(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】簡易組み立てベッド、多目的テーブルおよび搬送軽量ボード
(51)【国際特許分類】
A47C 19/00 20060101AFI20241105BHJP
A47B 13/08 20060101ALI20241105BHJP
A47B 3/12 20060101ALI20241105BHJP
A47B 13/02 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
A47C19/00 B
A47C19/00 A
A47B13/08 A
A47B3/12 Z
A47B13/02
(21)【出願番号】P 2022571434
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2021046966
(87)【国際公開番号】W WO2022138544
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020211252
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391034880
【氏名又は名称】トキハ産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】門前 一
(72)【発明者】
【氏名】田村 命
(72)【発明者】
【氏名】早川 典
(72)【発明者】
【氏名】辻野 学
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 隆
(72)【発明者】
【氏名】濱 信雄
(72)【発明者】
【氏名】藤川 雄一朗
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-235819(JP,A)
【文献】実開昭60-056529(JP,U)
【文献】特開2017-209321(JP,A)
【文献】米国特許第05263213(US,A)
【文献】特開2004-033601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 19/00
A47C 17/64
A47B 13/08
A47B 3/12
A47B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と複数の脚材を相欠け継ぎに連結した脚部を有する簡易組み立てベッドであって、
前記天板は、
発泡体で形成された板状の発泡板と、
前記発泡板の裏面および表面に前記発泡板と同じ形状の表ボード部材および裏ボード部材を接着した貼り合わせ材と、
前記貼り合わせ材の木口をモールド樹脂で覆う天板モールド樹脂部で構成され、
前記脚材は、
係止溝を有し、発泡体で形成された板状の溝付発泡板と、
前記溝付発泡板の表面および裏面に、前記溝付発泡板と同じ形状の溝付表ボード部材および溝付裏ボード部材を有する溝付貼り合わせ材と、
前記溝付貼り合わせ材の木口をモールド樹脂で覆った脚材モールド樹脂部で構成され、
前記天板モールド樹脂部には、前記天板モールド樹脂部に連続して形成された付加形状部を有することを特徴とする簡易組み立てベッド。
【請求項2】
前記天板と前記脚部を合わせた比重が0.6g/cm
3以下であることを特徴とする請求項1に記載された簡易組み立てベッド。
【請求項3】
前記付加形状部は、前記天板と前記脚部を互いに規制する規制形状であることを特徴とする請求項1または2に記載された簡易組み立てベッド。
【請求項4】
前記天板は複数枚の前記天板を隣接させて構成されたことを特徴とする請求項1または2の何れかの請求項に記載された簡易組み立てベッド。
【請求項5】
前記付加形状部は、前記天板と前記脚部を互いに規制する規制形状であることを特徴とする請求項4に記載された簡易組み立てベッド。
【請求項6】
前記付加形状部は、さらに隣接する前記天板同士を連結する連結形状を含むことを特徴とする請求項5に記載された簡易組み立てベッド。
【請求項7】
天板と複数の脚材を相欠け継ぎに連結した脚部を有する多目的テーブルであって、
前記天板は、
発泡体で形成された板状の発泡板と、
前記発泡板の裏面および表面に前記発泡板と同じ形状の表ボード部材および裏ボード部材を接着した貼り合わせ材と、
前記貼り合わせ材の木口をモールド樹脂で覆う天板モールド樹脂部で構成され、
前記脚材は、
係止溝を有し、発泡体で形成された板状の溝付発泡板と、
前記溝付発泡板の表面および裏面に、前記溝付発泡板と同じ形状の溝付表ボード部材および溝付裏ボード部材を有する溝付貼り合わせ材と、
前記溝付貼り合わせ材の木口をモールド樹脂で覆った脚材モールド樹脂部で構成され
前記天板モールド樹脂部には、前記天板モールド樹脂部に連続して形成された付加形状部を有することを特徴とする多目的テーブル。
【請求項8】
板状の発泡体と、
前記発泡体の裏面および表面に前記発泡体と同じ形状の表ボード部材および裏ボード部材を接着した貼り合わせ材と、
前記貼り合わせ材の木口をモールド樹脂で覆うモールド樹脂部
を有し、
前記モールド樹脂部は、前記モールド樹脂部に連続して形成された足を付加形状部として有する医療用搬送軽量ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立てが容易であり、防水で軽量な簡易組み立てベッドに関するものである。また、本発明に係る簡易組み立てベッドは、多目的テーブルとしても利用することができる。さらに、本発明に係る簡易組み立てベッドの天板は、人や物の搬送用の軽量ボードとしても利用できる。
【背景技術】
【0002】
近年災害による被害が相次いている。被災地では、安全な場所への一時避難が行われるが、家屋に被害がある場合や、被害が広域にわたる場合は、一定の期間の避難が継続することとなる。そのような場合には、食糧や衣服の他、プライバシーの確保と安全な寝床が必要となる。
【0003】
避難所は一般に板床である場合が多い。板床への直接の臥位は、仮にマットを敷いたとしても、体温が奪われる。また目覚めた際、床からの起き上がりには、エネルギーを使う。
【0004】
簡易組み立てベッドは、このような局面で効果的である。ベッドは、使用面が床から一定の高さに位置するため、立位から臥位に移行にするにしても、目覚めた後、立ち上がるにしても、一度使用面に座ることで、姿勢の移行を楽に行うことができる。
【0005】
一方、このような際に使用されるベッドは、普段は格納されている場合が多い。つまり、格納場所から避難場所まで運搬が必要となる。しかも、避難所でもベッドの需要は多数になるため、多数のベッドを運搬する必要がある。
【0006】
段ボール製ベッドは、材料が軽量であるので、運搬に際しては非常に有利である。特許文献1は、かさばらずに運搬できる段ボールベッドを提供する。近年の段ボール製ベッドは材料の軽量さを活かし、多少部品数が多くなっても、コの字型、ロの字型といった圧縮強度が高くなる構造を駆使し、段ボール製であっても、一定の強度を確保している。
【0007】
特許文献2は、段ボールは耐水性が低いという課題を解決するために、プラスチック段ボールを用いたベッドが開示されている。プラスチック段ボールは、ポリプロピレンといった樹脂を原料として段ボールを形成したもので、強度と耐水性を兼ね備えている。
【0008】
特許文献3には、木製材を用いたベッドであるが、組み立てを容易にしたものが開示されている。従来木製ベッドの組立には、ボルトといった締結具で各パーツを結合していたが、相欠き継ぎを使うことで、切込み同士を係止させるだけで、組み立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実用新案登録第3226650号
【文献】特開2012-235819号公報
【文献】特開2020-110559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のように、段ボール製ベッドは、強度を確保するために、部品点数が多くなる。また、上述したように、段ボール製ベッドは、耐水性が悪い。すると雨や洪水といった多量の水による災害時には、水をかぶることで強度が喪失される。また、濡れた段ボール製ベッドには、チャタテ虫等が発生するなど衛生面も劣悪になる場合もあり、大きな課題である。
【0011】
一方、特許文献2のようなプラスチック段ボールは、プラスチック製であるため耐水性は高い。しかし、プラスチック段ボールは、断面波型の中芯の上下を平面のライナーで挟む段ボール構造のため、水が内部にまで侵入するという課題を有する。また、ライナーに対して垂直方向からの力に対しては、強い構造とはいえない。
【0012】
特許文献3のような木製ベッドは、強度や耐水性といった点は十分に実績が積まれている。しかし、木材は水に浮くとはいえ、比重は1に近く、個々の部材が重い。したがって、大量に輸送するには適しているとは言えない。
【0013】
また、木材での相欠け継ぎは、互いの係止溝をマイナス公差で形成し、木槌等で叩き込めばベッドに組み上げた際にしっかりした結合が得られるが、分解する際に大いに手間がかかる。一方、係止溝をプラス公差で形成すれば、ベッドの組み立て分解は楽になるが、組み立て後のがたつきが大きく、また部材同士の結合性に欠ける。結果、組み立てたベッドを持ち上げようとすると部品が落下し、組み立て後のベッドを一体の物として扱えないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記のような課題に鑑みて想到されたものであり、簡単に組み立てられて、軽く、耐水性の高い簡易組み立てベッドを提供するものである。
【0015】
具体的に本発明に係る簡易組み立てベッドは、
天板と複数の脚材を相欠け継ぎに連結した脚部を有する簡易組み立てベッドであって、
前記天板は、
発泡体で形成された板状の発泡板と、
前記発泡板の裏面および表面に前記発泡板と同じ形状の表ボード部材および裏ボード部材を接着した貼り合わせ材と、
前記貼り合わせ材の木口をモールド樹脂で覆う天板モールド樹脂部で構成され、
前記脚材は、
係止溝を有し、発泡体で形成された板状の溝付発泡板と、
前記溝付発泡板の表面および裏面に、前記溝付発泡板と同じ形状の溝付表ボード部材および溝付裏ボード部材を有する溝付貼り合わせ材と、
前記溝付貼り合わせ材の木口をモールド樹脂で覆った脚材モールド樹脂部で構成され、
前記天板モールド樹脂部には、前記天板モールド樹脂部に連続して形成された付加形状部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る簡易組み立てベッドは、発泡体の上下面を天板で挟み、側面である木口と、発泡体と上下のボード部材をモールド樹脂でモールドしているので、発泡体は、樹脂および上下の天板で密封された状態になる。したがって、発泡体には決して水が入り込まないので、優れた耐水性を有する。
【0017】
また、中心部分が発泡体で形成されているので、比重は軽く、天板と脚部の比重は、木材より軽い。もちろん、天板も脚部も水に浮く。さらに、天板のほとんどは発泡体であるので、保温性が高い。そのため、天板の上に寝た人の体温低下を抑制することができる。
【0018】
また、発泡体をプラスチック製ボード部材で挟んだ構造は強く、部品点数が少なく(天板と数個の脚部)ても十分な強度を有するベッドを得ることができる。さらに、部品点数が少ないので、組み立ては極めて容易であり、この組立ベッドを見たことがない人が説明書なしでも、数分以内で組み立てることができる。また、部品点数が少なく、全て平面的な部品であるので、部品の収納時も嵩張らない。
【0019】
また、モールド樹脂でモールドしたモールド樹脂部は、発泡体と上下の天板を密閉するだけでなく、他の機能を発揮する付加形状部がモールド樹脂部に連続して形成することができる。具体的には、天板裏面に施される脚部と天板を係止するためのカギ型形状等である。したがって、そのような機能を奏する部品を別途用意する必要がない。
【0020】
また、樹脂モールドは、係止溝の部分にも施されるので、脚材同士を相欠け継ぎする際に部材同士の公差をモールド樹脂が吸収する。そのため、ベッドの組立分解が容易である上に、組上がった時に脚部にがたつきがない。結果、脚材同士を結合すれば、脚部として持ち運びすることができる。
【0021】
また、本発明に係る組立ベッドは金属部分がないので、磁気や放射線との間で相互作用を起こさない。したがって、天板に乗せた生体をそのまま、CTやMRIで検査をするにことができる。また、ベッド本体をMRI室に載置しておくこともできる。より具体的な利用例としては、救急車のストレッチャーの天板や、空港での保安検査所場での担架として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る簡易組み立てベッドの組立図である。(a)は全体の組立図であり、(b)は組み上げた脚部の斜視図であり、(c)は組み上げたベッドの角を裏側から見た図である。
【
図2】天板の端辺の断面図である。(a)は
図1(a)のA-A断面であり、(b)は
図1(a)B-B断面である。
【
図3】本発明に係る簡易組み立てベッドの他の形態の組立図である。(a)は全体の組立図であり、(b)は天板同士の連結部の断面図である。
【
図4】本発明に係る簡易組み立てベッドの他の形態の組立図である。(a)も(b)も天板と脚部の組立図である。
【
図5】本発明に係る医療用搬送軽量ボードを示す斜視図である。(a)は表面、(b)は裏面、(c)は裏面から見た隅の拡大図、(d)は、(c)のC-C断面を表す。
【
図6】実施例で作製した本発明に係る簡易組み立てベッドの平面図(a)および側面図(b)である。
【
図7】
図6の簡易組み立てベッドに対する荷重試験の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る簡易組み立てベッドについて図面を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0024】
また、本発明に係る簡易組み立てベッドは、そのまま多目的テーブルとして利用することもできる。さらに、本発明に係る簡易組み立てベッドの天板は、単体で搬送軽量ボードとして利用することができる。
【0025】
図1(a)には、本発明に係る簡易組み立てベッド1の組立図を示す。本発明の簡易組み立てベッド1は、天板10と、脚材20を組み合わせた脚部30で構成されている。脚部30は少なくとも2つ以上の脚材20で形成されている。
図1では、5つの脚材20(符号20a、20b、20c、20d、20e)を利用している。説明のために、それぞれの脚材を、長脚材20a、20bと短脚材20c、20d、20eとする。
【0026】
天板10は人が横たわる大きさと形状に形成される。通常天板10は、平面視した際に長方形で作製されるが、この形状に限定したものではない。また、運搬の際の利便性を考え、天板10を2つ以上の天板10で構成してもよい。
【0027】
脚材20は、床から天板10上に移動する菌(ウイルス)やほこりを避けるため30cm程度の高さが好適に採用される。また、脚材20は、強度構造として、アーチ形状を有していてもよい。脚材20には、係止溝22(
図1では22u若しくは22dと表示した。)が設けられている。なお、係止溝22とは、脚材20の厚みに相当する幅の切り欠きである。係止溝22の長さは、脚材20同士を係止溝22を嵌合させることで連結させた際に、互いの部材の上端および下端が面一になる長さに形成される。
【0028】
短脚材20c、20d、20eには、2か所、長脚材20a、20bには両端と中央の3か所の係止溝22が設けられている。長脚材20a、20bには、上向きの係止溝22uが設けられている。短脚材20c、20d、20eには両端の2か所に下向きの係止溝22dが設けられている。
【0029】
長脚材20a、20bの係止溝22uに短脚材20c、20d、20eの係止溝22dを挿入することで、長脚材20a、20bと短脚材20c、20d、20eを相欠け継ぎによって結合させることができる。2枚の長脚材20a、20bに3枚の短脚材20c、20d、20eを係止させることで、脚部30が完成する(
図1(b)参照)。完成した脚部30の上に天板10を載置すると、本発明に係る簡易組み立てベッド1が完成する。
【0030】
図2(a)には、天板10の側端部の厚さ方向の断面(
図1(a)のA-A断面)を示す。なお、脚材20の断面も厚さ方向には同様の構造を有する。天板10と脚材20を総称して「ベッド部材40」と呼ぶ。
【0031】
ベッド部材40は、厚み方向の中心層に板状の発泡板42を配し、その表面と裏面にそれぞれ表ボード部材44と裏ボード部材46が貼り合わせてある。発泡板42に表ボード部材44と裏ボード部材46を貼り合わせた状態のものを貼り合わせ材48と呼ぶ。そして、貼り合わせ材48の側面に当たる部分を木口48aと呼ぶ。なお天板10の貼り合わせ材48を「天板貼り合わせ材」といい、脚材20の貼り合わせ材48を「溝付貼り合わせ材」と呼んでよい。
【0032】
ベッド部材40は木口48aの部分をモールド樹脂で覆っている。モールド樹脂の部分をモールド樹脂部50と呼ぶ。モールド樹脂部50は、表ボード部材44と裏ボード部材46および発泡板42を木口48aでモールドしていると言える。なお、天板10のモールド樹脂部50を「天板モールド樹脂部」といい、脚材20のモールド樹脂部50を「脚材モールド樹脂部」と呼んでよい。
【0033】
発泡板42は、板状に形成される。平面視した際の形状は特に限定されるものではないが、縦横に対して厚みが薄い。発泡板42には、通常発泡体として使用できる材料を使用することができる。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。なお、ポリオレフィンにはポリエチレン、ポリプロピレンが含まれる。また、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン樹脂などを利用することもできる。なお天板10の発泡板42を「天板発泡板」といい、脚材20の発泡板42を「溝付発泡板」と呼んでよい。
【0034】
表ボード部材44と裏ボード部材46には、板状の樹脂若しくは板状のFRPが好適に利用できる。素材自体が軽量で強度を有し耐水性も有するからである。なお、表ボード部材44と裏ボード部材46は別の素材であってもよい。また、表ボード部材44と裏ボード部材46はそれぞれ厚みが異なっていてもよい。表ボード部材44と裏ボード部材46は発泡板42に接着剤で貼り付けられる。使用される接着剤は2液性のエポキシ系接着剤もしくは2液性のウレタン系接着剤等が好適に利用できる。発泡板42中心付近では酸素がない状況になるので、硬化の際に空気がなくても硬化する特性が必要だからである。なお天板10と脚材20の表ボード部材44と裏ボード部材46をそれぞれ「天板表ボード部材」「天板裏ボード部材」と、「溝付表ボード部材」「溝付裏ボード部材」と呼んでよい。
【0035】
モールド樹脂部50は、貼り合わせ材48の全ての木口48aをモールド樹脂で覆うが、さらにモールド樹脂で形成された付加形状部52が備えられていてもよい。
図1(a)を参照して、天板10の四隅には、コナー形状を裏ボード部材46から垂直下方向にむかって延設された垂幕状の規制形状12aが形成されている。
【0036】
この規制形状12aは、脚部30に天板10が掛止された際に脚部30の角部分に掛止し、脚部30上で天板10がずれないように規制する。
図1(b)では、脚部30と1つの規制形状12aが掛止した状態を示した。
図1(b)では天板10を省略し、天板10の1つの規制形状12aだけを示した。
【0037】
また、
図1(c)は長脚材20bと短脚材20cが嵌合され、天板10が載置された状倍を裏側から見た図である。規制形状12aが長脚材20bと短脚材20cの端部に当接し、天板10の動きを規制している様子を示す。
【0038】
図2(b)には、天板10の隅端部の厚み方向の断面(
図1(a)B-B断面)を示す。規制形状12aは、モールド樹脂を使い、モールド樹脂部50に連続して形成される。したがって、規制形状12aは、付加形状部52と言える。モールド樹脂部50に連続して形成されていれば、どのような形状であってもよい。また、付加形状部52は天板10だけでなく、脚材20に形成されていてもよい。
【0039】
モールド樹脂部50は、貼り合わせ材48を形成した後に、モールド樹脂部50に相当する型を木口48a部分に取り付け、型内にモールド樹脂を射出することで形成される。この際に型に付加形状部52に相当する形状も形成されてあれば、モールド樹脂部50の形成と同時に付加形状部52を形成することができる。
【0040】
モールド樹脂部50で利用できるモールド樹脂は、発泡板42で利用できる樹脂を利用することができる。しかし、ベッド部材40の木口48aは物に当たる若しくは擦れるといった偶発的な外力が加えられる場合がある。また、脚材20の係止溝22では脚材20同士を係止する際にモールド樹脂部50同士が摺接する。したがって、耐久性の高いウレタン樹脂はモールド樹脂部50に好適に利用できる材料である。
【0041】
モールド樹脂部50の厚み50tは、貼り合わせ材48の木口48aから水が浸入できない厚さであれば、特に上限はない。ただし、モールド樹脂の比重は1g/cm3以上ある場合が多く、モールド樹脂部50の厚み50tが厚くなるほど簡易組み立てベッド1としての比重は大きくなる。モールド樹脂部50は、通常2~10mm程度の厚み50tが好適である。
【0042】
一方、モールド樹脂部50の形成長50Lは、貼り合わせ材48の厚み48tより厚く形成してもよい。ここで形成長50Lとは、貼り合わせ材48の木口48aを覆ったモールド樹脂のベッド部材40の厚み方向の長さであり、ベッド部材40を木口48a側から見た時の厚みである(
図2(a)参照)。
【0043】
例えば、脚材20では、相欠け継ぎを行うため、ガタつきなく連結しようとすると係止溝22は精度の高い加工が要求される。しかし、モールド樹脂部50の形成長50Lが、貼り合わせ材48の厚み48tより厚く形成されていれば、厚い分だけ寸法誤差を吸収させることができる。もちろん、モールド樹脂部50の形成長50Lは、貼り合わせ材48の厚み48tと同じであってもよい。
【0044】
再度
図2(a)、
図2(b)を参照して、型内に射出されたモールド樹脂は溶融状態で型内に広がり、貼り合わせ材48の全ての木口48aを覆う。この際に、モールド樹脂は、発泡板42の内部に一部侵入する。モールド樹脂が侵入した領域を侵入領域48fと呼ぶ。発泡板42とモールド樹脂は、侵入領域48fが形成されることで、強固に結合される。
【0045】
中心層が木材の場合は、側面の補強には木口化粧材と呼ばれる、テープ状若しくは平板状の材料が接着される。しかし、天板10および脚材20を構成するベッド部材40では、中心層が発泡板42であるので、接着剤で木口化粧材を貼り付けたのでは、十分な接着強度を得ることはできない。
【0046】
しかし、本発明のように、貼り合わせ材48の木口48aをモールドすることで、発泡板42に侵入領域48fを形成させれば、モールド樹脂部50と発泡板42は、十分強い接着強度を有することができる。
【0047】
また、本発明に係る簡易組み立てベッド1は、天板10および5枚の脚材20を合わせた比重が0.6g/cm3以下であるのが望ましい。総重量を軽くすることができ、組立分解する際に、大きな力が不要だからである。また、0.6g/cm3以下であれば、十分に水にも浮く。ベッド部材40の比重は、ベッドとして要求される強度から決定される各部の寸法で決まる。比重は小さければ小さいほどよいが、ゼロやマイナスはあり得ないので、下限値を言及する意味はない。現実的には0.1g/cm3以上若しくは0.3g/cm3以上が現実的な下限であると言える。
【0048】
本発明に係る簡易組み立てベッド1の組立方は、
図1に示す通りであり、天板10および脚材20を含めた6つのベッド部材40は見るだけで、組み立て方は容易に想像がつく。そのため組立の簡易性は非常に高い。
【0049】
図1に示す様に天板10と6つの脚材20は見ただけで組立は容易であるが、脚材20の相欠け継ぎを行う溝22同士には同じ色のモールド樹脂部50を設けてもよい。例えば、長脚材20aと長脚材20bの端の係止溝22dと短脚材20cの係止溝22dのモールド樹脂部50を同じ色に着色し、その他の係止溝22と識別可能にする。このようにしておくことで、2つの長脚材20a、20bと短脚材20cが容易に連結できる。2つの長脚材20a、20bと短脚材20cでコの字形状の連結体が形成できれば、他の短脚材20d、20eの係止溝22dを長脚材20a、20bの他の係止溝22uと係止させるのは容易となる。
【0050】
図3には、本発明に係る簡易組み立てベッドの他の態様を示す。簡易組み立てベッド2では、天板10は2枚に分かれる。それぞれ天板14a、天板14bとする。それぞれの天板14a、14bに対して4枚の脚材20が用意される。それぞれ
図3(a)のように、符号20aa、20ab、20ba、20bb、20c、20d、20e、20fとする。これらの脚材20を組み合わせて脚部30となる。すなわち、簡易組み立てベッド2の脚部30は、8枚の脚材20で形成される。なお、脚部30は、
図1の脚部30の構成であってもよい。
【0051】
1枚の天板14と4枚の脚材20を合わせると、卓袱台の様な形状となる。これを「半身台3」と呼ぶ。今、
図3の2つの半身台3を便宜上それぞれ第1半身台3a、第2半身台3bと呼ぶ。半身台3同士を連結することで、簡易組み立てベッド2となる。それぞれの半身台3の天板14の対向する木口48aには、連結のための付加形状部52が設けられる。
【0052】
図3(b)には、天板14aおよび天板14bの連結する端部の側面拡大図を示す。天板14a、14bの木口48aには、それぞれモールド樹脂部50と連続して互いに掛止し合うカギ形状の連結形状12bが形成されている。この連結形状12bは付加形状部52である。この連結形状12bのカギ形状同士を掛止することで、第1半身台3aと第2半身台3bの天板14a、14b同士は連結される。
【0053】
連結形状12bが形成された反対の端辺には、
図1で示したカギ型の規制形状12aが形成されている。第1半身台3aおよび第2半身台3bの天板14a、14b同士は連結形状12bで連結されている(
図3(a)参照)。一方、天板14の他方の端部では、規制形状12aによって、天板10と脚部30が固定される。これらの関係によって簡易組み立てベッド2も一体の簡易組み立てベッドとして機能する。
【0054】
図4(a)には、脚材20(20g、20h)が2枚の場合の簡易組み立てベッド4を示す。脚材20は、中央に係止溝22が形成され、平面視X字のように相欠け継ぎで係止される。天板は
図1と同じ天板10若しくは
図3と同じ天板14であってよい。このように、脚部30は少なくとも2枚以上の脚材20であれば、簡易組み立てベッド4を構成することができる。
【0055】
図4(b)には、天板が縦長に2分された天板14cおよび天板14dで形成される場合の簡易組み立てベッド5を示す。脚部30は
図1の脚部30としてよい。もちろん、
図3および
図4(a)の脚部30であってもよい。天板14cと天板14dとの連結部には
図3で示した連結形状12bが形成されている。このように、天板を分割する際には、長手に沿って分割してもよい。
【0056】
本発明に係る簡易組み立てベッドは、ベッドとして利用できるほか、多目的テーブルとしても利用できる。例えば、
図1で示した簡易組み立てベッド1の長さを
図3の半身台3程度の長さにすることで多目的テーブルとして利用できる。多目的テーブルの利用方法としては、卓袱台といった利用方法がある。
【0057】
図5(a)には、
図1で示した天板10から規制形状12aを除いた天板16を示す。断面構造は
図2に示した通りである。この天板16は放射線を楽に通過させることができ、医療用の搬送軽量ボードとして好適に利用することができる。
【0058】
また、
図5(b)には、
図5(a)の天板16のモールド樹脂部50に、付加形状部52として足12cを形成した場合を示す。
図5(b)は、表裏をひっくり返して示している。
図5(c)には、付加形状部52の拡大図、
図5(d)にはそのC-C断面図を示す。
【0059】
このような付加形状部52で足12cを形成することで、地面に直に置かれた天板16に例えばけが人を載せて、持ち上げる際の手掛かりを作ることができる。すなわち、モールド樹脂部50に付加形状部52(足12c)を加えた天板16は、それ自体で治療の現場で利用に供されることができる。このような天板16は医療用搬送軽量ボードと呼ぶことができる。また、この医療用搬送軽量ボードは、
図3や
図4(b)で示したように、分割できるようにしてもよい。
【0060】
天板16を利用した医療用搬送軽量ボードは、金属を全く使用していないので、このままCTやMRIで使用することができる。つまり、救急現場でこの医療用搬送軽量ボードに載置された負傷者を、他のストレッチャー等に乗せ換えることなく、CTやMRIで精密検査を行うことができる。
【実施例】
【0061】
実際に
図1のタイプの簡易組み立てベッドを作製し、荷重試験を行った。
図6に簡易組み立てベッドの平面図(
図6(a))および側面図(
図6(b))を示す。ベッド部材40は、表ボード部材44および裏ボード部材46共に厚さ2mmのPG板(ガラスクロス積層板)である。発泡版42はポリウレタンの発泡体である。モールド樹脂部はポリウレタンである。天板10は800mm×2000mm、脚部30の高さは300mmである。天板10および脚部30を合わせた重量は7kgであった。
【0062】
荷重ヘッド60は短脚材20cと20dの間、20dと20eの間にそれぞれ荷重PF(kN)の1/2ずつを印加するように調節した。天板10の真ん中の沈み量を荷重PFによる変位δ(mm)とした。荷重試験の結果を
図7に示す。
【0063】
図7を参照し、横軸は変位δ(mm)であり、縦軸は荷重PF(kN)である。荷重を印加していくと変位量は増加し、10kNを超えたところで破壊が生じた。破壊が生じる直前が最大耐力となる。この試験では、最大耐力が10kN以上となった。この値はほぼ1t(1000kg重)に相当し、簡易組み立てベッドとしては十分な耐力を有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る簡易組み立てベッドは、緊急用のベッドとして好適に利用できる他、軽量で運搬性に優れているので、普通のベッドとしても利用できる。また、本発明に係る簡易組み立てベッドは、多目的テーブルとして利用することができる。さらに、本発明に係る簡易組み立てベッドの天板は、医療用軽量ボードとして利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 簡易組み立てベッド
2 簡易組み立てベッド
4 簡易組み立てベッド
3 半身台
3a 第1半身台
3b 第2半身台
10 天板
12a 規制形状
12b 連結形状
12c 足
14 天板
14a 天板
14b 天板
16 天板
20、20a、20b、20c、20d、20e 脚材
22 係止溝
30 脚部
40 ベッド部材
42 発泡板
44 表ボード部材
46 裏ボード部材
48 貼り合わせ材
48t 厚み
48a 木口
48f 侵入領域
50 モールド樹脂部
50L 形成長
50t 厚み
52 付加形状部
60 荷重ヘッド