(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/125 20190101AFI20241105BHJP
G07D 9/00 20060101ALI20241105BHJP
G07D 9/04 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G07D11/125
G07D9/00 B
G07D9/04
(21)【出願番号】P 2021124444
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】柴尾 裕之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹男
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057235(JP,A)
【文献】特開2019-079327(JP,A)
【文献】特開2011-118651(JP,A)
【文献】特開2020-198025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
9/00-13/00
G07F 5/00- 9/10,
19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣を投入可能な投入部と、
前記投入部に投入された貨幣の識別及び計数を行う識別部と、
前記貨幣を収納するための収納袋を着脱可能に支持する袋支持部と、
前記貨幣を収納した前記収納袋の収納口を封止する袋封止部と、
収納操作と返却操作とを受け付け可能な操作部と、
前記操作部の受け付け結果に基づいて、少なくとも前記袋封止部を制御する制御部と、
前記収納袋へ印字可能な印字部と、
を備え、
前記制御部は、
前記投入部に投入され前記識別部によって識別及び計数された貨幣が前記袋支持部に支持された前記収納袋に収納された状態で、前記操作部により前記収納操作を受け付けた場合に、前記袋封止部によって前記収納袋の前記収納口を封止させ、
前記投入部に投入され前記識別部によって識別
及び計数された貨幣が前記袋支持部に支持された前記収納袋に収納された状態で、前記操作部により前記返却操作を受け付けた場合にも、前記袋封止部によって前記収納袋の前記収納口を封止させ
て、前記収納袋に封入された硬貨が返却硬貨であることを示す返却情報を、前記印字部によって前記収納袋へ印字させる
ことを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
前記袋支持部に支持された前記収納袋へのアクセスを規制する規制部を備え、
前記制御部は、前記操作部により前記返却操作を受け付けた場合、前記袋封止部による前記収納口の封止を完了した後に、前記規制部による前記アクセスの規制を解除させる
ことを特徴とする請求項
1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記袋支持部に支持された前記収納袋へのアクセスを規制する規制部
を備え、
前記制御部は、前記操作部によって前記収納操作を受け付けた場合、前記袋封止部によって前記収納口の封止を行わせた後に、前記収納袋に収納された貨幣の計数情報を前記印字部によって前記収納袋に印字させて、前記規制部によって前記アクセスの規制を解除させる
ことを特徴とする請求項
1に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
前記操作部は、前記収納袋へのアクセスの規制を解除するアクセス規制解除操作を更に受け付け可能であり、
前記制御部は、前記袋封止部による前記収納口の封止を完了した後に、前記操作部により前記アクセス規制解除操作を受け付けた場合、前記規制部による前記アクセスの規制を解除させる
ことを特徴とする請求項
2又は3に記載の貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定金種の硬貨を選別及び計数して袋取りすることが可能な貨幣処理装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭57-140469号公報
【文献】特開昭58-016387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2のように袋取りすることができる貨幣処理装置では、硬貨が収納袋に収納された後に収納袋の収納口をユーザーが封止手段で封止して収納袋を密閉している。そのため、収納袋を密閉する作業を行うユーザーが、収納袋内の硬貨に触れることが可能になる可能性が有る。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、セキュリティ性を向上することが可能な貨幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一態様によれば、貨幣処理装置は、貨幣を投入可能な投入部と、前記投入部に投入された貨幣の識別及び計数を行う識別部と、前記貨幣を収納するための収納袋を着脱可能に支持する袋支持部と、前記貨幣を収納した前記収納袋の収納口を封止する袋封止部と、収納操作と返却操作とを受け付け可能な操作部と、前記操作部の受け付け結果に基づいて、少なくとも前記袋封止部を制御する制御部と、を備えている。前記制御部は、前記投入部に投入され前記識別部によって識別及び計数された貨幣が前記袋支持部に支持された前記収納袋に収納された状態で、前記操作部により前記収納操作を受け付けた場合に、前記袋封止部によって前記収納袋の前記収納口を封止させる。前記制御部は、前記投入部に投入され前記識別部によって識別及び計数された貨幣が前記袋支持部に支持された前記収納袋に収納された状態で、前記操作部により前記返却操作を受け付けた場合にも、前記袋封止部によって前記収納袋の前記収納口を封止させて、前記収納袋に封入された硬貨が返却硬貨であることを示す返却情報を、前記印字部によって前記収納袋へ印字させる。
このように構成することで、貨幣を識別及び計数して収納袋に封入する作業を容易に行うことができるため、ユーザーの作業負担を軽減することができる。さらに、貨幣を収納袋に封入する際に、ユーザーが封入口の封止を行うことなく、袋封止部によって自動的に行うことができるため、セキュリティの向上を図ることができる。
また、返却操作がなされた場合に、収納袋に収納させた状態で貨幣を返却するため、貨幣を一時的に貯留する一時貯留部や、貨幣を返却するための返却部等が不要となる。これにより、貨幣経路を簡略化することができる。
さらに、貨幣の返却時にも収納袋を封止するため、例えば、収納袋を袋支持部から取り外す作業を行うときに、収納袋内に収納された貨幣がこぼれることを防止できる。
【0006】
さらに、収納袋に印字された返却情報により、収納袋に収納された貨幣が返却されたものであることを識別できる。したがって、収納操作により封止された収納袋と、返却操作により封止された収納袋とを容易に区別することができる。
【0007】
本発明の第二態様によれば、第一態様に係る貨幣処理装置は、前記袋支持部に支持された前記収納袋へのアクセスを規制する規制部を備えていてもよい。前記制御部は、前記操作部により前記返却操作を受け付けた場合、前記袋封止部による前記収納口の封止を完了した後に、前記規制部による前記アクセスの規制を解除させるようにしてもよい。
このように構成することで、収納口の封止されていない収納袋にユーザーが触れることを規制しつつ、収納袋の封止が完了した際には、自動的にアクセス規制を解除できるため、容易に収納袋を袋支持部から取り外すことが可能となる。
【0008】
本発明の第三態様によれば、第一態様に係る貨幣処理装置は、前記袋支持部に支持された前記収納袋へのアクセスを規制する規制部を備えていてもよい。前記制御部は、前記操作部によって前記収納操作を受け付けた場合、前記袋封止部によって前記収納口の封止を行わせた後に、前記収納袋に収納された貨幣の計数情報を前記印字部によって前記収納袋に印字させて、前記規制部によって前記アクセスの規制を解除させるようにしてもよい。
このように構成することで、ユーザーによって収納操作がなされた場合には、収納袋の収納口が封止された後に、計数情報が印字されて、アクセスの規制が解除される。そのため、アクセスの規制が解除された際には、収納袋の収納口が封止されて計数情報が印字された状態にすることができるため、セキュリティ性を向上しつつ、収納袋に印字された計数情報の信頼性を向上することができる。
【0009】
本発明の第四態様によれば、第二又は第三態様に係る貨幣処理装置の操作部は、前記収納袋へのアクセスの規制を解除するアクセス規制解除操作を更に受け付け可能であってもよい。前記制御部は、前記袋封止部による前記収納口の封止を完了した後に、前記操作部で前記アクセス規制解除操作を受け付けた場合、前記規制部による前記アクセスの規制を解除させるようにしてもよい。
このように構成することで、操作部がアクセス規制解除操作を受け付けた場合にのみ、収納袋へのアクセス規制を解除して、収納口を封止された収納袋を袋支持部から取り外すことができる。したがって、ユーザーの意図しないアクセス規制の解除を抑制して、更なるセキュリティ性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セキュリティ性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態における貨幣処理装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態における貨幣処理装置の封入作業空間部内を示す部分断面図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるブロック図である。
【
図4】上記封入作業空間部に設けられたスライド台を前方へ引き出した状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態における袋支持部を拡大した斜視図である。
【
図6】上記袋支持部のローラー支持部が閉塞位置にある状態を示す側面図である。
【
図7】上記袋支持部の挟持ロック部のロック解除状態を示す側面図である。
【
図8】上記袋支持部のローラー支持部が開放位置にある状態を示す側面図である。
【
図9】本発明の実施形態における収納袋を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態における貨幣の封入処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る一実施形態の貨幣処理装置について図面に基づき説明する。
本実施形態の貨幣処理装置は、貨幣のうちの硬貨を計数処理するものであり、一括投入された金種混合の硬貨を識別および計数し金種別に分類することなく一括して放出することが可能な硬貨選別計数装置であり、且つ、識別及び計数した硬貨を収納袋に封入することが可能な硬貨封入機である。以下の説明における「前」は貨幣処理装置11の操作者側、「後」は貨幣処理装置11の操作者とは反対側、「左」は貨幣処理装置11の操作者から見て左側、「右」は貨幣処理装置11の操作者から見て右側である。
【0013】
<構成>
図1に示すように、貨幣処理装置11は、本体部21、投入部22、搬送部23、識別部24、リジェクト部25、計数シュート26、表示操作部27、操作部28、ジャーナル印字部29、前扉部30、を少なくとも備えている。本実施形態の貨幣処理装置11は、更に、袋検出部31、前扉ロック部32、記憶部33、電源部34、及び、制御部35を備えている。
【0014】
本体部21は、上述した表示操作部27、操作部28、ジャーナル印字部29、投入部22、搬送部23、識別部24、リジェクト部25、計数シュート26をそれぞれ纏めている筐体である。本実施形態の貨幣処理装置11は、本体部21の上面21u左側に投入部22を備え、本体部21の上面21u右側にジャーナル印字部29及、表示操作部27及び操作部28を備えている。さらに、本実施形態の貨幣処理装置11は、本体部21の前面21f左側にリジェクト部25及び計数シュート26を備えている。また、
図1から
図3に示すように、本体部21は、前面21f右側に前扉部30を備えており、この前扉部30の後方には、前面21f側から後方へ向かって凹む封入作業空間部40を備えている。
【0015】
投入部22は、硬貨を投入可能とされている。この投入部22は、上方に開口しており、投入された硬貨を収容すると共に、この収容した硬貨を一枚ずつ分離して搬送部23へ繰り出す。投入部22は、開閉可能な投入口カバー22cを備えている。投入口カバー22cは、硬貨投入時に開放され、それ以外の時は閉塞状態とされる。
【0016】
搬送部23は、投入部22から繰り出された硬貨を搬送する。搬送部23は、硬貨をリジェクト部25、計数シュート26及び袋シュート52(後述する)へ、それぞれ選択的に搬送可能に構成されている。
識別部24は、搬送部23により搬送中の硬貨の真偽、正損および金種を識別して金種別に計数する。識別部24は、現行の流通硬貨の全金種について計数可能であり、さらに各金種のいずれの組み合わせであっても計数可能とされている。
【0017】
リジェクト部25は、識別部24によって偽硬貨及び損硬貨と識別された硬貨を収容する。リジェクト部25は、本体部21の前面21fから前方に引き出し可能であり、例えば上方に開口した箱状に形成されている。ユーザーは、このリジェクト部25を手前に引き出してリジェクト部25内に収容された硬貨を取り出す。なお、本実施形態においてリジェクト部25の上方に電源スイッチ41が設けられている。
【0018】
計数シュート26は、リジェクト部25の右隣に配置されている。計数シュート26は、例えばヒートシール不可な麻袋等からなる他の収納袋(図示せず)の開口を着脱可能とされている。計数シュート26に装着された他の収納袋(図示せず)内には、搬送部23を介して計数シュート26へ搬送された硬貨が放出される。例えば、計数シュート26へ硬貨を放出するモードが選択されている場合、識別部24によって偽硬貨や損硬貨ではなく正常な硬貨と識別された硬貨が搬送部23により計数シュート26に搬送され、計数シュート26に装着された他の収納袋内に放出される。硬貨収納が完了した他の収納袋は、ユーザーによって、例えば下方へ引抜かれることで計数シュート26から取り外される。
【0019】
表示操作部27は、ユーザーに向けて各種の表示を行うと共に、ユーザーによる各種の操作入力を行うことが可能になっている。本実施形態の表示操作部27は、少なくとも収納操作及び返却操作を受け付け可能とされている。表示操作部27は、収納操作を受け付ける「収納」ボタンと、返却操作を受け付ける「返却」ボタンとが表示される。また、表示操作部27は、前扉ロック部32による前扉部30のロックを解除する「前扉開」ボタンが表示され、前扉部30のロック解除操作を受け付け可能とされている。本実施形態の表示操作部27としては、例えば、タッチパネルを例示できる。
【0020】
操作部28は、表示操作部27の前方に配置されている。操作部28は、貨幣の封入処理を開始させると共に、貨幣の封入処理を一時的に停止させる「スタート/ストップ」ボタン28Aと、貨幣の封入処理を完了させる「完了」ボタン28Bとを備えている。
なお、「スタート/ストップ」ボタン28A及び「完了」ボタン28Bを表示操作部27に表示させるようにしても良い。更に、「収納」ボタン、「返却」ボタン及び「前扉開」ボタンを操作部28に設けるようにしても良い。
ジャーナル印字部29は、ロール紙等の用紙に、識別部24による識別及び計数結果等の印字を行う。
【0021】
前扉部30は、本体部21に開閉可能に取り付けられている。本実施形態の前扉部30は、本体部21に対しその下縁左右方向に延びる軸線回りに揺動可能に支持されている。本体部21の内部には、前扉部30によって閉塞される封入作業空間部40が形成されており、前扉部30を開放することで、この封入作業空間部40が前方に向かって開口する。
【0022】
図2に示すように、貨幣処理装置11は、更に、スライド台51、袋シュート52、袋支持部53、袋封止部54、袋印字部55を備えている。
スライド台51は、封入作業空間部40を画成する本体部21の底面21b上に設けられ、本体部21の前後方向にスライド可能に設けられている。これによりスライド台51は、前扉部30を開放した状態のときに、封入作業空間部40から本体部21の前方へ引き出し可能とされている。スライド台51は、封入作業空間部40の底面21bに沿って広がるベース部51bと、このベース部51bの左側縁部から上方に向かって延びる突出部51pとを有している。スライド台51のベース部51bの右側上面には、袋印字部55が設置されている。スライド台51の突出部51pの上部には、袋シュート52が取り付けられている。さらに袋シュート52の周囲には、突出部51pと共に袋シュート52を覆うように袋支持部53が設けられている。このように形成されたスライド台51によって、袋支持部53、袋シュート52及び袋印字部55は、スライド台51と共に本体部21の前面21f側に一体的に引き出すことが可能となっている。
【0023】
袋シュート52は、識別部24によって正常な硬貨と識別された硬貨を搬送部23から袋支持部53に装着された収納袋80に導く。袋シュート52は、例えば、筒状に形成され、下方を向く開口部(図示せず)を備えている。この袋シュート52の開口部は、上述した突出部51pの上部に位置している。本実施形態の袋シュート52は、左上方から右下方に向かって傾斜するように延びている。
【0024】
図5に示すように、本実施形態の袋支持部53は、硬貨を収納可能で且つヒートシール可能な収納袋80を着脱可能に支持する。より具体的には、袋支持部53は、収納袋80の収納口81に袋シュート52が挿入された状態で支持可能とされている。この袋支持部53に支持された収納袋80内には、搬送部23によって搬送された硬貨が袋シュート52を介して放出される。
【0025】
袋支持部53は、袋挟持部56と、ローラー駆動部57と、を備えている。
袋挟持部56は、袋シュート52の前方側と後方側とにおいてそれぞれ収納袋80を挟持可能に構成されている。袋挟持部56は、ローラー支持部58と、挟持ロック部59と、袋挟持ローラー60と、を有している。
【0026】
ローラー支持部58は、前後に延びる軸線回りに回動可能なようにスライド台51の突出部51pの上部に取り付けられている。本実施形態のローラー支持部58は、突出部51pを前後方向から挟み込むように形成された一対の側壁部61と、袋シュート52から遠い側の側壁部61の外側縁部同士を繋ぐ主壁部62とを備えている。ローラー支持部58は、その下部を突出部51pに近い側へ回動させた閉塞位置(
図6参照)と、突出部51pから離間する側へ回動させた開放位置(
図8参照)との間で変位可能とされている。
【0027】
挟持ロック部59は、閉塞位置から開放位置へのローラー支持部58の変位を規制する。挟持ロック部59は、ロック部本体63と、被係合部64と、を備えている。ロック部本体63は、ローラー支持部58に回動可能に取り付けられている。ロック部本体63は、ローラー支持部58の側壁部61に支持された一対の係合アーム部65を備えている。これら係合アーム部65は、前後方向に延びる軸線回りに回動可能とされている。これら係合アーム部65の端部は、スライド台51の突出部51pの上部外面に対向する位置に配置されている。そして、係合アーム部65の端部には、上方に向けて突出する係合爪部66が形成されている。
【0028】
一対の係合アーム部65の基部は、前後方向に延びる係合アーム接続部67により接続されている。係合アーム接続部67の前後中央部には、ユーザーが挟持ロック部59によるロックを解除するために操作する把持部68が設けられている。ロック部本体63の係合アーム部65の係合爪部66は、図示しないトーションばねなどによって上方に向かって付勢されている。一方で、本実施形態の係合爪部66は、その左上に傾斜面66iを有している。この傾斜面66iを備えることで、ローラー支持部58を開放位置から閉塞位置へ変位させた際に、後述する被係合部64に傾斜面66iが接触して、係合アーム部65の端部が下方へ押し下げられる。
【0029】
被係合部64は、スライド台51の突出部51pの外面から突出している。より具体的には、被係合部64は、突出部51pのうち前方側の外面と、後方側の外面とにそれぞれ形成されている。これら被係合部64は、上述した一対の係合アーム部65の係合爪部66がそれぞれ係合可能とされている。本実施形態の被係合部64は、前後方向に延びる円柱状に形成されている。被係合部64に係合アーム部65の係合爪部66が係合された状態では、ローラー支持部58が開放位置に向かって変位することが不能なロック状態となる。その一方で、ユーザーにより把持部68が押し上げられることで、ローラー支持部58の開放位置への変位が可能なロック解除状態となる。
【0030】
袋挟持ローラー60は、収納袋80を挟持する。袋挟持ローラー60は、対をなす第一袋挟持ローラー60Aと第二袋挟持ローラー60Bとを有している。本実施形態では、対をなす第一袋挟持ローラー60Aと第二袋挟持ローラー60Bとは、袋支持部53の前方側と後方側とに一対ずつ配置されている。
【0031】
第一袋挟持ローラー60Aは、ローラー支持部58の下部に設けられている。第一袋挟持ローラー60Aは、ローラー支持部58の二つの側壁部61に一つずつ設けられている。これら二つの第一袋挟持ローラー60Aは、それぞれ前後方向に延びる軸線回りに回動自在に支持されている。第二袋挟持ローラー60Bは、スライド台51の突出部51pのうち前方側の外面と、後方側の外面とにそれぞれ設けられている。これら第二袋挟持ローラー60Bは、前後方向に延びる軸線回りに回動可能とされ、駆動ベルト等の動力伝達部材69を介してローラー駆動部57に連係されている。また、ローラー支持部58が閉塞位置にある場合、これら第二袋挟持ローラー60Bの外周面は、それぞれ第一袋挟持ローラー60Aの外周面との間に収納袋80を挟み込んで保持することが可能となっている。さらに、第二袋挟持ローラー60Bを駆動ローラーとして回転させることで、第一袋挟持ローラー60Aと第二袋挟持ローラー60Bとにより挟持した収納袋80の位置を、袋シュート52の延びる方向へ移動させることが可能となっている。
【0032】
ローラー駆動部57は、例えば、駆動モーターを有している。ローラー駆動部57は、スライド台51の突出部51pに設けられている。ローラー駆動部57は、駆動ベルト等の動力伝達部材69を介して第二袋挟持ローラー60Bと連係されている。ローラー駆動部57は、第二袋挟持ローラー60Bを一方向及び他方向に回転させることが可能となっている。
【0033】
袋封止部54は、上述した袋支持部53に支持された収納袋80を封止することで密閉する。
図2から
図4に示すように、袋封止部54は、収納袋80を熱溶着する一対のヒーター70と、ヒーター70を移動させるヒーター駆動部71とを有している。本実施形態における一対のヒーター70は、それぞれ前後方向に延びる直線状に形成されている。これら一対のヒーター70は、収納袋80の収納口81近傍を挟み込むことで熱溶着(ヒートシール)可能とされている。ヒーター70は、本体部21の封入作業空間部40に配置されている。ヒーター70は、袋支持部53よりも下方に配置されている。ヒーター駆動部71は、本体部21の封入作業空間部40の背面部40bに設けられている。ヒーター駆動部71は、一対のヒーター70のうちの少なくとも一方のヒーター70を直線的に移動(直動)させて、一対のヒーター70を近接及び離間させる。言い換えれば、一対のヒーター70は、互いに離間されて収納袋80の熱溶着を行わない離間位置(
図4参照)と、互いに近接して収納袋80の熱溶着を行う溶着位置(
図2参照)との間で変位可能とされている。
【0034】
袋印字部55は、収納袋80に各種情報を印字可能なプリンターである。
図2、
図4に示すように、袋印字部55は、スライド台51のベース部51bの上面に設けられている。本実施形態の袋印字部55は、インクジェット式のプリンターであり、袋支持部53に支持された収納袋80に計数情報等を印字することが可能となっている。また、本実施形態の袋印字部55は、袋支持部53に近い側の端部が上方に変位可能に設けられている。言い換えれば、袋支持部53とは反対側の袋印字部55の下縁部が前後方向に延びる軸線回りに回動可能に支持されている。そして、袋印字部55とベース部51bとの間に、袋支持部53に支持された収納袋80の一部(下部)が配置可能となっている。そして、袋印字部55は、収納袋80の下部近傍に、例えば、「局名(カナ)」、「封入年月日(西暦表示)」、「金種明細(金種毎の枚数)」、「合計金額」、「通番(4桁)」を一段又は多段に印字する。この袋印字部55は、袋シュート52及び袋装着部と同様に、スライド台51と共に本体部21の前面21f側に引き出すことが可能となっている。
【0035】
図3に示すように、袋検出部31は、スライド台51が本体部21内に収容されている際に袋支持部53に収納袋80が支持されているか否かを検出する。袋検出部31は、本体部21の封入作業空間部40内に設けられている。
前扉ロック部(規制部)32は、本体部21に設けられた電磁ロックであり、前扉部30をロック(施錠)する。この前扉ロック部32は、例えば、封入作業空間部40内に収納袋80を収納して閉塞された前扉部30をロックし、収納袋80が封止された後に前扉部30のロックを解除する。
【0036】
記憶部33は、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)や、ROM(リードオンリーメモリー)や、RAM(ランダムアクセスメモリー)等の記憶媒体からなる。記憶部33は、本実施形態の貨幣処理装置11の機能構成を実現するプログラムや、ユーザーの識別情報などが予め記憶されている。
制御部35は、記憶部33に記憶されたプログラムを実行して、貨幣処理装置11の有する各部の制御を行う。
電源部34は、貨幣処理装置11の各部へ電力を供給する。
【0037】
図9に示すように、収納袋80は、例えば、ポリエチレン製やポリプロピレン製等のポリ袋である。本実施形態の収納袋80は、少なくとも一部に透過性を有しており、内容物を外部から視認できるようになっている。また、収納袋80は、その内部に500枚まで硬貨を封入することが可能となっている。収納袋80は、収納口81を上方に向けた姿勢で、硬貨を収納口81から収納する。本実施形態の収納袋80には、金種混合状態の硬貨が収納される。収納袋80は、収納口81を上方へ向けた姿勢で側部となる二つの縁部に、上下方向に延びる被支持部82を備えている。これら被支持部82は、上述した袋挟持ローラー60に挟持される部分であり、溶着等により補強されている。この収納袋80は、上述したように、その内部に硬貨が収納された後に、袋封止部54によって熱溶着(ヒートシール)されて封止され密閉される。そして、収納袋80の一方の面の下部近傍には、「局名(カナ)」、「封入年月日(西暦表示)」、「金種明細(金種毎の枚数)」、「合計金額」、「通番(4桁)」等が印字部によって一段又は多段に印字される。
【0038】
<動作>
次に、上述した貨幣処理装置11の動作について説明する。
《収納袋の取り付け》
先ず、ユーザーは、表示操作部27に表示された「前扉開」ボタンを押す。この「前扉開」ボタンを押す操作は、前扉ロック部32による前扉部30のロックを解除するための操作であり、言い換えれば、収納袋80へのアクセスの規制を解除するアクセス規制解除操作である。制御部35は、「前扉開」ボタンが押されると、前扉ロック部32による前扉部30のロックを解除する。そして、ユーザーは、前扉部30を開放してスライド台51を本体部21の前面21f側に引き出す。これにより、袋シュート52、袋支持部53、及び袋印字部55が、スライド台51と共に、本体部21の前面21f側に引き出される(
図4参照)。
【0039】
次に、ユーザーは、袋支持部53に収納袋80を取り付けて支持させる。より具体的には、先ずユーザーは、挟持ロック部59の把持部68を上方へ持ち上げる(
図6、
図7参照)。すると、挟持ロック部59の係合アーム部65が回動し、係合爪部66が被係合部64から下方へ変位してロック解除状態となる(
図7参照)。これにより、ローラー支持部58が閉塞位置から開放位置へ変位可能となる。この状態で、ユーザーは、ローラー支持部58を開放位置へ向かって変位させる(
図8参照)。すると、第一袋挟持ローラー60Aが第二袋挟持ローラー60Bから離間するので、この状態でユーザーは、収納袋80の収納口81に袋シュート52を挿入させる。これにより、収納袋80が袋シュート52に被さった状態となる。この際、収納袋80の被支持部82を第一袋挟持ローラー60Aと第二袋挟持ローラー60Bとの間に配置する。次いで、ユーザーは、ローラー支持部58を開放位置から閉塞位置へ回動させる。これにより、第一袋挟持ローラー60Aと第二袋挟持ローラー60Bとの間に被支持部82が挟持されて収納袋80が袋支持部53に支持された状態になると共に、係合爪部66が被係合部64に係合して挟持ロック部59がロック状態になる(
図2、
図4参照)。これにより、袋支持部53に収納袋80を支持させた状態が維持される。
【0040】
ユーザーは、更に、袋印字部55を上方に回動させて袋印字部55とスライド台51のベース部51bとを離間させる。そして、ユーザーは、この状態で、収納袋80の下部を袋印字部55の下面とベース部51bの上面との間に配置する。さらに、ユーザーは、袋印字部55を元の位置に戻すべく袋印字部55を下方に回動させる。これにより収納袋80の下部が袋印字部55とベース部51bとに挟まれるように配置され、袋印字部55によって印字可能な状態となる。
【0041】
その後、ユーザーは、スライド台51を本体部21側に押し込むことで、スライド台51を封入作業空間部40内に収納する。このようにスライド台51を封入作業空間部40内に収納すると、袋封止部54の一対のヒーター70間に収納袋80が配置される。次いで、ユーザーは、開放している前扉部30を閉塞する。前扉部30が閉塞されると、制御部35は、前扉ロック部32によって前扉部30をロックさせる。これにより、前扉部30が、ユーザーにより開放できない状態、すなわち収納袋80へのアクセスが規制された状態となる。
【0042】
《貨幣の封入処理》
次に、貨幣の封入処理について
図10のフローチャートを参照しながら説明する。
[識別、計数及び搬送]
まず、ユーザーは、投入口カバー22cを上方に回動させて開放状態にする。これにより投入部22に硬貨を投入可能な状態となる。そして、ユーザーは、投入部22に金種混合状態の硬貨を投入し、操作部28の「スタート/ストップ」ボタン28Aを押下する(ステップS01)。すると、制御部35によって、投入部22に投入した硬貨の計数が開始される(ステップS02)。
【0043】
さらに、上記ステップS02では、制御部35は、袋検出部31の検出結果に基づいて、袋支持部53に収納袋80が支持された状態か否を判定すると共に、前扉ロック部32の制御状況に基づいて前扉部30がロック状態であるか否か判定する。これらの判定の結果、袋支持部53に収納袋80が支持された状態であり、且つ、前扉部30がロック状態であると判定された場合、制御部35は、投入部22を駆動させて、投入部22に投入された硬貨を搬送部23に1枚ずつ繰り出させる。そして、制御部35は、投入部22から繰り出された硬貨を、識別部24によって識別(正損、真偽、金種等)及び計数させ、この識別及び計数結果の情報を記憶部33に記憶させる。その一方で、制御部35は、収納袋80の支持と前扉部30のロックとの何れか一方が行われていないと判定された場合、投入部22を駆動させずに、表示操作部27に、収納袋80の支持と前扉部30のロックとの何れか一方が行われていない旨を表示させる。
【0044】
次に、制御部35は、識別部24によって識別された識別結果に応じた搬送先に硬貨を搬送する(ステップS03)。具体的には、制御部35は、識別部24によって正常(正硬貨且つ真硬貨)と識別された硬貨を、搬送部23によって袋シュート52へ搬送し、この袋シュート52を介して袋支持部53に支持された収納袋80内に収納させる。その一方で、制御部35は、識別部24によって正常ではないと識別された硬貨(損硬貨又は偽硬貨)を、搬送部23によって、リジェクト部25に搬送させる。リジェクト部25に搬送された硬貨は、リジェクト部25内に貯留される。その後、識別及び計数が終了するまで硬貨の搬送が継続される(ステップS04)。
【0045】
その後、制御部35は、投入された全ての硬貨の識別及び計数が終了して全ての硬貨の搬送が完了すると、記憶部33に記憶された計数情報に基づいて表示操作部27に「金種明細(金種毎の枚数)」及び「合計金額」等の情報を表示する共に、表示操作部27に「収納」ボタンと「返却」ボタンとを表示させる。
【0046】
[収納処理]
ここで、ユーザーによって表示操作部27に表示された「収納」ボタンが押されると、制御部35は、ローラー駆動部57によって袋挟持ローラー60を回転させて、収納袋80の挟持位置を収納袋80の下方へと少しずらす(ステップS05)。言い換えれば、制御部35は、ローラー駆動部57を制御することで、収納袋80の挟持位置を、収納袋80内に硬貨を放出させるための袋シュート保持開始位置から、袋封止部54によって収納袋80を封止するための封止位置へと移動させる。
【0047】
その後、制御部35は、収納袋80を封止するべく、ヒーター駆動部71によって一対のヒーター70の少なくとも一方を互いに近接する方向に直動させる(ステップS06)。これにより一対のヒーター70が、離間位置(言い換えれば、待機位置)から溶着を行う溶着位置に変位する。そして、一対のヒーター70によって収納袋80の収納口81の近傍が挟み込まれる。この一対のヒーター70による収納袋80の挟み込みは、所定時間継続され、これにより収納口81が熱溶着されて、収納袋80が密閉され封止された状態となる。制御部35は、一対のヒーター70により収納袋80を挟み込んだ状態で所定時間経過した後、ヒーター駆動部71によってこれら一対のヒーター70を離間させる方向に直動させる。つまり、一対のヒーター70は、溶着位置から離間位置へ戻される。
【0048】
[収納印字処理]
次いで、制御部35は、袋印字部55によって収納袋80に識別及び計数情報等を印字させる(ステップS07)。この際、制御部35は、袋印字部55によって収納袋80の下部に、例えば「局名(カナ)」、「封入年月日(西暦表示)」、「金種明細(金種毎の枚数)」、「合計金額」、「通番(4桁)」等を一段又は多段に印字させる。
【0049】
[前扉ロック解除処理]
上記収納袋80への印字が完了すると、制御部35は、表示操作部27に「前扉開」ボタンを表示する(ステップS08)。そして、ユーザーにより「前扉開」ボタンが押されると、制御部35は、前扉ロック部32によって前扉のロックを解除させる。これにより、ユーザーによる前扉部30の開放が可能な状態になる。また制御部35は、表示操作部27に表示する等して、収納袋80が取出し可能な状態になった旨をユーザーに報知する(ステップS09)。
【0050】
この報知を受けたユーザーは、前扉部30を開放してスライド台51を本体部21の前面21f側に引き出す。そして、ユーザーは、挟持ロック部59の把持部68を上方へ持ち上げることで、挟持ロック部59を上方に回動させ、係合爪部66と被係合部64との係合状態を解除する。さらに、ユーザーは、ローラー支持部58を上方に回動させて第一袋挟持ローラー60Aを第二袋挟持ローラー60Bから離間させ、収納袋80の上部を袋シュート52から引き抜いて取り外す。さらにユーザーは、袋印字部55を上方に回動させて収納袋80の下部を袋印字部55の下面とスライド台51のベース部51bとの間から引き抜く。そして、ユーザーは、収納袋80を、貨幣処理装置11から取り出す(ステップS10)。
【0051】
その後、ユーザーは、スライド台51を本体部21側に押し込み、スライド台51を本体部21の封入作業空間部40に収納し、前扉部30を閉塞する。前扉部30が閉塞されると、制御部35は、前扉ロック部32によって前扉部30をロックさせる(ステップS11)。次いで、ユーザーにより操作部28の「完了」ボタン28Bが押下されると、制御部35は、封入処理を終了する(ステップS12)。そして、制御部35は、ジャーナル印字部29によって、ジャーナルに「封入年月日(西暦表示)」、「金種明細(金種毎の枚数)」、「合計金額」、「通番(4桁)」等の識別及び計数情報を印字させる。
【0052】
なお、ステップS10では、収納袋80を取り出して前扉部30を閉塞する場合について説明したが、収納袋80を取り出す際に、ユーザーが新たな空の収納袋80を袋支持部53に支持させてから前扉部30を閉塞する(ステップS11)ようにしてもよい。この場合、ステップS12により「完了」ボタン28Bが押下された後に、ステップS01に戻ることで、連続して封入処理を行うことができる。
【0053】
[返却処理]
一方で、上述したステップS04において、表示操作部27に表示された「収納」ボタンと「返却」ボタンとのうち、「返却」ボタンがユーザーによって押された場合、制御部35は、ローラー駆動部57によって袋挟持ローラー60を回転させて、収納袋80の挟持位置を収納袋80の下方へと少しずらす(ステップS13)。つまり、制御部35は、「収納」ボタンが押された場合と同様に、ローラー駆動部57を制御することで、収納袋80の挟持位置を、収納袋80内に硬貨を放出させるための袋シュート保持開始位置から、袋封止部54によって収納袋80を封止するための封止位置へと移動させる。
【0054】
その後、制御部35は、収納袋80を封止するべく、ヒーター駆動部71によって一対のヒーター70の少なくとも一方を互いに近接する方向に直動させる(ステップS14)。これにより一対のヒーター70が、離間位置(言い換えれば、待機位置)から溶着を行う溶着位置に変位する。そして、一対のヒーター70によって収納袋80の収納口81の近傍が挟み込まれる。この一対のヒーター70による収納袋80の挟み込みは、所定時間継続され、これにより収納口81が熱溶着されて、収納袋80が密閉され封止された状態となる。制御部35は、一対のヒーター70により収納袋80を挟み込んだ状態で所定時間経過した後、ヒーター駆動部71によってこれら一対のヒーター70を離間させる方向に直動させる。つまり、一対のヒーター70は、溶着位置から離間位置へ戻される。
【0055】
[返却印字処理]
次いで、制御部35は、袋印字部55によって、収納袋80に封入された硬貨が返却硬貨である旨を示す返却情報を収納袋80に印字させる(ステップS15)。制御部35は、袋印字部55によって収納袋80の下部に、例えば「返却」と印字させる。なお、「返却」等の返却情報を印字すると共に、「局名(カナ)」、「返却年月日(西暦表示)」、「金種明細(金種毎の枚数)」、「合計金額」、「通番(4桁)」等の識別及び計数情報を一段又は多段に印字させるようにしても良い。
【0056】
その後、上述したステップS08からステップS10を行い、ユーザーは、貨幣処理装置11から収納袋80を取り出す。
【0057】
そして、ユーザーは、新しい収納袋80を袋支持部53に取り付け(ステップS16)、スライド台51を本体部21側に押し込みスライド台51を本体部21の封入作業空間部40に収納し、前扉部30を閉塞する。前扉部30が閉塞されると、制御部35は、前扉ロック部32によって前扉部30をロックさせる(ステップS17)。
【0058】
次いで、ユーザーは、取り出した収納袋80の封止を解き、収納袋80内に収納されていた返却硬貨を取り出して(ステップS18)、再度、投入部22へ投入し操作部28の「スタート/ストップ」ボタン28Aを押下する(ステップS01)。これにより、上述した一連の封入処理が、再度行われる。
【0059】
<作用効果>
上述した実施形態の貨幣処理装置11は、硬貨を投入可能な投入部22と、投入部22に投入された硬貨の識別及び計数を行う識別部24と、硬貨を収納するための収納袋80を着脱可能に支持する袋支持部53と、硬貨を収納した収納袋80の収納口81を封止する袋封止部54と、収納操作と返却操作とを受け付け可能な操作部28と、操作部28の受け付け結果に基づいて、少なくとも袋封止部54を制御する制御部35と、を備えている。さらに制御部35は、投入部22に投入され識別部24によって識別及び計数された硬貨が袋支持部53に支持された収納袋80に収納された状態で、操作部28により収納操作を受け付けた場合に、袋封止部54によって収納袋80の収納口81を封止させるようになっている。また制御部35は、投入部22に投入され識別部24によって識別された硬貨が袋支持部53に支持された収納袋80に収納された状態で、操作部28により返却操作を受け付けた場合にも、袋封止部54によって収納袋80の収納口81を封止させるようになっている。このような貨幣処理装置11によれば、硬貨を識別及び計数して収納袋80に封入する作業を容易に行うことができるため、ユーザーの作業負担を軽減することができる。さらに、硬貨を収納袋80に封入する際に、ユーザーが封入口の封止を行うことなく、袋封止部54によって自動的に行うことができるため、セキュリティの向上を図ることができる。また、返却操作がなされた場合に、収納袋80に収納させた状態で硬貨を返却するため、硬貨を一時的に貯留する一時貯留部や、硬貨を返却するための返却部等が不要となる。これにより、搬送部(貨幣経路)23を簡略化することができる。さらに、硬貨の返却時にも収納袋80を封止するため、例えば、収納袋80を袋支持部53から取り外す作業を行うときに、収納袋80内に収納された硬貨がこぼれることを防止できる。
【0060】
さらに、上記貨幣処理装置11は、収納袋80へ印字可能な印字部を備えている。そして制御部35は、操作部28により返却操作を受け付けた場合、収納袋80に封入された硬貨が返却硬貨であることを示す返却情報を、印字部によって収納袋80へ印字させている。このような貨幣処理装置11によれば、ユーザーは、収納袋80に印字された返却情報により、収納袋80に収納された硬貨が返却されたものであることを識別できる。したがって、収納操作により封止された収納袋80と、返却操作により封止された収納袋80とを容易に区別することができる。
【0061】
また、上記貨幣処理装置11は、袋支持部53に支持された収納袋80へのアクセスを規制する前扉ロック部32を備えている。そして制御部35は、操作部28により返却操作を受け付けた場合、袋封止部54による収納口81の封止を完了した後に、前扉ロック部32によるアクセスの規制を解除させるようにしている。このような貨幣処理装置11によれば、収納口81の封止されていない収納袋80にユーザーが触れることを規制しつつ、収納袋80の封止が完了した際には、自動的にアクセス規制を解除できるため、容易に収納袋80を袋支持部53から取り外すことが可能となる。
【0062】
さらに、上記貨幣処理装置11は、制御部35は、操作部28によって収納操作を受け付けた場合、袋封止部54によって収納口81の封止を行わせた後に、収納袋80に収納された硬貨の計数情報を印字部によって収納袋80に印字させて、前扉ロック部32によって前扉部30のロック(アクセスの規制)を解除させている。このような貨幣処理装置11によれば、ユーザーによって収納操作がなされた場合には、収納袋80の収納口81が封止された後に、計数情報が印字されて、アクセスの規制が解除される。そのため、アクセスの規制が解除された際には、収納袋80の収納口81が封止されて計数情報が印字された状態にすることができるため、セキュリティ性を向上しつつ、収納袋80に印字された計数情報の信頼性を向上することができる。
【0063】
また、上記貨幣処理装置11の操作部28は、収納袋80へのアクセスの規制を解除するアクセス規制解除操作を、表示操作部27に表示された「前扉開」により、更に受け付け可能とされている。そして制御部35は、袋封止部54による収納口81の封止を完了した後に、操作部28でアクセス規制解除操作を受け付けた場合、前扉ロック部32によるアクセスの規制を解除させている。このような貨幣処理装置11によれば、操作部28がアクセス規制解除操作を受け付けた場合にのみ、収納袋80へのアクセス規制を解除して、前扉部30を開放し、収納口81を封止された収納袋80を袋支持部53から取り外すことができる。したがって、ユーザーの意図しないアクセス規制の解除を抑制して、更なるセキュリティ性の向上を図ることができる。
【0064】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、投入部22内の硬貨の量が、袋支持部53に支持された収納袋80に封入可能な最大量(例えば500枚)を超過する場合、袋支持部53に支持された収納袋80に硬貨を最大量まで搬送(収納)した後に、当該収納袋80に収納しきれない硬貨を、計数シュート26に搬送して、計数シュート26に取り付けられた他の収納袋(麻袋等)に収納するようにしても良い。
【0065】
また、投入部22へ投入された硬貨の量が収納袋80に封入可能な最大量(例えば500枚)を超過する場合、例えば、収納袋80に硬貨を最大容量まで搬送(収納)した後に、各種動作(計数処理や搬送処理)を一旦停止して、収納袋80に収納された硬貨の封入処理を行った後に、表示操作部27等によってユーザーに収納袋80の交換を促し、収納袋80の交換を検知した後に計数処理や搬送処理を再開して、収納袋80への封入を継続するようにしても良い。またこの際、制御部35は、袋印字部55により、1袋目の収納袋80に「1234-1」、2袋目の収納袋80に「1234-2」等、収納袋80に通番と枝番とを印字させるようにしても良い。
【0066】
さらに、上記実施形態では、「収納」ボタン又は「返却」ボタンが押された場合に、収納袋80の収納口81を封止し、収納袋80に計数情報等を印字した後に、「前扉開」ボタンを表示し、表示した「前扉開」ボタンが押されると、前扉部30のロックを解除して、収納袋80を取り出し可能にしていた。しかし、この構成に限られず、「収納」ボタン又は「返却」ボタンが押され、収納袋80の収納口81を封止し、収納袋80に計数情報等を印字した後には、例えば、「前扉開」ボタンを表示せずに、連続して、前扉部30のロックを解除して、収納袋80を取り出し可能にするようにしても良い。
【0067】
また、上記実施形態では、貨幣処理装置11が識別及び計数した硬貨を収納袋80に封入するいわゆる硬貨封入機である場合について説明したが、貨幣処理装置11は、収納袋80に硬貨を封入する硬貨封入機に限定されるものではなく、例えば、収納袋80に紙幣等の紙葉類を封入する紙葉類封入機であっても良い。
【0068】
また、スライド台51のベース部51bに、スライドレール等のスライド部材を介して本体部21の左右方向にスライド可能に設けられた印字ベース部と、印字ベース部を駆動させる印字ベース駆動部とを備えると共に、印字ベース部の上面に袋印字部55を設置し、制御部35は、袋印字部55によって収納袋80に各種の情報を印字する際に、印字ベース駆動部によって印字ベース部をスライドさせて、袋印字部55によって収納袋80に各種の情報を多段に印字するようにしても良い。
【0069】
また、制御部35は、返却印字処理の際に、「返却」等の返却情報のみを赤字で印字させる、又は、「返却」等の返却情報と識別及び計数情報とを赤字で印字させる等して、収納印字処理とは異なる色彩で印字するようにしても良い。これにより、収納操作により封止された収納袋80と、返却操作により封止された収納袋80とをより容易に区別することができる。
【符号の説明】
【0070】
11…貨幣処理装置 21…本体部 21u…上面 21f…前面 21b…底面 22…投入部 22c…投入口カバー 23…搬送部 24…識別部 25…リジェクト部 26…計数シュート 27…表示操作部 28…操作部 29…ジャーナル印字部 30…前扉部 31…袋検出部 32…前扉ロック部 33…記憶部 34…電源部 35…制御部 40…封入作業空間部 40b…背面部 41…電源スイッチ 51…スライド台 51b…ベース部 51p…突出部 52…袋シュート 53…袋支持部 54…袋封止部 55…袋印字部 56…袋挟持部 57…ローラー駆動部 58…ローラー支持部 59…挟持ロック部 60…袋挟持ローラー 61…側壁部 62…主壁部 63…ロック部本体 64…被係合部 65…係合アーム部 66…係合爪部 66i…傾斜面 67…係合アーム接続部 68…把持部 69…動力伝達部材 70…ヒーター 71…ヒーター駆動部 80…収納袋 81…収納口 82…被支持部