(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/115 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
G01F1/115
(21)【出願番号】P 2024154293
(22)【出願日】2024-09-06
【審査請求日】2024-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2024087672
(32)【優先日】2024-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039837
【氏名又は名称】東フロコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】川本 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】島田 卓雄
(72)【発明者】
【氏名】飛松 慎二
(72)【発明者】
【氏名】中村 真弥
(72)【発明者】
【氏名】藤江 優香
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-123644(JP,A)
【文献】実開昭64-002183(JP,U)
【文献】実開昭53-036372(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第115629343(CN,A)
【文献】特開平09-243767(JP,A)
【文献】特開昭63-222216(JP,A)
【文献】特開平08-135467(JP,A)
【文献】特開平08-135466(JP,A)
【文献】特開2011-117757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G01B 7/00- 7/34
G01D 5/00- 5/62
G01P 3/00- 5/26
G01R 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路を有する流路管と、
前記流路管の内部で回転可能に支持された羽根車と、
前記羽根車の回転により前記流路を流れる流体の流量を測定するセンサを備え、
前記センサは、前記流路管の外部に設置されたセンサケース内に金属基材の配線基板を有し、
前記配線基板上に、前記羽根車の磁気を検出する磁気センサパッケージと、前記配線基板を加熱するヒータと、前記配線基板の温度
に基づいて前記ヒータの電源ON/OFFを制御する温度制御回路が実装されており、
前記磁気センサパッケージが前記配線基板に半田付けで取り付けられていることを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記磁気センサパッケージは、サーマルパッド上に磁気センサ素子が実装されたサーマルパッド付磁気センサパッケージであることを特徴とする請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記配線基板は、前記磁気センサパッケージが実装された部分の基板幅が他の部分の基板幅よりも狭く設計されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流量計。
【請求項4】
前記流路管は、流入口を有する流入管と、流出口を有する流出管から構成されており、前記流入管と前記流出管の間の空間に、前記流路の内径よりも大径の羽根車を内蔵したカプセルが収容されていることを特徴とする請求項
1に記載の流量計。
【請求項5】
前記カプセルと前記流入管の間にウェーブワッシャーが挿入され、かつ、前記流入管と前記流出管の接合面にメタルシールが挿入されていることを特徴とする請求項4に記載の流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温から高温まで幅広い温度範囲の流体の流量測定に好適な流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の製造プロセスにおいて、極低温流体の流量測定が求められている。極低温(例えば-120℃)の流体(例えばフッ素系冷媒)の流量を測定する場合、一般的に羽根車式流量計が使用されている。羽根車式流量計は、磁気センサとしてホールIC等の半導体センサを用いるため、低温時の温度特性が悪く、流体温度が-40℃以下になると検出は不可能になる。そこで、磁気センサとしてピックアップコイルを用いた検出方法を採用することにより、極低温流体の流量測定を可能にした流量計が知られている(下記の特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、ピックアップコイルは銅の巻線であるため、アンテナとなってあらゆる方向からの外部磁場のノイズを受け易いという問題があった。また、近年の半導体の製造工場では、装置の設置面積の縮小化が求められ、装置内の各部品同士の距離が短くなり、流量計の近くにモータ、電磁弁、電磁開閉器、インバータ、動力線などがあり、これらの磁場ノイズによって誤動作し易い環境にある。このため、装置内で流量計をできる限り遠ざけて配置する必要があり、使用し難いものになりつつある。
【0004】
一方、従来のようにホールIC等の半導体センサを用いれば、検出に指向性があり、外部磁場のノイズの影響を受け難いが、特に低温流体の使用時にホール素子の検出感度が低下し、検出できなくなるという問題がある。そこで、ホール素子の検出感度の低下を防ぐために、ホール素子とヒータを有する水量センサを備えた給湯装置が知られている(下記の特許文献2を参照)。
【0005】
しかし、この給湯装置は、水量センサの外部となる雰囲気温度を基準に制御するものであり、ホール素子付近の温度を計測しているわけでないため、正確なホール素子の温度制御を行うことは不可能である。また、極低温流体に使用する場合は、製品外部の結露や凍結防止のため、ほぼ全ての外装面を断熱材で覆う必要があり、その断熱性により雰囲気温度とセンサ温度とに乖離が発生するので、正しく温度制御することができないという問題がある。さらに、半導体の製造装置は瞬停や異常停止が発生することを想定する必要があり、電源OFFの状態でも暫くの間は低温流体に熱を奪われても動作できる温度を維持するために蓄熱しておく必要があるが、そのような対策はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6257833号公報
【文献】特開2004-294020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、極低温流体及び高温流体の流量測定に好適な流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明に係る流量計は、流体が流れる流路を有する流路管と、前記流路管の内部で回転可能に支持された羽根車と、前記羽根車の回転により前記流路を流れる流体の流量を測定するセンサを備え、前記センサは、前記流路管の外部に設置されたセンサケース内に金属基材の配線基板を有し、前記配線基板上に、前記羽根車の磁気を検出する磁気センサパッケージと、前記配線基板を加熱するヒータと、前記配線基板の温度に基づいて前記ヒータの電源ON/OFFを制御する温度制御回路が実装されており、前記磁気センサパッケージが前記配線基板に半田付けで取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る流量計において、前記磁気センサパッケージは、サーマルパッド上に磁気センサ素子が実装されたサーマルパッド付磁気センサパッケージである構造を採用してもよい。
【0010】
また、本発明に係る流量計において、前記配線基板は、前記磁気センサパッケージが実装された部分の基板幅が他の部分の基板幅よりも狭く設計されている構造を採用してもよい。
【0011】
また、本発明に係る流量計において、前記流路管は、流入口を有する流入管と、流出口を有する流出管から構成されており、前記流入管と前記流出管の間の空間に、前記流路の内径よりも大径の羽根車を内蔵したカプセルが収容されている構造を採用してもよい。
【0012】
また、本発明に係る流量計において、前記カプセルと前記流入管の間にウェーブワッシャーが挿入され、かつ、前記流入管と前記流出管の接合面にメタルシールが挿入されている構造を採用してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る流量計によれば、磁気センサパッケージ(ホールIC等)の半導体センサを用いたことにより外部磁場のノイズの影響を受け難く、金属基材の配線基板上に磁気センサパッケージとヒータと温度制御回路を実装して温度制御するようにしたことによりセンサを正確に温度制御することが可能になる。したがって、金属基材の配線基板によって均一な基板温度を維持しつつ、瞬停や異常停止時においてセンサが動作できる温度を維持するための蓄熱効果が得られる。特に、磁気センサパッケージ(ホールIC等)の半導体センサは動作保証温度があり、流体温度が-40℃以下になると検出が不可能であったが、金属基材の配線基板をヒータで加熱して-40℃以上を維持することにより、極低温流体に適した流量測定を実現することができるという効果がある。また、センサ付近の熱を金属基材の配線基板が効率良く吸収し、その熱を外部に放熱させることができるため、高温流体に適した流量測定も可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る流量計の外観を示す斜視図である。
【
図6】同流量計における金属基材の配線基板の例を示す模式図である。
【
図7】同流量計におけるホールIC付近の拡大図である。
【
図8】同流量計の防水コネクタに防水コネクタケーブルを取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の流量計1は、流速に比例して回転する羽根車を検知して流体の流量を測定する羽根車式流量計であって、流体が流れる流路を有する流路管2の外部に、羽根車の回転数に基づいて流体の流量を測定するセンサ3が装着されたセンサ一体型流量計である。この流量計1の用途としては、例えば半導体製造装置の温度制御チラーの水平配管に接続して、フッ素系不活性液体の流量測定に使用することができる。流体の温度は-120℃の極低温から+150℃の高温まで、幅広い温度範囲で流量測定が可能である。
【0017】
図3は流路管2の内部構造を示す断面図である。同図に示すように、流路管2は、溶接時や加工時の熱によって磁性を帯び難くするため、ステンレス鋼(例えばSUS316)からなる金属製の流入管4と流出管5の2つの部品で構成されている。流入管4には一端に開口した流入口6から連通する上流路7が形成され、流出管5には他端に開口した流出口9へと連通する下流路8が形成されている。上流路7と下流路8の間の空間には、カプセル10に内蔵された羽根車11が設置されている。羽根車式流量計において、圧力損失を低くするには、流路径よりも羽根車径を大きくすることが好ましい。そこで、本実施形態では流出管5の内側に流路(上流路7と下流路8)の内径D1よりも大径の凹部12が設けられており、羽根車11が内蔵されたカプセル10を凹部12に収容する構造を採用している。
【0018】
カプセル10は、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂(例えばPPS)で構成されている。カプセル10の中心部にはセラミックス製(例えばアルミナ)の軸受13,14が対向して配置されており、流入管4側の軸受13の周囲には整流板(例えばPPS)15が放射状に一体成形されている。羽根車11は、セラミックス製(例えばアルミナ)の回転軸16の外周に、熱可塑性樹脂(例えばPPS)からなる4枚の羽根17,17,…が放射状かつ螺旋状に設けられている。4枚の羽根17(17A,17B,17C,17D)のうち180度対向する2枚の羽根17(17Bと17D)には、耐熱性及び耐食性に優れたサマリウムコバルト等からなるマグネット18が埋設されている。羽根車11は、その外径D2が流路(上流路7と下流路8)の内径D1よりも大きく設計されており、軸受13,14に支持された回転軸16の軸心周りに回転可能に支持されている。
【0019】
流路管2では、流入口6から上流路7を通ってカプセル10内に流れ込んだ流体が、整流板15と螺旋状の羽根17によって渦流となり、下流路8を通って流出口9から流れ出るようになっている。本実施形態では、流体を羽根車11の回転面に対して垂直に当てる軸流式を採用しているため、流量計1の配管への取付姿勢(垂直又は水平)に制約がなく、軸応力が小さくて済むので故障が少なく長寿命化を実現することができる。また、羽根車11、軸受13,14、整流板15が予めユニット化されたカプセル10を凹部12に収容するだけでよいため、部品の組立作業が簡素化され、メンテナンス作業も容易に行うことができる。
【0020】
本実施形態の流量計1は、羽根車11を支持する軸受13,14同士の中心にズレが生じ難く、圧力損失を低くする目的とユニット化したカプセル収容構造を採用したことにより、流入管4と流出管5の接合面にシール部が必要となる。一般的に、シール部にはOリング等のゴムパッキンを使用するが、ゴムパッキンは-50℃以下では硬くなってシールできなくなるため、本実施形態では金属シールを採用している。すなわち、カプセル10と流入管4の間にカプセル10のガタツキを防止する金属製(例えばSUS304)のウェーブワッシャー19が挿入され、かつ、流入管4と流出管5の接合面の一部に金属製(例えばSUS304)のメタルシール20が挿入されている。そして、流入管4の外側から複数個の六角穴付きボルト21,21,…を流入管4に締め付けることにより、流入管4と流出管5の接合面がシールされている。
【0021】
一般的な金属シールの場合、ゴムパッキンよりも製造時の歩留まりが悪いため、本実施形態では接触面積を制限したパッキン形状とすることで、大幅に歩留まりを向上させている。すなわち、六角穴付きボルトで締め付けると、
図4に示すように、矢印方向に製品が押し付けられてパッキンを潰すが、通常パッキンは全面を押し当てることが多く、面積当たりの荷重が分散されるため、一箇所に力が集中せずにシール性が悪いという問題があった。そこで、本実施形態のメタルシール20は、流入管4との接触面aを小さくし、かつ、流出管5との接触面bを小さくして接触面積を制限したパッキン形状とすることにより、図中丸印を付けた部分のみに力が加わり、弱い締め付け力で高いシール性を維持できるようになっている。
【0022】
また、一般的な金属シールは全体を回転させて締め付ける方式であるため、回転時にパッキンが回転方向へ摺動し、その際に生じる表面の摩擦熱や食い付きにより表面がただれてシール性を損ねる問題があった。そこで、本実施形態では、六角穴付きボルト21の締結構造を採用したことにより、垂直方向だけに力が加わり、表面の摩擦熱や食い付きが生じず表面もただれることが無い。このため、高いシール性を実現することが可能となり、問題解決のための部材も不要で安価に金属シールすることができる。
【0023】
なお、通常のRcねじ等の管用ねじは、シールテープやゴム又は樹脂のシール剤を用いてシールする。しかし、これらのシール部材は、ステンレス鋼などの金属継手を接続した際、低温時に金属よりも熱収縮が大きく、液漏れが発生し易いという問題があった。そこで、本実施形態では、流入管4と流出管5の外形に、管用ねじではなくチューブ出し構造を採用している。このため、流路管2にダブルフェルールのSwagelokチューブ継手(スウェージロック社製、商品名)や、チューブの先端を溶接してVCR継手(スウェージロック社製、商品名)などを取り付けることが可能となる。これにより、流路管2と継手が同材質となり、低温時でも熱膨張率が同じであるため、低温の流体を使用しても隙間や液漏れが生じる心配がなく高い気密性を維持することができる。
【0024】
図5はセンサ3の内部構造を示す断面図である。同図に示すように、センサ3は、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂(例えばPPS)からなるセンサケース22に収容されている。センサケース22は、流路管2にタッピングねじ23で締め付け固定することにより流路管2の外部に設置されている。センサケース22の内部には、熱伝導率の高い金属基材の配線基板24が内蔵されている。
【0025】
金属基材の配線基板24とは、
図6に示す金属ベース基板24-1、金属コア基板24-2、金属ポスト基板24-3をすべて含む。金属ベース基板24-1は、ベース(基材)となる金属板(アルミニウム板や銅板)の表面に絶縁層を積層し、その上に外層回路を形成したものである。金属コア基板24-2は、コア(基材)となる金属板(アルミニウム板や銅板)の表裏面に絶縁層を積層し、その上に外層回路を形成し、スルーホールを設けたものである。金属ポスト基板24-3は、ベース(基材)となる金属板(アルミニウム板や銅板)の表面に絶縁層を積層し、その上に外層回路を形成し、金属板を露出させたものである。
【0026】
金属基材の配線基板24の上には、流路管2内の羽根車11と対向する位置に、羽根車11の磁気を検出する非接触式の磁気センサパッケージ25が実装されている。本実施形態の磁気センサパッケージ25は、磁気センサ素子としてホール効果を利用して磁気を電圧に変換するホール素子が内蔵されたホールICである。磁気センサパッケージ(ホールIC)25は、ホール素子、電源回路、オペアンプ、シュミットトリガー及びトランジスタからなるチップ化した回路で構成された電子部品のパッケージであり、磁気により回転数を検出する機能を有している。流体が流路管2の内部を通過すると、羽根車11の回転に伴ってマグネット18も回転し、マグネット18が通過する度に磁気が流路管2の外部に出力される。磁気センサパッケージ(ホールIC)25の磁気センサ素子(ホール素子)がその磁気を検出すると電位差が生じ、電位差がオペアンプで増幅され、シュミットトリガーが上限値以上又は下限値以下を検知するとトランジスタがON/OFF(Lo/Hi)のデジタル信号を出力する。
【0027】
金属基材の配線基板24の上には、さらに、配線基板24を加熱するヒータ26と、ヒータ26の電源ON/OFFを制御する温度制御回路27と、配線基板24の温度を検出する温度センサ28が実装されている。ヒータ26は電気抵抗からなり、電源ONにより電流が流れると発熱して配線基板24を加熱し、磁気センサパッケージ(ホールIC)25の磁気センサ素子(ホール素子)の温度低下を防止する。温度センサ28は、サーミスタ等で配線基板24の温度を検出し、温度制御回路27は、配線基板24の温度が設定温度(下限値)以下であることを検出するとヒータ26の電源をONし、設定温度(上限値)以上であることを検出するとヒータ26の電源をOFFして、配線基板24の温度制御を行う。なお、温度制御回路27と温度センサ28を別部品としたが、温度センサが内蔵された温度制御回路のように1チップ化された電子部品を使用しても良い。
【0028】
本実施形態において、磁気センサパッケージ(ホールIC)25は、金属基材の配線基板24に半田付けで取り付けられている。例えば
図7(A)に示すように、磁気センサ素子(ホール素子)25aに接続された端子25bを、配線基板24の電極24aに半田sで実装する構造を採用することができる。このように、金属同士の固定によって磁気センサ素子(ホール素子)25aの長期間安定した高精度な位置決めが可能となる。また、もし仮に-120℃~+150℃の幅広い温度範囲での使用を繰り返しても、熱膨張率の近い金属同士のため、ヒートサイクルによる電子部品の剥がれを防止することができる。さらに、配線基板24の温度が半田sと端子25bという熱伝導の良い金属を介して磁気センサ素子(ホール素子)25aに直接伝わり易いため、高精度な温度制御を実現できるという効果がある。
【0029】
また、
図7(B)に示すように、磁気センサパッケージ(ホールIC)25の他の例として、サーマルパッド付磁気センサパッケージを使用しても良い。すなわち、銅板製のサーマルパッド29の表面に磁気センサ素子(ホール素子)25aが実装された磁気センサパッケージ(ホールIC)25を使用して、配線基板24の電極24aに裏面のサーマルパッド29を半田sによって取り付ける構造を採用することもできる。これにより、配線基板24と磁気センサ素子(ホール素子)25aの間に熱伝導の良い銅が介在することになり、配線基板24と磁気センサ素子(ホール素子)25aをほぼ同じ温度に維持することができ、極めて高い熱伝導による高精度な温度制御を実現できるという効果がある。
【0030】
図5に示すように、金属基材の配線基板24は、樹脂製の基板押さえ30によりセンサケース22の内部に挿入されており、ゴムパッキン31により外部からの水分の侵入を防ぎ、M12コネクタ用の防水コネクタ32により抜け止め及び防水保護されている。センサケース22の内部には電源導線や信号導線等の内部ケーブル33が配置されているが、これらの内部ケーブル33の外周を覆うように充填材(例えば耐熱エポキシ樹脂)34が接着固定されている。このため、センサケース22の内部空間で空気の対流が起こらず、流路に高温の流体が流れていても流路管2から配線基板24への熱伝達を防ぐことができる。逆に、流路に低温の流体が流れていても配線基板24の結露を抑えることができ、流路管2が結露や凍結しても内部の導線が錆びることはなく内部ケーブル33の接触不良を防止することができる。さらに、熱変動で仮に充填材34とセンサケース22との接着剥がれが生じても、基板押さえ30によって配線基板24が抜けずに安定して固定される。
【0031】
このように、本実施形態では、磁気センサパッケージ(ホールIC)25、ヒータ26、温度制御回路27及び温度センサ28を1枚の金属基材の配線基板24上に実装し、センサケース22に挿入して流路管2の外部で独立して温度制御するようにした。これにより、磁気センサパッケージ(ホールIC)25付近を正確に温度制御することが可能になる。したがって、金属基材の配線基板24によって均一な基板温度を維持しつつ、瞬停や異常停止時においてセンサ3が動作できる温度を維持するための蓄熱効果が得られる。特に、磁気センサパッケージ(ホールIC)25の半導体センサは動作保証温度があり、流体温度が-40℃以下になると検出が不可能であったが、金属基材の配線基板24をヒータ26で加熱して-40℃以上を維持することにより、極低温流体に適した流量測定を実現することができる。
【0032】
また、磁気センサパッケージ(ホールIC)25は、マグネット18の磁気を少しでも強く検知できるように近くに配置し、できる限り感度の低いホール素子を用いることで外部磁場の影響を受け難くしている。このため、センサ3は流路管2の流路付近に配置されるので、流体の熱を直接受け易いという問題がある。そこで、本実施形態の配線基板24は、
図2に示すように流路に最も近い磁気センサパッケージ(ホールIC)25が実装された部分の基板幅W1が、ヒータ26、温度制御回路27及び温度センサ28が実装されたその他の部分の基板幅W2に比べて極端に狭く設計されている。これにより、配線基板24が流路側から受ける入熱を少なくすることができるという利点がある。
【0033】
また、流体が低温の場合にはヒータ26で加熱すれば良いが、高温の場合には放熱できると、より高温の流体でも使用することができるという利点がある。本実施形態では、磁気センサパッケージ(ホールIC)25が金属基材の配線基板24の上に半田付けで実装されているため、磁気センサ素子(ホール素子)25aが受けた熱は、熱伝導率の高い金属基材の配線基板24に効率良く吸収される。また、配線基板24に吸収された熱は、
図8に示すように、内部ケーブル33から防水コネクタ32のピン32aを経由して外部ケーブル35へと効率良く伝達され、外気に露出した防水コネクタケーブル36から外気へと放熱される。このように、流路から磁気センサ素子(ホール素子)25aが受けた熱を流量計外部に効率良く放熱させることができるという放熱効果が得られるため、高温流体に適した流量測定も可能になる。
【0034】
なお、上述した実施形態では、羽根車11の磁気を検出する磁気センサパッケージ25の磁気センサ素子25aとしてホール素子を使用したが、磁気センサ素子25aの種類はこれに限られない。例えば、ホール効果を利用したホールセンサとして、ホール電圧を直接出力するホール素子や、ホール電圧を増幅してリニア出力するリニアホールICを使用することができる。また、磁気抵抗(MR)効果を利用したMRセンサとして、巨大磁気抵抗(GMR)効果によるGMRセンサ素子や、トンネル磁気抵抗(TMR)によるTMRセンサ素子などを使用することもできる。また、センサケース22の素材としてPPSを使用したが、断熱性に優れた発泡PPSを使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上の実施形態では、本発明の流量計の用途として、半導体製造装置の温度制御チラーにおけるフッ素系不活性液体の流量測定に利用する例を挙げたが、これ以外にも油圧機器の流量計測などに利用することもできる。
【符号の説明】
【0036】
1:流量計
2:流路管
3:センサ
4:流入管
5:流出管
6:流入口
7:上流路
8:下流路
9:流出口
10:カプセル
11:羽根車
12:凹部
13:軸受
14:軸受
15:整流板
16:回転軸
17:羽根
18:マグネット
19:ウェーブワッシャー
20:メタルシール
21:六角穴付きボルト
22:センサケース
23:タッピングねじ
24:配線基板
24a:電極
25:磁気センサパッケージ(ホールIC)
25a:磁気センサ素子(ホール素子)
25b:端子
26:ヒータ
27:温度制御回路
28:温度センサ
29:サーマルパッド
30:基板押さえ
31:ゴムパッキン
32:防水コネクタ
32a:ピン
33:内部ケーブル
34:充填材
35:外部ケーブル
36:防水コネクタケーブル
【要約】
【課題】極低温流体及び高温流体の流量測定に好適な流量計を提供する。
【解決手段】本発明に係る流量計1は、流体が流れる流路を有する流路管2と、流路管2の内部で回転可能に支持された羽根車11と、羽根車11の回転により流路を流れる流体の流量を測定するセンサ3を備え、センサ3は、流路管2の外部に設置されたセンサケース22内に金属基材の配線基板24を有し、配線基板24上に、羽根車11の磁気を検出する磁気センサパッケージ25と、配線基板24を加熱するヒータ26と、配線基板24の温度を検出してヒータ26の電源ON/OFFを制御する温度制御回路27が実装されており、金属基材の配線基板24によって均一な基板温度を維持しつつ、瞬停や異常停止時においてセンサが動作できる温度を維持するための蓄熱効果や、センサ付近の熱を吸収して放熱する放熱効果が得られる。
【選択図】
図5