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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】配送用袋状梱包材
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/16 20060101AFI20241105BHJP
   B65B 51/04 20060101ALI20241105BHJP
   B65D 27/06 20060101ALI20241105BHJP
   B65D 27/28 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B65D33/16
B65B51/04 B
B65D27/06 K
B65D27/28
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022112072
(22)【出願日】2022-07-12
(65)【公開番号】P2024010621
(43)【公開日】2024-01-24
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522247116
【氏名又は名称】株式会社comvey
(74)【代理人】
【識別番号】230116539
【弁護士】
【氏名又は名称】恩田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】梶田 伸吾
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/173503(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3142985(JP,U)
【文献】特開2001-199471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/16
B65B 51/04
B65D 27/06
B65D 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に設けられた開口部を封緘するためのフラップ部を備える袋状梱包材であって、
前記フラップ部の上端側表面につまめるように付属してリング状の空洞を構成するようになる第一挿通部を設け、
表面のうち前記フラップ部以外の領域につまめるように付属してリング状の空洞を構成するようになる第二挿通部を少なくとも一設ける配送用袋状梱包材であって、表面のうち下端周辺の領域に、少なくとも前記フラップ部を収納可能な袋状形状の収納部を設けることを特徴とする配送用袋状梱包材。
【請求項2】
前記フラップ部を収納した後の平置き状態での長手方向の長さが34センチメートル以内、短手方向の長さが25センチメートル以内となる大きさからなる請求項に記載の配送用袋状梱包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配送用袋状梱包材や、これに用いる棒状挿通具などに関する。
【背景技術】
【0002】
ECサービスを通じて商品を購入したり、サブスクリプションモデルのサービス利用を通じて定期的に商品の提供を受けたりといったように、近年、オンラインネットワークを介した物品の流通が活発になっている。
【0003】
これらのサービスは、コロナ禍を通じた在宅時間の増加やその後のリモートワーク等の定着などを通じてさらに市場における認知度を向上させており、これらのサービスの一般消費者による利用拡大に伴い、小口の商品輸送の需要が爆発的に増大している。
【0004】
例えば、衣類や身飾品、食品、書籍などが商品として取引の対象となりえ、これらの商品を一般消費者に違和感や不快感を与えることなく配送するための梱包材が必要となる。これらの商品を梱包して配送する際には通常、段ボールのような梱包材が用いられることが多い。ただ、段ボールは製造過程で貼合や製箱などの工程が必要になり、小口の商品配送に用いられるような段ボールは相対的に製造コストが割高となる。そのほか、再利用するための回収・再加工などにも一定のコストが生じることから、特に小口の商品配送に際し、段ボールに代わる梱包材が求められている。
【0005】
また、単にコストの観点からだけでなく、環境負荷の観点からも新たな梱包材が求められている。すなわち、リサイクル可能な梱包材であっても、リサイクル処理の過程では一定のCO2が排出されたり、非自然由来成分を用いた加工等が行われる場合もあるため、できる限りそれらの環境負荷を抑止ないし回避できる、配送用途で再利用(リユース)可能な梱包材が求められている。そして、これらの要請は、上記用途での梱包材の需要が高まるにつれ、ますます大きなものになっている。
【0006】
これらの課題に関連し、紙や樹脂を素材として採用し、繰り返し利用できるような梱包材に関する技術が知られている。例えば特許文献1には、一度封緘された樹脂フィルムからなる袋の一部をミシン目やカットテープにより分断することで、当初手提げ等袋として輸送の用に供したのちに、保存用袋として再利用できる梱包材に関する技術が開示されている。
【0007】
また特許文献2には、紙袋の底部をひだ状に折り重ねて収納するように形成するとともに、当該折り重ねられた一部分を開口可能に形成しておき、いちど紙袋の上部開口部を封緘した後も、当該開口可能に形成された部分を利用して再封緘を可能としたり、当該部分の近傍に紙製の硬質な締結バンドを設け、当該バンドの両端を縛る等の方法により再封緘を可能とする梱包材に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-280068
【文献】特開2002-193271
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの技術のいずれを用いても、今日の物流業界における各種の要請に十分に応えられるとは言い難い。まず特許文献1記載の技術では、梱包材そのものの再利用は可能だが、配送用途での再利用はできない。また、特許文献2記載の技術では、配送用途での再利用は可能かもしれないが、袋底部の構造が複雑で製造の手間がかかるほか、2回目以降の利用では再封緘する際の意匠性が損なわれ、商品梱包という性質上、一般消費者に違和感や不快感を与える可能性が否定できない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような課題を解決すべく、本発明は、上端に設けられた開口部を封緘するためのフラップ部を備える袋状梱包材であって、前記フラップ部の上端側表面にリング状からなる第一挿通部を設け、表面のうち前記フラップ部以外の領域にリング状からなる第二挿通部を少なくとも一設ける配送用袋状梱包材などを提案する。
【0011】
また、上記発明に関連して、表面のうち下端周辺の領域に、少なくとも前記フラップ部を収納可能な袋状形状の収納部を設けることを特徴とする配送用袋状梱包材なども提案する。
【0012】
さらに上記発明に関連して、前記フラップ部を収納した後の平置き状態での長手方向の長さが34センチメートル以内、短手方向の長さが25センチメートル以内となる配送用袋状梱包材なども提案する。
【発明の効果】
【0014】
主に以上のような構成をとる本発明によって、商品運搬時に一般消費者に対して違和感や不快感を与えることなく、好適な状態でリユース可能な配送用の梱包材を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の配送用袋状梱包材の全体の一例を示す斜視図
図2】本発明の配送用袋状梱包材の別の全体の一例を示す斜視図
図3】本発明の配送用袋状梱包材を挿通具を用いて封緘する様子の一例を示す図
図4】本発明の配送用袋状梱包材を挿通具を用いて封緘する様子の別の一例を示す図
図5】本発明の挿通具の上面図、下面図及び側面図の一例を示す図
図6】本発明の挿通具を係止する係止する際の上面図及び側面図の一例を示す図
図7】本発明の挿通具を係止する際の斜視図(斜め上側から見た図及び斜め下側から見た図)の一例を示す図
図8】本発明の配送用袋状梱包材を返送する際に行う処理の一例を示す図
図9】本発明の配送用袋状梱包材を郵便ポストに投函する様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず図1を示す。同図(a)ないし(c)はいずれも、本発明の同一の配送用袋状梱包材の全体の一例を示す斜視図であり、同図(a)は梱包材が開口した状態を、同図(b)は梱包材のフラップ部を折り曲げた状態を、同図(c)は梱包材の側面部を圧縮させた状態をそれぞれ示したものである。同図に示されているように、本発明の配送用袋状梱包材は、袋状の梱包材0100の上端に設けられた開口部0101を封緘するためのフラップ部0102 を備え、前記フラップ部の上端側表面につまめるように付属してリング状の空洞を構成するようになる第一挿通部0111を、梱包材の表面のうち前記フラップ部以外の領域につまめるように付属してリング状の空洞を構成するようになる第二挿通部0112が少なくとも一設けられるように構成されている。
【0017】
本発明の配送用袋状梱包材は、リユースできることを特徴の一つとして有するため、その素材もリユース可能な、破損しにくい丈夫なものが選択されうる。具体的には、ポリエチレンかポリプロピレンなどの合成樹脂を用いることが考えられ、これらのプラスチック素材を用いることにより、紙などの完全な自然由来素材ではないものの、耐熱性、耐衝撃性その他の強度に優れているため、繰り返し使用しても破損しづらい梱包材を提供できる。なお、生分解性素材を用いることにより、最終的な効用を終えた後の廃棄処理においても、焼却処分等による二酸化炭素の発生を抑制することが可能となる。
【0018】
本発明の梱包材は袋状形状であり、開口部0101から内部に種々の物品を収納し、配送の用に供される。袋の表面に手提げ用の把持部や係止用の係止穴などの構成を付加的に設けることも否定はされないが、梱包材表面は、後述する各種挿通部や収納部のほかできる限り複雑な構造物や加工を行わずに構成されることが望ましい。そのようなシンプルな構成を採用することにより、使用する過程での破損のリスクを低減させ、リユースできるだけの実効性を高めることができる。
【0019】
梱包材は、上記のように袋状である以外は様々な形状にて構成されうるが、側面部の幅長を変化させることができるよう、マチ幅が生じるような形状にて構成されることが望ましい。図1を用いて具体的に説明すると、梱包材の側面部にはマチ0103を設け、梱包材内部への収納物の大きさに応じた幅長変化が可能な構成とすることが望ましい。
【0020】
ここで図2を示す。同図(a)及び(b)はいずれも、本発明の同一の配送用袋状梱包材の別の全体の一例を示す斜視図であり、同図(a)は梱包材が開口した状態を、同図(b)は梱包材のフラップ部を折り曲げた状態をそれぞれ示したものである。同図に示されているように、本発明の配送用袋状梱包材は、袋状の梱包材0200の上端に設けられた開口部0201を封緘するためのフラップ部0202を備え、前記フラップ部の上端側表面につまめるように付属してリング状の空洞を構成するようになる第一挿通部0211を、梱包材の表面のうち前記フラップ部以外の領域につまめるように付属してリング状の空洞を構成するようになる第二挿通部0212が少なくとも一設けられるように構成されている。
【0021】
図2に示された梱包材の場合は、図1に示された梱包材に比べ、底面部分に奥行を構成するための奥行マチ0213を設けていることが特徴である。当該構成を採用することにより、図1に示した梱包材に比べ、より厚みのある商品を収納し配送することが可能となる。
【0022】
なお、本発明の配送用袋状梱包材は、フラップ部0102、0202を折り曲げることで開口部0101、0201を閉じて封緘することとなるが、当該封緘処理には接着剤などを用いないことが特徴の一つである。接着剤を用いると、当該封緘を開封する際に梱包材が破損したり、そうでなくとも付着した接着剤が凝着することで当該梱包材をリユースすることが困難になったり、リユースのための洗浄処理等のコストが過大となるためである。
【0023】
なお、フラップ部は配送用袋状梱包材の一領域にて構成されるが、特にそれ以外の領域との間で素材を異にしたり、異なる部材を用いて構成されたりする必要はない。開口部を覆うだけの領域であることが必要ではあるものの、それ以外にどの程度の大きさを備えるべきかは設計事項である。
【0024】
フラップ部0102,0202の上端側表面には、リング状の空洞を構成するようになる第一挿通部0111、0211がつまめるように付属して設けられており、梱包材表面のうち前記フラップ部以外の領域にはリング状の空洞を構成するようになる第二挿通部0112、0212がつまめるように付属して設けられる。第一挿通部及び第二挿通部はいずれも、フラップ部ないし梱包材表面のうち、梱包材の幅長の真ん中近辺の位置に付属して配されることが望ましい。本発明の梱包材は、後述するように、第一挿通部及び第二挿通部に挿通具を挿通することで封緘処理を行うところ、梱包材の幅長の真ん中近辺にて封緘処理を施すことにより、幅長全体にわたり封緘処理を行わずとも、配送途中で収納物が外部に露出するような事態を回避することが可能になるからである。
【0025】
なお、第一挿通部及び第二挿通部は、いずれも少なくとも一設けられることが必要ではあるものの、同様の構造からなるリング状構造体をさらに複数設けることも排除はされない。当該複数のリング状構造体すべてに挿通具を挿通することで、封緘状態をより強固なものにすることが可能となる。また、フラップ部0102、0202の裏面側と、梱包材表面のうち第二挿通部のすぐ上面側の領域0122、0222とにマジックテープ等の繰り返し利用可能な固定部材を貼り付けておき、当該固定部材を接着させることで、挿通具による封緘処理を補完することも可能である。
【0026】
なお、第一挿通部及び第二挿通部の大きさは、相対的に小さめに構成されることが望ましく、具体的には、それぞれに構成されるリング状形状の内径1センチメートルないし2.5センチメートル程度となるようにすることが望ましい。リング状形状の径が小さすぎると挿通具の挿通が困難となり、径が大きすぎると封緘処理後も配送時の振動等で当該径内に挿通された挿通具も上下左右に振動して移動可能となり、十分な封緘状態を維持できなくなるためである。
【0027】
また、第一挿通部と第二挿通部とは、それぞれ異なる大きさないし形状であってもよいし、同一の大きさないし形状であってもよく、上記の内径の点を除けば、具体的な構成は設計事項である。なお、図1図2においてはいずれも、第一挿通部0111、0211の内径の方が第二挿通部0112、0212の内径よりもやや大きく構成されているが、このように、第一挿通部を構成するリング状形状を内径2.5センチメートル程度とすることで、この第一挿通部をつまみながらフラップ部を折り曲げることができ便宜である。
【0028】
<挿通具を用いた封緘の一例>
ここで図3を示す。同図(a)及び(b)はいずれも、本発明の配送用袋状梱包材0300を挿通具を用いて封緘する様子の一例を示す図である。同図(a)が挿通具を挿通している場面を示す図であり、同図(b)が挿通後に封緘する場面を示す図となっている。
【0029】
以下で挿通具を用いた封緘処理の一例について説明する。まず図3(a)に示されているように、棒状形状の挿通具0304を、フラップ部0302を折り曲げたあとの第一挿通部0311及び第二挿通部0312のリング状形状の穴に挿通させる。その後、同図(b)に示されているように、前記挿通した挿通具の先端部分を折り返して、挿通具に設けられた係止部に当該折り返した挿通具の一端部分を係止させ、挿通具と、第一挿通部及び第二挿通部ひいては配送用袋状梱包材とを固定する。当該処理を行うことにより、いちど折り曲げたフラップ部はもとの形状に戻すことができなくなり、それゆえ開口部を覆うことができ、梱包材を封緘することができる。
【0030】
なおここで図4を示す。同図もまた本発明の配送用袋状梱包材0400を挿通具を用いて封緘する様子の別の一例を示す図であり、図2を用いて説明した、図3で示した梱包材に比べて底面部分に奥行を構成するための奥行マチ0413を設けている。当該構成を採用する配送用袋状梱包材0400における挿通具を用いた封緘処理も、基本的には図3を用いた説明と同様だが、図4にて示した構成を採用する場合は、奥行マチ0413を設けた分だけ厚みのある収納物を収納可能となるため、図3を用いて示したような梱包材に比べ、相対的にフラップ部の領域を広く確保する必要がある。より具体的にはフラップ部0402の高さ長が相対的に大きく確保される必要があり、これに対応するように第二挿通部0412の配置位置も調整される。
【0031】
<挿通具の説明>
ここで図5ないし7を示す。同各図はいずれも、本発明において配送用袋状梱包材を封緘するために用いられる挿通具の外観の一例を示す図であり、図5は通常時の上面図、下面図及び側面図を、図6は係止する際の上面図及び側面図を、図7は係止する際の斜視図(斜め上側から見た図及び斜め下側から見た図)である。同格図に示されているように、挿通具は細長い棒状形状からなり、棒状形状の一端を係止するための係止部0501と、前記一端とは別の端部側に配送に関する情報を表示可能な表示部0502とを備えている。
【0032】
係止部0501は、棒状形状の一端側に構成され、その表面上に一又は複数の山型からなる溝0511が設けられる。そして、上記一端とは別の端部側に向けて係止部を折り曲げて、当該別の端部側に設けられた挿通穴0503の内部に向けて係止部を斜めに差し込む。当該挿通穴0503の内側には、上記係止部を差し込んだ手前側から差し込んだ先に向けて張り出す出っ張り0513が設けられている為、係止部を斜めに溝内に挿入すると当該出っ張りに引っかからずに挿通穴の内部を挿通することができるが、逆に挿通後に係止部を引き抜こうとすると、上記溝0511が出っ張り0513に引っかかり引き抜くことができない。
【0033】
図6及び図7にて示されているのが、係止部の溝を出っ張りにひっかけることで引き抜くことができなくした様子である。同各図にて示されているように、係止部がリング状形状を構成するが、係止部上に複数の溝を設けることで、リング状形状の内径の大きさを変化させることができる。そして図3(b)や図4(b)にて示されたように、挿通具が梱包材の第一挿通部及び第二挿通部に挿通されたのちに当該リング状形状を構成するようにすれば、挿通具のリング状形状が上記の通り固定化されているので、結果として梱包材のフラップ部もまた固定化されることになる。なお、上記のように係止部のリング状形状の内径を変化させることで、当該挿通具を挿通した第一挿通部及び第二挿通部との固定関係の緩急をつけることができ、第一挿通部及び第二挿通部がどのような大きさにて構成されていても、適宜の固定関係を実現することが可能である。
【0034】
ちなみに、挿通具においては、配送に関する情報を表示可能な表示部0502を設けることを更なる特徴として備えている。ここでいう配送に関する情報とは、配送対象となる収納物の品名やブランド名、ブランドロゴなど収納物に関する情報を表示したり、配送元又は配送先住所のようなアドレス情報を表示したり、配送日時や後述する返送のための期限等の日時情報を表示したりすることが考えられるが、いずれにしても、当該挿通具を用いて封緘された梱包材の配送に際して、配送先に有意な情報を表示することが考えられる。
【0035】
具体的な表示の態様は様々に考えられ、予め表示内容が印刷されたラベルを貼付するような態様のほか、表示部に直接情報を刻印表示する態様、表示部をディスプレイにて構成し、当該表示部に情報を表示出力するような処理を施すような態様などが考えられ、これらの方法は適宜選択されてよい。配送に関する情報を梱包材の外部に表示するような構成を採用することで、梱包材表面への加工処理を不要とし、当該梱包材のリユースを容易ないし促進することができるようになる。
【0036】
ここで、ここまで各図を用いて挿通具の説明を行ってきたところ、それらのいずれにおいても、挿通穴0503が、表示部0502を構成する平板状領域の一部に配置されているように図示されているところ、表示部と挿通穴の配置関係は、特に同各図に示された構成に限られない。具体的には、挿通穴を表示部における表示の視認を妨げることにならないような位置に配置するのが好ましく、表示部と係止部の中間位置に配置するのがより望ましい。
【0037】
このように、挿通具を用いることで、梱包材本体に損傷や加工を施すことなく梱包材を封緘する処理を行うことができるようになり、当該梱包材のリユースを円滑に行うことができるようになる。
【0038】
なお、ここまでは挿通具を用いて梱包材を封緘する処理の一例を説明したが、以下では、当該梱包材を開封する際の処理についても念のため説明を行う。上述のように、いったん挿通穴内の溝に引っ掛けるなどして固定関係を確立した挿通具は、その後配送完了後に開封する必要があるところ、ハサミなどの工具を用いて挿通具の一部を破断させたり、あらかじめ配送先にて管理している治具を用いて上記説明した固定関係を解消させる処理をしたりすることが考えられる。本発明の目的が梱包材のリユースを円滑に行うことにあることから、挿通具についても同様に再利用できるような構成であることが望ましく、上記のように係止部をリング状形状とする必要があることから、当該部分は可撓性素材にて構成される必要があるが、それ以外の素材に関する要請に関してみた場合、仮にハサミ等を用いて挿通具を破断する場合であっても、容易にリサイクルできるような素材であったり、廃棄する場合であっても環境負荷が相対的に少ない生分解性素材にて構成されたりすることが望ましい。
【0039】
<梱包材の返送に向けた処理>
ここまでは梱包材を配送する際の各種処理や当該配送に資する梱包材の構成について説明したが、以下では、いったん配送が完了した後の処理について言及する。すなわち、上述したようなECサービス等を通じた商品配送の場合、配送先の消費者にとっては、当該梱包材は商品受領によりその効用を終える場合が多いいっぽう、配送元の事業者にとっては、同種商品を多くの配送先に配送する業務の都合上、同種梱包材を繰り返し使用する需要が高い。このような梱包材の需給バランスと、繰り返し述べている梱包材のリユース要請を踏まえると、いったん商品配送の用を終えた梱包材は、その構成を維持しつつ、そのまま配送元に返送されることが望ましい。そこで以下では、本発明の配送用袋状梱包材を返送するための各種工夫について順次説明する。
【0040】
まず、わが国の物流事情に鑑みれば、消費者に対して複雑な返送処理を強いることは、円滑な梱包材の返送フローの阻害要因となるため、できる限り簡易な方法によることが望まれる。具体的に言えば、郵便ポストへの投函という方法が最も簡易な方法の一つとして考えられ、本発明においても、郵便ポストへの投函を容易に可能とするための構成を採用することが望ましい。具体的には、我が国の郵便ポストのうち代表的なものが、投函口のサイズが、横幅25センチメートル、縦幅(暑さ)4センチメートルとされるため、当該投函口に投函可能なサイズにて梱包材を構成することが望ましい。また、投函口にスムーズに入れ込むことができるように、投函時の梱包材の縦幅長(従来の高さ長、長手方向長)は34センチメートル以内にて構成することが望ましい。そうすることで、ポストの奥行きを意識することなく、手軽に投函する事が可能である。
【0041】
ここまでは梱包材そのものの大きさについては、特段の制約を設けずに説明を行ってきたが、これは、収納物の大きさにより、梱包材そのものの大きさも変化しうるためである。ただし返送時には上記のような好適な大きさが想定され得るため、当該好適な大きさに整形することが望ましい。
【0042】
ここで図8を示す。同図は、図2図4を用いて説明した配送用袋状梱包材を返送する際に行う処理の一例を示す図である。同図のうち処理の流れが時系列に(a)(b)(c)(d)の順番で示されている。同図においては、梱包材の表面のうち下端周辺の領域に袋状形状の収納部0821が設けられており、この収納部の内側にフラップ部0802を折り曲げて収納する。
【0043】
なお、図8(b)や(c)に示されているように、フラップ部を折り曲げて収納する際には、複数回(同各図の場合には2回)折り曲げて収納部に収納することで、より梱包材のサイズをコンパクトにすることができる。すなわち、収納部を構成する袋状形状は、少なくともフラップ部を収納可能とするだけの大きさであることが望ましく、より望ましくは、図8各図にて示されているように、フラップ以外の多くの梱包材部分を収納可能とできるだけの大きさであることが望ましい。
【0044】
なお、いちどフラップ部等が収納されたあと、収納部から当該収納部分が再び解放されてしまうことがないよう、上記収納状態を固定化するための処理がとられることが望ましい。例えば、収納部の裏面の所定領域(図示せず)と、収納部に格納される梱包材の表面の所定領域(例えば0805にて示される領域)とにマジックテープをあらかじめ備えておき、当該マジックテープを接着されることで固定状態を維持する方法や、収納部に格納される梱包材の表面の周辺領域にリング状からなる第三挿通部0813と、収納部の上端部周辺にリング状からなる第四挿通部0814とを設け、この第三挿通部0813と第四挿通部0814を挿通するように挿通具を用いることで、上記収納状態を固定するような構成も考えられる。上述したように、配送先の消費者等にて治具等を用いて挿通具による第一挿通部及び第二挿通部との固定関係の解消が可能な場合には、上記第三挿通部及び第四挿通部を用いた収納状態の固定に、配送時に用いられていた挿通具を再利用することができ便宜である。
【0045】
このようにしてフラップ部を含む領域が収納された後の梱包材の大きさとしては、上述のように、郵便ポストに投函可能であることが望ましく、具体的には、平置き状態での長手方向の長さが34センチメートル以内、短手方向の長さが25センチメートル以内とすることが望ましい。
【0046】
ここで図9を示す。同図は、収納部への収納がなされた後の配送用袋状梱包材を郵便ポストに投函する様子を示す図である。同図に示されているように、上記構成を採用してコンパクトに整形された梱包材は、商品の配送先の消費者等により特段の便宜な返送のための加工等を行うことなく、配送元へと返送される。
【0047】
ちなみに、技術的事項ではないので詳しくは述べないが、郵便ポストへ投函するにあたっては、商品配送時に梱包材内に同梱されていた返送用ラベル(返送先の住所等が印刷されたもの)を梱包材表面に貼付するなどして、配送先に返送先住所の入力等の手間をかけさせないようにすることが考えられる。なお、収納部に一部表面が収納された梱包材は、収納物が入っていない状態で投函するのが通常であるため、梱包材を幾重に折り曲げて収納したところでその厚みが、標準的な郵便ポストの投函口の高さ(4センチメートル)を超えることは通常は想定し難い。
【0048】
<効果>
上記のような構成の配送用袋状梱包材を用いることにより、商品運搬時に一般消費者に対して違和感や不快感を与えることなく、好適な状態でリユース可能な配送用の梱包材を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0049】
0100・・・配送用袋状梱包材、0101・・・開口部、0102・・・フラップ部、0111・・・第一挿通部、0112・・・第二挿通部、0304・・・挿通具

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9