(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
A47J27/00 109B
A47J27/00 109G
(21)【出願番号】P 2020211895
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】寺島 幸之介
(72)【発明者】
【氏名】菅原 かほり
(72)【発明者】
【氏名】桝澤 岳史
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-078533(JP,A)
【文献】特開2010-035843(JP,A)
【文献】米国特許第05744783(US,A)
【文献】特開昭63-290524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対して着脱自在に収納される内釜と、
前記内釜を加熱する加熱部と、
前記加熱部の出力制御を行う制御部と、を有し、
前記加熱部によって前記内釜を加熱することにより、前記内釜に所定の調合比で準備された米穀及び水を加熱して炊き上げる炊き上げ工程、及び当該炊き上げ工程により炊き上げた米飯を前記加熱部によって前記内釜を加熱した状態で蒸らす蒸らし工程とを含む複数の工程を経て炊飯する炊飯運転を一又は複数の運転モードで運転可能であり、
前記運転モードに含まれる第一運転モードによる炊飯を行う場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第一炊上温度に達してから前記内釜の内部に水分が残存している間に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させるものであり、
前記炊飯運転が、前記内釜の温度を大気圧下における水の沸点を下回る所定温度まで昇温した状態にする前炊き工程を前記炊き上げ工程よりも前に行うものとされており、
前記第一運転モードとは異なる第二運転モードによる炊飯運転を行えるものであり、
前記第二運転モードが選択された場合に、前記制御部が、前記前炊き工程において所定の第二前炊温度まで昇温した状態を所定の第二前炊時間に亘って維持するように前記加熱部の出力制御を行った後、前記炊き上げ工程において、前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第二炊上温度に達した後、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程に移行する場合よりも前記内釜の内部における水分の残存量が減少した状態になった後に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させることにより炊飯を行い、
前記第一運転モードが選択された場合に、前記制御部が、前記前炊き工程において前記第二前炊温度よりも低温の第一前炊温度まで昇温した状態で前記第二前炊時間よりも長い第一前炊時間に亘って維持するように前記加熱部の出力制御を行った後、前記炊き上げ工程に移行させること、を特徴とす
る炊飯器。
【請求項2】
本体に対して着脱自在に収納される内釜と、
前記内釜を加熱する加熱部と、
前記加熱部の出力制御を行う制御部と、を有し、
前記加熱部によって前記内釜を加熱することにより、前記内釜に所定の調合比で準備された米穀及び水を加熱して炊き上げる炊き上げ工程、及び当該炊き上げ工程により炊き上げた米飯を前記加熱部によって前記内釜を加熱した状態で蒸らす蒸らし工程とを含む複数の工程を経て炊飯する炊飯運転を一又は複数の運転モードで運転可能であり、
前記運転モードに含まれる第一運転モードによる炊飯を行う場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第一炊上温度に達してから前記内釜の内部に水分が残存している間に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させるものであり、
前記第一運転モードとは異なる第二運転モードによる炊飯運転を行えるものであり、
前記第二運転モードが選択された場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において、前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第二炊上温度に達した後、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程に移行する場合よりも前記内釜の内部における水分の残存量が減少した状態になった後に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させることにより炊飯を行うものであり、
前記第一運転モードの前記炊き上げ工程において、前記第一炊上温度に達するまでの期間における前記内釜の昇温速度が、前記第二運転モードの前記炊き上げ工程において前記第二炊上温度に達するまでの期間における前記内釜の昇温速度よりも速くなるように前記加熱部の出力制御が行われること、を特徴とす
る炊飯器。
【請求項3】
本体に対して着脱自在に収納される内釜と、
前記内釜を加熱する加熱部と、
前記加熱部の出力制御を行う制御部と、を有し、
前記加熱部によって前記内釜を加熱することにより、前記内釜に所定の調合比で準備された米穀及び水を加熱して炊き上げる炊き上げ工程、及び当該炊き上げ工程により炊き上げた米飯を前記加熱部によって前記内釜を加熱した状態で蒸らす蒸らし工程とを含む複数の工程を経て炊飯する炊飯運転を一又は複数の運転モードで運転可能であり、
前記運転モードに含まれる第一運転モードによる炊飯を行う場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第一炊上温度に達してから前記内釜の内部に水分が残存している間に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させるものであり、
前記第一運転モードとは異なる第二運転モードによる炊飯運転を行えるものであり、
前記第二運転モードが選択された場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において、前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第二炊上温度に達した後、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程に移行する場合よりも前記内釜の内部における水分の残存量が減少した状態になった後に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させることにより炊飯を行うものであり、
前記第一運転モードにおいて前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと移行する際の前記内釜の温度が、前記第二運転モードにおいて前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと移行する際の前記内釜の温度よりも低く、大気圧下における水の沸点を越える温度になるように前記加熱部の出力制御が行われること、を特徴とす
る炊飯器。
【請求項4】
本体に対して着脱自在に収納される内釜と、
前記内釜を加熱する加熱部と、
前記加熱部の出力制御を行う制御部と、を有し、
前記加熱部によって前記内釜を加熱することにより、前記内釜に所定の調合比で準備された米穀及び水を加熱して炊き上げる炊き上げ工程、及び当該炊き上げ工程により炊き上げた米飯を前記加熱部によって前記内釜を加熱した状態で蒸らす蒸らし工程とを含む複数の工程を経て炊飯する炊飯運転を一又は複数の運転モードで運転可能であり、
前記運転モードに含まれる第一運転モードによる炊飯を行う場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第一炊上温度に達してから前記内釜の内部に水分が残存している間に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させるものであり、
前記第一運転モードとは異なる第二運転モードによる炊飯運転を行えるものであり、
前記第二運転モードが選択された場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において、前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第二炊上温度に達した後、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程に移行する場合よりも前記内釜の内部における水分の残存量が減少した状態になった後に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させることにより炊飯を行うものであり、
米穀の銘柄に応じて前記加熱部の出力、及び炊飯運転を構成する各工程の長さのいずれか一方又は双方を調整して炊飯する炊飯運転を、前記第二運転モードにより行えること、を特徴とす
る炊飯器。
【請求項5】
前記第一運転モードによる炊飯運転を行う場合に、前記制御部が、前記蒸らし工程において、前記内釜の温度が前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程への工程を移行直前における温度よりも低く、大気圧下における水の沸点を越える蒸らし温度を維持するように前記加熱部の出力制御を行うこと、を特徴とする請求項1
~4のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項6】
前記第一運転モードによる炊飯運転を行う場合に、前記炊き上げ工程において、前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える温度条件に達してから所定時間に亘って前記内釜の温度を維持する温度保持期間を有すること、を特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているような炊飯器が提供されている。特許文献1の炊飯器は、鍋の温度を検出する温度検出手段と、この温度検出手段の検出温度に基づいてドライアップ状態を検出するドライアップ検出手段と、タイマ手段と、制御手段とを備えたものとされている。この炊飯器においては、被煮炊物が最終に沸騰状態に達する時点について、温度検出手段による検出温度の一定時間当りの温度上昇値がドライアップ検出までにおいてほとんどなくなった時点と仮定して検出し、この検出時点にタイマ手段のカウントを開始し、予め設定された一定時間経過後炊飯を終了することにより、被煮炊物の最終沸騰時点から炊飯終了時点までの時間を一定にする制御を行うものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来技術の炊飯器においては、炊飯中の米穀がドライアップ状態に達したと判断された後に蒸らし工程に移行させるようにしている。そのため、従来技術の炊飯器においては、釜内に水分が無くなった状態で蒸らし工程を行なうことになる。従って、従来技術の炊飯器は、竈で炊いたような瑞々しい外観及び食感の米飯を炊き上げるための炊飯設定や調整が難しいいう問題がある。
【0005】
そこで本発明は、竈で炊いた米飯のように米穀を瑞々しい外観及び食感となるように炊飯可能な炊飯器の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の炊飯器は、本体に対して着脱自在に収納される内釜と、前記内釜を加熱する加熱部と、前記加熱部の出力制御を行う制御部と、を有し、前記加熱部によって前記内釜を加熱することにより、前記内釜に所定の調合比で準備された米穀及び水を加熱して炊き上げる炊き上げ工程、及び当該炊き上げ工程により炊き上げた米飯を前記加熱部によって前記内釜を加熱した状態で蒸らす蒸らし工程とを含む複数の工程を経て炊飯する炊飯運転を一又は複数の運転モードで運転可能であり、前記運転モードに含まれる第一運転モードによる炊飯を行う場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第一炊上温度に達してから前記内釜の内部に水分が残存している間に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させること、を特徴とするものである。
【0007】
本発明の炊飯器においては、第一運転モードによる炊飯を行う場合に、炊き上げ工程において内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第一炊上温度に達してから、内釜の内部に水分が残存している間に炊き上げ工程から蒸らし工程へと工程を移行させる制御を行うものとされている。そのため、例えば、従来技術のように米穀がドライアップ状態に達した後に蒸らし工程を行う場合等に比べて、本発明の炊飯器は、第一運転モードによる炊飯を行うことにより、竈で炊いた米飯のように米穀を瑞々しい外観及び食感となるように炊飯することができる。
【0008】
(1-2)上述した炊飯器は、前記第一炊上温度が摂氏110度であること、を特徴とするものであると良い。
【0009】
かかる構成によれば、内釜の内部に適度な水分を残した状態で炊き上げ工程から蒸らし工程に移行することができる。これにより、第一運転モードにより、竈で炊いた米飯のように米穀を瑞々しい外観及び食感となるように炊飯可能な炊飯器を提供できる。
【0010】
(1-3)上述した炊飯器は、前記内釜の内部における水分の残存量を監視可能な監視部を有すること、を特徴とするものであると良い。
【0011】
かかる構成によれば、第一運転モードによる炊飯運転時に、米穀を瑞々しい外観及び食感となるように炊飯するために最適な水分の残存量に達した段階で、炊き上げ工程から蒸らし工程に移行させることができる。
【0012】
(1-4)上述した炊飯器は、前記監視部が、前記内釜の内部にある被炊飯物の重量変化を指標として水分の残存量を監視可能であること、を特徴とするものであると良い。
【0013】
かかる構成によれば、内釜における水分の残存量を適切に監視し、最適なタイミングで炊き上げ工程から蒸らし工程に移行させることができる。
【0014】
(1-5)上述した炊飯器は、前記監視部が、前記内釜の内部における水位を検出可能な水位検出装置を備えていること、を特徴とするものであると良い。
【0015】
かかる構成によれば、内釜における水分の残存量を水位に基づいて適確に把握し、最適なタイミングで炊き上げ工程から蒸らし工程に移行させることができる。
【0016】
(2)上述した炊飯器は、前記第一運転モードによる炊飯運転を行う場合に、前記制御部が、前記蒸らし工程において、前記内釜の温度が前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程への工程を移行直前における温度よりも低く、大気圧下における水の沸点を越える蒸らし温度を維持するように前記加熱部の出力制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0017】
かかる構成によれば、蒸らし工程中も米飯がドライアップするのを抑制できる。これより、竈で炊いた米飯かのように、米穀を瑞々しい外観及び食感となるように炊飯可能とすることができる。
【0018】
(2-1)上述した炊飯器は、前記蒸らし温度が、摂氏102度とされること、を特徴とするものであると良い。
【0019】
かかる構成によれば、炊き上げ工程から蒸らし工程に移行した後も、内釜の内部を沸騰状態で保持しつつ、ドライアップするのを抑制できる。
【0020】
(2-2)上述した炊飯器は、前記加熱部が、前記内釜を底側から加熱する底側加熱部と、前記内釜を閉塞する蓋側から加熱する蓋側加熱部とを有し、前記第一運転モードによる炊飯運転を行う場合に、前記蒸らし工程において、前記底側加熱部、及び前記蓋側加熱部の双方により前記内釜を加熱すること、を特徴とするものであると良い。
【0021】
かかる構成によれば、蒸らし工程において、内釜の温度の偏りが生じにくくなり、所定の蒸らし温度で適切に米飯を蒸らすことができる。
【0022】
(2-3)上述した炊飯器は、前記第一運転モードによる炊飯運転を行う場合に、前記蒸らし工程において、前記内釜の底側の温度が前記蒸らし温度を維持するように前記加熱部の出力制御がなされること、を特徴とするものであると良い。
【0023】
かかる構成によれば、蒸らし工程において、内釜の温度が所定の蒸らし温度を維持するように炊飯運転を行うことができる。
【0024】
(3)上述した炊飯器は、前記炊飯運転が、前記内釜の温度を大気圧下における水の沸点を下回る所定温度まで昇温した状態にする前炊き工程を前記炊き上げ工程よりも前に行うものとされており、前記第一運転モードとは異なる第二運転モードによる炊飯運転を行えるものであり、前記第二運転モードが選択された場合に、前記制御部が、前記前炊き工程において所定の第二前炊温度まで昇温した状態を所定の第二前炊時間に亘って維持するように前記加熱部の出力制御を行った後、前記炊き上げ工程において、前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第二炊上温度に達した後、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程に移行する場合よりも前記内釜の内部における水分の残存量が減少した状態になった後に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させることにより炊飯を行い、前記第一運転モードが選択された場合に、前記制御部が、前記前炊き工程において前記第二前炊温度よりも低温の第一前炊温度まで昇温した状態で前記第二前炊時間よりも長い第一前炊時間に亘って維持するように前記加熱部の出力制御を行った後、前記炊き上げ工程に移行させること、を特徴とするものであると良い。
【0025】
上述した構成とした場合、第一運転モードが選択された場合に、前炊き工程において、前記第二運転モードが選択されたときの第二前炊温度よりも低温の第一前炊温度で、第二前炊時間よりも長い第一前炊時間に亘って内釜を昇温させた状態で維持できるように加熱部の出力制御が行われる。すなわち、第一運転モードが選択された場合は、第二運転モードが選択された場合よりも、前炊温度(第一前炊温度)が低温、かつ前炊時間(第一前炊時間)が長時間となる条件下において、前炊き工程が行われる。これにより、上述した構成の炊飯器は、第一運転モードが選択された場合に、前炊き工程の温度挙動を安定化させ、じっくりと米穀及び水を加熱することができる。その結果、第一運転モードを選択することにより、前炊き工程において米穀に水分をしっかりと吸収させた後、炊き上げ工程等の工程を経て炊飯運転を行うことが可能となる。これにより、米穀をより一層瑞々しい外観及び食感となるように炊飯することが可能となる。
【0026】
(4)上述した炊飯器は、前記第一運転モードによる炊飯運転を行う場合に、前記炊き上げ工程において、前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える温度条件に達してから所定時間に亘って前記内釜の温度を維持する温度保持期間を有すること、を特徴とするものであると良い。
【0027】
かかる構成によれば、炊き上げ工程の温度保持期間において、水の沸点を越える温度条件に達した状態でじっくりと米穀を炊き上げることができる。これにより、瑞々しい外観及び食感の米飯を炊飯することが可能となる。
【0028】
(5)上述した炊飯器は、前記第一運転モードとは異なる第二運転モードによる炊飯運転を行えるものであり、前記第二運転モードが選択された場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において、前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第二炊上温度に達した後、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程に移行する場合よりも前記内釜の内部における水分の残存量が減少した状態になった後に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させることにより炊飯を行うものであり、前記第一運転モードの前記炊き上げ工程において、前記第一炊上温度に達するまでの期間における前記内釜の昇温速度が、前記第二運転モードの前記炊き上げ工程において前記第二炊上温度に達するまでの期間における前記内釜の昇温速度よりも速くなるように前記加熱部の出力制御が行われること、を特徴とするものであると良い。
【0029】
かかる構成によれば、第一運転モードでの炊飯運転を行う際に、炊き上げ工程に移行してから水が沸騰するまでの昇温速度を、第二運転モードが選択された場合に比べて高速化し、水が沸騰した温度条件下において米穀をじっくりと炊き上げることが可能となる。
【0030】
(6)上述した炊飯器は、前記第一運転モードとは異なる第二運転モードによる炊飯運転を行えるものであり、前記第二運転モードが選択された場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において、前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第二炊上温度に達した後、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程に移行する場合よりも前記内釜の内部における水分の残存量が減少した状態になった後に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させることにより炊飯を行うものであり、前記第一運転モードにおいて前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと移行する際の前記内釜の温度が、前記第二運転モードにおいて前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと移行する際の前記内釜の温度よりも低く、大気圧下における水の沸点を越える温度になるように前記加熱部の出力制御が行われること、を特徴とするものであると良い。
【0031】
かかる構成によれば、第一運転モードが選択された場合に、第二運転モードが選択された場合に比べて低めの温度で炊き上げ工程を終えて蒸らし工程に移行することができる。これにより、第一運転モードにより炊飯運転を行う場合に、幾分かの水分を残した状態で蒸らし工程を行うことができ、米飯のドライアップを抑制し、瑞々しい外観及び食感の米飯を炊飯することが可能となる。
【0032】
(7)上述した炊飯器は、前記第一運転モードとは異なる第二運転モードによる炊飯運転を行えるものであり、前記第二運転モードが選択された場合に、前記制御部が、前記炊き上げ工程において、前記内釜の温度が大気圧下における水の沸点を越える第二炊上温度に達した後、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程に移行する場合よりも前記内釜の内部における水分の残存量が減少した状態になった後に、前記炊き上げ工程から前記蒸らし工程へと工程を移行させることにより炊飯を行うものであり、米穀の銘柄に応じて前記加熱部の出力、及び炊飯運転を構成する各工程の長さのいずれか一方又は双方を調整して炊飯する炊飯運転を、前記第一運転モードにより行えること、を特徴とするものであると良い。
【0033】
かかる構成によれば、米穀の銘柄に応じて適切な加熱条件及び加熱時間による炊飯運転を第一運転モードによって行える炊飯器を提供できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、竈で炊いた米飯のように米穀を瑞々しい外観及び食感となるように炊飯可能な炊飯器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態に係る炊飯器を示す斜視図である。
【
図4】
図1の炊飯器における制御部の構成、及び炊飯器を構成する他の構成と制御部との関係を示したブロック図である。
【
図5】
図1の炊飯器が竈炊飯モードで炊飯運転を行う場合における米穀の中心温度、釜底温度、釜蓋温度の推移の一例を示したグラフである。
【
図6】
図1の炊飯器が竈炊飯モードで炊飯運転を行う際の温度検知工程における動作フローを示すフローチャートである。
【
図7】
図1の炊飯器が竈炊飯モードで炊飯運転を行う際の前炊き第一工程における動作フローを示すフローチャートである。
【
図8】
図1の炊飯器が竈炊飯モードで炊飯運転を行う際の前炊き第二工程における動作フローを示すフローチャートである。
【
図9】
図1の炊飯器が竈炊飯モードで炊飯運転を行う際の炊き上げ第一工程における動作フローを示すフローチャートである。
【
図10】
図1の炊飯器が竈炊飯モードで炊飯運転を行う際の炊き上げ第二工程における動作フローを示すフローチャートである。
【
図11】
図1の炊飯器が竈炊飯モードで炊飯運転を行う際の炊き上げ第三工程における動作フローを示すフローチャートである。
【
図12】
図1の炊飯器が竈炊飯モードで炊飯運転を行う際の蒸らし工程における動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態に係る炊飯器10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、炊飯器10の構成について概略を説明した後、制御部30の構成、及び制御部30によって行われる炊飯器10における特徴的な動作制御について詳細に説明する。なお、以下の説明において上下左右や、正面、背面、側面、天面、底面等の位置関係を示す用語については、特に断りのない限り、
図1に示すように通常の使用形態として想定される姿勢で炊飯器10を設置した状態を前提として説明する。
【0037】
≪炊飯器10の概略構成について≫
図1及び
図2に示すように、炊飯器10は、炊飯器本体20、蓋部40、内釜50等を備えている。炊飯器10は、IH(Induction Heating)式や、圧力IH式、真空圧力IH式のように、内釜50を発熱させる加熱方式を採用したものである。
【0038】
炊飯器本体20は、内釜収容部22、加熱部24、電源部26、温度センサ28、制御部30等を備えている。内釜収容部22は、内釜50を収容するために設けられた部分である。内釜収容部22は、平面視において略円形状に開口しており、上側へ開放された凹状の形状とされている。そのため、炊飯器本体20は、内釜収容部22に対して上方から内釜50を出し入れすることができる。
【0039】
加熱部24は、内釜50を加熱するためのものである。加熱部24は、底側加熱部24a、及び蓋側加熱部24bを有する。底側加熱部24aは、内釜収容部22の下方側に設けられており、内釜50を底側から加熱可能なものとされている。また、蓋側加熱部24bは、後に詳述する蓋部40側に設けられている。蓋側加熱部24bは、内釜50を蓋部40側から加熱可能なものとされている。
【0040】
電源部26は、加熱部24に対して背面側の位置に設けられている。電源部26は、加熱部24や制御部30等、炊飯器10において電力を消費する部分に電力供給するためのものである。電源部26は、加熱部24をなす誘導コイルに対し、高周波電流を印加できるものとされている。そのため、炊飯器10は、電源部26によって加熱部24をなす誘導コイルに高周波電流を印加して内釜50内に渦電流を発生させ、内釜50内の電気抵抗によって内釜50を発熱させることができる。
【0041】
温度センサ28は、内釜収容部22の下方であって、内釜収容部22の中央部に相当する位置に設けられている。温度センサ28は、内釜収容部22に収容された内釜50の底部において温度測定するためのものである。
【0042】
制御部30は、炊飯器本体20において内釜収容部22に対して正面側にある空間内に配置されている。制御部30は、電源部26、温度センサ28や、後述する蓋部40に設けられた操作部44等に対して電気的に接続されている。制御部30は、マイクロコンピュータ等で構成され、CPU等のハードウェアおよびソフトウェア(プログラム)の協働によって、炊飯器10の動作制御を行うことができる。すなわち、制御部30は、操作部44を介して炊飯器10の動作設定信号を受け付けたり、温度センサ28からの出力信号に基づいて電源部26の出力制御を行ったりして、炊飯器10の動作制御を行うことができる。
【0043】
蓋部40は、ヒンジ機構42によって、炊飯器本体20の上部に回動可能に連結されている。蓋部40は、閉状態とすることにより、内釜収容部22の開口部を覆い、閉塞することができる。また、蓋部40を開状態とすると、蓋部40がヒンジ機構42によって回動し、内釜収容部22の開口部が開いた状態になる。蓋部40は、上述した加熱部24を構成する蓋側加熱部24bに加え、操作部44、表示装置46、及び蒸気排気部48を備えている。
【0044】
操作部44は、炊飯器10の操作を行うためのものであり、蓋部40の天面側に設けられている。操作部44は、蓋部40の天面に露出するように設けられた複数のボタンを備えている。具体的には、操作部44は、運転モード選択操作部44a、竈炊飯操作部44b、炊飯操作部44c、予約操作部44d、保温/取消操作部44e、銘柄炊き操作部44f等をなす複数の操作ボタンを備えている。操作部44は、これらの操作ボタンを操作することにより、炊飯器10の運転モードの選択や、後に詳述する低糖質炊飯を実施するための設定操作、炊飯運転の開始操作、予約運転に関する設定操作、保温運転に関する設定操作、麦飯や玄米、雑穀米等の炊飯運転に関する設定操作等を行うことができる。また、操作部44には、LED等の表示器を備えており、操作ボタンによって選択された運転モードや運転予約の表示等を行うことができる。
【0045】
表示装置46は、炊飯器10の動作状態や、操作部44の操作に伴う表示等を行うものである。表示装置46は、操作部44を構成する各操作部(操作ボタン)等に隣接する位置に設けられている。
【0046】
蒸気排気部48は、蓋部40を閉状態として炊飯を行う際に発生する蒸気を排出するためのものである。蒸気排気部48は、蓋部40を閉状態としたときに、内釜収容部22やこれに収容された内釜50の上方となる位置に設けられている。蒸気排気部48は、蓋部40の天面側及び底面側(内釜収容部22側)に向けて開放された開口、及び両開口を繋ぐ通路からなる排気経路を有し、これを介して炊飯器10の内側から外側に向けて蒸気を排出可能とされている。
【0047】
内釜50は、上述した内釜収容部22に対して出し入れ可能とされた炊飯用の釜である。内釜50は、上側へ開放された有底略円筒状であって、内部に炊飯用の米穀や水等を収容可能とされている。
【0048】
≪制御部30の構成について≫
続いて、制御部30の構成について説明する。
図4に示すように、制御部30は、上述した加熱部24や、電源部26、温度センサ28、操作部44、表示装置46等に対して電気的に接続されている。制御部30は、通電制御部100、熱量設定部102、合数判定部104、データ格納部106、算出部108、報知制御部110、タイマ112等を備えている。
【0049】
通電制御部100は、加熱部24への通電制御を行うためのものである。熱量設定部102は、炊飯器10により行われる炊飯運転の各工程において、加熱部24により内釜50やこれに準備されている米穀、水等に付与する熱量(電力)を設定するものである。また、合数判定部104は、炊飯する米穀の量(合数)を判定するためのものである。
【0050】
データ格納部106は、ROMやフラッシュメモリ等の記憶媒体を備えたものとされている。データ格納部106は、炊飯運転や、炊飯に必要な水量の算出等を行うための実行プログラムを格納すると共に、炊飯運転における各工程を実行するために必要なデータ等をデータテーブル106aとして予め格納している。算出部108は、米穀の炊飯に必要な水量を算出したり、被炊飯物である米飯等の重量変化量に、被炊飯物の単位重量当たりの糖質量やカロリー量を乗じることにより、ユーザが摂取したであろうと考えられる糖質量やカロリー量を算出したりする等の演算処理を行うことができる。
【0051】
報知制御部110は、表示装置46において表示を行うことによる報知や、図示しないスピーカーやブザー等を用いた音による報知等を制御するものである。タイマ112は、炊飯運転における各工程の継続時間や切り替えタイミングを調整するためのものである。
【0052】
≪制御部30による動作制御について≫
以下、炊飯器10において制御部30によって行われる特徴的な動作制御について説明する。炊飯器10は、制御部30による動作制御により、通常炊飯モード(第二運転モード)、及び竈炊飯モード(第一運転モード)を含む複数の運転モードからユーザにより選択された運転モードにより炊飯運転を行うことができる。通常炊飯モード及び竈炊飯モードによる炊飯運転は、温度検知工程、前炊き工程、炊き上げ工程、蒸らし工程をこの順で行うシーケンスにより、米飯を炊飯することができる。また、前炊き工程は、前炊き第一工程、及び前炊き第二工程によって構成され、炊き上げ工程は、炊き上げ第一工程、炊き上げ第二工程、及び炊き上げ第三工程によって構成されている。
【0053】
温度検知工程は、内釜50に準備した水温を検知する工程である。温度検知工程において検知される初期水温は、例えば、炊飯合数を自動判別する等の用途で使用される。また、前炊き工程は、米穀に対して水分を吸収させることを主目的とする工程である。前炊き第一工程は、前炊き工程の第一段階として行われる工程である。前炊き第一工程は、内釜50の温度を水の沸点を下回る所定の温度(保持温度)まで昇温させるための工程である。また、前炊き第二工程は、前炊き第一工程に続いて行われる工程である。前田基台に工程は、前炊き第一工程で昇温させた水温を一定時間キープする工程である。
【0054】
炊き上げ工程は、前炊き工程の後に行われ、内釜50に準備された米穀を炊き上げるための工程である。炊き上げ第一工程は、炊き上げ工程の第一段階として行われる工程である。炊き上げ第一工程は、内釜50の内部に準備された米穀及び水を、水の沸点直前まで速く昇温させることを主目的とする工程である。炊き上げ第二工程は、内釜50の内部に準備された米穀及び水を沸騰した状態で維持する工程である。また、炊き上げ第三工程は、炊き上げ第二工程よりも火力を落とし、じっくり沸騰させながら米を炊き上げる工程である。蒸らし工程は、炊き上げ工程の後に行われる工程である。蒸らし工程は、炊き上げ工程において炊き上げられた米飯から適度に水分を飛ばしつつ、内釜50に残っている水分を米飯に対して略均一に浸透させるための、水分率調整の意味合いを有する工程である。
【0055】
通常炊飯モードは、内釜50に標準の調合比(以下、「標準調合比」とも称する)で準備された米穀及び水を、上述した各工程を経て炊飯する運転モードである。通常炊飯モードは、前炊き工程において所定の通常前炊温度Tnm(第二前炊温度)まで昇温した状態を所定の通常前炊時間Lnm(第二前炊時間)に亘って維持するように加熱部24の出力制御を行った後、炊き上げ工程において、内釜50の温度が大気圧下における水の沸点(摂氏100度)を越える通常炊上温度Tntに達した後、後に詳述する竈炊飯モード(第一運転モード)における炊き上げ工程から蒸らし工程に移行する場合よりも内釜50の内部における水分の残存量が減少した状態になった後に、炊き上げ工程から蒸らし工程へと工程を移行させることにより炊飯運転を行う運転モードである。通常炊飯モードにおいては、米穀の銘柄に応じて加熱部の出力、及び炊飯運転を構成する各工程の長さのいずれか一方又は双方を調整して炊飯する炊飯運転を行うことができる。
【0056】
一方、竈炊飯モードは、炊き上げ工程において内釜50の温度が大気圧下における水の沸点(摂氏100度)を越える竈炊上温度Tkt(第一炊上温度)に達してから内釜50の内部に水分が残存している間に、炊き上げ工程から蒸らし工程へと工程を移行させることを特徴とする炊飯運転を行う運転モードである。竈炊飯モードにおいては、内釜50の底側の温度(釜底温度T1)、蓋部40側の温度(釜蓋温度T2)、及び米穀(米飯)の中心温度が
図5に示すグラフのように推移するように、加熱部24の出力調整が行われる。
【0057】
具体的には、竈炊飯モードにおいては、竈炊上温度Tktに達するまでの期間における内釜50の昇温速度が、通常炊飯モードの炊き上げ工程において通常炊上温度Tntに達するまでの期間における内釜50の昇温速度よりも速くなるように加熱部24の出力制御が行われる。また、竈炊飯モードでは、炊き上げ工程において、内釜50の温度が大気圧下における水の沸点(摂氏100度)を越える温度条件に達してから所定時間に亘って内釜50の温度を維持する温度保持期間を有する。本実施形態では、炊き上げ工程を構成する炊き上げ第二工程が温度保持期間とされており、内釜50の温度が水の沸点を超える温度(例えば摂氏103度以上108度以下の温度)に達してから、所定時間(例えば5分以上10分以下の間の時間)に亘って内釜50の温度を保持するように、加熱部24の出力制御が行われる。
【0058】
竈炊飯モードでは、炊き上げ工程(本実施形態では炊き上げ第三工程)から蒸らし工程へと移行する際の内釜50の温度が、通常炊飯モードにおいて炊き上げ工程(本実施形態では炊き上げ第三工程)から蒸らし工程へと移行する際の内釜50の温度よりも低く、大気圧下における水の沸点を越える温度になるように加熱部24の出力制御が行われる。具体的には、竈炊飯モードでは、炊き上げ工程から蒸らし工程へと移行する際の内釜50の温度が竈炊上温度Tktとされ、摂氏105度以上摂氏115度以下の範囲の所定温度とされる。これに対し、通常炊飯モードでは、炊き上げ工程から蒸らし工程へと移行する際の内釜50の温度が通常炊上温度Tntとされ、摂氏115度以上摂氏130度以下の所定温度とされる。
【0059】
竈炊飯モードでは、蒸らし工程において、内釜50の温度が炊き上げ工程から蒸らし工程への工程を移行直前における温度よりも低く、大気圧下における水の沸点を越える蒸らし温度を維持するように加熱部24の出力制御が行われる。本実施形態では、内釜50の温度が炊き上げ工程(炊き上げ第三工程)から蒸らし工程への工程を移行直前における温度が竈炊上温度Tktとされ、摂氏105度以上摂氏115度以下の範囲の所定温度とされる。これに対し、蒸らし工程における内釜50の温度(竈蒸らし温度Tks)は、竈炊上温度Tktよりも低く水の沸点(摂氏100度)を越える範囲とされる。また、通常炊飯モードにおける蒸らし工程では、加熱部24のうち底側加熱部24aをオフ状態とし蓋側加熱部24bをオン状態として内釜50を加熱するのに対し、竈炊飯モードにおける蒸らし工程では、底側加熱部24a及び蓋側加熱部24bの双方をオン状態として内釜50を加熱する。
【0060】
また、竈炊飯モードの前炊き工程においては、上述した通常炊飯モードの前炊き工程にける通常前炊温度Tnmよりも低温の竈前炊温度Tkmまで昇温させる。また、竈炊飯モードの前炊き工程においては、上述した通常炊飯モードの前炊き工程にける通常前炊時間Lnmよりも長い竈前炊時間Lkmに亘って竈前炊温度Tkmを維持するように加熱部24の出力制御を行った後、炊き上げ工程に移行させる。
【0061】
続いて、上述した竈炊飯モードによる炊飯運転を行う際の各工程における動作について、
図6から
図12に係るフローチャートを参照しつつ、詳細に説明する。
【0062】
≪温度検知工程≫
以下、
図6を参照しつつ、温度検知工程における動作フローについて説明する。
【0063】
ステップ1-1において、炊飯器10の制御部30は、底側加熱部24a及び蓋側加熱部24bを出力停止した状態(出力=0[W])とする。その後、制御部30は、制御フローをステップ1-2に進め、タイマ112による計時を開始する。タイマ112による計時が開始されると、ステップ1-3において、タイマ112による計測時間が所定の温度検知待機時間Ltに達したか否かを確認する。ステップ1-3において温度検知待機時間Ltに達したことが確認されると、制御フローがステップ1-4に進められる。制御部30は、ステップ1-4において、温度センサ28により内釜50の温度計測を行う。これにより、温度検知工程における動作フローが完了する。温度検知工程が完了すると、
図7の前炊き第一工程へと工程が移行する。
【0064】
≪前炊き第一工程≫
以下、
図7を参照しつつ、前炊き第一工程における動作フローについて説明する。
【0065】
前炊き第一工程においては、先ずステップ2-1において底側加熱部24aがオン状態とされる。その後、ステップ2-2において、底側加熱部24aの出力値W1が所定値(本実施形態では1000[W])に設定され、底側加熱部24aによる内釜50の加熱が開始される。その後、ステップ2-3において、内釜50の底側の温度(釜底温度T1)が所定温度(竈前炊温度Tkm)に達したか否かが確認される。本実施形態では、竈前炊温度Tkmが摂氏45度に設定されている。ステップ2-3において、内釜50の釜底温度T1が45度に達したことが確認されると、制御フローがステップ2-4に進められる。制御フローがステップ2-4に移行すると、制御部30はタイマ112をセットし、計時を開始する。その後、ステップ2-5において、タイマ112をセットしてから所定時間(竈前炊き第一時間Lkm1)だけ経過したか否かを確認する。ここで、竈前炊き第一時間Lkm1は、上述した竈前炊時間Lkmの一部をなすものであり、その長さが予め所定時間(例えば50秒)に規定されている。ステップ2-5において竈前炊き第一時間Lkm1の経過が確認された場合には、制御部30は、前炊き第一工程を完了させる。その後、制御部30は、
図8に係る前炊き第二工程へと工程を移行させる。
【0066】
≪前炊き第二工程≫
以下、
図8を参照しつつ、前炊き第二工程における動作フローについて説明する。
【0067】
前炊き第二工程においては、先ずステップ3-1において、底側加熱部24aの出力W1が所定値に設定され、底側加熱部24aによる内釜50の加熱が継続される。前炊き第二工程における底側加熱部24aの出力値W1は、上述した前炊き第一工程における底側加熱部24aの出力値W1よりも低く設定される。本実施形態では、前炊き第一工程における出力値W1が1000[W]とされるのに対し、前炊き第二工程における出力値W1が500[W]とされる。その後、制御フローがステップ3-2に進められる。ステップ3-2において、制御部30は、釜底温度T1が所定温度(竈前炊温度Tkm)であるか否かを確認する。ここで、釜底温度T1が竈前炊温度Tkmである場合には、制御フローがステップ3-3に進められる。
【0068】
制御フローがステップ3-3に進むと、制御部30は、タイマ112をセットして計時を開始する。その後、ステップ3-4において、タイマ112をセットしてから所定時間(竈前炊き第二時間Lkm2)だけ経過したか否かを確認する。ここで、竈前炊き第二時間Lkm2は、上述した竈前炊時間Lkmの一部をなすものであり、竈前炊き第一時間Lkm1との合計(Lkm1+Lkm2)が竈前炊時間Lkmとなるように規定されている。本実施形態では、竈前炊き第二時間Lkm2が竈前炊き第一時間Lkm1よりも十分長く確保されている。具体的には、竈前炊き第一時間Lkm1が50秒であるのに対し、竈前炊き第二時間Lkm2が1750秒確保されている。これにより、前炊き第一工程において釜底温度T1を所定の竈前炊温度Tkmまで短時間の竈前炊き第一時間Lkm1で迅速に昇温させた後、竈前炊き第二時間Lkm2に亘ってじっくりと竈前炊温度Tkmで保持し、米穀に対して水分を充分に吸収させることとしている。ステップ3-4において竈前炊き第二時間Lkm2の経過が確認された場合には、制御部30は、前炊き第二工程を完了させる。その後、制御部30は、
図9に係る炊き上げ第一工程へと工程を移行させる。
【0069】
≪炊き上げ第一工程≫
以下、
図9を参照しつつ、炊き上げ第一工程における動作フローについて説明する。
【0070】
炊き上げ第一工程においては、先ずステップ4-1において底側加熱部24aの出力値W1を、後に行われる炊き上げ第二工程や炊き上げ第三工程におけるよりも高い値に設定する。具体的には、炊き上げ第二工程における底側加熱部24aの出力値W1を600[W]、炊き上げ第三工程における出力値W1を800[W]とするところ、ステップ4-1においては、底側加熱部24aのの出力値W1を1000[W]に設定する。これにより、内釜50の加熱を促進する。その後、ステップ4-2において、制御部30は、内釜50の蓋側の温度(釜蓋温度T2)が所定温度に達したか否かを確認する。具体的には、本実施形態では、釜蓋温度T2が摂氏60度に達したか否かを確認する。ステップ4-2において、釜蓋温度T2が所定温度に達したことが確認されると、制御部30は、炊き上げ第一工程を完了させる。その後、制御部30は、
図10に係る炊き上げ第二工程へと工程を移行させる。
【0071】
≪炊き上げ第二工程≫
以下、
図10を参照しつつ、炊き上げ第二工程における動作フローについて説明する。
【0072】
炊き上げ第二工程においては、先ずステップ5-1において蓋側加熱部24bをオン状態にする。その後、ステップ5-2において、制御部30は、底側加熱部24aの出力値W1を炊き上げ第一工程における出力値W1よりも低下させるとともに、蓋側加熱部24bの出力値W2を所定値に設定する。本実施形態では、底側加熱部24aの出力値W1を600[W]に設定するとともに、蓋側加熱部24bの出力値W2を40[W]に設定する。その後、制御部30は、制御フローをステップ5-3に移行させる。
【0073】
ステップ5-3において、制御部30は、内釜50の釜底温度T1が所定の竈炊上中間温度Tktmに達したか否かを確認する。ここで、竈炊上中間温度Tktmは、上述した竈炊上温度Tktよりも低く、大気圧下における水の沸点(摂氏100度)よりも高い温度とされる。本実施形態では、竈炊上中間温度Tktmが105度に設定されている。ステップ5-3において、釜底温度T1が竈炊上中間温度Tktmに達したことが確認されると、釜底温度T1が竈炊上中間温度Tktmを維持するように加熱部24の出力制御を行いつつ、制御フローがステップ5-4に進められ、タイマ112による計時が開始される。その後、ステップ5-5において、タイマ112のカウント開始後、所定の温度保持期間が経過したか否かが確認される。本実施形態では、温度保持期間が480秒と設定されている。その後、ステップ5-5において所定の温度保持期間が経過したことが確認されると、制御部30は、炊き上げ第二工程を完了させる。その後、制御部30は、
図11に係る炊き上げ第三工程へと工程を移行させる。
【0074】
≪炊き上げ第三工程≫
以下、
図11を参照しつつ、炊き上げ第三工程における動作フローについて説明する。
【0075】
炊き上げ第三工程においては、先ずステップ6-1において、底側加熱部24aの出力値W1を炊き上げ第二工程における出力値W1よりも高める制御が行われる。本実施形態では、底側加熱部24aの出力値W1を600[W]から800[W]に向上させる制御が行われる。この際、蓋側加熱部24bの出力値W2は、炊き上げ第二工程から引き続いて同一の出力値(本実施形態では40[W])に維持される。その後、制御フローがステップ6-2に進められ、内釜50の釜底温度T1が所定の竈炊上温度Tkt(本実施形態では摂氏110度)に到達したか否かが確認される。ここで、内釜50の釜底温度T1が所定の竈炊上温度Tktに達したことが確認されると、制御部30は、炊き上げ第三工程を完了させる。その後、制御部30は、
図12に係る蒸らし工程へと工程を移行させる。
【0076】
≪蒸らし工程≫
以下、
図12を参照しつつ、蒸らし工程における動作フローについて説明する。
【0077】
蒸らし工程においては、先ずステップ7-1において、底側加熱部24aの出力値W1を炊き上げ第三工程よりも低下させる制御が行われる。本実施形態では、底側加熱部24aの出力値W1を800[W]から500[W]に低下させる制御が行われる。この際、蓋側加熱部24bの出力値W2は、蒸らし工程においても引き続いて同一の出力値(本実施形態では40[W])に維持される。その後、制御フローがステップ7-2に進められる。
【0078】
ステップ7-2においては、内釜50の釜底温度T1が所定の竈蒸らし温度Tksに到達したか否かが確認される。ここで、竈蒸らし温度Tksは、上述した竈炊上温度Tktよりも低く、水の沸点(摂氏100度)以上の温度とされる。本実施形態では、竈蒸らし温度Tksは、摂氏102度とされている。ステップ7-2において釜底温度T1が竈蒸らし温度Tksに到達したことが確認されると、蒸らし温度Tksを維持するように加熱部24の出力制御がなされつつ、制御フローがステップ7-3に進められる。ステップ7-3においては、タイマ112による計時が開始される。その後、ステップ7-4において、タイマ112の計時が所定時間(本実施形態では900秒)に達したことが確認されると、制御部30は、蒸らし工程を完了させる。これにより、竈炊飯モードによる炊飯運転が完了する。
【0079】
上述した実施形態の炊飯器10は、以下(1)~(7)のような特徴的構成を備えており、特徴的な効果が得られる。
【0080】
(1)本実施形態の炊飯器10は、炊飯器本体20に対して着脱自在に収納される内釜50と、内釜50を加熱する加熱部24と、加熱部24の出力制御を行う制御部30と、を有し、加熱部24によって内釜50を加熱することにより、内釜50に所定の調合比で準備された米穀及び水を加熱して炊き上げる炊き上げ工程、及び炊き上げ工程により炊き上げた米飯を加熱部24によって内釜50を加熱した状態で蒸らす蒸らし工程とを含む複数の工程を経て炊飯する炊飯運転を一又は複数の運転モードで運転可能なものとされている。炊飯器10は、運転モードに含まれる竈炊飯モードによる炊飯を行う場合に、制御部30が、炊き上げ工程において内釜50の温度が大気圧下における水の沸点を越える竈炊上温度Tkt(第一炊上温度)に達してから内釜50の内部に水分が残存している間に、炊き上げ工程から蒸らし工程へと工程を移行させるという特徴的構成を備えている。そのため、本実施形態の炊飯器10は、竈炊飯モードによる炊飯を行うことにより、米穀がドライアップ状態に達した後に蒸らし工程を行う場合等に比べて、竈で炊いた米飯のように米穀を瑞々しい外観及び食感となるように炊飯することができる。
【0081】
なお、上述した炊飯器10は、竈炊上温度Tktが摂氏110度であること、を特徴とするものであると良い。これにより、内釜50の内部に適度な水分を残した状態で炊き上げ工程から蒸らし工程に移行することができる。これにより、炊飯器10は、竈炊飯モードによる炊飯運転を行った場合に、より一層確実に、竈で炊いた米飯のように米穀を瑞々しい外観及び食感となるように炊飯することが可能となる。
【0082】
なお、上述した炊飯器10は、内釜50の内部における水分の残存量を監視可能な監視部を有すること、を特徴とするものであると良い。このような構成とすることにより、竈炊飯モードによる炊飯運転時に、米穀を瑞々しい外観及び食感となるように炊飯するために最適な水分の残存量に達した段階で、炊き上げ工程から蒸らし工程に移行させることが可能となる。
【0083】
また、上述した炊飯器10は、監視部が、内釜50の内部にある被炊飯物の重量変化を指標として水分の残存量を監視可能であること、を特徴とするものであると良い。このような構成によれば、内釜50における水分の残存量を適切に監視し、最適なタイミングで炊き上げ工程から蒸らし工程に移行させることができる。
【0084】
上述した炊飯器10は、監視部が、内釜50の内部における水位を検出可能な水位検出装置を備えていること、を特徴とするものであると良い。このような構成によれば、内釜50における水分の残存量を水位に基づいて適確に把握し、最適なタイミングで炊き上げ工程から蒸らし工程に移行させることができる。
【0085】
(2)上述した炊飯器10は、竈炊飯モードによる炊飯運転を行う場合に、制御部30が、蒸らし工程において、内釜50の温度が炊き上げ工程から蒸らし工程への工程を移行直前における温度(竈炊上温度:第一炊上温度)よりも低く、大気圧下における水の沸点を越える竈蒸らし温度Tksを維持するように加熱部24の出力制御を行うこと、を特徴とするものである。このような構成とされているため、炊飯器10は、蒸らし工程中も米飯がドライアップするのを抑制できる。これより、竈で炊いた米飯であるかのように、米穀を瑞々しい外観及び食感となるように炊飯可能とすることができる。なお、(2)に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜別の構成としたり、省略することも可能である。
【0086】
上述した炊飯器10は、竈蒸らし温度Tksが、摂氏102度とされること、を特徴とするものであると良い。これにより、炊き上げ工程から蒸らし工程に移行した後も、内釜50の内部を沸騰状態で保持しつつ、ドライアップするのを抑制できる。
【0087】
また、上述した炊飯器10は、加熱部24が、内釜50を底側から加熱する底側加熱部24aと、内釜50を閉塞する蓋側から加熱する蓋側加熱部24bとを有し、竈炊飯モードによる炊飯運転を行う場合に、蒸らし工程において、底側加熱部24a、及び蓋側加熱部24bの双方により内釜50を加熱すること、を特徴とするものであると良い。これにより、蒸らし工程において、内釜50の温度の偏りが生じにくくなり、所定の竈蒸らし温度Tksで適切に米飯を蒸らすことができる。
【0088】
上述した炊飯器10は、竈炊飯モードによる炊飯運転を行う場合に、蒸らし工程において、内釜50の底側の温度が竈蒸らし温度Tksを維持するように加熱部24の出力制御がなされること、を特徴とするものであると良い。これにより、蒸らし工程において、内釜50の温度が所定の竈蒸らし温度Tksを維持するように炊飯運転を行うことができる。
【0089】
(3)上述した炊飯器10は、炊飯運転が、内釜50の温度を大気圧下における水の沸点を下回る所定温度まで昇温した状態にする前炊き工程を炊き上げ工程よりも前に行うものとされており、竈炊飯モードとは異なる通常炊飯モード(第二運転モード)による炊飯運転を行えるものとされている。また、炊飯器10は、通常炊飯モードが選択された場合に、制御部30が、前炊き工程において所定の通常前炊温度Tnm(第二前炊温度)まで昇温した状態を所定の通常前炊時間Lnm(第二前炊時間)に亘って維持するように加熱部24の出力制御を行った後、炊き上げ工程において、内釜50の温度が大気圧下における水の沸点を越える通常炊上温度Tntに達した後、竈炊飯モードにおける炊き上げ工程から蒸らし工程に移行する場合よりも内釜50の内部における水分の残存量が減少した状態になった後に、炊き上げ工程から蒸らし工程へと工程を移行させることにより炊飯を行うものとされている。また、炊飯器10は、竈炊飯モードが選択された場合に、制御部30が、前炊き工程において通常前炊温度Tnmよりも低温の竈前炊温度Tkm(第一前炊温度)まで昇温した状態で通常前炊時間Lnmよりも長い竈前炊時間Lkm(第一前炊時間)に亘って維持するように加熱部24の出力制御を行った後、炊き上げ工程に移行させるものとされている。
【0090】
炊飯器10は、上述したような構成とされているため、竈炊飯モードが選択された場合に、通常炊飯モードが選択された場合よりも、前炊温度(竈前炊温度Tkm)が低温、かつ前炊時間(竈前炊時間Lkm)が長時間となる条件下において、前炊き工程を行うことができる。これにより、上述した炊飯器10は、竈炊飯モードが選択された場合に、前炊き工程の温度挙動を安定化させ、じっくりと米穀及び水を加熱することができる。その結果、炊飯器10は、竈炊飯モードを選択することにより、前炊き工程において米穀に水分をしっかりと吸収させた後、炊き上げ工程等の工程を経て炊飯運転を行うことが可能となる。これにより、炊飯器10において、竈炊飯モードで炊飯運転を行うことにより、米穀をより一層瑞々しい外観及び食感となるように炊飯することが可能となる。なお、上記(3)に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜別の構成としたり、省略することも可能である。
【0091】
(4)上述した炊飯器10は、竈炊飯モードによる炊飯運転を行う場合に、炊き上げ工程において、内釜50の温度が大気圧下における水の沸点を越える温度条件に達してから所定時間に亘って内釜50の温度を維持する温度保持期間を有すること、を特徴とするものとされている。そのため、炊飯器10は、竈炊飯モードによる炊飯運転を行う場合に、炊き上げ工程の温度保持期間において、水の沸点を越える温度条件に達した状態でじっくりと米穀を炊き上げることができる。これにより、瑞々しい外観及び食感の米飯を炊飯することが可能となる。なお、(4)に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜別の構成としたり、省略することも可能である。
【0092】
(5)上述した炊飯器10は、竈炊飯モードの炊き上げ工程において、竈炊上温度Tktに達するまでの期間における内釜50の昇温速度が、通常炊飯モードの炊き上げ工程において通常炊上温度Tntに達するまでの期間における内釜50の昇温速度よりも速くなるように加熱部24の出力制御が行われること、を特徴とするものである。そのため、炊飯器10は、竈炊飯モードでの炊飯運転を行う際に、炊き上げ工程に移行してから水が沸騰するまでの昇温速度を、通常炊飯モードが選択された場合に比べて高速化し、水が沸騰した温度条件下において米穀をじっくりと炊き上げることが可能となる。なお、(5)に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜別の構成としたり、省略することも可能である。
【0093】
(6)上述した炊飯器10は、竈炊飯モードにおいて炊き上げ工程から蒸らし工程へと移行する際の内釜50の温度が、通常炊飯モードにおいて炊き上げ工程から蒸らし工程へと移行する際の内釜50の温度よりも低く、大気圧下における水の沸点を越える温度になるように加熱部24の出力制御が行われること、を特徴とするものである。そのため、炊飯器10は、竈炊飯モードが選択された場合に、通常炊飯モードが選択された場合に比べて低めの温度で炊き上げ工程を終えて蒸らし工程に移行することができる。これにより、炊飯器10は、竈炊飯モードにより炊飯運転を行う場合に、幾分かの水分を残した状態で蒸らし工程を行うことができ、米飯のドライアップを抑制し、瑞々しい外観及び食感の米飯を炊飯することが可能となる。なお、(6)に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜別の構成としたり、省略することも可能である。
【0094】
(7)上述した炊飯器10は、竈炊飯モードとは異なる通常炊飯モードによる炊飯運転を様々な形態で実施可能なものとすることができる。例えば、炊飯器10は、米穀の銘柄に応じて加熱部24の出力、及び炊飯運転を構成する各工程の長さのいずれか一方又は双方を調整して炊飯する炊飯運転を、竈炊飯モードにより行えるものとすることができる。
【0095】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示および精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の炊飯器は、炊飯器全般において好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 :炊飯器
20 :炊飯器本体
24 :加熱部
24a :底側加熱部
24b :蓋側加熱部
30 :制御部
50 :内釜
Lkm :竈前炊時間
Lnm :通常前炊時間
Tkm :竈前炊温度
Tks :竈蒸らし温度
Tkt :竈炊上温度
Tnm :通常前炊温度
Tnt :通常炊上温度