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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 7/06 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
B66F7/06 F
B66F7/06 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021052879
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150316
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】514033770
【氏名又は名称】公立大学法人前橋工科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】722012006
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】朱 赤
(72)【発明者】
【氏名】李 沛譲
(72)【発明者】
【氏名】木村 栄輝
(72)【発明者】
【氏名】田近 基孝
(72)【発明者】
【氏名】角田 勝
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-016211(JP,A)
【文献】実開昭60-162593(JP,U)
【文献】実開平02-135598(JP,U)
【文献】実開平02-007293(JP,U)
【文献】実開昭48-53756(JP,U)
【文献】国際公開第2017/059867(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 7/06-7/08
B66F 9/06
B62B 3/02
B62B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置によって一対の第1左側X字状アーム及び第1右側X字状アームを上下方向に伸縮させて昇降台を昇降させる昇降装置であって、
前記第1左側X字状アーム及び前記第1右側X字状アームのそれぞれは、側方視でX字状に交差し且つ互いに相対回転可能に組み合わされた2つのアームを有し、
前記第1左側X字状アームの2つのアームのうちの一方のアームの一端部が左右方向に延びる連結軸の左端部の近傍に回転自在に取り付けられ、及び前記第1右側X字状アームの2つのアームのうちの前記第1左側X字状アームの前記一方のアームに対応するアームの一端部が前記連結軸の右端部の近傍に回転自在に取り付けられており、
前記駆動装置は、電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータによって駆動されて前後方向に直線移動する可動体と、一端が前記可動体に回転自在に連結された第1リンク部材と、一端が前記連結軸に回転自在に連結されると共に他端が軸部材を介して前記第1リンク部材の他端に回転自在に連結された第2リンク部材と、前記可動体の移動に伴う前記軸部材の移動をガイドするガイド孔又はガイド溝が形成されたガイド部材とを有し、
前記ガイド孔又は前記ガイド溝は、前記昇降台を上昇させる方向の前記可動体の移動に伴い、前記軸部材を斜め下向きに移動させた後に斜め上向きに移動させるように、略U字状に湾曲して形成されており、
前記駆動装置は、前記可動体の移動により前記第1リンク部材及び前記第2リンク部材を介して前記第1左側X字状アーム及び前記第1右側X字状アームを上下方向に伸縮させるように構成されている、
昇降装置。
【請求項2】
前記電動アクチュエータは、電動モータと、前記電動モータによって減速機構を介して回転駆動される直動軸と、前記直動軸の回転に伴い前記直動軸の軸方向に移動する直動ナットとを含み、
前記可動体は、前記直動ナットに一体に設けられている、
請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記一対の第1左側X字状アーム及び第1右側X字状アームと前記昇降台との間に設けられ、上下方向に伸縮可能な一対の第2左側X字状アーム及び第2右側X字状アームをさらに含み、
前記第1左側X字状アーム及び前記第1右側X字状アームのそれぞれは、第1インナーアーム及び第1アウターアームを前記2つのアームとして有し、
前記第2左側X字状アーム及び前記第2右側X字状アームのそれぞれは、側方視でX字状に交差し且つ互いに相対回転可能に組み合わされた第2インナーアーム及び第2アウターアームを有し、
前記第1左側X字状アームの前記第1インナーアームの一端部及び前記第2左側X字状アームの前記第2アウターアームの一端部が前記連結軸の左端部の近傍に回転自在に取り付けられ、及び前記第1右側X字状アームの前記第1インナーアームの一端部及び前記第2右側X字状アームの前記第2アウターアームの一端部が前記連結軸の右端部の近傍に回転自在に取り付けられており、
前記駆動装置は、前記可動体の移動により前記第1リンク部材及び前記第2リンク部材を介して前記第1左側X字状アーム及び前記第1右側X字状アーム、並びに前記第2左側X字状アーム及び前記第2右側X字状アームを上下方向に伸縮させるように構成されている、
請求項1又は2に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のX字状アームを上下方向に伸縮させて昇降台を昇降させるように構成された昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動シリンダによりリフトアーム(X字状アーム)を伸縮駆動して荷台(昇降台)を昇降させる技術の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-274704公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X字状アームを伸縮駆動して昇降台を昇降させる構成では、通常、最下位置にある昇降台を上昇させるときにそれ以外のときに比べて大きな力が必要になる。このため、X字状アームを伸縮駆動する駆動源として電動シリンダなどの電動アクチュエータが用いられる場合、最下位置にある昇降台を上昇させるのに必要な出力を発揮し得る電動アクチュエータを採用せざるを得ず、電動アクチュエータの小型化が容易ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、電動アクチュエータの小型化を可能とする昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、駆動装置によって一対の第1左側X字状アーム及び第1右側X字状アームを上下方向に伸縮させて昇降台を昇降させる昇降装置が提供される。この昇降装置において、前記第1左側X字状アーム及び前記第1右側X字状アームのそれぞれは、側方視でX字状に交差し且つ互いに相対回転可能に組み合わされた2つのアームを有し、前記第1左側X字状アームの2つのアームのうちの一方のアームの一端部が左右方向に延びる連結軸の左端部の近傍に回転自在に取り付けられ、及び前記第1右側X字状アームの2つのアームのうちの前記第1左側X字状アームの前記一方のアームに対応するアームの一端部が前記連結軸の右端部の近傍に回転自在に取り付けられている。また、前記駆動装置は、電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータによって駆動されて前後方向に直線移動する可動体と、一端が前記可動体に回転自在に連結された第1リンク部材と、一端が前記連結軸に回転自在に連結されると共に他端が軸部材を介して前記第1リンク部材の他端に回転自在に連結された第2リンク部材と、前記可動体の移動に伴う前記軸部材の移動をガイドするガイド孔又はガイド溝が形成されたガイド部材とを有し、前記ガイド孔又は前記ガイド溝は、前記昇降台を上昇させる方向の前記可動体の移動に伴い、前記軸部材を斜め下向きに移動させた後に斜め上向きに移動させるように、略U字状に湾曲して形成されている。そして、前記駆動装置は、前記可動体の移動によって前記第1リンク部材及び前記第2リンク部材を介して前記第1左側X字状アーム及び前記第1右側X字状アームを上下方向に伸縮させるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動アクチュエータの小型化を可能とする昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る昇降装置を前方から見た図である。
図2】前記昇降装置を後方から見た図である。
図3】前記昇降装置を右側方から見た図である。
図4】左右一対の側板が取り外された状態の昇降装置を左側方から見た図である。
図5】前記昇降装置の伸縮機構を右側方から見た図である。
図6】前記伸縮機構を左側方から見た図である。
図7】前記伸縮機構の斜視図である。
図8】前記昇降装置の駆動装置を右側方から見た図である。
図9】前記駆動装置を左側方から見た図である。
図10図8のA視図である。
図11】前記駆動装置のガイド部材のガイド孔の他の形状を示す図である。
図12】前記昇降装置の動作の一例を説明するための図であり、昇降台が最下位置にあるときの前記伸縮機構及び前記駆動装置90の状態を示す図である。
図13】前記昇降装置の動作の一例を説明するための図であり。昇降台が中間位置にあるときの伸縮機構及び駆動装置の状態を示す図である。
図14】前記昇降装置の動作の一例を説明するための図であり、昇降台が最上位置にあるときの伸縮機構及び駆動装置の状態を示す図である。
図15】前記昇降装置と従来の同種の昇降装置との比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1図4は、本発明の一実施形態に係る昇降装置10の構成を示している。図1は、昇降装置10を前方から見た図であり、図2は、昇降装置10を後方から見た図である。また、図3は、昇降装置10を右側方から見た図であり、図4は、後述する左右一対の側板(左側板31L、右側板31R)が取り外された状態の昇降装置10を左側方から見た図である。なお、図4においては、左側板31Lが二点鎖線で示されている。
【0011】
実施形態に係る昇降装置10は、基台30と、基台30の上方に配置された昇降台50と、基台30と昇降台50との間に設けられた伸縮機構70と、伸縮機構70を駆動する(伸縮させる)駆動装置90と、電源及び制御回路を含む制御装置100とを有する。
【0012】
基台30は、矩形板状に形成されている。基台30の上面には、伸縮機構70を支持する左右一対の側板(左側板31L、右側板31R)が立設されている。一対の側板(左側板31L、右測板31R)は、左右方向に離隔して配置されており、それぞれが前後方向に延びている。
【0013】
昇降台50は、上面に図示省略の荷物等が載置される矩形状の天板部51と、天板部51の周縁部から垂下した周壁部53とを有している。
【0014】
伸縮機構70は、左右一対のX字状アーム(パンタアームとも呼ばれる)が上下方向に伸縮することで昇降台50を基台30に対して平行な状態で昇降させるように構成されている。ここで、基台30は、通常、水平面上に載置される。このため、伸縮機構70は、左右一対のX字状アームが上下方向に伸縮することで昇降台50を水平状態で昇降させるように構成されているということもできる。本実施形態において、伸縮機構70は、左右一対のX字状アームが上下に積み重ねられた2段構造のX字状リンク機構として形成されている。
【0015】
図5図7は、伸縮機構70の構成を示している。図5は、伸縮機構70を右側方から見た図であり、図6は、伸縮機構70を左側方から見た図であり、図7は、伸縮機構70の斜視図である。
【0016】
図5図7に示されるように、本実施形態において、伸縮機構70は、下段側の左右一対のX字状アーム(左側下段X字状アーム71L及び右側下段X字状アーム71R)と、上段側の左右一対のX字状アーム(左側上段X字状アーム75L及び右側上段X字状アーム75R)とを含む。
【0017】
下段側の左右一対のX字状アームである左側下段X字状アーム71L及び右側下段X字状アーム71Rのそれぞれは、下側インナーアームと下側アウターアームとが側方視でX字状に交差し且つ互いに相対回転可能に組み合わされて形成されている。具体的には、本実施形態において、左側下段X字状アーム71Lは、下側インナーアーム72Lの中央部及び下側アウターアーム74Lの中央部が左右方向に延びる下側連結軸81の左端部の近傍にそれぞれ回転自在に取り付けられて構成されている(図6図7参照)。同様に、右側下段X字状アーム71Rは、下側インナーアーム72Rの中央部及び下側アウターアーム74Rの中央部が下側連結軸81の右端部の近傍にそれぞれ回転自在に取り付けられて構成されている(図5図7参照)。
【0018】
上段側の左右一対のX字状アームである左側上段X字状アーム75L及び右側上段X字状アーム75Rのそれぞれも、上側インナーアームと上側アウターアームとが側面視でX字状に交差し且つ互いに相対回転可能に組み合わされて形成されている。具体的には、本実施形態において、左側上段X字状アーム75Lは、上側インナーアーム76Lの中央部及び上側アウターアーム78Lの中央部が、下側連結軸81の上方を左右方向に延びる上側連結軸82の左端部の近傍にそれぞれ回転自在に取り付けられて構成されている(図6図7参照)。同様に、右側上段X字状アーム75Rは、上側インナーアーム76Rの中央部及び上側アウターアーム78Rの中央部が上側連結軸82の右端部近傍にそれぞれ回転自在に取り付けられて構成されている(図5図7参照)。
【0019】
そして、下段側の左右一対のX字状アーム(左側下段X字状アーム71L及び右側下段X字状アーム71R)と、上段側の左右一対のX字状アーム(左側上段X字状アーム75L及び右側上段X字状アーム75R)とは、左右方向に延びる後側連結軸83及び前側連結軸84を介して連結されている。
【0020】
具体的には、本実施形態において、左側下段X字状アーム71Lを構成する下側インナーアーム72Lの後端部及び左側上段X字状アーム75Lを構成する上側アウターアーム78Lの後端部が、後側連結軸83の左端部の近傍にそれぞれ回転自在に取り付けられており(図6図7参照)、右側下段X字状アーム71Rを構成する下側インナーアーム72Rの後端部及び右側上段X字状アーム75Rを構成する上側アウターアーム78Rの後端部が、後側連結軸83の右端部の近傍にそれぞれ回転自在に取り付けられている(図5図7参照)。
【0021】
また、左側下段X字状アーム71Lを構成する下側アウターアーム74Lの前端部及び左側上段X字状アーム75Lを構成する上側インナーアーム76Lの前端部が、前側連結軸84の左端部の近傍にそれぞれ回転自在に取り付けられており(図6図7参照)、右側下段X字状アーム71Rを構成する下側アウターアーム74Rの前端部及び右側上段X字状アーム75Rを構成する上側インナーアーム76Rの前端部が、前側連結軸84の右端部の近傍にそれぞれ回転自在に取り付けられている(図5図7参照)。
【0022】
左側下段X字状アーム71Lを構成する下側インナーアーム72Lの前端部は、前側連結軸84の下方を左右方向に延びると共に前後方向に移動可能な下側移動軸85の左端部の内側に回転自在に取り付けられており(図6図7参照)、右側下段X字状アーム71Rを構成する下側インナーアーム72Rの前端部は、下側移動軸85の右端部の内側に回転自在に取り付けられている(図5図7参照)。
【0023】
下側移動軸85は、左端部が左側板31Lの内側面(右側板31R側の面)に形成された前後方向に延びる左側ガイド溝33Lに挿入され、右端部が右側板31Rの内側面(左側板31L側の面)に形成された、左側ガイド溝33Lと対をなす右側ガイド溝33Rに挿入されている(図1図3図7参照)。つまり、本実施形態において、下側移動軸85は、左側板31Lの左側ガイド溝33L及び右側板31Rの右側ガイド溝33Rによって両端が支持されると共に、左側ガイド溝33L及び右側ガイド溝33Rに沿って前後方向に移動可能に構成されている。
【0024】
また、左側下段X字状アーム71Lを構成する下側アウターアーム74Lの後端部は、左側板31Lの内側面に突出形成された左側取付部35Lにピン部材P1を介して回転自在に固定されており、右側下段X字状アーム71Rを構成する下側アウターアーム74Rの後端部は、右側板31Rの内側面に突出形成された、左側取付部35Lに対応する右側取付部35Rにピン部材P1を介して回転自在に固定されている(図2図7参照)。
【0025】
左側上段X字状アーム75Lを構成する上側アウターアーム78Lの前端部は、前側連結軸84の上方を左右方向に延びると共に前後方向に移動可能な上側移動軸86の左端部の内側に回転自在に取り付けられており(図6図7参照)、右側上段X字状アーム75Rを構成する上側アウターアーム78Rの前端部は、上側移動軸86の右端部の内側に回転自在に取り付けられている(図5図7参照)。
【0026】
上側移動軸86は、左端部が昇降台50(の天板部51)の下面に設けられた前後方向に延びる左側レール部材55Lのレール溝に挿入され、右端部が左側レール部材55Lと対をなす右側レール部材55Rのレール溝に挿入されている(図1図3図7参照)。つまり、本実施形態において、上側移動軸86は、昇降台50に設けられた左側レール部材55L及び右側レール部材55Rによって両端が支持されると共に左側レール部材55Lのレール溝及び右側レール部材55Rのレール溝に沿って前後方向に移動可能に構成されている。
【0027】
左側上段X字状アーム75Lを構成する上側インナーアーム76Lの後端部は、昇降台50(の天板部51)の下面に突設された左側取付部57Lにピン部材P2を介して回転自在に固定されており、右側上段X字状アーム75Rを構成する上側インナーアーム76Rの後端部は、昇降台50(の天板部51)の下面に突設された、左側取付部57Lに対応する右側取付部57Rにピン部材P2を介して回転自在に固定されている(図2図7参照)。
【0028】
駆動装置90は、基台30の上面の左右方向の略中央部に設置されている。駆動装置90は、伸縮機構70を構成する下段側の左右一対のX字状アーム(左側下段X字状アーム71L、右側下段X字状アーム71R)と、上段側の左右一対のX字状アーム(左側上段X字状アーム75L、右側上段X字状アーム75R)とを上下方向に伸縮させ、これによって、昇降台50を昇降させるように構成されている。
【0029】
図8図10は、駆動装置90の構成を示している。図8は、駆動装置90を右側方から見た図であり、図9は、駆動装置90を左側方から見た図であり、図10は、図8のA視図である。
【0030】
図8図10に示されるように、本実施形態において、駆動装置90は、電動アクチュエータ91と、電動アクチュエータ91によって駆動されて移動する可動体93と、可動体93と伸縮機構70とを連結する連結機構としての左右一対のリンク機構(左側リンク機構95L、右側リンク機構95R)と、左右一対のガイド部材(左側ガイド部材97L、右側ガイド部材97R)とを含む。
【0031】
電動アクチュエータ91は、電動モータの回転運動を直動機構(例えば、ボールねじ機構)によって直線運動に変換して出力するリニアアクチュエータである。本実施形態において、電動アクチュエータ91は、電動モータ(サーボモータ)911と、減速機構913と、直動機構(直動軸(ねじ軸)915A及び直動ナット915B)と、を有する。
【0032】
電動モータ911の動作は、制御装置100によって制御される。制御装置100は、基台30の上面の所定位置に設置されている(図1図2図4参照)。電動モータ911の出力軸には、例えばカップリングを介して無励磁作動型ブレーキ912が取り付けられている。
【0033】
減速機構913は、電動モータ911の出力軸の回転を減速して前記直動機構の直動軸915Aに伝達する。減速機構913の構成等は特に制限されない。また、減速機構913は、一段減速機構であってもよいし、複数段減速機構であってもよい。
【0034】
直動軸915Aは、前後方向に延びており、軸受(図示省略)が取り付けられた支持部材916A、916Bによって回転自在に支持されている。直動軸915Aは、減速機構913を介して電動モータ911によって回転駆動される。直動ナット915Bは、直動軸915Aに螺合されており、直動軸915Aの回転に伴って直動軸915A上を軸方向に移動する(すなわち、前後方向に直線移動する)。
【0035】
可動体93は、直動ナット915Bに固定されており、直動ナット915Bと一体に移動する。なお、本実施形態において、直動軸915Aの下方には、リニアスライダ94が設置されている。リニアスライダ94は、前後方向に延びるスライドレール94Aと、スライドレール94A上を移動するスライドブロック94Bとを有している。そして、直動ナット915Bに固定された可動体93の下部がスライドブロック94Bに固定されている。
【0036】
左側リンク機構95L及び右側リンク機構95Rは、可動体93の移動に伴って伸縮機構70の後側連結軸83を押し引きすることにより、下段側の左右一対のX字状アーム(左側下段X字状アーム71L及び右側下段X字状アーム71R)及び上段側の左右一対のX字状アーム(左側上段X字状アーム75L及び右側上段X字状アーム75R)を上下方向に伸縮させるように構成されている。
【0037】
具体的には、本実施形態において、左側リンク機構95Lは、前端部が可動体93の左側面に回転自在に連結された第1リンク部材951Lと、後端部が伸縮機構70の後側連結軸83(すなわち、下段側の左右一対のX字状アーム71L、71R及び上段側の左右一対のX字状アーム75L、75R)に回転自在に連結されると共に前端端が軸部材952Lを介して第1リンク部材951Lの後端部に回転自在に連結された第2リンク部材953Lとを含む。同様に、右側リンク機構95Rは、前端部が可動体93の右側面に回転自在に連結された第1リンク部材951Rと、後端部が伸縮機構70の後側連結軸83に回転自在に連結されると共に前端部が軸部材952Rを介して第1リンク部材951Rの後端部に回転自在に連結された第2リンク部材953Rとを含む。なお、左側リンク機構95Lの第1リンク部材951Lと、右側リンク機構95Rの第1リンク部材951Rとは、連結板954によって連結されている。
【0038】
左側ガイド部材97L及び右側ガイド部材97Rは、基台30の上面の後部側において電動アクチュエータ91を挟んでその左右両側にそれぞれ配置されている。左側ガイド部材97Lには、可動体93の移動に伴う左側リンク機構95Lの軸部材952Lの移動をガイドするガイド孔971Lが形成されており、右側ガイド部材97Rには、可動体93の移動に伴う右側リンク機構95Rの軸部材952Rの移動をガイドするガイド孔971Rが形成されている。左側ガイド部材97Lのガイド孔971Lと、右側ガイド部材97Rのガイド孔971Rとは、同形状に形成されている。
【0039】
左側ガイド部材97Lのガイド孔971L及び右側ガイド部材97Rのガイド孔971R)の形状は、例えば次のようにして決定される。なお、ここでは、図8を参照して右側ガイド部材97Rのガイド孔971Rの形状について説明するが、左側ガイド部材97Lのガイド孔971Lの形状についても同様である。
【0040】
まず、昇降台50が最下位置と最上位置との間を昇降するときに、可動体93と第1リンク部材951Rの前端部との第1連結部J1がX軸上を移動し、第2リンク部材953Rと後側連結軸83との第2連結部J2がY軸上を移動するものとする(図8参照)。
【0041】
次に、第1連結部J1の位置(x,0)と第2連結部J2の位置(0,y)との関係、すなわち、xとyとの関係を物理法則(ここでは仮想仕事の原理)により決める。yとxとの関係(例えば、dy/dx)は、定数であってもよいし、線形であってもよいし、非線形であってもよい。なお、本実施形態においては、yとxとの関係(dy/dx)を定数としており、これにより、後述するように、昇降台50を最下位置から最上位置まで上昇させる間、電動アクチュエータ91の出力がほぼ一定となる。
【0042】
次に、逆運動学又は機構の幾何関係により、具体的には、第1連結部J1の位置(x,0)と、第1リンク部材951Rの長さL1と、第2連結部J2の位置(0,y)と、第2リンク部材953Rの長さL2との関係に基づき、第1リンク部材951Rの変位角θ1(X軸に対する角度)を求める。
【0043】
そして、第1連結部J1の位置(x,0)、第1リンク部材951Rの長さL1及び第1リンク部材951Rの変位角θ1に基づき、軸部材952Rの中心J3の位置(x0,y0)を求め、求められた軸部材952Rの中心J3の位置(x0,y0)を繋ぎ合わせることでガイド孔971Rの形状を決定する。ここで、第1リンク部材951Rの変位角θ1には二つの解がある(変位角θ1は二つの値を取り得る)。本実施形態においては、主にガイド孔971L、971Rのサイズを小さくするために二つの解(二つの値)のうちの小さい方を第1リンク部材951Rの変位角θ1として採用しており、その結果、ガイド孔971L、971Rは、図8図9等に示される形状になっている。
【0044】
なお、ガイド孔971Rは、軸部材952Rを滑らかに移動させることができるように湾曲形状を有して形成される。本実施形態において、ガイド孔971Rは、昇降台50を上昇させる方向への可動体93の移動に伴って軸部材952L(952R)を後方に向かって斜め下向きに移動させた後に斜め上向きに移動させるように、略U字状(又は略V字状)に湾曲して形成されている。しかし、これに限られるものではない。ガイド孔971R)の形状は、第1リンク部材951Rの長さL1及び第2リンク部材953Rの長さL2によって変化する。例えば、図11に示されるように、軸部材952Rを後方に向かって水平に移動させた後に斜め上向きに移動させるように形成されてもよい。
【0045】
制御装置100は、図示省略の入力部を介して入力される動作指令に基づいて電動アクチュエータ91の電動モータ911を制御する。本実施形態において、前記動作指令は、昇降台50を上昇させる上昇指令、昇降台50を下降させる下降指令及び昇降台50の昇降を停止させる停止指令を含む。そして、制御装置100は、前記上昇指令が入力されると電動モータ911を第1方向に回転駆動(以下「正転駆動」という)し、前記下降指令が入力されると電動モータ911を前記第1方向とは逆の第2方向に回転駆動(以下「逆転駆動」という)する。また、制御装置100は、前記停止指令が入力されると、そのときの昇降位置で昇降台50を保持するように電動モータ911を制御する。
【0046】
次に、昇降装置10の動作の一例を説明する。
【0047】
図12は、昇降台50が最下位置にあるときの伸縮機構70及び駆動装置90の状態を示し、図13は、昇降台50が中間位置にあるときの伸縮機構70及び駆動装置90の状態を示し、図14は、昇降台50が最上位置にあるときの伸縮機構70及び駆動装置90の状態を示している。
【0048】
例えば、昇降台50が最下位置にあるときにオペレータによって前記上昇指令が前記入力部を介して入力されると、制御装置100は、電動アクチュエータ91の電動モータ911を正転駆動する。すると、可動体93が後方に向かって移動し、伸縮機構70の後側連結軸83が左側リンク機構95L及び右側リンク機構95Rを介して押し上げられる。これにより、下段側の左右一対のX字状アーム(左側下段X字状アーム71L及び右側下段X字状アーム71R)及び上段側の左右一対のX字状アーム(左側上段X字状アーム75L及び右側上段X字状アーム75R)が上方に伸びて昇降台50が上昇する。そして、制御装置100は、昇降台50が最上位置まで上昇すると、電動アクチュエータ91の電動モータ911の正転駆動を停止して昇降台50を最上位置に保持する(図12図13図14)。
【0049】
また、例えば、昇降台50が最上位置にあるときにオペレータによって前記下降指令が前記入力部を介して入力されると、制御装置100は、電動アクチュエータ91の電動モータ911を逆転駆動する。すると、可動体93が前方に向かって移動し、伸縮機構70の後側連結軸83が左側リンク機構95L及び右側リンク機構95Rを介して引き下げられる。これにより、下段側の左右一対のX字状アーム(左側下段X字状アーム71L及び右側下段X字状アーム71R)及び上段側の左右一対のX字状アーム(左側上段X字状アーム75L及び右側上段X字状アーム75R)が下方に縮んで昇降台50が下降する。そして、制御装置100は、昇降台50が最下位置まで下降すると、電動アクチュエータ91の電動モータ911の逆転駆動を停止する(図14図13図12)。
【0050】
なお、昇降台50が中間位置まで上昇又は下降したときにオペレータによって前記停止指令が前記入力部を介して入力されると、制御装置100は、電動アクチュエータ91の電動モータ911の正転駆動又は逆転駆動を停止して昇降台50をそのときの昇降位置(中間位置)に保持する(図13)。
【0051】
ここで、本実施形態において、電動アクチュエータ91の電動モータ911の出力軸には無励磁作動型ブレーキ912が取り付けられている。このため、電動アクチュエータ91(電動モータ911)への電力の供給が停止された場合であっても、昇降台50はそのときの位置に保持される。
【0052】
図15は、実施形態に係る昇降装置10と従来の同種の昇降装置との比較結果の一例を示す図であり、荷物を載置した状態の昇降台を最下位置から最上位置まで上昇させたときの電動アクチュエータの出力を示している。
【0053】
従来の同種の昇降装置では、図15において破線で示されるように、最下位置にある昇降台を上昇させるときの電動アクチュエータの出力が最大となり、その後、昇降台が上昇するにしたがって電動アクチュエータの出力は減少する。これに対し、実施形態に係る昇降装置10では、実線で示されるように、最下位置にある昇降台を上昇させるときの電動アクチュエータの出力が従来の同種の昇降装置のそれよりも小さく、また、昇降台50を最下位置から最上位置まで上昇させる間、電動アクチュエータ91の出力Fは、ほぼ一定である。これに従って、昇降台50を最下位置から最上位置まで上昇させる間、昇降台50の上昇速度も一定になる。
【0054】
以上説明したように、実施形態に係る昇降装置10は、駆動装置90によって下段側及び上段側の左右一対のX字状アームを上下方向に伸縮させて昇降台50を昇降させるように構成されている。駆動装置90は、電動アクチュエータ91と、電動アクチュエータ91によって駆動されて移動する可動体93と、左右一対のリンク機構(左側リンク機構95L、右側リンク機構95R)と、左右一対のガイド部材(左側ガイド部材97L、右側ガイド部材97R)とを有している。
【0055】
左側リンク機構95L(右側リンク機構95R)は、前端部が可動体93に回転自在に連結された第1リンク部材951L(951R)と、後端部が伸縮機構70の後側連結軸83(すなわち、下段側及び上段側の左右一対のX字状アーム)に回転自在に連結されると共に前端端が軸部材952L(952R)を介して第1リンク部材951L(951R)の後端部に回転自在に連結された第2リンク部材953L(953R)とを有する。また、左側ガイド部材97L(右側ガイド部材97R)には、可動体93の移動に伴う軸部材952L(軸部材952R)の移動をガイドするガイド孔971L(ガイド孔971R)が形成されており、ガイド孔971L(971R)は、軸部材952L(952R)を滑らかに移動させるように湾曲形状を有している。
【0056】
そして、駆動装置90は、電動アクチュエータ91によって可動体93を前後方向に移動させ、可動体93の移動により第1リンク部材951L(951R)及び第2リンク部材953L(953R)を介して伸縮機構70の後側連結軸83を押し引きし、これによって、下段側及び上段側の左右一対のX字状アームを上下方向に伸縮させて昇降台50を昇降させるように構成されている。
【0057】
実施形態に係る昇降装置10によれば、従来の同種の昇降装置10に比べて、最下位置にある昇降台50を上昇させるときに必要な電動アクチュエータ91の出力を低減することができると共に、昇降台50を上昇させる過程で必要とされる電動アクチュエータ91の出力の変動も抑制される(図15参照)。このため、従来に比べて、小型の電動アクチュエータ91(電動モータ911)を用いることが可能となり、昇降装置10のコストを抑えることができる。また、昇降台50の昇降速度の変動も抑制され得る。
【0058】
なお、上述の実施形態において、伸縮機構70は、左右一対のX字状アームが上下に積み重ねられた2段構造のX字状リンク機構として形成されている。しかし、これに限られるものではない。伸縮機構70は、左右一対のX字状アームからなる1段構造のX字状リンク機構として形成されてもよいし、左右一対のX字アームが上下に3つ以上積み重ねられた3段構造以上のX字状リンク機構として形成されてもよい。
【0059】
また、上述の実施形態において、左側ガイド部材97Lには、可動体93の移動に伴う左側リンク機構95Lの軸部材952Lの移動をガイドするガイド孔971Lが形成されており、右側ガイド部材97Rには、可動体93の移動に伴う右側リンク機構95Rの軸部材952Rの移動をガイドするガイド孔971Rが形成されている。しかし、これに限られるものではない。左側ガイド部材97Lにはガイド孔971Lに代えてガイド溝が形成され、及び/又は、右側ガイド部材97Rにはガイド孔971Rに代えてガイド溝が形成されてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態において、電動アクチュエータ91は、電動モータの回転運動を直動機構(例えばボールねじ機構)によって直線運動に変換して出力するリニアアクチュエータとして形成されている。しかし、これに限られるものではない。電動アクチュエータ91は、可動体93を前後方向に直線移動させるように構成されていればよい。
【0061】
また、上述の実施形態において、ガイド孔971L、971Rの形状を決定する際のyとxとの関係(dy/dx)を定数としている。しかし、これに限られるものではない。上述のように、yとxとの関係(dy/dx)を線形や非線形としたりすることも可能である。そして、yとxとの関係を変えると、ガイド孔971L、971Rの形状が変わり、ガイド孔971L、971Rの形状が変わると、昇降台50を上昇させる過程で必要とされる電動アクチュエータ91の出力及び昇降台50の上昇速度が変わる。換言すれば、ガイド孔971L、971Rの形状によって昇降台50の昇降特性を変えることが可能である。このため、実施形態に係る昇降装置10によれば、昇降台50の昇降特性に関する要求に比較的柔軟に対応することが可能であるという利点もある。
【0062】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態や変形例に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0063】
10…昇降装置、30…基台、50…昇降台、70…伸縮機構、71L…左側下段X字状アーム、71R…右側下段X字状アーム、72L,72R…下側インナーアーム、74L,74R…下側アウターアーム、75L…左側上段X字状アーム、75R…右側上段X字状アーム、76L,76R…上側インナーアーム、78L,78R…上側アウターアーム、81…下側連結軸、82…上側連結軸、83…後側連結軸、84…前側連結軸、85…下側移動軸、86…上側移動軸、90…駆動装置、91…電動アクチュエータ、93…可動体、94…リニアスライダ、95L…左側リンク機構、95R…右側リンク機構、97L…左側ガイド部材、97R…右側ガイド部材、911…電動モータ、913…減速機構、915A…直動軸(ねじ軸)、915B…直動ナット、951L,951R…第1リンク部材、952L,952R…軸部材、953L,953R…第2リンク部材、971L,971R…ガイド孔(ガイド部)
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図15