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  • 特許-半導体装置および半導体システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/58 20060101AFI20241105BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20241105BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241105BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241105BHJP
【FI】
H01L23/56 Z
H01L23/00 C
H01L25/04 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022503648
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006856
(87)【国際公開番号】W WO2021172355
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2020029508
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼田 秀彰
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168590(JP,A)
【文献】特開2017-5125(JP,A)
【文献】特開2018-115049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/58
H01L 23/00
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置され、それぞれの対向面に配線を備える第一および第二の電極層と、
前記第一および第二の電極層の隙間に配置され、前記第一および第二の電極層に電気接続される半導体素子と、
前記第一および第二の電極層の前記隙間に配置され、前記第一および第二の電極層と電気接続するとともに、所定の温度となった場合に破断して電気的接続が失われることで前記半導体素子の状態を検知するビアと、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ビアは、熱膨張係数の高い材料との熱膨張の違いにより生じる引っ張り応力によって破断するよう構成されていることを特徴とする、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ビアは、溶融して破断するよう構成されていることを特徴とする、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子への電力供給のための回路と、前記ビアへの電力供給のための回路とは異なる回路であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体素子はパワー半導体を含むことを特徴とする、請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
対向配置され、それぞれの対向面に配線を備える第一および第二の電極層と、
前記第一および第二の電極層の隙間に配置され、前記第一および第二の電極層に電気接続される半導体素子と、
前記第一および第二の電極層の前記隙間に配置され、前記第一および第二の電極層と電気接続するとともに、所定の温度となった場合に破断して電気的接続が失われるよう構成されたビアと、
前記ビアの電気信号に基づき制御信号を生成する監視制御部と、
を有することを特徴とする半導体システム。
【請求項7】
前記ビアは、熱膨張係数の高い材料との熱膨張の違いにより生じる引っ張り応力によって破断するよう構成されていることを特徴とする、請求項6記載の半導体システム。
【請求項8】
前記ビアは、溶融して破断するよう構成されていることを特徴とする、請求項6記載の半導体システム。
【請求項9】
前記半導体素子への電力供給のための回路と、前記ビアへの電力供給のための回路とは異なる回路であることを特徴とする請求項6記載の半導体システム。
【請求項10】
前記半導体素子はパワー半導体を含むことを特徴とする、請求項6記載の半導体システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子を搭載する半導体装置および半導体システムに係り、特に、発熱に対する保護回路を容易に構成することのできる半導体装置および半導体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サイリスタや、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、あるいはパワートランジスタ、パワーMOSFETなどのパワー半導体は幅広い応用範囲で使用されている。パワー半導体は、10Aを超える電流および/または500Vを超える電圧を切り替え可能なパワー半導体スイッチを含み得る。
【0003】
パワー半導体の開発は、スイッチングの速いデバイスの方向に向かっている。シリコン(Si)系デバイスを最適化し、ワイドバンドギャップ半導体材料、たとえば炭化ケイ素(SiC)または窒化ガリウム(GaN)系デバイス、さらには酸化ガリウム(Ga)を使用することによって、スイッチング時間を短縮可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3664129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、車両用・産業用等の各種応用分野において、半導体を搭載した半導体装置の小型化・高性能化の要求が高まっており、それに伴い熱的影響への対策も必要不可欠となりつつある。例えば、半導体はある程度の熱負荷には耐えうるよう設計されているが、半導体が電極層内の閉空間に配置されている場合や、周囲の他の素子の熱的影響を受ける場合などにおいては、パワー半導体であったとしてもその機能が突然失われるなどの事態も予想され、そのような場合には制御対象に悪影響を与える危険性がある。
そこで本発明は、発熱に対する制御対象への悪影響を抑制することが可能な半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明の半導体装置は、対向配置され、それぞれの対向面に配線を備える第一および第二の電極層と、前記第一および第二の電極層の隙間に配置され、前記第一および第二の電極層に電気接続される半導体素子と、前記第一および第二の電極層の前記隙間に配置され、第一および第二の電極層と電気接続するとともに、所定の温度となった場合に破断して電気的接続が失われることで前記半導体素子の状態を検知するビアと、を有するものである。
【0007】
また、上記の課題を解決するために本発明の半導体システムは、対向配置され、それぞれの対向面に配線を備える第一および第二の電極層と、前記第一および第二の電極層の隙間に配置され、前記第一および第二の電極層に電気接続される半導体素子と、前記第一および第二の電極層の前記隙間に配置され、前記第一および第二の電極層と電気接続するとともに、所定の温度となった場合に破断して電気的接続が失われるよう構成されたビアと、前記ビアの電気信号に基づき制御信号を生成する監視制御部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ビアが破断することで電気的接続が失われるため、この電気的接続が失われた状態を検知することで、半導体素子の過負荷状態を検知できる。そのため、半導体素子への電流供給を停止するなどして制御対象への悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施態様に係る半導体装置の断面図。
図2】本発明の実施形態に係る半導体装置の回路構成を含む半導体システムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の半導体装置に係る実施形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図1は本発明に係る半導体装置の実施形態に係る断面図、図2図1をその上方向から見た場合の電気回路を含んだ半導体システムの概略構成図である。同図に示すように半導体装置100は、平行に配置された第一の電極層1および第二の電極層2で、半導体素子3,4を挟持している。第一の電極層1および第二の電極層2は、半導体素子3,4に対して複数の凸状の接点1a,2aを介して、半導体素子3,4の上下両面に形成された電極面3a,4aに接続している。これにより、電極層1,2は半導体素子3,4と電気的な接続がなされ、半導体素子3,4のスイッチング動作によって半導体装置100として求められる所望の動作が行われる。
【0012】
なお、半導体素子3は例えばショットキー・バリア・ダイオード(SBD)などのダイオードであり、半導体素子4は例えば絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、他にもバイポーラ・トランジスタ、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field effect transistor)等であってもよい。これらは半導体装置100としての適用対象やその仕様に応じて、回路構成を含めて適宜選択される。
【0013】
第一の電極層1および第二の電極層2には、半導体素子3,4に隣接した位置に、これら半導体素子3,4の厚みに相当する隙間が形成されており、この隙間にビア5が配置されている。ビア5はその上下両端を第一の電極層1および第二の電極層2の接点1b,2bに接続している。ビア5に接続する接点1b,2bは、半導体素子3,4に接続する接点1a,2aとは別の回路に属しており、異なる制御電流が流れる。
ビア5は、図2に示されるように、接点1b,2b間を電気的に接続するとともに、接点1bから接点2bに電流が流れるビアと、接点2bから接点1bに電流が流れるビアとが交互に並ぶように、同一回路上に複数個が直列配置されるように形成されている。もちろん、ビア5の個数は本実施形態に限定されるものではなく、1個以上あればよい。ビア5の具体的な機能については後述する。
【0014】
また、ここでは図示を省略するが、第一の電極層1および第二の電極層2に放熱機構が接続されていてもよい。放熱機構は、例えば放熱フィンなどのように放熱に係る表面積が広く形成されたものであってもよく、または空気や水を循環して熱交換する機構であってもよい。
【0015】
以上のように構成された本実施形態の半導体装置100において、半導体素子3,4にはスイッチング制御部10からの信号に基づき電流が印加され、半導体素子3,4に直列的に、もしくは各々に、スイッチング信号が供給される。ここで、半導体素子3がSBD、半導体素子4がIGBTの場合は図2に示すように、IGBT4内のゲート電極4aに電圧信号が入力される。これを受け、IGBT4内のエミッタ4bおよびSBD3内のアノード3aに流れる電流によりスイッチング動作が行われ、図示しない制御対象の制御が行われる。
【0016】
一方、複数のビア5が直列に接続された回路は半導体素子3,4とは別系統の回路であり、この回路はビア破断監視制御部11によって監視されている。また、ビア破断監視制御部11からの制御信号は、スイッチング制御部10に出力されるとともに、ここでは図示しない統括制御部にも供給される。統括制御部は、半導体装置100の上位システム、例えば半導体装置100が搭載される電気自動車や高速鉄道といった機器の制御に供される。
【0017】
本実施形態に係る半導体装置100においては、半導体装置の小型化・高性能化の要求が高まっており、さらに、パワー半導体素子の台頭もあいまって、熱的影響への対策が必要不可欠となりつつある。半導体素子3,4が電極層1,2間の閉空間に配置されている場合や、周囲の他の素子の熱的影響を受ける場合などにおいては、半導体装置100全体が高温に晒されることによる熱的限界を超えて半導体素子3,4が暴走したり機能停止したりする危険性がある。このような状況に至る前に半導体装置100を熱的負荷から解放するために、所定の熱条件で破断するビア5を半導体装置100内部に配置し、ビア5が破断して電気的接続が失われたことを電流検出により判断できるようにしている。
【0018】
本実施形態においては、複数のビア5を電極層1,2の適切な位置、例えば半導体素子4の近傍などに配置することで、当該半導体素子4もしくは近傍の熱的環境と同等の環境をビア5に再現させることができる。このようなビア5を電極層1,2の適宜な位置に配置して電気的に直列接続することにより、いずれか1つのビアが破断した場合であっても回路に電流が流れなくなることから、ビア破断監視制御部11が熱的負荷の限界と判断する。そして、半導体素子3,4をこれ以上動作させることを禁止すべくスイッチング制御部10に指令を出し、ゲート電極4aへの電圧印加により図示しないスイッチング素子へのON/OFF信号の制御を停止するか、あるいはOFF信号のみ供給するよう指令する。
【0019】
一方、統括制御部に対しても信号を出力することで、統括制御部は、半導体装置100が動作停止することに伴うバックアップ信号(例えば、熱的問題が生じていない他の半導体装置への制御切り替えなど)を生成するなどのシステム全体を司る指令を生成する。なお、本実施形態における半導体システムとは、本実施形態に係る半導体装置100に対して、スイッチング制御部10やビア破断監視制御部11あるいは図示しない制御対象などの少なくとも一つが加わったものを言う。
【0020】
ビア5を所定の温度に対して破断させる方法は幾つか考えられる。
例えば、第一および第二の電極層1,2を接続するエポキシ樹脂を配置し、該エポキシ樹脂にスルーホールを孔設するとともに、このスルーホールの内部にビア5を設ける。ビアは一般的には銅で形成されることが好ましい。半導体装置100が熱的影響を受けた場合、エポキシ樹脂と銅との熱膨張係数の違いにより、銅に過剰な引っ張り応力が作用することで破断する現象を利用する。一般的にエポキシ樹脂は電極層の材料であるため、電極層1,2と一体にスルーホールを形成し、その中にビアを設けることは比較的容易である。
【0021】
別の方法としては、ビア5を特定の融点で破断する材料もしくは構造で構成することもできる。例えば低融点はんだを材料としたビアや、断面の一部が細く形成されたビアなどで構成する。これにより、熱的影響の厳しい環境下におけるビアの溶融による破断を生じ易くさせることが可能である。
【0022】
上記いずれの場合も、ビア5を破断させるために必要となる許容温度を予め定めた上で、ビア5を適切に設計することで目的が達成される。
【0023】
また、半導体素子としてパワー半導体を用いた場合は、特に熱的な問題が顕著となり得ることから、本発明の効果を大いに期待できる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。例えば、本実施形態に示したよう半導体素子の両面に電極層が接続されている構造である必要はなく、半導体素子が電極層の片面のみに搭載されたものであってもよい。この場合、半導体装置がパッケージ状に閉空間に収納されるような形態が考えられる。また、搭載される半導体素子はいかなる半導体素子であってもよく、パワー半導体が含まれることが必須要件ではない。要するに、半導体装置の熱的問題を解消するという本発明の目的の範囲であれば、半導体素子の種類や個数、大きさ、許容電流値などは限定されない。
【符号の説明】
【0025】
1,2 電極層
3,4 半導体素子
5 ビア
10 スイッチング制御部
11 ビア破断監視制御部路
100 半導体装置

図1
図2