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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】薬剤フィーダ及び調剤システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021001647
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106557
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
(72)【発明者】
【氏名】大ヶ谷 俊治
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6736075(JP,B1)
【文献】特許第6736074(JP,B1)
【文献】特開2013-146443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B65G 47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦線を中心として軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる仕分け部材および規制部材と、前記環状回転体の回転制御を行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記仕分け部材が昇降動作により前記上端周縁部の上の薬剤の厚みに対して高さを規制、前記規制部材が進退動作により前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制する薬剤フィーダにおいて、
薬剤を挟んで寸法を測るための、前記薬剤を挟む静止部および前記静止部に対して進退する可動部を有する採寸機構と、前記可動部を移動させる採寸用駆動部材と、前記仕分け部材を昇降させる仕分用駆動部材とを備え、前記規制部材の進退動作は記可動部の移動に伴って行われ、前記制御部が、前記採寸機構に置かれた薬剤の横幅および前記厚みに係る薬剤寸法データを前記採寸用駆動部材の動作制御にて取得して第1データとしてデータ保持する第1データ保持手段と、外部装置からデータ送信されて来た前記横幅および前記厚みに係る薬剤寸法データを受信にて取得してそれを第2データとしてデータ保持する第2データ保持手段とを具備していて、前記第1データ保持手段と前記第2データ保持手段との何れか一方が保持している前記薬剤寸法データに基づいて前記制御部は、前記横幅に基づいて前記採寸用駆動部材の作動を、前記厚みに基づいて前記仕分用駆動部材の作動をそれぞれ制御し、前記規制部材に前記横幅の規制を行わせるとともに前記仕分け部材に前記高さの規制をおこなわせることを特徴とする薬剤フィーダ。
【請求項2】
前記第1データ保持手段と前記第2データ保持手段とがデータ記憶メモリを共用していることを特徴とする請求項1記載の薬剤フィーダ。
【請求項3】
前記制御部が前記第1データ保持手段にて前記薬剤寸法データを取得したときには、その薬剤寸法データを前記外部装置へデータ送信することを特徴とする請求項1又は2に記載された薬剤フィーダ。
【請求項4】
請求項3記載の薬剤フィーダを薬剤収納庫に搭載した前記外部装置としての薬剤分包機と、処方箋の情報に基づいた処方データと各種薬剤のデータを纏めた薬品マスタとを保持した調剤サーバとを備え、前記調剤サーバと前記薬剤分包機とがデータ送受信可能であり、前記薬剤分包機の制御部と前記薬剤フィーダの前記制御部とがデータ送受信可能であり、前記薬剤分包機が、前記薬剤フィーダにて処理する薬剤を含んだ調剤指示データを前記調剤サーバから受信したとき、前記調剤指示データに前記薬剤に係る薬剤寸法データが含まれているか否かを調べて、含まれていれば当該薬剤寸法データを前記薬剤フィーダに対してデータ送信し、含まれていなければ前記薬剤フィーダに対して前記採寸機構による薬剤寸法データの取得を指示するとともに前記薬剤フィーダから送信されてきた薬剤寸法データを前記調剤サーバへ転送することを特徴とする調剤システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院や薬局等で行われる調剤を自動化するために、錠剤やアンプル剤といった粒状固形物の薬剤を自動供給するようになった薬剤フィーダに関し、詳しくは、形状の同じ多数の薬剤をランダム収容するとともに、それらの薬剤を回転体で整列させることで、それらの薬剤を一つずつ送り出す逐次送出・順次排出を行う薬剤フィーダに関し、更に詳しくは、薬剤整列時の幅規制機能および高さ規制機能の拡張に関する。
そのような薬剤フィーダを搭載した薬剤分包機とその上位の調剤サーバとを具備した調剤システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤フィーダは、薬剤を収容する上部の容器部(従動部)と、そこから薬剤を逐次排出させる下部のベース部(駆動部)とからなる。
容器部に着脱式の薬剤カセットを採用したタイプの薬剤フィーダは(背景技術1参照)。取り扱い対象の薬剤が限定されるが、カセット着脱の利便性が評価されて、多用されている
これに対し、容器部とベースとが一体化しているタイプの薬剤フィーダは(背景技術2,3参照)、各種の薬剤を取り扱える利便性が評価されて、使用頻度が高まっている。
【0003】
[背景技術1](特許文献1参照)
薬剤カセットを多数搭載した薬剤分包機のなかには、着脱式の薬剤カセットに機械読取可能な容器識別情報を持たせるとともに、薬剤カセットの着脱されるベース部については各々のベース部に読取装置を組み込んでおいて、薬剤カセットのベース部への装着に際し、薬剤カセットの容器識別情報をベース部の読取装置で読み取って対応表に基づく照合を行うことにより、カセット装着先の適否を自動判定するようになったものがある。
【0004】
また、そのような薬剤分包機を含めた調剤システムとして、一台か複数台の薬剤分包機と、それらの制御部と有線LAN等を介して通信しうる調剤サーバとを装備したものが知られている。そのような調剤サーバには、処方箋データの入力のために、外部の処方オーダリングシステムがネットワーク接続されたり、処方箋読取装置が付設されている。
調剤サーバは、データ保持に十分な記憶容量のハードディスク等が付いていれば、プログラマブルな汎用のコンピュータで良く、これには、処方オーダリングシステム等から受け取った処方データや、薬剤分包機から受け取った分包機ステータス、このシステムで取り扱う各薬剤に関する情報を纏めた薬品マスタ等が、保持されている。
【0005】
また、調剤サーバには、処方データの入力やそれに基づいて薬剤分包機に調剤指示を出すプログラムや、薬剤分包機からの欠品発生通知(具体的には薬剤カセットが空になったというステータス報告)や在庫管理状況に応じて補充指示を作成しそれを読取装置に表示させる補充指示作成プログラム、読取装置への補充指示の送信や読取装置からの補充完了の受信などといった作業進行状況を記録する作業データ記録プログラムがインストールされている。
【0006】
薬剤分包機は、筐体の上段部分には複数の薬剤収納庫が個別引出可能に装備され、それぞれの薬剤収納庫の内部には薬剤カセットとベース部との対が縦横に配設され、筐体の下段部分には包装装置が格納され、筐体内の電装スペースに制御装置(制御部)が置かれている。
薬剤カセットは、着脱式のものであって、各種薬剤のうち何れか一種類の薬剤を多数個収容していて逐次排出しうるようになっている。
ベース部は、薬剤カセットを一つずつ着脱可能な固定部であって、装着された薬剤カセットを駆動して薬剤を排出させることができるようになっている。
【0007】
このような薬剤分包機は、調剤サーバから受け取った調剤指示に従って制御装置が薬剤カセットと包装装置の動作制御を行うことで、各薬剤カセットから適宜の薬剤を排出させ、それを包装装置で分包するようになっている。また、薬剤カセットが空になって薬剤排出ができなくなったことが検出されると欠品発生通知を調剤サーバへ送信するようになっている。さらに、それぞれの薬剤カセットに識別情報が割り振られており、識別情報と薬剤カセットとの対応付けを制御装置に登録するとそれが調剤サーバに転送されて薬品マスタに登録されるようになっている。
【0008】
[背景技術2](特許文献2参照: 一体化タイプの第1例目)
次に、容器部とベースとが一体化しているタイプの薬剤フィーダを説明する。
このタイプの薬剤フィーダとして、同一形状の錠剤等(薬剤)を一列に整列させながら搬送する整列供給式の薬剤フィーダとして、鉛直線を中心として軸回転可能な外側の環状回転体と、鉛直から傾いた傾斜線を中心として軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる規制部材とを備えた薬剤フィーダが実用化されている。
【0009】
そのうち本願発明の構成や課題などの理解に役立つ部分を、図面を引用して具体的に説明する(図9参照)。
図9は、薬剤フィーダ10のほぼ全容を示しており、(a)が平面図、(b)が縦断正面図である。
【0010】
薬剤フィーダ10は、二重回転タイプのものであり、筐体の最上部に位置しており中央部分が円形に刳り抜かれて中空になっている周壁11と、その内周壁面11a即ち周壁11の中空の内周の壁面に上端部が遊嵌された状態で設置されている又は周壁11の中空の直下に設置されている環状回転体20と、この環状回転体20の中空内に設置された傾斜回転体30と、この内側の傾斜回転体30とその外側の環状回転体20とを何れも軸回転可能に支持する支承機構40と、それらの回転の駆動を担う回転駆動機構50と、周壁11の上側に設けられた仕分け部材60及び規制機構70とを具えている。
【0011】
しかも、支承機構40によって、環状回転体20は鉛直線を中心として軸回転しうる状態に保たれ、傾斜回転体30は鉛直から傾いた傾斜線を中心として軸回転しうる状態に保たれる。そして、そのような内側の傾斜回転体30と外側の環状回転体20は、薬剤は通さないが回転は許容される僅かな間隙を保って傾斜回転体30が環状回転体20の中空を塞ぐことで、二重回転タイプ薬剤フィーダの回転容器20+30を構成しており、傾斜回転体30の回転による持ち上げと仕分け部材60の仕分けとによって傾斜回転体30の周縁部33の上から薬剤を環状回転体20の上端周縁部23の上に運び、環状回転体20の回転による水平搬送と規制機構70の整列機能とにて上端周縁部23の上の薬剤を整列させながら落下排出口14へと運ぶようになっている。以下、各部を説明する。
【0012】
環状回転体20は、中空の径が上側ほど大きい下部21と、中空の径が上側ほど小さい上部22とからなり、それらの中空に傾斜回転体30を納めてから両部21,22をボルト等で連結することで一体化され、傾斜回転体30と共に回転容器20+30をなす。
傾斜回転体30は、その上面が回転容器20+30の内底になり、図示のものではその上面の央部32の中央に中央突起31が形成されている。また、傾斜回転体30の周縁部33の上面は、一周に亘って、薬剤の掬い上げに役立つ緩い鋸歯状波形に加工されているうえ、掬い上げた薬剤を傾斜による転がりにて円滑に環状回転体20の上端周縁部23へ送り込むことができるよう外下がりの状態になっている。
【0013】
支承機構40は、各所に分散して配設された複数の部材41~43からなり、それには例えばラジアル軸受などを主体とした受動部材41が幾つかと、例えば硬質ゴム製Oリングなどの輪状体・環状体からなる回転伝動部材42,43とが含まれている。
回転駆動機構50は、回転容器20+30の下に配置された回転駆動部材51と、この回転駆動部材51を軸回転させる回転駆動モータ54とを具備しており、径の異なる回転伝動部材42,43を介する摩擦伝動にて環状回転体20を相対的に高速で軸回転させるとともに、傾斜回転体30を相対的に低速で軸回転させるようになっている。
【0014】
仕分け部材60は、揺動支点の基端部61から揺動端の先端部62まで延びた細長い棒材を主体としたものであり、基端部61が支持部63によって周壁11や環状回転体20の上方で支持されており、そこを中心にして先端部62が上下に揺動しうるようになっている。先端部62寄りの部分が少し曲がっており、常態では先端部62が斜め下向きの状態で自重により軽く傾斜回転体30の周縁部33に乗っているので、その周縁部33から環状回転体20の上端周縁部23へ滑り落ちることなく周縁部33に乗ったまま運ばれて来た薬剤の多くが、先端部62に当接するとともに、その反作用の付勢力によって傾斜回転体30の央部32へ戻されるが、それが円滑に行われなければ薬剤破損等の回避のため先端部62が揺動して上方へ逃げるようにもなっている。
【0015】
規制機構70は、環状回転体20の上端周縁部23の回転方向を基準として仕分け部材60より進行先に設置された第1規制部材71と、それよりも更に進行先に設置された第2規制部材72と、それら第1規制部材71と第2規制部材72との何れにもピン状の回転許容軸部材等を介して連結されているリンク機構73と、サンプル薬剤を収容しうる型置場74とを具備している。
第1規制部材71も、第2規制部材72も、揺動中心部が周壁11側に位置するとともに、揺動端部が環状回転体20の上端周縁部23の上に位置しているので、その上端周縁部23の上の薬剤搬送経路幅を外周側から狭めるものとなっている。
【0016】
しかも、第1規制部材71と第2規制部材72は、何れも揺動にて上端周縁部23の上の薬剤搬送経路幅の狭め量を可変調整しうるものであるが、リンク機構73の長手方向進退に応じて両規制部材71,72が同時かつ同様に揺動するので、両規制部材71,72による薬剤搬送経路幅の狭め量の調整量が連動するものともなっている。さらに、型置場74にサンプル薬剤を収容してから、それに向けてリンク機構73を動かすと、リンク機構73が長手方向に進んで先端をサンプル薬剤に当接させて止められるが、そのときに第1規制部材71の揺動端部と第2規制部材72の揺動端部が何れも上端周縁部23の上の薬剤搬送経路幅をサンプル薬剤に倣って薬剤一個相当分に狭めるようにもなっている。
【0017】
また、そのような規制機構70より更なる進行先では、周壁11に、それを上下に貫通する落下排出口14が形成されており、そこへ環状回転体20の上端周縁部23の上の薬剤を環状回転体20の回転にて送り込むために周壁11には排出ガイド13も設けられている。この排出ガイド13の先端部には、そこより下側に延び且つ先にも延びて最先端となる搬送面ガイド12が形成されていて、薬剤が排出ガイド13に当接した反動で傾斜回転体30の方へ不所望に落下するといったことを防止するようになっている。
【0018】
さらに、図示を割愛したが、回転駆動モータ54の動作制御を担うコントローラと、それらに動作電力を供給する電源も、同じ筐体に内蔵して又は筐体の外に設けられている。また、落下排出口14における薬剤の落下を検出するフォトセンサ等も付設されており、その検出信号がコントローラや錠剤カウンタへ送信される。
コントローラの回転制御は、低速回転から始まり、最初の薬剤の排出を検出した後、更に、予め設定された所定数の薬剤の排出を検出すると、高速回転に移行するようになっている。また、予め指定された総排出数と排出済み個数とから残数を算出するとともに、やはり指定された所定数に残数が達すると回転速度を落としたり、薬剤排出完了後に不所望な過剰落下の防止のため逆回転を行わせるようにもなっている。
【0019】
このような薬剤フィーダ10の動作等についても説明する。薬剤フィーダ10を使用して多数の薬剤を逐次送出するには、それに先だって、薬剤搬送経路幅の規制作業と薬剤のランダム投入とを済ませておく。
そのうち、薬剤搬送経路幅の規制作業は、作業担当者が、多数の薬剤のうちから適宜な一個を型用薬剤に選出して、それを型置場74に収めてから、それにリンク機構73の一端が当接するようにリンク機構73の位置を調整するという簡単なことで、遂行される。
【0020】
その作業が行われると、第1規制部材71と第2規制部材72とが何れもリンク機構73に連動して揺動し、それらの揺動端部によって環状回転体20の上端周縁部23の上の薬剤搬送経路幅が二カ所で型用薬剤の直径に対応するところまで狭められる。
また、薬剤のランダム投入は、やはり作業担当者が、文字通り多数の薬剤を環状回転体20の上部開口から回転容器20+30へランダムに投入すれば良い。
そうすると、投入されたランダム収容薬剤は、自然に、傾斜回転体30の上面のうち下側に来ている部分の上に集まる。
【0021】
これで自動動作の準備が調うので、薬剤フィーダ10を例えば単純な連続送出モード等で動作させると、以後はコントローラの制御に従って回転駆動モータ54が適宜な速度で回転する。そうすると、それに応じて回転駆動部材51が軸回転し、その回転運動が、大径部外装回転伝動部材42を介した摩擦伝動にて環状回転体20に伝達されるとともに、小径部外装回転伝動部材43を介した摩擦伝動にて傾斜回転体30にも伝達されて、大径部外装回転伝動部材42と小径部外装回転伝動部材43とが同じ向きに軸回転するが、大径部外装回転伝動部材42の方が小径部外装回転伝動部材43より高速で回転する。
【0022】
傾斜回転体30が軸回転すると、回転容器20+30の内底に溜まっていたランダム収容薬剤のうち傾斜回転体30の周縁部33の上に来ていた薬剤が、鋸歯状の周縁部33の循環運動によって低位置から高位置へ掬い上げられる。
そうして、周縁部33が環状回転体20の上端周縁部23よりも高くなるところまで運ばれた薬剤は、大部分が周縁部33の傾斜に基づく滑落や転動によって上端周縁部23の上へ乗り移る。
【0023】
これに対し、上端周縁部23の上が先行の他の薬剤で詰まっていたり、たまたま滑落や転動しなかったといった理由で、傾斜回転体30の周縁部33の上に残っていた薬剤は、傾斜回転体30の更なる軸回転によって仕分け部材60の先端部62の所へ運ばれ、そこで先端部62に当接し、その当接の反動によって上端周縁部23とは逆の向きに移動させられるため、傾斜回転体30の央部32を傾斜面に沿って滑落する。
こうして、過剰な薬剤がランダム収容薬剤に戻るので、上端周縁部23の上の薬剤搬送経路には或る程度絞り込まれて適量に近い頻度で薬剤が送り込まれる。
【0024】
環状回転体20の方が傾斜回転体30より高速で軸回転しているので、上端周縁部23の上の薬剤は、周縁部33から乗り移ったときに回転速度の差に応じて或る程度はばらけるが、薬剤が小さめの場合など、縦一列になるものもあれば、真横や斜め横に並ぶものもありうる。そして、それらの薬剤が、環状回転体20の軸回転によって第1規制部材71の所へ運ばれると、一列の薬剤はそのまま通過するが、横並びの薬剤については第1規制部材71との干渉によって内側の薬剤が上端周縁部23の上から押し出されて傾斜回転体30の上に落下しランダム収容薬剤に戻るので、横並びが解消される。
【0025】
とはいえ、横並びの薬剤が多いとき等には、薬剤同士の押し合い等によって第1規制部材71の先端を巻くようにすり抜ける薬剤もありうる。そして、そのような場合、第1規制部材71を通過した薬剤のうち一部のものには斜め横の並び状態が残ったりすることがある。いずれにしろ、第1規制部材71を通過した薬剤は、その後、環状回転体20の軸回転よって第2規制部材72の所へ運ばれて、再び同様の整列が強制されるため、例え横並び状態が残っていても僅かなものにすぎないうえ程度も斜め横の並びの軽い状態にとどまることから、横並び状態が再度の規制で迅速かつ十分に解消される。
【0026】
このようにして二重の規制をクリアして一列に整列した整列済み薬剤は、環状回転体20の軸回転に伴う上端周縁部23の循環運動によって次々に排出ガイド13の所へ運ばれ、上端周縁部23の上の薬剤搬送経路と斜めに交差している排出ガイド13の外側側面に当接する。
そして、整列済み薬剤の多くは、直ちに排出ガイド13の当接側面に沿って進み、一列になって落下排出口14に送り込まれる。
【0027】
もっとも、当接状況によっては稀に一部の整列済み薬剤が内周側へ少しはじかれることもあるが、そのような状況が生じたときでも、整列済み薬剤の環状回転体20の上への落下や、上端周縁部23と排出ガイド13との斜交部位への挟み込みは、搬送面ガイド12によって阻止される。
こうして、総ての整列済み薬剤が無駄なく一列で落下排出口14に送り込まれる。落下排出口14に送り込まれた薬剤は重力で加速されて落下速度を増すことから、先後の薬剤の離隔距離が広がるので、その離隔距離が十分になる所に設置したフォトセンサ等で落下薬剤を検出するといったことで、的確に、薬剤を計数することができる。
【0028】
このような薬剤フィーダにあっては、二重回転タイプ薬剤フィーダを基本にしたことにより、すなわち、回転容器を内外二重化してそれらの回転にて内側の傾斜回転体から外側の環状回転体の上端周縁部の上に固形薬剤を運び更にその固形薬剤を規制部材にて整列させるようにしたことにより、回転体の中に固定の整流ガイドを設ける必要が無くなったばかりか、種々の形状やサイズの薬剤に対する共用範囲が広がっている。
【0029】
また、このような薬剤フィーダにあっては、環状回転体の上端周縁部の上で固形薬剤を安定姿勢で一列に整列させるために、薬剤の横幅を規制する規制機構が前後に連ねて二つ装備されるとともに、薬剤の高さを規制する仕分け部材が上記の規制機構に前置されており、それらによって整列機能が適切に発揮されているが、それらの部材のうち仕分け部材は、既述したように薬剤破損等の回避のため薬剤からの反力が強いときには先端部が揺動して上方へ逃げるようになっているため、高さ規制が常に確実に行われると言い切れる訳ではないが、仕分け部材による高さ規制は、規制機構による幅規制の負担を軽減するための前処理といったものなので、実用上の不都合が有る訳ではない。
【0030】
[背景技術3](特許文献3~5参照: 一体化タイプの第2例目)
これに対し、上述のように共用範囲が広がると、形状やサイズの相違だけでなく、材質の異なる薬剤たとえば硬めの薬剤だけでなく表層の脆い薬剤や、球状や紡錘状といった転がり易い形状の薬剤などについても共用の要望が高まる。
そして、それに応じて脆い薬剤や転がり易い薬剤も取り扱うには、薬剤の損傷や過剰な転動を回避・抑制するために、薬剤と仕分け部材との当たりが和らぐようにするといった謂わば仕分け部材の繊細化や多様化が求められる。
【0031】
しかしながら、そのような対処は仕分け部材の高さ規制機能を弱めがちなので、単純な繊細化等にとどまることなく、薬剤と仕分け部材との当たりを緩和しても高さ規制機能が維持されるような更には強化されるような対策をも加味した対処法が望まれる。
そこで、二重回転タイプ薬剤フィーダを踏襲しつつ更に薬剤整列時の高さ規制機能を維持しつつも薬剤に対する仕分け部材の当たりは緩やかな薬剤フィーダを実現することが更なる技術的課題となった。
【0032】
そして、そのような技術課題を解決するために、縦線を中心として軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる仕分け部材および規制部材とを備えた薬剤フィーダであって、前記規制部材が前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して横幅を規制するようになっており、前記仕分け部材が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上方に垂れ下がっていて下端部を横に押されると変形しうる垂下物を具備していることにより前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して高さを規制するようになっており、前記垂下物が複数の球体を緩く連結したものからなる、という薬剤フィーダが開発された。
【0033】
そのうち本願発明の課題等の理解に役立つ部分を、既述の薬剤フィーダ10を改良した薬剤フィーダ100に係る図面を引用して具体的に説明する(図10図12参照)。
図10は、薬剤フィーダ100の全体構成を示す縦断面図である。
【0034】
図11は、既述の規制機構70を改良した規制機構700の構成を示し、(a)が、型用薬剤5aを型置場74に置いたときの規制機構700に係る平面図、(b)が、第2規制部材720と同じ形状をした第1規制部材710の平面図と端面図である。
図12は、既述の仕分け機構60を改良した仕分け機構600の構成を示しており、(a)が、仕分け機構600とその設置先部分とに係る外観斜視図であり、(b)が、仕分け機構600の第1仕分け部材610に係る正面図であり、(c)が、仕分け機構600の第2仕分け部材620に係る正面図である。
【0035】
薬剤フィーダ100が既述の薬剤フィーダ10と相違する点としては(図10参照)、回転駆動機構50が二つの回転駆動モータ54a,54bを具備して環状回転体20の回転と傾斜回転体30の回転とを個別に制御できるようになったことや、環状回転体20がそれを上下に分解しなくても傾斜回転体30を抜き差しできる椀状の一体物になったこと、傾斜回転体30の着脱を検出する傾斜回転体装着検出手段55が追加されたこと、落下排出口14の下方の薬剤落下検出手段56が明示されたこと等が挙げられる。
さらに、規制機構70が改造されて規制機構700になったことと、仕分け部材60が改造されて仕分け機構600になったことが、挙げられる
【0036】
規制機構700は(図11(a)参照)、既述した規制機構70を引き継ぐに際して、型用薬剤5aをセットする型置場74や、規制部材71,72を連動させるリンク機構73は、概ねそのまま引き継いでいるが、第1規制部材71と第2規制部材72には改良が施されて、それぞれ第1規制部材710と第2規制部材720になっている。
第1,第2規制部材710,720は同形なので、一方710を詳述するが(図11(b)参照)、第1規制部材710は、既述の第1規制部材71と同様、図では左端の揺動中心部が周壁11側に位置し、図では右端の揺動端部が環状回転体20の上端周縁部23の上方に位置し、リンク機構73の長手方向進退に応じて上端周縁部23の上の薬剤搬送経路幅を外周側から狭める横幅規制機能を発揮するものとなっている。
【0037】
しかも、第1規制部材710は(図11(b)参照)、内周側面部が改造されており、内周側面部に、既述の第1規制部材71の内周側面部を踏襲していて横幅規制機能を担う下段部分711だけでなく、既述の第1規制部材71には無かった上段部分712も、形成されている。上段部分712は、下段部分711よりも内周側に張り出しており、上段部分712と下段部分711との間は傾斜面になっている。そのため、第1規制部材710は、下段部分711がリンク機構73の状態に応じた厳密な横幅規制機能を行うのに加えて、上段部分712が緩やかな高さ規制を行うものとなる。
繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、第2規制部材720も同様である。
【0038】
仕分け機構600は(図12(a)参照)、環状回転体20の上端周縁部23の薬剤搬送経路において既述の仕分け部材60と同様に規制機構700の上流に配設された第1仕分け部材610と、仕分け部材60と異なり上記の薬剤搬送経路において規制機構700と並ぶ位置に配設された第2仕分け部材620とを具備しており、それら複数の部材にて多段階で仕分け機能を発揮するものになっている。
何れの部材610,620も、既述の仕分け部材60と同様に、排出ガイド13を含むとともに規制機構700を支持する周壁11の上板部に対して装着されている。
【0039】
第1仕分け部材610は(図12(a),(b)参照)、手動のネジ機構にて上下位置を調整しうる短めの支持部材611と、その先端寄り部位に取り付けられて支持部材611に随伴して上下する前段垂下物612(第1の垂下物)とを具備している。
前段垂下物612は(図12(b)参照)、複数の大玉613(図では二個の球体)を緩く連結して鎖状にしたものであり、市販のボールチェーン等で足りれば容易かつ安価に具現化できる。第1仕分け部材610では、二個の前段垂下物612が、支持部材611から上端周縁部23の薬剤搬送経路の上方へ横並び状態で垂れ下がり、通常は前段垂下物612の下端が薬剤の高さより少しだけ高くなるように上下位置が調整される。
【0040】
第2仕分け部材620は(図12(a),(c)参照)、これも手動で上下位置を調整しうる長めの支持部材621と、その先端寄り部位に取り付けられて支持部材621に随伴して上下する中段垂下物622及び後段垂下物632(何れも第1形の垂下物)と、支持部材621の上下位置調整を担う手動調整機構650とを具備している。
中段垂下物622は(図12(c)参照)、複数の中玉623(図では三個の球体)を緩く連結して鎖状にしたものであるが、中玉623が小粒になり連結個数が増えている。
後段垂下物632も、やはり複数(図では手前七個と奥六個)の小玉633を緩く連結して鎖状にしたものであり、小玉633が更に小粒になり連結個数が増えている。
【0041】
手動調整機構650は、支持部材621を手動操作にて上げてそれと下限設定機構651との間隙を広げてから、下限設定機構651の上に型用薬剤5b(上述した型置場74に置いた図11(a)の型用薬剤5aとは別物であるが同形の薬剤の一つ)を載置し、それから手動操作にて支持部材621を型用薬剤5bに軽く当たるところまで下げると、支持部材621の上下位置が型用薬剤5bに対応した位置に来るようになっている。
下限設定機構651には、目盛部材652が付設されており(図12(c)参照)、その目盛が下限設定機構651と支持部材621との間隔ひいては型用薬剤5bのサイズを示し更には手動調整機構650によって調整された第2仕分け部材620による規制高さをも示すようになっている。また、支持部材621の上下位置調整に付随して、型用薬剤5aの採寸・表示まで行われるので、第1仕分け部材610の調整の目安にもなる。
【0042】
さらに、上述した前段垂下物612と中段垂下物622と後段垂下物632とについて、それらの位置関係や役割分担等を説明する。
二つの前段垂下物612は、何れも上端周縁部23の薬剤搬送経路の上方に垂れ下がるが、上端周縁部23の径方向である薬剤搬送経路の横断方向に並んでいる。前段垂下物612の下端位置は、調整方針に依存するので一概には言えないが、大抵は、薬剤搬送経路上で薬剤が重なっていれば上の薬剤に対して干渉するように、薬剤より少し高くされる。大玉613が重めで薬剤の重なりが効率良く解消されるが、自由端である下端の大玉613が直ぐ上の連結部の変形によって逃げるため薬剤への衝撃は少なくて済む。
【0043】
なお、薬剤が球状の場合は、薬剤が転がり易くて位置が安定しないことが多いが、薬剤が薬剤搬送経路の横断方向で中央など望ましい所に位置しているときには、薬剤が横並びの前段垂下物612の間をすり抜ける。また、薬剤が中央より少し横にずれているときには、位置ずれしている方の前段垂下物612と薬剤とが軽く干渉して、薬剤が中央(転がり易い薬剤では上述した環状回転体20の上端周縁部23溝の拡幅部のところ)に寄せられる。これに対し、薬剤が中央から大きく位置ずれしているときには、当たり具合によって中央に寄せられる薬剤もあるが上端周縁部23の上から押し出されて傾斜回転体30の上に戻る薬剤が多い。
【0044】
二つの中段垂下物622は、その支持部材621が規制機構700を跨いでいる跨ぎ仕分け部材になっていて、何れの中段垂下物622も、上端周縁部23の薬剤搬送経路の上方に垂れ下がり、規制機構700(特に第2規制部材720)の横に位置していて横並び垂下物になっている。
また、何れの中段垂下物622も、上端周縁部23の薬剤搬送経路の上方に位置しており、それらが薬剤搬送経路に対しては斜めに並んでいる。
【0045】
さらに、支持部材621と手動調整機構650との関係が標準的な設定では中段垂下物622の下端位置を薬剤搬送経路上の薬剤より僅かに低くするようになっている。
そのため、中段垂下物622は、薬剤搬送経路上で薬剤が重なっていれば上の薬剤に対して中玉623が干渉して薬剤の重なりを解消する機能に加え、例えば単独で孤立した状態や斜めがかった横並び状態などでたまたま薬剤搬送経路の内周側に載っているような薬剤を薬剤搬送経路の中央へ戻すか傾斜回転体30へ戻すか切り分けることで薬剤搬送経路上の薬剤整列機能を強化する機能をも発揮するものとなっている。
【0046】
二つの後段垂下物632は(図12(a)参照)、一方(図では奥の六連物)が上端周縁部23の薬剤搬送経路の内周側の上方に垂れ下がり、他方が(図では手前の七連物)が上端周縁部23の薬剤搬送経路の上方から外れて傾斜回転体30の外周側の上方に垂れ下がり、薬剤搬送経路の横断方向に並んでいる。
しかも、手動調整機構650による支持部材621の高さ調整に伴って、一方の後段垂下物632の下端位置は上述の中段垂下物622の下端位置より少し低くされ、他方の後段垂下物632の下端位置は更に低くされるようになっている。
そのため、上述した大玉613を連ねた第1仕分け部材610と、中玉623を連ねた中段垂下物622と、小玉633を連ねた後段垂下物632は、それらの下端位置が玉の大小の順になっている。
【0047】
さらに(図12(a)参照)、後段垂下物632は、少なくとも内周側のものは(図では手前の七連物)、小玉633の材料に鉄等の磁性体が採用されている。また、これに対応して、第2規制部材720のうち後段垂下物632に近い部位に、永久磁石などからなる引き付け部材640が嵌め込み等にて取り付けられている。そして、その引き付け力が重力の分力に加勢するため、後段垂下物632は、薬剤搬送経路の上から当接してきた薬剤に対して、穏やかながらも効果的な反力を作用させるものとなっている。これにより、第2規制部材720から離れていた薬剤が第2規制部材720に近づくので、第2規制部材720の機能が強化される。このような後段垂下物632は、自身の薬剤の高さ規制機能よりも第2規制部材720の薬剤の横幅規制の強化を重視したものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【文献】特開2013-146443号公報
【文献】特開2018-108277号公報
【文献】特許6736075号
【文献】特願2020-012192号(出願)
【文献】特願2020-012231号(出願)
【文献】特願2020-021938号(出願)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0049】
このような薬剤フィーダでは、回転体の中に固定の整流ガイドを設ける必要が無くなるとともに種々の形状やサイズの薬剤に対する共用範囲が広がったが(背景技術2,特許文献2参照)、それに加え(背景技術3,特許文献3~5参照)、薬剤の幅を規制する後段の規制機構に高さ規制機能まで担わせたうえで、その上流に位置する仕分け部材の高さ規制機能を緩めることで、固くて丈夫な薬剤から脆い薬剤まで、更には板状といった転がり難い薬剤から球状や紡錘状といった転がり易い薬剤まで、環状回転体の上端周縁部の薬剤搬送経路で固形薬剤を無理なく一列に整列させることができるようになっている。
【0050】
また、サンプル薬剤を収容しうる型置場を規制機構の近くに設けておき、その型置場にサンプル薬剤を収容してから規制機構のリンク機構の先端をサンプル薬剤に当接させると、規制機構の規制部材の揺動端部が環状回転体の上端周縁部の上の薬剤搬送経路幅(薬剤搬送経路の横幅)をサンプル薬剤に倣って薬剤一個相当分に狭めるようにしたことにより、形状やサイズの異なる種々の薬剤について、それを横置き状態にしたときの薬剤幅(薬剤の横幅)に対して薬剤搬送経路幅を容易かつ的確に適合させることができるようにもなっている。
【0051】
さらに、仕分け機構に手動調整機構を付設しておき、その手動調整機構の型置場にサンプル薬剤を置いてから手動操作にて上下から挟ませることで、仕分け部材の上下方向の位置が定まり、それによって環状回転体の上端周縁部の上の薬剤に対して高さ(薬剤の厚み)を規制することができるようにもなっている。
このようにサンプル薬剤に倣って位置決めする手動機構を規制機構にも仕分け機構にも付設したことで、種々の形状やサイズの薬剤について適合させるため使用前に行う調整作業もかなり容易かつ迅速に済ませる行うことができるようにもなっている。
【0052】
ところが、そのような謂わば手動の倣い方式には、複数の型置場にサンプル薬剤を置いておくことから、本来なら調剤に供することができるはずの複数個の薬剤が、直ちには調剤に供することができず、待たされてしまう、という負担が伴う。型置場を改造して、サンプル薬剤に当接する倣い部材を位置決め確定後に一時固定できるようにすれば、調剤前に型置場からサンプル薬剤を取り出して調剤対象に含めることが可能になるが、この場合、倣い部材の固定や解除の手作業が必要になるうえ、倣い部材の固定時にはサンプル薬剤を取り出せるように挟持状態を緩めつつも倣い部材の移動を回避・抑制しなければならないので、取り扱いの作業負担が大きい。薬剤が脆いと、特に負担が大きい。
【0053】
そこで、型置場をモータ駆動の採寸機構に改造して、採寸機構に置かれた薬剤の寸法データを取得し、その寸法データを用いてモータ駆動で規制部材や仕分け部材を作動させる、という手法が案出された。
これにより、採寸に用いた薬剤を採寸後に採寸機構から取り出して傾斜回転体の上に移すことで薬剤を無駄なく自動調剤に用いることができるばかりか、駆動部材の動作量から寸法データを取得や算出することで採寸機構を簡素化することまで可能になった。
【0054】
ところで、そもそも薬剤フィーダで型置や採寸が必要な理由は、形状の異なる各種薬剤を一の薬剤フィーダで取り扱えるように薬剤フィーダを汎用化したことに起因するものであり、所定の薬剤に特化したカセットを用いる既存の薬剤フィーダでは使用時の型置や採寸が不要であることから、処方データを処理する調剤サーバ等の上位装置が薬剤の寸法データを保持していることが無いか有っても少ないためである。そうすると、調剤サーバ等の上位装置に薬剤の寸法データを保持させておくことが、明瞭な解決策と言える。
【0055】
しかしながら、幅規制機能や高さ規制機能を具えた本発明の薬剤フィーダは、従来多用されている上記の特化型のものと異なり、種々の薬剤に対応可能だが作業者が手作業で多数の区画へ薬剤を仕分け投入しなければならない薬剤手撒きユニット(例えば特開2007-297066号参照)とも異なり、特化型の利便性と手撒き式の汎用性とを兼備するという両者の良いとこ取りを図ったものであって、特化型の薬剤フィーダの不足を手軽に補うためのものなので、特化型の薬剤フィーダには必須で無かった薬剤の寸法データまで予め調剤サーバ等の上位装置に保持させておくのはデータ設定等の作業負担が重い。
【0056】
そこで、幅規制機能や高さ規制機能に加え採寸機能をも具えた薬剤フィーダについて、採寸作業やデータ設定等の作業負担を軽減するべく、採寸データが無いときには採寸するが採寸データが有るときには採寸しないで済むようにすることが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0057】
本発明の薬剤フィーダは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
縦線を中心として軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる仕分け部材および規制部材と、前記環状回転体の回転制御を行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記仕分け部材が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して高さを規制するようになっており、前記規制部材が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するようになっている薬剤フィーダにおいて、
薬剤を挟んで寸法を測るための採寸機構と、前記採寸機構の可動部を移動させる採寸用駆動部材と、前記仕分け部材を昇降させる仕分用駆動部材とが設けられており、前記規制部材が前記採寸機構の前記可動部と連動するようになっており、前記制御部が、前記採寸機構に置かれた薬剤に係る薬剤寸法データを前記採寸用駆動部材の動作制御にて取得してデータ保持する第1データ保持手段と、データ送信されて来た薬剤寸法データを受信にて取得してそれをデータ保持する第2データ保持手段とを具備していて、前記第1データ保持手段と前記第2データ保持手段との何れか一方が保持している薬剤寸法データに基づいて前記規制部材に前記横幅の規制を行わせるとともに前記仕分け部材に前記高さの規制を行わせるようになっている、ことを特徴とする。
なお、上記の縦線は、仮想のものであり、既述した鉛直線が典型的であるが、環状回転体の薬剤移送機能を損なわないほど少しなら鉛直線から傾いていても良い。
【0058】
また、本発明の薬剤フィーダは(解決手段2)、上記解決手段1の薬剤フィーダであって、前記第1データ保持手段と前記第2データ保持手段とがデータ記憶メモリを共用していることを特徴とする。
【0059】
さらに、本発明の薬剤フィーダは(解決手段3)、上記解決手段1,2の薬剤フィーダであって、前記制御部が、前記第1データ保持手段にて薬剤寸法データを取得したときには、その薬剤寸法データを前記データ送信の実行元へデータ送信するようになっている、ことを特徴とする。
【0060】
また、本発明の調剤システムは(解決手段4)、上記解決手段3の薬剤フィーダを薬剤収納庫に搭載した薬剤分包機と、処方箋の情報に基づいた処方データと各種薬剤のデータを纏めた薬品マスタとを保持した調剤サーバとを備え、前記調剤サーバと前記薬剤分包機とがデータ送受信可能であり、前記薬剤分包機の制御部と前記薬剤フィーダの前記制御部とがデータ送受信可能であり、前記薬剤分包機が、前記薬剤フィーダにて処理する薬剤を含んだ調剤指示データを前記調剤サーバから受信したとき、前記調剤指示データに前記薬剤に係る薬剤寸法データが含まれているか否かを調べて、含まれていれば当該薬剤寸法データを前記薬剤フィーダに対してデータ送信し、含まれていなければ前記薬剤フィーダに対して前記採寸機構による薬剤寸法データの取得を指示するとともに前記薬剤フィーダから送信されてきた薬剤寸法データを前記調剤サーバへ転送するようになっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0061】
このような本発明の薬剤フィーダにあっては(解決手段1)、仕分用駆動部材にて仕分け部材を昇降させるようにしたことに加えて、規制部材と採寸機構の可動部とを連動させて、その可動部を採寸用駆動部材が移動させると採寸機構ばかりか規制部材も作動するようにもしたことにより、採寸機構に置かれた薬剤の寸法データを取得することに加えて、その寸法データに基づいて薬剤搬送経路の横幅ばかりか薬剤搬送経路の上の薬剤通過高さを規制するという三つの機能までも、制御部が二つの駆動部材を制御することで具現されるので、機能の数ひいては可動部材の個数より駆動部材の組み込み数が少なくて済む。しかも、採寸に用いた薬剤を採寸後に採寸機構から取り出して傾斜回転体の上に移すことも可能になり、そうすることで薬剤を無駄なく自動調剤に用いることができる。さらには、駆動部材の動作量から寸法データを得ることで採寸機構の簡素化までも達成できる。
【0062】
しかも、採寸機構を用いて薬剤寸法データを得る第1データ保持手段にとどまらず、上位装置等からデータ送受信にて薬剤寸法データを得る第2データ保持手段も具備したことにより、薬剤搬送経路の横幅と高さの規制に必要な薬剤寸法データを上位装置等が既に保持しているときには、そのデータを受信することで速やかに薬剤逐次排出動作を開始することができることから、採寸を行って必要な薬剤寸法データを取得するのは、必要な薬剤寸法データを上位装置等が保持していないときにだけ行えば足りるので、総体的な薬剤分包能力の向上に役立つものとなっている。
したがって、この発明によれば、採寸作業やデータ設定等の作業負担が軽減される。
【0063】
また、本発明の薬剤フィーダにあっては(解決手段2)、採寸にて得た薬剤寸法データと受信にて得た薬剤寸法データとを同時に使用することが必須でないことから、第1,第2データ保持手段がデータ記憶メモリを共用することが可能なので、そのような態様の構成が採用されている。
【0064】
さらに、本発明の薬剤フィーダにあっては(解決手段3)、採寸を行って薬剤寸法データが得られたときには、その薬剤寸法データが、採寸不要時のデータ送信の実行元である上位装置等へデータ送信されるようにもしたことにより、それ以降の同一薬剤の逐次排出に際しては上位装置等から必要なデータを受信することができるので、採寸動作を省いて薬剤逐次排出動作を速やかに開始することができる。
【0065】
また、本発明の調剤システムは(解決手段4)、通常は多数の薬剤フィーダと、それを搭載した一台か複数台の薬剤分包機と、処方データや薬品マスタ等のデータを保持した調剤サーバとが、データ送受信にて連携動作を行うようになっており、そこまでは従来システムを継承したものであるが、本システムにあっては、薬剤フィーダのうち一つ又は複数のものに上記解決手段3の薬剤フィーダ(ここでは改良フィーダと略称する)が採用されるとともに、それに対応させて薬剤分包機と調剤サーバも機能が追加されている。
【0066】
具体的には、改良フィーダで処理する薬剤について調剤サーバが薬剤寸法データを既に保持しているときには、そのデータを含んだ調剤指示が調剤サーバから薬剤分包機へ送られ、薬剤分包機では改良フィーダが薬剤寸法データを受け取って速やかに薬剤逐次排出動作を開始できることから、採寸を先行させる必要がないので、時間の損失が無い。
また、改良フィーダで処理する薬剤について調剤サーバが薬剤寸法データを未だ保持していないときには、調剤サーバから薬剤分包機へ送られる調剤指示では薬剤寸法データが不足するが、その場合には改良フィーダにて採寸を行うことで必要なデータが揃って調剤を実行できる。しかも、その薬剤寸法データが調剤サーバに送られるので、以後は、その調剤サーバ管理下の総ての改良フィーダが薬剤寸法データを活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明の実施例1について、薬剤フィーダの構造を示し、(a)が上蓋を外した機構部の外観斜視図と制御部の機能ブロック図、(b),(c)が採寸機構を兼ねる型置場の外観斜視図である。
図2】(a)~(d)何れも型置場と規制機構との連動状態を示す要部の平面図である。
図3】(a)が仕分け機構とその周辺部とに係る外観斜視図であり、(b)が仕分け機構だけの外観斜視図である。
図4】単体の中段垂下物に係る平面図と正面図と右側面図と背面図と左側面図である。
図5】複数並設の中段垂下物に係る平面図と正面図と右側面図と背面図と左側面図である。
図6】薬剤フィーダの動作状態を示し、(a)が薬剤を仕分けしている仕分け機構などに係る外観斜視図であり、(b)が仕分け機構の中段垂下物の斜交当接面による仕分け状況をしめす外観斜視図である。
図7】薬剤を仕分けしている中段垂下物の揺動状態などを示し、(a)が平面図、(b)が正面図である。
図8】本発明の実施例2について、(a)が調剤システムの構造を示す模式図であり、(b)がカセット着脱式の薬剤フィーダの正面図である。
図9】背景技術2の欄で説明した薬剤フィーダの要部構造を示し、(a)が平面図、(b)が縦断正面図である。
図10】背景技術3の欄で説明した薬剤フィーダの要部構造を示す縦断正面図である。
図11】その薬剤フィーダの規制機構の構造を示し、(a)が型用薬剤を型置場に置いたときの平面図、(b)が第1規制部材に係る平面図と端面図である。
図12】その薬剤フィーダの仕分け機構の構造を示し、(a)が仕分け機構とその設置先部分とに係る斜視図、(b)が第1仕分け部材の正面図、(c)が第2仕分け部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
脆い薬剤でも毀損しない範囲で且つ簡便な手法で規制機構の幅規制機能を強化することに加え、脆い薬剤でも毀損しない範囲で且つ簡便な手法で仕分け部材の高さ規制機能を適度に回復させることも更なる技術的な課題となるので、この課題を解決するための実施形態についても説明する。
[実施形態1]
実施形態1の薬剤フィーダは、上述した解決手段の薬剤フィーダであって、前記仕分け部材が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上方に垂れ下がっている垂下物を具備していることにより前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して高さを規制するようになっており、 前記垂下物として形状の異なる第1形の垂下物と第2形の垂下物とが設けられており、前記の第1形の垂下物が、下端部を横に押されると変形しうるものであり、前記の第2形の垂下物が、上端部を緩く支持されていて下端部を横に押されると変形せずに揺動しうるものである、ことを特徴とする。
【0069】
このような実施形態1の薬剤フィーダにあっては、薬剤の重なりを穏やかに解消するための垂下物として、既述した垂下物612,622,632のように下端部を横に押されると変形しうる第1形の垂下物ばかりでなく、上端部を緩く支持されていて下端部を横に押されると変形せずに揺動しうる第2形の垂下物も設けられて、両者が併用されるようになっている。何れの垂下物も、環状回転体によって搬送されて来た薬剤が当接すると、当接薬剤に対して重なりを解くような反力を作用させるが、反力の発生手段ひいては作用態様が変形と揺動とで異なることから同質の作用態様を繰り返す場合よりも多様で高い重なり解消効果を期待することができる。また、薬剤に当接した端部が揺動にて横に逃げるので、上方へ逃げるものより過剰反力が発生し難い。
したがって、この実施形態によれば、脆い薬剤でも毀損しない範囲で且つ簡便な手法で仕分け部材の高さ規制機能を適度に回復させることができる。
【0070】
[実施形態2]
実施形態2の薬剤フィーダは、上記実施形態1の薬剤フィーダであって、前記の第1形の垂下物と前記の第2形の垂下物とが、前記環状回転体の周方向位置を異にしていることを特徴とする。
【0071】
このような実施形態2の薬剤フィーダにあっては、第1形の垂下物と第2形の垂下物とを環状回転体の周方向に分散して設けたことで、複数の垂下物を何れも薬剤搬送経路上に無理なく配置することができるばかりか、態様の異なる複数種類の作用すなわちタイプの異なる「重畳薬剤の解し作用」を時間差を持って働かせることで、両作用が相殺しあうといった不所望な事態を、簡便に回避することもできる。
【0072】
[実施形態3]
実施形態3の薬剤フィーダは、上記実施形態1,2の薬剤フィーダであって、前記の第2形の垂下物は、その全部または下端部の一部を含む部分が板状であり、この板状部分の下端面の長手方向の直線と前記環状回転体の前記上端周縁部の周方向の直線とが「ねじれの位置の直線」の関係を維持するようになっており、前記環状回転体によって移送されて前記の第2形の垂下物に当接した薬剤の移送方向が前記環状回転体の内周側へ向けられるようになっている、ことを特徴とする。
【0073】
このような実施形態3の薬剤フィーダにあっては、第2形の垂下物について少なくとも下端部の形状は板状にしたうえで、この板状部分の下端の長手方向の向きを直下の薬剤移送方向に対して傾斜させておくとともに、その傾斜が第2形の垂下物の揺動によって変動する範囲を限定しておくという簡便な手法によって、他の薬剤の上に乗った状態で移送されてきた薬剤の移送方向が、第2形の垂下物との当接によって環状回転体の内周側へ変えられるので、簡便な構成でも重畳薬剤の解し作用と余剰薬剤の戻し作用とが強化される。
【0074】
[実施形態4]
実施形態4の薬剤フィーダは、上記実施形態1~3の薬剤フィーダであって、前記の第2形の垂下物が、並設された分離可能な複数部材からなるものである、ことを特徴とする。
【0075】
このような実施形態4の薬剤フィーダにあっては、分離可能な複数部材を並設して第2形の垂下物としたことにより、薬剤当接時に複数部材が僅かながらもズレたり細かく離接したりもすることから、薬剤に対する反力について総量が同じでもピークは下がる傾向が見られるので、薬剤への不所望な衝撃等を抑制しつつ重畳薬剤の解し作用を強化することができる。
【0076】
[実施形態5]
実施形態5の薬剤フィーダは、上記実施形態1~3の薬剤フィーダであって、前記の第2形の垂下物が、分離可能な状態で並設された複数枚の同一形状の板材からなるものである、ことを特徴とする。
【0077】
このような実施形態5の薬剤フィーダにあっては、分離可能な複数部材の並設により上記実施形態4の作用効果を奏することに加え、板材形状の同一化により製造負担が軽減されるとともに、同一形状の複数板材の並設により稠密配置まで容易に行える。
【0078】
[更なる課題]
稀にではあるが、薬剤の表面の性質によって薬剤同士の当接面の滑りが良くないような場合などには、複数個の薬剤が上下に重なっていない状況であっても、薬剤が環状回転体の上端周縁部の上で綺麗な一列でなくジグザグに並んだ状態で列なり、重心が環状回転体の上端周縁部から外れて本来なら速やかに内周下方へ落ちて傾斜回転体に乗り移るべき薬剤まで不所望に長い時間に亘って環状回転体の薬剤搬送経路の上に留まり続けることがある、ということも判明した。
【0079】
そして、そのような薬剤渋滞状態とも言えるような状況が発生した場合、規制機構から落下排出口への薬剤搬送頻度が減少することから、薬剤の順次排出機能が予想を超えて損なわれるので処理能力が不所望な程度にまで低下したり、更には、薬剤排出検出の不所望なタイムアウトによって、フィーダ内の全薬剤の排出が完了してフィーダが空になったとの誤判定を招くことにもなりかねない。そのため、脆い薬剤でも毀損しない範囲で且つ簡便な手法で規制機構の幅規制機能が薬剤渋滞解消にも役立つようにすることも更なる技術的な課題となるので、この課題を解決するための実施形態についても説明する。
【0080】
[実施形態6]
実施形態6の薬剤フィーダは、上述した解決手段1~3や実施形態1~5の薬剤フィーダであって、
前記規制部材が、前記制御部の制御に応じて前記横幅の規制量を加減するようになっており、前記制御部が、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記規制部材を制御して前記横幅を拡大させるようになっている、ことを特徴とする。なお、上記の薬剤検出間隔には、環状回転体の回転開始から薬剤落下検出手段の薬剤検出までの時間間隔も、薬剤落下検出手段による一の薬剤検出から次の薬剤検出までの時間間隔も、該当する。
【0081】
[実施形態7]
実施形態7の薬剤フィーダは、上記実施形態6の薬剤フィーダであって、前記制御部が前記規制部材を制御して前記横幅を拡大させた後に前記薬剤落下検出手段が薬剤落下を検出すると、それに応じて前記制御部が前記規制部材を制御して前記横幅を拡大前に戻すようになっている、ことを特徴とする。
【0082】
このような実施形態6,7の薬剤フィーダにあっては、環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤に係る薬剤検出間隔が、正常な薬剤排出動作の下では既知の正常時間隔(正常時の時間間隔)かそれに近い時間になるところ、それより長い渋滞時間隔(渋滞時の時間間隔)に達したときには、環状回転体の上端周縁部の薬剤搬送経路において不所望な薬剤渋滞状態が発生した可能性が高いとして、規制部材が作動して薬剤搬送経路の横幅が広げられるので、規制部材の脇を薬剤が通過することへの規制が一時的に緩和される。
【0083】
このように、多数の薬剤が規制部材の所で詰まって搬送方向に連なる薬剤渋滞状態が発生したときには、そのことが検出されて、渋滞の先頭の薬剤が前進し易くなる。そして、先頭の薬剤の僅かな動きが後続の薬剤同士の押し合い状態の緩和を招き、薬剤の連なり状態が変化するので、薬剤渋滞状態の解消に役立つ。しかも、規制部材を少し追加動作させることで簡便に実施することができるうえ、不所望な薬剤同士の押し合いが緩和されるので、薬剤が脆いものであってもそれを毀損するおそれは無い。
したがって、この実施形態6,7によれば、脆い薬剤でも毀損しない範囲で且つ簡便な手法で規制機構の幅規制機能が薬剤渋滞解消にも役立つようにすることができる。
【0084】
[実施形態8]
実施形態8の薬剤フィーダは、上記実施形態6,7の薬剤フィーダであって、前記制御部が前記横幅の拡大を段階的に行うようになっていることを特徴とする。
このような実施形態8の薬剤フィーダにあっては、薬剤搬送経路の横幅の緩和いいかえると薬剤搬送経路の横幅の拡大が連続的でなく段階的に行われるようにしたことにより、規制対象になった薬剤が間欠的に横移動することから、移動時には薬剤同士の摩擦が抑制されるとともに薬剤同士の押し合い状態も緩和され、移動と移動の合間には薬剤の整列状態が整えられるので、薬剤への衝撃を抑えて無理なく而も効率良く薬剤の渋滞状態を解消することができる。
【0085】
このような本発明の薬剤フィーダ及び調剤システムについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1,2により説明する。
図1図7に示した薬剤フィーダの実施例1は、上述した解決手段1(出願当初の請求項1)に加えて、上述した実施形態1~8をも、具現化したものである。
ただし、薬剤フィーダ単体に係る説明にとどまり、上位装置との薬剤寸法データの送受信などに係る説明は実施例2に委ねている。また、上述した解決手段2(出願当初の請求項2)については、直截的に理解される変形事項なので、図示などを割愛した。
【0086】
図1(a)と図8に示した調剤システムの実施例2は、上述の解決手段1,3,4(出願当初の請求項1,3,4)の薬剤フィーダと調剤システムを具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、背景技術欄において既述したものや同等品で足りる部材等については図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。また、それらについて背景技術の欄で述べたことと重複するものについては、繰り返しとなる説明を割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0087】
本発明の薬剤フィーダに係る実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1(a)は、透明な上蓋を取り外した薬剤フィーダ1100の要部構造を示し、(a)が回転体1020,1030や,仕分け機構1600,規制機構1700等を含む機構部に係る外観斜視図と、コントローラ1800(制御部)の機能ブロック図である。同図(b),(c)は、何れも、採寸機構を兼ねる型置場1740の外観斜視図である。
また、図2は、(a)~(d)何れも型置場1740の可動式挟持部1742と規制機構1700のリンク機構73との連動状態を示す平面図である。
【0088】
さらに、図3は、(a)が仕分け機構1600とその周辺部とに係る外観斜視図であり、(b)が仕分け機構1600だけの外観斜視図である。
また、図4は、単体の中段垂下物1623に係る平面図と正面図と右側面図と背面図と左側面図であり、図5は、二個の中段垂下物1623,1623を隣り合わせ状態で並設した中段垂下物1622に係る平面図と正面図と右側面図と背面図と左側面図である。
なお、図1(a)に示したコントローラ1800は制御用マイクロプロセッサ等からなり、これには、第1データ保持手段に加え、第2データ保持手段の存在や、コントローラ2300とのデータ送受信についても、記載されているが、それらの説明は、煩雑化回避の観点から、後述の実施例2の欄で行う。
【0089】
薬剤フィーダ1100は(図1図3参照)、適宜改良されながらも所要の機能を維持する態様で全体的な概要構成部分を既述の薬剤フィーダ10,100(図9図10参照)から踏襲しており(図1(a),図3(a)参照)、既述した筐体から引き継いだ周壁11と、既述の環状回転体20を踏襲していて縦線を中心として軸回転可能な外側の環状回転体1020と、既述の傾斜回転体30を踏襲していて上記の縦線から傾いた傾斜線を中心として軸回転可能な状態で環状回転体1020の内側に装備されて環状回転体1020の中空を塞ぐ傾斜回転体1030とを備えている。
【0090】
また、薬剤フィーダ1100は(図1(a),図3(a)参照)、傾斜回転体1030の回転によって傾斜回転体1030の上から環状回転体1020の上端周縁部23の上へ運び上げられた固形の薬剤を環状回転体1020の回転時に整列させるための規制機構1700(図2参照)及び仕分け機構1600(図3(b)参照)も備えている。
仕分け機構1600は既述の仕分け機構600を改良したものであり、規制機構1700は既述の規制機構700を改良したものである。それらの動作制御などを担うコントローラ1800も機能増強がなされている(図1(a)参照)。
【0091】
先ず、規制機構1700は(図1(a)の散点模様部分を参照)、基本的な構造部分はリンク機構73と第1規制部材710と第2規制部材720と付勢バネとを具備した既述の規制機構700を踏襲しており(図11参照)、環状回転体1020の上端周縁部23の上の薬剤搬送経路に対して横幅を規制するとともに薬剤に対する最終的な高さ規制も行うようになっているが、電動になった型置場1740と連動することで規制対象の横幅を電動で可変調整できるようになっている。
【0092】
具体的には、型置場1740は(図1(a)の散点模様部分と同図(b),(c)を参照)、固定の挟持部1741(静止部)と、それ1741に対して進退しうる挟持部1742(可動部)と、それ1742と一緒に移動する載置部1743(伝動部)及び長穴部1744(案内部)と、この長穴部1744の長穴に挿入されていて載置部1743の移動方向ひいては挟持部1742の移動方向を規制する固定の挿入部1745(案内部)と、挟持部1742を挟持部1741に当接させる向きに載置部1743を付勢する図示しないバネとを具備していて、自由状態では挟持部1741と挟持部1742とが当接しあい(図1(c)参照)、挟持部1742や載置部1743をバネ付勢に反する向きに押すと挟持部1742が挟持部1741から離れるようになっている(図1(b)参照)。
【0093】
しかも、そのような型置場1740の下方には、回転駆動モータ54a,54bと同様にコントローラ1800の制御を受けるモータ1750(規制用駆動部材+採寸用駆動部材)が配設されており(図1(a)参照)、このモータ1750の回転動作に応じて揺動する揺動部材1751(伝動部)と(図1(b)参照)、原点に位置している揺動部材1751を検出する原点検出部材1752も配設されている(図1(c)参照)。そして、モータ1750を所定の向きに動作させると、両挟持部1741,1742の間隙が広がり、モータ1750を逆回転させたり自由状態にすると、両挟持部1741,1742の間隙が狭まって両挟持部1741,1742が当接しあうとともに、その状態が原点検出部材1752によって検出され、その検出信号がコントローラ1800に送られるようにもなっている。
【0094】
このような型置場1740は、例えばマイクロプロセッサ等からなるコントローラ1800の制御下で、薬剤を挟んで寸法を測るための採寸機構として機能したり、薬剤搬送経路の横幅の規制量を増減させる機構としても機能するものとなっている。
採寸機構としての機能は(図2参照)、挟持部1742を指先等で移動させて挟持部1741と挟持部1742とを離してからその間に薬剤5aを置いて挟持部1742を自由にすると両部材1741,1742間の距離が薬剤5aの寸法に一致するので、その距離を測定するといったことで具現化される(図2(a),(b))。
【0095】
その測定は、電子式の測定器などを付設することで行っても良いが、本例では、コントローラ1800がモータ1750の回転位相データを取得して距離に換算することで安価に実現している。例えば、モータ1750を載置部1743のバネ付勢力より弱い駆動力で作動させて、揺動部材1751を載置部1743に軽く当接させ、それによって揺動部材1751が止まったときに、モータ1750の回転位相データを取得する、といったことで所望のデータが得られる。また、薬剤5aの横幅や(図2(a)参照)、薬剤5aの厚み(図2(b)参照)、薬剤5aの長さ(図示せず)といった測定値が、コントローラ1800によって取得され、第1データとしてデータ保持されるようにもなっている(第1データ保持手段)。
【0096】
このように、コントローラ1800は、モータ1750を制御することで、採寸機構でもある型置場1740に置かれた薬剤5aの寸法データを取得することができるようになっている。また、採寸後に薬剤5aを型置場1740から取り除くと(図2(c)参照)、バネ付勢によって挟持部1742が挟持部1741のところまで移動するが、コントローラ1800の制御によってモータ1750をバネの付勢力より強い駆動力で作動させることで、薬剤5aが無くても、薬剤5aの横幅に対応した位置や、その他の位置へ、挟持部1742を移動させることもできるようになっている(図2(d)参照)。
【0097】
挟持部1742の支持部か或いは載置部1743の後端部がリンク機構73の前端部と対偶連結されているため、コントローラ1800の制御とモータ1750の駆動にて挟持部1742を移動させると、それに連動してリンク機構73が長手方向に進退することから、既述のように、第1,第2規制部材710,720によって規制される薬剤搬送経路の横幅、すなわち環状回転体1020の上端周縁部23の上に乗って移動する薬剤に許容される横幅が、外周側から拡縮されるので、上端周縁部23の上の薬剤に対する横幅の規制量の増減が、コントローラ1800の制御下で、而も型置場1740に薬剤5aが無い状態でも、行うことができるようになっている。そのため、第1,第2規制部材710,720による上端周縁部23上の薬剤に対する横幅の規制幅を決めるために型置場1740に置かれた薬剤5aまでも直ちに且つ無駄なく調剤に供することができる。
【0098】
次に、仕分け機構1600は(図3(a)の散点模様部分,図3(b)参照)、環状回転体1020の上端周縁部23の上の薬剤に対して通過可能な高さを厳密でなく多少なら漏れがあっても良いから穏やかに規制するためのものであり、環状回転体1020の上端周縁部23の上方に垂れ下がる垂下物として、大玉613を縦に連ねて曲折自在な既述の前段垂下物612と、後で詳述する板状の中段垂下物1623を二枚横並びさせた中段垂下物1622と、小玉633を縦に連ねて曲折自在な後段垂下物632という三種類の垂下物を具備している。それら612,1622,632は、その順で上端周縁部23の上流から下流へと配設されており、何れも上端周縁部23(薬剤搬送経路)の上方に位置しつつも、環状回転体1020の周方向位置を異にするものとなっている。
【0099】
複数の前段垂下物612を吊り下げ保持する支持部材1611は短めであるのに対し、中段垂下物1622と後段垂下物632とを吊り下げ保持する支持部材1621は長めで規制機構1700を跨いでいるが、両部材1611,1621は一体物から作られているので或いは緊結されているので、支持部材1611を含む第1仕分け部材1610と支持部材1621を含む第2仕分け部材1620も一体化している。
そのため、コントローラ1800がモータ1630(仕分用駆動部材)を作動させると(図1(a),図3(a)参照)、その駆動によって昇降用ネジ1640が軸回転し、それに応動して一体物の支持部材1611,1621が昇降するので、三種の垂下物612,1622,632の下端位置を纏めて上下に自動調整することができるようにもなっている。
【0100】
また、それら三種の垂下物が不要なときには纏めて取り外すことができるので、着脱が容易なものとなっている。
さらに、玉を曲折自在に繋げた前段垂下物612と後段垂下物632は、既述したように、環状回転体1020の上端周縁部23によって搬送されて来た薬剤がそれら612,632の下端部に衝突して横に押されると、衝突薬剤を押しとどめつつも衝撃は緩和するために、全体的には弓なりになり、下端部ほど容易に大きく変形する第1形の垂下物と言えるものになっている。
【0101】
これに対し、縦に細長い板状体からなり変形しづらい中段垂下物1623は、その上端部1623aが支持部材1621の貫通孔1621aの所に遊嵌状態で引っ掛けられて緩く吊持されているので、下端部を横に押されると変形せずに揺動しうる単体の第2形の垂下物と言える。
また、この中段垂下物1623を二枚(複数枚)ほど密だが分離容易な状態で横に並べた中段垂下物1622は、複数並設の第2形の垂下物と言えるものであり、前段垂下物612や後段垂下物632とは変形状況ひいては複数薬剤の重なり解し作用の内容が異なるものとなっている。
【0102】
さらに、支持部材1621による中段垂下物1622の保持状態を説明すると(図3(b),図4図5参照)、下端部を振る揺動については、衝撃緩和のため比較的大きめに許容されるが、仮想の縦軸を中心にして回る謂わば自転状回転については、二枚の中段垂下物1623の下端部1623cのうち薬剤当接対象となる前側の下端部1623cの斜交当接面1623dが当接薬剤に押されたときにその向きが過剰に変動するのを防止するために、例えば中段垂下物1623の上端部1623aと貫通孔1621aとの間隙が適度に抑制されたスリット状に形成されていて、上記の自転状回転の揺れ幅が小さく抑えられるようになっている。
【0103】
中段垂下物1623の典型的な構成例は(図4参照)、縦長の平板部1623eと、その上端から少しだけ突き出た上端部1623aと、縦長平板部1623eの中央部から上端部1623aと同じ方向に突き出た中央部1623bと、縦長平板部1623eの下端部から長めに突き出た下端部1623cとを具えている。縦長平板部1623eと上端部1623aと中央部1623bは一つの平面に属している。これに対し、下端部1623cは、上端部1623aや中央部1623bと同様に縦長平板部1623eの両側のうち同じ側へ突き出ているが、全く同じ方向でなく、横へ30°ほど傾いている。
【0104】
中段垂下物1622は(図5参照)、上述した中段垂下物1623を二枚ほど重ね合わせたものであり、支持部材1621に上端部を取り付けられた状態で、二枚の大部分がぴったり重なった状態で、環状回転体1020の上端周縁部23の上方に垂れ下がり、二枚の中段垂下物1623の下端部1623cのうち一方が薬剤5の当接を受ける斜交当接面1623dになる。その垂下状態では、斜交当接面1623dの下辺と重なる直線(板状部分の下端面の長手方向の直線)と、環状回転体1020の上端周縁部23の周方向の直線とが、上下から見ると交差しているかのように見えるが横から見ると離れて見える「ねじれの位置の直線」の関係を維持するようになっている。
【0105】
コントローラ1800(薬剤フィーダの制御部)は(図1(a)参照)、上述したようにマイクロプロセッサ等からなり、型置場1740で採寸した薬剤の横幅値(薬剤寸法データ)を用いて型置場1740のモータ1750ひいては規制機構1700の第1,第2規制部材710,720を作動させることにより、環状回転体1020の上端周縁部23の上の薬剤搬送経路幅(薬剤搬送経路の横幅)を、例えば薬剤の横幅に一致させるか又は所定係数を乗じて算出した近似幅あるいはそれより少し狭めの横幅など適宜な幅に設定するようになっているが、これは薬剤の排出を始める前の初期設定処理の一つである。薬剤排出動作中には、既述したような回転速度制御や薬剤排出検出なども行うようになっている。
【0106】
それに加え、このコントローラ1800は、手順が複雑ではないのでフローチャートでの図示などは割愛したが、薬剤排出動作中でも必要に応じて次の薬剤渋滞の検出と薬剤搬送経路幅の緩和(薬剤搬送経路の横幅の拡大)も行うようになっている。
そのうち薬剤渋滞の検出は、薬剤落下検出手段56の検出信号に基づいて行われ、落下排出口14から落下した薬剤の検出タイミングに係る時間間隔が既定の渋滞時間隔に到達しなければ「薬剤渋滞が未発生」とし、その時間間隔が渋滞時間隔に到達すると「薬剤渋滞が発生」とする、といった判別で行われる。ここで、渋滞時間隔は、試運転等で既知の正常時間隔に誤判定防止用の増分を加えて予め決定された時間間隔の設定値である。
【0107】
また、薬剤搬送経路の横幅の拡大は、薬剤搬送経路の上の薬剤に対する横幅の規制を緩和することであり、具体的には、第1,第2規制部材710,720の下段部分711,721(図11参照)の先端が環状回転体1020の上端周縁部23の直ぐ上方で外周側から内周側へ最も入り込む距離について、その距離を減少させて薬剤搬送経路の幅を広めることで実現されるところ、この薬剤フィーダ1100にあっては(図1参照)、大抵は型置場1740が薬剤5aの無い空の状態のときに行うが(図2(c),(d)参照)、コントローラ1800がモータ1750を作動させると、規制機構1700の挟持部1742等が進退し、それに応じてリンク機構73さらには第1,第2規制部材710,720が応動することを利用して、採寸用モータ1750の兼用を実現している。
【0108】
さらに、コントローラ1800は、そのような横幅の拡大を、単調でなく、段階的に行なえるようにもなっている。その段階数や、段階毎の増加量、さらには各段階の時間などが、パラメータの初期設定や設定変更などで指定できるようにもなっている。
一例を挙げると、段階数を4段階に設定し、段階毎の増加量を一律で5%に設定し、各段階の時間を一律で3秒と設定した場合、コントローラ1800は、薬剤渋滞の発生を検出すると、先ず、3秒経過後に幅規制を5%緩和して該当箇所の薬剤搬送経路の横幅を当初の105%に広め、それから更に3秒経過後に幅規制を更に5%緩和して該当箇所の薬剤搬送経路の横幅を当初の110%に広めるようになっている。
【0109】
それから更に3秒経過後に幅規制を更に5%緩和して該当箇所の薬剤搬送経路の横幅を当初の115%に広め、更に3秒経過後に幅規制を更に5%緩和して該当箇所の薬剤搬送経路の横幅を当初の120%に広めるようになっている。なお、薬剤が不所望な横並び状態になるのを回避するために、規制を最高に緩和した場合でも薬剤搬送経路の横幅を薬剤の横幅の1.5倍未満にとどめるといった制約を課すようにもなっている。
また、コントローラ1800は、横幅規制緩和の過程のどこかで落下排出口14からの薬剤排出が薬剤落下検出手段56により検出されると、第1,第2規制部材710,720を本来の設定位置に戻し、横幅の規制緩和を終了するが、更に時間が経過してタイムアウトしたときには、薬剤フィーダ1100が空になったと判定するようになっている。
【0110】
このような実施例1の薬剤フィーダ1100について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図1(b),(c)は、型置場1740の動作状態を示す外観斜視図であり、図2(a)~(d)は、型置場1740の可動式挟持部1742と規制機構1700のリンク機構73との連動状態を示す平面図である。
【0111】
また、図6は、薬剤フィーダ1100の動作状態、そのなかでも特に仕分け機構1600の動作状態を示しており、(a)が、薬剤5のうち中段垂下物1622の所に来た薬剤5b,5cを仕分けしている仕分け機構1600などに係る外観斜視図であり、(b)が、仕分け機構1600の中段垂下物1622の斜交当接面1623dによる仕分け状況をしめす外観斜視図である。さらに、図7は、薬剤5b,5cを仕分けしている中段垂下物1622の揺動状態などを示し、(a)が平面図、(b)が正面図である。
【0112】
薬剤フィーダ1100を調剤に使用するに先だち、コントローラ1800に薬剤の形状データのうち少なくとも横幅と厚みとを保持させておくことが必要であり、予めデータ入力されていた場合は省けるが、そうでない場合は、採寸とデータ設定とを行う。
採寸は別の機器で行い、その寸法値を薬剤フィーダ1100に手動でデータ入力しても良いが、この薬剤フィーダ1100では、薬剤5aを横倒しにして型置場1740にセットしてから(図2(a)参照)、横幅測定モードで動作させると、薬剤の横幅に係る採寸とデータ設定とが自動で行われる(図1(a)の第1データ保持手段を参照)。また、薬剤5aを縦にして型置場1740にセットしてから(図2(b)参照)、厚み測定モードで動作させると、薬剤の厚みに係る採寸とデータ設定とが自動で行われる(図1(a)参照)。その後、薬剤5aは型置場1740から取り出して回転容器20+30に入れることで調剤対象に含めることができる(図2(c)参照)。
【0113】
そして、薬剤フィーダ1100を準備モードで動作させると、仕分け機構1600については、コントローラ1800が薬剤の厚みデータに基づいてモータ1630を動作させ、それに従って仕分け機構1600が昇降し、それによって仕分け機構1600延いては前段垂下物612と中段垂下物1622と後段垂下物632の高さが薬剤の厚みに適合させられる。また、規制機構1700については、コントローラ1800が薬剤の横幅データに基づいてモータ1750を動作させ、それに従って規制機構1700が動作して第1,第2規制部材710,720が揺動し、それによって環状回転体1020の上端周縁部23の上の薬剤搬送経路の該当箇所の横幅が薬剤の横幅に適合させられる。
【0114】
そして、必要数かそれ以上の多数の薬剤5を薬剤フィーダ1100に投入し、具体的には環状回転体1020に囲まれた傾斜回転体1030の上に投入し、そうしてから、薬剤フィーダ1100を調剤モードで動作させると、薬剤5が、次々に、傾斜回転体1030によって持ち上げられて環状回転体1020の上端周縁部23(薬剤搬送経路)の上に載り移り(図6(a)参照)、環状回転体1020の回転に伴って前段垂下物612と中段垂下物1623と後段垂下物632の順にその下を潜り抜けようとする。
【0115】
そのとき、重なり合うことなく単独で上端周縁部23に載っている薬剤5は、前後の垂下物612,632とはほとんど干渉することなく干渉したとしても上端周縁部23の上で僅かに移動する程度にとどまり、中間の中段垂下物1623とは全く干渉することなく、それらの下を通過する。
これに対し、上下に重なった薬剤5b,5cについては(図6(a)参照)、上側の薬剤5bが、前段垂下物612に当接し、その反力で重なりを崩されることもあるが、下端部を横に押されると変形しうる前段垂下物612の当たりは薬剤5を傷つけないように弱めになっているので、重なりが崩れず残ることもある。
【0116】
そして、そのように上下に重なったまま前段垂下物612を通過した薬剤5b,5cが中段垂下物1622のところへ運ばれて来ると(図6(b)参照)、上側の薬剤5bが、中段垂下物1622の下端部1623cの斜交当接面1623dに当接し、その反力によって前方への直進を拒まれることから、下端部1623cの斜交当接面1623dや縦長平板部1623eの表面に沿うようにして移動する。
このように上側の薬剤5bの進行方向が環状回転体1020の内周側へ向けられるため、環状回転体1020の上端周縁部23から内側へ進んで、上側の薬剤5bは、傾斜回転体1030の上へ落下することが多い(図6(b)一点鎖線を参照)。
【0117】
下側の薬剤5bは、中段垂下物1622の下を潜って通過することが多いが、薬剤5cに随伴して環状回転体1020の上端周縁部23から落下することもある。
中段垂下物1622は、下端部を横に押されても変形しないものなので、薬剤5b,5cの重なりを解す能力は他の垂下物612,632より優れているが、それでも薬剤を傷つけないために薬剤との当接時の衝撃やその後の圧力を揺動することで緩和するようになっているので、稀には薬剤5b,5cが重なったまま中段垂下物1622を押しのけて通過することもある。
【0118】
その場合、後段垂下物632による穏やかな重なり解し作用が施され、それでも崩れなかった場合だけ、薬剤5b,5cの重なりに対し、既述した後方の規制機構700によって、緩やかな高さ規制に加え、環状回転体1020の上端周縁部23の薬剤搬送経路の幅を外周側から狭める横幅規制も、作用する。
そのため、薬剤5b,5cの重なりが解消されるか、薬剤5b,5cが重なったまま環状回転体1020の上端周縁部23の上から傾斜回転体1030の上へ強制移動させられるので、薬剤の重なりが薬剤搬送経路から落下排出口14へ送り込まれることはない。
【0119】
さらに、二枚の中段垂下物1623を密接配置してなる一組の中段垂下物1622の作動について説明すると(図7参照)、環状回転体1020による薬剤5b,5cの重なりの進行方向(二点鎖線を参照)に対して当接干渉部分が傾斜しているため、詳しくは、中段垂下物1622の斜交当接面1623d(当接面および前半の倣い面)は角度θ1ほど傾いているのに対し、中段垂下物1622の縦長平板部1623e(後半の倣い面)は角度θ2しか傾いておらず、角度θ1が角度θ2より大きいので(θ1>θ2)、中段垂下物1622に当接した薬剤5b,5cの重なりに対し、前半には強めの崩し力が作用し、後半には環状回転体1020の上から傾斜回転体1030の上へ薬剤5bを追い出す力が強化されるので、薬剤の重なりが薬剤搬送経路から無くなる割合が高まる。
【0120】
しかも、中段垂下物1622を成す複数枚の中段垂下物1623,1623が自由状態では密に接しているが(図3(b),図5参照)、それら1623,1623は分離可能なものなので、斜交当接面1623dに薬剤5bが当接したときには(図7参照)、上端部1623aはほとんど移動しないで下端部1623c(1623d)が揺動するのに加え、同時に微細な摺動や離接を繰り返すことも行うので、当接時の衝撃やその後の摩擦力なども低減緩和されることになる。
こうして、薬剤5b,5cの重なりが高い確度で無理なく解消され、落下排出口14から薬剤5が一つずつ落下排出される。
【0121】
ところで、そのような逐次薬剤排出中に第1規制部材710や第2規制部材720の所で稀とはいえ薬剤渋滞が発生すると、薬剤落下検出手段56による落下薬剤の検出が途絶えてしまい、それによるタイムアウトをコントローラ1800が検出すると、コントローラ1800の制御に従って上述の薬剤搬送経路の横幅の緩和動作が行われることから、以前は速やかには解消できなかった薬剤渋滞でもタイムアウト前に解消されることが多いので、この薬剤フィーダ1100にあっては、高い確率で収容薬剤を残さず自動排出することができる。
【実施例2】
【0122】
本発明の調剤システムに係る実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
【0123】
図8(a)は、調剤システム2000+3000の構成を示す模式図であり、薬剤フィーダ1100には揺動開閉式の上蓋も図示した。同図(b)は、カセットを取り外したカセット着脱式の薬剤フィーダ2110の正面図である。
また、実施例1で参照した図1(a)は、上述したように、薬剤フィーダ1100の機構部に係る外観斜視図と、コントローラ1800(薬剤フィーダの制御部)の機能ブロック図である。
【0124】
先ず、薬剤フィーダ1100に係る実施例1での説明事項のうち実施例2の説明に役立つ事項について、再確認のため、要点を再述する。
【0125】
実施例1で上述したように、薬剤フィーダ1100のコントローラ1800(薬剤フィーダの制御部)は、モータ1630(仕分用駆動部材)を制御することで、仕分け機構1600を作動させて高さ規制機能を発揮させるようになっている。
また、コントローラ1800は、第1,第2規制部材710,720と採寸機構(型置場)1740の可動部1742(挟持部)とが連動するようになっていることに基づき、モータ1750(規制用駆動部材+採寸用駆動部材)を制御することで、規制機構1700を作動させて横幅規制機能に加えて採寸機能も発揮させるようになっている。
さらに、コントローラ1800は、規制機構1700の作動にて薬剤の採寸を行ったときに薬剤の横幅や厚みの測定値を第1データとしてデータ保持するようにもなっている(第1データ保持手段)。
【0126】
次に、薬剤フィーダ1100に関し、実施例1では説明を割愛して後回しにした事項について、説明する(図1(a),図8(a)参照)。
【0127】
薬剤フィーダ1100のコントローラ1800(薬剤フィーダの制御部)は、組み込み先の薬剤分包機2000のコントローラ2300(薬剤分包機の制御部)とLANケーブル等で通信可能に接続されていて(図8(a)矢付き一点鎖線を参照)、コントローラ2300を通信相手としてデータを送受信できるものとなっている。そして(図1(a)参照)、コントローラ2300から、薬剤の横幅や厚みの既定値を含む薬剤寸法データを受信したときには、その薬剤寸法データを、そのうちでも特に薬剤の横幅の値と厚みの値とを、第2データとしてデータ保持するようになっている(第2データ保持手段)。
【0128】
また(図1(a)参照)、薬剤フィーダ1100のコントローラ1800は、薬剤分包機2000のコントローラ2300から採寸実行指示を受信すると、実施例1で上述した採寸動作を採寸機構兼用の型置場1740に行わせるとともに、その薬剤採寸にて取得した第1データ(薬剤寸法データ・薬剤の横幅や厚みの測定値)を上述のようにデータ保持することに加え、上述の第2データに係るデータ送信の実行元に該当するコントローラ2300へ、第1データをデータ送信するようにもなっている。
【0129】
さらに(図1(a)参照)、薬剤フィーダ1100は、第1データを取得・保持した後は、その薬剤寸法データに基づいて、上述したようにモータ1630,1750を制御することで、規制機構1700には環状回転体1020の上端周縁部23の上の薬剤搬送経路の横幅を規制させるとともに、仕分け機構1600には環状回転体1020の上端周縁部23の上の薬剤に対して通過可能な高さを規制させるようになっている。それに加え、薬剤フィーダ1100は、第2データを取得・保持した後にも、その薬剤寸法データに基づき、同様にして、規制機構1700に薬剤搬送経路の横幅を規制させるとともに、仕分け機構1600に薬剤搬送経路の上の通過可能な高さを規制させるようになっている。
【0130】
調剤サーバ3000は(図8(a)参照)、LAN等を介して上位の処方オーダリングシステムや下位の薬剤分包機2000とのデータ送受信が可能になっており、背景技術1欄で既述したようなプログラムの実行によって、処方オーダリングシステムから処方データを受けて保持したり、それに基づき薬剤分包機2000や図示しない他の薬剤分包機もあれば何れか該当するものに対して調剤指示を出したりするようになっている。
また、調剤サーバ3000は、薬剤分包機2000の上位装置として、薬剤分包機2000からその動作状態を示すデータが得られるとそれを分包機ステータスとしてデータ保持するとともに、検索や更新の容易な適宜なデータベースからなる薬品マスタも保持している。この薬品マスタには、各種の薬剤に係る既知の薬品情報が予め登録されている。
【0131】
さらに、この調剤サーバ3000の薬品マスタは、薬品情報の一部として薬剤の横幅と高さとを各薬剤毎にデータ保持できるように拡張されている。そして、それぞれの薬剤情報ごとに、横幅値と高さ値とのデータ保持領域が確保されていて、横幅値と高さ値とが既に判明していて登録済みのときにはその値がデータ保持されるが、横幅値や高さ値が未だ判明していないときには、両値をデータ保持するためのデータ保持領域が確保されているにとどまるか、未定状態を示す仮の値が設定されるようになっている。
【0132】
そして、調剤サーバ3000は、薬剤分包機2000に対して調剤指示を出すときに、調剤対象の薬剤情報を薬品マスタから取得するに際して薬剤の横幅と高さの判明値(薬剤寸法データ・薬剤の横幅や厚みの既定値)がデータ保持されていれば当該データも調剤指示に含めたうえで調剤指示を出すが、当該データが薬品マスタに保持されていないときには、それを加えようがないので、当該データを含まないままの調剤指示を薬剤分包機2000のコントローラ2300へ送信するようになっている。また、逆に薬剤分包機2000のコントローラ2300から送信されて来た第1データ(薬剤寸法データ・薬剤の横幅や厚みの測定値)を調剤サーバ3000が受け取ると、調剤サーバ3000はそれを該当薬剤に係る判明値として薬品マスタにデータ登録するようになっている。
【0133】
薬剤分包機2000は(図8(a)参照)、既述した従来の薬剤分包機と同様、筐体内の電装スペースにコントローラ2300(制御部)が格納され、筐体の下段に落下薬剤収集機構や包装機などが格納され、筐体の上段部分に複数の薬剤フィーダ配設庫2100(特定錠剤専用タイプ)が個別引出可能に装備されている。薬剤フィーダ配設庫2100は、多数のカセット着脱式薬剤フィーダ2110(特定錠剤専用タイプ)と、それらから排出された薬剤を落下薬剤収集機構へ導く落下案内機構とを具備している。薬剤フィーダ2110は、固定のベース2112と着脱式のカセット2111との組からなり(図8(b)参照)、カセット装着状態でコントローラ2300の制御によってベース2112のモータが作動させられるとカセット2111が従動することで薬剤が一つずつ落下排出されるようになっている。
【0134】
また、薬剤分包機2000は(図8(a)参照)、既述の薬剤分包機と異なり、容器部とベースとが一体化していて全体が固定的に設置されるタイプの薬剤フィーダ1100も複数装備している(例えば特許文献6参照)。薬剤フィーダ1100の複数装備は必須でないが単一より複数の方が選択や使い分けができて便利である。図示の例では、一部の薬剤フィーダ配設庫2100を置き換える態様で、筐体の上段部分の一部(図では右端部)に、複数(図では上下3段)の薬剤フィーダ列設棚2200が組み込まれている。さらに、それぞれの薬剤フィーダ列設棚2200に、前後一列に並んだ状態で、複数個(図では4個)の薬剤フィーダ1100(多種錠剤適応タイプ)が搭載されている。
【0135】
また、薬剤分包機2000は、コントローラ2300の制御下で操作入力や画面表示の機能を担うタッチパネル2400も装備している(図8(a)参照)。そして、薬剤分包機2000のコントローラ2300は、調剤サーバ3000から調剤指示を受けると、可能な範囲で自動処理するが、必要に応じて調剤作業者への案内等を画面表示したり調剤作業者から指示を受けるようになっている。
例えば、特定錠剤専用タイプの薬剤フィーダ2110に保持されていない薬剤が調剤指示の対象に含まれているため、多種錠剤適応タイプの薬剤フィーダ1100を調剤実行先に選定したときには、調剤作業者の手助けが必要であれば、該当する薬剤フィーダ1100への薬剤投入指示を画面に表示させたり、該当する薬剤フィーダ1100で薬剤の横幅や厚みを測定するための補助作業の手順を表示させたりするようになっている。
【0136】
このような実施例2の調剤システム2000+3000について、その使用態様及び動作を説明する。
タッチパネル2400の操作等にて薬剤分包機2000に対し調剤サーバ3000から調剤指示が送信され、それを薬剤分包機2000のコントローラ2300が受信すると、その調剤指示の内容が確認のためタッチパネル2400に表示されるとともに、調剤指示のうち自動調剤の対象となる薬剤が薬剤フィーダ配設庫2100の薬剤フィーダ2110に収容されている場合はコントローラ2300によって自動で適切な割り付けが行われて、それで準備が整うので、調剤作業者がタッチパネル2400を操作して確認を済ませると、調剤対象の薬剤が、薬剤フィーダ2110から自動排出され、落下しながら収集されて包装装置に至り、そこで分包紙に区分収容される。
【0137】
なお、自動調剤対象の薬剤が、何れかの薬剤フィーダ2110で取り扱えるものであるが、たまたま何れの薬剤フィーダ2110にも収容されていなかったときには、該当する薬剤フィーダ2110に対して対象薬剤を収容するか或いは何れかの薬剤フィーダ2110を選択してそれに対象薬剤を収容することを調剤作業者に促す表示がタッチパネル2400になされるので、調剤作業者が薬剤フィーダ2110を選択した場合は、薬剤フィーダ2110に対象薬剤を投入してから確認のパネル操作を行うと、上述のようにして自動調剤が遂行される。
【0138】
これに対し、調剤作業者が薬剤フィーダ1100を選択した場合は、後述のようにして薬剤フィーダ1100に対象薬剤を投入してから、確認操作を行う。
また、自動調剤対象の薬剤がどの薬剤フィーダ2110でも取り扱えないものである場合や、自動調剤対象の薬剤を取り扱える薬剤フィーダ2110が既に効能等の相違により混在させてはいけない他の薬剤によって占められているような場合には、その時点で割り当て可能な薬剤フィーダ1100がリストやマップでタッチパネル2400の画面に表示されるので、先ず、調剤作業者は適宜な薬剤フィーダ1100を画面操作で選択する。
【0139】
そうすると、その選択に応じて薬剤分包機2000のコントローラ2300が薬剤フィーダ1100のセットアップ処理を行うが、自動調剤対象の薬剤の寸法データが調剤サーバ3000の薬品マスタに保持されているか否かで処理内容が異なるので、ここでは二つに場合分けして、保持されている場合を先に述べる。
自動調剤対象の薬剤の寸法データが既に調剤サーバ3000に保持されている場合、該当する薬剤寸法データが、調剤指示に含められて薬剤分包機2000のコントローラ2300に送信され、更に該当する薬剤フィーダ1100に転送されて、その薬剤フィーダ1100の仕分け機構1600や規制機構1700が、転送された薬剤寸法データに基づき自動で、薬剤搬送経路の上の薬剤通過可能な高さや横幅を規制する態勢を整える。
【0140】
また、そのようなセットアップ処理と並行して、薬剤分包機2000ではタッチパネル2400に薬剤の名称や処方個数に加え薬剤寸法データが画面表示されるとともに、図示しないロック機構の解除動作も行われて、該当する薬剤フィーダ列設棚2200が引き出し可能になり、そのことが図示しないLEDの点滅等で知らされるので、調剤作業者は、それを引き出し、やはり図示しない個別のLED点灯等にて明示された該当の薬剤フィーダ1100(図8(a)では最下段の薬剤フィーダ列設棚2200の手前から二番目)の上蓋を開ける。
【0141】
そうすると、調剤作業者は、薬剤フィーダ1100の上面の型置場1740の目盛の指し位置を見たり、規制部材710,720や垂下物612,1623,632の位置を見ることで、薬剤寸法データ利用の自動セットアップ完了を概ねではあるが目視でも確認することができる。それから、調剤作業者は、該当する薬剤フィーダ1100に対して、傾斜回転体1030の上の空間へ自動調剤対象の薬剤を投入し、必要量の投入を終えたら上蓋を閉める。更に、調剤作業者が先ほど引き出した薬剤フィーダ列設棚2200を薬剤分包機2000の筐体内へ押し戻すと、タッチパネル2400の画面に自動調剤の準備完了の表示が自動でなされるので、調剤作業者は、それを確認してから、タッチパネル2400の画面操作等で薬剤分包機2000に自動調剤を開始させる。
【0142】
一方、自動調剤対象の薬剤の寸法データが未だ調剤サーバ3000に保持されていない場合には、以下のようになる。
先ず、調剤サーバ3000から薬剤分包機2000への調剤指示に薬剤寸法データが含まれていないことを確認した薬剤分包機2000のコントローラ2300の制御によって、薬剤の横幅や厚みを測定する作業手順がタッチパネル2400に表示される。
そして、その表示に従って、調剤作業者が薬剤フィーダ1100の型置場1740に薬剤を置いてからタッチパネル2400の画面操作を行うと、薬剤の横幅や厚みの一方が測定される(図2(a)参照)。薬剤の姿勢を変えて(図2(b)参照)、同様のことを行うと、薬剤の横幅や厚みの他方が測定される。
【0143】
こうして人手介在の採寸が済むと、薬剤フィーダ1100のセットアップに必要な薬剤寸法データが、薬剤フィーダ1100のコントローラ1800の第1データ保持手段にデータ保持される。しかも、その薬剤寸法データは、薬剤フィーダ1100のコントローラ1800から薬剤分包機2000のコントローラ2300に送信され、更に調剤サーバ3000に転送されて、該当する薬剤と関連づけて薬品マスタにデータ保持される。
そのため、以後は、採寸を行った薬剤フィーダ1100はもちろんのこと、データ保持済みの調剤サーバ3000とデータ送受信を行う何れかの薬剤分包機に搭載された多数の薬剤フィーダ1100なら何れであっても、同一薬剤については薬剤寸法データ利用の自動セットアップを利用できるようになる。
【0144】
また、人手介在の採寸を終えると、薬剤寸法データを調剤サーバ3000が保持していた場合について上述した自動セットアップ完了後の状態と同様になるので、以後はやはり上述したのと同じく、調剤作業者は、傾斜回転体1030の上の空間へ自動調剤対象の薬剤を投入し、必要量の投入を終えたら上蓋を閉める。更に、先ほど引き出した薬剤フィーダ列設棚2200を薬剤分包機2000の筐体内へ調剤作業者が押し戻すと、タッチパネル2400の画面に自動調剤の準備完了の表示が自動でなされるので、調剤作業者は、それを確認してから、画面操作等で薬剤分包機2000に自動調剤を開始させる。
自動調剤開始後は、何れの場合であれ、処方指示に従って適切な薬剤フィーダ2110,1100から適量の薬剤が排出され更に包装装置によって分包される。
【0145】
[その他]
上記実施例では、薬剤フィーダ1100にて薬剤採寸が行われたときには、それで得られた薬剤寸法データが薬剤分包機2000経由で調剤サーバ3000へデータ送信され、以後は薬剤寸法データが繰り返し使用されるようになっていたが、調剤サーバ3000が保持する薬剤寸法データは、固定されている必要は無く、例えば、調剤サーバ3000の端末操作等にて人為的に微調整や再設定を行っても良く、パラメータ等で指定された複数回の薬剤採寸を纏めて或いは間欠的に行って平均値を採用するようにしても良い。
【0146】
上記実施例では、タッチパネル2400での表示事項として、調剤作業者への案内や、該当する薬剤フィーダ1100への薬剤投入指示、該当する薬剤フィーダ1100で薬剤の横幅や厚みを測定するための補助作業の手順を例示したが、その他、該当する薬剤フィーダ1100に係る調剤作業者の手順の適否、該当する薬剤フィーダ1100が薬剤分包機2000の筐体から前方へ引き出された状態で薬剤排出を高速で行う回収動作に係る動作状況などが表示されるようにしても良い。
また、同様の引き出し状態で薬剤排出を通常速度で行う試験動作に係る動作状況が表示されるようにしても良く、その場合、画面の表示や実機の動作状況を監視や確認することで、薬剤寸法データの微調整の必要の有無や程度を比較的容易に把握することができる。
【0147】
上記実施例では、薬剤分包機2000に薬剤手撒きユニット(例えば特開2007-297066号参照)が装備されていなかったが、多くの薬剤分包機のように、薬剤分包機2000の筐体の上段部分の下端部の辺りに薬剤手撒きユニットが装備されていても良い。その場合、コントローラ2300が、薬剤排出を実行させるユニットを選出するときに、薬剤フィーダ2110を可能なら優先して選出し、それが駄目なら薬剤フィーダ1100を選出し、何れも駄目なときに薬剤手撒きユニットを選出する、といった順で処理することで、薬剤分包機2000にとって楽に取り扱える薬剤の種類が更に増加する。
【0148】
上記実施例では、一つの薬剤フィーダ1100それぞれに一組の機構部1020~1752と一つのコントローラ1800とが組み込まれていたが、コントローラ1800の処理能力が十分に高くメモリもI/Oポートも十分に多いような場合には、一つのコントローラ1800にマルチタスク用の制御プログラムを搭載する等のことで、一つ又は少数のコントローラ1800がそれより多数の機構部1020~1752に係る制御等を行うようにしても良い。
【0149】
上記実施例では、薬剤渋滞時に行われる薬剤搬送経路の横幅緩和量が5%ずつ4回まで繰り返して増加されるようになっていたが、繰り返しの回数は、4回に限られる訳でなく、それより多くても少なくても良い。一回当たりの調整量も、5%に限られる訳でなく、それより多くても少なくても良い。増加の仕方も、単調な増加に限られる訳でなく、トータルの緩和量を抑えつつ渋滞の薬剤列に対する揺さぶりを強化するべく、例えば6%増やした次は3%減らすといったことを繰り返すようにしても良い。
【0150】
上記実施例では、多数の薬剤5を薬剤フィーダ1100にランダム投入するタイミングが、仕分け機構1600に係る高さ調整と規制機構1700に係る横幅調整との何れよりも後になっていたが、その順序は必須でなく、薬剤フィーダ1100を調剤モードで動作させる前であれば、薬剤フィーダ1100への多数薬剤の投入と、仕分け機構1600に係る高さ調整と、規制機構1700に係る横幅調整は、どの順で行っても良い。
【0151】
上記実施例では、仕分け機構1600のうち、第2仕分け部材1620の支持部材1621部分だけが跨ぎ仕分け部材になっており、第1仕分け部材1610の支持部材1611は跨ぎ仕分け部材になっていなかったが、これは必須でなく、第1仕分け部材1610の支持部材1611まで跨ぎ仕分け部材になっていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の薬剤フィーダは、錠剤分包機に搭載された多数の整列盤回転タイプ薬剤フィーダのうち一部のもの或いは全部を代替するのに用いても良く、薬剤フィーダを一個か少数個しか搭載しない錠剤分割器に搭載しても良く、さらには薬瓶へ錠剤等の薬剤を充填する装置などにおいて逐次送出した薬剤の個数を数え上げる錠剤カウンタ(薬剤カウンタ)などに搭載しても良い。
【符号の説明】
【0153】
5,5a,5b 薬剤、
10…薬剤フィーダ、
11…周壁、11a…内周壁面(周壁の中空の内壁面)、
12…搬送面ガイド、13…排出ガイド、14…落下排出口、
20…環状回転体、21…下部、22…上部、23…上端周縁部(薬剤搬送経路)、
30…傾斜回転体、31…中央突起、32…央部、33…周縁部、
20+30…回転容器、
40…支承機構、41…受動部材、
42…大径部外装回転伝動部材、43…小径部外装回転伝動部材、
50…回転駆動機構、51…回転駆動部材、
54…回転駆動モータ、54a,54b…回転駆動モータ、
55…傾斜回転体装着検出手段、56…薬剤落下検出手段、
60…仕分け部材、61…基端部、62…先端部(薬剤当接部位)、63…支持部、
70…規制機構、71…第1規制部材、72…第2規制部材、
73…リンク機構、74…型置場、
100…薬剤フィーダ、
600…仕分け機構、
610…第1仕分け部材、611…支持部材、
612…前段垂下物(第1形の垂下物)、613…大玉、
620…第2仕分け部材(跨ぎ仕分け部材)、621…支持部材(跨ぎ部)、
622…中段垂下物(横並び垂下物,第1形の垂下物)、623…中玉、
632…後段垂下物(横並び垂下物,第1形の垂下物)、633…小玉、
640…引き付け部材、650…手動調整機構、
651…下限設定機構、652…目盛部材、
700…規制機構、
710…第1規制部材、711…下段部分、712…上段部分、
720…第2規制部材、721…下段部分、
1100…薬剤フィーダ(多種錠剤適応タイプ)、
1020…環状回転体、1030…傾斜回転体、
1600…仕分け機構、
1610…第1仕分け部材、1611…支持部材、
1620…第2仕分け部材(跨ぎ仕分け部材)、
1621…支持部材(跨ぎ部)、1621a…貫通孔(揺動認容支持部)、
1622…中段垂下物(複数並設の第2形の垂下物)、
1623…中段垂下物(単体の第2形の垂下物)、
1623a…上端部、1623b…中央部、1623c…下端部、
1623d…斜交当接面、1623e…縦長平板部、
1630…モータ(仕分用駆動部材)、1640…昇降用ネジ、
1700…規制機構、
1740…型置場(採寸機構)、
1741…挟持部(静止部)、1742…挟持部(可動部)、
1743…載置部(伝動部)、1744…長穴部(案内部)、
1745…挿入部(案内部)、1750…モータ(規制用+採寸用の駆動部材)、
1751…揺動部材(伝動部)、1752…原点検出部材、
1800…コントローラ(多種錠剤適応タイプ薬剤フィーダの制御部)
2000…薬剤分包機、
2100…薬剤フィーダ配設庫(特定錠剤専用タイプ)、
2110…薬剤フィーダ(特定錠剤専用タイプ)、
2111…カセット(容器部)、2112…ベース(駆動部)、
2200…薬剤フィーダ列設棚(多種錠剤適応タイプ)、
2300…コントローラ(薬剤分包機の制御部)、
2400…タッチパネル(薬剤分包機の操作入力部,表示部)、
3000…調剤サーバ(上位装置)
図1
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図12