,Eが、それぞれ、二酸化炭素受入装置400C,400D,400Eを所有している。
二酸化炭素受入装置400C,400D,400Eは、それぞれ、二酸化炭素受入制御手段430C,430D,430Eを有する。二酸化炭素受入制御手段430C,430D,430Eは、二酸化炭素共通配管100との第1受入口420C,420D,420Eに接続されている。二酸化炭素受入装置400C,400D,400Eと二酸化炭素共通配管100とは、受入用配管によって接続されている。
二酸化炭素受入制御手段430C,430D,430Eは、図3(B)に示すように、二酸化炭素共通配管100から二酸化炭素の受入れを制御する第1受入バルブ432、二酸化炭素共通配管100から受入れる二酸化炭素の受入圧力を検出する第1受入圧力計433、二酸化炭素共通配管から受入れる二酸化炭素の流量(受入量)を検出する第1受入流量計434及び二酸化炭素共通配管100から受入れる二酸化炭素の温度を検出する第1受入温度計435を有する。
【0068】
二酸化炭素受入制御手段430C,430D,430Eは、図1に示すように、それぞれ、端末10C,10D,10Eと接続されており、二酸化炭素受入制御手段430C,430D,430Eで検出した値(受入情報)を、端末10C,10D,10Eから、サーバ20を介して、二酸化炭素供給企業としての企業体A,Bの端末10A,10Bに送信する。
【0069】
(水素供給装置)
水素供給装置は、水素を回収及び供給する装置である。本実施形態では、企業体A,B,Gが、それぞれ、水素供給装置500A,500B,500Gを所有し、企業体A,B,Gが水素の回収及び供給を管理している。
水素供給装置500A,500B,500Gは、水素供給企業体で生成した水素を回収する水素回収装置510A,510B,510Gと、水素共通配管200との第2供給口520A,520B,520Gに接続され、水素の供給を制御する水素供給制御手段530A,530B,530Gと、を有する。水素供給制御手段530A,530B,530Gと水素共通配管200とは、供給用配管によって接続されている。本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートは、当該コンビナートで製造したグリーン水素(製造グリーン水素)のみならず、CCS(carbon capture and storage)で二酸化炭素を地中埋蔵することで生産されるブルー水素、及び褐炭を原料とするブラウン水素などのカーボンフリー水素も輸入可能な基地を有することが好ましい。当該輸入基地で輸入したカーボンフリー水素を輸入カーボンフリー水素と称する場合がある。水素供給装置は、グリーン水素製造装置で製造した製造グリーン水素及びカーボンフリー水素輸入基地で輸入した輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかを水素共通配管へ供給する装置とすることもできる。本明細書において、輸入したカーボンフリー水素であって、ブルー水素であるものを輸入ブルー水素と称する場合があり、グリーン水素であるものを輸入グリーン水素と称する場合があり、ブラウン水素であるものを輸入ブラウン水素と称する場合がある。
【0070】
水素回収装置510A,510B,510Gは、カーボンリサイクルコンビナートにおいて発生した水素を回収することができる装置であれば特に限定されないが、例えば、圧力スイング吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)方式の装置や水素分離回収方式の装置である。本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートの運営システムは、石油精製における余力の水素製造装置と近接する電力及びガス会社の天然ガス、並びに自社自家用燃料中のメタン及びエタンを原料として大量に発生する水素を、カーボンリサイクルに活用することもできる。カーボンリサイクルコンビナートは、石油精製における余力の水素製造装置(SMR)を、メタンと二酸化炭素を原料として水素を発生するドライリフォーミング装置に改造し、または、新設したドライリフォーミング装置を有していてれば更に好ましい。本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートの運営システムは、近接する電力及びガス会社の天然ガス、並びに自社自家用燃料中のメタン及びエタン等を原料とするドライリフォーミングにより大量に発生する水素を、カーボンリサイクルに活用することもできる。ドライリフォーミングで副生する水素と一酸化炭素(合成ガス)も併せて、メタノール製造装置にて、メタノールを製造できる。
【0071】
企業体Aは、エチレン製造装置900A及び重質ナフサ接触改質装置901Aを有する。エチレン製造装置900Aは、図2に示すように、水素供給装置500Aの水素回収装置510A及び企業体Cのカーボンリサイクル装置700Cと接続されている。重質ナフサ接触改質装置901Aは、図2に示すように、水素供給装置500Aの水素回収装置510Aと接続されている。
企業体Aのエチレン製造装置900Aで製造したエチレンの一部が、企業体Cのカーボンリサイクル装置700Cへ供給可能である。
エチレン製造装置900Aでエチレンを製造する際に副生する水素、及び重質ナフサ接触改質装置901Aで重質ナフサを接触改質する際に副生する水素は、水素回収装置510Aによって回収され、水素供給装置500Aによって水素共通配管200へ供給される。
【0072】
企業体Bは、塩化ナトリウム(食塩)の電気分解装置900Bを有する。電気分解装置900Bは、図2に示すように、水素供給装置500Bの水素回収装置510Bと、石炭ボイラー901Bと、接続されている。電気分解装置900Bは、石炭ボイラー901Bで発電した電力により、食塩を電気分解して塩素(Cl)を製造する。電気分解装置900Bで食塩を電気分解して塩素(Cl)を製造する際に副生する水素は、水素回収装置510Bによって回収され、水素供給制御手段530Bによって水素共通配管200へ供給される。また、企業体Bは、例えば、石炭ボイラーで発電した電力を利用して電気分解装置900Bにて食塩を電気分解する。企業体Bの石炭ボイラーから発生した二酸化炭素は、前述のとおり、二酸化炭素回収装置310Bによって回収され、二酸化炭素供給制御手段330Bによって、二酸化炭素共通配管100へ供給される。
【0073】
企業体Gの水素供給装置500Gは、グリーン水素を製造するグリーン水素製造装置550Gを有する。グリーン水素製造装置550Gで製造したグリーン水素は、水素回収装置510Gによって回収され、水素供給制御手段530Gによって水素共通配管200へ供給される。グリーン水素製造装置550Gは、例えば、再生エネルギー、バイオ等で発電した電力を使用して水を電気分解して水素を生成できる水電気分解装置である。
【0074】
また、企業体Gの水素供給装置500Gは、カーボンフリー水素を輸入できる水素輸入基地560Gを有する。水素輸入基地560Gは、水素回収装置510Gと接続されている。水素回収装置510Gは、回収する水素を選択的に切り替える手段を有する。例えば、水素回収装置510Gは、グリーン水素製造装置550Gで製造したグリーン水素だけを回収してもよいし、水素輸入基地560Gにて輸入された輸入水素だけを回収してもよいし、グリーン水素及び輸入水素の両方を同時に回収してもよい。水素輸入基地560Gで輸入したカーボンフリー水素は、グリーン水素製造装置550Gで製造したグリーン水素と共に水素共通配管200へ供給される。
企業体Gの端末10Gの端末送信手段141は、水素共通配管200へ供給した製造グリーン水素の製造グリーン水素供給情報、及び水素共通配管200へ供給した輸入カーボンフリー水素の輸入カーボンフリー水素供給情報を水素供給制御手段530Gから受信して、これら供給情報をサーバ20に送信する。製造グリーン水素供給情報は、グリーン水素製造装置550Gで製造し水素共通配管200に供給したグリーン水素量に関する情報を含み、輸入カーボンフリー水素供給情報は、水素輸入基地560Gが輸入した輸入水素量のうち、水素共通配管200に供給された輸入カーボンフリー水素量に関する情報を含む。
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートにおいて、カーボンリサイクルにし使用する水素として、当該コンビナート内で発生又は生成した水素を優先的に使用し、不足した際に、水素回収装置510Gが水素輸入基地560Gから輸入水素を回収し、水素供給制御手段530Gを介して水素共通配管200へ供給することも好ましい。
【0075】
水素輸入基地560Gで3種類の液体水素を各々のロットで同一タンクに受け入れる場合、企業体Gの水素供給装置500Gは、図4(A)に示す構成を有する。この場合の水素輸入基地560Gは、受け入れ液体水素を貯蔵する受入タンク561Gと、液体水素運搬船から、液体水素を揚げ荷する専用のローディングアーム562Gと、液体水素の気化器(ベーパライザー)563Gと、を有する。
【0076】
水素輸入基地560Gでメチルシクロヘキサン(MCHと略記する場合がある。)を水素キャリアとして、受入タンク564Gで受け入れる場合、企業体Gの水素供給装置500Gは、図4(B)に示す構成を有する。この場合の水素輸入基地560Gは、受け入れ水素キャリアであるメチルシクロヘキサンを貯蔵する受入タンク564Gと、液体のメチルシクロヘキサンを揚げ荷するローディングアーム565Gと、メチルシクロヘキサンから水素を脱離させるための水素脱離装置566Gと、を有する。
【0077】
水素供給制御手段530A,530B,530Gは、それぞれ、図3(C)に示すように、水素を圧縮して水素共通配管200内へ送るコンプレッサー等の水素圧縮機531、水素共通配管200内への水素の供給を制御する第2供給バルブ532、水素共通配管200へ供給する水素の供給圧力を検出する第2供給圧力計533、水素共通配管200へ供給する水素の流量(供給量)を検出する第2供給流量計534及び水素共通配管200へ供給する水素の温度を検出する第2供給温度計535を有する。水素供給制御手段530A,530B,530Gの少なくともいずれかにより、水素共通配管200の圧力を一定に制御できる。
【0078】
水素回収装置510A,510B,510G及び水素供給制御手段530A,530B,530Gは、図1に示すように、それぞれ、端末10A,10B,10Gと接続されている。水素供給制御手段530A,530B,530Gは、検出した値(供給情報)を、当該端末10A,10B,10Gを介して、サーバ20に送信する。
【0079】
(水素受入装置)
水素受入装置は、水素共通配管から水素を受入れてカーボンリサイクル装置へ水素を供給する装置である。本実施形態では、企業体C,Fが、それぞれ、水素受入装置600C,600Fを所有している。
水素受入装置600C,600Fは、それぞれ、水素受入制御手段630C,630Fを有する。水素受入制御手段630C,630Fは、水素共通配管200との第2受入口620C,620Fに接続されている。水素受入制御手段630C,630Fと水素共通配管200とは、受入用配管によって接続されている。
【0080】
企業体C,Fの水素受入制御手段630C,630Fは、それぞれ、図3(D)に示すように、水素共通配管200から水素の受入れを制御する第2受入バルブ632、水素共通配管200から受入れる水素の受入圧力を検出する第2受入圧力計633、水素共通配管200から受入れる水素の流量(受入量)を検出する第2受入流量計634及び水素共通配管200から受入れる水素の温度を検出する第2受入温度計635を有する。
【0081】
水素受入制御手段630C,630Fは、図1に示すように、それぞれ、端末10C,10Fと接続されており、水素受入制御手段630C,630Fで検出した値(受入情報)を、当該端末10C,10Fから、サーバ20を介して、水素供給企業としての企業体A,B,Gの端末10A,10B,10Gに送信する。
【0082】
水素受入装置600C,600Fは、それぞれ、水素共通配管200から受入れてカーボンリサイクル装置700C,700Fに供給した製造グリーン水素量及び輸入カーボンフリー水素量の少なくともいずれかを含む合計カーボンフリー水素量を水素受入制御手段630C,630Fにて検出させ、当該合計カーボンフリー水素量をサーバ20に送信する。
【0083】
(カーボンリサイクル装置)
本実施形態に係るカーボンリサイクル装置は、少なくとも二酸化炭素を原料として、カーボンリサイクルを実施する装置であれば特に限定されない。また、カーボンリサイクルを実施する企業体は、それぞれ独立に、カーボンリサイクル装置として、1種の装置だけを有していてもよいし、複数種の装置を有していてもよく、カーボンリサイクル装置は、例えば、以下に示す装置からなる群から選択される少なくともいずれかの装置である。
【0084】
カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素及び水素を原料としてメタノール、メタン、パラキシレン及びジメチルエーテルの少なくともいずれかを製造する装置を含むことが好ましく、二酸化炭素及び水素を原料として、メタノールを直接、製造する装置及びパラキシレンを直接、製造する装置の少なくともいずれかを含むことがより好ましい。
また、カーボンリサイクル装置は、製造グリーン水素及び輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかと、二酸化炭素とを原料として、カーボンフリーメタノールを製造する装置、カーボンフリージメチルエーテルを製造する装置、及び直接、パラキシレンを製造する装置の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
また、カーボンリサイクル装置は、前記製造グリーン水素及び前記輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかと、二酸化炭素とを原料として、グリーンメタンを製造する装置を含むことが好ましい。
【0085】
また、カーボンリサイクル装置は、メタノールを基幹物質とするC1化学展開によるホルムアルデヒド、酢酸等の他の化学品を生産する装置を含むことも好ましく、MTO(Methanol to Olefin)で、エチレンやプロピレンを生産する装置を含むことも好ましい。
また、カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したメタノール及びジメチルエーテルの少なくともいずれかを原料として、C1化学製品を製造する装置、並びにパラキシレンを直接、製造する装置の少なくともいずれかを含むことも好ましい。
また、カーボンリサイクル装置は、前記カーボンフリーメタノール、及び前記カーボンフリージメチルエーテルの少なくともいずれかを原料として、C1化学製品を製造する装置を含むことが好ましい。
【0086】
また、カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したメタノールを原料として、ホルムアルデヒドを製造する装置又は酢酸を製造する装置の少なくともいずれかを含むことも好ましい。
また、カーボンリサイクル装置は、カーボンフリーメタノールを原料として、ホルムアルデヒドを製造する装置又は酢酸を製造する装置の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0087】
また、カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したメタノールを原料として、オレフィンを製造する装置を含むことも好ましい。
また、カーボンリサイクル装置は、カーボンフリーメタノールを原料として、オレフィンを製造する装置を含むことが好ましい。
【0088】
また、カーボンリサイクル装置は、カーボンリサイクルにより製造したジメチルエーテルを原料として、エチレンを製造する装置を含むことも好ましい。
また、カーボンリサイクル装置は、カーボンフリージメチルエーテルを原料として、エチレンを製造する装置を含むことが好ましい。
【0089】
また、カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素を原料として、含酸素化合物を製造する装置の少なくとも1種を含むことも好ましい。含酸素化合物は、ポリカーボネート、尿素、サリチル酸、パラヒドロキシ安息香酸カリウム、酢酸、炭酸ナトリウム及びメチオニンからなる群から選択される少なくともいずれかの化合物であることが好ましい。
二酸化炭素を原料として、アンモニアを生産可能な企業体であれば、尿素のような含酸素化合物の生産もできる。同じように、ポリカーボネート等の含酸素化合物も、二酸化炭素とエチレンオキシド等のコンビナート内外の化学企業で生産される化合物を原料として生産可能である。この場合、カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素を原料として、ポリカーボネートを製造する装置及び尿素を製造する装置の少なくともいずれかを含むことも好ましい。
【0090】
また、カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素及びエチレンを原料として、高吸水性樹脂を製造する装置を含むことも好ましい。
また、カーボンリサイクル装置は、二酸化炭素を液化する装置及び二酸化炭素を原料とする強化コンクリートを製造する装置の少なくともいずれかを含むことも好ましい。
【0091】
また、カーボンリサイクル装置は、製造グリーン水素及び輸入カーボンフリー水素の少なくともいずれかと、二酸化炭素とを原料にして、e-fuel(グリーンジェット燃料、グリーン軽油等)を製造する装置を含むことも好ましい。
【0092】
コンビナートを二酸化炭素供給ハブとして、パイプラインで二酸化炭素を地域の温室に供給して、野菜等の農業生産効率を向上させることもできる。クロレラ生産等も同様な展開が可能である。
【0093】
本実施形態では、企業体C,D,E,Fが、それぞれ、カーボンリサイクル装置700C,700D,700E,700Fを所有する。
【0094】
企業体Cのカーボンリサイクル装置700Cは、二酸化炭素受入装置400C及び水素受入装置600Cと接続されている。カーボンリサイクル装置700Cは、複数のカーボンリサイクル装置701,702,703で構成されている。カーボンリサイクル装置701,702が、水素共通配管200から受入れた水素を原料としてカーボンリサイクルを実施する装置である。そのため、企業体Cの水素受入装置600Cは、図2に示すように、水素共通配管200から受入れた水素を複数のカーボンリサイクル装置701,702に分岐させて供給するための複数の分岐配管640Cを有する。
【0095】
カーボンリサイクル装置701は、二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素及び水素共通配管200から受入れた水素を原料としてメタンを製造する装置である。メタネーション(メタン製造装置)で製造したメタンは、例えば、メタノール原料として利用されてもよいし、LPG等と混合して都市ガススペックにカロリー調整(都市ガス熱量調整)されて、企業体Cに近接するガス会社のガス供給パイプラインに供給してもよい。
【0096】
カーボンリサイクル装置702は、二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素及び水素共通配管200から受入れた水素を原料としてメタノールを製造する装置である。または、カーボンリサイクル装置701(メタン製造装置)とカーボンリサイクル装置702(メタノール製造装置)とを連結して、カーボンリサイクル装置702は、メタン製造装置で製造したメタンと、酸素とを用いて、メタノールを製造する構成としてもよい。
【0097】
カーボンリサイクル装置702は、製造したメタノールを用いてさらにジメチルエーテルを製造可能な構成としてもよいし、別途、図示しないカーボンリサイクル装置としてのジメチルエーテル製造装置を設置してもよい。製造したジメチルエーテルを各企業体に供給してもよく、ジメチルエーテルを企業体のガスタービン燃料として活用してもよいし、企業体Aのエチレン製造分解炉原料として活用してもよいし、企業体Aの軽油のセタン価向上のために活用してもよい。カーボンリサイクル基幹物質であるメタノールは、原油価格等連動で、需給変動が激しいので、本実施形態に係るコンビナートは、メタノールの大型の輸出入基地を有していることが好ましく、メタノールを製造する装置が設置されている企業体Cが、メタノールを輸入及び輸出可能な輸出入基地(メタノール輸出入基地920C)を有する。メタノール輸出入基地920Cは、国外への輸出に限らず、国内へも出荷できる。
メタノール輸出入基地920Cは、カーボンリサイクル装置702(メタノール製造装置)と連結されている。カーボンリサイクル装置702(メタノール製造装置)で製造されたメタノールは、メタノール輸出入基地920Cへ移送され、メタノール輸出入基地920Cは、当該メタノールを出荷することができる。メタノール輸出入基地920Cは、輸入及び生産したメタノールを合わせて、輸出することもできる。
なお、メタノール輸出入基地920Cで輸入したメタノールは、カーボンリサイクル装置702(メタノール製造装置)が修理等で停止している間、ユーザーに安定供給し続けるために活用されてもよいし、世界各地から輸入したメタノールとカーボンリサイクル装置702(メタノール製造装置)で製造されたメタノールとを合わせて、メタノールのユーザーに大量供給(輸出又は出荷)されてもよい。
【0098】
カーボンリサイクル装置703は、二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素及び企業体Aから受入れたエチレンを原料として、高吸水性樹脂を製造する装置である。
【0099】
企業体Dのカーボンリサイクル装置700Dは、二酸化炭素受入装置400Dと接続されている。企業体Dのカーボンリサイクル装置700Dは、二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素と、企業体D内の水素発生装置900Dで発生した水素を原料として、他のカーボンリサイクル装置701,702,703とは異なる種類のカーボンリサイクル製品を製造する装置(例えば、パラキシレンを製造する装置)であることが好ましい。このパラキシレンを製造する装置は、カーボンフリー水素を用いてカーボンフリーパラキシレンを製造する装置であることが好ましい。この場合、企業体Dが、パラキシレン(好ましくは、カーボンフリーパラキシレン)を輸出又は出荷できるパラキシレン輸出出荷基地を有することで、パラキシレン製造装置の安定操業と供給ができる。
【0100】
企業体Eのカーボンリサイクル装置700Eは、二酸化炭素受入装置400Eと接続されている。企業体Eのカーボンリサイクル装置700Eは、二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素を原料として、二酸化炭素を液化する装置である。企業体Eは、液化二酸化炭素(液化CO)を出荷する設備等(ローリー等)を有することが好ましい。液化COの用途としては、例えば、ドライアイス、及び炭酸飲料原料が挙げられる。
【0101】
企業体Fのカーボンリサイクル装置700Fは、水素受入装置600Fと接続されている。カーボンリサイクル装置700Fは、水素共通配管200から受入れた水素と、企業体F内の二酸化炭素発生装置900Fで発生した二酸化炭素を原料として、他のカーボンリサイクル装置701,702,703とは異なる種類のカーボンリサイクル製品を製造する装置であることが好ましい。
企業体A~Gの少なくともいずれかの企業体は、カーボンリサイクル製品としてのメタノール、及びジメチルエーテルなどを原料とするC1化学製品を製造する装置及び直接、パラキシレンを製造できる装置を有していることも好ましい。
【0102】
(端末)
端末は、本実施形態に係るコンビナートを構成する複数の企業体A~Gに設置されている。端末は、情報ネットワークNWを通じて企業体A~Gの間での情報交換及びサーバ20と情報交換を行う。企業体A~Gのそれぞれに、端末10A、端末10B、端末10C、端末10D、端末10E、端末10F及び端末10Gが設置されている。本明細書において、端末10A、端末10B、端末10C、端末10D、端末10E、端末10F及び端末10Gを総称して、「端末10A~10G」と略記する場合がある。
【0103】
端末10A~10Gは、当該端末が設置された企業体が有する二酸化炭素供給装置、水素供給装置、二酸化炭素受入装置及び水素受入装置の少なくともいずれかと接続されている。端末10A~10Gは、当該端末が設置された企業体が有する二酸化炭素回収装置、二酸化炭素供給制御手段、二酸化炭素受入制御手段、水素回収装置、水素供給制御手段及び水素受入制御手段の少なくともいずれかと接続されている。
【0104】
端末10A,10Bは、図1に示すように、それぞれ、二酸化炭素回収装置310A,310B、二酸化炭素供給制御手段330A,330B、水素回収装置510A,510B及び水素供給制御手段530A,530Bと接続されている。
端末10Cは、図1に示すように、二酸化炭素受入制御手段430C及び水素受入制御手段630Cと接続されている。
端末10D,10Eは、図1に示すように、それぞれ、二酸化炭素受入制御手段430D,430Eと接続されている。
端末10Fは、図1に示すように、水素受入制御手段630Fと接続されている。
端末10Gは、図1に示すように、水素回収装置510G及び水素供給制御手段530Gと接続されている。
【0105】
端末10A~10Gは、それぞれ独立に、表示手段11、入力手段12、記憶手段13及びCPUなどからなる制御手段14を備える。
【0106】
本実施形態において、カーボンリサイクルを実施する際に端末10A~10G並びにサーバ20間で授受される情報としては、使用予定情報、供給情報及び受入情報が挙げられるが、本発明は、これら情報に限定されない。
【0107】
・使用予定情報
使用予定情報は、カーボンリサイクルを実施する企業体の今後の二酸化炭素及び水素の使用予定量並びに使用予定圧力に関する情報である。また、本実施形態においては、企業体Cがカーボンリサイクルに使用する予定のエチレンの使用予定量も使用予定情報として含める。
【0108】
・供給情報
供給情報は、二酸化炭素供給企業体が二酸化炭素共通配管100へ供給した二酸化炭素の供給量及び供給圧力に関する情報、並びに水素供給企業体が水素共通配管200へ供給した水素の供給量及び供給圧力に関する情報である。供給情報は、二酸化炭素供給制御手段330A,330Bの第1供給流量計334、第1供給圧力計333、並びに水素供給制御手段530A,530B,530Gの第2供給流量計534、第2供給圧力計533によって検出された値である。また、本実施形態においては、カーボンリサイクルに使用するために企業体Aから企業体Cへ供給したエチレンの供給量及び供給圧力に関する情報を供給情報として含める。また、企業体Gが水素共通配管200に供給した水素に関する、前述の製造グリーン水素供給情報及び輸入カーボンフリー水素供給情報も供給情報として含める。
【0109】
・受入情報
受入情報は、二酸化炭素受入企業体が二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素の受入量及び受入圧力に関する情報、並びに水素受入企業体が水素共通配管200から受入れた水素の受入量及び受入圧力に関する情報である。受入情報は、二酸化炭素受入制御手段430C,430D,430Eの第1受入流量計434、第1受入圧力計433、並びに水素受入制御手段630C,630Fの第2受入流量計634、第2受入圧力計633によって検出された値である。また、本実施形態においては、企業体Cがカーボンリサイクルに使用するために受け入れたエチレンの受入量及び受入圧力に関する情報を受入情報として含める。また、前述の合計カーボンフリー水素量も受入情報として含める。
【0110】
使用予定情報、供給情報及び受入情報は、入力手段12によって入力されるが、その他の情報(用役類の単価など)も入力手段12によって入力可能である。
入力手段12は、端末に備えられているキー入力手段でもよい。また、受入情報を入力する場合、入力手段12は、第1供給流量計334、第1受入流量計434、第2供給流量計534及び第2受入流量計634でもよい。第1受入流量計434及び第2受入流量計634を利用すれば、二酸化炭素及び水素の受入量に関する情報を自動的に入力することができる。また、エチレン製造装置900Aから、カーボンリサイクル装置700Cへとエチレンを供給する供給配管にも図示しない入力手段12としての第3受入流量計が取り付けられており、第3受入流量計を利用して、エチレンの受入量に関する情報(受入情報)を自動的に入力することができる。
【0111】
記憶手段13は、使用予定情報、供給情報及び受入情報などの情報を記憶可能である。
【0112】
制御手段14は、端末送信手段141及び表示制御手段142を有する。
端末送信手段141は、使用予定情報、二酸化炭素供給制御手段及び水素供給制御手段の少なくともいずれかから受信した供給情報、及び二酸化炭素受入制御手段及び水素受入制御手段から送信された受入情報などの情報をサーバ20に送信する。
端末送信手段141は、入力手段12から入力されるその他の情報もサーバ20へ送信可能である。
表示制御手段142は、サーバ20から受信した内容を表示手段11に表示させる。
【0113】
(サーバ)
サーバ20は、企業体A~Gに設置された端末10A~10Gと情報交換を行って、カーボンリサイクルに係る二酸化炭素及び水素等の原料並びに用役等を一括管理する。
サーバ20は、図5に示すように、表示手段21と、入力手段22と、記憶手段23と、情報ネットワークNWに入出力制御部25を介して接続されたCPUなどからなる制御手段24と、この制御手段24に接続され第1供給バルブ332、第2供給バルブ532、第1受入バルブ432及び第2受入バルブ632の開度を制御するバルブ制御部26と、サーバ送信手段27と、を備える。図5中、「二酸化炭素」を「CO」と表記し、「水素」を「H」と表記した。
サーバ20は、企業体A~Gの少なくともいずれかの企業体に設置されていてもよいが、サイバーセキュリティ確保の面からクラウドによる一括管理が好ましい。
【0114】
記憶手段23(記憶装置)は、端末送信手段141により送信された使用予定情報、供給情報及び受入情報などの情報を記憶する。サーバ20の記憶手段23は、受入情報としての、合計カーボンフリー水素量も記憶する。
記憶手段23は、サーバ20を制御するプログラムを記憶した記録媒体であるプログラム記憶部231と、二酸化炭素受入企業体及び水素受入企業体の受入情報を記憶する受入情報記憶手段232と、二酸化炭素受入企業体及び水素受入企業体の使用予定情報を記憶する使用予定情報記憶手段233と、二酸化炭素供給企業体及び水素供給企業体の供給情報を記憶する供給情報記憶手段234と、二酸化炭素及び水素の値段などの営業情報を記憶する営業情報記憶手段235と、を備える。
【0115】
受入情報記憶手段232には、図6(A)に示すように、企業体A~G毎に、その企業体の二酸化炭素及び水素の受入量及び受入圧力の実績データが記憶されている。
使用予定情報記憶手段233には、図6(B)に示すように、企業体A~G毎に、その企業体が今後に使用予定の二酸化炭素及び水素の使用予定量及び使用予定圧力が記憶されるようになっている。
供給情報記憶手段234には、図6(C)に示すように、企業体A~G毎に、その企業体の二酸化炭素及び水素の供給量及び供給圧力の実績データが記憶されている。
【0116】
制御手段24は、図5に示すように、書込手段241と、報知手段242と、公開手段243と、計算手段244と、電力スチームバランス最適化手段245と、を備える。
【0117】
書込手段241は、使用予定情報、供給情報及び受入情報を記憶手段23の使用予定情報記憶手段233、供給情報記憶手段234及び受入情報記憶手段232にそれぞれ記憶させる。
【0118】
報知手段242は、記憶手段23の使用予定情報記憶手段233、供給情報記憶手段234及び受入情報記憶手段232に記憶された使用予定情報、供給情報及び受入情報を、企業体A~Gに報知する。
【0119】
公開手段243は、営業情報記憶手段235に記憶された営業情報を各端末10A~10Gに公開する。
【0120】
計算手段244(最適確保量計算手段)は、受入情報記憶手段232及び使用予定情報記憶手段233にそれぞれ記憶された情報に基づいて、二酸化炭素及び水素の最適確保量等を計算する。計算手段244は、計算アルゴリズムである。
【0121】
計算手段244は、二酸化炭素供給制御情報生成手段2441と、水素供給制御情報生成手段2442と、費用計算手段2443と、二酸化炭素製造コスト算出手段2444と、水素製造コスト算出手段2445と、カーボンフリー率算出手段2446と、カーボンリサイクル率算出手段2447と、を有する。図中、「メタノール」をCHOHと表記する場合がある。
【0122】
二酸化炭素供給制御情報生成手段2441は、受入情報に基づいて、二酸化炭素供給制御手段330A,330Bによる二酸化炭素の供給を制御するための二酸化炭素供給制御情報を生成する。
水素供給制御情報生成手段2442は、受入情報に基づいて、水素供給制御手段530A,530B,530Gによる水素の供給を制御するための水素供給制御情報を生成する。
【0123】
費用計算手段2443は、二酸化炭素共通配管100から受入れて使用した二酸化炭素の使用により生じる費用、及び水素共通配管200から受入れて使用した水素の使用により生じる費用の少なくともいずれかを計算する。
本実施形態において、費用計算手段2443が二酸化炭素、水素及びエチレン等の使用により生じる費用を自動的に計算するので、企業体の当該費用に係る請求業務の負担を軽減できる。ここで、二酸化炭素、水素及びエチレン等の使用により生じる費用とは、二酸化炭素、水素及びエチレン等を使用する際の使用料であって、二酸化炭素、水素及びエチレン等を製造供給する企業体に対して支払われる額をいう。費用計算手段2443は、支払いの際に他の用役などを含めて、企業体同士で互いに使用し合う場合は、費用を相殺して計算することもできる。
また、カーボンクレジット制度が導入された場合でも、費用計算手段2443は、同様に、自動的にクレジット料金を加味して自動計算できる。二酸化炭素クレジットのコンビナート企業体間で売買する場合も計算に加味することが可能で、特に、二酸化炭素及びグリーン電解水素の少なくともいずれかを原料とする場合の相互授受料金の計算は非常に煩雑になるが、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムによれば、このような計算も自動的に計算出力可能である。
したがって、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムによれば、料金計算の正確かつ省力化が可能となり、実際の現金の授受が減ることになり、手続きを簡略化できる。
また、サーバ20が、費用情報について銀行に直接連絡する手段を有する場合、銀行口座にて自動振り込みとすることでさらに手続きを簡略化できる。
【0124】
費用計算手段2443は、例えば、二酸化炭素及び水素の取引価格を計算することが好ましい。したがって、二酸化炭素受入企業体は、二酸化炭素共通配管100から受入れて使用した二酸化炭素の積算量と、単位量当たりの二酸化炭素の価格との積で算出される費用が請求され、水素受入企業体は、水素共通配管200から受入れて使用した水素の積算量と、単位量当たりの水素の価格との積で算出される費用が請求されることになる。
また、費用計算手段2443は、例えば、カーボンリサイクルを実施してカーボンリサイクル製品を製造した場合に、当該カーボンリサイクル製品中のグリーン水素割合、二酸化炭素消費割合を各消費先の企業体が計算して、当該カーボンリサイクル製品を販売するときに、宣伝あるいはクレジットにするための計算機能を有することも好ましい。
【0125】
二酸化炭素製造コスト算出手段2444は、二酸化炭素供給企業体が二酸化炭素共通配管100へ供給した二酸化炭素の製造コストを算出する。二酸化炭素製造コスト算出手段2444は、二酸化炭素供給企業体のみが利用可能である(アクセス可能な状態に置かれている)ことが好ましい。
例えば、企業体A,Bは、それぞれ、二酸化炭素供給装置300A,300Bから二酸化炭素共通配管100へ供給した二酸化炭素の供給情報(二酸化炭素供給積算データ)と、二酸化炭素の製造に必要な用役類の単価等と、を端末10A,10Bに入力することで、二酸化炭素製造コスト算出手段2444は、企業体A,Bのそれぞれにおける二酸化炭素の製造コストを算出する。企業体Aが入力した情報は、他の企業体には開示されず、企業体Bが入力した情報は、他の企業体には開示されない。二酸化炭素供給積算データとしては、例えば、気体状態の二酸化炭素を標準状態15℃に換算するため流量、温度及び圧力である。
【0126】
水素製造コスト算出手段2445は、水素供給企業体が水素共通配管200へ供給した水素の製造コストを算出する。水素製造コスト算出手段2445は、水素供給企業体のみが利用可能である(アクセス可能な状態に置かれている)ことが好ましい。
例えば、企業体A,B,Gは、それぞれ、水素供給装置500A,500B,500Gから水素共通配管200へ供給した水素の供給情報(水素供給積算データ)と、水素の製造に必要な用役類の単価等と、を端末10A,10B,10Gに入力することで、水素製造コスト算出手段2445は、企業体A,B,Gのそれぞれにおける水素の製造コストを算出する。企業体Aが入力した情報は、他の企業体には開示されず、企業体Bが入力した情報は、他の企業体には開示されず、企業体Gが入力した情報は、他の企業体には開示されない。水素供給積算データとしては、例えば、気体状態の水素を標準状態15℃に換算するため流量、温度及び圧力である。
【0127】
製造コスト情報は、例えば、二酸化炭素の回収の場合は、用役(各社の電力単価、低温排熱価格、動力コスト、共通配管に二酸化炭素を送り込んだ圧縮機コスト)、副資材(二酸化炭素回収の溶媒コスト、溶媒の劣化防止剤)、保全費、人件費等である。
製造コスト情報は、例えば、電解水素製造の場合は、用役(グリーン電力単価、電解溶液、通配管に水素を送り込んだ圧縮機コスト他)、保全費、人件費及び設備償却費等である。
【0128】
カーボンフリー率算出手段2446は、カーボンリサイクル製品中のカーボンフリー率を算出するための手段である。
カーボンフリー率算出手段2446は、メタノール輸出入基地920Cからメタノールを輸出する際のメタノール中の、従来のメタノール及びグリーンメタノールの割合を算出する。カーボンフリー率算出手段2446は、算出結果を表示手段21で表示させることもできる。カーボンフリー率算出手段2446は、メタノール輸出入基地920Cからメタノールを国内に陸海上出荷するときも、輸出する場合と同様に、グリーンメタノールの割合を算出する。
【0129】
また、カーボンフリー率算出手段2446は、供給情報記憶手段234が記憶する供給情報の内、企業体Gから供給されるカーボンフリー水素の組成等を、以下の通り計算する。
水素輸入基地560Gで3種類の液体水素を各々のロットで同一タンクに受け入れる場合、企業体Gの水素供給装置500Gは、図4(A)に示す構成を有する。
水素輸入基地560Gで液体ブラウン水素を受入れて、水素輸入基地560Gが有する受入タンク561Gに当該液体ブラウン水素を供給した場合、受入タンク561G内の液体ブラウン水素の組成[質量%]、液体ブルー水素の組成[質量%]及び液体グリーン水素の組成[質量%]は、次の数式(数1)~(数3)の通り、計算される。
【0130】
={()/()}×100…(数1)
={()/()}×100…(数2)
={()/()}×100…(数3)
【0131】
数式中の記号の説明は、次の通りである。
:輸入して、受入タンク561G内へ供給された液体ブラウン水素の質量[kg]
:上述の輸入した液体ブラウン水素を供給する前に、予め受入タンク561G内に貯蔵されていた液体ブラウン水素の質量[kg]
:上述の輸入した液体ブラウン水素を供給する前に、予め受入タンク561G内に貯蔵されていた液体ブルー水素の質量[kg]
:上述の輸入した液体ブラウン水素を供給する前に、予め受入タンク561G内に貯蔵されていた液体グリーン水素の質量[kg]
【0132】
なお、水素輸入基地560Gで液体ブルー水素を受入れた場合、及び液体グリーン水素を受入れた場合についても、第2供給口520Gへ供給される当該カーボンフリー水素中の組成及びは、液体ブラウン水素の場合と同様に計算される。
【0133】
受入タンク561G内の混合液体水素は、ベーパーライザー563Gの出口水素は、気体であるが、標準状態(15℃)換算で液体水素の受入タンク561G内の水素質量割合と同じである。
【0134】
グリーン水素製造装置550Gで製造した製造グリーン水素及び受入タンク561G内の混合液体水素が第2供給口520Gへ供給される場合、供給される当該カーボンフリー水素中のブラウン水素の組成[体積%]、ブルー水素の組成[体積%]及びグリーン水素の組成[体積%]は、次の数式(数4)~(数6)の通り、計算される。
【0135】
={(’+)/(’+)}×100…(数4)
={()/(’+)}×100…(数5)
={()/(’+)}×100…(数6)
【0136】
数式中の記号の説明は、次の通りである。
’:グリーン水素製造装置550Gで製造され、第2供給口520Gへ供給された製造グリーン水素の容量[m
:予め受入タンク561G内に貯蔵されていて、第2供給口520Gへ供給された輸入グリーン水素の容量[m
:予め受入タンク561G内に貯蔵されていて、第2供給口520Gへ供給された輸入ブルー水素の容量[m
:予め受入タンク561G内に貯蔵されていて、第2供給口520Gへ供給された輸入ブラウン水素の容量[m
:追加で受入タンク561G内に供給され、第2供給口520Gへ供給された輸入ブラウン水素の容量[m
【0137】
なお、水素輸入基地560Gで液体ブルー水素を受入れた場合、及び液体グリーン水素を受入れた場合についても、第2供給口520Gへ供給される当該カーボンフリー水素中の組成及びは、液体ブラウン水素の場合と同様に計算される。
【0138】
水素輸入基地560Gでメチルシクロヘキサン(MCHと略記する場合がある。)をキャリアとして、受入タンク564Gで受け入れる場合、企業体Gの水素供給装置500Gは、図4(B)に示す構成を有する。
水素輸入基地560Gでブラウン水素を保持するMCH(ブラウン水素保持MCH-K)を受入れて、水素輸入基地560Gが有する受入タンク564Gに当該ブラウン水素保持MCH-Kを供給した場合、受入タンク564G内のブラウン水素保持MCH-Kの組成[質量%]、ブルー水素を保持するMCH(ブルー水素保持MCH-B)の組成[質量%]及びグリーン水素を保持するMCH(グリーン水素保持MCH-G)の組成[質量%]は、次の数式(数7)~(数9)の通り、計算される。
【0139】
={()/()}×100…(数7)
={()/()}×100…(数8)
={()/()}×100…(数9)
【0140】
数式中の記号の説明は、次の通りである。
:輸入して、受入タンク564G内へ供給されたブラウン水素保持MCH-Kの質量[kg]
:上述の輸入したブラウン水素保持MCH-Kを供給する前に、予め受入タンク564G内に貯蔵されていたブラウン水素保持MCH-Kの質量[kg]
:上述の輸入したブラウン水素保持MCH-Kを供給する前に、予め受入タンク564G内に貯蔵されていたブルー水素保持MCH-Bの質量[kg]
:上述の輸入したブラウン水素保持MCH-Kを供給する前に、予め受入タンク564G内に貯蔵されていたグリーン水素保持MCH-Gの質量[kg]
【0141】
前記数式(数7)~(数9)において、ブラウン水素保持MCH-Kを質量ではなく、容量に置き換えて、3種類のカーボンフリー水素のそれぞれの組成を計算してもよい。
【0142】
なお、水素輸入基地560Gでブルー水素保持MCH-Bを受入れた場合、及びグリーン水素保持MCH-Gを受入れた場合についても、液体ブラウン水素の場合と同様に計算される。
【0143】
受入タンク564G内の混合水素保持MCHは、水素脱離装置566Gの出口水素の組成は、気体であるが、標準状態(15℃)換算で、MCHの受入タンク564G内の水素質量割合と同じである。また、水素脱離後に精製したトルエン(TLと略す場合がある)は、輸入元へ返される。
【0144】
グリーン水素製造装置550Gで製造した製造グリーン水素及び受入タンク564G内の混合水素保持MCHが第2供給口520Gへ供給される場合、供給される当該カーボンフリー水素中のブラウン水素の組成[体積%]、ブルー水素の組成[体積%]及びグリーン水素の組成[体積%]は、前記数式(数4)~(数6)と同様に、計算される。
【0145】
カーボンリサイクル率算出手段2447は、回収した二酸化炭素を用いてカーボンリサイクル装置700C,700Fにて製造したカーボンリサイクル製品中の、二酸化炭素量の質量割合を計算する。
【0146】
電力スチームバランス最適化手段245は、後述する排熱利用手段800における排熱の有効利用を図る。
【0147】
サーバ送信手段27は、二酸化炭素供給制御情報を二酸化炭素供給制御手段330A,330Bに送信し、水素供給制御情報を水素供給制御手段530A,530B,530Gに送信する。
また、サーバ送信手段27は、二酸化炭素供給制御情報を二酸化炭素回収装置310A,310Bにも送信し、水素供給制御情報を水素回収装置510A,510B,510Gにも送信する。
【0148】
サーバ20は、安価で、サイバー攻撃に対しても安全であることから、いわゆるクラウド型のサーバであることが好ましい。このクラウド型のサーバには、コンビナートカーボンリサイクル管理情報の収納データ、会計アルゴリズム及び最適制御アルゴリズムが収納されていることが好ましい。
【0149】
(排熱利用手段)
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、二酸化炭素供給企業体ではない複数の企業体で発生した排熱と、二酸化炭素供給企業体内で発生した排熱と、を回収及び集約して、二酸化炭素回収装置310A,310Bへ供給するための排熱利用手段800を有する。排熱利用手段800は、企業体A~Gの少なくともいずれかの企業体に設置されていることが好ましく、企業体A~Gのすべてに設置されていることがより好ましい。排熱利用手段800により回収及び集約された排熱は、二酸化炭素回収装置310A,310Bによる二酸化炭素回収熱源として利用されることが好ましい。
二酸化炭素供給企業体ではない複数の企業体で発生した排熱とは、例えば、二酸化炭素供給企業体ではない企業体C,D,E,F,Gの少なくともいずれかの企業体で発生した排熱である。二酸化炭素供給企業体内で発生した排熱とは、例えば、二酸化炭素供給企業体である企業体A,Bの少なくともいずれかの企業体で発生した排熱である。
このようなカーボンリサイクルコンビナートの各企業体で発生した排熱を回収及び集約し、二酸化炭素回収熱源として有効利用することにより、コンビナートの電力スチームバランスが改善され、熱ロスが削減される。その結果、例えば、ボイラーの燃料(企業内でボイラー用燃料として使われている、最も高い価格の燃料の使用量、又は石炭の使量)が低減され、二酸化炭素の排出量も削減される。
したがって、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、コンビナート全体の電力スチーム最適化のために、低温排熱および中温排熱をコンビナートの熱回収システムに組み込んで、カーボンリサイクルコンビナート全体の電力スチームバランスをリアルタイムに全体制御することがより好ましい。
【0150】
排熱利用手段800は、例えば、低温排熱(例えば、約120℃~約130℃の排熱)及び中温排熱(例えば、約270℃~約500℃の排熱)の少なくともいずれかの温度領域の排熱を回収及び集約する。低温排熱は、例えば、低温低圧スチームや低温煙道排熱などである。
【0151】
排熱利用手段800は、カーボンリサイクル装置700C,700D,700E,700Fで発生した排熱の少なくともいずれかを回収することも好ましい。
【0152】
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートにおいて発生する低温排熱を、排熱利用手段800により低温低圧スチームとして回収及び集約すれば、二酸化炭素供給企業体が個別に(スタンドアローンで)回収及び集約する場合に比べて、低温排熱が発生しているより多くの企業体から幅広く、効率的に大量の排熱を回収し、二酸化炭素回収装置310A,310Bの熱源として利用することができる。
例えば、二酸化炭素を捕獲した溶液から二酸化炭素を脱離する方式の二酸化炭素回収装置を用いる場合、当該装置を有する企業体で発生する低温排熱だけでなく、近隣の低温排熱も排熱利用手段800により回収及び集約することで、二酸化炭素の回収コストを低減するとともに、省エネによって二酸化炭素の排出量を削減できる。
【0153】
また、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートにおいて発生する中温排熱(例えば、メタネーションの際に発生する排熱)を、排熱利用手段800により副生中温中圧スチームとして回収及び集約することによっても、低温排熱の場合と同様、より多くの企業体から幅広く、効率的に大量の排熱を回収し、二酸化炭素回収装置310A,310Bの熱源として利用することができる。
【0154】
二酸化炭素回収装置310A,310Bで、二酸化炭素を吸収した溶液から二酸化炭素を脱離するときの熱源は、低温低圧スチームヘッダー及び副生中温中圧スチームヘッダーからの供給を主とする。二酸化炭素の回収に適した温度に調整するため、高温高圧スチームヘッダーから高温高圧スチームを注入しなければならない場合もある。
そのためには、二酸化炭素回収装置310A,310Bのリボイラー(二酸化炭素脱離用の熱交換器)の前に、混合ホルダーを設置する。そして、低温低圧、中温中圧及び高温高圧のそれぞれのスチームヘッダーから分岐して、二酸化炭素回収装置310A,310Bのそれぞれのリボイラーに接続される分岐配管には、温度計、流量計及び流量コントロールバルブを設置する。
混合ホルダーにおけるスチーム温度のリアルタイム制御用システムは、コンビナートの全体管理システム内、又は二酸化炭素を回収する各企業体で、低温低圧、中温中圧及び高温高圧のそれぞれのスチーム量を、アルゴリズムを介してコントロールバルブの開度をリアルタイムで制御できるようにする。
【0155】
このように、カーボンリサイクル装置において発生する中温中圧スチームと、各企業体で発生する低温低圧スチームと、をパイプで集めて二酸化炭素回収に利用することで、各企業体(二酸化炭素の回収を実施する企業体及び余剰の低温低圧スチームを回収してもらった企業体)の電力スチームバランスを最適化改善でき、省エネ効果等も得られる。
排熱の利用をさらに最適化する観点から、サーバ20の制御手段24が電力スチームバランス最適化手段245(最適化アルゴリズム)を有していることが好ましく、このようなサーバ20と排熱利用手段800とが、情報ネットワークNWを介して、接続されていることも好ましい。この場合、電力スチームバランス最適化手段245は、各企業体で発生した排熱に関する情報をリアルタイムで集約し、二酸化炭素回収装置310A,310Bの稼働予定や稼働状況に応じて、排熱利用手段800にて回収及び集約したスチームを二酸化炭素回収装置310A,310Bに供給するように制御する。例えば、電力スチームバランス最適化手段245は、近隣各社から収集した排熱量をリアルタイムで収集、積算する。
この場合、電力スチームバランス最適化手段245は、まず、二酸化炭素回収装置310A,310Bの二酸化炭素回収必要量に応じて、必要回収熱量をリアルタイムに計算する。次いで、電力スチームバランス最適化手段245は、回収して、排熱利用手段800に供給すべき低温排熱量(低温低圧スチーム量)を各企業体に要請する。各企業体は、低温排熱量(低温低圧スチーム)を排熱利用手段800に供給した後、各企業体固有の電力スチームバランス最適化システムで、リアルタイムに用役設備(ボイラー、発電機等)の最適化負荷運転を行うことになる。
この一連の制御をリアルタイムに行うために、二酸化炭素回収装置310A,310Bの各々が、二酸化炭素脱離に必要な熱量を演算して、サーバ20に送信し、制御手段24が各企業体にむけて、排熱利用手段800に供給すべき低温低圧スチーム量を請求する。二酸化炭素脱離に必要な熱量としては、排熱利用手段800からの低温低圧スチーム量及び、二酸化炭素回収装置310A,310B各々の低温低圧スチーム量、中温中圧スチーム量、熱量調整用の高温高圧スチーム量である。
【0156】
(カーボンリサイクルコンビナート運営方法)
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムを使用した運営方法について以下に説明する。
【0157】
(最適確保量計算工程)
カーボンリサイクルを実施する企業体C,D,E,Fは、それぞれ、カーボンリサイクルに使用する予定の二酸化炭素及び水素の使用予定量及び使用予定圧力の少なくともいずれかの使用予定情報を、各端末10C,10D,10E,10Fの入力手段12にて入力する。入力手段12による使用予定量及び使用予定圧力は、オペレーター等が定期的(例えば、日々及び週間おきに)に入力手段12を使用して入力してもよいし、生産計画システムにて算出した使用予定量及び使用予定圧力を自動的に入力手段12に入力させてもよい。
次に、各端末10C,10D,10E,10Fの端末送信手段141は、入力された使用予定情報を、情報ネットワークNWを介してサーバ20に送信する。企業体Cは、カーボンリサイクルにおいて、エチレンを使用するので、企業体Cが使用予定情報としてのエチレンの使用予定量及び使用予定圧力についても端末10Cの入力手段12にて入力すると、端末送信手段141は、エチレンの使用予定情報をサーバ20へ送信する。
サーバ20の書込手段241は、端末送信手段141により送信された使用予定情報を記憶手段23の使用予定情報記憶手段233に記憶させる。
【0158】
また、二酸化炭素受入企業体としての企業体C,D,Eの二酸化炭素受入制御手段430C,430D,430Eは、それぞれ、二酸化炭素共通配管100から受入れて使用した二酸化炭素の受入情報を各端末10C,10D,10Eに送信し、端末送信手段141は、当該二酸化炭素の受入情報をサーバ20へ送信する。
また、水素受入企業体としての企業体C,Fの水素受入制御手段630C,630Fは、それぞれ、水素共通配管200から受入れて使用した水素の受入情報を各端末10C,10Fに送信し、端末送信手段141は、当該水素の受入情報をサーバ20へ送信する。
受入情報(受入量及び受入圧力)については、第1受入流量計434及び第2受入流量計634並びに第1受入圧力計433及び第2受入圧力計633からリアルタイムで入力手段12が自動的に入力する。
サーバ20の書込手段241は、端末送信手段141により送信された受入情報を記憶手段23の受入情報記憶手段232に記憶させる。
【0159】
サーバ20の報知手段242は、記憶手段23に記憶された情報を二酸化炭素供給企業体及び水素供給企業体の少なくともいずれかの企業体などへ報知する。具体的には、報知手段242は、受入情報記憶手段232及び使用予定情報記憶手段233に記憶された情報を、各端末10A~10Gからの要求に応じて、送信する。
【0160】
これにより、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、各企業体の二酸化炭素、水素及びエチレンの受入量及び受入圧力並びに使用予定量及び使用予定圧力から、コンビナート全体の二酸化炭素、水素及びエチレンの必要量を求め、その必要量を供給装置から供給できるように全体をリアルタイム管理する。
この際、サーバ20において、あるいは、各端末10A~10Gにおいて、コンビナート全体の二酸化炭素及び水素の最適確保量の計算を指令すると、サーバ20の計算手段244は、受入情報記憶手段232及び使用予定情報記憶手段233にそれぞれ記憶された企業体A~Gの二酸化炭素及び水素の受入量及び受入圧力と、今後の二酸化炭素及び水素の使用予定量及び使用予定圧力とに基づいて、二酸化炭素及び水素の最適確保量を計算する。つまり、サーバ20は、コンビナート全体として、最低コストで最大の効果を生むように、二酸化炭素及び水素の最適確保量を計算する。サーバ20のサーバ送信手段27は、二酸化炭素の最適確保量に関する情報を二酸化炭素供給企業体に送信し、水素の最適確保量に関する情報を水素供給企業体に送信する。
従って、二酸化炭素供給装置を所有する企業体A,Bでは、求められた二酸化炭素の最適確保量を確保できるように、二酸化炭素回収の生産計画を立てて、その計画に従って二酸化炭素供給装置を稼働させる。二酸化炭素供給装置の稼働によって生産された二酸化炭素は、二酸化炭素共通配管100を通じ、企業体C,D,Eへ供給される。なお、例えば、企業体A,Bの一方の二酸化炭素供給装置がトラブルやメンテナンス等で停止している場合には、他方の企業体の二酸化炭素供給装置での二酸化炭素供給量を増やす。
また、水素供給装置を所有する企業体A,B,Gでは、求められた水素の最適確保量を確保できるように、水素回収の生産計画を立てて、その計画に従って水素供給装置を稼働させる。水素供給装置の稼働によって生産された水素は、水素共通配管200を通じ、企業体C,Fへ供給される。なお、例えば、企業体A,B,Gの一方の水素供給装置がトラブルやメンテナンス等で停止している場合には、他方の企業体の水素供給装置での水素供給量を増やす。
このように各端末10A~10Gにおいて、企業体C~Fが、自らの二酸化炭素及び水素の使用量及び今後の二酸化炭素及び水素の使用予定量を入力するとともに、企業体C~Fが使用している二酸化炭素及び水素の使用量(二酸化炭素及び水素の直接的間接的な換算使用量を含む)及び今後の二酸化炭素及び水素の使用量(二酸化炭素及び水素の直接的間接的な換算使用量を含む)の使用予定量を確認できるようにしたので、二酸化炭素回収装置及び水素回収装置の少なくともいずれかを所有する企業体A,B,Gでは、コンビナート全体として必要な二酸化炭素及び水素の供給量を把握でき、それによって、二酸化炭素及び水素回収量の生産計画を立てることができる。
また、サーバ20の計算手段244は、企業体C~F全体の二酸化炭素及び水素の受入量及び使用予定量に基づいて二酸化炭素及び水素の最適確保量を自動的に計算でき、これらの最適確保量を簡易にかつ迅速に求めることができる。もし、二酸化炭素及び水素の供給量が需要量を下回った場合でも、計算手段244が、情報ネットワークNWを介して、各企業体A~Gのプラントの操業データ情報を判別し、いずれの企業体のプラントのどれだけの量の二酸化炭素及び水素の少なくともいずれかを提供するのが、コンビナート全体として最適かを判断する。
【0161】
(供給制御工程)
水素受入制御手段630C,630Fは、それぞれ、第2受入圧力計633で検出した圧力及び第2受入流量計634で検出した流量を、常時、水素回収装置510A,510B,510Gに送信する。本実施形態においては、水素受入制御手段630C,630Fは、それぞれ、端末10C,10F、サーバ20を介して、水素の受入情報を常時、水素回収装置510A,510B,510Gに送信する。
サーバ20の計算手段244は、受入情報に基づいて、二酸化炭素供給制御手段330A,330Bによる二酸化炭素の供給を制御するための二酸化炭素供給制御情報、及び水素供給制御手段530A,530B,530Gによる水素の供給を制御するための水素供給制御情報を生成する。サーバ送信手段27は、二酸化炭素供給制御情報を企業体A,Bの端末10A,10Bに送信し、水素供給制御情報を企業体A,B,Gの端末10A,10B,10Gに送信する。
【0162】
二酸化炭素回収装置310A,310Bは、サーバ送信手段27から送信された二酸化炭素供給制御情報に基づいて、常時、二酸化炭素回収装置310A,310Bの稼働状態を制御する。また、二酸化炭素回収装置310A,310Bは、報知手段242によって報知された使用予定情報に基づいて、常時、二酸化炭素回収装置310A,310Bの稼働状態を制御してもよい。
二酸化炭素供給制御手段は、二酸化炭素供給制御情報に基づいて、二酸化炭素共通配管100へ供給する二酸化炭素を制御する。具体的には、二酸化炭素供給制御手段330A,330Bは、端末10A,10Bを介して受信した二酸化炭素供給制御情報に基づいて二酸化炭素共通配管100内の圧力を一定に維持するように、二酸化炭素圧縮機331の送気圧力を制御する。
または、二酸化炭素回収装置310A,310Bは、端末10A,10Bを介して受信した二酸化炭素供給制御情報に基づいて、二酸化炭素共通配管100内の圧力を一定に維持するように、二酸化炭素回収装置310A,310Bの稼働状態を制御する。
【0163】
水素回収装置510A,510B,510Gは、サーバ送信手段27から送信された水素供給制御情報に基づいて、常時、水素回収装置510A,510B,510Gの稼働状態を制御する。例えば、水素回収装置510A,510B,510Gは、水素供給制御情報に基づいて、水素共通配管200内の圧力を一定に維持するように、稼働状態を制御する(例えば稼働量を変動させる)。このような稼働状態の制御により、水素使用量の大きな外乱を吸収できる。また、水素回収装置510A,510B,510Gは、報知手段242によって報知された使用予定情報に基づいて、常時、水素回収装置510A,510B,510Gの稼働状態を制御してもよい。
水素供給制御手段は、水素供給制御情報に基づいて、水素共通配管200へ供給する水素を制御する。具体的には、水素供給制御手段530A,530B,530Gは、端末10A,10B,10Gを介して受信した水素供給制御情報に基づいて水素共通配管200内の圧力を一定に維持するように、常時、水素圧縮機531の送気圧力を制御する。
【0164】
リアルタイム管理では、企業体A,Bの二酸化炭素圧縮機331を各二酸化炭素受入企業体が要請する消費圧力、又は各二酸化炭素受入企業体の協定最低圧に常時制御し、企業体A,B,Gの水素圧縮機531を各水素化炭素受入企業体が要請する消費圧力、又は各水素受入企業体の協定最低圧に常時制御する。
サーバ20のバルブ制御部26は、計算手段244が生成した二酸化炭素供給制御情報及び水素供給制御情報を基に、企業体A,Bの第1供給バルブ332、企業体A,B,Gの第2供給バルブ532の開度を制御し、二酸化炭素供給装置300A,300B及び水素供給装置500A,500B,500Gの圧送圧力を共通配管の必要最低圧力に設定する。
つまり、本実施形態のシステムによれば、二酸化炭素供給装置300A,300B及び水素供給装置500A,500B,500Gの圧送圧力を、最大の圧力を要求する企業体(二酸化炭素受入企業体又は水素受入企業体)に合わせて設定しなくても、それ以外の企業体の第1受入バルブ432及び第2受入バルブ632の開度を絞ることにより、圧送圧力を変えることなく、最大の圧力を要求する企業体への昇圧も可能である。
【0165】
(費用計算工程)
二酸化炭素受入装置400C,400D,400Eは、受入情報として、二酸化炭素共通配管100から受入れて使用した二酸化炭素の使用量をサーバ20へ送信し、水素受入装置600C,600Fは、受入情報として、水素共通配管200から受入れて使用した水素の使用量をサーバ20へ送信する。記憶手段23は、二酸化炭素の使用量及び水素の使用量を記憶し、費用計算手段2443は、二酸化炭素の使用量及び前記水素の使用量に基づいて、費用を計算する。
入力手段12は、二酸化炭素供給企業体としての企業体A,Bが二酸化炭素共通配管100へ供給した二酸化炭素の製造コストの算出に用いる情報及び水素供給企業体としての企業体A,B,Gが水素共通配管200へ供給した水素の製造コストの算出に用いる情報の製造コスト情報を入力する。端末送信手段141は、製造コスト情報を、サーバ20に送信する。
費用計算手段2443は、二酸化炭素の使用量(受入情報)及び二酸化炭素の製造コスト(製造コスト情報)に基づいて、二酸化炭素受入企業体が使用した二酸化炭素の費用の算出及び水素の使用量(受入情報)及び水素の製造コスト(製造コスト情報)に基づいて、水素受入企業体が使用した水素の費用を算出する。
【0166】
サーバ20の計算手段244は、二酸化炭素、水素、排熱等の使用により生じる費用、及び二酸化炭素実質削減量、カーボンクレジット計算、相互振替計算等を自動的に計算する。費用請求にあたって、企業体が互いに二酸化炭素、水素、排熱等を使用し合う場合は、計算手段244は、費用を相殺して計算する。さらに、これらの費用の他に、他の用役などを含めて互いに使用し合う場合は、サーバ20は、費用を相殺して計算する。このように費用を相殺して計算することにより、企業体間での実際の現金の授受が減り、手続きを簡略化できる。サーバ送信手段27は、費用情報について銀行に直接連絡する手段を有していてもよく、銀行口座にて自動振り込みとすることでさらに手続きを簡略化できる。
【0167】
サーバ20は、二酸化炭素共通配管100及び水素共通配管200の圧力及び流量のリアルタイム制御及び会計の結果を企業体A~Gの端末10A~10Gに常時配信し、端末10A~10Gの表示手段11に表示させる。
【0168】
(カーボンフリー率計算工程)
企業体Gの端末10Gの端末送信手段141は、水素共通配管200へ供給した製造グリーン水素の製造グリーン水素供給情報(製造グリーン水素供給量及び供給圧力)及び水素共通配管200へ供給した輸入カーボンフリー水素の輸入カーボンフリー水素供給情報(輸入カーボンフリー水素供給量及び供給圧力)をサーバ20に送信する。サーバ20の記憶手段23は、製造グリーン水素供給情報及び輸入カーボンフリー水素供給情報を記憶する。具体的には、供給情報記憶手段234が製造グリーン水素供給情報及び輸入カーボンフリー水素供給情報を記憶する。報知手段242は、記憶手段23に記憶された製造グリーン水素供給情報及び輸入カーボンフリー水素供給情報を、コンビナートを構成する複数の企業体に報知する。
【0169】
また、企業体Bの石炭ボイラー901Bの燃料として、例えば、燃料全質量中に20質量%の椰子殻又は森林廃材等のバイオ(再生可能)燃料を含む混合燃料を用いた場合、そのスチームで発電した電気量の20%はグリーン電気に該当する。グリーン電気を利用して製造した水素もグリーン水素(製造グリーン水素)に該当する。石炭と共に、バイオ燃料(再生可能燃料)を混合使用して発電された場合は、再生可能燃料の熱量割合がグリーン水素として換算されるので、このようなグリーン水素を受け入れた場合もカーボンリサイクル製品中のグリーン水素の割合として加味する。20質量%のバイオ(再生可能)燃料を利用して製造した水素のうち、20質量%分がグリーン水素である。なお、石炭ボイラーに使用する燃料中のバイオ(再生可能)燃料の割合は、20質量%に限定されない。
企業体Bの端末10Bの端末送信手段141も、端末10Gと同様、水素共通配管200へ供給した製造グリーン水素の製造グリーン水素供給情報(製造グリーン水素供給量及び供給圧力)をサーバ20に送信する。
【0170】
水素受入装置600C,600Fは、それぞれ、水素共通配管200から受入れてカーボンリサイクル装置700C,700Fに供給した製造グリーン水素量及び輸入カーボンフリー水素量の少なくともいずれかを含む合計カーボンフリー水素量を水素受入制御手段630C,630Fにて検出させ、当該合計カーボンフリー水素量をサーバ20に送信する。サーバ20の記憶手段23は、合計カーボンフリー水素量を記憶する。具体的には、受入情報記憶手段232が合計カーボンフリー水素量を記憶する。計算手段244(具体的には、カーボンフリー率算出手段2446)は、カーボンリサイクル装置700C,700Fにて二酸化炭素をリサイクルして得たカーボンリサイクル製品中の、合計カーボンフリー水素量の質量割合を計算する。
【0171】
(カーボンリサイクル率計算工程)
計算手段244(具体的には、カーボンリサイクル率算出手段2447)は、回収した二酸化炭素を用いてカーボンリサイクル装置700C,700Fにて製造したカーボンリサイクル製品中の、二酸化炭素量の質量割合を計算する。
二酸化炭素受入装置400C,400D,400Eは、二酸化炭素共通配管100から受入れてカーボンリサイクル装置に供給した二酸化炭素量を二酸化炭素受入制御手段430C,430D,430Eにて検出させて、二酸化炭素量をサーバ20に送信する。記憶手段23は、二酸化炭素量を記憶する。具体的には、受入情報記憶手段232が二酸化炭素量を記憶する。
【0172】
カーボンリサイクル率算出手段2447は、受入情報記憶手段232が記憶した二酸化炭素量(カーボンリサイクル装置に供給した二酸化炭素量)と、二酸化炭素の供給を受けたカーボンリサイクル装置にて製造したカーボンリサイクル製品量とに基づいて、当該カーボンリサイクル製品中の、二酸化炭素量の質量割合を計算する。
【0173】
カーボンフリー率算出手段2446及びカーボンリサイクル率算出手段2447による、カーボンリサイクル製品中のカーボンフリー水素の質量割合及び二酸化炭素の質量割合の計算は、例えば、次のように実行される。カーボンリサイクル製品中、例えば、カーボンリサイクル装置で製造したメタノール中のグリーン水素量の質量割合及び二酸化炭素の質量割合を計算する方法は、以下の通りである。メタノールの直接合成反応式は、以下の通りである。
CO+3H→CHOH+H
上記反応式中の左辺の「3H」がグリーン水素の受け入れ量に相当し、左辺の「CO」が二酸化炭素の受け入れ量に相当し、右辺のメタノール「CHOH」中の4つのHがグリーン水素量に相当し、右辺のメタノール「CHOH」中の1つのCが二酸化炭素量に相当する。このようにカーボンリサイクル製品としてのメタノール中のグリーン水素量及び二酸化炭素量を規定して、メタノール中のグリーン水素量の質量割合及び二酸化炭素の質量割合を計算する。但し、理論上の計算値であり、理論式に基づき、ロス量、未反応量を含む実験式から割合を算出する。
【0174】
(営業情報の公開工程)
サーバ20の公開手段243は、営業情報記憶手段235に記憶された営業情報(たとえば、二酸化炭素、水素、低温排熱、カーボンクレジットの値段など)を端末10A~10Gに公開する。各需要者(二酸化炭素受入企業体及び水素受入企業体)は、これら営業情報を基に各種カーボンリサイクル製品生産量の生産計画を立てる。そして、各需要者が各端末10A~10Gから生産計画を入力すれば、供給側(二酸化炭素供給企業体及び水素供給企業体)は、各需要者の生産計画を確認しながら二酸化炭素回収及び水素回収の生産計画を立案する。
【0175】
(排熱利用の制御工程)
サーバ20は、排熱利用手段800で回収及び集約した排熱(低温排熱、メタネーション回収熱等)も一括管理する。サーバ20は、各企業体から回収及び集約した排熱を計算する。各企業体では、各企業体が有する最適電力-蒸気システムで計算し最適な運転指針を提示する。
【0176】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、コンビナートで発生する二酸化炭素を大幅に回収し、二酸化炭素及び水素の回収量、使用予定量、並びに受入量等、エチレン及び関連用役等の消費量に加えて、カーボンリサイクル製品の生産量を企業体間で共有化すると共にリアルタイムに一括制御及び一括管理できる。
また、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、二酸化炭素、水素、エチレン、排熱、既存設備(例えば、供給装置等)、用役、メタノール等のカーボンリサイクル製品を共同利用して有効活用できる。
その結果、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、カーボンリサイクルに係るランニングコストの低減、在庫量の低減、新たな投資の低減、維持管理費等のコスト低減並びに省力化を同時に達成できる。しかも、メタノール等のカーボンリサイクル製品の製造装置(カーボンリサイクル装置)の大型化が可能となり、かつ、用役供給設備、貯槽、入出荷設備なども共通で有効利用できることで、新たな投資及び維持管理費を抑制し、コンビナート全体としてコスト低減を実現できる。
なお、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムを有さない場合、二酸化炭素回収装置を常時、多めに稼働しなければならず、かつ、二酸化炭素及び水素の送気圧力を常時、要求する企業体の最大圧力に圧縮機を稼働させなくてはならない。
【0177】
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、サーバ20は、二酸化炭素受入制御手段430C,430D,430E及び水素受入制御手段630C,630Fの受入流量計からの信号を基に、各供給制御手段の供給バルブ及び各受入制御手段の受入バルブの開度を制御できるので、二酸化炭素供給装置300A,300Bの回収量及び圧送圧力、並びに水素供給装置500A,500B,500Gの回収量及び圧送圧力を、各企業体のカーボンリサイクル仕上がり製品量の原料として必要最小限に設定でき、省エネ効果も期待できる。
【0178】
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、二酸化炭素及び水素等の使用により生じる費用を自動的に計算し、請求業務等の業務負担を軽減できる。
更に、本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、カーボンクレジット制度が導入された場合でも、前述と同様に、自動的にクレジット料金を加味して計算できるので、省力化しつつ、かつ正確な料金を計算することができる。
【0179】
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、コンビナートで余剰の低温低圧蒸気を回収して、低温低圧蒸気を二酸化炭素の回収に必要な熱量として有効活用できるので、特に夏場等で余剰になっている熱を有効利用できることと、また、場合によっては、使いにくい中温中圧蒸気も有効活用できるので、かかる中低温排熱の利用先を増やすことで、各事業所の電力-蒸気バランスも改善され企業体全体の用役効率も向上する。
【0180】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態について説明する。
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、第一実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムに加えて、当該コンビナートの企業体だけでなく、当該コンビナートの近隣の鉄鋼関連、電力関連及びCCS(二酸化炭素の回収及び貯蔵)関連の少なくともいずれかの企業体からも二酸化炭素を受入れ可能な構成、並びにカーボンリサイクルコンビナートから払い出された二酸化炭素を受入れ可能な構成の少なくともいずれかをさらに有する点で、第一実施形態と相違する。以下の説明では、第一実施形態との相違に係る部分を主に説明し、重複する説明については省略又は簡略化する。
【0181】
本実施形態では、企業体A,B(図2参照)の他に、企業体H(図7参照)及び企業体J(図8参照)も、それぞれ、二酸化炭素供給装置300H,300Jを所有し、企業体A,B,H,Jが二酸化炭素の回収及び供給を管理している。
本実施形態における企業体H,Jにも、それぞれ、端末10H,10Jが設置されている(図9参照)。端末10H,10Jは、それぞれ、情報ネットワークNWを通じて企業体A~G,H,Jの間での情報交換及びサーバ20と情報交換を行う。端末10H,10Jの具体的態様は、それぞれ、第一実施形態で説明した端末10A~10Gと同様であるため、説明を省略又は簡略化する。
【0182】
(カーボンリサイクルコンビナート外からの二酸化炭素の受入れ)
図7は、本発明の一実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートにおける企業体と二酸化炭素共通配管との接続を示す概略図である。本実施形態において、二酸化炭素共通配管100は、カーボンリサイクルコンビナート外の企業体から二酸化炭素の供給を受けるための外部受入口と、カーボンリサイクルコンビナート外の企業体へ二酸化炭素を供給するための外部供給口と、を有する。
図7には、二酸化炭素の供給用配管によって互いに連結された鉄鋼関連、電力関連及びCCS関連の少なくともいずれかの企業体である企業体H(二酸化炭素供給企業体)と、二酸化炭素共通配管100とが、示されている。本実施形態の企業体Hと二酸化炭素共通配管100との接続は、第一実施形態で説明した二酸化炭素共通配管100のいずれかの箇所に対して接続されているものとする。
企業体Hから二酸化炭素共通配管100まで敷設された供給用配管は、外部受入口320Hに連結されている。また、図7に示されているように、本実施形態の一態様においては、二酸化炭素共通配管100は、外部供給口350Hを有する。外部供給口350Hには、二酸化炭素共通配管100から二酸化炭素を払い出すための払出し用配管350Pが接続されている。
【0183】
二酸化炭素供給装置300Hは、企業体Hで生成した二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置310Hと、二酸化炭素の供給を制御する二酸化炭素供給制御手段330Hと、を有する。二酸化炭素供給制御手段330Hは、供給用配管によって、二酸化炭素共通配管100の外部受入口320Hに接続されている。二酸化炭素供給装置300H、二酸化炭素回収装置310H、及び二酸化炭素供給制御手段330Hの具体的態様は、それぞれ、第一実施形態で説明した二酸化炭素供給装置300A,300B、二酸化炭素回収装置310A,310B、及び二酸化炭素供給制御手段330A,330Bと同様であるため、説明を省略又は簡略化する。
【0184】
本実施形態においては、企業体Hは、例えば、図7に示すように、二酸化炭素を発生させる装置として発電装置等900Hを有する。発電装置等900Hとしては、例えば、発電装置(ボイラー発電及びガスタービン発電装置等)並びにボイラー(石炭ボイラー等)が挙げられる。発電装置等900Hで発生した排気ガスは、図示しない脱硫装置及び脱硝装置で脱硫及び脱硝される。二酸化炭素回収装置310Hは、脱硫及び脱硝後の排ガスから二酸化炭素を回収する。二酸化炭素回収装置310Hにて回収した二酸化炭素は、第一実施形態と同様にして、二酸化炭素供給装置300Hを介して、二酸化炭素共通配管100に供給される。
【0185】
二酸化炭素回収装置310H、及び二酸化炭素供給制御手段330Hは、図9に示すように、端末10Hと接続されている。二酸化炭素供給制御手段330Hは、供給情報(企業体Hが二酸化炭素共通配管100へ供給した二酸化炭素の供給量及び供給圧力に関する情報)を、端末10Hを介して、サーバ20に送信する。
また、端末10Hからサーバ20へ送信する供給情報には、二酸化炭素の純度等の品質に関する情報(品質情報)を含めてもよい。二酸化炭素の品質情報は、例えば、端末10Hの入力手段12を利用して、端末10Hへ入力することができる。端末10Hの記憶手段13に二酸化炭素の品質情報を記憶させることもできる。
【0186】
本実施形態において、外部供給口350Hに接続された払出し用配管350Pは、CCS(二酸化炭素の回収及び貯蔵)関連の企業体、及び二酸化炭素のパイプライン販売先の企業体の少なくともいずれかの企業体と接続されている。二酸化炭素共通配管100に払出し用配管350Pが接続されていることにより、カーボンリサイクルコンビナートで生成した二酸化炭素を、当該コンビナート外のCCS関連の企業体等へ払い出すことができる。払出し用配管350Pには、流量計、圧力計、温度計、及び純度計が接続されていることが好ましい。流量計、圧力計、温度計、及び純度計によって検出されたカーボンリサイクルコンビナート外へ払い出された二酸化炭素の払出し情報もサーバ20へ送信されることが好ましい。
【0187】
(二酸化炭素の海上入出荷及び陸上入出荷)
図8には、二酸化炭素の受入れ及び払出しの構成を説明するための概略図が示されている。図8には、具体的には、二酸化炭素の海上受入れ(海上入荷)及び海上払出し(海上出荷)、並びに二酸化炭素の陸上受入れ(陸上入荷)及び陸上払出し(陸上出荷)するための設備及び装置等の概略図が示されている。なお、本明細書において、入荷及び出荷をまとめて入出荷と称する場合がある。
二酸化炭素の海上入出荷としては、例えば、海外の液化二酸化炭素(液化CO)の受入れ及び払出し、CCS関連の企業体への払い出しが挙げられる。
陸上の場合は、運搬量(ロット)が少ないので、二酸化炭素の陸上入出荷としては、CCS基地からの二酸化炭素の受入れ及びCCS基地への払出し、液化炭酸の販売出荷が挙げられる。
【0188】
本実施形態では、企業体Jが、二酸化炭素の海上受入れ及び海上払出し(海上入出荷)並びに二酸化炭素の陸上受入れ及び陸上払出し(陸上入出荷)するための設備及び装置等を有する場合が例示される。企業体Jは、二酸化炭素受入企業体であると共に、二酸化炭素供給企業体でもある。なお、本発明は、本実施形態の例示に限定されず、カーボンリサイクルコンビナート内の他の企業体が、このような二酸化炭素の受入れ及び出荷のための設備及び装置等を有していてもよい。
【0189】
本実施形態の企業体Jと二酸化炭素共通配管100との接続は、第一実施形態で説明した二酸化炭素共通配管100のいずれかの箇所に対して接続されているものとする。
【0190】
本実施形態において、企業体Jは、二酸化炭素供給装置300Jと、二酸化炭素受入装置400Jと、二酸化炭素の受入れ及び払出し(出荷)できる二酸化炭素入出荷基地460Jと、を有する。
【0191】
二酸化炭素受入装置400Jは、二酸化炭素共通配管100から二酸化炭素を受入れて二酸化炭素入出荷基地460Jへ二酸化炭素を供給する装置である。
二酸化炭素受入装置400Jは、二酸化炭素受入制御手段430Jを有する。二酸化炭素受入制御手段430Jは、二酸化炭素共通配管100との外部供給口420Jに接続されている。二酸化炭素受入装置400Jと二酸化炭素共通配管100とは、受入用配管によって接続されている。二酸化炭素受入制御手段430Jの具体的態様は、それぞれ、第一実施形態で説明した二酸化炭素受入制御手段430C,430D,430Eと同様であるため、説明を省略又は簡略化する。
【0192】
二酸化炭素受入制御手段430Jは、図9に示すように、端末10Jと接続されている。端末10Jは、二酸化炭素受入制御手段430Jで検出した値(受入情報:企業体Jが二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素の受入量及び受入圧力に関する情報)をサーバ20に送信する。サーバ20は、企業体Jから送信された受入情報を、二酸化炭素供給企業としての企業体A,Bの端末10A,10Bに送信する。企業体Jの受入情報が企業体A,Bに送信されることにより、カーボンリサイクルコンビナートにおける二酸化炭素の発生及び消費のバランスを管理し易くなる。
また、企業体Jが受け入れる予定の二酸化炭素の受入予定量及び受入予定圧力に関する受入予定情報も端末10Jの入力手段12にて入力し、記憶手段13に記憶させてもよい。企業体Jの受入予定情報も、端末10Jからサーバ20へ送信し、サーバ20は、企業体Jから送信された受入予定情報を、二酸化炭素供給企業としての企業体A,Bの端末10A,10Bに送信させてもよい。企業体Jの受入予定情報も企業体A,Bに送信されることにより、カーボンリサイクルコンビナートにおける二酸化炭素の発生及び消費のバランスを管理し易くなる。例えば、受入予定情報は、月間の使用予定、週間の使用予定、及び日ごとの使用予定に関する情報を含んでいる。
【0193】
二酸化炭素供給装置300Jは、二酸化炭素入出荷基地460Jで液化COを気化して得られた気体COを圧縮して二酸化炭素共通配管100へ供給する装置である(二酸化炭素供給装置300Jを「液化CO由来の気体CO供給装置」と称する場合もある)。二酸化炭素供給装置300Jは、二酸化炭素の供給を制御する二酸化炭素供給制御手段330Jを有する。二酸化炭素供給装置300Jの二酸化炭素供給制御手段330Jは、二酸化炭素入出荷基地460Jと接続されている。二酸化炭素供給制御手段330Jは、供給用配管によって、二酸化炭素共通配管100の外部受入口320Jに接続されている。二酸化炭素供給制御手段330Jの具体的態様は、それぞれ、第一実施形態で説明した二酸化炭素供給制御手段330A,330Bと同様であるため、説明を省略又は簡略化する。
【0194】
二酸化炭素供給制御手段330Jは、図9に示すように、端末10Jと接続されている。二酸化炭素供給制御手段330Jは、供給情報(企業体Jが二酸化炭素共通配管100へ供給した二酸化炭素の供給量及び供給圧力に関する情報)を、端末10Jを介して、サーバ20に送信する。
また、端末10Jからサーバ20へ送信する供給情報には、二酸化炭素の純度等の品質に関する情報(品質情報)を含めてもよい。二酸化炭素の品質情報は、例えば、端末10Jの入力手段12を利用して、端末10Jへ入力することができる。端末10Jの記憶手段13に二酸化炭素の品質情報を記憶させることもできる。
【0195】
二酸化炭素入出荷基地460Jは、液化COを貯蔵する液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jと、液化二酸化炭素運搬船463Jから液化COを揚げ荷する専用のローディングアーム462Jと、液化二酸化炭素を輸送する輸送手段としてのローリー464Jから液化COを揚げ荷する専用のローディングアーム465Jと、液化COの気化器(ベーパライザー)466Jと、気体の二酸化炭素(気体CO)を液化する二酸化炭素液化装置467Jと、を有する。
【0196】
二酸化炭素入出荷基地460Jは、二酸化炭素供給制御手段330J及び二酸化炭素受入制御手段430Jと接続されている。
【0197】
液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jは、二酸化炭素純度測定装置4611Jを有する。二酸化炭素純度測定装置4611Jは、タンク内の純度を、常時、オンラインで自動計測記録する。
【0198】
二酸化炭素液化装置467Jは、二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素を原料として、二酸化炭素を液化する装置である。二酸化炭素液化装置467Jは、二酸化炭素受入制御手段430Jの第1受入バルブ432、及び液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jと接続されている。企業体Jが二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素は、二酸化炭素受入制御手段430Jを介して、二酸化炭素液化装置467Jに供給され、供給された二酸化炭素は、圧縮されて液化COが製造され、製造された液化COは、液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jへ供給されて、貯蔵される。
【0199】
なお、第一実施形態で説明した通り、企業体Eのカーボンリサイクル装置700Eは、二酸化炭素を液化する装置である。企業体Eで製造した液化COは、企業体Eが自らは出荷せずに、例えば、企業体Eのカーボンリサイクル装置700Eと企業体Jの液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jとを配管で接続し、カーボンリサイクル装置700Eで製造した液化COが液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jへ供給されて、貯蔵される構成としてもよい。
【0200】
ローディングアーム462J,465Jは、それぞれ、液化CO供給配管4601Jを介して、液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jと接続されている。ローディングアーム462J,465Jが揚げ荷した液化COは、液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jへ供給されて、貯蔵される。
また、本実施形態においては、液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jに貯蔵された液化COは、液化CO供給配管4601Jを介して、ローディングアーム462J,465Jに供給することもできる。
ローディングアーム462Jは、液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jに貯蔵された液化COを液化二酸化炭素運搬船463Jに移送して海上出荷することもできる。
ローディングアーム465Jは、液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jに貯蔵された液化COをローリー464Jに移送して陸上出荷することもできる。
すなわち、液化CO供給配管4601Jは、液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jとローディングアーム462J,465Jとの間で、液化COを双方向に供給することもできる。
【0201】
液化COの気化器(ベーパライザー)466Jは、液化二酸化炭素貯蔵タンク461J及び二酸化炭素供給制御手段330Jの二酸化炭素圧縮機331と接続されている。気化器466Jは、液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jから供給された液化COを気化し、気体COを二酸化炭素圧縮機331へと供給する。二酸化炭素供給装置300Jは、二酸化炭素圧縮機331で圧縮された気体COを二酸化炭素共通配管100へ供給する。
【0202】
(サーバ)
本実施形態において、サーバ20は、企業体A~G,H,Jに設置された端末10A~10G,10H,10Jと情報交換を行って、カーボンリサイクルに係る二酸化炭素及び水素等の原料並びに用役等を一括管理する。サーバ20の具体的態様は、それぞれ、第一実施形態で説明したサーバ20と同様であるため、説明を省略又は簡略化する。
【0203】
本実施形態においては、サーバ20は、企業体H,Jが二酸化炭素共通配管100へ二酸化炭素を供給した場合に、供給元の企業体H,Jへ支払う費用を計算して、支払うための支払いシステムを有する。この支払いシステムの一例として、例えば、サーバ20の二酸化炭素製造コスト算出手段2444は、企業体H,Jの端末10H,10Jからサーバ20に送信された供給情報に基づいて、第一実施形態と同様、企業体H,Jの二酸化炭素の製造コストを算出する。なお、サーバ20は、当該支払いシステムを有していなくてもよく、この場合は、企業体H,Jの提示価格(定期的な事前協定価格)に準じて費用を支払が支払われる。
【0204】
(カーボンリサイクルコンビナート運営方法)
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムを使用した運営方法には、第一実施形態で説明した内容に加えて、以下の点が含まれる。
【0205】
企業体H,Jが二酸化炭素共通配管100へ二酸化炭素を供給する際、又は企業体Jが二酸化炭素共通配管100から二酸化炭素を受入れる際に、二酸化炭素共通配管100内の二酸化炭素の純度を、所定値以上に制御する。
【0206】
本実施形態においては、企業体Jによる二酸化炭素の受入れ及び払出しは、同一の液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jに貯蔵された液化COを利用する。そのため、液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jに貯蔵された液化COの純度は、コンビナート内の各企業体で使用可能な純度以上、かつ、企業体Jの液化COの出荷先が要求する純度以上に維持される。二酸化炭素純度測定装置4611Jが、液化二酸化炭素貯蔵タンク461J内の純度を、常時、オンラインで自動計測記録することにより、企業体Jは、要求される液化COの純度以上であることを管理し易い。また、例えば、企業体Jは、液化二酸化炭素運搬船463J又はローリー464Jによって二酸化炭素入出荷基地460Jへ運搬され
た液化COが、液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jに貯蔵される液化COに要求される純度等の品質基準を満たすか確認する。品質基準に満たない液化COを液化二酸化炭素貯蔵タンク461J内に受け入れることを防止することで、液化二酸化炭素貯蔵タンク461J内の液化COの品質基準を管理し易くなる。
【0207】
企業体H,Jが二酸化炭素共通配管100へ二酸化炭素を供給する際、又は企業体Jが二酸化炭素共通配管100から企業体内に二酸化炭素を受入れる際に、二酸化炭素共通配管100内の二酸化炭素(気体CO)の圧力を、所定圧力以上に制御する。
本実施形態においては、二酸化炭素供給制御手段330A,330B,330H,330Jの少なくともいずれかにより、二酸化炭素共通配管100の圧力を一定に制御できる。
本実施形態においても、サーバ20の計算手段244は、第一実施形態と同様にして、二酸化炭素の供給を制御するための二酸化炭素供給制御情報を生成する。サーバ送信手段27は、二酸化炭素供給制御情報を企業体A,B,H,Jの端末10A,10B,10H,10Jに送信する。
二酸化炭素回収装置310H、及び二酸化炭素供給装置300Jは、二酸化炭素回収装置310A,310Bと同様、サーバ送信手段27から送信された二酸化炭素供給制御情報に基づいて、常時、二酸化炭素回収装置310H、及び二酸化炭素供給装置300Jの稼働状態を制御する。また、二酸化炭素回収装置310H、及び二酸化炭素供給装置300Jは、報知手段242によって報知された使用予定情報に基づいて、常時、二酸化炭素回収装置310H、及び二酸化炭素供給装置300Jの稼働状態を制御してもよい。
二酸化炭素供給制御手段330H,330Jは、二酸化炭素供給制御手段330A,330Bと同様、端末10H,10Jを介して受信した二酸化炭素供給制御情報に基づいて二酸化炭素共通配管100内の圧力を一定に維持するように、二酸化炭素圧縮機331の送気圧力を制御する。
または、二酸化炭素回収装置310H、及び二酸化炭素供給装置300Jは、端末10H,10Jを介して受信した二酸化炭素供給制御情報に基づいて、二酸化炭素共通配管100内の圧力を一定に維持するように、二酸化炭素回収装置310H、及び二酸化炭素供給装置300Jの稼働状態を制御する。
【0208】
サーバ20は、外部サイト(企業体H,J)における気体COの製造量、二酸化炭素共通配管100への供給流量及び供給圧力をリアルタイムで制御する。リアルタイム制御は、第一実施形態で説明した「供給制御工程」と同様に実施される。
【0209】
企業体Jが二酸化炭素共通配管100から二酸化炭素を受入れる場合、企業体A,B,Jは、受入れる二酸化炭素(気体CO)の圧力を、企業体A,Bの第1供給圧力計333、並びに企業体Jの第1受入圧力計433にて、常時監視する。
企業体Jが二酸化炭素共通配管100から受入れる気体COの圧力が所定圧力以上である場合、緊急リリーフが作動し、企業体A,Bの二酸化炭素圧縮機331の稼働を低下制御する(送気圧力を低下させる)。
企業体Jが二酸化炭素共通配管100から受入れる気体COの圧力が所定圧力未満である場合、企業体A,Bの二酸化炭素圧縮機331を作動させる(送気圧力を増加させる)。
【0210】
企業体H,Jが二酸化炭素共通配管100へ二酸化炭素を供給する際、又は二酸化炭素共通配管100から二酸化炭素を受入れる際に、供給量及び受入れ量を管理する。供給量及び受入れ量の管理は、通常時、定期補修工事(SDM;Shut Down Maintenance)時、又は緊急時に実施される。
【0211】
通常時においては、サーバ20は、月間、週間、及び日々の確定数量を管理する。
本実施形態においては、サーバ20のサーバ送信手段27は、第一実施形態と同様の二酸化炭素の最適確保量に関する情報を二酸化炭素供給企業体(企業体A,B,H,J)に送信する。
サーバ20は、外部サイト(企業体H,J)から供給された二酸化炭素の供給量(供給情報)と、カーボンリサイクル装置に必要な二酸化炭素量とを加味したコンビナート内の二酸化炭素回収装置310A,310Bの稼働計画を立てる。
二酸化炭素供給装置を所有する企業体A,B,H,Jでは、求められた二酸化炭素の最適確保量を確保できるように、二酸化炭素の回収又は製造の計画を立てて、その計画に従って二酸化炭素供給装置等を稼働させる。
【0212】
カーボンリサイクルコンビナートの二酸化炭素供給装置がトラブル等で緊急停止した場合には、サーバ20は、企業体A,B,H,Jの内、停止していない二酸化炭素供給装置から二酸化炭素共通配管100への供給を増やすように二酸化炭素供給制御情報を生成し、供給量を増やしたい企業体へ当該情報を送信することで、二酸化炭素の供給状態を制御する。例えば、コンビナート外の企業体Hから二酸化炭素を二酸化炭素共通配管100に受入れて、当該停止による二酸化炭素の不足量を補うこともできる。また、企業体Jの液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jに貯蔵されている液化COを気化させて、気体COを二酸化炭素共通配管100に受入れて、当該停止による二酸化炭素の不足量を補うこともできる。
【0213】
カーボンリサイクル装置が緊急停止した際には、例えば、コンビナート外のCCS関連等の企業体は、二酸化炭素共通配管100の外部供給口350Hから払出し用配管350Pを通じて、二酸化炭素を受入れたり、企業体Jは、二酸化炭素共通配管100の外部供給口420Jから二酸化炭素を受入れて、受入れた二酸化炭素を液化して液化二酸化炭素貯蔵タンク461Jにて貯蔵したりすることができる。
【0214】
また、カーボンリサイクルコンビナートの二酸化炭素回収装置、又はカーボンリサイクル装置が定期補修工事により停止している際には、サーバ20は、企業体H,Jから二酸化炭素共通配管100への二酸化炭素の供給量、又は二酸化炭素共通配管100から企業体H,Jへの受入れ量の計画量も管理する。
【0215】
サーバ20は、企業体H,Jが二酸化炭素共通配管100へ二酸化炭素を供給した場合、供給元の企業体H,Jへの費用支払いシステムを有することが好ましい。
また、サーバ20は、企業体H,Jから受入れた二酸化炭素(企業体H,Jから二酸化炭素共通配管100へ供給された二酸化炭素)の二酸化炭素受入量と、カーボンリサイクルコンビナート内の二酸化炭素供給企業体(企業体A,B)から二酸化炭素共通配管100へ供給されてカーボンリサイクルコンビナート外の企業体(例えば、企業体JやCCS関連等の企業体)へ払い出された二酸化炭素の二酸化炭素払出量とで二酸化炭素量を振り替えることも可能である。例えば、カーボンリサイクルコンビナート内外の企業体において二酸化炭素の単価が同等である場合には、サーバ20は、当該二酸化炭素受入量と当該二酸化炭素払出量との差分に二酸化炭素の単価を乗じて、二酸化炭素の振替に関する費用を、費用計算手段2443に計算させることもできる。二酸化炭素の振替に関する費用の計算は、月締めで行うこともできる。
【0216】
カーボンリサイクルコンビナートの企業体が、二酸化炭素の回収をコンビナート外の外部サイト(例えば、企業体J)に委託する場合、二酸化炭素の回収コスト等は、回収委託元の企業体から、当該外部サイトに支払われる。例えば、企業体Jがカーボンリサイクルコンビナート管理システムに参入している場合は、サーバ20の費用計算手段2443は、企業体Jが二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素の量(受入情報)、及び液化二酸化炭素の製造コスト(製造コスト情報)に基づいて、二酸化炭素回収費用を算出する。また、二酸化炭素の回収を委託された企業体が、二酸化炭素の単なる二酸化炭素パイプライン販売会社である場合は、(事前契約により)当該販売会社が提示したコストに準じて費用が支払われる。
企業体Jがカーボンリサイクルコンビナートの企業体から二酸化炭素を受入れた場合、企業体Jで発生した二酸化炭素量は、企業体Jが二酸化炭素共通配管100から受入れた二酸化炭素の量を差し引いて、計算される。
企業体Jがカーボンリサイクルコンビナート管理システムに参入しており、気化した二酸化炭素を企業体Jから二酸化炭素共通配管100に供給する場合のコストも、サーバ20で算出することが好ましい。
また、CCS関連の企業体が二酸化炭素共通配管100から二酸化炭素を受入れた場合、当該CCS関連の企業体が提示した価格に基づき、二酸化炭素の回収及び貯蔵費用が、二酸化炭素共通配管100に二酸化炭素を供給した企業体から当該CCS関連の企業体へ支払われる。
【0217】
本実施形態に係るカーボンリサイクルコンビナートにおいて、カーボンリサイクルにし使用する二酸化炭素として、当該コンビナート内で発生又は生成した二酸化炭素を優先的に使用し、不足した際に、企業体H及び企業体Jから二酸化炭素共通配管100へ二酸化炭素を供給することも好ましい。
【0218】
二酸化炭素の出荷の場合も上述と類似のシステムを用意するが、但し、設備及び制御方法は二酸化炭素の受入れと同じである。
【0219】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良等は、本発明に含まれる。
【0220】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートを構成する企業体の数は、前記実施形態の例に限定されず、本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートは、少なくとも2つの企業体で構成されていればよい。
【0221】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートを構成する複数の企業体は、二酸化炭素供給企業体と二酸化炭素受入企業体との組み合わせを含み、水素供給企業体と水素受入企業体とを含んでいなくてもよい。この場合は、二酸化炭素受入企業体内で発生した水素と、二酸化炭素供給企業体から供給された二酸化炭素とを用いてカーボンリサイクル製品を製造してもよいし、二酸化炭素供給企業体から供給された二酸化炭素だけを用いて液化炭酸又は二酸化炭素強化コンクリートを製造してもよいし、二酸化炭素供給企業体から供給された二酸化炭素と二酸化炭素受入企業体内で製造又は他の企業体から供給されたエチレンとを用いてSAPを製造してもよい。
【0222】
カーボンリサイクルを実施する企業体は、水素共通配管から受入れた水素をカーボンリサイクルに使用するだけでなく、例えば、輸入した水素や他のコンビナートから受入れた水素をカーボンリサイクルに使用してもよい。輸入水素の場合は、水素輸入基地をコンビナート共通で設置するか、水素を利用する少なくともいずれかの企業体(例えば、最も水素使用量が多い企業体)に設置することが好ましい。なお、水素輸入基地は、カーボンフリー水素ではない水素を輸入する基地でもよい。また、前記実施形態において、企業体Gが、水素供給装置として、グリーン水素を製造するグリーン水素製造装置及びカーボンフリー水素輸入基地の両方を有する態様を例示したが、本発明は、このような態様に限定されない。例えば、グリーン水素製造装置及びカーボンフリー水素輸入基地が、それぞれ、異なる企業体に設置されていてもよい。
【0223】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートを構成する複数の企業体は、水素供給企業体と水素受入企業体との組み合わせを含み、二酸化炭素供給企業体と二酸化炭素受入企業体との組み合わせを含んでいなくてもよい。この場合は、水素受入企業体内で発生した二酸化炭素と、水素供給企業体から供給された水素とを用いてカーボンリサイクル製品を製造してもよい。
【0224】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートにおいて、各企業体がそれぞれ担う役割は、前記実施形態で示した二酸化炭素供給企業体、二酸化炭素受入企業体、水素供給企業体及び水素受入企業体の役割に限定されない。
【0225】
カーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、コンビナートを構成する前記複数の企業体のうち少なくともいずれかの企業体が、水素を供給できる水素供給企業体であるとともに、水素を受入れることのできる水素受入企業体であってもよい。
【0226】
カーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、コンビナートを構成する前記複数の企業体のうち少なくともいずれかの企業体が、二酸化炭素を供給できる二酸化炭素供給企業体であるとともに、二酸化炭素を受入れることのできる二酸化炭素受入企業体であってもよい。
【0227】
また、本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートは、複数の企業体が集合してなる総合企業体を含んでいてもよい。この場合、総合企業体は、二酸化炭素供給企業体、二酸化炭素受入企業体、水素供給企業体及び水素受入企業体からなる群から選択される2種、3種、又は4種の企業体で構成される。例えば、カーボンリサイクルコンビナートを構成する企業体として、前記実施形態における企業体A及び企業体Cを有する総合企業体を含んでいてもよい。
【0228】
水素受入企業体としての1つの企業体が複数のカーボンリサイクル装置を有する場合、カーボンリサイクル装置の数は、前記実施形態の企業体Cのように3つに限定されず、2以上であればよく、4以上でもよい。また、1つの企業体が有する複数のカーボンリサイクル装置は、互いに異なるカーボンリサイクルを実施する装置でもよいし、互いに同じカーボンリサイクルを実施する装置でもよい。また、カーボンリサイクルコンビナートを構成する企業体のうち、複数の企業体が、それぞれ、複数のカーボンリサイクル装置を有していてもよい。
【0229】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートを構成する企業体は、複数の企業体が共同で出資して設立された共同出資企業体であってもよい。例えば、前記実施形態の場合、企業体Gが、企業体A及び企業体Bが共同で出資して設立された共同出資企業体であってもよい。共同出資企業体としての企業体Gが水素供給装置500Gとしてグリーン水素製造装置550Gを有し、グリーン水素を水素共通配管200へ供給する。この場合、当該共同出資企業体へ出資した企業体(水素供給企業体及び水素受入企業体等)だけに、グリーン水素の製造コストを反映した単価のアルゴリズムが開示され、アクセス可能な状態に置かれている。単価のアルゴリズムとは、一般的には、総製造コストを積算流量で割り返したものである。
共同出資企業体がグリーン水素製造装置から水素共通配管へ供給した水素供給積算データと、グリーン水素の製造に必要な用役類の入力の単価と、を端末10A,10B,10Gに入力することで、水素製造コスト算出手段2445は、グリーン水素の製造コストを算出する。共同出資企業体が入力した情報は、当該共同出資企業体へ出資した企業体以外の他の企業体には開示されない。
【0230】
端末は、前記実施形態で例示した構成に限定されず、少なくとも、入力手段12と端末送信手段141と、を有していればよい。
【0231】
サーバは、前記実施形態で例示した構成に限定されず、少なくとも、記憶手段23と、書込手段241と、報知手段242と、計算手段244と、サーバ送信手段27と、を有していればよい。
サーバは、二酸化炭素製造コスト算出手段及び水素製造コスト算出手段を有していなくてもよい。例えば、二酸化炭素供給企業体の端末が、それぞれ二酸化炭素の製造コストを個別に算出してサーバに送信し、水素供給企業体の端末が、それぞれ水素の製造コストを個別に算出してサーバに送信するといった構成でもよい。
【0232】
サーバ20は、企業体C,D,E,Fにおけるカーボンリサイクル製品生産量と、企業体A~Gにおける今後に使用予定のカーボンリサイクル製品生産量予定量とを記憶手段23に記憶させてもよい。サーバ20は、カーボンリサイクル生産量も一括管理する構成であってもよい。
【0233】
サーバ20は、上記実施形態で説明した用役(低温蒸気量(低温排熱))とは異なる用役についても一括管理する用役管理手段を有していてもよい。
【0234】
二酸化炭素回収装置は、各企業体が個別に有していなくてもよく、複数の企業体で共同出資して一体の二酸化炭素回収装置を共有する態様でもよい。この場合、各企業体から当該共有の二酸化炭素回収装置へ供給した二酸化炭素の量に応じて、二酸化炭素受入企業体が使用した二酸化炭素の費用を分配して受け取ることもできる。水素回収装置についても、これと同様に、各企業体が個別に有していなくてもよく、複数の企業体で共同出資して一体の水素回収装置を共有する態様でもよい。
【0235】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートにおいて、二酸化炭素回収装置は、石炭ボイラー排ガスだけでなく、石炭ボイラー排ガスより二酸化炭素濃度の低い排ガス(例えば、(R)FCC触媒再生COボイラーの排ガス、または、コーカー装置等の排ガスからも二酸化炭素を回収してもよい。二酸化炭素回収装置は、更に、二酸化炭素濃度がより低い煙道排ガスの二酸化炭素を回収してもよい。
カーボンリサイクルコンビナートを構成する複数の企業体の内、少なくともいずれかの企業体が、セメント製造装置を有していてもよい。本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートにおいて、二酸化炭素回収装置は、石炭ボイラー及びセメント製造装置の少なくともいずれかから発生した二酸化炭素を回収してもよい。例えば、上記実施形態の企業体Bは、石炭ボイラーだけでなく、セメント製造装置を有していてもよい。上記実施形態の企業体Bが石炭ボイラー及びセメント製造装置を有する場合、石炭ボイラー及びセメント製造装置から発生した二酸化炭素を二酸化炭素回収装置によって回収させてもよい。セメント製造装置から発生した二酸化炭素も、二酸化炭素回収装置によって回収され、二酸化炭素供給制御手段によって、二酸化炭素共通配管へ供給される。また、上記実施形態の企業体Bは、石炭ボイラーに代えて、セメント製造装置を有する企業体であってもよい。この場合、企業体Bの二酸化炭素回収装置は、セメント製造装置から発生した二酸化炭素を回収する。
【0236】
二酸化炭素供給制御手段及び水素供給制御手段は、前記実施形態で説明した構成に限定されない。
【0237】
水素供給企業体は、前記実施形態で説明したエチレン製造装置や電気分解装置を有していなくても、その他の水素が発生する装置を有していてもよい。例えば、水素供給企業体は、重質ナフサを原料とするCCR(Continuous Catalyst Regeneration:連続触媒再生ナフサ改質装置)等で、ミックスキシレン、揮発油留分を製造する重質ナフサ接触改質装置を有していてもよい。この場合、重質ナフサ接触改質装置は、水素回収装置に接続され、ミックスキシレン及び、揮発油留分を製造する際に副生する水素は、水素供給装置によって水素共通配管へ供給されることで、副生水素をカーボンリサイクル用に有効利用できる。
また、水素供給企業体が水素輸入基地を有する場合、当該水素輸入基地は、前記実施形態で説明した企業体Gのようなカーボンフリー水素輸入基地に限定されず、その他の水素を輸入して受け入れ可能な基地であればよい。
【0238】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートが有するカーボンリサイクル装置は、前記実施形態で説明した例に限定されない。また、本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートカーボンリサイクル装置で製造したカーボンリサイクル製品と、二酸化炭素共通配管から受入れた二酸化炭素及び水素共通配管から受入れた水素の少なくともいずれかと、を用いて、別のカーボンリサイクル製品を製造する装置を有していてもよい。また、前記実施形態では、企業体Cが複数のカーボンリサイクル装置を有する態様を例に挙げたが、本発明は、このような態様に限定されず、複数の企業体が、それぞれ、複数のカーボンリサイクル装置を有していてもよい。
【0239】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナートは、二酸化炭素共通配管から受入れた二酸化炭素を原料とする強化コンクリートを製造する装置(カーボンリサイクル装置)を有する企業体を含んでいてもよい。
【0240】
カーボンリサイクル製品を製造する企業体は、カーボンリサイクル製品を出荷する設備を有していることも好ましく、例えば、メタノールの輸出入基地のみならず、国内の陸海上入出荷設備を有していることも好ましい。
【0241】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、排熱利用手段を有していなくてもよい。
【0242】
カーボンリサイクルコンビナート運営システムにおいて、CO両系列がともに、緊急シャットダウン時を想定して、各企業体は、下流系が緊急停止可能な時間を保持可能なホルダーを必要に応じて用意する。
【0243】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、例えば、特許文献1に記載のような窒素及び酸素などの用役共有管理システムと組み合わされていてもよい。
【0244】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、カーボンリサイクルコンビナート内で発生又は生成した二酸化炭素を、二酸化炭素共通配管を介して、当該コンビナート外の装置や施設に供給してもよい。例えば、二酸化炭素共通配管と、コンビナート外のパイプラインとを連結することにより、二酸化炭素を、当該パイプラインを通じてコンビナート外の装置や施設に供給できる。コンビナート外の装置や施設としては、農産物等を生産する施設(ハウス)が挙げられ、二酸化炭素を供給して当該施設(ハウス)内の二酸化炭素濃度を高くして、炭酸同化作用を高めて、野菜等の農業生産効率を向上させることもできる。また、コンビナート外の装置や施設としては、藻類の生産装置(例えば、クロレラプール)が挙げられる。例えば、クロレラプール中に二酸化炭素を細かい気泡で吹き込んで、炭酸同化作用を高めることもできる。このようにして、藻類の増産を図ることもできる。
【0245】
本発明は、企業体Jが第二実施形態で説明した二酸化炭素入出荷基地を有する態様に限定されず、カーボンリサイクルコンビナート内の企業体(例えば、二酸化炭素受入企業体)が二酸化炭素入出荷基地を有していてもよく、二酸化炭素を液化する装置を有する企業体(例えば、カーボンリサイクル装置700Eを有する企業体E)が、二酸化炭素入出荷基地を有していてもよい。
【0246】
本発明に係るカーボンリサイクルコンビナート運営システムは、例えば、鉄鋼、電力企業体等の他の業種の企業体との産業連携によるカーボンリサイクルにも演繹できる。
【0247】
第二実施形態では、企業体H,Jの端末10H,10J等と情報ネットワークNWや端末10A~10Gとの情報交換を通じて、二酸化炭素の供給及び払い出し等をカーボンリサイクルコンビナート運営システムにて管理する態様を例に挙げて説明したが、他の態様としては、例えば、企業体H,Jをカーボンリサイクルコンビナート運営システムに組み込まない態様が挙げられる。
この態様の場合、サーバ20は、企業体H,Jの端末10H,10J等との情報交換を行わない。カーボンリサイクルコンビナートは、コンスタントに、契約数量を常時安定制御して、企業体H,Jから二酸化炭素共通配管100に二酸化炭素を受け入れる。
また、この態様の場合、企業体H,Jから二酸化炭素共通配管100へ供給する予定の二酸化炭素に関する情報(二酸化炭素供給予定情報)を、予め、サーバ20の書込手段241によって、記憶手段23に記憶させることが好ましい。企業体H,Jから提供された二酸化炭素供給予定情報に基づいて、終始一定量の二酸化炭素をコンスタントに、企業体H,Jから二酸化炭素を二酸化炭素共通配管100に受け入れたり、企業体H,Jの第1供給バルブで流量を一定に制御したり、二酸化炭素共通配管100内の圧力を一定に維持したりすることができる。
この態様においては、サーバ20の計算手段は、二酸化炭素の受入情報、二酸化炭素の使用予定情報だけでなく、企業体H,Jから提供される二酸化炭素供給予定情報に基づいて、二酸化炭素の最適確保量を計算する。つまり、サーバ20は、コンビナート全体として、最低コストで最大の効果を生むように、二酸化炭素の最適確保量を計算する。サーバ20のサーバ送信手段27は、二酸化炭素の最適確保量に関する情報を二酸化炭素供給企業体に送信する。
カーボンリサイクルコンビナート管理システムは、二酸化炭素の発生及び消費に係るバランスを維持できるように企業体A,Bの二酸化炭素回収装置310A,310Bの稼働を制御する。すなわち、カーボンリサイクルコンビナート内の企業体A,Bの二酸化炭素回収装置310A,310Bが、カーボンリサイクルコンビナート外の企業体H、Jの二酸化炭素供給装置300H,300Jの稼働の変動によって影響されないようにするため、企業体H,Jは、事前の販売契約に基づく計画数量となるように、日々の管理を実施し、また、一定の流量で供給を維持する。一方、企業体H,Jがカーボンリサイクルコンビナートに組み込まれる場合、コンビナートサイト(例えば、サーバ20のバルブ制御部26)は、計画数量となるように企業体H、Jの第1供給流量計334を制御する仕組みである。
【符号の説明】
【0248】
100…二酸化炭素共通配管、10A…端末、10B…端末、10C…端末、10D…端末、10E…端末、10F…端末、10G…端末、11…表示手段、12…入力手段、13…記憶手段、14…制御手段、141…端末送信手段、142…表示制御手段、20…サーバ、200…水素共通配管、21…表示手段、22…入力手段、23…記憶手段、231…プログラム記憶部、232…受入情報記憶手段、233…使用予定情報記憶手段、234…供給情報記憶手段、235…営業情報記憶手段、24…制御手段、241…書込手段、242…報知手段、243…公開手段、244…計算手段、2441…二酸化炭素供給制御情報生成手段、2442…水素供給制御情報生成手段、2443…費用計算手段、2444…二酸化炭素製造コスト算出手段、2445…水素製造コスト算出手段、2446…カーボンフリー率算出手段、2447…カーボンリサイクル率算出手段、245…電力スチームバランス最適化手段、25…入出力制御部、26…バルブ制御部、27…サーバ送信手段、300A…二酸化炭素供給装置、300B…二酸化炭素供給装置、300H…二酸化炭素供給装置、300J…二酸化炭素供給装置、310A…二酸化炭素回収装置、310B…二酸化炭素回収装置、310H…二酸化炭素回収装置、320A…第1供給口、320B…第1供給口、320H…外部受入口、320J…外部受入口、330A…二酸化炭素供給制御手段、330B…二酸化炭素供給制御手段、330H…二酸化炭素供給制御手段、330J…二酸化炭素供給制御手段、331…二酸化炭素圧縮機、332…第1供給バルブ、333…第1供給圧力計、334…第1供給流量計、335…第1供給温度計、350H…外部供給口、400C…二酸化炭素受入装置、400D…二酸化炭素受入装置、400E…二酸化炭素受入装置、400J…二酸化炭素受入装置、420C…第1受入口、420J…外部供給口、430C…二酸化炭素受入制御手段、430D…二酸化炭素受入制御手段、430J…二酸化炭素受入制御手段、432…第1受入バルブ、433…第1受入圧力計、434…第1受入流量計、435…第1受入温度計、460J…二酸化炭素入出荷基地、461J…液化二酸化炭素貯蔵タンク、462J…ローディングアーム、463J…液化二酸化炭素運搬船、464J…ローリー、465J…ローディングアーム、466J…気化器(ベーパライザー)、467J…二酸化炭素液化装置、4601J…液化CO供給配管、4611J…二酸化炭素純度測定装置、500A…水素供給装置、500B…水素供給装置、500G…水素供給装置、510A…水素回収装置、510B…水素回収装置、510G…水素回収装置、520A…第2供給口、520G…第2供給口、530A…水素供給制御手段、530B…水素供給制御手段、530G…水素供給制御手段、531…水素圧縮機、532…第2供給バルブ、533…第2供給圧力計、534…第2供給流量計、535…第2供給温度計、550G…グリーン水素製造装置、560G…水素輸入基地、561G…受入タンク、562G…ローディングアーム、563G…ベーパーライザー、564G…受入タンク、565G…ローディングアーム、566G…水素脱離装置、600C…水素受入装置、600F…水素受入装置、620C…第2受入口、630C…水素受入制御手段、630F…水素受入制御手段、632…第2受入バルブ、633…第2受入圧力計、634…第2受入流量計、635…第2受入温度計、640C…分岐配管、700C…カーボンリサイクル装置、700D…カーボンリサイクル装置、700E…カーボンリサイクル装置、700F…カーボンリサイクル装置、701…カーボンリサイクル装置、702…カーボンリサイクル装置、703…カーボンリサイクル装置、800…排熱利用手段、900A…エチレン製造装置、900B…電気分解装置、900D…水素発生装置、900F…二酸化炭素発生装置、900H…発電装置等、901A…重質ナフサ接触改質装置、901B…石炭ボイラー、920C…メタノール輸出入基地、A…企業体、B…企業体、C…企業体、D…企業体、E…企業体、F…企業体、G…企業体、H…企業体、J…企業体、NW…情報ネットワーク。
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