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7580715スラリー、スラリーの製造方法、球状粒子の製造方法、および球状粒子
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  • -スラリー、スラリーの製造方法、球状粒子の製造方法、および球状粒子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】スラリー、スラリーの製造方法、球状粒子の製造方法、および球状粒子
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20241105BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20241105BHJP
   B22F 9/02 20060101ALN20241105BHJP
   C22C 32/00 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F1/14 400
B22F9/02 A
B22F9/02 Z
C22C32/00 X
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020180009
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070764
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-10-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度~令和4年度、科学技術振興機構、未来社会創造事業、「ゲームチェンジングテクノロジー」による低炭素社会の実現、凍結乾燥POEM法による積層造形用合金粉末の開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】野村 直之
(72)【発明者】
【氏名】周 偉偉
(72)【発明者】
【氏名】周 振興
(72)【発明者】
【氏名】吉見 享祐
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002445(JP,A)
【文献】佐藤智史ら,超音波とウルトラファインバブルを用いた金ナノ粒子の合成,ソノケミストリー討論会講演論文集,日本,日本ソノケミストリー学会,2017年,26巻(2017),p.29-30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 9/30
C22C 27/04
C22C 32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に、マイナスに帯電した分散剤と、マイナスに帯電した1種類または複数種類の粒子とを含み、
前記粒子は、Moから成る粒子と、Siから成る粒子と、TiCから成る粒子と、MoBから成る粒子とを有することを
特徴とするスラリー。
【請求項2】
前記分散剤は、ナノバブルから成ることを特徴とする請求項記載のスラリー。
【請求項3】
液体に、前記液体中でマイナスに帯電する分散剤と、前記液体中でマイナスに帯電する1種類または複数種類の粒子とを加えることを特徴とし、
前記粒子は、Moから成る粒子と、Siから成る粒子と、TiCから成る粒子と、MoBから成る粒子とを有することを
特徴とするスラリーの製造方法。
【請求項4】
前記分散剤は、ナノバブルから成ることを特徴とする請求項記載のスラリーの製造方法。
【請求項5】
液体中に、マイナスに帯電した分散剤と、マイナスに帯電した1種類または複数種類の粒子とを含むスラリーの液滴を滴下し、その液滴を凍結させた後、凍結乾燥させることにより、球状の粒子を得ることを特徴とする球状粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2記載のスラリーの液滴を滴下し、その液滴を凍結させた後、凍結乾燥させることにより、球状の粒子を得ることを特徴とする球状粒子の製造方法。
【請求項7】
液体振動装置を用いて前記液滴を滴下し、その液滴を液体窒素内で凍結させることを特徴とする請求項5または6記載の球状粒子の製造方法。
【請求項8】
凍結乾燥パルス圧力付加オリフィス法を用いて、前記スラリーから前記球状の粒子を得ることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の球状粒子の製造方法。
【請求項9】
前記球状の粒子は、含有するボイドの割合が10%以下であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の球状粒子の製造方法。
【請求項10】
前記球状の粒子は、Mo-Si-B-TiC合金から成ることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載の球状粒子の製造方法。
【請求項11】
Mo-Si-B-TiC合金から成り、含有するボイドの割合が10%以下であることを特徴とする球状粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー、スラリーの製造方法、球状粒子の製造方法、および球状粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中に粒子を分散させたスラリーは、インクや塗料、食品、化粧品など、様々な分野で利用されている。また、スラリーは、純水中に粒子を分散させたものが一般的である(例えば、特許文献1または2参照)。
【0003】
なお、スラリーは、いわゆるパルス圧力付加オリフィス法(pulsated orifice ejection method;POEM)を利用して、単分散粒子を製造するための原料としても利用されている(例えば、特許文献3乃至5参照)。このPOEM法によれば、数10~数100μmの粒度が揃った粒子を製造することができる。また、このPOEM法を発展させた、凍結乾燥POEM法(Freeze-dry pulsated orifice ejection method;FD-POEM)が、本発明者等により開発されている(例えば、非特許文献1参照)。このFD-POEM法は、液体振動装置から金属粒子またはセラミックス粒子を含有したスラリー液滴を滴下し、その液滴を液体窒素内にて凍結させ、これを凍結乾燥することにより、単分散粒子を得る方法である。このFD-POEM法によれば、液体の表面張力を利用して、球状の粒子を得ることができる。また、スラリー中の複数種類の粒子の混合比を変化させたスラリーを準備することにより、製造する球状粒子の組成を自由に制御することができる。なお、製造された球状粒子は、積層造形の原料として利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-110201号公報
【文献】特開2020-50534号公報
【文献】特開2002-155305号公報
【文献】特開2004-182477号公報
【文献】特開2006-126776号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】野村直之、周偉偉、周振興、吉見享祐、「超高温耐熱材料MoSiBTiC合金のレーザ三次元積層造形への試み」、セラミックス、2020年、55、No.2、p.90-92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載のようなスラリーは、純水中に分散させた粒子が、例えば、数10分以内といった、短時間で沈殿してしまうという課題があった。また、このため、粒子の濃度を高くすることができないという課題もあった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、比較的長時間、粒子を安定して分散させることができ、より高い濃度でも粒子を分散させることができるスラリー、およびスラリーの製造方法、ならびに、そのスラリーを利用した球状粒子の製造方法、および球状粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るスラリーは、液体中に、マイナスに帯電した分散剤と、マイナスに帯電した1種類または複数種類の粒子とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るスラリーの製造方法は、液体に、前記液体中でマイナスに帯電する分散剤と、前記液体中でマイナスに帯電する1種類または複数種類の粒子とを加えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るスラリーは、本発明に係るスラリーの製造方法により好適に製造することができる。本発明に係るスラリーは、いずれもマイナスに帯電した分散剤と粒子とを液体中に含んでいるため、分散剤と各粒子、および各粒子同士が、液体中で互いに反発し合う。このため、各粒子が集まりにくく、また、各粒子が浮いて沈殿しにくい。これにより、本発明に係るスラリーは、分散剤および各粒子のうちの少なくともいずれか1つがマイナスに帯電していないものと比べて、長時間、粒子を安定して分散させることができる。また、より高い濃度でも粒子を分散させることができる。
【0011】
本発明に係るスラリーおよびスラリーの製造方法で、各粒子は、液体中でマイナスに帯電するものであれば、いかなるものであってもよい。各粒子は、例えば、金属粒子であってもよく、金属以外の粒子であってもよい。また、各粒子は、例えば、Moから成る粒子と、Siから成る粒子と、TiCから成る粒子と、MoBから成る粒子とを有していてもよい。なお、本発明に係るスラリーおよびスラリーの製造方法は、スラリーの液体中でプラスに帯電する分散剤や粒子を含んでいないことが好ましい。
【0012】
本発明に係るスラリーおよびスラリーの製造方法で、分散剤は、液体中でマイナスに帯電するものであれば、いかなるものから成っていてもよい。分散剤は、例えば、酸化カーボンナノチューブ(CNT)であってもよく、大きさが1μm以下の微細な気泡から成るナノバブルであってもよい。
【0013】
本発明に係る球状粒子の製造方法は、本発明に係るスラリーの液滴を滴下し、その液滴を凍結させた後、凍結乾燥させることにより、球状の粒子を得ることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る球状粒子の製造方法によれば、スラリーに含まれる粒子の各成分を有する球状の粒子を得ることができる。また、得られる球状粒子が含有するボイドの割合を、10%以下にすることができる。また、スラリー中の複数種類の粒子の混合比を変化させることにより、得られる球状粒子の組成を制御することができる。例えば、各粒子が、Moから成る粒子と、Siから成る粒子と、TiCから成る粒子と、MoBから成る粒子とから成る場合、Mo-Si-B-TiC合金(公称組成は、Mo-5Si-10B-10TiC(mol.%))の球状粒子を製造することができる。
【0015】
本発明に係る球状粒子の製造方法は、凍結乾燥パルス圧力付加オリフィス法(FD-POEM法)を用いて、前記スラリーから前記球状の粒子を得ることが好ましく、例えば、液体振動装置を用いて前記液滴を滴下し、その液滴を液体窒素内で凍結させることが好ましい。なお、本発明に係るスラリーは、球状粒子の原料に限らず、組成を調整することにより、インクや塗料、食品、化粧品などにも利用することができる。
【0016】
本発明に係る球状粒子は、Mo-Si-B-TiC合金から成り、含有するボイドの割合が10%以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る球状粒子は、本発明に係るスラリーの製造方法により好適に製造することができる。本発明に係る球状粒子は、含有するボイドの割合が8%以下であってもよく、4%以上または5%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、比較的長時間、粒子を安定して分散させることができ、より高い濃度でも粒子を分散させることができるスラリー、およびスラリーの製造方法、ならびに、そのスラリーを利用した球状粒子の製造方法、および球状粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態のスラリーの製造方法の、(a)分散させる粒子を容器に入れた状態を示す斜視図、(b)容器の中に液体と分散剤とを入れて撹拌している状態を示す斜視図、(c)液体中での分散剤と各粒子の状態を示す説明図である。
図2】本発明の実施の形態のスラリーの製造方法の、分散剤であるナノバブルの水中でのゼータ電位(Zeta potential)の経時変化を示すグラフである。
図3】本発明の実施の形態のスラリーの製造方法に関し、分散剤を含まない純水を用い、濃度が(a)5 vol%、(b)8 vol%のスラリーを使用して、本発明の実施の形態の球状粒子の製造方法により製造された球状粒子の電子顕微鏡写真である。
図4】本発明の実施の形態のスラリーの製造方法により、ナノバブルを含む水を用い、濃度が(a)5 vol%、(b)15 vol%、(c)20 vol%のスラリーを使用して、本発明の実施の形態の球状粒子の製造方法により製造された球状粒子の電子顕微鏡写真である。
図5】(a) 図3(a)の球状粒子、(b) 図4(b)の球状粒子、(c) 図4(c)の球状粒子の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面および実施例等に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図5は、本発明の実施の形態のスラリー、およびスラリーの製造方法、ならびに、球状粒子の製造方法、および球状粒子を示している。
本発明の実施の形態のスラリーの製造方法は、液体に、その液体中でマイナスに帯電する分散剤と、その液体中でマイナスに帯電する1種類または複数種類の粒子とを加えて撹拌する。
【0021】
図1に示す具体的な一例では、まず、容器1の中に、分散させたい粒子11a、11b、11cを入れる(図1(a)参照)。ここでは、3種類の粒子11a、11b、11cを入れているが、粒子の種類は、1種類であってもよく、2種類または4種類以上であってもよい。次に、容器1の中に、液体と分散剤とを入れ、撹拌する(図1(b)参照)。ここでは、分散剤としてナノバブルを用い、容器1の中にナノバブルを含む水12を入れている。なお、分散剤は、ナノバブルに限らず、液体中でマイナスに帯電するものであれば、酸化カーボンナノチューブ(CNT)など、いかなるものであってもよい。また、撹拌する際には、いかなる方法で撹拌してもよく、例えば、撹拌羽根2や超音波振動などを用いて撹拌してもよい。
【0022】
こうして、本発明の実施の形態のスラリーの製造方法により、液体中に、マイナスに帯電した分散剤と、マイナスに帯電した1種類または複数種類の粒子とを含む、本発明の実施の形態のスラリーを製造することができる。
【0023】
本発明の実施の形態のスラリーは、いずれもマイナスに帯電した分散剤と粒子とを液体中に含んでいるため、図1(c)に示すように、分散剤のナノバブル12aと各粒子11a、11b、11c、および各粒子11a、11b、11c同士が、液体中で互いに反発し合う(図1(c)中の両矢印参照)。このため、各粒子11a、11b、11cが集まりにくく、また、各粒子11a、11b、11cが浮いて沈殿しにくい。これにより、本発明の実施の形態のスラリーは、分散剤および各粒子のうちの少なくともいずれか1つがマイナスに帯電していないものと比べて、長時間、粒子を安定して分散させることができる。また、より高い濃度でも粒子を分散させることができる。
【0024】
本発明の実施の形態のスラリーおよびスラリーの製造方法で、各粒子は、液体中でマイナスに帯電するものであれば、いかなるものであってもよい。各粒子は、例えば、金属粒子であってもよく、金属以外の粒子であってもよい。
【0025】
本発明の実施の形態の球状粒子の製造方法は、本発明の実施の形態のスラリー凍結乾燥パルス圧力付加オリフィス法(FD-POEM法)により、本発明の実施の形態のスラリーを用いて、球状の粒子を得ることができる。すなわち、本発明の実施の形態のスラリーの液滴を、液体振動装置を用いて滴下し、その液滴を液体窒素内で凍結させた後、凍結乾燥させることにより、球状の粒子を得ることができる。
【0026】
本発明の実施の形態の球状粒子の製造方法によれば、スラリーに含まれる粒子の各成分を有する球状の粒子を得ることができる。また、得られる球状の粒子が含有するボイドの割合を、10%以下にすることができる。また、スラリー中の複数種類の粒子の混合比を変化させることにより、得られる球状粒子の組成を制御することができる。例えば、各粒子が、Moから成る粒子と、Siから成る粒子と、TiCから成る粒子と、MoBから成る粒子とから成る場合、Mo-Si-B-TiC合金から成る本発明の実施の形態の球状粒子を製造することができる。
【実施例1】
【0027】
本発明の実施の形態のスラリーの製造方法によりスラリーを製造し、そのスラリーを用いて、本発明の実施の形態の球状粒子の製造方法により球状の粒子を製造した。まず、スラリー中に分散させる粒子として、Moから成る粒子、Siから成る粒子、TiCから成る粒子、MoBから成る粒子の4種類の粒子と、ナノバブルを含む水とを準備した。ここで、スラリーの液体が水であり、分散剤がナノバブルである。また、ナノバブルを含む水は、市販のものを使用した。図2に示すように、ナノバブルは、液体中でマイナスに帯電し、その状態を比較的長期にわたって維持できる特徴を有している。また、4種類の粒子は、いずれも液体中でマイナスに帯電する。
【0028】
ナノバブルを含む水に対して、4種類の粒子を、合わせて5 vol%、8 vol%、10 vol%、15 vol%、20 vol%、30 vol%の濃度で添加して撹拌し、6種類のスラリーを製造した。また、比較のため、ナノバブルを含まない純水に対して、同様の濃度で4種類の粒子を添加して撹拌し、6種類のスラリーを製造した。撹拌から10分後の各スラリーの状態を観察した結果を、表1に示す。表1中の×印は、粒子が沈殿している状態を、○印は、粒子の沈殿が認められない状態を示している。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、純水を用いた場合、撹拌から10分後には、濃度が10 vol%以上のスラリーで、粒子の沈殿が確認された。なお、濃度が8 vol%のスラリーは、撹拌から10分後には粒子の沈殿は認められなかったが、30分以内に粒子の沈殿が確認された。これに対し、ナノバブルを含む水を用いた場合、撹拌から10分後には、濃度が30 vol%のスラリーで、粒子の沈殿が確認されたが、それより低い濃度のスラリーでは、粒子の沈殿は認められなかった。なお、濃度が20 vol%のスラリーは、撹拌から10分後には粒子の沈殿は認められなかったが、撹拌から30分以内に粒子の沈殿が確認された。また、濃度が15 vol%のスラリーは、撹拌から30分後には粒子の沈殿は認められなかったが、撹拌から60分以内に粒子の沈殿が確認された。
【0031】
製造されたスラリーのうち、撹拌から10分後でも粒子が沈殿していないものを使用して、本発明の実施の形態の球状粒子の製造方法により球状の粒子を製造した。まず、製造されたスラリーを、液体振動装置のオリフィス(液溜め)に供給し、そのスラリーを、ダイアフラム(薄板)を用いて、10 Hzの条件で加振して、オリフィスに設けられた直径600μmのノズルから液滴を射出した。射出した液滴を液体窒素中に滴下して凍結させた後、凍結した粒子をとり出し、凍結乾燥機により乾燥させて、球状の粒子を製造した。なお、製造された球状粒子は、MoSiBTiC合金である。
【0032】
純水を用い、濃度が5 vol%、8 vol%のスラリー、および、ナノバブルを含む水を用い、濃度が5 vol%、15 vol%、20 vol%のスラリーを使用して製造された球状粒子を、図3および図4に示す。また、純水を用い、濃度が5 vol%のスラリー、ならびに、ナノバブルを含む水を用い、濃度が15 vol%および20 vol%のスラリーを使用して製造された球状粒子の粒度分布を、図5に示す。
【0033】
図3および図4に示すように、スラリーの濃度が高くなるに従って、隙間が小さくなり、密度が高くなっていることが確認された。また、スラリーの濃度が高くなるに従って、より球形に近くなることも確認された。また、図5に示すように、スラリーの濃度が高くなるに従って、粒径が小さくなることも確認された。
【0034】
次に、純水を用い、濃度が5 vol%のスラリー、および、ナノバブルを含む水を用い、濃度が10 vol%、15 vol%、20 vol%のスラリーを使用して製造された球状粒子に対して、含有するボイドの割合(ボイド率)の測定を行った。ボイド率の測定は、サブミクロンフォーカスX線検査装置(マース東研X線検査(株)製「TUX-3200N」)を用いたX線CT計測により行い、ボイド率の算出には、3D画像解析ソフトウエア(日本ビジュアルサイエンス株式会社製「ExFact VR 2.1」)を用いた。
【0035】
その結果、純水を用い、濃度が5 vol%のスラリーを使用して製造された球状粒子のボイド率は、12.5 %であったのに対し、ナノバブルを含む水を用い、濃度が10 vol%、15 vol%、20 vol%のスラリーを使用して製造された球状粒子のボイド率は、それぞれ 7.4 %、5.3 %、6.2 %であった。このことから、ナノバブルを含む水を用い、濃度が高いスラリーを使用して製造された球状粒子は、純水を用いたものに比べて、ボイド率が低減されていることが確認された。
【符号の説明】
【0036】
1 容器
2 撹拌羽根

11a、11b、11c 粒子
12 ナノバブルを含む水
12a ナノバブル
図1
図2
図3
図4
図5