(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】立体模型用3次元形状データ作成方法、立体模型の製造方法及び立体模型
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20241105BHJP
B29C 64/10 20170101ALI20241105BHJP
G06T 7/33 20170101ALI20241105BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20241105BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241105BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20241105BHJP
G09B 23/36 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/10
G06T7/33
G06T1/00 315
B33Y10/00
B33Y50/00
G09B23/36
(21)【出願番号】P 2020142625
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-08-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年10月16-18日、モノづくりフェア2019 令和2年1月16日、http://3dcreators.jp/column/ms_25.shtml 令和2年4月9日、www.hotaru3d.com/SHOP/CS_YMDK_001_100.html、www.hotaru3d.com/SHOP/CS_YMDK_002_100.html
(73)【特許権者】
【識別番号】720006065
【氏名又は名称】吉本 大輝
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【氏名又は名称】前田 厚司
(74)【代理人】
【識別番号】100121924
【氏名又は名称】後藤 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】吉本 大輝
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-197419(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132463(WO,A1)
【文献】特開2016-183890(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204094(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079416(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/386
B29C 64/10
B33Y 10/00
B33Y 50/00
G06T 7/33
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元データ作成装置を用いて、複数の内部品を組み合わせた内部構造物と外部構造物とを備える構造物の立体模型を製造するための立体模型用3次元形状データ作成方法であって、
前記内部構造物の前記複数の内部品の3次元形状データを組み合わせて前記内部構造物の内部3次元形状データを作成する第1ステップと、
前記外部構造物の外観情報に基づいて前記外部構造物の外部2次元推定断面図を作成する第2ステップと、
前記内部3次元形状データ上の内部特徴点と、前記内部特徴点に対応する前記外部2次元推定断面図上の外部特徴点との相対的位置関係に基づいて、前記外部2次元推定断面図を前記内部3次元形状データに対して位置合わせして、外部2次元断面図を作成する第3ステップと、
複数の前記外部2次元断面図から外部3次元形状データを作成する第4ステップと、
前記内部3次元形状データと前記外部3次元形状データを結合して3次元形状データを作成する第5ステップと、
を備えることを特徴とする立体模型用3次元形状データ作成方法。
【請求項2】
前記第3ステップは、
a:前記内部3次元形状データ上の内部特徴点Aを選定し、
b:前記内部特徴点Aから前記外部構造物の外形までの距離L1を特定し、前記内部特徴点Aから距離L1離れた点を推定外部特徴点Bとし、
c:前記内部特徴点Aに対応する前記2次元推定断面図の輪郭線上の外部特徴点Cを選定し、
d:前記外部特徴点Cから前記内部構造物の外形までの距離L2を特定し、前記外部特徴点Cから距離L2離れた点を推定内部特徴点Dとし、
e:推定外部特徴点Bと外部特徴点Cを重ね合わせ、推定内部特徴点Dが内部特徴点Aに一致するように前記2次元推定断面図の縮尺を調整し、
f:前記外部特徴点Cの周辺の輪郭線有効範囲を設定して、前記輪郭線有効範囲を除く前記外部2次元断面図の輪郭線を削除し、
g:ステップa-fを他の内部特徴点Aに対して行い、
h:隣接する外部特徴点Cの前記輪郭線有効範囲の前記外部2次元推定断面図の輪郭線を接続して、外部2次元断面図を作成し、
i:ステップa-hを他の外部2次元推定断面図に対して行い、複数の外部2次元断面図を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の立体模型用3次元形状データ作成方法。
【請求項3】
前記第4ステップは、
前記複数の外部2次元断面図をそれぞれ押し出して重ね合わせ演算することにより、複数の外部3次元形状データ部品を作成し、
前記複数の外部3次元形状データ部品を組み合わせ、
前記複数の外部3次元形状データ部品の間の不足部分を補完して、外部3次元形状データを作成する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の立体模型用3次元形状データ作成方法。
【請求項4】
複数の内部品を組み合わせた内部構造物と外部構造物とを備える構造物の立体模型を製造する立体模型の製造方法であって、
請求項1から3のいずれかに記載の立体模型用3次元形状データ作成方法により内部3次元形状データと外部3次元形状データとを結合して3次元形状データを作成するステップと、
前記3次元形状データに基づいて3次元立体模型を造形するステップとを備え、
前記内部3次元形状データで囲まれる内部空間は不透明樹脂で造形し、
前記内部3次元形状データの外形と前記外部3次元形状データの外形の間の空間を透明樹脂で造形する、ことを特徴とする立体模型の製造方法。
【請求項5】
前記内部構造物の隣接する前記内部品の一方の前記内部3次元形状データの外形と他方の前記内部3次元形状データの外形の間の空間は透明樹脂で造形する、ことを特徴とする請求項4に記載の立体模型の製造方法。
【請求項6】
前記外部3次元形状データを内側にオフセットした位置にオフセット3次元形状データを作成し、前記オフセット3次元形状データが示すオフセット外形を着色透明樹脂で造形し、前記オフセット3次元形状データのオフセット外形と前記外部3次元形状データの外形との間を透明樹脂で造形する、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の立体模型の製造方法。
【請求項7】
前記外部3次元形状データを外側にオフセットした位置にオフセット3次元形状データを作成し、前記外部3次元形状データが示す外形を着色透明樹脂で造形し、前記外部3次元形状データの外形と前記オフセット3次元形状データのオフセット外形との間を透明樹脂で造形する、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の立体模型の製造方法。
【請求項8】
複数の内部品を組み合わせた内部構造物と外部構造物とを備える構造物の立体模型であって、
前記内部構造物の内部空間が不透明樹脂で造形され、
前記内部構造物の外形と前記外部構造物の外形の間の空間が透明樹脂で造形され、
前記外部構造物の外面の内側に
前記外部構造物の外部3次元形状データをオフセットした位置にオフセット外形が形成され、前記オフセット外形の外面に着色透明樹脂層が形成され、前記着色透明樹脂層と前記外部構造物の外面の間の空間が透明樹脂で造形されている、ことを特徴とする立体模型。
【請求項9】
複数の内部品を組み合わせた内部構造物と外部構造物とを備える構造物の立体模型であって、
前記内部構造物の内部空間が不透明樹脂で造形され、
前記内部構造物の外形と前記外部構造物の外形の間の空間が透明樹脂で造形され、
前記外部構造物の外面の外側に
前記外部構造物の外部3次元形状データをオフセットした位置にオフセット外形が形成され、前記外部構造物の外面に着色透明樹脂層が形成され、前記着色透明樹脂層と前記オフセット外形の間の空間が透明樹脂で造形されている、ことを特徴とする立体模型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体模型用3次元形状データ作成方法、立体模型の製造方法及び立体模型に関する。
【背景技術】
【0002】
マッコウクジラやアフリカゾウ等の巨大生物やシーラカンス等の「生きた化石」と呼ばれる学術的に貴重な生物、恐竜など絶滅した生物の骨格標本が博物館等で展示されている。しかし、博物館等で展示されている標本は、骨格のみであり、絵に描かれた外殻と見比べても、骨格と外殻の位置関係が把握しにくい。特に、マッコウクジラは頭部に脳油と呼ばれる器官が入っていて骨がほとんどないため、骨格と外殻の差異が大きい。また、アフリカゾウ等の長鼻目は鼻に骨がないため、骨格と外殻が大きく異なる。このように、骨格標本は、それだけで得られる情報が少ないため、研究や学習に最適とは言えない。さらに、従来の骨格標本は、骨格を組み立てるためにビス孔を開けたり、繋がっていない骨は接続のためにコーキング剤を用いる必要があり、貴重な資料を傷つけていた。また、大型の骨格標本は研究や学習に取り回しができないので、人が動きながら観察する必要があった。レプリカを作製するにしても、型取する必要があり、コストが高いうえ、骨が破損する恐れがあり、大量には生産できない。
【0003】
解剖が難しい小型の動物に対しては、実際に生体を染色して作製する「透明骨格標本」が主に分類学、比較解剖学、発生学等の研究分野で広く用いられている。しかし、生体を処理するのに有毒性の薬品が必要であり、安全性の観点から子供の学習教材としては使用できない。また、ケースに入った状態で観察する必要があるので、手に取ることができないし、実際の生物を使用するため再現性がなく、大型生物では作製ができない。
【0004】
医療・教育等の用途の人体模型は、3Dプリンタにより造形が行われている。例えば、特許文献1には、生体部位とその内部構造部位の3次元形状データを作成し、生体部位と内部構造部位毎に造形に用いるモデル材の素材を定義し、生体部位とその内部構造部位の3次元形状データに基づき、定義された素材を用いて3次元プリンタにより造形する3次元造形モデル作製方法が開示されている。しかし、この方法は、医用診断装置により得られたデータを利用するものであり、医用診断装置を利用できない大型生物の模型は造形できない。
【0005】
近年、研究や教育目的で、恐竜や大型の生物(クジラ、象など)の精巧な骨格と外殻を再現した模型のニーズが高まっている。しかし、CTスキャンの画像データを利用して3Dプリンタで製作できる人体模型とは異なり、既に絶滅した恐竜や、CTスキャンや3Dスキャナが使用できない大型の生物は、正確な3次元データを作成することはできない。また、小型水中生物の場合、陸上で外殻が保持できないので、3Dスキャナを使用できないという問題がある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、医用診断装置や3Dスキャナ等を利用しなくても内部構造物に関する3次元データと外部構造物の外観の2次元データから構造物の立体模型用3次元形状データを作成することができる立体模型用3次元形状データ作成方法、立体模型の製造方法及び立体模型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、第1発明の立体模型用3次元形状データ作成方法は、
3次元データ作成装置を用いて、複数の内部品を組み合わせた内部構造物と外部構造物とを備える構造物の立体模型を製造するための立体模型用3次元形状データ作成方法であって、
前記内部構造物の前記複数の内部品の3次元形状データを組み合わせて前記内部構造物の内部3次元形状データを作成する第1ステップと、
前記外部構造物の外観情報に基づいて前記外部構造物の外部2次元推定断面図を作成する第2ステップと、
前記内部3次元形状データ上の内部特徴点と、前記内部特徴点に対応する前記外部2次元推定断面図上の外部特徴点との相対的位置関係に基づいて、前記外部2次元推定断面図を前記内部3次元形状データに対して位置合わせして、外部2次元断面図を作成する第3ステップと、
複数の前記外部2次元断面図から外部3次元形状データを作成する第4ステップと、
前記内部3次元形状データと前記外部3次元形状データを結合して3次元形状データを作成する第5ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0009】
第1発明の立体模型用3次元形状データ作成方法において、内部構造物は、構造物の内部にある複数の内部品の組み合わせである。内部構造物の3次元形状データは、医用診断装置や3Dスキャナなどを利用して得られる実在する各部品の3次元形状データを組み合わせることで作成することができる。外部構造物は、内部構造物を覆う外部形態である。外部構造物の外部2次元推定断面図は、外観データ、または復元画、想像図、写真、動画のキャプチャ等の2次元画像からなる外観情報に基づいて作成することができる。外部構造物の外部2次元推定断面図は、実在する内部構造物を覆う実際の外部形態の3次元形状データに基づくものではないので、内部構造物の3次元形状データとは整合しない。そこで、内部3次元形状データ上の内部特徴点と、内部特徴点に対応する外部2次元推定断面図上の外部特徴点との相対的位置関係に基づいて、外部2次元推定断面図を内部3次元形状データに対して位置合わせして、外部2次元断面図を作成する。これにより、外部2次元断面図は内部3次元形状データと整合する。
【0010】
前記第3ステップは、
a:前記内部3次元形状データ上の内部特徴点Aを選定し、
b:前記内部特徴点Aから前記外部構造物の外形までの距離L1を特定し、前記内部特徴点Aから距離L1離れた点を推定外部特徴点Bとし、
c:前記内部特徴点Aに対応する前記2次元推定断面図の輪郭線上の外部特徴点Cを選定し、
d:前記外部特徴点Cから前記内部構造物の外形までの距離L2を特定し、前記外部特徴点Cから距離L2離れた点を推定内部特徴点Dとし、
e:推定外部特徴点Bと外部特徴点Cを重ね合わせ、推定内部特徴点Dが内部特徴点Aに一致するように前記2次元推定断面図の縮尺を調整し、
f:前記外部特徴点Cの周辺の輪郭線有効範囲を設定して、前記輪郭線有効範囲を除く前記外部2次元断面図の輪郭線を削除し、
g:ステップa-fを他の内部特徴点Aに対して行い、
h:隣接する外部特徴点Cの前記輪郭線有効範囲の前記外部2次元推定断面図の輪郭線を接続して、外部2次元断面図を作成し、
i:ステップa-hを他の外部2次元推定断面図に対して行い、複数の外部2次元断面図を作成する、ことが好ましい
【0011】
前記第4ステップは、
前記複数の外部2次元断面図をそれぞれ押し出して重ね合わせ演算することにより、複数の外部3次元形状データ部品を作成し、
前記複数の外部3次元形状データ部品を組み合わせ、
前記複数の外部3次元形状データ部品の間の不足部分を補完して、外部3次元形状データを作成することが好ましい。
【0012】
第2発明の立体模型の製造方法は、
複数の内部品を組み合わせた内部構造物と外部構造物とを備える構造物の立体模型を製造する立体模型の製造方法であって、
前記第1発明の立体模型用3次元形状データ作成方法により内部3次元形状データと外部3次元形状データとを結合して3次元形状データを作成するステップと、
前記3次元形状データに基づいて3次元立体模型を造形するステップとを備え、
前記内部3次元形状データで囲まれる内部空間は不透明樹脂で造形し、
前記内部3次元形状データの外形と前記外部3次元形状データの外形の間の空間は透明樹脂で造形する、ことを特徴とする。
【0013】
第2発明の立体模型の製造方法では、内部3次元形状データで囲まれる内部空間は不透明樹脂で造形し、内部3次元形状データの外形と外部3次元形状データの外形の間の空間は透明樹脂で造形するので、透明樹脂で造形された外部構造物と内部構造物の間の透明樹脂を通して、不透明樹脂で造形された内部構造物を観察でき、外部構造物と内部構造物の相対的位置関係を把握できる精巧な立体模型を製造することができる。
【0014】
前記内部構造物の隣接する前記内部品の一方の前記内部3次元形状データの外形と他方の前記内部3次元形状データの外形の間の空間は透明樹脂で造形することが好ましい。
【0015】
前記外部3次元形状データを内側にオフセットした位置にオフセット3次元形状データを作成し、前記オフセット3次元形状データが示すオフセット外形を着色透明樹脂で造形し、前記オフセット3次元形状データのオフセット外形と前記外部3次元形状データの外形との間を透明樹脂で造形することが好ましい。
あるいは、前記外部3次元形状データを外側にオフセットした位置にオフセット3次元形状データを作成し、前記外部3次元形状データが示す外形を着色透明樹脂で造形し、前記外部3次元形状データの外形と前記オフセット3次元形状データのオフセット外形との間を透明樹脂で造形することが好ましい。
外部3次元形状データの内側のオフセット外形を着色透明樹脂で造形したり、外部3次元形状データの外側のオフセット外形の内側を着色透明樹脂で造形することにより、外表面の透明樹脂を研磨したときに、着色透明樹脂が残り、外部構造物が半透明に着色された立体模型を製造することができる。
【0016】
第3発明の立体模型は、
複数の内部品を組み合わせた内部構造物と外部構造物とを備える構造物の立体模型であって、
前記内部構造物の内部空間が不透明樹脂で造形され、
前記内部構造物の外形と前記外部構造物の外形の間の空間が透明樹脂で造形されている、ことを特徴とする。
【0017】
第3発明の立体模型では、内部構造物の内部空間が不透明樹脂で造形され、内部構造物の外形と外部構造物の外形の間の空間が透明樹脂で造形されているので、外部構造物と内部構造物の間の透明樹脂を通して、不透明樹脂で造形された内部構造物を観察でき、外部構造物と内部構造物の相対的位置関係を把握できる。
【0018】
前記内部構造物の隣接する前記内部品の一方の外形と他方の外形の間の空間は透明樹脂で造形されていることが好ましい。内部品の間の空間が透明樹脂で造形されていることで、内部品相互間の位置関係や結合状態を把握することができる。
【0019】
前記透明樹脂は弾性を有することが好ましい。
外部構造物と内部構造物の間の透明樹脂が弾性を有することで、外部構造物を動かすとこれに追従して内部構造物が動くので、外部構造物と内部構造物の相対的な関係を把握することができる。
【0020】
前記外部構造物の外面の内側に着色透明樹脂層が形成され、前記着色透明樹脂層と前記外部構造物の外面の間の空間が透明樹脂で造形されていることが好ましい。
外部構造物の外面の内側に着色透明樹脂層が形成されていることで、表面の透明樹脂を研磨しても、着色透明樹脂層の着色が色落せず、外部構造物が半透明に着色された立体模型となる。
【発明の効果】
【0021】
第1発明の立体模型用3次元形状データ作成方法によれば、内部3次元形状データ上の内部特徴点と、内部特徴点に対応する外部2次元推定断面図上の外部特徴点との相対的位置関係に基づいて、外部2次元推定断面図を内部3次元形状データに対して位置合わせして、外部2次元断面図を作成するので、外部構造物の外部2次元推定断面図が実在する内部構造物を覆う実際の外部形態の3次元形状データに基づくものではなくても、外部3次元形状データは内部3次元形状データと整合する。このため、医用診断装置や3Dスキャナ等を利用できない構造物の立体模型用の3次元形状データを作成することができる。
【0022】
第2発明の立体模型の製造方法によれば、内部3次元形状データで囲まれる内部空間は不透明樹脂で造形し、内部3次元形状データの外形と外部3次元形状データの外形の間の空間は透明樹脂で造形するので、透明樹脂で造形された外部構造物と内部構造物の間の透明樹脂を通して、不透明樹脂で造形された内部構造物を観察でき、外部構造物と内部構造物の相対的位置関係を把握できる精巧な立体模型を製造することができる。
【0023】
第3発明の立体模型によれば、内部構造物の内部空間が不透明樹脂で造形され、内部構造物の外形と外部構造物の外形の間の空間が透明樹脂で造形されているので、透明樹脂で造形された外部構造物と内部構造物の間の透明樹脂を通して、不透明樹脂で造形された内部構造を観察でき、外部構造物と内部構造物の相対的位置関係を把握できる。また、内部品の間の空間が透明樹脂で造形されていることで、内部品相互間の位置関係や結合状態を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る立体模型用3次元形状データの作成方法のフローを示す図。
【
図2】
図1のステップ103における外部2次元推定断面図の位置合わせのフローを示す図。
【
図3】
図1のステップ104における外部3次元形状データの作成のフローを示す図。
【
図4】内部3次元形状データで表したマッコウクジラの骨格の斜視図。
【
図6】マッコウクジラの脊髄に沿った外部2次元推定XZ断面図(a)、外部2次元推定YZ断面図(b)。
【
図7】骨格の内部特徴点Aと推定外部特徴点Bを示す図。
【
図8】外殻の外部特徴点Cと推定内部特徴点Dを示す図。
【
図9】外殻の外部2次元推定断面図の縮尺の調整ステップを示す図。
【
図10】複数の外部特徴点Cの周りの輪郭線有効範囲を示す外部2次元推定断面図。
【
図11】骨格と重ねて表したマッコウクジラの外部2次元推定XZ断面図(a)及び外部2次元推定XY断面図(b)。
【
図12】骨格と重ねて表したマッコウクジラの複数の外部2次元推定YZ断面図。
【
図13】外部2次元推定XZ断面図(a)、及び外部2次元推定XZ断面図をY方向両側に押し出した立体を示す斜視図(b)。
【
図14】外部2次元推定YZ断面図(a)、及び外部2次元推定YZ断面図をX方向両側に押し出した立体を示す斜視図(b)。
【
図15】外部2次元推定XZ断面図を押し出した立体と、外部2次元推定YZ断面図を押し出した立体とを重ね合わせた状態を示す側面図(a)及び斜視図(b)。
【
図16】外部3次元形状データ仮部品と骨格を示す斜視図。
【
図17】複数の外部3次元形状データ仮部品の組み合わせと骨格を示す斜視図。
【
図18】外部2次元推定XY断面図(a)、及び外部2次元推定XY断面図をZ方向両側に押し出した立体を示す斜視図(b)。
【
図19】外部2次元推定XY断面図を押し出した立体と、複数の外部3次元形状データ仮部品とを重ね合わせた状態を示す斜視図。
【
図20】複数の外部3次元形状データ部品の組み合わせと骨格を示す斜視図。
【
図21】外部3次元形状データ部品の端面の内接線を示す斜視図(a)、及び外部3次元形状データ部品の不足部分を補完した状態を示す斜視図(b)。
【
図22】外部3次元形状データで表したマッコウクジラの外殻の側面図。
【
図23】外部3次元形状データで表したマッコウクジラの外殻と骨格の側面図。
【
図24】OBJ形式の3次元形状データを示すマッコウクジラの部分拡大図。
【
図25】3次元形状データ作成装置と3次元造形装置とを示す図。
【
図26】本発明に係る立体模型の製造方法のフローを示す図。
【
図27】3次元プリンタによる造形の状況を示す図。
【
図28】3次元プリンタによる造形の状況を示す拡大断面図。
【
図29】外殻の表面を着色するために外殻をオフセットした状態を示す外部3次元形状データで表した断面図。
【
図30】3次元プリンタによる造形されたマッコウクジラの立体模型の写真。
【
図31】3次元プリンタによる造形されたマッコウクジラの立体模型の部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0026】
<立体模型用3次元形状データの作成方法の実施形態>
図1は、3次元データ作成装置を用いて、複数の内部品を組み合わせた内部構造物と外部構造物とを備える構造物の立体模型を製造するための立体模型用3次元形状データ作成方法のフローを示す。
【0027】
3次元データ作成装置は、3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)、3次元設計支援(3DCAD)等のソフトウェアを用いて3Dプリンタで造形可能な立体模型用3次元形状データを作成するコンピュータからなる。
【0028】
本発明が対象とする立体模型は、複数の内部品を組み合わせた内部構造物と外部構造物とを備える構造物の立体模型である。例えば、マッコウクジラのような大型動物の立体模型の場合、内部構造物は複数の骨を組み合わせた骨格であり、外部構造物は骨格を覆う外殻である。立体模型の用途に応じて、内部構造物には骨格の他に脳や心臓等の内部器官を含んでいてもよい。
【0029】
ステップ101では、内部構造物の内部3次元形状データを作成する。内部構造物の内部3次元形状データは、医用診断装置や3Dスキャナなどを利用して得られる実在する各部品の3次元形状データを3DCG又は3DCAD上で組み合わせることで作成することができる。3DCG又は3DCAD上では、3次元形状データの寸法は内部構造物の実寸に合わせる。マッコウクジラのような大型動物でも、内部構造物の骨格の各骨は小さいので、博物館等で展示されている骨格標本の各骨を3Dスキャナでスキャンすることで各骨の正確な3次元形状データを取得することができる。また、博物館などから骨格の3次元形状データが入手できる場合はそれを利用することができる。各骨の3次元形状データは、3DCG又は3DCAD上で組み合わせて骨格の内部3次元形状データを作成する。
【0030】
骨格の一部しか3次元形状データが無い場合は、欠損部の骨の3次元形状データを2次元画像から3DCG又は3DCAD上で作成する。また、2次元画像データが一部のみしかない場合、存在しない骨の2次元画像を作成し、これらの2次元画像データから骨格の内部3次元形状データを3DCG又は3DCAD上で作成する。
図4は、作成された内部3次元形状データで表したマッコウクジラの内部構造物である骨格1を示す。
【0031】
ステップ102では、構造物の外観情報に基づいて、外部構造物の外部2次元推定断面図を作成する。外観情報としては、体長、胴囲等の外観データ、または復元画、想像図、絵、写真、動画のキャプチャ等の2次元画像を使用できる。これらの外観情報を元に、複数断面の輪郭線を抽出し、外部2次元推定断面図を作成する。外部2次元推定断面図の方向は、
図4に示すX,Y,Z軸の方向を基準にする。例えば、
図5のマッコウクジラの画像2に基づいて、
図6(a)の脊髄に沿った外部2次元推定XZ断面図、
図6(b)のような外部2次元推定YZ断面図を複数作成する。
【0032】
ステップ103では、外部2次元推定断面図を内部3次元形状データに対して位置合わせする。外部2次元推定断面図は、実在する内部構造物を覆う実際の外殻の3次元形状データに基づくものではないので、内部構造物の3次元形状データとは整合しない。そこで、内部3次元形状データ上の内部特徴点と、内部特徴点に対応する外部2次元推定断面図上の外部特徴点との相対的位置関係に基づいて、外部2次元推定断面図を位置合わせして、外部2次元断面図を作成する。この位置合わせにより得られる外部2次元断面図は内部3次元形状データと整合する。
【0033】
具体的には、
図2のステップ103aで、内部3次元形状データ上の内部特徴点Aを選定する。
図7に示すように、マッコウクジラの場合、内部特徴点Aとしては、骨格1のうち、腰椎骨、尾椎骨先端、頭骨、上顎骨先端、下顎骨先端、下顎関節、目、肋骨、胸びれ付け根の関節、胸びれの指骨先端等を選定することができる。
【0034】
ステップ103bでは、内部3次元形状データ上の内部特徴点Aから外部構造物の外形までの距離L1を特定し、内部特徴点Aから距離L1離れた点を推定外部特徴点Bとする。内部特徴点Aから外部構造物の外形までの距離L1としては、マッコウクジラの場合、文献等から入手した皮膚や脂肪の厚さ等を参考にすることができる。
【0035】
ステップ103cでは、
図8に示すように、内部特徴点Aに対応する2次元推定断面図の輪郭線上の外部特徴点Cを選定する。
【0036】
ステップ103dでは、外部特徴点Cから内部構造物の外形までの距離L2を特定し、外部特徴点Cから距離L2離れた点を推定内部特徴点Dとする。外部特徴点Cから内部構造物の外形までの距離L2としては、マッコウクジラの場合、文献等から入手した皮膚や脂肪の厚さ等を参考にすることができる。
【0037】
ステップ103eでは、
図9に示すように、推定外部特徴点Bと外部特徴点Cを重ね合わせ、推定内部特徴点Dが内部特徴点Aに一致するように、アスペクト比を固定して外部2次元推定断面図の縮尺を調整する。
【0038】
ステップ103fでは、
図10に示すように、外部特徴点Cの周辺の輪郭線有効範囲Wを設定して、輪郭線有効範囲を除く外部2次元推定断面図の輪郭線を削除する。輪郭線有効範囲Wは、外部特徴点C周辺の形状により調整する。例えば、外部特徴点Cの周辺の形状が複雑な場合は短く、単調な場合は長く設定する。
図10の実施形態の外部特徴点Cの周辺の輪郭線有効範囲Wは、外部特徴点Cより前の部分は形状が比較的なだらかで単調であるので長くし、後ろの部分は前の部分より複雑であるため短くしている。
【0039】
ステップ103gでは、ステップ103a-fを他の複数の内部特徴点Aに対して行う。
【0040】
ステップ103hでは、隣接する外部特徴点Cの輪郭線有効範囲の外部2次元推定断面図の輪郭線を接続して、
図11に示すような外部2次元断面図を作成する。
【0041】
ステップ103iでは、ステップ103a-hを他の外部2次元推定断面図に対して行い、複数の外部2次元断面図を作成する。複数の外部2次元断面図としては、マッコウクジラの場合、
図11(a)、(b)に示す脊椎方向の外部2次元XZ断面図と外部2次元XY断面図、
図12(a)、(b)に示す左右方向の縦断面図である複数の外部2次元YZ断面図を作成することが好ましい。
【0042】
ステップ104では、ステップ103で作成した外部2次元断面図に基づいて、外部3次元形状データを作成する。
【0043】
具体的には、
図3のステップ104aにおいて、
図13に示すように、外部2次元XZ断面図をY方向に押し出して、立体を形成する。押し出しは、
図13(b)に示すように、内部構造物が内部に含まれるように、Y方向両側に押し出すことが好ましい。
【0044】
ステップ104bでは、
図14に示すように、外部2次元YZ断面図をX方向に押し出して、立体を形成する。押し出しは、
図14(b)に示すように、輪郭線有効範囲と同じになるように、X方向両側に押し出すことが好ましい。
【0045】
ステップ104cでは、
図15に示すように、外部2次元XZ断面図をY方向に押し出した立体と、外部2次元YZ断面図をX方向に押し出した立体とを重ね合わせ演算し、両立体の交差した部分を抽出して、
図16に示すような外部3次元形状データ仮部品3´を作成する。
【0046】
ステップ104dでは、他の外部2次元YZ断面図がある場合、ステップ104bから104cを繰り返して、外部3次元形状データ仮部品3´を作成する。
【0047】
ステップ104eでは、
図17に示すように、複数の外部3次元形状データ仮部品3´を組み合わせる。
【0048】
ステップ104fでは、
図18に示すように、外部2次元XY断面図をZ方向に押し出して、立体を形成する。押し出しは、
図18(b)に示すように、内部構造物が内部に含まれるように、Z方向両側に押し出すことが好ましい。
【0049】
ステップ104gでは、
図19に示すように、外部2次元XY断面図をZ方向に押し出した立体と、外部3次元形状データ仮部品3´とを重ね合わせ演算し、両立体の交差した部分を抽出して、
図20に示すような外部3次元形状データ部品3を作成する。
【0050】
ステップ104hでは、組み合わせた複数の外部3次元形状データ部品3の間の空間の不足部分をデータ補完して結合し、外部3次元形状データを作成する。
図21(a)に示すように、外部3次元形状データ部品のX方向の端面には、重ね合わせ演算時に生じた切除部9が存在する。離接する外部3次元形状データ部品3の互いに対応する端面における切除部9とそれ以外の部分に接する内接線10を抽出し、
図21(b)に示すように切除部9に沿う曲面からなる補完部品3aで補完する。
【0051】
ステップ104iでは、外部3次元形状データ部品3の不足部分を補完した外部3次元形状データをスムージングして、連続した滑らかな表面を形成する。これにより、内部3次元形状データに整合した外部3次元形状データとなる。
図22は、作成された外部3次元形状データで表したマッコウクジラの外部構造物である外殻4を示す。
【0052】
外部3次元形状データを作成した後、
図1のステップ105において、内部3次元形状データと外部3次元形状データを結合した3次元形状データを作成する。
図23は、内部3次元形状データと外部3次元形状データで表したマッコウクジラの骨格1と外殻4を示す。
図24は、3次元形状データの一部を示す拡大図である。
【0053】
ステップ106では、3次元形状データを模型サイズに縮小して模型サイズの3次元形状データを作成する。
【0054】
以上により、外部構造物の外部2次元推定断面図が実在する内部構造物を覆う実際の外殻の3次元形状データに基づくものではなくても、外部3次元形状データは内部3次元形状データと整合する。このため、医用診断装置や3Dスキャナ等を利用できない構造物の立体模型用の3次元形状データを作成することができる。
【0055】
<立体模型の製造方法の実施形態>
図25は、本発明の立体模型の製造方法の実施形態を実施する3次元データ作成装置11と、3次元造形装置12を示す。
【0056】
3次元データ作成装置11は、前述したように、3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)、3次元設計支援(3DCAD)等のソフトウェアを用いて、3次元造形装置12で造形可能な立体模型用3次元形状データを作成するコンピュータであり、本体13、モニター14、キーボード15、マウス16等からなる。
【0057】
3次元造形装置12は、樹脂や金属を積層して造形する3Dプリンタである。3Dプリンタは、材料押出法、材料噴射法、粉末床溶融結合法、結合剤噴射法、液槽光重合法、シート積層法、指向エネルギー体積法等各種の方式を使用可能であるが、材料噴射法が一般的で好ましい。
図25は、材料押出法の3Dプリンタを示し、プリンタヘッド17をX軸方向に往復移動させるX軸ユニット18と、該X軸ユニット18をZ軸方向に往復移動させるZ軸ユニット19と、Y方向に往復移動可能な造形ステージ20と、アクリル樹脂21のカートリッジ22と、アクリル樹脂21をプリンタヘッド17に供給するエクストルーダ23と、制御部24とを備える。制御部24は、3次元データ作成装置11の本体13とLAN接続されて、3次元データ作成装置11から3次元形状データをOBJ形式で受信し、各層にスライスしてGコードデータに変換し、X軸ユニット18、Z軸ユニット19、造形ステージ20及びエクストルーダ23を制御する。
【0058】
図26は、本発明の立体模型の製造方法の実施形態を実施する造形フローを示す。ステップ201で、3次元データ作成装置11を用いて、前述した3次元形状データ作成方法により、内部3次元形状データと外部3次元形状データとからなる3次元形状データを作成する。この3次元形状データは、OBJ形式で3次元造形装置12に送られる。
【0059】
ステップ202では、3次元造形装置12により立体模型を造形する。
図27に示すように、立体模型5がマッコウクジラの場合、造形時間を短縮するため、マッコウクジラの脊椎の方向をX軸。左右の方向をY軸、上下方向をZ軸とすることが好ましい。
【0060】
3次元造形装置12による造形において、
図28に示すように、内部3次元形状データで囲まれる内部空間は不透明樹脂6で造形し、内部3次元形状データの外形と外部3次元形状データの外形の間の空間は透明樹脂7で造形する。不透明樹脂6としては、着色したアクリル樹脂が好ましいが、これに限らず、ABS樹脂、PLA樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、ゴム、シリコン、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)等を採用することができる。透明樹脂7としては、着色していないアクリル樹脂が好ましいが、これに限らず、ABS樹脂、PLA樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、ゴム、シリコン、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)等を採用することができる。また、内部構造物の隣接する内部品の一方の内部3次元形状データの外形と他方の内部3次元形状データの外形と間の空間、例えばマッコウクジラの場合、骨格1を構成する骨と骨の間の空間は、透明樹脂7で造形する。
【0061】
3次元造形装置12で造形した後、透明樹脂7には紫外線を照射する。これにより、透明樹脂7の透明度を増加することができる。
【0062】
3次元造形装置12により造形した後、ステップ203で、立体模型5の外表面を研磨する。これにより、造形時の現れる立体模型5の表面の粗さや層間の段差を除去し、表面を滑らかにすることができる。
【0063】
3次元造形装置12で造形中、立体模型5の外表面に着色を施すことができるが、研磨により色落ちしないように、次に示す2つの方法でする着色することができる。
【0064】
第1の方法は、
図29(a)に示すように、外部3次元形状データを内側にオフセットした位置に、オフセット3次元形状データを作成し、該オフセット3次元形状データが示すオフセット外形4a上に所定厚さの着色透明樹脂層8を造形し、オフセット3次元形状データのオフセット外形4a上の着色透明樹脂層8と外部3次元形状データの外殻4との間を透明樹脂7で造形する。
【0065】
第2の方法は、
図29(b)に示すように、外部3次元形状データを外側にオフセットした位置にオフセット3次元形状データを作成し、外部3次元形状データが示す外殻4上に所定厚さの着色透明樹脂層8を造形し、外部3次元形状データの外殻4上の着色透明樹脂層8とオフセット3次元形状データが示すオフセット外形4bとの間を透明樹脂7で造形する。
【0066】
いずれの方法においても、造形された立体模型5の外面の透明樹脂7の内側に着色透明樹脂8が存在するので、外面の透明樹脂7を研磨しても、内部の着色透明樹脂8は色落ちしない。
【0067】
<立体模型の実施形態>
図30は、前述した本発明の立体模型の製造方法により製造したマッコウクジラの立体模型5を示す。
【0068】
この立体模型5では、
図31に示すように、骨格1の内部空間が不透明樹脂6で造形され、骨格1と外殻4の間の空間が透明樹脂7で造形されているので、骨格1と外殻4の間の透明樹脂7を通して、不透明樹脂6で造形された骨格1を観察でき、骨格1と外殻4の相対的位置関係を把握できる。例えば、マッコウクジラの場合、頭部に脳油と呼ばれる器官が入っていて骨がほとんどないことが確認できる。また、顎の状態や、骨盤痕跡のように繋がっていない骨等も模型5を持ってどのような方向からも明瞭に観察することができる。
【0069】
骨格1の隣接する骨の一方の骨1aの外形と他方の骨1bの外形の間の空間は透明樹脂6で造形されているので、隣接する骨1a、1bの相互間の位置関係や結合状態を把握することができる。
【0070】
外部3次元形状データと内部3次元形状データの間の空間を造形する透明樹脂7は、弾性を有することが好ましい。外殻4と骨格1の間の透明樹脂7が弾性を有することで、外殻4を動かすとこれに追従して骨格1が動くので、外殻4と骨格1の相対的な関係を把握することができる。
【0071】
外部構造物の外面の内側に着色透明樹脂層8が形成され、該着色透明樹脂層8と外部構造物の外面の間の空間が透明樹脂7で造形されていることが好ましい。外部構造物の外面の内側に着色透明樹脂層8が形成されていることで、表面の透明樹脂7を研磨しても、着色透明樹脂層8の着色が色落せず、外部構造物が半透明に着色された立体模型となる。
【0072】
本発明は前記実施形態に限るものではなく、本発明の範囲内で修正や変更を行うことができる。例えば、外部2次元断面図はXZ断面、XY断面、YZ断面に限らず、任意の方向の断面とすることができる。
【0073】
また、前記実施形態は、マッコウクジラのような動物の立体模型用3次元形状データ作成方法、立体模型の製造方法及び立体模型について説明したが、本発明は建造物や構造物の立体模型にも適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…骨格
2…写真
3…外部三次元形状データ部品
3´…外部三次元形状データ仮部品
3a…補完部品
4…外殻
4a…オフセット外形
4b…オフセット外形
5…立体模型
6…不透明樹脂
7…透明樹脂
8…着色透明樹脂
9…切除部
10…内接線
11…3次元データ作成装置
12…3次元造形装置