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特許7580718中古物件購入価格決定システム、中古物件購入価格決定方法、及び中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】中古物件購入価格決定システム、中古物件購入価格決定方法、及び中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/16 20240101AFI20241105BHJP
【FI】
G06Q50/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020193607
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082193
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】523412315
【氏名又は名称】マリアージュ賃貸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大輔
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-164662(JP,A)
【文献】特開2004-288165(JP,A)
【文献】特開2003-187129(JP,A)
【文献】特開2010-231325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
賃貸に供されている中古物件の購入価格を決定するための中古物件購入価格決定システムであって、
前記購入価格の初期値として基準購入価格を設定する基準購入価格設定手段と、
前記中古物件の賃貸料を設定する賃貸料設定手段と、
前記中古物件に現在入居中または入居予定の借主を購入希望者として当該中古物件の賃貸期間に応じた割引率を設定する割引率設定手段と、
前記基準購入価格から前記割引率に基づく割引額を減算することで前記購入価格を決定する購入価格決定手段と、を備え、
前記割引率設定手段は、前記賃貸期間として所定期間が経過する毎に、当該所定期間に対応する前記割引率に加算値を加算し、加算結果を次の所定期間に対応する割引率として設定するとともに、前記賃貸期間以外の前記中古物件の情報に応じて前記加算値を変更した上で前記割引率を設定可能とすることを特徴とする、中古物件購入価格決定システム。
【請求項2】
前記割引率設定手段は、前記中古物件の情報として、当該中古物件の建て替え又はリフォームについての制限有無に応じて、前記加算値として異なる値を適用することを特徴とする、請求項1に記載の中古物件購入価格決定システム。
【請求項3】
前記割引率設定手段は、前記中古物件の情報として、当該中古物件の耐用年数が満了している場合、満了していない場合よりも前記加算値として大きい値を適用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の中古物件購入価格決定システム。
【請求項4】
賃貸に供されている中古物件の購入価格を決定するための中古物件購入価格決定システムが実行する中古物件購入価格決定方法であって、
前記購入価格の初期値として基準購入価格を設定する基準購入価格設定ステップと、
前記中古物件の賃貸料を設定する賃貸料設定ステップと、
前記中古物件に現在入居中または入居予定の借主を購入希望者として当該中古物件の賃貸期間に応じた割引率を設定する割引率設定ステップと、
前記基準購入価格から前記割引率に基づく割引額を減算することで前記購入価格を決定する購入価格決定ステップと、を含み、
前記割引率設定ステップにおいては、前記賃貸期間として所定期間が経過する毎に、当該所定期間に対応する前記割引率に加算値を加算し、加算結果を次の所定期間に対応する割引率として設定するとともに、前記賃貸期間以外の前記中古物件の情報に応じて前記加算値を変更した上で前記割引率を設定可能とすることを特徴とする、中古物件購入価格決定方法。
【請求項5】
賃貸に供されている中古物件の購入価格を決定するためにコンピュータに実行させるための中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラムであって、
前記購入価格の初期値として基準購入価格を設定する基準購入価格設定手段として機能させるためのプログラムと、
前記中古物件の賃貸料を設定する賃貸料設定手段として機能させるためのプログラムと、
前記中古物件に現在入居中または入居予定の借主を購入希望者として当該中古物件の賃貸期間に応じた割引率を設定する割引率設定手段として機能させるためのプログラムと、
前記基準購入価格から前記割引率に基づく割引額を減算することで前記購入価格を決定する購入価格決定手段として機能させるためのプログラムと、を含み、
前記割引率設定手段として機能させるためのプログラムは、前記賃貸期間として所定期間が経過する毎に、当該所定期間に対応する前記割引率に加算値を加算し、加算結果を次の所定期間に対応する割引率として設定するとともに、前記賃貸期間以外の前記中古物件の情報に応じて前記加算値を変更した上で前記割引率を設定可能とするためのプログラムが含まれることを特徴とする、中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中古物件としての賃貸住宅の購入にあたってその購入価格を適正に決定することが可能な中古物件購入価格決定システム、中古物件購入価格決定方法、及び中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅購入希望者が拠出可能な資金や借家として賃貸する際の家賃等から購入予定の住宅の定価より安い住宅購入代金(購入価格)を算出し、それに応じた契約条件を提示することによって住宅購入を支援するためのシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3411027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のシステムでは、賃貸期間に応じて購入価格がどのように推移するのかが分かり難いので、利用者にとってより分かり易い購入価格決定の仕組みを構築する余地があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、利用者にとってより分かり易い購入価格決定の仕組みを構築し、ひいては中古物件の購入価格を適正に決定することができる中古物件購入価格決定システム、中古物件購入価格決定方法、及び中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような特徴を有する。
【0007】
(1) 貸に供されている中古物件の購入価格を決定するための中古物件購入価格決定システムであって、
前記購入価格の初期値として基準購入価格を設定する基準購入価格設定手段と、
前記中古物件の賃貸料を設定する賃貸料設定手段と、
前記中古物件に現在入居中または入居予定の借主を購入希望者として当該中古物件の賃貸期間に応じた割引率を設定する割引率設定手段と、
前記基準購入価格から前記割引率に基づく割引額を減算することで前記購入価格を決定する購入価格決定手段と、を備え、
前記割引率設定手段は、前記賃貸期間として所定期間が経過する毎に、当該所定期間に対応する前記割引率に加算値を加算し、加算結果を次の所定期間に対応する割引率として設定するとともに、前記賃貸期間以外の前記中古物件の情報に応じて前記加算値を変更した上で前記割引率を設定可能とすることを特徴とする、中古物件購入価格決定システム。
【0008】
(1)の発明では、賃貸に供されている中古物件の購入価格を決定するための中古物件購入価格決定システムが提供される。中古物件購入価格決定システムは、基準購入価格設定手段と、賃貸料設定手段と、割引率設定手段と、購入価格決定手段とを備える。
基準購入価格設定手段は、購入価格の初期値として基準購入価格を設定する。
賃貸料設定手段は、中古物件の賃貸料を設定する。
割引率設定手段は、中古物件に現在入居中または入居予定の借主を購入希望者として当該中古物件の賃貸期間に応じた割引率を設定し、賃貸期間として所定期間が経過する毎に、当該所定期間に対応する割引率に加算値を加算し、加算結果を次の所定期間に対応する割引率として設定するとともに、賃貸期間以外の中古物件の情報に応じて加算値を変更した上で割引率を設定可能とする
購入価格決定手段は、基準購入価格から割引率に基づく割引額を減算することで購入価格を決定する。
【0009】
(1)の発明によれば、賃貸住宅といった中古物件の購入価格を決定する際、賃貸期間として所定期間が経過する毎に加算値によって累次加算された割引率が設定され、所定期間毎に各々の割引率に応じた割引額が求められる。これにより、所定期間毎に各々の割引額を基準購入価格から減算することで所定期間毎に各々応じた購入価格が決定されるので、賃貸期間に応じて購入価格の推移を分かり易く提示することができるとともに、賃貸住宅の購入希望者及び売却予定オーナーにとってより分かり易い購入価格決定の仕組みを構築することができ、ひいては中古物件としての賃貸住宅の購入価格を適正に決定することができる。
【0010】
(2)前記割引率設定手段は、前記中古物件の情報として、当該中古物件の建て替え又はリフォームについての制限有無に応じて、前記加算値として異なる値を適用することを特徴とする、(1)に記載の中古物件購入価格決定システム。
【0011】
(2)の発明によれば、中古物件の建て替え又はリフォームについての制限有無に応じて異なる加算値が適用され、そのような制限の有無に応じて適正に累次加算された割引率が設定されるので、この種の制限有無に対応しつつも所定期間毎に各々応じた適正な購入価格を決定することができる。
【0012】
(3)前記割引率設定手段は、前記中古物件の情報として、当該中古物件の耐用年数が満了している場合、満了していない場合よりも前記加算値として大きい値を適用することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の中古物件購入価格決定システム。
【0013】
(3)の発明によれば、中古物件の耐用年数が満了している場合には、満了していない場合よりも小さい加算値が適用されるので、耐用年数の満了・未了に応じて大小異なる加算値を用いることによっても所定期間毎に各々応じた適正な購入価格を決定することができる。
【0014】
(4) 賃貸に供されている中古物件の購入価格を決定するための中古物件購入価格決定システムが実行する中古物件購入価格決定方法であって、
前記購入価格の初期値として基準購入価格を設定する基準購入価格設定ステップと、
前記中古物件の賃貸料を設定する賃貸料設定ステップと、
前記中古物件に現在入居中または入居予定の借主を購入希望者として当該中古物件の賃貸期間に応じた割引率を設定する割引率設定ステップと、
前記基準購入価格から前記割引率に基づく割引額を減算することで前記購入価格を決定する購入価格決定ステップと、を含み、
前記割引率設定ステップにおいては、前記賃貸期間として所定期間が経過する毎に、当該所定期間に対応する前記割引率に加算値を加算し、加算結果を次の所定期間に対応する割引率として設定するとともに、前記賃貸期間以外の前記中古物件の情報に応じて前記加算値を変更した上で前記割引率を設定可能とすることを特徴とする、中古物件購入価格決定方法。
【0015】
(4)賃貸に供されている中古物件の購入価格を決定するための中古物件購入価格決定方法であって、
前記購入価格の初期値として基準購入価格を設定する基準購入価格設定ステップと、
前記中古物件の賃貸料を設定する賃貸料設定ステップと、
支払い済みの前記賃貸料に基づく割引率を設定する割引率設定ステップと、
前記基準購入価格から前記割引率に基づく割引額を減算することで前記購入価格を決定する購入価格決定ステップと、を含み、
前記割引率設定ステップにおいては、賃貸期間として所定期間が経過する毎に、当該所定期間に対応する前記割引率に加算値を加算し、加算結果を次の所定期間に対応する割引率として設定することを特徴とする、中古物件購入価格決定方法。
【0016】
(5)賃貸に供されている中古物件の購入価格を決定するためにコンピュータに実行させるための中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラムであって、
前記購入価格の初期値として基準購入価格を設定する基準購入価格設定手段として機能させるためのプログラムと、
前記中古物件の賃貸料を設定する賃貸料設定手段として機能させるためのプログラムと、
前記中古物件に現在入居中または入居予定の借主を購入希望者として当該中古物件の賃貸期間に応じた割引率を設定する割引率設定手段として機能させるためのプログラムと、
前記基準購入価格から前記割引率に基づく割引額を減算することで前記購入価格を決定する購入価格決定手段として機能させるためのプログラムと、を含み、
前記割引率設定手段として機能させるためのプログラムは、前記賃貸期間として所定期間が経過する毎に、当該所定期間に対応する前記割引率に加算値を加算し、加算結果を次の所定期間に対応する割引率として設定するとともに、前記賃貸期間以外の前記中古物件の情報に応じて前記加算値を変更した上で前記割引率を設定可能とするためのプログラムが含まれることを特徴とする、中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラム。
【0017】
(5)賃貸に供されている中古物件の購入価格を決定するためにコンピュータに実行させるための中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラムであって、
前記購入価格の初期値として基準購入価格を設定する基準購入価格設定手段として機能させるためのプログラムと、
前記中古物件の賃貸料を設定する賃貸料設定手段として機能させるためのプログラムと、
支払い済みの前記賃貸料に基づく割引率を設定する割引率設定手段として機能させるためのプログラムと、
前記基準購入価格から前記割引率に基づく割引額を減算することで前記購入価格を決定する購入価格決定手段として機能させるためのプログラムと、を含み、
前記割引率設定手段として機能させるためのプログラムは、賃貸期間として所定期間が経過する毎に、当該所定期間に対応する前記割引率に加算値を加算し、加算結果を次の所定期間に対応する割引率として設定するためのプログラムが含まれることを特徴とする、中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラム。
【0018】
(5)の発明によれば、コンピュータに各プログラムを実行せせることにより、(1)の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、利用者にとってより分かり易い購入価格決定の仕組みを構築し、ひいては中古物件の購入価格を適正に決定することができる中古物件購入価格決定システム、中古物件購入価格決定方法、及び中古物件購入価格決定用のコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る中古物件購入価格決定システムの機能構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る中古物件購入価格決定システムによる購入価格決定処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る中古物件購入価格決定システムによる表示結果を説明するための説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る中古物件購入価格決定システムによる表示結果を説明するための説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る中古物件購入価格決定システムによる表示結果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、同一又は類似の構成には同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る中古物件購入価格決定システムの機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係る中古物件購入価格決定システムは、主として、中古物件としての賃貸住宅に現在入居中あるいは入居予定の借主が当該中古物件の購入希望者となり、その購入希望者に対して当該中古物件の購入価格を適正に決定して提示することが可能なシステムである。中古物件には、土地付き古家といった戸建て住宅のほか、中古分譲マンションが含まれる。中古物件購入価格決定システムは、例えば入出力周辺機器を含む一般的なパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)1により実現される。なお、中古物件購入価格決定システムとしては、例えばインターネットに接続可能なウェブサーバにシステムの主要機能を備え、購入希望者のウェブクライアントからのリクエスト等に応じてウェブサーバがウェブブラウザを介してウェブクライアントに購入価格を提示するようなシステム構成としてもよい。
【0023】
PC1は、中古物件を所有する投資家等の貸主、中古物件を仲介する不動産業者、あるいはリフォーム業者が主として用い、中古物件の借主に対してその購入価格を提示するために用いられる。以下の説明においては、貸主、不動産業者、リフォーム業者、借主をまとめて利用者という。PC1は、入力手段10、基準購入価格決定手段11、賃貸料設定手段12、割引率設定手段13、購入価格決定手段14、表示手段15を備える。入力手段10は、キーボード、マウス等により実現される。基準購入価格設定手段11、賃貸料設定手段12、割引率設定手段13、及び購入価格決定手段14は、CPU、ROM、RAM、ストレージデバイス等を含む演算装置により実現される。CPUは、ROMに記憶された基本プログラムやストレージデバイスに記憶されたアプリケーションプログラムに基づき、RAMをデータ作業領域としつつ上記各手段として実行すべき処理を行う。基準購入価格設定手段11、賃貸料設定手段12、割引率設定手段13、及び購入価格決定手段14として機能させるためのプログラムは、ストレージデバイスに記憶されたアプリケーションプログラムにより実現される。表示手段15は、例えば液晶ディスプレイといった表示装置により実現される。なお、特に図示しないが、PC1には、印刷装置が接続されており、表示手段15によって表示された情報を印刷装置で印刷可能としてもよい。
【0024】
入力手段10は、中古物件の購入価格決定に必要な各種の設定情報を利用者が入力する際に用いられる。入力可能な設定情報としては、中古物件の物件名、当該中古物件の賃貸契約年月日、当該中古物件の当初購入価格(初期値)となる基準購入価格(以下の説明において、本実施形態では「買取額」という場合がある)、当該中古物件の賃貸料(以下の説明において、本実施形態では「家賃」という場合がある)、支払い済みの家賃を基にして割引額(以下の説明において、本実施形態では「買取OP割引額」という場合がある)を算定するための割引率(以下の説明において、本実施形態では「買取OP%」という場合がある)、賃貸期間に応じて買取OP%を引き上げるための加算値(以下の説明において、本実施形態では「買取OP%加算値」という場合がある)がある。これらの設定情報のうち、物件名及び賃貸契約年月日については、必須入力事項とされる。一方、その他の設定情報である、買取額、家賃、買取OP%、買取OP%加算値については、基本的に不動産相場等を参考にして利用者により手動で入力されるが、これらの全てを入力する必要はなく、例えば買取OP%加算値は、後述する建築制限事項に係る諸条件を選定情報として入力することで自動的に設定される。
【0025】
基準購入価格設定手段11は、利用者によって入力された買取額を、中古物件購入価格決定用の演算プログラムに規定された基準購入価格として設定する。このような買取額(基準購入価格)は、例えば2000万円を上限とし、後に詳述するが、賃貸期間が例えば15年を超えると買取OP割引額が買取額を超えて購入価格が0円とみなされるような金額とされる。
【0026】
賃貸料設定手段12は、利用者によって入力された家賃を、中古物件購入価格決定用の演算プログラムに規定された賃貸料として設定する。家賃(賃貸料)は、基本的に月額料金として入力・設定される。
【0027】
割引率設定手段13は、利用者によって入力された買取OP%を、中古物件購入価格決定用の演算プログラムに規定された割引率として設定する。買取OP%(割引率)は、基本的に賃貸契約年月日から最初の1年経過した時点での賃貸期間1年度の初期値として入力・設定される。また、割引率設定手段13は、中古物件購入価格決定用の演算プログラムに基づき、賃貸期間が1年経過する毎の賃貸期間2年度、3年度、…に対応する買取OP%(割引率)として買取OP%加算値(加算値)を累積的に加算した率を設定する。
【0028】
例えば、賃貸期間1年度の買取OP%(割引率)の初期値が10%、買取OP%加算値(加算値)が+3%に設定された場合、賃貸期間2年度、3年度、4年度に対応する買取OP%(割引率)は、13%、16%、19%となる。本実施形態においては、未接道等によって再建築不可の中古物件、容積率オーバーや建蔽率オーバー等による違法な既存不適格の中古物件、未登記状態や借地権付き建物の中古物件の場合、買取OP%加算値(加算値)は、最低優遇条件として+3%に設定される。これは、当該中古物件の購入に際して一般の金融機関では殆ど融資を受けることができず、買手が現れにくくて売却価格も低くなりがちといった点とのバランスから定められる。
【0029】
また、心理的瑕疵による事故物件、耐用年数を過ぎた築古物件、建て替えやリフォームが困難なテラスハウス(連投式建物)といった中古物件の場合、買取OP%加算値(加算値)は、最低優遇条件よりも若干高い高優遇条件として+5%に設定される。
【0030】
さらに、上記の最低優遇条件や高優遇条件に当てはまらない瑕疵を有する建物や耐用年数以内の建物、いわゆる古家付き土地といった中古物件の場合、買取OP%加算値(加算値)は、高優遇条件よりもさらに高い最高優遇条件として+10%に設定される。
【0031】
このような買取OP%加算値(加算値)は、売却対象の中古物件について最低優遇条件、高優遇条件、最高優遇条件のいずれに該当するかを入力手段10を介して指定することにより、自動的に対応する値が適用される。また、割引率設定手段13は、予め入力されている中古物件に関する情報(再建築の可否、違法性、耐用年数等に関する情報)に基づき、買取OP%加算値(加算値)を、最低優遇条件、高優遇条件、最高優遇条件の何れかに決定してもよい。また、割引率設定手段13は、買取OP%加算値(加算値)を、このような3つの区分に限らず、1つでも、2つでも、さらに4つ以上の区分のいずれかから決定してもよい。
【0032】
購入価格決定手段14は、中古物件購入価格決定用の演算プログラムに基づき、賃貸期間1年度、2年度、3年度、…毎に、設定された月額の家賃(賃貸料)に基づいてそれまで支払われたこととなる家賃支払い合計を算出するとともに、この家賃支払い合計に対して各賃貸年度に設定された買取OP%(割引率)を乗算することで買取OP割引額(割引額)を算出し、そして、買取額(基準購入価格)から各賃貸年度に対応する買取OP割引額(割引額)を減算することにより、各賃貸年度に対応する購入価格を決定する。その一方、購入価格決定手段14は、中古物件購入価格決定用の演算プログラムに基づき、賃貸期間1年度、2年度、3年度、…毎に、家賃支払い合計と各賃貸年度の購入価格とを合算することにより、各賃貸年度に応じた売上を算出するとともに、この売上から買取額(基準購入価格)を減算することにより、各賃貸年度に応じた差益を算出する。このようにして算出された各年度の売上及び差益は、基本的に借主には提示されずに貸主等にのみ提示可能とされる。
【0033】
表示手段15は、入力・設定された物件名、賃貸契約年月日、買取額(基準購入価格)、家賃(賃貸料)、買取OP%加算値(加算値)を個別に表示するとともに、各賃貸年度に応じた家賃支払い合計、買取OP%(割引率)、買取OP割引額(割引額)、購入価格、売上、差益を賃貸年度別に表形式で表示する。なお、各賃貸年度の売上及び差益については、借主以外の貸主等が所定の切り替え操作を行った場合にのみ表示されるようになっているのが好ましい。
【0034】
次に、図2を参照してPC1による中古物件の購入価格決定処理について説明する。図2は、購入価格決定処理を示すフローチャートである。
【0035】
図2に示すように、PC1の購入価格決定処理においては、まず、利用者(貸主、不動産業者等)が入力手段10を介して売却対象となる中古物件の物件名、当該中古物件の賃貸契約年月日、優遇条件を入力すると、これらに対応する情報が例えばストレージデバイスの所定記憶領域に設定(記憶)される(ステップS1)。なお、優遇条件に対応する情報としては、買取OP%加算値(加算値)が設定される。
【0036】
次に、入力手段10を介して買取額(基準購入価格)が入力されると、基準購入価格設定手段11により例えばストレージデバイスの所定記憶領域に買取額が設定(記憶)される(ステップS2)。
【0037】
次に、入力手段10を介して月額の家賃(賃貸料)が入力されると、賃貸料設定手段12により例えばストレージデバイスの所定記憶領域に家賃が設定(記憶)される(ステップS3)。
【0038】
次に、入力手段10を介して買取OP%(割引率)の賃貸期間1年度の初期値が入力されると、割引率設定手段13によりストレージデバイスの所定記憶領域に賃貸期間1年度の買取OP%が設定(記憶)される(ステップS4)。
【0039】
以上のようにして必要な情報が入力されると、購入価格決定手段14は、賃貸期間1年度、2年度、3年度、…毎に、家賃支払い合計、買取OP%加算値(加算値)により累積加算された買取OP%(割引率)、買取OP割引額(割引額)を自動的に算出し、買取額(基準購入価格)から買取OP割引額(割引額)を減算した値として各賃貸年度に応じた中古物件の購入価格を算出・決定する(ステップS5)。その際、購入価格決定手段14は、家賃支払い合計と購入価格とを合算することで各賃貸年度に応じた売上を算出するとともに、この売上から買取額(基準購入価格)を減算することで各賃貸年度に応じた差益も算出・決定する。このようにして算出・決定された各賃貸年度に応じた購入価格、売上及び差益は、図3~5に示すような購入価格OP表として表示手段15に表示される。
【0040】
図3~5は、中古物件購入価格決定システムによる表示結果を説明するための説明図である。
【0041】
まず、利用者が所定の情報を入力した上でPC1が購入価格決定処理を実行すると、図3に示すような購入価格OP表が表示される。物件名「横浜市○○区 ××2号棟」、賃貸契約年月日「2019年10月1日」、家賃(月額)「¥75,000」、買取額「¥6,000,000」、賃貸期間1年度の買取OP%「10%」は、一例として利用者により入力されたものである。買取OP%加算値「3%」は、利用者が最低優遇条件を指定することにより自動的に設定されたものである。
【0042】
図3に示す買取OP%加算値「3%」に応じた購入価格OP表では、賃貸期間1年度、2年度、3年度、…の各年度に応じた(3)家賃支払い合計、(4)買取OP%、(5)買取OP割引額、(6)購入価格、(7)売上A、(8)差益Bが算出・表示される。(3)家賃支払い合計は、賃貸期間n年度に対応する(1)年数に等しい月数を家賃(月額)に乗算することで算出される。賃貸期間n年度(1年度を除く)の(4)買取OP%は、賃貸期間n-1年度の買取OP%に買取OP%加算値の「3%」を加算することで累次的に算出される。(5)買取OP割引額は、(3)家賃支払い合計に(4)買取OP%を乗算することで算出される。(6)購入価格は、買取額から(5)買取OP割引額を減算することで算出される。(7)売上Aは、(3)家賃支払い合計と(6)購入価格とを合算することで算出される。(8)差益Bは、(7)売上Aから買取額を減算することで算出される。なお、(7)売上Aと(8)差益Bとは、利用者が所定の切り替え操作を行うことによって非表示・表示に切り替えられる。なお、本実施形態においては、図3に示すように賃貸期間14年度以降になると、実際の購入価格がマイナスの値となるが、購入価格がマイナス値となった場合、購入価格が一律「¥0」として表示されるようになっている。
【0043】
同様に、利用者が高優遇条件を指定することで買取OP%加算値が「5%」に設定された場合、図4に示すような購入価格OP表が表示される。図4に示す買取OP%加算値「5%」に応じた購入価格OP表では、賃貸期間12年度以降になると、実際の購入価格がマイナスの値となるため、購入価格が一律「¥0」として表示される。
【0044】
一方、利用者が買取額を「¥10,000,000」に変更し、最高優遇条件を指定することで買取OP%加算値が「10%」に設定された場合、図5に示すような購入価格OP表が表示される。図5に示す買取OP%加算値「10%」に応じた購入価格OP表では、賃貸期間6年度から、差益Bが低下していき、賃貸期間10年度になると、買取OP%が「100%」となり、売上Aが買取額と等しくなることから、差益Bが「¥0」として表示される。このように、割引率設定手段13は、当該年度の差益Bが、前年度の差益Bより低くなった場合、当該年度以降、買取OP%加算値(加算値)を加算せずに、前年度の買取OP%(割引率)を維持してもよい。例えば、図5に示す例では、6年度の差益Bが、5年度の差益Bより低くなったので、6年度以降の買取OP%(割引率)を、5年度の買取OP%(割引率)である「50%」に維持してもよい。
【0045】
このような中古物件の購入価格決定処理によれば、賃貸期間年数について最大15年程度を目安として、購入価格が0円となるように買取額(基準購入価格)や買取OP%(割引率)等を容易に任意変更することができる。それ以上の年数になると、新築購入の場合と変わらなくなるので、中古物件に家賃を支払いつつ最終的に当該中古物件を購入するメリットを明確に示すことができる。
【0046】
また、賃貸期間年数について最大15年程度を目安としつつ、不動産相場等から中古物件の買取額(基準購入価格)を適宜設定するとともに、物件の状態等から買取OP%(割引率)を適宜設定し、これらの値から逆算することで家賃(賃貸料)を適切に設定することもできる。
【0047】
あるいはその逆に、賃貸期間年数について最大15年程度を目安としつつ、不動産相場等から中古物件の家賃(賃貸料)適宜設定するとともに、物件の状態等から買取OP%(割引率)を適宜設定し、これらの値から逆算することで当該中古物件の買取額(基準購入価格)を適切に設定することもできる。
【0048】
さらに、賃貸期間年数について最大15年程度を目安としつつ、差益Bが買取額(基準購入価格)に対して例えば1.25~1.5倍程度となるように、買取額(基準購入価格)や買取OP%(割引率)等を適宜設定することもできる。
【0049】
以上説明した本実施形態の中古物件購入価格決定システムによれば、賃貸期間年数に応じて購入価格の推移を分かり易く提示することができるとともに、中古物件としての賃貸住宅の購入希望者及び売却予定オーナーにとってより分かり易い購入価格決定の仕組みを構築することができ、賃貸住宅の購入価格を適正に決定することができる。これにより、中古物件としての特性を活かしつつ、本システムを活用することによって空き家対策や住宅確保を必要とする者に対して便利なツールを提供することができる。
【0050】
また、中古物件の建て替え又はリフォームについての制限有無による異なる優遇条件に応じて異なる買取OP%加算値(加算値)が適用され、そのような異なる優遇条件に応じて適正に累次加算された買取OP%(割引率)が設定されるので、この種の制限有無に対応しつつも賃貸期間毎に各々応じた適正な購入価格を決定することができる。
【0051】
また、耐用年数を過ぎた中古物件(築古物件)の場合には、耐用年数以内の中古物件の場合よりもさらに小さい買取OP%加算値(加算値)が適用されるので、耐用年数の満了・未了に応じて大小異なる買取OP%加算値(加算値)を用いることによっても賃貸期間毎に各々応じた適正な購入価格を決定することができる。
【0052】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0053】
上記の実施形態では、賃貸期間の各年度にわたって買取OP%加算値(加算値)が一律一定の値(3%、5%、10%)に設定されるが、例えば賃貸期間途中の年度において耐用年数を過ぎることとなる場合等に対応すべく、賃貸期間途中の年度から買取OP%加算値(加算値)を変更することができるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 PC
10 入力手段
11 基準購入価格決定手段
12 賃貸料設定手段
13 割引率設定手段
14 購入価格決定手段
15 表示手段
図1
図2
図3
図4
図5